JP2020059713A - 膠芽腫治療のための併用療法 - Google Patents
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Abstract
【課題】膠芽腫に罹患しやすい、又は膠芽腫と診断されたヒト患者に対し、抗VEGF抗体を、1種またはそれ以上のさらなる抗腫瘍治療剤と併用して行う治療方法の提供。【解決手段】有効量の抗VEGF抗体、有効量の化学療法薬、及び有効量の放射線治療を含む、膠芽腫と診断された患者の治療方法であって、抗VEGF抗体を用いずに該化学療法薬を投与される膠芽腫患者と比較して、患者の全生存期間中央値を延長させる、治療方法。抗VEGF抗体としてはベバシズマブ、化学療法薬としてはテモゾロミド。【選択図】なし
Description
本発明は、一般に、疾患及び病理学的状態を抗VEGF抗体で治療することに関する。より具体的には、本発明は、膠芽腫に罹患しやすい、または膠芽腫と診断されたヒト患者に対し、抗VEGF抗体を、1種またはそれ以上のさらなる抗腫瘍治療剤と併用して行う治療に関する。
神経膠腫は、悪性脳腫瘍とCNS(中枢神経系)腫瘍を合わせた全体の81%を占める。膠芽腫(多形膠芽腫(GBM)、世界保健機構(WHO)グレードIVの星細胞腫)は、特に、悪性神経膠腫の60%〜70%を占め、神経膠腫の中で最も侵攻性の高いサブタイプである。主に成人に発症し(診断時の年齢中央値:64歳)、米国における罹患率は3.05/100,000と推定される。1年全生存率及び5年全生存率はそれぞれ29%と3%であり、依然、膠芽腫の予後は特に不良である(米国脳腫瘍統計:Central Brain Tumor Registry of the United States)(2005)(CBTRUS;http://www.cbtrus.org))。
膠芽腫の治療がいくらか進歩してはいるものの、この疾患は治療の選択肢が限られており、依然として多くの医療ニーズが満たされていない。特に、血管新生を促進する血管内皮増殖因子(VEGF)を標的とするモノクローナル抗体であるベバシズマブ(Avastin(登録商標))は、治療上の可能性が有意に高い。
本発明は、新たに膠芽腫と診断された患者を含む、膠芽腫と診断されている患者を治療するための方法及びキットを提供する。
ある態様では、本発明は、有効量の抗VEGF抗体、有効量の化学療法薬、及び有効量の放射線治療を含む治療を患者に投与することを含む、膠芽腫と診断された患者の治療方法であり、かかる治療により、抗VEGF抗体を用いずに化学療法薬を受けている膠芽腫患者に比して、患者の全生存(OS)期間中央値を延長させる治療方法を提供する。
別の態様では、本発明は、膠芽腫と診断された患者の全生存期間中央値を、抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を受けている膠芽腫患者の場合よりも延長させるための薬品の製造において、有効量の抗VEGF抗体、化学療法薬、及び放射線治療を使用することを特長とする。
別の態様では、本発明は、膠芽腫と診断された患者の全生存期間中央値を、抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を受けている膠芽腫患者の場合よりも延長させる方法において使用するための、有効量の抗VEGF抗体、化学療法薬、及び放射線治療を含む組成物を特長とする。
上記態様のいずれか一態様のいくつかの実施形態では、患者はWHOによるパフォーマンス状態が2以下であり得る。いくつかの実施形態では、化学療法薬はテモゾロミド(TMZ)であり得る。いくつかの実施形態では、TMZの有効量は150mg/m2であり得、任意選択で経口投与が可能である。いくつかの実施形態では、TMZの有効量は200mg/m2であり得、任意選択で経口投与が可能である。いくつかの実施形態では、放射線治療を2Gyで投与できる。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体はA4.6.1エピトープに結合できる。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体はベバシズマブであり得る。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体は可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含んでよく、これにおいて、VHは、アミノ酸配列EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGyTFTNYGMNWVRQAPGKGLEWVGWINTYTGEPTYAADF KRRFTFSLDTSKSTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAKYPHYYGSSHWYFDVWGQGTLVTVSS(配列番号2)を有することができ、また、VLは、アミノ酸配列DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCSASQDIS NYLNWYQQKPGKAPKVLIYFTSSLHS GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSTV PWTFGQGTKVEIKR(配列番号1)を有することができる。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体の有効量は約10mg/kg(例えば、10mg/kg)であり得、任意選択で、2週間隔で静脈内投与が可能であり、例えば、初回静脈内投与を90分かけて行い、2回目は60分かけて注入を行い、その次は30分かけて行う、というようにすることができる。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体の有効量は約15mg/kg(例えば、15mg/kg)であり得、任意選択で、2週間隔で静脈内投与が可能であり、例えば、初回静脈内投与を90分かけて行い、2回目は60分かけて注入を行い、その次は30分かけて行う、というようにすることができる。いくつかの実施形態では、第1サイクルでは患者に最初に抗VEGF抗体を投与することができ、任意選択で、その後の任意の抗VEGF抗体投与は化学療法の前に行っても後に行ってもよい。別の実施形態では、抗VEGF抗体を、化学療法薬、及び任意選択で放射線治療と同時に投与することができる。いくつかの実施形態では、患者に対するステロイド剤の投与を中止することができる。いくつかの実施形態では、膠芽腫は前神経性サブタイプである。いくつかの実施形態では、膠芽腫は新たに診断された膠芽腫である。
上記の方法、使用、及び組成物では、抗VEGF抗体を用いずに化学療法薬を受けている膠芽腫患者に比して、全生存(OS)期間中央値は約4.9か月延長され、ハザード比(HR)は約0.42であり得る。別の実施形態では、抗VEGF抗体を用いずに化学療法薬を受けている膠芽腫患者に比して、全生存(OS)期間中央値は約4.9か月延長され、ハザード比は約0.24〜約0.72であり得る。別の実施形態では、抗VEGF抗体を用いずに化学療法薬を受けている膠芽腫患者に比して、全生存(OS)期間中央値は少なくとも5か月またはそれ以上延長され、ハザード比は約0.24〜約0.72であり得る。上記方法のいくつかの実施形態では、患者は65歳未満であり得る。上記方法のその他の実施形態では、患者は65歳またはそれ以上であり得る。
別の態様では、本発明は、本質的にエピトープA4.6.1に結合する抗VEGF抗体と、化学療法薬と、患者に有効量の抗VEGF抗体及び化学療法薬を投与することを含む、膠芽腫と診断された患者を治療するための添付文書またはラベルとを含むキットを提供し、これにおいて、かかる治療により患者のOS期間中央値が、抗VEGF抗体を用いずに化学療法薬を受けている膠芽腫患者に比して延長される。本態様のいくつかの実施形態では、患者は、それまでに2つまたはそれより少ない抗癌レジメンを受けていてよい。本態様のいくつかの実施形態では、抗VEGF抗体はベバシズマブであり得る。本態様のいくつかの実施形態では、膠芽腫は前神経性サブタイプである。本態様のいくつかの実施形態では、膠芽腫は新たに診断された膠芽腫である。
I.定義
「抗血管新生剤」または「血管新生阻害剤」とは、血管新生、血管発生、若しくは望ましくない血管透過性を直接的または間接的に阻害する、低分子量の物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組換えタンパク質、抗体、またはその複合体若しくは融合タンパク質を指す。抗血管新生剤としては、血管新生因子またはその受容体の血管新生作用を結合及び遮断する薬剤が含まれることを理解されるべきである。例えば、抗血管新生剤は、本明細書を通して定義される、または当技術分野で公知である血管新生因子に対する抗体または他の拮抗薬であり、例えば、VEGF−Aに対する抗体またはVEGF−A受容体(例えば、KDR受容体またはFlt−1受容体)に対する抗体、VEGFトラップ(VEGF−trap)、Gleevec(商標)(メシル酸イマチニブ)などの抗PDGFRの阻害剤があるが、これらに限定されるものではない。抗血管新生剤には、内因性の血管新生阻害物質、例えば、アンジオスタチン、エンドスタチンなども挙げられる。例えば、Klagsbrun and D’Amore,Annu.Rev.Physiol.,53:217−39(1991);Streit and Detmar,Oncogene,22:3172−3179(2003)(例えば、悪性黒色腫における抗血管新生治療を一覧にした表3);Ferrara&Alitalo,Nature Medicine 5:1359−1364(1999);Tonini et al.,Oncogene,22:6549−6556(2003)(例えば、既知の抗血管新生因子を一覧にした表2);及び、Sato.Int.J.Clin.Oncol.,8:200−206(2003)(例えば、臨床試験に使用される抗血管新生薬の一覧である表1)を参照のこと。
「抗血管新生剤」または「血管新生阻害剤」とは、血管新生、血管発生、若しくは望ましくない血管透過性を直接的または間接的に阻害する、低分子量の物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組換えタンパク質、抗体、またはその複合体若しくは融合タンパク質を指す。抗血管新生剤としては、血管新生因子またはその受容体の血管新生作用を結合及び遮断する薬剤が含まれることを理解されるべきである。例えば、抗血管新生剤は、本明細書を通して定義される、または当技術分野で公知である血管新生因子に対する抗体または他の拮抗薬であり、例えば、VEGF−Aに対する抗体またはVEGF−A受容体(例えば、KDR受容体またはFlt−1受容体)に対する抗体、VEGFトラップ(VEGF−trap)、Gleevec(商標)(メシル酸イマチニブ)などの抗PDGFRの阻害剤があるが、これらに限定されるものではない。抗血管新生剤には、内因性の血管新生阻害物質、例えば、アンジオスタチン、エンドスタチンなども挙げられる。例えば、Klagsbrun and D’Amore,Annu.Rev.Physiol.,53:217−39(1991);Streit and Detmar,Oncogene,22:3172−3179(2003)(例えば、悪性黒色腫における抗血管新生治療を一覧にした表3);Ferrara&Alitalo,Nature Medicine 5:1359−1364(1999);Tonini et al.,Oncogene,22:6549−6556(2003)(例えば、既知の抗血管新生因子を一覧にした表2);及び、Sato.Int.J.Clin.Oncol.,8:200−206(2003)(例えば、臨床試験に使用される抗血管新生薬の一覧である表1)を参照のこと。
本明細書の「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性が示される限りさまざまな抗体構造を包含し、これらにはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「VEGF」または「VEGF−A」という用語は、例えば、Leung et al.Science,246:1306(1989)、及び、Houck et al.Mol.Endocrin.,5:1806(1991)に記載があるような、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子、並びに関連する、121、145、189、及び206アミノ酸の各ヒト血管内皮細胞増殖因子、並びに、その天然に生じる対立遺伝子及び加工型を指すために使用される。VEGF−Aは、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E、VEGF−F、及びPIGFを含む遺伝子ファミリーに含まれる。VEGF−Aは主に、2つの高親和性受容体型チロシンキナーゼ、VEGFR−1(Flt−1)及びVEGFR−2(Flk−1/KDR)に結合し、後者は、VEGF−Aの血管内皮細胞分裂促進シグナルの主要伝達物質である。さらに、ニューロピリン−1は、ヘパリン結合性VEGF−Aアイソフォームの受容体として同定されており、血管発生に関与している可能性がある。「VEGF」または「VEGF−A」という用語は、マウス、ラット、または霊長類などの非ヒト種に由来する各種VEGFも指す。場合により、特定の種に由来するVEGFを、ヒトVEGFを表すhVEGFまたはマウスVEGFを表すmVEGFといった用語で示す場合がある。典型的に、VEGFとはヒトVEGF指す。「VEGF」という用語はまた、165アミノ酸ヒト血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸8〜109または1〜109を含むポリペプチドの切断体若しくは断片を指すためにも使用される。そのような形態の任意のVEGFに言及する場合、本明細書では、例えば、「VEGF(8〜109)」、「VEGF(1〜109)」または「VEGF165」のように記載する場合がある。「切断型」天然VEGFのアミノ酸位置は、天然型VEGF配列に示されるとおりに付番されている。例えば、切断型天然VEGFのアミノ酸位置17(メチオニン)は、天然型VEGFでも位置17(メチオニン)である。切断型天然VEGFは、KDR及びFlt−1両受容体に対し、天然型VEGFに匹敵する結合親和性を有する。
「抗VEGF抗体」は、VEGFに十分な親和性及び特異性で結合する抗体である。選択される抗体は、通常、VEGFに対する結合親和性を有することになり、例えば、かかる抗体はhVEGFとKd値100nM〜1pMで結合し得る。抗体の親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴に基づくアッセイ(PCT出願公開 No.WO2005/012359に記載のBIAcoreアッセイなど);酵素結合免疫吸着測定法(ELISA);及び競合アッセイ(例えば、RIA)で測定してよい。ある特定の実施形態では、本発明の抗VEGF抗体を、VEGF活性が関与する疾患または病態を標的とし、かつ、阻害する治療剤として使用できる。また、抗体を、例えば、治療剤としてのその有効性を評価するために他の生物活性測定に供してもよい。そのような測定法は、当技術分野で公知であり、抗体が標的とする抗原及び意図される使用により異なる。例としては、HUVEC阻害アッセイ;腫瘍細胞増殖阻害アッセイ(例えば、WO89/06692に記載のような);抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)アッセイ及び補体媒介性細胞傷害活性(CDC)アッセイ(U.S.Pat.No.5,500,362);並びに、作動活性または造血アッセイ(WO95/27062を参照のこと)が挙げられる。抗VEGF抗体は、通常、VEGF−BまたはVEGF−Cのような他のVEGFホモログにも、また、PIGF、PDGFまたはbFGFのような他の成長因子にも結合しないと。
「rhuMAb VEGF」、または「Avastin(登録商標)」としても知られる抗VEGF抗体「ベバシズマブ(BVまたはBev)」は、Presta et al.,Cancer Res.57:4593−4599(1997)にしたがって作製される抗VEGF遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体である。この抗体は、ヒトVEGFのヒトVEGF受容体への結合を遮断するマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1に由来する、変異ヒトIgG1フレームワーク領域及び抗原を結合する相補性決定領域を含む。ベバシズマブのアミノ酸配列は、そのフレームワーク領域の大半を含め、約93%はヒトIgG1由来であり、同配列の約7%はマウス抗体A4.6.1由来である。ベバシズマブは、分子量約149,000ダルトンであり、グリコシル化されている。他の抗VEGF抗体には、米国特許第6,884,879号及びWO2005/044853に記載の抗体が挙げられる。
「エピトープA4.6.1」とは、抗VEGF抗体ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))によって認識されるエピトープを指す(Muller et al.Structure.6:1153−1167,1998を参照のこと)。本発明のある実施形態では、抗VEGF抗体として、ハイブリドーマATCC HB 10709により産生される抗VEGFモノクローナル抗体A4.6.1と同一のエピトープに結合するモノクローナル抗体;Presta et al.(Cancer Res.57:4593−4599,1997)にしたがって作製される抗VEGF遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の「機能的エピトープ」とは、エネルギー的に抗体の結合に寄与する抗原のアミノ酸残基を指す。エネルギー的に寄与する抗原残基の任意の1つが変異すると(例えば、天然型VEGFのアラニンの変異またはホモログ変異)、抗体の結合が破壊されることになり、抗体の相対的親和比(IC50変異VEGF/IC50天然型VEGF)は5を超えるであろう(WO2005/012359の実施例2を参照のこと)。一実施形態では、ELISAを提示するファージを結合している溶液により相対的親和比を測定する。簡単に言えば、96ウェルMaxisorpイムノプレート(NUNC)を、Fab型抗体により4℃で一晩コーティングしてからPBS中2μg/mlの濃度で試験し、PBS、0.5%BSA、及び0.05%Tween20(PBT)により室温で2時間ブロッキングする。hVEGFアラニン点変異体(残基8〜109型)または野生型hVEGF(8〜109)を提示するファージをPBTで系列希釈したものを、まず、Fabでコーティングされたプレート上で室温にて15分間インキュベートし、その後、プレートをPBS、0.05%Tween20(PBST)で洗浄する。結合されたファージは、PBT中に1:5000で希釈した抗M13モノクローナル抗体・西洋わさびペルオキシダーゼ(Amersham Pharmacia)複合体を用いて検出し、基質3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB、Kirkegaard&Perry Labs、Gaithersburg、Md.)と約5分間反応させた後、1.0M H3PO4で反応を停止させ、分光光度計を用いて450nmで読み出す。IC50値の比(IC50アラニン/IC50野生型)は、結合親和性(相対的結合親和性)の低下の倍数を表す。
抗VEGF抗体であるラニビズマブ、すなわちLUCENTIS(登録商標)抗体またはrhuFab V2は、ヒト化、親和性成熟抗ヒトVEGF Fab断片である。ラニビズマブは、遺伝子組換え技術の標準的方法により大腸菌発現ベクター及び細菌発酵で産生される。ラニビズマブはグリコシル化されておらず、約48,000ダルトンの分子量を有する。WO98/45331及びUS2003/0190317を参照のこと。
「単離された」抗体とは、その天然の環境の構成成分から特定及び単離され、かつ/または回収された抗体である。その天然の環境の混入汚染構成成分は、抗体の研究、診断または治療への使用を妨げる物質であり、それらには、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性溶質または非タンパク質性溶質が含まれ得る。いくつかの実施形態では、抗体の精製は、(1)例えば、Lowry法で測定した場合に、抗体の95重量%を超えるまで行い、また、実施形態によっては99重量%を超えるまで行い、(2)例えば、スピニングカップシークエネーター(spinning cup sequenator)を使用して、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで行い、または(3)例えば、クマシーブルーまたは銀染色を用いた還元条件または非還元条件下でのSDS−PAGEによって均一になるまで行う。単離された抗体には、抗体の天然の環境の少なくとも1構成成分は存在しないことになるため、組換え細胞内にインサイチュ抗体が含まれるに。しかし、通常は、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製されることになる。
「天然型の抗体」は、通常、2本の同一の軽(L)鎖及び2本の同一の重(H)鎖で構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。各軽鎖は、1つのジスルフィド共有結合により重鎖に結合しており、免疫グロブリンのアイソタイプが異なればジスルフィド結合の数は重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則正しく間隔の空いた鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、それにいくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、その他端に定常ドメインを有しており、この軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと並び、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと並んでいる。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは「VH」と呼ばれることがある。軽鎖の可変ドメインは「VL」と呼ばれることがある。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変な部分であり、抗原結合部位を含有している。
