JP7200613B2 - 耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート、及びその成形品 - Google Patents

耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート、及びその成形品 Download PDF

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Description

本発明は、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート、及び、該シートを用いた箱型容器本体、蓋付容器、コップ、盆、皿などの蓋なし容器、蓋などといった容器等の成形品に関する。
汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)等からなる透明な二軸延伸ポリスチレン系樹脂シートは、剛性、軽量性、透明性、成形性、リサイクル性などの観点から食品包装容器や蓋材などの成形品として使用されている。
また、ゴム変性ポリスチレン系樹脂等の耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)の未延伸シート、二軸延伸シートにおいても、剛性、軽量性、成形性などに優れており、上記の透明シートと比較し、耐油性や耐衝撃性に優れるため、生鮮、乾物、菓子などの食品を収納する箱型容器本体、蓋付容器、コップ、盆、皿などの蓋なし容器、蓋など(以下、これらを総称して「容器等」と表記する)の製造用原料シートとして利用されている。
このようなシートの例として、特許文献1には、延伸倍率と熱収縮応力が特定の範囲に規定された、グラフト型ゴム変性ポリスチレンと一般用ポリスチレンとの混合物からなる耐衝撃性ポリスチレン二軸延伸シートが開示されている。また、特許文献2、3には、スチレン系グラフト共重合体と、スチレン系樹脂とが特定の重量比で含む耐衝撃性スチレン系樹脂組成物で構成された二軸延伸スチレン系樹脂シート、合成樹脂シートが開示されている。
上記容器等の成形においては、シートを所定の形状に成形した後、打ち抜かれて製品となる。一方、打ち抜かれた残りの部分(スケルトン)は、リサイクルして再利用するために粉砕され、バージンペレットなどに混合され、再度、溶融押出してシート化される。
このとき、透明なポリスチレン系樹脂シート、及び、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートのスケルトンは、変色や樹脂焼けの観点から、透明性が重視されない耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートの再押出に利用されることが多い。また、リサイクル時には、必要に応じてゴム成分などをさらに追添されることもある。
例えば、特許文献4では、ポリスチレン系樹脂20~76質量%、ハイインパクトポリスチレン系樹脂20~50質量%、スチレン-共役ジオレフィン系熱可塑性エラストマー1~5質量%、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン系熱可塑性エラストマー3~25質量%を必須成分として含むポリスチレン系樹脂シートや、該シートを熱成形して成る包装用容器が開示されている。
一方、透明な二軸延伸ポリスチレン系樹脂シートにおいては、近年、コンビニエンスストアなどの業務用に使用する高出力の電子レンジの普及や、チルド弁当のような電子レンジを調理器具として用いた商品が展開されていることから、食品包装容器や蓋材には、電子レンジ加熱に伴うシート成形品の変形抑制のための耐熱性が強く求められるようになってきた。
電子レンジ加熱に伴うシート成形品の変形抑制のためのシート自身の耐熱性を向上する技術としては、例えば、特許文献5のような、スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル樹脂を用いて成形される押出シートや、特許文献6のような、スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合樹脂と耐衝撃性スチレン系樹脂とを含有する二軸延伸シート、さらには、特許文献7のような、多分岐状マクロモノマーとスチレン系モノマーとメタクリル酸とを共重合してなる多分岐状共重合体と、スチレン系モノマーとメタクリル酸とを共重合してなる共重合体を含有するスチレン系樹脂シートなどが開示されている。
特開2007-237732号公報 特開2005-200572号公報 特開2000-336182号公報 特開2008-115317号公報 特開2011-126996号公報 特開2015-021074号公報 特開2016-030817号公報
しかしながら、特許文献5~7に開示されているようなメタクリル酸などが共重合されたスチレン系共重合樹脂シートでは、それらのスケルトンをリサイクルに回して耐衝撃性ポリスチレン系樹脂と混合してシート化した場合、汎用ポリスチレン樹脂シートのスケルトンをリサイクルに用いた場合と比較して、得られる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートの耐衝撃性が劇的に低下することが分かった。
また、特許文献1~4に開示されている、グラフト型ゴム変性ポリスチレン、スチレン系グラフト共重合体といったハイインパクトポリスチレン系樹脂、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂に混合されているポリスチレン樹脂はいずれも汎用ポリスチレン樹脂であり、メタクリル酸単量体などが共重合された耐熱スチレン系樹脂を含む耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートは確立されていない。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、耐熱ポリスチレン系樹脂を耐衝撃性ポリスチレン系樹脂に混合しても、耐衝撃性等の機械的物性に優れた耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートを提供すること、及び該シートを用いてなる容器等の成形品を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討したところ、ビカット軟化点が106℃以上の耐熱ポリスチレン系樹脂を含有する場合において、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂と耐熱ポリスチレン系樹脂のメルトフローレートが特定の関係を有することにより、両者の相溶性を向上させ、有効な耐衝撃性等の物性が得られることを見出した。
すなわち、耐熱ポリスチレン系樹脂のスケルトンのリサイクルに関する技術設計について鋭意検討し、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂と耐熱ポリスチレン系樹脂とを広範囲な質量比において混合したとしても、諸物性低下を抑制した耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート、及び、該シートを用いた成形品を見出すに至り、以下を完成させた。
本発明の第1の形態は、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)と耐熱ポリスチレン系樹脂(B)との樹脂組成物を主成分としてなる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートであって、下記(i)~(iii)を満たすことを特徴とする耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートである。
(i)前記耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)と前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の合計を100質量%とした場合に、組成比(A)/(B)が50~99質量%/50~1質量%である、
(ii)前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のビカット軟化点が106℃以上である、
