JP2018092803A - 複合体、複合体の製造方法、電池、電池の製造方法、および電子機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】電池比容量の低下を抑えながら内部抵抗を低減した、複合体、複合体の製造方法、電池、電池の製造方法、および電子機器を提供すること。【解決手段】本発明の複合体は、活物質部2と、活物質部2の少なくとも一部を覆うように形成された繊維状の電子伝導体5と、を備える。【選択図】図2
Description
本発明は、複合体、複合体の製造方法、電池、電池の製造方法、および電子機器に関する。
従来、電解質として有機系電解液に代えて、固体電解質を用いた全固体電池が知られていた。例えば、特許文献1には、リチウム塩を含む電解質粒子を用いた固体電解質層によって、正極層と負極層との間のリチウムイオンの伝導を媒介するリチウム電池が提案されている。
このような全固体型リチウム電池を含めた二次電池では、正・負極の活物質における電荷交換を促進し、内部抵抗を低減するために、導電助剤(導電補助剤)を用いる技術が知られていた。例えば、特許文献2には、炭素繊維などの導電助剤を、負極活物質層に分散させた二次電池が提案されている。
しかしながら、特許文献2に記載の二次電池では、内部抵抗を低減することがむずかしいという課題があった。詳しくは、特許文献2では導電助剤や金属フレークを負極活物質層に分散させることによって、負極活物質同士の電気的な接続が補助されている。ところが、導電助剤および金属フレークは、電池容量に直接的には寄与しないため、これらの含有量を増やすほど、電池容量を担う負極活物質などの含有割合が相対的に減少する。したがって、負極活物質層における導電助剤などの含有量を増やすと、電池比容量が低下しやすくなるという課題もあった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例]本適用例に係る複合体は、活物質部と、活物質部の少なくとも一部を覆うように形成された繊維状の電子伝導体と、を備える。
本適用例によれば、複合体において、電池比容量の低下を抑えながら内部抵抗を低減することができる。詳しくは、繊維状の電子伝導体が、活物質部を覆うように形成されるため、粒子状やフレーク状の導電助剤などと比べて、活物質部における電気的な接続が容易になる。これに加えて、繊維状の電子伝導体が、繊維の線で結んで電気的な接続を増やすため、粒子状やフレーク状と比べて導電補助の効率が良く、電子伝導パスの増大と電池比容量の低下抑制とを両立しやすくなる。これらにより、本適用例の複合体を用いることによって、電池比容量の低下を抑えながら、内部抵抗を低減した電池を提供することができる。
上記適用例に記載の複合体おいて、電子伝導体は活物質部の表面に沿って形成されていることが好ましい。
これによれば、電子伝導体が活物質部に沿って、接するように設けられることから、電子伝導体による導電補助の効率が、さらに向上する。
上記適用例に記載の複合体において、電子伝導体は、高分子化合物の炭化物であることが好ましい。
これによれば、高分子化合物が有する高分子鎖によって、繊維状の電子伝導体を得ることができる。また、炭素を含むことから、電気伝導性を容易に向上させることができる。
本適用例に係る複合体の製造方法は、活物質粒子を含む成形物を形成する工程と、成形物に焼成を施して活物質部を形成する工程と、高分子化合物が含まれる液体を調製する工程と、活物質部の孔内を含む表面に、液体を接触させ、乾燥させて高分子化合物が含まれる被膜を形成する工程と、被膜に還元焼成を施して繊維状の電子伝導体を形成する工程と、活物質部の孔内に電解質を充填して複合体を形成する工程と、を備える。
本適用例によれば、電子伝導体の形成材料を含む液体が、活物質粒子の活物質部に接触される。電子伝導体の形成材料は液体であるため、活物質部が有する孔の内部にまで到達しやすくなる。これにより、活物質部の孔内を含む表面に電子伝導体が形成され、電気的な接続が増大して電気伝導性が向上する。すなわち、電池比容量の低下を抑えながら内部抵抗を低減する、複合体の製造方法を提供することができる。
上記適用例に記載の複合体の製造方法は、活物質粒子、電解質粒子、高分子化合物を含むスラリーを作製する工程と、スラリーを乾燥および還元焼成する工程と、を備えることが好ましい。
本適用例によれば、高分子化合物から電子伝導体が形成される。そのため、電子伝導体によって、活物質粒子同士の電気的な接続が増大された複合体を製造することができる。また、スラリーから直接的に複合体が形成可能であり、活物質粒子からなる活物質部の形成工程や、高分子化合物が含まれる液体を活物質部に接触させる工程などを省くことができる。これにより、複合体の製造工程を簡略化することができる。
上記適用例に記載の複合体の製造方法において、高分子化合物は、ポリアクリロニトリルまたはヒドロキシエチルセルロースを含むことが好ましい。
これによれば、ポリアクリルニトリルまたはヒドロキシエチエルセルロースから電子伝導体が形成されるため、導電補助の効率がより向上した複合体を製造することができる。
本適用例に係る電池は、活物質部と、活物質部の一部を覆うように形成された繊維状の電子伝導体と、第1電解質とを含む第1電極と、第2電解質を含む電解質層と、第1電極に対して、電解質層を介して設けられた第2電極と、を備える。
本適用例によれば、電池において、電池比容量の低下を抑えながら内部抵抗が低減される。そのため、電池を小型化や高出力化することができる。
上記適用例に記載の電池において、電解質層に対して、第1電極を介して設けられた集電体を備え、集電体と電子伝導体とは、電気的に接続されていることが好ましい。
これによれば、電池における放電容量と出力密度とを、共に向上しやすくすることができる。詳しくは、活物質粒子同士が電子伝導体にて電気的に接続され、さらにそれらと集電体とも電気的に接続される。そのため、複数の活物質粒子の電位が、集電体と同一電位となって、充電時の過電圧や、放電時のオーミックドロップなどが抑えられ、電池の容量のロスを低減することができる。
上記適用例に記載の電池において、第1電解質と、第2電解質とは同一材料からなることが好ましい。
これによれば、第1電極に含まれる第1電解質と、電解質層に含まれる第2電解質との形成を、同一の工程で行うことが可能となる。そのため、電池の製造工程を簡略化することができる。
上記適用例に記載の電池において、第1電解質と、第2電解質とは異なる材料からなり、第1電解質は、第2電解質よりも高いイオン伝導性を有することが好ましい。
これによれば、活物質粒子と第1電解質との間で、イオンおよび電荷の受け渡しが良好に行われる。そのため、内部抵抗のさらなる低減や電池の高出力化が可能となる。
本適用例に係る電池の製造方法は、活物質粒子を含む成形物を形成する工程と、成形物に焼成を施して活物質部を形成する工程と、高分子化合物が含まれる被膜を、活物質部の孔内を含む表面に形成する工程と、被膜に還元焼成を施して電子伝導体を形成する工程と、活物質部の孔内を含む表面に第1電解質を設けて、複合体を形成する工程と、複合体と接するように集電体を形成する工程と、を備える。
本適用例によれば、活物質部の孔内を含む表面に電子伝導体が形成され、電気的な接続が増大して電気伝導性が向上する。また、複合体と接するように集電体を形成することから、電子伝導体と集電体とが電気的に接続される。そのため、電池比容量の低下を抑えながら内部抵抗が低減され、放電容量と出力密度が共に向上する、電池の製造方法を提供することができる。
本適用例に係る電池の製造方法においては、活物質粒子、電解質粒子、および高分子化合物を含むスラリーを作製する工程と、スラリーに乾燥および還元焼成を施して複合体を形成する工程と、複合体と接するように集電体を形成する工程と、を備える。
本適用例によれば、高分子化合物から形成される電子伝導体によって、活物質粒子同士の電気的な接続が増大された電池を製造することができる。また、活物質粒子からなる活物質部の形成工程や、高分子化合物が含まれる液体を活物質部に接触させる工程などを省き、電池の製造工程を簡略化することができる。さらに、電子伝導体と集電体との電気的な接続を確保することができる。
本適用例に係る電子機器においては、上記適用例に記載の電池を備える。
本適用例によれば、小型で高出力な電池を電力供給源として備えた電子機器を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
(実施形態1)
<電池>
本実施形態に係る電池について、図1を参照して説明する。本実施形態では、電池としてリチウム電池を例に挙げて説明する。図1は、実施形態1に係る電池としてのリチウム電池の構成を示す概略斜視図である。
<電池>
本実施形態に係る電池について、図1を参照して説明する。本実施形態では、電池としてリチウム電池を例に挙げて説明する。図1は、実施形態1に係る電池としてのリチウム電池の構成を示す概略斜視図である。
図1に示すように、本実施形態のリチウム電池100は、活物質部2(活物質粒子2b)および第1電解質3を含む第1電極としての正極9と、第2電解質4を含む電解質層20と、正極9に対して、電解質層20を介して設けられた第2電極としての負極30と、を備えている。電解質層20と正極9とを合わせた構造が、複合体10である。なお、本明細書において「層」とは、電解質などの物質が、ある一定の厚みをもって形成されたものを意味する。また、第1電解質3と電解質層20とを合わせて電解質部ともいう。ここで、電解質層20において、正極9と接する面を第1の面20a、負極30と接する面を第2の面20bとする。
リチウム電池100は、電解質層20に対して、正極9を介して設けられた第1集電体41を備えている。言い換えれば、第1集電体41は、複合体10(正極9)の一面10aと接して設けられている。また、電解質層20に対して、負極30を介して第2集電体(図示せず)を適宜設けてもよい。
第1集電体41および第2集電体は、複合体10および負極30と電気化学反応を生じず、かつ電子伝導性を有している形成材料であれば、いずれも好適に用いることができる。第1集電体41および第2集電体の形成材料としては、例えば、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、およびパラジウム(Pd)からなる群から選ばれる1種の金属(金属単体)や、上記の群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む合金、ITO(Tin-doped Indium Oxide)、ATO(Antimony-doped Tin Oxide)、およびFTO(Fluorine-doped Tin Oxide)などの導電性金属酸化物、TiN(窒化チタン)、ZrN(窒化ジルコニウム)、TaN(窒化タンタル)などの金属窒化物などが挙げられる。
第1集電体41および第2集電体の形態は、電子伝導性を有する上記形成材料の薄膜の他、金属箔、板状、導電体微粉末を粘結剤とともに混練したペーストなど、目的に応じて適当なものが選択可能である。第1集電体41および第2集電体の形成は、複合体10や負極30などを形成した後であっても、あるいはそれらを形成する前であってもよい。
負極30が含む負極活物質(形成材料)としては、例えば、五酸化ニオブ(Nb2O5)、五酸化バナジウム(V2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)、酸化ニッケル(NiO)、錫(Sn)が添加された酸化インジウム(ITO)、Alが添加された酸化亜鉛(AZO)、ガリウム(Ga)が添加された酸化亜鉛(GZO)、アンチモン(Sb)が添加された酸化錫(ATO)、フッ素(F)が添加された酸化錫(FTO)、TiO2のアナターゼ相、Li4Ti5O12、Li2Ti3O7などのリチウム複合酸化物、Li(リチウム)、Si(シリコン)、Sn、シリコン−マンガン合金(Si−Mn)、シリコン−コバルト合金(Si−Co)、シリコン−ニッケル合金(Si−Ni)、In、Auなどの金属および合金、炭素材料、炭素材料の層間にリチウムイオンが挿入された物質などが挙げられる。
負極30の厚さは、およそ50nmから100μm程度が好ましいが、所望の電池容量や材料特性に応じて任意に設計することが可能である。
リチウム電池100は、例えば、円盤状であって、外形の大きさは直径約10mm、厚さは約200μmである。小型、薄型であることに加え、充放電可能であって大きな出力エネルギーが得られることから、携帯情報端末などの電力供給源(電源)として好適に用いることができる。なお、リチウム電池100の形状は円盤状であることに限定されず、例えば多角形の盤状であってもよい。このような薄型のリチウム電池100は、単体で用いてもよいし、複数のリチウム電池100を積層させて用いてもよい。積層させる場合には、リチウム電池100において、第1集電体41、第2集電体は必ずしも必須な構成ではなく、一方の集電体を備える構成であってもよい。
<複合体>