「可変」という用語とは、可変ドメインの特定部分の配列が抗体間で大きく異なっており、個々のそれぞれの抗体の、その対応する個々の抗原に対する結合及び特異性において使用されることを指す。ただし、その可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布しているわけではない。可変性は、軽鎖及び重鎖の両可変ドメイン内の超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインの、より高度に保存されている部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然型の重鎖及び軽鎖の各可変ドメインは4つのFR領域を含み、これらのFR領域は主としてβシート立体配置をとっており、これらを連結する3つのHVRは、βシート構造をつなぐループを形成し、場合によっては、この構造の一部を形成する。各鎖のHVRはFR領域によって近接して結合しており、別の鎖のHVRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,MD(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原結合に直接には関与していないが、抗体依存性細胞障害における抗体の関与など、さまざまなエフェクター機能を示す。
いかなる脊椎動物由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて区別される、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2タイプのいずれかに割り当てられる。
抗体(免疫グロブリン)は、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列により、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、主に5つのクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのうち幾つは、さらに、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2といったサブクラス(アイソタイプ)に分けられる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配置は周知であり、例えば、Abbas et al.,Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)に一般記載がある。抗体は、1つまたはそれ以上の他のタンパク質またはペプチドとその抗体とが共有結合または非共有結合により会合して形成される、より大きな融合分子の一部であり得る。
「完全長抗体」、「完全抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書では同じ意味で使用され、実質的に完全な形態にある抗体を意味し、下に定義されるような抗体断片を意味しない。これらの用語は、特に、Fc領域を含んでいる重鎖を有する抗体を意味する。
「抗体断片」は、完全抗体の一部分、好ましくは抗体の抗原結合領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;二重特異性抗体;線状抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一な抗原結合断片であり、各々が単一抗原結合部位を有する断片と、残りの「Fc」断片(その名称は、容易に結晶化するその能力を表す)が得られる。ペプシン処置をすると、2つの抗原結合部位を有し、なおも抗原と架橋できるF(ab’)2断片が得られる。
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。一実施形態では、2本鎖Fv種は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとが強い、非共有結合で会合している二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとが、柔軟なペプチドリンカーにより共有結合することができるため、軽鎖及び重鎖が2本鎖Fv種の構造に似た「二量体」構造で会合できる。この配置で、各可変ドメインの3つのHVRが相互に作用してVH−VL二量体表面で抗原結合部位を決定する。まとめると、6つのHVRにより抗原結合特異性が抗体に与えられる。しかし、単一の可変ドメイン(または、抗原に対して特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、結合部位全体に比べると親和性は低いものの、抗原を認識し結合する能力を有する。
Fab断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含有し、また、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域から1つまたはそれ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端において、少数の残基を付加することがFab断片と異なる。Fab’−SHは、本明細書では、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を担持するFab’を指す。F(ab’)2抗体断片は、もともと、ヒンジのシステイン残基を間に有するFab’断片ペアとして産生された。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、単一のポリペプチド鎖に存在する、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含む。一般に、scFvポリペプチドは、scFvが抗原を結合するための所望の構造を形成できるようにするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメイン間にさらに含む。scFvの概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.(Springer−Verlag,New York:1994),pp.269−315を参照のこと。
用語「二重特異性抗体」とは、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、この断片は、同一のポリペプチド鎖(VH−VL)内の軽鎖可変ドメイン(VL)に結合された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同一鎖上の2つドメイン間で対形成するには短すぎるリンカーを使用することにより、それらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインとの対形成を余儀なくされ、そのため、抗原結合部位が2つ作製される。二重特異性抗体は、二価または二重特異性であってよい。二重特異性抗体は、例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003);及びHollinger et al.,PNAS USA 90:6444−6448(1993)で、より詳細に記載されている。三重特異性抗体及び四重特異性抗体についても、Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)に記載がある。
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体集団から得られた抗体を指し、これは、すなわち、その集団を含む個々の抗体が、少量で存在することがある、考えられる変異、例えば、自然発生的な変異を除いては、同一であるものである。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合ではない抗体の特徴を指す。ある特定の実施形態では、そのようなモノクローナル抗体としては、典型的に、標的と結合するポリペプチド配列を含む抗体が挙げられ、これにおいて、かかる標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含む工程により得られるものである。例えば、かかる選択工程は、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組換えDNAクローンのプールのような複数のクローンから特異なクローンを選択する工程であり得る。選択した標的結合配列は、例えば、標的に対する親和性の向上、標的結合配列のヒト化、細胞培養におけるその産生の改善、インビボでのその免疫原性の低下、多重特異性抗体の作製などのためにさらに変化させることが可能であること、及び、変化させた標的結合配列を含む抗体もまた本発明のモノクローナル抗体であることを理解されるべきである。異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して向けられる。モノクローナル抗体調製物は、その特異性に加え、典型的に、他の免疫グロブリンが混入していない点で有利である。
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を指し、任意の特定の方法による抗体作製が必要であると解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって使用するモノクローナル抗体は、多種多様な技術で作製されてよく、例えば、ハイブリドーマ方法(例えば、Kohler and Milstein.,Nature 256:495−497(1975);Hongo et al.,Hybridoma14(3):253−260(1995)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981))、recombinant DNA methods(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)、phage−display technologies(例えば、Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991)を参照のこと);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004);Fellouse,PNAS USA 101(34):12467−12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods284(1−2):119−132(2004)、並びに、ヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリンの座位若しくは遺伝子の一部または全部を有する、ヒトまたはヒト様抗体を動物に産生させる技術(例えば、WO1998/24893;WO1996/34096;WO1996/33735;WO1991/10741;Jakobovits et al.,PNAS USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255−258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;及び第5,661,016号;Marks et al.,Bio/Technology10:779−783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368:812−813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845−851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996);及びLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995を参照のこと)が挙げられる。
本明細書のモノクローナル抗体としては具体的には「キメラ」抗体が挙げられ、これにおいて、重鎖及び/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における、対応する配列と同一または相同であり、一方、当該鎖(複数可)の残りの部分は、別の種に由来するかまたは別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における、対応する配列と同一または相同であり、そのような抗体の断片についても、それらが所望の生物活性を示す限り、抗体の場合と同様である(例えば、米国特許第4,816,567号及びMorrison et al.,PNAS USA 81:6851−6855(1984))。キメラ抗体としては、PRIMATIZED(登録商標)抗体が挙げられ、その抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的の抗原で免疫化することにより産生された抗体に由来している。
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、ここで、レシピエントのHVRに由来する残基は、所望の特異性、親和性、及び/または能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)に由来するHVRの残基で置換される。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFR残基は対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含んでよい。これらの修飾を、抗体性能をさらに高めるために行ってよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部が含まれることになり、ここで、超可変ループの全部または実質的に全部は、非ヒト免疫グロブリンのそれに対応し、また、FRの全部または実質的に全部はヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、任意選択で、少なくとも免疫グロブリン、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の一部も含むであろう。詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照のこと。また、例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma&Immunol.1:105−115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035−1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428−433(1994);及び米国特許第6,982,321号及び第7,087,409号も参照のこと。
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列をもつ抗体、及び/または本明細書に開示するようなヒト抗体を製造するための任意の技術を使用して作製された抗体である。ヒト抗体の本定義は、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーなど、当技術分野で公知のさまざまな技術を使用して得ることができる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581(1991)。ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能な別の方法は、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.147(1):86−95(1991)に記載されている。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368−374(2001)も参照のこと。ヒト抗体は、抗原曝露に応答してそのような抗体を産生するよう操作されているが、内在性座位が不能にされているトランスジェニック動物、例えば、免疫化したゼノマウス(例えば、米国特許第6,075,181号及び第6,150,584号のゼノマウス(XENOMOUSE)(商標)技術に関する記載を参照のこと)に抗原を投与することにより調製できる。また、例えば、Li et al.,PNAS USA 103:3557−3562(2006)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により作製されたヒト抗体の記載も参照のこと。
「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、本明細書で使用する場合、配列が超可変である、及び/または構造的に定義されたループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は6つのHVR、すなわち、VHに3つ(H1、H2、H3)、及びVLに3つ(L1、L2、L3)を含む。天然型の抗体では、H3とL3が6つのHVRのうち最も高い多様性を示し、特にH3は、抗体に優れた特異性を付与するうえで特異な役割を果たすと考えられている。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37−45(2000);Johnson and Wu in Methods in Molecular Biology 248:1−25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)を参照のこと。実際、重鎖のみからなる天然に生じるラクダ科動物の抗体は、軽鎖が存在しなくても機能的かつ安定である。例えば、Hamers−Casterman et al.,Nature 363:446−448(1993)及びSheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733−736(1996)を参照のこと。
いくつかのHVRの描写が使用されており、それらは本明細書に包含される。Kabatの相補性決定領域(CDR)であるHVRは、配列可変性に基づいており、最も一般に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))。一方、Chothiaは、構造ループの位置を指す(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。AbM HVRは、KabatのCDRとChothiaの構造ループの間の折衷を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアで使用される。「接触」HVRは、利用可能な複合体の結晶構造解析に基づいている。これらの各HVRの残基を以下に示す。
HVRは、「伸長された(extended)HVR」を以下のとおり含んでよい:VL内に、24〜36または24〜34(L1)、46〜56または50〜56(L2)、及び89〜97または89〜96(L3)、並びに、VH内に、26〜35(H1)、50〜65または49〜65(H2)、及び93〜102、94〜102、若しくは95〜102(H3)を含んでよい。可変ドメイン残基には、Kabatら(前出)にしたがい、これらの各伸長された(extended)HVRの定義ごとに付番されている。
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
「Kabatの可変ドメイン残基付番」または「Kabatのアミノ酸位置付番」という表現、及びその変形は、Kabat et al.(前出)における抗体の編集(compilation)の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される付番系を意味する。この付番系を使用して、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはHVRの短縮または可変ドメインのFR若しくはHVRへの挿入に対応する、より少ない、またはさらなるアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後の単一のアミノ酸挿入部(Kabatによる残基52a)及び重鎖FR残基82の後の挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82cなど)を含んでよい。残基のKabat付番を所与の抗体について決定する場合、抗体の配列の相同領域において、付番された「標準」Kabat配列とアライメントを行うことを手段として行ってよい。
「親和性成熟した」抗体は、その抗体の1つまたはそれ以上のHVRにおいて1つまたはそれ以上の変化を有する抗体であり、それらの変化(複数可)を持たない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の改善がもたらされる抗体である。一実施形態では、親和性成熟した抗体は、標的抗原に対しナノモル、さらにはピコモルの親和性を有する。親和性成熟した抗体は、当技術分野で公知の手順により作製される。例えば、Marks et al.,Bio/Technology10:779−783(1992)には、VHドメインとVLドメインのシャッフリングによる親和性成熟が記載されている。HVR及び/またはフレームワーク残基のランダムな変異誘発は、例えば:Barbas et al.,Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809−3813(1994);Schier et al.,Gene 169:147−155(1995);Yelton et al.,J.Immunol.155:1994−2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310−3319(1995);及びHawkins et al.,J.Mol.Biol.226:889−896(1992)に記載がある。
「抗腫瘍組成物」または「抗癌組成物」または「抗癌剤」という用語は、活性治療剤、例えば、「抗癌剤」を少なくとも1種含む、癌治療において有用な組成物を指す。治療剤(抗癌剤)の例としては、例えば、化学療法薬、増殖阻害剤、細胞障害剤、放射線による治療に使用する薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、並びに、癌を治療するための他の薬剤、例えば、抗HER−2抗体、抗CD20抗体、上皮成長因子受容体(EGFR)拮抗薬(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ(タルセバ(商標))、血小板由来増殖因子阻害剤(例えば、Gleevec(商標)(メシル酸イマチニブ))、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、拮抗薬(例えば、中和抗体)で、ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR−β、BlyS、APRIL、BCMA VEGF、またはVEGF受容体(複数可)のうち1つまたはそれ以上に結合する拮抗薬、TRAIL/Apo2、及び他の生物活性及び有機的化学物質などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。それらの組み合わせも本発明に含まれる。
