JP6169019B2 - 循環型浸透圧発電のための作業媒体、循環型浸透圧発電システムおよび方法、並びに作業媒体の相制御方法 - Google Patents

循環型浸透圧発電のための作業媒体、循環型浸透圧発電システムおよび方法、並びに作業媒体の相制御方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6169019B2
JP6169019B2 JP2014038626A JP2014038626A JP6169019B2 JP 6169019 B2 JP6169019 B2 JP 6169019B2 JP 2014038626 A JP2014038626 A JP 2014038626A JP 2014038626 A JP2014038626 A JP 2014038626A JP 6169019 B2 JP6169019 B2 JP 6169019B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
liquid
phase
working medium
attracting
chamber
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014038626A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015161280A (ja
Inventor
佐野 健二
健二 佐野
敏弘 今田
敏弘 今田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toshiba Corp filed Critical Toshiba Corp
Priority to JP2014038626A priority Critical patent/JP6169019B2/ja
Priority to US14/615,757 priority patent/US9863405B2/en
Priority to CN201510090219.XA priority patent/CN104879264B/zh
Publication of JP2015161280A publication Critical patent/JP2015161280A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6169019B2 publication Critical patent/JP6169019B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F03MACHINES OR ENGINES FOR LIQUIDS; WIND, SPRING, OR WEIGHT MOTORS; PRODUCING MECHANICAL POWER OR A REACTIVE PROPULSIVE THRUST, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • F03GSPRING, WEIGHT, INERTIA OR LIKE MOTORS; MECHANICAL-POWER PRODUCING DEVICES OR MECHANISMS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR OR USING ENERGY SOURCES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • F03G7/00Mechanical-power-producing mechanisms, not otherwise provided for or using energy sources not otherwise provided for
    • F03G7/04Mechanical-power-producing mechanisms, not otherwise provided for or using energy sources not otherwise provided for using pressure differences or thermal differences occurring in nature
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D61/00Processes of separation using semi-permeable membranes, e.g. dialysis, osmosis or ultrafiltration; Apparatus, accessories or auxiliary operations specially adapted therefor
    • B01D61/002Forward osmosis or direct osmosis
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D61/00Processes of separation using semi-permeable membranes, e.g. dialysis, osmosis or ultrafiltration; Apparatus, accessories or auxiliary operations specially adapted therefor
    • B01D61/002Forward osmosis or direct osmosis
    • B01D61/005Osmotic agents; Draw solutions
