JP2020084255A - 無電解ニッケル−リンめっき浴 - Google Patents

無電解ニッケル−リンめっき浴 Download PDF

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Abstract

【課題】耐クラック性に優れためっき皮膜を得ることができる無電解ニッケル−リンめっき浴を提供する。【解決手段】水溶性ニッケル化合物、還元剤、グルタミン酸(塩)、並びに、亜リン酸(塩)を含む、無電解ニッケル−リンめっき浴。【選択図】なし

Description

本発明は、無電解ニッケル−リンめっき浴に関する。
無電解ニッケルめっきは、優れた皮膜特性を有し、更に複雑な形状の物品等に対しても均一に皮膜を形成できることから、電子部品、自動車部品等の各種分野において幅広く利用されている。
無電解ニッケルめっきは、めっき浴に含まれる還元剤の種類により、例えば、無電解ニッケル−リンめっき、無電解ニッケル−ホウ素めっき等に分類される。無電解ニッケルめっきは、還元剤として次亜リン酸塩などを含む無電解ニッケル−リンめっき浴が広く用いられている。無電解ニッケル−リンめっきは、めっき皮膜に含まれるリンの含有率(リン含有率)に応じて、低リン(リン含有率が0.1〜5質量%程度)、中リン(リン含有率が6〜9質量%程度)、及び高リン(リン含有率が10〜13質量%程度)の3タイプに分類される。無電解ニッケル−リンめっき皮膜におけるリン含有率に応じて皮膜特性が異なることから、各種用途に応じて適切なタイプのめっき皮膜が選択されている。
それらリン含有率に応じて、無電解ニッケル−リンめっき皮膜の結晶構造が異なり、例えば、低リンタイプでは微結晶となり、高リンタイプではアモルファスの単一相となることが知られている。無電解ニッケル−リンめっき皮膜は、めっき皮膜形成後、硬度を向上させる為に熱処理が行われ、リン含有率が高い程、高温・長時間の処理が必要となる。熱処理を行うと、結晶構造変化が起こり、皮膜中にNi3Pが形成されることで皮膜硬度が向上する。一方で、リン含有率が高いめっき皮膜の場合、熱処理を行うと、構造変化に伴うNi3P相の相対的な析出量が多い為、割れが発生することがある。この様なめっき皮膜の割れを回避する為、低リンタイプの無電解ニッケル−リンめっき浴が用いられている。
それらリン含有率による分類の他、めっき浴に添加剤として硫黄化合物を含むか否かによっても、無電解ニッケルめっき浴が分類される。めっき浴に硫黄化合物が含まれる場合、析出速度の向上、付き回り性の向上等の利点を有する。一方で、めっき浴に硫黄化合物が含まれる場合、めっき皮膜の耐食性の低下、熱処理後の結晶粒界への硫黄偏析によるめっき皮膜の脆化等を引き起こす等の問題がある(非特許文献1参照)。
従って、無電解ニッケルめっき皮膜の皮膜特性を重視して、硫黄化合物を含まない(硫黄フリー)無電解ニッケルめっき浴が用いられている。
上記従来技術を踏まえ、低リン及び硫黄フリーの無電解ニッケルめっき浴の開発が進められている(例えば、特許文献1〜3等参照)。
また、本発明者等は、水溶性ニッケル化合物、還元剤、グリシン及びグルコン酸塩を含む無電解ニッケル−リンめっき浴を開発している(特許文献4参照)。この無電解ニッケル−リンめっき浴は、連続使用した場合であっても、めっき浴の分解が抑制された、優れた浴安定性を有する低リン及び硫黄フリーの無電解ニッケル−リンめっき浴である。更に、この無電解ニッケル−リンめっき浴を用いて形成しためっき皮膜は、熱処理を行っても脆化が抑制されており、はんだ濡れ性が良好である等、良好な皮膜特性を有する無電解ニッケル−リンめっき皮膜を作製することができる。
特開2008-248318号公報 特開2013-014809号公報 特開2008-285752号公報 特開2018-095926号公報
大同特殊鋼技報「電気製鋼」,58巻,第2号,114-121頁
本発明は、耐クラック性に優れた(割れが発生しない)めっき皮膜を得ることができる無電解ニッケル−リンめっき浴を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、水溶性ニッケル化合物、及び還元剤を含む無電解ニッケル−リンめっき浴に、更に、グルタミン酸(塩)及び亜リン酸(塩)を添加することで、この無電解ニッケル−リンめっき浴を用いることにより、めっき皮膜形成後、例えばこのめっき皮膜に熱処理を実施し、そのめっき皮膜の硬度が上昇しても、耐クラック性に優れためっき皮膜を得ることができることを見出した。
また、亜リン酸(塩)は、これを無電解ニッケル−リンめっき浴に添加することで、安定剤の過剰吸着(カジリ)を抑制したり、めっきの析出速度を安定化したりする効果を発揮する。
即ち、本発明は、以下の項に記載の無電解ニッケル−リンめっき浴、及び当該めっき浴を用いた無電解ニッケル−リンめっき方法を包含する。
項1.
