JP2020066724A - スチレン系樹脂組成物、シート及び成形品 - Google Patents

スチレン系樹脂組成物、シート及び成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】半透明性、耐熱性、剛性および耐衝撃性を有する樹脂組成物、シート及び成形品の提供。【解決手段】ゴム状弾性体を分散粒子として含有するゴム変性スチレン系樹脂(A)とスチレン系共重合樹脂(B)との合計100質量%に対して、樹脂(A)を50〜100質量%、樹脂(B)を0〜50質量%、スチレン系共重合樹脂(C)を0〜20質量%含有し、樹脂(A)の連続相は、スチレン系単量体単位を20〜70質量%、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を30〜80質量%含有する共重合体(a)で、樹脂(A)の分散粒子は、粒子径が0.1〜2.0μm、ゴム状弾性体は、スチレン−共役ジエン共重合体を含有するとともに、ゴム状弾性体の含有量が1〜20質量%、樹脂(B)は、スチレン系単量体単位を54〜96質量%、不飽和カルボン酸系単量体単位を4〜16質量%、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を0〜30質量%含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、スチレン系樹脂組成物、シート及び成形品に関する。
従来より、飲料容器、食品容器等の成形品においては、耐熱性、剛性、耐衝撃性が求められており、その樹脂組成物としては、スチレン系樹脂、特にスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂とゴム変性スチレン系樹脂(例えば、ハイインパクトポリスチレン(HIPS))とブレンドした樹脂組成物が用いられている(例えば特許文献1)。
特開2017−36413号公報
ところで、上記のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂とゴム変性スチレン系樹脂(例えば、ハイインパクトポリスチレン(HIPS))とブレンドした樹脂組成物より成形された成形品は上述のように耐熱性、剛性、および耐衝撃性を有するものの不透明となっており、上記の用途の成形品(例えば容器)においては、その内部に保存ないし収容した飲料物や食品等の内容物を確認できるように透明性があり視認可能になることが求められている。一方、成形品においては、単に視認可能性だけではなく、内容物を保存ないし収容した状態での成形品および内容物全体としての外観性も求められている。その外観性を向上させる手法として、消費者や使用者等が成形品内の内容物を直接的に確認可能な成形品とするのではなく、成形品自体がマット調になりぼかしの効果を発揮することが可能な、ある程度の間接性を有する成形品、具体的には適度に半透明性を有する成形品の要求がある。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、半透明性、耐熱性、剛性および耐衝撃性を有する樹脂組成物、シート及び成形品を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究し、実験を重ねた結果、特定組成のゴム変性スチレン系樹脂と、スチレン系共重合樹脂を特定の含有量で配合することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕ゴム状弾性体を分散粒子として含有するゴム変性スチレン系樹脂(A)とスチレン系共重合樹脂(B)との合計100質量%に対して、前記ゴム変性スチレン系樹脂(A)を50質量%以上100質量%未満、前記スチレン系共重合樹脂(B)を0質量%超50質量%以下含有するとともに、スチレン系共重合樹脂(C)を、前記ゴム変性スチレン系樹脂(A)と前記スチレン系共重合樹脂(B)との合計100質量部に対して、0質量部以上20質量部以下含有し、
前記ゴム変性スチレン系樹脂(A)の連続相は、スチレン系単量体単位と不飽和カルボン酸エステル系単量体単位との含有量を100質量%としたとき、スチレン系単量体単位を20質量%以上70質量%以下、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を30質量%以上80質量%以下含有する共重合体(a)であり、
前記ゴム変性スチレン系樹脂(A)の前記分散粒子は、粒子径が0.1μm以上2.0μm以下であり、前記ゴム状弾性体は、スチレン−共役ジエン共重合体を含有するとともに、当該ゴム状弾性体の含有量が前記ゴム変性スチレン系樹脂(A)100質量%に対して1質量%以上20質量%以下であり、
前記スチレン系共重合樹脂(B)は、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、前記スチレン系単量体単位を54質量%以上96質量%以下、前記不飽和カルボン酸系単量体単位を4質量%以上16質量%以下、前記不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を0質量%以上30質量%以下含有し、
前記スチレン系共重合樹脂(C)は、スチレン系単量体単位及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、前記スチレン系単量体単位を10質量%以上90質量%以下含有し、前記不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を10質量%以上90質量%以下含有することを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
〔2〕2mm厚の平板を用いて測定した全光線透過率が、65%以上90%未満であり、且つ1mm厚の平板を用いて測定したヘイズが、5%以上70%以下である、上記〔1〕のスチレン系樹脂組成物。
〔3〕前記スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度が、88℃以上である、上記〔1〕または〔2〕のスチレン系樹脂組成物。
〔4〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかのスチレン系樹脂組成物より形成された層を有することを特徴とする、シート。
〔5〕ガスバリア性を有するバリア層をさらに有する、上記〔4〕に記載のシート。
〔6〕上記〔4〕または〔5〕のシートより形成されることを特徴とする、成形品。
本発明により、半透明性、耐熱性、剛性および耐衝撃性を有する樹脂組成物、シート及び成形品を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
[スチレン系樹脂組成物]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、ゴム状弾性体を分散粒子として含有するゴム変性スチレン系樹脂(A)とスチレン系共重合樹脂(B)との合計100質量%に対して、ゴム変性スチレン系樹脂(A)を50質量%以上100質量%未満、スチレン系共重合樹脂(B)を0質量%超50質量%以下含有するとともに、スチレン系共重合樹脂(C)を、ゴム変性スチレン系樹脂(A)とスチレン系共重合樹脂(B)との合計100質量部に対して、0質量部以上20質量部以下含有している。また、ゴム変性スチレン系樹脂(A)の連続相は、スチレン系単量体単位と不飽和カルボン酸エステル系単量体単位との含有量を100質量%としたとき、スチレン系単量体単位を20質量%以上70質量%以下、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を30質量%以上80質量%以下含有する共重合体(a)である。さらに、ゴム変性スチレン系樹脂(A)の分散粒子は、粒子径が0.1μm以上2.0μm以下であり、ゴム状弾性体は、スチレン−共役ジエン共重合体を含有するとともに、ゴム状弾性体の含有量がゴム変性スチレン系樹脂(A)100質量%に対して1質量%以上20質量%以下である。また、スチレン系共重合樹脂(B)は、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、スチレン系単量体単位を54質量%以上96質量%以下、不飽和カルボン酸系単量体単位を4質量%以上16質量%以下、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を0質量%以上30質量%以下含有している。さらに、スチレン系共重合樹脂(C)は、スチレン系単量体単位及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、スチレン系単量体単位を10質量%以上90質量%以下含有し、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を10質量%以上90質量%以下含有する。本実施形態において、これら構成により、半透明性、耐熱性、剛性および耐衝撃性を有する樹脂組成物を得ることができる。
