本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(「成形材料」という場合がある)は、少なくとも炭素繊維(A)、引張破断伸度が10〜50%である有機繊維(B)(以下、「有機繊維(B)」という場合がある)、熱可塑性樹脂(C)および難燃剤(D)を含む。
炭素繊維(A)は、連続した強化繊維束であり、強化材として成形品に高い力学特性を付与するものである。有機繊維(B)も連続した強化繊維束であり、柔軟性を持つことが特徴である。特に、引張破断伸度が10〜50%である有機繊維(B)は柔軟性を有することから、成形時に折れにくく、湾曲して長い繊維長を保ったまま成形品中に存在しやすい。そのため、剛直でもろく、絡まりにくく折れやすい炭素繊維(A)のみから構成される繊維束に比べて、引張破断伸度が10〜50%である有機繊維(B)を含む繊維束を用いることにより、強化材として成形品に高い衝撃強度を付与することができる。熱可塑性樹脂(C)は比較的高粘度の、例えば靭性などの物性が高いマトリックス樹脂であり、成形品において炭素繊維(A)および有機繊維(B)を強固に保持する役割をもつ。難燃剤(D)は、成形品に高い難燃性を付与するものである。
本発明の成形材料は、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および難燃剤(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5〜45重量部含有する。炭素繊維(A)の含有量が5重量部未満であると、成形品の曲げ強度および衝撃強度が低下する。炭素繊維(A)の含有量は10重量部以上が好ましい。また、炭素繊維(A)の含有量が45重量部を超えると、成形品中の炭素繊維(A)の分散性が低下し、成形品の衝撃強度の低下を引き起こすことが多い。炭素繊維(A)の含有量は30重量部以下が好ましい。
炭素繊維(A)の種類として特に制限はないが、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、気相成長系炭素繊維、これらの黒鉛化繊維などが例示される。PAN系炭素繊維はポリアクリロニトリル繊維を原料とする炭素繊維である。ピッチ系炭素繊維は石油タールや石油ピッチを原料とする炭素繊維である。セルロース系炭素繊維はビスコースレーヨンや酢酸セルロースなどを原料とする炭素繊維である。気相成長系炭素繊維は炭化水素などを原料とする炭素繊維である。これらのうち、強度と弾性率のバランスに優れる点で、PAN系炭素繊維が好ましい。また、導電性を付与する目的では、ニッケル、銅またはイッテルビウムなどの金属を被覆した炭素繊維を用いることもできる。
炭素繊維(A)の表面酸素濃度比[O/C]は、0.05〜0.5が好ましい。表面酸素濃度比[O/C]は、X線光電子分光法により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である。表面酸素濃度比が0.05以上であることにより、炭素繊維表面に十分な官能基量を確保でき、より強固な接着性を得ることができることから、曲げ強度および引張強度がより向上する。0.08以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましい。また、表面酸素濃度比の上限には特に制限はないが、炭素繊維の取り扱い性、生産性のバランスから、一般的に0.5以下が好ましい。0.4以下がより好ましく、0.3以下がさらに好ましい。
炭素繊維(A)の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めるものである。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着しているサイジング剤などを除去した炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。C1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
ここで、表面酸素濃度比とは、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。X線光電子分光装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とする。
表面酸素濃度比[O/C]を0.05〜0.5に制御する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などの手法を挙げることができ、中でも電解酸化処理が好ましい。
炭素繊維(A)の平均繊維径は特に限定されないが、成形品の力学特性と表面外観の観点から、1〜20μmが好ましく、3〜15μmがより好ましい。強化繊維束とした場合の単糸数には、特に制限はないが、100〜350,000本が好ましく、生産性の観点から、20,000〜100,000本がより好ましい。
炭素繊維(A)とマトリックス樹脂である熱可塑性樹脂(C)の接着性を向上する等の目的で、炭素繊維(A)は表面処理されたものも好ましい。表面処理の方法としては、例えば、電解処理、オゾン処理、紫外線処理等を挙げることができる。
炭素繊維(A)の毛羽立ちを防止したり、炭素繊維(A)とマトリックス樹脂である熱可塑性樹脂(C)との接着性を向上する等の目的で、炭素繊維はサイジング剤で被覆されたものも好ましい。サイジング剤としては、具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリエステル、乳化剤あるいは界面活性剤などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらのサイジング剤は、成形材料において、炭素繊維(A)の表面に含有される。サイジング剤は、水溶性もしくは水分散性であることが好ましく、炭素繊維(A)との濡れ性に優れるエポキシ樹脂が好ましい。中でも多官能エポキシ樹脂がより好ましい。
多官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、マトリックス樹脂との接着性を発揮しやすい脂肪族エポキシ樹脂が好ましい。脂肪族エポキシ樹脂は、柔軟な骨格のため、架橋密度が高くとも靭性の高い構造になりやすい。炭素繊維/マトリックス樹脂間に存在させた場合、柔軟で剥離しにくくさせるため、成形品の強度をより向上させることができる。多官能の脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、ジグリシジルエーテル化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類、プロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等が挙げられる。また、ポリグリシジルエーテル化合物としては、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、アラビトールポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパングリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
上記脂肪族エポキシ樹脂の中でも、反応性の高いグリシジル基を多数有する脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物がより好ましい。脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物は、柔軟性、架橋密度、マトリックス樹脂との相溶性のバランスがよく、接着性をより向上させることができる。この中でも、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル類、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル類がさらに好ましい。
サイジング剤付着量は、炭素繊維(A)100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下が好ましい。サイジング剤付着量が0.01重量部以上であれば、熱可塑性樹脂(C)との接着性がより向上する。0.05重量部以上がより好ましく、0.1重量部以上がさらに好ましい。一方、サイジング剤付着量が10重量部以下であれば、熱可塑性樹脂(C)の物性をより高いレベルで維持することができる。5重量部以下がより好ましく、2重量部以下がさらに好ましい。
サイジング剤の付与手段としては特に限定されるものではないが、例えば、ローラーを介して炭素繊維をサイジング液に浸漬する方法、サイジング液の付着したローラーに炭素繊維を接する方法、サイジング液を霧状にして炭素繊維に吹き付ける方法などが挙げられる。また、バッチ式、連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましい。この際、炭素繊維(A)に対するサイジング剤の有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング液濃度、温度、糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤付与時に炭素繊維(A)を超音波で加振させることがより好ましい。