水溶性ニッケル化合物、
還元剤、
グルタミン酸及びグルタミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種、並びに
亜リン酸及び亜リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む、
無電解ニッケル−リンめっき浴。
項2.
前記亜リン酸及び亜リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種は、外添したものである、前記項1に記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
項3.
前記グルタミン酸及びグルタミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を1〜100g/L、並びに、前記亜リン酸及び亜リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を1〜200g/L含む、前記項1又は2に記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
項4.
更に、グリシン及びグルコン酸塩を含む、前記項1〜3のいずれかに記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
項5.
前記グリシンを1〜100g/L、及び前記グルコン酸塩を0.1〜100g/L含む、前記項4に記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
項6.
前記還元剤が、次亜リン酸及び次亜リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種である、前記項1〜5のいずれかに記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
項7.
硫黄化合物を実質的に含まないことを特徴とする、前記項1〜6のいずれかに記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
項8.
前記項1〜7のいずれかに記載の無電解ニッケル−リンめっき浴に、被めっき物を接触させる工程を含む、無電解ニッケル−リンめっき方法。
項9.
前記項1〜7のいずれかに記載の無電解ニッケル−リンめっき浴を製造する方法であって、前記亜リン酸及び亜リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を添加する工程を含む、無電解ニッケル−リンめっき浴を製造する方法。
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴を用いることにより、耐クラック性に優れた(割れが発生しない)めっき皮膜を得ることができる。
従来技術のめっき浴を用いてめっき皮膜を作成し、このめっき皮膜についてエリクセン試験を行った後の結果を表す写真である。 本発明及び比較例のめっき浴を用いてめっき皮膜を形成し、これらめっき皮膜についてエリクセン試験を行った後の結果を表す写真である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書では、「低リン」とはめっき皮膜に含まれるリン含有率が0.1〜5質量%である場合を、「中リン」とはめっき皮膜に含まれるリン含有率が6〜9質量%である場合を、「高リン」とはめっき皮膜に含まれるリン含有率が10〜13質量%である場合を、夫々意味する。めっき皮膜に含まれるリン含有率は、蛍光X線分析装置で測定した値である。
1.無電解ニッケル−リンめっき浴
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、水溶性ニッケル化合物、還元剤、グルタミン酸及びグルタミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種、並びに、亜リン酸及び亜リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴を用いることにより、めっき皮膜形成後、例えばこのめっき皮膜に熱処理を実施し、そのめっき皮膜の硬度が上昇しても、耐クラック性に優れためっき皮膜を得ることができる。
水溶性ニッケル化合物
水溶性ニッケル化合物は特に限定されず、無電解ニッケルめっき浴に用いられる公知のニッケル化合物を用いることができる。水溶性ニッケル化合物は、例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、次亜リン酸ニッケル、炭酸ニッケル等の水溶性ニッケル無機塩;酢酸ニッケル、リンゴ酸ニッケル等の水溶性ニッケル有機塩等、並びにその水和物が挙げられる。水溶性ニッケル化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。水溶性ニッケル化合物を二種以上混合して用いる場合、その混合比率は特に限定的ではなく、適宜決定することができる。
無電解ニッケル−リンめっき浴における水溶性ニッケル化合物の濃度は、無電解ニッケル−リンめっき皮膜を形成できる範囲内であれば特に制限されず、適宜調整することができる。水溶性ニッケル化合物の濃度は、ニッケル金属として、例えば、0.01〜100g/L程度、好ましくは0.5〜50g/L、より好ましくは1〜10g/Lとすることができる。水溶性ニッケル化合物の濃度が、ニッケル金属として、0.01g/L未満であると析出速度が遅くなる場合があり、100g/Lを超えると浴安定性が低下する場合がある為、上記した範囲とすることが好ましい。
