JP2020083870A - N−メチル−2−ピロリドンの精製方法、精製装置、回収精製方法、及び回収精製システム - Google Patents

N−メチル−2−ピロリドンの精製方法、精製装置、回収精製方法、及び回収精製システム Download PDF

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Abstract

【課題】水を含有するN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液から不純物であるN−メチルスクシンイミドやγ−ブチロラクトンを効率よく除去する。【解決手段】NMP溶液をスチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂に通液する。【選択図】図1

Description

本発明は、水を含有するN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略すことがある。N−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピロリドンなどとも呼ばれる)を精製する方法及び装置に関し、特に、N−メチルスクシンイミドやγーブチロラクトンを不純物として含む含水NMPを精製する方法及び装置と、NMPを回収して精製する方法及びシステムとに関する。
NMPは、リチウムイオン二次電池の電極、特に正極を製造する際に分散媒として広く用いられている。リチウムイオン二次電池の各電極すなわち正極や負極の主要な構成材料は、電極活物質、集電体及びバインダーである。バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を分散媒であるNMPに溶解させたものを使用するのが一般的である。電極は、電極活物質とバインダーとを混合したスラリーを集電体上に塗布し、空気中すなわち酸素の存在下で加熱によってNMPを蒸発させることによって製造される。電極製造に使用されたNMPは、空気中に放出されることになるので回収装置により回収される。NMPは水と混和する性質を有し、回収されたNMPは、例えば20質量%程度までの水分を含んでいる。また、NMPを空気中で加熱した場合には、空気中の酸素との反応物であるN−メチルスクシンイミドが生成する。したがって、例えばリチウムイオン二次電池の電極製造工程から回収されたNMPにはN−メチルスクシンイミドが含まれていることになる。また、NMPは、工業的にはγ−ブチロラクトンとメチルアミンとの脱水縮合反応を利用して製造されるため、製品NMP中にはγ−ブチロラクトンが残留していることがある。空気中でNMPを加熱したとしても新たにγ−ブチロラクトンが生成することはほとんどないと考えられるが、電極製造工程においてγ−ブチロラクトンはNMP中に残留し続けるので、回収したNMPにもγ−ブチロラクトンが含まれている可能性があり、酸化などによってNMPが減少する分、γ−ブチロラクトンの濃度が相対的に上昇する可能性もある。
リチウムイオン二次電池の製造に用いられるNMPは、水分や金属などの不純物を除去した高純度のものであることが求められている。リチウムイオン二次電池の電極製造工程から回収されたNMPを再利用することが好ましいが、回収されたNMPには、上述のN−メチルスクシンイミドやγ−ブチロラクトン、その他の有機不純物、さらには金属不純物などが含まれている。再利用のためには回収したNMPを精製することが必要となり、NMPのリサイクルに適した各種の精製方法が提案されている。例えば特許文献1は、アンカー基としてスルホン酸基を有する強酸性マクロ孔質カチオン交換体を用いることにより、NMPなどのN−置換ラクタムからアミン類や金属イオンを除去することを開示している。特許文献2は、回収したNMPを蒸留によって精製することを開示している。また特許文献2は、回収されたNMPに含まれる不純物の例として、水の沸点とNMPの沸点との間の沸点を有するギ酸などの軽沸成分と、NMPに由来するγ−ブチルラクトンやN−メチルスクシンイミドなどの高沸成分とを挙げている。
特許文献3は、PVDFなどをNMPに溶解させたときに着色を生じないようにするため、着色の原因となる不純物である塩基性物質を、酸性物質により中和させるか多孔性物資によって吸着させることにより、NMPからあらかじめ除去することを開示している。特許文献3では、酸性物質の一例としてイオン交換樹脂を挙げており、イオン交換樹脂にはアニオン交換樹脂も含まれるが、実際にはアニオン交換樹脂は固体塩基であって、塩基性物質を中和することはできない。また特許文献3において処理対象となるNMPは、例えばγ−ブチロラクトンとアンモニアあるいはアミン類との反応によって得られたものであり、基本的には水分をほとんど含んでいない。特許文献4は、腐食の要因となる酸をNMPから除去するために、NMPをアニオン交換樹脂に通液することを開示している。好ましい実施形態として、アクリル系の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライト(登録商標) IRA458を用いた例が示されている。
特開2000−256314号公報 特開2012−188369号公報 特開平11−71346号公報 英国特許出願公開第2088850号明細書
リチウムイオン二次電池の生産などに用いられるNMPは高純度であることが求められるので、工程から回収したNMPを再利用する場合には、回収NMP中に含まれるN−メチルスクシンイミドやγ−ブチロラクトンなどの不純物を除去する必要がある。特許文献2に示されるような蒸留法によれば原理的にはN−メチルスクシンイミドを除去することが可能であるが、NMPの沸点が202℃であるのに対してN−メチルスクシンイミドの沸点は235℃であって両者の沸点の温度差は小さい。同様にγーブチロラクトンの沸点は204℃であって、NMPとの沸点の温度差はさらに小さい。そのため、水(沸点:100℃)を含有するNMP溶液を蒸留して脱水NMPを得る際に、脱水NMP中のN−メチルスクシンイミドやγ−ブチロラクトンの濃度を低下させるためには、複雑な蒸留操作が必要となる。特にγ−ブチロラクトンは、その沸点がNMPの沸点に非常に近いので、蒸留操作によって取り除くことが難しい。NMPを蒸留法で精製して繰り返し使用する場合には、NMP中にγ−ブチロラクトンが不純物として残り続け、酸化などによってNMPが減少する場合には、相対的にγ−ブチロラクトンが増えることになる。したがって、蒸留を行う前の段階でNMP溶液からN−メチルスクシンイミドとγ−ブチロラクトンを除去することが望まれる。また、NMP溶液を脱水する方法として浸透気化を利用する方法もあるが、浸透気化ではNMPとN−メチルスクシンイミドとを分離することはできないから、浸透気化を行う前の段階でNMP溶液からN−メチルスクシンイミドを除去する必要がある。
