JP2020084382A - アラミド強化繊維複合体および熱可塑性樹脂複合材 - Google Patents

アラミド強化繊維複合体および熱可塑性樹脂複合材 Download PDF

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Abstract

【課題】熱可塑性樹脂、特にポリカーボネート系樹脂やポリエステル系樹脂と親和性があるポリパラフェニレンテレフタルアミド強化繊維複合体、およびそれを構成要素として含む熱可塑性樹脂複合材を提供する。【解決手段】アラミド繊維束またはアラミド繊維布帛に、数平均粒子径が300nm以下であるエポキシ樹脂の水性分散体を含浸してなる強化繊維複合体、および、それを構成要素として含むことを特徴とする熱可塑性樹脂複合材である。【選択図】図3

Description

本発明は、アラミド強化繊維複合体およびそれを構成要素として含む、熱可塑性樹脂複合材に関するものである。
アラミド繊維は、高強度、高弾性率、高耐熱性、非導電性、錆びないなどの高い機能性と、有機繊維特有のしなやかさと、軽量性を併せ持った合成繊維である。これらの特徴から、自動車、自動二輪および自転車用のタイヤ、自動車用歯付きベルト、コンベヤベルトなどのゴム補強材料、あるいは、光ファイバーケーブルの補強材料、ロープなどとして利用されている。さらに、防弾チョッキや、刃物に対して切れにくい性質を利用した製品、例えば作業用手袋や作業服などの防護衣料への応用、燃え難さを利用した消防服への応用も行われている。
しかし、アラミド繊維は化学的に安定であり、そのままの状態では樹脂やゴムなどの材料に対する親和性が劣るため、何らかの前処理が必要とされることがある。
一般的に強化繊維(例えば、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維など)を樹脂に適用して樹脂を改質する手段として、強化繊維のチョップドストランドと熱可塑性樹脂をドライブレンドしたものを押出機で押出し、強化繊維を熱可塑性樹脂中に分散させてペレット化し、このペレットを熱可塑性樹脂に添加して所望の成形を行い、成形品を得る方法が知られている。しかし、この方法では強化繊維の配合量を高くできないため、所望の樹脂特性が得られにくい問題点がある。
さらに、強化繊維の連続繊維束を溶融した熱可塑性樹脂中に通し、プルトリュージョン法により強化繊維束を熱可塑性樹脂で被覆した後、ペレット化する方法、または、強化繊維の連続繊維束を熱可塑性樹脂エマルジョンに浸漬した後、乾燥したものを切断してペレット化する方法などもある。前者のプルトリュージョン法によれば、従来品に比べて、成形品の機械的特性が10〜20%程度向上するものの、更なる向上が望まれている。
後者の連続繊維束を熱可塑性樹脂エマルジョンに浸漬、乾燥する方法は、主としてガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維について多くの検討がなされている。
例えば炭素繊維束にエポキシ樹脂水性分散体を2段階で予備含浸させ、1段階目は平均粒子径0.1μm未満の樹脂分散体を、2段階目は平均粒子径20〜150μmの常温固体粒子を粉末被覆することで、複合部材製造時にマトリクス樹脂の含浸性を改善できることが開示されている(特許文献1)。
また水分量15%未満の履歴を有さず水分量15〜200質量%に調整したポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維骨格内に、ウレタン樹脂水性分散体やエポキシ樹脂水性分散体を含浸させることで、ポリカーボネート樹脂やポリプロピレン樹脂への接着性を改善できることが開示されている(特許文献2、3)。
エポキシ樹脂水性分散体ではないが、平均粒子径が0.03〜10μmである、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物と芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂などを含浸させ、熱可塑性マトリックス樹脂との接着性と開繊性を改善できることが開示されている(特許文献4)。前記の平均粒子径が0.03μm未満の場合は樹脂が繊維のストランド間を通り抜けてしまい、10μm超の場合は繊維に均一付着しない問題があるため、さらに好ましい平均粒子径は、100nm〜1μmであることが示されている。