乾燥温度と乾燥時間は化合物の付着量によって調整すべきであるが、サイジング剤の付与に用いる溶媒の完全な除去、乾燥に要する時間を短くし、一方、サイジング剤の熱劣化を防止し、サイジング処理された炭素繊維(A)が固くなって拡がり性が悪化することを防止する観点から、乾燥温度は、150℃以上350℃以下が好ましく、180℃以上250℃以下がより好ましい。
サイジング剤の希釈に使用する溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン等が挙げられるが、取扱いが容易であることおよび防災の観点から、水が好ましい。従って、水に不溶、若しくは難溶の化合物をサイジング剤として用いる場合には、乳化剤、界面活性剤を添加し、水分散して用いることが好ましい。具体的には、乳化剤、界面活性剤としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体、オレフィン−無水マレイン酸共重合体、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリアクリル酸ソーダ等のアニオン系乳化剤、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾリン等のカチオン系乳化剤、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンエーテルエステル共重合体、ソルビタンエステルエチルオキサイド付加物等のノニオン系乳化剤等を用いることができるが、相互作用の小さいノニオン系乳化剤が多官能化合物の接着性効果を阻害しにくく好ましい。
本発明の成形材料は、前述した炭素繊維(A)に加えて、引張破断伸度が10〜50%である有機繊維(B)を含有する。炭素繊維(A)などの無機繊維は剛直で脆いため、絡まりにくく折れやすい。そのため、無機繊維だけからなる繊維束は、成形品の製造中に切れ易かったり、成形品から脱落しやすいという課題がある。そこで、柔軟で折れにくく、成形品中において湾曲して存在しやすい、引張破断伸度が10〜50%である有機繊維(B)を含むことにより、成形品の衝撃強度を大幅に向上させることができる。特に、常温における衝撃強度に加えて、低温環境下における衝撃強度も向上させることができる。本発明において、成形材料中の有機繊維(B)の含有量は、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および難燃剤(D)の合計100重量部に対して、1〜45重量部である。有機繊維(B)の含有量が1重量部未満である場合、成形品の衝撃強度が低下する。有機繊維(B)の含有量は5重量部以上が好ましい。逆に、有機繊維(B)の含有量が45重量部を超える場合、繊維同士の絡み合いが増加し、成形品中における有機繊維(B)の分散性が低下し、成形品の衝撃強度の低下を引き起こすことが多い。有機繊維(B)の含有量は30重量部以下が好ましい。
本発明において用いられる有機繊維(B)の引張破断伸度は、10〜50%である。有機繊維の引張破断伸度が10%未満であると、成形品の衝撃強度が低下する。15%以上が好ましい。一方、有機繊維の引張破断伸度が50%を超えると、繊維強度および成形品の剛性が低下する。40%以下が好ましい。
有機繊維(B)の引張破断伸度(%)は、次の方法により求めることができる。標準状態(20℃,65%RH)の室内で、つかみ間隔250mm、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、繊維切断時の長さを測定し(ただし、チャック近傍で切断した場合はチャック切れとしてデータから除く)、次式により小数点2桁まで算出し、小数点2桁目を四捨五入する。データn3の平均値を求め、本発明における引張破断伸度とする。
引張破断伸度(%)=[(切断時の長さ(mm)−250)/250]×100 。
有機繊維(B)の単繊維繊度は0.1〜10dtexが好ましく、0.5〜5dtexがより好ましい。
有機繊維(B)は、成形品の力学特性を大きく低下させない範囲で、引張破断伸度が10〜50%であるものを適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエチレン・プロペンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマーなどのフッ素樹脂、液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミドなどの液晶ポリマー、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリーレンスルフィド、ポリアクリロニトリル等の樹脂を紡糸して得られる繊維を挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。これらの有機繊維(B)の中から、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂(C)との組み合わせにより適宜選択して用いることが好ましい。特に、熱可塑性樹脂(C)の成形温度(溶融温度)に対して、有機繊維(B)の溶融温度が30℃〜150℃高いことが好ましく、50℃〜120℃高いことがより好ましい。あるいは、熱可塑性樹脂(C)と非相溶性である樹脂を用いてなる有機繊維(B)は、成形品内に繊維状態を保ったまま存在するため、成形品の衝撃強度をより向上できるため好ましい。溶融温度の高い有機繊維(B)として、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、フッ素樹脂繊維や、溶融しないとされる、PAN系耐炎化糸などが挙げられる。
また、有機繊維(B)のLOI値(限界酸素指数)は、成形品の難燃性をより向上させる観点から、26%以上が好ましく、30%以上がさらに好ましい。
有機繊維(B)のLOI値(%)は、JIS K7021−3 2008に従って測定することができる。材料が燃焼を持続するために必要な最低酸素濃度(容量%)を酸素指数(OxygenIndex)と定義し、燃焼時間が180秒以上継続するか、または、接炎後の材料が長さ50mm以上燃え続けるために必要な最低の酸素濃度(酸素指数)を、LOI値(限界酸素指数(%))とする。
引張破断伸度が10〜50%であり、LOI値が26%以上である有機繊維としては、例えば、ポリアリーレンスルフィド繊維、フッ素樹脂繊維、液晶ポリマー繊維、ポリアクリロニトリル系耐炎化糸などが挙げられ、本発明においては、有機繊維(B)として、これらからなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維を用いることが好ましい。
本発明の成形材料は、熱可塑性樹脂(C)を、炭素繊維(A)、引張破断伸度が10〜50%である有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および難燃剤(D)の合計100重量部に対して20〜93重量部含有する。
本発明において熱可塑性樹脂(C)は、成形温度(溶融温度)が200〜450℃であるものが好ましく、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ハロゲン化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリールスルホン樹脂、ポリアリールケトン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイドスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、これらはいずれも、電気絶縁体に相当する。これらを2種以上用いることもできる。
前記熱可塑性樹脂(C)の中でも、軽量、かつ、力学特性や成形性のバランスに優れるポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂がより好ましく、汎用性に優れることから、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂がさらに好ましい。
ここで言うポリプロピレン樹脂とは、無変性のものも、変性されたものも含まれる。無変性のポリプロピレン樹脂は、具体的には、プロピレンの単独重合体またはプロピレンと少なくとも1種のα−オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンなどとの共重合体である。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4ジメチル−1−ヘキセン、1−ノネン、1−オクテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等のプロピレンを除く炭素数2〜12のα−オレフィンなどが挙げられる。共役ジエン、非共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。無変性ポリプロピレン樹脂の骨格構造としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと前記その他の単量体のランダムあるいはブロック共重合体、またはプロピレンと他の熱可塑性単量体とのランダムあるいはブロック共重合体等を挙げることができる。例えば、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体などが好適なものとして挙げられる。プロピレンの単独重合体は成形品の剛性をより向上させる観点から好ましく、プロピレンと前記その他の単量体のランダムあるいはブロック共重合体は成形品の衝撃強度をより向上させる観点から好ましい。