特許文献1,3,4には、NMPに含まれる塩基性物質や酸、アミン、金属イオンなどを除去することが開示されているが、NMPからN−メチルスクシンイミドとγ−ブチロラクトンを除去すること、特に、水を含有するNMP溶液からN−メチルスクシンイミドとγ−ブチロラクトンを除去することについては開示も示唆もされていない。
本発明の目的は、水を含有するNMP溶液から不純物であるN−メチルスクシンイミドとγ−ブチロラクトンを効率よく除去することができる精製方法及び精製装置と、製造工程などからNMP溶液を回収して再利用のために精製する回収精製方法及び回収精製システムとを提供することにある。
本発明の精製方法は、N−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンの少なくとも一方を不純物として含有する、水を含有するN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を精製する精製方法において、NMP溶液をスチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂に通液する不純物除去工程を有することを特徴とする。
本発明の精製装置は、N−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンの少なくとも一方を不純物として含有する、水を含有するNMP溶液を精製する精製装置において、スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂を充填したイオン交換装置を備え、NMP溶液がイオン交換装置を通液することを特徴とする。
本発明の回収精製方法は、N−メチル−2−ピロリドンを使用するNMP使用工程から再利用のためにN−メチル−2−ピロリドンを回収して精製する回収精製方法において、NMP使用工程から、水を含有するN−メチル−2−ピロリドン溶液の形態でN−メチル−2−ピロリドンを回収するNMP回収工程と、N−メチル−2−ピロリドン溶液をスチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂に通液する不純物除去工程と、を有し、不純物除去工程において、N−メチル−2−ピロリドン溶液からN−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンの少なくとも一方を除去することを特徴とする。
本発明の回収精製方法は、N−メチル−2−ピロリドンを使用するNMP使用システムから再利用のためにN−メチル−2−ピロリドンを回収して精製する回収精製システムにおいて、NMP使用システムから、水を含有するN−メチル−2−ピロリドン溶液の形態でN−メチル−2−ピロリドンを回収するNMP回収手段と、スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂が充填されてN−メチル−2−ピロリドン溶液が通液するイオン交換装置と、を備え、イオン交換装置においてN−メチル−2−ピロリドン溶液からN−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンの少なくとも一方が除去されることを特徴とする。
本発明によれば、スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂にNMP溶液を通液することで、後述の実施例からの明らかになるように、NMP溶液中のN−メチルスクシンイミドやγ−ブチロラクトンを効率的に除去することが可能になる。
本発明の実施の一形態の精製装置の構成を示す図である。 蒸留装置を備える別の実施形態の精製装置の構成を示す図である。 浸透気化装置を備える別の実施形態の精製装置の構成を示す図である。 NMPの回収精製システムの構成の一例を示す図である。 NMPの回収精製システムの構成の別の例を示す図である。
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の一形態の精製装置を示している。図1に示す精製装置は、水を含有するNMP溶液からN−メチルスクシンイミドやγ−ブチロラクトンなどの不純物を除去する不純物除去装置10によって構成されている。不純物除去装置10は、イオン交換装置であるイオン交換樹脂塔11を備えており、イオン交換樹脂塔11には、イオン交換樹脂12が充填されている。イオン交換樹脂塔11には、水を含有するNMP溶液をイオン交換樹脂塔11に供給する供給配管13と、イオン交換樹脂塔11を通過したNMP溶液を排出する排出配管14とが接続している。
イオン交換樹脂塔11に充填されるイオン交換樹脂12について説明する。イオン交換樹脂塔11には、スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂が少なくとも充填される。スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂12とは、スチレンの重合体またはスチレンを含む共重合体によって樹脂の骨格が形成されている強塩基性アニオン交換樹脂のことである。スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂にカチオン交換樹脂を混合したものをイオン交換樹脂塔11に充填してもよい。本発明で用いることができるスチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂としては、ダウ・ケミカル社製のアンバージェット(登録商標) 4002、同社製のアンバーライト(登録商標)IRA900、同社製のDOWEX MARATHON(登録商標) MSA、三菱ケミカル社製のDIAION(登録商標) PA308などが挙げられる。スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂の形態は、ゲル型であってもMR型(マクロ孔質型)であってもよいが、非水溶媒であるNMPを含む液体を処理することから、MR型であることが好ましい。
