JP7310118B2 - 正極材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は正極材の製造方法に関する
スマートフォンなどの携帯型情報端末には、電源として充放電可能な二次電池が用いられている。とりわけ、リチウム二次電池は、他の二次電池に比べて、高いエネルギー密度が得られることから、上述した携帯型情報端末の小型化に寄与している。
リチウム二次電池の構造としては、正極と負極との間に、非水系の電解液が保持された構造や、固体電解質が挟持された構造が知られている。固体電解質は電解液に比べて正極と接触する界面の面積を増やすことが難しいことから、界面抵抗を下げる工夫が求められている。
例えば、特許文献1には、ニオブ酸リチウムまたはチタン酸リチウム(Li4Ti512)を含有する被覆層を活物質の表面に形成して正極活物質を作製する正極活物質作製工程と、導電剤と硫化物またはLi3.25Ge0.250.754とを含む混合物を作製する混合物作製工程と、正極活物質の表面の70%以上に、正極活物質作製工程で形成した被覆層が配置されている状態が維持されるように、少なくとも、被覆層が形成されている正極活物質と、混合物とを10N(ニュートン)以下のせん断力にて混合する混合工程とを有する、リチウムイオン二次電池用電極体の製造方法が開示されている。
上記特許文献1のリチウムイオン二次電池用電極体の製造方法によれば、正極活物質の表面の70%以上に第1固体電解質として機能する被覆層が形成されることから、正極活物質と被覆層との界面抵抗を低減することができるとしている。つまり、このような電極体を正極として用いれば、性能が向上したリチウムイオン二次電池を提供することができるとしている。
特開2011-159639号公報
しかしながら、上記特許文献1のリチウムイオン二次電池用電極体の製造方法では、第2固体電解質として機能する硫化物またはLi3.25Ge0.250.754の他に、電子伝導性を向上させる導電剤を含むように混合物を作製している。したがって、被覆層が形成されている正極活物質と混合物とを混合して得られた電極体における正極活物質の質量割合は、実施例によれば10質量%程度となっているため、当該電極体を用いたリチウムイオン二次電池における放電容量の体積密度を向上させることが難しい。それゆえに、放電容量の体積密度、すなわちエネルギー密度を改善するために、導電剤の量を減らして正極活物質の量を増やすと電極体としての電気抵抗が上昇してしまうという課題があった。
本願の正極材は、粒子状のコバルト酸リチウムを含む基材と、基材の表面に設けられた、酸素とコバルトとのモル[mol]比が下記式(1)を満たす物質と、を備えたことを特徴とする。
1≦酸素[mol]/コバルト[mol]<2 ・・・(1)
上記の正極材において、上記物質のラマンシフトが、670cm-1以上700cm-1以下であることを特徴とする。
また、上記の正極材において、上記物質は、基材の表面から基材の厚み方向に10nm以下の範囲に存在していることが好ましい。
本願の二次電池は、上記に記載の正極材を用いた正極と、負極と、正極と負極との間に設けられた固体電解質と、を備えたことを特徴とする。
本願の他の二次電池は、上記に記載の正極材を用いた正極と、負極と、正極と負極との間に保持された電解液と、を備えたことを特徴とする。
本願の電子機器は、電源として上記に記載の二次電池を備えたことを特徴とする。
本願の正極材の製造方法は、粒子状のコバルト酸リチウムを用いて基材を形成する工程と、酸素を還元する還元雰囲気下で基材を加熱して、基材に還元処理を施す工程と、を備えたことを特徴とする。
上記の正極材の製造方法において、基材を形成する工程は、粒子状のコバルト酸リチウムと、結着剤と、溶媒とを混ぜ合わせた混合物を成形してシートとする工程と、混合物のシートを加熱して、溶媒を除去する工程と、加熱されたシートを成形し、成形物を得る工程と、成形物を焼成して基材を得る工程と、を含むことが好ましい。
また、上記の正極材の製造方法において、基材を形成する工程は、所定量の粒子状のコバルト酸リチウムを成形型に充填し、加圧成形して成形物を得る工程と、成形物を焼成して基材を得る工程と、を含むとしてもよい。
また、上記の正極材の製造方法において、基材に還元処理を施す工程の還元雰囲気は、不活性ガスとグラファイトとを含むことが好ましい。
また、上記の正極材の製造方法において、基材に還元処理を施す工程の還元雰囲気は、不活性ガスと水素とを含むとしてもよい。
第1実施形態の二次電池としてのリチウム電池の構成を示す概略斜視図。 第1実施形態の二次電池としてのリチウム電池の構造を示す概略断面図。 第1実施形態の二次電池としてのリチウム電池の製造方法を示すフローチャート。 第1実施形態のリチウム電池の製造方法における工程を示す概略図。 第1実施形態のリチウム電池の製造方法における工程を示す概略図。 第1実施形態のリチウム電池の製造方法における工程を示す概略図。 ラマン分光法を用いた正極材の分析結果を示すグラフ。 第2実施形態の二次電池としてのリチウム電池の構造を示す概略断面図。 第2実施形態の二次電池としてのリチウム電池の製造方法を示すフローチャート。 第2実施形態の二次電池としてのリチウム電池の製造方法における工程を示す概略図。 第2実施形態の二次電池としてのリチウム電池の製造方法における工程を示す概略図。 第3実施形態の二次電池としてのリチウム電池の構造を示す概略断面図。 第3実施形態の二次電池としてのリチウム電池の製造方法を示すフローチャート。 第3実施形態の二次電池としてのリチウム電池の製造方法における工程を示す概略図。 第1実施形態のリチウム電池の充放電特性を示すグラフ。 第4実施形態の電子機器としてのウェアラブル機器の構成を示す斜視図。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、説明する部分が認識可能な程度の大きさとなるように、適宜拡大または縮小して表示している。
(第1実施形態)
<二次電池>
まず、本実施形態の正極材を用いた二次電池としてリチウム電池を例に挙げ、図1及び図2を参照して説明する。図1は第1実施形態の二次電池としてのリチウム電池の構成を示す概略斜視図、図2は第1実施形態の二次電池としてのリチウム電池の構造を示す概略断面図である。
図1に示すように、本実施形態の二次電池としてのリチウム電池100は、正極材としての正極10と、正極10に対して順に積層された電解質20と、負極30と、を有している。また、正極10に接する集電体41と、負極30に接する集電体42とを有している。正極10、電解質20、負極30は、いずれも固相で構成されていることから、本実施形態のリチウム電池100は、充放電可能な全固体二次電池である。
本実施形態のリチウム電池100は、例えば円盤状であって、外形の大きさは、直径が例えば10mmφ、厚みが例えばおおよそ0.3mmである。小型、薄型であると共に、充放電可能であって全固体であることから、スマートフォンなどの携帯情報端末の電源として好適に用いることができる。リチウム電池100は、成形が可能ならば大きさや厚みはこの値に限定されない。本実施形態のように外形の大きさが10mmφの場合の正極10から負極30までの厚みは、薄い場合は成形性の観点から0.1mm程度、厚い場合はリチウムイオン伝導性の観点から見積もられ、1mm程度までで、あまり厚いと活物質の利用効率を下げてしまう。なお、リチウム電池100の形状は円盤状であることに限定されず、多角形の盤状であってもよい。以降、各構成について詳しく説明する。
[正極]
