JP2020068076A - 二次電池および二次電池の製造方法、および電子機器 - Google Patents

二次電池および二次電池の製造方法、および電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】従来よりも電池反応領域が拡大した二次電池および二次電池の製造方法、電子機器を提供すること。【解決手段】本発明の二次電池は、下記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を含む固体電解質部と、固体電解質部を介して対向配置された集電体と、を備える。Li7-xLa3Zr2-(x+y)MaxMbyO12・・・(1)(但し、iをMaの酸化数、jをMbの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たし、Maは、Sb、Bi、Ce、Mn、V、Te、Tc、Snのうちの1種類以上を表し、Mbは、Nb、Cr、Mo、W、Ta、Tiのうちの1種類以上を表す。)【選択図】図2

Description

本発明は、二次電池および二次電池の製造方法、および電子機器に関する。
従来、無機系の電解質として、ガーネット型結晶構造のリチウム複合金属酸化物を用いた電池が知られていた。例えば、特許文献1には、ガーネット型結晶構造のリチウム複合金属酸化物のジルコン酸ランタンリチウムにおいて、ランタンの一部のサイトをネオジムで、リチウムの一部のサイトをガリウムで、それぞれ置換した固体電解質を用いた電池が提案されている。
特開2018−37326号公報
しかしながら、特許文献1に記載のリチウム複合金属酸化物を用いた電池では、界面抵抗が増大して電池反応領域が減少しやすいという課題があった。詳しくは、正極活物質成形体の孔内に固体電解質を形成して複合体としている。そのため、正極活物質成形体の内部に、固体電解質が形成されない隙間が生じる場合があった。このような隙間が生じると、界面抵抗が増大してしまい、電池反応領域が減少しやすくなっていた。
本願の二次電池は、下記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を含む固体電解質部と、固体電解質部を介して対向配置された集電体と、を備える。
Li7-xLa3Zr2-(x+y)MaxMby12 ・・・(1)
(但し、iをMaの酸化数、jをMbの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たし、Maは、Sb、Bi、Ce、Mn、V、Te、Tc、Snのうちの1種類以上を表し、Mbは、Nb、Cr、Mo、W、Ta、Tiのうちの1種類以上を表す。)
上記の二次電池において、組成式(1)のMaは、Sbであり、組成式(1)のMbは、Taであり、iをsbの酸化数、jをTaの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たすことが好ましい。
上記の二次電池において、固体電解質部は、厚さが0.5μm以上、30μm以下であることが好ましい。
本願の電子機器は、上記の二次電池を備える。
本願の二次電池の製造方法は、下記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を含む固体電解質部を形成する工程と、固体電解質部を挟んで集電体を形成する工程と、集電体の間に、分極電圧を印加して直流通電する工程と、を備える。
Li7-xLa3Zr2-(x+y)MaxMby12 ・・・(1)
(但し、iをMaの酸化数、jをMbの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たし、Maは、Sb、Bi、Ce、Mn、V、Te、Tc、Snのうちの1種類以上を表し、Mbは、Nb、Cr、Mo、W、Ta、Tiのうちの1種類以上を表す。)
上記の二次電池の製造方法において、固体電解質部を形成する工程は、上記組成式(1)において、MaがSbであり、MbがTaであり、iをSbの酸化数、jをTaの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たす、リチウム複合金属酸化物を含む固体電解質部を形成することが好ましい。
上記の二次電池の製造方法において、固体電解質部を形成する工程は、上記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を構成する元素が含まれる複数種類の原材料を、第1溶媒に溶解させ、混合して第1混合物を調製する工程と、第1混合物に第1加熱処理を施して反応させ、リチウム複合金属酸化物の仮焼成体を作製する工程と、仮焼成体を粉砕した後、第2溶媒と第1バインダーとを混合して第2混合物を調製する工程と、調製した第2混合物を成形した後、第2加熱処理を施す工程と、第2加熱処理を施した焼成体を粉砕した後、第3溶媒と、第2バインダーとを混合して第3混合物を調製する工程と、第3混合物を成形した後、第3加熱処理を施す工程と、を含むことが好ましい。
上記の二次電池の製造方法において、固体電解質部を形成する工程は、上記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を構成する元素が含まれる複数種類の原材料を、第1溶媒に溶解させ、混合して第1混合物を調製する工程と、第1混合物に第1加熱処理を施して反応させ、リチウム複合金属酸化物の仮焼成体を作製する工程と、仮焼成体を粉砕した後、加圧を施して成形体を作製する工程と、成形体に第2加熱処理および第3加熱処理を施す工程と、を含むことが好ましい。
上記の二次電池の製造方法において、直流通電する工程は、0.5V以上、6.0V以下の分極電圧を印加することが好ましい。
上記の二次電池の製造方法において、固体電解質部を形成する工程は、厚さが0.5μm以上、30μm以下の固体電解質部を形成することが好ましい。
上記の二次電池の製造方法において、固体電解質部を形成する工程は、第1加熱処理として、200℃以上、540℃以下の加熱を施し、第2加熱処理として、680℃以上、1000℃以下の加熱を施し、第3加熱処理として、900℃以上、1200℃以下の加熱を施すことが好ましい。
実施形態1に係る二次電池としてのリチウム電池の構成を示す概略斜視図。 リチウム電池の製造方法を示す工程フロー図。 リチウム電池の製造方法を示す模式図。 リチウム電池の製造方法を示す模式図。 リチウム電池の製造方法を示す模式図。 リチウム電池の製造方法を示す模式図。 リチウム電池の製造方法を示す模式図。 リチウム電池の製造方法を示す模式図。 リチウム電池の製造方法を示す模式図。 実施例および比較例に係るリチウム電池の構成および評価結果を示す表。 実施例5に係るリチウム電池の充放電特性を示すグラフ。 比較例1に係るリチウム電池の充放電特性を示すグラフ。 実施形態2の実施例に係るリチウム電池の評価結果を示す表。 実施形態3に係る二次電池としてのリチウム電池の製造方法を示す工程フロー図。 実施形態4に係るウェアラブル機器の構成を示す概略図。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も、本発明に含まれる。なお、以下の各図においては、各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
(実施形態1)
<二次電池>
まず、本実施形態に係る二次電池について、図1を参照して説明する。本実施形態では、二次電池としてリチウム電池を例に挙げて説明する。図1は、実施形態1に係る二次電池としてのリチウム電池の構成を示す概略斜視図である。
図1に示すように、本実施形態のリチウム電池100は、固体電解質部10と、固体電解質部10を介して対向配置された一対の集電体20,30と、を備えている。リチウム電池100は、順に、集電体20、固体電解質部10、集電体30が積層された積層体である。集電体20および固体電解質部10、固体電解質部10および集電体30は、それぞれ接している。固体電解質部10において、集電体20と接する面を面10aとし、集電体30と接する面を面10bとする。なお、集電体20および集電体30は、平面視または断面視したときの形状が同じであってもよく、異なっていてもよい。
ここで、以下の説明において、リチウム電池100において、集電体20,30、固体電解質部10が積層された方向を、リチウム電池100の法線方向とする。また、リチウム電池100の法線方向における、集電体20,30、固体電解質部10などの距離を、それらの「厚さ」ということもある。
ここで、詳細は後述するが、リチウム電池100では、一対の集電体20,30の間に分極電圧を印加して直流通電することにより、固体電解質部10内の集電体20,30の近傍に正極活物質および負極活物質が形成される。したがって、直流通電の向きによって、正極および負極が形成される位置、すなわち、面10a側か面10b側かが決まる。そのため、以下の説明では、便宜上、固体電解質部10において、面10a側、つまり集電体20側に正極が形成され、面10b側、つまり集電体30側に負極が形成されるものとする。
リチウム電池100は、例えば、円盤状であって、外形の大きさは直径約7mm、厚さは約80μmである。小型、薄型であることに加え、充放電可能であって大きな出力エネルギーが得られることから、携帯情報端末などの電力供給源として好適に用いることができる。なお、リチウム電池100の形状は円盤状であることに限定されず、例えば多角形の盤状であってもよい。このような薄型のリチウム電池100は、単体で用いてもよいし、複数のリチウム電池100を直列または並列に接続させた積層体として用いてもよい。
[集電体]
集電体20,30には、固体電解質部10、固体電解質部10に形成される正極および負極と電気化学反応を生じず、かつ電子伝導性を有している形成材料であれば、いずれも好適に用いることができる。集電体20,30の形成材料としては、例えば、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、およびパラジウム(Pd)のうちの1種類の金属単体や、上記のうちの1種類以上の金属元素を含む合金、ITO(Tin-doped Indium Oxide)、ATO(Antimony-doped Tin Oxide)、およびFTO(Fluorine-doped Tin Oxide)などの導電性金属酸化物、窒化チタン(TiN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化タンタル(TaN)などの金属窒化物などが挙げられる。
集電体20,30の形態は、電子伝導性を有する上記形成材料の薄膜の他、金属箔、板状、編み目状または格子状、導電体微粉末を粘結剤とともに混練したペーストなど、目的に応じて適当なものが選択可能である。集電体20,30の厚さは、特に限定されないが、例えば、およそ20μmである。集電体20,30の形成は、固体電解質部10を形成した後であっても、あるいは形成する前であってもよい。
[固体電解質部]
固体電解質部10は、下記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物(以下、単に「組成式(1)のリチウム複合金属酸化物」ともいう。)を含んでいる。
Li7-xLa3Zr2-(x+y)MaxMby12 ・・・(1)
(但し、iをMaの酸化数、jをMbの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たし、Maは、Sb、Bi、Ce、Mn、V、Te、Tc、Snのうちの1種類以上を表し、Mbは、Nb、Cr、Mo、W、Ta、Tiのうちの1種類以上を表す。)
組成式(1)のリチウム複合金属酸化物には、元素Ma,Mbが添加されている。元素Ma,Mbには、酸化還元されることで電位差が生じる、換言すれば、酸化還元電位が異なる元素が選択される。つまり、酸化還元電位が大きな値である元素Maと、酸化還元電位が小さな値である元素Mbとを用いる。
これにより、一対の集電体20,30の間に分極電圧を印加し、直流通電することによって、固体電解質部10を構成する固体電解質に取り込まれなかった元素Ma,Mbなどが、リチウム複合金属酸化物の結晶粒界に析出して活物質に変化する。すなわち、固体電解質部10内の面10a側に、元素Maを含む正極活物質が生じ、固体電解質部10内の面10b側に、元素Mbを含む負極活物質が生じる。このようにして、固体電解質部10内に正極と負極とが形成される。
