JP2020049904A - 低誘電基板材 - Google Patents

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Abstract

【課題】高精度で金属パターンに形成することができ、工業的に、低コストで量産される低誘電基板材を提供すること。【解決手段】低誘電基板材1は、多孔質樹脂層4および第2金属層6を厚み方向に順に備える。低誘電基板材1は、多孔質樹脂層4および第2金属層6のいずれか一方の表面に配置される第2保護材7をさらに備える。第2保護材7の23℃のショアD硬度H1と、多孔質樹脂層4および第2金属層6を備える積層材14の23℃のショアD硬度H2とが、下記式(1)を満足し、または、第2保護材7の厚みT1と、多孔質樹脂層4および第2金属層6を備える積層材14の厚みT0とが、下記式(2)を満足する。H1<H2 (1)T1>0.5×T0 (2)【選択図】図1

Description

本発明は、低誘電基板材、詳しくは、高周波アンテナや高速伝送基板の製造に好適に用いられる低誘電基板材に関する。
従来、いわゆる「第三世代(3G)」や「第四世代(4G)」の規格の無線通信が広く利用されている。しかしながら、近年、画像データ等の通信容量がより一層増加する傾向(大容量化の傾向)にあり、上記した規格の無線通信では、大容量のデータを、実用レベルの速度で伝送できない。
そこで、いわゆる「第五世代(5G)」の規格の無線通信の開発が進められている。「第五世代(5G)」の規格の無線通信であれば、大容量のデータを伝送できる。しかも、この「第五世代(5G)」の規格の無線通信では、上記のデータを、高速で伝送することもでき、近年、ますます、「第五世代(5G)」の規格の利用が望まれている。
具体的には、「第五世代(5G)」の規格の無線通信では、ミリ波を含む高周波が用いられる。このミリ波は、大気中の水分で減衰し易く、ミリ波を放出する高周波アンテナの基板材として、誘電率が低い基板材が求められている。低誘電の基板材をアンテナに用いると、ミリ波の電波を効率よく放出することができる。また、低誘電のアンテナ用基板材を用いると、通信距離が延び、しかも、アンテナ部材の小面積化を図ることができ、さらに、低消費電力にもつながる。
また、近年、FPC(フレキシブルプリント回路基板)として、データを高速で伝送する高速FPCが求められており、この高速FPCの基板材としても、低誘電の基板材が求められる。
上記した要求に応えるために、つまり、大容量のデータ無線通信のアンテナや高速FPCに備えられる基板材として、誘電率の低い低誘電基板の開発が進められており、ポリイミド系樹脂やフッ素系樹脂などの低誘電樹脂材料を用いた基板が開発されている。
一方で、材料が多孔質体である基板も検討されている。多孔質体は、最も低い誘電率1である空気を孔内に有することから、多孔質体は誘電率が比較的低くなる。このような多孔質体を備える金属箔積層板として、例えば、絶縁材である樹脂多孔質層と、その表面に配置される金属箔とを備える金属箔積層板が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
特開2004−82372号公報
しかるに、金属箔は、後の工程で高精度で金属パターンに形成される必要がある。
また、低誘電率の多孔質体を工業的に製造する方法は、これまでのところ、まだ確立されていない。また、多孔質体を低コストで量産する方法も併せて求められる。
従って、本発明は、高精度で金属パターンに形成することができ、工業的に、低コストで量産される低誘電基板材を提供することにある。
本発明[1]は、多孔質樹脂層および金属層を厚み方向に順に備え、前記多孔質樹脂層および前記金属層のいずれか一方の表面に配置される保護材をさらに備え、前記保護材の23℃のショアD硬度H1と、前記多孔質樹脂層および前記金属層を備える積層材の23℃のショアD硬度H2とが、下記式(1)を満足し、または、前記保護材の厚みT1と、前記積層材の厚みT0とが、下記式(2)を満足する、低誘電基板材を含む。
H1<H2 (1)
T1>0.5×T0 (2)
本発明[2]は、前記式(1)および前記式(2)がいずれも満足される、[1]に記載の低誘電基板材を含む。
本発明[3]は、前記多孔質樹脂層の空孔率が、60%以上である、[1]または[2]に記載の低誘電基板材を含む。
この低誘電基板材では、保護材のショアD硬度H1が、多孔質樹脂層のショアD硬度H2より低いか、または、保護材の厚みT1が、積層材の厚みT0の半値より厚いので、低誘電基板材を巻回したときに、保護材が十分に押し潰されることにより、多孔質樹脂層が押し潰されることを抑制することができる。そのため、金属層を高精度で金属パターンに形成することができる。
また、多孔質樹脂層が押し潰されることが抑制されるので、空孔率の低減を抑制できる。そのため、多孔質樹脂層の誘電率が増大することを抑制することができる。その結果、この低誘電基板材は、第五世代(5G)の規格や高速FPCに適合できる基板材として極めて有用である。
この低誘電基板材は、金属層を備えるので、第五世代(5G)の規格に対応するアンテナや高速FPCの基板の配線としてパターンニングすることができる。具体的には、工業的に量産できるエッチング条件で、金属層をパターンニングしても、第五世代(5G)に適合できるアンテナや高速FPCの基板の配線を、優れた精度で形成できる。