図2に示すように、正極10は、正極活物質11pを含む基材11を有している。正極活物質11pは粒子状であって、正極活物質11p同士が接触した状態で成形されて基材11が構成されている。なお、図2では、図示の都合上、粒子状の正極活物質11pを模式的に球状として示したが、実際の正極活物質11pの外形は必ずしも球状ではなく、それぞれ不定形である。
本実施形態の正極活物質11pは、リチウム複合金属酸化物である、コバルト酸リチウム(LiCoO2)が用いられている。以降、コバルト酸リチウムを略して、LCOと称する。正極活物質11pの粒子同士を接触させて電子伝導性を発揮させる観点から、正極活物質11pの粒子径は、例えばメジアン径d50で500nm(ナノメートル)以上10μm(マイクロメートル)未満とすることが好ましい。
基材11は、このような粒子状の正極活物質11pの集合体であることから、基材11の内部において、隣り合う正極活物質11pの粒子の間に空隙を有している。空隙は基材11の内部において連通した状態となっている。このように内部に空隙を有する基材11は多孔質である。基材11に占める空隙の程度は、嵩密度空隙率として表すことができる。本実施形態の基材11の嵩密度空隙率は、例えば50%未満である。言い換えれば、嵩密度空隙率を50%未満とすることで、基材11に占める粒子状の正極活物質11pの体積密度を50%以上としている。
また、本実施形態の正極10は、基材11の表面に設けられた、酸素とコバルトとのモル[mol]比が下記式(1)を満たす物質11aを備えている。
1≦酸素[mol]/コバルト[mol]<2 ・・・(1)
つまり、物質11aは、酸化コバルト(2価)(CoO)よりもコバルトに対する酸素のモル比が小さい、例えば、Co34などのコバルトの酸化物である。このような正極10の厚みは、例えば150μm~200μmである。正極材としての正極10の製造方法の詳細については、後述するリチウム電池100の製造方法において説明する。
[負極]
負極30に含まれる負極活物質としては、例えば、Nb25、V25、Ti22、In25、ZnO、SnO2、NiO、ITO(Snが添加された酸化インジウム)、AZO(アルミニウムが添加された酸化亜鉛)、GZO(ガリウムが添加された酸化亜鉛)、ATO(アンチモンが添加された酸化スズ)、FTO(フッ素が添加された酸化スズ)、TiO2のアナターゼ相、Li4Ti512、Li2Ti37などのTiを含むリチウム複合金属酸化物、Li、Si、Sn、Si-Mn、Si-Co、Si-Ni、In、Auなどの金属及び合金、炭素材料、炭素材料の層間にリチウムイオンが挿入された物質などを用いることができる。
上記負極活物質を用いた負極30の形成方法は、有機金属化合物の加水分解反応などを伴う所謂ゾルゲル法や有機金属熱分解法などの溶液プロセスのほか、適当な金属化合物とガス雰囲気におけるCVD法、ALD法、固体負極活物質のスラリーを使用したグリーンシート法やスクリーン印刷法、エアロゾルデポジション法、適切なターゲットとガス雰囲気を用いたスパッタリング法、PLD法、真空蒸着法、めっき法、溶射法など、いずれを用いてもよい。
[電解質]
正極10と負極30との間に設けられた電解質20は、固体電解質で構成されている。固体電解質としては、酸化物、硫化物、ハロゲン化物、窒化物、水素化物、ホウ化物などからなる結晶質または非晶質を用いることができる。
酸化物結晶質の一例としては、Li0.35La0.55TiO3、Li0.2La0.27NbO3、及びこれら結晶の元素の一部をN、F、Al、Sr、Sc、Ta、Sb、ランタノイド元素などで置換したペロブスカイト型結晶またはペロブスカイト類似結晶、Li7La3Zr212、Li5La3Nb212、Li5BaLa2TaO12、及びこれら結晶の元素の一部をN、F、Al、Sr、Sc、Ta、Sb、ランタノイド元素などで置換したガーネット型結晶またはガーネット類似型結晶、Li1.3Ti1.7Al0.3(PO43、Li1.4Al0.4Ti1.6(PO43、Li1.4Al0.4Ti1.4Ge0.2(PO43、及びこれら結晶の一部をN、F、Al、Sr、Sc、Ta、Sb、ランタノイド元素などで置換したNASICON型結晶、Li14ZnGe416、などのLISICON型結晶、Li3.40.6Si0.44、Li3.60.4Ge0.64、Li2+x1-xx3、などのその他の結晶質を挙げることができる。
硫化物結晶質の一例としては、Li10GeP212、Li9.6312、Li9.54Si1.741.4411.7Cl0.3、Li3PS4などを挙げることができる。
また。その他の非晶質の一例としては、Li3BO3、Li3BO3-Li4SiO4、Li3BO3-Li3PO4、Li3BO3-Li2SO4、Li2CO3-Li3BO3、Li2O-TiO2、La23-Li2O-TiO2、LiNbO3、LiSO4、Li4SiO4、Li3PO4-Li4SiO4、Li4GeO4-Li3VO4、Li4SiO4-Li3VO4、Li4GeO4-Zn2GeO2、Li4SiO4-LiMoO4、Li4SiO4-Li4ZrO4、SiO2-P25-Li2O、SiO2-P25-LiCl、Li2O-LiCl-B23、LiI、LiI-CaI2、LiI-CaO、LiAlCl4、LiAlF4、LiF-Al23、LiBr-Al23、LiI-Al23、Li2.88PO3.730.14、Li3NI2、Li3N-LiI-LiOH、Li3N-LiCl、Li6NBr3、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-P25などを挙げることができる。
本実施形態では、電解質20としてLi2+x1-xx3(以降、LCBOと称す)を用いている。LCBOからなる電解質20の厚みは、例えば2μmである。
上記固体電解質を用いた電解質20の形成方法は、有機金属化合物の加水分解反応などを伴う所謂ゾルゲル法や有機金属熱分解法などの溶液プロセスのほか、適当な金属化合物とガス雰囲気におけるCVD法、ALD法、固体電解質粒子のスラリーを使用したグリーンシート法やスクリーン印刷法、エアロゾルデポジション法、適切なターゲットとガス雰囲気を用いたスパッタリング法、PLD法、融液や溶液を用いたフラックス法など、いずれを用いてもよい。
正極10と負極30との間に電解質20を挟むことによって電子伝導性が与えられた正極10と負極30とが電気的に短絡せずに、正極10と負極30との間で電荷(リチウムイオンや電子)の伝導が行われる構成となっている。
[集電体]
集電体41,42は、例えば、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、及びパラジウム(Pd)の金属群から選ばれる1種の金属(金属単体)や、該金属群から選ばれる2種以上の金属からなる合金などが用いられている。
本実施形態では、正極10と接する集電体41として、厚みが20μmのアルミニウム箔を用いている。また、負極30と接する集電体42として、厚みが20μmの銅箔を用いている。なお、リチウム電池100は、必ずしも一対の集電体41,42を備えていなくてもよく、一対の集電体41,42のうち一方の集電体を備えていればよい。例えば、複数のリチウム電池100を積層し電気的に直列に接続させて用いる場合、集電体41だけを備える構成としてもよい。
<リチウム電池の製造方法>
次に、本実施形態の正極材としての正極10の製造方法を含むリチウム電池100の製造方法について、図3~図6を参照して説明する。図3は第1実施形態の二次電池としてのリチウム電池の製造方法を示すフローチャート、図4~図6は第1実施形態のリチウム電池の製造方法における工程を示す概略図である。