元素Ma,Mbには、固体電解質部10に電子伝導性を発現させず、且つ、固体電解質部10のリチウムイオン伝導性を低下させない元素が選択される。具体的には、元素Maとしては、Sb(アンチモン)(Sb5+〜Sb3+:約0.7V)、Bi(ビスマス)(Bi3+〜Bi+:約0.31V)、Ce(セリウム)(Ce4+〜Ce3+:約1.7V)、Mn(マンガン)(Mn3+〜Mn2+:約1.5V)、V(バナジウム)(V5+〜V3+:約0.96V)、Te(テルル)Te6+〜Te4+:約0.93V)、Tc(テクネチウム)(Tc7+〜Tc4+:約0.74V)、Sn(スズ)(Sn4+〜Sn2+:約0.15V)のうちの1種類以上が挙げられる。元素Mbとしては、Nb(ニオブ)(Nb5+〜Nb3+:約−0.25V)、Cr(クロム)(Cr3+〜Cr2+:約−0.42V)、Mo(モリブデン)(Mo4+〜Mo3+:約−0.01V)、W(タングステン)(W5+〜W4+:約−0.03V)、Ta(タンタル)(Ta5+〜Ta3+:約−0.81V)、Ti(チタン)(Ti4+〜Ti3+:約−0.67V)のうちの1種類以上が挙げられる。なお、上記の元素名に続く括弧内の数値は、各元素の酸化還元電位を表す。
また、組成式(1)において、xおよびyは、iをMaの酸化数、jをMbの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8の関係式を満たす任意の実数である。これにより、固体電解質部10において、元素Maと元素Mbとが活物質化されると共に、リチウムイオン伝導性が向上して充放電レートが確保される。すなわち、リチウム電池100としての機能を良好に発現させることができる。
なお、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物の結晶粒界に析出する元素Ma,Mbのモル数は、ix=jyを満たすことが好ましく、このとき二次電池における電池反応の効率が向上する。但し、固体電解質部10の製造工程において、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物の結晶内部に取り込まれる元素Ma,Mbのモル比は、元素Ma,Mbの組み合わせによって変化する。そのため、必ずしもix=jyを満たさなくてもよい。
上述した元素のうち、組成式(1)において、元素MaはSb(アンチモン)であり、元素MbはTa(タンタル)であり、xおよびyは、iをsbの酸化数、jをTaの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8の関係式を満たす任意の実数であることが好ましい。これによれば、元素Maと元素Mbとの酸化還元電位差が、約1.51Vとなる。したがって、約1.51V以上の分極電圧を与えることにより、Sbを含む正極活物質と、Taを含む負極活物質とを生じさせ、二次電池として活用することができる。
固体電解質部10の厚さは、0.5μm以上、30μm以下とすることが好ましい。また、固体電解質部10におけるリチウムイオン伝導性の指標としての総イオン伝導率は、1.0×10-4S/cm以上であることが好ましい。これらにより、リチウム電池100における界面抵抗をさらに低減することができる。なお、固体電解質部10には、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物以外の固体電解質が含まれていてもよい。
固体電解質部10の厚みが0.5μm未満で薄い場合には、分極電圧の印加により形成される正極と負極とが短絡しやすく、安定な電池動作が困難になるおそれがある。また固体電解質部10の厚みが30μmを超過して厚い場合には、分極電圧の印加により、正極および負極の活物質が形成される厚みに比して、固体電解質部10の厚みが厚くなる。そのため、リチウム電池100の体積において電池容量に寄与しない部分が大きくなり、容量密度の観点から好ましくない。
<リチウム電池の製造方法>
本実施形態に係る二次電池としてのリチウム電池100の製造方法について、図2、図3A、図3B、図3C、図3D、図3E、図3F、図3Gを参照して説明する。図2は、リチウム電池の製造方法を示す工程フロー図である。図3Aから図3Gは、リチウム電池の製造方法を示す模式図である。なお、図2に示した工程フローは一例であって、これに限定されるものではない。
図2に示すように、本実施形態のリチウム電池100の製造方法は、以下の工程を備えている。工程S1から工程S4では、下記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を含む固体電解質部10を形成する。工程S5では、固体電解質部10を挟んで一対の集電体20,30を形成する。工程S6では、一対の集電体20,30の間に、分極電圧を印加して直流通電することにより、正極および負極を形成する。
Li7-xLa3Zr2-(x+y)MaxMby12 ・・・(1)
(但し、iをMaの酸化数、jをMbの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たし、Maは、Sb、Bi、Ce、Mn、V、Te、Tc、Snのうちの1種類以上を表し、Mbは、Nb、Cr、Mo、W、Ta、Tiのうちの1種類以上を表す。)
詳しくは、工程S1では、組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を構成する元素が含まれる複数種類の原材料を、第1溶媒に溶解させ、混合して第1混合物を調製する。工程S2では、第1混合物に第1加熱処理を施して反応させ、組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物の仮焼成体を作製する。工程S3では、仮焼成体を粉砕した後、第2溶媒と混合して第2混合物と第1バインダーとを調製する。工程S4では、調製した第2混合物を成形した後、第2加熱処理を施す。工程S5では、第2加熱処理を施した焼成体を粉砕した後、第3溶媒と、第2バインダーとを混合して第3混合物を調製する。工程S6では、第3混合物を成形した後、第3加熱処理を施して固体電解質部10を形成する。本実施形態では、工程S5および工程S6において、所謂グリーンシート成形法を用いる。なお、本実施形態では、グリーンシート成形法による固体電解質部10の製造方法を例に挙げて説明するが、固体電解質部10の製造方法はこれに限定されない。
[第1混合物の調製]
工程S1では、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物の原材料としての前駆体を、第1溶媒に溶解させて溶液を作製した後、それらを混合して第1混合物を調製する。すなわち、第1混合物は、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物の前駆体を溶解する溶媒を含んでいる。ここで、以降、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物の前駆体を、単に前駆体ともいう。
前駆体には、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物を構成する元素を含む金属化合物を用いる。ここで、本実施形態では、組成式(1)において、元素MaがSb(アンチモン)であり、元素MbがTa(タンタル)であり、iをSbの酸化数、jをTaの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たす組成を例に挙げて説明する。なお、元素Maおよび元素Mbは、それぞれが1種類の元素に限定されず、それぞれ2種類以上の元素を添加してもよい。
組成式(1)のリチウム複合金属酸化物を構成する元素を含む金属化合物としては、リチウム化合物、ランタン化合物、ジルコニウム化合物、アンチモン化合物、タンタル化合物を用いる。これらの化合物の種類は特に限定されないが、それぞれ、リチウム、ランタン、ジルコニウム、アンチモン、タンタルの金属塩または金属アルコキシドの1種類以上であることが好ましい。
リチウム化合物としては、例えば、塩化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウムなどのリチウム金属塩、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムプロポキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムノルマルブトキシド、リチウムイソブトキシド、リチウムセカンダリーブトキシド、リチウムターシャリーブトキシド、ジピバロイルメタナトリチウムなどのリチウムアルコキシドなどが挙げられ、この群のうちの1種類以上が採用可能である。
ランタン化合物としては、例えば、塩化ランタン、硝酸ランタン、酢酸ランタンなどのランタン金属塩、ランタントリメトキシド、ランタントリエトキシド、ランタントリプロポキシド、ランタントリイソプロポキシド、ランタントリノルマルブトキシド、ランタントリイソブトキシド、ランタントリセカンダリーブトキシド、ランタントリターシャリーブトキシド、トリス(ジピバロイルメタナト)ランタンなどのランタンアルコキシドなどが挙げられ、この群のうちの1種類以上が採用可能である。
ジルコニウム化合物としては、例えば、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウムなどのジルコニウム金属塩、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムテトラセカンダリーブトキシド、ジルコニウムテトラターシャリーブトキシド、テトラキス(ジピバロイルメタナト)ジルコニウムなどのジルコニウムアルコキシドなどが挙げられ、この群のうちの1種類以上が採用可能である。
アンチモン化合物としては、例えば、塩化アンチモン、臭化アンチモン、フッ化アンチモンなどのアンチモン金属塩、アンチモントリメトキシド、アンチモントリエトキシド、アンチモントリイソプロポキシド、アンチモントリノルマルプロポキシド、アンチモントリイソブトキシド、アンチモントリノルマルブトキシドなどのアンチモンアルコキシドが挙げられ、この群のうちの1種類以上が採用可能である。
タンタル化合物としては、例えば、塩化タンタル、臭化タンタルなどのタンタル金属塩、タンタルペンタメトキシド、タンタルペンタエトキシド、タンタルペンタイソプロポキシド、タンタルペンタノルマルプロポキシド、タンタルペンタイソブトキシド、タンタルペンタノルマルブトキシド、タンタルペンタセカンダリーブトキシド、タンタルペンタターシャリーブトキシドなどのタンタルアルコキシドが挙げられ、この群のうちの1種類以上が採用可能である。
なお、元素MaにBi(ビスマス)、Ce(セリウム)、Mn(マンガン)、V(バナジウム)、Te(テルル)、Tc(テクネチウム)、Sn(スズ)を用いる場合には、それらの化合物として、例えば、それぞれ、ビスマス、セリウム、マンガン、バナジウム、テルル、テクネチウム、スズの金属塩または金属アルコキシドの1種類以上を採用する。また、元素MbにNb(ニオブ)、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ti(チタン)を用いる場合には、それらの化合物として、例えば、それぞれ、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、チタンの金属塩または金属アルコキシドの1種類以上を採用する。
前駆体を含む溶液が含む第1溶媒としては、上述した金属塩または金属アルコキシドを溶解可能な、水あるいは有機溶媒の単溶媒、または混合溶媒を用いる。有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール(ブタノール)、アリルアルコール、エチレングルコールモノブチルエーテル(2−ブトキシエタノール)などのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、ギ酸、酢酸、2−エチル酪酸、プロピオン酸などの有機酸類、トルエン、o−キシレン、p−キシレンなどの芳香族類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類などが挙げられる。なお、第1溶媒は、前駆体ごとに異なる種類を用いてもよい。
