本発明を詳細に説明する。本発明は、少なくとも強化繊維束(A)、ハロゲン系難燃剤(B)、光安定剤(C)から構成される複合強化繊維束である。まず、これらの構成要素について説明する。なお、本発明において、複合強化繊維束とは、強化繊維束(A)に、熱可塑性樹脂との親和性を有する化合物(以下、被含浸化合物ともいう)を含浸させてなるものをいい、熱可塑性樹脂と組み合わせて好適に用いられる。
本発明において、強化繊維束(A)を構成する強化繊維(a)は特に限定されないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維などの高強度、高弾性率繊維が使用でき、これらは1種または2種以上を併用してもよい。中でも、PAN系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が力学特性の向上、成形品の軽量化効果の観点から好ましく、得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。また、導電性を付与する目的では、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した強化繊維を用いることもできる。
さらに炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]が0.05〜0.5であるものが好ましく、より好ましくは0.08〜0.4であり、さらに好ましくは0.1〜0.3である。表面酸素濃度比が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の官能基量を確保でき、熱可塑性樹脂とより強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度比の上限には特に制限はないが、炭素繊維の取扱い性、生産性のバランスから一般的に0.5以下とすることが例示できる。
炭素繊維の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めるものである。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着しているサイジング剤などを除去した炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×108Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。C1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
ここで、表面酸素濃度比とは、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用いる場合には、感度補正値を1.74とする。
表面酸素濃度比[O/C]を0.05〜0.5に制御する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などの手法を挙げることができ、中でも電解酸化処理が好ましい。
また、本発明に用いられる強化繊維束(A)を構成する強化繊維(a)の平均繊維径は特に限定されないが、得られる成形品の力学特性と表面外観の観点から、1〜20μmの範囲内であることが好ましく、3〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
強化繊維束(A)の単繊維数には、特に制限はなく、100〜350,000本の範囲内で使用することができ、とりわけ1,000〜250,000本の範囲内で使用することが好ましい。また、本発明によれば、単繊維数が多い強化繊維束であっても、十分に含浸された複合強化繊維束を得ることができるため、20,000〜100,000本の範囲で使用することが、生産性の観点からも好ましい。
また、本発明に用いられる強化繊維束(A)はサイジング剤(b)が付与されてなることが、集束性、耐屈曲性や耐擦過性を改良し、高次加工工程において、毛羽、糸切れの発生を抑制でき、いわゆる糊剤、集束剤として高次加工性を向上させることもでき、好ましい。特に、炭素繊維の場合、サイジング剤(b)を付与することで、炭素繊維表面の官能基等の表面特性に適合させて接着性およびコンポジット総合特性を向上させることができる。
サイジング剤(b)の付着量は特に限定されないが、強化繊維のみの質量に対して、0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜5重量%がより好ましく、0.1〜2重量%付与することがさらに好ましい。0.01重量%未満では接着性向上効果が現れにくく、10重量%を越える付着量では、マトリックス樹脂の物性を低下させることがある。
さらに、本発明に用いられる強化繊維束(A)にサイジング剤(b)が付与されてなる場合、サイジング剤(b)とハロゲン系難燃剤(B)との重量比(b)/(B)が0.01/1〜0.5/1であることが好ましい。より好ましくは、0.04/1〜0.4/1であり、さらに好ましくは、0.08〜0.3/1である。各成分をかかる範囲内で用いることで、界面接着性、繊維分散性、機械特性、および難燃性をバランス良く向上することができるため好ましい。なお、サイジング剤(b)とハロゲン系難燃剤(B)との重量比(b)/(B)を好ましい範囲にする手法としては特に限定されないが、例えば、ある一定のハロゲン系難燃剤(B)の含浸量に対し、サイジング剤(b)の付着量を調整する手法や、ある一定のサイジング剤(b)の付着量に対し、ハロゲン系難燃剤(B)の含浸量を調整する方法などが工程管理上容易であることから好ましい。サイジング剤(b)とハロゲン系難燃剤(B)との重量比(b)/(B)は、サイジング剤(b)またはハロゲン系難燃剤(B)に起因して発現する接着性や難燃性のバランスを考慮して調整するのが好ましい。
なお、サイジング剤(b)とハロゲン系難燃剤(B)との重量比(b)/(B)は、以下の式により求めることができる。
サイジング剤(b)とハロゲン系難燃剤(B)との重量比(b)/(B)=WSz/WB
ここで、WSzは、強化繊維束(A)中のサイジング剤(b)の付着量を表し、強化繊維束(A)の秤量値w1(g)と、秤量した強化繊維束(A)を窒素雰囲気中450℃で15分間加熱した後の秤量値w2(g)とから、以下の式により求めることができる。
WSz(単位:重量%)={(w1−w2)/w1}×100
また、WBは、ハロゲン系難燃剤(B)量を表し、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の含浸量WBCと、ハロゲン難燃剤(B)および光安定剤(C)の配合比rB:rCとから、以下の式により求めることができる。
WB(単位:重量%)=WBC×{rB/(rB+rC)}
ここで、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の含浸量WBCは、複合強化繊維束の秤量値W1(g)と、秤量した複合強化繊維束を窒素雰囲気中450℃で15分間加熱した後の秤量値W2(g)とから、以下の式により求めることができる。
WBC(単位:重量%)={(W1−W2)/W1}×100
なお、複合強化繊維束中の強化繊維束(A)にサイジング剤(b)が付与されてなる場合、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の含浸量WBCは以下の式により求めることができる。
WBC(単位:重量%)={(W1−W2−wSz)/W1}×100
ここで、wSzは次式で表される複合強化繊維束中のサイジング剤(b)の付着重量(g)である。
wSz(単位:g)=WSzW2/(100−WSz)
また、本発明において用いられるサイジング剤(b)としては特に限定されず、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリエステル、乳化剤あるいは界面活性剤などが挙げられる。中でもマトリックス樹脂との接着性を発揮しやすいエポキシ樹脂が好ましい。これらは1種または2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも機械特性向上の観点から、脂肪族エポキシ樹脂が好ましい。通常、エポキシ樹脂はエポキシ基を多数有すると、架橋反応後の架橋密度が高くなるために、靭性の低い構造になる傾向にあり、強化繊維とマトリックス樹脂間に介在させても、脆いために剥離しやすく、繊維強化による強度向上効果が発現しない場合がある。一方、脂肪族エポキシ樹脂は、柔軟な骨格のため、架橋密度が高くとも靭性の高い構造になりやすい。強化繊維とマトリックス樹脂間に介在させた場合、柔軟で剥離しにくくさせるため、繊維強化による強度向上効果が発現しやすく、好ましい。