還元剤
還元剤は特に限定されず、無電解ニッケル−リンめっき浴に用いられる公知の還元剤を用いることができる。還元剤は、例えば、次亜リン酸、次亜リン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等、並びにその水和物が挙げられる。無電解ニッケル−リンめっき浴では、還元剤が、次亜リン酸及び次亜リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。還元剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。還元剤を二種以上混合して用いる場合、その混合比率は特に限定的ではなく、適宜決定することができる。
無電解ニッケル−リンめっき浴における還元剤の濃度は、低リンタイプの無電解ニッケル−リンめっき皮膜を形成できる範囲内であれば特に制限されず、適宜調整することができる。還元剤(次亜リン酸、次亜リン酸塩、及びその水和物等)の濃度は、例えば、0.1〜100g/L程度、好ましくは1〜50g/L程度、より好ましくは5〜35g/L程度とすることができる。還元剤の濃度が、0.1g/L未満であると析出速度が遅くなる場合があり、100g/Lを超えると浴安定性が低下する場合がある為、上記した範囲とすることが好ましい。
Niの質量/還元剤の質量の比
無電解ニッケル−リンめっき浴は、還元剤(次亜リン酸、次亜リン酸塩、及びその水和物等)に対するニッケル金属の質量比(Niの質量/還元剤の質量)が、0.05〜5.0程度であることが好ましく、0.1〜1.0程度であることがより好ましい。還元剤に対するニッケル金属の質量比を上記した範囲とすることにより、低リンタイプの無電解ニッケル−リンめっき皮膜を生産性良く形成することができる。特に、還元剤に対するニッケル金属の質量比が、0.05未満であるとめっき皮膜中のリン含有率が高くなり、低リンタイプの無電解ニッケル−リンめっき皮膜を形成することができない場合があり、5.0を超えると低リンタイプの無電解ニッケル−リンめっき皮膜を形成できるものの、めっき皮膜の析出速度が低下し、生産効率が低下する場合がある為、上記した範囲とすることが好ましい。
グルタミン酸(塩)
本明細書において、「グルタミン酸及びグルタミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種」を「グルタミン酸(塩)」と表記する。
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、グルタミン酸(塩)を含むことが特徴であり、無電解ニッケル−リンめっき浴を低リン及び硫黄フリーの無電解ニッケル−リンめっき浴としても、グルタミン酸(塩)を含むことで、これを用いることにより、めっき皮膜形成後、硬度を向上させる為に熱処理を実施した場合においても、耐クラック性に優れためっき皮膜を得ることができる。
グルタミン酸(塩)は、特に限定されず、無電解ニッケル−リンめっき浴に用いられる公知のグルタミン酸(塩)を用いることができる。グルタミン酸(塩)は、例えば、グルタミン酸、グルタミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等が挙げられる。グルタミン酸(塩)は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。還元剤を二種以上混合して用いる場合、その混合比率は特に限定的ではなく、適宜決定することができる。
無電解ニッケル−リンめっき浴におけるグルタミン酸(塩)の濃度は、低リンタイプの無電解ニッケル−リンめっき皮膜を形成できる範囲内であれば特に制限されず、適宜調整することができる。グルタミン酸(塩)の濃度は、例えば、1〜100g/L程度、好ましくは2〜50g/L程度、より好ましくは3〜20g/L程度とすることができる。無電解ニッケル−リンめっき浴を低リン及び硫黄フリーの無電解ニッケル−リンめっき浴としても、グルタミン酸(塩)の濃度が、1〜100g/L程度であることで、これを用いることにより、めっき皮膜形成後、硬度を向上させる為に熱処理を実施した場合においても、耐クラック性に優れためっき皮膜を得ることができる。
亜リン酸(塩)
本明細書において、「亜リン酸及び亜リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種」を「亜リン酸(塩)」と表記する。
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、亜リン酸(塩)を含むことが特徴であり、無電解ニッケル−リンめっき浴を低リン及び硫黄フリーの無電解ニッケル−リンめっき浴としても、亜リン酸(塩)を含むことで、これを用いることにより、めっき皮膜形成後、硬度を向上させる為に熱処理を実施した場合においても、耐クラック性に優れためっき皮膜を得ることができる。
亜リン酸(塩)は、特に限定されず、無電解ニッケル−リンめっき浴に用いられる公知の亜リン酸(塩)を用いることができる。亜リン酸(塩)、例えば、亜リン酸、亜リン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等、並びにその水和物が挙げられる。亜リン酸(塩)は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。亜リン酸(塩)を二種以上混合して用いる場合、その混合比率は特に限定的ではなく、適宜決定することができる。