次に、図1に示す精製装置を用いたNMP溶液の精製について説明する。ここでは、リチウムイオン二次電池の電極製造工程から回収される使用済みのNMP溶液を精製する場合を説明する。使用済みのNMP溶液は、回収時に用いた水を含有している。またリチウムイオン二次電池の電極製造工程では、大気中すなわち酸素の存在下で加熱によってNMPを蒸発させるので、NMPの一部が酸化してN−メチルスクシンイミドが生成する。したがって、使用済みのNMP溶液は、不純物としてN−メチルスクシンイミドを含んでいる。また、NMPの製造時に未反応のまま残留したγ−ブチロラクトンを不純物として含んでいる可能性がある。使用済みのNMP溶液は、供給配管13に送液されてイオン交換樹脂塔11に供給される。イオン交換樹脂塔11に供給されたNMP溶液は、イオン交換樹脂12内を拡散しながら流通し、その際、NMP溶液に不純物として含まれるN−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンはアニオン交換樹脂に吸着され、NMP溶液中から除去される。その結果、N−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンが除去されたNMP溶液が、排出配管14から除去される。
イオン交換樹脂塔11に対するNMP溶液の供給量は、イオン交換樹脂塔11内でのNMP溶液の通液量が空間速度SV(space velocity)で表して、好ましくは10hr-1以下、すなわち、1時間当たりイオン交換樹脂12の体積の10倍以下となるように設定する。
図2は、本発明の別の実施形態の精製装置を示している。この精製装置は、図1に示す精製装置において、イオン交換樹脂塔11の後段に蒸留装置として蒸留塔20を配置し、蒸留によりNMP溶液から水や不純物を除去して精製NMPを得るようにしている。排出配管14の排出端が蒸留塔20の入口に接続している。この精製装置では、イオン交換樹脂塔11においてN−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンが除去されたNMP溶液が蒸留塔20に供給されるので、蒸留塔20としてより簡素な構造のものを使用しつつ簡易な蒸留操作によって、蒸留塔20から高純度のすなわちN−メチルスクシンイミドやγ−ブチロラクトンなどの不純物をほとんど含まない精製NMPを得ることができる。
図3は、本発明のさらに別の実施形態の精製装置を示している。この精製装置は、図1に示す精製装置において、イオン交換樹脂塔11の後段に浸透気化装置30を配置し、浸透気化処理によってNMP溶液から水を除去し、精製NMPを得るものである。浸透気化装置30の内部には、例えばゼオライトなどからなる浸透気化膜31が設けられている。イオン交換樹脂塔11から排出されたNMP溶液は、排出配管14を介して浸透気化装置30に供給される。水は浸透気化膜31を透過するが他の成分は浸透気化膜31を透過しないことにより、浸透気化装置30の透過側出口から水が水蒸気として排出されるとともに、濃縮側出口から精製NMPが排出される。この精製装置では、イオン交換樹脂塔11においてN−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンが除去されたNMP溶液が浸透気化装置30に供給されるので、浸透気化装置30からは、N−メチルスクシンイミドやγ−ブチロラクトンをほとんど含まない高純度の精製NMPを得ることができる。なお、浸透気化装置30の濃縮側出口から得られた精製NMPを蒸留装置に供給して、より純度の高い精製NMPを得るようにしてもよい。
以上では、リチウムイオン二次電池の電極製造工程から回収される使用済みのNMP溶液を精製する場合を例に挙げて、本発明に基づく精製装置を説明した。しかしながら本発明に基づく精製装置が対象とするNMP溶液は、リチウムイオン二次電池の電極製造工程から回収されるものに限定されるものではない。例えば、γ−ブチロラクトンとメチルアミンとの脱水縮合反応を利用してNMPを製造するときに、製造されたNMP中に含まれる未反応のγ−ブチロラクトンを除去し、製品NMPの純度を高めるときにも使用することができる。
次に、本発明に基づく精製装置を利用したNMPの回収精製システムについて説明する。NMPの精製回収システムとは、再利用を目的として、例えばリチウムイオン二次電池製造システムなどのNMP使用システムあるいはNMP使用工程からNMPを回収して精製するシステムのことである。図4は、NMPの回収精製システムの構成の一例を示している。図示される回収精製システムは、NMP使用システム50から気体の形態で排出されるNMPを回収し、回収されたNMPを精製して再利用のためにNMP使用システム50に供給する。
NMP使用システム50からは、配管51を介してNMPが排出される。この回収精製システムは、このNMPを回収して精製するが、回収NMPが気体であるとイオン交換樹脂で処理することが困難であるので、NMP回収手段として、水スクラバー52が設けられている。NMP使用システム50から配管51を介して送られてきた回収NMPは、水スクラバー52において水と接触して水に吸収される。その結果、水スクラバー52からは、水を含有するNMP溶液が排出されることになる。この水を含有するNMP溶液は、供給配管13を経て、図1を用いて説明した精製装置の不純物除去装置10に供給される。その結果、回収NMPに含まれていたN−メチルスクシンイミドやγ−ブチロラクトンなどの不純物は不純物除去装置10によって除去され、不純物が除去されたNMP溶液は排出配管15から排出される。NMP使用システム50から回収したNMPを再利用する場合、一般にはNMPに含まれる水分を除去する必要があるから、排出配管14の出口には脱水装置55が設けられる。脱水装置55としては、例えば、蒸留によるもの、あるいは浸透気化膜によるものを使用することができる。脱水装置55で脱水されたNMPは、精製NMPとして、配管56を介してNMP使用システム50に供給される。
図5は、本発明に基づく精製装置を組み込んだ回収精製システムのより具体的な例を示している。ここでは、リチウム二次電池製造システムからNMPを回収して精製し、精製NMPを再びリチウム二次電池製造システムに供給する場合を説明する。ここでは、リチウム二次電池製造システムから気体状態で回収されたNMPは、既に水スクラバーなどのNMP回収手段(図5には図示せず)によって処理され、その結果、不純物を含有するNMP水溶液の形態で供給されるものとする。リチウム二次電池製造システムに供給される精製NMPは無水のものである必要があり、回収精製システムは、回収されたNMP水溶液中の不純物を除去して精製した上で、NMP水溶液の脱水処理を行う。図中、CWは冷却水を、BR1,BR2はブラインを、STは高温蒸気を意味する。