次に、リチウム電池100に含まれる複合体10の構成について、図2を参照して説明する。図2は、リチウム電池の構成を示す概略断面図である。
次に、リチウム電池100に含まれる複合体10の構成について、図2を参照して説明する。図2は、リチウム電池の構成を示す概略断面図である。
図2に示した複合体10は、活物質部2と、活物質部2の少なくとも一部を覆うように形成された繊維状の電子伝導体5と、第1電解質3と、電解質層20とを備えている。電子伝導体5は、活物質部2の表面に沿って形成されている。
活物質部2は、例えば、活物質粒子2bの焼結体(集合体)であり、複数の孔を有している。複数の孔は、活物質部2の内部で互いに網目状に連通している。そのため、活物質粒子2b同士の接触が確保されている。活物質粒子2bは、本実施形態のリチウム電池100のように、第1集電体41を正極側に使用する場合に、活物質粒子2bの形成材料(正極活物質)として、通常知られているリチウム複合金属化合物を用いることができる。なお、図2は活物質粒子2bを模式的に示したものであり、実際の粒径や大きさは必ずしも同じではない。
正極活物質として用いるリチウム複合金属化合物とは、リチウムを含み、かつ全体として2種以上の金属元素を含む酸化物などの化合物であって、オキソ酸イオンの存在が認められないものを指している。
このようなリチウム複合金属化合物としては、例えば、Liを含み、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe、Co、Ni、Cuから選ばれる少なくとも1種の元素を含む複合金属化合物が挙げられる。上記複合金属化合物としては、特に限定されないが、具体的には、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、Li2Mn2O3、LiCr0.5Mn0.5O2、LiFePO4、Li2FeP2O7、LiMnPO4、LiFeBO3、Li3V2(PO4)3、Li2CuO2、LiFeF3、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4、NMC(Lia(NixMnyCo1-x-y)O2)、NCA(Li(NixCoyAl1-x-y)O2)などが挙げられる。また、本実施形態においては、これらのリチウム複合金属化合物の結晶内の一部原子が、他の遷移金属、典型金属、アルカリ金属、アルカリ希土類、ランタノイド、カルコゲナイド、ハロゲンなどで置換された固溶体もリチウム複合金属化合物に含むものとし、これらの固溶体も正極活物質として用いることができる。
第1集電体41を負極側に使用する場合には、活物質粒子2bの形成材料(負極活物質)として、通常知られている、Li4Ti5O12、Li2Ti3O7などのリチウム複合金属化合物を用いることができる。
活物質部2の形成材料に、活物質粒子2bとしてリチウム複合金属化合物を用いることにより、活物質粒子2bの粒子間で電子の受け渡しが行われ、活物質粒子2bと第1電解質3との間でリチウムイオンの受け渡しが行われる。これによって、活物質部2(複合体10)としての機能を良好に発揮することができる。
活物質部2は、嵩密度が50%以上、90%以下であることが好ましく、50%以上、80%以下であることがより好ましい。活物質部2がこのような嵩密度を有することによって、活物質部2の孔内の表面積を広げ、活物質部2と、電子伝導体5および第1電解質3との接触面積を大きくしやすくなる。これにより、複合体10を用いたリチウム電池100において、従来よりも高容量化が容易となる。
上記の嵩密度をβ(%)、活物質部2の孔も含めた見かけの体積をv、活物質部2の質量をw、活物質粒子2bの粒子の密度をρとすると、下記数式(x)が成り立つ。これにより嵩密度を求めることができる。
β={w/(v・ρ)}×100 ・・・(x)
β={w/(v・ρ)}×100 ・・・(x)
活物質部2の嵩密度を上記の範囲とするためには、活物質粒子2bの平均粒子径(メジアン径)を、0.3μm以上、10μm以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.5μm以上、5μm以下である。活物質粒子2bの平均粒子径は、例えば、活物質粒子2bをn−オクチルアルコールに0.1質量%以上、10質量%以下の範囲の濃度となるように分散させ、光散乱式粒度分布測定装置ナノトラックUPA−EX250(日機装社)を用いて、メジアン径を求めることにより測定可能である。
活物質部2の嵩密度は、活物質部2を形成する工程において、増孔材を用いることによっても制御が可能である。
活物質部2の抵抗率は、700Ω・cm以下であることが好ましい。活物質部2がこのような抵抗率を有することにより、複合体10を用いたリチウム電池100において、充分な出力を得ることができる。抵抗率は、活物質部2の表面に電極として用いる銅箔を付着し、直流分極測定を行うことにより求めることが可能である。
電子伝導体5は、活物質部2の孔内を含む表面に沿って、隣り合う活物質粒子2bと接して設けられている。電子伝導体5は電気伝導性を備え、活物質部2の表面、すなわち複数の活物質粒子2bの表面と接することで、複数の活物質粒子2bを電気的に接続している。電子伝導体5は繊維状であるため、活物質部2の孔内にまで入り込み、孔内においても、複数の活物質粒子2bと接して、それらを電気的に接続している。これにより、電子伝導体5は、活物質粒子2b同士の接触をさらに増やして、電子伝導パスをより増大させることができる。
電子伝導体5の形態としては、電子伝導体5が繊維状である他は特に限定されないが、例えば、繊維の直径または繊維長の少なくとも片方が、活物質粒子2bの平均粒子径の2倍以上であることが好ましい。具体的には、直径が2nm以上、20μm以下であり、繊維長が0.6μm以上、400μm以下である。また、このような繊維状の電子伝導体5が、活物質部2の表面に沿って、網目状に重なった形態、電子伝導体5同士が互いに絡まりついた形態、およびそれらが混在する形態なども、電子伝導体5の形態に含まれる。電子伝導体5が上記の形態であることにより、複数の活物質粒子2b同士の電気的な接続が充分に確保される。さらに、電子伝導体5が、活物質粒子2bに沿って設けられていない場合と比べて、電子伝導体5の導電補助の効率がより向上する。
電子伝導体5が備える電気伝導性は、特に限定されないが、例えば、電気伝導率が2×106S(ジーメンス)/m以上であることが好ましく、6.1×106S/m以上であることがより好ましい。電子伝導体5が上記の電気伝導率を備えることにより、活物質粒子2b同士の電子伝導パスをさらに増大させることができる。
電子伝導体5は、高分子化合物の炭化物である。電子伝導体5の形成材料となる高分子化合物としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ニトリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、上記高分子化合物は、ポリアクリロニトリル、またはヒドロキシエチルセルロースを含むことがより好ましい。このような形成材料を用いることにより、電子伝導体5の電気伝導性をさらに向上させることができる。上述した形成材料は、700℃以上で還元焼成を施した後、電子伝導体5として用いられる。
また、電子伝導体5として、伝導イオンなどのキャリアを導入した、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレンなどの導電性高分子化合物、PAN(ポリアクリロニトリル)系またはピッチ系などの炭素繊維、Cu、ステンレス、黄銅などの繊維状に加工された金属、ガラス繊維または炭素繊維などにNi、Al(アルミニウム)などの金属被覆を施したものを用いてもよい。
また、電子伝導体5に加えて、その他の導電体を導電助剤として併用してもよい。その他の導電体の形成材料としては、例えば、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Nd(ネオジム)、Mo(モリブデン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd、Ag、Hf(ハフニウム)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、ランタノイド、Pt、Auなどの金属または半金属、In2O3、SnO2、Fe2O3、CoO、ZnO、RuO2などの酸化物が挙げられる。
第1電解質3は、活物質部2の複数の孔を埋めるように設けられている。そのため、活物質部2は、孔内も含めた表面において、一部が電子伝導体5に接し、その他は第1電解質3に接している。換言すれば、活物質部2、電子伝導体5、第1電解質3は、互いに接して複合化され、複合体10が形成されている。そのため、活物質粒子2bと第1電解質3とがそれぞれ層として積層された場合や、孔内まで第1電解質3が設けられていない場合と比べて、活物質部2および電子伝導体5と、第1電解質3との接触面積が大きくなる。これにより、界面抵抗が低減され、活物質部2と第1電解質3との界面において良好な電荷移動が可能となる。
第1電解質3の形成材料としては、固体電解質を用いることができる。固体電解質としては、例えば、酸化物、硫化物、ハロゲン化物、窒化物、水素化物、ホウ化物などを含む結晶質または非晶質が挙げられる。
上記の酸化物結晶質の固体電解質としては、例えば、Li0.35La0.55TiO3、Li0.2La0.27NbO3、これらの結晶の元素の一部を、N(窒素)、F、Al、Sr(ストロンチウム)、Sc(スカンジウム)、Ta、ランタノイド元素などで置換したペロブスカイト型結晶またはペロブスカイト型類似結晶、Li7La3Zr2O12、Li5La3Nb2O12、Li5BaLa2TaO12、これらの結晶の元素の一部を、N、F、Al、Sr、Sc、Ta、ランタノイド元素などで置換したガーネット型結晶、ガーネット型類似結晶、Li1.3Ti1.7Al0.3(PO4)3、Li1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、Li1.4Al0.4Ti1.4Ge0.2(PO4)3、これらの結晶の元素の一部を、N、F、Al、Sr、Sc、Ta、ランタノイド元素などで置換したNASICON型結晶、Li14ZnGe4O16などのLISICON型結晶、Li3.4V0.6Si0.4O4、Li3.6V0.4Ge0.6O4、Li2+xC1-xBxO3などが挙げられる。
上記の硫化物結晶質の固体電解質としては、例えば、Li10GeP2S12、Li9.6P3S12、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3、Li3PS4などが挙げられる。
非晶質の固体電解質としては、例えば、Li2−TiO2、La2O3−Li2O−TiO2、LiNbO3、LiSO4、Li4SiO4、Li3PO4−Li4SiO4、Li4GeO4−Li3VO4、Li4SiO4−Li3VO4、Li4GeO4−Zn2GeO2、Li4SiO4−LiMoO4、Li3PO4−Li4SiO4、Li4SiO4−Li4ZrO4、SiO2−P2O5−Li2O、SiO2−P2O5−LiCl、Li2O−LiCl−B2O3、LiI、LiI−CaI2、LiI−CaO、LiAlCl4、LiAlF4、LiF−Al2O3、LiBr−Al2O3、Li2.88PO3.73N0.14、Li3NI2、Li3N−LiI−LiOH、Li3N−LiCl、Li6NBr3、Li2S−SiS2−LiI、Li2S−SiS2−P2S5などが挙げられる。
また、上述した固体電解質の中でも、第1電解質3の形成材料として、下記式(1)、(2)のリチウム複合金属化合物を用いることがより好ましい。このような固体電解質を用いることにより、第1電解質3のリチウムイオン伝導性をさらに高めることができる。
Li7-3x+yGax)(La3-yCay)Zr2O12 ・・・(1)
(但し、0.1≦x≦1、0.01≦y≦0.5を満たす。)
Li7-zLa3(Zr2-zAα)O12 ・・・(2)
(但し、0.1≦z≦1を満たし、AはTa、Nb、およびSbのうち少なくとも1種を表し、0≦α<2を満たす。)
(但し、0.1≦x≦1、0.01≦y≦0.5を満たす。)
Li7-zLa3(Zr2-zAα)O12 ・・・(2)
(但し、0.1≦z≦1を満たし、AはTa、Nb、およびSbのうち少なくとも1種を表し、0≦α<2を満たす。)
第1電解質3と、電解質層20に含まれる第2電解質4とは、同一材料からなることが好ましい。第1電解質3と第2電解質4とに、同一の形成材料を用いることにより、第1電解質3と電解質層20とを同一の工程で製造することができる。第2電解質4の形成材料としては、上述した固体電解質を用いることができる。
また、第1電解質3と、第2電解質4とは異なる材料(形成材料)からなり、第1電解質3は、第2電解質4よりも高いイオン伝導性を有することとしてもよい。これにより、活物質粒子2bと第1電解質3との間で、イオンおよび電荷の受け渡しを良好に行わせることができる。この場合も、第1電解質3および第2電解質4の形成材料は、上述した固体電解質の群から選択して用いることができる。