「化学療法薬」または「化学療法」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法薬のとしては、癌の治療に有用な化学的化合物が挙げられる。化学療法薬のとしては、例えば、アルキル化剤ダカルバジンのイミダゾテトラジン誘導体であるテモゾロミド(TMZ)などのアルキル化剤が挙げられる。化学療法薬さらなる例としては、例えば、パクリタキセルまたはトポテカンまたはペグ化リポソーマルドキソルビシン(PLD)が挙げられる。他の化学療法薬の例としては、チオテパ及びサイトキサン(登録商標)シクロホスファミドのようなアルキル化剤;ブスルファン、イソプロスルファン及びピポスルファンのようなアルキルスルホン酸類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(metウレドーパ(uredopa))、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミド(トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide))、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン(methylamelamine)類;アセトゲニン類(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン;ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ズオカルマイシン(合成類似体、KW−2189及びCB1−TM1を含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードのようなナイトロジェンマスタード類;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンのようなニトロソウレア類;エンジイン系抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えば、Agnew,Chem.Intl.Ed.Engl.,33:183−186(1994)を参照のこと)のような抗生物質;ジネミシンAを含むジネミシン;クロドロナートのようなビスホスホネート;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチンクロモホア及び関連する色素タンパク質エンジイン系抗生物質クロモホア)、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、アドリアマイシン(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノドキソルビシン、2−ピロリノドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU)のような代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートのような葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンのようなピリミジン類似体;カルステロン、ドロモスタノロンプロピオナート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンのようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤(anti−adrenal);フロリン酸のような葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルホルニチン(elfornithine);エリプチシニウムアセタート;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシン及びアンサミトシンのようなメイタンシノイド類;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトロラエリン(nitroraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT−2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類、例えば、タキソール(登録商標)パクリタキセル(Bristol−Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、アブラキサン(登録商標)パクリタキセルのCremophor無添加アルブミン改変ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Ill.)、及びタキソテール(登録商標)ドセタキセル(Rhone−Poulenc Rorer,Antony,France);クロラムブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンのような白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ナベルビン(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(Camptosar,CPT−11)(5−FU及びロイコボリンを使用するイリノテカンの治療レジメンを含む);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド類;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン(オキサリプラチン治療レジメンを含む)(FOLFOX);ラパチニブ(タイケルブ(登録商標));細胞増殖を抑制する、PKC−α、Raf、H−Ras、EGFR(例えば、エルロチニブ(タルセバ(登録商標)))及びVEGF−Aの阻害剤、並びに、上記の任意の化学療法薬例の薬理学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。
本明細書で使用する「細胞障害剤」という用語は、細胞機能を阻害または妨害する、及び/または細胞破壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学療法薬、例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他の挿入剤、核酸分解酵素などの酵素とその断片、抗生物質、並びに、小分子毒素または細菌、真菌、植物若しくは動物由来の酵素活性毒素のような各種毒素(その断片及び/または多様体を含む)、並びに、下記で開示するさまざまな抗腫瘍または抗癌剤を含むことを意図する。他の細胞障害剤は、以下に記載されている。殺腫瘍性薬剤は腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
本明細書で使用する場合「増殖阻害剤」とは、インビトロあるいはインビボのいずれかで、細胞(例えば、Robo4を発現している細胞)の成長及び/または増殖を阻害する化合物または組成物を指す。したがって、増殖阻害剤は、Robo4を発現している細胞の割合をS期において有意に減少させるものであり得る。増殖阻害剤の例には、G1停止及びM期停止を誘発するもののような、細胞周期の進行を(S期以外の場所で)停止させる薬剤が含まれる。古典的なM期ブロッカーとして、ビンカ系(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン系、及びアントラサイクリン系抗生物質ドキソルビシン((8S−cis)−10−[(3−アミノ−2,3,6− トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−8−(ヒドロキシアセチル)−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン)、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンのようなトポイソメラーゼII阻害剤が挙げられる。G1を停止させる薬剤は、S期の停止にも及び、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、及びara−CのようなDNAアルキル化剤がある。詳細は、The Molecular Basis of Cancer、Mendelsohn and Israel,eds.、第1章、表題「Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs」(Murakami et al.)(WB Saunders:Philadelphia,1995)、特に13ページに記載されている。タキサン系薬(パクリタキセル及びドセタキセル)は、どちらもイチイ由来の抗癌剤である。ヨーロッパイチイ由来のドセタキセル(タキソテール(登録商標)、Rhone−Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol−Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体からの微小管重合を促進し、脱重合を妨害して微小管を安定化させることにより、細胞の有糸分裂を阻害する。
「試料」及び「生物学的試料」という用語は、同じ意味で用いられ、体液、体組織(例えば、腫瘍組織)、細胞、または他の供給源を含む個体から得られた任意の生物学的試料を意味する。体液は、例えば、リンパ液、血清、新鮮な全血、末梢血単核球、凍結全血、血漿(新鮮血漿または凍結血漿を含む)、尿、唾液、精液、滑液及び脊髄液である。乳房組織、腎組織、結腸組織、脳組織、筋組織、滑液組織、皮膚、毛包、骨髄、及び腫瘍組織もまた試料に含まれる。哺乳類の組織生検及び体液を得る方法は当技術分野において周知である。
本明細書で使用する「治療」(及び「治療する」または「治療すること」などのその文法的な変形)は、治療対象個体の自然の経過を改善しようと臨床的に介入することを意味し、予防のために、または臨床病理経過中、いずれでも実施可能である。望ましい治療効果としては、疾患の発症または再発の予防、症状緩和、疾患による直接的または間接的なあらゆる病理学的結果の減弱、転移予防、全生存(OS)の増加/延長、無増悪生存(PFS)の増加/延長、病勢進行率の低減、疾患状態の改善または緩和、及び寛解または予後の改善が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「単剤療法」は、治療期間のコース中に、癌または腫瘍を治療するための治療剤を1種しか含まない治療レジメン、を意味する。VEGF拮抗薬(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)を使用する単剤療法とは、治療期間中、さらなる抗癌治療を行わずにVEGF拮抗薬を投与することを意味する。
「有効量」という用語とは、哺乳類、例えば、ヒトのような対象または患者において、膠芽腫などの疾患または障害を治療するのに有効な薬物量を指す。膠芽腫のような癌の場合、治療的有効量の薬物は、癌細胞数の減少;腫瘍の大きさの縮小;周辺臓器への癌細胞の浸潤阻害(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは、停止させる);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは、停止させる);腫瘍増殖のある程度の阻害;及び/または癌(例えば、膠芽腫)に関連する症状の1つまたはそれ以上のある程度の軽減がもたらされ得る。薬物がすでにある癌細胞の増殖を抑制し、かつ/または死滅させ得る限り、薬物は細胞増殖抑制性及び/または細胞障害性であり得る。癌治療の場合、インビボでの有効性は、例えば、生存期間、無増悪生存期間(PFS)、全生存(OS)、奏効率(RR)、奏効期間、及び/または生活の質を評価することにより測定可能である。
「生存」は、生き残っている対象を指し、無増悪生存(PFS)及び全生存(OS)を含む。生存は、カプラン・マイヤー(Kaplan−Meier)法により推定可能であり、いかなる生存の差も層別化ログランク検定で解析する。
「全生存率」または「OS」は、治療開始時または初期診断時から、約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約10年といったある一定の期間生き残っている対象を指す。本発明の基礎である諸々の試験では、生存解析に使用した事象は原因を問わず死亡であった。
「無増悪生存」または「PFS」は、治療(または無作為化)から最初の病勢進行または死亡までの期間を指す。この期間は、例えば、治療開始時または初期診断時から、癌の再発を伴わずに、例えば、約1か月、約2か月、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約7か月、約8か月、約9か月、約1年、約2年、約3年といったある一定の期間、対象が生き残る期間である。本発明の一態様では、PFSは、MacDonald et al.(J.Clin.Oncol.1990;8:1277−80,1990)に記載されるMacDonald Response Criteriaにより評価できる。
「全奏効率」または「客観的奏効率」(ORR)は、癌(例えば、膠芽腫)の大きさの縮小または量の低下を最低限の期間示す人の割合を指し、また、ORRは、完全奏効率と部分奏効率の和で表すことができる。
「生存期間を延長させる」または「生存の可能性を増加させる」は、治療を受けた対象(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブによる治療を受けた対象)若しくは治療を受けた対象集団が、それぞれ、未治療対象(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブでの治療を受けなかった対象)若しくは未治療対象集団に比べてPFS及び/またはOSの延長を示す、または、治療を受けた対象(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブによる治療を受けた対象)若しくは治療を受けた対象集団が、膠芽腫に対する標準治療において使用するような化学療法薬、例えば、放射線治療と一緒に、若しくは放射線治療なしで使用されるテモゾロミド(TMZ)のような薬剤のみによる治療のような対照治療プロトコルの場合に比べて、PFS及び/またはOSの延長を示すことを意味する。生存は、治療開始または最初の診断後、少なくとも約1か月、約2か月、約4か月、約6か月、約9か月、または少なくとも約1年、または少なくとも約2年、または少なくとも約3年、または少なくとも約4年、または少なくとも約5年、または少なくとも約10年といった期間、監視する。
ハザード比(HR)は、事象の発現率に対する統計上の定義である。本発明の目的のために、ハザード比は、任意の特定の時点における、ある事象が実験群で発生する確率を、ある事象が対照群で発生する確率で割ったものと定義した。無増悪生存解析における「ハザード比」は、2本の無増悪生存曲線間の差の簡略分析であり、追跡期間にわたって、対照群と比較した場合の治療群の死亡リスクの減少を表す。
本明細書の「患者」または「対象」は、膠芽腫(GBM)などの疾患若しくは障害の徴候、症状、または他の指標を1つまたはそれ以上経験している、または経験したことがある、治療に適格な、ヒトなどの任意の一動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園の動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳類を含む)を指す。疾患の臨床徴候をまったく示さない、臨床研究調査試験に参加している患者、または疫学研究に参加した患者、または、対照群として使用された患者であれば、患者として含まれることが意図される。患者は、それまでに抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ、または別の薬物で治療されたことがあってよく、またはそのような治療を受けていなくてもよい。患者は、本明細書の治療が開始されてから使用される、さらなる薬物(複数可)に対し、治療歴がなくてよい、すなわち、患者は、「ベースライン」(すなわち、本明細書の治療方法における抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)の初回用量投与前の設定時点、例えば、治療が開始される前の対象スクリーニング当日)において、例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ以外の治療法による治療を受けていなくてよい。そのような「治療歴がない」患者または対象は、一般に、そのようなさらなる薬物(複数可)を使用する治療の候補と見なされる。
用語「癌」及び「癌性」という用語は、典型的に、調節不能な細胞増殖を特徴とする、哺乳類における生理的条件を意味するか、または表す。この定義に含まれるのは、良性及び悪性の癌、並びに休眠状態の腫瘍または微小転移巣である。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、及び白血病が含まれるが、これらに限定されるものではない。そのような癌のさらに具体的なとしては、例えば、前神経GBM、神経GBM、古典的GBM、及び間葉系GBMを含む膠芽腫(GBM)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。GBMは、新たに診断されたもの、診断されていたもの、または再発したものであってよい。他の癌としては、例えば、乳癌、扁平上皮癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃のまたは胃癌(gastric or stomach cancer)(胃腸癌を含む)、膵癌、卵巣癌、子宮頸癌、肝癌、膀胱癌、肝癌(hepatoma)、結腸癌、大腸癌、子宮内膜または子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌または腎癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、及び頭頸部癌の多様な型、並びに、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHLを含む);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ球性NHL;高悪性度小非分割細胞NHL;腫瘤性病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ性白血病(ALL);有毛細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害疾患(PTLD)、並びに、母斑症に関連する血管の異常増殖、浮腫(脳腫瘍に関連したものなど)、及びMeigs症候群が含まれる。
本明細書で使用する「腫瘍」は、悪性または良性を問わず、すべての腫瘍性の細胞の成長及び増殖、並びに、すべての前癌性及び癌性の細胞及び組織を指す。「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書において参照される場合、互いに排他的ではない。
「医薬製剤」という用語とは、薬品の生物活性が有効になり得るようにするような形態にあり、製剤を投与する対象に対し容認できないほどの毒性のある、さらなる構成成分を含有しない無菌調製物を指す。
「薬理学的に許容される担体」は、医薬製剤中の有効成分以外の、対象に非毒性である成分を指す。薬理学的に許容される担体としては、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または保存剤が含まれるが、これらに制限されるものではない。
「キット」は、少なくとも1つの試薬、例えば、膠芽腫患者の治療用薬品または本発明のバイオマーカー遺伝子またはタンパク質を特異的に検出するためのプローブを含む任意の製造物(例えば、包装体または容器)である。製造物は、好ましくは、本発明の方法を実施するためのユニットとして販売促進、流通、または販売される。
II.膠芽腫治療のための治療上の使用と組成物
本発明は、腫瘍の増殖を支持する栄養の提供に必要な腫瘍血管の発生を阻害することに目標をおいた癌治療方法である、抗血管新生治療を包含する。血管新生は、原発腫瘍増殖及び転移の双方に関与しているので、本発明により提供される抗血管新生治療は、原発部位での腫瘍の新生物性増殖の阻害、並びに二次部位での腫瘍の転移妨害をすることができ、したがって他の薬物療法剤による腫瘍攻撃が可能になる。
本発明は、腫瘍の増殖を支持する栄養の提供に必要な腫瘍血管の発生を阻害することに目標をおいた癌治療方法である、抗血管新生治療を包含する。血管新生は、原発腫瘍増殖及び転移の双方に関与しているので、本発明により提供される抗血管新生治療は、原発部位での腫瘍の新生物性増殖の阻害、並びに二次部位での腫瘍の転移妨害をすることができ、したがって他の薬物療法剤による腫瘍攻撃が可能になる。
具体的には、本明細書で提供するのは、有効量の化学療法薬と抗VEGF抗体とを合わせた治療レジメンを患者に投与することを含む、膠芽腫と診断された患者の治療方法である。化学療法と抗VEGF抗体投与とを合わせた治療レジメンにより、対象の全生存(OS)及び/または無増悪生存(PFS)が延長される。
A.治療の方法
本発明は、有効量の抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)と有効量の化学療法薬(例えば、テモゾロミド(TMZ))とを含む治療を患者に投与することを含む、膠芽腫と診断された患者の治療方法を提供する。対象は、放射線による治療(放射線治療)も受けてよい。そのような治療は、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を使用せずに同一の化学療法(例えば、TMZ)を受けた患者と比較して、治療を受けた患者のOS期間中央値及び/またはPFS期間中央値の延長をもたらすことができる。
本発明は、有効量の抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)と有効量の化学療法薬(例えば、テモゾロミド(TMZ))とを含む治療を患者に投与することを含む、膠芽腫と診断された患者の治療方法を提供する。対象は、放射線による治療(放射線治療)も受けてよい。そのような治療は、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を使用せずに同一の化学療法(例えば、TMZ)を受けた患者と比較して、治療を受けた患者のOS期間中央値及び/またはPFS期間中央値の延長をもたらすことができる。
併用療法は、1つまたはそれ以上のさらなる抗癌剤及び/または治療(例えば、1、2、3、4、または5またはそれ以上のさらなる抗癌剤及び/または治療)と併用する、1種またはそれ以上の抗VEGF抗体(例えば、1、2、3、4、または5またはそれ以上の抗VEGF抗体)を含んでよい。抗癌治療の例には、手術、放射線による治療(放射線治療)、生物学的療法、免疫療法、化学療法(例えば、化学療法薬、TMZで)、またはこれらの薬剤及び/または治療の併用が含まれるが、これらに制限されない。さらに、細胞障害剤、抗血管新生、及び抗増殖剤を抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)と併用できる。1つまたはそれ以上のさらなる抗癌剤または治療は、好ましくは、これらが互いに有害に影響しないようVEGF拮抗薬に対する相補的活性を有する。併用投与には、別々の製剤または単一医薬製剤を使用する同時投与、及び何れかの順序での逐次投与が含まれ、これにおいて、好ましくは、両方(またはすべての)活性薬剤がその生物学的活性を同時に示す一定の期間がある。