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D63/00Apparatus in general for separation processes using semi-permeable membranes
    • B01D63/08Flat membrane modules
    • B01D63/082Flat membrane modules comprising a stack of flat membranes
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F03MACHINES OR ENGINES FOR LIQUIDS; WIND, SPRING, OR WEIGHT MOTORS; PRODUCING MECHANICAL POWER OR A REACTIVE PROPULSIVE THRUST, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • F03BMACHINES OR ENGINES FOR LIQUIDS
    • F03B17/00Other machines or engines
    • F03B17/06Other machines or engines using liquid flow with predominantly kinetic energy conversion, e.g. of swinging-flap type, "run-of-river", "ultra-low head"
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F05INDEXING SCHEMES RELATING TO ENGINES OR PUMPS IN VARIOUS SUBCLASSES OF CLASSES F01-F04
    • F05BINDEXING SCHEME RELATING TO WIND, SPRING, WEIGHT, INERTIA OR LIKE MOTORS, TO MACHINES OR ENGINES FOR LIQUIDS COVERED BY SUBCLASSES F03B, F03D AND F03G
    • F05B2210/00Working fluid
    • F05B2210/10Kind or type
    • F05B2210/13Kind or type mixed, e.g. two-phase fluid
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E10/00Energy generation through renewable energy sources
    • Y02E10/20Hydro energy

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Water Supply & Treatment (AREA)
  • Combustion & Propulsion (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Power Engineering (AREA)
  • Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)
  • Other Liquid Machine Or Engine Such As Wave Power Use (AREA)

Description

本発明の実施形態は、循環型浸透圧発電のための作業媒体、循環型浸透圧発電システムおよび方法、並びに作業媒体の相制御方法に関する。
低い濃度の溶液と高い濃度の溶液とを浸透膜で隔離すると、低い濃度の溶液の溶媒は、浸透膜を透過して高い濃度の溶液側に移動する。この溶媒が移動する現象を利用することにより、タービンを回して発電する浸透圧発電装置が知られている。
浸透圧発電装置には、閉じた系において作業媒体を循環させて発電する循環型浸透圧発電装置がある。例えば、作業媒体として炭酸アンモニウム水溶液を利用する発電装置が知られている。この装置では、互いに濃度の異なる2種類の炭酸アンモニア水溶液の間の浸透圧差により生じる水流がタービンを回す。タービンを回した後の炭酸アンモニウム水溶液は、再利用のために加熱され、炭酸ガスおよびアンモニアガスと、非常に濃度の低い炭酸アンモニウム水溶液とに分離される。分離させた炭酸ガスおよびアンモニアガスは再度水に導入される。そして、この導入によって濃度の高い炭酸アンモニウム水溶液が得られる。こうして得られた濃度の異なる2種類の炭酸アンモニウム水は、共に再循環されて発電のために使用される。
炭酸アンモニウムは、その100gが100mLの水に常温で溶けるほど溶解性が良い。そのため、海水(3.5Wt%)から真水を吸引できるほどの浸透圧を得ることができる。その後、僅か60℃で分解し、炭酸ガスとアンモニアガスになる。炭酸アンモニウム水を使用する浸透圧発電装置では、正浸透圧で加圧した炭酸アンモニウム水溶液をタービンに送り発電する。その圧力は250気圧も可能で、海水の浸透圧を利用した浸透圧発電の約10倍の圧力といわれている。
一方で、炭酸アンモニウムを用いた正浸透圧を利用した発電では、有毒で腐食性のアンモニアガスの発生による系内の劣化が、運転コストに大きく影響する。また炭酸アンモニウムは析出し易く、例えば、6Mで用いた場合には50℃未満で直ちに析出するため、浸透膜付近の温度の低下が起こった場合には、析出した結晶が浸透膜を傷つけるリスクがある。これは、室温でメンテナンスを行う際などには特に起こり得るリスクである。析出のリスクを減少するには、低い濃度での運転が余儀なくされ、その結果、十分な浸透圧を得ることが難しくなる。