特表2014−521796号公報 特開2017−145540号公報 特開2018−145552号公報 WO2013/146024号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献4に開示されている技術は、対象繊維が実質炭素繊維であり、アラミド繊維を用いる場合の具体例は開示されていない。
また、特許文献2や3に開示されている技術は、PPTA繊維を特定の水分量に調整する必要があり、限られたアラミド繊維にしか適応できないものである。
さらに、特許文献4には、炭素繊維ストランドを平均粒子径が80〜150nmの芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂の水分散体に浸漬・含浸させた場合(比較例5、6、8)は、ポリアミド樹脂との接着性が実施例の半分程度しかないことが示されている。
本発明の目的は、熱可塑性樹脂との接着性が向上し、熱可塑性樹脂との複合体を構成したときに熱可塑性樹脂特性を向上させることが可能なアラミド強化繊維複合体と、それを構成要素として含む熱可塑性樹脂複合材を提供することにある。
本発明者らは、熱可塑性樹脂、特にポリカーボネート系樹脂やポリエステル系樹脂と親和性があるアラミド強化繊維複合体に関し、鋭意検討を行った。その結果、アラミド繊維束またはアラミド繊維布帛に、数平均粒子径が300nm以下であるエポキシ樹脂の水性分散体を含浸させることにより、熱可塑性樹脂、特にポリカーボネート系樹脂やポリエステル系樹脂と親和性がある繊維複合体が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、アラミド繊維束またはアラミド繊維布帛に、数平均粒子径が300nm以下であるエポキシ樹脂の水性分散体を含浸してなる強化繊維複合体を提供する。
本発明においては、前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることが好ましく、前記布帛が、織物、編物、フェルト、不織布、または紙であることが好ましい。アラミド繊維の水分率は200質量%以下が好ましい。
また、本発明は、前記いずれかの強化繊維複合体と熱可塑性樹脂とを複合化してなる熱可塑性樹脂複合材を提供する。本発明の強化繊維複合体は、ポリカーボネート系樹脂やポリエステル系樹脂に対して有効に用いることができる。
本発明のアラミド強化繊維複合体によれば、エポキシ樹脂が付着浸透していないアラミド繊維と比べ、熱可塑性樹脂、特にポリカーボネート系樹脂やポリエステル系樹脂との接着力が向上する。それにより、アラミド繊維本来の高ヤング率を保持しつつ、熱可塑性樹脂、特にポリカーボネート系樹脂やポリエステル系樹脂などの強化繊維として有用な繊維複合体を提供できる。このアラミド強化繊維複合体を熱可塑性樹脂と複合化した複合材料は、幅広い用途に展開できる。
糸接着力評価用サンプルの調整方法を示す説明図である。 糸接着力評価用サンプルの調整方法(加熱プレス成形)の断面図である。 実施例1に使用されているエポキシ樹脂水性分散体の電子顕微鏡観察写真。
本発明におけるアラミド繊維としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維などを挙げることができるが、引張強さに優れているパラ系アラミド繊維が好ましい。具体的には、パラ系アラミド繊維として、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(米国デュポン社、東レ・デュポン(株)製、商品名「Kevlar」(登録商標))、コポリパラフェニレン−3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製、商品名「テクノーラ」(登録商標))などを挙げることができる。これらのパラ系アラミド繊維の中でも、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維が特に好ましい。ポリパラフェニレンテレフタルアミド(以下、「PPTA」と称する。)は、テレフタル酸とパラフェニレンジアミンを重縮合して得られる重合体であるが、少量のジカルボン酸およびジアミンを共重合したものも使用でき、重合体または共重合体の分子量は通常20,000〜25,000が好ましい。