回収精製システム1は、回収したNMP水溶液から微粒子、溶存酸素、イオン成分等の不純物を除去し、特にN−スクシンイミドとγ−ブチロラクトンとを不純物として除去する第1のサブシステム100と、不純物等が除去されたNMP水溶液から浸透気化膜装置によって水分のほとんどを除去してNMP濃縮液を生成する第2のサブシステム200と、NMP濃縮液をさらに蒸留してNMP精製液を生成する第3のサブシステム300と、を有している。以下、個々のサブシステムの構成を説明する。
(第1のサブシステム100)
第1のサブシステム100は、原液タンク101を備えており、リチウムイオン二次電池製造システムから回収された処理対象のNMP水溶液は、水スクラバーなどのNMP回収手段(図示せず)と接続された第1のNMP水溶液供給ライン151によって原液タンク101に供給される。原液タンク101は第2のNMP水溶液供給ライン152を介して、NMP水溶液に含まれる微粒子を除去する第1の精密ろ過膜装置102と接続されている。第2のNMP水溶液供給ライン152上にはNMP水溶液を圧送するポンプ107が設けられている。第1の精密ろ過膜装置102は膜脱気装置103(後述)の上流に設けられているが、膜脱気装置103の下流、すなわち膜脱気装置103とイオン交換装置104(後述)との間に設けられてもよく、あるいは、膜脱気装置103の上流と、膜脱気装置103とイオン交換装置104との間の両方に設けられてもよい。
第1の精密ろ過膜装置102は第3のNMP水溶液供給ライン153を介して、NMP水溶液中の溶存酸素を除去する膜脱気装置103と接続されている。後述するように、NMP水溶液は浸透気化膜装置201に導入される前に120℃程度まで加熱されるが、この加熱によってNMP水溶液中に含まれる溶存酸素が過酸化水素になり、この過酸化水素がNMPを酸化させ、NMPを劣化させる可能性がある。ここでは、NMPの酸化の抑制のため、予めNMP水溶液中の溶存酸素を除去する。膜脱気装置103の脱気膜は、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリウレタン、エポキシ樹脂などから形成することができる。NMPは一部の有機材料を溶解させる性質があるため、脱気膜はポリオレフィン、PTFEまたはPFAで形成することが好ましい。脱気膜は非多孔性であることが好ましい。中空糸状の脱気膜の内部を流れるNMP水溶液の溶存酸素が、真空ポンプ109によって負圧にされた脱気膜の外部に移動することによって、脱気、すなわち溶存酸素の除去が行われる。なお、脱気膜の外側(ガス透過側)に窒素ガス等の不活性ガスをスウィープして酸素分圧を下げてもよく、真空法とスウィープ法を併用してもよい。
膜脱気装置103は第4のNMP水溶液供給ライン154を介してイオン交換装置104と接続されている。イオン交換装置104は、NMP水溶液中のイオン成分を除去するとともに、N−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンを除去するために設けられている。N−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンを除去するので、イオン交換装置104には、スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂が少なくとも充填される。さらに、除去すべきイオン成分の種類によっては、カチオン交換樹脂がイオン交換装置104に充填されていてもよい。カチオン交換樹脂とスチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂とを併用する場合には、混床で用いても複層床で用いてもよい。イオン交換樹脂の種類は、ゲル型、MR型のいずれでもよいが、NMP水溶液を対象とするので、MR型の方が好ましい。
イオン交換装置104は第5のNMP水溶液供給ライン155を介して第2の精密ろ過膜装置105と接続されている。第2の精密ろ過膜装置105はイオン交換装置104から流出する可能性のある樹脂を捕捉し、樹脂の下流への流出を防止する。第2の精密ろ過膜装置105は第6のNMP水溶液供給ライン156を介して、1次処理液槽106と接続されている。1次処理液槽106は、第1の精密ろ過膜装置102、膜脱気装置103、イオン交換装置104及び第2の精密ろ過膜装置105で処理されたNMP水溶液を受け入れ、受け入れたNMP水溶液を浸透気化膜装置201に供給する。以下、1次処理液槽106に貯留され、浸透気化膜装置201に供給されるNMP水溶液を1次処理液という場合がある。
(第2のサブシステム200)
微粒子と溶存酸素とイオン成分が除去され1次処理液槽106に貯蔵された1次処理液は、次に第2のサブシステム200に供給され、ほとんどの水分が除去されたNMP濃縮液が生成される。1次処理液槽106は第7のNMP水溶液供給ライン251を介して、浸透気化膜装置201に接続されている。第7のNMP水溶液供給ライン251にはポンプ224が設けられている。第7のNMP水溶液供給ライン251には外部蒸気を用いた第1のヒータ205と、第1のヒータ205の上流(一次側)に位置する廃熱回収熱交換器206と、が設置されており、これらの第1のヒータ205及び廃熱回収熱交換器206によってNMP水溶液は120℃程度まで加熱される。NMP水溶液を120℃程度まで加熱することで、浸透気化膜装置201の脱水性能を高めることができる。廃熱回収熱交換器206は、第7のNMP水溶液供給ライン251を流れるNMP水溶液と、NMP濃縮液排出ライン254を流れるNMP濃縮液との間で熱交換を行う。第1のヒータ205は外部の蒸気源(図示せず)から供給される高温蒸気によってNMP水溶液を加熱する。
浸透気化膜装置201は、直列に接続された複数の浸透気化膜モジュールを有している。本実施形態では3台の浸透気化膜モジュール202〜204、すなわち上流から下流に向けて第1の浸透気化膜モジュール202、第2の浸透気化膜モジュール203、第3の浸透気化膜モジュール204が直列に接続されているが、台数は3台に限定されない。第1の浸透気化膜モジュール202は第1の接続ライン252を介して第2の浸透気化膜モジュール203に接続されている。第2の浸透気化膜モジュール203は第2の接続ライン253を介して第3の浸透気化膜モジュール204に接続されている。第1〜第3の浸透気化膜装置202,203,204は分離膜(浸透気化膜)202c、203c、204cによって、上流側の濃縮室202a,203a,204aと下流側の透過室202b,203b,204bとに区画されている。分離膜202c,203c,204cは水に対する親和性を有しているため、水をNMPよりも大きな透過速度で分離膜202c,203c,204cを透過させる。透過室202b,203b,204b側を負圧とすることで、透過速度の大きい水が透過速度の小さい少量のNMPともに蒸気(気相)の形態で透過室202b,203b,204bに移動し、ほとんどのNMPは濃縮室202a,203a,204aに残存する。この原理を用いてNMP水溶液から水分の一部が除去され、NMP水溶液の濃縮液が生成される。第3の浸透気化膜モジュール204の出口では、NMP濃度が99.99質量%程度まで高められたNMP濃縮液(水分は0.01質量%未満)が得られる。