特表2010−509540号公報 国際公開第2005/017352号 米国特許出願公開第2010/0024423号明細書
Jeffrey R.McCutcheona et al. "A novel ammonia-carbon dioxide forward (direct) osmosis desalination process "Desalination 174 (2005) 1-11 R.L.McGinnis et al. "A novel ammonia-carbon dioxide osmotic heat engine for power generation" Science 305 (2007) 13-19
本発明が解決しようとする課題は、低コストで運転可能な循環型浸透圧発電システムを提供することである。
実施形態の循環型浸透圧発電用作業媒体は、水と誘引液とを含む混合液であり、温度および気圧が5℃〜35℃および1気圧の条件下で、前記混合液中の水または誘引液の濃度が10重量%以下のときには、液−液相互溶解した2成分混合溶液の状態にあり、前記濃度が10重量%よりも大きいときには水相と誘引液相とに相分離した状態にある。この作業媒体は、誘引液相液を収容するための第1の室と、水相液を収容するための第2の室と、前記第1の室と前記第2の室との間に介在する浸透膜とを備える浸透圧発生器内の浸透圧差により生じる液体の流れでタービンを稼働させて発電する循環型浸透圧発電装置において使用するためのものである。
実施形態に係る浸透圧発電装置を示すブロック図。 作業媒体の1例の相図。 作業媒体の1例の相図。 作業媒体の1例の相図。 作業媒体の1例の相図。 作業媒体の1例の相図。 浸透圧発生器の1例の内部状態を示す模式図。 実施形態の浸透圧発電システムの1例を示す略図。 実施形態の浸透圧発生器の1例の断面図。 実施形態の浸透圧発電システムの1例を示す略図。 実施形態の浸透圧発電システムの1例を示す略図。 実施形態の浸透圧発電システムの1例を示す略図。 実施形態の浸透圧発生器の1例を示す図。 シリンジ試験装置を示す図。 シリンジ試験の結果を示す模式図。 シリンジ試験の結果を示すグラフ。 相制御試験の結果を示すグラフ。 相制御試験の結果を示すグラフ。 相制御試験の結果を示すグラフ。 相制御試験の結果を示すグラフ。 相制御試験の結果を示すグラフ。 参考用の相図。 相制御試験の結果を示すグラフ。 相制御試験の結果を示すグラフ。
1.循環型浸透圧発電用作業媒体
実施形態の循環型浸透圧発電用作業媒体は、循環型浸透圧発電装置において使用するための作業媒体である(以下「作業媒体」とも記す)。
まず、循環型浸透圧発電システムの1例について図1を参照しながら説明する。図1は、循環型浸透圧発電システムのブロック図である。浸透圧発電装置100aは、浸透圧発生器1と、タービン2と、タンク3と、分離塔4とを備える。浸透圧発生器1、タービン2、タンク3および分離塔4は、この順番で接続されループを構成している。作業媒体は、浸透圧発生器1、タービン2、タンク3および分離塔4で構成されるループを循環する。
実施形態の作業媒体は、水と誘引液とを含む2成分系の混合溶液である。そしてこの作業媒体は、温度および/または作業媒体中の水と誘引液との割合に依存して、第1の相と第2の相とに相転移する。作業媒体の第1の相は、水と誘引液とが液−液相互溶解した2成分混合溶液の状態である。言い換えれば、第1の相では、作業媒体は、誘引液と水とが互いに溶解している均一な一相の液体である。作業媒体の第2の相は、水と誘引液とが二相に相分離した状態である。この作業媒体を図1の循環型浸透圧発電システムで使用する場合には、二相に相分離した状態にある作業媒体について、水相の液(即ち、水相液)と誘引液相の液(即ち、誘引相液)を浸透膜を介して浸透圧発生器1内部に収容する。浸透圧発生器1の内部では、水と誘引液との間の浸透圧差により、液体の流れが生じる。この流れをタービン2に送り、タービン2を稼働し(または回転させ)発電する。タービン2を稼働させた後の液体は、タンク3に送られ、更に分離塔4に送られる。分離塔4で放置することにより当該液体は水相と誘引相とに相分離する。これにより作業媒体は再生される。相分離により得られた水相液と誘引相液を浸透圧発生器1に送り、上記と同じ操作を繰り返して連続して発電を行う。また、この循環において分離塔4での分離を速やかに行うためにタンク3が配置されている。タービン2を稼働した後の液体は、既に分離塔4で行われている分離工程を妨げないように、一旦、タンク3に収容される。
次に、実施形態の作業媒体について更に説明する。作業媒体は臨界濃度を有する。即ち、作業媒体は、温度および気圧が5℃〜35℃および1気圧の条件下で、作業媒体中の水または誘引液の濃度が10重量%以下のときには、液−液相互溶解した2成分混合溶液の状態にあり、この濃度が10重量%よりも大きいときには水相と誘引液相とに相分離する。即ち、1気圧の条件下で、5℃〜35℃の何れかの温度において、作業媒体中の水または誘引液の濃度が10重量%以下のときには、液−液相互溶解した2成分混合溶液の状態にあり、前記濃度が10重量%よりも大きいときには水相と誘引液相とに相分離すればよい。混合液中の水または誘引液の濃度が10重量%以下であるということは、作業媒体を主に構成する何れか一方の成分、即ち、水または誘引液の何れか一方の濃度が10重量%であることを示す。ここでいう「濃度」とは「重量パーセント濃度」のことを示す。溶媒中に溶質を含む溶液についての重量パーセント濃度は、式(1)で示される。
重量パーセント濃度=「溶質」/「溶質+溶媒」×100 式(1)
「水または誘引液の濃度が10重量%以下である」ということは、例えば、水と誘引液とを含む混合液中(即ち、作業媒体中)、水を溶質とし、誘引液を溶媒としたときには、水の濃度が10重量%以下であればよい。同様に、例えば、水と誘引液とを含む混合溶中(即ち、作業媒体中)、誘引液を溶質とし、水を溶媒としたときには、誘引液の濃度が10重量%以下であればよい。換言すれば、濃度は、作業媒体100g中の水または誘引液の何れかの重量で示されればよく、単位は「重量%」または「Wt%」である。