アラミド繊維の水分率(質量%)(以下「%」と略記する。)は、エポキシ樹脂水性分散体の含浸性および取扱性などの観点より、好ましくは200%以下、より好ましくは100%以下であり、また、エポキシ樹脂水性分散体の含浸性の観点より、好ましくは1質量%以上である。アラミド繊維の水分率が200%を超えると、含浸させたエポキシ樹脂水性分散体が巻き取り工程までにガイドなどに接触した際に水分とともに脱落する恐れがある。一方、アラミド繊維の水分率が1%以上未満では、エポキシ樹脂水性分散体を均一に繊維内に含浸させることが困難となりやすい。アラミド繊維の水分率は、特に好ましくは5〜50%の範囲である。つまり、公定水分率に近いアラミド繊維と、それよりも水分率が高いアラミド繊維、の双方を強化繊維とすることができる。
なお、水分率が異なるアラミド繊維は、紡糸口金から吐出した原糸の乾燥条件(例えば乾燥温度と乾燥時間)を調整する方法、紡糸したアラミド繊維を調湿する方法など、公知の方法により得られる。
本発明におけるアラミド繊維の水分率は下記方法で求められる。
試料約5gの質量を測定したものに105℃×1時間の熱処理を行い、24℃、55%RHで5分間放置した後、再度質量を測定する。
水分率(%)=[(乾燥前質量−乾燥後質量)/乾燥後質量]×100
アラミド繊維束を構成するアラミド繊維の繊度は、特に限定されるものではなく、例えば、単糸繊度が0.1dtex〜30dtex、フィラメント数が約100本〜3,000本程度のものを用いることができる。100本以上あれば、アラミド繊維が有する引張強さを確保することができ、3,000本以下であれば、剛性が高くなることによって成形性や取扱性が著しく低下する恐れがない。
アラミド繊維布帛を構成するアラミド繊維の総繊度としては、50〜10,000dtexが好ましく、200〜6,500dtexがより好ましい。繊度の小さいアラミド繊維を用いると比較的薄い布帛が得られやすく、繊度の大きいアラミド繊維を用いると比較的厚い布帛が得られやすい。布帛の厚さは特に限定されないが、軽量化、低コスト化を図る点からの好ましい厚さは0.1mm〜1mmである。
アラミド繊維束は、アラミド繊維1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて、引揃え糸、撚糸、加工糸、捲縮糸、交絡糸、コードなどの形態に加工したものであっても良い。撚糸は、2本撚り、3本撚り、6本撚りなど公知の撚糸形態が適宜採用される。また、アラミド繊維束を一方向に配列させたトウシートであっても良い。
アラミド繊維布帛は、織物、編物、フェルト、不織布、紙などの形態であって良く、強化繊維複合体の用途あるいは要求特性に応じて適宜な形態が採用される。これらの形態の中でも、熱可塑性樹脂に対する接着性および機械的特性の強化を図りやすい点より、フェルト、不織布、紙などの不連続繊維からなる布帛よりも、織物や編物などの連続繊維からなる布帛が好ましい。織物としては、例えば、平織、綾織、朱子織などが挙げられ、編物としては、よこ編み、たて編のいずれでも良く、例えば、トリコット編み、ミラニーズ編み、ラッセル編みなどが挙げられる。
本発明のアラミド繊維束またはアラミド繊維布帛は、本発明による効果を阻害しない限度において、他の強化繊維や汎用繊維と任意の方法で(例えば、引揃糸、混繊糸、交織織物として)組合せて用いることができる。強化繊維としては、例えば、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリケトン繊維、ポリアミドイミド繊維などが挙げられ、汎用繊維としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、レーヨン繊維、ポリビニルアルコール系繊維、塩化ビニル系繊維、ポリプロピレン繊維などの合成繊維、綿、麻等の天然繊維などが挙げられる。他の強化繊維や汎用繊維と併用する場合は、アラミド繊維(好ましくはパラ系アラミド繊維)を50%以上用いると、引張強度および弾性率に優れる繊維束や繊維布帛が得られ易い。
本発明の水性分散体中に含まれるエポキシ樹脂としては、特に制限はなく、公知のエポキシ樹脂を1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ポリアルキレングリコール型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル化物が挙げられる。また、エポキシ樹脂分散体は、エマルジョンタイプの水系エポキシ樹脂でも良い。