脂肪族エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ジグリシジルエーテル化合物では、エチレングリコールジグリシジルエーテル及び、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類、プロピレングリコールジグリシジルエーテル及び、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等が挙げられる。また、ポリグリシジルエーテル化合物では、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、アラビトールポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパングリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
脂肪族エポキシ樹脂の中でも、3官能以上の多官能脂肪族エポキシ樹脂を用いるのが良く、さらには、反応性の高いグリシジル基を3個以上有する脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物を用いるのがより好ましい。この中でも、さらに好ましくは、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル類、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル類が好ましい。脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物は、柔軟性、架橋密度、マトリックス樹脂との相溶性のバランスがよく、効果的に接着性を向上させることから好ましい。
サイジング剤(b)の付与手段としては特に限定されるものではないが、例えばローラーを介してサイジング液に浸漬する方法、サイジング液の付着したローラーに接する方法、サイジング液を霧状にして吹き付ける方法などがある。また、バッチ式、連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましい。この際、強化繊維束(A)に対するサイジング剤(b)の有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング液濃度、温度、糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤(b)付与時に強化繊維束(A)を超音波で加振させることはより好ましい。
乾燥温度と乾燥時間は化合物の付着量によって調整すべきであるが、サイジング剤(b)の付与に用いる溶媒の完全な除去、乾燥に要する時間を短くし、一方、サイジング剤(b)の熱劣化を防止し、サイジング処理された強化繊維束(A)が固くなって束の拡がり性が悪化するのを防止する観点から、乾燥温度は、150℃以上350℃以下であることが好ましく、180℃以上250℃以下であることがより好ましい。
サイジング剤(b)に使用する溶媒は、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン等が挙げられるが、取扱いが容易で防災の観点から水が好ましい。従って、水に不溶、若しくは難溶の化合物をサイジング剤として用いる場合には、乳化剤、界面活性剤を添加し、水分散して用いるのが良い。具体的には、乳化剤、界面活性剤としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体、オレフィン−無水マレイン酸共重合体、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリアクリル酸ソーダ等のアニオン系乳化剤、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾリン等のカチオン系乳化剤、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンエーテルエステル共重合体、ソルビタンエステルエチルオキサイド付加物等のノニオン系乳化剤等を用いることができるが、相互作用の小さいノニオン系乳化剤が多官能化合物の接着性効果を阻害しにくく好ましい。
本発明に用いられるハロゲン系難燃剤(B)としては、公知のものを用いることができる。その代表的なものとして、例えば、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、1,2−ビス(2’,3’,4’,5’,6’−ペンタブロモフェニル)エタン、1,2−ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,6− or(2,4−)ジブロモフェノール、臭素化ポリスチレン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモベンジルアクリレート、2,2−ビス[4’(2’’,3’’−ジブロモプロポキシ)−,3’,5’−ジブロモフェニル]−プロパン、ビス(3,5−ジブロモ,4−ジブロモプロポキシフェニル)スルホン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどのような、臭素含有化合物を含む臭素系難燃剤、または、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、パークロロペンタシクロデカン、ドデカクロロドデカヒドロジメタノジベンゾシクロオクテン、ドデカクロロオクタヒドロジメタノジベンゾフランなどのような、塩素含有化合物を含む塩素系難燃剤が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用しても良い。これらハロゲン系難燃剤(B)は成形品中で分解し、ラジカルトラップ効果により、燃焼場において活性なHラジカルやOHラジカルを安定化することにより、難燃性を発現する。
本発明において、複合強化繊維束中に含浸されたハロゲン系難燃剤(B)の量は、強化繊維束(A)100重量部に対し、10〜100重量部が好ましい。機械特性と難燃性のバランスから、より好ましくは15〜80重量部、さらに好ましくは20〜60重量部である。ハロゲン系難燃剤(B)の配合量が10重量部未満では十分な難燃効果が得られない場合があり、100重量部を越えると機械特性が低下したり、成形品の比重の増加や、成形品表面からハロゲン系難燃剤(B)がブリードアウトする場合があるため好ましくない。
本発明に用いられる光安定剤(C)とは、外部からの光エネルギーをマトリックス樹脂にとって無害な熱エネルギーに変換する紫外線吸収剤や、光酸化によって発生するラジカルをトラップするラジカル捕捉剤などを指す。
紫外線吸収剤はハロゲン系難燃剤(B)の光安定化、すなわちハロゲンラジカルの発生を抑制し、難燃剤の光劣化を抑える効果を有する。またラジカル捕捉剤は、燃焼プロセスにおいて、マトリックス樹脂のポリマー主鎖が切れて生じるラジカルを捕捉することにより、ラジカルと酸素の反応を抑制するため、ハロゲン系難燃剤(B)単独で用いた場合よりも、これら光安定剤(C)を併用することで難燃性をより向上することができる。
本発明において、光安定剤(C)は公知のものを用いることができ、例えばベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、シュウ酸アニリド系などの紫外線吸収剤や、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系のラジカル捕捉剤が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用しても良い。特にヒンダードアミン系のラジカル捕捉剤は紫外線吸収剤と高い相乗効果を示すため、これらを同時に用いるのがより好ましい。