図3に示すように、本実施形態のリチウム電池100の製造方法は、正極活物質のシートを形成する工程(ステップS1)と、正極活物質のシートを用いて成形物を形成する工程(ステップS2)と、成形物を焼成する工程(ステップS3)と、焼成された成形物に還元処理を施す工程(ステップS4)とを備えている。ここまでのステップS1~ステップS4が正極材としての正極10の製造方法を示す工程である。そして、得られた正極10に対して、電解質を形成する工程(ステップS5)と、負極を形成する工程(ステップS6)と、集電体を形成する工程(ステップS7)とを備えている。
ステップS1の正極活物質のシート形成工程では、まず、粒子状の正極活物質11pと、溶媒と、結着剤とを混合して混合物としてのスラリー10mを用意する。スラリー10mにおける正極活物質11pの質量割合は40%~50%、結着剤の質量割合は例えば10%、残りは溶媒である。次に、スラリー10mを用いてシートを形成する。具体的には、図4に示すように、例えばロールコーター400を用いて、フィルムなどの基材406上に、スラリー10mを一定の厚みで塗布してシート10sとする。ロールコーター400は、塗布ローラー401とドクターローラー402とを有している。ドクターローラー402に対して上方から接するようにスキージ403が設けられている。塗布ローラー401の下方において対向する位置に搬送ローラー404が設けられており、塗布ローラー401と搬送ローラー404との間に基材406が載置されたステージ405を挿入することによりステージ405が一定の方向に搬送される。ステージ405の搬送方向に隙間を置いて配置された塗布ローラー401とドクターローラー402との間においてスキージ403が設けられた側にスラリー10mが投入される。上記隙間からスラリー10mを下方に押し出すように、塗布ローラー401とドクターローラー402とを回転させて、塗布ローラー401の表面に一定の厚みのスラリー10mを塗工する。そして、同時に搬送ローラー404を回転させ、スラリー10mが塗工された塗布ローラー401に基材406が接するようにステージ405を搬送する。これにより、塗布ローラー401に塗工されたスラリー10mは基材406にシート状に転写され、シート10sとなる。このときのシート10sの厚みは例えば175μm~225μmである。なお、シート10sを形成する工程(ステップS1)では、焼成後に得られる正極10における正極活物質11pの体積密度が50%以上となるように、塗布ローラー401とドクターローラー402とによってスラリー10mを加圧して押し出して一定の厚みのシート10sとする。
次に、シート10sが形成された基材406を加熱することにより、シート10sから溶媒を除去して、シート10sを硬化させる。そして、ステップS2へ進む。
ステップS2の成形物の形成工程では、正極10の形状に対応させた抜き型を用いて、シート10sを型抜きすることにより、図5に示すように、円盤状の成形物10fを取り出す。1枚のシート10sからは複数の成形物10fを取り出すことができる。そして、ステップS3へ進む。
ステップS3の成形物の焼成工程では、成形物10fを例えば電気マッフル炉に入れて、正極活物質11pの融点未満の温度で焼成を行い、成形物10fを焼結する。焼成によって、結着剤が除去されると共に、正極活物質11p同士が接触した状態で焼結された基材11が得られる。焼成後に得られる基材11の厚みはおおよそ150μm~200μmである。そして、ステップS4へ進む。
ステップS4の還元処理工程では、ステップS3で得られた基材11を還元雰囲気下で加熱することにより基材11に還元処理を施す。具体的には、図6に示すように、例えば、坩堝80の中に、基材11をシート状のグラファイト90で挟んで収納する。坩堝80を不活性ガスとしてのアルゴン(Ar)ガスが満たされた電気炉内に入れて、例えば800℃で1時間から2時間程度加熱する。シート状のグラファイト90の大きさは、基材11よりも大きく、厚みは例えば800μmである。なお、酸素を還元する還元雰囲気は、不活性ガスとしてのアルゴン(Ar)ガスに体積割合で3%程度の水素(H2)ガスを含む還元雰囲気としてもよい。また、還元雰囲気に含まれる不活性ガスはアルゴン(Ar)ガスであることに限定されず、窒素(N2)ガスであってもよい。そして、ステップS5へ進む。
ステップS5の電解質の形成工程では、還元処理が施された基材11に電解質20を形成する。本実施形態では、スパッタリング法によりLCBOを成膜して電解質20とした。電解質20の厚みは例えば2μmである。そして、ステップS6へ進む。
ステップS6の負極の形成工程では、電解質20に積層して負極30を形成する。負極30の形成方法は、前述したように、溶液プロセスなど種々の方法を用いることができるが、本実施形態では、スパッタリング法により、電解質20に対して金属Liを成膜して負極30とした。負極30の厚みは、例えば20μmである。そして、ステップS7へ進む。
ステップS7の集電体の形成工程では、図2に示すように、正極10に接するように集電体41を形成する。また、負極30に接するように集電体42を形成する。本実施形態では、例えば厚みが20μmのアルミニウム箔を用い、形成面にアルミニウム箔を圧接させて配置することにより集電体41とした。また、例えば厚みが20μmの銅箔を用い、形成面に銅箔を圧接させて配置することにより集電体42とした。これにより、一対の集電体41,42の間に、正極10、電解質20、負極30が順に積層された積層体が挟持されたリチウム電池100が得られる。なお、ステップS4の後に、正極10に接するように集電体41を形成してもよい。
図7は、ラマン分光法を用いた正極材の分析結果を示すグラフである。詳しくは、図7において実線で示すグラフがLCOからなる正極活物質11pを含む基材11に対して、上述したように還元処理を施したLCOのラマンスペクトルを示すものであり、図7において破線で示すグラフが還元処理を施していないLCOのラマンスペクトルを示すものである。
図7に示すように、還元処理の有無に係らず、ラマンシフト(波数)が595cm-1においてLCOを示す相対強度のピークが表れている。また、還元処理がある場合には、ラマンシフトが670cm-1以上700cm-1以下において、コバルトの酸化物(CoxOy)を示す相対強度のピークが表れている。還元処理がない場合には、ラマンシフトが670cm-1以上700cm-1以下において、コバルトの酸化物(CoxOy)を示す相対強度のピークが表れていない。
つまり、ラマンシフトが670cm-1以上700cm-1以下における相対強度のピークは、還元処理によって基材11の表面に形成された物質11aの存在を示すものであって、物質11aは、酸素とコバルトとのモル[mol]比が下記式(1)を満たすコバルトの酸化物(CoxOy)である。
1≦酸素[mol]/コバルト[mol]<2 ・・・(1)
また、還元処理が施された基材11の表面をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、基材11の表面から厚み方向において10nm以下の範囲に上記のコバルトの酸化物(CoxOy)の存在を確認した。
上記第1実施形態の二次電池としてのリチウム電池100とその製造方法によれば、以下の効果が得られる。
(1)正極材としての正極10は、粒子状のコバルト酸リチウムを含む基材11と、基材11の表面に設けられ、酸素とコバルトとのモル[mol]比が下記式(1)を満たす物質11aと、を備えている。
1≦酸素[mol]/コバルト[mol]<2 ・・・(1)