好ましくは、作業媒体は、温度および気圧が25℃および1気圧の条件下で、作業媒体中の水または誘引液の濃度が10重量%以下のときには、液−液相互溶解した2成分混合溶液の状態にあり、当該濃度が10重量%よりも大きいときには水相と誘引液相とに相分離する。更に好ましくは、作業媒体は、温度および気圧が25℃および1気圧の条件下で、作業媒体中の水または誘引液の濃度が7重量%以下のときには、液−液相互溶解した2成分混合溶液の状態にあり、当該濃度が7重量%よりも大きいときには水相と誘引液相とに相分離する。
このような作業媒体に含まれる誘引液の例は、作業媒体が形成された際に臨界濃度を有する液体化合物であればよい。「臨界濃度有する」とは、ある特定の濃度を境界として、その濃度のよりも高濃度域と低濃度域で異なる相を示すことをいう。換言すれば、臨界温度とは、そのような臨界濃度を境界にして第1の相と第2の相に相転移する濃度である。そして実施形態に従う作業媒体は、従来よりも低い温度帯に臨界濃度を有することが好ましい。
好ましい臨界濃度を有する作業媒体のための誘引液は、例えば、低水相溶性の液体化合物である。低水相溶性の液体化合物は、僅かな量または少量であれば水と相溶する液体であり、例えば、有機溶媒および高分子化合物などであってよい。有機溶媒は、例えば、ハロゲン化合物およびクロロホルムなどであってよい。ハロゲン化合物は、例えば、フッ素化合物、塩素化合物、臭素化合物およびヨウ素化合物などであってもよく、例えば、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール(2,2,3,3,3-pentafluoro-1-propanol、以下「PF1P」と記載する)およびクロロホルムは好ましい誘引液であり、PF1Pはより好ましい誘引液である。
例えば、水と2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール(PF1P)との混合液は、濃度変化によって相転移する。その相図を図2に示す。図2の縦軸は温度であり、横軸は水の濃度を重量%(図中「Wt%」と記す)で示した。この相図は、所定の混合比でPF1Pと真水とを含む混合液を試験管にそれぞれ入れ、水浴中で加温し、混合溶を昇温させ、それぞれの温度における混合具合を目視により観察した結果である。ある温度で完全に混ざりあい透明になった状態から、更に冷却し、再び昇温し、混合具合を確かめた。また、PF1Pは沸点が81℃なので、グラフの上限は80℃とした。水の割合が80重量%(図中「Wt%」と記す)では、これ以上に熱しても完全透明に混合することはなかった。従って、測定温度範囲は22℃〜80℃とした。
この実験により得られたデータから、PF1Pと水の混合液の模式的な相図を図3に示した。まず、一定の温度のときの組成、即ち、各成分の濃度と相の関係から図3を説明する。水とPF1Pとの混合液は、1気圧25℃では、水とPF1Pとの混合比が約7:約93または約93:約7のときが臨界濃度である。即ち、水またはPF1Pが7重量%以下で作業媒体に含まれるときには、水またはPF1Pは、完全に混ざりあい透明な状態となる(図中「1 phase」と示す)。この状態が、液−液相互溶解した2成分混合溶液の状態である。一方、水またはPF1Pが7重量%よりも大きい濃度で作業媒体に含まれるときには、それらは互いに溶解し合うことなく二相に相分離して存在する(図中「2 phase」と示す)。これは、5℃〜35℃および1気圧において、作業溶媒中の水または誘引液の何れかの濃度が10重量%以下のときに、液−液相互溶解した2成分混合溶液の状態にあり、10重量%よりも大きいときには水相と誘引液相とに相分離した状態にある1つの例である。
次に、一定の組成としたときの温度変化の相に対する影響を説明する。例えば、水とPF1Pとの混合比が7:93のときには、25℃よりも低い温度では、作業媒体は二相の状態にあり、25℃よりも高い温度では一相の状態にある。即ち、この混合比の場合、25℃が臨界温度である。
実施形態により好ましい作業媒体は、常温(5℃〜35℃)または室温で二相に分離するものが好ましく、さらに一相領域の範囲が二相領域に比べて小さいものが好ましい。ここで、一相領域とは、相図において、作業媒体が液−液相互溶解した一相の2成分混合溶液の状態で存在できる領域のことであり、二相領域とは、相図において、作業媒体が二相の液体に相分離した状態で存在する領域のことである。より好ましい作業媒体の相図を図4に示した。図4の相図は、7Wt%を臨界濃度として、それよりも小さい濃度の場合には何れの温度の場合においても一相領域であり、それよりも大きい濃度の場合には何れの温度の場合においても二相領域である。また、図4に示すような相図をもつ水と誘引液との混合系では、相溶する割合は非常に小さく、一方の濃度が7重量%を超えれば分離が始まる。従って効率よく分離を行うことが可能であり、従来よりも低い温度で分離が可能である。従って、作業媒体の再生は、静置することにより達成されるため、これを用いる循環型浸透圧発電装置の製作コストおよび運転コストをと共により低く抑えることができる。
また、上部臨界温度および下部臨界温度を有する作業媒体も好ましく使用することができる。図5は、下部臨界温度を有する作業媒体の理想的な1例の相図である。図5に示すように、このような作業媒体では、一相領域と二相領域との境界線が、一方の成分の濃度が7Wt%付近となる濃度に存在する。また、図5に示すような相図をもつ水と誘引液との混合系では、水と誘引液とが相溶する領域の割合は非常に小さい。即ち、図5のグラフにおいて二相領域(図中「2 phase」)よりも一相領域(図中1 phase)の方がその面積が小さい。そして一方の濃度が7%を超えれば分離が始まる。従って効率よく分離を行うことが可能であり、また、従来よりも低い温度で分離が可能であるためにコストをより低く抑えることができる。
