JP7367571B2 - ポリスチレン系二軸延伸シート、非発泡シート、及びこれらを用いた成形品 - Google Patents

ポリスチレン系二軸延伸シート、非発泡シート、及びこれらを用いた成形品 Download PDF

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Description

本発明は、包装容器や蓋材などに用いられるポリスチレン系二軸延伸シート、該シートの再生品を含む非発泡シート、及びこれらを用いた成形品に関する。
汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)等からなる透明なポリスチレン系二軸延伸シートは、剛性、軽量性、透明性、成形性、リサイクル性などの観点から食品包装容器や蓋材などの成形品として使用されている。
近年、コンビニエンスストアなどで使用される業務用電子レンジの普及、及び、電子レンジの使用時間短縮のため、より高出力の機器が使用されるようになり、さらにはチルド弁当のように、電子レンジを調理器具として用いた商品も展開されているため、耐熱性容器として利用可能な耐熱性ポリスチレン系樹脂からなる二軸延伸シートが求められている。
例えば、特許文献1には、スチレン単量体単位69~92質量%、メタクリル酸単量体単位6~16質量%、及びメタルクリル酸メチル単量体単位2~15質量%含有するスチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル樹脂を用いて成形される押出シートが開示されている。また、特許文献2には、スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合樹脂と耐衝撃性スチレン系樹脂とを含有する二軸延伸スチレン系樹脂シートが開示されている。さらには、特許文献3には、多分岐状マクロモノマーとスチレン系モノマーとメタクリル酸とを共重合してなる多分岐状共重合体と、スチレン系モノマーとメタクリル酸とを共重合してなる共重合体を含有するスチレン系樹脂シートが開示されている。
一方で、ポリスチレン系二軸延伸シートは、生産性、経済性、さらには近年の環境問題の点から、リサイクル利用することが必須となっている。具体的には、シート製膜時の耳や端片、シートから容器等を成形した際の残片(スケルトン)は、粉砕され、或いは再ペレット化され、ポリスチレン系樹脂のバージンペレットなどに混合され、再度、溶融押出してシート化し、利用されている。
しかしながら、特許文献1~3のシートは、耐熱性向上による形状維持のみに着目されたものであり、リサイクル利用して他のポリスチレン系樹脂と混合してシートを作製しようとすると、ゲルや未溶融物が多発する、シート強度が得られない、等々の問題が多く、リサイクル利用することができないものであった。例えば、特許文献1~3に開示されているようなメタクリル酸などが共重合されたスチレン系共重合樹脂シートでは、それらのスケルトンをリサイクルに回して耐衝撃性ポリスチレン系樹脂と混合してシート化した場合、汎用ポリスチレン樹脂シートのスケルトンをリサイクルに用いた場合と比較して、得られる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートの耐衝撃性が劇的に低下することが分かった。
特開2011-126996号公報 特開2015-021074号公報 特開2016-030817号公報
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、電子レンジ加熱時の変形が抑制されるレベルの耐熱性を備え、また、当該シートの粉砕物または再ペレット等を他のポリスチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン樹脂)のバージンペレットと混合してシートを作製しても、ゲル発生が抑制され且つ十分な強度を発揮するといった優れたリサイクル性を有し、更に良好な耐ブロッキング性と透明を備えた、実用性の高いポリスチレン系二軸延伸シートを提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討し、耐熱ポリスチレン系樹脂を含むポリスチレン系二軸延伸シートのリサイクル利用において、シートのビカット軟化点を所定の温度とすることで、該シートの粉砕物および/または再ペレットと他のポリスチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン樹脂)との相溶性を向上させ、リサイクルで作製したシートの機械的強度や表面外観が良好になることを見出し、本発明を完成するに至った。
第1の本発明は、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)を含む、リサイクル使用可能なポリスチレン系二軸延伸シートであって、前記シートのビカット軟化点温度が106℃以上115℃以下であり、前記シート両表面の3次元表面粗さSa(算術平均高さ)が10nm以上及び/又は前記シート両表面の3次元表面粗さSz(最大高さ)が1000nm以上であり、厚み250μmの前記シートのヘーズが3.0%以下であり、且つ、前記シートの粉砕物及び/又は再ペレット(f)40質量%と耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)60質量%とからなる樹脂組成物で非発泡シート(R40)を作製した場合に、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)100質量%からなる非発泡シート(H)の面衝撃強度に対する非発泡シート(R40)の面衝撃強度の比率[面衝撃強度比率(R40/H)]が0.60以上である、ことを特徴とするポリスチレン系二軸延伸シートである。
第1の本発明において、前記非発泡シート(R40)のイエローネスインデックスをYI(R40)、前記非発泡シート(H)のイエローネスインデックスをYI(H)とした場合に、ΔYI=YI(R40)-YI(H)が1.5以下であることが好ましい。
第1の本発明において、前記耐熱ポリスチレン系樹脂(s)のメルトフローレートが1.5g/10分以上4.0g/10分以下であることが好ましい。
第1の本発明において、球状合成二酸化ケイ素、スチレン系微粒子、アクリル系微粒子、及びスチレングラフトジエンゴムからなる群から選ばれる1種以上であり、平均粒子径が1~10μmである粒子を更に含有することが好ましい。
第1の本発明において、ポリスチレン系二軸延伸シートを構成する材料全体を100質量%として、前記スチレングラフトジエンゴムを4.0質量%以上含有し、該スチレングラフトジエンゴムが、平均ゴム粒子径1.0μm以上、ゴム濃度4.0質量%以下、及びメルトフローレート7.0g/10分以上であることが好ましい。
第2の本発明は、第1の本発明のポリスチレン系二軸延伸シートの粉砕物及び/又は再ペレット(f)と耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)とからなる樹脂組成物で構成される非発泡シート(R)である。
第3の本発明は、第1の本発明のポリスチレン系二軸延伸シート又は第2の本発明の非発泡シート(R)を用いた成形品である。
本発明のポリエステル系二軸延シートによれば、電子レンジ加熱変形が抑制される耐熱性を備えているので、今般、使用量が急増している電子レンジ用途に好適に用いることができ、かつ、リサイクル性が好適であるため、プラスチック使用量を抑制して経済性、環境問題に貢献することができる。
また、透明性、耐ブロッキング性が良好であり、実用性の高いポリスチレン系二軸延シートとすることができる。
なお、上記のリサイクル性とは、本発明のシートの粉砕物及び/または再ペレット(f)を他のポリスチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h))のバージンペレットと混合してシートを作成しても、シートの機械的強度および表面外観が良好であることをいう。
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明のポリスチレン系二軸延伸シート(S)(以下、「本発明のシート(S)」ともいう)、非発泡シート(R)、および、成形品について説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、以下、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)を含む、本発明のポリスチレン系二軸延伸シート(S)の粉砕物及び/又は再ペレット(f)を「耐熱ポリスチレン系樹脂成分(f)(再利用物(f))」と呼称することがある。また、再利用物(f)と耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)とを混合して作製した非発泡シートを、「非発泡シート(R)(リサイクルシート(R))」と呼称することがある。該耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)からなる非発泡シートを「非発泡シート(H)」と呼称することがある。なお、再利用物(f)を40質量%、および、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)を60質量%からなる樹脂組成物で作製した非発泡シートを「非発泡シート(R40)」と呼称することがある。
なお、本発明において、「主成分」とは、構成する樹脂組成物において最も多い質量比率を占める成分であることをいい、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
また、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
<ポリスチレン系二軸延伸シート(S)>
(耐熱ポリスチレン系樹脂(s))
本発明のポリスチレン系二軸延伸シート(S)は、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)を含む。