複合体10における、第1電解質3および第2電解質4に用いられる固体電解質のイオン伝導性の指標として、総イオン伝導率を採用することができる。上記固体電解質の総イオン伝導率は、5.0×10-5S/cm以上であることが好ましい。固体電解質がこのようなイオン伝導率を有することにより、活物質部2の表面から離れた位置の第1電解質3に含まれるイオンが、活物質部2の表面に到達することが容易になる。これにより、上記イオンも活物質部2における電池反応に寄与することが可能となり、リチウム電池100をより高容量とすることができる。
ここで、第1電解質3および第2電解質4のイオン伝導率とは、それらの固体電解質自身の伝導率としての粒子バルク内伝導率と、固体電解質が結晶質である場合に、結晶の粒子間の伝導率としての粒界伝導率と、それらの総和である総イオン伝導率をいう。また、固体電解質における粒界抵抗の指標は粒界伝導率であり、粒界伝導率が増加すれば、粒界抵抗は低減される。
固体電解質の総イオン伝導率は、固体電解質の粉末から作製した錠剤を用いて測定することができる。具体的には、固体電解質の粉末を624MPaで錠剤型に成形し、大気雰囲気下700℃にて8時間焼結する。次いで、スパッタリング法を用いて、直径0.5cm、厚さ100nmの白金電極を形成して測定用の錠剤とする。この錠剤を用いた交流インピーダンス法によって総イオン伝導率を求めることが可能である。測定装置としては、例えば、インピーダンスアナライザーSI1260(ソーラトロン社)を用いることができる。
リチウム電池100において、負極30から法線方向に遠ざかる方向(図2の上方)を上方向としたとき、正極9の上側の表面は、電解質層20の第1の面20aと接している。換言すれば、正極9と負極30との間に電解質層20が介在する。そのため、正極9と負極30とが電気的に接続されにくくなり、短絡の発生を抑えることができる。
電解質層20の厚さは、例えば、およそ50nmから100μm程度が好ましいが、所望の電池容量や材料特性に応じて任意に設計することが可能である。また、電解質層20の負極30側の面(第2の面20b)に、必要に応じて各種成形法、加工法を組み合わせて、トレンチ、グレーチング、ピラーなどの凹凸構造を設けることもできる。さらに、電解質層20は、1層だけではなく、結晶質で形成された層の表面に、例えば短絡を防ぐ目的でガラス電解質層を形成するなど、多層化された構造としてもよい。
正極9(複合体10)の下側の表面(一面10a)は、第1集電体41と接している。一面10aには、活物質部2および電子伝導体5が露出している。すなわち、第1集電体41と正極9に含まれる電子伝導体5とは、電気的に接続されている。したがって、電子伝導体5は、複数の活物質粒子2bを電気的に接続すると共に、第1集電体41とも電気的に接続されている。そのため、複数の活物質粒子2bの電位が、第1集電体41と同一電位となって、充電時の過電圧や、放電時のオーミックドロップなどが抑えられ、リチウム電池100の容量のロスを低減することができる。これにより、リチウム電池100における放電容量と出力密度とを、共に向上しやすくすることができる。
複合体10では、活物質粒子2b同士をつなぎ合わせるバインダー(結着剤)が含まれる量は、可能な限り低減することが好ましい。バインダーは複合体10の中に残存すると、電気特性に悪影響をおよぼす場合があるため、後工程の加熱を入念に実施して除去する必要がある。具体的には、本実施形態においては、複合体10を400℃で30分加熱した場合の質量減少率を、5質量%以下としている。上記質量減少率は3質量%以下がより好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、質量減少が観測されない、または測定誤差範囲内であることがより好ましい。複合体10がこのような質量減少率を有すると、所定の加熱条件において、蒸発する溶媒や吸着水、燃焼または酸化されて気化する有機物などの量が低減される。これによって、リチウム電池100の電気特性(充放電特性)をより向上させることができる。
複合体10の質量減少率は、示差熱−熱重量同時測定装置(TG−DTA)を用いて、所定の加熱条件における加熱前後の複合体10の質量値から求めることができる。
複合体10では、活物質部2が有する複数の孔が内部で網目状に連通しているため、活物質部2の固体部分も網目構造を形成している。例えば、正極活物質であるLiCoO2は、結晶の電子伝導性に異方性があることが知られている。そのため、上記の孔が機械加工で形成されたような、特定の方向に孔が延在しているような構成では、結晶における電子伝導性の方向によっては、電子伝導性が低下することがある。これに対して、本実施形態では、活物質部2が網目構造であるため、結晶の電子伝導性またはイオン伝導性の異方性によらず、電気化学的に活性な連続表面を形成することができる。そのため、用いる形成材料の種類によらず、良好な電子伝導を担保することができる。
第1集電体41は、上述したように、複合体10の下側の表面(一面10a)に露出する活物質部2と接触している。第1電解質3は、活物質部2の孔内まで設けられて、第1集電体41および電子伝導体5と接する箇所以外の、活物質部2の表面と接している。このような構成の複合体10では、第1集電体41と活物質部2との接触面積(第1の接触面積)より、活物質部2と第1電解質3との接触面積(第2の接触面積)が大きくなる。これによって、活物質部2と第1電解質3との界面が、電荷移動のボトルネックとなりにくく、そのため、複合体10として良好な電荷移動を確保しやすく、リチウム電池100において、高容量化や高出力化が可能になる。
<電池の製造方法>
本実施形態に係るリチウム電池100の製造方法について、図3、図4A、図4B、図4C、図4D、図4E、図4F、図4Gを参照して説明する。図3は、リチウム電池の製造方法を示す工程フロー図である。図4Aから図4Fは、複合体の製造方法を示す模式図である。図4Gは、リチウム電池の製造方法を示す模式図である。リチウム電池100の製造方法は、リチウム電池100が含む複合体10の製造方法と、複合体10からリチウム電池100を製造する後工程としての製造方法と、を備えている。図3に示したリチウム電池100の製造工程において、複合体10の製造方法は、工程S1から工程S6に該当し、上記後工程としての製造方法は、工程S7および工程S8に該当する。なお、図3に示した工程フローは一例であって、これに限定されるものではない。
本実施形態に係るリチウム電池100の製造方法について、図3、図4A、図4B、図4C、図4D、図4E、図4F、図4Gを参照して説明する。図3は、リチウム電池の製造方法を示す工程フロー図である。図4Aから図4Fは、複合体の製造方法を示す模式図である。図4Gは、リチウム電池の製造方法を示す模式図である。リチウム電池100の製造方法は、リチウム電池100が含む複合体10の製造方法と、複合体10からリチウム電池100を製造する後工程としての製造方法と、を備えている。図3に示したリチウム電池100の製造工程において、複合体10の製造方法は、工程S1から工程S6に該当し、上記後工程としての製造方法は、工程S7および工程S8に該当する。なお、図3に示した工程フローは一例であって、これに限定されるものではない。
本実施形態の複合体10の製造方法は、活物質粒子2bを含む成形物を形成する工程S1と、成形物に焼成を施して焼結体としての活物質部2を形成する工程S2と、高分子化合物が含まれる液体(高分子化合物を含む液体)5Xを調製する工程S3と、活物質部2の孔内を含む表面に、液体5Xを接触させ、乾燥させて高分子化合物が含まれる被膜5Zを形成する工程S4と、被膜5Zに還元焼成を施して繊維状の電子伝導体5を形成する工程と、活物質部2の孔内に第1電解質3を充填して複合体10を形成する工程と、を備えている。すなわち、本実施形態の電池としてのリチウム電池100は、複合体10の製造方法を用いて製造された複合体10を備えている。
本実施形態のリチウム電池100の製造方法は、複合体10の製造工程に加えて、複合体10に負極30を形成する工程S7と、第1集電体41を形成する工程S8と、を備えている。
[成形物の形成工程]
工程S1では、活物質粒子2bを含む成形物を形成する。活物質粒子2bの形成材料としては、上述したリチウム複合金属化合物を用いる。具体的には、活物質粒子2bと、溶媒として有機溶剤などとを混合、撹拌してスラリー2Xを作製する。溶媒としては、後述する液体5Xが含む溶媒を用いることができる。スラリー2Xには、分散剤、消泡剤、造孔材、結着剤(バインダー)などを助剤として添加してもよい。次に、図4Aに示すように、スラリー2Xを、バーコーターなどの塗工機81を用いて基材82上に塗工し、シート状の成形物2Y(図4B参照)を形成する。このとき、スラリー2Xの組成は、成形物2Yの所望の厚さや、塗工機81の性能などに対応させて適宜変更が可能である。
工程S1では、活物質粒子2bを含む成形物を形成する。活物質粒子2bの形成材料としては、上述したリチウム複合金属化合物を用いる。具体的には、活物質粒子2bと、溶媒として有機溶剤などとを混合、撹拌してスラリー2Xを作製する。溶媒としては、後述する液体5Xが含む溶媒を用いることができる。スラリー2Xには、分散剤、消泡剤、造孔材、結着剤(バインダー)などを助剤として添加してもよい。次に、図4Aに示すように、スラリー2Xを、バーコーターなどの塗工機81を用いて基材82上に塗工し、シート状の成形物2Y(図4B参照)を形成する。このとき、スラリー2Xの組成は、成形物2Yの所望の厚さや、塗工機81の性能などに対応させて適宜変更が可能である。
ここで、本実施形態では、活物質粒子2bを含む成形物の形成に、スラリー2Xを塗工して成形物2Yを形成する、所謂グリーンシート成型法を用いたが、これに限定されない。活物質粒子2bを含む成形物は、プレス加工法、射出成型法、適当な基材上での有機金属溶液の塗布、焼成、およびゾル・ゲル法などの液相堆積法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、PLD(Pulsed Laser Deposition)法、スパッタリング法、エアロゾルデポジション法などの気相堆積法、を用いてシート状(薄膜状)に成形してもよい。さらには、融液や溶液から結晶成長させた単結晶であってもよい。
[活物質部の形成工程]
工程S2では、図4Bに示すように、成形物2Yに加熱処理を施して、活物質部2を形成する。加熱処理の条件は特に限定されないが、例えば、成形物2Yを数100℃で1時間から8時間加熱して、有機物を除去する。これにより、有機溶剤などの有機物中に、活物質粒子2bが分散した状態から、有機物が揮散、分解されて排除されるため、活物質粒子2bが疎に集まった状態となる。その後、電気マッフル炉などを用いて、数100℃から1000℃で2時間から36時間の加熱処理(焼成)を施す。この焼成によって、有機物の残存がさらに低減されると共に、活物質粒子2b同士の焼結が促進されて、構造中に鬆を残したままで電気的な接続を良好にすることができる。本工程により、シート状成形物が複数の孔を有する焼結体となり、活物質粒子2bが網目状に連結した活物質部2が得られる。その後、シート状の活物質部2を、円盤状などの所望の形状に切り出してもよい。
工程S2では、図4Bに示すように、成形物2Yに加熱処理を施して、活物質部2を形成する。加熱処理の条件は特に限定されないが、例えば、成形物2Yを数100℃で1時間から8時間加熱して、有機物を除去する。これにより、有機溶剤などの有機物中に、活物質粒子2bが分散した状態から、有機物が揮散、分解されて排除されるため、活物質粒子2bが疎に集まった状態となる。その後、電気マッフル炉などを用いて、数100℃から1000℃で2時間から36時間の加熱処理(焼成)を施す。この焼成によって、有機物の残存がさらに低減されると共に、活物質粒子2b同士の焼結が促進されて、構造中に鬆を残したままで電気的な接続を良好にすることができる。本工程により、シート状成形物が複数の孔を有する焼結体となり、活物質粒子2bが網目状に連結した活物質部2が得られる。その後、シート状の活物質部2を、円盤状などの所望の形状に切り出してもよい。
[液体の調製工程]
工程S3では、電子伝導体5の形成材料としての高分子化合物が含まれる液体5Xを調製する。高分子化合物としては、上述したものを用いることができる。液体5Xが含む溶媒としては、高分子化合物を溶解可能な、水、有機溶剤の単溶媒、または混合溶媒を用いることができる。有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、アリルアルコール、エチレングルコールモノブチルエーテル(2−n−ブトキシエタノール)などのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、ギ酸、酢酸、2−エチル酪酸、プロピオン酸などの有機酸類、トルエン、o−キシレン、p−キシレンなどの芳香族類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類などが挙げられる。