また、ヒンダードアミン系の光安定剤の中でも、アミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤を用いることが特に好ましい。アミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤とは、下記構造式(1)で示される構造を化合物内に有するヒンダードアミン系光安定剤を指し、代表的なものとして例えばBASFジャパン(株)製Tinuvin123、Tinuvin 152、Tinuvin NOR 371 FF、TinuvinXT850 FF、Tinuvin XT855 FF、Flamestab NOR 116 FF、(株)ADEKA製アデカスタブLA−81などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
(式中R1は水素以外の任意の構造、R2はアルキル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基およびシクロアルキルカルボニル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を示す。好ましいR2の炭素数は5〜12である。)
アミノエーテル型ヒンダードアミン光安定剤は、酸素、紫外線などにより酸化され、ニトロオキサイドラジカルを生成し、マトリックス樹脂中に生成したラジカルを捕捉して、アミノエーテル(−NOR)の構造をとり、さらにアルキルラジカルおよび過酸化物ラジカルを捕獲することで耐候性を保持する。
また、樹脂組成物の燃焼のプロセスにおいて、可燃性ガスの発生をもたらす熱分解は活性ラジカルが関与する連鎖反応であることが知られている。ここで、アミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤から燃焼時に上記のようなニトロオキサイドラジカルが発生し、これが活性ラジカルを捕捉・低活性化し、難燃性を発現する。この際の難燃性はハロゲン系難燃剤と併用することによって、相乗的に向上する。かかる機構が発現する原因は必ずしも明らかではないが、アミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤由来のニトロオキサイドラジカルが、ハロゲン系難燃剤のラジカルトラップ効果を促進し、いわゆる難燃助剤と同等の働きをするためと推定している。
一方、NHまたはNR(R:アルキル基)構造をもつ非アミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤は、アミン系化合物であるため酸による攻撃があった際に中和反応を起こし耐候性発現の効果が低下することがある。したがって、本発明のようにハロゲン系難燃剤(B)を併用する場合、本来有する耐候性の向上効果が十分に発揮されない可能性がある。また、構造上、ニトロオキサイドラジカル生成に時間がかかるものがあり、マトリックス樹脂中において過酸化物ラジカルを捕獲できない場合があるため、アミノエーテル型ヒンダードアミン光安定剤を用いるのがより好ましい。
本発明において、複合強化繊維束中に含浸された光安定剤(C)の量は、強化繊維束(A)100重量部に対し、0.2〜10重量部が好ましい。光安定剤(C)が0.2重量部未満では十分な耐候性と難燃性を得られない場合があり、10重量部を越えると光安定剤自身が分解ガスの発生源となり、難燃性を低下する場合があるため好ましくない。
本発明における複合強化繊維束の製造方法では、ハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を100〜320℃の溶融状態で強化繊維束(A)と接触させる工程を有する。好ましくは100〜250℃、より好ましくは100〜200℃である。この時、供給するハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)の融点や、後述する溶融粘度を考慮して、前記温度の範囲から適当な温度に調整するのが好ましい。ここで、100℃未満では、ハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)の粘度が高くなり、供給する際に、付着むらが発生することがある。また、320℃を越えると、長時間にわたり製造した場合に、ハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)が熱分解する可能性がある。100〜320℃の溶融状態で強化繊維束(A)と接触させることで、ハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を安定して供給、含浸させることができる。
ハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を強化繊維束(A)と接触させる際の温度を制御する手法については、ハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を強化繊維束(A)と接触させる方法に合わせて適当な手法を選択すれば良いが、例えば、ハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を溶融する溶融バスの温度や、コーティングロールの表面温度を調節する手法が挙げられる。
また、本発明において、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)を溶融状態で強化繊維束(A)と接触させる工程において、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の溶融粘度が0.01〜10Pa・sであるのが好ましい。より好ましくは0.05〜5Pa・sであり、さらに好ましくは0.1〜2Pa・sである。かかる範囲において、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)を安定的に供給することができる。さらに強化繊維束(A)と接触させる際、強化繊維束(A)内にハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)が適度に浸透することによって、後に続く、さらに加熱してハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の供給量の80〜100重量%を強化繊維束(A)に含浸させる工程において、均一かつ、好ましい範囲の量を含浸させることが容易になるため好ましい。
本発明において、溶融粘度を制御する手法としては、前記100〜320℃の温度範囲から、好ましい範囲の溶融粘度になるよう、温度を調整する方法が挙げられる。その他の手法としては、本発明の効果を損なわない範囲で、溶融粘度調整剤を添加する方法が挙げられる。本発明における溶融粘度調整剤は特に限定されず、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリエステル、可塑剤などが例示できる。中でもマトリックス樹脂との接着性をも発現し得るエポキシ樹脂がより好ましい。
なお、本発明における溶融粘度は、粘弾性測定器を用い、40mmのパラレルプレートを使用して、0.5Hzの条件下で測定を行い求めることができる。
また、ハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を供給して強化繊維束(A)と接触させる方法について特に限定はないが、繊維束に油剤、サイジング剤、マトリックス樹脂を付与するような公知の製造方法を用いることができる。中でも、ディッピング、もしくは、コーティングが好ましく、具体的なコーティングとしては、リバースロール、正回転ロール、キスロール、スプレイ、カーテンが好ましく用いられる。これらの方法を2種以上組み合わせてもよい。
