JP7305328B2 - 多孔質体の製造方法 - Google Patents
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Description
また、低誘電の樹脂多孔質体について、工業的に製造(具体的には、量産)する方法が確立しておらず、低コストで製造する方法が求められている。
前記多孔質体用前駆体のシートの間に、前記媒体の流路を提供する媒体流路用材が挟持され、ロール状に巻回されたロール状巻回体を用意する工程、及び
前記ロール状巻回体に、超臨界状態の前記媒体を流通させる工程
を具備し、
前記媒体流路用材が前記媒体を流通させる性能を示す、下記評価方法によるエタノール排出時間が900秒以下であることを特徴とする多孔質体の製造方法である。
・内径20mm、外径40mm、幅170mmの、前記媒体流路用材のロール状巻回体を準備する。
・準備した前記ロール状巻回体を直立させ、直立した前記ロール状巻回体の上部からエタノール60g、赤色浸透液10gの混合液を流し込む。
・前記混合液を流し込んでから、該混合液が直立した前記ロール状巻回体の底部まで到達するまでの時間を、前記エタノール排出時間として測定する。
0.1 ≦ d1/d2 ≦ 10 (1)
さらに、前記基材が金属箔であるのが望ましい。
そして、本発明の多孔質体の製造方法では、多孔質体用前駆体のシートの間に、上記評価方法によるエタノール排出時間が900秒以下である、媒体の流路を提供する媒体流路用材が挟持され、ロール状に巻回された形態のロール状巻回体を用いている。
多孔質体用前駆体のシートの間に、媒体流路用材が挟持されるような積層構造とする場合、例えば、図2Aに示すように、ポリイミド前駆体層などの多孔質体用前駆体のシート1(厚さ120μm)の一方の表面に、媒体流路用材2(厚さ240μm)を積層し、このようにして得られた積層体をロール状に巻回すればよい。あるいは、図2Bに示すように、多孔質体用前駆体のシート1(厚さ120μm)の一方の表面に、第1の媒体流路用材2(厚さ240μm)を積層し、さらに第2の媒体流路用材3(厚さ180μm)を積層し、このようにして得られた積層体をロール状に巻回してもよい。さらには、図2Cに示すように、多孔質体用前駆体のシート1(厚さ120μm)が銅箔などの基材4(厚さ12μm)の上に設けられ、多孔質体用前駆体のシート1の基材5が接していない方の表面に、媒体流路用材2(厚さ240μm)を積層し、このようにして得られた積層体をロール状に巻回してもよい。
そして、このようにして得られた積層体をロール状に巻回すには、例えば、図3に示すように、積層体4(幅500mm)を、積層体の幅と同程度の幅を有する巻芯5(外径85mm)の周りに、全体の直径が所定のサイズ(図では170mm)となるまで巻き回すようにすればよい。
本発明における多孔質体用前駆体シートは、多孔化前の樹脂シート(多孔質体用前駆体シート)であれば特に制限されないが、例えば、熱可塑性樹脂による多孔質体用前駆体シート、熱硬化性樹脂による多孔質体用前駆体シート(熱硬化性樹脂系多孔材用前駆体シート)などから適宜選択して用いることができる。本発明では、熱硬化性樹脂系多孔質体用前駆体シートを好適に用いることができる。この場合、熱硬化性樹脂は、未反応物、完全反応物(実質的に完全に反応が終了しているもの)、部分反応物(反応状態が未反応物と完全反応物との中間状態のもの)の何れであってもよいが、シート状への成形性や多孔化性などの観点より部分反応物が好適である。
ポリイミド多孔質体用前駆体シートは、ポリイミド樹脂組成物により形成することができる。このポリイミド樹脂組成物は、ポリイミド樹脂と、多孔化剤、核剤などを含有している。なお、このポリイミド樹脂組成物には、公知ないし慣用の添加剤が含まれていても良く、たとえば、可塑剤、紫外線吸収剤、滑剤、着色剤、滑剤、酸化防止剤、充填剤、補強剤、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。また、ポリイミド系樹脂組成物には、ポリイミド系樹脂以外の樹脂が、本発明の目的等を阻害しない範囲で1種又は2種以上含まれていても良く、例えば、上記熱可塑性樹脂や上記熱硬化性樹脂などを用いることができる。