NMP水溶液は第1〜第3の浸透気化膜モジュール202,203,204を順次流通し、徐々にNMP水溶液中の水分が除去される。水分の除去効率を維持するため、第1の接続ライン252と第2の接続ライン253にはそれぞれ、第2のヒータ207と第3のヒータ208が設けられている。第2及び第3のヒータ207,208は第1のヒータ205と同様、熱交換器であり、外部の蒸気源から供給される高温蒸気によってNMP水溶液を120℃程度まで加熱する。第3の浸透気化膜モジュール204から排出されたNMP濃縮水はNMP濃縮液排出ライン254を通って第3のサブシステム300の中継槽301に供給される。上述のように、NMP濃縮液排出ライン254を流れるNMP濃縮液は、廃熱回収式熱交換器206によって、第7のNMP水溶液供給ライン251を流れるNMP水溶液との間で熱交換を行い、NMP水溶液を予熱する。
第1〜第3の浸透気化膜モジュール202,203,204の透過室202b,203b,204bはそれぞれ第1〜第3の透過液排出ライン256,259,262によって第1〜第3の透過液タンク214,215,216に接続されている。第1〜第3の透過液タンク214,215,216の上部には、透過室202b,203b,204bに負圧を印加し、透過室202b,203b,204bの内部を負圧に維持可能な第1〜第3の真空ポンプ217,218,219が設けられている。気相の水と少量のNMPは冷却水またはブラインによって凝縮され、透過液となって第1〜第3の透過液タンク214,215,216の底部に収集される。第1〜第3の透過液タンク214,215,216は透過液を一時的に貯蔵することができる。具体的には、冷却水CW及びブラインBR1,BR2が、それぞれ第1〜第3の透過液排出ライン256,259,262に設けられた第1〜第3の熱交換器211,212,213に供給され、気相の水及びNMPを凝縮する。ブラインBR1,BR2の温度は0〜−20℃程度が好ましい。第1〜第3の透過液タンク214,215,216の底部にはそれぞれ第1〜第3の透過水排出ライン258,261,264が接続されている。第1の透過液タンク214から排出された透過水は廃液槽に排出され、第2〜第3の透過液タンク215,216から排出された透過水は後述するように再利用される。
最上流のすなわち第1の浸透気化膜モジュール202はCHA型、T型、Y型またはMOR型のゼオライトからなる浸透気化膜202cを有し、これ以外の浸透気化膜モジュール、すなわち第2及び第3の浸透気化膜モジュール203,204はA型ゼオライトからなる浸透気化膜203c,204cを有している。A型ゼオライトは、比較的安価で脱水性能が高いものの、水分濃度が高いNMP水溶液を処理する場合に、リークや性能低下が生じやすい。これに対しA型以外のゼオライトは、上述の環境でより長期間性能を保持することができる。このため、10〜20質量%の水を含有するNMP水溶液を処理する第1の浸透気化膜モジュール202の浸透気化膜202cにはCHA型、T型、Y型またはMOR型のゼオライトを用い、水分含有量の少ないNMP水溶液を処理する第2及び第3の浸透気化膜モジュール203,204の浸透気化膜203c,204cにはA型ゼオライトを用いている。なお、第1の浸透気化膜モジュール202を構成する複数の浸透気化膜のすべてがCHA型、T型、Y型またはMOR型のゼオライトからなっている必要はなく、一部の膜がA型ゼオライトからなっていてもよい。
第2及び第3の浸透気化膜モジュール203,204の透過液は浸透気化膜装置201の上流側に回収される。具体的には第2及び第3の透過液排出ライン261,264は透過液回収ライン255に接続され、透過液回収ライン255は1次処理液槽106に接続されている。第2及び第3の透過液排出ライン261,264から排出される透過液は第1の透過液排出ライン258から排出される透過液と比べNMPの含有量が高いため、これを回収することで、NMPの回収率を高めることができる。透過液が回収される浸透気化膜モジュールは第2及び第3の浸透気化膜モジュール203,204に限定されず、少なくとも最下流のすなわち第3の浸透気化膜モジュール204の透過液が浸透気化膜装置201の上流側に回収されればよい。透過液は原液タンク101に回収してもよく、透過液回収ライン255に分岐ライン(図示せず)を設けることによって、1次処理液槽106と原液タンク101とに選択的に回収してもよい。
(第3のサブシステム300)
第2のサブシステム200で生成されたNMP濃縮液は、ほとんどの水分が除去されている。しかし、NMP濃縮液は色度成分や浸透気化膜モジュールから溶出した浸透気化膜202c,203c,204cの微粒子及びイオン成分をわずかに含むため、さらに浸透気化膜装置201の下流に位置する第3のサブシステム300で蒸留されてNMP精製液が生成される。なお、以下に述べる第3のサブシステム300は単蒸留方式を用いているが、NMP濃縮液を蒸留することが可能な限り蒸留方法は限定されず、例えば、精密蒸留方式を用いることもできる。エネルギー消費が少ないこと、装置サイズが小さいこと、操作が簡単であることなどの理由から単蒸留方式が好ましい。また、単蒸留方式の中でも、本実施形態で用いている減圧単蒸留方式は熱劣化を防止できる観点から特に望ましい。