上記式(1)で示される物質11aは、酸化コバルト(2価)(CoO)よりも酸素のモル比が小さいコバルトの酸化物(CoxOy)である。粒子状のコバルト酸リチウムを含む基材11の表面がコバルトの酸化物(CoxOy)により構成されることで、正極10の電気抵抗を低下させることができる。このような正極10を備えることによって、内部抵抗が従来よりも小さいリチウム電池100を提供することができる。
(2)上記式(1)で示される物質11aは、コバルト酸リチウムを含む基材11に酸素の還元雰囲気下で還元処理を施すことで得られる。したがって、多孔質な基材11の表面にムラなく物質11aを形成することができる。言い換えれば、内部抵抗が従来よりも小さいリチウム電池100を歩留りよく製造することができる。
(3)上記式(1)で示される物質11aは、基材11の表面から厚み方向において10nm以下の範囲に形成されている。したがって、正極10における正極活物質11pとしてのLCOの実質的な体積割合をそれほど低下させずに、正極10の電気抵抗を低くすることができる。
(4)基材11に物質11aを形成するための還元処理工程は、不活性ガスとしてのアルゴンガスとグラファイト90とを含む還元雰囲気となっている。したがって、不活性ガスとしてのアルゴンガスと水素ガスとを含む還元雰囲気とする場合にくらべて、基材11の還元処理を施す表面にグラファイト90を接触させて、その表面に物質11aを形成することができる。
(第2実施形態)
<他の二次電池>
次に、第2実施形態の二次電池について、上記第1実施形態と同様にリチウム電池を例に挙げ、図8を参照して説明する。図8は第2実施形態の二次電池としてのリチウム電池の構造を示す概略断面図である。第2実施形態のリチウム電池200は、上記第1実施形態のリチウム電池100に対して、正極材の構成を異ならせたものである。したがって、上記第1実施形態と同じ構成には、同じ符号を用いて、詳細な説明は省略する。
図8に示すように、本実施形態の二次電池としてのリチウム電池200は、正極材としての正極210と、正極210に対して順に積層された電解質20と、負極30と、を有している。また、正極210に接する集電体41と、負極30に接する集電体42とを有している。正極210、電解質20、負極30は、いずれも固相で構成されていることから、本実施形態のリチウム電池200もまた、充放電可能な全固体二次電池である。
本実施形態のリチウム電池200は、例えば円盤状であって、外形の大きさは例えば10mmφ、厚みは例えばおおよそ0.3mmである。なお、リチウム電池200の形状は、円盤状であることに限定されず、多角形の盤状であってもよい。
本実施形態のリチウム電池200は、上述したように上記第1実施形態のリチウム電池100に対して正極材としての正極210の構成を異ならせており、他の構成は同じであることから、以降、正極210の構成について説明する。
[正極]
図8に示すように、正極210は、粒子状の正極活物質11pを含む基材11を有している。粒子状の正極活物質11p同士が接触した状態で成形されて基材11が構成されている。正極活物質11pはコバルト酸リチウム(LCO)である。
正極活物質11pの粒子同士を接触させて電子伝導性を発揮させる観点から、正極活物質11pの粒子径は、例えばメジアン径d50で500nm(ナノメートル)以上10μm(マイクロメートル)未満とすることが好ましい。
基材11は、このような粒子状の正極活物質11pの集合体であることから、基材11の内部において、隣り合う正極活物質11pの粒子の間に空隙を有している。空隙は基材11の内部において連通した状態となっている。このように内部に空隙を有する基材11は多孔質である。基材11に占める空隙の程度は、嵩密度空隙率として表すことができる。本実施形態の基材11の嵩密度空隙率は、例えば50%未満である。言い換えれば、嵩密度空隙率を50%未満とすることで、基材11に占める粒子状の正極活物質11pの体積密度を50%以上としている。
また、本実施形態の正極210は、基材11の表面に形成され、酸素とコバルトとのモル[mol]比が下記式(1)を満たす物質11aを備えている。
1≦酸素[mol]/コバルト[mol]<2 ・・・(1)
つまり、物質11aは、酸化コバルト(2価)(CoO)よりも酸素のモル比が小さいコバルトの酸化物(CoxOy)である。
さらに、本実施形態の正極210は、多孔質な基材11の空隙に充填された第2電解質12を有している。第2電解質12は、上記第1実施形態において説明した固体電解質を用いることができる。本実施形態では、第2電解質12におけるイオン伝導性を考慮して、固体電解質として、リチウム複合金属酸化物であるLi6.6La3Zr1.3Sb0.5Ta0.212を用いた。このような正極210の厚みは、例えば150μm~200μmである。正極材としての正極210の製造方法の詳細については、後述するリチウム電池200の製造方法において説明する。
正極210に積層された電解質20は、上記第1実施形態と同様に、厚みが例えば2μmのLCBOからなる。電解質20に積層された負極30は、厚みが例えば20μmの金属Liからなる。正極210と接する集電体41は、厚みが例えば20μmのアルミニウム箔からなる。負極30に接する集電体42は、厚みが例えば20μmの銅箔からなる。なお、電解質20、負極30、集電体41,42の構成は、これに限定されるものではない。
<リチウム電池の製造方法>
次に、本実施形態の正極材としての正極210の製造方法を含むリチウム電池200の製造方法について、図9~図11を参照して説明する。図9は第2実施形態の二次電池としてのリチウム電池の製造方法を示すフローチャート、図10及び図11は第2実施形態の二次電池としてのリチウム電池の製造方法における工程を示す概略図である。
図9に示すように、本実施形態のリチウム電池200の製造方法は、正極活物質のシートを形成する工程(ステップS11)と、正極活物質のシートを用いて成形物を形成する工程(ステップS12)と、成形物を焼成する工程(ステップS13)と、焼成された成形物に還元処理を施す工程(ステップS14)と、還元処理された成形物に第2電解質前駆体液を充填する工程(ステップS15)と、焼成工程(ステップS16)と、研磨工程(ステップS17)とを備えている。ここまでのステップS11~ステップS17が正極材としての正極210の製造方法を示す工程である。そして、得られた正極210に対して、電解質を形成する工程(ステップS18)と、負極を形成する工程(ステップS19)と、集電体を形成する工程(ステップS20)とを備えている。
正極210の製造方法を示すステップS11~ステップS17のうち、ステップS11~ステップS14までは、上記第1実施形態の正極10の製造方法におけるステップS1~ステップS4と同じである。また、ステップS18~ステップS20は、上記第1実施形態のリチウム電池100の製造方法におけるステップS5~ステップS7と同じである。したがって、以降、本実施形態の特徴部分である、ステップS15~ステップS17について説明する。
ステップS15の第2電解質前駆体液の充填工程では、まず、第2電解質前駆体液を用意する。本実施形態では、上述したように第2電解質12としてLi6.6La3Zr1.3Sb0.5Ta0.212を用いている。そこで、第2電解質12を構成する金属元素である、Li、La、Zr、Sb、Taを含む原料溶液を金属元素ごとに用意し、5種の原料溶液を金属元素のモル比に応じて濃度を調整して混合したゾルゲル溶液12SGを準備した。なお、ゾルゲル溶液12SGには、必要に応じて、Triton X-100(ダウケミカル社、登録商標)などの非イオン系界面活性剤やポリビニルブチラール(PVB)などの焼結助剤、安定化のためのキレート剤などを添加してもよい。