工程S3では、電子伝導体5の形成材料としての高分子化合物が含まれる液体5Xを調製する。高分子化合物としては、上述したものを用いることができる。液体5Xが含む溶媒としては、高分子化合物を溶解可能な、水、有機溶剤の単溶媒、または混合溶媒を用いることができる。有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、アリルアルコール、エチレングルコールモノブチルエーテル(2−n−ブトキシエタノール)などのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、ギ酸、酢酸、2−エチル酪酸、プロピオン酸などの有機酸類、トルエン、o−キシレン、p−キシレンなどの芳香族類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類などが挙げられる。
具体的には、図4Cに示すように、パイレックス(Pyrex:CORNING社商標)製ビーカー83に、高分子化合物、溶媒、磁石式撹拌子84を入れ、マグネチックスターラー85にて撹拌しながら混合する。これにより、高分子化合物を溶媒に完全に溶解させて、液体5Xを調製する。必要に応じて、加温下で上記の操作を行って、高分子化合物の溶解を促進してもよい。ここで、液体5Xにおける高分子化合物の濃度は、後述する被膜5Zの厚さや電子伝導体5の所望の電気伝導性などに応じて、適宜調整する。液体5Xには、上記の成分の他に、有機溶剤THFに溶解させたLiBH4などの還元剤や、界面活性剤などの助剤を添加してもよい。
[被膜の形成工程]
工程S4では、活物質部2の孔内を含む表面に、液体5Xを接触させ、乾燥させて、高分子化合物が含まれる被膜を形成する。まず、図4Dに示すように、シャーレ86に入れた液体5X中に活物質部2を浸漬し、活物質部2の表面に液体5Xを接触させて塗布する。活物質部2への液体5Xの塗布(接触)方法は、浸漬による方法の他、例えば、ディスペンサーなどによる滴下、吹き付け、毛細管現象による浸透、スピンコートなどの手段を用いることが可能であり、これらを組み合わせて実施してもよい。液体5Xは流動性を有するため、活物質部2の孔内へも到達しやすくなっている。
工程S4では、活物質部2の孔内を含む表面に、液体5Xを接触させ、乾燥させて、高分子化合物が含まれる被膜を形成する。まず、図4Dに示すように、シャーレ86に入れた液体5X中に活物質部2を浸漬し、活物質部2の表面に液体5Xを接触させて塗布する。活物質部2への液体5Xの塗布(接触)方法は、浸漬による方法の他、例えば、ディスペンサーなどによる滴下、吹き付け、毛細管現象による浸透、スピンコートなどの手段を用いることが可能であり、これらを組み合わせて実施してもよい。液体5Xは流動性を有するため、活物質部2の孔内へも到達しやすくなっている。
次に、図4Eに示すように、活物質部2に塗布された液体5Xを乾燥させる。乾燥方法としては、恒温槽内にて不活性ガスを流しながら、加熱処理を施す。これにより、液体5X中の溶媒が揮散して、活物質部2の表面に高分子化合物の被膜5Zが形成される。
[電子伝導体の形成工程]
工程S5では、図4Fに示すように、被膜5Zに還元焼成を施して、活物質部2の表面に繊維状の電子伝導体5を形成する。具体的には、被膜5Zを形成した活物質部2に、不活性ガスを流した電気マッフル炉を用い、400℃以上、950℃以下の温度にて4分以上、6時間以下の加熱を施す。これによって、被膜5Zが還元焼成され、高分子化合物が有する炭素鎖に由来する、繊維状の電子伝導体5が得られる。
工程S5では、図4Fに示すように、被膜5Zに還元焼成を施して、活物質部2の表面に繊維状の電子伝導体5を形成する。具体的には、被膜5Zを形成した活物質部2に、不活性ガスを流した電気マッフル炉を用い、400℃以上、950℃以下の温度にて4分以上、6時間以下の加熱を施す。これによって、被膜5Zが還元焼成され、高分子化合物が有する炭素鎖に由来する、繊維状の電子伝導体5が得られる。
[複合体の形成工程]
工程S6では、電子伝導体5を形成した活物質部2において、孔内に第1電解質3を充填して、複合体10を形成する。そのため、まず、第1電解質3(固体電解質)の前駆体を含む溶液を調製する。固体電解質としては、上述したものが採用可能である。固体電解質の前駆体としては、以下の(A),(B),(C),(D)の少なくとも1種を用いることができる。この中で(B)はゾル・ゲル法を用いる場合の前駆体である。本実施形態においては(D)の前駆体を用いる。
(A)固体電解質が有する金属原子を、固体電解質の組成式に従った割合で含み、酸化により固体電解質となる金属塩を有する組成物。
(B)固体電解質が有する金属原子を、固体電解質の組成式に従った割合で含む金属アルコキシド化合物を有する組成物。
(C)固体電解質の微粒子、または固体電解質が有する金属原子を、固体電解質の組成式に従った割合で含む微粒子ゾルを溶剤に分散させた分散液。
(D)固体電解質が有する金属原子を、固体電解質の組成式に従った割合で含み、酸化により固体電解質となる金属塩および金属アルコキシド化合物を有する組成物。
工程S6では、電子伝導体5を形成した活物質部2において、孔内に第1電解質3を充填して、複合体10を形成する。そのため、まず、第1電解質3(固体電解質)の前駆体を含む溶液を調製する。固体電解質としては、上述したものが採用可能である。固体電解質の前駆体としては、以下の(A),(B),(C),(D)の少なくとも1種を用いることができる。この中で(B)はゾル・ゲル法を用いる場合の前駆体である。本実施形態においては(D)の前駆体を用いる。
(A)固体電解質が有する金属原子を、固体電解質の組成式に従った割合で含み、酸化により固体電解質となる金属塩を有する組成物。
(B)固体電解質が有する金属原子を、固体電解質の組成式に従った割合で含む金属アルコキシド化合物を有する組成物。
(C)固体電解質の微粒子、または固体電解質が有する金属原子を、固体電解質の組成式に従った割合で含む微粒子ゾルを溶剤に分散させた分散液。
(D)固体電解質が有する金属原子を、固体電解質の組成式に従った割合で含み、酸化により固体電解質となる金属塩および金属アルコキシド化合物を有する組成物。
本実施形態の第1電解質3(固体電解質)の前駆体の形成材料としては、Li、La(ランタン)、Zr、Ti、Co、Nb(ニオブ)、Ba(バリウム)、Ca(カルシウム)、Ta、Sb、Al、Br(臭素)、Ni、Mn、Fe、P(リン)、B(ボロン)、V、Cu、F、Siなどの上述した固体電解質の構成元素を含む既存の金属化合物を用いることができる。これらの金属化合物の種類は特に限定されないが、上記構成元素の金属塩または金属アルコキシドの少なくとも1種であることが好ましい。
このような金属化合物としては、リチウム化合物を例にすると、塩化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウムなどのリチウム金属塩、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムプロポキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムノルマルブトキシド、リチウムイソブトキシド、リチウムセカンダリーブトキシド、リチウムターシャリーブトキシド、ジピバロイルメタナトリチウムなどのリチウムアルコキシドなどが挙げられる。
第1電解質3の前駆体を含む溶液が含む溶媒としては、上記の、金属塩または金属アルコキシドを溶解可能な、水あるいは有機溶剤の単溶媒、または混合溶媒を用いる。有機溶剤としては、特に限定されないが、上述した液体5Xに用いる有機溶剤を採用することができる。
上述した金属化合物を、以上の溶媒に溶解して、第1電解質3の前駆体を含む溶液を調製する。このとき、所望の第1電解質3の組成式にしたがった割合で、各金属元素を含有させる。本実施形態では、各金属元素の金属塩または金属アルコキシドを含む金属化合物溶液を個別に作製し、それらを所望の第1電解質3の組成に従った割合で混合して調製する。各金属化合物溶液は、金属化合物および溶媒を、パイレックス製の試薬瓶に入れ、撹拌しながら金属化合物を溶媒に完全に溶解して、作製する。このとき、必要に応じて加温下で行ってもよい。
なお、高温による焼成(加熱処理)によって、上記組成中のリチウムが脱離することがある。そのため、焼成条件に合わせて、あらかじめ第1電解質3の前駆体を含む溶液のリチウムの含有量を、上記組成に対して0.05質量%から20質量%程度過剰に配合してもよい。
次に、電子伝導体5を形成した活物質部2へ、第1電解質3の前駆体を含む溶液を塗布する。塗布方法としては、例えば、浸漬、滴下、吹き付け、毛細管現象による浸透、スピンコートなどの手段を用いることが可能であり、これらを組み合わせて実施してもよい。本実施形態では、上述した活物質部2への液体5Xの塗布(図4D参照)と同様に、浸漬による方法を用いる。これにより、活物質部2の孔内に上記溶液が充填されるとともに、活物質部2全体が上記溶液に包含される。また、第1電解質3の前駆体を含む溶液に焼成を施して、第1電解質3の粒子を製造した後、該粒子を活物質部2の孔内に充填してもよい。あるいは、該粒子を加熱溶融させた融液を、活物質部2の孔内に浸透させてもよい。
ここで、次工程で形成する電解質層20について、電解質層20に含まれる第2電解質4を、第1電解質3と同一の形成材料とする場合には、上述した第1電解質3と、電解質層20とを、同時に形成してもよい。すなわち、複合体10の製造工程において、活物質部2に対する第1電解質3の充填と、電解質層20の形成とを一度に行ってもよい。具体的には、第1電解質3の前駆体を含む溶液に対する、活物質部2の浸漬条件を調節して、円盤状の活物質部2の片面に、第1電解質3の前駆体を含む溶液を、過剰に塗布する。この状態で加熱処理を施すことにより、第1電解質3に活物質部2が完全に埋没して、電解質層20を形成することができる。なお、上述した浸漬以外の塗布方法においても、同様にして電解質層20が形成可能である。
次に、塗布した第1電解質3の前駆体を含む溶液を加熱して、乾燥、焼成する。加熱により、上記溶液中の溶媒などの有機物の残存を低減して、第1電解質3の純度を高めてイオン伝導性を向上させることができる。加熱条件は、700℃以上、800℃以下であることが好ましい。これによれば、上記溶液中の溶媒などの有機物の残存をいっそう低減して、第1電解質3の純度を高め、イオン伝導性を向上させることができる。また加熱(焼成)温度を800℃以下とすることによって、第1電解質3内のリチウムなどのイオンが過剰に揮発することを抑え、イオン伝導性の減衰を抑えることができる。なお、必要に応じて、上記加熱を数回に分け、乾燥大気下、酸化雰囲気下、不活性ガス雰囲気下などで行ってもよい。加熱、焼成の方法としては、例えば、電気マッフル炉などを用いて行うことができる。
その後、電気マッフル炉を室温まで徐冷して、活物質部2、電子伝導体5および第1電解質3が複合化された成形物を得る。該成形物は、リチウム電池100における正極9となる。
次に、円盤状の正極9の片面に、第2電解質4を含む電解質層20を形成する。まず、第2電解質4の粉末を作製する。第2電解質4は、第1電解質3と同様にして、第2電解質4の前駆体を含む溶液を調製する。該溶液に焼成を施した後、メノウ鉢などを用いて粉砕し、第2電解質4の粉末を得る。なお、第2電解質4の金属元素を含む金属化合物(固体)を用い、固相にて第2電解質4を作製してもよい。具体的には、所望の第2電解質4の組成式にしたがった割合で、各金属元素が含まれる金属化合物を、メノウ鉢などを用いて粉砕し、混合粉とする。続いて、混合粉に加熱処理を施すことにより、第2電解質4の粉末が得られる。
ここで、第1電解質3と第2電解質4とに、異なる形成材料を用いる場合は、第1電解質3には、第2電解質4よりもイオン伝導性が高い形成材料を用いることが好ましい。これによれば、活物質粒子2bと第1電解質3との間で、イオンおよび電荷の受け渡しがより良好に行われる。そのため、内部抵抗のさらなる低減やリチウム電池100の高出力化が可能となる。
次に、第2電解質4の粉末を有機溶剤など分散させて、第2電解質4を含むスラリーを調製する。有機溶剤としては、上述した液体5Xに用いた有機溶剤が採用できる。ここで、上記スラリーに、バインダーなどの助剤を添加して調製してもよい。上記スラリーを、スクリーン印刷法などを用いて、正極9の片面に塗布する。その後、加熱処理を施して塗布したスラリーを電解質層20として成膜、形成する。該加熱条件としては、活物質部2へ塗布した第1電解質3の前駆体を含む溶液の、上述した加熱条件が採用できる。なお、第2電解質4の前駆体などが含まれる溶液を、電解質層20の形成面に塗布し、加熱処理を施して、第2電解質4の粉末を作製せずに、直接的に電解質層20を形成してもよい。これによって、正極9の片面に、第2電解質4を含む電解質層20が形成される。電解質層20において、正極9と接する面が第1の面20aであり、第1の面20aと対向する表面側の面が、第2の面20bである。以上の工程を経て、複合体10が製造される。