第3のサブシステム300は第2のサブシステム200から独立したサブシステムであり、例えば、第2のサブシステム200の運転中に第3のサブシステム300の運転を一時的に停止するといった運用がなされることがある。このため、NMP濃縮液をいったん貯留する中継槽301を設けることで、第2のサブシステム200と第3のサブシステム300を、互いの独立性を維持しながらより弾力的に運用することが可能となる。中継槽301は第1のNMP濃縮液供給ライン351を介して再生器302に接続されている。第1のNMP濃縮液供給ライン351にはポンプ306が設けられている。再生器302は熱交換器であり、後述する蒸発缶303で蒸発したNMP濃縮液(以下、NMP精製ガスという)との間で熱交換を行う。これによって、蒸発缶303の熱負荷を低減することができる。再生器302は第2のNMP濃縮液供給ライン352を介して蒸発缶303に接続されている。蒸発缶303は外部の蒸気源(図示せず)から供給される高温蒸気によってNMP濃縮液を加熱し蒸発させる。蒸発缶303の底部には高温の液相のNMP濃縮液が滞留し、その上部に微粒子が除去された気相のNMP精製ガスが形成される。液相のNMP濃縮液に含まれる色度成分も蒸発しにくいため、蒸発缶303の底部に蓄積される。なお、本実施形態における蒸発缶303としては、液膜流下式の蒸発缶を例に挙げて以下に説明するが、液膜流下式以外の蒸発缶、例えばフラッシュ式、カランドリア式などの蒸発缶を用いてもよい。蒸発缶303の底部と頂部には循環ライン353が接続されており、蒸発缶303を含む循環経路が循環ライン353によって形成されている。循環経路上では、液相のNMP濃縮液を取り出して蒸発缶303に戻し、液膜流下にて再度加熱するサイクルが繰り返される。蒸気取り出し缶304(後述)の底部には、循環ライン353と合流するNMP濃縮液取り出しライン356が設けられている。蒸気取り出し缶304の底部に滞留するNMP濃縮液も、NMP濃縮液取り出しライン356と循環ライン353を通って蒸発缶303に戻され、再度加熱される。循環ライン353には循環ポンプ307が設けられている。
蒸発缶303のNMP精製ガスは蒸発缶303の気相部から取り出され、第1のNMP精製ガス取り出しライン354によって蒸気取り出し缶304に取り出される。蒸気取り出し缶304は第2のNMP精製ガス取り出しライン355を介して再生器302と接続されている。NMP精製ガスの熱は再生器302で液相のNMP濃縮液と熱交換される。再生器302を出たNMP精製ガスはさらに第3のNMP精製ガス取り出しライン357によってコンデンサ305に導入され、冷却水CWによって凝縮されてNMP精製液となる。コンデンサ305の内部では底部にNMP精製液が貯留され、その上はNMP精製ガスからなる気相部となっている。コンデンサ305の気相部は、負圧ライン360によって真空ポンプ309と連通しており、コンデンサ305の気相部は真空ポンプ309によって負圧にされる。蒸発缶303を含む第3のサブシステム300の気相部も真空ポンプ309によって負圧にされ、蒸発缶303において減圧蒸発が行われる。これによって、NMP濃縮液の蒸発が促進される。コンデンサ305の出口にはNMP精製液取り出し配管358が接続されている。NMP精製液は、NMP精製液取り出し配管358に設けられたポンプ308によって、精製液タンク311に送られる。精製液タンク311に一時的に貯わえられたNMP精製液は、排出ライン362を通ってリチウムイオン二次電池の製造システムに移送され、当該製造システムで再利用される。
次に、実施例と比較例とに基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
[実施例1:スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂を使用]
NMP溶液からのN−メチルスクシンイミドの除去について実験を行った。N−メチル−2−ピロリジノン(関東化学製)に対し超純水を3質量%となるように添加し、さらにN−メチルスクシンイミド(東京化成工業製)を0.1質量%となるように添加したNMP溶液を調製した。ダウ・ケミカル社製のスチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂アンバーライト(登録商標) IRA900(OH)をポリテトラフルオロエチレン製のカラムに100mL充填してイオン交換樹脂カラムとした。カラムへの充填後、カラム内のアニオン交換樹脂を水で洗浄し、洗浄後、先に調製したNMP溶液を100mL/hr、すなわちSV=1(hr-1)としてカラムに通液した。カラムから排出される液体のうち、カラム内の水がNMP溶液に置換されるまでの100mLをブローした後、カラムから排出されるNMP溶液を採取して、ガスクロマトグラフィー分析を行い、NMP濃度とN−メチルスクシンイミド濃度とを求めた。ガスクロマトグラフィー分析には島津製作所製のガスクロマトグラフGC−2014を用いた。分析条件は表1に示す通りである。得られたNMP濃度とN−メチルスクシンイミド濃度を表2に示す。
Figure 2020083870
水素炎イオン化検出器では水分を検出できないため、得られたガスクロマトグラムにおける水分を除いたNMPとN−メチルスクシンイミドとγ−ブチロラクトンとのピークの面積比から、NMPとN−メチルスクシンイミドの濃度を算出した。なお、γ−ブチロラクトンは、NMPを合成する際の原料であってNMPに由来するものである。
同様に、通液量がSV=2,3,4,5,6,7,8,9,10(hr-1)の各々となるようにNMP溶液をカラムに通液し、それぞれの場合について、カラムから排出されるNMP溶液におけるNMP濃度とN−メチルスクシンイミド濃度とをガスクロマトグラフィー分析によって求めた。これとは別に、カラムに通液する前のNMP溶液におけるNMP濃度とN−メチルスクシンイミド濃度とをガスクロマトグラフィー分析によって求めた。これらの結果も表2に示す。表2に示すように、スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂を使用し、このアニオン交換樹脂への通液量をSV10以下としたときには、NMP面積比で表したN−メチルスクシンイミド濃度は0.02%未満であった。このことから、NMP溶液をスチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂に通液することで、NMP溶液中のN−メチルスクシンイミドを除去できることが分かった。
Figure 2020083870
[比較例1:アクリル系の強塩基性アニオン交換樹脂を使用]
カラムに充填するアニオン交換樹脂として、アクリル系の強塩基性アニオン交換樹脂であるダウ・ケミカル社製のアンバーライト(登録商標) IRA458を使用したほかは実施例1と同様にNMP溶液の通液試験を行い、カラムから排出されるNMP溶液におけるNMP濃度とN−メチルスクシンイミド濃度とをガスクロマトグラフィー分析によって求めた。結果を表3に示す。実施例1とは異なり、N−メチルスクシンイミドを吸着除去することはできなかった。
Figure 2020083870
[比較例2:弱塩基性アニオン交換樹脂を使用]
カラムに充填するアニオン交換樹脂として、アクリル系の弱塩基性アニオン交換樹脂であるダウ・ケミカル社製のアンバーライト(登録商標) IRA96SBを使用したほかは実施例1と同様にNMP溶液の通液試験を行い、カラムから排出されるNMP溶液におけるNMP濃度とN−メチルスクシンイミド濃度とをガスクロマトグラフィー分析によって求めた。結果を表4に示す。実施例1とは異なり、N−メチルスクシンイミドを吸着除去することはできなかった。