上記のエポキシ樹脂のなかでも、常温で液状のエポキシ樹脂、特にビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、その中でも汎用型であるビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂水性分散体は、必要に応じて、脂肪族ポリアミン(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン)、芳香族ポリアミン(例えば、m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン)、酸無水物(例えば、無水フタル酸)などの公知の硬化剤を含むことができる。
エポキシ樹脂水性分散体は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの公知の重合方法で得たものを用いることができる。アラミド繊維束や布帛に対して、樹脂水性分散体を含浸させることを考慮すると、乳化重合法で得たもの、あるいは、それ以外の重合法により得た重合体を強制乳化により水、水性溶媒またはこれらの混合溶媒中に分散させたものが好ましく用いられる。
水性溶媒としては、エステル類、脂肪族アルコール類、(ポリ)アルキレングリコールエーテル類、ケトン類などが挙げられ、2種以上の混合溶媒でも良い。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、これら以外の有機溶媒が混合されていても良い。
本発明では、エポキシ樹脂の水性分散体は、エポキシ樹脂の数平均粒子径が300nm以下であることを要する。数平均粒子径が300nmを超える場合は、アラミド繊維の熱可塑性樹脂に対する接着力は、無添加の場合より向上するものの、著しく良好な接着力を示すとは言い難い。数平均粒子径が300nm以下のエポキシ樹脂により、良好な接着力を示す理由は明らかでないが、以下のように推察する。すなわち、エポキシ樹脂の数平均粒子径が300nm超の場合、エポキシ樹脂粒子がアラミド繊維に均一付着しにくい状態となり、含浸・乾燥後、アラミド繊維表面にエポキシ樹脂の均一層(すなわち、均一な接着層)が形成されにくい状態となり、熱可塑性樹脂との接着性が向上しないことが考えられる。
エポキシ樹脂は、全粒子が粒子径300nm以下であることが好ましく、全粒子が粒子径200nm以下であることがより好ましい。粒子径の下限値は特に無い。また、エポキシ樹脂の粒子径分布における分散度(体積平均粒子径(Dv)/数平均粒子径(Dn))は、アラミド繊維表面における均一な接着を達成する観点から、1〜3が好ましく、より好ましくは1〜2であり、さらに好ましくは1〜1.4である。
なお、本発明でいう数平均粒子径および体積平均粒子径は、電子顕微鏡法によって測定された粒子径の数平均および体積平均を言う。粒子は全て真球状と仮定した。
エポキシ樹脂水性分散体中における樹脂濃度は、特に限定されるものではなく用途によって異なるが、好適には樹脂濃度10〜50%程度の分散体が用いられる。
また、エポキシ樹脂水性分散体には、本発明の目的を損なわない程度で、例えば、界面活性剤、平滑剤、酸化防止剤、抗菌剤、消泡剤などの添加剤が含まれていても良い。これらの添加剤は、単独で用いても、複数の組み合わせて用いても良い。
エポキシ樹脂水性分散体には、接着性改良剤として用いられることがある、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤を併用しないことが、処理工程の煩雑化や成形品の機械的特性低下の防止という観点からは好ましいが、所望により併用しても良い。エポキシ樹脂水性分散体がシランカップリング剤を含有する場合は、アラミド繊維表面に僅かに存在する官能基と優先的に反応することで、アラミド繊維とエポキシ樹脂との親和性を阻害する恐れがある。
エポキシ樹脂水性分散体は、油剤に含ませて用いても良いし、油剤と別工程で用いても良い。油剤としては、アラミド繊維に用いられる一般的な油剤、例えば、炭素数18以下の低分子量脂肪酸エステル、ポリエーテル、鉱物油などが挙げられる。油剤に含ませて用いる場合のエポキシ樹脂水性分散体の油剤中の含有量は、固形分として、約20〜60%が好ましく、約30〜50%がより好ましい。