ポリイミド多孔質体用前駆体シートに関するポリイミド樹脂としては、公知ないし慣用のポリイミド樹脂を用いることができる。このようなポリイミド樹脂は、多価カルボン酸又はその無水物と、多価アミン系化合物との反応物であり、部分反応物であるポリイミド前駆体を利用することもできる。
多孔化剤としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール;前記ポリアルキレングリコールの末端封鎖物(片末端封鎖物、両末端封鎖物、両方の末端が異なる基により封鎖されている封鎖物の何れであってもよく、例えば、片末端もしくは両末端アルキル封鎖物、片末端もしくは両末端アリール封鎖物、片末端もしくは両末端(メタ)アクリレート封鎖物などの他、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールの一方の末端がアルキル基又はアリール基で封鎖され、他方の末端が(メタ)アクリレートで封鎖されている化合物など);ウレタンプレポリマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールポリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系化合物などが挙げられる。これらは、その一種で又は複数を同時に選択してもよい。
核剤としては、公知ないし慣用の核剤から適宜選択して用いることができるが、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用することにより、独泡構造を有する多孔質体を有効に得ることができる。
ポリイミド系樹脂組成物としては、ポリイミド系樹脂(特にポリイミド樹脂)と、多孔化剤や核剤などとを混合して得ることができる。
前記ポリイミド前駆体の弾性率(引張弾性率)は、好ましくは1.5GPa~6.0GPaであり、より好ましくは1.7~6.0GPaであり、さらに好ましくは1.7~5.5GPaである。ポリイミド前駆体の弾性率が6.0GPaを超える場合、ポリイミド多孔質体が反る傾向がある。
ポリイミド多孔質体用前駆体シートは、ポリイミド系樹脂組成物を、基材上に塗布し、必要に応じて乾燥等することにより得ることができる。ポリイミド系樹脂組成物は、上述のように、ポリイミド系樹脂(特にポリイミド樹脂)と、多孔化剤や核剤などとを混合して得ることができる。この混合方法としては、特に制限されず、有機溶媒に、各種成分を別々に又は同時に投入する方法などが利用できる。また、混合する際には、各成分を一括に投入してもよく、徐々に又は分割して投入してもよい。この際、有機溶媒といては、多価カルボン酸又はその無水物や、多価アミン系化合物を溶解させることができるもの(上述のN-メチル-2-ピロリドンなど)を好適に用いることができる。このような有機溶媒に混合する場合は、有機溶媒は、後の工程(ポリイミド系樹脂の熱硬化工程など)で除去することができる。
本発明における媒体流路用材は、具体的には下記のように実施することのできる評価方法によるエタノール排出時間が900秒以下である。
図4Aを参照して、幅170mmに調整した媒体流路用材12を、直径20mmの巻芯11(幅170mm、内部に空洞なし)に、全体の直径が40mmになるように巻回し、さらにその外面側に、幅が170mmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルム13を巻回させて、全体の直径が50mmとなるようにして、媒体流路用材12のロール状巻回体を得る。この媒体流路用材12のロール状巻回体を、直径50mmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルム製の筒14(高さ250mm)に、当該筒14の下面側と、媒体流路用材12のロール状巻回体の下面側とが一致するように入れる。なお、この形態では、筒14の内面と媒体流路用材12のロール状巻回体の外面との間に隙間は無い。媒体流路用材12のロール状巻回体を入れた筒14は、圧力が高まらないように底部が開放状態となっており、媒体流路用材12のロール状巻回体の下面が、筒14の底面から上30cmの位置になるように調整する。
次いで、媒体流路用材12のロール状巻回体を入れた筒14を、媒体流路用材12のロール状巻回体が無い方を上側にして直立させる。その後、エタノール60g、染色浸透液10gの混合液15を、上側(筒の開放端側)から筒内に一括して流し込む。