Figure 2020083870
実施例1及び比較例1,2の結果より、NMP溶液中に不純物として含まれるN−メチルスクシンイミドを除去するときに、アニオン交換樹脂の母体となるポリマーの骨格の違いによって結果の大きな差が生じ、スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂によればN−メチルスクシンイミドを除去することができたが、アクリル系の強塩基性アニオン交換樹脂を用いてもN−メチルスクシンイミドを除去することはできず、強塩基性アニオン交換樹脂としてスチレン系のものを使用する必要があることが分かった。
[実施例2:スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂を使用]
NMP溶液からのγ−ブチロラクトンの除去について実験を行った。N−メチル−2−ピロリジノン(関東化学製)に対し超純水を3質量%となるように添加し、さらにγ−ブチロラクトン(関東化学製)を0.1質量%となるように添加したNMP溶液を調製した。ダウ・ケミカル社製のスチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂アンバーライト(登録商標) IRA900(OH)をポリテトラフルオロエチレン製のカラムに100mL充填してイオン交換樹脂カラムとした。カラムへの充填後、カラム内のアニオン交換樹脂を水で洗浄し、洗浄後、先に調製したNMP溶液を100mL/hr、すなわちSV=1(hr-1)としてカラムに通液した。カラムから排出される液体のうち、カラム内の水がNMP溶液に置換されるまでの100mLをブローした後、カラムから排出されるNMP溶液を採取して、実施例1と同様にガスクロマトグラフィー分析を行い、NMP濃度とγ−ブチロラクトン濃度とを求めた。分析条件は表1に示す通りである。なお、水素炎イオン化検出器では水分を検出できないため、実施例1と同様に、得られたガスクロマトグラムにおける水分を除いたNMPとγ−ブチロラクトンと他の成分とのピークの面積比から、NMPとγ−ブチロラクトンの濃度を算出した。得られたNMP濃度とγ−ブチロラクトン濃度を表5に示す。
同様に、通液量がSV=5,10(hr-1)の各々となるようにNMP溶液をカラムに通液し、それぞれの場合について、カラムから排出されるNMP溶液におけるNMP濃度とγ−ブチロラクトン濃度とをガスクロマトグラフィー分析によって求めた。これとは別に、カラムに通液する前のNMP溶液におけるNMP濃度とγ−ブチロラクトン濃度とをガスクロマトグラフィー分析によって求めた。これらの結果も表5に示す。表5に示すように、スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂を使用し、このアニオン交換樹脂への通液量をSV10以下としたときには、NMP面積比で表したγ−ブチロラクトン濃度は0.03%未満であった。特に、通液量がSV5以下であれば、γ−ブチロラクトンをほぼ完全に吸着除去することができた。このことから、NMP溶液をスチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂に通液することで、NMP溶液中のγ−ブチロラクタンを除去できることが分かった。
Figure 2020083870
[比較例3:アクリル系の強塩基性アニオン交換樹脂を使用]
カラムに充填するアニオン交換樹脂として、アクリル系の強塩基性アニオン交換樹脂であるダウ・ケミカル社製のアンバーライト(登録商標) IRA458を使用したほかは実施例2と同様にNMP溶液の通液試験を行い、カラムから排出されるNMP溶液におけるNMP濃度とγ−ブチロラクトン濃度とをガスクロマトグラフィー分析によって求めた。結果を表6に示す。実施例2とは異なり、通液量がごく小さい領域では多少の吸着除去を行うことができたものの、全体として、γ−ブチロタクトンを十分に吸着除去することはできなかった。
Figure 2020083870
[比較例4:弱塩基性アニオン交換樹脂を使用]
カラムに充填するアニオン交換樹脂として、アクリル系の弱塩基性アニオン交換樹脂であるダウ・ケミカル社製のアンバーライト(登録商標) IRA96SBを使用したほかは実施例2と同様にNMP溶液の通液試験を行い、カラムから排出されるNMP溶液におけるNMP濃度とγ−ブチロラクトン濃度とをガスクロマトグラフィー分析によって求めた。結果を表7に示す。実施例2とは異なり、通液量がごく小さい領域では多少の吸着除去を行うことができたものの、全体として、γ−ブチロタクトンを十分に吸着除去することはできなかった。
Figure 2020083870
[実施例4:スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂を使用]
NMP溶液からのN−メチルスクシンイミドとγ−ブチロラクトンとの同時除去について実験を行った。N−メチル−2−ピロリジノン(関東化学製)に対し超純水を3質量%となるように添加し、さらにN−メチルスクシンイミド(東京化成工業製)とγ−ブチロラクトン(関東化学製)をそれぞれ0.025質量%となるように添加したNMP溶液を調製した。ダウ・ケミカル社製のスチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂アンバーライト(登録商標) IRA900(OH)をポリテトラフルオロエチレン製のカラムに100mL充填してイオン交換樹脂カラムとした。カラムへの充填後、カラム内のアニオン交換樹脂を水で洗浄し、洗浄後、先に調製したNMP溶液を1000mL/hr、すなわちSV=10(hr-1)としてカラムに通液した。カラムから排出される液体のうち、カラム内の水がNMP溶液に置換されるまでの100mLをブローした後、カラムから排出されるNMP溶液を採取して、実施例1と同様にガスクロマトグラフィー分析を行い、NMP、N−メチルスクシンイミドとγ−ブチロラクトンのそれぞれの濃度とを求めた。分析条件は表1に示す通りである。なお、水素炎イオン化検出器では水分を検出できないため、実施例1と同様に、得られたガスクロマトグラムにおける水分を除いたNMPとγ−ブチロラクトンとN−メチルスクシンイミドとのピークの面積比から、NMP、N−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンの各濃度を算出した。得られた濃度を表8に示す。
Figure 2020083870