また、変性ポリプロピレン樹脂としては、酸変性ポリプロピレン樹脂が好ましく、重合体鎖に結合したカルボン酸および/またはその塩の基を有するポリプロピレン樹脂がより好ましい。上記酸変性ポリプロピレン樹脂は種々の方法で得ることができ、例えば、ポリプロピレン樹脂に、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、および/または、ケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステル基を有する単量体を、グラフト重合することにより得ることができる。
ここで、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、または、ケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステル基を有する単量体としては、例えば、エチレン系不飽和カルボン酸、その無水物、これらのエステル化物などが挙げられる。さらに、オレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物なども挙げられる。
エチレン系不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが例示され、その無水物としては、ナジック酸TM(エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが例示できる。
エチレン系不飽和カルボン酸のエステル化物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
オレフィン以外の不飽和ビニル基を有する単量体としては、ビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナート等のイソシアナート基含有ビニル類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等のアミド基含有ビニル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、モノ(2−メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等の不飽和リン酸類等が挙げられる。
これらを2種以上用いることもできる。また、これらの中でも、エチレン系不飽和カルボン酸無水物類が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
ここで、成形品の曲げ強度および引張強度を向上させるため、無変性ポリプロピレン樹脂と変性ポリプロピレン樹脂を共に用いることが好ましく、特に難燃性や力学特性のバランスの観点から、無変性ポリプロピレン樹脂と変性ポリプロピレン樹脂の重量比が95/5〜75/25となるように用いることが好ましい。より好ましくは95/5〜80/20、さらに好ましくは90/10〜80/20である。
また、ポリアミド樹脂は、アミノ酸、ラクタム、あるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とする樹脂である。その主要原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
本発明においては、耐熱性や強度に優れるという点から、200℃以上の融点を有するポリアミド樹脂が特に有用である。その具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、ナイロン6、ナイロン66がより好ましい。
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がなく、98%濃硫酸25mlにポリアミド樹脂0.25gを溶解した溶液の25℃で測定した相対粘度が1.5〜5.0の範囲が好ましく、特に2.0〜3.5の範囲のポリアミド樹脂がより好ましい。
また、ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。2種以上の二価フェノールまたは2種以上のカーボネート前駆体を用いて得られる共重合体であってもよい。反応方法の一例として、界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。かかるポリカーボネート樹脂はそれ自体公知であり、例えば、特開2002−129027号公報に記載のポリカーボネート樹脂を使用できる。
二価フェノールとしては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン(ビスフェノールAなど)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールAが好ましく、耐衝撃特性により優れたポリカーボネート樹脂を得ることができる。一方、ビスフェノールAと他の二価フェノールを用いて得られる共重合体は、高耐熱性または低吸水率の点で優れている。
カーボネート前駆体としては、例えば、カルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的には、ホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
上記二価フェノールとカーボネート前駆体からポリカーボネート樹脂を製造するにあたっては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化を防止する酸化防止剤などを使用してもよい。
また、本発明におけるポリカーボネート樹脂には、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。これらのポリカーボネート樹脂も公知である。また、これらのポリカーボネート樹脂を2種以上用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂の分子量は特定されないが、粘度平均分子量が10,000〜50,000のものが好ましい。粘度平均分子量が10,000以上であれば、成形品の強度をより向上させることができる。15,000以上がより好ましく、18,000以上がさらに好ましい。一方、粘度平均分子量が50,000以下であれば、成形加工性が向上する。40,000以下がより好ましく、30,000以下がさらに好ましい。ポリカーボネート樹脂を2種以上用いる場合、少なくとも1種の粘度平均分子量が上記範囲にあることが好ましい。この場合、他のポリカーボネート樹脂として、粘度平均分子量が50,000を超える、好ましくは80,000を超えるポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。かかるポリカーボネート樹脂は、エントロピー弾性が高く、ガスアシスト成形等を併用する場合に有利となる他、高いエントロピー弾性に由来する特性(ドリップ防止特性、ドローダウン特性、およびジェッティング改良などの溶融特性を改良する特性)を発揮する。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に代入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7 。
本発明の成形材料は、炭素繊維(A)と有機繊維(B)と熱可塑性樹脂(C)に加えて、難燃剤(D)を含有する。
本発明で用いられる難燃剤(D)としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、フッ素系難燃剤、金属水酸化物、ホウ素化合物、金属塩系難燃剤などの公知の難燃剤が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
本発明において、成形材料中の難燃剤(D)の含有量は、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および難燃剤(D)の合計100重量部に対して、1〜20重量部である。難燃剤(D)の含有量が1重量部未満である場合、成形品において十分な難燃性が得られない。難燃剤(D)の含有量は3重量部以上が好ましい。一方、難燃剤(D)の含有量が20重量部を超える場合、成形品の力学特性が低下したり、比重が増加する場合がある。難燃剤(D)の含有量は10重量部以下が好ましく、8重量部以下がより好ましい。