無電解ニッケル−リンめっき浴における亜リン酸(塩)の濃度は、低リンタイプの無電解ニッケル−リンめっき皮膜を形成できる範囲内であれば特に制限されず、適宜調整することができる。亜リン酸(塩)の濃度は、亜リン酸、亜リン酸塩、及びその水和物として、例えば、1〜200g/L程度、好ましくは10〜150g/L程度、より好ましくは50〜120g/L程度とすることができる。無電解ニッケル−リンめっき浴を低リン及び硫黄フリーの無電解ニッケル−リンめっき浴としても、亜リン酸(塩)の濃度が、1〜200g/L程度であることで、これを用いることにより、めっき皮膜形成後、硬度を向上させる為に熱処理を実施した場合においても、耐クラック性に優れためっき皮膜を得ることができる。
また、亜リン酸(塩)は、これを無電解ニッケル−リンめっき浴に添加することで、安定剤の過剰吸着(カジリ)を抑制したり、めっきの析出速度を安定化したりする効果を発揮する。
亜リン酸(塩)の外添
無電解ニッケル−リンめっき浴では、亜リン酸(塩)は、亜リン酸(塩)の濃度が上記範囲と成る様に、外添したものであることが好ましい。
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴では、「還元剤として含まれる次亜リン酸(塩)から由来する亜リン酸(塩)」を、「本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴に含まれる亜リン酸(塩)」とみなさない。本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴では、亜リン酸(塩)は外添したもの、つまり、還元剤とは別に、添加されたものであることが好ましい。
グリシン及びグルコン酸塩
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、錯化剤として、グリシン及びグルコン酸塩を含むことが好ましい。この様に、特定の錯化剤を組み合わせて用いることにより、連続使用した場合であってもめっき浴の分解が抑制された、優れた浴安定性を有する低リン及び硫黄フリーの無電解ニッケル−リンめっき浴とすることができる。
グルコン酸塩は、特に限定されず、無電解ニッケル−リンめっき浴に用いられる公知のグルコン酸塩を用いることができる。グルコン酸塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
無電解ニッケル−リンめっき浴におけるグリシンの濃度は特に限定的ではなく、適宜調整することができる。無電解ニッケル−リンめっき浴は、グリシンを1〜100g/L程度含むことが好ましい。グリシンの濃度は、例えば、1〜100g/L程度、好ましくは2〜50g/L程度、より好ましくは5〜30g/L程度とすることができる。グリシン(錯化剤)の濃度が、1g/L未満であると浴安定性が低下する場合があり、100g/Lを超えると析出速度が低下する場合がある為、上記した範囲とすることが好ましい。
無電解ニッケル−リンめっき浴におけるグルコン酸塩の濃度は特に限定的では、適宜調整することができる。無電解ニッケル−リンめっき浴は、グルコン酸塩を0.1〜100g/L含むことが好ましい。グルコン酸塩の濃度は、例えば、0.1〜100g/L程度、好ましくは0.5〜50g/L程度、より好ましくは1〜20g/L程度とすることができる。グルコン酸塩の濃度が、0.1g/L未満であると浴安定性が低下する場合があり、100g/Lを超えると析出速度が低下する場合がある為、上記した範囲とすることが好ましい。
グリシンの質量/グルコン酸塩の質量の比
無電解ニッケル−リンめっき浴は、グルコン酸塩に対するグリシンの質量比(グリシンの質量/グルコン酸塩の質量)が、1〜20程度であることが好ましく、5〜15程度であることがより好ましい。グルコン酸塩に対するグリシンの質量比が、1未満であるとめっき皮膜におけるリン含有率が高くなり、低リンタイプの無電解ニッケル−リンめっき皮膜を形成することができない場合があり、20を超えるとめっき浴を連続使用した場合にめっき浴の安定性が低下する場合がある為、上記した範囲とすることが好ましい。
Niの質量/グリシンの質量の比
無電解ニッケル−リンめっき浴は、グリシンに対するニッケル金属の質量比(Niの質量/グリシンの質量)が、0.1〜5程度であることが好ましく、0.2〜2程度であることがより好ましい。グリシンに対するニッケル金属の質量比を上記した範囲とすることにより、低リンタイプの無電解ニッケル−リンめっき皮膜を効率良く形成することができる。特に、グリシンに対するニッケル金属の質量比が、0.1未満であると低リンタイプの無電解ニッケル−リンめっき皮膜を形成できるものの、めっき皮膜の析出速度が低下し、生産効率が低下する場合があり、5を超えると安定性が低下する場合がある為、上記した範囲とすることが好ましい。
他の還元剤
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、上記した還元剤に加えて、無電解ニッケルめっき浴に用いられる還元剤(以下、「他の還元剤」と記載する。)を配合することができる。この様な他の還元剤としては、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジンなどが挙げられる。他の還元剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。他の還元剤を二種以上混合して用いる場合、その混合比率は特に限定的ではなく、適宜決定することができる。