ここで、ディッピングとは、ポンプにてハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を溶融バスに供給し、該溶融バス内で強化繊維束(A)を通過させる方法をいう。強化繊維束(A)をハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)の溶融バスに浸すことで、確実にハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を強化繊維束(A)に付着させることができる。また、リバースロール、正回転ロール、キスロールとは、ポンプで溶融させたハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)をロールに供給し、強化繊維束(A)にハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)の溶融物を塗布する方法をいう。さらに、リバースロールは、2本のロールが互いに逆方向に回転し、ロール上に溶融したハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を塗布する方法であり、正回転ロールは、2本のロールが同じ方向に回転し、ロール上に溶融したハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を塗布する方法である。通常、リバースロール、正回転ロールでは、強化繊維束(A)を挟み、さらにロールを設置し、ハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を確実に付着させる方法が用いられる。一方で、キスロールは、強化繊維束(A)とロールが接触しているだけで、ハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を付着させる方法である。そのため、キスロールは比較的粘度の低い場合の使用が好ましいが、いずれのロール方法を用いても、加熱溶融したハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)の所定量を塗布させ、強化繊維束(A)を接着させながら走らせることで、繊維束の単位長さ当たりに所定量のハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を付着させることができる。スプレイは、霧吹きの原理を利用したもので、溶融したハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を霧状にして強化繊維束(A)に吹き付ける方法であり、カーテンは、溶融したハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を小孔から自然落下させ塗布する方法、または溶融槽からオーバーフローさせ塗布する方法である。塗布に必要な量を調節しやすいため、ハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)の損失を少なくできる。
本発明における複合強化繊維束の製造方法では、前記のハロゲン系難燃剤(B)と光安定剤(C)を溶融状態で強化繊維束(A)と接触させる工程に続いて、さらに加熱してハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の供給量の80〜100重量%を強化繊維束(A)に含浸させる工程を有する。
具体的には、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)と接触した状態の強化繊維束(A)に対して、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)が溶融する温度において、ロールやバーで張力をかける、拡幅、集束を繰り返す、圧力や振動を加えるなどの操作でハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)を強化繊維束(A)の内部まで含浸するようにする工程である。
より具体的な例として、加熱された複数のロールやバーの表面に繊維束を接触するように通して拡幅などを行う方法を挙げることができ、中でも、絞り口金、絞りロール、ロールプレス、ダブルベルトプレスを用いて含浸させる方法が好適に用いられる。
ここで、絞り口金とは、進行方向に向かって、口金径の狭まる口金のことであり、強化繊維束を集束させながら、余分に付着したハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)を掻き取ると同時に、含浸を促す口金である。また、絞りロールとは、ローラーで強化繊維束に張力をかけることで、余分に付着したハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)を掻き取ると同時に、含浸を促すローラーのことである。また、ロールプレスは、2つのロール間の圧力で連続的に強化繊維束内部の空気を除去するのと同時に、含浸を促す装置であり、ダブルベルトプレスとは、強化繊維束の上下からベルトを介してプレスすることで、含浸を促す装置である。
また、本工程において、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の供給量の80〜100重量%が強化繊維束(A)に含浸されていることが必要である。収率に直接影響するため、経済性、生産性の観点から高いほど好ましい。より好ましくは、85〜100重量%であり、さらに好ましくは90〜100重量%である。80重量%未満では、経済性の観点からだけでなく、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)が本工程において、揮発成分を発生させている可能性があり、強化繊維束(A)内部にボイドが残存する可能性がある。ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の供給量の80〜100重量%を含浸させる方法としては特に限定されないが、例えば、加熱温度を高くして、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の溶融粘度を下げる方法、予め強化繊維束(A)を開繊する方法、前記例示した含浸方法を2種以上組み合わせる方法などが挙げられる。
ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の供給量に対する含浸量は次式によって求めることができる。
ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の供給量に対する含浸量(単位:重量%)=wBC/wsp
ここで、wBCはハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の含浸重量(g)であり、複合強化繊維束の秤量値W1(g)と、秤量した複合強化繊維束を窒素雰囲気中450℃で15分間加熱した後の秤量値W2(g)とから、以下の式により求めることができる。
wBC=W1−W2
また、wspは上記複合強化繊維束を作製する際に供給したハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の重量(g)である。
ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)を強化繊維束(A)に含浸させる工程において、加熱方法としては特に限定されないが、具体的には、加熱したチャンバーを用いる方法や、ホットローラーを用いて加熱と加圧を同時に行う方法が例示できる。
また、ハロゲン系難燃剤(B)や光安定剤(C)の分解反応など、好ましくない副反応の発生を抑制する観点から、非酸化性雰囲気下で加熱することが好ましい。ここで、非酸化性雰囲気とは酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、さらに好ましくは酸素を含有しない雰囲気、すなわち、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性および取り扱いの容易さの面から、窒素雰囲気が好ましい。
本発明において、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)を強化繊維束(A)と接触させる際の引取速度および含浸させる際の引取速度は、いずれも工程速度に直接影響するため、経済性、生産性の観点から高いほど好ましい。具体的には、引取速度としては、10〜100m/分が好ましい。より好ましくは、20〜100m/分であり、さらに好ましくは30〜100m/分である。引取方法としては、ニップローラーで引き出す方法や、ドラムワインダーで巻き取る方法や、直接ストランドカッターなどで、一定長に切断しながら複合強化繊維束を引き取る方法が挙げられる。