上記の第1溶媒に前駆体を溶解して、各前駆体を含む複数の溶液(金属化合物溶液)を調製する。次いで、複数の金属化合物溶液を混合して第1混合物を調製する。このとき、第1混合物には、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物の組成に従った所定の割合で、リチウム、ランタン、ジルコニウム、アンチモン、タンタルを含有させる。このとき、各前駆体を含む複数の金属化合物溶液を調製せずに、各前駆体を全て混合して第1溶媒に溶解し、第1混合物を調製してもよい。
なお、後工程における加熱によって、上記組成中のリチウムが揮散することがある。そのため、加熱の条件に合わせて、あらかじめ第1混合物中のリチウム化合物の含有量を、所望の組成に対して0.05モル%から30モル%程度過剰に配合してもよい。
第1混合物の調製は、具体的には、例えば図3Aに示すように、パイレックス(PYREX:登録商標)製のビーカー81に、各前駆体をそれぞれ含む複数の金属化合物溶液を入れる。そこに、磁石式撹拌子(マグネチックスターラーバー)82を入れ、マグネチックスターラー83にて撹拌しながら混合する。これにより、第1混合物1aを得る。そして、工程S2へ進む。
[第1加熱処理]
工程S2では、図3Bに示すように、第1混合物1aを加熱して、溶媒の除去および有機成分の分解を行う。具体的には、第1混合物1aを、内径50mmφ×高さ20mmのチタン製シャーレ84に入れてホットプレート85に載せ、ホットプレート85の設定温度を200℃として1時間加熱し、溶媒を除去する。続いて、ホットプレート85の設定温度を540℃として30分間加熱し、第1混合物1aに含まれる有機成分の大部分を燃焼により分解させて固形物1bを得る。
次いで、固形物1bを粉砕、混合した後に、加圧を施して成形する。具体的には、まず、図3Cに示すように、固形物1bをメノウ乳鉢87およびメノウ乳棒86を用いて、充分に粉砕、混合する。
ここで、粉砕、混合した固形物1bの平均粒子径は、0.3μm以上、5μm以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.5μm以上、1μm以下である。粉砕、混合した固形物1bの平均粒子径を調節することにより、後述する第1加熱処理での固形物1bの反応が促進される。上記の平均粒子径は、例えば、粉砕、混合した固形物1bをn−オクチルアルコールに0.1質量%以上、10質量%以下の範囲の濃度となるように分散させ、日機装社の光散乱式粒度分布測定装置ナノトラックUPA−EX250を用いて、メジアン径を求めることにより測定することが可能である。
次に、図3Dに示すように、ハンディープレス機(図示せず)を用いて、粉砕、混合した固形物1bに加圧を施して成形する。具体的には、粉砕、混合した固形物1bを0.2000g秤量して、10mmφの錠剤成形器88に入れる。続いて、ハンディープレス機を用い、錠剤成形器88に一軸プレスによる加圧を行って固形物1bの成形物1cを得る。具体的には、上記加圧は、一軸プレスを用いて、0.400kN/mm2(400MPa)の圧力を5分間印加する。加圧を施す時間は、特に限定されないが、おおよそ5分間以上が確保されればよく、例えば、4分間以上、7分間以下とする。
次に、成形物1cに第1加熱処理を施す。具体的には、図3Eに示すように、成形物1cを、支持体89を介して酸化マグネシウム製の蓋付き坩堝90内に載置する。その後、坩堝90ごと電気マッフル炉に入れて、第1加熱処理を施し、仮焼成体とする。第1加熱処理の温度は、200℃以上、540℃以下とすることが好ましい。これにより、成形物1cにおける反応が進行して、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物が仮焼成体として得られる。第1加熱処理の温度を200℃未満とすると、有機物が分解されず、固体電解質部10の緻密性が低下して界面抵抗が増大する。第1加熱処理の温度が540℃を超過すると、粒子が粗大化して焼結が阻害され、固体電解質部10の界面抵抗が増大する。第1加熱処理の時間は、上記の反応が充分に進行すれば特に限定されないが、例えば、2時間以上、12時間以下である。そして、工程S3へ進む。
[第2混合物の調製]
工程S3では、まず、工程S2の図3Cと同様にして、仮焼成体をメノウ乳鉢87およびメノウ乳棒86を用いて充分に粉砕、混合する。粉砕、混合した仮焼成体の平均粒子径は、0.3μm以上、5μm以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.5μm以上、1μm以下である。粉砕、混合した仮焼成体の平均粒子径を調節することにより、固体電解質部10において、後述する嵩密度を調節することができる。粉砕、混合した仮焼成体の平均粒子径は、上述した方法にて測定することが可能である。なお、粉砕、混合した仮焼成体の平均粒子径を調節するために、湿式遠心分離機などを用いて分級操作を行ってもよい。
次に、粉砕、混合した仮焼成体と第2溶媒および第1バインダーとを混合して、スラリー状の第2混合物を調製する。第2溶媒としては、上述した第1溶媒と同様な、水あるいは有機溶剤が採用可能である。第1バインダーとしては、ポリプロピレンカーボネートなどの高分子化合物が採用可能である。なお、第2溶媒は、粉砕、混合した仮焼成体を溶解しなくてよい。具体的には、工程S1の図3Aと同様にして、粉砕、混合した仮焼成体と第2溶媒とをビーカー81に入れる。そこに、磁石式撹拌子(マグネチックスターラーバー)82を入れ、マグネチックスターラー83にて撹拌しながら混合する。これにより、スラリー状の第2混合物2aを得る。ここで、第2混合物2aには、分散剤、消泡剤などを助剤として添加してもよい。そして、工程S4へ進む。
[成形および第2加熱処理]
工程S4では、図3Bに示した工程S2と同様にして、第2混合物2aを加熱して、溶媒の除去および有機成分の分解と仮焼成とを行う。具体的には、第2混合物2aを、内径50mmφ×高さ20mmのチタン製シャーレ84に入れてホットプレート85に載せ、ホットプレート85の設定温度を200℃として1時間加熱し、溶媒を除去する。続いて、ホットプレート85の設定温度を540℃として30分間加熱し、第2混合物2aに含まれる有機成分の大部分を燃焼により分解させる。
次いで、第2混合物2aを粉砕、混合した後に、加圧を施して成形する。具体的には、図3Cに示した工程S3と同様にして、をメノウ乳鉢87およびメノウ乳棒86を用いて、充分に粉砕、混合する。
ここで、粉砕、混合した第2混合物2aの平均粒子径は、0.3μm以上、5μm以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.5μm以上、1μm以下である。粉砕、混合した第2混合物2aの平均粒子径を調節することにより、後述する第2加熱処理における反応が促進される。平均粒子径は、上述した方法にて測定することが可能である。
次に、図3Dに示した工程S4と同様にして、ハンディープレス機(図示せず)を用いて、粉砕、混合した第2混合物2aに加圧を施して成形する。具体的には、粉砕、混合した第2混合物2aを0.2000g秤量して、10mmφの錠剤成形器88に入れる。続いて、ハンディープレス機を用い、錠剤成形器88に一軸プレスによる加圧を行って第2混合物2aの成形物を得る。具体的には、上記加圧は、一軸プレスを用いて、0.400kN/mm2(400MPa)の圧力を5分間印加する。加圧を施す時間は、特に限定されないが、おおよそ5分間以上が確保されればよく、例えば、4分間以上、7分間以下とする。
次に、第2混合物2aの成形物に第2加熱処理を施す。具体的には、図3Eに示した工程S4と同様にして、第2混合物2aの成形物を、支持体89を介して酸化マグネシウム製の蓋付き坩堝90内に載置する。その後、坩堝90ごと電気マッフル炉に入れて、第2加熱処理を施し、焼成体とする。第2加熱処理の温度は、680℃以上、1000℃以下とすることが好ましい。これにより、第2混合物2aの成形物における反応が進行して、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物が焼成体として得られる。第2加熱処理の温度を680℃未満とすると、結晶が十分に生成されず、固体電解質部10のリチウムイオン伝導性が低下する。第2加熱処理の温度が1000℃を超過すると、リチウムが揮散しやすくなり、固体電解質部10のリチウムイオン伝導性が低下する。第2加熱処理の時間は、上記の反応が充分に進行すれば特に限定されないが、例えば、1時間以上、12時間以下である。そして、工程S5へ進む。
[第3混合物の調製]
工程S5では、まず、工程S2の図3Cと同様にして、焼成体をメノウ乳鉢87およびメノウ乳棒86を用いて充分に粉砕、混合する。粉砕、混合した焼成体の平均粒子径は、0.3μm以上、5μm以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.5μm以上、1μm以下である。粉砕、混合した焼成体の平均粒子径を調節することにより、固体電解質部10において、後述する嵩密度を調節することができる。粉砕、混合した焼成体の平均粒子径は、上述した方法にて測定することが可能である。なお、粉砕、混合した焼成体の平均粒子径を調節するために、湿式遠心分離機などを用いて分級操作を行ってもよい。
次に、粉砕、混合した焼成体と第3溶媒および第2バインダーとを混合して、スラリー状の第3混合物3aを調製する。第3溶媒としては、上述した第1溶媒と同様な、水あるいは有機溶剤が採用可能である。第2バインダーとしては、第1バインダー同様な化合物が採用可能である。なお、第3溶媒は、粉砕、混合した焼成体を溶解しなくてよい。具体的には、工程S1の図3Aと同様にして、粉砕、混合した仮焼成体と第3溶媒および第2バインダーとをビーカー81に入れる。そこに、磁石式撹拌子(マグネチックスターラーバー)82を入れ、マグネチックスターラー83にて撹拌しながら混合する。これにより、スラリー状の第3混合物3aを得る。ここで、第3混合物3aには、分散剤、消泡剤などを助剤として添加してもよい。そして、工程S6へ進む。
[成形および第3加熱処理]
工程S6では、図3Fに示すように、第3混合物3aを、バーコーターなどの塗工機91を用いて基材92上に塗工し、シート状の成形体3bへ成形する。このとき、固体電解質部10の厚さが、0.5μm以上、30μm以下となるように成形体3bの厚さを調節する。成形体3bの厚さは、第3混合物3aの組成や塗工機91の性能などに対応させて適宜変更が可能である。
次に、図3Gに示すように、成形体3bを加熱して第3溶媒などを揮発させる。このときの加熱温度は、第3溶媒の沸点や蒸気圧などに応じて適宜設定する。その後、成形体3bを基材92から剥離し、所望の形状(例えば、直径約8.4mmの円盤状)に加工する。
次に、加工した成形体3bに第3加熱処理を施して固体電解質部10を形成する。具体的には、工程S2の図3Eと同様にして、加工した成形体3bを、支持体89を介して酸化マグネシウム製の蓋付き坩堝90内に載置する。その後、坩堝90ごと電気マッフル炉に入れて、第3加熱処理を施し、焼結させる。第3加熱処理の温度は、900℃以上、1200℃以下とすることが好ましい。第3加熱処理の温度を900℃未満とすると、焼結が十分に進行せず、固体電解質部10のリチウムイオン伝導性が低下する。第3加熱処理の温度が1200℃を超過すると、リチウムが揮散して、固体電解質部10のリチウムイオン伝導性が低下する。第3加熱処理の時間は、焼結が充分に進行すれば特に限定されないが、例えば、2時間以上、24時間以下である。
ここで、固体電解質部10の嵩密度を70%以上、100%以下とすることが好ましい。これにより、固体電解質部10内における隙間の発生を抑えることができる。嵩密度は、下記数式(A)から求めることが可能である。
β={w/(v・ρ)}×100 ・・・(A)
(嵩密度(%)をβ、仮焼成体の隙間も含めた見かけの体積をv、仮焼成体の質量をw、固形物1bの密度をρとする。)
第3加熱処理によって、成形体3bにおける組成式(1)のリチウム複合金属酸化物の焼結が促進される。これによって、固体電解質部10は、内部の隙間が低減されて、従来と比べて緻密な構造に形成される。なお、本実施形態では、前駆体を含む金属化合物溶液の混合物、すなわち第1混合物1aから固体電解質部10を形成したが、固体電解質部10の形成方法はこれに限定されない。その他の固体電解質部10の形成方法としては、ゾル・ゲル法、金属有機化合物分解法(MOD:Metal Organic Decomposition)などの湿式法、および固相合成法などの乾式法が挙げられる。そして、工程S7に進む。
[集電体の形成]