1つまたはそれ以上のさらなる抗癌剤は、化学療法薬、細胞障害剤、サイトカイン、増殖阻害剤、抗ホルモン剤、及びその組み合わせであってよい。そのような分子は、好適には、意図した目的(すなわち、膠芽腫患者の治療)のために有効な量で組み合わされて存在する。例えば、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を含有する医薬組成物は、治療的有効量の抗腫瘍剤、化学療法薬、増殖阻害剤、細胞障害剤、またはその併用を含んでもよい。
本発明による他の治療レジメンは、放射線による治療及び/または骨髄及び末梢血の移植、及び/または細胞障害剤を含むがこれらに制限されない抗癌剤、並びに、化学療法薬、または増殖阻害剤の投与を含んでよい。そのような実施形態の一形態では、化学療法薬は、単剤、若しくは、例えば、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、アドリアマイシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン(オンコビン(商標))、プレドニゾロン、CHOP、CVP、またはCOPのような薬剤の併用、または抗PSCA、抗HER2(例えば、ハーセプチン(登録商標)、オムニターグ(商標))などの免疫療法薬である。別の実施形態では、上記の併用薬には、ドセタキセル、ドキソルビシン、及びシクロホスファミドが含まれる。併用療法は、同時レジメンまたは順次レジメンとして投与してよい。順次投与する場合、その併用薬を2回またはそれ以上の回数に分けて投与してよい。併用投与には、別々の製剤または単一医薬製剤を使用する同時投与、及び何れかの順序での連続投与が含まれ、これにおいて、好ましくは、両方(またはすべての)活性薬剤がその生物学的活性を同時に示す一定の期間がある。
一実施形態では、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を使用する治療は、本明細書で特定した抗癌剤と、1種若しくはそれ以上の化学療法薬(例えば、TMZ)または増殖阻害剤との併用投与を行い、異なる化学療法薬のカクテルを同時投与することが含まれる。化学療法薬としては、タキサン系(パクリタキセル及びドセタキセルなど)及び/またはアントラサイクリン系抗生物質が挙げられる。そのような化学療法薬の調製及び投与計画は、製造者の指示にしたがって、または熟練した医師による経験的な判断で使用してよい。そのような化学療法薬の調製及び投与計画は、“Chemotherapy Service,”(1992) Ed.,M.C. Perry,Williams & Wilkins,Baltimore,Md.にも記載されている。
上記の任意の同時投与薬剤の好適な用量は、現在使用されている用量であり、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)の作用と、他の化学療法薬または治療剤の作用とが総合される(相乗作用)ため、減らしてよい。
併用療法は、「相乗作用」を提供し、かつ、「相乗的」であることが示され得る、すなわち、有効成分を一緒に使用した場合に達成される効果は、化合物を別々に使用して得られる効果を合わせたものより大きくなり得る。相乗作用は、有効成分が、(1)共配合して投与される、または、合わせて単位投与製剤にして同時に送達される場合、(2)別々の製剤として交互に、または並行して送達される場合、または(3)その他のレジメンによる場合に達成されうる。交互に治療を行って送達する場合、相乗作用は、化合物の投与または送達を順次、例えば、別々の注射器で異なる注射投与により行う場合に達成されうる。一般に、交互に行う治療では、各有効成分の有効用量を順次、すなわち、連続的に投与するが、併用療法では、2種またはそれ以上の有効成分の有効用量を一緒に投与する。
一般に、疾患の予防または治療の場合、さらなる治療剤の適切用量は、治療すべき疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度と経過、予防若しくは治療を目的とした抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)及び追加薬剤及び/または治療(例えば、TMZ及び/または放射線治療)の投与の有無、それまでに受けた治療、患者の病歴並びに抗VEGF抗体及び追加薬剤及び/または治療に対する反応、及び主治医の自由裁量、に依存することになる。抗VEGF抗体及び追加薬剤及び/または治療は、一度に、または一連の治療にわたって患者に好適に投与される。抗VEGF抗体は典型的には以下の記載のように投与する。疾患の種類及び重症度に応じ、患者に投与する追加薬剤の初回用量候補は、例えば、1回またはそれ以上の回数の別個投与であるか、連続注入であるかにかかわらず、約20mg/m2〜600mg/m2である。典型的な日用量は、約20mg/m2、85mg/m2、90mg/m2、125mg/m2、200mg/m2、400mg/m2、500mg/m2またはそれ以上の数値からの範囲である可能性があり、上述の要因に応じて異なる。数日または長期にわたる反復投与の場合、病態に応じ、疾患の症状が所望のように抑制されるまで治療を維持する。したがって、約20mg/m2、85mg/m2、90mg/m2、125mg/m2、200mg/m2、400mg/m2、500mg/m2、600mg/m2(またはその任意の組み合わせ)の1またはそれ以上の用量を患者に投与してよい。そのような用量を、間欠的、例えば、毎週または2、週間、4、5、または6週間隔で(例えば、患者に約2〜約20、例えば、約6用量の追加薬剤が投与されるよう)投与してよい。初回に高負荷用量、それに続いて、1またはそれ以上の低用量を投与してよい。しかし、他の投与計画も有用な場合がある。この治療経過の監視は、従来の技術及び評価法で容易に行われる。
一実施形態では、対象はそれまでに、膠芽腫を治療するためのいかなる薬物(複数可)の投与も受けたことがない。別の実施形態では、対象または患者はそれまでに、膠芽腫を治療するための1種またはそれ以上の薬品(複数可)の投与を受けたことがある。さらなる実施形態では、対象または患者は、それまでに投与を受けた1つまたはそれ以上の薬品に対し不応答であった。対象が不応答であり得るそのような薬物には、単剤で、若しくは相互に併用する、例えば、抗腫瘍薬、化学療法薬、細胞障害剤、及び/または増殖阻害剤が挙げられるが、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体による併用治療を行わない場合である。対象が不応答であり得る他の治療には、例えば、抗VEGF抗体単剤療法などのVEGF拮抗薬による単剤療法が挙げられる。
本発明は、促進方法をさらに提供し、ここで、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)と、膠芽腫(例えば、新たに診断された、膠芽腫及び/または前神経膠芽腫)を治療するための他の治療剤1種またはそれ以上とを、ヒト患者/対象に投与することを促進することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1種の化学療法薬の投与を促進することをさらに含む。抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)の投与は、化学療法薬(例えば、TMZ)の投与と同時に、または順次に行ってよい。促進は、利用可能な任意の手段で実施してよい。いくつかの実施形態では、促進は、抗VEGF抗体の市販製剤に同梱される添付文書を手段とする。促進は、化学療法薬の市販製剤に同梱される添付文書を手段としてもよい。促進は、医師または医療提供者に対し、書面で、または口頭連絡で行われてよい。いくつかの実施形態では、促進は、1つまたはそれ以上の他の化学療法薬及び/または治療と併用して抗VEGF抗体を用いる膠芽腫治療を受けるための指示を提供する添付文書を手段とする。さらなる実施形態では、添付文書には、実施例4の結果の一部または全部が記載される。いくつかの実施形態では、化学療法薬(例えば、TMZ)及び、任意選択で、別の治療(例えば、放射線治療)をともなう抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)による対象の治療を、促進の後で行う。
本発明は、ビジネス手法を提供し、これは、ヒト患者/対象のOS期間及び/またはPFS期間が延長され、その対象の膠芽腫再発の可能性が低下し、かつ/またはその対象の生存の可能性が高まるよう、そのヒト患者/対象の膠芽腫を治療するために、化学療法薬(例えば、TMZ)及び/または治療(例えば、放射線治療)のような他の治療剤の1種またはそれ以上と併用する抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)のマーケティングをすることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)との併用において使用するための化学療法薬のマーケティングをさらに含む。いくつかの実施形態では、マーケティングに続いて、化学療法薬を用いる抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)による対象の治療を行う。
1.用法・用量
本発明による治療方法により、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を使用せずに化学療法(例えば、TMZ)を受けた患者の場合と比較して、当該治療を受けた患者に、例えば、腫瘍の大きさ(例えば、膠芽腫腫瘍の大きさ)の縮小、全生存(OS)期間中央値、及び/または無増悪生存(PFS)期間の延長がもたらされうる。上記のように、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)と、少なくとも1種の追加の薬品/治療(例えば、TMZなどの化学療法及び/または放射線治療)とを併用する治療により、付加的または相乗的な(付加的よりも大きい)治療利益を患者にもたらしうる。
本発明による治療方法により、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を使用せずに化学療法(例えば、TMZ)を受けた患者の場合と比較して、当該治療を受けた患者に、例えば、腫瘍の大きさ(例えば、膠芽腫腫瘍の大きさ)の縮小、全生存(OS)期間中央値、及び/または無増悪生存(PFS)期間の延長がもたらされうる。上記のように、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)と、少なくとも1種の追加の薬品/治療(例えば、TMZなどの化学療法及び/または放射線治療)とを併用する治療により、付加的または相乗的な(付加的よりも大きい)治療利益を患者にもたらしうる。
少なくとも1回の追加の薬品/治療(例えば、TMZなどの化学療法及び/または、例えば、放射線治療)の投与と、少なくとも1回の本明細書の抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)の投与の間のタイミングは、約1か月以下、約2週間以下、約1週間以下、同日中、同一時間帯、または、ほぼ同時(併用投与)である。ある場合には、上記の少なくとも1回の抗VEGF抗体投与は、上記の少なくとも1回の追加の薬品/治療の前に行うことができる。ある場合には、上記の少なくとも1回の抗VEGF抗体投与は、上記の少なくとも1つ追加の薬品/治療の後に行うことができる。ある場合には、上記の少なくとも1回の抗VEGF抗体投与及び/または上記の少なくとも1つ薬品/治療の投与は、1またはそれ以上のサイクル(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、またはそれ以上のサイクル)で患者に行われる。
膠芽腫と診断した後、治療的有効量の抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を患者に投与する正確な方法は主治医の自由裁量によるものであることは、医療分野の当業者には理解されるであろう。例えば、膠芽腫は、新たに診断されたものであっても、すでに診断されていたものであってもよく、また、膠芽腫は、再発膠芽腫であってよい。
用量、他の薬剤との併用、タイミング及び投与頻度等を含め、投与方法は、そのような抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)に対して考えられる患者の応答性についての診断、並びに、患者の病態及び病歴に左右され得る。したがって、抗VEGF抗体単独には比較的非感受性であると予測される膠芽腫患者であっても、依然として、かかる抗体を用いた治療、特に、患者の抗VEGF抗体に対する反応性を改変しうる、他の薬剤及び/または治療(例えば、TMZなどの化学療法及び/または、例えば、放射線治療)を併用する治療から利益がもたらされうる。
抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を含む組成物は、適切な医療行為を行うための基準に従って配合、用量決定、及び投与がなされる。これにおいて考慮する要因としては、治療される膠芽腫の特定の種類、(例えば、新たに診断された膠芽腫または再発膠芽腫、前神経型膠芽腫、間葉系型膠芽腫、または増殖型膠芽腫)、治療される特定の哺乳類動物(例えば、ヒト)、個々の患者の臨床状態、膠芽腫の原因、薬剤の送達部位、考えられる副作用、特定の抗VEGF抗体、投与方法、投与の日程計画、及び医師に公知の他の要因が含まれる。投与すべき抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)の有効量は、こうした要因を考慮に入れて決定されることになる。
当該技術分野の医師であれば、特定の抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)のような要因に応じて、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師は、そのような抗VEGF抗体を、所望の治療効果を達成するために必要とされる濃度より低い濃度で医薬組成物に使用して投与を開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に用量を増やしていくことが可能であろう。拮抗薬の、所与の用量または治療レジメンの有効性は、例えば、有効性についての標準的手段を用いて患者の徴候及び症状を評価することにより決定できる。
ある特定の実施例では、患者は、同一の抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)で少なくとも2回治療される。したがって、初回及び2回目の抗VEGF抗体暴露は、同一の抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を用い、場合によっては、すべての抗VEGF抗体暴露で同一の抗VEGF抗体を用いる、すなわち、最初の2回の暴露、及び好ましくは、全暴露のための治療は、1種類の抗VEGF抗体を用い、例えば、すべてにベバシズマブを用いて行う。
一般的な提案として、非経口投与する抗VEGF抗体の用量あたりの有効量は、1回または複数用量で、約20mg〜約5000mgの範囲となるであろう。抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)などの抗体の例示的な投与計画には、1、2、3、または4週間隔で100または400mgが含まれ、または、約1、3、5、10、15、または20mg/kgの用量を1、2、3、または4週間隔で投与する。例えば、有効量の抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)は、2週間隔で10mg/kgを、任意選択で、静脈内(i.v.)投与により行うことができる。別の実施例では、有効量の抗VEGF抗体は、3週間隔で15mg/kgを、任意選択で、i.v.投与により行うことができる。用量は、単回投与で、または注入のような頻回投与(例えば、2または3用量)で行ってよい。
ある場合には、疾患の型及び重症度に応じて、約1μg/kg〜100mg/kg(例えば、0.1〜20mg/kg)の抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)が対象に投与するための初回用量候補となり、例えば、1回またはそれ以上の個別投与であるか、または連続注入であるかによる。一実施形態では、望ましい用量は、例えば、6mg/kg、8mg/kg、10mg/kg、及び15mg/kgを含む。反復投与または数日若しくはより長期にわたるサイクルについては、病態に応じ、上記方法または当技術分野で公知の方法で測定した場合に癌の治療が認められるまで治療を維持する。ただし、他の投与計画も有用であり得る。一実施例では、抗VEGF抗体を、毎週、2週間おき、または3週間隔で、約6mg/kg〜約15mg/kgの範囲の用量で投与し、その範囲には、6mg/kg、8mg/kg、10mg/kgまたは15mg/kgが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明による治療経過は従来の技術及び評価法により容易に監視される。その他の実施形態では、そのような投与レジメンを、膠芽腫の化学療法レジメンと併用する。好適な用量のさらなる詳細が下記実施例に記載される。
治療期間は、医学的に適応とされる限り、または所望の治療効果(例えば、本明細書に記載の治療効果)が達成されるまで継続することができる。ある実施形態では、1か月、2か月、4か月、6か月、8か月、10か月、1年、2年、3年、4年、5年の間、または対象の寿命を最高とする年単位の期間、治療を継続する。
抗VEGF抗体の複数の暴露が提供される場合、各暴露は、同一または異なる投与手段で提供されてよい。一実施形態では、各暴露は、静脈内(i.v.)投与により行う。別の実施形態では、各暴露は皮下(s.c.)投与により与えられる。さらに別の実施形態では、複数の暴露は、i.v.投与及びs.c.投与の両方で与えられる。
一実施形態では、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を、後押しまたはボーラスではなく緩徐な静脈内注入として投与する。例えば、プレドニゾロンまたはメチルプレドニゾロンなどのステロイド(例えば、約80〜120mg i.v.、より具体的には約100mg i.v.)を、あらゆる抗VEGF抗体注入の約30分前に投与する。例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体は、専用ラインで注入可能である。例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体は、初回投与を約90分かけて静脈内に行い、2回目の注入を約60分かけて行い、それ以降は約30分かけて行うことができる。
抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)に複数用量で暴露する際の初回用量、または単回のみで暴露する際の単一用量の場合、そのような注入は好ましくは、約50mg/時間の速度で行う。これを増加させてよく、例えば、約50mg/時間の速度を約30分おきに最大約400mg/時間まで増加させてよい。ただし、対象が注入関連の反応を示した場合は、好ましくは、注入速度を、例えば、実施中の速度の半分、例えば、100mg/時間を50mg/時間まで低下させる。例えば、そのような用量での抗VEGF抗体の注入(例えば、総用量約1000mg)は、約255分(4時間15分)にて終了する。任意選択で、注入開始約30〜60分前に、対象にアセトアミノフェン/パラセタモール(例えば、約1g)及びジフェンヒドラミンHCl(例えば、約50mgまたは同等用量の類似薬)を予防的経口投与する。
総暴露量を達成するために抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を1回より多く注入(投与)する場合、この実施形態における2回目またはそれ以降の抗VEGF抗体注入は、初回注入より高速で、例えば、約100mg/時間で行う。この速度は、増加させてよく、例えば、約100mg/時間の速度を約30分おきに最大約400mg/時間まで増加させてよい。対象が注入関連の反応を示した場合は、好ましくは、注入速度は半分に低下しており、例えば、100mg/時間を50mg/時間まで低下させる。好ましくは、そのような2回目またはそれ以降の用量での抗VEGF抗体の注入(例えば、総用量約1000mg)は、約195分(3時間15分)で終了する。
一実施形態では、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を約0.4〜4グラムの用量で投与し、さらに好ましくは、かかる抗体を約0.4〜1.3グラムの用量で、約1か月の期間内に1〜4用量という頻度で投与する。またさらに好ましくは、用量は約500mg〜1.2グラムであり、その他の実施形態では約750mg〜1.1グラムである。そのような態様では、抗VEGF抗体を、好ましくは、2〜3用量で投与し、及び/または約2〜3週間の期間内に投与する。
しかしながら、上記のように、示唆されている抗VEGF抗体のこれらの量は、治療的判断により大きく左右される。適切な用量とスケジュールの選択における主要な要因は、上で示されるような、得られた結果である。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体は、膠芽腫の最初の徴候、診断、出現、または発現から可能な限りすぐに投与する。
2.投与経路
抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)は、非経口、局所、皮下、腹腔内、肺内、経鼻、及び/または病変内投与を含む、任意の好適な手段で投与することができる。非経口注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が挙げられる。くも膜下腔内投与もまた意図される。さらに、抗VEGF抗体は、好適には、パルス注入、例えば、抗VEGF抗体の用量を減少させながら投与してよい。最も好ましくは、投与は静脈内(i.v.)注射/注入により行われる。
抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)は、非経口、局所、皮下、腹腔内、肺内、経鼻、及び/または病変内投与を含む、任意の好適な手段で投与することができる。非経口注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が挙げられる。くも膜下腔内投与もまた意図される。さらに、抗VEGF抗体は、好適には、パルス注入、例えば、抗VEGF抗体の用量を減少させながら投与してよい。最も好ましくは、投与は静脈内(i.v.)注射/注入により行われる。
