JP2009007439A - 撥液性を有する通気膜の製造方法と撥液性を有する通気膜ならびに通気部材 - Google Patents

撥液性を有する通気膜の製造方法と撥液性を有する通気膜ならびに通気部材 Download PDF

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Abstract

【課題】撥液処理されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜を備える、撥液性を有する通気膜の製造方法であって、従来よりバリア性に優れる通気膜を製造できるとともに、その製造にあたって撥液剤に用いる溶媒の使用量を低減できる製造方法を提供する。
【解決手段】処理容器内に収容した状態で、撥液剤を含む、超臨界または亜臨界状態の二酸化炭素により、PTFE多孔質膜を撥液処理する工程を含み、PTFE多孔質膜を処理容器に収容し、当該容器内を減圧した後に、上記工程に用いる二酸化炭素の処理容器への導入を行う方法とする。
【選択図】図1C

Description

本発明は、撥液性を有する通気膜の製造方法と、この方法により得た撥液性を有する通気膜とに関する。本発明は、また、筐体の開口部に配置され、筐体の内部と外部との通気性を確保しながら、筐体内部への異物の侵入を抑制する通気部材に関する。
近年、ヘッドランプ、ECU(Electronic Control Unit)などに代表される車両用電装機器、あるいは、携帯電話などの携帯デバイスの筐体に、筐体内部への水、油、塵芥などの異物の侵入を抑制しながら筐体の内外の通気を確保できる通気膜を配置することが広く行われている。通気膜の配置により、例えば、筐体内部への異物の侵入を抑制しながら、筐体の内外で生じる圧力差を軽減できたり、筐体の内部と外部との間で音声を伝達できたりする。このような通気膜の一種に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜があり、PTFE多孔質膜を通気膜として筐体の開口部に配置する技術が特許文献1に開示されている。
通気膜の異物に対するバリア性を向上させるために、特許文献1に記載があるように、PTFE多孔質膜を撥液処理(撥水処理および/または撥油処理)してもよい。撥液処理により、通気膜の撥液性が向上するとともに、通気膜の表面に塵芥などの固形物も付着しにくくなる。PTFE多孔質膜を撥液処理する従来の方法としては、撥液剤を多孔質膜に塗布する方法、あるいは、多孔質膜を撥液剤に浸漬した後に乾燥させる方法、が一般的である。これらの方法は、例えば、特許文献2に開示されている。
特開2001−168543号公報 特開2005−253711号公報
通気膜の撥液性を向上させるためには、PTFE多孔質膜の厚さ方向を含む全体にわたって、できるだけ均一に撥液処理することが望まれる。また、通気膜の通気性を確保するためには、撥液剤により多孔質膜の細孔をできるだけ目詰まりさせないことが望ましい。
しかし、PTFE多孔質膜に撥液剤を塗布する方法では、当該膜自体がある程度の撥液性を有しているため、撥液剤が膜の内部に浸透しづらく、特にその厚さ方向に均一に撥液処理することが難しい。また、撥液剤に含まれる撥液成分、とりわけ、撥液性に優れるとされるフッ素系樹脂の粘度は一般に高く、撥液剤の塗布によって多孔質膜の目詰まりが生じやすい。撥液剤を溶媒で希釈する(撥液成分を希釈する、ともいえる)ことで目詰まりを抑制できるが、十分な撥液性を有するPTFE多孔質膜とするためには、その希釈の程度に限界がある。
一方、撥液剤にPTFE多孔質膜を浸漬する方法では、上記塗布の方法に比べて、より均一な撥液処理が可能である。しかし、この方法では、多孔質膜の浸漬に適した状態に撥液剤を希釈するために大量の溶媒が必要であり、特に、撥液成分がフッ素系樹脂である場合、当該成分を希釈するためにフッ素系の溶媒が必要となることから、生産コストが増大する。また、浸漬後の膜を乾燥する際に、溶媒が空気中に大量に放出されるために、環境への負荷が大きい。