<ゴム変性スチレン系樹脂(A)>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれるゴム変性スチレン系樹脂(A)は、ゴム状弾性体を分散粒子として含有し、スチレン系単量体単位および不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を有する共重合体(a)を連続相として有している。
連続相は、スチレン系単量体単位と不飽和カルボン酸エステル系単量体単位との含有量を100質量%としたとき、スチレン系単量体単位20〜70質量%と、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位30〜80質量%とを含有する共重合体(a)により形成されている。スチレン系単量体単位および不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を含有することで、成型品に優れた透明性と剛性とを付与することができる。
共重合体(a)のスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t−ブチルスチレン、o−ブロムスチレン、m−ブロムスチレン、p−ブロムスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等が挙げられる。これらのなかでも反応性が良好で重合が容易である等の理由からスチレンが好ましい。
共重合体(a)の含有量は、スチレン系単量体単位と不飽和カルボン酸エステル系単量体単位との含有量を100質量%としたとき、スチレン系単量体を20〜70質量%となる割合で含有し、好ましくは30〜70質量%である。即ち、20質量%以上の範囲において組成物の溶融時における流動性が良好となって成形性に優れたものとなり、また、70質量%以下とすることで相対的に不飽和カルボン酸エステル系単量体量が高まり成型品の剛性、耐薬品性に優れたものとなる。
共重合体(a)の不飽和カルボン酸エステル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類が挙げられる。これらのなかでも特に、成型品の剛性改善効果が大きい点からメタクリル酸メチルが好ましい。また、成型品の透明性、耐衝撃性、およびシート成膜時および成形品熱成形時の成形性の点から、メタクリル酸メチルを他の不飽和カルボン酸エステル系単量体とともに併用することができ(すなわち、少なくとも2種類の不飽和カルボン酸エステル系単量体を含み、そのうちの1種がメタクリル酸メチルとすることができる)、より具体性には、アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルを併用することができる。
共重合体(a)の含有量は、スチレン系単量体単位と不飽和カルボン酸エステル系単量体単位との含有量を100質量%としたとき、不飽和カルボン酸エステル系単量体を30〜80質量%となる割合で含有し、好ましくは30〜70質量%である。即ち、30質量%以上の範囲において成型品の剛性、耐薬品性に優れたものとなる。また、80質量%以下とすることで組成物の溶融時における流動性が良好となって成形性に優れたものとなる。なお、メタクリル酸メチルを他の不飽和カルボン酸エステル系単量体とともに併用する場合には、他の不飽和カルボン酸エステル系単量体の含有量は、スチレン系単量体単位と不飽和カルボン酸エステル系単量体単位との含有量を100質量%としたとき、0.5〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜17質量%である。このような範囲にすることにより、成型品の透明性、耐衝撃性、およびシート成膜時および成形品熱成形時の成形性を満足することができる。
ゴム変性スチレン系樹脂(A)中のスチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位等の含有量は、それぞれ、ゴム変性スチレン系樹脂(A)を核磁気共鳴(13C−NMR)測定装置で測定したときのスペクトルの積分比から求めることができる。
分散粒子は、スチレン−共役ジエン共重合体を含有するゴム状弾性体を含み、具体的には、ゴム状弾性体の存在下で、共重合体(a)の単量体であるスチレン系単量体および不飽和カルボン酸エステル系単量体を重合させることにより得られる。分散粒子は、該粒子表面において、ゴム状弾性体に対して共重合体(a)がグラフト共重合した部分を有している。この際、分散粒子の粒子表面における該グラフト共重合部分は連続相と絡み合って存在することができる。
スチレン−共役ジエン共重合体は、スチレン系単量体とジエン系単量体を共重合させたものであり、スチレン系単量体としては、上記の共重合体(a)中のスチレン系単量体として例示した各種のモノマーが挙げられる。特にスチレンが好ましい。また、ジエン系単量体としては、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられるが、スチレン系モノマーとの反応性に優れる点からブタジエンが好ましい。なお、スチレン−共役ジエン共重合体の構造は、ランダム構造およびブロック構造のいずれであってもよい。
また、ゴム状弾性体の含有量は、ゴム変性スチレン系樹脂(A)100質量%に対して1〜20質量%であり、より好ましくは1〜15質量%である。コム状弾性体の含有量が1質量%以上であることにより、強度補強効果が発現させることができ、またゴム状弾性体の含有量を20質量%以下とすることにより、溶融時の流動性を確保し好ましい。また、このような数値範囲にすることにより、組成物における透明性、耐衝撃性、剛性を併せ持たせることができる。なお、ゴム状弾性体の含有量は、後述の実施例の欄に記載の測定方法により測定することができる。
分散粒子の粒子径は0.1〜2.0μmであり、好ましくは0.2〜1.8μmであり、より好ましくは0.2〜1.2μmである。粒子径を0.1μm以上にすることにより、強度補強効果を発現しやすくなり、粒子径を2.0μm以下にすることにより、透明性を確保しやすくすることができる。なお、分散粒子の粒子径は、後述の実施例の欄に記載の測定方法により測定することができる。
ゴム変性スチレン系樹脂(A)において、分散粒子の、25℃でのトルエンによる膨潤指数は、8〜19であることが好ましく、より好ましくは9〜16であり、さらに好ましくは10〜14である。ゴム変性スチレン系樹脂(A)の25℃におけるトルエン不溶分含有量が10〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは12〜30質量%であり、さらに好ましくは14〜25質量%である。なお、トルエン不溶分含有率およびトルエンによる膨潤指数は、以下のようにして測定されるものである。
・トルエン不溶分含有率およびトルエンによる膨潤指数の測定法
沈澱管にゴム変性スチレン系樹脂(A)1gを精秤し(この質量をW1とする)、トルエン20mLを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機((株)日立製作所製himac、CR−20(ローター:R20A2))にて10℃以下、20000rpmで60分間遠心分離する。沈澱管を約45度にゆっくり傾け約3秒間保持することで、上澄み液をデカンテーションして取り除いた。トルエンを含んだ不溶分の質量を精秤し(この質量をW2とする)、引き続き、160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケータ内で室温まで冷却後、トルエン不溶分の質量を精秤する(この質量をW3とする)。
下記式により、トルエン不溶分の膨潤指数及び含有量を求める。
トルエン不溶分の含有量(質量%)=((W3)/(W1))×100
トルエン不溶分の膨潤指数=(W2/W3)