(iii)前記耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)のメルトフローレートMFR(A)と前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のメルトフローレートMFR(B)とが、式(1)を満たす。
MFR(B)-MFR(A)≧-1.0[単位:g/10min]・・・式(1)
第1の形態において、前記MFR(B)は1.5g/10min以上であることが好ましい。
第1の形態において、前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)は、スチレン系単量体(a)と、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、及びアクリロニトリルの群から選ばれる1種の単量体(b)との二元共重合体、又は、スチレン系単量体(a)と、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及びアクリロニトリルの群から選ばれる1種の単量体(b)’と、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)との三元共重合体であることが好ましい。
前記二元共重合体の組成比は、前記単量体(a)と前記単量体(b)の合計を100質量%とした場合に、(a)が80~99質量%、(b)が1~20質量%であることが好ましい。
前記三元共重合体の組成比は、前記単量体(a)と前記単量体(b)’と前記単量体(c)の合計を100質量%とした場合に、(a)が60~98質量%、(b)’が1~20質量%、(c)が1~20質量%であることが好ましい。
本発明の第2の形態は、第1の形態の耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートからなる成形品である。
本発明によれば、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂と耐熱ポリスチレン系樹脂とを広範囲な質量比において混合したとしても、耐衝撃性や引き裂き強度に優れた耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートを得ることができるため、耐熱ポリスチレン系樹脂シートのスケルトンを耐衝撃性ポリスチレン系樹脂に混合してリサイクル利用することができる。ひいては、得られたシートは、箱型容器本体、蓋付容器、コップ、盆、皿などの蓋なし容器、蓋などといった容器等の成形品として好適に利用することができる。
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明の耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート(以下、本発明のシートともいう)について説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、本発明において、「主成分」とは、構成する樹脂組成物において最も多い質量比率を占める成分であることをいい、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
また、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
<耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート>
本発明の耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートは、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)と耐熱ポリスチレン系樹脂(B)との樹脂組成物を主成分としてなる。
(耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A))
本発明における耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)としては、以下に説明するゴム成分に対して、以下に説明するスチレン系単量体をグラフト重合したもの(以下、「グラフト型HIPS」と表記する場合がある)を用いることができる。グラフト型HIPSは、例えば、ゴム成分をスチレン系単量体に溶解した後、ゴム成分にスチレン系単量体をグラフト重合して形成することができ、得られる重合体は、ゴム成分がポリスチレン内に分散したサラミ構造を形成することが好ましい。サラミ構造内においては、ゴム成分とサラミ外のポリスチレンの一部とは結合している。
また、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)としては、以下に説明するスチレン系単量体を重合してなるポリスチレンと、以下に説明するゴム成分とを、混練して得られるもの(以下、「ブレンド型HIPS」と表記する場合がある)を用いることもできる。ポリスチレンは、スチレン系単量体を塊状重合又は懸濁重合して得ることができる。また、混練方法としては、一軸又は多軸押出機またはバンバリーミキサーなどの汎用混練機を用いた加熱混練を採用することができる。
前記グラフト型HIPSは、ゴム成分の存在下、少なくともスチレン系単量体を重合することにより得ることができる。ゴム成分としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、クロロプレンゴム、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体、ブタジエンと他の共重合性単量体とのランダムまたはブロックポリマーなどを挙げることができる。ブタジエンと共重合可能な単量体としては、スチレン、α-メチルスチレンなどのビニル芳香族化合物、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類およびこれらのエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニルシアン化合物を挙げることができる。
また、これらのゴム成分は、単独でもまたは二種類以上を組み合わせたものであってもよい。前記ゴム成分のうち好ましいのは、ジエン系ゴムであり、特に好ましいのは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ランダムまたはブロック体のスチレン-ブタジエン共重合体である。このスチレン-ブタジエン共重合体におけるスチレン含有量は、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは10~30質量%である。ゴム成分は、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)としたときの熱安定性、およびリサイクル性の点から、シス1,4構造が90モル%以上の高シスポリブタジエンが特に好ましい。
グラフト重合されるスチレン系単量体としては、スチレン、例えば、o-、m-、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、p-t-ブチルスチレン等のアルキルスチレン、例えば、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン等のα-アルキルスチレンなどのビニル芳香族化合物が挙げられる。これらのスチレン系単量体は、単独または二種類以上を組み合わせることができる。中でもスチレンが好ましい。
本発明における耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)に含まれるゴム成分中のジエン含有量は、2.0質量%~12.0質量%が好ましい。また、ゴム成分中のジエン含有量は3.0質量%~12.0質量%であることがより好ましく、4.0質量%~12.0質量%であることがさらに好ましい。
ゴム成分中のジエン含有量が2.0質量%以上であると、熱成形時の高速成形性が向上するとともに、本発明の耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート、および、成形品の耐衝撃性や引き裂き強度が向上しやすいため好ましい。また、ゴム成分中のジエン含有量が12.0質量%以下であると、本発明の耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート、および、成形品の剛性を維持しやすいため好ましい。