エポキシ樹脂水性分散体をアラミド繊維束またはアラミド繊維布帛に付与する方法は、特に限定されず、従来公知の任意の方法が採用されて良い。例えば、浸漬法、スプレー法、ローラー法、計量ポンプを用いたガイド給液法などの方法が挙げられる。エポキシ樹脂水性分散体を油剤とともに用いる場合も同様である。
本発明の強化繊維複合体は、エポキシ樹脂水性分散体を含浸させたアラミド繊維束またはアラミド繊維布帛を、巻き取り工程でボビンなどに巻き取り、その後ボビンなどから巻き出して熱処理し水分を除去する方法などにより得られる。熱処理条件は特に限定されないが、例えば80〜300℃、好ましくは100〜250℃で熱処理することにより、強化繊維複合体の水分率を10%以下にすることができる。前記の熱処理により、アラミド繊維表面にエポキシ樹脂膜が形成された強化繊維複合体が得られる。
エポキシ樹脂水性分散体は、アラミド繊維水分量を0%に換算した繊維質量に対して、固形分として、好ましくは0.1〜20.0%、より好ましくは0.2〜10.0%、さらに好ましくは0.3〜5.0%含浸させるのが良い。含浸量が少ない場合は、アラミド繊維が良好な接着力を示さなくなることがある。一方、含浸量が多すぎる場合は、成形品に加工した際にアラミド繊維が有する強度や弾性率などの特性が損なわれる恐れがある。
本発明の強化繊維複合体は、熱可塑性樹脂と複合化することにより熱可塑性樹脂複合材を形成する。熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、ポリオレフィン系またはポリエステル系の熱可塑性エラストマー樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、アイオノマー樹脂及びこれらのアロイ系樹脂から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これら熱可塑性樹脂の中でも、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリエステル系熱可塑性エラストマーとの接着力向上に効果がある。
上記の熱可塑性樹脂は、本発明の目的を損なわない程度で、ガラス繊維等の補強繊維、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、ワックス類、着色剤または結晶化促進剤等の添加剤を含有していてもよい。
本発明の強化繊維複合体は、繊維束、該繊維束を撚糸した撚り糸、該繊維束を加工した加工糸、該繊維束をカットしたカットファイバー、または布帛などの様々な形態で熱可塑性樹脂と複合化し、熱可塑性樹脂複合材を形成する。形成される熱可塑性樹脂複合材は、ペレット状、シート状、棒状など種々の形態であって良く、成形品として得ることもできる。
なお、本発明の強化繊維複合体をゴム補強用として用いる場合は、本発明の強化繊維複合体に、公知のレゾルシンホルマリンラテックス(RFL)による浸漬処理を施しても良い。例えば、ゴムラテックス100質量部(以下、「部」と略記する。)とレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物2〜20部との混合物を固形分として約5〜25%含有するRFL処理液を、強化繊維複合体に施与し、100〜260℃で熱処理する。
ゴムラテックスとしては、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックス、スチレン−ブタジエン系ゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ゴムラテックス、クロロプレン系ゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス、アクリレート系ゴムラテックスおよび天然ゴムラテックスなどが挙げられる。
レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物としては、レゾルシン−ホルムアルデヒドを酸触媒またはアルカリ触媒下で縮合させて得られたノボラック型縮合物などが挙げられる。
なお、RFL処理液には、ブロックドポリイソシアネート化合物、エチレンイミン化合物、ポリイソシアネートとエチレンイミンとの反応物などから選ばれた1種以上の化合物が混合されていても良い。
本発明の強化繊維複合体は、アラミド繊維束またはアラミド繊維布帛にエポキシ樹脂水性分散体を含浸させてなるものであるため、RFL処理液の付着性がよく、その上、アラミド繊維表面にエポキシ樹脂膜が形成されることでコードの強力低下が生じにくい。RFL処理強化繊維複合体を0.1〜5mmにカットしたフロック状の強化短繊維複合体は、ゴムベルト用あるいはタイヤ用の補強材として用いることができる。