また、多孔質樹脂層が独立気泡構造を高い割合で有する場合には、パターンニングで用いられるエッチング液の染み込みに起因するパターン精度の低下を抑制することができる。そのため、低誘電基板材は、第五世代(5G)の規格の無線通信や、高速FPCに十分かつ確実に対応できる基板材として有用である。
さらに、低誘電基板材は、多孔質樹脂層に対して厚み方向に配置される保護材を備えるので、工業的な製造条件として、低誘電基板材が厚み方向に重ねて製造される場合にも、保護材が、多孔質樹脂層が厚み方向に押圧されることに起因して空孔率が低減することを抑制し、そのため、多孔質樹脂層の低誘電率を十分に確保することができる。その結果、低誘電基板材は、低コストで量産化される。
図1は、本発明の低誘電基板材の一実施形態の断面図を示す。 図2は、図1に示す低誘電基板材から得られるパターン積層材の断面図を示す。 図3は、低誘電基板材の変形例(第1保護材を備えない態様)の断面図を示す。 図4は、低誘電基板材の変形例(接着層を備えない態様)の断面図を示す。 図5は、低誘電基板材の変形例(第1保護材を備えず、第2保護材および積層材を備える態様)の断面図を示す。 図6は、低誘電基板材の変形例(第2保護材を備えず、第1保護材および積層材を備える態様)の断面図を示す。
<一実施形態>
本発明の低誘電基板材の一実施形態を、図1および図2を参照して説明する。
[基本態様]
まず、この低誘電基板材1の基本態様である層構成、製造方法および使用方法等を順に説明する。
〔低誘電基板材およびその層構成〕
図1に示すように、低誘電基板材1は、厚み方向に対向する一方面および他方面を有しており、厚み方向に直交する面方向に延びる形状を有する。
この低誘電基板材1は、第1金属層3と、第1金属層3の厚み方向一方面に配置される多孔質樹脂層4と、多孔質樹脂層4の厚み方向一方面に配置される接着層5と、接着層5の厚み方向一方面に配置される金属層の一例としての第2金属層6とを備え、さらに、第1金属層3の厚み方向他方面に配置される第1保護材2と、第2金属層6の厚み方向一方面に配置される保護材の一例としての第2保護材7とを備える。つまり、低誘電基板材1は、第1保護材2と、第1金属層3と、多孔質樹脂層4と、接着層5と、第2金属層6と、第2保護材7とを厚み方向他方側から一方側に向かって順に備える。好ましくは、低誘電基板材1は、第1保護材2と、第1金属層3と、多孔質樹脂層4と、接着層5と、第2金属層6と、第2保護材7とのみを備える。
〔第1金属層〕
第1金属層3は、厚み方向に対向する一方面および他方面を有しており、面方向に延びるシート(板)形状を有する。第1金属層3の材料は、特に限定されず、例えば、銅、鉄、銀、金、アルミニウム、ニッケル、それらの合金(ステンレス、青銅)などが挙げられる。好ましくは、銅が挙げられる。第1金属層3の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
〔多孔質樹脂層〕
多孔質樹脂層4は、厚み方向に対向する一方面および他方面を有しており、面方向に延びる略板(シート)形状を有する。多孔質樹脂層4の他方面は、第1金属層3の一方面に接触(密着)している。
多孔質樹脂層4は、微細な空孔(気孔)10を多数有している。多孔質樹脂層4は、例えば、独立気泡構造および連続気泡構造のいずれかを有する。好ましくは、独立気泡構造を主として有しており、この場合の独立気泡の割合は、例えば、50%超過、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上であり、また、例えば、100%未満である。独立気泡の割合が上記した下限を上回れば、第1金属層3および第2金属層6のパターンニングで用いられるエッチング液の多孔質樹脂層4への染み込みに起因するパターン精度の低下を抑制することができる。
多孔質樹脂層4における空孔率は、例えば、60%以上、より好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、80%以上、とりわけ好ましくは、85%以上である。なお、多孔質樹脂層4の空孔率は、例えば、100%未満、さらには、99%以下である。空孔率は、例えば、多孔質樹脂層4の断面SEM写真の画像解析により求められる。あるいは、空孔率は、下記式に基づく計算により求められる。
空孔率(%)=(1−無孔樹脂層の比重/多孔質樹脂層の比重)×100
なお、式中、無孔樹脂層は、多孔質樹脂層4の材料からなるが、多孔質ではなく、緻密質を有するフィルムである。
多孔質樹脂層4の空孔率が上記した下限以上であれば、多孔質樹脂層4が、第五世代(5G)の規格や高速FPCに十分に対応できる低い誘電率を有することができる。具体的には、低誘電基板材1が、上記したように、第五世代(5G)の規格や高速FPCに十分に対応できる基板材として有用となる。
多孔質樹脂層4における空孔10の平均径(つまり、平均孔径)は、例えば、10μm以下であり、また、例えば、0.1μm以上である。平均孔径は、多孔質樹脂層4の断面SEM写真の画像解析により求められる。画像解析は、SEM像に2値化を施し、空孔10を識別後、孔径を算出し、ヒストグラム化される。画像解析では、解析ソフトとして、ImageJが用いられる。