[負極の形成工程]
工程S7では、複合体10における電解質層20の第2の面20bに、負極30を形成する。負極30の形成方法としては、有機金属化合物の加水分解反応などを伴う、所謂ゾル・ゲル法や、有機金属熱分解法などの溶液プロセスの他、適切な金属化合物とガス雰囲気を用いたCVD法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、固体電解質粒子のスラリーを使用したグリーンシート成型法やスクリーン印刷法、エアロゾルデポジション法、適切なターゲットとガス雰囲気を用いたスパッタリング法、PLD法、真空蒸着法、めっき、溶射など、を用いることができる。また、負極30の形成材料には、上述した負極活物質を採用できる。
工程S7では、複合体10における電解質層20の第2の面20bに、負極30を形成する。負極30の形成方法としては、有機金属化合物の加水分解反応などを伴う、所謂ゾル・ゲル法や、有機金属熱分解法などの溶液プロセスの他、適切な金属化合物とガス雰囲気を用いたCVD法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、固体電解質粒子のスラリーを使用したグリーンシート成型法やスクリーン印刷法、エアロゾルデポジション法、適切なターゲットとガス雰囲気を用いたスパッタリング法、PLD法、真空蒸着法、めっき、溶射など、を用いることができる。また、負極30の形成材料には、上述した負極活物質を採用できる。
[第1集電体の形成工程]
工程S8では、複合体10の一面10aに、複合体10と接するように、第1集電体41を形成する。まず、図4Gに示すように、複合体10の一面10aを研磨する。このとき、研磨によって、活物質部2および電子伝導体5を、一面10aに確実に露出させる。これによって、活物質部2および電子伝導体5が、第1集電体41と電気的に接続される。なお、上述した工程において、一面10aに活物質部2および電子伝導体5が十分に露出している場合は、上記研磨を省略することも可能である。
工程S8では、複合体10の一面10aに、複合体10と接するように、第1集電体41を形成する。まず、図4Gに示すように、複合体10の一面10aを研磨する。このとき、研磨によって、活物質部2および電子伝導体5を、一面10aに確実に露出させる。これによって、活物質部2および電子伝導体5が、第1集電体41と電気的に接続される。なお、上述した工程において、一面10aに活物質部2および電子伝導体5が十分に露出している場合は、上記研磨を省略することも可能である。
次いで、一面10aに第1集電体41を成膜(形成)する。第1集電体41の形成方法としては、適当な接着層を別途設けて接着する方法、PVD法、CVD法、PLD法、ALD法、スパッタリング法、エアロゾルデポジション法などの気相堆積法、ゾル・ゲル法、有機金属熱分解法およびめっきなどの湿式法など、形成面との反応性や電気回路に望まれる電気伝導性、電気回路設計に応じて、適当な方法を用いることができる。また第1集電体41の形成材料としては、上述した形成材料を採用できる。このとき、必要に応じて、負極30側に、第1集電体41と同様にして、第2集電体を設けてもよい。以上の工程を経て、リチウム電池100(図2参照)が製造される。
以上に述べたように、上記実施形態に係る複合体10、複合体10の製造方法、リチウム電池100、リチウム電池100の製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
複合体10において、電池比容量の低下を抑えながら内部抵抗を低減することができる。詳しくは、繊維状の電子伝導体が、活物質部を覆うように、表面に沿って形成されるため、粒子状やフレーク状の導電助剤などと比べて、活物質部における電気的な接続が容易になる。これに加えて、繊維状の電子伝導体が、繊維の線で結んで電気的な接続を増やすため、粒子状やフレーク状と比べて導電補助の効率が良く、電子伝導パスの増大と電池比容量の低下抑制とを両立しやすくなる。これらにより、本適用例の複合体を用いることによって、電池比容量の低下を抑えながら、内部抵抗を低減した電池を提供することができる。
正極9と接して第1集電体41が設けられるため、複合体10の一面10aから露出した活物質部2および電子伝導体5と、第1集電体41とが電気的に接続される。これにより、リチウム電池100における放電容量と出力密度とを、共に向上しやすくなる。詳しくは、活物質粒子2b同士が電子伝導体5にて電気的に接続され、さらにそれらと第1集電体41とも電気的に接続される。そのため、複数の活物質粒子2bの電位が、第1集電体41と同一電位となって、充電時の過電圧や、放電時のオーミックドロップなどが抑えられ、リチウム電池100の容量のロスを低減することができる。
電子伝導体5の形成材料を含む液体5Xが、活物質部2に塗布される。そのため、活物質部2が有する孔内にまで、電子伝導体5の形成材料が到達しやすくなる。これにより、活物質部2の孔内を含む表面に電子伝導体5が形成され、電気的な接続が増大して電気伝導性が向上する。すなわち、電池比容量の低下を抑えながら内部抵抗を低減する、複合体10およびリチウム電池100の製造方法を提供することができる。
次に、上記実施形態について、実施例と比較例とを示し、上記実施形態の効果をより具体的に説明する。なお、下記の実験における秤量には、分析用天秤ME204T(メトラー・トレド社)を用いた。
<リチウム電池の製造>
(実施例1)
活物質部2の形成材料(活物質粒子2b)として、リチウム複合金属化合物のLiCoO2を用いた。まず、バインダーとしてポリプロピレンカーボネート(シグマアルドリッチ社)10gを、有機溶剤1,4−ジオキサン(関東化学社)90gに溶解して溶液とした。この溶液と、粒度分布のメジアン径(平均粒子径)が約5μmであるLiCoO2粉末(日本化薬社)15gと、を混合してスラリー2Xを作製した。次に、スラリー2Xを、塗工機81として全自動フィルムアプリケーター(コーテック社)を用いて、ポリエチレンテレフタラート製の基材82上に塗工し、シート状の成形物2Yを形成した。
(実施例1)
活物質部2の形成材料(活物質粒子2b)として、リチウム複合金属化合物のLiCoO2を用いた。まず、バインダーとしてポリプロピレンカーボネート(シグマアルドリッチ社)10gを、有機溶剤1,4−ジオキサン(関東化学社)90gに溶解して溶液とした。この溶液と、粒度分布のメジアン径(平均粒子径)が約5μmであるLiCoO2粉末(日本化薬社)15gと、を混合してスラリー2Xを作製した。次に、スラリー2Xを、塗工機81として全自動フィルムアプリケーター(コーテック社)を用いて、ポリエチレンテレフタラート製の基材82上に塗工し、シート状の成形物2Yを形成した。
上記シート状の成形物2Yに、約300℃で3時間の加熱処理を施した後、電気マッフル炉にて数100℃から1000℃で16時間の加熱処理(焼成)を施し、活物質部2を得た。得られた活物質部2は、LiCoO2の理論密度5.01g/cm3および外形寸法から、上述した数式(x)を用いた計算により、嵩密度が53%であることが分かった。これによって、活物質部2は、内部に複数の孔を有することを確認した。その後、シート状の活物質部2を、円盤状(直径約10mm、厚さ約120μm)に切り出した。
次に、電子伝導体5の形成材料(高分子化合物)が含まれる液体5Xを調製した。高分子化合物としてポリアクリロニトリルを用いた。まず、ポリアクリロニトリル粉末(シグマアルドリッチ社)4g、および有機溶剤N,N−ジメチルホルムアミド(関東化学社)96gを、パイレックス製ビーカー83に入れて、約25℃(室温)の雰囲気下で撹拌した。ポリアクリロニトリルをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、液体5Xとして、4質量%のポリアクリロニトリルのN,N−ジメチルホルムアミド溶液を得た。
次に、活物質部2を液体5Xに浸漬して、活物質部2の孔内を含む表面に、液体5Xを塗布した。その後、N2ガスを流した恒温槽内にて、140℃で1時間の加熱処理を施し、液体5Xを乾燥させ、活物質部2の表面にポリアクリロニトリルの被膜5Zを形成した。被膜5Z形成前後の活物質部2の質量変化、およびポリアクリロニトリルの密度(1.15g/cm3)から計算して、活物質部2の孔内を含む表面には、平均2.2μmの厚さのポリアクリルニトリルの被膜5Z(層)が形成されたことが分かった。
次に、ポリアクリロニトリル被膜を形成した活物質部2に、Ar(アルゴン)ガスを流した電気マッフル炉にて、780℃で50分間加熱処理を施して、ポリアクリロニトリルの被膜5Zを還元焼成させた。
還元焼成を施した後、自然放冷させた活物質部2について、X線回折装置(MRD、Philips社)による結晶相解析と、表面電界放射型電子顕微鏡(FEI社)による構造観察および寸法計測と、を行った。観察結果の一例を図5および図6に示す。図5および図6は、実施例1の活物質部における電子伝導体の状態を示す電子顕微鏡写真である。図5は、Ar(アルゴン)イオンミリングによる断面出し加工後の、活物質部の断面写真であり、図6は活物質部表面に形成された電子伝導体の写真である。
図5の電子顕微鏡写真から、活物質部2の表面に沿うように、電子伝導体5が接して形成されていることが分かる。図6の電子顕微鏡写真から、ポリアクリロニトリル(被膜5Z)が炭化物となった、繊維状の電子伝導体5が無数に存在していることが分かる。
以上の結果から、活物質部2の表面には、平均繊維長が約90μmの電子伝導体5が複雑に絡み合って存在し、それらが平均厚さ約140nmで重畳されていることが分かった。活物質粒子2b(LiCoO2)の平均粒子径(メジアン径)が約5μmであることから、電子伝導体5は複数の活物質粒子2bと接していることを確認した。
次に、第1電解質3の前駆体を含む溶液を調製した。本実施例では、第1電解質3として、固体電解質のLi6.75La3Zr1.75Nb0.25O12(以下、「LLZNb」ともいう。)を用いた。まず、上記固体電解質を構成する金属元素を含む各金属化合物溶液を作製した。
リチウム原料としてLiNO3を用いて、リチウム化合物溶液を作製した。具体的には、LiNO3粉末(関東化学社)を秤量して、濃度が1.0mol/kgとなるように、n−ブチルアルコール(関東化学社)に溶解させて、1.0mol/kg濃度のLiNO3のn−ブチルアルコール溶液を得た。
ランタン原料としてLa(NO3)3・6H2Oを用いて、ランタン化合物溶液を作製した。具体的には、La(NO3)3・6H2O粉末(関東化学社)を秤量して、濃度が1.0mol/kgとなるように、2−ブトキシエタノール(関東化学社)に溶解させて、1.0mol/kg濃度のLa(NO3)3の2−ブトキシエタノール溶液を得た。
ジルコニウム原料としてZr(O−n−C4H9)4(ジルコニウムテトラノルマルブトキシド)を用いて、ジルコニウム化合物溶液を作製した。具体的には、Zr(O−n−C4H9)4(シグマアルドリッチ社)を秤量して、濃度が1.0mol/kgとなるように、2−ブトキシエタノールに溶解させて、1.0mol/kg濃度のZr(O−n−C4H9)4の2−ブトキシエタノール溶液を得た。
ニオブ原料としてNb(OC2H5)5を用いて、ニオブ化合物溶液を作製した。具体的には、Nb(OC2H5)5(高純度化学社)を秤量して、濃度が1.0mol/kgとなるように、2−ブトキシエタノールに溶解させて、1.0mol/kg濃度のNb(OC2H5)5の2−ブトキシエタノール溶液を得た。
その後、1.0mol/kg濃度のLiNO3のn−ブチルアルコール溶液6.75g、1.0mol/kg濃度のLa(NO3)3の2−ブトキシエタノール溶液3.00g、1.0mol/kg濃度のZr(O−n−C4H9)4の2−ブトキシエタノール溶液1.75g、1.0mol/kg濃度のNb(OC2H5)5の2−ブトキシエタノール溶液0.25gを混合して、Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12の前駆体を含む溶液(以下、単に「前駆体溶液」ともいう。)を調製した。
次に、電子伝導体5を形成した活物質部2を、LLZNbの前駆体溶液へ浸漬し、上記溶液を活物質部2へ塗布した。続いて、140℃で10分間の加熱を施して上記溶液を乾燥させた後、酸化雰囲気下にて540℃で15分間の加熱処理を施した。さらに続けて、Arガス雰囲気下にて800℃で4時間の加熱処理を施した後、自然放冷して正極9を得た。正極9について、X線回折装置(MRD、Philips社)による結晶相解析を行った。その結果、第1電解質3として、ガーネット型のLi6.75La3Zr1.75Nb0.25O12の結晶が生成していることが分かった。