耐熱ポリスチレン系樹脂(s)は、スチレン系単量体(a)を主成分としてなる樹脂である。前記耐熱ポリスチレン系樹脂(s)が共重合体である場合、スチレン系単量体(a)を主たる単量体成分とすれば、他の単量体成分を1種以上含有する多元共重合体でもよい。また、共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの共重合形態であってもよい。
また、前記耐熱ポリスチレン系樹脂(s)は、線状ポリスチレン系樹脂であってもよく、多分岐状ポリスチレン系樹脂であってもよい。本発明のシートに用いる前記耐熱ポリスチレン系樹脂(s)は1種類であってもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
前記スチレン系単量体(a)としては、スチレン及びその誘導体が挙げられる。例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン等のアルキルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン等のハロゲン化スチレン、ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン等が挙げられる。
中でも、本発明のシートをリサイクル利用する際の他のポリスチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h))との相溶性の観点から、スチレン、α-メチルスチレンを用いることが好ましい。
また、共重合体に用いられる他の単量体の例を挙げると、(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリルや、ブタジエン、イソプレン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の共役ジエン系炭化水素、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィン等が挙げられる。
中でも、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)のビカット軟化点向上の観点から、共重合体に用いられる他の単量体としては、(a)と異なる種類のスチレン系単量体であるα-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、アクリロニトリルを用いることが好ましく、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルを用いることがより好ましく、(メタ)アクリル酸を用いることが特に好ましい。
ここで、「(a)と異なる種類のスチレン系単量体」とは、例えば、スチレン系単量体(a)としてスチレンを用いている場合は、該スチレン以外のスチレン系単量体をいい、例えば、α-メチルスチレン、ジメチルスチレン等をいう。
また、前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸フェニルアミノエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
中でも、本発明のシートをリサイクル利用して新たにシート成形する時の脱水反応に伴う外観不良抑制や機械強度低下抑制の観点から、共重合体に用いられる他の単量体として、(メタ)アクリル酸メチルを用いることが好ましい。
前記耐熱ポリスチレン系樹脂(s)が共重合体である場合、スチレン系単量体(a)と、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、及びアクリロニトリルの群から選ばれる1種の単量体(b)との二元共重合体や、スチレン系単量体(a)と、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及びアクリロニトリルの群から選ばれる1種の単量体(b)’と、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)との三元共重合体が、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)のビカット軟化点上昇の観点で好ましい。中でも、単量体(b)又は(b)’が(メタ)アクリル酸である二元共重合体又は三元共重合体が好ましい。
前記二元共重合体の共重合組成比は、単量体(a)と(b)の合計を100質量%とした場合、(a)80~99質量%、(b)1~20質量%が好ましい。
前記三元共重合体の共重合組成比は、単量体(a)と(b)’と(c)の合計を100質量%とした場合、(a)60~98質量%、(b)’1~20質量%、(c)1~20質量%が好ましい。
スチレン系単量体(a)の共重合組成比は、二元共重合体の場合は、85~98質量%がより好ましく、86~97質量%がさらに好ましく、90~97質量%が最も好ましい。
三元共重合体の場合は、67~96質量%がより好ましく、74~94質量%がさらに好ましく、78~92質量%が最も好ましい。
スチレン系単量体(a)の共重合組成比が二元共重合体の場合80質量%以上、三元共重合体の場合60質量%以上であると、他のポリスチレン系樹脂、特に耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)との相溶性の点で好ましい。また、スチレン系単量体(a)の共重合組成比が二元共重合体の場合99質量%以下、三元共重合体の場合98質量%以下であると、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)のビカット軟化点温度が高くなり耐熱性を向上させやすい。
前記耐熱ポリスチレン系樹脂(s)が二元共重合体の場合、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸の群から選ばれる1種の単量体(b)の共重合組成比は、2~15質量%が好ましく、3~14質量%がより好ましく、3~10質量%が更に好ましい。三元共重合体の場合、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸の群から選ばれる1種の単量体(b)’の共重合組成比は、2~18質量%が好ましく、3~16質量%がより好ましく、4~14質量%が更に好ましい。
単量体(b)、(b)’を1質量%以上含有すると、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)のビカット軟化点温度が高くなり耐熱性を向上させやすい。また、単量体(b)、(b)’の含有量が20質量%以下であると、リサイクルシート(R)中のゲル化物の増加が抑制され、外観が良好となる。また、リサイクルシート(R)の機械強度の低下が起き難い。
前記耐熱ポリスチレン系樹脂(s)が三元共重合体の場合、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)の含有量は、2~15質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましく、4~8質量%であることが更に好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)の含有量が20質量%以下であると、リサイクルシート(R)の吸水が抑制され、リサイクルシート(R)成形時において発泡等が生じ難い。
前記耐熱ポリスチレン系樹脂(s)が、(メタ)アクリル酸単量体を含む共重合体である場合、(メタ)アクリル酸の脱水反応によるゲル化反応を抑制するために、シートを構成する材料中に、炭素数14以上の脂肪族第1級アルコールを含有することが好ましい。中でも、凝固点が-10℃以下のイソ型の脂肪族第1級アルコールが特に好ましい。
前記脂肪族第1級アルコールの含有量は、本発明のシートを構成する材料全体を100質量%として、0.02~1.0質量%であることが好ましい。
前記炭素数14以上の脂肪族第1級アルコールとしては、n-ミリスリルアルコール、n-パルミチルアルコール、n-ステアリルアルコール等が挙げられる。更に、凝固点が-10℃以下のイソ型の脂肪族第1級アルコールとしては、炭素数14のイソテトラデカノール、炭素数16のイソヘキサデカノール、炭素数18のイソオクタデカノール、及び炭素数20のイソエイコサノールが挙げられ、中でも、炭素数18のイソオクタデカノールが好ましい。
具体的には、例えば、7-メチル-2-(3-メチルブチル)-1-オクタノール、5-メチル-2-(1-メチルブチル)-1-オクタノール、5-メチル-2-(3-メチルブチル)-1-オクタノール、2-ヘキシル-1-デカノール、5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-1-オクタノール、8-メチル-2-(4-メチルヘキシル)-1-デカノール、2-ヘプチル-1-ウンデカノール、2-ヘプチル-4-メチル-1-デカノール、2-(1,5-ジメチルヘキシル)-(5,9-ジメチル)-1-デカノールが例示できる。
耐熱ポリスチレン系樹脂(s)のビカット軟化点温度は、本発明のシート(S)のビカット軟化点温度を106~115℃とし、シート(S)に良好な電子レンジ耐熱性を付与する観点から、106~117℃が好ましい。下限は108℃以上がより好ましく、109℃以上が更に好ましい。上限は116℃以下がより好ましい。
また、本発明において、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)のメルトフローレート(MFR(s))は1.5g/10分以上4.0g/10分以下であることが好ましい。より好ましくは1.7g/10分以上、更に好ましくは1.9g/10分以上である。耐熱ポリスチレン系樹脂(s)のMFR(s)の上限は、より好ましくは3.5g/10分以下、更に好ましくは3.0g/10分以下である。