上記のような抗VEGF抗体を従来の経路により患者に投与すること以外に、本発明は、遺伝子療法による投与を含む。例えば、抗VEGF抗体のような細胞内抗体作製のための遺伝子療法の使用に関する記載WO1996/07321を参照のこと。
患者の細胞内に核酸(任意選択でベクターに含有)を得るための手法は大きく分けて2つ、すなわち、インビボ及びエキソビボがある。インビボ送達の場合、核酸は、患者の体内に直接注入し、通常、拮抗薬を必要とする部位にて行う。エキソビボ治療の場合、患者の細胞を取り出し、これらの単離細胞に核酸を導入し、組換え細胞を患者に、直接、または、例えば、患者に植込んだ多孔質膜内に封入して投与する(例えば、米国特許第4,892,538号及び第5,283,187号を参照のこと)。生存細胞内に核酸を導入する多種多様な技術が利用可能である。その技術は、核酸を、インビトロで培養細胞に導入するのか、またはインビボで意図した宿主細胞に導入するのかにより異なる。核酸を哺乳類細胞にインビトロで導入する好適な技術には、リポソーム、電気穿孔法、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE−デキストラン法、リン酸カルシウム沈殿方法などの使用が挙げられる。遺伝子のエキソビボ送達に一般に使用されるベクターはレトロウイルスである。
現在、好ましいとされているインビボ核酸導入技術としては、ウイルスベクター(アデノウイルス、単純ヘルペスI型ウイルス、またはアデノ随伴ウイルス)を用いたトランスフェクション、及び脂質をベースにした系(脂質介在性遺伝子導入に有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPE及びDC−Chol)を用いたトランスフェクションが挙げられる。状況によっては、標的細胞上の細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体、標的細胞上の受容体のリガンドなどのような、標的細胞に特異的な物質を核酸供給源に提供することが望ましい。リポソームを使用する場合、例えば、特定の細胞型にとって栄養となるカプシドタンパク質またはその断片、細胞内移行して循環に入るタンパク質に対する抗体、及び細胞内局在を標的にし細胞内の半減期を高めるタンパク質を、標的にする及び/または取り込みを促進するために、エンドサイトーシスに関連した細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質を使用してよい。受容体媒介性エンドサイトーシスの手法は、例えば、Wu et al.,J.Biol.Chem.262:4429−4432(1987);及びWagner et al.,PNAS USA 87:3410−3414(1990)に記載がある。遺伝子マーキング及び遺伝子治療のプロトコルは、例えば、Anderson et al.,Science 256:808−813(1992)及びWO1993/25673に記載されている。
B.抗VEGF抗体
本明細書に記載のすべての治療方法では、抗VEGF抗体は、十分な特異性と親和性でVEGFに結合し、さらに、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、若しくはライブラリー由来の抗体、またはその抗体断片であってよい。
本明細書に記載のすべての治療方法では、抗VEGF抗体は、十分な特異性と親和性でVEGFに結合し、さらに、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、若しくはライブラリー由来の抗体、またはその抗体断片であってよい。
1.キメラ抗体及びヒト化抗体
ある特定の実施形態では、抗VEGF抗体はキメラ抗体であってよい。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号及びMorrison et al.PNAS USA,81:6851−6855,(1984)に記載されている。一実施例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる実施例では、キメラ抗体は、クラス若しくはサブクラスが親抗体から変化している「クラススイッチした」抗体である。キメラ抗体としては、その抗原結合断片が挙げられる。
ある特定の実施形態では、抗VEGF抗体はキメラ抗体であってよい。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号及びMorrison et al.PNAS USA,81:6851−6855,(1984)に記載されている。一実施例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる実施例では、キメラ抗体は、クラス若しくはサブクラスが親抗体から変化している「クラススイッチした」抗体である。キメラ抗体としては、その抗原結合断片が挙げられる。
ある特定の実施形態では、抗VEGF抗体はヒト化抗体であってよい。典型的に、非ヒト抗体は、非ヒト親抗体の特異性及び親和性は維持しつつ、ヒトに対する免疫原性を低下させるためにヒト化する。一般に、ヒト化抗体は、1つまたはそれ以上の可変ドメインを含み、ここで、HVR、例えば、CDR、(またはそれらの一部)は、非ヒト抗体由来であり、FR(またはそれらの一部)は、ヒト抗体配列由来である。ヒト化抗体は、任意選択で、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むことになる。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体の一部のFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復または改善させるために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.BioSci.13:1619−1633(2008)に概説されており、また、詳細は、例えば、Riechmann et al.,Nature332:323−329(1988);Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989);米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、及び第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25−34(2005)(SDR(a−CDR)移植についてについて記載);Padlan,Mol.Immunol.28:489−498(1991)(「表面再構成(resurfacing)」について記載);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43−60(2005)(「FRシャッフリング」について記載);及びOsbourn et al.,Methods 36:61−68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252−260(2000)(FRシャッフリングへの「guided selection」アプローチについて記載)に記載されている。
2.ヒト抗体
ある実施形態では、抗VEGF抗体はヒト抗体であってよい。ヒト化抗体及びその作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.BioSci.13:1619−1633(2008)に概説されており、また、詳細が、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988);Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989);米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、及び第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25−34(2005)(SDR(a−CDR)移植についてについて記載);Padlan,Mol.Immunol.28:489−498(1991)(「表面再構成(resurfacing)」について記載);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43−60(2005)(「FRシャッフリング」について記載);及びOsbourn et al.,Methods 36:61−68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252−260(2000)(FRシャッフリングへの「guided selection」アプローチについて記載)に記載されている。
ある実施形態では、抗VEGF抗体はヒト抗体であってよい。ヒト化抗体及びその作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.BioSci.13:1619−1633(2008)に概説されており、また、詳細が、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988);Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989);米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、及び第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25−34(2005)(SDR(a−CDR)移植についてについて記載);Padlan,Mol.Immunol.28:489−498(1991)(「表面再構成(resurfacing)」について記載);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43−60(2005)(「FRシャッフリング」について記載);及びOsbourn et al.,Methods 36:61−68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252−260(2000)(FRシャッフリングへの「guided selection」アプローチについて記載)に記載されている。
ヒト化に使用してよいヒトフレームワーク領域には、ベストフィット法(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照のこと)を使用して選択したフレームワーク領域、軽鎖若しくは重鎖の可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.PNAS USA,89:4285(1992);及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照のこと)、ヒトの成熟した(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.BioSci.13:1619−1633(2008)を参照のこと)、及びスクリーニングFRライブラリー由来のフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678−10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611−22618(1996)を参照のこと)、が含まれるが、これらに限定されるものではない。
ヒト抗体は、当技術分野で公知のさまざまな技術を使用して作製可能である。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368−74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450−459(2008)に一般記載がある。ヒト抗体は、例えば、抗原曝露に応答して、完全ヒト抗体またはヒト可変領域を有する完全抗体を産生するよう遺伝子組換えが行われたトランスジェニック動物に免疫原を投与することにより調製されうる。そのような動物は、典型的に、内因性免疫グロブリンの座位を置き換える、または、染色体外に存在するか、若しくはその動物の染色体内に無作為に組み込まれている、ヒト免疫グロブリン座位の全部または一部を含有する。そのようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン座位は、一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117〜1125(2005)を参照のこと。また、例えば、ゼノマウス(XENOMOUSE)(商標)技術についての記載米国特許第6,075,181号及び第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術についての記載米国特許第5,770,429号;K−Mマウス(登録商標)技術についての記載米国特許第7,041,870号、及びVELOCIMOUSE(登録商標)技術についての記載米国特許出願公開第US2007/0061900号)も参照のこと。そのような動物で作製した完全抗体に由来するヒト可変領域は、遺伝子をさらに組換える、例えば、別のヒト定常領域と組み合わせてよい。
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法で作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体産生用のヒト骨髄腫細胞株及びマウス−ヒト系ヘテロ骨髄腫細胞株がこれまでに記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照のこと)。ヒトB細胞のハイブリドーマ技術により作製されたヒト抗体も、Li et al.,PNAS USA,103:3557−3562(2006)に記載がある。別の方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のヒトIgMモノクローナル抗体の産生について記載)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265−268(2006)(ヒト型ハイブリドーマの記載)に記載の方法が挙げられる。ヒト型ハイブリドーマ技術(トリオーマ(Trioma)法)についても、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927−937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185−91(2005)に記載がある。
ある場合には、ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択したFvクローン可変ドメイン配列を単離することにより作製してもよい。その後、そのような可変ドメイン配列を所望のヒト定常ドメインに連結させてよい。
3.ライブラリー由来抗体
ある特定の実施形態では、抗VEGF抗体は、所望する単一または複数の活性を有する抗体についてのコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングして単離されてよく、または、すでにそのようにして単離されている。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作製し、所望の結合特性を持つ抗体についてそのようなライブラリーのスクリーニングを行うための多種多様な方法が当技術分野で公知である。そのような方法は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説されており、詳細な記載は、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554;Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1992);Marks and Bradbury,in Methods in Molecular Biology 248:161−175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004);Fellouse,PNAS USA 101(34):12467−12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)にある。
ある特定の実施形態では、抗VEGF抗体は、所望する単一または複数の活性を有する抗体についてのコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングして単離されてよく、または、すでにそのようにして単離されている。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作製し、所望の結合特性を持つ抗体についてそのようなライブラリーのスクリーニングを行うための多種多様な方法が当技術分野で公知である。そのような方法は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説されており、詳細な記載は、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554;Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1992);Marks and Bradbury,in Methods in Molecular Biology 248:161−175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004);Fellouse,PNAS USA 101(34):12467−12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)にある。
いくつかのファージディスプレイ方法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーが、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)により別々にクローニングされ、ファージライブラリーで再度無作為に組み合わせが行われるが、これを、その後、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433−455(1994)に記載の抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的に、一本鎖Fv(scFv)断片として、またはFab断片として抗体断片を提示する。免疫化した供給源から得られたライブラリーから、ハイブリドーマを構築する必要のない、免疫原に対して親和性の高い抗体が得られる。別法として、ナイーブなレパートリーをクローニング(例えば、ヒトから)して、Griffiths et al.,EMBO J,12:725−734(1993)に記載のような免疫化をまったく行わずに、広範囲の非自己抗原及び自己抗原に対する各種抗体の単一供給源を得ることができる。最後に、ナイーブなライブラリーは、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381−388(1992)に記載されるように、合成によっても作製可能であり、その際、幹細胞由来の再構成されていないV遺伝子セグメントのクローニング、及び高度に可変なCDR3領域をコードし、かつ、インビトロ再構成を達成するランダム配列を含むPCRプライマーの使用を手段とする。ヒト抗体ファージライブラリーが記載されている特許公開として、例えば:米国特許第5,750,373号、及び5米国特許公開第2005/0079574号、第2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、及び第2009/0002360号が挙げられる。
4.抗体産生及び特性
本発明の方法において有用な抗VEGF抗体には、VEGFに十分な親和性及び特異性で結合する、及び/またはVEGFの生物活性を低下させるか若しくは阻害することができる、あらゆる抗体、またはその抗原結合断片を含めることができる。抗VEGF抗体は、通常、VEGF−BまたはVEGF−Cのような他のVEGFホモログにも、また、PlGF、PDGF、またはbFGFのような他の成長因子にも結合しない。
本発明の方法において有用な抗VEGF抗体には、VEGFに十分な親和性及び特異性で結合する、及び/またはVEGFの生物活性を低下させるか若しくは阻害することができる、あらゆる抗体、またはその抗原結合断片を含めることができる。抗VEGF抗体は、通常、VEGF−BまたはVEGF−Cのような他のVEGFホモログにも、また、PlGF、PDGF、またはbFGFのような他の成長因子にも結合しない。
ある場合には、VEGF抗体産生に使用されるVEGF抗原は、例えば、VEGF165分子並びにVEGFの他のアイソフォームまたはその断片で所望のエピトープを含有しているものであり得る。一実施形態では、所望のエピトープは、ハイブリドーマATCC HB 10709により産生される抗VEGFモノクローナル抗体A4.6.1と同一のエピトープに結合するベバシズマブによって認識されるエピトープである(本明細書で定義した「エピトープA.4.6.1」として知られる)。本発明の抗VEGF抗体の作製に有用なVEGFの他の形態は、当業者には明らかであろう。
ヒトVEGFは、ウシVEGFのcDNAをハイブリダイゼーションプローブとして使用して、ヒト細胞から調製したcDNAライブラリーを最初にスクリーニングすることにより得られた。Leung et al.(1989)Science,246:1306。それにより同定されたcDNAの一つは、ウシVEGFに対する相同性が95%を超えている165アミノ酸タンパク質をコードする。この165アミノ酸タンパク質は、典型的に、ヒトVEGF(hVEGF)またはVEGF165と呼ばれる。ヒトVEGFの分裂促進活性は、哺乳類の宿主細胞にヒトVEGFのcDNAを発現させることにより確認された。ヒトVEGFのcDNAで形質移入した細胞で条件付けした培地では、毛細血管内皮細胞の増殖が促進されたが、対照細胞の培地では促進されなかった。Leung et al.(1989)Science、前出。組換えDNA技術でVEGFをクローニングし発現させるべく、さらなる取り組みがなされた。(例えば、Ferrara,Laboratory Investigation 72:615−618(1995)、及びそこに引用されている参考文献を参照のこと)。
VEGFは、選択的RNAスプライシングの結果、複数のホモ二量体(単量体あたり121、145、165、189、及び206個のアミノ酸)の形態で多種多様な組織中に発現される。VEGF121は、ヘパリンと結合しない可溶型マイトジェンである。VEGFの長さがこれより長くなるほどヘパリンを結合する親和性は高くなる。ヘパリン結合型のVEGFをプラスミンによってカルボキシ末端で切断し、拡散型(複数可)のVEGFを放出させることができる。プラスミンで切断した後に同定されたカルボキシ末端ペプチドのアミノ酸配列決定はArg110−Ala111である。アミノ末端の「コア」タンパク質である、ホモ二量体として単離されたVEGF(1〜110)は、中和モノクローナル抗体(4.6.1及び3.2E3.1.1と呼ばれる抗体など)及び可溶型のVEGF受容体と、完全VEGF165ホモ二量体と同様の親和性で結合する。