また、活物質部2における、嵩密度、第1電解質3の形成によって増加した質量、ガーネット型Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12の理論密度5.1g/cm3から、活物質部2の孔内の表面に、平均厚さ約2μmの第1電解質3の層が形成されたことが分かった。また、活物質部2の初期の理論空隙体積のうち、95%が第1電解質3によって充填されたことも分かった。
次に、第2電解質4を含む電解質層20を形成した。具体的には、第2電解質4として、Li2.2C0.8B0.2O3を用いた。まず、Li2CO3粉末(関東化学社)0.592g、およびLi3BO3粉末(豊島製作所社)を、メノウ鉢にて粉砕、混合した。この混合粉に、CO2雰囲気下にて700℃で1時間の加熱処理を施した。その後、急冷して、Li2.2C0.8B0.2O3の粉末を得た。
続いて、バインダーとしてのポリプロピレンカーボネート10gを有機溶剤の1,4−ジオキサン90gに溶解させて、10質量%濃度のポリプロピレンカーボネートの1,4−ジオキサン溶液を作製した。該溶液9gと、Li2.2C0.8B0.2O3粉末1gとを混合して、スラリーを作製した。該スラリーを、スクリーン印刷法を用いて、正極9の片面に塗布した。その後、乾燥大気中にて、300℃で2時間の加熱処理を施し、さらにCO2雰囲気下にて、685℃で30秒間の加熱処理を行った。これにより、正極9の片面に、厚さ約2μmの第2電解質4を含む電解質層20が形成された、複合体10が得られた。
次に、複合体10の電解質層20に接するように、負極30を形成した。具体的には、負極活物質としてリチウムを用い、真空蒸着法によって、負極30として厚さ約1.2μmのリチウム金属層を形成した。
次に、複合体10において負極30を形成した面と対向する面に、研磨材(ラッピングフィルムシート♯15000、砥粒径0.3μm、3M社)を用いて、窒素ガス雰囲気下で研磨を施した。その後、研磨を施した面(一面10a)に、厚さ30μmのAl金属箔を貼付して第1集電体41とした。また、負極30側に、厚さ30μmのCu金属箔を貼付して第2集電体とした。
以上により、実施例1のリチウム電池を製造した。なお、実施例1のリチウム電池は、第1電解質3と第2電解質4とは異なる形成材料(材料)からなり、第1電解質3は、第2電解質4よりも高いイオン伝導性を有している。
(実施例2)
実施例2のリチウム電池は、第1電解質3と第2電解質4とに同一の材料(形成材料)を用いた他は、実施例1のリチウム電池と同様にして製造した。すなわち、第1電解質3および第2電解質4として、固体電解質のLi6.75La3Zr1.75Nb0.25O12を用いた。具体的には、第1電解質3の前駆体を含む溶液へ活物質部2を浸漬した際に、円盤状の活物質部2の片面に、過剰に上記液体を塗布した。その後、実施例1と同様に加熱処理を施して、第1電解質3、および第1電解質3と同じ固体電解質を含む、厚さ約2μmの電解質層20を、同時に形成した。これ以外の工程は実施例1のリチウム電池と同様に実施して、実施例2のリチウム電池を製造した。
実施例2のリチウム電池は、第1電解質3と第2電解質4とに同一の材料(形成材料)を用いた他は、実施例1のリチウム電池と同様にして製造した。すなわち、第1電解質3および第2電解質4として、固体電解質のLi6.75La3Zr1.75Nb0.25O12を用いた。具体的には、第1電解質3の前駆体を含む溶液へ活物質部2を浸漬した際に、円盤状の活物質部2の片面に、過剰に上記液体を塗布した。その後、実施例1と同様に加熱処理を施して、第1電解質3、および第1電解質3と同じ固体電解質を含む、厚さ約2μmの電解質層20を、同時に形成した。これ以外の工程は実施例1のリチウム電池と同様に実施して、実施例2のリチウム電池を製造した。
(比較例1)
比較例1のリチウム電池は、実施例2のリチウム電池に対して、電子伝導体5を設けなかった他は、実施例2のリチウム電池と同様の構成とした。すなわち、活物質部2を形成した後に、電子伝導体5を設けずに、活物質部2へ第1電解質3を形成した。この他は、実施例2のリチウム電池と同様にして、比較例1のリチウム電池を製造した。
比較例1のリチウム電池は、実施例2のリチウム電池に対して、電子伝導体5を設けなかった他は、実施例2のリチウム電池と同様の構成とした。すなわち、活物質部2を形成した後に、電子伝導体5を設けずに、活物質部2へ第1電解質3を形成した。この他は、実施例2のリチウム電池と同様にして、比較例1のリチウム電池を製造した。
(比較例2)
活物質部の形成材料(活物質粒子)として、リチウム複合金属化合物のLiCoO2を用い、導電補助剤としてPd粒子を用いた。まず、バインダーとしてポリプロピレンカーボネート(シグマアルドリッチ社)10gを、有機溶剤1,4−ジオキサン(関東化学社)90gに溶解して溶液とした。この溶液と、粒度分布のメジアン径(平均粒子径)が約5μmであるLiCoO2粉末(日本化薬社)15gと、粒度分布のメジアン径(平均粒子径)が約1μmであるPd粒子(ニラコ社)0.8gと、を混合してスラリーを作製した。次に、スラリーを、塗工機として全自動フィルムアプリケーター(コーテック社)を用いて、ポリエチレンテレフタラート製の基材上に塗工し、シート状成形物を形成した。
活物質部の形成材料(活物質粒子)として、リチウム複合金属化合物のLiCoO2を用い、導電補助剤としてPd粒子を用いた。まず、バインダーとしてポリプロピレンカーボネート(シグマアルドリッチ社)10gを、有機溶剤1,4−ジオキサン(関東化学社)90gに溶解して溶液とした。この溶液と、粒度分布のメジアン径(平均粒子径)が約5μmであるLiCoO2粉末(日本化薬社)15gと、粒度分布のメジアン径(平均粒子径)が約1μmであるPd粒子(ニラコ社)0.8gと、を混合してスラリーを作製した。次に、スラリーを、塗工機として全自動フィルムアプリケーター(コーテック社)を用いて、ポリエチレンテレフタラート製の基材上に塗工し、シート状成形物を形成した。
上記シート状成形物に、実施例1と同様にして加熱処理を施し、活物質部を得た。得られた活物質部は、LiCoO2の理論密度5.01g/cm3、Pdの理論密度12.0g/cm3、および外形寸法から、上述した数式(x)を用いた計算により、嵩密度が52%であることが分かった。これによって、活物質部は、内部に複数の孔を有することを確認した。その後、シート状の活物質部を、直径約10mmの円盤状に切り出した。
次に、実施例2と同様にして、円盤状に切り出した活物質部へ、第1電解質(ガーネット型のLi6.75La3Zr1.75Nb0.25O12結晶)を形成した。活物質部における、嵩密度、第1電解質の形成によって増加した質量、ガーネット型Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12の理論密度5.1g/cm3、Pdの理論密度12.0g/cm3から、活物質部の孔内の表面および電解質層として、平均厚さ約2μmの第1電解質の層が形成されたことが分かった。また、活物質部の初期の理論空隙体積のうち、95%が第1電解質によって充填されたことも分かった。これ以降の工程は、実施例1のリチウム電池と同様に実施して、比較例2のリチウム電池を製造した。
(比較例3)
比較例3のリチウム電池は、比較例2のリチウム電池に対して、導電補助剤としてPd粒子に代えて、炭素顆粒を用いた。炭素顆粒としては、粒度分布のメジアン径(平均粒子径)が約100nmであるケッチェンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社)0.8gを用いてスラリーを作製した。この他は、比較例2と同様にして、シート状成形物を形成した後、活物質部を得た。
比較例3のリチウム電池は、比較例2のリチウム電池に対して、導電補助剤としてPd粒子に代えて、炭素顆粒を用いた。炭素顆粒としては、粒度分布のメジアン径(平均粒子径)が約100nmであるケッチェンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社)0.8gを用いてスラリーを作製した。この他は、比較例2と同様にして、シート状成形物を形成した後、活物質部を得た。
得られた活物質部は、LiCoO2の理論密度5.01g/cm3、ケッチェンブラックの真密度2.1g/cm3、および外形寸法から、上述した数式(x)を用いた計算により、嵩密度が52%であることが分かった。これによって、活物質部は、内部に複数の孔を有することを確認した。その後、シート状の活物質部を、直径約10mmの円盤状に切り出した。これ以降の工程は、比較例2のリチウム電池と同様に実施して、比較例3のリチウム電池を製造した。
<評価方法>
実施例および比較例の活物質部およびリチウム電池について、以下の方法にて評価を行って、その結果を図7、図8、図9、図10、図11、図12に示した。図7は、実施例および比較例の評価結果を示す図表である。図8から図12は、実施例または比較例のリチウム電池の電子顕微鏡写真である。
実施例および比較例の活物質部およびリチウム電池について、以下の方法にて評価を行って、その結果を図7、図8、図9、図10、図11、図12に示した。図7は、実施例および比較例の評価結果を示す図表である。図8から図12は、実施例または比較例のリチウム電池の電子顕微鏡写真である。
[複合体の電気抵抗]
上述したリチウム電池の製造に用いた、実施例および比較例の複合体(正極および電解質層を含む)から、測定用の試料を作製した。具体的には、電解質層を形成した正極(直径約10mm、厚さ約120μmの円盤状部材)に対して、円盤状部材(正極)の両面に円形の金電極(直径7mm、厚さ0.02mm)を押し付け、直流電流を印加して電気抵抗(面抵抗)を測定した。実施例および比較例の測定結果を図7に示した。
上述したリチウム電池の製造に用いた、実施例および比較例の複合体(正極および電解質層を含む)から、測定用の試料を作製した。具体的には、電解質層を形成した正極(直径約10mm、厚さ約120μmの円盤状部材)に対して、円盤状部材(正極)の両面に円形の金電極(直径7mm、厚さ0.02mm)を押し付け、直流電流を印加して電気抵抗(面抵抗)を測定した。実施例および比較例の測定結果を図7に示した。
[リチウム電池の内部抵抗および放電容量]
充放電測定装置HJ−SD8(北斗電工社)を用いて充放電試験を行い、リチウム電池の内部抵抗ΔV/Iおよび放電容量を求めた。実施例および比較例の測定結果を図7に示した。
充放電測定装置HJ−SD8(北斗電工社)を用いて充放電試験を行い、リチウム電池の内部抵抗ΔV/Iおよび放電容量を求めた。実施例および比較例の測定結果を図7に示した。
[電子顕微鏡観察]
実施例1および実施例2、比較例1および比較例2のリチウム電池について、Arイオンミリングを用いて複合体部分の断面出し加工を施した後、電子顕微鏡(SEM)による状態観察を行った。電子顕微鏡写真を図8から図12に示した。なお、図10は、実施例2の複合体において、Arイオンミリングを用いずに破断させた断面(破断面)を撮像した電子顕微鏡写真である。
実施例1および実施例2、比較例1および比較例2のリチウム電池について、Arイオンミリングを用いて複合体部分の断面出し加工を施した後、電子顕微鏡(SEM)による状態観察を行った。電子顕微鏡写真を図8から図12に示した。なお、図10は、実施例2の複合体において、Arイオンミリングを用いずに破断させた断面(破断面)を撮像した電子顕微鏡写真である。
<評価結果>
図7に示したように、複合体10の電気抵抗は、実施例1では1.0Ωcm2を下回り、実施例2では、0.5Ωcm2を下回った。リチウム電池における内部抵抗ΔV/Iは、実施例1では310Ω、実施例2では220Ωであった。また、放電容量は、実施例1、実施例2共に、130mAh/g程度が確保されていた。これにより、実施例1および実施例2では、放電容量(電池比容量)の低下を抑えながら、内部抵抗を低減できることが示された。
図7に示したように、複合体10の電気抵抗は、実施例1では1.0Ωcm2を下回り、実施例2では、0.5Ωcm2を下回った。リチウム電池における内部抵抗ΔV/Iは、実施例1では310Ω、実施例2では220Ωであった。また、放電容量は、実施例1、実施例2共に、130mAh/g程度が確保されていた。これにより、実施例1および実施例2では、放電容量(電池比容量)の低下を抑えながら、内部抵抗を低減できることが示された。
また、実施例1の電子顕微鏡写真(図8)および実施例2の電子顕微鏡写真(図9)に示したように、電子伝導体5が、活物質粒子2bと接して設けられている一方で、電子伝導体5が存在しない隙間もあり、その隙間では、活物質粒子2b(活物質部2)と第1電解質3とが接していることが分かった。また、図10においては、繊維状の電子伝導体5が認められた。以上により、上述した放電容量および内部抵抗の改善効果の裏付けとなる、電子伝導体5の形成が確認された。