ハロゲン系難燃剤の代表的なものとしては、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、1,2−ビス(2’,3’,4’,5’,6’−ペンタブロモフェニル)エタン、1,2−ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,6−ジブロモフェノール、2,4−ジブロモフェノール、臭素化ポリスチレン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモベンジルアクリレート、2,2−ビス[4’(2’’,3’’−ジブロモプロポキシ)−,3’,5’−ジブロモフェニル]−プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ジブロモプロポキシフェニル)スルホン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの臭素系難燃剤、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、パークロロペンタシクロデカン、ドデカクロロドデカヒドロジメタノジベンゾシクロオクテン、ドデカクロロオクタヒドロジメタノジベンゾフランなど塩素系難燃剤などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。ここで、熱安定性や、成形品の力学特性のバランスの観点から、テトラブロモビスフェノールAのポリカーボネートオリゴマー類が特に好ましい。
ハロゲン系難燃剤は成形品中で分解し、ラジカルトラップ効果により、燃焼場において活性なHラジカルやOHラジカルを安定化することにより、難燃性を発現する。
リン系難燃剤は、脱水炭化促進作用により、成形品表面に緻密なチャーが形成され、熱や酸素を遮断し、炎の伝播を阻止する。また、熱分解におけるラジカル連鎖反応に対し、ラジカルトラップ効果により、燃焼場において、活性なHラジカルやOHラジカルを安定化することにより、難燃性を発現する。リン系難燃剤としては、リンを含有する有機または無機化合物であれば特に制限はなく、例えば、ポリリン酸アンモニウムなどのポリリン酸塩類や、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスクロロプロピルホスフェートなどの含ハロゲンリン酸エステル化合物などのリン酸エステル系化合物や、縮合リン酸エステル系化合物や、ポリホスファゼン、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィンオキシド、赤リン系化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。中でもポリリン酸アンモニウム、芳香族ホスフェート、赤リンが好ましい。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸亜鉛などが挙げられる。ホウ素化合物は、リン系難燃剤や窒素系難燃剤とともに用いてもよい。
金属塩系難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモンや、五酸化アンチモンなどの無機塩や、有機スルホン酸塩に代表される有機金属塩などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。無機塩は、難燃助剤として、ハロゲン系難燃剤とともに用いてもよい。例えば、酸化アンチモンをハロゲン系難燃剤と併用した場合、アンチモンのオキシハライドによる表面遮蔽効果と、気層における熱分解反応阻止効果により、難燃性を発現する。
本発明の成形材料においては、上記種々の難燃剤の中でも、難燃性が高いこと、有毒ガス発生の懸念がないこと、難燃剤添加による比重の増加が小さいこと、熱可塑性樹脂(C)との相溶性が高いことから、リン系難燃剤を用いることがより好ましい。
本発明の成形材料は、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および難燃剤(D)に加えて、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(E)(以下、「化合物(E)」と記載する場合がある)を含んでもよい。化合物(E)は、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低いことにより、成形時における化合物(E)の流動性が高く、炭素繊維(A)と有機繊維(B)の熱可塑性樹脂(C)内への分散効果を高めることができる。これにより、炭素繊維(A)や有機繊維(B)が持つ繊維補強効果や、難燃効果をより効果的に発揮し、難燃性や衝撃強度をより向上させることができる。
化合物(E)の200℃における溶融粘度は、5Pa・s以下が好ましく、2Pa・s以下がより好ましく、1.5Pa・s以下がさらに好ましい。この範囲内に調整することで、炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性をより向上させ、成形品の曲げ強度、引張強度をより向上させることができる。ここで、熱可塑性樹脂(C)および化合物(E)の200℃における溶融粘度は、40mmのパラレルプレートを用いて、0.5Hzにて、粘弾性測定器により測定することができる。
化合物(E)の数平均分子量は、200〜50,000が好ましい。数平均分子量が200以上であれば、成形品の曲げ強度および引張強度をより向上させることができる。数平均分子量は1,000以上がより好ましい。また、数平均分子量が50,000以下であれば、化合物(E)の粘度が適度に低いことから、成形品中に含まれる炭素繊維(A)および有機繊維(B)への含浸性に優れ、成形品中における炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性をより向上させることができる。数平均分子量は3,000以下がより好ましい。なお、かかる化合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
本発明に用いられる化合物(E)は、熱可塑性樹脂(C)との組み合わせにより適宜選択して用いることが好ましく、例えば、成形温度が150℃〜270℃の範囲であればテルペン樹脂を用い、270℃〜320℃の範囲であればエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
本発明の成形品における化合物(E)の含有量は、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および難燃剤(D)の合計100重量部に対して、1〜20重量部が好ましい。化合物(E)の含有量が1重量部以上であれば、成形品内での炭素繊維(A)および有機繊維(B)の流動性がより向上し、分散性がより向上する。2重量部以上が好ましく、4重量部以上が好ましい。一方、化合物(E)の含有量が20重量部以下であれば、成形品の曲げ強度、引張強度および衝撃強度をより向上させることができる。15重量部以下が好ましく、12重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。
化合物(E)は、成形温度における10℃/分昇温(空気中)における加熱減量が5重量%以下であることが好ましい。より好ましくは、3重量%以下である。かかる加熱減量が5重量%以下の場合、炭素繊維(A)および有機繊維(B)へ含浸した際に分解ガスの発生を抑制することができ、成形した際にボイドの発生を抑制することができる。また、特に高温における成形において、発生ガスを抑制することができる。
ここで、化合物(E)の成形温度における重量減量は、白金サンプルパンを用いて、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件にて、成形温度における重量を熱重量分析(TGA)により測定することにより求めることができる。
また、化合物(E)の200℃における2時間加熱後の溶融粘度変化率は、2%以下が好ましい。化合物(E)の溶融粘度変化率は、次の方法により求めることができる。まず、40mmのパラレルプレートを用いて、0.5Hzにて、粘弾性測定器により200℃における溶融粘度を測定する。また、化合物(E)を200℃の熱風乾燥機に2時間静置した後、同様に200℃における溶融粘度を測定し、下記式により粘度変化率を算出する。
(溶融粘度変化率[%])={|(200℃にて2時間加熱後の200℃における溶融粘度−200℃にて2時間加熱前の200℃における溶融粘度)|/(200℃にて2時間加熱前の200℃における溶融粘度)}×100
かかる溶融粘度変化率を2%以下にすることで、長時間にわたり複合体(G)を製造する場合においても、付着むらなどを制御し、複合体(G)の安定した製造を確保できる。溶融粘度変化率は、より好ましくは、1.5%以下であり、さらに好ましくは1.3%以下である。
本発明において、化合物(E)として好ましく用いられるエポキシ樹脂とは、2つ以上のエポキシ基を有する化合物であって、実質的に硬化剤が含まれておらず、加熱しても、いわゆる三次元架橋による硬化をしないものをいう。グリシジル基を有することが好ましく、炭素繊維(A)および有機繊維(B)と相互作用しやすくなり、含浸時に繊維束(F)と馴染みやすく、含浸しやすい。また、成形加工時の炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性がより向上する。