染色浸透液としては、太陽物産(株)製NRC-ALII(JIS Z 2343適合)を用いることができる。なお、染色浸透液としては、上記商品が入手困難な場合は、JIS Z 2343「非破壊試験-浸透探傷試験」に適合した他の商品の染色浸透液を使用してもよい。
本願では、媒体流路用材の液体の浸透性が高いほど、多孔化剤の抽出効率が高くなり、特に、ポリイミド前駆体層側の媒体流路用材の液体の浸透性が高いと、更に多孔化剤の抽出効率が高くなることを見出している。この理由は、媒体流路用材の液体の浸透性が高いと、超臨界二酸化炭素が媒体流路用材中を流れる速度が高くなり、より一層効率良く、ポリイミド前駆体層内の多孔化剤を抽出できるためであると考えられる。従って、前期評価方法で液体の浸透性が高い媒体流路用材を特定することで、多孔化剤の抽出効率向上に寄与する媒体流路用材を特定することができ、本願の課題の解決に寄与する。
本発明で使用する媒体流路用材のエタノール排出時間は、60秒以下であるのが望ましい。
本発明におけるロール状巻回体は、多孔質体用前駆体シートと、上記評価方法によるエタノール排出時間が900秒以下である媒体流路用材とがロール状に巻回された形態である。この際、ロール状に巻回するため、媒体流路用材は、薄層状の形態を有していることが重要である。
本発明では、上記ロール状巻回体を、いわゆる「超臨界抽出装置」に導入し、超臨界状態の媒体を超臨界抽出装置に導入し、多孔化剤等を超臨界状態の媒体により抽出し、空隙部が形成されたロール状巻回体(空隙部形成ロール状巻回体)を得て、この空隙部形成ロール状巻回体をイミド化することにより、多孔質体を得ることができる。
前記多孔質体の厚み方向の一方又は両方の面に金属箔を配置することで、金属箔積層体を得ることができる。
本発明の多孔質体の製造方法により得られた多孔質体や金属箔積層体は、多孔質体の誘電率を低くすることができるため、低誘電基板や、低誘電基板を含む金属箔積層体として好適に用いられる。具体的には、金属箔積層体は、半導体装置や電子部品などに好適に用いられる。従って、多孔質体は、半導体装置や電子部品などの基板(特に低誘電基板)として好適に用いられる。
撹拌機および温度計を備えた1000mlのフラスコに、p-フェニレンジアミン(PDA)43.2 gおよびジアミノジフェニルエーテル(DPE)20gをいれ、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)768.8gを加えて撹拌し、溶解させた。次いで、この溶液にビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)147gを徐々に添加し、40℃にて2時間撹拌し、反応促進した。さらに75℃にて12時間撹拌し、エージング処理を行い、固形分濃度20wt%のポリイミド前駆体溶液を得た。このポリイミド前駆体の組成は物質量比でPDA:DPE:BPDA=0.8mol:0.2mol:1molである。
各実施例や各比較例では、媒体流路用材として、表1に示すものを用いた。
なお、連続孔材Aや連続孔材Bとしては、下記を用いた。
連続孔材A:ポリエステルメッシュ KBセーレン株式会社製
(厚さ:240μm、二酸化炭素の溶解性S(温度:200℃、圧力:30MPa):0.06)
連続孔材B:商品名「サンマップ」日東電工社製
(厚さ:180μm、二酸化炭素の溶解性S(温度:200℃、圧力:30MPa):0.17)
幅170mmに調整した媒体流路用材1~4を直径20mmの巻芯(幅170mm、内部に空洞なし)に、全体の直径が40mmになるように巻回し、さらにその外面側に、幅が170mmのポリエチレンテレフタレートフィルムを巻回させて、全体の直径が50mmとなるようにして、媒体流路用材のロール状巻回体を得た。この媒体流路用材のロール状巻回体を、直径50mmのポリエチレンテレフタレートフィルム製の透明な筒(高さ250mm)に、当該筒の下面側と、媒体流路用材のロール状巻回体の下面側とが一致するように入れた。なお、この形態では、筒内面と媒体流路用材のロール状巻回体の外面との間の隙間が無い。媒体流路用材のロール状巻回体を入れた筒では、圧力が高まらないように底部は開放状態となっている。
上記にて作製した多孔質体用前駆体シートのポリイミド前駆体層側の面に、表1に示す媒体流路用材1を、ポリイミド前駆体層と連続孔体Aの一方の面とが接触する形態で重ね合わせて、媒体流路用材1が内側となる形態で、巻芯(外径:85mm)に巻回させて、ロール巻回体を得た。