耐熱ポリスチレン系樹脂(s)を含む二軸延伸シート(S)の粉砕物及び/又は再ペレット(f)のメルトフローレートMFR(f)は、シート(S)中の耐熱ポリスチレン系樹脂(s)の含有率が高いほど、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)のメルトフローレートMFR(s)に近似し、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)のMFR(s)が上記範囲である場合、ポリスチレン系二軸延伸シート(S)の粉砕物及び/又は再ペレット(f)を、他のポリスチレン系樹脂、特に耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)と混合して非発泡シート(R)(リサイクルシート(R))を作製する際に、粉砕物及び/又は再ペレット(f)と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)との混合分散性が良好となってドメインサイズ(分散サイズ)が小さくなりやすく、実用性の高い機械強度を有するリサイクルシート(R)が得られるため好ましい。
メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210:1999、条件H[測定温度200℃、測定荷重5.00kgf]に準拠して測定することができる。
以下に、本発明のシート(S)の粉砕物及び/又は再ペレット(f)のMFR(f)に関する検討および導き出した考察を記す。
一般に、ビカット軟化点が106℃以上のポリスチレン系二軸延伸シートから作製した粉砕物及び/又は再ペレット(耐熱ポリスチレン系樹脂成分)は、HIPSなどの耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)と非相溶であるため、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)を主成分として両者を混合してシート化した場合は、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂を海、耐熱ポリスチレン系樹脂成分を島(ドメイン)とした海島構造のモルフォロジーが形成される。そして、上述の耐熱ポリスチレン系樹脂成分のドメインが大きくなるに従い、得られるリサイクルシートの耐衝撃性、引き裂き強度などの機械強度が低下傾向を示す。
これが、従来、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)の中に耐熱ポリスチレン系樹脂成分を混合してなるシートが、求められる機械強度等の諸物性を満たすことができなかった主要因であり、従来の耐熱ポリスチレン系樹脂をリサイクルに用いることができなかった所以である。
従来は、上述の課題を解決するために、より低いビカット軟化点を示す耐熱ポリスチレン系樹脂又は非耐熱の一般ポリスチレン系樹脂を用い、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)との相溶性を上げることで対応されていたところを、本発明は、高いビカット軟化点を示す耐熱ポリスチレン系樹脂(s)を用いた場合においても、上述のドメインサイズをより小さく制御することによってリサイクルシートの機械強度低下を抑制できることに着目し、そして、その物性発現には耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)と耐熱ポリスチレン系樹脂成分(f)の両者のメルトフローレート(MFR)の関係性が支配因子であることを見出したものである。
すなわち、耐熱ポリスチレン系樹脂成分(f)のメルトフローレートMFR(f)が、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)のメルトフローレートMFR(h)に対して、小さ過ぎず同程度であることが好ましく、MFR(f)がMFR(h)より大きい値であることがより好ましい。例えば、MFR(f)とMFR(h)とが、下記の式(1)を満たすことが好ましく、式(2)を満たすことがより好ましい。
MFR(f)-MFR(h)≧-0.5[単位:g/10分]…式(1)
MFR(f)-MFR(h)≧0.0 [単位:g/10分]…式(2)
式(1)を満たすことにより、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)の海(マトリックス)中での、耐熱ポリスチレン系樹脂成分(f)の溶融粘度が相対的に小さくなりやすくなり、耐熱ポリスチレン系樹脂成分(f)の自己凝集力が小さくなり、海島構造の島が均一分散に近い構造を形成しやすくなり、耐熱ポリスチレン系樹脂成分(f)のドメインサイズが小さくなる。
また、上記式の左辺のMFR(f)-MFR(h)の上限は特に限定しないが、以下の一般に式(3)を満たすことが好ましい。
MFR(f)-MFR(h)≦3.5 [単位:g/10分]…式(3)
式(3)を満たすことにより、リサイクルシート(R)の樹脂の混合ムラによる外観不良を抑制しやすいため好ましい。
ここで、耐熱ポリスチレン系樹脂成分(f)、すなわち、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)を含む二軸延伸シート(S)の粉砕物及び/又は再ペレット(f)のメルトフローレートMFR(f)は、シート(S)中の耐熱ポリスチレン系樹脂(s)の含有率が高いほど、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)のメルトフローレートMFR(s)に近似する。例えば、二軸延伸シート(S)が、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)と耐ブロッキング剤からなる場合は、式(1)~(3)は、下記の式(4)~(6)に置き換えられる。
MFR(s)-MFR(h)≧-0.5[単位:g/10分]…式(4)
MFR(s)-MFR(h)≧0.0 [単位:g/10分]…式(5)
MFR(s)-MFR(h)≦3.5 [単位:g/10分]…式(6)
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)相が海、耐熱ポリスチレン系樹脂成分(f)相が島(ドメイン)となるモルフォロジー構造において、良好なシート機械強度を示すドメインサイズは、特に限定されないが、無延伸シートにおいては、例えば、ドメインの短径が1.0μm以下であり、延伸シートにおいては例えばシートの厚さ方向のドメインサイズが1.0μm以下である。
(耐ブロッキング剤)
本発明のシート(S)には、本発明の効果を損なわない範囲において、耐ブロッキング剤を含有することができる。
耐ブロッキング剤としては、無機系粒子や有機系粒子を用いることができ、これらの粒子は単独又は二種以上組み合わせて使用でき、平均粒子径が1~10μmである粒子が好ましい。本発明のシート(S)の両表面に所望する凹凸レベルを形成するには、耐ブロッキング剤の種類・形状、含有量・分散性を適宜考慮して選択して用いるとよい。
無機系粒子としては、特に限定されるものではないが、シリカ、ガラスビーズ等、及びそれらの表面に化学的処理を施したもの等が挙げられるが、化学的に安定であり、触媒作用によって樹脂を変性させないこと、及び形成したポリスチレン系二軸延伸シート(S)へのシリコーンオイルの塗布性が良好であることから、天然二酸化ケイ素又は合成二酸化ケイ素が好ましい。
本発明のシート(S)に無機系粒子を添加する場合は、特に十分な耐ブロッキング効果を発現させ、シートロール輸送時にシート表面に傷を生じたりすることを防止するため、体積平均粒子径(d50値)が1~10μm、かつ粒子径分布(d90/d10値)が1.9以下の球状合成二酸化ケイ素が好ましく、添加量はポリスチレン系二軸延伸シート(S)を構成する材料全体を100質量%として、0.005~0.10質量%が好ましく、0.01~0.05質量%がより好ましい。
体積平均粒子径(d50)と粒子径分布(d90/d10値)は、レーザー回折式粒度分布測定法にて評価できる。d50は、累積度数分布において累積積値が50%に相当する体積平均粒子径であり、d90は、累積度数分布において累積積値が90%に相当する体積平均粒子径であり、d10は、累積度数分布において累積積値が10%に相当する体積平均粒子径である。
有機粒子としては、熱可塑性樹脂やゴム粒子などが挙げられる。例えば、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(例えば、架橋ポリエチレン、架橋ポリプロピレンなど)、スチレン系樹脂(例えば、架橋ポリスチレン、架橋ポリビニルトルエン、架橋スチレン-メタクリル酸メチル共重合体など)、アクリル系樹脂(例えば、架橋ポリメタクリル酸メチルなど)などの粒子が挙げられる。ゴム粒子としては、例えば、ジエン系ゴム、アクリルゴム、エチレン-α-オレフィン-ポリエン共重合体、水添ジエン系ゴムなどが挙げられる。
これらの粒子のうち、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)との相溶性の点から同系統の樹脂で構成された架橋有機粒子、特に架橋樹脂粒子(特にスチレン系微粒子、アクリル系微粒子など)や、グラフトしたゴム分散粒子(特にスチレングラフトジエンゴムなど)が好ましい。また、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)と架橋樹脂粒子との相溶性向上のため、グラフトしたゴム分散粒子を併用しても良い。
本発明のシート(S)に架橋樹脂粒子を添加する場合は、体積平均粒子径(d50値)は1~5μm程度がより好ましく、添加量はポリスチレン系二軸延伸シート(S)を構成する材料全体を100質量%として、0.005~0.10質量%が好ましく、0.01~0.05質量%がより好ましい。
本発明のシート(S)に、耐ブロッキング材として、スチレングラフトジエンゴムを用いる場合は、本発明のポリスチレン系二軸延伸シート(S)を構成する材料全体を100質量%として、スチレングラフトジエンゴムを4.0質量%以上含有することが好ましい。また、スチレングラフトジエンゴムは、平均ゴム粒子径1.0μm以上、ゴム濃度4.0質量%以下およびメルトフローレート7.0g/10分以上であることが好ましい。シート(S)中において、スチレングラフトジエンゴムのうちのゴム濃度分がゴム粒子となり、耐ブロッキング機能を果たす。