ここで、グリシジル基を有する化合物としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エーテル結合を有する脂肪族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、アミノフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート等が挙げられる。
中でも、粘度と耐熱性のバランスに優れるため、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
また、本発明に用いられるエポキシ樹脂の数平均分子量は、200〜5000であることが好ましい。エポキシ樹脂の数平均分子量が200以上であれば、成形品の力学特性をより向上させることができる。800以上がより好ましく、1000以上がさらに好ましい。一方、エポキシ樹脂の数平均分子量が5000以下であれば、繊維束(F)への含浸性に優れ、炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性をより向上させることができる。4000以下がより好ましく、3000以下がさらに好ましい。なお、エポキシ樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
また、テルペン樹脂としては、例えば、有機溶媒中でフリーデルクラフツ型触媒存在下、テルペン単量体を、必要に応じて芳香族単量体等と重合して得られる重合体または共重合体などが挙げられる。
テルペン単量体としては、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、d−リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノーレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、サビネン、パラメンタジエン類、カレン類等の単環式モノテルペンなどが挙げられる。また、芳香族単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
中でも、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、d−リモネンが熱可塑性樹脂(C)との相溶性に優れるため好ましく、さらに、これらのテルペン単量体の単独重合体がより好ましい。また、これらテルペン樹脂を水素添加処理して得られる水素化テルペン樹脂が、より熱可塑性樹脂(C)、特にポリプロピレン樹脂との相溶性に優れるため好ましい。
また、テルペン樹脂のガラス転移温度は、特に限定しないが、30〜100℃であることが好ましい。ガラス転移温度が30℃以上であると、成形加工時に化合物(E)の取扱性に優れる。また、ガラス転移温度が100℃以下であると、成形加工時の化合物(E)の流動性を適度に抑制し、成形性を向上させることができる。
また、テルペン樹脂の数平均分子量は、200〜5000であることが好ましい。数平均分子量が200以上であれば、成形品の曲げ強度および引張強度をより向上させることができる。また、数平均分子量が5000以下であれば、テルペン樹脂の粘度が適度に低いことから含浸性に優れ、成形品中における炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性をより向上させることができる。なお、テルペン樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
本発明の成形材料は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記(A)〜(E)に加えて他の成分を含有してもよい。他の成分の例としては、熱硬化性樹脂、炭素繊維以外の無機充填材、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、あるいは、カップリング剤などが挙げられる。
次に、本発明の成形材料の形態について説明する。
本発明の成形材料は、熱可塑性樹脂(C)内に、連続繊維束である炭素繊維(A)および有機繊維(B)を含む繊維束(F)を有することが好ましい。繊維束(F)の各単繊維間に化合物(E)が満たされている複合体(G)を有してもよい。複合体(G)は、繊維束(F)に前記化合物(E)を含浸させてなり、化合物(E)の海に、炭素繊維(A)および有機繊維(B)が島のように分散している状態である。
本発明の成形材料は、前記繊維束(F)または複合体(G)の外側に、熱可塑性樹脂(C)を含むことが好ましい。成形材料の長手方向に対して垂直な断面において、熱可塑性樹脂(C)が繊維束(F)または複合体(G)の周囲を被覆するように配置されているか、繊維束(F)または複合体(G)と熱可塑性樹脂(C)が層状に配置され、最外層が熱可塑性樹脂(C)である構成が望ましい。
本発明の成形材料が化合物(E)を含有する場合、化合物(E)は低分子量である場合が多く、常温においては通常比較的脆く破砕しやすい固体であったり、液体であることが多い。複合体(G)の外側に、熱可塑性樹脂(C)を含む構成とすることにより、高分子量の熱可塑性樹脂(C)が複合体(G)を保護し、成形材料の運搬や取り扱い時の衝撃、擦過などによる化合物(E)の破砕、飛散などを抑制し、成形材料の形状を保持することができる。本発明の成形材料は、取り扱い性の観点から、成形に供されるまで前述の形状を保持することが好ましい。
複合体(G)と熱可塑性樹脂(C)は、境界付近で部分的に熱可塑性樹脂(C)が複合体(G)の一部に入り込み、相溶しているような状態であってもよいし、繊維束(F)に熱可塑性樹脂(C)が含浸しているような状態になっていてもよい。
本発明の成形材料は、繊維束(F)断面において炭素繊維(A)と有機繊維(B)が偏在することが好ましい。ここで、繊維束(F)断面とは、繊維束(F)の繊維長手方向に対して垂直な断面を指す。繊維束(F)断面において、炭素繊維(A)と有機繊維(B)が偏在することにより、成形時の炭素繊維(A)および有機繊維(B)の絡み合いを抑制し、炭素繊維(A)および有機繊維(B)が均一に分散した成形品を得ることができる。このため、成形品の力学特性、特に衝撃強度および低温衝撃強度を大幅に向上させることができる。ここで、本発明において「偏在」とは、繊維束(F)断面において、炭素繊維(A)と有機繊維(B)がそれぞれ全ての領域において均等に存在するのではなく、部分的に偏って存在することを言う。例えば、図1に示すような、繊維束(F)断面において、炭素繊維(A)が有機繊維(B)を内包している形態や、図2に示すような、有機繊維(B)が炭素繊維(A)を内包している形態などのいわゆる芯鞘型構造や、図3に示すような、繊維束(F)断面において、炭素繊維(A)の束と有機繊維(B)の束がある境界部によって分けられた状態でそれぞれ存在している構造などが、本発明における「偏在」の態様として挙げられる。なお、本発明において「内包」とは、炭素繊維(A)を芯部、有機繊維(B)を鞘部に配する態様や、有機繊維(B)を芯部、炭素繊維(A)を鞘部に配する態様などを指す。図3に示す態様の場合、繊維束(F)断面において炭素繊維(A)と有機繊維(B)のそれぞれ少なくとも一部がいずれも外層の熱可塑性樹脂(C)に接している。このとき、炭素繊維(A)または有機繊維(B)が熱可塑性樹脂(C)に接している態様には、炭素繊維(A)または有機繊維(B)が化合物(E)を介して熱可塑性樹脂(C)に接している態様も含むものとする。
なお、本発明において、繊維束(F)中において炭素繊維(A)、有機繊維(B)が偏在していることを確認する方法としては、例えば、成形材料の繊維長手方向に対して垂直な断面を倍率300倍に設定した光学顕微鏡にて観察し、得られた顕微鏡像の画像処理を行い解析する手法が挙げられる。
本発明の成形材料は、繊維束(F)の長さと成形材料の長さが実質的に同じであることが好ましい。繊維束(F)の長さが成形材料の長さと実質的に同じであることにより、成形品における炭素繊維(A)と有機繊維(B)の繊維長を長くすることができるため、より優れた力学特性を得ることができる。なお、成形材料の長さとは、成形材料中の繊維束(F)配向方向の長さである。また、「実質的に同じ長さ」とは、成形材料内部で繊維束(F)が意図的に切断されていたり、成形材料全長よりも有意に短い繊維束(F)が実質的に含まれたりしないことである。特に、成形材料全長よりも短い繊維束(F)の量について限定するわけではないが、成形材料全長の50%以下の長さの繊維束(F)の含有量が、全繊維束(F)中30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。成形材料は、長手方向にほぼ同一の断面形状を保ち連続であることが好ましい。
本発明の成形材料において、難燃剤(D)は、原材料の中のいずれかに含まれていれば良い。繊維束(F)または複合体(G)内に含まれていてもよいし、熱可塑性樹脂(C)中に含まれていてもよいし、その両方に含まれていてもよい。例えば、熱可塑性樹脂(C)と難燃剤(D)を含む熱可塑性樹脂組成物として、繊維束(F)または複合体(G)を被覆する樹脂中に含まれる態様や、化合物(E)とともに繊維束(F)に含浸されてなる態様などが挙げられる。
成形材料の長さは、通常3mm〜15mmの範囲である。
続いて、本発明の成形材料の製造方法について説明する。本発明の成形材料は、例えば、次の方法により得ることができる。