胎盤増殖因子(PIGF)、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D及びVEGF−Eを含め、VEGFに構造的に関連する幾つかの分子も最近同定されている。Ferrara and Davis−Smyth(1987)Endocr.Rev.,supra;Ogawa et al.J.Biological Chem.273:31273−31281(1998);Meyer et al.EMBO J.,18:363−374(1999)。受容体チロシンキナーゼであるFlt−4(VEGFR−3)が、VEGF−C及びVEGF−Dの受容体として同定されている。Joukov et al.EMBO.J.15:1751(1996);Lee et al.PNAS USA 93:1988−1992(1996);Achen et al.(1998)PNAS USA 95:548−553。VEGF−Cがリンパ管新生の制御に関与することが示されている。Jeltsch et al.Science 276:1423−1425(1997)。
VEGF受容体は、Flt−1(VEGFR−1とも呼ばれる)とKDR(VEGFR−2とも呼ばれる)の2つが同定されている。Shibuya et al.(1990)Oncogene 8:519−527;de Vries et al.(1992)Science 255:989−991;Terman et al.(1992)Biochem.Biophys.Res.Commun.187:1579−1586。ニューロピリン−1は、ヘパリン結合性VEGFアイソフォームを結合できる、選択的VEGF受容体であることが示されている(Soker et al.(1998)Cell 92:735−45)。
本発明のある特定の実施形態では、抗VEGF抗体として、ハイブリドーマATCC HB 10709により産生される抗VEGFモノクローナル抗体A4.6.1と同一のエピトープに結合するモノクローナル抗体;Presta et al.(1997)Cancer Res.57:4593−4599にしたがって作製される抗VEGF遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態では、抗VEGF抗体はベバシズマブ(BVまたはBev)であり、「rhuMAb VEGF」または「アバスチン(登録商標)」としても知られている。この抗体は、ヒトVEGFのヒトVEGF受容体への結合を遮断するマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1に由来する、変異ヒトIgG1フレームワーク領域及び抗原を結合する相補性決定領域を含む。ベバシズマブのアミノ酸配列は、そのフレームワーク領域の大半を含め、約93%はヒトIgG1由来であり、同配列の約7%はマウス抗体A4.6.1由来である。
ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))は、FDAにより承認された最初の抗血管新生治療薬であり、現在では、転移性大腸癌(5−FUをベースにした静脈内化学療法と併用する一次及び二次治療)、進行非扁平上皮肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)(カルボプラチン及びパクリタキセルと併用する、切除不能、局所進行、再発性または転移性のNSCLCに対する一次治療)、及び転移性HER2陰性乳癌(パクリタキセルと併用する、未治療の転移性HER2陰性乳癌の治療)のために承認されている。
ベバシズマブ及び他の抗VEGFヒト化抗体は、2005年2月26日発行のU.S.Pat.No.6,884,879に記載されている。さらなる抗体には、G6またはB20系列抗体(例えば、G6〜31、B20〜4.1)が挙げられ、PCT公開第WO2005/012359号、PCT公開第WO2005/044853号、及び米国特許出願第60/991,302号に記載されており、これらの特許出願の記載内容は参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
本発明によるG6系列抗体は、G6抗体の配列に由来する抗VEGF抗体、または、PCT公開第WO2005/012359号の図7、24〜26、及び34〜35のいずれか1つにしたがうG6由来抗体であり、その開示全体は参照により明示的に本明細書に組み込まれる。PCT公開第WO2005/044853号も参照し、その開示全体は参照により明示的に本明細書に組み込まれる。一実施形態では、G6系列抗体は、残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、I83及びQ89を含むヒトVEGF上の機能的エピトープに結合する。
本発明によるB20系列抗体は、B20抗体の配列に由来する抗VEGF抗体、または、PCT公開第WO2005/012359号の図27〜29のいずれか1つにしたがうB20由来抗体であり、その開示全体は参照により明示的に本明細書に組み込まれる。PCT公開第WO2005/044853号、及び米国特許出願60/991,302号も参照し、これらの特許出願の記載内容は参照により明示的に本明細書に組み込まれる。一実施形態では、B20系列抗体は、上記で定義されるように、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、I91、K101、E103、及びC104を含むヒトVEGF上の機能的エピトープに結合する。
その他の実施形態では、他の抗VEGF抗体を、唯一の抗VEGF抗体として、または、上述の抗VEGF抗体の使用に追加して、上記の併用療法に使用する。そのような抗体は、例えば、米国特許第7,060,269号、第6,582,959号、第6,703,020号;第6,054,297号;WO98/45332;WO96/30046;WO94/10202;EP0666868B1;米国特許出願公開第2006009360号、第20050186208号、第20030206899号、第20030190317号、第20030203409号、及び第20050112126号;並びに、Popkov et al.,Journal of ImmunologicalMethos 288:149−164(2004)に記載されている。これらの他の抗体には、上記で定義されるように、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、I191、K101、E103、及びC104を含むヒトVEGF上、または、別法として、残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、I83及びQ89を含むヒトVEGF上の機能的エピトープに結合する抗体が含まれ得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいずれか1つの方法に有用な抗VEGF抗体は、以下のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCSASQDIS NYLNWYQQKP GKAPKVLIYF TSSLHSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ YSTVPWTFGQ GTKVEIKR(配列番号1)、
及び以下のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGYTFT NYGMNWVRQA PGKGLEWVGW INTYTGEPTY AADFKRRFTF SLDTSKSTAY LQMNSLRAED TAVYYCAKYP HYYGSSHWYF DVWGQGTLVT VSS(配列番号2)を有し得る。
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCSASQDIS NYLNWYQQKP GKAPKVLIYF TSSLHSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ YSTVPWTFGQ GTKVEIKR(配列番号1)、
及び以下のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGYTFT NYGMNWVRQA PGKGLEWVGW INTYTGEPTY AADFKRRFTF SLDTSKSTAY LQMNSLRAED TAVYYCAKYP HYYGSSHWYF DVWGQGTLVT VSS(配列番号2)を有し得る。
さらに別の実施形態では、抗VEGF抗体は、裸の抗VEGF抗体のような複合化されていない抗体、または、例えば、半減期改善のためなど、有効性をさらに高めるために別の分子と複合体化している抗体であり得る。いずれの方法及び使用においても、複合体化抗体及び/またはその抗体が結合している抗原は、細胞によって取り込まれ、結果として、抗体複合体が結合している癌細胞(例えば、膠芽腫癌細胞)の殺傷において、その抗体複合体の治療的有効性が高められる。例えば、細胞障害剤は、癌細胞の核酸を標的とするかまたは妨害し得る。そのような細胞障害剤の例としては、メイタンシノイド、カリケアマイシン、リボヌクレアーゼ及びDNAエンドヌクレアーゼが挙げられる。
IV.医薬製剤
本明細書に記載し使用し、本発明にしたがって使用する治療用抗体製剤は、所望の純度を有する抗体を、任意選択の薬理学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と、凍結乾燥製剤または水溶液の形態に混合することにより保存用に調製される。製剤に関する概要は、例えば、Gilman et al.,(eds.)(1990),The Pharmacological Bases of Therapeutics,8th Ed.,Pergamon Press;A.Gennaro(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,(1990),Mack Publishing Co.,Eastori,Pennsylvania.;Avis et al.,(eds.)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications Dekker、New York;Lieberman et al.,(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets Dekker,New York;及びLieberman et al.,(eds.)(1990),Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems Dekker,New York,Kenneth A.Walters(ed.)(2002)Dermatological and Transdermal Formulations(Drugs and the Pharmaceutical Sciences),Vol 119,Marcel Dekkerを参照のこと。
本明細書に記載し使用し、本発明にしたがって使用する治療用抗体製剤は、所望の純度を有する抗体を、任意選択の薬理学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と、凍結乾燥製剤または水溶液の形態に混合することにより保存用に調製される。製剤に関する概要は、例えば、Gilman et al.,(eds.)(1990),The Pharmacological Bases of Therapeutics,8th Ed.,Pergamon Press;A.Gennaro(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,(1990),Mack Publishing Co.,Eastori,Pennsylvania.;Avis et al.,(eds.)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications Dekker、New York;Lieberman et al.,(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets Dekker,New York;及びLieberman et al.,(eds.)(1990),Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems Dekker,New York,Kenneth A.Walters(ed.)(2002)Dermatological and Transdermal Formulations(Drugs and the Pharmaceutical Sciences),Vol 119,Marcel Dekkerを参照のこと。
許容される担体、賦形剤、または安定剤は、ここで使用する用量及び濃度でレシピエントに対し非毒性であり、それにはリン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン類;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾールなど);低分子量(残基約10個未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンといった、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート薬;ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);及び/またはTWEEN(商標)、PLURONIC(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
例示的な抗VEGF抗体製剤は、米国特許第6,884,879号に記載されている。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗体が、単回使用バイアルに25mg/mLで配合される。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗体100mgが、α,α−トレハロース二水和物240mg、リン酸ナトリウム(一塩基、一水和物)23.2mg、リン酸ナトリウム(二ナトリウム、無水)4.8mg、ポリソルベート20 1.6mg、及び注射用水(USP)中に配合される。ある実施形態では、抗VEGF抗体400mgは、α,α−トレハロース二水和物960mg、リン酸ナトリウム(一塩基性、一水和物)92.8mg、リン酸ナトリウム(二ナトリウム、無水)19.2mg、ポリソルベート20 6.4mg、及び注射用水(USP)中に配合される。
皮下投与用の凍結乾燥製剤は、例えば、米国特許第6,267,958号(Andya et al.)に記載されている。そのような凍結乾燥製剤は、好適な希釈剤で再調製して高濃度タンパク質としてよく、また、その再調製した製剤は、本明細書の治療すべき哺乳類に皮下投与してよい。
結晶化された形態の拮抗薬も意図される。例えば、US2002/0136719A1を参照のこと。
本明細書の製剤は、1種より多い活性化合物(上述のような第2の薬品)、好ましくは、互いに有害な影響を与えることのない相補的活性を有する化合物も含有し得る。そのような薬品の種類と有効量は、例えば、製剤中に存在するVEGF拮抗薬(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)の量と種類、及び対象の臨床パラメータに応じて異なる。そのような第2の薬品の好ましいものは上に記載されている。
有効成分は、例えば、コアセルベーション法又は界面重合法により、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルを、それぞれ、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)中又はマクロエマルジョン中に調製したマイクロカプセルに封入してもよい。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
徐放性調製物を調製してよい。徐放性製剤の好適な実施例には、拮抗薬を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、成型品、例えば、フィルム、又はマイクロカプセルの形態をしている。徐放性マトリックスの実施例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタマートとの共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸共重合体などのLUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体及び酢酸リュープロリドからなる注入可能なマイクロスフェア)、及びポリ−D(−)3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。
インビボ投与に使用する製剤は無菌でなければならない。そのような滅菌は無菌化ろ過膜でろ過することにより容易に達成される。
V.キット
本発明の別の態様では、膠芽腫と診断された患者(例えば、新たに診断された膠芽腫及び/または前神経型膠芽腫)の治療に有用な物質を含有している製造物品を提供する。製造物品は、容器、ラベル及び添付文書を含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、注射器などが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの多種多様な材料で形成してよい。容器は、病態の治療に有効な組成物を保持し、無菌アクセスポート(例えば、容器は、皮下注射針で貫通可能な栓を有する静脈用溶液バッグ又はバイアルであってよい)を有しうる。組成物中の少なくとも1種の活性剤は抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)である。容器上または容器に付随するラベルは、その組成物は選択病態の治療用に使用されることを示す。製造物品は、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液及びデキストロース溶液のような薬理学的に許容される緩衝液を含む第2の容器をさらに含んでよい。製造物品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及び注射器を含む、商用及び使用者の観点から望ましい他の物質をさらに含んでよい。さらに、製造物品は、使用についての指示を記載した添付文書を含み、これには、例えば、組成物使用者が抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)組成物及び化学療法薬(例えば、TMZ)を患者/対象に投与するための指示例が含まれる。添付文書には、任意選択で、実施例4に記載の結果の一部または全部を含めてよい。
本発明の別の態様では、膠芽腫と診断された患者(例えば、新たに診断された膠芽腫及び/または前神経型膠芽腫)の治療に有用な物質を含有している製造物品を提供する。製造物品は、容器、ラベル及び添付文書を含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、注射器などが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの多種多様な材料で形成してよい。容器は、病態の治療に有効な組成物を保持し、無菌アクセスポート(例えば、容器は、皮下注射針で貫通可能な栓を有する静脈用溶液バッグ又はバイアルであってよい)を有しうる。組成物中の少なくとも1種の活性剤は抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)である。容器上または容器に付随するラベルは、その組成物は選択病態の治療用に使用されることを示す。製造物品は、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液及びデキストロース溶液のような薬理学的に許容される緩衝液を含む第2の容器をさらに含んでよい。製造物品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及び注射器を含む、商用及び使用者の観点から望ましい他の物質をさらに含んでよい。さらに、製造物品は、使用についての指示を記載した添付文書を含み、これには、例えば、組成物使用者が抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)組成物及び化学療法薬(例えば、TMZ)を患者/対象に投与するための指示例が含まれる。添付文書には、任意選択で、実施例4に記載の結果の一部または全部を含めてよい。
抗VEGF抗体は、単体で包装する、または他の抗癌治療用化合物と組み合わせてキットとして包装できる。キットには、粉末形態再調製用のバイアル、注射用注射器、特注IV送達システム、吸入器のような、単位用量を対象に投与する際の支援となる、任意選択の構成要素を含めることができる。さらに、単位用量キットは、組成物の調製及び投与についての指示書を含有することができる。キットは、対象1人用の単回使用の単位用量として、または特定の対象用の複数使用として製造されうる(一定用量で、または、個々の化合物の力価は治療の進展につれて異なり得る)。キットは、複数の対象への投与に好適な複数用量を含有し得る(「バルク包装」)。キットの構成成分を、カートン箱、ブリスター包装、ボトル、チューブ等で構成してよい。
いくつかの実施形態では、キットは、以前に2以下(例えば、2、1、またはゼロ)の抗癌レジメンを受けたことがある患者に使用することが意図されている。
以下の実施例は、例示のために提供されており、本願で請求する発明を限定するものではない。
実施例1.AvaGlio試験
AvaGlio治験では、新たに診断された膠芽腫について、テモゾロミド及び放射線治療にベバシズマブを併用した際の有効性及び安全性を検討した。この試験は、化学療法にベバシズマブを追加した場合と化学療法単独の場合とを評価する第III相前向きの無作為二重盲検プラセボ対照試験として設計された。適格患者としての条件は、外科的切除または生検後の組織診断で新たに膠芽腫と診断されたこととした。AvaGlio治験は、ベバシズマブを化学療法及び放射線治療に追加することにより、治療的選択肢が限られ、特に予後が不良であった本群患者の全生存(OS)及び無増悪生存(PFS)の改善を目標とした。主要目的は、テモゾロミド(TMZ)と放射線治療のみの群、または、テモゾロミドと放射線治療+ベバシズマブ群に無作為化した患者の、OS及びPFSを比較することであった。