工程S7では、固体電解質部10に集電体20,30を形成する。まず、固体電解質部10の面10a,10bに研磨加工を施す。このとき、研磨加工によって、面10a,10bの平滑さを向上させ、面10a,10bと集電体20,30との接触面積を拡大させる。なお、工程S4が終了した時点で、面10a,10bが充分な平滑さを有している場合には、この研磨加工を省略してもよい。
次に、面10aに集電体20を、面10bに集電体30を、それぞれ形成する。集電体20,30の形成方法としては、適当な接着層を別途設けて接着する方法、PVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、PLD(Pulsed Laser Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、エアロゾルデポジション法などの気相堆積法、ゾル・ゲル法、金属有機化合物分解法、めっきなどの湿式法などが挙げられ、形成面との反応性や電気回路に望まれる電気伝導性、電気回路設計に応じて、適当な方法を用いることができる。また、集電体20,30の形成材料としては、上述した形成材料が採用可能である。そして、工程S8へ進む。
[正極および負極の形成]
工程S8では、集電体20と集電体30との間の固体電解質部10に、分極電圧を印加して直流通電することによって、固体電解質部10内に正極および負極を形成する。詳しくは、集電体20,30を、ケースレー・インスツルメンツ・インコーポレイテッド社のソースメータ(登録商標)などの分極電圧が印加可能な装置に接続する。ここで、本明細書において分極電圧とは、固体電解質部10内の集電体20,30の近傍を、正極と負極とに分極させるための電圧をいう。したがって、分極電圧は、組成式(1)における元素Maと元素Mbとの酸化還元電位差以上とする。
まず、集電体20と集電体30との間に電位差が生じるように分極電圧を印加して、直流通電する。このとき、固体電解質部10に対する直流通電は、正極とする集電体20側から、負極とする集電体30側へ向かう方向とする。すなわち、この方向は、リチウム電池100を充電する際の電流の方向に等しい。分極電圧は、組成式(1)の元素Ma,Mbの酸化還元電位によって適宜決定されるが、1つの固体電解質部10に対して、0.5V以上、6.0V以下とすることが好ましい。これによって、元素Maを含む正極活物質と元素Mbを含む負極活物質との生成が促進される。
固体電解質部10に分極電圧が印加されることにより、固体電解質部10における、面10aから厚さがおよそ0.1μmまでの領域に、Sbを含む正極活物質が生成されて正極が形成される。それと共に、固体電解質部10における、面10bから厚さがおよそ0.1μmまでの領域に、Taを含む負極活物質が生成されて負極が形成される。これは、SbとTaとの酸化還元電位差に由来している。すなわち、酸化還元電位が大きい元素MaであるSbが正極活物質に含まれ、酸化還元電位が小さい元素MbであるTaが負極活物質に含まれることになる。以上の工程を経て、リチウム電池100が製造される。
なお、固体電解質部10における、正極および負極の形成前後の構造は、X線回折分析、TEM(透過型電子顕微鏡)観察、エネルギー分散型または波長分散型X線分析などによって確認することが可能である。
以上に述べたように、上記実施形態に係るリチウム電池100、リチウム電池100の製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
リチウム電池100の電池反応領域を拡大させることができる。詳しくは、組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物は、ジルコン酸ランタンリチウムの一部が、元素MaとしてのSbで、元素MbとしてのTaで置換されている。SbとTaとは、酸化還元電位が異なる。そのため、一対の集電体20,30に正極および負極を分極させるための電位すなわち、分極電圧を与えると、固体電解質部10において、集電体20と接する面10aとその近傍に、Sbを含む正極活物質が生じる。それと共に、固体電解質部10において、集電体30と接する面10bとその近傍に、Taを含む負極活物質が生じる。このように、従来の電池のような複合体を形成しないため、リチウム電池100の構造中に隙間が生じにくくなる。そのため、従来の電池と比べて、正極活物質および負極活物質と固体電解質部10との間の接触面積が拡大し、それらの間の界面抵抗が減少する。したがって、従来よりも電池反応領域が拡大したリチウム電池100を提供することができる。
固体電解質部10に分極電圧を印加して直流通電することによって、正極と負極とを形成するため、正極および負極を形成する工程を、従来よりも簡略化することができる。
組成式(1)において、xおよびyは、iを元素MaとしてのSbの酸化数、jを元素MbとしてのTaの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8の関係式を満たす任意の実数である。これにより、固体電解質部10において、SbとTaとが活物質化されると共に、リチウムイオン伝導性が向上して充放電レートが確保される。すなわち、リチウム電池100としての機能を良好に発現させることができる。
酸化還元電位が約0.7VのSbと、酸化還元電位が約−0.81VのTaとの酸化還元電位差が、約1.51Vとなる。そのため、約1.51V以上の分極電圧を与えることにより、Sbを含む正極活物質と、Taを含む負極活物質とを生じさせ、二次電池として活用することができる。
固体電解質部10の厚さが、0.5μm以上であることにより、リチウム電池100の製造工程において、固体電解質部10の破損を低減して作りやすさを向上させることができる。固体電解質部10の厚さを、30μm以下とすることにより、薄型のリチウム電池100とすることができる。また、固体電解質部10の一部から正極および負極の活物質が生成することから、固体電解質部10と活物質との接触界面が良好に形成される。そのため、界面抵抗を低減しリチウム電池100の充放電レートを向上させることができる。
製造工程において、グリーンシート成形法を用いている。そのため、粉砕した焼成体と第3溶媒とから、流動性を有する第3混合物3aが調製される。そのため、第3混合物3aからリチウム電池100の形状を容易に成形することができる。また、第3加熱処理によって固体電解質部10が焼成され、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物の焼結が促進される。これにより、固体電解質部10におけるリチウムイオン伝導性を向上させることができる。
正極と負極とを形成する工程S8において、0.5V以上、6.0V以下の分極電圧を印加することから、Sbを含む正極活物質とTaを含む負極活物質との生成が促進されて、分極電圧を印加する時間を短縮することができる。
第1加熱処理によって、第1混合物1aに含まれる不純物などの有機物が分解されて低減される。そのため、第2加熱処理および第3加熱処理において、純度を高めて固体電解質部10が形成される。これに加えて、第1加熱処理、第2加熱処理および第3加熱処理の温度を1200℃以下とすることにより、結晶粒界での副反応やリチウムの揮散の発生が抑えられる。これらにより、リチウムイオン伝導性がさらに向上したリチウム電池100を製造することができる。
次に、上記実施形態のリチウム電池100について実施例と比較例とを示し、上記実施形態の効果をより具体的に説明する。図4は、実施例および比較例に係るリチウム電池の構成および評価結果を示す表である。なお、下記の実験における秤量は、メトラー・トレド社の分析用天秤ME204Tを用いて0.1mgの単位まで行った。
(実施例)
<リチウム電池の製造>
[金属化合物溶液の調製]
まず、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物の前駆体と、第1溶媒とから、金属化合物溶液を調製した。前駆体としては、以下に述べる、リチウム化合物、ランタン化合物、ジルコニウム化合物、アンチモン化合物、タンタル化合物を用いた。
[1mol/kg 硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液]
マグネチックスターラーバーを入れた30gのパイレックス(PYREX:登録商標)製試薬瓶へ、関東化学社 3N5の純度99.95%の硝酸リチウム1.3789gと、関東化学社 鹿特級の2−ブトキシエタノール(エチレングリコールモノブチルエーテル)18.6211gとを秤量した。次いで、ホットプレート機能付きマグネチックスターラーに載せ、190℃にて1時間撹拌しながら、硝酸リチウムを2−ブトキシエタノールに完全に溶解し、約20℃まで徐冷して、1mol/kg濃度の硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液を得た。なお、硝酸リチウムの純度は、イオンクロマトグラフィー質量分析計を用いて測定することが可能である。
[1mol/kg 硝酸ランタン・六水和物の2−ブトキシエタノール溶液]
マグネチックスターラーバーを入れた30gのパイレックス製試薬瓶へ、関東化学社 4Nの硝酸ランタン・六水和物8.6608gと、関東化学社 鹿特級の2−ブトキシエタノール11.3392gとを秤量した。次いで、ホットプレート機能付きマグネチックスターラーに載せ、140℃にて30分間撹拌しながら、硝酸ランタン・六水和物を2−ブトキシエタノールに完全に溶解し、室温まで徐冷して、1mol/kg濃度の硝酸ランタン・六水和物の2−ブトキシエタノール溶液を得た。
[1mol/kg ジルコニウムテトラノルマルブトキシドのブタノール溶液]
マグネチックスターラーバーを入れた20gのパイレックス製試薬瓶へ、和光純薬工業社のジルコニウムテトラノルマルブトキシド3.8368gと、ブタノール(ノルマルブタノール)6.1632gとを秤量した。次いで、マグネチックスターラーに載せ、室温にて30分間撹拌しながら、ジルコニウムテトラノルマルブトキシドをブタノールに完全に溶解して、1mol/kg濃度のジルコニウムテトラノルマルブトキシドのブタノール溶液を得た。
[1mol/kg アンチモントリ−n−ブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液]
マグネチックスターラーバーを入れた20gのパイレックス製試薬瓶へ、和光純薬工業社のアンチモントリ−n−ブトキシド3.4110gと、関東化学社 鹿特級の2−ブトキシエタノール6.5890gとを秤量した。次いで、マグネチックスターラーに載せ、室温にて30分間撹拌しながら、アンチモントリ−n−ブトキシドを2−ブトキシエタノールに完全に溶解して、1mol/kg濃度のアンチモントリ−n−ブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液を得た。
[1mol/kg タンタルペンタ−n−ブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液]
マグネチックスターラーバーを入れた20gのパイレックス製試薬瓶へ、高純度化学研究所社のタンタルペンタ−n−ブトキシド5.4640gと、関東化学社 鹿特級の2−ブトキシエタノール4.5360gとを秤量した。次いで、マグネチックスターラーに載せ、室温にて30分間撹拌しながら、タンタルペンタ−n−ブトキシドを2−ブトキシエタノールに完全に溶解して、1mol/kg濃度のタンタルペンタ−n−ブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液を得た。
<第1混合物の調製>
次に、上記の金属化合物溶液を使用して、実施例1から実施例6の固体電解質部に用いる第1混合物を調製した。ここで、実施例1から実施例6を、以降、単に実施例ともいう。なお、実施例では、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物の組成を、Li6.75La3Zr1.75Sb0.5Ta0.512とした。
[実施例の第1混合物]
Li6.75La3Zr1.75Sb0.5Ta0.512の前駆体を含む第1混合物を調製する。まず、ガラス製ビーカーへ、1mol/kg濃度の硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液8.1000g、1mol/kg濃度の硝酸ランタン・六水和物の2−ブトキシエタノール溶液3.0000g、1mol/kg濃度のジルコニウムテトラノルマルブトキシドのブタノール溶液1.7500g、1mol/kg濃度のアンチモントリ−n−ブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.5000g、1mol/kg濃度のタンタルペンタ−n−ブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.5000gを秤量し、マグネチックスターラーバーを投入した。次いで、マグネチックスターラーを用いて、室温にて30分間撹拌し、実施例用の第1混合物を得た。