そこで本発明は、撥液処理されたPTFE多孔質膜を備える、撥液性を有する通気膜の製造方法であって、PTFE多孔質膜を従来の方法よりも均一に撥液処理できる、即ち、従来よりバリア性(特に撥液性)に優れる通気膜を製造できる、とともに、その製造にあたって、撥液剤を希釈するために用いる溶媒の使用量を低減できる製造方法の提供を目的とする。
本発明の製造方法は、撥液処理されたPTFE多孔質膜を備える、撥液性を有する通気膜の製造方法であって、処理容器内に収容した状態で、撥液剤を含む、超臨界または亜臨界状態の二酸化炭素により、PTFE多孔質膜を撥液処理する工程を含み、PTFE多孔質膜を前記処理容器に収容し、当該容器内を減圧した後に、前記工程に用いる二酸化炭素の前記処理容器への導入を行う、ことを特徴とする。
本発明の通気部材は、筐体の開口部に配置された状態で、前記開口部を通過する気体が透過する通気膜と、前記通気膜を支持する支持体とを備え、前記通気膜が、上記本発明の撥水性を有する通気膜である。
本発明の方法では、PTFE多孔質膜の細孔に対する浸透性に優れる超臨界または亜臨界状態の二酸化炭素を撥液剤のキャリアとして用い、処理容器中において、当該多孔質膜の撥液処理を実施している。また、二酸化炭素を処理容器へ導入する前に、PTFE多孔質膜を処理容器に収容した状態で当該容器を減圧し、PTFE多孔質膜の細孔内に存在する空気を予め除去しておくことで、超臨界または亜臨界状態の二酸化炭素がよりスムーズに細孔内に浸透できるようにしている。このため、本発明の方法では、撥液処理をPTFE多孔質膜の全体にわたって均一に行うことができ、従来よりバリア性(特に撥液性)に優れる通気膜を製造できる。
また、超臨界または亜臨界状態の二酸化炭素は、撥液成分、特にフッ素系樹脂の撥液成分、に対する親和性が高く、当該成分の溶解能に優れるため、撥液剤を希釈する(撥液成分を希釈する)溶媒の使用量を低減できる。
図1A〜図1Dに、本発明の製造方法の一例を示す。
最初に、図1Aに示すように、PTFE多孔質膜の巻回体1と撥液剤2とを耐圧容器3の内部に収容し、容器3を密閉する(ステップ1)。
巻回体1の中心には円筒状の芯材4が配置されており、PTFE多孔質膜は芯材4の周囲に巻回されている。芯材4には、当該芯材の内周面と外周面との間を二酸化炭素が流通可能な貫通孔5が設けられている。
巻回体1は、容器3の内部に設置された支持台6により、容器3の底部から離間して収容されている。巻回体1をこのように収容することで、超臨界または亜臨界状態の二酸化炭素が容器3内に導入される前の時点における、容器3内の底部の液溜まりに滞留する撥液剤2と巻回体1との直接の接触を抑制でき、PTFE多孔質膜の目詰まりを抑制できる。即ち、本発明の製造方法では、撥液剤をPTFE多孔質膜と接触しないように処理容器内に配置した状態で、二酸化炭素を処理容器内に導入してもよい。また、図1Aに示すように、容器3内において超臨界または亜臨界状態の二酸化炭素を流動させるための攪拌翼8を、容器3の底部に配置すると、撥液処理に用いる二酸化炭素の量を低減できる。
攪拌翼8は、巻回体1の芯材4の中心を通るシャフト7に接続されており、シャフト7は、容器3の上蓋3aを貫通して、容器3の外部に配置された駆動装置9に接続されている。上蓋3aにおけるシャフト7が貫通する部分は、容器3内部の気密を保持できる構造を有する。シャフト7と駆動装置9とは着脱自在であり、図1Aに示すように、芯材4の中心にシャフト7を通した状態で、巻回体1を容器3内に収容できる。
容器3の底部には、二酸化炭素を容器3に導入する配管L1が接続されており、配管L1は、バルブV1を介して圧縮ポンプP1に接続されている。圧縮ポンプP1は、図示を省略する二酸化炭素供給源(例えば、二酸化炭素ボンベ)から二酸化炭素の供給を受け、容器3内に二酸化炭素を圧送する。容器3の側面には、容器3内から二酸化炭素を排出する配管L2が接続されており、配管L2は、バルブV2を介してその末端が開放されている。同じく容器3の側面には、容器3の内部を真空に引くための配管L3が接続されており、配管L3は、バルブV3を介して真空ポンプP2に接続されている。