また、好ましい臨界濃度を有する作業媒体のための誘引液は、複数の化合物の混合物あってもよい。例えば、水に対して相溶性がある、または水に対して相溶性が高い物質であっても、相制御剤を添加することにより、その相図を変更することが可能である。それにより、低水相溶性を与えることが可能なる。そのようにして得られた誘引液も、低水相溶性の液体物質であり、且つそれは僅かな量または少量であれば水と相溶する液体である。
相制御剤は、誘引液として使用されるべき化合物に対して相互溶解する化合物であればよい。特定の化合物に対して、所望する相を与えることができる物質であれば何れの物質であってもよい。得られる相制御剤として含ませることによって、当該作業媒体の相を制御する。例えば、そのような相制御剤の例は、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール(PF1P)、1−ブロモプロパン(1BP)およびエタノールである。これらの相制御剤を加える誘引液の例は、例えば、2−ブトキシエタノール(2BE)水溶液およびトリブロモエタノール(TBE)などである。2−ブトキシエタノール(2BE)水溶液に対してPF1Pを加えると、水との混合液において、下部臨界温度が下降、即ち、下方制御され、また一相領域が狭まり、二相領域が拡大される。トリブロモエタノール(TBE)にエタノールを加えると、水との混合液において、TBEの析出傾向が制限され、また一相領域と二相領域とを規定する上部臨界温度を有する相が得られる。このように相制御剤の添加により相制御を受けた混合溶液は、好ましく誘引液として使用できる。
例えば、2−ブトキシエタノール(2BE)にPF1Pを10Wt%の濃度で添加した例を示す。図6(a)は、2BEに対してPF1Pを10Wt%混合し、この混合物を水に混ぜて作業媒体を作製して得られた相図である。図6(b)は、2BEと水との混合液を作業媒体とした場合の相図であり、図6(a)と図6(b)を比較してみると、下部臨界温度が下方制御、即ち、低い温度に変更されており、且つ二相領域が拡大され、一相領域が狭くなっている。
2BEは以下に説明するように浸透圧発電用の作業媒体としての優れた性質を有している。例えば、2BEを作業媒体として使用した場合、モル分率0.1の濃度で回収した混合液を75℃にするということは、図6(c)に示される水平線の位置まで昇温することである。そして、この温度における作業媒体中の一方の成分の濃度は、グラフ中の75℃の水平線からグラフの横軸(相分離線)に垂線として下された右側の矢印で示される。これは、即ち、相分離線との交点にある数値(モル分率)であり、この数値は、濃厚溶液側のモル分率を表す。また、75℃における作業媒体中の他方の成分の濃度は、グラフ中75℃の水平線からグラフの横軸(相分離線)に垂線として下された左側の矢印で示される。これは、即ち、相分離線との交点にある数値(モル分率)である。図6(c)の例では、右側の交点のモル分率は0.18であり、重量%に直すと59Wt%の2BE水溶液が得られることがわかる。そして水を基準にした場合は、左側の交点のモル分率が2BEのモル分率であり、ここでは0.02のモル分率(12Wt%)の2BEを含む溶液として得られる。分離後のそれぞれの溶液の液重量は「てこの法則」により図から読み取ることができる。分離した液のそれぞれの量をaおよびb(g)とすると、a(0.1−0.02)=b(0.18−0.1)であり、よってa(0.08)=b(0.08)となり、a=bとなる。従って、分離された液は、この場合偶然同じ重量であることが分かる。この相図の相の境界線のところで回収された液の濃度は、59Wt%と12Wt%なので、計算上の浸透圧を示す表1から明らかであるように、その差圧は97気圧にもなる。したがって、出力は海水の場合の3.3倍にもなると期待される。
Figure 0006169019
分離するための熱源温度が70℃以下の場合に得られる差圧を見積もると、図6(d)のように、温度が降下するに従って、特定の温度に引かれる水平線の両端により規定される濃度差が次第に小さくなる。そして、その温度差がなくなるのが50℃であり、その温度が二相分離のほぼ限界であることが分かる。濃度差が狭くなることを考慮し、算出した浸透圧差圧のグラフが図6(e)である。グラフに示される通り、50℃においても50気圧の差がある。この値は、通常の河川水と海水を使った浸透圧発電より有利な値である。しかしながら、このような相図の作業媒体では、通常、50℃以下では浸透圧発電には使用することはできない。
しかしながら、上述したように、例えば、2−ブトキシエタノール(2BE)にPF1Pを10Wt%の濃度で添加すれば、室温においても相分離が可能となる。このような相制御剤を用いて製造された2BEと水とを含む作業媒体は、臨界濃度を有しており、好ましく実施形態の作業媒体として使用できる。例えば、水中の2BEの濃度が10重量%を超えれば分離が始まる。従って効率よく分離を行うことが可能であり、また、従来よりも低い温度で分離が可能であるためにコストをより低く抑えることができる。このように、上述のような高い浸透圧差圧を有する2−ブトキシエタノールを、より有利な効果を有する作業媒体として使用することが可能になる。
このような相制御剤を使用する相制御方法も、更なる実施形態として提供されてもよい。相制御方法は、誘引液として使用されるべき化合物に対して相互溶解する化合物を、誘引液に含ませることを含めばよい。それにより、水と誘引液とを含む作業媒体のために使用できる化合物の種類や作業媒体の組成を増やすことが可能となる。それにより、所望に応じて、また所望の作用を有する作業媒体を提供することが可能となる。それにより、低コストで運転可能な循環型浸透圧発電システムを提供することが可能となる。