ゴム成分中のジエン含有量は、一塩化ヨウ素、ヨウ化カリウムおよびチオ硫酸ナトリウム標準液を用いた電位差滴定で測定できる。分析方法は、例えば、日本分析化学会高分子分析研究懇談会編、「新版 高分子分析ハンドブック」、紀伊國屋書店(1995年度版)、P.659の「(3)ゴム含量」に記載されており、この方法で測定することができる。
本発明における耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)に含まれるゴム成分の平均粒子径は、制限がないが、好ましいのは0.5μm~10.0μmである。平均粒子径を上記範囲にすることで、本発明における耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート、および、成形品の耐衝撃性や引き裂き強度が向上しやすいため好ましい。耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)に含まれるゴム成分の平均粒子径は、1.0μm~8.0μmであることがより好ましく、2.0μm~6.0μmであることがさらに好ましい。
ゴム成分の平均粒子径は、超薄切片法により透過型電子顕微鏡を用いて10000倍の拡大写真を撮影し、撮影されたゴム成分の粒子約1000個の粒子径を測定して、次式すなわち、ゴム平均粒子径[μm]=(ΣniDi)/(ΣniDi)、により算出した。なお、この式において、niは粒子径がDiであるゴム粒子の個数を示す。また、上記ゴム成分の粒子は完全な円形ではないので、長径と短径を測定し、算術平均して粒子径を算出した。
本発明における耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は限定されないが、通常、温度200℃、荷重5kgfにおいて、0.5g/10min~20g/10minであることが好ましく、2.0g/10min~10g/10minであることがより好ましい。
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)のメルトフローレート(以下、MFR(A)と表記することがある。)は、耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のメルトフローレート(以下、MFR(B)と表記することがある。)に対して大き過ぎず同等程度以下であることが好ましく、MFR(B)より小さい値であることがより好ましい。例えば、MFR(B)とMFR(A)とが、式(1)を満たすことが好ましく、式(2)を満たすことがより好ましく、式(3)を満たすことが更に好ましい。
MFR(B)-MFR(A)≧-1.0[単位:g/10min]・・・式(1)
MFR(B)-MFR(A)≧-0.5[単位:g/10min]・・・式(2)
MFR(B)-MFR(A)≧0.0[単位:g/10min]・・・式(3)
また、MFR(B)-MFR(A)の上限は特に限定しないが、以下の一般に式(4)を満たすことが好ましい。
MFR(B)-MFR(A)≦10[単位:g/10min]・・・式(4)
式(1)を満たすことにより、後述するように、耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のドメインサイズを小さくし、シートの機械強度低下を抑制しやすいため好ましい。また、式(4)を満たすことにより、シートの混合ムラによる外観不良を抑制しやすいため好ましい。
(耐熱ポリスチレン系樹脂(B))
本発明における耐熱ポリスチレン系樹脂(B)は、スチレン系単量体(a)を主成分としてなる樹脂であり、ビカット軟化点が106℃以上である。
前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)が共重合体である場合、スチレン系単量体(a)を主たる単量体成分とすれば、他の単量体成分を1種以上含有する多元共重合体でもよい。また、共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの共重合形態であってもよい。
また、前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)は、線状ポリスチレン系樹脂であってもよく、多分岐状ポリスチレン系樹脂であってもよい。本発明のシートに用いる前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)は1種類であってもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
前記スチレン系単量体(a)としては、スチレン及びその誘導体が挙げられる。例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン等のアルキルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン等のハロゲン化スチレン、ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン等が挙げられる。中でも、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)との相溶性の観点から、スチレン、α-メチルスチレンを用いることが好ましい。
また、共重合体に用いられる他の単量体の例を挙げると、(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリルや、ブタジエン、イソプレン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の共役ジエン系炭化水素、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィン等が挙げられる。
中でも、耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のビカット軟化点向上の観点から、共重合体に用いられる他の単量体としては、(a)と異なる種類のスチレン系単量体であるα-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、アクリロニトリルを用いることが好ましく、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルを用いることがより好ましく、(メタ)アクリル酸を用いることが特に好ましい。
ここで、「(a)と異なる種類のスチレン系単量体」とは、例えば、スチレン系単量体(a)としてスチレンを用いている場合は、該スチレン以外のスチレン系単量体をいい、例えば、α-メチルスチレン、ジメチルスチレン等をいう。
また、前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸フェニルアミノエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
中でも、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート成形時の脱水反応に伴う外観不良抑制や機械強度低下抑制の観点から、共重合体に用いられる他の単量体として、(メタ)アクリル酸メチルを用いることが好ましい。
前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)が共重合体である場合、スチレン系単量体(a)と、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、及びアクリロニトリルの群から選ばれる1種の単量体(b)との二元共重合体や、スチレン系単量体(a)と、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及びアクリロニトリルの群から選ばれる1種の単量体(b)’と、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)との三元共重合体が、耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のビカット軟化点向上の観点で好ましい。中でも、単量体(b)または(b)’が(メタ)アクリル酸である二元共重合体または三元共重合体が好ましい。