また、前記ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)を強化繊維束(A)と接触させる工程の前段階で、強化繊維束(A)を予め開繊してもよい。開繊とは収束された強化繊維束(A)を分繊させる操作であり、溶融したハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の含浸性をさらに高める効果が期待できる。開繊により、強化繊維束(A)の厚みは薄くなり、開繊前の強化繊維束(A)の幅をw1(mm)、厚みをt1(μm)、開繊後の強化繊維束(A)の幅をw2(mm)、厚みをt2(μm)とした場合、開繊比=(w2/t2)/(w1/t1)を2.0以上とするのが好ましく、2.5以上とするのがさらに好ましい。
前記強化繊維束(A)の開繊方法としては、特に制限はなく、例えば凹凸ロールを交互に通過させる方法、太鼓型ロールを使用する方法、軸方向振動に張力変動を加える方法、垂直に往復運動する2個の摩擦体による強化繊維束(A)の張力を変動させる方法、強化繊維束(A)にエアを吹き付ける方法を利用できる。
図1は、本発明で得られる複合強化繊維束の横断面形態の一例を示す概略図である。なお、本発明において、横断面とは、軸心方向に直交する面での断面を意味する。前記製造方法により得られる複合強化繊維束は、強化繊維束(A)にハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)を塗布、含浸せしめた複合体として形成されている(以下、複合強化繊維束を複合体とも称す)。この複合体の形態は図1に示すようなものであり、強化繊維束(A)の各単繊維間にハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)が満たされている。すなわち、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)の海に、強化繊維束(A)の各単繊維が島のように分散している状態である。
上記複合体において、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)が強化繊維束(A)に良好に含浸した複合体とすることで、例えば、熱可塑性樹脂組成物(D)と共に射出成形すると、射出成形機のシリンダー内で溶融混練された、ハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)が、熱可塑性樹脂組成物(D)に拡散し、強化繊維束(A)が熱可塑性樹脂組成物(D)に分散することを助け、同時に熱可塑性樹脂組成物(D)が強化繊維束(A)に置換、含浸することを助ける、いわゆる含浸助剤・分散助剤としての役割を持つ。
本発明における成形材料は、前記複合体および熱可塑性樹脂組成物(D)から構成される。ここで、本発明において成形材料とは、成形品を射出成形などで成形する際に用いる原材料を意味する。
本発明において、熱可塑性樹脂組成物(D)とは熱可塑性樹脂に、その他の種々の添加剤や充填剤が配合されてなるものを指す。ここで用いられる熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE樹脂)、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)、液晶ポリエステル、ポリアリーレート、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)などのアクリル樹脂、塩化ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、さらにはエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体、エチレン/一酸化炭素/ジエン共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルエーテルエラストマー、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリエステルアミドエラストマー、ポリエステルエステルエラストマーなどの各種エラストマー類などが挙げられ、これらの1種または2種以上を併用しても良い。特に汎用性の高い、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂が好ましい。
また、熱可塑性樹脂組成物(D)に配合されてなる種々の添加剤や充填剤は、本発明の目的を損なわない範囲で任意のものを選択できる。添加剤や充填剤の例として、例えば、無機充填材、導電性付与剤、結晶核剤、難燃助剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、あるいは、カップリング剤が挙げられ、これらの1種または2種以上を併用しても良い。特に、難燃性の更なる向上の観点から難燃助剤が配合されてなるのが好ましく、ハロゲン系難燃剤と高い相乗効果を示すことから、酸化アンチモン化合物がより好ましく、三酸化アンチモンがさらに好ましい。
また、本発明における複合体および熱可塑性樹脂組成物(D)から構成される成形材料の形態は特に限定されず、例えば、複合体を切断してチョップドストランドとしたものと熱可塑性樹脂組成物(D)とをドライブレンドしたもののように、複合体と熱可塑性樹脂組成物(D)を分離して扱うものや、複合体に熱可塑性樹脂組成物(D)が接着されて一体化されたものが挙げられるが、成形時の流動性、および成形品の機械特性の均一性や、成形工程におけるブロッキング懸念の観点から、複合体に熱可塑性樹脂組成物(D)が接着されて一体化されたものがより好ましい。具体的には、押出機と電線被覆法用のコーティングダイを用いて、連続的に複合体の周囲に熱可塑性樹脂組成物(D)を被覆するように配置したものや、ロール等で扁平化した複合体の片面あるいは両面から押出機とTダイを用いて溶融したフィルム状の熱可塑性樹脂組成物(D)を配置し、ロール等で一体化させたものを挙げることができる。
図2は、本発明の成形材料の好ましい縦断面形態の一例を示す概略図である。なお、本発明において、縦断面とは、軸心方向を含む面での断面を意味する。本発明の成形材料の一例は、図2に示すように、強化繊維束(A)が成形材料の軸心方向にほぼ平行に配列され、かつ強化繊維束(A)の長さは成形材料の長さと実質的に同じ長さである。
ここで言う、「ほぼ平行に配列され」とは、強化繊維束(A)の長軸の軸線と、成形材料の長軸の軸線とが、同方向を指向している状態を示し、軸線同士の角度のずれが、好ましくは20°以下であり、より好ましくは10°以下であり、さらに好ましくは5°以下である。また、「実質的に同じ長さ」とは、例えばペレット状の成形材料において、ペレット内部の途中で強化繊維束(A)が切断されていたり、ペレット全長よりも有意に短い強化繊維束(A)が実質的に含まれたりしないことである。特に、そのペレット全長よりも短い強化繊維束(A)の量について規定されているわけではないが、ペレット全長の50%以下の長さの強化繊維束(A)の含有量が30重量%以下である場合には、ペレット全長よりも有意に短い強化繊維束(A)が実質的に含まれていないと評価する。さらに、ペレット全長の50%以下の長さの強化繊維束(A)の含有量は20質量%以下であることが好ましい。なお、ペレット全長とはペレット中の強化繊維束(A)配向方向の長さである。強化繊維束(A)が成形材料と同等の長さを持つことで、成形品中の強化繊維長を長くすることが出来るため、優れた力学特性を得ることができる。
図3〜6はそれぞれ、本発明の成形材料の縦断面形態の一例を模式的に表したものであり、図7〜11はそれぞれ、本発明の成形材料の横断面形態の一例を模式的に表したものである。