一方、RFL処理を施さずに0.1〜5mmにカットしたフロック状の強化短繊維複合体などは、熱可塑性樹脂用の添加剤などとして用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂複合材は、加圧と同時に加熱および/または冷却の可能な成形装置、例えば、熱プレス装置、射出成形装置、ダブルベルト型プレス成形装置を用いることにより得ることができる。成形時の加熱温度は、使用する樹脂の種類などによって異なるため、強化繊維複合体中のアラミド繊維が軟化しない温度以下で、かつ熱可塑性樹脂の融点以上とすることが好ましい。こうすることで、溶融した樹脂が加圧により強化繊維複合体の繊維の隙間に入り込み、その後全体が冷却されることにより、樹脂と繊維が接着(複合化)した成形品を製造できる。好ましい熱可塑性樹脂と強化繊維複合体の組合せを考慮すれば、加熱温度は150〜350℃である。成形時の圧力は、熱可塑性樹脂複合材の形状や物性等を考慮して適宜決定することが好ましい。加圧が充分でないと、得られる熱可塑性樹脂複合材中にボイドが残留するおそれがある。
また、熱可塑性樹脂複合材を軽量化するために、樹脂部分を発泡体とすることもできる。この場合、発泡剤を添加した樹脂を射出成型装置の金型内に充填し、金型内で加熱発泡させる方法、あるいは、射出成形装置に超臨界流体を注入し、溶融樹脂を冷却しながら圧力調整して発泡させる方法等が挙げられる。なお、発泡体を形成することにより熱可塑性樹脂複合材の剛性が低下するので、用途に応じて発泡剤添加量や超臨界流体注入量を調整することが望ましい。
さらに、強化繊維複合体と熱可塑性樹脂との接着不良を防止すると共に、強化繊維複合体の変形を防止するため、アラミド繊維束や布帛に予め接着性向上のための前処理を施しておいても良い。前処理は、アラミド繊維束や布帛の全体に対して行っても良いし、一部、好ましくは接着面に対してのみ行ってもよい。
かかる前処理としては、アラミド繊維束や布帛を予め加熱する処理、コロナ放電処理、電子照射処理、紫外線照射処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理または低圧プラズマ処理等が好適な処理として挙げられる。前処理は、公知の手段を使用して良く、例えばコロナ放電装置による処理、温風加熱、ヒーターによる加熱等が挙げられる。これらの手段は、単独で用いてもよいし、2以上の手段を組み合せてもよい。このような処理により、アラミド繊維束や布帛の接着面に一定以上の活性化点を生成し、熱可塑性樹脂との強固な接着を形成することが可能になる。
このようにして得られた熱可塑性樹脂複合材は、難燃性、耐火性、耐摩耗性、剛性、強度および表面の耐切創性に優れ、摺動材料などとして好適なものとなるので、成形品としてあるいは用途に応じて所定の形状にカットして用いることができる。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中における各測定値は次の方法にしたがった。
[水性分散体中の粒子径の測定]
走査型電子顕微鏡を用いて、ランダムに選出した微粒子200個の粒子径を測定し、数平均粒子径および、200nm、150nm、100nm以下の粒子の割合を算出した。
[糸接着力]
図1、2に示すように、たて方向に1mm間隔で長さ265mm以上になるように、7本のアラミド強化繊維複合体を引き揃えた後、繊維端部となる部分を決め、端部から繊維引き揃え方向に対し長さ200mm、厚さ4mmのポリカーボネート系樹脂シート、またはポリエステル系樹脂シートを乗せた。加熱プレス成形機にて3.8mmのスペーサーを用い、5MPaの荷重下、ポリカーボネート系樹脂の場合は200℃、ポリエステル系樹脂の場合は170℃にて10分間処理し樹脂を溶融させた後、引き続き、常温、5MPaの条件下で、金型ごと50℃で冷却固化させることにより、3.8mm厚のポリカーボネート樹脂シート上にアラミド強化繊維複合体を貼り付けたシートを得た。
得られたシートから7本のアラミド強化繊維複合体の剥離荷重を求めた。剥離試験は50mm/分の速度で行い、剥離長さが15mm〜100mmの領域における荷重積分値を剥離長(85mm)で割った値を糸接着力(単位:N)とした。