前記二元共重合体の共重合組成比は、単量体(a)と(b)の合計を100質量%とした場合、(a)80~99質量%、(b)1~20質量%が好ましい。
前記三元共重合体の共重合組成比は、単量体(a)と(b)’と(c)の合計を100質量%とした場合、(a)60~98質量%、(b)’1~20質量%、(c)1~20質量%が好ましい。
スチレン系単量体(a)の共重合組成比は、二元共重合体の場合は、85~98質量%がより好ましく、86~97質量%がさらに好ましく、90~97質量%が最も好ましい。
三元共重合体の場合は、67~96質量%がより好ましく、74~94質量%がさらに好ましく、78~92質量%が最も好ましい。
スチレン系単量体(a)の共重合組成比が二元共重合体の場合80質量%以上、三元共重合体の場合60質量%以上であると、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)との相溶性の点で好ましい。また、スチレン系単量体(a)の共重合組成比が二元共重合体の場合99質量%以下、三元共重合体の場合98質量%以下であると、耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のビカット軟化点を向上させやすい。
前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)が二元共重合体の場合、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸の群から選ばれる1種の単量体(b)の共重合組成比は、2~15質量%が好ましく、3~14質量%がより好ましく、3~10質量%が更に好ましい。三元共重合体の場合、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸の群から選ばれる1種の単量体(b)’の共重合組成比は、2~18質量%が好ましく、3~16質量%がより好ましく、4~14質量%が更に好ましい。
単量体(b)、(b)’を1質量%以上含有すると、耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のビカット軟化点を向上させやすい。また、単量体(b)、(b)’の含有量が20質量%以下であると、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート中のゲル化物の増加が抑制され、外観が良好となる。また、シートの機械強度の低下が起き難い。
前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)が三元共重合体の場合、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)の含有量は、2~15質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましく、4~8質量%であることが更に好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)の含有量が20質量%以下であると、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートの吸水が抑制され、シート成形時において発泡等が生じ難い。
前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)が、(メタ)アクリル酸単量体を含む共重合体である場合、(メタ)アクリル酸の脱水反応によるゲル化反応を抑制するために、シートを構成する材料中に、炭素数14以上の脂肪族第1級アルコールを含有することが好ましい。中でも、凝固点が-10℃以下のイソ型の脂肪族第1級アルコールが特に好ましい。
前記脂肪族第1級アルコールの含有量は、本発明のシートを構成する材料中において、該材料全体を100質量%として、0.02~1.0質量%であることが好ましい。
前記炭素数14以上の脂肪族第1級アルコールとしては、n-ミリスリルアルコール、n-パルミチルアルコール、n-ステアリルアルコール等が挙げられる。更に、凝固点が-10℃以下のイソ型の脂肪族第1級アルコールとしては、炭素数14のイソテトラデカノール、炭素数16のイソヘキサデカノール、炭素数18のイソオクタデカノール、及び炭素数20のイソエイコサノールが挙げられ、中でも、炭素数18のイソオクタデカノールが好ましい。
具体的には、例えば、7-メチル-2-(3-メチルブチル)-1-オクタノール、5-メチル-2-(1-メチルブチル)-1-オクタノール、5-メチル-2-(3-メチルブチル)-1-オクタノール、2-ヘキシル-1-デカノール、5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-1-オクタノール、8-メチル-2-(4-メチルヘキシル)-1-デカノール、2-ヘプチル-1-ウンデカノール、2-ヘプチル-4-メチル-1-デカノール、2-(1,5-ジメチルヘキシル)-(5,9-ジメチル)-1-デカノールが例示できる。
また、本発明において、耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の測定温度200℃、測定荷重5kgfにおけるメルトフローレート(MFR)が1.5g/10min以上であることが好ましい。好ましくは1.7g/10min以上、より好ましくは1.9g/10min以上である。耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のMFRの上限は、特に限定はないが、一般に30g/10min以下である。
耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のMFRが1.5g/10min以上である場合、前記耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)との混合において、ドメインサイズが小さくなりやすく、良好な機械強度を有するシートが得られるため好ましい。
(MFR(B)とMFR(A)との関係性について)
以下に、本発明のシートを構成する耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)と耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の両者のMFRに関する検討および導き出した考察を記す。
一般に、ビカット軟化点が106℃以上の耐熱ポリスチレン系樹脂は、HIPSなどの耐衝撃性ポリスチレン系樹脂と非相溶であるため、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂と耐熱ポリスチレン系樹脂の組成比が50~99質量%:50~1質量%の場合、単純に、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂中にビカット軟化点106℃以上の耐熱ポリスチレン系樹脂を混合してシート化した場合は、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂を海、耐熱ポリスチレン系樹脂を島(ドメイン)とした海島構造のモルフォロジーを形成する。そして、上述の耐熱ポリスチレン系樹脂のドメインが大きくなるに従い、得られるシートの耐衝撃性、引き裂き強度などの機械強度が低下傾向を示す。
これが、従来、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂中に耐熱ポリスチレン系樹脂を混合してなるシートが、求められる機械強度等の諸物性を満たすことができなかった主要因であり、耐熱ポリスチレン系樹脂をリサイクルに用いることができなかった所以である。
従来は、上述の課題を解決するために、より低いビカット軟化点を示す耐熱ポリスチレン系樹脂を用い、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂との相溶性を上げることで対応されていたところを、本発明は、106℃以上のビカット軟化点の耐熱ポリスチレン系樹脂を用いた場合においても、上述のドメインサイズをより小さくすることによってシートの機械強度低下を抑制することに着目し、そして、その物性発現には耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)と耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の両者のメルトフローレート(MFR)の関係性が支配因子であることを見出したものである。