成形材料の断面形態は、強化繊維束(A)とハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)からなる複合体に、熱可塑性樹脂組成物(D)が接着するように配置されていれば図に示されたものに限定されないが、好ましくは図3〜5に示されるように、複合体が芯材となり熱可塑性樹脂組成物(D)で層状に挟まれて配置されている構成が好ましい。
また図7〜9に示されるように、複合体を芯構造として、その周囲を熱可塑性樹脂組成物(D)が被覆するような芯鞘構造に配置されている構成が好ましい。また、図11に示されるような複数の複合体を成熱可塑性樹脂組成物(D)が被覆するように配置する場合、複合体の数は2〜6程度が望ましい。
複合体と熱可塑性樹脂組成物(D)の境界は接着され、境界付近で部分的に熱可塑性樹脂組成物(D)が複合体の一部に入り込み、複合体を構成するハロゲン系難燃剤(B)および光安定剤(C)と相溶しているような状態、あるいは強化繊維に含浸しているような状態になっていてもよい。
本発明の成形材料は、例えば射出成形やプレス成形などの手法により混練されて最終的な成形品となる。成形材料の取扱性の点から、複合体と熱可塑性樹脂組成物(D)は成形が行われるまでは接着されたまま分離せず、前述したような形状を保っていることがより好ましい。複合体と熱可塑性樹脂組成物(D)では、形状(サイズ、アスペクト比)、比重、質量が全く異なるため、成形までの材料の運搬、取り扱い時、成形工程での材料移送時に分級し、成形品の力学特性にバラツキを生じたり、流動性が低下して金型詰まりを起こしたり、成形工程でブロッキングする場合がある。
かかる観点から、前記したような、図7〜9に例示されるような芯鞘構造に配置されている構成が好ましい。このような配置であれば、熱可塑性樹脂組成物(D)が複合体を拘束し、より強固な複合化ができる。また、図7〜9に例示されるような芯鞘構造にするか、図10に例示されるような層状配置とするか、いずれが有利であるかについては、製造の容易さと、材料の取り扱いの容易さから、芯鞘構造とすることがより好ましい。
本発明の成形材料は、その軸心方向には、ほぼ同一の断面形状を保っていれば、連続であってもよいし、成形方法によっては連続のものをある長さに切断されてなっていてもよい。好ましくは1〜50mmの範囲の長さに切断されてなっているのが良い。この長さに調製することにより、成形時の流動性、取扱性を十分に高めることができる。このように適切な長さに切断されてなる成形材料としてとりわけ好ましい態様は、射出成形用の長繊維ペレットが例示できる。
また、本発明の成形材料は、連続、長尺のままでも成形法によっては使用可能である。例えば、熱可塑性ヤーンプリプレグとして、加熱しながらマンドレルに巻き付け、ロール状成形品を得たりすることができる。このような成形品の例としては、液化天然ガスタンクなどが挙げられる。また本発明の成形材料を、連続のまま、複数本一方向に引き揃えて加熱・融着させることにより一方向熱可塑性プリプレグを作製することも可能である。このようなプリプレグは、軽量性、高強度、弾性率、耐衝撃性が要求されるような分野、例えば自動車部材などに適用が可能である。
また、上記成形材料に占める熱可塑性樹脂組成物(D)の割合は、複合体100重量部に対し、10〜1000重量部、好ましくは50〜700重量部、より好ましくは100〜400重量部であり、この範囲内で用いることで、力学特性に優れる成形品を得ることができる。
本発明で得られる成形材料の成形方法としては、特に限定しないが、射出成形、オートクレーブ成形、プレス成形、フィラメントワインディング成形、スタンピング成形などの生産性に優れた成形方法に適用でき、これらを組み合わせて用いることもできる。また、インサート成形、アウトサート成形などの一体化成形も容易に実施できる。さらに、成形後にも加熱による矯正処置や、熱溶着、振動溶着、超音波溶着などの生産性に優れた接着工法を活用することもできる。
上記成形方法により得られる成形品としては、インストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、ランプハウジング、ペダルハウジング、ラジエータサポート、スペアタイヤカバー、フロントエンドなどの各種モジュール、シリンダーヘッドカバー、ベアリングリテーナ、インテークマニホールド、ペダル等の自動車部品、部材および外板、ランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、フェイリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板、モンキー、レンチ等の工具類、さらに電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、トイレタリー用品、レーザーディスク(登録商標)、冷蔵庫、エアコンなどの家庭・事務電気製品部品も挙げられる。またパーソナルコンピューター、携帯電話などに使用されるような筐体や、パーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持する部材であるキーボード支持体に代表されるような電気・電子機器用部材も挙げられる。本発明において、強化繊維束(A)として、導電性を有する炭素繊維束を使用した場合、このような電気・電子機器用部材では、電磁波シールド性が付与されるためにより好ましい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定するものではない。
(1)被含浸化合物の溶融粘度測定
粘弾性測定器(アントンパールジャパン製)を用い、40mmのパラレルプレートを使用して、0.5Hzの条件下で、温度範囲100〜250℃における被含浸化合物の溶融粘度を測定した。
(2)被含浸化合物の供給量に対する含浸量測定
複合体を連続的に作製している中から1分間採取し、耐熱ガラス製の容器に投入した。次に、この容器を3時間真空乾燥し、吸湿しないように注意しながら室温まで冷却後、秤量した値をW1(g)とした。次いで、容器ごと窒素雰囲気中450℃で15分間加熱後、吸湿しないように注意しながら室温まで冷却し、秤量した値をW2(g)とした。以上の処理を経て、被含浸化合物の含浸重量を次式により求め、その平均値を含浸重量wBCとした(測定n数=5)。
wBC=W1−W2
なお、強化繊維にサイジング剤が付与されてなる場合、wBCは次式によって算出した。
wBC=W1−W2−wSz
ここで、wSzはサイジング剤の付着重量(g)であり、後述の参考例2によって求められるWSzの値を用いて、次式によって求めた。
wSz=WSzW2/(100−WSz)
次いで供給した被含浸化合物を、複合体と同様に1分間採取し、重量を測定して、被含浸化合物の供給重量wspを求め、次式より被含浸化合物の供給量に対する含浸量を算出した。
被含浸化合物の供給量に対する含浸量=wBC/wsp(単位:重量%)
(3)サイジング剤(b)とハロゲン系難燃剤(B)の重量比(b)/(B)の算出
ハロゲン難燃剤(B)および光安定剤(C)の配合比をrB:rCとし、ハロゲン系難燃剤(B)の含浸量WBを次式より算出した。
WB=WBC×{rB/(rB+rC)}(単位:重量%)
ここで、WBCはハロゲン難燃剤(B)および光安定剤(C)の含浸量であり、上記(2)におけるW1、W2の値を用いて、次式によって求めた。
WBC={(W1−W2)/W2}×100
なお、複合体中の強化繊維束(A)にサイジング剤が付与されてなる場合、上記(2)にけるwSzの値を用いて、WBCは以下の式により求めた。
WBC={(W1−W2−wSz)/W2}×100
算出したWBと後述の参考例2によって求められるWSzの値を用いて、次式によって(b)/(B)を算出した。
(b)/(B)=WSz/WB
(4)曲げ試験
ISO 178に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子半径5mm)を用いて支点距離を64mmに設定し、試験速度2mm/minの試験条件にて曲げ強度を測定した。試験機として、“インストロン(登録商標)”万能試験機5566型(インストロン社製)を用いた。
(5)難燃性
FMVSS No.302延焼試験に準拠し、寸法100mm×150mm×3mmtの角板を用いて、高さ38mmのガスバーナー炎を角板の端部に着火するまで接炎し、端部から標線に至るまでの間の自己消火性を測定した。
以下の基準に基づき判定を行い、◎、○、△を合格とした。
◎:接炎着火後、30秒以内に自己消火。