まず、炭素繊維(A)のロービングおよび有機繊維(B)のロービングを繊維長手方向に対して並列に合糸し、炭素繊維(A)と有機繊維(B)を有する繊維束(F)を作製する。次いで、必要により、溶融させた化合物(E)を繊維束(F)に含浸させて複合体(G)を作製する。さらに、溶融した熱可塑性樹脂(C)および難燃剤(D)を含む樹脂組成物で満たした含浸ダイに繊維束(F)または複合体(G)を導き、熱可塑性樹脂(C)および難燃剤(D)を含む樹脂組成物を繊維束(F)または複合体(G)の外側に被覆させ、ノズルを通して引き抜く。冷却固化後に所定の長さにペレタイズして、成形材料を得る方法が挙げられる。熱可塑性樹脂(C)は、複合体(F)の外側に含まれていれば、繊維束(F)中に含浸されていてもよい。
また、前記方法により作製した繊維束(F)に、溶融させた化合物(E)および難燃剤(D)を含む組成物を含浸させて複合体(G)を作製し、熱可塑性樹脂(C)を複合体(G)の外側に被覆してもよい。
また、前記方法により作製した繊維束(F)を熱可塑性樹脂(C)で被覆した成形材料と、熱可塑性樹脂(C)と難燃剤(D)を溶融混練したペレットとをドライブレンドして、成形材料混合物を得てもよい。この場合、成形品中における炭素繊維(A)、有機繊維(B)や難燃剤(D)の含有量を容易に調整することができる。また、炭素繊維(A)を熱可塑性樹脂(C)と必要により難燃剤(D)とを溶融混練した樹脂組成物で被覆した成形材料と、有機繊維(B)を熱可塑性樹脂(C)と必要により難燃剤(D)とを溶融混練した樹脂組成物で被覆した成形材料とを、ペレットブレンドして成形材料混合物を得てもよい。この時、難燃剤(D)は、いずれの成形材料中に含まれていてもよく、また、一方の成形材料のみに含まれていてもよい。ここで、ドライブレンドとは、溶融混練とは異なり、複数の材料を樹脂成分が溶融しない温度で撹拌・混合し、実質的に均一な状態とすることを指し、主に射出成形や押出成形など、ペレット形状の成形材料を用いる場合に好ましく用いられる。
次に本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形品(以下、「成形品」と記載する場合がある)について説明する。
上記成形材料を成形することにより、炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性に優れ、衝撃強度および難燃性に優れる成形品を得ることができる。成形方法としては、金型を用いた成形方法が好ましく、射出成形、押出成形、プレス成形など、種々の成形方法を用いることができる。特に射出成形機を用いた成形方法により、連続的に安定した成形品を得ることができる。射出成形の条件としては、特に規定はないが、例えば、射出時間:0.5秒〜10秒、より好ましくは2秒〜10秒、背圧力:0.1MPa〜10MPa、より好ましくは2MPa〜8MPa、保圧力:1MPa〜50MPa、より好ましくは1MPa〜30MPa、保圧時間:1秒〜20秒、より好ましくは5秒〜20秒、シリンダー温度:200℃〜320℃、金型温度:20℃〜100℃の条件が好ましい。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。これらの条件、特に射出時間、背圧力および金型温度を適宜選択することにより、後述する式[1]や式[2]を満足するように、成形品中の強化繊維の繊維長や繊維端部間距離を容易に調整することができる。
本発明の成形品は、炭素繊維(A)が、繊維端部間距離が繊維長とほぼ同等となる状態で存在するのに対し、有機繊維(B)が、その繊維端部間距離が繊維長に対して短い状態で、すなわち、湾曲した状態で存在することが好ましい。すなわち、成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3〜1.5mmであり、かつ、炭素繊維(A)の始点から終点までの平均繊維端部間距離(DA)と平均繊維長(LA)が下記式[1]を満たし、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記引張破断伸度が10〜50%である有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が1.5〜4mmであり、かつ、有機繊維(B)の始点から終点までの平均繊維端部間距離(DB)と平均繊維長(LB)が下記式[2]を満たすことが好ましい。
0.9×LA≦DA≦LA [1]
0.1×LB≦DB≦0.9×LB [2]
ここで、本発明において「繊維端部間距離」とは、ある単繊維において、片端部を始点とし、他方の片端部を終点とした時の、始点と終点を結ぶ直線距離のことをいう。剛直な繊維と柔軟な繊維では、成形品内における状態が異なる。本発明においては、繊維が湾曲した状態の指標として、繊維端部間距離に着目した。例えば、例えば、図4に、成形品中における炭素繊維(A)の繊維長および繊維端部間距離を示す。図4において、符号4は炭素繊維(A)、符号5は炭素繊維4の始点、符号6は炭素繊維4の終点、符号7は炭素繊維4の端部間の距離Dを示す。図5に、成形品中における有機繊維(B)の繊維長および繊維端部間距離を示す。図5において、符号8は有機繊維(B)、符号9は有機繊維8の始点、符号10は有機繊維8の終点、符号11は有機繊維8の端部間の距離Dを示す。図4に示すように、炭素繊維(A)の繊維端部間距離は、一般的に繊維長と同等であるのに対し、図5に示すように、有機繊維(B)は、成形品内で湾曲しているため、繊維端部間距離と繊維長が異なることがある。
本発明の成形品において、炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3mm以上であれば、成形品の力学特性、特に曲げ強度、引張強度がより向上する。LAは0.7mm以上が好ましい。一方で、平均繊維長(LA)が1.5mm以下であれば、炭素繊維(A)同士の単糸間での絡み合いを抑制して分散性がより向上するため、成形品の力学特性がより向上する。LAは1.2mm以下が好ましい。さらに、平均繊維端部間距離(DA)が上記式[1]を満たす場合、剛直であるガラス繊維(A)が成形品内であまり湾曲することなく存在していることとなり、曲げ強度、引張強度、衝撃強度がより向上する。ここで、本発明における「平均繊維長」および「平均繊維端部間距離」とは、重量平均分子量の算出方法を繊維長および繊維端部間距離の算出に適用し、単純に数平均を取るのではなく、繊維長および繊維端部間距離の寄与を考慮した下記の式から算出される平均繊維長および平均繊維端部間距離を指す。ただし、下記の式は、炭素繊維(A)の繊維径および密度が一定の場合に適用される。
平均繊維長=Σ(Mi2×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの炭素繊維の個数
平均繊維端部間距離=Σ(Mi’2×Ni’)/Σ(Mi’×Ni’)
Mi’:繊維端部間距離(mm)
Ni’:繊維端部間距離Mi’の炭素繊維の個数
上記平均繊維長および平均繊維端部間距離の測定は、次の方法により行うことができる。成形品を300℃に設定したホットステージの上にガラス板間に挟んだ状態で加熱し、フィルム状にして均一分散させる。炭素繊維が均一分散したフィルムを、光学顕微鏡(50〜200倍)にて観察する。無作為に選んだ1000本の炭素繊維(A)の繊維長と繊維端部間距離を計測して、上記式から平均繊維長(LA)および平均繊維端部間距離(DA)を算出する。
また、有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が1.5mm以上であると、成形品における有機繊維(B)の補強効果により、力学特性、特に衝撃強度がより向上する。LBは1.9mm以上が好ましい。一方で、平均繊維長(LB)が4mm以下であると、有機繊維(B)同士の単糸間での絡み合いを抑制して分散性がより向上するため、成形品の力学特性がより向上する。LBは3mm以下が好ましい。さらに、平均繊維端部間距離(DB)が上記式[2]を満たす場合、有機繊維(B)が適度に湾曲して成形品内に存在していることとなり、成形品破断時の繊維補強効果により、力学特性、特に衝撃強度、落錘衝撃強度および低温落錘衝撃強度がより向上する。ここで、本発明における有機繊維(B)の「平均繊維長」および「平均繊維端部間距離」とは、炭素繊維(A)と同様に、重量平均分子量の算出方法を繊維長および繊維端部間距離の算出に適用し、単純に数平均を取るのではなく、繊維長および繊維端部間距離の寄与を考慮した下記の式から算出される平均繊維長および平均繊維端部間距離を指す。ただし、下記の式は、有機繊維(B)の繊維径および密度が一定の場合に適用される。
平均繊維長=Σ(Mi2×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの有機繊維の個数
平均繊維端部間距離=Σ(Mi’2×Ni’)/Σ(Mi’×Ni’)
Mi’:繊維端部間距離(mm)
Ni’:繊維端部間距離Mi’の有機繊維の個数
上記平均繊維長および平均繊維端部間距離の測定は、次の方法により行うことができる。成形品を300℃に設定したホットステージの上にガラス板間に挟んだ状態で加熱し、フィルム状にして均一分散させる。有機繊維が均一分散したフィルムを、光学顕微鏡(50〜200倍)にて観察する。無作為に選んだ1000本の有機繊維(B)の繊維長と繊維端部間距離を計測して、上記式から平均繊維長(LB)および平均繊維端部間距離(DB)を算出する。