また、上述した何れの作業媒体についても、その比重は、水の比重に比べて大きい方が好ましい。例えば、作業媒体の比重は、1.1以上、好ましくは1.5以上である。このような比重の作業媒体を使用することにより水の浸透膜の通過効率が向上する。図7を用いて更に説明する。図7(a)および(b)は浸透圧発生器1の模式図である。容器21は第1の室22と第2の室23と、これらの室を区画する浸透膜24を備える。第1の室22は、第2の室23の上方に配置される。第1の室22には、誘引液25が収容され、第2の室23には水26が収容される。この構成において誘引液25は、好ましくは1.1以上、より好ましくは、1.5以上の比重を有し、且つ低水相溶性を有する液体であることが好ましい。第2の室23に収容された水26は、浸透膜24を通過して第1の室22に移動する。水26の移動が開始されてからある時期までは、移動した水26は図7(a)に示すように界面を生じることなく上層付近に集まっていると考えられる。そして、しばらく静置すると、図7(b)に示すように界面27が生じ、二相に相分離する。
低水相溶性の液体と水とを浸透膜を介在させて互いに接触させた場合に、水が低水相溶性の液体に吸引されるという知見は新たな発見である。低水相溶性の液体は、微量または少量の水のみと相溶する液体である。このような構成により、第2の室23から第1の室22への水の移動は良好に維持され、その結果、効率よく浸透圧発電を行うことが可能になる。後述において証明する通り、このような構成の実施形態により、飛躍的に効率的な水の移動を可能にし、高い浸透圧差を維持できる。
実施形態の作業媒体は、再生に加熱を必要としない、またはより低い温度に加熱するだけで再生が可能である。従って、室温や常温などのより低い温度で循環型浸透圧発電装置を稼働することできるので、低コストでの運転が可能になる。また、浸透膜を通過して効率的に水を移動することが可能である。即ち、再生のための分離塔の構成をより単純にすることが可能である。このような作業媒体により、低コストで運転可能な循環型浸透圧発電システムを提供することが可能となる。
2.循環型浸透圧発電方法
循環型浸透圧発電方法は、作業媒体を循環して発電する浸透圧発電方法である。当該方法において使用される作業媒体は上述した通りである。当該方法は、浸透膜を介在させて配置した水相液(または水)と誘引液相液(または誘引液)との浸透圧差により、水相液(または水)の一部分が浸透膜を通過することにより、混合液の流れを生じさせることと、生じた流れでタービンを稼働させて発電することと、タービンを稼働させた後の混合液を水相と誘引液相とに相分離することと、相分離によって得られた水相液と誘引液相液を浸透膜に向けて送ることと、を含む。そして、浸透膜に向けて送られた水相液と誘引液相液との間の浸透圧差により、更にタービンを回す。このように当該方法は、作業媒体を再生しながら発電を繰り返す、または継続して発電を行う方法である。このような方法おいて、上述の通りの作業媒体を使用することにより、低コストで運転可能な循環型浸透圧発電システムを提供することが可能となる。ここで、水と誘引液とが浸透膜を介在させて配置されるという状況は、例えば、循環型浸透圧発電システムにおいて、循環型浸透圧発電方法を開始する際の初期状態として浸透膜を挟んで水と誘引液とを配置する際にみられる。例えば、この場合、循環型浸透圧発電方法を開始する際の初期状態として、水と誘引液が浸透膜を介して配置されればよい。その場合、初期状態に続き、浸透圧差による液体の流れを生じさせ、その流れによりタービンを稼働することが行われればよい。また別の態様では、循環型浸透圧発電方法を開始する際の初期状態として、液−液相互溶解した2成分混合溶液を用いてもよい。その場合、初期状態に続き、相分離工程が行われればよい。更なる態様においては、循環型浸透圧発電方法を開始する際の初期状態として、水相液と誘引液相液が浸透膜を介して配置されてもよい。その場合、初期状態に続き、浸透圧差による液体の流れを生じさせ、その流れによりタービンを稼働することが行われればよい。
3.循環型浸透圧発電システム
図8〜11を用いて、実施形態に従う循環型浸透圧発電システムの例について説明する。図8は循環型浸透圧発電システムの略図である。
循環型浸透圧発電システム100は、浸透圧発電装置100aと、浸透圧発電装置100aを循環する作用媒体とを備える。浸透圧発電装置100aは、浸透圧発生器1と、タービン2と、タンク3と、分離塔4と、浸透圧発生器1とタービン2とを接続するパイプライン101aと、タービン2とバッファータンク3とを接続するパイプライン101bと、タンク3と分離塔4とを接続するパイプライン101cと、パイプライン101cに介装された開閉弁102aと、分離塔4と浸透圧発生器1の第1の室7aおよび第2の室7bとをそれぞれ接続するパイプライン101dおよびパイプライン101eと、分離塔4側からこの順番でパイプライン101dに介装された開閉弁102b、タンク103aおよびポンプ104aと、分離塔4側からこの順番でパイプライン101eに介装された開閉弁102c、タンク103bおよびポンプ104bとを備える。