次に、図1Bに示すように、バルブV1、V2を閉に保持したままバルブV3を開として真空ポンプP3を駆動し、容器3の内部を減圧して、巻回体1におけるPTFE多孔質膜間の空隙、ならびに、PTFE多孔質膜の細孔内に存在する空気を排出する(ステップ2)。
次に、図1Cに示すように、バルブV3を閉とした後、圧縮ポンプP1を駆動してバルブV1を開き、容器3内に二酸化炭素を導入する。次に、容器3内の圧力および温度を調整して、導入した二酸化炭素が超臨界または亜臨界状態を維持するようにしながら、攪拌翼8を駆動装置9により回転させて、二酸化炭素の超臨界または亜臨界流体(以下、単に「二酸化炭素の流体」ともいう)10を、容器3内を流動させる(ステップ3)。
二酸化炭素が超臨界または亜臨界流体となると、容器3の底部に滞留していた撥液剤2は当該流体中に溶解し、当該流体をキャリアとして容器3の内部を流動し、PTFE多孔質膜の細孔中に浸透する。このようにして、PTFE多孔質膜の撥液処理を行うことができる。バルブV1は、容器3内の状態に応じて、圧縮ポンプP1の駆動と合わせて適宜開閉すればよい。また、必要に応じて、バルブV2を開閉することにより容器3内の圧力を調整してもよい。なお、巻回体1の芯材4には貫通孔5が設けられているので、上記流体および撥液剤2の一部は、貫通孔5を通って容器3内を流動し、例えば、巻回体1の中心部からもPTFE多孔質膜の細孔中に浸透する。
容器3内の温度は、例えば、容器3の温度自体を、ヒーターなどを用いた加熱機構および/または水やブラインなどの冷媒を用いた冷却機構により変化させることで調整できる。このため、容器3は、ある程度以上の熱伝導性を有するとともに耐圧力性にも優れるステンレスなどの金属からなることが好ましい。
撥液処理が完了したと判断すれば、図1Dに示すように、攪拌翼8の回転を停止し、バルブV2を開放し、配管L2から二酸化炭素を排出して、容器3内を大気圧に戻す(ステップ4)。
ステップ1において処理容器である圧力容器3内にPTFE多孔質膜を収容する方法は、ステップ2においてPTFE多孔質膜の細孔内の空気を排出でき、ステップ3において撥液剤を含む二酸化炭素の流体をPTFE多孔質膜と接触させることができる限り、図1Aに示す例に特に限定されない。
容器3に収容するPTFE多孔質膜の形状は特に限定されないが、図1Aに示すように巻回体とした場合、同じ面積の多孔質膜で比較したときに撥液処理時の容積を小さくすることができる。このため、例えば、容器3を小型化でき、撥液処理時に必要な二酸化炭素および撥液剤の量を削減できるなど、撥液処理の効率を向上できる。
換言すれば、本発明の製造方法では、撥液処理するPTFE多孔質膜の構成は特に限定されず、例えば、PTFE多孔質膜の巻回体に対して撥液処理を実施してもよく、この場合、撥液処理の効率を向上できる。
PTFE多孔質膜の巻回体に対して撥液処理を実施する場合、当該巻回体の構成は特に限定されず、例えば、図1Aに示すように、芯材4の周囲にPTFE多孔質膜を巻回した巻回体1であってもよい。巻回体1のハンドリングが容易となる。
芯材の構成は特に限定されないが、図1Aに示すように、当該芯材の外周面と内周面との間を二酸化炭素が流通可能な貫通孔5が設けられていることが好ましい。ステップ3において、撥液剤を含む二酸化炭素の流体10を芯材の中空部を介して巻回体1に供給、または、巻回体1から排出でき、撥液処理の効率を向上できる。
本発明の製造方法では、通気性支持材を積層したPTFE多孔質膜に対して、撥液処理を実施してもよい。PTFE多孔質膜を通気膜として用いる場合、多孔質膜の通気性を損なうことなく当該膜を補強する通気性支持材が積層されることがある。しかし、PTFE多孔質膜に通気性支持材を積層した状態では、撥液剤の塗布によるPTFE多孔質膜の撥水処理は難しく、また、含浸による撥水処理では通気性支持材中に撥液剤が滞留することでPTFE多孔質膜の目詰まりが発生しやすい。これに対して本発明の製造方法では、PTFE多孔質膜と通気性支持材との積層体に対しても、PTFE多孔質膜の全体にわたって撥液処理を均一に行うことができ、また、撥液処理によるPTFE多孔質膜の目詰まりも抑制できる。