そして、図10に示すように、ステップS14の還元処理が終了した基材11を坩堝80の底部に配置された支持体81上に載置した。準備したゾルゲル溶液12SGを所定量秤量して、坩堝80の支持体81上に載置された基材11に塗布した。基材11は、粒子状の正極活物質11pを含むスラリー10mを用いて加圧成形して形成されたシート10sを加熱して溶媒を除いた後に、抜き型で成形し焼成して得られた多孔質体である。したがって、塗布されたゾルゲル溶液12SGは、多孔質な基材11に浸透して、基材11内の空隙に充填される。そして、ステップS16に進む。
ステップS16の焼成工程では、ゾルゲル溶液12SGが充填された基材11に正極活物質11pの融点未満の温度で熱処理を施して、ゾルゲル溶液12SGを固化させる。これにより、物質11aが形成された基材11の表面と内部の空隙とが第2電解質12で覆われた正極210が得られる。そして、ステップS17へ進む。
ステップS17の研磨工程では、図11に示すように、第2電解質12で覆われた基材11の一方の表面に研磨処理を施して、研磨面210aに粒子状の正極活物質11pの一部を露出させる。ステップS17が終了した時点の正極210の厚みはおよそ160μmである。そして、ステップS18へ進む。
ステップS18の電解質の形成工程では、正極210に電解質20を形成する。具体的には、図11に示した研磨面210aと反対側の表面210bに、スパッタリング法によりLCBOを成膜して電解質20とする。電解質20の厚みは例えば2μmである。そして、ステップS19へ進む。
ステップS19の負極の形成工程では、電解質20に積層して負極30を形成する。負極30の形成方法は、前述したように、溶液プロセスなど種々の方法を用いることができるが、本実施形態では、スパッタリング法により、電解質20に対して金属Liを成膜して負極30とした。負極30の厚みは、例えば20μmである。そして、ステップS20へ進む。
ステップS20の集電体の形成工程では、図8に示すように、正極210に接するように集電体41を形成する。また、負極30に接するように集電体42を形成する。本実施形態では、例えば厚みが20μmのアルミニウム箔を用い、図11に示した正極210の研磨面210aにアルミニウム箔を圧接させて配置することにより集電体41とした。また、例えば厚みが20μmの銅箔を用い、負極30に銅箔を圧接させて配置することにより集電体42とした。これにより、一対の集電体41,42の間に、正極210、電解質20、負極30が順に積層された積層体が挟持されたリチウム電池200が得られる。
上記第2実施形態の二次電池としてのリチウム電池200とその製造方法によれば、上記第1実施形態の効果(1)~(4)と同様な効果に加えて以下の効果が得られる。
(5)正極210の基材11における内部の空隙には、第2電解質12が充填されていることから、正極活物質11pと第2電解質12とが接触することで活物質としてのLiイオンが伝導する伝導路が上記第1実施形態のリチウム電池100よりも増えて内部抵抗をより小さくすることができる。また、第2電解質12は活物質としてのLiを含むことから、上記第1実施形態のリチウム電池100よりもエネルギー密度が向上したリチウム電池200を提供できる。
(6)正極210の第2電解質12は、多孔質な基材11にゾルゲル溶液12SGを充填して焼成することにより形成される。したがって、多孔質な基材11にムラなく第2電解質12を形成できる。
(第3実施形態)
<他の二次電池>
次に、第3実施形態の二次電池について、上記第1実施形態と同様にリチウム電池を例に挙げ、図12を参照して説明する。図12は第3実施形態の二次電池としてのリチウム電池の構造を示す概略断面図である。第3実施形態のリチウム電池300は、上記第1実施形態のリチウム電池100に対して、電解質として電解液を用いたものである。したがって、上記第1実施形態と同じ構成には、同じ符号を用いて、詳細な説明は省略する。
図12に示すように、本実施形態の二次電池としてのリチウム電池300は、一対の集電体41,42の間に挟持された、正極310と、セパレーター320と、負極330とを有している。また、リチウム電池300は、集電体41とセパレーター320との間に保持された電解液312を有している。正極310及びセパレーター320は多孔質であることから、電解液312は、正極310とセパレーター320とに含浸されている。
本実施形態のリチウム電池300は、例えば円盤状であって、外形の大きさは例えば10mmφ、厚みは例えばおおよそ0.3mmである。なお、リチウム電池300の外形は、円盤状であることに限定されず、多角形の盤状であってもよい。以降、リチウム電池300の各構成について説明する。
[正極]
図12に示すように、正極310は、粒子状の正極活物質11pを含む基材11を有している。粒子状の正極活物質11p同士が接触した状態で成形されて基材11が構成されている。正極活物質11pはコバルト酸リチウム(LCO)である。
正極活物質11pの粒子同士を接触させて電子伝導性を発揮させる観点から、正極活物質11pの粒子径は、例えばメジアン径d50で500nm(ナノメートル)以上10μm(マイクロメートル)未満とすることが好ましい。
基材11は、このような粒子状の正極活物質11pの集合体であることから、基材11の内部において、隣り合う正極活物質11pの粒子の間に空隙を有している。空隙は基材11の内部において連通した状態となっている。このように内部に空隙を有する基材11は多孔質である。基材11に占める空隙の程度は、嵩密度空隙率として表すことができる。本実施形態の基材11の嵩密度空隙率は、例えば50%未満である。言い換えれば、嵩密度空隙率を50%未満とすることで、基材11に占める粒子状の正極活物質11pの体積密度を50%以上としている。
また、本実施形態の正極310は、基材11の表面に形成され、酸素とコバルトとのモル[mol]比が下記式(1)を満たす物質11aを備えている。
1≦酸素[mol]/コバルト[mol]<2 ・・・(1)
つまり、物質11aは、酸化コバルト(2価)(CoO)よりも酸素のモル比が小さいコバルトの酸化物(CoxOy)である。このような正極310の厚みは、例えば150μm~200μmである。
[負極]
負極330に含まれる負極活物質としては、上記第1実施形態で説明したように、例えば、Nb25、V25、Ti22、In25、ZnO、SnO2、NiO、ITO(Snが添加された酸化インジウム)、AZO(アルミニウムが添加された酸化亜鉛)、GZO(ガリウムが添加された酸化亜鉛)、ATO(アンチモンが添加された酸化スズ)、FTO(フッ素が添加された酸化スズ)、TiO2のアナターゼ相、Li4Ti512、Li2Ti37などのTiを含むリチウム複合金属酸化物、Li、Si、Sn、Si-Mn、Si-Co、Si-Ni、In、Auなどの金属及び合金、炭素材料、炭素材料の層間にリチウムイオンが挿入された物質などを用いることができる。
上記負極活物質を用いた負極330の形成方法は、有機金属化合物の加水分解反応などを伴う所謂ゾルゲル法や有機金属熱分解法などの溶液プロセスのほか、適当な金属化合物とガス雰囲気におけるCVD法、ALD法、固体負極活物質のスラリーを使用したグリーンシート法やスクリーン印刷法、エアロゾルデポジション法、適切なターゲットとガス雰囲気を用いたスパッタリング法、PLD法、真空蒸着法、めっき法、溶射法など、いずれを用いてもよい。
本実施形態では、負極330として、厚みがおよそ100μmのリチウム金属箔を用いた。
[セパレーター]
セパレーター320は、多孔質な材料で構成されている。多孔質な材料としては、例えば、不織布や多孔性の樹脂フィルムなどが挙げられる。本実施形態では、厚みが15μmの多孔性ポリプロピレンフィルム(旭化成株式会社製のセルガード#2500;登録商標)を用いた。