多孔質樹脂層4の周波数60GHzにおける誘電率は、空孔率および次に述べる樹脂の種類によって適宜調整され、具体的には、例えば、2.5以下、好ましくは、2.0以下であり、また、例えば、1.0超過である。多孔質樹脂層4の誘電率は、周波数の60GHzを用いる共振器法により、実測される。
多孔質樹脂層4の誘電率が上記した上限以下であれば、低誘電基板材1が低誘電率を有することとなるので、第五世代(5G)の規格や高速FPCの基板材として有用に用いることができる。
多孔質樹脂層4の材料としては、特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性フッ化ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、フッ素樹脂(含フッ素オレフィンの重合体(具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)など))、液晶ポリマー(LCP)などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、マレイミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性フッ化ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、セルロース樹脂、液晶ポリマー、アイオノマーなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
上記した樹脂のうち、機械強度の観点から、好ましくは、ポリイミド樹脂(熱硬化性ポリイミド樹脂および熱可塑性ポリイミド樹脂を含む)、フッ化ポリイミド樹脂(熱硬化性フッ化ポリイミド樹脂および熱可塑性フッ化ポリイミド樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂が挙げられる。好ましくは、ポリイミド樹脂が挙げられる。ポリイミド樹脂は、独立気泡構造を有する多孔質樹脂層4を含む低誘電基板材1の作製工程に含まれており、加圧(プレス)よる積層に最も適した材料である。なお、上記した好適な樹脂の物性および製造方法等の詳細は、例えば、特開2018−021171号公報、特開2018−021172号公報などに記載されている。
多孔質樹脂層4は、その厚み方向一方面および他方面に形成されるスキン層(図示せず)を有することができる。
多孔質樹脂層4の厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、1,000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
なお、多孔質樹脂層4以外の層、具体的には、第1金属層3、接着層5(後述)、第2金属層6(後述)、第1保護材2(後述)および第2保護材7(後述)は、いずれも、多孔質樹脂層4と異なり、例えば、無孔であり、つまり、微細な空孔を実質的に有さず、緻密である。
〔接着層〕
接着層5は、多孔質樹脂層4の厚み方向一方面において、面方向に沿うシート形状を有する。
接着層5の材料としては、特に限定されず、ホットメルト型接着剤、熱硬化型接着剤など、種々の型の接着剤が挙げられ、具体的には、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤などが挙げられる。接着層5の厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、25μm以下、より好ましくは、低誘電基板材1の誘電率を低減する観点から、10μm以下である。
〔第2金属層〕
第2金属層6は、厚み方向に対向する一方面および他方面を有しており、面方向に延びるシート(板)形状を有する。第2金属層6の他方面は、接着層5を介して、多孔質樹脂層4の一方面に接着している。第2金属層6の材料および厚みは、第1金属層3のそれらと同様である。
〔積層材〕
第1金属層3、多孔質樹脂層4、接着層5および第2金属層6は、積層材14を構成する。換言すれば、積層材14は、第1金属層3、多孔質樹脂層4、接着層5および第2金属層6を厚み方向一方側に向かって順に備える。
積層材14の厚みT0は、後述する第2保護材7の厚みT1との所望の比を満足するように、設定される。具体的には、積層材14の厚みT0は、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、500μm以下である。
〔第1保護材〕
第1保護材2は、低誘電基板材1の厚み方向他方面を形成する。第1保護材2は、厚み方向に対向する一方面および他方面を有しており、厚み方向に直交する面方向に延びるシート形状を有する。第1保護材2の一方面は、第1金属層3の他方面に剥離可能に接触(密着)している。
また、第1保護材2は、第1金属層3を保護している。具体的には、第1保護材2は、第1金属層3をパターンニングする前には、第1金属層3を被覆する一方、第1金属層3をパターンニングするときには、第1金属層3から剥離される剥離シート(第1剥離シート)である。なお、図2に示すように、第1金属層3をパターンニングして形成された他方側配線18(後述)には、第1保護材2が配置されていない。
第1保護材2は、高い空孔率を有する多孔質樹脂層4を備える低誘電基板材1を工業的に量産するために、低誘電基板材1に備えられる保護シートである。