スチレングラフトジエンゴムの平均ゴム粒子径は、シート(S)の両表面に適度な凹凸を形成させ、耐ブロッキング性に有効な3次元表面粗さSz(最大高さ)を得やすい点から、下限は1.0μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましく、2.0μm以上が更に好ましい。上限は4.0μm以下が好ましく、3.5μm以下がより好ましく、3.0μm以下が更に好ましい。シート(S)中に分散するゴム粒子がこのように小さな粒子径範囲であると、シート(S)の透明性向上に有効であり、厚み250μmの場合のシート(S)のヘーズを3%以下に抑えることができる。
スチレングラフトジエンゴムの平均ゴム粒子径は、超薄切片法により透過型電子顕微鏡を用いて1万倍の拡大写真を撮影し、撮影されたゴム成分の粒子約1000個の粒子径を測定して、次式すなわち、ゴム平均粒子径[μm]=(ΣniDi)/(ΣniDi)により算出する。この式において、niは粒子径がDiであるゴム粒子の個数を示す。また、上記ゴム成分の粒子は完全な円形ではないので、長径と短径を測定し、算術平均して粒子径を算出する。
スチレングラフトジエンゴムのゴム濃度は、1.0質量%以上4.0質量%以下が好ましい。下限は1.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上が更に好ましい。上限は3.5質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましい。
本発明のシート(S)中のスチレングラフトジエンゴムの含有率は、シート(S)を構成する材料全体を100質量%として、4.0質量%以上であることが好ましく、上限は特に制限しないが透明性の点で10.0質量%以下が好ましく、8.0質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下が更に好ましい。本発明のシート(S)中のスチレングラフトジエンゴムに由来するゴム濃度、言い換えるとシート(S)中のゴム粒子濃度は、0.04~0.40質量%が好ましく、下限は0.05質量%以上が好ましく、上限は0.30質量以下が好ましく、0.20質量%以下がより好ましく、0.10質量%以下が更に好ましい。
本発明のシート(S)は、比較的ゴム濃度の低い、グラフトしたゴム分散粒子をシート(S)中に高濃度添加することにより、耐ブロッキング性の他、格段に優れた透明性を得ることができる。具体的には、ゴム濃度4.0質量%以下のスチレングラフトジエンゴムをシート(S)中の含有率4.0質量%以上添加することで、シート表面に適度な凹凸を形成させて良好な耐ブロッキング性を得ることができると同時に、厚み250μmのシート(S)のヘーズを3.0%以下に抑えることができる。その結果、シートの透明性、外観美観性の向上、印刷を施した場合の色合いや諧調の表現性の良さの向上に大きく寄与することができる。他方、比較として、例えば、平均ゴム粒子径が同じであるスチレングラフトジエンゴムを用い、シート中のスチレングラフトジエンゴムに由来するゴム濃度を上記範囲に設定した場合でも、ゴム濃度が6.8質量%以上と高濃度のスチレングラフトジエンゴムをシート中に3.0質量%以下と低い含有率で配合させると、シート厚み250μmでは、シートのヘーズは3.0%を超えてしまい、シートの透明性、製品価値が大きく損なわれるものとなる。
スチレングラフトジエンゴムのゴム濃度、シート(S)中のスチレングラフトジエンゴムに由来するゴム濃度は、ブタジエン成分の含有量として一塩化ヨウ素、ヨウ化カリウムおよびチオ硫酸ナトリウム標準液で電位差滴定することにより測定できる。分析方法は、例えば、日本分析化学会高分子分析研究懇談会編、「新版 高分子分析ハンドブック」、紀伊國屋書店(1995年度版)、P.659の「(3)ゴム含量」に記載の方法で測定することができる。
また、スチレングラフトジエンゴムのメルトフローレート(MFR)は、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)に対する分散性の観点から、7.0g/10分以上が好ましく、12.0g/10分以上がより好ましく、17.0g/10分以上が更に好ましい。MFRの上限は、30.0g/10分程度である。MFR7.0g/10分以上であると、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)との溶融混錬時にスチレンブタジエンゴムが十分に混錬分散され、比較的低粘度のスチレングラフトジエンゴムがシート(S)の表面側へも分散し易くなり、両表面の3次元表面粗さSa(算術平均高さ)10nm以上及び/又は3次元表面粗さSz(最大高さ)1000nm以上を達成することが可能となり、ひいては、シート(S)に良好な耐ブロッキング性を付与することができる。
メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210:1999、条件H[測定温度200℃、測定荷重5.00kgf]に準拠して測定することができる。
また、スチレングラフトジエンゴムは、耐ブロッキング剤としての機能の他に、シートの耐衝撃性を向上させる機能もある。従来の耐熱ポリスチレン系二軸延伸シートは、一般のポリスチレン系二軸延伸シートに比べ、シートから成形用型を打ち抜いたり、シートの端材を粉砕したりする際に、シートが割れ散って飛散してしまい、作業性の悪化や異物混入を生じ易いという問題、更には該作業を通して切粉が発生しやすいという問題があるところ、シート(S)中に上述のスチレングラフトジエンゴムを4.0質量%以上配合して微分散させることによって、そういった問題を軽減させることができる効果を有する。
(その他の成分)
本発明のシート(S)には、本発明の効果を損なわない範囲において、他の樹脂を含有することができる。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
また、本発明のシート(S)は、使用目的に応じて、内部潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、加工助剤、溶融粘度改良剤、酸化防止剤、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候性安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、核剤、架橋剤、滑材、鉱油、スリップ剤、防曇剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤および顔料などを適宜含有してもよい。
内部潤滑剤としては、例えばミネラルオイルなどが挙げられ、配合量はシート(S)100質量%に対して、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。2.0質量%を超えて配合すると、押出溶融時に内部潤滑剤の一部が揮発して製造装置に付着し、凝集した内部潤滑剤がシートに転写し、シートの外観を損ねる可能性がある。
また、本発明のシート(S)は、シート表面に防曇剤、帯電防止剤、例えばシリコーンオイル等の離型剤、等の塗布層を有することができる。離型剤としては、シリコーンオイルが好ましく、高温成形時に該シート表面を侵しにくいことから、ポリジメチルシロキサンがより好ましい。離型剤の塗布量は、特に制限されるものではないが、上記のシート性能を発揮させるためには、片面に5~100mg/mの範囲で塗布することが好ましい。
本発明のシート(S)を成形加工して食品包装材として使用する場合は、食品側となる面に防曇剤を含む塗布層、その反対面に離型剤層を有することが好ましい。防曇剤としては公知の界面活性剤が使用可能で、特に多価アルコール脂肪酸エステル(ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなど)が好ましく、多価アルコール脂肪酸エステルと水溶性ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体など) や、多糖類(メチルセルロース、シクロデキストリンなど)などとの2種以上の混合物が特に好ましい。防曇剤の塗布量は、特に制限されるものではないが、シートの防曇性能の点から、片面に10~100mg/mの範囲で塗布することが好ましい。
<ポリスチレン系二軸延伸シート(S)の物性、特性>
(ビカット軟化点温度)
本発明のシート(S)は、ビカット軟化点温度106℃以上115℃以下を有する。下限は107℃以上が好ましく、108℃以上がより好ましい。また、上限は、113℃以下が好ましい。ビカット軟化点温度が106℃以上であることにより、電子レンジ加熱時のシート変形を抑制しやすい。ビカット軟化点温度が115℃を超えると、本発明のシート(S)を粉砕物及び/又は再ペレット(f)にしてリサイクル利用する場合に、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)と混合してシートを作製すると、該リサイクルシート(R)の強度が大きく低減したり、リサイクルシート(R)が黄色味を呈したりしてしまい、利用価値を大幅に損ねてしまう。
ビカット軟化点温度の測定は、JIS K7206:1999 B50法に準拠して測定できる。
(表面粗さ)
本発明のシート(S)は、3次元表面粗さSa(算術平均高さ)が両表面共に10nm以上及び/又は3次元表面粗さSz(最大高さ)が両表面共に1000nm以上であることが好ましく、これにより耐ブロッキング性が良好となる。より好ましくは、Saが両表面共に20nm以上及び/又はSzが両表面共に2000nm以上である。
表面粗さが上記範囲であることにより、塗布層を有しないシートや、少なくとも片面に塗布層を有するシートがロール巻きで保管されている状態や、該シートが成形品に加工されて複数個が重ねられた状態において、ブロッキングを抑制することができる。特に、上述の表面粗さを有しないと、片面に防曇剤層、その反対面に離型剤層を有するシートがロール巻きの形態で、高温下、高荷重下、長期間保管されるような場合には、防曇剤と離型剤の何れか又は相互の分子移動が促進され、防曇性能及び/又は離型性能の機能低下が起こり、シートやその成形品、また内容物を収容した包装体の商品価値が消失してしまうところ、シート(S)が上記の表面粗さを有することによりそれらを防ぐことができ、極めて重要な効果をもたらすものである。