スチレン−共役ジエン共重合体中のスチレン構造単位の含有率(%)は、耐衝撃強度と透明性とのバランスから33〜55%であることが好ましい。当該含有率を55%以下とすることにより、相対的に共役ジエン含有率が高まり耐衝撃性に優れた成型品が得られる。また、当該含有率を33%以上にすることにより、スチレン−共役ジエン共重合体の溶融流動性が向上することからマトリックスとの粘度調整が容易となり、組成物の溶融時の流動性と成型品の耐熱性とのバランスが良好になる。
上記スチレン−共役ジエン共重合体は、更に共役ジエンに基づく不飽和結合のうちの1,2−ビニル結合の割合が14〜35%であることが好ましい。当該割合がこの範囲となることにより、粒子表面でのグラフト共重合部分におけるグラフト化率と、ゴム状粒子の架橋の程度とのバランスが良好となり衝撃強度が向上する。この場合、1,2−ビニル結合の残りはシスおよびトランス結合を形成している。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、ゴム変性スチレン系樹脂(A)とスチレン系共重合樹脂(B)の合計含有量を100質量%としたとき、ゴム変性スチレン系樹脂(A)の含有量は、50質量%以上100質量%未満であり、60〜98質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましい。ゴム変性スチレン系樹脂(A)の含有量を50質量%以上とすることにより、耐衝撃性を向上させることができ、100質量%未満とすることにより、耐熱性を高めることができる。また、スチレン系樹脂組成物において、ゴム変性スチレン系樹脂(A)の含有量を上記の範囲とし、およびスチレン系共重合樹脂(B)の含有量を後述の範囲とすることにより、成形品において適度な半透明性を得ることができる。
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂(A)のメルトマスフローレート(MFR)は、0.5〜7g/10分が好ましく、より好ましくは0.7〜5g/10分、更に好ましくは1〜4g/10分である。メルトマスフローレートを0.5〜7g/10分の範囲にすることにより、シート製膜時および成形品熱成形時の成形性に優れたスチレン系樹脂組成物が得られる。
メルトマスフローレートは、ISO 1133に準拠して、200℃、荷重49Nにて測定される値である。
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂(A)のビカット軟化温度は、成形品の滅菌時に熱風乾燥される場合があるため、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上である。また、ビカット軟化温度の上限は特にない。
ビカット軟化温度は、JIS K7206に準拠して測定することができる。
ゴム変性スチレン系樹脂(A)は、1mm厚の平板(成形品)に成型したときのヘイズが、0.5〜5%であることが好ましく、より好ましくは0.7〜4%、更に好ましくは1〜3%である。この範囲であればゴム変性スチレン系樹脂(A)の適度な透明性を得ることができる。ヘイズはJIS K7136に準拠し、測定することができる。
ゴム変性スチレン系樹脂(A)は、2mm厚の平板(成形品)に成型したときの全光線透過率が、85〜91%であることが好ましい。この範囲であればゴム変性スチレン系樹脂(A)の適度な透明性を得ることができる。全光線透過率はJIS K7361−1に準拠し、測定することができる。
ゴム変性スチレン系樹脂(A)の重合方法を以下説明する。ゴム変性スチレン系樹脂(A)は、特に限定されず、ゴム補強ボリスチレン(HIPS樹脂)の製造で多用されている方法を用いることができる。すなわち、ゴム状弾性体を、スチレン系単量体、不飽和カルボン酸エステル系単量体、重合溶媒、重合開始剤を含む原料溶液に溶解させ、このゴム状弾性体が溶解した原料溶液を攪拌機付反応機に供給し重合を行う。分散粒子の粒子径の制御は一般に行われている方法、攪拌羽根の攪拌数を変化させることにより制御される。また、透明性を維持する方法として、一般的な方法、例えば重合途中に必要に応じて単量体を添加するか、あるいは連続的に追添加する等の方法が用いられる。
ゴム状弾性体の含有量は、目標とする含有量になるように原材料、重合率を調製することにより達成することもできるが、高濃度のゴム状弾性体を含むゴム変性スチレン系樹脂を上記の方法で製造し、別に製造したゴム状弾性体を含まないスチレン系樹脂と混合することによっても達成できる。
この時、重合溶媒、例えばエチルペンゼン、トルエン、キシレン等を用いることも可能である。又、ゴム変性スチレン系樹脂の重合に常用されている有機過酸化物を用いても、また、途中添加してもよい。重合方法はゴム変性スチレン系樹脂の製法で常用されている塊状重合法、または溶液重合法が用いられる。回分式重合法、連続式重合法いずれの方法も用いることができる。
反応機を出た重合溶液は回収装置に導かれる。回収装置はスチレン系樹脂の製造で常用されている装置、例えばフラシュタンクシステム、多段ペント付き押出機等を用いることができる。操作条件もスチレン系樹脂の製造と同等の条件を用いることができる。
未反応単量体および/または重合溶媒を回収する前または後の任意の段階でゴム変性スチレン系樹脂に慣用されている添加剤、例えば酸化防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤等を添加できる。
<スチレン系共重合樹脂(B)>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれるスチレン系共重合樹脂(B)は、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を含む共重合体である。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t−ブチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、インデン等のスチレン誘導体が挙げられる。工業的観点からスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂(B)中のスチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、および不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン系単量体の含有量は、54〜96質量%であり、より好ましくは74〜92質量%、より好ましくは77〜85質量%である。この含有量を54質量%以上とすることにより、樹脂の流動性を向上させ、他方、96質量%以下にすることにより、不飽和カルボン酸系単量体単位および不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を所望量存在させることができ、それら単量体による所望の効果を得ることができる。
不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。耐熱性の向上効果が大きく、常温にて液状でハンドリング性に優れることからメタクリル酸が好ましい。
本実施形態において、不飽和カルボン酸系単量体単位は、耐熱性の向上に寄与する。スチレン系共重合樹脂(B)中のスチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量は、4〜16質量%であり、好ましくは6〜14質量%、より好ましくは9〜13質量%の範囲である。この含有量を4質量%以上とすることにより、耐熱性をより向上させることができ、他方、16質量%以下とすることにより、スチレン系共重合樹脂(B)中のゲル化物を抑制し、外観を良好にし、また、スチレン系共重合樹脂(B)の流動性と機械的物性をよい向上させることができる。
不飽和カルボン酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、耐熱性低下に対する影響が小さいことから(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。
本実施形態のスチレン系共重合樹脂(B)の製造において、不飽和カルボン酸エステル系単量体は、不飽和カルボン酸系単量体との分子間相互作用で不飽和カルボン酸系単量体の脱水反応を抑制するため、また、スチレン系共重合樹脂(B)の機械的強度を向上させるために用いることができる。更に、不飽和カルボン酸エステル系単量体の含有は、耐候性、表面硬度等の樹脂特性の向上にも寄与する。