ここで、実施例の第1混合物では、後工程の加熱によるリチウムの揮散分を勘案し、所定の理論組成に対して、モル比で1.20倍となるように1mol/kg濃度の硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液を配合した。他の金属化合物溶液は、理論組成に対して、等モル比となるように配合した。
[固体電解質部の形成]
まず、実施例の第1混合物に第1加熱処理を施して、固形物を得た。具体的には、内径50mmφ×高さ20mmのチタン製シャーレに、第1混合物を入れた。これをホットプレートに載せ、ホットプレートの設定温度を200℃として1時間加熱し、溶媒を除去した。続いて、ホットプレートの設定温度を540℃として30分間加熱し、残存する有機成分を燃焼、分解させた。その後、ホットプレート上で室温まで徐冷して、固形物を得た。
次に、固形物をメノウ乳鉢に移して充分に粉砕、混合した。そこから0.2000gを秤量して、錠剤成形器、詳しくは内径10mmの排気ポート付きダイスと、ハンディープレス機とを用い、0.400kN/mm2(400MPa)の圧力にて5分間加圧し、成形物を作製した。
次に、成形物に第1加熱処理を施した。具体的には、成形物を酸化マグネシウム製の坩堝に入れ、酸化マグネシウム製の蓋をした。この状態で、ヤマト科学社の電気マッフル炉FP311に投入し、540℃で4時間の第1加熱処理を施した。その後、電気マッフル炉を室温まで徐冷して仮焼成体を取り出し、直径約9.5mm、厚さ約800μmの仮焼成体を得た。
次に、仮焼成体をメノウ乳鉢に移して充分に粉砕、混合した。まず、粉砕、混合した仮焼成体の平均粒子径が0.5μm以上、1μm以下であることを、上述した方法により確認した。その後、第1バインダーとしてシグマアルドリッチ社のポリプロピレンカーボネート10gを、第2溶媒としての、関東化学社の有機溶媒1,4−ジオキサン90gに溶解して溶液とした。この溶液と、粉砕、混合した仮焼成体15gとを、ビーカーに入れて撹拌しながら混合し、スラリー状の第2混合物を得た。
次に、第2混合物を、内径50mmφ×高さ20mmのチタン製シャーレに入れてホットプレートに載せ、ホットプレートの設定温度を200℃として1時間加熱し、溶媒を除去する。続いて、ホットプレート85の設定温度を540℃として30分間加熱し、第2混合物に含まれる有機成分の大部分を燃焼により分解させる。
次に、固形物をメノウ乳鉢に移して充分に粉砕、混合した。そこから0.2000gを秤量して、錠剤成形器、詳しくは内径10mmの排気ポート付きダイスと、ハンディープレス機とを用い、0.400kN/mm2(400MPa)の圧力にて5分間加圧し、成形体を作製した。
次に、成形体に第2加熱処理を施した。具体的には、成形体を酸化マグネシウム製の坩堝に入れ、酸化マグネシウム製の蓋をした。この状態で電気マッフル炉FP311(製品名、ヤマト科学社)に投入し、1000℃で8時間の第2加熱処理を施した。その後、電気マッフル炉を室温まで徐冷してから、焼成体を取り出した。
次に、焼成体をメノウ乳鉢に移して充分に粉砕、混合した。まず、粉砕、混合した焼成体の平均粒子径が0.5μm以上、1μm以下であることを、上述した方法により確認した。その後、第2バインダーとしてシグマアルドリッチ社のポリプロピレンカーボネート10gを、第3溶媒としての、関東化学社の有機溶媒1,4−ジオキサン90gに溶解して溶液とした。この溶液と、粉砕、混合した焼成体15gとを、ビーカーに入れて撹拌しながら混合し、スラリー状の第3混合物を得た。
次に、第3混合物を、塗工機としてコーテック社の全自動フィルムアプリケーターを用いて、ポリエチレンテレフタラート製の基材上に塗工し、シート状の成形体へ成形した。このとき、実施例1から実施例5のリチウム電池の厚さが、図4に示した数値となるように、基材への第3混合物の塗工条件を調節した。その後、成形体を80℃で3時間乾燥してから、基材から剥離した。次いで、成形体を、直径約8.4mmの円盤状に切り出して加工した。
次に、円盤状に加工した成形体に第3加熱処理を施した。具体的には、加工した成形体を酸化マグネシウム製の坩堝に入れ、酸化マグネシウム製の蓋をした。この状態で電気マッフル炉FP311(製品名、ヤマト科学社)に投入し、1000℃で8時間の第3加熱処理を施した。その後、電気マッフル炉を室温まで徐冷してから、固体電解質部を取り出した。これにより、直径約7mmの固体電解質部を得た。したがって、実施例のリチウム電池の電極面積は、約38.5mm2(0.385cm2)となる。
[集電体の形成]
次に、固体電解質部の表裏両面に、金スパッタにて7mmφの金薄膜の集電体を形成した。集電体を形成した固体電解質部への分極電圧の印加、すなわち直流通電は、後述するリチウム電池の評価中に施す。なお、説明の便宜上、分極電圧を印加する前段階の、集電体を形成した固体電解質部も、リチウム電池ということもある。また、実施例6は、厚さが1.0μmの実施例2のリチウム電池を80個用いて、80層の並列スタック構造とした。
(比較例)
<リチウム電池の製造>
まず、正極層を作製した。具体的には、バインダーとしてシグマアルドリッチ社のポリプロピレンカーボネート10gを、関東化学社の有機溶媒1,4−ジオキサン90gに溶解して溶液とした。次いで、該溶液と、日本化薬社の平均粒子径が約5μmのLiCoO2粉末15gとを、ビーカーに入れて撹拌しながら混合し、スラリーを得た。
上記スラリーを、コーテック社の全自動フィルムアプリケーターを用いて、ポリエチレンテレフタラート製の基材上に塗工し、シートを成形した。このとき、比較例のリチウム電池における正極層の厚さが約20μmとなるように、基材へのスラリーの塗工条件を調節した。なお、リチウム電池製造後の該正極層の嵩密度は、上述した測定方法で測定した結果、約50%であった。
次に、固体電解質層を作製した。具体的には、バインダーとしてシグマアルドリッチ社のポリプロピレンカーボネート10gを、関東化学社の有機溶媒1,4−ジオキサン90gに溶解して溶液とした。次いで、該溶液と、豊島製作所社の平均粒子径が約5μmのLi6.75La3Zr1.75Nb0.2512粉末15gとを、ビーカーに入れて撹拌しながら混合し、スラリーを得た。
上記スラリーを、コーテック社の全自動フィルムアプリケーターを用いて、ポリエチレンテレフタラート製の基材上に塗工し、シートを成形した。このとき、比較例のリチウム電池における固体電解質層の厚さが約30μmとなるように、基材へのスラリーの塗工条件を調節した。
次に、負極層を作製した。具体的には、バインダーとしてシグマアルドリッチ社のポリプロピレンカーボネート10gを、関東化学社の有機溶媒1,4−ジオキサン90gに溶解して溶液とした。次いで、該溶液と、豊島製作所社の平均粒子径が約5μmのLi4Ti512粉末15gとを、ビーカーに入れて撹拌しながら混合し、スラリーを得た。
上記スラリーを、コーテック社の全自動フィルムアプリケーターを用いて、ポリエチレンテレフタラート製の基材上に塗工し、シートを成形した。このとき、比較例のリチウム電池における負極層の厚さが約20μmとなるように、基材へのスラリーの塗工条件を調節した。
次に、上記の正極層、固体電解質層、負極層を、正極層、固体電解質層、負極層の順番に積層し、80℃で加熱しながら、積層方向に200kPaの圧力をかけて接着させた。その後、直径約8.4mmの円盤状に切り出して加工してから、1000℃で6時間の加熱を施した。これにより、直径約7mmの比較例1のリチウム電池を得た。したがって、比較例1のリチウム電池の電極面積は、約38.5mm2(0.385cm2)となる。
次に、正極側および負極側に集電体を形成した。正極側には厚さ約5μmのAl箔を、負極側には厚さ約5μmのCu箔を、それぞれ積層して、比較例1のリチウム電池を得た。
<リチウム電池の評価>
[界面抵抗]
リチウム電池について、界面抵抗を測定した。具体的には、実施例および比較例のリチウム電池について、ソーラトロン社のインピーダンスアナライザーSI1260を用いて、交流インピーダンス測定を行った。その後、再度リチウム電池を充電し、放電曲線のプラトー部が現れる2.0Vから2.5Vの間まで放電した。次いで、リチウム電池の起電力と同じ直流バイアス電圧を印加しながら交流インピーダンス測定を行った。なお、測定時のAC振幅は10mV、測定周波数は107Hzから10-1Hzとした。得られたインピーダンススペクトルであるCole−Coleプロットから、界面抵抗を読み取り、その結果を図4に示した。
図4に示した通り、実施例1から実施例4のリチウム電池の界面抵抗は、いずれも0.8Ωcm2と良好な結果が得られ、電池反応領域が拡大することが示された。また、比較例のリチウム電池の界面抵抗は、200Ωcm2であり、リチウム電池として適さないことが分かった。
[充放電特性]
実施例および比較例のリチウム電池について、充放電特性を調査した。具体的には、未通電の各リチウム電池を、ケースレー・インスツルメンツ・インコーポレイテッド社のソースメータ(登録商標)2400に接続した。次いで、分極電圧として4.1Vを印加し、50μAの直流通電を開始した。その後、固体電解質部に正極および負極が形成された後も直流通電を継続して、各リチウム電池に充電を行った。次いで、リチウム電池の充電電圧が3.3V以上となったところで充電を停止させ、放電電流を10μAにて放電させた。各リチウム電池について、上記操作における充放電特性を、横軸が容量(μAh)、縦軸が電圧(mV)のグラフとして取得した。
得られた充放電特性のデータは、実施例において、容量値は異なるものの傾向は同じであった。そこで、実施例5を実施例の代表例として図5Aに示した。図5Aは、実施例5に係るリチウム電池の充放電特性を示すグラフである。また、比較のため、比較例1のデータを図5Bに示した。図5Bは、比較例1に係るリチウム電池の充放電特性を示すグラフである。
図5Aに示すように、実施例5のリチウム電池では初回の通電によって、まず分極、つまり電池化が進行していることが分かる。すなわち、固体電解質部10における一対の集電体との界面に、それぞれSbを含む正極活物質と、Taを含む負極活物質との生成が進行している。この電池化は、充電曲線に矢印で示した点付近で完了し、それ以降は、リチウム電池としての通常の充電挙動が進行している。特に、電池化の挙動と充電の挙動とは、グラフの傾きが異なるため判別可能である。このように、実施例のリチウム電池では、初回の通電で、正極活物質と負極活物質が生成されて、電池化が進行していることが示された。
これに対して、図5Bに示すように、比較例1のリチウム電池では、放電プラトー部に平坦性が認められず直線的な電位降下が発生しているため、内部抵抗が高いことが推定される。
[容量密度]
上記充放電特性の評価において、容量密度の評価も併せて行った。具体的には、動作電流密度0.13mAh/cm2における放電容量を測定した。その結果と、リチウム電池の体積および放電容量から計算した容量密度と、を図4に示した。
図4に示すように、実施例のリチウム電池では、厚さが小さい程、容量密度が向上することが分かった。また、厚さが大きい程、放電容量が増加することが分かった。特に、実施例6は、同じ厚さの比較例1と比べて、容量密度および放電容量が共に優れていることが示された。
(実施形態2)
<リチウム電池>
本実施形態に係る二次電池について、リチウム電池を例に挙げて説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
実施形態1では、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物として、Li6.75La3Zr1.75Sb0.5Ta0.512を例示したが、これに限定されない。組成式(1)を満たすことにより、実施形態1と同様に、リチウム電池の電池反応領域を拡大させることができる。以下、本実施形態のリチウム電池について実施例を示し、本実施形態の効果を具体的に説明する。
(実施例)