表面粗さは、シートを構成する成分、シートの延伸条件、等によって影響するが、上述の耐ブロッキング剤の成分、粒子径、シート中の含有率による表面粗さの制御が主要である。特に、平均ゴム粒子径1μm以上、ゴム濃度4.0質量%以下およびメルトフローレート7.0g/10分以上であるスチレングラフトジエンゴムを、シート(S)を構成する材料全体を100質量%として、4.0質量%以上含有することによって、上述の表面粗さを得やすく、耐ブロッキング性と透明性の効果の兼備に秀でる。
3次元表面粗さSa及びSzは、例えば非接触表面粗さ計ブルカー社製白色干渉計Contour GTX機を用いて、Filter White、ObjectiveLens5倍、FOVLens1.0倍、BackscanLength5、ScanLength25の条件で測定することができる。
(耐ブロッキング性)
本発明のシート(S)は、シート表面に塗布剤層(防曇剤層、離型剤層)を有する場合、有しない場合とも、ブロッキングしないことが望ましい。特に、シートが塗布剤層を有し、高温下、高荷重下、長期間保管される場合において、ブロッキングしないことが好ましい。耐ブロッキング性が良好であることで、シートの取り扱い性が良く、シート同士の摩擦による擦傷が生じず良好なシート外観を維持できる。また、塗布剤層を有する場合は、塗布剤層の損傷を抑制し、塗布剤層の機能を十分発揮できる。
耐ブロッキング性の評価は、過負荷条件として、シートの一方の面に防曇剤層および他方の面に離型剤層を設けたシート2枚を、防曇剤面と離型剤面とを対向させて、ハンドプレス機で温度60℃、荷重50kgf/cm(4.9MPa)、30分間の加圧を行った後の2枚のシートの剥がしやすさで判断できる。
(透明性)
本発明のシート(S)は、無色透明であることが好ましい。例えば、シート厚み250μmの場合に、ヘーズ3.0%以下であることが透明性良好の指標となる。
シートのヘーズ測定は、JIS K7105に準拠して測定できる。
(厚み)
本発明のシート(S)の厚みは、特に限定されないが、シート強度、耐熱性、成形性、経済性などの点から0.08~1.0mmが好ましく、0.1~0.7mmがより好ましく、0.2~0.4mmが特に好ましい。
<ポリスチレン系二軸延伸シート(S)の製造方法>
本発明のポリスチレン系二軸延伸シート(S)の製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、押出機を用いて前記樹脂組成物を溶融し、ダイからシート状に押出し、冷却ロールや空冷、水冷にて冷却固化して得られる未延伸シートを、縦方向及び横方向に延伸処理した後、巻取機にて巻き取ることによりシートを得る方法が例示できる。ここで、「シート」とは、厚いシートから薄いフィルムまでを包括した意を有する。
前記未延伸シートを得る方法としては、本発明のポリスチレン系二軸延伸シート(S)を構成する組成物を混合した後、単軸押出機、異方向二軸押出機、同方向二軸押出機などの押出機を使用し、組成物の均一な分散分配を促す。本発明のシート(S)を構成する組成物が複数の種類からなる場合、タンブラーミキサー、ミキシングロール、バンバリーミキサー、リボンブレンダ―、スーパーミキサーなどの混合機で適当な時間混合した後、押出機に投入してもよく、他の混練機の先端にストランドダイを接続し、ストランドカット、ダイカットなどの方法により一旦ペレット化した後、場合によっては追加する組成物と共に、得られたペレットを押出機に投入してもよい。
押出機により溶融された樹脂組成物は、押出機の先端にTダイなどの口金を接続し、シート状に成型された後、冷却ロールで冷却固化される。押出温度は、180~260℃程度が好ましく、より好ましくは190~250℃である。押出温度やせん断の状態を最適化することにより、種々の物理的特性、機械的特性を所望の値にするのに有効となる。
本発明のポリスチレン系二軸延伸シート(S)の延伸方法としては、特に制約されるものではないが、縦方向(シートの流れ方向、MD)へのロール延伸や、横方向(シートの流れ方向に対して垂直方向、TD)へのテンター延伸等により、二軸延伸されることが好ましい。
また、上述のように縦方向に延伸した後、横方向に延伸してもよく、横方向に延伸した後、縦方向に延伸してもよい。また、縦方向及び横方向に延伸処理されていれば、同じ方向に2回以上延伸してもよい。さらには、縦方向に延伸した後、横方向に延伸し、さらに縦方向に延伸してもよい。また、同時二軸延伸機により縦方向、横方向に同時に延伸されてもよい。さらには、未延伸シートを裁断し、バッチ式の延伸機により二軸延伸されてもよい。
縦方向への延伸としては、ロールを用いた縦延伸方法が好ましい。ロールを用いた縦延伸方法は、低速ロールと高速ロールを同方向に回転させてシートを平行掛けに通紙し、延伸する方法と、低速ロールと高速ロールを逆回転させてシートを襷掛けに通紙し、延伸する方法とがあり、1段あるいは多段、平行掛けあるいは襷掛けの任意の組み合わせとすることができる。また、低速ロールと高速ロールとの間にヒーターなどを設置し、ヒーターによる加熱を行いながら延伸することもできる。横方向への延伸としては、テンター延伸されることが好ましい。
縦延伸、横延伸における延伸倍率は、ポリスチレン系二軸延伸樹脂シート(S)を構成する樹脂組成物により異なるが、通常面倍率で1.5~15倍、より好ましくは4~10倍である。逐次延伸の場合の縦方向の延伸倍率は1.2~5倍で、好ましくは1.5~3.0倍であり、横方向の延伸倍率は1.2~5倍で、好ましくは1.5~3.0倍である。同時ニ軸延伸の各方向の延伸倍率は1.5~5倍である。
縦延伸、横延伸における延伸温度は、ポリスチレン系二軸延伸樹脂シート(S)を構成する樹脂組成比により異なるが、縦延伸、横延伸ともに、概ね110℃~150℃の温度で延伸されることが好ましい。
防曇剤、帯電防止剤、離型剤等の塗布層は、シートの延伸後に、公知の方法でシート表面に塗布して形成することができ、塗布層の形成前に、公知の方法でシート表面にコロナ処理を施すことができる。また、必要により、共押出やドライラミネートなどによって、同種または異種の熱可塑性樹脂を積層しても良い。
<粉砕物及び/又は再ペレット(f)>
耐熱ポリスチレン系樹脂(s)を含む二軸延伸ポリスチレン系シート(S)の粉砕物及び/又は再ペレット(f)としては、例えば、シート(S)の製膜時に生じる耳や端分、シート(S)の成形加工時に生じるトリミング残分やスケルトンおよび、規格外となった製品などを粉砕機により粉砕した物(フラフ)や、それらを用いて再ペレット化させた物である。
特に、粉砕物(フラフ)は、再ペレットに比べ、製造工程が簡易であり且つ熱履歴が1回少なくてすむので、再利用に好ましい。
該粉砕物及び/又は再ペレット(f)は、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)とほぼ同等の物性を有するので、ポリスチレン系二軸延伸シート(S)の原材料として用いることができる。
例えば、単層シートの場合には、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)のバージンペレットと混合して再利用できる。多層シートの場合には、両面の表層以外の層に、粉砕物及び/又は再ペレット(f)を単独で、及び/又は、耐熱ポリスチレン系樹脂(s)のバージンペレットと混合して、再利用できる。
また、粉砕物及び/又は再ペレット(f)のメルトフローレートMFR(f)は、上述の通り、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)のメルトフローレートMFR(h)との差が小さいという特徴を持っていることにより、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)との混合分散性に秀でているので、機械強度や色目が良好で、ゲル異物の少ない実用性の高いリサイクルシートを得ることができる。
粉砕物(フラフ)は、嵩密度0.05g/cc以上0.6g/cc以下が好ましく、0.1g/cc以上0.5g/cc以下がより好ましく、0.15g/cc以上0.45g/cc以下がさらに好ましい。フラフの嵩密度が0.05g/ccより小さいと、押出機の原料投入ホッパーで堆積し、スクリューへの食い込みが劣る傾向にあるため好ましくない。また、嵩密度が0.6g/ccより大きいと、粉砕物中の微粉の割合が多くなり、原料投入ホッパー縁に微粉が付着して押出機への実添加量が変動しやすくなるため好ましくない。
再ペレットは、粉砕物(フラフ)を、再度溶融押出し、ストランドカットやホットカット等により得られるペレットである。再ペレット作製における溶融押出工程では、単軸押出機や二軸押出機など押出機を用いることができるが、シート(S)の粉砕物を再ペレット化する場合、溶融混練状態の均一性や、溶融時の脱気の観点から、二軸押出機を用いることが好ましい。
なお、再ペレットは、フラフと比較すると熱履歴を受けるため、その分、熱劣化する可能性があり、再ペレットの溶融押出時には、酸化防止剤等の添加剤を適宜、追添することも好ましい。
<非発泡シート(R)(リサイクルシート(R))>
本発明のポリスチレン系二軸延伸シート(S)の粉砕物及び/又は再ペレット(f)をリサイクル利用し、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)と混合して非発泡シート(R)(リサイクルシート(R))を作製することができる。
(耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h))