スチレン系共重合樹脂(B)中のスチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、不飽和カルボン酸エステル系単量体の含有量は、0〜30質量%であり、シート外観と強度の観点から、好ましくは3〜25質量%、より好ましくは6〜20質量%の範囲である。この含有量を30質量%以下とすることにより、該共重合樹脂(B)の流動性がより向上し、且つ、吸水性が低下する傾向がある。
スチレン系共重合樹脂(B)は、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位以外のその他の単量体単位を、所望の効果を損なわない範囲で更に含有することができるが、典型的には、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位からなる。その他の単量体単位の含有量は、スチレン系共重合樹脂(B)100質量%に対して、0〜10質量%としてよい。
スチレン系共重合樹脂(B)中のスチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量は、それぞれ、スチレン系共重合樹脂(B)を核磁気共鳴(13C−NMR)測定装置で測定したときのスペクトルの積分比から求めることができる。
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂(B)のメルトマスフローレート(MFR)は、0.3〜4.0g/10分が好ましく、より好ましくは0.5〜2.0g/10分、更に好ましくは0.7〜1.7g/10分である。メルトマスフローレートを0.3〜4.0g/10分の範囲にすることにより、シート製膜時の成形性に優れたスチレン系樹脂組成物が得られる。
メルトマスフローレートは、ISO 1133に準拠して、200℃、荷重49Nにて測定される値である。
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂(B)のビカット軟化温度は、成形品の滅菌時に熱風乾燥される場合があるため、好ましくは110℃以上であり、より好ましくは119℃以上、更に好ましくは122℃以上である。また、ビカット軟化温度の上限は特にない。
ビカット軟化温度は、JIS K7206に準拠して測定することができる。
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂(B)の数平均分子量(Mn)は、4万〜20万であることが好ましく、より好ましくは5万〜15万、更に好ましくは7万〜12万である。
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、10万〜35万であることが好ましく、Z平均分子量(Mz)の重量平均分子量(Mw)に対する比(Mz/Mw)は1.6〜3.5であることが好ましい。
Mwは、より好ましくは13万〜30万、更に好ましくは16万〜25万である。Mwが10万〜35万であると、衝撃強度と流動性とのバランスに優れる樹脂が得られ、また、ゲル化物の混入も少ない傾向にある。
Mz/Mwの比は、より好ましくは1.7〜3.0、更に好ましくは1.7〜2.5である。Mz/Mwの比が1.6〜3.5であると、衝撃強度と流動性とのバランスに優れる樹脂が得られ、また、ゲル化物の混入も少ない傾向となる。
スチレン系共重合樹脂(B)のMn、Mz、及びMwは、ゲルパーミエイション・クロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定することができる。
上述の本実施形態のスチレン系共重合樹脂(B)は、1種単独の樹脂としてもよく、2種以上を組み合わせた混合樹脂としてもよい。
混合樹脂の場合、スチレン系共重合樹脂(B)の諸物性は、混合樹脂について定められてよい。混合樹脂は、2種以上の樹脂を混練することにより得ることができる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、ゴム変性スチレン系樹脂(A)とスチレン系共重合樹脂(B)の合計含有量を100質量%としたとき、スチレン系共重合樹脂(B)の含有量は、0質量%超50質量%以下であり、2〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。スチレン系共重合樹脂(B)の含有量を0質量%超とすることにより、耐熱性を高めることができ、50質量%以下とすることにより、耐衝撃性を向上させることができる。
スチレン系共重合樹脂(B)の重合方法については、特に制限はないが、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法を採用できる。重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程とからなる。
スチレン系共重合樹脂(B)では、不飽和カルボン酸系単量体の組成分布を制御することによって、外観及び透明性に優れた樹脂を得ることが可能である。組成分布の調整に関しては、重合時に実施する方法や、脱揮後のポリマーをブレンドし、所定の組成分布に調整する方法等が挙げられる。
以下、本実施形態のスチレン系共重合樹脂(B)の重合方法について説明する。
スチレン系共重合樹脂(B)を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させる。重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4ービス(t−ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等が挙げられる。分解速度と重合速度との観点から、とりわけ1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
スチレン系共重合樹脂(B)の重合時には必要に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤としては、例えば、αメチルスチレンリニアダイマー、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等が挙げられる。
例えば、スチレン系共重合樹脂(B)の原料であるスチレン、不飽和カルボン酸、及び(メタ)アクリル酸メチルの重合時には、スチレンの2量体や3量体が生成する。このスチレンの2量体や3量体の生成量は、重合開始の方法で異なる。すなわち、重合開始剤として有機過酸化物若しくはアゾ系重合開始剤を使用した場合と、熱開始のみとした場合では、それらの生成量は異なる。スチレンの2量体や3量体の生成量は、有機過酸化物を使用する場合が最も低く、熱開始のみの場合が最も高い。スチレンの2量体や3量体は、押出機での押出時のダイス出口への目やにの付着、射出成形時の金型への目やにの付着等で不具合を生じさせる場合がある。従って、重合開始方法としては重合開始剤として有機過酸化物の使用が好ましい。
スチレン系共重合樹脂(B)100質量%中のスチレンの2量体と3量体の合計量は低いほど好ましいが、より好ましくは0.7質量%以下、更により好ましくは0.6質量%以下である。スチレンの2量体と3量体としては、1,3−ジフェニルプロパン、2,4−ジフェニル−1ブテン、1,2−ジフェニルシクロブタン、1−フェニルテトラリン、2,4,6−トリフェニル−1−ヘキセン、1−フェニル−4−(1’−フェニルエチル)テトラリン等が挙げられる。
スチレンの2量体及び3量体の残存量は、ガスクロマトグラフィーにより測定できる。
重合方法として、必要に応じて、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。用いられる重合溶媒としては、芳香族炭化水素類、例えば、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、それぞれ、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の重合溶媒、例えば、脂肪族炭化水素類等を、芳香族炭化水素類に更に混合することができる。これらの重合溶媒は、全単量体100質量部に対して、30質量部を超えない範囲で使用するのが好ましい。全単量体100質量部に対して重合溶媒が30質量部以下であれば、重合速度の低下、及び得られる樹脂の機械的強度の低下が抑制されるため好ましい。重合前に、全単量体100質量部に対して5〜30質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