AvaGlio治験では、新たに診断された膠芽腫について、テモゾロミド及び放射線治療にベバシズマブを併用した際の有効性及び安全性を検討した。この試験は、化学療法にベバシズマブを追加した場合と化学療法単独の場合とを評価する第III相前向きの無作為二重盲検プラセボ対照試験として設計された。適格患者としての条件は、外科的切除または生検後の組織診断で新たに膠芽腫と診断されたこととした。AvaGlio治験は、ベバシズマブを化学療法及び放射線治療に追加することにより、治療的選択肢が限られ、特に予後が不良であった本群患者の全生存(OS)及び無増悪生存(PFS)の改善を目標とした。主要目的は、テモゾロミド(TMZ)と放射線治療のみの群、または、テモゾロミドと放射線治療+ベバシズマブ群に無作為化した患者の、OS及びPFSを比較することであった。
AvaGlio試験の概要
この治験は、3期(併用療法、維持療法、及び単剤療法)、及び2つの治療群、すなわち、TMZと放射線治療(RT)(群1)、及び、TMZとRT+ベバシズマブ(群2)で構成された。患者をいずれかの群に無作為に割り付けた(1:1)。図1を参照のこと。
この治験は、3期(併用療法、維持療法、及び単剤療法)、及び2つの治療群、すなわち、TMZと放射線治療(RT)(群1)、及び、TMZとRT+ベバシズマブ(群2)で構成された。患者をいずれかの群に無作為に割り付けた(1:1)。図1を参照のこと。
群1(化学療法及び放射線治療単独):適格患者に、10mg/kgプラセボi.v.2週間隔と併用して、2GyのRTを週5日、6週間行い、RTの初日から最終日まで6週間にわたりTMZの75mg/m2/日を連日経口投与した。4週間の休薬期間の後、適格患者に、10mg/kgプラセボi.v.2週間隔と併用して、4週間隔スケジュールの1日目〜5日目に、TMZの150〜200mg/m2の投与を6サイクル行った。TMZを、増量が考えられる用量150mg/m2から経口投与をした。プラセボ単剤療法(15mg/kg、3週間隔)を、その後、病勢進行まで継続した。病勢進行があった際は、治験責任医師の自由裁量で患者を治療した。
群2(化学療法及び放射線治療+ベバシズマブ):適格患者に、10mg/kgベバシズマブi.v.2週間隔と併用して、2GyのRTを週5日、6週間行い、RTの初日から最終日まで6週間にわたりTMZ75mg/m2/日を連日経口投与した。4週間の休薬期間の後、適格患者に、10mg/kgベバシズマブi.v.2週間隔と併用して、4週間隔スケジュールの1日目〜5日目に、TMZ150〜200mg/m2の投与を6サイクル行った。TMZを、増量が考えられる用量150mg/m2から経口投与を開始した。ベバシズマブ単剤療法(15mg/kg、3週間隔)を、その後、病勢進行まで継続した。病勢進行があった際は、治験責任医師の自由裁量で患者を治療した。
ベバシズマブの初回注入は90分かけて行い、忍容性に応じて、2回目以降は60分かけて注入し、その後は、30分かけて行った。RTとTMZ治療の最終日、すなわち、TMZの休薬を開始する前日にベバシズマブを投与した。
PFS解析は、脳MRI及びMacdonald et al.(J.Clin.Oncol.8:1277−80,1990)に記載の神経学的評価を用いて、腫瘍評価MacDonald Response Criteria(改変WHO基準)に基づいて行った。ベースライン時、4週間の休薬期間終了時、その後は8週間隔で腫瘍評価を実施した。
試験集団−選択基準
外科的切除または生検後の組織診断でテント上膠芽腫(GBM)と新たに診断された18歳以上の患者を組み入れた。これには、先に低悪性度星状細胞腫と診断され、悪性度が増してGBMであることが組織学的に確認された、化学療法及び放射線治療の治療歴のない患者が含まれる。患者は、WHOパフォーマンス状態が2以下であることとした。
外科的切除または生検後の組織診断でテント上膠芽腫(GBM)と新たに診断された18歳以上の患者を組み入れた。これには、先に低悪性度星状細胞腫と診断され、悪性度が増してGBMであることが組織学的に確認された、化学療法及び放射線治療の治療歴のない患者が含まれる。患者は、WHOパフォーマンス状態が2以下であることとした。
試験集団−除外基準
術後の脳MRIで最近出血したことを示す証拠のあった患者は候補から除外した。ただし、臨床上無症状のヘモジデリンが認められる患者、手術に関連する出血が解決された患者、及び腫瘍の点状出血が認められる患者は試験参加が認められた。臨床試験登録のための、先のMGMT状態についての中央スクリーニングを受けた;膠芽腫及び低悪性度星細胞腫のための化学療法(カルムスチン含有ウェハ(Gliadel(登録商標)を含む)または免疫療法(ワクチン治療を含む)による任意の治療歴がある;過去の任意の脳放射線治療または過去の放射線治療が放射野と高度に重複する;高血圧クリーゼまたは高血圧性脳症の病歴がある;無作為化に先立つ1か月以内にNCI−CTC基準でグレード2以上の喀血歴がある;出血性素因または凝血異常(治療上の抗凝固剤を使用していない)を示す証拠がある;無作為化に先立つ28日以内に、主な外科的手技、切開生検、頭蓋内生検、脳室腹腔シャントまたは有意な外傷性損傷を受けた;無作為化に先立つ7日以内にコア生検(頭蓋内生検を除く)または他の小手術手技を受けた患者も除外された。中心静脈アクセスデバイス(CVAD)の留置を、ベバシズマブ/プラセボ投与に先立つ2日以内に実施した場合;無作為化に先立つ6か月以内に腹部フィステルまたは消化管穿孔の履歴がある;無作為化に先立つ6か月以内に頭蓋内膿瘍の病歴がある;重篤な未治癒の創傷、活動性潰瘍、または未治療の骨折のある患者も除外された。妊婦または授乳期の女性に関しては、試験治療開始に先立つ7日以内に、または14日以内に(試験治療開始に先立つ7日以内に検証的妊娠尿検査を伴う)血清妊娠検査で評価した。他に除外されたのは、生殖能のある女性(最終月経から2年未満で、不妊手術を受けていないことと定義した)及び有効性の高い、ホルモン性または非ホルモン性の避妊手段を使用していない男性(すなわち、子宮内避妊薬器具);無作為化に先立つ6か月以内に脳卒中または一過性虚血発作(TIA)の病歴のある患者、コントロールが不良の高血圧症(収縮期血圧>150mmHg及び/または拡張期血圧>100mmHgが持続)の患者または無作為化に先立つ6か月以内に重大な血管疾患(外科的な修復を要する大動脈瘤または最近の末梢動脈血栓症を含む)のある患者であった。他に除外されたのは、無作為化に先立つ6か月以内の心筋梗塞または不安定狭心症、New York Heart Association(NYHA)グレードIIまたはそれ以上のうっ血性心不全(CHF)、または任意の試験薬物または賦形剤で既知の過敏症を有する患者であった。
術後の脳MRIで最近出血したことを示す証拠のあった患者は候補から除外した。ただし、臨床上無症状のヘモジデリンが認められる患者、手術に関連する出血が解決された患者、及び腫瘍の点状出血が認められる患者は試験参加が認められた。臨床試験登録のための、先のMGMT状態についての中央スクリーニングを受けた;膠芽腫及び低悪性度星細胞腫のための化学療法(カルムスチン含有ウェハ(Gliadel(登録商標)を含む)または免疫療法(ワクチン治療を含む)による任意の治療歴がある;過去の任意の脳放射線治療または過去の放射線治療が放射野と高度に重複する;高血圧クリーゼまたは高血圧性脳症の病歴がある;無作為化に先立つ1か月以内にNCI−CTC基準でグレード2以上の喀血歴がある;出血性素因または凝血異常(治療上の抗凝固剤を使用していない)を示す証拠がある;無作為化に先立つ28日以内に、主な外科的手技、切開生検、頭蓋内生検、脳室腹腔シャントまたは有意な外傷性損傷を受けた;無作為化に先立つ7日以内にコア生検(頭蓋内生検を除く)または他の小手術手技を受けた患者も除外された。中心静脈アクセスデバイス(CVAD)の留置を、ベバシズマブ/プラセボ投与に先立つ2日以内に実施した場合;無作為化に先立つ6か月以内に腹部フィステルまたは消化管穿孔の履歴がある;無作為化に先立つ6か月以内に頭蓋内膿瘍の病歴がある;重篤な未治癒の創傷、活動性潰瘍、または未治療の骨折のある患者も除外された。妊婦または授乳期の女性に関しては、試験治療開始に先立つ7日以内に、または14日以内に(試験治療開始に先立つ7日以内に検証的妊娠尿検査を伴う)血清妊娠検査で評価した。他に除外されたのは、生殖能のある女性(最終月経から2年未満で、不妊手術を受けていないことと定義した)及び有効性の高い、ホルモン性または非ホルモン性の避妊手段を使用していない男性(すなわち、子宮内避妊薬器具);無作為化に先立つ6か月以内に脳卒中または一過性虚血発作(TIA)の病歴のある患者、コントロールが不良の高血圧症(収縮期血圧>150mmHg及び/または拡張期血圧>100mmHgが持続)の患者または無作為化に先立つ6か月以内に重大な血管疾患(外科的な修復を要する大動脈瘤または最近の末梢動脈血栓症を含む)のある患者であった。他に除外されたのは、無作為化に先立つ6か月以内の心筋梗塞または不安定狭心症、New York Heart Association(NYHA)グレードIIまたはそれ以上のうっ血性心不全(CHF)、または任意の試験薬物または賦形剤で既知の過敏症を有する患者であった。
実施例2.Nanostring遺伝子発現データを使用したFFPEに固定した試料の分類
臨床試料を遺伝子発現サブタイプに層別化するのは、標準的試料調製法、例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)法を用いて固定する方法では、標準的な方法、例えば、マイクロアレイを使用して行う分析に利用可能なRNAの品質及び量が低下するため、複雑である。最近、1分子分析技術、例えば、Nanostring nCounter(Geiss et al.Biotechnol.26(3):317−325,2008)を、FFPEに固定した材料の遺伝子発現アッセイに利用できるようになった。
臨床試料を遺伝子発現サブタイプに層別化するのは、標準的試料調製法、例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)法を用いて固定する方法では、標準的な方法、例えば、マイクロアレイを使用して行う分析に利用可能なRNAの品質及び量が低下するため、複雑である。最近、1分子分析技術、例えば、Nanostring nCounter(Geiss et al.Biotechnol.26(3):317−325,2008)を、FFPEに固定した材料の遺伝子発現アッセイに利用できるようになった。
患者由来の試料を、マイクロアレイで解析した新鮮凍結試料で既知となった各遺伝子発現サブタイプに割り付けるために、我々は4ステップの方法を適用した。具体的には、以下の通りである:
1. 公開されているマイクロアレイデータを、Laiらにより分類されている98の試料について正規化し直し、35の分類遺伝子(参照データ)について遺伝子発現の重心を計算した。
2. 計算した重心を適用し、同じアフィメトリクス製マイクロアレイプラットフォームで解析した膠芽腫試料を47の新たなセットを分類した(参照データと同じの参照分布にしたがい正規化した)(検討試料)。
3. 同47の検討試料の分類遺伝子発現プロファイリングをNanostring nCounterシステムで行った。
4. アフィメトリクス社マイクロアレイデータに基づく47の検討試料に割り付けられたサブタイプラベルを使用して、Nanostringプラットフォームについて重心を再較正した。
我々は、Nanostringプラットフォームについて、サブタイプ1個に対して1つの重心、合計3つの重心を得、これを、本テクノロジーのプラットフォームで解析したばかりの新規試料の分類に直接適用することができた。
1. 公開されているマイクロアレイデータを、Laiらにより分類されている98の試料について正規化し直し、35の分類遺伝子(参照データ)について遺伝子発現の重心を計算した。
2. 計算した重心を適用し、同じアフィメトリクス製マイクロアレイプラットフォームで解析した膠芽腫試料を47の新たなセットを分類した(参照データと同じの参照分布にしたがい正規化した)(検討試料)。
3. 同47の検討試料の分類遺伝子発現プロファイリングをNanostring nCounterシステムで行った。
4. アフィメトリクス社マイクロアレイデータに基づく47の検討試料に割り付けられたサブタイプラベルを使用して、Nanostringプラットフォームについて重心を再較正した。
我々は、Nanostringプラットフォームについて、サブタイプ1個に対して1つの重心、合計3つの重心を得、これを、本テクノロジーのプラットフォームで解析したばかりの新規試料の分類に直接適用することができた。
アフィメトリクス製マイクロアレイデータの遺伝子発現重心を得る
我々は、hgu133plus2アフィメトリクス製マイクロアレイでLaiらにより解析及び分類がなされた(Clin.Oncol.29(34):4482−4490,2011)98の試料について、Genentech’s research databaseから生の発現データを入手し、データの正規化を行い(アレイ間で比較可能にするため)、参照分布を保存した(Harbron et al.Bioinformatics.23(18):2493−2494,2007)。
我々は、hgu133plus2アフィメトリクス製マイクロアレイでLaiらにより解析及び分類がなされた(Clin.Oncol.29(34):4482−4490,2011)98の試料について、Genentech’s research databaseから生の発現データを入手し、データの正規化を行い(アレイ間で比較可能にするため)、参照分布を保存した(Harbron et al.Bioinformatics.23(18):2493−2494,2007)。
下記表1に示すように、データを35のマイクロアレイ分類プローブにさらに分け(そのうちの30は、本明細書作成時点では、アノテーションされた遺伝子に関連していた)、各試料を、Laiらにより割り付けられたサブタイプラベルに関連づけた。
表1.Laiらにより公開されている正規化アフィメトリクス発現データから測定した、Phillipsらの定義による発現サブタイプの重心
表1.Laiらにより公開されている正規化アフィメトリクス発現データから測定した、Phillipsらの定義による発現サブタイプの重心
3つのサブタイプに特定的な重心を得るため、所与のサブタイプに割り付けられた全試料について、平均を計算して個々の遺伝子それぞれの発現を平均した(表1)。さらに、全データセットを通して観察された、各分類プローブについての平均及び標準偏差を保存した。この参照データセットは、Laiらの分類にしたがう、38の間葉系(Mes)、30の前神経(PN)、及び30の増殖性(Prolif)の試料を含んでいた.(表2)。
表2.参照データセットで利用可能なサブタイプあたりの試料数
表2.参照データセットで利用可能なサブタイプあたりの試料数
アフィメトリクス製マイクロアレイ及びNanostring nCounterで相互解析した膠芽腫試料の分類
次に、Nanostring nCounterシステムでもすでに解析されていた、47の新しい膠芽腫試料(検討試料)のマイクロアレイ生データを、Genentech’s research databaseから入手した。試験間の互換性を保証するため、各マイクロアレイを、上で使用したものと同じ参照分布に合わせて正規化した。
次に、Nanostring nCounterシステムでもすでに解析されていた、47の新しい膠芽腫試料(検討試料)のマイクロアレイ生データを、Genentech’s research databaseから入手した。試験間の互換性を保証するため、各マイクロアレイを、上で使用したものと同じ参照分布に合わせて正規化した。
検討試料をPhillipsらにより定義されたサブタイプ(Cancer Cell.9(3):157−173,2006)と関連づけるため、発現データを同一の35の分類プローブにしたがいサブセットに分け(30のアノテーションされたタンパク質コード遺伝子に相当する)、各プローブの発現をスケーリングし、参照データセットのプローブについて観察された平均及び標準偏差と一致させた。
各試料について、上で定義した3つの発現重心の各々に対するPearson相関係数を求め、それを非陰性相関係数が最も高いサブタイプに割り付けた。どの重心とも正の相関のない試料は割り付けないままとした。
Nanostring nCounterプラットフォーム用のサブタイプ特異的な重心を得る
以下の30の分類遺伝子を標的にするようプローブを特徴付け、また、現在のところ、タンパク質コード座位:ANGPTL4、ATP6V1G2、CENPK、CHI3Ll、COL4Al、COL4A2、CSDC2、DLL3、DTL、E2F7、FOSL2、GABBR1、GALNT13、HMMR、KLRC3、LIF、MYL9、NCAM1、NDRG2、PDLIM4、PDPN、PLA2G5、RASL10A、SCG3、SERPINE1、SNAP91、SOX8、SPOCDl、TAGLN及びTIMP1にマッチしている元の35マイクロアレイプローブすべてを表すNanostring nCounterでも、先と同じ47の検討試料を解析した。
以下の30の分類遺伝子を標的にするようプローブを特徴付け、また、現在のところ、タンパク質コード座位:ANGPTL4、ATP6V1G2、CENPK、CHI3Ll、COL4Al、COL4A2、CSDC2、DLL3、DTL、E2F7、FOSL2、GABBR1、GALNT13、HMMR、KLRC3、LIF、MYL9、NCAM1、NDRG2、PDLIM4、PDPN、PLA2G5、RASL10A、SCG3、SERPINE1、SNAP91、SOX8、SPOCDl、TAGLN及びTIMP1にマッチしている元の35マイクロアレイプローブすべてを表すNanostring nCounterでも、先と同じ47の検討試料を解析した。
nCounter解析ソフトウェアで得た生のNanostringカウントを、log2変換し、分析したプローブすべての発現の平均及び標準偏差を同じ参照値に合わせて調節することにより試料間で正規化した。3つのサブタイプのNanostring特異的な重心を定義するため、3つのサブタイプそれぞれの各分類遺伝子の平均発現を再計算した(表4)。
表4.Phillipsの発現サブタイプのNanostring特異的な重心
表4.Phillipsの発現サブタイプのNanostring特異的な重心
上記のように、試料は、Pearson相関の最も高いサブタイプに割り付けた。Nanostringをベースにしたサブタイプの割り付けの精度をベンチマーク評価するため、元の、マイクロアレイをベースにした分類ラベルのリコールと比較した。試料の38/47例(80.1%)で割り付け一致が認められた(表5)。
表5.検討データセットの、Nanostringベースのサブタイプ割り付けのリコール
表5.検討データセットの、Nanostringベースのサブタイプ割り付けのリコール
偽割り付けを減らすために、サブタイプ割り付け用に、より厳格なフィルターを設ける、例えば、試料を分類するために最小の正のPearson相関を要求することも可能であった。
実施例3.AvaGlio治験試料のNanostringベース分類
次に、我々は、バイオマーカーをPhillipsの定義による遺伝子発現サブタイプで評価可能であった、AvaGlio治験から得た349の試料を分類した(Cancer Cell.9(3):157−173,2006)。これらのバイオマーカーの評価可能患者349人の各治療群内の選択ベースラインの特性を表6に示す。
表6.バイオマーカーの評価可能患者の選択ベースライン特性
試料を、サブタイプ特異的な重心を導くために使用したものと同一のNanostringプローブセットで解析し、同一の遺伝子についての発現スコアを、同一の技術とプローブ配列を使用して得た。349の試料のうち、良好な予後に関連することが既知であるイソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)遺伝子に変異(複数可)のあった患者の試料10個を、本解析から除外した。残る339のIDH1天然型の試料の、生のNanostringカウントをlog2変換し、試料全体の平均発現及び標準偏差を上記実施例2の検討セットに適用したものと同一の参照値に合わせて調整した。
次に、我々は、バイオマーカーをPhillipsの定義による遺伝子発現サブタイプで評価可能であった、AvaGlio治験から得た349の試料を分類した(Cancer Cell.9(3):157−173,2006)。これらのバイオマーカーの評価可能患者349人の各治療群内の選択ベースラインの特性を表6に示す。
表6.バイオマーカーの評価可能患者の選択ベースライン特性
試料を、サブタイプ特異的な重心を導くために使用したものと同一のNanostringプローブセットで解析し、同一の遺伝子についての発現スコアを、同一の技術とプローブ配列を使用して得た。349の試料のうち、良好な予後に関連することが既知であるイソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)遺伝子に変異(複数可)のあった患者の試料10個を、本解析から除外した。残る339のIDH1天然型の試料の、生のNanostringカウントをlog2変換し、試料全体の平均発現及び標準偏差を上記実施例2の検討セットに適用したものと同一の参照値に合わせて調整した。
分類については、30の分類プローブの発現値のみを考慮に入れ、各試料について、3つのNanonstring特異的な重心それぞれに対するPearson相関係数を測定した。試料を、正の相関係数の最も高いサブタイプに割り付けた。42(12.3%)の試料は、どの重心にも何の正の相関も示さなかったため、「分類対象外」のラベルを付した(表7)。
表7.AvaGlio治験試料のブタイプの割り付け
上記の30の分類遺伝子に基づくPhillipsサブタイプ分類と、95の分類遺伝子に基づくTCGAサブタイプ分類(Verhaak et al.Cancer Cell.17(1):98−110,2010)との比較を下記表8に示す。
表8. Phillips分類及びTCGA分類に基づく両サブタイプ割り付けの比較
表7.AvaGlio治験試料のブタイプの割り付け
上記の30の分類遺伝子に基づくPhillipsサブタイプ分類と、95の分類遺伝子に基づくTCGAサブタイプ分類(Verhaak et al.Cancer Cell.17(1):98−110,2010)との比較を下記表8に示す。
表8. Phillips分類及びTCGA分類に基づく両サブタイプ割り付けの比較
膠芽腫のPNサブタイプを有すると分類された患者99人のうち、Phillipsらに定義されるように、治療群で分けた選択ベースライン特性を、下記表9に示す。
表9.PNサブタイプ患者の選択ベースライン特性
表9.PNサブタイプ患者の選択ベースライン特性
3つの遺伝子発現サブタイプに分類するAvaGlio試料分類の堅牢性を調査するため、同一の30の分類遺伝子を使用し、試料を3つのクラスター(k=3)に分類して、非監視下の分析も実施した(medoids法の分割法(Kaufman & Rousseeuw,Clustering by Means of Medoids. Reports of the Faculty of Mathematics and Informatics,Delft University of Technology,1987)。重要なことに、クラスターの性質は、事前に特定されなかったが、アルゴリズムで自動的に測定された。発現がクラスター最終割付と一致しなかったことを示す、負のシルエット幅の試料には、「分類対象外」のラベルを付した.