一方、比較例1から比較例3については、図7に示したように、複合体の電気抵抗、リチウム電池の内部抵抗および放電容量が、実施例1および実施例2と比べて大きく劣ることが分かった。比較例2および比較例3は、導電助剤を用いたことにより、電子伝導体および導電助剤を含まない比較例1と比べて低い抵抗値を示したが、実施例1および実施例2には及ばなかった。
また、比較例1の電子顕微鏡写真(図11)では、活物質部2を電気的に接続するものは認められない。比較例2の電子顕微鏡写真(図12)では、導電助剤として用いたPd粒子が確認された。しかしながら、Pdは粒子状であるため、複数の活物質粒子2bとは接しにくいものであることがわかった。
(実施形態2)
<電池の製造方法>
本実施形態に係るリチウム電池の製造方法について、図13、図14A、図14B、図14Cを参照して説明する。図13は、実施形態2に係る電池としてのリチウム電池の製造方法を示す工程フロー図である。図14Aから図14Cは、複合体の製造方法を示す模式図である。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
<電池の製造方法>
本実施形態に係るリチウム電池の製造方法について、図13、図14A、図14B、図14Cを参照して説明する。図13は、実施形態2に係る電池としてのリチウム電池の製造方法を示す工程フロー図である。図14Aから図14Cは、複合体の製造方法を示す模式図である。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
本実施形態のリチウム電池の製造方法は、リチウム電池が含む複合体の製造方法と、複合体からリチウム電池を製造する後工程としての製造方法と、を備えている。図13に示したリチウム電池の製造工程において、複合体の製造方法は、工程S11から工程S14に該当し、上記後工程としての製造方法は、工程S15および工程S16に該当する。図13に示した工程フローは一例であって、これに限定されるものではない。
本実施形態の複合体の製造方法は、活物質粒子102b、電解質粒子103b、上記実施形態に記載の高分子化合物を含むスラリー109Xを作製する工程と、スラリー109Xを乾燥および還元焼成する工程と、を備えている。本実施形態の複合体の製造方法は、実施形態1で述べた活物質部2を形成せずに、活物質粒子102b、第1電解質103、電子伝導体105の形成材料などを含むスラリー109Xから、直接的に、それらが複合化された正極を形成する方法である。
本実施形態のリチウム電池の製造方法は、複合体の製造工程に加えて、複合体と接するように第1集電体を形成する工程と、を備えている。
[スラリーの作製工程]
工程S11では、複合体が備える正極を形成するため、活物質粒子102b、電解質粒子103b、電子伝導体105の形成材料などが含まれるスラリー109Xを作製する。
工程S11では、複合体が備える正極を形成するため、活物質粒子102b、電解質粒子103b、電子伝導体105の形成材料などが含まれるスラリー109Xを作製する。
電子伝導体105の形成材料としては、実施形態1で述べた電子伝導体5の形成材料を用いることができる。本実施形態では、電子伝導体105の形成材料として、ポリアクリロニトリル(シグマアルドリッチ社)を用いた。
活物質粒子102bとしては、実施形態1で述べたリチウム複合金属化合物を用いる。本実施形態では、実施形態1の実施例1にて使用した、メジアン径(平均粒子径)が約5μmであるLiCoO2粉末(日本化薬社)を用いた。電解質粒子103b(第1電解質の形成材料)としては、実施形態1で述べた固体電解質が採用可能であり、本実施形態では、Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12粉末(豊島製作所社)を用いた。なお、活物質粒子102bと、電解質粒子103bとは、スラリー109X中での分散性を向上させるため、粉末状として用いることが好ましい。
スラリー109Xが含む溶媒としては、実施形態1で述べた液体5Xが含む溶媒を用いる。このとき、電子伝導体105の形成材料として高分子化合物を用いる場合は、高分子化合物を溶解可能な溶媒を用いる。本実施形態では、溶媒として、有機溶剤の1,4−ジオキサン(関東化学社)を用いた。スラリー109Xには、上記の成分の他に、分散剤、界面活性剤、消泡剤などの助剤を添加してもよい。また、必要に応じて、加温下で操作を行って、高分子化合物の溶解を促進してもよい。
まず、ポリアクリロニトリル10g、および1,4−ジオキサン90gを、混合、撹拌して、ポリアクリロニトリルが完全に溶解した溶液Pとした。次いで、図14Aに示すように、ビーカー83に、20gの溶液Pを分取して、LiCoO2粉末2g、Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12粉末1g、および磁石式撹拌子84を入れ、マグネチックスターラー85にて撹拌しながら混合する。これにより、1,4−ジオキサン中に、ポリアクリロニトリルが溶解し、LiCoO2およびLi6.75La3Zr1.75Nb0.25O12が分散した、スラリー109Xを作製した。
[成形物の形成工程]
工程S12では、スラリー109Xからシート状の成形物109Yを形成する。成形物109Yの形成方法は、実施形態1の成形物2Yの形成(図4A参照)と同様な方法を用いる。本実施形態では、グリーンシート成型法を用いた。具体的には、上記のスラリー109Xを、全自動フィルムアプリケーター(コーテック社)を用いて、ポリエチレンテレフタラート製の基材上に塗工し、シート状の成形物109Yを形成した。
工程S12では、スラリー109Xからシート状の成形物109Yを形成する。成形物109Yの形成方法は、実施形態1の成形物2Yの形成(図4A参照)と同様な方法を用いる。本実施形態では、グリーンシート成型法を用いた。具体的には、上記のスラリー109Xを、全自動フィルムアプリケーター(コーテック社)を用いて、ポリエチレンテレフタラート製の基材上に塗工し、シート状の成形物109Yを形成した。
成形物109Yでは、図14Bに示すように、活物質粒子102bと、第1電解質103の粒子とが分散し、それらの粒子間の隙間に、ポリアクリロニトリルが溶解した溶液Pが存在している。
[正極の形成工程]
工程S13では、成形物109Yに加熱処理を施して、正極を形成する。加熱処理の条件としては、特に限定されないが、例えば、成形物109Yを140℃で2時間静置して乾燥させた後、300℃で2時間加熱を施した。これにより、図14Bの状態から、溶媒が揮散、分解されて排除される。その後、Arガス雰囲気下で、780℃で50分間の加熱処理(還元焼成)を行った。この加熱処理によって、ポリアクリロニトリルは還元焼成されて炭化物となり、繊維状の電子伝導体105が生成される。この状態から冷却することにより、第1電解質103、活物質粒子102b、電子伝導体5が複合化された正極が形成される。
工程S13では、成形物109Yに加熱処理を施して、正極を形成する。加熱処理の条件としては、特に限定されないが、例えば、成形物109Yを140℃で2時間静置して乾燥させた後、300℃で2時間加熱を施した。これにより、図14Bの状態から、溶媒が揮散、分解されて排除される。その後、Arガス雰囲気下で、780℃で50分間の加熱処理(還元焼成)を行った。この加熱処理によって、ポリアクリロニトリルは還元焼成されて炭化物となり、繊維状の電子伝導体105が生成される。この状態から冷却することにより、第1電解質103、活物質粒子102b、電子伝導体5が複合化された正極が形成される。
ここで、正極の内部では、図14Cに示すように、活物質粒子102b同士が網目状に連結している。また、それらの隙間に、電子伝導体105と、電解質粒子103bからなる第1電解質103と、が存在している。電子伝導体105は、正極中で不規則に分布しているが、ポリアクリロニトリルの高分子鎖に由来する繊維状であるため、複数の活物質粒子102bと接触し、それらを電気的に接続している。
正極について、X線回折装置(MRD、Philips社)による結晶相解析を行った。その結果、正極には、LiCoO2、Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12、炭素が含まれていることを確認した。その後、シート状の正極を、直径約10mmの円盤状に切り出した。
[複合体の形成工程]
工程S14では、円盤状の正極の片面に、第2電解質としてLi2.2C0.8B0.2O3を含む電解質層を形成する。電解質層の形成方法としては、実施形態1の電解質層20と同様な方法を用いる。
工程S14では、円盤状の正極の片面に、第2電解質としてLi2.2C0.8B0.2O3を含む電解質層を形成する。電解質層の形成方法としては、実施形態1の電解質層20と同様な方法を用いる。
具体的には、ポリプロピレンカーボネート10gを1,4−ジオキサン90gに溶解させて、10質量%濃度のポリプロピレンカーボネートの1,4−ジオキサン溶液を作製した。該溶液9gと、実施形態1の実施例1で作製したLi2.2C0.8B0.2O3粉末1gとを混合して、スラリーを作製した。該スラリーを、スクリーン印刷法を用いて、正極の片面に塗布した。その後、乾燥大気中にて、300℃で2時間の加熱処理を施し、さらにCO2雰囲気下にて、685℃で30秒間の加熱処理を行った。これにより、正極の片面に、厚さ約2μmの電解質層が形成された、複合体を得た。なお、本実施形態では、第1電解質と第2電解質とを異なる材料(形成材料)で形成したが、これに限定されず、同一の形成材料を用いてもよい。
[負極の形成工程]
工程S15では、複合体における電解質層の表面に、負極としてリチウム金属層を形成する。具体的には、実施形態1の実施例1の負極形成と同様にして、負極活物質としてリチウムを用い、真空蒸着法によって、厚さ約1.2μmのリチウム金属層を形成した。
工程S15では、複合体における電解質層の表面に、負極としてリチウム金属層を形成する。具体的には、実施形態1の実施例1の負極形成と同様にして、負極活物質としてリチウムを用い、真空蒸着法によって、厚さ約1.2μmのリチウム金属層を形成した。
[第1集電体の形成工程]
工程S16では、複合体において、負極を形成した面と対向する面に、複合体と接するように第1集電体を形成する。具体的には、実施形態1の実施例1と同様にして、研磨を施した後、研磨を施した面に、厚さ30μmのAl金属箔を貼付して第1集電体とした。また、負極側に、厚さ30μmのCu金属箔を貼付して第2集電体とした。
工程S16では、複合体において、負極を形成した面と対向する面に、複合体と接するように第1集電体を形成する。具体的には、実施形態1の実施例1と同様にして、研磨を施した後、研磨を施した面に、厚さ30μmのAl金属箔を貼付して第1集電体とした。また、負極側に、厚さ30μmのCu金属箔を貼付して第2集電体とした。
以上の工程から、実施形態2のリチウム電池を製造した。リチウム電池およびリチウム電池を構成する複合体について、実施形態1と同様に、複合体の電気抵抗、リチウム電池の内部抵抗および放電容量の評価を実施した。その結果、本実施形態のリチウム電池および複合体では、複合体の電気抵抗、リチウム電池の内部抵抗および放電容量が、実施形態1の実施例1と同等の性能を有することが分かった。
すなわち、本実施形態によれば、実施形態1における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。活物質粒子102b、第1電解質103、電子伝導体105の形成材料などを含むスラリー109Xから、直接的にそれらが複合化された正極が形成される。そのため、活物質部の形成工程や、高分子化合物が含まれる液体を活物質部に塗布する工程などを省き、リチウム電池の製造工程を簡略化することができる。
(実施形態3)
<電池>
本実施形態の電池としてのリチウム電池について、図15を参照して説明する。図15は、実施形態3に係る電池としてのリチウム電池の構成を示す概略断面図である。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
<電池>
本実施形態の電池としてのリチウム電池について、図15を参照して説明する。図15は、実施形態3に係る電池としてのリチウム電池の構成を示す概略断面図である。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
図15に示すように、本実施形態のリチウム電池300は、第1集電体41および第2集電体42の間において、正極側の複合体10と負極側の複合体50とを有している。複合体10の電解質層20と、複合体50とは、電解質層20の第2の面20bにて当接され一体化することによって、リチウム電池300が形成されている。
すなわち、リチウム電池300は、実施形態1のリチウム電池100の負極30を、複合体50としての負極11で置き換えている。また、負極11において、複合体10と接する面と対向する面には、第2集電体42が設けられている。