無電解ニッケル−リンめっき浴における他の還元剤の濃度としては特に限定的ではなく、適宜調整することができる。他の還元剤の濃度は、例えば、0.5〜50g/L程度とすることができる。還元剤の濃度が、0.5g/L未満であると析出速度が遅くなる場合があり、50g/Lを超えると浴安定性が低下する場合がある為、上記した範囲とすることが好ましい。
他の錯化剤
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、上記した錯化剤に加えて、無電解ニッケルめっき浴に用いられる錯化剤(以下、「他の錯化剤」と記載する。)を配合することができる。この様な他の錯化剤としては、ギ酸、酢酸等のモノカルボン酸又はこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等);マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸又はこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等);リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸又はこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等);エチレンジアミンジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸又はこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等);アラニン、アルギニン等のアミノ酸(但し、グリシンを除く。)などが挙げられる。錯化剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。錯化剤を二種以上混合して用いる場合、その混合比率は特に限定的ではなく、適宜決定することができる。
無電解ニッケル−リンめっき浴における他の錯化剤の濃度としては特に限定的ではなく、適宜調整することができる。他の錯化剤の濃度は、例えば、0.5〜100g/L程度とすることができる。
硫黄化合物
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、添加剤として、硫黄化合物を実質的に含まない(硫黄フリー)ことが好ましい。無電解ニッケル−リンめっき浴は、硫黄化合物を実質的に含まないことにより、硫黄フリーの無電解ニッケル−リンめっき皮膜を提供することができる。
本明細書において、「硫黄化合物」とは、無電解ニッケル−リンめっき処理を行った場合にめっき皮膜中に硫黄が共析する性質を有する化合物を意味する。従って、例えば、水溶性ニッケル化合物である硫酸ニッケル(硫酸イオン)やpH調整剤等として用いられる硫酸は、無電解ニッケル−リンめっき処理を行った場合にめっき皮膜中に硫黄が共析する性質を有する化合物ではないことから、本明細書で定義される「硫黄化合物」には包含されない。
本明細書において、硫黄化合物を「実質的に含まない」とは、無電解ニッケル−リンめっき浴を用いた場合に形成される無電解ニッケル−リンめっき皮膜における硫黄含有率が約0.001〜0.005質量%以下となる場合を意味する。無電解ニッケル−リンめっき皮膜における硫黄含有率は、燃焼法による炭素・硫黄分析装置などにより測定することができる。従って、硫黄化合物を「実質的に含まない」とは、無電解ニッケル−リンめっき浴における硫黄化合物の濃度が、無電解ニッケル−リンめっき皮膜に含まれる硫黄成分が上記した数値範囲を超えない程度の微量である場合を除外するものではなく、めっき浴に硫黄化合物が全く含まれないことのみを意味するものではない。
即ち、本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴では、無電解ニッケル−リンめっき皮膜に硫黄成分が上記した数値範囲を超えない程度、硫黄化合物が微量に含まれていてもよく、硫黄化合物が完全に含まれないことが好ましい。硫黄化合物としては、例えば、促進剤として用いられるチオ硫酸又はその塩(例えば、ナトリウム塩等)、安定剤として用いられるチオ尿素等が挙げられる。
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、添加剤として、硫黄化合物を実質的に含まないにも関わらず、硫黄化合物を含むめっき浴と同等の析出速度でめっき処理を行うことができる。
安定剤、pH調整剤、界面活性剤等
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、上記した成分の他、必要に応じて、無電解ニッケルめっき浴に用いられる公知の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、安定剤、pH調整剤、界面活性剤等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、鉛化合物(例えば、硝酸鉛、酢酸鉛等)、カドミウム化合物(例えば、硝酸カドミウム、酢酸カドミウム等)、タリウム化合物(例えば、硫酸タリウム、硝酸タリウム、等)、アンチモン化合物(例えば、塩化アンチモン、酒石酸アンチモニルカリウム等)、テルル化合物(例えば、テルル酸、塩化テルル等)、クロム化合物(例えば、酸化クロム、硫酸クロム等)、鉄化合物(例えば、硫酸鉄、塩化鉄等)、マンガン化合物(例えば、硫酸マンガン、硝酸マンガン等)、ビスマス化合物(例えば、硝酸ビスマス、酢酸ビスマス等)、スズ化合物(例えば、硫酸スズ、塩化スズ等)、セレン化合物(例えば、セレン酸、亜セレン酸等)、シアン化物(例えば、メチルシアニド、イソプロピルシアニド等)、アリル化合物(例えば、アリルアミン、ジアリルアミン等)等が挙げられる。