すなわち、耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のメルトフローレートMFR(B)と、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)のメルトフローレートMFR(A)とが、上記した式(1)を満たすことにより、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)の海(マトリックス)中での、耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の溶融粘度が相対的に小さくなりやすくなる。
そのため、前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の自己凝集力が小さくなり、海島構造の島が均一分散に近い構造を形成しやすくなり、ドメインサイズが小さくなる。
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)相が海、耐熱ポリスチレン系樹脂(B)相が島(ドメイン)となる上記モルフォロジー構造において、良好なシート機械強度を示すドメインサイズは、特に限定されないが、無延伸シートにおいては、例えば、ドメインの短径が1.0μm以下であり、延伸シートにおいては例えばシートの厚さ方向のドメインサイズが1.0μm以下である。
(樹脂組成物)
本発明のシートは、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)と耐熱ポリスチレン系樹脂(B)との樹脂組成物を主成分としてなる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートであって、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)と耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の合計を100質量%とした場合、両樹脂の組成比が、(A)/(B)=50~99質量%/50~1質量%である。好ましくは、(A)/(B)=53~95質量%/47~5質量%であり、より好ましくは56~90質量%/44~10質量%であり、更に好ましくは59~85質量%/41~15質量%である。耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の質量比が1質量%以上であることにより、シートの引張弾性率や引張降伏強度等の機械強度を向上することができる。また、耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の組成比が50質量%以下であることにより、得られる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートの耐衝撃性を付与することができる。
(汎用ポリスチレン樹脂)
本発明のシートを構成する材料は、上記した樹脂(A)および樹脂(B)からなる樹脂組成物以外に汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)を含有してもよい。GPPSが含有される形態としては、例えば、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂や耐熱ポリスチレン系樹脂に含まれている場合もあれば、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートや耐熱ポリスチレン系樹脂シートに含まれていてそれらをリサイクル利用して本発明のシートの構成材料に用いる場合、汎用ポリスチレン樹脂シートをリサイクル利用して本発明のシートの構成材料に用いる場合、GPPSバージンペレットを混合する場合、等が挙げられる。
GPPSとしては、スチレン、o-、m-、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、p-t-ブチルスチレン等のアルキルスチレン 、α-メチルスチレン、エチルスチレン等のα-アルキルスチレン、などの芳香族ビニル化合物の単独重合体、またはこれら単量体を組み合わせた共重合体などであって、ビカット軟化点が106℃未満のものが挙げられる。これらのGPPSは、単独または二種類以上を組み合わせることができる。好ましいGPPSは、重量平均分子量が18万~35万のホモポリスチレンである。
GPPSの含有量は、本発明のシートを構成する材料100質量%に対して、0~40質量%が好ましい。良好な耐衝撃性を有するシートを得る観点から、0~20質量%がより好ましい。
また、シートを構成する材料中のGPPSの含有量は、予め重量を測った本発明のシートをクロロホルムに溶解し、溶液と不溶物とを分離後、溶液のクロロホルムを乾燥し、GPPSと耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の混合物を回収し重量を算出することで、シートを構成する材料中のGPPSと耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の混合物の含有量を算出できる(操作1)。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて、カラムにTSKgel ODS-100V(東ソー社製)、検出器に蒸発型光散乱検出器、測定温度40℃、移動相にアセトニトリル/THF溶媒を用いた溶媒グラジエントHPLC法にて、回収したGPPSと耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の混合物を測定し、ピークトップ保持時間の差により得られるGPPSのピークより、GPPSと耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の混合物中のGPPS含有量を算出することができる(操作2)。操作1、2の結果より、シートを構成する材料中のGPPSの含有量を算出することができる。
(その他の成分)
本発明のシートには、本発明の効果を損なわない範囲において、無機粒子や添加剤、他の樹脂を含有することを許容することができる。
例えば、無機粒子の含有により、シートのブロッキング抑制を図ることができる。無機粒子は、本発明のシートの表面に適度な凹凸を発現させる観点、及び透明性維持の観点から、含有量は、シートを構成する材料中において、50~500ppmであることが好ましい。また、無機粒子の平均粒子径は1~20μmが好ましい。
無機粒子の種類は、特に限定されるものではないが、シリカ、ガラスビーズ等、及びそれらの表面に化学的処理を施したもの等が挙げられるが、化学的に安定であり、触媒作用によって樹脂を変性させないこと、及び該シートへのシリコーンオイルの塗布性が良好であることから、酸化珪素を主体成分とする球状シリカが好ましい。
また、本発明のシートには、使用目的に応じて、内部潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、加工助剤、溶融粘度改良剤、酸化防止剤、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候性安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、核剤、架橋剤、滑材、アンチブロッキング剤、スリップ剤、防曇剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤および顔料などの添加剤をシートの構成材料に適宜添加してシートを製造してもよい。