第1保護材2の材料は、特に限定されず、例えば、ポリマー、金属などが挙げられる。ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルなどが挙げられる。金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、合金(ステンレスなど)が挙げられる。第1保護材2の材料として、好ましくは、ポリマーが挙げられる。第1保護材2の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、2,000μm以下、好ましくは、1,000μm以下である。
〔第2保護材〕
第2保護材7は、低誘電基板材1の厚み方向一方面を形成する。第2保護材7は、厚み方向に対向する一方面および他方面を有しており、厚み方向に直交する面方向に延びるシート形状を有する。第2保護材7の他方面は、第2金属層6の一方面と剥離可能に接触(密着)している。
また、第2保護材7は、第2金属層6を保護している。具体的には、第2保護材7は、第2金属層6をパターンニングする前には、第2金属層6を被覆する一方、第2金属層6をパターンニングするときには、図1の仮想線で示すように、第2金属層6から剥離される剥離シート(第2剥離シート)である。なお、図2に示すように、第2金属層6をパターンニングして形成された一方側配線17(後述)には、第2金属層6が配置されていない。
第2保護材7は、高い空孔率を有する多孔質樹脂層4を備える低誘電基板材1を工業的に量産するために、低誘電基板材1に第1保護材2とともに備えられる保護シートである。
第2保護材7の形状、材料および厚み等は、第1保護材2のそれらと同様である。
低誘電基板材1の厚みは、第1保護材2、第1金属層3、多孔質樹脂層4、接着層5、第2金属層6および第2保護材7の総厚み(つまり、積層材14、第1保護材2および第2保護材7の総厚み)であって、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上、より好ましくは、200μm以上であり、また、例えば、5,000μm以下、好ましくは、2,000μm以下である。
〔低誘電基板材の製造方法〕
次に、低誘電基板材1の製造方法を説明する。
なお、一実施形態における低誘電基板材1の製造では、例えば、ロールトゥロール法によって、各部材を、搬送しながら積層(形成)する。
具体的には、まず、第1金属層3を準備する。例えば、上記した材料から成る箔(金属箔)を第1金属層3として準備する。
次いで、多孔質樹脂層4を第1金属層3の一方面に形成する。例えば、多孔質樹脂層4を、第1金属層3の一方面で作製する(作り込む)。
具体的には、まず、上記した樹脂の前駆体と、多孔化剤と、核剤と、溶媒とを含むワニスを調製し、次いで、ワニスを第1金属層3の一方面に塗布して塗膜を形成する。ワニスにおける多孔化剤、核剤および溶媒の、種類および配合割合等は、例えば、特開2018−021171号公報、特開2018−021172号公報などに記載されている。
とりわけ、多孔化剤の質量部数(配合割合)は、前駆体100質量部に対して、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、50質量部以上であり、また、好ましくは、300質量部以下、より好ましくは、250質量部以下である。
核剤は、前駆体を発泡(多孔化)させるときに核となる発泡核剤(気泡調整剤)である。また、核剤として、上記公報に記載の核剤(PTFEなど)の他に、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)などのフッ素樹脂(含フッ素オレフィンの重合体)、さらには、モノマー単位として、(メタ)アクリル酸エステルおよび上記した含フッ素オレフィンを含有する共重合体なども挙げられる。
核剤は、常温(23℃)で、例えば、固体状、液体状、半固体状のいずれであってよく、好ましくは、固体状である。核剤が常温で固体状であれば、核剤の形状としては、例えば、略球形状、略板形状、略針形状、不定形状(塊状を含む)が挙げられ、好ましくは、略球形状が挙げられる。
核剤が常温で固体状であれば、核剤の最大長さの平均値(略球形状であれば、平均粒子径)は、例えば、2,000nm以下、好ましくは、1,000nm以下であり、また、例えば、1nm以上である。
また、核剤は、予め溶媒(PTFE)に分散したスラリーとして調製されていてもよい。
その後、塗膜を加熱により乾燥することにより、溶媒の除去が進行しつつ、核剤を核とした、前駆体と多孔化剤との相分離構造が形成される。
その後、例えば、超臨界二酸化炭素を溶媒として用いる超臨界抽出法により、多孔化剤を前駆体から抽出する(引き抜く、あるいは、除去する)。
その後、前駆体を硬化させて、樹脂および多孔を有する樹脂、具体的には、多孔質樹脂層4を形成する。
その後、接着層5を、多孔質樹脂層4の一方面に配置する。例えば、接着剤を多孔質樹脂層4の一方面に塗布したり、あるいは、接着剤から予めシート状に形成した接着層5を多孔質樹脂層4の一方面に貼る。
続いて、第2金属層6を、接着層5の一方面に配置する。例えば、上記した材料から成る箔(金属箔)を接着層5の一方面に貼り付ける。
その後、第1保護材2を、第1金属層3の他方面に配置するとともに、第2保護材7を、第2金属層6の一方面に配置する。なお、予め第2保護材7が配置された第2金属層6を、接着層5に貼り合わせることもできる。