負極11は、活物質粒子6bと、第3電解質7と、繊維状の電子伝導体8とを含み、電子伝導体8は、複数の活物質粒子6bを電気的に接続して設けられている。活物質粒子6bが集合体となって、焼結体としての活物質部6が形成されている。活物質部6は、活物質部2と同様に複数の孔を有している。複数の孔は、活物質部6の内部で互いに網目状に連通し、活物質粒子6b同士の接触が確保されている。活物質粒子6bは、当接する第2集電体42を負極側に使用するため、形成材料として上述した負極活物質を用いることができる。リチウム電池300では、活物質粒子6bとして、Li4Ti5O12を用いている。活物質部6は、上述した活物質部2と同様な方法により、活物質粒子6bを用いて形成することができる。なお、図15は活物質粒子6bを模式的に示したものであり、実際の粒径や大きさは必ずしも同じではない。
電子伝導体8は、活物質部6の少なくとも一部を覆うように、活物質部6の表面に沿って設けられている。電子伝導体8は電気伝導性を備え、活物質部6の表面に沿うことにより、複数の活物質粒子6bと接して、複数の活物質粒子6bを電気的に接続している。電子伝導体8は繊維状であるため、活物質部6の孔内にまで入り込み、孔内においても、複数の活物質粒子6bと接して、それらを電気的に接続している。これにより、電子伝導体8は、活物質粒子6b同士の接触をさらに増やすことができる。
活物質部6の孔内を含む表面には、電子伝導体8が設けられ、さらに第3電解質7が設けられている。すなわち、負極11(複合体50)は、活物質部6、電子伝導体8、第3電解質7が複合化して形成されている。第3電解質7の形成材料としては、上述した、リチウム電池100に適用し得る、固体電解質が採用できる。
負極11と、正極9との間には、複合体10の電解質層20が介在している。電解質層20によって、正極9と負極11との間における、短絡の発生を抑えられている。
負極11が第2集電体42と接する面には、負極11から、活物質部6および電子伝導体8が露出している。そのため、活物質部6および電子伝導体8と第2集電体42とは電気的に接続されている。
以上述べたように、本実施形態に係るリチウム電池300によれば、実施形態1における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。負極11においても、活物質部6、電子伝導体8、第3電解質7が複合体50を形成するため、電池比容量の低下をさらに抑えるとともに、内部抵抗をより低減することができる。これにより、出力や容量をさらに向上させたリチウム電池300を提供することができる。
(実施形態4)
<電子機器>
本実施形態に係る電子機器について、図16を参照して説明する。本実施形態では、電子機器として、ウェアラブル機器を例に挙げて説明する。図16は、実施形態4に係る電子機器としてのウェアラブル機器の構成を示す概略図である。
<電子機器>
本実施形態に係る電子機器について、図16を参照して説明する。本実施形態では、電子機器として、ウェアラブル機器を例に挙げて説明する。図16は、実施形態4に係る電子機器としてのウェアラブル機器の構成を示す概略図である。
図16に示すように、本実施形態のウェアラブル機器400は、バンド310を用いて、人体の、例えば手首WRに腕時計のように装着され、人体に係る情報を入手する情報機器である。ウェアラブル機器400は、電池305、表示部325、センサー321、処理部330を備えている。電池305には、上記実施形態のリチウム電池を備えている。
バンド310は、装着時に手首WRに密着するように、ゴムなどの可撓性を備えた樹脂を用いた帯状を成している。バンド310の端部には、手首WRの太さに対応して結合位置を調整可能な結合部(図示せず)が設けられている。
センサー321は、バンド310において、装着時に手首WRに触れるよう、バンド310の内面側(手首WR側)に配置されている。センサー321は、手首WRと触れることによって、人体の脈拍や血糖値などに関する情報を入手し、処理部330へ出力する。センサー321としては、例えば光学センサーが用いられる。
処理部330は、バンド310に内蔵され、センサー321および表示部325と電気的に接続されている。処理部330としては、例えば集積回路(IC)が用いられる。処理部330は、センサー321からの出力に基づいて、脈拍や血糖値などの演算処理を行って、表示部325に表示データを出力する。
表示部325は、処理部330から出力された、脈拍や血糖値などの表示データを表示する。表示部325としては、例えば受光型の液晶表示装置を用いる。表示部325は、ウェアラブル機器400の装着時に、表示データを装着者が読み取れるように、バンド310の外面側(センサー321が配置された内面と対向する側)に配置されている。
電池305は、表示部325、センサー321、処理部330へ電力を供給する電力供給源として機能する。電池305は、着脱可能な状態にてバンド310に内蔵されている。
以上の構成により、ウェアラブル機器400は、手首WRから装着者の脈拍や血糖値に係る情報を入手し、演算処理などを経て、脈拍や血糖値などの情報として表示することができる。また、ウェアラブル機器400は、小型ながら大きな電池容量を有する、上記実施形態のリチウム電池を適用しているため、軽量化が可能であり、稼働時間を伸長させることができる。さらには、上記実施形態のリチウム電池は、全固体型の二次電池であるため、充電による繰り返しの使用が可能であることに加え、電解液などの漏洩の懸念がないため、長期間かつ安全に使用が可能なウェアラブル機器400を提供することができる。
本実施形態では、ウェアラブル機器400として腕時計型のウェアラブル機器を例示したが、これに限定されるものではない。ウェアラブル機器は、例えば、足首、頭、耳、腰などに装着されるものであってもよい。
また、電力供給源としての電池305(上記実施形態のリチウム電池)が適用される電子機器は、ウェアラブル機器400に限定されない。その他の電子機器としては、例えば、ヘッドマウントディスプレイなどの頭部装着型ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、携帯電話機、携帯情報端末、ノート型パソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレイヤー、ワイヤレスヘッドホン、携帯ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器は、例えば、データ通信機能、ゲーム機能、録音再生機能、辞書機能などの他の機能を有していてもよい。
また、本実施形態の電子機器は、一般消費者向けの用途に限定されず、産業用途へも適用が可能である。さらに、上記実施形態のリチウム電池が適用される機器は、電子機器に限定されない。例えば、上記実施形態のリチウム電池を、移動体の電力供給源として適用してもよい。移動体としては、具体的には、自動車、バイク、フォークリフト、無人飛行機等の飛行体などが挙げられる。これによれば、信頼性および充放電効率が向上した電池を、電力供給源として備えた移動体を提供することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
<電池>
本変形例に係る電池としてのリチウム電池は、実施形態1の実施例1に対して、電子伝導体の形成材料をポリアクリロニトリルに代えて、ヒドロキシエチルセルロースを用いた。この他は、実施形態1の実施例1と同様にして、変形例1のリチウム電池を製造した。具体的には、ヒドロキシエチルセルロース(サイエンティフィックポリマープロダクツ社)4gおよび有機溶剤N,N−ジメチルホルムアミド(関東化学社)96gを、パイレックス製ビーカーに入れて、約25℃(室温)の雰囲気下で撹拌した。これにより、ヒドロキシエチルセルロースをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、変形例1の、電子伝導体の形成材料を含む液体として、4質量%のヒドロキシエチルセルロースのN,N−ジメチルホルムアミド溶液を得た。その他の工程は、実施形態1の実施例1と同様にして、変形例1のリチウム電池を製造した。
<電池>
本変形例に係る電池としてのリチウム電池は、実施形態1の実施例1に対して、電子伝導体の形成材料をポリアクリロニトリルに代えて、ヒドロキシエチルセルロースを用いた。この他は、実施形態1の実施例1と同様にして、変形例1のリチウム電池を製造した。具体的には、ヒドロキシエチルセルロース(サイエンティフィックポリマープロダクツ社)4gおよび有機溶剤N,N−ジメチルホルムアミド(関東化学社)96gを、パイレックス製ビーカーに入れて、約25℃(室温)の雰囲気下で撹拌した。これにより、ヒドロキシエチルセルロースをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、変形例1の、電子伝導体の形成材料を含む液体として、4質量%のヒドロキシエチルセルロースのN,N−ジメチルホルムアミド溶液を得た。その他の工程は、実施形態1の実施例1と同様にして、変形例1のリチウム電池を製造した。
変形例1のリチウム電池および複合体について、実施形態1と同様な評価を行った。複合体の電気抵抗、リチウム電池の内部抵抗および放電容量の評価を実施した。その結果、リチウム電池および複合体では、複合体の電気抵抗、リチウム電池の内部抵抗および放電容量が、実施形態1の実施例1と同等の性能を有することが分かった。
2,6…活物質部、2b,6b,102b…活物質粒子、2Y…成形物、3,103…第1電解質、4…第2電解質、5,105…電子伝導体、5X…液体、5Z…被膜、7…第3電解質、9…正極、10,50…複合体、11,30…負極、20…電解質層、41…第1集電体、42…第2集電体、100,300…電池としてのリチウム電池、103b…電解質粒子、109X…スラリー、305…電池、400…電子機器としてのウェアラブル機器。
Claims (13)
- 活物質部と、
前記活物質部の少なくとも一部を覆うように形成された繊維状の電子伝導体と、を備えた複合体。 - 前記電子伝導体は、前記活物質部の表面に沿って形成されている、請求項1に記載の複合体。
- 前記電子伝導体は、高分子化合物の炭化物である、請求項1または請求項2に記載の複合体。
- 活物質粒子を含む成形物を形成する工程と、
前記成形物に焼成を施して活物質部を形成する工程と、
高分子化合物が含まれる液体を調製する工程と、
前記活物質部の孔内を含む表面に、前記液体を接触させ、乾燥させて前記高分子化合物が含まれる被膜を形成する工程と、
前記被膜に還元焼成を施して繊維状の電子伝導体を形成する工程と、
前記活物質部の孔内に電解質を充填して複合体を形成する工程と、を備えた複合体の製造方法。 - 活物質粒子、電解質粒子、高分子化合物を含むスラリーを作製する工程と、
前記スラリーを乾燥および還元焼成する工程と、を備えた複合体の製造方法。 - 前記高分子化合物は、ポリアクリロニトリルまたはヒドロキシエチルセルロースを含む、請求項4または請求項5に記載の複合体の製造方法。
- 活物質部と、前記活物質部の一部を覆うように形成された繊維状の電子伝導体と、第1電解質とを含む第1電極と、
第2電解質を含む電解質層と、
前記第1電極に対して、前記電解質層を介して設けられた第2電極と、を備えた電池。 - 前記電解質層に対して、前記第1電極を介して設けられた集電体を備え、
前記集電体と前記電子伝導体とは、電気的に接続されている、請求項7に記載の電池。 - 前記第1電解質と、前記第2電解質とは同一材料からなる、請求項6または請求項7に記載の電池。
- 前記第1電解質と、前記第2電解質とは異なる材料からなり、
前記第1電解質は、前記第2電解質よりも高いイオン伝導性を有する、請求項7または請求項8に記載の電池。 - 活物質粒子を含む成形物を形成する工程と、
前記成形物に焼成を施して活物質部を形成する工程と、
高分子化合物が含まれる被膜を、前記活物質部の孔内を含む表面に形成する工程と、
前記被膜に還元焼成を施して電子伝導体を形成する工程と、
前記活物質部の前記孔内を含む表面に第1電解質を設けて、複合体を形成する工程と、
前記複合体と接するように集電体を形成する工程と、を備えた電池の製造方法。 - 活物質粒子、電解質粒子、および高分子化合物を含むスラリーを作製する工程と、
前記スラリーに乾燥および還元焼成を施して複合体を形成する工程と、
前記複合体と接するように集電体を形成する工程と、を備えた電池の製造方法。 - 請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の電池を備えた電子機器。
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JP (1) | JP2018092803A (ja) |
-
2016
- 2016-12-05 JP JP2016235641A patent/JP2018092803A/ja active Pending
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