○:接炎着火後、30秒〜3分以内に自己消火。
△:接炎着火後、3〜7分以内に自己消火。
×:自己消火せず、または着火後7分以内に標線まで延焼。
(6)耐候性
紫外線ロングライフフェードメーター(スガ試験機械(株)製)を用いて、83℃、水スプレーサイクルなしの条件下、寸法100mm×100mm×3mmtの角板に光照射した。 光照射時間が500時間を経過した際の試験片表面をデジタルマイクロスコープ(キーエンス(株)製 型式:VHX−900)で観察し、表面の状態で耐候性を測定した。
以下の基準に基づき判定を行い、◎、○、△を合格とした。
◎:クラック、表面荒れなし。
○:計数可能な量のクラックが発生しているものの、表面の触感に平滑性が保たれている。
△:試験片表面全面に渡って微小なクラックが生じており、表面の触感にざらつきがある炭素繊維は露出していない。
×:試験片表面全体に無数のクラックが生じ、表面の炭素繊維が露出している。
(参考例1−1)炭素繊維−1の作製
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、電解酸化処理を行い、総単糸数24,000本、単繊維径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cm3、表面酸素濃度[O/C]0.06の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維のストランド引張強度は4880MPa、ストランド引張弾性率は225GPaであった。
(参考例1−2)炭素繊維−2の作製
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、電解酸化処理を行い、総単糸数24,000本、単繊維径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cm3、表面酸素濃度[O/C]0.12の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維のストランド引張強度は4880MPa、ストランド引張弾性率は225GPaであった。
(参考例2)サイジング剤の付与
サイジング剤を水に溶解、または分散させたサイジング剤母液を調製し、ローラーを介して、サイジング剤母液に浸漬する方法により強化繊維にサイジング剤を付与し、230℃で乾燥を行った。
サイジング剤の付着量WSzは、以下の方法により測定した。サイジング剤を付与した強化繊維約5gを採取し、耐熱ガラス製の容器に投入した。次に、この容器を3時間真空乾燥し、吸湿しないように注意しながら室温まで冷却後、秤量した値をw1(g)とした。次いで、容器ごと、窒素雰囲気中、450℃で15分間加熱後、吸湿しないように注意しながら室温まで冷却し、秤量した値をw2(g)とした。以上の処理を経て、サイジング剤の付着量を次式により求め、その平均値を付着量WSzとした(測定n数=5)。
WSz={(w1−w2)/w2}×100(単位:重量%)。
(参考例3)複合体の作製
被含浸化合物を強化繊維束と接触させる温度(以後、塗布温度とも称する)に加熱されたロール上に、被含浸化合物を加熱溶融した液体の被膜を形成させた。ロール上に一定した厚みの被膜を形成するためリバースロールを用いた。このロール上を連続した強化繊維束(A)を接触させながら通過させて被含浸化合物を付着させた。次に、含浸温度に加熱されたチャンバー内にて、5組の直径50mmのロールプレス間を通過させた。この操作により、被含浸化合物を繊維束の内部まで含浸させ、所定の配合量とした複合体を形成した。
(参考例4)熱可塑性樹脂組成物(D)−1の作製
JSW製TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、ダイス直径5mm、バレル温度220℃、スクリュー回転数150rpm)を使用し、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製プライムポリプロJ105G樹脂)(D−1)、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製アドマーQE840)(D−2)、三酸化アンチモン(昭和化学(株)製)(D−3)を重量比D−1/D−2/D−3=100/20/3でドライブレンドしたものをメインホッパーから供給し、下流の真空ベントより脱気を行いながら、溶融樹脂をダイス口から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断して熱可塑性樹脂組成物(D)−1の溶融混練ペレットを得た。
(参考例5)成形材料の作製
参考例3で得られた複合体を、日本製鋼所(株)TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、押出機からダイ内に参考例4で得られた熱可塑性樹脂組成物(D)−1を溶融した状態で吐出させて、複合体の周囲を被覆するように連続的に配置した。この際、所望の強化繊維含有率になるよう、複合体量と、熱可塑性樹脂組成物(D)−1量を調整した。得られた連続状の成形材料を冷却後、カッターで切断して7mmの長繊維ペレット状の成形材料とした。
(実施例1)
強化繊維束(A)として参考例1−1に従い得られる炭素繊維−1を用い、被含浸化合物として、ハロゲン系難燃剤(B)には臭素系難燃剤(丸菱油化工業(株)製ノンネンPR−2)((B)−1)、光安定剤(C)にはアミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン(株)製Tinuvin123)((C)−1)を用いた。参考例3に従い、塗布温度120℃、含浸温度180℃、引取速度30m/分にて、強化繊維束(A)100重量部に対して、臭素系難燃剤(B)−1が25重量部、アミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤(C)−1が1重量部含浸されるよう、供給量を調整して複合体を得た。ここで、上記(1)に従い測定した被含浸化合物の溶融粘度は120℃において、0.07Pa・sであった。次いで上記(2)に従い、臭素系難燃剤(B)−1、アミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤(C)−1の供給量に対する含浸量を測定した。
続いて参考例4に従い、作製したポリプロピレン樹脂組成物(D)−1を得、これを用いて参考例5に従い、長繊維ペレット状の成形材料を得た。この際、複合体100重量部に対し、ポリプロピレン樹脂組成物(D)−1は240重量部となるようにポリプロピレン樹脂組成物(D)−1の吐出量を調整した。
次に得られた長繊維ペレット状の成形材料を、住友重機械工業社製SE75DUZ−C250型射出成形機を用いて、射出時間:10秒、保圧力:成形下限圧+10MPa、保圧時間:10秒、シリンダー温度:230℃、金型温度:60℃で特性評価用試験片(成形品)を成形した。得られた試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片(成形品)を上記(4)〜(6)に示した射出成形品評価方法に従い評価した。評価結果をまとめて表1に示した。
(実施例2)
強化繊維束(A)として参考例1−1に従い得られる炭素繊維−1を用い、被含浸化合物として、ハロゲン系難燃剤(B)には臭素系難燃剤(丸菱油化工業(株)製ノンネンPR−2)((B)−1)、光安定剤(C)にはアミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン(株)製Tinuvin123)((C)−1)を用いた。参考例3に従い、塗布温度120℃、含浸温度180℃にて、強化繊維束(A)100重量部に対して、臭素系難燃剤(B)−1が25重量部、アミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤(C)−1が1重量部含浸されるよう、供給量を調整して複合体を得た。ここで、上記(1)に従い測定した被含浸化合物の溶融粘度は120℃において、0.07Pa・sであった。次いで上記(2)に従い、臭素系難燃剤(B)−1、アミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤(C)−1の供給量に対する含浸量を測定した。