[電解液]
電解液312は、活物質であるリチウムを含む化合物を非水系の溶媒に溶解させた溶液である。本実施形態では、電解液312として、エチレンカーボネートと炭酸ジエチルとを体積比1:1で混合した溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/L(リットル)の濃度で溶解させたものを用いた。
[集電体]
正極310と接する集電体41は、厚みが例えば20μmのアルミニウム箔からなる。負極330に接する集電体42は、厚みが例えば20μmの銅箔からなる。なお、集電体41,42の構成材料はこれに限定されるものではなく、上記第1実施形態で説明したように、Au(金)などの金属や、2種以上の金属からなる合金を用いてもよい。
リチウム電池300は、電解質として電解液312を用いることから、例えば、ステンレスなどの電池ケースに収納され封止されて用いられる。
<リチウム電池の製造方法>
次に、本実施形態のリチウム電池300の製造方法について、図13、図14を参照して説明する。図13は第3実施形態の二次電池としてのリチウム電池の製造方法を示すフローチャート、図14は第3実施形態の二次電池としてのリチウム電池の製造方法における工程を示す概略図である。
図13に示すように、本実施形態のリチウム電池300の製造方法は、正極活物質のシートを形成する工程(ステップS21)と、正極活物質のシートを用いて成形物を形成する工程(ステップS22)と、成形物を焼成する工程(ステップS23)と、焼成された成形物に還元処理を施す工程(ステップS24)とを備えている。ここまでのステップS21~ステップS24が正極材としての正極310の製造方法を示す工程である。そして、得られた正極310に対して、正極側の集電体を形成する工程(ステップS25)と、集電体が形成された正極310にセパレーターを設置する工程(ステップS26)と、電解液を充填する工程(ステップS27)と、負極を形成する工程(ステップS28)と、負極側の集電体を形成する工程(ステップS29)とを備えている。
正極310の製造方法を示すステップS21~ステップS24までは、上記第1実施形態の正極10の製造方法におけるステップS1~ステップS4と同じである。したがって、以降、本実施形態の特徴部分である、ステップS25~ステップS29について説明する。
ステップS25の集電体の形成工程では、ステップS24で還元処理が施された基材11の一方の表面に正極側の集電体41を形成する。具体的には、基材11の一方の表面に、厚みが20μmのアルミニウム箔を圧接して集電体41とする。そして、ステップS26へ進む。
ステップS26のセパレーターの設置工程では、集電体41が形成された基材11の一方の表面と反対側の表面にセパレーター320を設置する。そして、ステップS27へ進む。
ステップS27の電解液の充填工程では、図14に示すように、セパレーター320が上方に向くように正極310を配置する。そして、例えば、秤量された電解液312が収容されたピペットPのノズルからセパレーター320上に所定量の電解液312を滴下する。前述したようにセパレーター320及び正極310は多孔質であることから、滴下された電解液312はセパレーター320を介して正極310に充填される。そして、ステップS28へ進む。
ステップS28の負極の形成工程では、厚みが100μmのリチウム金属箔をセパレーター320に圧接することにより負極330を形成する。そして、ステップS29へ進む。
ステップS29の集電体の形成工程では、厚みが20μmの銅箔を負極330に圧接することにより負極側の集電体42を形成する。これにより、リチウム電池300ができあがる。なお、リチウム電池300は前述したように電池ケースに収容され封止されて用いられる。
上記第3実施形態の二次電池としてのリチウム電池300とその製造方法によれば、上記第1実施形態の効果(1)~(4)と同様な効果に加えて、以下の効果が得られる。
(7)リチウム電池300は、電解質として電解液312を用いていることから、固体電解質を用いる場合に比べて、正極310における正極活物質11pと電解液312との間、及び負極330と電解液312との間において、リチウムイオンや電子が伝導する界面を十分に確保できる。すなわち、高いエネルギー密度を有すると共に、内部抵抗がより小さいリチウム電池300を提供あるいは製造することができる。
<実施例と比較例>
次に、上記第1実施形態から上記第3実施形態のリチウム電池の正極として用いられた正極材の実施例と比較例とを挙げて、具体的な効果について説明する。
(実施例1)
実施例1の正極材は、上記第1実施形態のリチウム電池100の正極10として用いられたものである。具体的には、上記第1実施形態のリチウム電池100の製造方法におけるステップS1~ステップS4の工程を経て得られた正極材であって、LCOからなる正極活物質11pを含む基材11を還元処理することにより、基材11の表面に酸素とコバルトとのモル比が上述した式(1)を満たすコバルトの酸化物(CoxOy)からなる物質11aを形成した。実施例1における還元処理の条件は、グリーンシート法で形成された基材11をグラファイト90で挟み、アルゴン(Ar)ガスを含む還元雰囲気下で、800℃で2時間、加熱処理を施した。実施例1の正極材の厚みは160μmである。
(実施例2)
実施例2の正極材は、実施例1の正極材に対して、還元処理における加熱時間を1時間としたものであり、他の構成は実施例1の正極材と同じである。
(実施例3)
実施例3の正極材は、上記第2実施形態のリチウム電池200の正極210として用いられたものである。具体的には、上記第2実施形態のリチウム電池200の製造方法におけるステップS11~ステップS17の工程を経て得られた正極材であって、LCOからなる正極活物質11pを含む基材11を還元処理することにより、基材11の表面に酸素とコバルトとのモル比が上述した式(1)を満たすコバルトの酸化物(CoxOy)からなる物質11aを形成した。実施例3における還元処理の条件は、グリーンシート法で形成された基材11をグラファイト90で挟み、アルゴン(Ar)ガスを含む還元雰囲気下で、800℃で2時間、加熱処理を施した。また、ステップS15の第2電解質前駆体液の充填工程では、第2電解質12としてのLi6.6La3Zr1.3Sb0.5Ta0.212を形成する原料として、下記のゾルゲル溶液12SGを用いた。まず原料溶液として、LiNO3、La(NO33、Zr(OC494、Sb(OC493、Ta(OC255をそれぞれブトキシエタノールに溶解して質量モル濃度1.0mol/kgとしたものを調製した。続いて、調整によって得られた原料溶液としての、LiNO3溶液を6.6mmol(ミリモル)、La(NO33溶液を3mmol、Zr(OC494溶液を1.3mmol、Sb(OC493溶液を0.5mmol、およびTa(OC255溶液を0.2mmol、それぞれ計りとり、混合したものをゾルゲル溶液12SGとした。ステップS15でゾルゲル溶液12SGを基材11に充填後、ステップS16の焼成工程において、1000℃で8時間焼成した。さらに、ステップS17の研磨工程で、焼成後の基材11に研磨処理を施した。研磨処理後の実施例3の正極材の厚みは、およそ160μmである。
(実施例4)