本実施形態のリチウム電池は、固体電解質部10に含まれる組成式(1)のリチウム複合金属酸化物が、実施形態1の実施例1とは異なっている。本実施形態では、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物の組成を、Li6.6La3Zr1.3Sb0.5Ta0.212とした。これによれば、元素Maと元素Mbとの酸化還元電位差が、約1.51Vとなる。したがって、約1.51V以上の分極電圧を与えることにより、Sbを含む正極活物質と、Taを含む負極活物質とを生じさせ、二次電池として活用することができる。組成式(1)のリチウム複合金属酸化物を上記組成とした他は、実施形態1の実施例1と同様にしてリチウム電池を製造し、実施例7のリチウム電池とした。
本実施形態の組成式(1)のリチウム金属酸化物における他の形態として、元素MaはV(バナジウム)であり、元素MbはNb(ニオブ)である。このような元素Ma,Mbの組み合わせから成る組成式(1)のリチウム複合金属酸化物は、特に限定されない。本実施形態では、Li6.6La3Zr1.60.4Nb0.412とした。これによれば、元素Maと元素Mbとの酸化還元電位差が、約1.21Vとなる。したがって、約1.21V以上の分極電圧を与えることにより、Vを含む正極活物質と、Nbを含む負極活物質とを生じさせ、二次電池として活用することができる。組成式(1)のリチウム複合金属酸化物を上記組成とした他は、実施形態1の実施例1と同様にしてリチウム電池を製造し、実施例8のリチウム電池とした。
本実施形態の組成式(1)のリチウム金属酸化物における上記以外の形態として、元素MaはCe(セリウム)であり、元素MbはMo(モリブデン)である。このような元素Ma,Mbの組み合わせから成る組成式(1)のリチウム複合金属酸化物は、特に限定されない。本実施形態では、Li6.6La3Zr1.4Ce0.6Mo0.612とした。これによれば、元素Maと元素Mbとの酸化還元電位差が、約1.71Vとなる。したがって、約1.71V以上の分極電圧を与えることにより、Ceを含む正極活物質と、Moを含む負極活物質とを生じさせ、二次電池として活用することができる。組成式(1)のリチウム複合金属酸化物を上記組成とした他は、実施形態1の実施例1と同様にしてリチウム電池を製造し、実施例9のリチウム電池とした。
本実施形態の組成式(1)のリチウム金属酸化物における上記以外の形態として、元素MaはTe(テルル)であり、元素MbはCr(クロム)である。このような元素Ma,Mbの組み合わせから成る組成式(1)のリチウム複合金属酸化物は、特に限定されない。本実施形態では、Li6.6La3Zr1.4Te0.2Cr0.412とした。これによれば、元素Maと元素Mbとの酸化還元電位差が、約1.35Vとなる。したがって、約1.35V以上の分極電圧を与えることにより、Teを含む正極活物質と、Crを含む負極活物質とを生じさせ、二次電池として活用することができる。組成式(1)のリチウム複合金属酸化物を上記組成とした他は、実施形態1の実施例1と同様にしてリチウム電池を製造し、実施例10のリチウム電池とした。
<リチウム電池の評価>
[総イオン伝導率]
実施例7から実施例10のリチウム電池について、リチウムイオン伝導性の指標として総イオン伝導率を測定した。ここで、実施例7から実施例10を、以降、単に実施例ということもある。具体的には、実施例のリチウム電池について、ソーラトロン社のインピーダンスアナライザーSI1260を用いて、交流インピーダンス測定を行った。その後、再度、リチウム電池を充電し、放電曲線のプラトー部が現れる2.0Vから2.5Vの間まで放電した。次いで、リチウム電池の起電力と同じ直流バイアス電圧を印加しながら交流インピーダンス測定を行った。なお、測定時のAC振幅は10mV、測定周波数は107Hzから10-1Hzとした。得られたインピーダンススペクトルであるCole−Coleプロットから、総イオン伝導率を読み取り、その結果を図6に示した。
図6に示すように、実施例7から実施例10のリチウム電池の総イオン伝導率は、いずれも1.0×10-4S/cm以上となり、良好なリチウムイオン伝導性を有していることが示された。
[動作電圧]
実施例のリチウム電池について、動作電圧を測定した。具体的には、リチウム電池の片方の面にCu電極を、もう一方の面にリチウム金属箔を押し当て、Metrohm Autolab社のポテンショスタットAUTOLABの参照極と対極とを、リチウム金属箔側に、作用極をCu電極側に接続し、電位0.0Vから5.0Vの範囲で電位を掃引しながら酸化還元ピーク電流を測定した。このときのレドックス電流ピークが現れる電位を動作電圧とした。その結果を、図6に示した。
図6に示すように、実施例7から実施例10のリチウム電池の動作電圧は、1.5V以上が確保され、二次電池として有効に機能することが示された。
[容量密度]
実施例のリチウム電池について、電池容量の指標として容量密度を評価した。具体的には、実施形態1の実施例1と同様にして、放電容量を測定した。その結果と、リチウム電池の体積および放電容量から計算した容量密度と、を図6に示した。なお、実施例7から実施例10のリチウム電池は、実施形態1における実施例1のリチウム電池と同様な、厚さ、電極面積、体積とした。
図6に示すように、実施例7および実施例8では、実施形態1の実施例1と、実施例9では、実施形態1の実施例3と、それぞれほぼ同等の容量密度が得られた。実施例10では、実施例1を超える容量密度が得られた。これにより、実施例7から実施例10のリチウム電池では、実施形態1と同様に、容量密度が向上することが示された。
(実施形態3)
<リチウム電池の製造方法>
本実施形態に係る二次電池としてのリチウム電池の製造方法について、図7を参照して説明する。図7は、実施形態3に係る二次電池としてのリチウム電池の製造方法を示す工程フロー図である。なお、図7に示した工程フローは一例であって、これに限定されるものではない。また、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
本実施形態のリチウム電池の製造方法は、実施形態1のリチウム電池の製造方法に対して、粉砕、混合した仮焼成体と第2溶媒とから第2混合物を調製しない点が異なっている。すなわち、本実施形態のリチウム電池の製造方法は、粉砕、混合した仮焼成体に加圧を施して、成形体を作製する。
図7に示すように、本実施形態のリチウム電池の製造方法は、以下の工程を備えている。工程S11から工程S13では、下記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を含む固体電解質部を形成する。工程S14では、固体電解質部を挟んで一対の集電体を形成する。工程S15では、一対の集電体の間に、分極電圧を印加して直流通電することにより、正極および負極を形成する。
Li7-xLa3Zr2-(x+y)MaxMby12 ・・・(1)
(但し、iをMaの酸化数、jをMbの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たし、Maは、Sb、Bi、Ce、Mn、V、Te、Tc、Snのうちの1種類以上を表し、Mbは、Nb、Cr、Mo、W、Ta、Tiのうちの1種類以上を表す。)
詳しくは、工程S11では、組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を構成する元素が含まれる複数種類の原材料を、第1溶媒に溶解させ、混合して第1混合物を調製する。工程S12では、第1混合物に第1加熱処理を施して反応させ、組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物の仮焼成体を作製する。工程S13では、仮焼成体を粉砕した後、加圧を施して成形体を作製し、該成形体に第2加熱処理および第3加熱処理を施して固体電解質部を形成する。
ここで、本実施形態のリチウム電池の製造方法のうち、工程S11、S12、S14、S15は、実施形態1のリチウム電池の製造方法における、工程S1、S2、S7、S8と、それぞれ同様にして実施することが可能である。したがって、以下は、工程S13についてのみ説明し、その他の工程S11、S12、S14、S15については説明を省略する。
[成形および第2加熱処理]
工程S13では、工程S11および工程S12で作製した仮焼成体を用いる。まず、工程S2の図3Cと同様にして、仮焼成体をメノウ乳鉢87およびメノウ乳棒86を用いて充分に粉砕、混合する。粉砕、混合した仮焼成体の平均粒子径は、0.3μm以上、5μm以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.5μm以上、1μm以下である。粉砕、混合した仮焼成体の平均粒子径を調節することにより、固体電解質部において、後述する嵩密度を調節することができる。粉砕、混合した仮焼成体の平均粒子径は、上述した方法にて測定することが可能である。なお、粉砕、混合した仮焼成体の平均粒子径を調節するために、湿式遠心分離機などを用いて分級操作を行ってもよい。
次に、ハンディープレス機を用いて、粉砕、混合した仮焼成体に加圧を施して成形する。具体的には、粉砕、混合した仮焼成体を0.2000g秤量して、10mmφの錠剤成形器88(図3D参照)に入れる。続いて、ハンディープレス機を用い、錠剤成形器88に一軸プレス(加圧)を行って仮焼成体の成形体を得る。具体的には、上記加圧は、一軸プレスを用いて、0.400kN/mm2(400MPa)の圧力を5分間印加する。加圧を施す時間は、特に限定されないが、おおよそ5分間以上が確保されればよく、例えば、4分間以上、7分間以下であればよい。このとき、上記加圧の圧力や時間を調節することによって、作製する固体電解質部の嵩密度を所望の値とすることが好ましい。
次に、成形体に第2加熱処理および第3加熱処理を施して固体電解質部を形成する。具体的には、工程S2の図3Eと同様にして、成形体を、支持体89を介して酸化マグネシウム製の蓋付き坩堝90内に載置する。その後、坩堝90ごと電気マッフル炉に入れて、1000℃で8時間の第2加熱処理を施し、焼結させる。第2加熱処理の温度は、680℃以上、1000℃以下とする。第2加熱処理の時間は、焼結が充分に進行すれば特に限定されないが、例えば、2時間以上、16時間以下である。さらに、そのまま1000℃で8時間の第3加熱処理を施し、焼結させる。第3加熱処理の温度は、900℃以上、1200℃以下とする。第3加熱処理の時間は、焼結が充分に進行すれば特に限定されないが、例えば、2時間以上、16時間以下である。なお、第2加熱処理および第3加熱処理は、統合して行ってもよい。
ここで、固体電解質部の嵩密度を70%以上、100%以下とすることが好ましい。これにより、固体電解質部内における隙間の発生を抑えることができる。固体電解質部の嵩密度は、上述した方法で求めることが可能である。
以降の工程S14、S15は、上述した通り、実施形態1の工程S7、S8と同様に実施する。これにより、本実施形態のリチウム電池が製造される。
以上に述べたように、本実施形態に係るリチウム電池の製造方法によれば、実施形態1での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。粉砕した仮焼成体を溶媒などに分散させることなしに、リチウム電池の形状が直接的に形成される。すなわち、粉砕した仮焼成体と溶媒とを混合する操作と、該溶媒を揮散させる操作と、を省いて、製造工程を簡略化することができる。
(実施形態4)
<電子機器>
本実施形態に係る電子機器について、図8を参照して説明する。本実施形態では、電子機器として、ウェアラブル機器を例に挙げて説明する。図8は、実施形態4に係る電子機器としてのウェアラブル機器の構成を示す概略図である。
図8に示すように、本実施形態のウェアラブル機器400は、バンド310を用いて、人体の、例えば手首WRに腕時計のように装着され、人体に係る情報を入手する情報機器である。ウェアラブル機器400は、電池305、表示部325、センサー321、処理部330を備えている。電池305には、上記実施形態の二次電池としてのリチウム電池を用いている。
バンド310は、装着時に手首WRに密着するように、ゴムなどの可撓性を備えた樹脂を用いた帯状を成している。バンド310の端部には、手首WRの太さに対応して結合位置を調整可能な結合部(図示せず)が設けられている。
センサー321は、バンド310において、装着時に手首WRに触れるよう、バンド310の内面側(手首WR側)に配置されている。センサー321は、手首WRと触れることによって、人体の脈拍や血糖値などに関する情報を入手し、処理部330へ出力する。センサー321としては、例えば光学センサーが用いられる。