なお、成形品中における有機繊維(B)の平均繊維端部間距離(DB)は、例えば、前述の有機繊維(B)の種類や、成形条件などにより調整することができる。成形条件としては、例えば、射出成形の場合、背圧や保圧力などの圧力条件、射出時間や保圧時間などの時間条件、シリンダー温度や金型温度などの温度条件などが挙げられる。
本発明の成形品は、衝撃強度および難燃性に優れる繊維強化熱可塑性樹脂成形品であり、本発明の成形品の用途としては、インストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、ランプハウジング、ペダルハウジング、ラジエータサポート、スペアタイヤカバー、フロントエンド、構造用部材、内部部品などの自動車部品や、電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、トイレタリー用品、レーザーディスク(登録商標)、冷蔵庫、エアコンなどの家庭・事務電気製品部品、パーソナルコンピューター、携帯電話などに使用される筐体や、パーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持するキーボード支持体に代表される電気・電子機器用部材などが挙げられる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。まず、本実施例で用いる各種特性の評価方法について説明する。
(1)溶融粘度測定
各実施例および比較例に用いた熱可塑性樹脂(C)、化合物(E)について、40mmのパラレルプレートを用いて、0.5Hzにて、粘弾性測定器により200℃における溶融粘度を測定した。
また、化合物(E)を200℃の熱風乾燥機に2時間静置した後、同様に200℃における溶融粘度を測定した。
(2)平均繊維長および平均繊維端部間距離の測定
各実施例および比較例により得られた80mm×10mm×4mm厚の平均繊維長等測定用試験片を300℃に設定したホットステージの上にガラス板間に挟んだ状態で加熱し、フィルム状にして均一分散させた。炭素繊維(A)および/または有機繊維(B)が均一分散したフィルムを、光学顕微鏡(50〜200倍)にて観察した。無作為に選んだ1000本の炭素繊維(A)と、同様に無作為に選んだ1000本の有機繊維(B)について、それぞれ繊維長と繊維端部間距離を計測して、下記式から平均繊維長および平均繊維端部間距離を算出した。
平均繊維長=Σ(Mi2×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの繊維の個数
平均繊維端部間距離=Σ(Mi’2×N’i)/Σ(Mi’×N’i)
Mi’:繊維端部間距離(mm)
Ni’:繊維端部間距離Mi’の繊維の個数 。
(3)引張破断伸度測定
有機繊維(B)の引張破断伸度(%)は、標準状態(20℃,65%RH)の室内で、つかみ間隔250mm、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、繊維切断時の長さを算出し(ただし、チャック近傍で切断した場合はチャック切れとしてデータから除く)、次式により小数点2桁まで算出し、小数点2桁目を四捨五入した。各有機繊維(B)についてデータn3の平均値を求め、引張破断伸度とした。
引張破断伸度(%)=[(切断時の長さ(mm)−250)/250]×100 。
(4)限界酸素指数(LOI値)測定
有機繊維(B)の限界酸素指数(LOI値)は、JIS K 7201−3 2008酸素指数法による高分子材料の燃焼試験法に従って測定した。
(5)成形品の難燃性評価
各実施例および比較例により得られた難燃性評価用試験片について、UL−94に準拠して難燃性を評価した。具体的には、垂直に支持した上記試験片の下端にバーナー炎をあてて10秒間保ち、その後バーナー炎を試験片から離した。炎が消えた後、再びバーナー炎をあて、同様の操作を行った。そして、1回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計、ならびに燃焼落下物の有無により判定を行った。UL94における各等級の基準は概略下記の通りである。
V−0:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒以内であり、燃焼落下物がなかった。
V−1:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒超30秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒超60秒以内であり、燃焼落下物がなかった。
V−2:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒超30秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒超60秒以内であり、燃焼落下物があった。
V−out:1回目の有炎燃焼持続時間が30秒超、または、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が60秒超である。
(6)成形品の曲げ強度測定
各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片について、ISO 178に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子半径5mm)を用いて支点距離を64mmに設定し、試験速度2mm/分の試験条件にて曲げ強度を測定した。試験機として、“インストロン”(登録商標)万能試験機5566型(インストロン社製)を用いた。
(7)成形品のシャルピー衝撃強度測定
各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片の平行部を切り出し、株式会社東京試験機製C1−4−01型試験機を用い、ISO179に準拠してVノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施し、衝撃強度(kJ/cm2)を算出した。
(8)成形品の落錘衝撃強度測定
各実施例および比較例により得られた落錘衝撃強度測定用試験片について、錘先端丸形状のタップを使用し、錘重量5.1356kg、落錘速度0.5m/秒、試験温度23℃の条件にて落錘衝撃試験を実施し、落錘衝撃強度(kJ/cm2)を測定した。また、同様に、試験温度−20℃の条件にて落錘衝撃試験を実施し、落錘衝撃強度(kJ/cm2)を測定した。
(9)成形品の繊維分散性評価
各実施例および比較例により得られた落錘衝撃強度測定用試験片の表裏それぞれの面に存在する未分散CF束の個数を目視でカウントした。評価は50枚の成形品について行い、その合計個数について繊維分散性の判定を以下の基準で行い、Aを合格とした。
A:未分散CF束が1個未満
B:未分散CF束が1個以上。
参考例1.炭素繊維(A)の作製
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本、単繊維径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cm3、表面酸素濃度比[O/C]0.2の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維のストランド引張強度は4,880MPa、ストランド引張弾性率は225GPaであった。続いて、多官能性化合物としてポリグリセロールポリグリシジルエーテルを2重量%になるように水に溶解させたサイジング剤母液を調製し、浸漬法により炭素繊維にサイジング剤を付与し、230℃で乾燥を行った。こうして得られた炭素繊維のサイジング剤付着量は1.0重量%であった。
有機繊維(B)
(B−1)
ポリフェニレンサルファイド繊維(東レ(株)製、「“トルコン”(登録商標)400T−100−190」、単糸繊度:4.0dtex、融点:285℃)を用いた。該繊維の破断伸度を上記(3)に記載した方法により測定した結果、30%であった。また、該繊維のLOI値を上記(4)に記載した方法により測定した結果、34%であった。
(B−2)
ポリテトラフルオロエチレン繊維(東レ(株)製、「“トヨフロン”(登録商標)440T?60F?S290?M190」、単糸繊度:7.3dtex、融点:327℃)を用いた。破断伸度を上記(3)に記載の方法により測定した結果、25%であった。また、該繊維のLOI値を上記(4)に記載の方法により測定した結果、95%以上であった。
(B−3)
PAN系耐炎化繊維(東邦テナックス(株)製、「“パイロメックス”(登録商標)CPX−1.6d」、単糸繊度:1.8dtex、融点:なし(不溶))を用いた。前述したポリフェニレンサルファイド繊維と同様に破断伸度を上記(3)に記載の方法により測定した結果、18%であった。また、該繊維のLOI値を、前述したポリフェニレンサルファイド繊維と同様に、上記(4)に記載の方法により測定した結果、55%であった。
(B−4)