安定剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。安定剤を二種以上混合して用いる場合、その混合比率は特に限定的ではなく、適宜決定することができる。
無電解ニッケル−リンめっき浴における安定剤の濃度としては特に限定的ではなく、例えば、0.10〜100mg/L程度とすることができる。無電解ニッケル−リンめっき浴の安定性を向上させる目的で、安定剤の濃度を0.10mg/L程度以上とすることが好ましい。安定剤の濃度が100mg/Lを超えると、被処理物のめっき皮膜が形成されない箇所(未析出箇所)が発生する場合がある為、上記した範囲とすることが好ましい。
pH調整剤としては、塩酸、硫酸、リン酸等の酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等のアルカリを用いることができる。
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴のpHは、3〜12程度が好ましく、4〜9程度がより好ましい。めっき浴のpHは上記したpH調整剤を用いて調整することができる。pHが、3未満であると未析出が発生する場合があり、12を超えると浴安定性が低下する場合がある為、上記した範囲とすることが好ましい。
界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性等の各種界面活性剤を用いることができる。例えば、芳香族又は脂肪族スルホン酸アルカリ塩、芳香族又は脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。界面活性剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。界面活性剤を二種以上混合して用いる場合、その混合比率は特に限定的ではなく、適宜決定することができる。
無電解ニッケル−リンめっき浴における界面活性剤の濃度としては特に限定的ではなく、例えば、0.01〜1000mg/L程度とすることができる。無電解ニッケル−リンめっき浴のピット防止の効果を出す目的で、界面活性剤の濃度を0.01mg/L程度以上とすることが好ましい。界面活性剤の濃度が、1000mg/Lを超えると、発泡によって析出性が低下する場合がある為、上記した範囲とすることが好ましい。
低リン及び硫黄フリーの無電解ニッケル−リンめっき浴
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、低リンタイプの無電解ニッケル−リンめっき浴であることが好ましい。「低リン」とはめっき皮膜に含まれるリン含有率が0.1〜5質量%である場合であり、リン含有率は蛍光X線分析装置で測定することができる。
低リンタイプの無電解ニッケル−リンめっき浴は、これを用いて、めっき皮膜を形成後、熱処理を行っても、めっき皮膜に割れが発生しないので、好ましい。
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、低リン及び硫黄フリーであり、これを連続使用した場合であってもめっき浴の分解が抑制された、優れた浴安定性を有する。一般に、めっき浴を連続使用できるか否かは工業的にめっき浴を用いる場合に重視される要素であり、この点は有利である。
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴を用いて、めっき皮膜を形成すると、熱処理を行っても脆化が抑制されており、はんだ濡れ性が良好である等、良好な皮膜特性を有する。
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は低リン(リン含有率が0.1〜5質量%程度)及び硫黄フリー(硫黄化合物非含有)を維持しながら、これを用いてめっき皮膜形成後、硬度を向上させる為に熱処理を実施した場合においても、耐クラック性に優れた(割れが発生しない)めっき皮膜を得ることができる。
2.無電解ニッケル−リンめっき浴の製造方法
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、前記の通り、水溶性ニッケル化合物、還元剤、グルタミン酸(塩)、並びに、亜リン酸(塩)を含み、前記亜リン酸(塩)は、外添したものであることが好ましい。
本発明は、前記無電解ニッケル−リンめっき浴を製造する方法であって、前記亜リン酸(塩)を添加する工程を含む、無電解ニッケル−リンめっき浴を製造する方法を包含する。
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴では、前記の通り、「還元剤として含まれる次亜リン酸(塩)から由来する亜リン酸(塩)」を、「本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴に含まれる亜リン酸(塩)」とみなさない。本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴では、亜リン酸(塩)は外添したもの、つまり、還元剤とは別に、添加されたものであることが好ましい。