本実施形態のスチレン系共重合樹脂(B)では、ゲル化抑制剤を添加することで、ゲル物の生成を抑制し、シートにした際の外観を向上させることが可能である。ゲル化抑制剤としては、脂肪族モノアルコールやポリオキシエチレンモノエーテルが挙げられ、添加の方法としては、特に制限はなく、樹脂の重合前もしくは重合中に添加する方法や、製造された樹脂ペレットに押出し機で練り込む方法等が挙げられる。添加量としては、樹脂に対して0.05質量部〜0.3質量部添加することが望ましい。
本実施形態のスチレン系共重合樹脂(B)には、スチレン系樹脂において使用が一般的な各種添加剤を、適宜添加してもよい。例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、鉱油、強度向上材等が挙げられる。これらの各種添加剤の含有量は、スチレン系共重合樹脂(B)100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましい。
添加剤の配合の方法については特に規定はないが、例えば、共重合体の重合時に添加して重合する方法や樹脂組成物を得る際、ブレンダーで予め添加剤を混合し、押出機やバンバリーミキサー等にて溶融混錬する方法等が挙げられる。
スチレン系共重合樹脂(B)を得るための重合工程で用いる装置は、特に制限はなく、用いる重合方法に応じて適宜選択すればよい。例えば、塊状重合による場合には、完全混合型反応器を1基又は複数基連結した重合装置を用いることができる。
また、脱揮工程についても特に制限はなく、塊状重合で行う場合、最終的に未反応モノマーが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、かかる未反応モノマー等の揮発分を除去するために、既知の方法にて脱揮処理する。例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができるが、滞留部の少ない脱揮装置が好ましい。なお、脱揮処理の温度は、通常、190〜280℃程度であり、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルとの隣接による六員環酸無水物の形成を抑制する観点から、190〜260℃がより好ましい。また脱揮処理の圧力は、通常0.13〜4.0kPa程度であり、好ましくは0.13〜3.0kPaであり、より好ましくは0.13〜2.0kPaである。脱揮方法としては、例えば、加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、又は揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
<スチレン系共重合樹脂(C)>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含めることが可能なスチレン系共重合樹脂(C)は、ゴム変性スチレン系樹脂(A)とスチレン系共重合樹脂(B)との合計100質量部に対して、0質量部以上20質量部以下の含有量で含有する共重合体である。
また、スチレン系共重合樹脂(C)は、スチレン系単量体単位及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、スチレン系単量体単位を10〜90質量%含有し、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を10〜90質量%含有する。
スチレン系共重合樹脂(C)の含有量は、ゴム変性スチレン系樹脂(A)とスチレン系共重合樹脂(B)との合計100質量部に対して、0質量部以上20質量部以下であり、スチレン系共重合樹脂(C)を含有させる場合には、好ましくは2〜18質量部であり、より好ましくは5〜15質量部である。スチレン系共重合樹脂(C)の含有量を0質量部超とすることにより、成形品の半透明性をより適度にすることができる。また、スチレン系共重合樹脂(C)の含有量を20質量部以下とすることにより、成形品の剛性を高めつつ、耐衝撃性を維持することができる。なお、スチレン系共重合樹脂(C)を含有させない場合(すなわち含有量が0質量部)には、シート成膜時の手間を省くことができる。
具体的には、スチレン系共重合樹脂(C)は、スチレン系単量体と不飽和カルボン酸エステル系単量体を重合してなる共重合体であり、その重合方法は特に制限がなく、公知の塊状重合法、溶液重合法、塊状−懸濁重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が採用できる。又、回分式重合法、連続式重合法のいずれの方式であっても差し支えない。スチレン系単量体とは、具体的にはスチレン、α−アルキル置換スチレン類、例えばα−メチルスチレン、核アルキル置換スチレン類、例えばo−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等である。これらスチレン系単量体は、単独で用いてもよいが、2種類以上を併用してもよい。中でもスチレンが好ましい。
また、不飽和カルボン酸エステル系単量体とは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル等などで、中でもメタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチルが好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよいが、2種類以上を併用してもよい。なお(メタ)アクリル酸エステルは、スチレンとの共重合において、ビカット軟化点が90℃以上になるように種類と量を調整することが好ましい。
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂(C)とは、具体的にはスチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂、スチレン−メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル共重合樹脂、スチレン−メタクリル酸エチル共重合樹脂、α−スチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂、スチレン−アクリル酸n−ブチル共重合樹脂等であることが好ましく、また、スチレン系共重合樹脂(C)の重合時、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル以外の共重合可能なビニル系単量体、例えばアクリロニトリル等を、スチレン系単量体及び不飽和カルボン酸エステル系単量体の合計100質量部に対し10質量部以内であれば含有させることができる。
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂(C)の重合時、重合開始剤としは2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2ーメチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等の公知のアゾ化合物や、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−プチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t一ブチルヒドロペルオキシド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等の公知の有機過酸化物を用いることが好ましい。使用するアゾ化合物や有機過酸化物が少ない場合やこれらを用いないラジカル熱重合では、得られる樹脂中の2量体、3量体が増加するおそれがある。また、公知の分子量調整剤、例えばα−メチルスチレンリニアダイマー、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、1−フェニル−2−フルオレン、ジベンテン、クロロホルムなどのメルカプタン類、テルペン類、ハロゲン化合物、テレピノーレン等のテレピン類を必要に応じて添加してもよい。さらに、ジビニルベンゼン等の公知の架橋剤を添加して重合しても差し支えない。