内部潤滑剤としては、例えばミネラルオイルなどが挙げられ、配合量はシートを構成する材料100質量%に対して、2.0質量%以下が好ましい。2.0質量%を超えて配合すると、押出溶融時に内部潤滑剤の一部が揮発し、揮発した内部潤滑剤が製造装置に付着し、凝集した内部潤滑剤がシートに転写し、シートの外観を損ねる可能性がある。そのため、内部潤滑剤の配合量は1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)、耐熱性ポリスチレン系樹脂(B)、汎用ポリスチレン樹脂以外の他の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。上記した他の樹脂の含有量は、シートを構成する材料100質量%に対して、10質量%以下が好ましい。
また、本発明のシートは、シート表面に防曇剤、帯電防止剤、例えばシリコーンオイル等の離型剤などの塗布層を有することができる。塗布量は、特に制限されるものではないが、上記のシート性能を発揮させるためには、少なくとも片面に5~100mg/mの範囲で塗布することが好ましい。又、離型剤としては、シリコーンオイルが好ましく、高温成形時に該シート表面を侵しにくいことから、ポリジメチルシロキサンがより好ましい。
本発明のシートの二次成形品を食品包装材として使用する場合は、一方の面に離型剤を含む塗布層を配し、他方の面に防曇剤を含む塗布層を配し、防曇剤層面を食品内容物側に向けて用いるとよい。防曇剤の塗布量は特に制限されるものではないが、防曇性能の点から、少なくとも片面に10~100mg/mの範囲で塗布することが好ましい。防曇剤としては公知の界面活性剤が使用可能で、特にショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの多価アルコール脂肪酸エステルが好ましく、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体などの多価アルコール脂肪酸エステルと水溶性ポリマーや、メチルセルロース、シクロデキストリンなどの多糖類等との2種以上の混合物が特に好ましい。
<耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートの製造方法>
本発明のシートの製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、押出機を用いて前記樹脂組成物を主成分として含むシートの構成材料を溶融し、ダイからシート状に押出し、冷却ロールや空冷、水冷にて冷却固化して得られる。また、上述の手法により得られたシートを、少なくとも一方向に延伸処理した後、巻取機にて巻き取ることによりシートを得る方法が例示できる。ここで、「シート」とは、厚いシートから薄いフィルムまでを包括した意を有する。
シートを得る方法として具体的には、本発明のシートを構成する材料を混合した後、単軸押出機、異方向二軸押出機、同方向二軸押出機などの押出機を使用し、該材料の均一な分散分配を促す。本発明のシートを構成する材料が複数の種類からなる場合、タンブラーミキサー、ミキシングロール、バンバリーミキサー、リボンブレンダ―、スーパーミキサーなどの混合機で混合した後、押出機に投入してもよく、他の混練機の先端にストランドダイを接続し、ストランドカット、ダイカットなどの方法により一旦ペレット化した後に得られたペレットを押出機に投入してもよい。また、一旦ペレット化した後、得られたペレットと共にその他の成分も一緒に押出機に投入してもよい。
押出機により溶融された樹脂組成物は、押出機の先端にTダイなどの口金を接続し、シート状に成形された後、冷却ロールで冷却固化される。
押出温度は、180~260℃程度が好ましく、より好ましくは190~250℃である。押出温度やせん断の状態を最適化することにより、種々の物理的特性、機械的特性を所望の値にするのに有効となる。
本発明のシートの延伸方法としては、特に制約されるものではないが、シートの流れ方向(以下、縦方向またはMDと表記することがある)へのロール延伸や、シート流れ方向に対する垂直方向(以下、横方向またはTDと表記することがある)へのテンター延伸等により、二軸延伸されることが好ましい。
また、上述のように縦方向に延伸した後、横方向に延伸してもよく、横方向に延伸した後、縦方向に延伸してもよい。また、縦方向及び横方向に延伸処理されていれば、同じ方向に2回以上延伸してもよい。さらには、縦方向に延伸した後、横方向に延伸し、さらに縦方向に延伸してもよい。また、同時二軸延伸機により縦方向、横方向に同時に延伸されてもよい。さらには、未延伸シートを裁断し、バッチ式の延伸機により二軸延伸されてもよい。
縦方向への延伸としては、ロールを用いた縦延伸方法が好ましい。ロールを用いた縦延伸方法は、低速ロールと高速ロールを同方向に回転させてシートを平行掛けに通紙し、延伸する方法と、低速ロールと高速ロールを逆回転させてシートを襷掛けに通紙し、延伸する方法とがあり、1段あるいは多段、平行掛け、あるいは襷掛けの任意の組み合わせとすることができる。また、低速ロールと高速ロールとの間にヒーターなどを設置し、ヒーターによる加熱を行いながら延伸することもできる。横方向への延伸としては、テンター延伸されることが好ましい。
縦延伸、横延伸における延伸倍率は、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートを構成する樹脂組成物により異なるが、通常面倍率で1.5~15倍、より好ましくは4~10倍である。逐次延伸の場合の縦方向の延伸倍率は1.2~5倍で、好ましくは1.5~3.0倍であり、横方向の延伸倍率は1.2~5倍で、好ましくは1.5~3.0倍である。同時ニ軸延伸の各方向の延伸倍率は1.5~5倍であることが好ましい。
また、縦延伸、横延伸における延伸温度は、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートを構成する樹脂組成物により異なるが、縦延伸、横延伸ともに、概ね110℃~170℃の温度で延伸されることが好ましい。
防曇剤、帯電防止剤、離型剤等の塗布層は、ダイからシート状に押出し、冷却ロールや空冷、水冷にて冷却固化後、または、シートの延伸後に、公知の方法でシート表面に塗布して形成することができる。また、塗布層の形成前に、公知の方法でシート表面にコロナ処理を施すことができる。
また、本発明の耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートの厚さは、特に限定されないが、シート強度、耐熱性、成形性、経済性などの点から0.08~1mmが好ましく、0.1~0.7mmがより好ましい。なお、本発明のシートは、必要により、共押出やドライラミネートなどによって、同種または異種の熱可塑性樹脂を積層しても良い。
また、本発明の耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートが延伸されている場合、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートは、ASTMD-2838-02に準拠し、ビカット軟化点+30℃の温度条件にて測定される配向緩和応力が、好ましくは0.2~2.0MPa、より好ましくは0.4~1.0MPaである。配向緩和応力が0.2MPa以上であると、シートの耐衝撃性が増して耐折性が良好となりやすく、2.0MPa以下であると、シートの延伸切れが起き難く、また二次成形性が良好となりやすい。前記配向緩和応力を上述の好ましい範囲とするには、上記延伸倍率、及び、上記延伸温度を適宜調整することにより可能となる。
本発明のシートの機械的強度は、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂に汎用ポリスチレン樹脂を両者間の組成比50~99質量%/50~1質量%で混合した場合と同程度に良いことが好ましく、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂のみで構成されたシートと同程度であることが最も望ましい。
例えば無延伸シートの場合、引張降伏強度は29MPa以上が好ましく、31MPa以上がより好ましい。引張破断伸度は、25%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。引き裂き強度は、1.5N/mm以上が好ましく、2.0N/mm以上がより好ましい。面衝撃強度(最大衝撃点エネルギー)は0.5J以上が好ましく、0.7J以上がより好ましい。
<成形品>