ここで、図9の断面図を用いて浸透圧発生器1の内部の構造について説明する。浸透圧発生器1は、処理容器5と浸透膜6とを備える。浸透膜6は、その周囲を処理容器5の内側壁面に固定されて配置され、処理容器5内を第1の室7aと第2の室7bとに区画している。処理容器5において、第1の室7aは、第2の室7bの上方に配置される。第1の室7aに位置する処理容器5には、第1の流入口8aが開口している。第1の流入口8aには、分離塔4で分離された誘引相液9a(または誘引液)が流入する。第2の室7bに位置する処理容器5には、第2の流入口8bが開口している。第2の流入口8bには、分離塔4で分離された水相液9b(または水)が流入する。第1の室7aに位置する処理容器5には、第1の流入口8aに対向する位置に流出口10が開口している。浸透膜6を通過する液体(水)の流れる方向は、図中矢印で示すように、下方から上方、即ち、第2の室7bから第1の室7aに向う方向である。流出口10は、パイプ101aに接続されている。流出口10からは、第2の室7bから第1の室7aへ浸透膜6を透過して移動した水相液の一部と、第1の室7aに収容されている誘引相液との混合液が流出する。水相液の一部が浸透膜6を透過して第2の室7bから第1の室7aへ移動することによって、第1の室7aの水圧が高まり、流出口10からの流束(即ち、液体の流れ)が生じる。この流束がタービン2を回して発電する。
浸透圧発生器1に用いる浸透膜6は、作業媒体として用いる液体、例えば有機溶媒により害されないものであれば、商業的に手に入るものを使用することができる。浸透膜6として、例えば、酢酸セルロース膜、ポリアミド膜などが用いられてよい。また浸透膜6は、正浸透膜であっても逆浸透膜であってもよいが、好ましい浸透膜6は正浸透膜である。処理容器9は、作業媒体を収容することに適した材質により構成されればよい。また、処理容器9は、密閉性のある容器、即ち、密閉処理容器であってもよい。
流出口10から流出した混合液は、パイプライン101aを通りタービン2に送られる(図8)。送られた混合液による流束が、タービン2を回転して発電する。
タービン2を回して発電した後の混合液は、パイプライン101bによりタンク3に送られる。タンク3は、混合液を一時的に収容する。タンク3は、パイプライン101cを介して分離塔4と接続されている。パイプライン101cには開閉弁102aが介装されている。分離塔4における作業媒体の相分離および分離塔4からの送液を行っているときには、開閉弁102aを閉じておく。分離塔4に混合液を流入する際には、開閉弁102aを開ける。
分離塔4には、タンク3から流出する混合液が流入する流入口と、二相に分離した液体をそれぞれ流出する2つの流出口とが設けられている。混合液を分離塔4において相分離している間、開閉弁102aを閉めておき、分離塔4に液体が流入しないようにする。これにより、相分離は促進される。
分離塔4において混合液の分離が終了した後、二相に相分離した液体はそれぞれ分離塔4から流出されて、パイプライン101dおよびパイプライン101eにそれぞれ送られる。その後、開閉弁102aを開き、タンク3に収容した混合液を分離塔4に流入させる。混合液が分離塔4に十分な量流入した後、開閉弁102aを閉じる。分離塔4で上記の分離操作は、循環して発電するために繰り返される。
分離塔4から流出された2つの液体は、それぞれポンプ104aおよび104bによって送られて、パイプライン101dとパイプライン101eを通って処理容器1の第1の室7aと第2の室7bとへとそれぞれ回送される。また分離塔4中の混合液は、水相が上層へ、誘引液相が下層へと移動した後に相分離する。誘引液相液は開閉弁102bを開放することによりタンク103aに送られ一時的に収容される。水相液は開閉弁102cを開放することによりタンク103bに送られ一時的に収容される。この時点で、既に作業媒体は再度使用できる状態に再生されている。その後、タンク103aに収容された誘引液相は、ポンプ104aにより送られてパイプライン101dを通り、浸透圧発生器1の第1の室7aに送られる。水相液は、ポンプ104bによってタンク103bから送られ、パイプライン101eを通り、浸透圧発生器1の第2の室7bに送られる。
このように作業媒体が、浸透圧発電装置100aを循環することにより、循環型浸透圧発電システムは継続して発電する。
循環型浸透圧発電システムは、更に、第2の室7bと分離塔4とを接続するパイプラインを備えてもよい。そのような実施形態の1例を図10に示す。図10に示した循環型浸透圧発電システム200は、循環型浸透圧発電システム100に更に、第2の室7bと分離塔4とを接続するパイプライン101fおよび開閉弁102dを備える。それ以外は、循環型浸透圧発電システム100と同様の構成を備えてもよい。
この循環型浸透圧発電システム200においては、浸透圧発生器1の第2の室7bに位置する処理容器5に更なる流出口が設けられ、且つ分離塔4が更なる流入口を有する。第2の室7bの流出口と分離塔4の更なる流入口とは、パイプライン101fにより連絡されている。これにより、第2の室7bから第1の室7aに移動しなかった液体の一部が、第2の室7bの流出口から排出される。こうすることにより、浸透膜6を透過することなく水相に残っている溶質(即ち、誘引液)が第2の室7bにおいて蓄積されるのを防ぎ、それにより第2の室7bに存在する液体中の誘引液の濃度が高くなることを防ぐ。このように第2の室7bに位置する処理容器1に流出口を設け、液体を排出することによって、第2の室7b側に存在する水相と第1の室7a側に存在する誘引液相との浸透圧差が減少するのを防ぐことが可能となる。或いは、第2の室7bに誘引液が蓄積することも防止する。更には、第2の室7b内で水相に溶解しきれなくなった誘引液が析出して浸透膜6を害することも防止できる。
また更に、パイプライン101fに開閉弁102dが介装され、このような第2の室7bの流出口から流出した液体が、開閉弁102dを開いた状態でパイプ101fを通過し、後に説明する分離塔4へ流入されることが好ましい。
また、この循環型浸透圧発電システム200は、第2の室7b側からこの順番でパイプライン101fに介装された更なる開閉弁とタンクとを備えることも好ましい(図示せず)。これにより、分離塔4の作動状況に応じて、一時的に第2の室7bからの液体が貯留できる。