本実施形態において、必要に応じて重合溶剤として、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン等芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン等ジアルキルケトン類などを用いてよい。それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の溶剤、例えば脂肪族炭化水素類等を芳香族炭化水素類に混合することができる。これらの溶剤は、単量体に対して、25質量%を超えない範囲で使用するのが好ましい。溶剤が25質量%を超えると、重合速度が著しく低下し、かつ、得られる樹脂の衝撃強度の低下が大きくなる。また、溶剤の回収のために、多量のエネルギーを要する。溶剤は、重合が進み、比較的高粘度になってから添加してもよいし、あるいは重合前から添加しておいてもよいが、重合前に5〜20質量%の割合で添加しておく方が、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
本実施形態において、脱揮工程についても特に制限はない。スチレン系単量体及び不飽和カルボン酸エステル系単量体の重合を塊状重合で行なう場合は、最終的に未反応単重体が、好ましくは50質量%、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、かかる単量体などの揮発分を除去するために、公知の方法にて脱揮処理する。この脱揮工程は、重合反応後の反応物から、未反応物及び/又は溶剤を除去するためのものであり、脱揮処理には、例えばフラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機などの通常の脱揮装置を用いることができる。なお、脱揮処理の温度は、通常、190〜280℃程度であり、また脱揮処理の圧力は通常、1〜100torr(トール)程度である、好ましくは1〜50torrであり、さらに好ましくは1〜10torrである。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して除去する方法や、揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去することが望ましい。
本発明のスチレン系共重合樹脂(C)は、スチレン系単量体10〜90質量%と不飽和カルボン酸エステル系単量体10〜90質量%、好ましくはスチレン系単量体20〜80質量%と不飽和カルボン酸エステル系単量体20〜80質量%、より好ましくはスチレン系単量体30〜70質量%と不飽和カルボン酸エステル系単量体30〜70質量%である。スチレン系単量体が90質量%を越えるとスチレン系共重合樹脂(C)の不飽和カルボン酸エステル系単量体の含有量が低下することになり、不飽和カルボン酸エステル系単量体としての効果、すなわち耐衝撃性や半透明性が劣り好ましくない。また、スチレン系単量体が10質量%未満の場合は、組成物の半透明性が悪くなり好ましくない。
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂(C)のメルトマスフローレート(MFR)は、0.5〜7g/10分が好ましく、より好ましくは0.7〜6g/10分、更に好ましくは1〜5g/10分である。メルトマスフローレートを0.5〜7g/10分の範囲にすることにより、シート製膜時および成形品熱成形時の成形性に優れたスチレン系樹脂組成物が得られる。
メルトマスフローレートは、ISO 1133に準拠して、200℃、荷重49Nにて測定される値である。
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂(C)のビカット軟化温度は、成形品の滅菌時に熱風乾燥される使用環境の観点から、好ましくは98℃以上であり、より好ましくは100℃以上である。また、ビカット軟化温度の上限は特にない。
ビカット軟化温度は、JIS K7206に準拠して測定することができる。
<その他の成分>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物には、スチレン系樹脂において使用が一般的な各種添加剤を、適宜添加してもよい。例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、鉱油、強度向上材等が挙げられる。また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体やMBS樹脂等の補強材についても物性を損なわない範囲で添加してもよい。配合の方法については特に規定はないが、例えば、共重合体の重合時に添加して重合する方法や樹脂組成物を得る際、ブレンダーで予め添加剤を混合し、押出機やバンバリーミキサー等にて溶融混錬する方法等が挙げられる。
スチレン系樹脂組成物中の添加剤の含有量は、10質量%以下としてよい。
<スチレン系樹脂組成物の特性>
スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は、例えば成形品を食品容器として用いる場合、その成形品の殺菌・乾燥工程での温度条件に耐える観点から88℃以上であり、好ましくは92℃以上、より好ましくは95℃以上である。また、ビカット軟化温度の上限は特にないが、高いビカット軟化温度とともに、成形品としての実用強度や成形性が確保される必要がある。ビカット軟化温度は、JIS K7206に準拠し測定することができる。
スチレン系樹脂組成物は、1mm厚の平板(成形品)に成型したときのヘイズが、5〜70%であることが好ましく、より好ましくは10〜60%、更に好ましくは20〜50%である。この範囲であれば成形品の適度な半透明性を得ることができる。ヘイズはJIS K7136に準拠し、測定することができる。
スチレン系樹脂組成物は、2mm厚の平板(成形品)に成型したときの全光線透過率が、65%以上90%未満であることが好ましく、より好ましくは70%以上90%未満、更に好ましくは75%以上90%未満である。この範囲であれば内容物を視認できる程度の適度な半透明性を得ることができる。全光線透過率はJIS K7361−1に準拠し、測定することができる。
スチレン系樹脂組成物の衝撃強度は、2.4kJ/m以上であることが好ましく、より好ましくは3.5kJ/m以上、更に好ましくは4.5kJ/m以上である。この範囲であれば成形品の耐衝撃性を確保することができる。衝撃強度は、ノッチ有のシャルピー衝撃強度であり、JIS K7111に準拠し、測定することができる。
スチレン系樹脂組成物の曲げ弾性率は、2200MPa以上であることが好ましく、より好ましくは2400MPa以上、更に好ましくは2600MPa以上である。この範囲であれば成形品の剛性を確保することができる。曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠し、測定することができる。
[スチレン系樹脂組成物の製造方法]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、例えば、上述のゴム変性スチレン系樹脂(A)、スチレン系共重合樹脂(B)、必要に応じてスチレン系共重合樹脂(C)、添加剤等を、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等の公知の混練機を用いて溶融混練する方法等で得ることができる。
[シート]
本実施形態のシートは、上述した本発明に係る実施形態のスチレン系樹脂組成物より形成された層(以下、スチレン系樹脂組成物層とも称す)を有するシートである。本実施形態のシートは、単層(スチレン系樹脂組成物層の1層)であってもよく、複数層より形成されてよい。シート中のスチレン系樹脂組成物層は、後述のようにスチレン系樹脂組成物を発泡させずに得られた単体シート(非発泡)より形成された層であっても、スチレン系樹脂組成物を発泡させて得られた単体シートにより形成された層でもよい。
非発泡の層である場合には、特に限定されないが例えば、ポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂からなる層と多層化することができる。また、スチレン系樹脂以外の樹脂と多層化して用いてもよく、スチレン系樹脂以外の樹脂としては、PET樹脂、ナイロン樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。また、各層間には接着層を設けてもよい。
本実施形態のシートにおいては、ガスバリア性を有するバリア層をさらに有することが好ましく、当該バリア層としては、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂はガスバリア性を有するため、バリア層として用いることが好適である。