処理部330は、バンド310に内蔵され、センサー321および表示部325と電気的に接続されている。処理部330としては、例えば集積回路(IC)が用いられる。処理部330は、センサー321からの出力に基づいて、脈拍や血糖値などの演算処理を行って、表示部325に表示データを出力する。
表示部325は、処理部330から出力された、脈拍や血糖値などの表示データを表示する。表示部325としては、例えば受光型の液晶表示装置を用いる。表示部325は、ウェアラブル機器400の装着時に、表示データを装着者が読み取れるように、バンド310の外面側、つまりセンサー321が配置された内面と対向する側に配置されている。
電池305は、表示部325、センサー321、処理部330へ電力を供給する電力供給源として機能する。電池305は、着脱可能な状態にてバンド310に内蔵されている。
以上の構成により、ウェアラブル機器400は、手首WRから装着者の脈拍や血糖値に係る情報を入手し、演算処理などを経て、脈拍や血糖値などの情報として表示することができる。また、ウェアラブル機器400は、リチウムイオン伝導性が向上し、小型ながら電池反応領域が拡大した、上記実施形態のリチウム電池を適用しているため、軽量化が可能であり、稼働時間を伸長させることができる。さらには、上記実施形態のリチウム電池は、全固体型の二次電池であるため、充電による繰り返しの使用が可能であることに加え、電解液などの漏洩の懸念がないため、長期間かつ安全に使用が可能なウェアラブル機器400を提供することができる。
本実施形態では、ウェアラブル機器400として腕時計型のウェアラブル機器を例示したが、これに限定されるものではない。ウェアラブル機器は、例えば、足首、頭、耳、腰などに装着されるものであってもよい。
また、電力供給源として上記実施形態のリチウム電池が適用される電子機器は、ウェアラブル機器400に限定されない。その他の電子機器としては、例えば、ヘッドマウントディスプレイなどの頭部装着型ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、携帯電話機、携帯情報端末、ノート型パソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレイヤー、ワイヤレスヘッドホン、携帯ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器は、例えば、データ通信機能、ゲーム機能、録音再生機能、辞書機能などの他の機能を有していてもよい。
また、本実施形態の電子機器は、一般消費者向けの用途に限定されず、産業用途へも適用が可能である。さらに、上記実施形態のリチウム電池が適用される機器は、電子機器に限定されない。例えば、上記実施形態のリチウム電池を、移動体の電力供給源として適用してもよい。移動体としては、具体的には、自動車、バイク、フォークリフト、無人飛行機等の飛行体などが挙げられる。これによれば、電池反応領域が拡大した二次電池を、電力供給源として備えた移動体を提供することができる。
(変形例1)
<リチウム電池の製造方法>
組成式(1)のリチウム複合金属酸化物を含む固体電解質部の形成には、金属有機化合物分解法(MOD法)を用いてもよい。具体的には、MOD法により基板上に直接固体電解質部を形成する。詳しくは、上記実施形態1と同様にして、上述したリチウム化合物、ランタン化合物、ジルコニウム化合物、元素Maの化合物、元素Mbの化合物および第1溶媒から、第1混合物を調製する。第1混合物には、界面活性剤、焼結助剤、キレート剤などを添加してもよい。
第1混合物を、基板上に塗布する。第1混合物の塗布方法としては、スピンコート、スプレーコートなどを用いる。基板としては、Ni(ニッケル)、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)などの導電性基板、貴金属薄板、導電性酸化物薄板が採用可能である。
次いで、第1混合物を塗布した基板を、ランプアニール炉などに投入して高温の加熱処理を施す。加熱処理の条件は、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物が合成されれば特に限定されないが、例えば、790℃以上の温度で、10分間以上とする。その後、上記基板を25℃程度まで冷却して、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物の薄膜(固体電解質部)が形成される。上記薄膜の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.5μm程度とする。上記薄膜の厚さは、第1混合物の塗布条件で調整することが可能であり、スピンコートを採用する場合には、時間当たりの回転数や塗布時間を調整する。
次いで、固体電解質部に集電体を形成する。集電体の形成方法は、上述した方法が採用可能である。まず、固体電解質部の破損を防ぐために、固体電解質部を基板から剥離せずに、露出している表面側に集電体を形成する。次に、固体電解質部を基板から剥離して、直径約8.4mmの円盤状に切り出して加工する。その後、固体電解質部の、基板と接していた面、すなわち集電体を形成した面と対向する面に、上記と同様にして集電体を形成する。これにより、固体電解質を介して対向する一対の集電体が形成される。
次いで、実施形態1の工程6と同様にして、正極および負極を形成する。これにより、リチウム電池が製造される。
以上に述べたように本変形例によれば、MOD法を採用するため、上記実施形態のような第2混合物を調製せずに、固体電解質部を形成することが可能となる。そのため、リチウム電池の製造工程を簡略化することができる。
(変形例2)
<リチウム電池の製造方法>
組成式(1)のリチウム複合金属酸化物を含む固体電解質部の形成には、固相合成法を用いてもよい。具体的には、上述したリチウム化合物、ランタン化合物、ジルコニウム化合物、元素Maの化合物、元素Mbの化合物を用いる。これらの化合物は、粉体であることが好ましいが、粉体の平均粒子径や粒度分布に特に制限はなく、粒子の平均粒子径をそろえる整粒操作を施してもよい。また、あらかじめ乾燥雰囲気中で粒子表面の吸着水を除去する処理を施してもよい。
上記化合物を、組成式(1)の組成に従った所定の割合で秤量して、混合したものを出発原料とする。このとき、後工程における加熱によって、上記組成中のリチウムが揮散することがある。そのため、加熱の条件に合わせて、あらかじめ第1混合物中のリチウム化合物の含有量を、所望の組成に対して0.05モル%から30モル%程度過剰に配合してもよい。
まず、上記出発原料を、粉体から成形物とする操作を行う。これにより、出発原料の粒子同士が密着しやすくなり、出発原料における固相反応を促進される。成形物の形状や方法は特に限定されず、例えば、錠剤成形器としてのダイスによるプレス加工や、CIP(Cold Isostatic Pressing)などによる公知の方法が採用可能である。また、成形を補助するために、樹脂などのバインダー(結着剤)を出発原料に添加してもよい。
出発原料の成形物の加熱処理は、上記実施形態の第2加熱処理および第3加熱処理と同様にして行う。該加熱処理は、大気下やアルゴン−酸素混合気などの、酸素ガスが存在する雰囲気中で行う。これによって、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物を合成され、固体電解質部が形成される。なお、出発原料の粉体を成形物に加工せずに加熱処理を施して、その後に成形して固体電解質部を形成してもよい。
固体電解質部の形成後の工程は、実施形態1と同様にして実施し、リチウム電池を製造する。
以上に述べたように本変形例によれば、固相合成法を採用するため、上記実施形態のような第1混合物、第2混合物および第3混合物を調製せずに、固体電解質部を形成することが可能となる。そのため、有機溶媒への溶解や分散、有機溶媒の揮発などの操作が省略されて、リチウム電池の製造工程を簡略化することができる。
(変形例3)
<二次電池>
本変形例に係る二次電池としてのリチウム電池について説明する。リチウム電池における固体電解質部には、上記組成式(1)のリチウム複合金属酸化物として、複数種類の元素Ma,Mbを添加してもよい。すなわち、上記組成式(1)のリチウム複合金属酸化物において、元素Maとして、Sb、Bi、Ce、Mn、V、Te、Tc、Snのうちの複数種類を添加し、元素Mbとして、Nb、Cr、Mo、W、Ta、Tiのうちの複数種類を添加してもよい。
詳しくは、元素Ma,Mbとして、それぞれ複数種類の元素を用いる場合に、元素Maに用いる複数種類の元素のうちで、酸化還元電位が最も大きな元素をMa1とし、元素Mbに用いる複数種類の元素のうちで、酸化還元電位が最も小さな元素をMb1とする。このとき、元素Ma1と元素Mb1との酸化還元電位差が、約1.0V以上となるように元素Ma1,Mb1を選択することが好ましい。ここで、元素Ma,Mbのうち、一方の元素を1種類とし、他方の元素を複数種類としてもよい。
また、元素Ma,Mbとして、それぞれ複数種類の元素を用いる場合には、固体電解質部における総イオン伝導率が、5.0×10-4S/cm以上となるように元素Ma,Mbを選択することが好ましい。なお、元素Ma,Mbとして、それぞれ複数種類の元素を用いると、リチウム電池の最大の電池容量は、元素Ma1と元素Mb1との組み合わせによって決まる。
以下に、実施形態から導き出される内容を記載する。
二次電池は、下記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を含む固体電解質部と、固体電解質部を介して対向配置された集電体と、を備える。
Li7-xLa3Zr2-(x+y)MaxMby12 ・・・(1)
(但し、iをMaの酸化数、jをMbの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たし、Maは、Sb、Bi、Ce、Mn、V、Te、Tc、Snのうちの1種類以上を表し、Mbは、Nb、Cr、Mo、W、Ta、Tiのうちの1種類以上を表す。)
この構成によれば、二次電池における界面抵抗を減少させて電池反応領域を拡大させることができる。詳しくは、組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物は、ジルコン酸ランタンリチウムの一部が、元素Ma,Mbによって置換されている。元素Maと元素Mbとは、酸化還元電位が異なる。そのため、一対の集電体に正極および負極を分極させるための電位、すなわち分極電圧を与えると、固体電解質部において、一方の集電体と接する面とその近傍に、元素Maを含む正極活物質が生じる。それと共に、固体電解質部において、他方の集電体と接する面とその近傍に、元素Mbを含む負極活物質が生じる。これによって、固体電解質部内に、正極と負極とが形成される。このように、従来の電池のような複合体を形成しないため、構造中に隙間が生じにくくなる。そのため、従来の電池と比べて、正極活物質および負極活物質と固体電解質部との間の接触面積が拡大し、それらの間の界面抵抗が減少する。したがって、従来よりも電池反応領域が拡大した二次電池を提供することができる。
0.5<x+y<1.2を満たすことから、リチウムイオン伝導性が向上して、二次電池の充放電レートを確保することができる。また、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たすことから、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物の結晶粒界に析出したMaとMbとを活物質化させることができる。
上記の二次電池において、組成式(1)のMaは、Sbであり、組成式(1)のMbは、Taであり、iをsbの酸化数、jをTaの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たすことが好ましい。
この構成によれば、酸化還元電位が約0.7VのSb(アンチモン)と酸化還元電位が約−0.81VのTa(タンタル)との酸化還元電位差が、約1.51Vとなる。そのため、約1.51V以上の分極電圧を与えることにより、Sbを含む正極活物質と、Taを含む負極活物質とを生じさせ、二次電池として活用することができる。また、固体電解質部の一部から正極および負極の活物質が生成することから、固体電解質部と活物質との接触界面が良好に形成される。そのため、界面抵抗を低減し二次電池の充放電レートを向上させることができる。