これにより、低誘電基板材1を製造する。
この低誘電基板材1の用途は、例えば、各種用途が挙げられ、好ましくは、第五世代(5G)の規格に適合する高周波アンテナや高速伝送基板(高速伝送FPCなど)の製造に用いられる。具体的には、低誘電基板材1は、高周波アンテナや高速FPCの基板材として用いられる。
低誘電基板材1を上記の用途で使用する場合には、図1の仮想線およびその矢印で示すように、例えば、まず、第2保護材7を第2金属層6から剥離して、第2金属層6の一方面を露出させる。なお、第2保護材7を第2金属層6から剥離する前に、予め、低誘電基板材1の端部における第2保護材7および第2金属層6間に、第2保護材7の剥離のきっかけとなる切れ目(隙間)を設けるとともに、第2保護材7の端部を把持する。そして、第2保護材7の端部を把持し、これを厚み方向一方側に引き上げながら、第2保護材7を第2金属層6から剥離する。
続いて、第2金属層6を、フォトリソグラフィ(例えば、サブトラクティブ法)によって、図2に示すように、パターンニングして、例えば、信号配線(差動配線など)やアンテナ配線などの一方側配線17を形成する。
その後、第1保護材2を第1金属層3から剥離して、第1金属層3の他方面を露出させて、続いて、第1金属層3を、フォトリソグラフィによって、パターンニングして、例えば、グランド配線などの他方側配線18を形成する。
これにより、他方側配線18、多孔質樹脂層4、接着層5および一方側配線17を厚み方向一方側に向かって順に備えるパターン積層材13を製造し、このパターン積層材13を、第五世代(5G)の規格に適合する高周波アンテナや高速伝送基板に備える。
そして、この低誘電基板材1は、多孔質樹脂層4を有し、多孔質樹脂層4が、60%以上、より好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、80%以上、とりわけ好ましくは、85%以上の高い空孔率を有する場合には、十分に低い低誘電率を有することができる。具体的には、低誘電率が、例えば、2.5以下、好ましくは、2.0以下である。従って、低誘電基板材1が、第五世代(5G)の規格の無線通信のアンテナ基板や、高速FPCに対応できる低い誘電率を有することができる。
また、低誘電基板材1は、第1金属層3および第2金属層6を備えるので、第五世代(5G)の規格に対応するアンテナや高速FPCの基板の配線としてパターンニングすることができる。具体的には、工業的なエッチング条件で、第1金属層3および第2金属層6をパターンニングしても、第五世代(5G)に適合できるアンテナや高速FPCの基板の配線を、優れた精度で形成できる。
また、多孔質樹脂層4が独立気泡構造を有する場合であって、独立気泡の割合が、50%超過、さらには、80%以上、さらには、90%以上と高い場合には、パターンニングで用いられるエッチング液の染み込みに起因するパターン精度の低下を抑制することができる。そのため、低誘電基板材1は、第五世代(5G)の規格の無線通信や、高速FPCに十分かつ確実に対応できる基板材として有用である。
さらに、低誘電基板材1は、多孔質樹脂層4に対して厚み方向両側に配置される第1保護材2および第2保護材7を備えるので、工業的な製造条件として、低誘電基板材1が厚み方向に重ねて製造される場合にも、第1保護材2および第2保護材7が、多孔質樹脂層4が厚み方向に押圧されることに起因して空孔率が増大することを抑制し、そのため、多孔質樹脂層4の低誘電率を十分に確保することができる。その結果、低誘電基板材1は、低コストで量産化されながら、第五世代(5G)の規格や高速FPCに十分に対応できる低い誘電率を有する基板材として有用である。
なお、多孔質樹脂層4の空孔率が上記した上限以下であれば、多孔質樹脂層4が十分な機械強度を確保することができる。
<顕著な特徴点>
次に、この低誘電基板材1における顕著な特徴点を、図1を参照して詳説する。なお、図1中、符号の括弧書きにおいて、Hから始まるものは、23℃における該層のショアD硬度を意味する。
第2保護材7の23℃のショアD硬度H1と、多孔質樹脂層4の23℃のショアD硬度H2とが、下記式(1)を満足し、または、第2保護材7の厚みT1と、積層材14の厚みT0とが、下記式(2)を満足する。
H1<H2 (1)
T1>0.5×T0 (2)
少なくとも、第2保護材7の23℃のショアD硬度H1と、多孔質樹脂層4の23℃のショアD硬度H2とが式(1)を満足するときには、第2保護材7が厚み方向に十分に押し潰されることにより、多孔質樹脂層4が厚み方向に押し潰されることを抑制することができる。その結果、多孔質樹脂層4の誘電率が増大することを抑制することができる。従って、この低誘電基板材1は、第五世代(5G)の規格や高速FPCに適合できる基板材として極めて有用である。
なお、第1金属層3、接着層5および第2金属層6のそれぞれのショアD硬度は、それらを含む積層材14のショアD硬度に対して大きな寄与を示さない。そのため、積層材14のショアD硬度と、多孔質樹脂層4のショアD硬度H2とは、実質的に同一である。
第2保護材7のショアD硬度H1が、多孔質樹脂層4のショアD硬度H2より高い場合には、第2保護材7が押し潰されるよりも前に、積層材14(実質的には、多孔質樹脂層4)が押し潰され、その結果、空孔率の低下し、多孔質樹脂層4の誘電率が増大する。そうすると、第五世代(5G)の規格や高速FPCに適合できる基板材として十分でない場合がある。