実施例4の正極材は、上記第3実施形態のリチウム電池300の正極310として用いられ、電解液312が充填されたものである。具体的には、上記第3実施形態のリチウム電池300の製造方法におけるステップS21~ステップS25の工程を経て得られた正極材であって、LCOからなる正極活物質11pを含む基材11を還元処理することにより、基材11の表面に酸素とコバルトとのモル比が上述した式(1)を満たすコバルトの酸化物(CoxOy)からなる物質11aを形成した。実施例4における還元処理の条件は、グリーンシート法で形成された基材11をグラファイト90で挟み、アルゴン(Ar)ガスを含む還元雰囲気下で、800℃で2時間、加熱処理を施した。また、ステップS25で基材11に集電体41を形成した後に、セパレーター320を設置せずに、電解液312を充填したものである。電解液312は、上述したように、エチレンカーボネートと炭酸ジエチルとを体積比1:1で混合した溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/L(リットル)の濃度で溶解させたものである。電解液312を充填した後の実施例4の正極材の厚みはおよそ160μmである。
(比較例1)
比較例1の正極材は、実施例1の正極材に対して、ステップS4の還元処理を行っていないものである。他の構成は、実施例1の正極材と同じである。
[実施例及び比較例の正極材の評価]
実施例1~実施例4、及び比較例1の正極材の電気抵抗を測定して評価した。電気抵抗の測定方法としては、実施例1~実施例4、及び比較例1の正極材において、基材の両面に金(Au)をスパッタして電極とし、電極間における電気抵抗を測定した。測定結果を以下の表1に示す。
電気抵抗を以下の通り、A、B、Cの3つにランク分けした。
A;100Ω・cm2未満
B;100Ω・cm2以上1000Ω・cm2未満
C;1000Ω・cm2以上
Figure 0007310118000001
実施例1~実施例4の還元処理における還元雰囲気は、上述したように、アルゴン(Ar)ガスとグラファイト90(つまり炭素(C))とを含むものである。
実施例1と実施例2の正極材における基材11内の空隙には、何も充填されていないが、アルゴン(Ar)ガスを含む還元雰囲気下で還元処理が行われているため、Arが含まれている可能性がある。一方で、実施例3の正極材における基材11内の空隙にはゾルゲル法により固体電解質であるLi6.6La3Zr1.3Sb0.5Ta0.212が形成されている。また、実施例4の正極材における基材11内の空隙には、電解液312が充填されている。
上記表1に示すように、還元処理における加熱時間が2H(時間)の実施例1、実施例3、実施例4の正極材の電気抵抗は、いずれもAランクの100Ω・cm2未満であった。還元処理における加熱時間が1H(時間)の実施例2の正極材の電気抵抗は、Bランクの100Ω・cm2以上1000Ω・cm2未満であった。これに対して、還元処理を施しておらず、基材11内の空隙には何も充填されていない比較例1の正極材の電気抵抗は、Cランクの1000Ω・cm2以上であった。リチウム電池の内部抵抗を小さくして優れた充放電特性を得るには、正極材の電気抵抗が、Bランクと同等もしくはBランクよりも低いAランクであることが好ましい。
図15は第1実施形態のリチウム電池の充放電特性を示すグラフである。
具体的には、図15は、正極10として実施例1の正極材を用いた上記第1実施形態のリチウム電池100において、25℃で、充放電電流を0.05Cとして、下限放電電圧を3.0V、上限充電電圧を4.0Vとし、充電、放電の各ステップの上限時間を20時間として、充放電における容量密度(mAh/g)の変化を示す充放電グラフである。
図15に示すように、正極10として電気抵抗がAランクの100Ω・cm2未満である正極材を用いたリチウム電池100は、速やかに充電が完了し、20時間の放電後も、100[mAh/g]の容量密度が維持されている優れた充放電特性を有する。
実施例1~実施例4に示すように、基材11に酸素の還元処理を施すことによって、基材11の表面から基材11の厚み方向において10nm以下の範囲に、コバルトに対する酸素のモル比が2未満のコバルトの酸化物(CoxOy)が形成されて、正極材の電気抵抗が低下することが判明した。このような正極材を正極10として用いれば、図15に示すように、優れた充放電特性を有するリチウム電池100を提供できる。一方で、還元処理の時間を2時間よりも長くすれば、基材11の表面から10nmを超えて上記のコバルトの酸化物(CoxOy)を形成可能であるが、上記のコバルトの酸化物(CoxOy)はリチウムを含まないため、充放電特性に影響を及ぼすことが考えられる。したがって、速やかな充放電を可能とするには、上記のコバルトの酸化物(CoxOy)の形成範囲を、基材11の表面から厚み方向に10nm以下とすることが好ましい。
なお、比較例1の正極材を用いたリチウム電池を製作して、充放電特性を測定しようとしたが、比較例1の正極材の電気抵抗が高く、充電が行われず、放電時に起電力が得られなかった。
(第4実施形態)
<電子機器>
次に、本実施形態の電子機器について、ウェアラブル機器を例に挙げて説明する。図16は第4実施形態の電子機器としてのウェアラブル機器の構成を示す斜視図である。
図16に示すように、本実施形態の電子機器としてのウェアラブル機器500は、人体の例えば手首WRに腕時計のように装着され、人体に係る情報を入手可能な情報機器であって、バンド501と、センサー502と、表示部503と、処理部504と、電池505とを備えている。
バンド501は、装着時に手首WRに密着するように、可撓性の例えばゴムなどの樹脂が用いられた帯状であって、帯の端部に結合位置を調整可能な結合部を有している。
センサー502は、例えば光学式センサーであって、装着時に手首WRに触れるよう、バンド501の内側に配置されている。
表示部503は、例えば受光型の液晶表示装置であって、表示部503に表示された情報を装着者が読み取れるように、センサー502が取り付けられた内面と反対側のバンド501の外面側に配置されている。
処理部504は、例えば集積回路(IC)であって、バンド501に内蔵され、センサー502や表示部503に電気的に接続されている。処理部504は、センサー502からの出力に基づいて、脈拍や血糖値などを計測するための演算処理を行う。また、計測結果などを表示するように表示部503を制御する。
電池505は、センサー502、表示部503、処理部504などへ電力を供給する電力供給源として、バンド501に対して脱着可能な状態で内蔵されている。電池505として、上記第1実施形態のリチウム電池100が用いられている。
本実施形態のウェアラブル機器500によれば、センサー502によって、手首WRから装着者の脈拍や血糖値に係る情報などを電気的に検出し、処理部504での演算処理などを経て、表示部503に脈拍や血糖値などを表示することができる。表示部503には計測結果だけでなく、例えば計測結果から予測される人体の状況を示す情報や時刻なども表示することができる。
また、電池505として小型でありながら優れた充放電特性を有するリチウム電池100が用いられているため、軽量且つ薄型であって長期の繰り返しの使用にも耐え得るウェアラブル機器500を提供することができる。本実施形態では、電池505として上記第1実施形態のリチウム電池100を用いたが、上記第2実施形態のリチウム電池200や上記第3実施形態のリチウム電池300を用いてもよい。
また、本実施形態では、腕時計型のウェアラブル機器500を例示したが、ウェアラブル機器500は、例えば、足首、頭、耳、腰などに装着されるものであってもよい。