撥液処理するPTFE多孔質膜の構成は特に限定されず、典型的には、微細なフィブリル構造を有し、フィブリル間の空隙を細孔とする延伸PTFE多孔体である。このような多孔体は、延伸法および抽出法など、一般的な多孔体形成法により得ることができる。
PTFE多孔質膜の空孔率は、通気膜としたときの通気性の観点から、例えば、10〜99体積%の範囲であり、50〜99体積%の範囲が好ましく、80〜99体積%の範囲がさらに好ましい。空孔率は、多孔質膜の比重を測定することにより求めることができる。
PTFE多孔質膜の平均孔径は、通気膜としたときのバリア性および通気性の観点から、例えば、0.01〜10μmの範囲である。PTFE多孔質膜の厚さは、例えば、0.05〜2mm程度の範囲である。
PTFE多孔質膜に積層する通気性支持材の材料や構造などは特に限定されないが、PTFE多孔質膜よりも通気性に優れることが好ましい。通気性支持材には、例えば、織布、不織布、メッシュ、ネット、スポンジ、フォーム、多孔体などを用いればよい。通気性支持材の材料には樹脂や金属を用いればよく、任意の選択が可能である。なお、PTFE多孔質膜と通気性支持材とを積層する際には、例えば、熱ラミネート、加熱溶着、超音波溶着などの各種の接合手法を用いればよい。
撥液剤には、市販の各種の撥水処理剤および撥油処理剤を用いることができ、例えば、撥液成分として、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂および長鎖アルキル系樹脂(ここで、「長鎖」とは、例えば、炭素数18〜22程度の範囲をいい、長鎖アルキル系樹脂の具体例としては、例えば、長鎖アルキルアクリレート共重合体、長鎖アルキルカルバメート共重合体、長鎖アルキルビニルエステル共重合体、長鎖アルキルアクリルアミド共重合体などが挙げられる)から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む撥液剤が撥液性(撥水性および/または撥油性)に優れている。特に、フッ素系樹脂を含む撥液剤の撥液性が高く、また、二酸化炭素流体への溶解度が高いため、好ましい。
シリコーン系樹脂を含む市販の撥液剤としては、例えば、信越化学工業社製KP−801Mなどがあり、フッ素系樹脂を含む市販の撥液剤としては、例えば、ダイキン工業社製ユニダイン、信越化学工業社製X−70−029B、セイミケミカル社製エスエフコートなどがある。
撥液剤は、必ずしもステップ1で容器3の内部に収容しなくてもよく、ステップ3までの任意の時点で容器3の内部に導入すればよい。例えば、ステップ2において容器3内を減圧する前または後、あるいは、ステップ3において容器3内に二酸化炭素を導入するとともに撥液剤を導入してもよいし、撥液剤が溶解した二酸化炭素の流体を容器3内に導入してもよい。
上記市販の撥液剤を用いる場合、当該撥液剤を希釈することなく容器3の内部に収容してもよいし、必要に応じて、例えば、ハンドリング性を向上させるために、撥液剤を溶媒により希釈した後に容器3の内部に収容してもよい。
ステップ2では容器3の内部を減圧するが、減圧の程度は特に限定されない。PTFE多孔質膜の細孔内に存在する空気の排出をより促進するためには、容器3の内部を真空に引く、例えば、容器3内部の圧力を10kPa程度以下とする、ことが好ましい。
ステップ3では、容器3内に二酸化炭素を導入し、導入した二酸化炭素を超臨界または亜臨界状態として、容器3内を流動させる。容器3内に二酸化炭素を導入する際には、予め超臨界または亜臨界とした二酸化炭素の流体を導入してもよいし、気体の二酸化炭素を導入した後、容器3内の温度および圧力を制御して、容器3内において二酸化炭素の超臨界または亜臨界状態を実現してもよい。