本発明のシートの用途としては特に限定されるものではないが、成形品の耐熱性、耐衝撃性、耐折性等に優れる観点より、本発明の耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートを熱板圧空真空成形法(直接加熱方式)又は圧空成形法、真空圧空成形法(間接加熱方式)によって、目的の容器形状に二次成形して、食品包装材等の成形品として好適に用いることができる。例えば、生鮮、乾物、菓子などの食品を収納する箱型容器本体、蓋付容器、コップ、盆、皿等の蓋なし容器、蓋などといった容器等として好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各測定及び評価は次のように行った。
(1)引張降伏強度、引張破断伸度
JISK7127(1999)に準拠し、実施例、比較例、参考例にて得られたシートより、シートのMD、TDに対して各5本ずつ、ダンベル状試験片(試験片タイプ5、狭い平行部の幅6mm)を切断刃で打ち抜き、狭い平行部に標線(標線間距離25mm)を引き、チャック間初期距離80mm、測定雰囲気温度23℃、試験速度200mm/minにて、引張試験をそれぞれ5回ずつ行い、引張降伏強度、及び、引張破断伸度の平均値を算出し、該平均値を測定値とした。なお、本測定において、いずれの測定においても引張降伏強度が最大強度であった。
(2)引き裂き強度
実施例、比較例、参考例にて得られたシートのMDの引き裂き強度を測定するため、JISK7128-1(1998)に準拠し、MD150mm、TD50mmの試験片を5本ずつ切断刃で打ち抜き、試験片TDの中央部にMDに対して長さ75mmのスリットを入れ、トラウザー型試験片を作製した。また、シートのTDの引き裂き強度を測定するため、JISK7128-1(1998)に準拠し、TD150mm、MD50mmの試験片を5本ずつを切断刃で打ち抜き、試験片MDの中央部にTDに対して長さ75mmのスリットを入れ、トラウザー型試験片を作製した。その後、試験片の長足を引張試験機に取り付けて、測定雰囲気温度23℃、試験速度200mm/minにて、引張試験をそれぞれ5回ずつ行い、各シートのMD、及び、TDの引き裂き強度の平均値を算出し、該平均値を測定値とした。
(3)面衝撃強度(最大衝撃点エネルギー)
JISK7124-2(1999)に準拠し、実施例、比較例、参考例にて得られたシートより所定の大きさの試験片を切断刃にて打ち抜き、各シートにつき5個作製した。これらの5個の試験片に対して、測定雰囲気温度23℃、及び、0℃の2条件の雰囲気温度下で、衝撃速度3.0m/秒の条件にて衝撃試験をそれぞれ5回ずつ行い、最大衝撃点エネルギーの平均値を算出し、該平均値を測定値とした。
各実施例、比較例、参考例で使用した原材料は下記の通りである。
使用した原材料樹脂のメルトフローレート(MFR)は、測定温度200℃、測定荷重5kgfにて測定した値である。
<耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)>
・A-1:耐衝撃性ポリスチレン(グラフト型HIPS、グラフトモノマー:スチレン、ゴム成分組成:ポリブタジエンゴム、ゴム成分中のジエン含有量;7.5質量%、ゴム粒子の平均粒子径:4.0μm、MFR=2.5g/10min)
<耐熱ポリスチレン系樹脂(B)>
・B-1:スチレン-メタクリル酸共重合体(スチレン単量体97質量%、メタクリル酸単量体3質量%、MFR=2.8g/10min、ビカット軟化点107℃)
・B-2:スチレン-メタクリル酸共重合体(スチレン単量体97質量%、メタクリル酸単量体3質量%、MFR=2.0g/10min、ビカット軟化点108℃)
・B-3:スチレン-メタクリル酸共重合体(スチレン単量体95質量%、メタクリル酸単量体5質量%、MFR=1.8g/10min、ビカット軟化点110℃)
<他の耐熱ポリスチレン系樹脂>
・C-1:スチレン-メタクリル酸共重合体(スチレン単量体95質量%、メタクリル酸単量体5質量%、MFR=1.0g/10min、ビカット軟化点110℃)
<汎用ポリスチレン系樹脂>
・D-1:ホモポリスチレン樹脂(スチレン単量体100質量%、MFR=3.3g/10min、ビカット軟化点100℃)
<参考例1>
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A-1)80質量%、汎用ポリスチレン系樹脂(D-1)20質量%を混合して単軸押出機に投入し、設定温度230℃にて溶融混練した後、単軸押出機の先端に接続したTダイにて押出し、100℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて厚さ250μmのシートを得た。
<参考例2>
参考例1において、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A-1)60質量%、汎用ポリスチレン系樹脂(D-1)40質量%を混合して単軸押出機に投入した他は同様にしてシートを得た。
<参考例3>
参考例1において、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A-1)100質量%を単軸押出機に投入した他は同様にしてシートを得た。
<実施例1>
参考例1において、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A-1)80質量%、耐熱ポリスチレン系樹脂(B-1)20質量%を混合して単軸押出機に投入した他は同様にしてシートを得た。
<実施例2>
参考例1において、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A-1)60質量%、耐熱ポリスチレン系樹脂(B-1)40質量%を混合して単軸押出機に投入した他は同様にしてシートを得た。
<実施例3>
参考例1において、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A-1)80質量%、耐熱ポリスチレン系樹脂(B-2)20質量%を混合して単軸押出機に投入した他は同様にしてシートを得た。
<実施例4>
参考例1において、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A-1)60質量%、耐熱ポリスチレン系樹脂(B-2)40質量%を混合して単軸押出機に投入した他は同様にしてシートを得た。
<実施例5>
参考例1において、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A-1)80質量%、耐熱ポリスチレン系樹脂(B-3)20質量%を混合して単軸押出機に投入した他は同様にしてシートを得た。
<実施例6>
参考例1において、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A-1)60質量%、耐熱ポリスチレン系樹脂(B-3)40質量%を混合して単軸押出機に投入した他は同様にしてシートを得た。
<比較例1>
参考例1において、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A-1)80質量%、耐熱ポリスチレン系樹脂(C-1)20質量%を混合して単軸押出機に投入した他は同様にしてシートを得た。
<比較例2>
参考例1において、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A-1)60質量%、耐熱ポリスチレン系樹脂(C-1)40質量%を混合して単軸押出機に投入した他は同様にしてシートを得た。
参考例、実施例、比較例で得たシートについて、上述の各測定および評価を行い、表1に纏めた。
また、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)に汎用ポリスチレン樹脂を混合した場合のシート機械強度に対して、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)に耐熱性ポリスチレン系樹脂を混合した場合のシート機械強度を評価するために、参考例1と同じ(A-1)混合比率80質量%の実施例1、実施例3、実施例5、比較例1の各測定値を参考例1の測定値に対する割合(%)で表し、また、参考例2と同じ(A-1)混合比率60質量%の実施例2、実施例4、実施例6、比較例2の各測定値を参考例2の測定値に対する割合(%)で表し、それらを表2に纏めた。
Figure 0007200613000001
Figure 0007200613000002