また、第2保護材7のショアD硬度H1と、多孔質樹脂層4のショアD硬度H2とが同一である場合には、第2保護材7および多孔質樹脂層4が同様に押し潰され、結局、多孔質樹脂層4の誘電率の増大を抑制できない。そうすると、やはり、第五世代(5G)の規格や高速FPCに適合できる基板材として十分でない場合がある。
但し、上記したように、第2保護材7のショアD硬度H1が、多孔質樹脂層4のショアD硬度H2より高い場合、または、第2保護材7のショアD硬度H1と、多孔質樹脂層4のショアD硬度H2とが同一である場合であっても(つまり、上記式(1)が満足されない場合でも)、厚みに関する後述の式(2)を満足すれば、製造工程において、第2保護材7を巻回しても、第2保護材7が押し潰される量を確保して、多孔質樹脂層4が押し潰されることを抑制することができる。そのため、第2保護材7における第2金属層6および第1金属層3を高精度で金属パターン(図2における一方側配線17および他方側配線18)に形成することができる。
また、多孔質樹脂層4が押し潰されることが抑制されるので、空孔率の低減を抑制することができる。それによって、積層材14における多孔質樹脂層4の誘電率の増加を抑制でき、この低誘電基板材1は、第五世代(5G)の規格や高速FPCに適合できる基板材として極めて有用となることができる。
また、第2保護材7のショアD硬度H1と、多孔質樹脂層4のショアD硬度H2とは、好ましくは、下記式(1−1)を満足し、好ましくは、下記式(1−2)を満足、好ましくは、下記式(1−3)を満足し、また、例えば、下記式(1−4)を満足する。
H1<0.9×H2 (1−1)
H1<0.7×H2 (1−2)
H1<0.5×H2 (1−3)
0.001×H2<H1 (1−4)
また、式(2)に関し、第2保護材7の厚みT1が比較的薄い場合には、たとえ、先に、第2保護材7が、押し潰されても、その押し潰される量(余地)が十分でなく、そのため、第2保護材7が実質的に完全に押し潰された後に、積層材14が押し潰される場合がある。
しかし、この低誘電基板材1において、少なくとも、第2保護材7の厚みT1と、積層材14の厚みT0とが式(2)を満足するときには、第2保護材7の厚みT1が、積層材14の厚みT0の半値より厚いので、第2保護材7が押し潰される量(余地)を十分に確保することができる。そのため、積層材14が押し潰される前に、第2保護材7が十分に押し潰される。そのため、積層材14における多孔質樹脂層4の誘電率の増加を抑制でき、この低誘電基板材1は、第五世代(5G)の規格や高速FPCに適合できる基板材として極めて有用である。
また、この低誘電基板材1では、第2保護材7の厚みT1と、積層材14の厚みT0とが、より好ましくは、下記式(2−1)を満足し、さらに好ましくは、下記式(2−2)を満足し、とりわけ好ましくは、下記式(2−3)を満足し、また、下記式(2−4)を満足する。
T1>0.75×T0 (2−1)
T1>0.9×T0 (2−2)
T1>T0 (2−4)
1.25×T0<T1<10×T0 (2−5)
第2保護材7および積層材14が上記式を満足すれば、積層材14における多孔質樹脂層4の誘電率の増加をより一層抑制でき、この低誘電基板材1は、第五世代(5G)の規格や高速FPCに適合できる基板材として極めて有用である。
また、より好ましくは、式(1)および式(2)がいずれも満足される。式(1)および式(2)がいずれも満足されれば、第2保護材7がより一層十分に押し潰される。そのため、積層材14における多孔質樹脂層4の誘電率の増加をより一層抑制できる。
<変形例>
次に、一実施形態の変形例を説明する。以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、一実施形態および各変形例を適宜組み合わせることができる。さらに、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
上記した説明では、低誘電基板材1をロールトゥロールで製造したが、これに限定されず、例えば、バッチ法(枚葉式)で低誘電基板材1を製造することもできる。
一実施形態では、まず、第1保護材2を第1金属層3から剥離し、その後、第2保護材7を第2金属層6から剥離しているが、その順序は、逆でもよく、また、同時であってもよい。
第2保護材7の一方面および/または他方面が、剥離処理または粘着処理がなされていてもよい。なお、剥離層または粘着層の厚みは、第2保護材7のショアD硬度H1に実質的な変動を及ぼさない程度に設定されている。
一実施形態では、図1に示すように、接着層5が、多孔質樹脂層4および第2金属層6の間に介在しているが、これに限定されず、例えば、図示しないが、第1金属層3および多孔質樹脂層4の間に介在することもできる。
一実施形態では、本発明の保護材の一例として第2保護材7を例示し、第2保護材7のショアD硬度H1または厚みT1が、上記した式(1)または式(2)を満足しているが、例えば、保護材の一例として、第2保護材7の他に、さらに、第1保護材2を例示することができる。この場合には、第1保護材2のショアD硬度H3と、多孔質樹脂層4のショアD硬度H2が、下記式(3)を満足し、または、第1保護材2の厚みT1と、積層材14の厚みT1とが、下記式(2)を満足する。
H3<H2 (3)
T1>0.5×T0 (2)