リサイクルシート(R)に用いる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)としては、以下に説明するゴム成分に対してスチレン系単量体をグラフト重合したもの(以下、「グラフト型HIPS」と表記する場合がある)を用いることができる。グラフト型HIPSは、ゴム成分の存在下、スチレン系単量体を重合することにより得ることができ、例えば、ゴム成分をスチレン系単量体に溶解した後、ゴム成分にスチレン系単量体をグラフト重合して形成することができる。得られる重合体は、ポリスチレン内にゴム成分が分散したサラミ構造を形成することが好ましい。サラミ構造内においては、ゴム成分とサラミ外のポリスチレンの一部とが結合している。
ゴム成分としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、クロロプレンゴム、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体、ブタジエンと他の共重合性単量体とのランダム又はブロックポリマーなどを挙げることができる。ブタジエンと共重合可能な単量体としては、スチレン、α-メチルスチレンなどのビニル芳香族化合物、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類およびこれらのエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニルシアン化合物を挙げることができる。このスチレン-ブタジエン共重合体におけるスチレン含有量は、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは10~30質量%である。
これらのゴム成分は、単独でも又は二種類以上を組み合わせたものであってもよい。中でもジエン系ゴムが好ましく、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ランダム又はブロック体のスチレン-ブタジエン共重合体がより好ましい。また、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)としたときの熱安定性の点から、シス1,4構造体比率が90モル%以上の高シスポリブタジエンが特に好ましい。
グラフト重合されるスチレン系単量体としては、スチレン、例えば、o-、m-、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、p-t-ブチルスチレン等のアルキルスチレン、例えば、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン等のα-アルキルスチレンなどのビニル芳香族化合物が挙げられる。これらのスチレン系単量体は、単独又は二種類以上を組み合わせることができる。中でもスチレンが好ましい。
また、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)としては、スチレン系単量体を重合してなるポリスチレンとゴム成分とを混練して得られるもの(以下、「ブレンド型HIPS」と表記する場合がある)を用いることもできる。用いられるスチレン系単量体およびゴム成分は、グラフト型HIPSの原材料と同種類の群から選択でき、ポリスチレンはスチレン系単量体を塊状重合又は懸濁重合して得ることができる。また、混練方法としては、一軸又は多軸押出機又はバンバリーミキサーなどの汎用混練機を用いた加熱混練を採用することができる。
また、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)は、バージンペレットを用いてもよく、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)からなるシート(H)の成形加工時に生じるトリミングロスやスケルトン、および、規格外となった製品などを粉砕した物(フラフ)やそれらの再ペレットを用いてもよい。
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)に含まれるゴム濃度は、2.0質量%~12.0質量%が好ましく、下限は3.0質量%以上がより好ましく、4.0質量%以上がさらに好ましい。ゴム濃度が2.0質量%以上であると、非発泡シート(R)の熱成形時の高速成形性が向上するとともに、シート(R)およびその成形品の耐衝撃性や引き裂き強度が向上しやすいため好ましい。また、ゴム濃度が12.0質量%以下であると、非発泡シート(R)およびその成形品の剛性を維持しやすいため好ましい。
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)に含まれるゴム濃度は、ブタジエン成分の含有量として一塩化ヨウ素、ヨウ化カリウムおよびチオ硫酸ナトリウム標準液で電位差滴定することにより測定できる。分析方法は、例えば、日本分析化学会高分子分析研究懇談会編、「新版 高分子分析ハンドブック」、紀伊國屋書店(1995年度版)、P.659の「(3)ゴム含量」に記載の方法で測定することができる。
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)に含まれるゴム成分の平均ゴム粒子径は、特に制限はないが、0.5μm~10.0μmが好ましく、1.0μm~8.0μmがより好ましく、2.0μm~6.0μmがさらに好ましい。平均粒子径をこの範囲にすることで、非発泡シート(R)およびその成形品の耐衝撃性や引き裂き強度が向上しやすいため好ましい。
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)に含まれるゴム成分の平均ゴム粒子径は、超薄切片法により透過型電子顕微鏡を用いて1万倍の拡大写真を撮影し、撮影されたゴム成分の粒子約1000個の粒子径を測定して、次式すなわち、ゴム平均粒子径[μm]=(ΣniDi)/(ΣniDi) により算出する。この式において、niは粒子径がDiであるゴム粒子の個数を示す。また、上記ゴム成分の粒子は完全な円形ではないので、長径と短径を測定し、算術平均して粒子径を算出する。
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)のメルトフローレート(MFR(h))は限定されないが、MFR(s)およびMFR(f)との関係が上記式(1)~(6)となるように、1.5g/10分~4.0g/10分が好ましく、下限は1.7g/10分以上がより好ましく、上限は3.5g/10分以下がより好ましく、3.0g/10分以下が更に好ましい。MFR(h)が上記範囲であると、非発泡シート(R)の製膜性や剛性、耐衝撃性が良好となり、また非発泡シート(R)にゲルや未溶融物が発生しにくい。
(樹脂組成比)
リサイクルシートである非発泡シート(R)は、上述の粉砕物及び/又は再ペレット(f)(耐熱ポリスチレン系樹脂成分(f))と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)との樹脂組成物を主成分としてなる。耐熱ポリスチレン系樹脂成分(f)と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)の合計を100質量%とした場合、両樹脂の組成比は、(f):(h)=50~1質量%:50~99質量%が好ましく、47~5質量%:53~95質量%がより好ましく、44~10質量%:56~90質量%が更に好ましく、41~15質量%:59~85質量%が特に好ましい。耐熱ポリスチレン系樹脂成分(f)の質量比が1質量%以上であることにより、シートの引張弾性率や引張降伏強度等の機械強度を向上することができ、シート(S)の残材の再利用が可能となる。また、耐熱ポリスチレン系樹脂成分(f)の組成比が50質量%以下であることにより、得られるシート(R)に耐衝撃性、成形性を付与することができる。尚、(f):(h)=40質量%:60質量%の非発泡シート(R)を非発泡シート(R40)と表記する。
非発泡シート(R)を構成する材料として、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)を含有してもよい。GPPSが含有される形態としては、例えば、GPPSバージンペレットを混合する場合、GPPSを原料とする二軸延伸シートの端材を混合する場合、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)にGPPSが含まれている場合、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート(H)の構成材料にGPPSが用いられていて、該シートをリサイクル利用する場合、等が挙げられる。
非発泡シート(R)100質量%中のGPPSの含有量は、40質量%以下が好ましく、耐衝撃性の観点から20質量%以下がより好ましい。
<非発泡シート(R)の物性>
前記シート(S)の粉砕物及び/又は再ペレット(f)40質量%と耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)60質量%とからなる樹脂組成物で作製した非発泡シート(R40)の面衝撃強度は、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)100質量%からなる非発泡シート(H)の面衝撃強度に対し、面衝撃強度比率(R40/H)が0.60以上となり、好ましくは0.65以上、より好ましくは0.70以上である。
非発泡シート(R40)の面衝撃強度比率(R40/H)が0.60以上であれば、(f):(h)=50~1質量%:50~99質量%の組成比で非発泡シート(R)が作製された場合に、割れにくい実用的な耐衝撃強度のシートが得られる尺度となる。
面衝撃強度は、JIS K7124-2:1999に準じて測定できる最大衝撃点エネルギーである。
前記粉砕物及び/又は再ペレット(f)40質量%と耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)60質量%とからなる樹脂組成物で作製した非発泡シート(R40)のイエローネスインデックスYI(R40)は、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)100質量%からなる非発泡シート(H)のイエローネスインデックスYI(H)に対し、ΔYI=YI(R40)-YI(H) の値が1.5以下となるのが好ましく、1.0以下が更に好ましく、0.0以下が更に好ましい。