なお、超臨界流体とは、臨界温度および臨界圧力(二酸化炭素では、それぞれ31.1℃および7.2MPa)を超えた温度および圧力下での流動体であり、非凝縮性高密度流体である。この状態は気相および液相のどちらに属するともいえない状態であり、密度は液体と同程度であるにもかかわらず、気体と同程度の運動性を有する。超臨界流体は、わずかな圧力の変化で大きな密度変化を起こす他、粘度が低く、高い拡散性、溶解性を有するため、PTFE多孔質膜の撥液処理に好適である。
また、亜臨界状態とは、温度および/または圧力が臨界を超えていないが、超臨界状態と似た特性を示す状態であり、二酸化炭素では、およそ温度にして25〜30℃、圧力にして5.4〜30MPa程度の範囲をいう。
このように、超臨界および亜臨界状態の二酸化炭素流体は、それ自身で高い運動性を有するため、例えば、図1A〜図1Dに示した攪拌翼8のような二酸化炭素の流体を積極的に流動させる機構は省略可能であるが、効率的な撥液処理を実施するためには、当該機構による二酸化炭素流体の積極的な流動を利用して、PTFE多孔質膜を撥液処理することが好ましい。
ステップ3において容器3内の温度は、10〜80℃程度に保持することが好ましい。容器3内の温度、即ち、二酸化炭素の超臨界または亜臨界流体の温度が過度に高くなると、当該流体における撥液剤の溶解性が低下し、撥液処理が困難になることがある。一方、当該温度が過度に低くなると、撥液処理に長時間を要するようになる。
ステップ4では容器3内を大気圧に戻すが、超臨界または亜臨界状態の二酸化炭素が通常の気体に戻ると、二酸化炭素中に溶解していた撥液剤と二酸化炭素が分離する。このため、容器3から排出された二酸化炭素から、コールドトラップなどの手法により、撥液剤を回収することができる。
本発明の製造方法では、ステップ3において、撥液剤以外の物質をさらに含む二酸化炭素の超臨界または亜臨界流体を流動させてもよい。このような物質としては、例えば、少量のフルオロカーボン類などが挙げられる。当該物質は、撥液剤と同様、ステップ3までの任意の時点で容器3の内部に導入すればよい。
図1A〜図1Dに示す装置は、本発明の製造方法を実施できる装置の一例であり、その他の装置によっても本発明の方法の実施は可能である。
撥液処理後のPTFE多孔質膜は、そのまま通気膜とすることができる。PTFE多孔質膜と通気性支持材との積層体に対して撥液処理する場合も同様に、撥液処理後の積層体をそのまま通気膜とすることができる。PTFE多孔質膜を単独で撥液処理する場合、撥液処理後に、当該多孔質膜と通気性支持材とを積層し、通気膜としてもよい。即ち、本発明の製造方法では、上述した工程により撥液処理されたPTFE多孔質膜と、通気性支持材とを積層する工程をさらに含んでいてもよい。より強度に優れる通気膜とすることができる。
撥液処理後のPTFE多孔質膜と通気性支持材とを積層するためには、例えば、接着剤ラミネート、熱ラミネート、超音波溶着、熱溶着などの手法を用いればよい。
本発明の製造方法では、上述した工程により撥液処理されたPTFE多孔質膜と、上記通気性支持材以外の層とを積層してもよい。
このようにして得られた通気膜は、例えば、そのまま筐体の開口部に、当該開口部を覆うように配置して用いてもよい。また例えば、通気膜を支持する支持体とともに通気部材を形成して、当該通気部材を筐体の開口部に配置して用いてもよい。図2に、このような本発明の通気部材の一例を示す。
図2に示す通気部材51は、端面に本発明の製造方法により得た通気膜52が配置された筒状の支持体53と、通気膜52を覆うように支持体53に嵌装された有底の保護カバー54とを備える。通気部材51は、筐体55の開口部56を覆うように筐体55に固定されている。筐体55の開口部56を通過する気体は、通気膜52を透過して筐体55の内外を流通する。また、通気膜52によって、筐体55の内部への水、油、塵芥などの異物の侵入が抑制される。保護カバー54は、砂、小石などの大きな異物の衝突による通気膜52の破損を抑制する。