また、シート中のスチレン系樹脂組成物層が発泡の層である場合には、スチレン系樹脂組成物層に、特に限定されないが例えば、ポリスチレンを含むスチレン系樹脂、ポリプロピレン、ポリプロピレン等の樹脂からなる層と多層化することができる。具体的には、発泡したスチレン系樹脂組成物層に、上記樹脂のフィルムを更にラミネートすること等によって多層化することができる。使用するフィルムの種類は、特に限定されないが例えばポリスチレンやポリプロピレンやポリプロピレン/ポリスチレンの貼合せフィルム等である。また、各層間には接着層を設けてもよい。
スチレン系樹脂組成物層は、非発泡の層であることが適度な半透明性を得る観点から好ましいが、発泡の層とすることもできる。本実施形態のシートにおいて、スチレン系樹脂組成物層は、シート形成の前にスチレン系樹脂組成物の単体シートを製造することにより得ることができ、スチレン系樹脂組成物の単体シートの製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。例えば、非発泡のスチレン系樹脂組成物層の単体シートの製造方法としては、Tダイを取り付けた単軸又は二軸押出成形機で押出し、その後一軸延伸機又は二軸延伸機で単体シートを引き取る装置を用いる方法等が挙げられる。発泡シートの製造方法としては、Tダイ又はサーキュラーダイを備え付けた押出発泡成形機を用いる方法等が挙げられる。なお、本実施形態のシートが1層である場合には、上記の単体シートが本実施形態のシートとなる。
非発泡の単体シートにおいては、例えば、厚みが0.1〜4.0mm程度であることが剛性及び熱成形サイクルの観点から好ましい。また、単体シートは通常の低倍率のロール延伸のみで形成してもよいが、特にロールで1.3倍から7倍程度延伸した後、テンターで1.3倍から7倍程度延伸したシートが強度の面で好ましい。
発泡の単体シートは、厚み0.5mm〜5.0mmであることが好ましく、見かけ密度50g/L〜300g/Lであることが好ましく、また、坪量80g/m〜300g/mであることが好ましい。
発泡の単体シートを製造する場合、押出発泡時の発泡剤及び発泡核剤としては通常用いられる物質を使用できる。発泡剤としては、ブタン、ペンタン、フロン、二酸化炭素、水等を使用することができ、ブタンが好適である。また、発泡核剤としてはタルク等を使用できる。また、発泡押出し後に、単体シートを加熱しながらロールで1.3倍から7倍程度延伸した後、テンターで1.3倍から7倍程度延伸してもよい。
[成形品]
本実施形態の成形品は、上述した本発明に係る実施形態のシートより形成された成形品である。本実施形態の成形品の製造方法は特に限定されないが、シートのスチレン系樹脂組成物層が非発泡の層である場合には、例えば真空成形や圧空成形等により成形して、例えば、弁当の蓋材や惣菜等を入れる容器、飲料用の容器を製造することができる。また、シートのスチレン系樹脂組成物層が発泡の層である場合には、例えば真空成形により成形して、例えばトレー等の容器を製造することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されると解されるべきでない。なお、実施例及び比較例における樹脂組成物の分析、評価方法は、下記のとおりである。
[分析・評価方法]
(1)全光線透過率、ヘイズ
下記の実施例・比較例で得られたスチレン系樹脂組成物より、鏡面処理をされた平板成形品用金型を用いて射出成型して、1mmおよび2mm厚みの平板を作製し、平板を用いて、JIS K7361−1に準拠して全光線透過率(%)、JIS K7136に準拠してヘイズ(%)を測定した。
(2)ビカット軟化温度
JIS K7206に準拠して、下記の実施例・比較例で得られたスチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度(℃)を測定した。荷重は49N、昇温速度は50℃/hとした。
(3)曲げ弾性率
下記の実施例・比較例で得られたスチレン系樹脂組成物から220℃でJIS K 7152に準拠して射出成形片を作製し、JIS K7171に準拠して、当該成形片(試験片)の曲げ弾性率(MPa)を測定した。試験速度は2mm/minとした。
(4)シャルピー衝撃試験
下記の実施例・比較例で得られたスチレン系樹脂組成物から220℃でJIS K 7152に準拠して射出成形片を作製し、JIS K7111に準拠して、当該成形片(試験片)のシャルピー衝撃強さ(kJ/m)を測定した。試験条件は1eAとした。
(5)スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量
ゴム変性スチレン系樹脂(A)、スチレン系共重合樹脂(B)、スチレン系共重合樹脂(C)中のスチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量(質量%)は、核磁気共鳴(13C−NMR)装置で測定したスペクトルの積分比から、樹脂組成を定量した。
試料調製:樹脂75mgをd6−DMSO 0.75mLに60℃で4〜6時間加熱溶解した。
測定機器:日本電子(株)製、JNM ECA−500
測定条件:測定温度60℃、観測核13C、積算回数2万回、繰返し時間45秒
(6)ゴム状弾性体の含有量
ゴム変性スチレン系樹脂(A)のゴム状弾性体含有量(質量%)を以下のように測定した。メスフラスコにゴム変性スチレン系樹脂(A)4gを精秤し(この質量をWとする)、クロロホルム75mLを加えてよく分散させた後、一塩化ヨウ素18gを1000mLの四塩化炭素に溶かした溶液20mLを加え、冷暗所に保存し、8時間後にクロロホルムを加え、標線に合わせた。これを25mL採取し、ヨウ化カリウム10gを水800mL、エタノール200mLの混合液に溶かした溶液60mLを加え、チオ硫酸ナトリウム10gを1000mLの水に溶かした溶液(この溶液のモル濃度をxとする)で滴定した。本試験AmL、空試験BmLとし、共役ジエン単量体由来成分の含有量(質量%)は以下の式により求めた。
共役ジエン単量体由来成分の含有量=10.8×x×(B−A)/W
ゴム変性スチレン系樹脂(A)に使用したゴム状弾性体中のスチレン/ブタジエン比率及び共役ジエン単量体由来成分の含有量を元に、ゴム状弾性体の含有量を算出した。
(7)メルトフローレート(MFR)
ゴム変性スチレン系樹脂(A)、スチレン系共重合樹脂(B)及びスチレン系共重合樹脂(C)のメルトフローレート(MFR)(g/10分)をISO 1133に準拠して測定した(200℃、荷重49N)。
(8)分散粒子の粒子径の測定
ゴム変性スチレン系樹脂(A)の分散粒子の平均粒子径(μm)は、超薄切片法による透過型電子顕微鏡写真をとり、写真中の粒子200個の粒子径を測定して次の式で求めた。
平均粒子径=Σ(ni×Di)/Σ(ni×Di
(式中、niは、粒子径Diを有する分散粒子の個数である。また、Diは、粒子の長径と短径の平均値である。)
(9)トルエン不溶分含有率およびトルエンによる膨潤指数
ゴム変性スチレン系樹脂(A)のトルエン不溶分含有率およびトルエンによる膨潤指数は、以下のように測定した。
沈澱管に樹脂1gを精秤し(この質量をW1とする)、トルエン20ミリLを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機((株)日立製作所製himac、CR−20(ローター:R20A2))にて10℃以下、20000rpmで60分間遠心分離した。沈澱管を約45度にゆっくり傾け約3秒間保持することで、上澄み液をデカンテーションして取り除いた。トルエンを含んだ不溶分の質量を精秤し(この質量をW2とする)、引き続き、160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケータ内で室温まで冷却後、トルエン不溶分の質量を精秤した(この質量をW3とする)。
下記式により、トルエン不溶分の膨潤指数及び含有量を求めた。
トルエン不溶分の含有量(質量%)=((W3)/(W1))×100
トルエン不溶分の膨潤指数=(W2/W3)
(10)数平均分子量、重量平均分子量及びZ平均分子量
スチレン系共重合樹脂(B)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mz/Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定した。
試料調製 :テトラヒドロフランに樹脂を約0.05質量%となるよう溶解
測定条件
機器 :TOSOH HLC−8220GPC
(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム :super HZM−H