耐熱ポリスチレン樹脂からなるシートやその粉砕物及び/又は再ペレットをリサイクル使用した従来のシートは黄色味を帯びやすく、シートに印刷を施した場合に印刷の色合いが異なってしまったり、シートを着色して黄色味を低減させざるを得なくなったりして問題となることがあるが、ΔYIが1.5以下であれば、(f):(h)=50~1質量%:50~99質量%の組成比で非発泡シート(R)を作製した場合に、そういった黄色味の問題の起き難いシートが得られる尺度となる。
シートのイエローネスインデックスは、JIS K7323:2006に準拠し、色差計の反射測定法にて測定することができる。
<非発泡シート(R)中のその他の成分>
非発泡シート(R)は、所望する物性を損なわない範囲において、無機系成分、有機系成分等の耐ブロッキング剤、内部潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、加工助剤、溶融粘度改良剤、酸化防止剤、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候性安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、核剤、架橋剤、滑材、スリップ剤、防曇剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤および顔料などを適宜添加してシートを製造してもよい。
また、非発泡シート(R)は、少なくとも一方の表面に帯電防止剤、シリコーンオイル等の離型剤、等の塗布層を有することができる。塗布量は、特に制限されるものではないが、上記のシート性能を発揮させるためには、少なくとも片面に5~100mg/mの範囲で塗布することが好ましく、高温成形時に該シート表面を侵しにくい点から、ポリジメチルシロキサンが好ましい。
<非発泡シート(R)の製造方法>
リサイクルシートである非発泡シート(R)の製造において、シートのゲルやフィッシュアイの発生を抑える観点から、ビカット軟化点温度106℃以上115℃以下、より好ましくは113℃以下のポリスチレン系二軸延伸シート(S)から作製したフラフ(f)を用いることが好ましい。シートのゲルやフィッシュアイは、例えば、耐熱ポリスチレン系樹脂に由来する熱劣化・架橋等による未溶融物、混錬時の熱不足による半溶融物や未溶融物等に起因するものである。ビカット軟化点温度が115℃より高いシートのフラフを用いてリサイクルシートを製造すると、シート外観に不良が生じたり、シート破断や偏肉、穴あき等の成形不良が発生したりしてしまう。
非発泡シート(R)の製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法によって製造することができる。
例えば、未延伸シートの場合は、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(h)と前記粉砕物及び/又は再ペレット(f)を所定割合で計量混合する。原材料の計量混合の際に、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)等のスチレン系熱可塑性エラストマーを20質量%以下、好ましくは10質量%以下で加えても良い。
次に、ベント付き一軸押出機や二軸押出機を用いて溶融混錬し、T-ダイからシート状に押出し、冷却ロールにて冷却固化して、未延伸シートを得る。押出温度は180~240℃程度が好ましく、より好ましくは190~230℃である。なお、リサイクルシートの製造において、粉砕物(フラフ)を用いる場合は、押出機内で熱が伝わりにくく溶けにくいので、一軸押出機の場合はバレル上流側を高くする、または逆テーパー温度設定して押出を行うことが好ましい。或いは、ペレットと混合して用いることで、熱伝導を良くすることが可能である。
未延伸シートから二軸延伸を行う場合は、上述のポリスチレン系二軸延伸シート(S)と同様の方法で延伸して二軸延伸シートを得ることができる。
また、該未延伸シートを熱成形に使用する場合は、そのまま熱成形機に導入し、連続的に成形を行うことができる。
非発泡シート(R)の「シート」とは、厚いシートから薄いフィルムまでを包括した意を有し、特に限定されないが、シート強度、耐熱性、成形性、経済性などの点から0.08~1mmが好ましく、0.1~0.7mmがより好ましい。また、必要に応じて、共押出やドライラミネートなどによって、同種または異種の熱可塑性樹脂を積層しても良い。
<成形品>
本発明のポリスチレン系二軸延伸シート(S)の用途は、特に限定されるものではないが、成形品の耐熱性に優れ、耐衝撃性、透明性等の特性も良好であるので、公知の熱板圧空真空成形法(直接加熱方式)又は圧空成形法、真空圧空成形法(間接加熱方式)によって、目的の容器形状に二次成形して、食品包装材等の成形品として好適に用いることができる。特に、弁当や総菜等の電子レンジで温める食品用や、蒸し料理の材料や種々の調味料等が内容物となっていて電子レンジで加熱調理する食品用の、包装用透明蓋等に好適である。その他、工業部品等の小分けトレーや運搬容器などに用いることも出来る。
また、本発明の非発泡シート(R)は、耐衝撃性が良好で、色目および外観も美麗であるので、未延伸シート、或いは二軸延伸シートの形態で、上記同様の成形法にて二次成形し、浅底容器、深底容器、トレー等の成形品として好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
各実施例、比較例で使用した原材料は下記の通りである。使用した原材料樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210:1999(条件H)に準拠して、測定温度200℃、測定荷重5kgfにて測定した値である。
<耐熱ポリスチレン系樹脂>
・耐熱PS1: スチレン-メタクリル酸共重合体(MFR2.5g/10分、ビカット軟化点109℃)
・耐熱PS2: スチレン-αメチルスチレン共重合体(MFR1.5g/10分、ビカット軟化点110℃)
・耐熱PS3: スチレン-メタクリル酸共重合体(MFR=1.0g/10分、ビカット軟化点110℃)
・耐熱PS4: スチレン-メタクリル酸共重合体(MFR=1.6g/10分、ビカット軟化点118℃)
・耐熱PS5: スチレン-メタクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体(MFR=1.0g/10分、ビカット軟化点123℃)
<耐ブロッキング剤>
・AB1: ポリスチレン架橋ビーズ(平均粒子径4.0μm、屈折率1.59)
・AB2: スチレングラフトブタジエンゴム(ゴム濃度2.2%、平均ゴム粒子径2.6μm、MFR18g/10分)
・AB3; スチレングラフトブタジエンゴム(ゴム濃度6.8%、平均ゴム粒子径2.6μm、MFR2.5g/10分)
<耐衝撃性ポリスチレン系樹脂>
・HIPS: グラフト型HIPS(グラフトモノマー:スチレン、ゴム成分:ポリブタジエンゴム、ゴム濃度;6.2質量%、MFR2.0g/10分)
<ポリスチレン系二軸延伸シートの作製(実施例1~3、比較例1~5)>
表1に示した配合(組成比)の樹脂組成物をベント付き単軸押出機に投入し、設定温度230℃にて溶融混練した後、単軸押出機の先端に接続したTダイにて、シート状に押出し、100℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて未延伸シートを得た。
その後、得られた未延伸シートを、ロール温度129℃の速比の異なるロール間で縦方向に2.5倍延伸し、続いて雰囲気温度140℃のテンターにて横方向に2.5倍延伸して、厚み250μmのポリスチレン系二軸延伸シートを得た。尚、逐次二軸延伸の温度条件は、各例の樹脂組成物のビカット軟化点温度を考慮し、上記温度を微調整して最適延伸状態となるように設定した。
次いで、該シート両表面にコロナ処理を施した。その際のコロナ処理強度は、防曇剤層を形成する側の表面の水滴接触角が35~45°になるように、離型剤層を形成する側の表面の水滴接触角が60~70°になるように、高周波電源の出力を調整した。
次いで、シートの一方の表面に、防曇剤として、蔗糖ラウリン酸エステル(モノエステル30%、ジ・トリ・ポリエステル70%の混合体、HLB 5)30質量%、ジグリセリンラウリン酸エステル(HLB 9.4)10質量%、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度約73モル%)60質量%を混合した水溶液を塗布乾燥させ、乾燥後重量40mg/mの防曇剤層を形成した。またシートの他方の表面に、離型剤として、ポリジメチルシロキサン(25℃での粘度10,000mm/s)からなるシリコーンエマルジョン水溶液を塗布乾燥させ、乾燥後重量10mg/mの離型剤層を形成した。
その後、防曇剤層を巻外側、離型剤層を巻内側としてポリスチレン系二軸延伸シートをロール状に巻き取った。
<ポリスチレン系二軸延伸シートの粉砕物、再ペレットの作製>
実施例1~3、比較例1~5で得たポリスチレン系二軸延伸シートを粉砕機に投入して、嵩密度0.2~0.3g/ccの粉砕物(フラフ)を作製した。
また、実施例3、比較例4のシートの粉砕物(フラフ)を用い、ストランドダイを取り付けたベント付き単軸押出機に供給し、バレル温度240~230℃で押出した後に、直ちに水槽で冷却し、ペレタイザーで再ペレットを作製した。
以下および表1において、これら粉砕物、再ペレットを「再利用物」と簡略表記した。また、再利用物のMFR(f)を上記条件に従って測定し、表1に示した。
<非発泡シートの作製>
実施例、比較例で得たポリスチレン系二軸延伸シートの粉砕物又は再ペレット40質量%と、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂60質量%とを混合して、ベント付き単軸押出機に投入し、設定温度230~240℃にて溶融混練した後、単軸押出機の先端に接続したTダイにて押出し、100℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて厚さ250μmの非発泡シート(R40)を得た。