通気部材51は、通気性およびバリア性(特に撥液性)に優れる。
支持体53は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの樹脂類や金属などを用いて形成できる。
支持体53と通気膜52とは、例えば、熱溶着、超音波溶着などの手法により、互いに固着すればよい。
本発明の通気部材の構成は、本発明の通気膜と、当該通気膜を支持する支持体とを備える限り特に限定されない。例えば、保護カバー54は、必要に応じて備えていればよい。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
実施例1では、基本的に図1A〜図1Dに示す方法に従い、撥水処理されたPTFE多孔質膜を備える通気膜を作製した。
最初に、PTFE多孔質膜(日東電工社製、テミッシュNTF、空孔率80%、平均孔径3μm、厚さ80μm、幅100mm)と、通気性支持材としてポリエステル不織布(東レ社製、アクスターG−2070−1、厚さ0.15μm、幅100mm)とを熱ラミネートして積層体とした。
次に、形成した積層体を、外径27mmφ、長さ100mmの円筒状のステンレス製中空芯に長さにして8m巻き付け、上記積層体の巻回体とした。なお、中空芯には、径が8mmφの貫通孔が、隣り合う貫通孔同士の中心間距離を10mmとして、無数に設けられているものを用いた。
次に、内容積が約500mlの高圧容器3中に、撥液剤として、フッ素化アクリレート樹脂を撥液成分として含む信越化学工業社製X−70−029Bを120g投入した。次に、上記のように形成した巻回体を、攪拌翼8が接続されたシャフト7を中空芯に通した状態で、攪拌翼8を下にして、当該巻回体と容器の底部の液溜まりに溜まった撥液剤とが接触しないように容器3内に収容し、容器3を密閉した。
次に、容器3に接続された配管L3上のバルブV3を開け、オイル循環式の真空ポンプP3を駆動して、容器3の内部を圧力が10kPa以下となるまで減圧した。
次に、バルブV3を閉じ、配管L1上のバルブV1を開けて、容器3の底部より圧力28MPa、温度40℃の超臨界状態にある二酸化炭素を導入した。二酸化炭素は、容器3の内部の圧力および温度が当該圧力および温度になるまで導入し続けた。容器3の内部の圧力および温度が、それぞれ28MPaおよび40℃になった時点で、バルブV1を閉め、攪拌翼8を駆動装置9により回転させて、容器3内に二酸化炭素の超臨界流体を循環させて、そのまま1時間保持した。なお、容器3の内部の温度は、熱電対により測定した。
1時間保持した後、攪拌翼8の回転を止め、バルブV2を開放し、容器3から二酸化炭素を放出させ、容器3内の圧力を一気に大気圧まで減圧した後、容器3から巻回体を取り出し、撥液処理されたPTFE多孔質膜を備える通気性支持材との積層体を得た。
得られた積層体の表面に、常温においてn−ドデカン(C126)を滴下したところ、積層体のいずれの部分においても、膜の内部にn−ドデカンが浸透することはなかった。
(実施例2)
巻回する積層体の長さを8mから12mに変更した以外は実施例1と同様にして、撥液処理されたPTFE多孔質膜を備える通気性支持材との積層体を得た。
得られた積層体の表面に、常温においてn−ドデカンを滴下したところ、積層体のいずれの部分においても、膜の内部にn−ドデカンが浸透することはなかった。
(実施例3)
容器3内に二酸化炭素の超臨界流体を循環させる時間を1時間から2時間に変更した以外は実施例1と同様にして、撥液処理されたPTFE多孔質膜を備える通気性支持材との積層体を得た。
得られた積層体の表面に、常温においてn−ドデカンを滴下したところ、積層体のいずれの部分においても、膜の内部にn−ドデカンが浸透することはなかった。
(比較例1)
容器3内の圧力を減圧して空気を排出することなく、容器3内に圧力28MPa、温度40℃の超臨界状態にある二酸化炭素を導入した以外は実施例1と同様にして、撥液処理されたPTFE多孔質膜を備える通気性支持材との積層体を得た。二酸化炭素の超臨界流体を循環させる時間は2時間とした。