監視下の解析と非監視下の解析間には高い一致性が観察され、例えば、自動測定を行った試料クラスターは重心由来のサブタイプと大きく重複していた(表10)。
表10.AvaGlio試料の監視下及び非監視下での層別化
表10.AvaGlio試料の監視下及び非監視下での層別化
実施例4.前神経(PN)型膠芽腫の患者は、AvaGlio治験におけるベバシズマブ治療の後、無増悪生存(PFS)及び全生存(OS)の延長を示した
第III相AvaGlio試験では、治療群に抗VEGF抗体療法を追加したところ、全体的に無増悪生存(PFS)中央値がプラセボ群より約4.4か月改善されたが、全生存(OS)中央値は、両群間に有意差はなかった。したがって、Phillips分類を使用して、患者の膠芽腫腫瘍遺伝子発現サブタイプで定義された患者が、RT及び化学療法による治療に抗VEGF療法を追加したことでOS利益を受けているかどうか、評価した。
第III相AvaGlio試験では、治療群に抗VEGF抗体療法を追加したところ、全体的に無増悪生存(PFS)中央値がプラセボ群より約4.4か月改善されたが、全生存(OS)中央値は、両群間に有意差はなかった。したがって、Phillips分類を使用して、患者の膠芽腫腫瘍遺伝子発現サブタイプで定義された患者が、RT及び化学療法による治療に抗VEGF療法を追加したことでOS利益を受けているかどうか、評価した。
PFS及びOSの両データを、Phillips分類を使用して定義されるような膠芽腫サブタイプにしたがって層別化すると、AvaGlio治験の治療群では、PNサブタイプの膠芽腫患者プラセボ群と比較して、PFS及びOSに改善が観察された(n=99患者、AvaGlio試験の全患者の約28.3%を表す)。
標準治療でOS予後が最も悪い、PN患者のPFSに関しては、治療群においてプラセボ群より、ハザード比(HR)0.58で、約4.3か月のPFS中央値延長が観察された(95%信頼区間(CI)=0.37〜0.9;p=0.015)(図2Aを参照のこと)。PN患者のOSでは、治療群においてプラセボ群より、ハザード比0.63で、約4.9か月のOS中央値延長が観察された(95% CI=0.4〜0.99;p=0.043)(図2Bを参照のこと)。
既知の臨床的な予後共変量(例えば、年齢、コルチコステロイド、切除範囲、性別、Karnofskyパフォーマンススコア(KPS)、O−6−メチルグアニン−DNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)プロモーターのメチル化状態、簡易知能試験スコア(MMSE)、再帰分割分析(RPA)クラス、及びWHOパフォーマンススコア)を考慮するために、RT及び化学療法と併用する抗VEGF治療(例えば、抗VEGF抗体治療、例えば、ベバシズマブ治療)のOSに対する効果について多変量解析も行った。この解析は、Phillipsが定義するようなPN型及び非PN型サブタイプの膠芽腫腫瘍患者のOSに適合させた多変量Cox比例ハザード(PH)モデルを使用して実施した。多変量Cox PHは、抗VEGF治療は、PNサブタイプの膠芽腫患者には有意なOS利益をもたらしたが、非PNサブタイプの膠芽腫患者には利益がなかったことを示す(図3)。具体的には、PNサブタイプの膠芽腫患者では、治療群のOS中央値は17.1か月(プラセボ群では12.2か月)、ハザード比は0.42(95% CI=0.24〜0.72;p=0.002)であった(図4A)。非PNサブタイプの膠芽腫患者では、HRは1.03であった(95% CI=0.76〜1.39;p=0.863)(図4B)。
抗VEGF療法(例えば、抗VEGF抗体治療、例えば、ベバシズマブ治療)が、TCGA(Verhaak et al.Cancer Cell.17(1):98−110,2010)分類によるPN及び非PNサブタイプの膠芽腫患者のOSに及ぼす効果についての多変量解析も、PNサブタイプの膠芽腫患者に対する有意なOS利益を示した(図5A及び5B)。
これらのデータは、抗VEGF抗体治療(例えば、ベバシズマブ治療)は、PN型膠芽腫患者に対して、PFS及びOSの有意な改善(すなわち、PFS期間とOS期間の延長)関連していることを示す。
上述の発明は、明瞭な理解を目的とした説明及び実施例で一部を詳述してきたが、その記載内容及び実施例は、本発明の範囲を限定するとものと解釈されるべきではない。本明細書で引用する全ての特許、特許出願、科学的参照文献、及びGenbank Accession番号の開示は、各特許、特許出願、科学的文献、及びGenbank Accession番号が具体的に参照により取り込まれているかの如く、すべての目的のために、参照によりその全体が明示的に取り込まれる。そのような特許出願には、具体的に、本明細書が優先権を主張する、それぞれ、2013年8月30日及び2014年5月29日に出願された、米国仮特許出願第61/872,165号及び第62/004,687号が含まれる。
これらのデータは、抗VEGF抗体治療(例えば、ベバシズマブ治療)は、PN型膠芽腫患者に対して、PFS及びOSの有意な改善(すなわち、PFS期間とOS期間の延長)関連していることを示す。
<本発明の更なる実施態様>
[実施態様1]
有効量の抗VEGF抗体、有効量の化学療法薬、及び有効量の放射線治療を含む治療を前記患者に投与することを含む、膠芽腫と診断された患者の治療方法であって、抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者と比較して、前記患者の全生存期間中央値を延長させる、前記治療方法。
[実施態様2]
前記患者のWHOパフォーマンス状態が2以下である、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
前記化学療法薬がテモゾロミド(TMZ)である、実施態様1に記載の方法。
[実施態様4]
前記TMZが150mg/m2で投与される、実施態様3に記載の方法。
[実施態様5]
前記TMZが200mg/m2で投与される、実施態様3に記載の方法。
[実施態様6]
前記放射線治療を2Gyで施行する、実施態様1に記載の方法。
[実施態様7]
前記抗VEGF抗体がA4.6.1エピトープに結合する、実施態様1に記載の方法。
[実施態様8]
前記抗VEGF抗体がベバシズマブである、実施態様1に記載の方法。
[実施態様9]
前記抗VEGF抗体が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、前記VHは、配列番号2のアミノ酸配列を有し、前記VLは配列番号1のアミノ酸配列を有する、実施態様1に記載の方法。
[実施態様10]
前記抗VEGF抗体の前記有効量が、2週間隔の静脈内10mg/kgである、実施態様1に記載の方法。
[実施態様11]
前記抗VEGF抗体の前記有効量が、3週間隔の静脈内15mg/kgである、実施態様1に記載の方法。
[実施態様12]
前記有効量の前記抗VEGF抗体が、初回は静脈内に90分かけて投与され、続いて60分かけて注入され、その後、30分かけて注入される、実施態様1に記載の方法。
[実施態様13]
前記第1のサイクルにおいて前記患者に前記抗VEGF抗体が最初に投与される、実施態様1に記載の方法。
[実施態様14]
前記抗VEGF抗体の順次投与が、前記化学療法薬の前、または後に行われる、実施態様10に記載の方法。
[実施態様15]
前記膠芽腫が前神経性サブタイプである、実施態様1に記載の方法。
[実施態様16]
前記膠芽腫が新たに診断された膠芽腫である、実施態様1に記載の方法。
[実施態様17]
前記抗VEGF抗体が、前記化学療法薬と同時に投与される、実施態様1に記載の方法。
[実施態様18]
前記全生存期間中央値が、抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者と比較して、約4.9か月延長され、ハザード比(HR)が0.42である、実施態様1に記載の方法。
[実施態様19]
前記全生存期間中央値が、抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者と比較して、約4.9か月延長され、ハザード比(HR)が約0.24〜約0.72である、実施態様1に記載の方法。
[実施態様20]
前記患者が65歳未満である、実施態様18または19に記載の方法。
[実施態様21]
前記患者が65歳以上である、実施態様18または19に記載の方法。
[実施態様22]
抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者に比較して、膠芽腫と診断された患者の全生存期間中央値を延長させるための医薬の製造における、有効量の抗VEGF抗体、化学療法薬、及び放射線治療の使用。
[実施態様23]
抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者に比較して、膠芽腫と診断された患者の全生存期間中央値を延長させる方法における使用のための、有効量の抗VEGF抗体、化学療法薬、及び放射線治療を含む、組成物。
[実施態様24]
本質的にエピトープA4.6.1に結合する抗VEGF抗体、化学療法薬、並びに、膠芽腫と診断された患者に有効量の抗VEGF抗体及び化学療法薬を投与することを含む、膠芽腫と診断された前記患者の治療のための指示を有する添付文書またはラベルを含むキットであって、前記患者が、それまでに2以下の抗癌レジメンを受けており、前記治療が、抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者と比較して、前記患者の全生存期間中央値を延長する、前記キット。
[実施態様25]
前記抗VEGF抗体がベバシズマブである、実施態様24に記載のキット。
[実施態様26]
前記膠芽腫が前神経性サブタイプである、実施態様24に記載のキット。
[実施態様27]
前記膠芽腫が新たに診断された膠芽腫である、実施態様24に記載のキット。
<本発明の更なる実施態様>
[実施態様1]
有効量の抗VEGF抗体、有効量の化学療法薬、及び有効量の放射線治療を含む治療を前記患者に投与することを含む、膠芽腫と診断された患者の治療方法であって、抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者と比較して、前記患者の全生存期間中央値を延長させる、前記治療方法。
[実施態様2]
前記患者のWHOパフォーマンス状態が2以下である、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
前記化学療法薬がテモゾロミド(TMZ)である、実施態様1に記載の方法。
[実施態様4]
前記TMZが150mg/m2で投与される、実施態様3に記載の方法。
[実施態様5]
前記TMZが200mg/m2で投与される、実施態様3に記載の方法。
[実施態様6]
前記放射線治療を2Gyで施行する、実施態様1に記載の方法。
[実施態様7]
前記抗VEGF抗体がA4.6.1エピトープに結合する、実施態様1に記載の方法。
[実施態様8]
前記抗VEGF抗体がベバシズマブである、実施態様1に記載の方法。
[実施態様9]
前記抗VEGF抗体が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、前記VHは、配列番号2のアミノ酸配列を有し、前記VLは配列番号1のアミノ酸配列を有する、実施態様1に記載の方法。
[実施態様10]
前記抗VEGF抗体の前記有効量が、2週間隔の静脈内10mg/kgである、実施態様1に記載の方法。
[実施態様11]
前記抗VEGF抗体の前記有効量が、3週間隔の静脈内15mg/kgである、実施態様1に記載の方法。
[実施態様12]
前記有効量の前記抗VEGF抗体が、初回は静脈内に90分かけて投与され、続いて60分かけて注入され、その後、30分かけて注入される、実施態様1に記載の方法。
[実施態様13]
前記第1のサイクルにおいて前記患者に前記抗VEGF抗体が最初に投与される、実施態様1に記載の方法。
[実施態様14]
前記抗VEGF抗体の順次投与が、前記化学療法薬の前、または後に行われる、実施態様10に記載の方法。
[実施態様15]
前記膠芽腫が前神経性サブタイプである、実施態様1に記載の方法。
[実施態様16]
前記膠芽腫が新たに診断された膠芽腫である、実施態様1に記載の方法。
[実施態様17]
前記抗VEGF抗体が、前記化学療法薬と同時に投与される、実施態様1に記載の方法。
[実施態様18]
前記全生存期間中央値が、抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者と比較して、約4.9か月延長され、ハザード比(HR)が0.42である、実施態様1に記載の方法。
[実施態様19]
前記全生存期間中央値が、抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者と比較して、約4.9か月延長され、ハザード比(HR)が約0.24〜約0.72である、実施態様1に記載の方法。
[実施態様20]
前記患者が65歳未満である、実施態様18または19に記載の方法。
[実施態様21]
前記患者が65歳以上である、実施態様18または19に記載の方法。
[実施態様22]
抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者に比較して、膠芽腫と診断された患者の全生存期間中央値を延長させるための医薬の製造における、有効量の抗VEGF抗体、化学療法薬、及び放射線治療の使用。
[実施態様23]
抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者に比較して、膠芽腫と診断された患者の全生存期間中央値を延長させる方法における使用のための、有効量の抗VEGF抗体、化学療法薬、及び放射線治療を含む、組成物。
[実施態様24]
本質的にエピトープA4.6.1に結合する抗VEGF抗体、化学療法薬、並びに、膠芽腫と診断された患者に有効量の抗VEGF抗体及び化学療法薬を投与することを含む、膠芽腫と診断された前記患者の治療のための指示を有する添付文書またはラベルを含むキットであって、前記患者が、それまでに2以下の抗癌レジメンを受けており、前記治療が、抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者と比較して、前記患者の全生存期間中央値を延長する、前記キット。
[実施態様25]
前記抗VEGF抗体がベバシズマブである、実施態様24に記載のキット。
[実施態様26]
前記膠芽腫が前神経性サブタイプである、実施態様24に記載のキット。
[実施態様27]
前記膠芽腫が新たに診断された膠芽腫である、実施態様24に記載のキット。
Claims (27)
- 有効量の抗VEGF抗体、有効量の化学療法薬、及び有効量の放射線治療を含む治療を前記患者に投与することを含む、膠芽腫と診断された患者の治療方法であって、抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者と比較して、前記患者の全生存期間中央値を延長させる、前記治療方法。
- 前記患者のWHOパフォーマンス状態が2以下である、請求項1に記載の方法。
- 前記化学療法薬がテモゾロミド(TMZ)である、請求項1に記載の方法。
- 前記TMZが150mg/m2で投与される、請求項3に記載の方法。
- 前記TMZが200mg/m2で投与される、請求項3に記載の方法。
- 前記放射線治療を2Gyで施行する、請求項1に記載の方法。
- 前記抗VEGF抗体がA4.6.1エピトープに結合する、請求項1に記載の方法。
- 前記抗VEGF抗体がベバシズマブである、請求項1に記載の方法。
- 前記抗VEGF抗体が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、前記VHは、配列番号2のアミノ酸配列を有し、前記VLは配列番号1のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
- 前記抗VEGF抗体の前記有効量が、2週間隔の静脈内10mg/kgである、請求項1に記載の方法。
- 前記抗VEGF抗体の前記有効量が、3週間隔の静脈内15mg/kgである、請求項1に記載の方法。
- 前記有効量の前記抗VEGF抗体が、初回は静脈内に90分かけて投与され、続いて60分かけて注入され、その後、30分かけて注入される、請求項1に記載の方法。
- 前記第1のサイクルにおいて前記患者に前記抗VEGF抗体が最初に投与される、請求項1に記載の方法。
- 前記抗VEGF抗体の順次投与が、前記化学療法薬の前、または後に行われる、請求項10に記載の方法。
- 前記膠芽腫が前神経性サブタイプである、請求項1に記載の方法。
- 前記膠芽腫が新たに診断された膠芽腫である、請求項1に記載の方法。
- 前記抗VEGF抗体が、前記化学療法薬と同時に投与される、請求項1に記載の方法。
- 前記全生存期間中央値が、抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者と比較して、約4.9か月延長され、ハザード比(HR)が0.42である、請求項1に記載の方法。
- 前記全生存期間中央値が、抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者と比較して、約4.9か月延長され、ハザード比(HR)が約0.24〜約0.72である、請求項1に記載の方法。
- 前記患者が65歳未満である、請求項18または19に記載の方法。
- 前記患者が65歳以上である、請求項18または19に記載の方法。
- 抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者に比較して、膠芽腫と診断された患者の全生存期間中央値を延長させるための医薬の製造における、有効量の抗VEGF抗体、化学療法薬、及び放射線治療の使用。
- 抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者に比較して、膠芽腫と診断された患者の全生存期間中央値を延長させる方法における使用のための、有効量の抗VEGF抗体、化学療法薬、及び放射線治療を含む、組成物。
- 本質的にエピトープA4.6.1に結合する抗VEGF抗体、化学療法薬、並びに、膠芽腫と診断された患者に有効量の抗VEGF抗体及び化学療法薬を投与することを含む、膠芽腫と診断された前記患者の治療のための指示を有する添付文書またはラベルを含むキットであって、前記患者が、それまでに2以下の抗癌レジメンを受けており、前記治療が、抗VEGF抗体を用いずに前記化学療法薬を投与される膠芽腫患者と比較して、前記患者の全生存期間中央値を延長する、前記キット。
- 前記抗VEGF抗体がベバシズマブである、請求項24に記載のキット。
- 前記膠芽腫が前神経性サブタイプである、請求項24に記載のキット。
- 前記膠芽腫が新たに診断された膠芽腫である、請求項24に記載のキット。
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