第1保護材2の厚みT1は、第2保護材7の厚みT1と同様である。
第1保護材2のショアD硬度H3、および、多孔質樹脂層4のショアD行動H2に関し、好ましくは、下記式(3−1)を満足し、より好ましくは、下記式(3−2)を満足し、さらに好ましくは、下記式(3−3)を満足し、とりわけ好ましくは、下記式(3−4)を満足する。
H3<0.9×H2 (3−1)
H3<0.7×H2 (3−2)
H3<0.5×H2 (3−3)
0.001×H2<H3 (3−4)
第1保護材2のショアD硬度H3は、第2保護材7のショアD硬度H1と同一であってもよい。
より好ましくは、式(3)および式(2)がいずれも満足される。
なお、第1保護材2の一方面および/または他方面が、剥離処理または粘着処理がなされていてもよい。なお、剥離層または粘着層の厚みは、第1保護材2のショアD硬度H3に実質的な変動を及ぼさない程度に設定されている。
あるいは、一実施形態では、低誘電基板材1が、第1保護材2を備えるが、図3に示すように、第1保護材2を備えず、第2保護材7を備えてもよい。
この低誘電基板材1は、積層材14と、第2保護材7とを備える。具体的には、第1金属層3、多孔質樹脂層4、接着層5、第2金属層6および第2保護材7を厚み方向一方側に向かって順に備える。
第1金属層3は、厚み方向他方側に向かって露出される。なお、第1金属層3の厚み方向他方面は、低誘電基板材1が厚み方向に複数積み重ねられる(積層される)ときに、第2保護材7の厚み方向一方面に接触し、つまり、第2保護材7に保護される。
また、一実施形態では、図1に示すように、低誘電基板材1が、接着層5を備えるが、図4に示すように、接着層5を備えなくてもよい。
この低誘電基板材1では、積層材14は、第1金属層3、多孔質樹脂層4および第2金属層6を厚み方向一方側に向かって順に備える。換言すれば、低誘電基板材1は、第1保護材2、第1金属層3、多孔質樹脂層4および第2金属層6を厚み方向一方側に向かって順に備える。
さらに、低誘電基板材1は、図5に示すように、第1保護材2および第1金属層3を備えなくてもよい。この低誘電基板材1では、多孔質樹脂層4および第2金属層6を有する積層材14と、第2保護材7とが、厚み方向一方側に向かって順に配置されている。具体的には、低誘電基板材1は、多孔質樹脂層4、第2金属層6および第2保護材7を厚み方向一方側に向かって順に備える。
多孔質樹脂層4は、低誘電基板材1の厚み方向他方面を形成しており、厚み方向他方側に向かって露出している。多孔質樹脂層4は、低誘電基板材1が厚み方向に複数積み重ねられる(積層される)ときに、第2保護材7の厚み方向一方面に接触し、つまり、第2保護材7に保護される。
図5に示す変形例では、積層材14および第2保護材7が厚み方向一方側に向かって順に配置されているが、図6に示す変形例では、保護材の一例としての第1保護材2および積層材14が厚み方向一方側に向かって順に配置されている。
図6に示すように、低誘電基板材1は、第1保護材2、多孔質樹脂層4および第2金属層6を厚み方向一方側に向かって順に備える。
図6に示す変形例では、第2金属層6は、低誘電基板材1の厚み方向一方面を形成しており、厚み方向一方側に向かって露出している。第2金属層6は、低誘電基板材1が厚み方向に複数積み重ねられる(積層される)ときに、第1保護材2の厚み方向他方面に接触し、つまり、第1保護材2に保護される。
また、多孔質樹脂層4は、2層あるいは3層以上の、複数層からなっていてもよい。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
<図3に対応する低誘電基板材の製造>
実施例1
まず、銅からなる厚み12.5μmの第1金属箔3を準備した。
次いで、特開2018−021172号公報の参考例に記載のポリイミド前駆体溶液100質量部に、イミド化触媒(2−メチルイミダゾール)4.2質量部、ポリオキシエチレンジメチルエーテル(日油社製 グレード:MM400、重量平均分子量400)からなる多孔化剤200質量部、PTFEからなる平均粒子径1,000nm以下の核剤3質量部、および、NMP(N−メチルピロリドン)を配合して、ワニスを調製した。核剤は、予めNMPに分散されたスラリーとして調製したものを、ポリイミド前駆体に対して配合した。なお、ワニスにおけるNMPの総配合部数は、上記したスラリー中に含まれるものを併せて、ポリイミド前駆体100質量部に対して、150質量部となるように、調整した。
このワニスを、第1金属箔3の一方面に塗布し、120℃で30分間、乾燥して、NMPを除去し、続いて、超臨界抽出法により、多孔化剤を除去し、その後、真空下、380℃で2時間加熱して、イミド化させて、ポリイミドからなる多孔質樹脂層4を、第1金属箔3の一方面で作り込んだ。
多孔質樹脂層4の厚みが、120μmであった。多孔質樹脂層4における空孔率が、80%、平均孔径が、7μmであった。また、多孔質樹脂層4の周波数60GHzにおける誘電率が、1.5であった。さらに、多孔質樹脂層4のショアD硬度H2は、47であった。
次いで、アクリル系接着剤からなり、厚み5μmの接着層5を、多孔質樹脂層4の一方面に形成した。
次いで、銅からなる厚み12.5μmの第2金属層6を、接着層5の厚み方向一方面に接着した。
これにより、第1金属層3、多孔質樹脂層4、接着層5および第2金属層6を備える積層材14を作製した。積層材14の厚みT0は、150μmであった。