また、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂100質量%からなる非発泡シート(H)も同様にして作製した。
<測定、評価>
実施例、比較例で得たポリスチレン系二軸延伸シートと非発泡シートについて、各測定及び評価を次のように行い、評価結果を表1にまとめた。
(1)ポリスチレン系二軸延伸シートのビカット軟化点温度
実施例、比較例において得られたポリスチレン系二軸延伸シートを、150℃に設定した熱風循環式オーブン内に10分間入れて収縮させたシートを用いて、JIS K7206:1999 B50法に準拠し、ビカット軟化点温度を測定した。
(2)ポリスチレン系二軸延伸シートの表面粗さ
実施例、比較例において得られたポリスチレン系二軸延伸シートの3次元表面粗さSa及びSzは、非接触表面粗さ計ブルカー社製白色干渉計Contour GTX機を用いて、Filter White、ObjectiveLens5倍、FOVLens1.0倍、BackscanLength5、ScanLength25の条件で測定した。
(3)ポリスチレン系二軸延伸シートの透明性
実施例、比較例において得られたポリスチレン系二軸延伸シートのヘーズ(%)は、JIS K7105に準拠し、日本電色工業社製NDH-300A機にて測定した。
(4)ポリスチレン系二軸延伸シートの耐ブロッキング性
実施例、比較例において得られたポリスチレン系二軸延伸シートから30×30cm角のシート片を切り出し、2枚のシートの防曇剤面と離型剤面を対向させて重ね合わせ、ハンドプレス機を用いて、温度60℃、荷重50kgf/cm(4.9MPa)の条件で30分間加圧した後に、該2枚のシートを手で剥がし、その状態を判定した。
〇:2枚のシートを簡単に剥がれる、及び剥離音がしない
×:2枚のシートが貼りつき合って剥がれにくい、又は剥離音がする
(5)非発泡シート(R40)の面衝撃強度
実施例、比較例において得られた非発泡シート(R40)と、耐衝撃性ポリスチレン樹脂100質量%からなる非発泡シート(H)について、JIS K7124-2:1999に準拠して、非発泡シートから切断刃で試験片を打ち抜いて5個ずつ作製し、試験片を雰囲気温度23℃、衝撃速度3.0m/秒の条件で衝撃試験を行い、試験片5個の最大衝撃点エネルギーの平均値を算出し、各非発泡シートの面衝撃強度とした。
また、非発泡シート(H)の面衝撃強度1.27Jに対する実施例、比較例で得た非発泡シートの面衝撃強度の比率を算出した。
(6)非発泡シート(R40)のイエローネスインデックス
実施例、比較例にて得られた非発泡シート(R40)と、耐衝撃性ポリスチレン樹脂100質量%からなる非発泡シート(H)について、JIS K7373:2006に準拠し、日本電色工業(株)製全光線透過型色差計を用い、光源D65(標準イルミナント)、反射測定法にて、イエローネスインデックスYIを測定した。
また、非発泡シート(H)のイエローネスインデックスYI(H)-34.8との差ΔYIを算出した。
(7)非発泡シート(R40)の外観評価
実施例、比較例にて得られた非発泡シートについて、フィッシュアイやゲル等の異物を目視観察し、1m当たりの個数で判定した。
〇:0.5個未満/m
△:0.5個/m以上1.0個未満/m
×:1.0個以上/m
表1に、実施例および比較例のポリスチレン系二軸延伸シートの配合(組成比)と、ポリスチレン系二軸延伸シート及び非発泡シートの評価結果を示す。なお、スチレングラフトブタジエンゴム(AB2、AB3)を用いた場合の「シート中の粒子濃度」とは、シート中のスチレングラフトブタジエンゴムに由来するゴム濃度、すなわちシート中のゴム粒子濃度を示す。
実施例、比較例のポリスチレン系二軸延伸シートの何れもが、シートのビカット軟化点温度が106℃以上あり、絞り率0.13の内嵌合蓋を成形し、調理済ナポリタンスパゲティを収容した底容器(トレー)に嵌め、電力1500W、50秒間の条件で電子レンジ加熱しても変形の起きない良好な耐熱性を有した。
実施例1~3は、何れも二軸延伸シートの表面粗さが好適な範囲にあってブロッキングが発生せず、高透明であり、また、その粉砕物又は再ペレットを用いて作製した非発泡シート(R40)は、何れも面衝撃強度比率が0.60以上であり、黄色味も低く、ゲル等の発生も僅少であり、二軸延伸シートとしての使用及びリサイクル利用性とも有効な、実用性の高い二軸延伸シートが得られた。
また、スチレングラフトブタジエンゴムを耐ブロッキング剤として用いた、実施例2、3では、二軸延伸シートを折り曲げたり、粉砕したりする時に破片飛散が少なく、二次加工工程での作業性難度や異物混入などの懸念のないものが得られた。特に、実施例3は、非発泡シートの面衝撃強度比率が高く良好であった。これは、耐熱ポリスチレン系樹脂であるスチレン-αメチルスチレン共重合体と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂であるグラフト型HIPSとの化学構造が類似しており、両者の相溶性が良好であったためと推察される。
比較例1は、耐熱ポリスチレン系樹脂のみからなる二軸延伸シートで、シートの表面粗さが本発明の範囲から外れており、ブロッキング不良であった。比較例2は、ゴム濃度の高いスチレングラフトブタジエンゴムを用い、二軸延伸シートの透明性が不良であった。
比較例3は、使用した耐熱ポリスチレン系樹脂のビカット軟化点温度は115℃より低いが、メルトフローレートが1.5g/10分未満であり、分子構造及びビカット軟化点温度が酷似しているが、メルトフローレートが1.5g/10分以上の耐熱ポリスチレン系樹脂を用いた実施例2の場合と比べ、非発泡シートの強度が不十分であった。
比較例4,5は、シートのビカット軟化点温度が115℃よりも高く、非発泡シートの強度が不十分であった。また、比較例4は、再ペレット化した熱履歴の影響で黄色味が強かった。比較例5は、耐熱ポリスチレン系樹脂のメルトフローレートが低く、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂との溶融混和性が不十分となり、面衝撃強度が大きく低下すると共に、フィッシュアイやゲル状異物が多数発生した。
本発明のポリスチレン系二軸延伸シート(S)は、電子レンジ耐熱性に優れ、包装容器や蓋材として好適に使用でき、食品製造業及び消費者にとって有用である。その上、その粉砕物及び/又は再ペレット(f)をリサイクル利用して耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)と混合して非発泡シート(R)を作製した場合も、良好な耐衝撃性と非黄色味を呈するので、リサイクル利用価値が高く、経済効率および産業資源の活用、プラスチック廃棄低減に大変有用である。

Claims (6)

  1. 耐熱ポリスチレン系樹脂(s)を含む、リサイクル使用可能なポリスチレン系二軸延伸シートであって、
    前記耐熱ポリスチレン系樹脂(s)のメルトフローレートが1.5g/10分以上4.0g/10分以下であって、スチレン系単量体(a)と、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる単量体との共重合体であり、
    前記シートのビカット軟化点温度が106℃以上115℃以下であり、
    前記シート両表面の3次元表面粗さSa(算術平均高さ)が10nm以上及び/又は前記シート両表面の3次元表面粗さSz(最大高さ)が1000nm以上であり、
    厚み250μmの前記シートのヘーズが3.0%以下であり、且つ、
    前記シートの粉砕物及び/又は再ペレット(f)40質量%とゴム成分を2.0質量%~12.0質量%含む耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)60質量%とからなる樹脂組成物で非発泡シート(R40)を作製した場合に、前記耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)100質量%からなる非発泡シート(H)の面衝撃強度に対する前記非発泡シート(R40)の面衝撃強度の比率[面衝撃強度比率(R40/H)]が0.60以上である、ことを特徴とするポリスチレン系二軸延伸シート。
    ここで、シートの粉砕物及び/又は再ペレット(f)のメルトフローレートをMFR(f)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)のメルトフローレートをMFR(h)としたとき、下記の式(1)(3)を満たす。
    MFR(f)-MFR(h)≧-0.5[単位:g/10分]…式(1)
    MFR(f)-MFR(h)≦3.5 [単位:g/10分]…式(3)
  2. 前記非発泡シート(R40)のイエローネスインデックスをYI(R40)、前記非発泡シート(H)のイエローネスインデックスをYI(H)とした場合に、ΔYI=YI(R40)-YI(H)が1.5以下である、請求項1に記載のポリスチレン系二軸延伸シート。
  3. 球状合成二酸化ケイ素、スチレン系微粒子、アクリル系微粒子、及びスチレングラフトジエンゴムからなる群から選ばれる1種以上であり、平均粒子径が1~10μmである粒子を更に含有する、請求項1または2に記載のポリスチレン系二軸延伸シート。
  4. ポリスチレン系二軸延伸シートを構成する材料全体を100質量%として、前記スチレングラフトジエンゴムを4.0質量%以上含有し、該スチレングラフトジエンゴムが、平均ゴム粒子径1.0μm以上、ゴム濃度4.0質量%以下、及びメルトフローレート7.0g/10分以上である、請求項に記載のポリスチレン系二軸延伸シート。
  5. 請求項1~の何れかに記載のポリスチレン系二軸延伸シートの粉砕物及び/又は再ペレット(f)と耐衝撃性ポリスチレン樹脂(h)とからなる樹脂組成物で構成される非発泡シート(R)。
  6. 請求項1~の何れかに記載のポリスチレン系二軸延伸シート又は請求項に記載の非発泡シート(R)を用いた成形品。
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