表8に示す結果より、NMP溶液が不純物としてγ−ブチロラクトンとN−メチルスクシンイミドの両方を含む場合においても、スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂にNMP溶液を通液することにより、これらの両方の不純物を除去できることが分かった。またNMP濃度面積比の数値から分かるように、通液前には、γ−ブチロラクトンでもN−メチルスクシンイミドでもないピークが存在しており、そのことはNMP溶液中にγ−ブチロラクトンでもN−メチルスクシンイミドでもない不純物が含まれていることを意味する。これに対し、スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂に通液した後の測定結果では、γ−ブチロラクトンでもN−メチルスクシンイミドでもないピークの面積比も減少した。このことは、具体的には化学種は特定されないものの、本発明に基づく精製方法によって、NMPに含まれる例えば5−ヒドロキシ−N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルピロリドン、1,4−ジメチルピロリドンといった不純物を吸着除去できる可能性があると考えられる。
10 不純物除去装置
11 イオン交換樹脂塔
12 アニオン交換樹脂
13 供給配管
14 排出配管
20 蒸留塔
30 浸透気化装置
31 浸透気化膜

Claims (13)

  1. N−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンの少なくとも一方を不純物として含有する、水を含有するN−メチル−2−ピロリドン溶液を精製する精製方法において、
    前記N−メチル−2−ピロリドン溶液をスチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂に通液する不純物除去工程を有することを特徴とする精製方法。
  2. 前記N−メチル−2−ピロリドン溶液におけるN−メチル−2−ピロリドンは、酸素の存在下で加熱蒸発されたものである、請求項1に記載の精製方法。
  3. 前記N−メチル−2−ピロリドン溶液は、リチウムイオン二次電池の電極製造工程から回収されたものである、請求項1または2に記載の精製方法。
  4. 前記不純物除去工程から排出された前記N−メチル−2−ピロリドン溶液を蒸留する第1の工程、及び、前記不純物除去工程から排出された前記N−メチル−2−ピロリドン溶液を浸透気化膜を有する浸透気化装置に供給して、前記N−メチル−2−ピロリドン溶液から水分を選択的に分離する第2の工程の少なくとも一方を有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の精製方法。
  5. 前記N−メチル−2−ピロリドン溶液におけるN−メチルスクシンイミド濃度が0.1質量%以上である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の精製方法。
  6. 前記N−メチル−2−ピロリドン溶液を前記スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂に対し、1時間当たり10以下の空間速度で通液する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の精製方法。
  7. N−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンの少なくとも一方を不純物として含有する、水を含有するN−メチル−2−ピロリドン溶液を精製する精製装置において、
    スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂を充填したイオン交換装置を備え、
    前記N−メチル−2−ピロリドン溶液が前記イオン交換装置を通液することを特徴とする精製装置。
  8. 前記イオン交換装置に対して前記N−メチル−2−ピロリドン溶液を1時間当たり10以下の空間速度で通液させる、請求項7に記載の精製装置。
  9. 前記イオン交換装置の後段に、蒸留装置及び浸透気化膜の少なくとも一方を備える、請求項7または8に記載の精製装置。
  10. N−メチル−2−ピロリドンを使用するNMP使用工程から再利用のためにN−メチル−2−ピロリドンを回収して精製する回収精製方法において、
    前記NMP使用工程から、水を含有するN−メチル−2−ピロリドン溶液の形態でN−メチル−2−ピロリドンを回収するNMP回収工程と、
    前記N−メチル−2−ピロリドン溶液をスチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂に通液する不純物除去工程と、
    を有し、
    前記不純物除去工程において、前記N−メチル−2−ピロリドン溶液からN−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンの少なくとも一方を除去することを特徴とする、回収精製方法。
  11. 前記不純物除去工程から排出された前記N−メチル−2−ピロリドン溶液を脱水してN−メチル−2−ピロリドン精製液を生成する脱水工程をさらに有し、
    前記N−メチル−2−ピロリドン精製液が前記NMP使用工程に供給される、請求項10に記載の回収精製方法。
  12. N−メチル−2−ピロリドンを使用するNMP使用システムから再利用のためにN−メチル−2−ピロリドンを回収して精製する回収精製システムにおいて、
    前記NMP使用システムから、水を含有するN−メチル−2−ピロリドン溶液の形態でN−メチル−2−ピロリドンを回収するNMP回収手段と、
    スチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂が充填されて前記N−メチル−2−ピロリドン溶液が通液するイオン交換装置と、
    を備え、
    前記イオン交換装置において前記N−メチル−2−ピロリドン溶液からN−メチルスクシンイミド及びγ−ブチロラクトンの少なくとも一方が除去されることを特徴とする、回収精製システム。
  13. 前記イオン交換装置の後段に、前記N−メチル−2−ピロリドン溶液を脱水してN−メチル−2−ピロリドン精製液を生成する脱水手段をさらに有し、
    前記N−メチル−2−ピロリドン精製液を前記NMP使用システムに供給する、請求項12に記載の回収精製システム。
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