ポリエステル繊維(東レ(株)製、「“テトロン”(登録商標)2200T−480−705M」、単糸繊度:4.6dtex、融点:260℃)を用いた。該繊維の引張破断伸度を上記(3)に記載の方法により測定した結果、15%であった。また、該繊維のLOI値を上記(4)に記載の方法により測定した結果、20%であった。
(B−5)
パラ系アラミド繊維(東レデュポン(株)製、「“ケブラー”(登録商標)K49」、単糸繊度:1.7dtex、融点:なし(不溶))を用いた。破断伸度を上記(3)に記載の方法により測定した結果、2.4%であった。また、該繊維のLOI値を上記(4)に記載の方法により測定した結果、29%であった。
熱可塑性樹脂(C)
(C−1)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製、「“プライムポリプロ”(登録商標)J137)」とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製、「“アドマー”(登録商標)QE840」)を重量比85/15でペレットブレンドしたものを用いた。200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、50Pa・sであった。
(C−2)
ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、「“パンライト”(登録商標)L−1225L」(C−2))を用いた。200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、14000Pa・sであった。
難燃剤(D)
(D−1)
リン酸塩系難燃剤(ADEKA(株)製、「“アデカスタブ”(登録商標)FP2200(リン、窒素含有化合物を含有するイントメッセント系難燃剤)」)を用いた。
(D−2)
縮合リン酸エステル系難燃剤(大八化学工業(株)製、「PX−200」)を用いた。
化合物(E)
(E−1)
固体の水添テルペン樹脂(ヤスハラケミカル(株)製、「“クリアロン”(登録商標)P125」、軟化点125℃)を用いた。これを含浸助剤塗布装置内のタンク内に投入し、タンク内の温度を200℃に設定し、1時間加熱して溶融状態にした。この時の、200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、1Pa・sであり、また、溶融粘度変化率を算出した結果、1.2%であった。
(E−2)
固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER1004AF」、軟化点97℃)を、熱可塑性樹脂(C)にポリカーボネート樹脂を用いた際の化合物(E)に用いた。これを、前述したP125と同様にして、溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、1Pa・sであり、また、溶融粘度変化率を算出した結果、1.1%であった。
(実施例1)
(株)日本製鋼所製TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイを設置した長繊維強化樹脂ペレット製造装置を使用し、押出機シリンダー温度を220℃に設定し、上記に示した熱可塑性樹脂(C−1)と難燃剤(D−1)をメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。難燃剤(D)は、(A)〜(D)の合計100重量部に対し、5重量部とした。200℃にて加熱溶融させた化合物(E−1)を、(A)〜(D)の合計100重量部に対し、8重量部となるように吐出量を調整し、炭素繊維(A)および有機繊維(B−1)からなる繊維束(F)の周囲を被覆するように連続的に配置し、付与した後、溶融した熱可塑性樹脂(C−1)および難燃剤(D−1)を含む樹脂組成物を吐出するダイス口(直径3mm)へ供給して、炭素繊維(A)、有機繊維(B−1)および化合物(E−1)からなる複合体(G)の周囲を被覆するように連続的に配置した。この時の繊維束(F)内部断面は、炭素繊維(A)および有機繊維(B)が偏在していた。偏在状態は、炭素繊維(A)、有機繊維(B)のそれぞれ少なくとも一部が、熱可塑性樹脂(C)に接していた。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断し、長繊維ペレットとした。この時、(A)〜(D)の合計100重量部に対し、炭素繊維(A)が20重量部、有機繊維(B)が10重量部となるように、引取速度を調整した。
こうして得られた長繊維ペレットを、射出成形機((株)日本製鋼所製J110AD)を用いて、射出時間:5秒、背圧5MPa、保圧力:20MPa、保圧時間:10秒、シリンダー温度:230℃、金型温度:60℃の条件で射出成形することにより、成形品としてのISO型ダンベル試験片および80mm×10mm×4mm厚の平均繊維長等測定用試験片、125mm×13mm×3mm厚の難燃性評価用試験片、80mm×80mm×2mm厚の落錘衝撃強度測定用試験片を作製した。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。得られた試験片(成形品)を、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間静置後に特性評価に供した。前述の方法により評価した評価結果をまとめて表1に示した。
(実施例2)
(A)〜(D)の合計100重量部に対し、難燃剤(D−1)が20重量部、熱可塑性樹脂(C−1)が50重量部となるようにした以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(参考例1)
有機繊維(B)を(B−4)に変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(参考例2)
(A)〜(D)の合計100重量部に対し、化合物(E)が0重量部となるようにした以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(実施例5)
有機繊維(B)を(B−2)に、熱可塑性樹脂(C)を(C−2)に、難燃剤(D)を(D−2)に、化合物(E)を(E−2)に変更し、さらに、成形温度を300℃に変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(実施例6)
有機繊維(B)を(B−3)に変更した以外は、実施例5と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(参考例3)
繊維束(F)内部において、炭素繊維(A)と有機繊維(B)を均一に混在させた状態にした以外は、実施例5と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(比較例1)
(A)〜(D)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)が0重量部、熱可塑性樹脂(C)が75重量部、また、(A)〜(D)の合計100重量部に対し、化合物(E)が6重量部となるようにした以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表2に示した。
(比較例2)
(A)〜(D)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)が0重量部、熱可塑性樹脂(C)が60重量部、難燃剤(D)が20重量部、また、(A)〜(D)の合計100重量部に対し、化合物(E)が6重量部となるようにした以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表2に示した。
(比較例3)
(A)〜(D)の合計100重量部に対し、炭素繊維(A)が0重量部、熱可塑性樹脂(C)が85重量部、また、(A)〜(D)の合計100重量部に対し、化合物(E)が0重量部となるようにした以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表2に示した。
(比較例4)
(A)〜(D)の合計100重量部に対し、熱可塑性樹脂(C)が70重量部、難燃剤(D)が0重量部となるようにした以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表2に示した。
(比較例5)
有機繊維(B)を(B−5)に、熱可塑性樹脂(C)を(C−2)に、難燃剤(D)を(D−2)に変更し、さらに、成形温度を300℃に変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
実施例1〜2、5〜6いずれの材料も、有機繊維(B)と難燃剤(D)が成形品内に存在しており、高い衝撃強度と高い難燃性を示した。
一方、比較例1では、有機繊維(B)を含まなかったため、繊維補強効果が弱く、衝撃強度および難燃性が低い結果となった。難燃剤(D)の含有量を多くした比較例2では、難燃性は発現したが、比較例1と同様に有機繊維(B)を含まないため、衝撃強度が低い結果となった。比較例3では、炭素繊維(A)を含まないため、衝撃強度および曲げ強度が低い結果となった。比較例4では、難燃剤(D)を含まないため、難燃性が低い結果となった。比較例5では、有機繊維(B)の破断伸度が低いため、繊維補強効果が弱く、衝撃強度が低い結果となった。