3.無電解ニッケル−リンめっき方法
本発明は、更に、前記の無電解ニッケル−リンめっき浴を用いた無電解ニッケル−リンめっき方法を包含する。
本発明の無電解ニッケル−リンめっき方法は、前記の無電解ニッケル−リンめっき浴に、被めっき物を接触させる工程を含む。本明細書では、この工程を「めっき工程」と記載する場合がある。
被めっき物としては、特に限定されず、従来、無電解ニッケルめっきの対象とされている各種材料を用いることができる。被めっき物は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、又はこれらの合金等の無電解ニッケルめっきの還元析出に対して触媒性のある金属が挙げられる。また、銅、アルミ等の無電解ニッケルめっきの還元析出に対して触媒性のない金属、ガラス、セラミックス等も用いることができ、この場合、常法に従って、めっき工程の前に被めっき物にパラジウム核等の金属触媒核を付着させたものを用いることができる。
めっき工程において、無電解ニッケル−リンめっき浴に被めっき物を接触させる方法としては、特に限定的ではなく、常法に従って行うことができる。めっき工程は、例えば、被めっき物を前記の無電解ニッケル−リンめっき浴に浸漬する方法等が挙げられる。
めっき処理条件(例えば、浴温、めっき処理時間等)については、低リンタイプの無電解ニッケル−リンめっき皮膜が形成される条件であれば特に制限されず、適宜決定することができる。
めっき工程における無電解ニッケル−リンめっき浴の浴温は、めっき浴の組成等に応じて適宜決定することができる。めっき工程における無電解ニッケル−リンめっき浴の浴温は、例えば、25℃程度以上とすることができ、40〜100℃程度とすることが好ましく、70〜95℃程度とすることがより好ましい。浴温が25℃未満であるとめっき皮膜の析出速度が遅く、生産効率が低下する場合がある為、上記した範囲とすることが好ましい。
めっき工程における処理時間は、特に限定的ではなく、被めっき物に必要な膜厚の無電解ニッケル−リンめっき皮膜が形成されるまでの時間とすることができる。めっき工程における処理時間は、具体的には、めっき浴の組成、被めっき物の種類等に応じて適宜決定することができ、例えば、1〜1,000分程度、好ましくは5〜600分とすることができる。
また、本発明の無電解ニッケル−リンめっき方法は、上記しためっき工程の他、必要に応じて、他の工程を含むことができる。
本発明の無電解ニッケル−リンめっき方法によれば、熱処理を行っても脆化が抑制されており、はんだ濡れ性が良好であるなど、良好な皮膜特性を有する無電解ニッケル−リンめっき皮膜を提供することができる。
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴が硫黄化合物を実質的に含まない場合、当該無電解ニッケル−リンめっき浴を用いる無電解ニッケル−リンめっき方法によれば、形成される無電解ニッケル−リンめっき皮膜には硫黄成分が実質的に含まれないことから、形成される無電解ニッケル−リンめっき皮膜は、熱処理による脆化が抑制される。
従って、本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴及び当該めっき浴を用いる無電解ニッケル−リンめっき方法は、めっき皮膜の硬度向上を目的として熱処理が施される部材、電子部品の接合などの熱がかかる環境下において使用される部材などに好ましく適用することができる。この様な部材としては、例えば、はんだ接合、焼結処理を行う接合点に用いられる部材、高温動作環境の半導体部品等が挙げられる。
本発明は、低リン及び硫黄フリーの無電解ニッケル−リンめっき浴であり、これを用いることにより、めっき皮膜形成後、硬度を向上させる為に熱処理を実施した場合においても、耐クラック性に優れた(割れが発生しない)めっき皮膜を得ることができる。
鉄板、アルミ板等平板にめっきをする場合、通常、熱処理を行うだけではクラックは発生しない。しかしながら、セラミックスに銅回路を直接接合した(Direct Bonded Copper、DBC)基板、セラミックスにアルミニウム回路を直接接合した(Direct Bonded Aluminum、DBA)基板、ウェハ上のアルミ電極等へめっきを行い、熱処理を行うと、熱処理を行うだけでクラックが発生する場合がある。これは、DBC基板、DBA基板、電極等と、とめっき皮膜との間で、それらの熱膨張係数の違いが一因として考えられる。
本発明では、被めっき物は、パワーモジュールのウェハや、DBC基板、DBA基板等に良好に適用することができる。これらめっき物の製造では、はんだ付けを行う場合が多く、その温度は例えば350度程度と高温の場合がある。そして、そのはんだ接合を行う過程で、形成しためっき皮膜の硬度が上昇してしまう場合もある。
本件発明の無電解ニッケル−リンめっき浴を用いることで、パワーモジュールのウェハや、DBC基板、DBA基板等にめっき皮膜を形成する際に、その形成しためっき皮膜の硬度が上昇しても、耐クラック性に優れためっき皮膜を得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
本発明は下記の例に限定されるものではない。
1.めっき浴の調製