前記積層ロール巻回体から連続孔体Aを除去したものを、真空下、380℃で2時間熱処理し、残存成分の除去およびイミド化を促進することで、ポリイミド多孔フィルムと銅箔の積層フィルムを得た。
実施例2~4では、実施例1の媒体流路用材1に代えて、表1に示す媒体流路用材2~4をそれぞれ用いること以外は、実施例1と同様にして、ロール巻回体を得た。
得られたロール巻回体を用いて、実施例1と同様にして、超臨界状態の二酸化炭素を用いて多孔化剤であるポリオキシエチレンジメチルエーテルを抽出し、多孔質体を作製した。
<比較例1>
比較例1では、実施例1の媒体流路用材1を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ロール巻回体を得た。
<比較例2>
比較例1では、実施例1の媒体流路用材1の代わりにポリエチレンテレフタレート製フィルム(厚み:240μm;非多孔質体)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ロール巻回体を得た。
実施例1~4における多孔化剤であるポリオキシエチレンジメチルエーテルの抽出除去工程において、ポリオキシエチレンジメチルエーテルの残存率が20%となるまでの、超臨界二酸化炭素の透過時間を測定した。結果を表2に示す。なお、ポリオキシエチレンジメチルエーテルの残存率は以下の通り算出した。
=(1-多孔化剤抽出量(g)/多孔化剤仕込量(g))×100
一方、比較例1においては、多孔質体用前駆体シートのポリイミド前駆体層側の面が、巻回により重ね合わされた銅箔層の面と密着し、巻回体中の超臨界二酸化炭素の流路がなく、超臨界状態の二酸化炭素を用いた多孔化剤の抽出を実施すること自体が不能であった。
同様に、比較例2においては、多孔質体用前駆体シートのポリイミド前駆体層側の面に、ポリエチレンテレフタレート製フィルムが密着しており、巻回体中の超臨界二酸化炭素の流路がなく、超臨界状態の二酸化炭素を用いた多孔化剤の抽出を実施すること自体が不能であった。
実施例5、6では、実施例1の媒体用流路用材1に代えて、表3に示す媒体流路用材5、6をそれぞれ用いること以外は、実施例1と同様にして、ロール巻回体を得た。
得られたロール巻回体を用いて、実施例1と同様にして、超臨界状態の二酸化炭素を用いて多孔化剤であるポリオキシエチレンジメチルエーテルを抽出し、多孔質体を作製した。
その際、実施例1と同様に、多孔化剤であるポリオキシエチレンジメチルエーテルの抽出除去工程において、ポリオキシエチレンジメチルエーテルの残存率が20%となるまでの、超臨界二酸化炭素の透過時間を測定した。結果を表3に示す。
2 (第1の)媒体流路用材
3 第2の媒体流路用材
4 基材
11 巻芯
12 媒体流路用材
13 ポリエチレンテレフタレートフィルム
14 筒
15 混合液
Claims (4)
- 多孔化剤を含む多孔質体用前駆体から、超臨界状態の媒体を用いて前記多孔化剤を抽出する、多孔質体の製造方法であって、
前記多孔質体用前駆体のシートが基材の上に設けられており、前記基材が金属箔であり、
前記多孔質体用前駆体のシートの間に、前記媒体の流路を提供する媒体流路用材が挟持され、ロール状に巻回されたロール状巻回体を用意する工程、及び
前記ロール状巻回体に、超臨界状態の前記媒体を流通させる工程
を具備し、
前記媒体流路用材が前記媒体を流通させる性能を示す、多孔質体の製造方法。 - 前記媒体流路用材の厚みが400μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の多孔質体の製造方法。
- 前記媒体流路用材の厚みd1と、前記多孔質体用前駆体のシートの厚みd2とが下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1又2に記載の多孔質体の製造方法。
0.1 ≦ d1/d2 ≦ 10 (1) - 前記媒体流路用材に対する二酸化炭素の溶解性S(温度:200℃、圧力:30MPa)が下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の多孔質体の製造方法。
S ≦ 0.3 (2)
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