温度 :40℃
キャリア :THF 0.35mL/min
検出器 :RI 、UV:254nm
検量線 :TOSOH製の標準PS使用
[原料]
−ゴム変性スチレン系樹脂(A)−
・ゴム変性スチレン系樹脂(A−1):攪拌機を備えた反応機2基を直列連結し、その後に真空ベント付き押出機を配置した重合装置を用いて製造した。スチレン44.8質量部、ブチルアクリレート4.6質量部、メチルメタクリレート35.8部、ゴム状弾性体としてB−Sタイプ(B:ブタジエンブロック、S:スチレンブロック)で、スチレン含有量が38質量%であるゴム状弾性体12質量部、エチルベンゼン2.8質量部、1,1ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.01質量部からなる原料溶液を反応機に供給し重合を行った。反応機の重合温度は140℃とし、攪拌は50rpmとした。重合体溶液を真空ベント付押出機で、設定温度200〜250℃、10torrの減圧下で未反応モノマーを脱揮した。
得られたゴム変性スチレン系樹脂100質量部とポリジメチルシロキサン0.05質量部をブレンドし、単軸押出機で造粒した。得られたゴム変性スチレン系樹脂の物性を表1に示す。
・ゴム変性スチレン系樹脂(A−2):反応機に供給する原料溶液を、スチレン47.8質量部、メチルメタクリレート42部、ゴム状弾性体としてB−Sタイプ(B:ブタジエンブロック、S:スチレンブロック)で、スチレン含有量が38質量%であるゴム状弾性体7.4質量部とした以外はゴム変性スチレン系樹脂(A−1)の製造と同様に操作した。得られたゴム変性スチレン系樹脂の物性を表1に示す。
・ゴム変性スチレン系樹脂(A−3):反応機に供給する原料溶液を、スチレン41質量部、ブチルアクリレート4.1質量部、メチルメタクリレート33.5部、ゴム状弾性体としてB−Sタイプ(B:ブタジエンブロック、S:スチレンブロック)で、スチレン含有量が38質量%であるゴム状弾性体18.6質量部とし、反応機の攪拌数を60rpmに変化させた以外、ゴム変性スチレン系樹脂(A−1)の製造と同様に操作した。得られたゴム変性スチレン系樹脂の物性を表1に示す。
Figure 2020066724
−スチレン系共重合樹脂(B)−
・スチレン系共重合樹脂(B−1):スチレン70質量部、メタクリル酸8.5質量部、メタクリル酸メチル6.5質量部、エチルベンゼン15.0質量部、及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部からなる重合原料組成液を、0.8L/時の速度で、容量が3.6Lの完全混合型反応器に、更には未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に連続的に順次供給した。完全混合反応器の重合温度は124℃とした。単軸押出機の温度を200〜250℃に設定し、10torrの減圧下で未反応モノマーを脱揮した。得られたスチレン系共重合樹脂の物性を表2に示す。
・スチレン系共重合樹脂(B−2):重合原料組成液の組成を、スチレン48.8質量部、メタクリル酸8.2質量部、メタクリル酸メチル17.0質量%、エチルベンゼン26.0質量部、及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部とし、反応器温度を130℃とした以外は、スチレン系共重合樹脂(B−1)の製造と同様に操作した。得られたスチレン系共重合樹脂の物性を表2に示す。
Figure 2020066724
−スチレン系共重合樹脂(C)−
・スチレン系共重合樹脂(C−1):スチレン40質量部、メタクリル酸メチル60質量部、t−ブチルパーオキシイソブチレート0.35質量部、n−ドデシルメルカプタン0.15質量部よりなる重合原料組成液3500gを、ポリメタクリル酸ナトリウム0.5%水溶液6000gを仕込んだ10リットルセパラブルフラスコ中に投入し、80℃で重合した。約5時間後、反応温度を97℃に上げて2時間重合した後、濾別、洗浄、乾燥し、粒状重合物を得た。この粒状重合物をペレット化した。得られたスチレン系共重合樹脂の物性を表3に示す。
・スチレン系共重合樹脂(C−2):重合原料組成液を、スチレン70質量部、メタクリル酸メチル30質量部とした以外は、スチレン系共重合樹脂(C−1)の製造と同様に操作した。得られたスチレン系共重合樹脂の物性を表3に示す。
Figure 2020066724
[実施例1〜13、比較例1〜4]
表4に示す組成でゴム変性スチレン系樹脂(A)、スチレン系共重合樹脂(B)、スチレン系共重合樹脂(C)を、30mmφの二軸押出機(創研社製)を用いて、230℃、120rpmで混練し、その後ペレタイズしてスチレン系樹脂組成物を得た。
得られたスチレン系樹脂組成物の評価結果を表4に示す。
Figure 2020066724
表4に示すように、ゴム変性スチレン系樹脂(A)、スチレン系共重合樹脂(B)、スチレン系共重合樹脂(C)を所定の含有量とした実施例1〜13は、所定の範囲外とした比較例と比べて、良好な半透明性、耐熱性、剛性および耐衝撃性を有していることがわかる。
本発明によれば、半透明性、耐熱性、剛性および耐衝撃性を有する樹脂組成物、シート及び成形品を提供することができる。

Claims (6)

  1. ゴム状弾性体を分散粒子として含有するゴム変性スチレン系樹脂(A)とスチレン系共重合樹脂(B)との合計100質量%に対して、前記ゴム変性スチレン系樹脂(A)を50質量%以上100質量%未満、前記スチレン系共重合樹脂(B)を0質量%超50質量%以下含有するとともに、スチレン系共重合樹脂(C)を、前記ゴム変性スチレン系樹脂(A)と前記スチレン系共重合樹脂(B)との合計100質量部に対して、0質量部以上20質量部以下含有し、
    前記ゴム変性スチレン系樹脂(A)の連続相は、スチレン系単量体単位と不飽和カルボン酸エステル系単量体単位との含有量を100質量%としたとき、スチレン系単量体単位を20質量%以上70質量%以下、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を30質量%以上80質量%以下含有する共重合体(a)であり、
    前記ゴム変性スチレン系樹脂(A)の前記分散粒子は、粒子径が0.1μm以上2.0μm以下であり、前記ゴム状弾性体は、スチレン−共役ジエン共重合体を含有するとともに、当該ゴム状弾性体の含有量が前記ゴム変性スチレン系樹脂(A)100質量%に対して1質量%以上20質量%以下であり、
    前記スチレン系共重合樹脂(B)は、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、前記スチレン系単量体単位を54質量%以上96質量%以下、前記不飽和カルボン酸系単量体単位を4質量%以上16質量%以下、前記不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を0質量%以上30質量%以下含有し、
    前記スチレン系共重合樹脂(C)は、スチレン系単量体単位及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、前記スチレン系単量体単位を10質量%以上90質量%以下含有し、前記不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を10質量%以上90質量%以下含有することを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
  2. 2mm厚の平板を用いて測定した全光線透過率が、65%以上90%未満であり、且つ1mm厚の平板を用いて測定したヘイズが、5%以上70%以下である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
  3. 前記スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度が、88℃以上である、請求項1または2に記載のスチレン系樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物より形成された層を有することを特徴とする、シート。
  5. ガスバリア性を有するバリア層をさらに有する、請求項4に記載のシート。
  6. 請求項4または5に記載のシートより形成されることを特徴とする、成形品。



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