実施例の無電解ニッケル−リンめっき浴を、表1に記載の組成に従って調製した。
被めっき物としてアルミ板(A5052材)を使い、前記調製した各無電解ニッケルリン−めっき浴中(浴温90℃)に被めっき物を浸漬することにより、膜厚3μmの無電解ニッケル−リンめっき皮膜を形成した。
形成しためっき皮膜に含まれるリン含有率を蛍光X線分析装置で測定した。
形成しためっき皮膜に含まれる硫黄含有率を燃焼法による炭素・硫黄分析装置により測定した。めっき皮膜に含まれる硫黄含有率が検出限界(0.0005質量%)以下である場合は、「ND」と表す。
表1より、実施例のめっき浴は、めっき皮膜に含まれるリン含有率が低リンタイプのめっき浴であることが確認された。
表1より、実施例のめっき浴の硫黄含有率は検出限界以下であることが確認された。
2.めっき皮膜特性の評価:クラック評価
調製した無電解ニッケル−リンめっき浴を用いて、アルミ板(A5052)を被めっき物として、浴温90℃の無電解ニッケルめっき−リン浴中に被めっき物を浸漬することにより、膜厚3μmの無電解ニッケル−リンめっき皮膜を形成した。
エリクセン試験機による押し込み試験
膜厚:3μm
押し込み幅:1mm
350℃、30分熱処理前後
耐クラック性の評価は、熱処理前後の皮膜をエリクセン試験機で1mm押し込み、押し込み後に発生するクラックの状態を確認した。平板で確認する場合は、熱処理後に外力を加えることで故意にクラックを発生させ、そのクラックの程度により耐クラック性の優劣をつけた。
図1は、従来技術のめっき浴を用いてめっき皮膜を作成し、このめっき皮膜についてエリクセン試験を行った後の結果を表す写真である。従来技術の結果から、これら無電解ニッケル−リンめっき浴を用いて形成しためっき皮膜は、めっき皮膜に割れが発生し、十分な耐クラック性を示すめっき皮膜を得ることができない。
図2は、本発明及び比較例のめっき浴を用いてめっき皮膜を形成し、これらめっき皮膜についてエリクセン試験を行った後の結果を表す写真である。比較例の結果から、これら無電解ニッケル−リンめっき浴を用いて形成しためっき皮膜は、めっき皮膜に割れが発生し、十分な耐クラック性を示すめっき皮膜を得ることができない。
本発明の結果から、この無電解ニッケル−リンめっき浴を用いて形成しためっき皮膜は、めっき皮膜に割れは発生せず、耐クラック性により優れためっき皮膜を得ることができる。特に、本発明によれば、350℃、30分の熱処理でも、良好な耐クラック性が得られた。つまり、無電解ニッケル−リンめっき浴は、低リン及び硫黄フリーの無電解ニッケル−リンめっき浴とすることができ、これを用いることにより、めっき皮膜形成後、このめっき皮膜に熱処理を実施し、そのめっき皮膜の硬度が上昇しても、めっき皮膜に割れは発生せず、耐クラック性により優れためっき皮膜を得ることができる。

Claims (9)

  1. 水溶性ニッケル化合物、
    還元剤、
    グルタミン酸及びグルタミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種、並びに
    亜リン酸及び亜リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む、
    無電解ニッケル−リンめっき浴。
  2. 前記亜リン酸及び亜リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種は、外添したものである、請求項1に記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
  3. 前記グルタミン酸及びグルタミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を1〜100g/L、並びに、前記亜リン酸及び亜リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を1〜200g/L含む、請求項1又は2に記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
  4. 更に、グリシン及びグルコン酸塩を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
  5. 前記グリシンを1〜100g/L、及び前記グルコン酸塩を0.1〜100g/L含む、請求項4に記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
  6. 前記還元剤が、次亜リン酸及び次亜リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
  7. 硫黄化合物を実質的に含まないことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の無電解ニッケル−リンめっき浴に、被めっき物を接触させる工程を含む、無電解ニッケル−リンめっき方法。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の無電解ニッケル−リンめっき浴を製造する方法であって、前記亜リン酸及び亜リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を添加する工程を含む、無電解ニッケル−リンめっき浴を製造する方法。
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