[アラミド繊維(A−1)の製造]
通常の方法で得られたPPTA(分子量約20,000)1kgを4kgの濃硫酸に溶解し、直径0.1mmのホールを1,000個有する口金からせん断速度30,000sec−1となるよう吐出し、4℃の水中に紡糸した後、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液で、10℃×15秒の条件で中和処理し、その後、110℃×15秒間の低温乾燥をして、水分率35質量%のPPTA繊維(水分率0質量%換算のとき繊度1,670dtex)になるように調整した。
[アラミド繊維(A−2)の製造]
通常の方法で得られたPPTA(分子量約20,000)1kgを4kgの濃硫酸に溶解し、直径0.1mmのホールを1,000個有する口金からせん断速度30,000sec−1となるよう吐出し、4℃の水中に紡糸した後、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液で、10℃×15秒の条件で中和処理し、その後、170℃×15秒間の乾燥を行い、アラミド繊維を得た。水分率7質量%のPPTA繊維(水分率0質量%換算のとき繊度1,670dtex)になるように調整した。
[エポキシ樹脂水性分散体(B−1)〜(B−3)]
下記実施例において使用したエポキシ樹脂水性分散体の粒子径を表1に示す。
[熱可塑性樹脂]
下記実施例において使用した熱可塑性樹脂は以下の通りである。
・ポリカーボネート系樹脂:日本ポリエステル(株)製 “エポカーボ”シート EC1(熱変形温度:135℃)
・ポリエステル系樹脂:東レ・デュポン(株)製 “ハイトレル” 4057N(融点:160℃)
[実施例1〜3、比較例1〜5]
製造例で得られたアラミド繊維(A−1)、(A−2)に2.08回/インチの片撚りを加えた。さらに、撚りのかかったアラミド繊維を、エポキシ樹脂の水性分散体(B−1)〜(B−3)(固形分濃度:20.0%)からなるディップ浴に通した後、ロールで絞り、付着量を調整し、120℃×2分間の乾燥工程を経て、エポキシ樹脂の水性分散体を含浸してなる強化繊維複合体を得た。
上記方法で得られた強化繊維複合体と各熱可塑性樹脂との接着力を表2、表3に示す。
表2、表3の結果から、数平均粒子径が300nm以下の粒子径を持つエポキシ樹脂の水性分散体を含浸させた実施例1〜3の強化繊維複合体は、エポキシ樹脂の水性分散体を含浸させていない強化繊維複合体(比較例1、比較例4)や、数平均粒子径が300nmを超える数平均粒子径を持つエポキシ樹脂の水性分散体を含浸させたもの(比較例2、比較例3、比較例5)と比べ、ポリカーボネート系樹脂およびポリエステル系樹脂に対する接着性が良好であることが分かる。
本発明の強化繊維複合体は、熱可塑性樹脂、特にポリカーボネート系樹脂やポリエステル系樹脂複合材の補強材などとして各種産業用資材に有用である。
本発明の熱可塑性樹脂複合材は、ポリカーボネート系樹脂やポリエステル系樹脂の用途分野、例えば、自動車関係、容器、医療器具、日用品、精密機器、保安用品、フィルム・テープなどの材料として、幅広く利用可能である。
1:アラミド繊維強化繊維複合体
2:熱可塑性樹脂プレート(ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂)
3:アラミド繊維強化繊維複合体を固定する冶具
4:スペーサー
5:加熱プレス成形機上型
6:加熱プレス成形機下型

Claims (5)

  1. アラミド繊維束またはアラミド繊維布帛に、数平均粒子径が300nm以下であるエポキシ樹脂の水性分散体を含浸してなる強化繊維複合体。
  2. 前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、請求項1に記載の強化繊維複合体。
  3. 前記布帛が、織物、編物、フェルト、不織布、または紙である、請求項1または2に記載の強化繊維複合体。
  4. アラミド繊維の水分率が、200質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の強化繊維複合体。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載の強化繊維複合体と熱可塑性樹脂とを複合化してなる熱可塑性樹脂複合材。
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