上記各実施形態のリチウム電池が電力供給源として適用される電子機器は、ウェアラブル機器500に限定されない。例えば、ヘッドマウントディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、携帯電話機、携帯情報端末、ノート型パソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレイヤー、ワイヤレスヘッドホン、ゲーム機などが挙げられる。また、このような一般消費者向けの機器に限らず、産業用途の機器にも適用可能である。また、本発明の電子機器は、例えば、データ通信機能、ゲーム機能、録音再生機能、辞書機能などの他の機能を有していてもよい。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)上記各実施形態では、グリーンシート法により正極材を形成したが、正極材の製造方法はこれに限定されない。例えば、所定量の粒子状のコバルト酸リチウムを成形型に充填し、加圧成形して成形物を得る工程と、成形物を焼成して基材を得る工程と、酸素を還元する還元雰囲気下で基材を加熱して、基材に還元処理を施す工程と、を備えた正極材の製造方法としてもよい。これによれば、結着剤や溶媒を用いないので、焼成によって粒子状のコバルト酸リチウムをより確実に焼結でき、電子伝導性に優れ電気抵抗が低減された正極材を製造することができる。
(変形例2)正極活物質11pに含まれる遷移金属は、Co以外に、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cuの中から選ばれる1種以上の遷移金属を含んでいてもよい。これによれば、リチウム電池100の内部抵抗をさらに低減することができる。
(変形例3)上記第2実施形態のリチウム電池200において、基材11内の空隙に充填される第2電解質12は、1種の固体電解質であることに限定されず、例えば、結晶質の固体電解質と非晶質の固体電解質とを含む2種以上の構成としてもよい。これによれば、正極210におけるリチウムイオンの伝導率をさらに改善することができる。
以下に、上記実施形態から導き出される内容を記載する。
本願の正極材は、粒子状のコバルト酸リチウムを含む基材と、基材の表面に設けられた、酸素とコバルトとのモル[mol]比が下記式(1)を満たす物質と、を備えたことを特徴とする。
1≦酸素[mol]/コバルト[mol]<2 ・・・(1)
本願の構成によれば、上記式(1)で示される物質は、酸化コバルト(2価)よりも酸素のモル比が小さいコバルトの酸化物である。このようなコバルトの酸化物をコバルト酸リチウムの表面に設けることで、導電剤の有無に拘わらず、粒子状のコバルト酸リチウムを用いた正極材の電気抵抗を低下させることができる。
上記の正極材において、上記物質のラマンシフトが、670cm-1以上700cm-1以下であることを特徴とする。
この構成によれば、ラマン分光法を用いて上記物質を分析したときのラマンシフトが、670cm-1以上700cm-1以下であれば、上記物質が、上記式(1)を満たしていることを証明できる。
また、上記の正極材において、上記物質は、基材の表面から基材の厚み方向に10nm以下の範囲に存在していることが好ましい。
この構成によれば、正極材に占める正極活物質としてのコバルト酸リチウムの体積をそれほど低下させずに、正極材の電気抵抗を低下させることができる。
本願の二次電池は、上記に記載の正極材を用いた正極と、負極と、正極と負極との間に設けられた固体電解質と、を備えたことを特徴とする。
本願の他の二次電池は、上記に記載の正極材を用いた正極と、負極と、正極と負極との間に保持された電解液と、を備えたことを特徴とする。
これらの発明の構成によれば、正極として上記の正極材が用いられていることから、二次電池における内部抵抗が低下すると共に、導電剤を含まずに正極を構成できることから所望の放電容量が確保された二次電池を提供することができる。
本願の電子機器は、電源として上記に記載の二次電池を備えたことを特徴とする。
本願の構成によれば、所望の放電容量が確保された二次電池を備えていることから、長時間に亘って使用可能な電子機器を提供することができる。
本願の正極材の製造方法は、粒子状のコバルト酸リチウムを用いて基材を形成する工程と、酸素を還元する還元雰囲気下で基材を加熱して、基材に還元処理を施す工程と、を備えたことを特徴とする。
本願の正極材の製造方法によれば、基材に還元処理を施すことによって、基材を構成する粒子状のコバルト酸リチウムの表面に、コバルト酸リチウムに含まれる酸素を還元して得られる物質としてコバルトの酸化物が形成される。これにより、導電剤の有無に拘わらず、粒子状のコバルト酸リチウムを用いて形成される正極材の電気抵抗を低下させることができる。
上記の正極材の製造方法において、基材を形成する工程は、粒子状のコバルト酸リチウムと、結着剤と、溶媒とを混ぜ合わせた混合物を成形してシートとする工程と、混合物のシートを加熱して、溶媒を除去する工程と、加熱されたシートを成形し、成形物を得る工程と、成形物を焼成して基材を得る工程と、を含むことが好ましい。
この方法によれば、グリーンシート法により電気抵抗が低減された正極材を効率的に製造することができる。
また、上記の正極材の製造方法において、基材を形成する工程は、所定量の粒子状のコバルト酸リチウムを成形型に充填し、加圧成形して成形物を得る工程と、成形物を焼成して基材を得る工程と、を含むとしてもよい。
この方法によれば、グリーンシート法に比べて、成形物は結着剤や溶媒を含まないことから、電子伝導性に優れ電気抵抗が低減された正極材を製造することができる。
また、上記の正極材の製造方法において、基材に還元処理を施す工程の還元雰囲気は、不活性ガスとグラファイトとを含むことが好ましい。
この方法によれば、コバルト酸リチウムに含まれる酸素をグラファイトによって還元して、基材の表面にコバルトの酸化物を形成できる。
また、上記の正極材の製造方法において、基材に還元処理を施す工程の還元雰囲気は、不活性ガスと水素とを含むとしてもよい。
この方法によれば、コバルト酸リチウムに含まれる酸素を水素によって還元して、基材の表面にコバルトの酸化物を形成できる。
10…正極、10f…成形物、10m…混合物としてのスラリー、10s…混合物のシート、11…基材、11a…物質、11p…正極活物質、12…第2電解質、20…電解質、30…負極、41,42…集電体、90…グラファイト、100…二次電池としてのリチウム電池、200…二次電池としてのリチウム電池、210…正極、300…二次電池としてのリチウム電池、310…正極、312…電解液、320…セパレーター、330…負極、500…電子機器としてのウェアラブル機器。

Claims (2)

  1. 粒子状のコバルト酸リチウムを用いて基材を形成する第1工程と、
    前記第1工程の後に行われ、酸素を還元する還元雰囲気下で前記基材を加熱して、前記基
    材の表面に物質を形成する第2工程と、を備えた正極材の製造方法であって、
    前記第1工程は、
    前記粒子状のコバルト酸リチウムと、結着剤と、溶媒とを混ぜ合わせた混合物を成形して
    シートとする工程と、
    前記混合物の前記シートを加熱して、前記溶媒を除去する工程と、
    加熱された前記シートを成形し、成形物を成形する工程と、
    前記成形物を焼結して前記基材を形成する工程と、を含み、
    前記物質は、コバルトの酸化物であって、前記酸化物の酸素とコバルトのモル比が下記式
    (1)を満たすことを特徴とする
    正極材の製造方法。
    1≦酸素[mol]/コバルト[mol]<2・・・(1)。
  2. 前記第2工程において、前記基材はシート状のグラファイトで挟まれていることを特徴と
    する請求項1に記載の正極材の製造方法。
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