得られた積層体の表面に、常温においてn−ドデカンを滴下したところ、膜の内部にn−ドデカンが浸透する部分が点在していた。
(従来例)
最初に、実施例1と同様にして、PTFE多孔質膜と通気性支持材との積層体を形成した。
次に、形成した積層体を、撥液剤(信越化学工業社製、X−70−029B)をフッ素系溶媒(住友スリーエム社製、フロリナートFC−726)に溶解して調製した処理液(撥液剤濃度1.0重量%)に浸漬した後、90℃で15分間乾燥して、撥液処理されたPTFE多孔質膜を備える通気性支持材との積層体を得た。
得られた積層体の表面に、常温においてn−ドデカンを滴下したところ、積層体のいずれの部分においても、膜の内部にn−ドデカンが浸透することはなかったが、乾燥時に、大量のフッ素系溶媒が揮散した。
以上説明したように、本発明によれば、従来よりバリア性(特に撥液性)に優れる通気膜を製造できる、とともに、その製造にあたって、撥液剤に用いる溶媒の使用量を低減できる。
本発明の製造方法により得られた撥液性を有する通気膜は、環境に対する負荷のある溶媒を使用することなく製造でき、環境に配慮された製品となる。また、本発明の製造方法により得られた撥液性を有する通気膜は、自動車などの車両用電装部品や携帯電話などの携帯電子機器の筐体へ好適に使用できる。
本発明の製造方法の一例における一工程を示す模式図である。 本発明の製造方法の一例において、図1Aの工程に続く工程を示す模式図である。 本発明の製造方法の一例において、図1Bの工程に続く工程を示す模式図である。 本発明の製造方法の一例において、図1Cの工程に続く工程を示す模式図である。 本発明の通気部材の一例を示す模式図である。
符号の説明
1 巻回体
2 撥液剤
3 耐圧容器(処理容器)
4 芯材
5 貫通孔
6 支持台
7 シャフト
8 攪拌翼
9 駆動装置
10 (超臨界または亜臨界状態の)二酸化炭素の流体
51 通気部材
52 通気膜
53 支持体
54 保護カバー
55 筐体
56 開口部

Claims (7)

  1. 撥液処理されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜を備える、撥液性を有する通気膜の製造方法であって、
    処理容器内に収容した状態で、撥液剤を含む、超臨界または亜臨界状態の二酸化炭素により、PTFE多孔質膜を撥液処理する工程を含み、
    PTFE多孔質膜を前記処理容器に収容し、当該容器内を減圧した後に、前記工程に用いる二酸化炭素の前記処理容器への導入を行う、
    撥液性を有する通気膜の製造方法。
  2. PTFE多孔質膜の巻回体に対して、前記工程を実施する請求項1に記載の撥液性を有する通気膜の製造方法。
  3. 前記巻回体の中心に円筒状の芯材が配置されており、
    前記芯材に、当該芯材の外周面と内周面との間を二酸化炭素が流通可能な貫通孔が設けられている請求項2に記載の撥液性を有する通気膜の製造方法。
  4. 通気性支持材を積層したPTFE多孔質膜に対して、前記工程を実施する請求項1に記載の撥液性を有する通気膜の製造方法。
  5. 前記撥液剤が、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂および長鎖アルキル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む請求項1に記載の撥液性を有する通気膜の製造方法。
  6. 前記工程により撥液処理されたPTFE多孔質膜と、通気性支持材とを積層する工程をさらに含む請求項1に記載の撥液性を有する通気膜の製造方法。
  7. 筐体の開口部に配置された状態で、前記開口部を通過する気体が透過する通気膜と、前記通気膜を支持する支持体とを備え、
    前記通気膜が、請求項1〜6のいずれかの方法により得た撥水性を有する通気膜である通気部材。
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