実施例1~6で得られたシートは、表1の通り、引張破断伸度がMD、TDとも25%以上を示し、引き裂き強度がMD、TDとも1.5N/mm以上を示し、最大衝撃点エネルギーが測定温度23℃、0℃とも0.5J以上を示し、いずれの場合とも、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートとして用いるにあたり十分な機械強度を有することが分かる。
また、実施例1~6で得られたシートは、表2に示すように、耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の代わりに汎用ポリスチレン系樹脂を用いた参考例1、2と比較しても、各物性値が50%以下(対参考例での評価値)になることはないことから、機械物性値の著しい低下が抑制されていることが分かる。また、評価項目によっては100%以上(対参考例での評価値)の良好なシートが得られたことがわかる。
一方、本発明が規定する式(1)から逸脱した耐熱ポリスチレン系樹脂(C-1)を用いた比較例1、2のシートは、TDの引張破断伸度やMDの引き裂き強度、最大衝撃点エネルギーにおいて、著しい低下が確認された。同様のビカット軟化点を有する耐熱ポリスチレン系樹脂(B-3)を用いた実施例5、6と比較しても、各種機械物性の低下度合いが著しいことが明らかである。
すなわち、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)と耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の混合樹脂組成物の質量比、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)と耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のメルトフローレートの関係、および耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のビカット軟化点を本発明の規定する範囲とすることにより、優れた耐衝撃性や引き裂き強度を有する耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートを得られることが分かる。
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート、および、該シートからなる成形品もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本開示の耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートは、耐熱ポリスチレン系樹脂を耐衝撃性ポリスチレン系樹脂に混合した場合においても、耐衝撃性や引き裂き強度等の諸物性に優れた耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートを得ることができるため、例えば、耐熱ポリスチレン系樹脂シートのスケルトンを耐衝撃性ポリスチレン樹脂に混合しシート化して再利用することができ、産業資源の活用に大変有用である。

Claims (6)

  1. 耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)と耐熱ポリスチレン系樹脂(B)との樹脂組成物を主成分としてなる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートであって、下記(i)~(iii)および(iv)を満たすことを特徴とする耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート。
    (i)前記耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)と前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の合計を100質量%とした場合に、組成比(A)/(B)が50~99質量%/50~1質量%である、
    (iv)前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)が、スチレン系単量体(a)と、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、及びアクリロニトリルの群から選ばれる1種の単量体(b)との二元共重合体であり、前記二元共重合体の組成比が、前記スチレン系単量体(a)と前記単量体(b)の合計を100質量%とした場合に、(a)が80~99質量%、(b)が1~20質量%である、
    (ii)前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のビカット軟化点が106℃以上である、
    (iii)前記耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)のメルトフローレートMFR(A)と前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のメルトフローレートMFR(B)とが、式(1)を満たす。
    MFR(B)-MFR(A)≧-1.0[単位:g/10min]・・・式(1)
  2. 前記MFR(B)が1.5g/10min以上である、請求項1に記載の耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート。
  3. 前記単量体(b)が(メタ)アクリル酸である、請求項1または2に記載の耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート。
  4. 耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)と耐熱ポリスチレン系樹脂(B)との樹脂組成物を主成分としてなる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートであって、下記(i)~(iii)および(v)を満たすことを特徴とする耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート。
    (i)前記耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)と前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)の合計を100質量%とした場合に、組成比(A)/(B)が50~99質量%/50~1質量%である、
    (v)前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)が、スチレン系単量体(a)と、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及びアクリロニトリルの群から選ばれる1種の単量体(b)’と、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)との三元共重合体であり、前記三元共重合体の組成比が、前記単量体(a)と前記単量体(b)’と前記単量体(c)の合計を100質量%とした場合に、(a)が60~98質量%、(b)’が1~20質量%、(c)が1~20質量%である、
    (ii)前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のビカット軟化点が106℃以上である、
    (iii)前記耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(A)のメルトフローレートMFR(A)と前記耐熱ポリスチレン系樹脂(B)のメルトフローレートMFR(B)とが、式(1)を満たす。
    MFR(B)-MFR(A)≧-1.0[単位:g/10min]・・・式(1)
  5. 前記MFR(B)が1.5g/10min以上である、請求項4に記載の耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シート。
  6. 請求項1~5の何れかに記載の耐衝撃性ポリスチレン系樹脂シートからなる成形品。
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