上記の二次電池において、固体電解質部は、厚さが0.5μm以上、30μm以下であることが好ましい。
この構成によれば、固体電解質部の厚さを、0.5μm以上とすることにより、製造工程において、固体電解質部の破損を低減して作りやすさを向上させることができる。固体電解質部の厚さを、30μm以下とすることにより、薄型の二次電池とすることができる。
電子機器は、上記の二次電池を備える。
この構成によれば、電池反応領域が拡大し、小型で高品位な電池を電力供給源として備えた電子機器を提供することができる。
二次電池の製造方法は、下記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を含む固体電解質部を形成する工程と、固体電解質部を挟んで集電体を形成する工程と、集電体の間に、分極電圧を印加して直流通電する工程と、を備える。
Li7-xLa3Zr2-(x+y)MaxMby12 ・・・(1)
(但し、iをMaの酸化数、jをMbの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たし、Maは、Sb、Bi、Ce、Mn、V、Te、Tc、Snのうちの1種類以上を表し、Mbは、Nb、Cr、Mo、W、Ta、Tiのうちの1種類以上を表す。)
この構成によれば、電池反応領域が拡大した二次電池を製造することができる。詳しくは、組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物は、ジルコン酸ランタンリチウムの一部が、元素Ma,Mbによって置換されている。元素Maと元素Mbとは、酸化還元電位が異なる。そのため、一対の集電体に正極および負極を分極させるための電位、すなわち分極電圧を与えると、固体電解質部において、一方の集電体と接する面とその近傍に、元素Maを含む正極活物質が生じる。それと共に、固体電解質部において、他方の集電体と接する面とその近傍に、元素Mbを含む負極活物質が生じる。これによって、固体電解質部内に、正極と負極とが形成される。このように、従来の電池のような複合体を形成しないため、構造中に隙間が生じにくくなる。そのため、従来の電池と比べて、正極活物質および負極活物質と固体電解質部との間の接触面積が拡大し、それらの間の界面抵抗が減少する。したがって、従来よりも電池反応領域が拡大した二次電池を提供することができる。
0.5<x+y<1.2を満たすことから、リチウムイオン伝導性が向上して、二次電池の充放電レートを確保することができる。また、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たすことから、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物の結晶粒界に析出したMaとMbとを活物質化させることができる。
固体電解質部に分極電圧を印加して直流通電することによって、正極と負極とを形成するため、正極および負極を形成する工程を、従来よりも簡略化することができる。
上記の二次電池の製造方法において、固体電解質部を形成する工程は、上記組成式(1)において、MaがSbであり、MbがTaであり、iをSbの酸化数、jをTaの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たす、リチウム複合金属酸化物を含む固体電解質部を形成することが好ましい。
この構成によれば、酸化還元電位が約0.7VのSbと酸化還元電位が約−0.81VのTaとの酸化還元電位差が、約1.51Vとなる。そのため、約1.51V以上の分極電圧を印加することにより、Sbを含む正極活物質と、Taを含む負極活物質とを生じさせ、二次電池として活用することができる。また、固体電解質部の一部から正極および負極の活物質が生成することから、固体電解質部と活物質との接触界面が良好に形成される。そのため、界面抵抗を低減し二次電池の充放電レートを向上させることができる。
上記の二次電池の製造方法において、固体電解質部を形成する工程は、上記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を構成する元素が含まれる複数種類の原材料を、第1溶媒に溶解させ、混合して第1混合物を調製する工程と、第1混合物に第1加熱処理を施して反応させ、リチウム複合金属酸化物の仮焼成体を作製する工程と、仮焼成体を粉砕した後、第2溶媒と第1バインダーとを混合して第2混合物を調製する工程と、調製した第2混合物を成形した後、第2加熱処理を施す工程と、第2加熱処理を施した焼成体を粉砕した後、第3溶媒と、第2バインダーとを混合して第3混合物を調製する工程と、第3混合物を成形した後、第3加熱処理を施す工程と、を含むことが好ましい。
この構成によれば、粉砕した焼成体と第3溶媒とから、流動性を有する第3混合物が調製される。そのため、第3混合物から二次電池の形状を容易に成形することができる。また、第3加熱処理によって固体電解質部が焼成され、リチウム複合金属酸化物の焼結が促進される。これにより、固体電解質部におけるリチウムイオン伝導性を向上させることができる。
上記の二次電池の製造方法において、固体電解質部を形成する工程は、上記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を構成する元素が含まれる複数種類の原材料を、第1溶媒に溶解させ、混合して第1混合物を調製する工程と、第1混合物に第1加熱処理を施して反応させ、リチウム複合金属酸化物の仮焼成体を作製する工程と、仮焼成体を粉砕した後、加圧を施して成形体を作製する工程と、成形体に第2加熱処理および第3加熱処理を施す工程と、を含むことが好ましい。
この構成によれば、粉砕した仮焼成体を溶媒などに分散させることなしに、二次電池の形状が直接的に形成される。すなわち、粉砕した仮焼成体と溶媒とを混合する操作と、該溶媒を揮散させる操作と、を省いて、製造工程を簡略化することができる。また、第2加熱処理および第3加熱処理によって固体電解質部が焼成され、リチウム複合金属酸化物の焼結を促進させることができる。
上記の二次電池の製造方法において、直流通電する工程は、0.5V以上、6.0V以下の分極電圧を印加することが好ましい。
この構成によれば、元素Maを含む正極活物質と元素Mbを含む負極活物質との生成が促進されて、分極電圧を印加する時間を短縮することができる。
上記の二次電池の製造方法において、固体電解質部を形成する工程は、厚さが0.5μm以上、30μm以下の固体電解質部を形成することが好ましい。
この構成によれば、固体電解質部の厚さを、0.5μm以上とすることにより、製造工程において、固体電解質部の作りやすさを向上させることができる。固体電解質部の厚さを、30μm以下とすることにより、薄型の二次電池を製造することができる。
上記の二次電池の製造方法において、固体電解質部を形成する工程は、第1加熱処理として、200℃以上、540℃以下の加熱を施し、第2加熱処理として、680℃以上、1000℃以下の加熱を施し、第3加熱処理として、900℃以上、1200℃以下の加熱を施すことが好ましい。
この構成によれば、第1加熱処理によって、第1混合物に含まれる不純物などの有機物が分解されて低減される。そのため、第2加熱処理および第3加熱処理において、純度を高めて固体電解質部が形成される。これに加えて、第1加熱処理、第2加熱処理および第3加熱処理の温度を1200℃以下とすることにより、結晶粒界での副反応やリチウムの揮散の発生が抑えられる。これらにより、リチウムイオン伝導性がさらに向上した二次電池を製造することができる。
1a…第1混合物、2a…第2混合物、3a…第3混合物、10…固体電解質部、20,30…集電体、100…二次電池としてのリチウム電池、305…電池、400…電子機器としてのウェアラブル機器。

Claims (11)

  1. 下記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を含む固体電解質部と、
    前記固体電解質部を介して対向配置された集電体と、を備えた二次電池。
    Li7-xLa3Zr2-(x+y)MaxMby12 ・・・(1)
    (但し、iをMaの酸化数、jをMbの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たし、Maは、Sb、Bi、Ce、Mn、V、Te、Tc、Snのうちの1種類以上を表し、Mbは、Nb、Cr、Mo、W、Ta、Tiのうちの1種類以上を表す。)
  2. 前記組成式(1)のMaは、Sbであり、
    前記組成式(1)のMbは、Taであり、
    iを前記Sbの酸化数、jを前記Taの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たす、請求項1に記載の二次電池。
  3. 前記固体電解質部は、厚さが0.5μm以上、30μm以下である、請求項1または請求項2に記載の二次電池。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の二次電池を備えた電子機器。
  5. 下記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物を含む固体電解質部を形成する工程と、
    前記固体電解質部を挟んで集電体を形成する工程と、
    前記集電体の間に、分極電圧を印加して直流通電する工程と、を備えた二次電池の製造方法。
    Li7-xLa3Zr2-(x+y)MaxMby12 ・・・(1)
    (但し、iをMaの酸化数、jをMbの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たし、Maは、Sb、Bi、Ce、Mn、V、Te、Tc、Snのうちの1種類以上を表し、Mbは、Nb、Cr、Mo、W、Ta、Tiのうちの1種類以上を表す。)
  6. 前記固体電解質部を形成する工程は、前記組成式(1)において、前記MaがSbであり、前記MbがTaであり、iを前記Sbの酸化数、jを前記Taの酸化数とするとき、0.5<x+y<1.2、(ix+jy)+4(x+y)>8を満たす、前記リチウム複合金属酸化物を含む固体電解質部を形成する、請求項5に記載の二次電池の製造方法。
  7. 前記固体電解質部を形成する工程は、
    前記組成式(1)で表される前記リチウム複合金属酸化物を構成する元素が含まれる複数種類の原材料を、第1溶媒に溶解させ、混合して第1混合物を調製する工程と、
    前記第1混合物に第1加熱処理を施して反応させ、前記リチウム複合金属酸化物の仮焼成体を作製する工程と、
    前記仮焼成体を粉砕した後、第2溶媒と第1バインダーとを混合して第2混合物を調製する工程と、
    調製した前記第2混合物を成形した後、第2加熱処理を施す工程と、
    前記第2加熱処理を施した焼成体を粉砕した後、第3溶媒と、第2バインダーとを混合して第3混合物を調製する工程と、
    前記第3混合物を成形した後、第3加熱処理を施す工程と、を含む、請求項5または請求項6に記載の二次電池の製造方法。
  8. 前記固体電解質部を形成する工程は、
    前記組成式(1)で表される前記リチウム複合金属酸化物を構成する元素が含まれる複数種類の原材料を、第1溶媒に溶解させ、混合して第1混合物を調製する工程と、
    前記第1混合物に第1加熱処理を施して反応させ、前記リチウム複合金属酸化物の仮焼成体を作製する工程と、
    前記仮焼成体を粉砕した後、加圧を施して成形体を作製する工程と、
    前記成形体に第2加熱処理および第3加熱処理を施す工程と、を含む、請求項5または請求項6に記載の二次電池の製造方法。
  9. 前記直流通電する工程は、0.5V以上、6.0V以下の前記分極電圧を印加する、請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の二次電池の製造方法。
  10. 前記固体電解質部を形成する工程は、厚さが0.5μm以上、30μm以下の前記固体電解質部を形成する、請求項5から請求項9のいずれか1項に記載の二次電池の製造方法。
  11. 前記固体電解質部を形成する工程は、
    前記第1加熱処理として、200℃以上、540℃以下の加熱を施し、
    前記第2加熱処理として、680℃以上、1000℃以下の加熱を施し、
    前記第3加熱処理として、900℃以上、1200℃以下の加熱を施す、請求項7または請求項8のいずれか1項に記載の二次電池の製造方法。
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