続いて得られた複合体をカッターで切断して6mmの炭素繊維チョップドストランドとした。次いで参考例4に従い、作製したポリプロピレン樹脂組成物(D)−1と前記炭素繊維チョップドストランドとを、炭素繊維チョップドストランド100重量部に対してポリプロピレン樹脂組成物(D)−1を240重量部混合、ドライブレンドした成形材料を得た。
次いで得られたドライブレンドした成形材料を、住友重機械工業社製SE75DUZ−C250型射出成形機を用いて、射出時間:10秒、保圧力:成形下限圧+10MPa、保圧時間:10秒、シリンダー温度:230℃、金型温度:60℃で特性評価用試験片(成形品)を成形した。得られた試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片(成形品)を上記(4)〜(6)に示した射出成形品評価方法に従い評価した。評価結果をまとめて表1に示した。
(実施例3)
複合体において、強化繊維束(A)に含浸する臭素系難燃剤(丸菱油化工業(株)製ノンネンPR−2)((B)−1)の含浸量が、強化繊維束(A)100重量部に対して80重量部となるようにし、長繊維ペレット状の成形材料において、複合体100重量部に対してポリプロピレン樹脂組成物(D)−1が170重量部被覆されてなるようにした以外は実施例1と同様にして成形評価を行った。評価結果をまとめて表1に示した。
(実施例4)
複合体において、強化繊維束(A)に含浸する臭素系難燃剤(丸菱油化工業(株)製ノンネンPR−2)((B)−1)の含浸量が、強化繊維束(A)100重量部に対して10重量部となるようにし、長繊維ペレット状の成形材料において、複合体100重量部に対してポリプロピレン樹脂組成物(D)−1が300重量部被覆されてなるようにした以外は実施例1と同様にして成形評価を行った。評価結果をまとめて表1に示した。
(実施例5)
複合体において、強化繊維束(A)に含浸するアミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤(C)−1の含浸量が、強化繊維束(A)100重量部に対して10重量部となるようにし、長繊維ペレット状の成形材料において、複合体100重量部に対してポリプロピレン樹脂組成物(D)−1が250重量部被覆されてなるようにした以外は実施例1と同様にして成形評価を行った。評価結果をまとめて表1に示した。
(実施例6)
複合体作製時、強化繊維束(A)に含浸する被含浸化合物として、ハロゲン系難燃剤(B)に塩素系難燃剤(味の素ファインテクノ(株)製エンパラ70)((B)−2)を用い、塗布温度150℃、含浸温度200℃とし、強化繊維束(A)100重量部に対して50重量部含浸されるようにした。ここで、上記(1)に従い測定した被含浸化合物の溶融粘度は150℃において、0.05Pa・sであった。また、長繊維ペレット状の成形材料において、複合体100重量部に対してポリプロピレン樹脂組成物(D)−1が200重量部被覆されてなるようにした以外は実施例1と同様にして成形評価を行った。評価結果をまとめて表1に示した。
(実施例7)
複合体作製時、強化繊維束(A)に含浸する被含浸化合物として、光安定剤(C)に非アミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン(株)製Chimassorb2020 FDL)((C)−2)を用いた以外は実施例1と同様にして成形評価を行った。評価結果をまとめて表1に示した。
(実施例8)
複合体作製時、強化繊維束(A)に含浸する被含浸化合物として、光安定剤(C)にベンゾエート系光安定剤(BASFジャパン(株)製Tinuvin120)((C)−3)を用いた以外は実施例1と同様にして成形評価を行った。評価結果をまとめて表1に示した。
(実施例9)
強化繊維束(A)として用いる炭素繊維に、上記(3)、及び参考例2に従い、サイジング剤(b)としてポリグリセロールポリグリシジルエーテル((b)−1)をハロゲン系難燃剤(B)との重量比(b)/(B)=0.08/1となるように付与し、複合体作製時の引取速度を50m/分とした以外は実施例1と同様にして成形評価を行った。評価結果をまとめて表2に示した。
(実施例10)
強化繊維束(A)として用いる炭素繊維に、上記(3)、及び参考例2に従い、サイジング剤(b)としてポリグリセロールポリグリシジルエーテル((b)−1)をハロゲン系難燃剤(B)との重量比(b)/(B)=0.4/1となるように付与し、複合体作製時の引取速度を80m/分とした以外は実施例1と同様にして成形評価を行った。評価結果をまとめて表2に示した。
(実施例11)
複合体作製時、強化繊維束(A)に含浸する被含浸化合物を参考例3に従い、塗布温度100℃、含浸温度180℃、引取速度35m/分にて複合体を作製した以外は実施例1と同様にして成形評価を行った。なお、上記(1)に従い測定した被含浸化合物の溶融粘度は100℃において、0.14Pa・sであった。評価結果をまとめて表2に示した。
(実施例12)
複合体作製時、強化繊維束(A)に含浸する被含浸化合物として、ハロゲン系難燃剤(B)に臭素系難燃剤(丸菱油化工業(株)製ノンネンPR−2)((B)−1)とビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER1003)を重量比3:1で混合したもの((B)−3)、光安定剤(C)にアミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン(株)製Tinuvin123)((C)−1)を用い、塗布温度120℃、含浸温度180℃、引取速度35m/分にて、強化繊維束(A)100重量部に対して35重量部含浸されるようにした以外は実施例1と同様にして成形評価を行った。なお、上記(1)に従い測定した被含浸化合物の溶融粘度は120℃において、0.12Pa・sであった。評価結果をまとめて表2に示した。
(実施例13)
複合体作製時、強化繊維束(A)に含浸する被含浸化合物を参考例3に従い、塗布温度100℃、含浸温度180℃、引取速度40m/分にて複合体を作製した以外は実施例12と同様にして成形評価を行った。なお、上記(1)に従い測定した被含浸化合物の溶融粘度は100℃において、1.2Pa・sであった。評価結果をまとめて表2に示した。
(実施例14)
強化繊維束(A)として参考例1−2に従い得られる炭素繊維−2を用いた以外は実施例1と同様にして成形評価を行った。評価結果をまとめて表2に示した。
(実施例15)
強化繊維束(A)として参考例1−2に従い得られる炭素繊維−2を用いた以外は実施例9と同様にして成形評価を行った。評価結果をまとめて表2に示した。
(比較例1)
複合体作製時、強化繊維束(A)に含浸する被含浸化合物として、光安定剤(C)を用いなかった以外は実施例1と同様にして成形評価を行った。評価結果をまとめて表3に示した。
(比較例2)
複合体において、強化繊維束(A)に含浸する臭素系難燃剤(丸菱油化工業(株)製ノンネンPR−2)((B)−1)の含浸量が、強化繊維束(A)100重量部に対して120重量部となるようにし、長繊維ペレット状の成形材料において、複合体100重量部に対してポリプロピレン樹脂組成物(D)−1が100重量部被覆されてなるようにした以外は実施例1と同様にして成形評価を行った。評価結果をまとめて表3に示した。
(比較例3)
複合体において、強化繊維束(A)に含浸するアミノエーテル型ヒンダードアミン系光安定剤(C)−1の含浸量が、強化繊維束(A)100重量部に対して15重量部となるようにし、長繊維ペレット状の成形材料において、複合体100重量部に対してポリプロピレン樹脂組成物(D)−1が210重量部被覆されてなるようにした以外は実施例1と同様にして成形評価を行った。評価結果をまとめて表3に示した。
以上のように、実施例1〜15においては、本発明における複合強化繊維束、および成形材料から得られた成形品は、優れた難燃性と耐候性を示した。また、本発明における複合強化繊維束の製造方法により、含浸性が良好であり、かつボイドの少ない複合強化繊維束が得られた。
一方比較例1〜3において得られた複合強化繊維束、および成形材料を用いて成形した成形品は難燃性、耐候性が十分に発現しない、若しくは著しい機械特性の低下が見られた。