別途、2つの第2保護材7を準備した。具体的には、各第2保護材7は、ポリエチレン(PE)からなり、厚みが50μmである。2つの第2保護材7の総厚みは、100μmである。なお、他方側の第2保護材7の他方面は、アクリル系粘着剤により粘着処理がされていた。第2保護材7のショアD硬度H1は、多孔質樹脂層4のショアD硬度H2(47)より小さく、具体的には、40であった。
その後、2つの第2保護材7を第2金属層6の厚み方向一方面に配置した。
これにより、図6に示すように、第1金属箔3と、多孔質樹脂層4と、接着層5と、第2金属層6と、第2保護材7とを厚み方向一方側に順に低誘電基板材1を製造した。
実施例2
第2保護材7の厚みT1を50μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、低誘電基板材1を製造した。具体的には、第2保護材7を1つにした。
実施例3
第2保護材7の材料をポリエチレンからポリエチレンテレフタレート(PET)に変更した以外は、実施例1と同様に処理した。
なお、第2保護材7のショアD硬度H1は、多孔質樹脂層4のショアD硬度H2より大きく、具体的には、78であった。
比較例1
第2保護材7の材料をポリエチレン(PE)からポリエチレンテレフタレート(PET)に変更した以外は、実施例2と同様に処理した。
<図6に対応する低誘電基板材の製造>
実施例4
低誘電基板材1の層構成を、図3の層構成、つまり、第1保護材2、多孔質樹脂層4および第2金属層6を厚み方向一方側に向かって順に備える低誘電基板材1に変更した以外は、実施例1と同様に処理した。
実施例5
低誘電基板材1の層構成を、図3の層構成、つまり、第1保護材2、多孔質樹脂層4および第2金属層6を厚み方向一方側に向かって順に備える低誘電基板材1に変更した以外は、実施例2と同様に処理した。
実施例6
低誘電基板材1の層構成を、図3の層構成、つまり、第1保護材2、多孔質樹脂層4および第2金属層6を厚み方向一方側に向かって順に備える低誘電基板材1に変更した以外は、実施例3と同様に処理した。
比較例2
低誘電基板材1の層構成を、図3の層構成、つまり、第1保護材2、多孔質樹脂層4および第2金属層6を厚み方向一方側に向かって順に備える低誘電基板材1に変更した以外は、比較例1と同様に処理した。
評価
下記の事項を評価した。その結果を表1〜表2に示す。
<硬度>
第2保護材7のショアD硬度H1、第1保護材2のショアD硬度H3、および、多孔質樹脂層4のショアD硬度H2のそれぞれは、ショアD硬度計((株)上島製作所製)を用いて算出した。
第2保護材7のショアD硬度H1を測定するときには、第2保護材7を、厚み3000μmとなるまで、厚み方向に複数枚重ねて積層体を作製し、この積層体において、幅方向に4等分する3点を測定し、その平均値をショアD硬度H1とした。
第1保護材2のショアD硬度H3を測定するときには、第1保護材2を、厚み3000μmとなるまで、厚み方向に複数枚重ねて積層体を作製し、この積層体において、幅方向に4等分する3点を測定し、その平均値をショアD硬度H1とした。
多孔質樹脂層4のショアD硬度H2の測定では、まず、低誘電基板材1から、多孔質樹脂層4のみを取り出した。具体的には、積層材14から第2金属層6、接着層5、第1金属層3などを剥離して、多孔質樹脂層4を得た。この多孔質樹脂層4を、厚み3000μmとなるまで、厚み方向に複数枚重ねて積層体を作製し、この積層体において、幅方向に4等分する3点を測定し、その平均値をショアD硬度H2とした。
<表面保護性>
低誘電基板材1の厚み方向一方面に、クーラントブルーフマイクロメータ((株)ミツトヨ製 MDC−25M)を用いて、10、15、20、30、40、50μmのひずみを与えた。解放後に一方面上の打痕の有無を目視にて確認、判断した。上記した複数の打痕のうち、小さい打痕から順に実施し、打痕がある(残る)ことを確認すれば、それを超える打痕での評価を実施しなかった。
Figure 2020049904
Figure 2020049904
1 低誘電基板材
2 第1保護材
4 多孔質樹脂シート
6 第2金属箔
7 第2保護材
14 積層材
H1 第2保護材のショアD硬度
H2 多孔質樹脂層のショアD硬度
H3 第1保護材のショアD硬度
T0 積層材の厚み
T1 第2保護材の厚み

Claims (3)

  1. 多孔質樹脂層および金属層を厚み方向に順に備え、
    前記多孔質樹脂層および前記金属層のいずれか一方の表面に配置される保護材をさらに備え、
    前記保護材の23℃のショアD硬度H1と、前記多孔質樹脂層の23℃のショアD硬度H2とが、下記式(1)を満足し、または、
    前記保護材の厚みT1と、前記多孔質樹脂層および前記金属層を備える積層材の厚みT0とが、下記式(2)を満足する
    ことを特徴とする、低誘電基板材。
    H1<H2 (1)
    T1>0.5×T0 (2)
  2. 前記式(1)および前記式(2)がいずれも満足されることを特徴とする、請求項1に記載の低誘電基板材。
  3. 前記多孔質樹脂層の空孔率が、60%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の低誘電基板材。
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