また、図8に示した循環型浸透圧発電システム100および図10に示した循環型浸透圧発電システム200が、圧力交換機または揚水機を更に備えてもよい。
循環型浸透圧発電システム200が、更に圧力交換機を備えた1例を図11に示す。圧力交換機105は、パイプライン101aとパイプライン101dとの間で圧力を交換するためにパイプライン101aとパイプライン101dとに架設される。タービン2を回転させる液体の流束は、第1の室7a内の液体と第2の室7bの液体との間の浸透圧差のみならず、パイプライン101dから第1の流入口8aを通り第1の室7a内に流入する誘引液相液の水圧と、パイプライン101eから第2の流入口8bを通り第2の室7bに流入する水相液の水圧との差にも依存する。そのために、圧力交換機を用いてパイプライン101d内の水圧をパイプライン101aとの間で調整することにより、分離塔4内で再生されて浸透圧発生器1に再流入される際の誘引液相液の水圧と水相液の水圧との差を調整する。これにより、発電して得られる電気エネルギーを極大化することが可能となる。第1の室7a内に流入する誘引液相液の水圧と第2の流入口8bから第2の室7bに流入する水相液の水圧との差を調整するための圧力交換機は、所望の水圧差を得るために、何れのパイプライン間に架設されてもよい。
また、循環型浸透圧発電システム100、200および300は、更に揚水機14を備えてもよい。循環型浸透圧発電システム100が更に揚水機106を備える1例を図12に示した。揚水機106は、浸透圧発生器1とタービン2との間に、即ち、パイプ101aに介装される。揚水機106を浸透圧発電装置100aに設けることによって、作業媒体の循環をより容易に行うことができる。それにより、タービン2の発電をより確かに行うことができる。揚水機106は、浸透圧発生器1およびタービン2が配置される位置よりも高い位置まで浸透圧発生器1からの液体を移動させて収容し、その後、その高い位置から所望の流量で液体をタービン2に向って落下させ、その落下する流束によりタービン2を回転させるものである。
循環型浸透圧発電システム100、200、300および400において、浸透圧発生器1として浸透圧エレメントが使用されてもよい。浸透圧エレメントとは、約1L〜約20Lの容量の浸透圧発生器1である。実用に供される場合、浸透圧エレメントを複数集合させ、これらの複数の浸透圧エレメントにより生じる圧力を1つの圧力として出力する浸透圧モジュールとして使用されてもよい。浸透圧モジュールに含まれる一部分の浸透圧エレメントが使用により劣化した場合には、劣化した浸透圧エレメントのみを交換することが可能であるので、維持メンテナンスおよびコストパフォーマンスに優れている。
浸透圧エレメントとして提供される浸透圧発生器1の1例について図13を参照しながら説明する。図13(a)は、ユニット1aの斜視図であり、(b)は浸透膜部材の斜視図であり、(c)は(a)のユニット1aの線L−Lに沿った断面図であり、(d)は複数のユニット1aを積層して構築した浸透圧エレメント1bの断面図である。
浸透圧エレメントは、最小単位として少なくとも1つのユニット1aを含む。浸透圧発生器1としての浸透圧エレメントは1つのユニット1aを備えてもよく、複数のユニット1aを備えてもよい。
ユニット1aは、その両面に流路のための凹部を備える第1の基板130および第2の基板131と、浸透膜部材132とを備える。ユニット1aの製造方法は、第2の基板131上に、浸透膜部材132と第1の基板130とをこの順番で積層し、それらを互いに接合させればよい(図13(a))。浸透膜基材132は、浸透膜134と、これを支持する枠135とを備える(図13(b))。ユニット1aの内部には、第1の基板130の一方の面の凹部と浸透膜基板132の一方の面とにより規定される第1の室136と、第2の基板131の一方の面の凹部と浸透膜基板132の他方の面とにより規定される第2の室137とが備えられる。第1の室136は、第2の室137の上方に配置される。ユニット1aの長手方向に垂直に交わる一方の端面には、第1の室136の位置に、第1の室136から液体を流出するための貫通孔138と、第2の室137の位置に、第2の室137に水相液を流入するための貫通孔139とが開口している。ユニット1aの長手方向に垂直に交わる他方の端面には、第1の室136の位置に、第1の室136に誘引液相液を流入するための貫通孔(図13(a)には図示せず)と、第2の室137の位置に、第2の室137から液体を流出するための貫通孔(図13(a)には図示せず)とが開口している。第1の室136と第2の室137は、浸透膜134により区画されている。そして、一方の端面の貫通孔から流入された誘引液相液と、対向する端面の貫通孔139から流入された水相液とが、浸透膜134を介して接触することにより浸透圧差が生じ、第2の室137内の水相液の一部分が浸透膜134を通過して第1の室136に移動する。この移動により、流束が生じる。この流束は、誘引液相液が流入された貫通孔に対向して配置されている貫通孔138から流出される。流出された液流はタービン2に送られる。
浸透圧エレメントは、ユニット1aを複数備えてもよい。複数のユニット1aを備えた浸透圧エレメントの1例の断面を図13(d)に示した。この浸透圧エレメント1bは、ユニット1aを複数個積層して備える。浸透圧エレメント1bに含まれる複数のユニット1aは、何れも第1の室136が第2の室137の上方に位置するように配置されている。浸透圧エレメント1bに含まれる複数のユニット1aは、互いに接合されていてもよく、或いはハウジング内部に収容されて一体化されていてもよい。また、浸透圧エレメント1bに含まれる全てのユニット1aから生じる複数の流束を1つに合せながらタービン2に送るように構成されてもよい。
浸透圧発生器1は、台、棚、架台または櫓などの支持体に固定して使用されてよい。浸透圧発生器1をそのような支持体に固定することにより、生じた圧力を効率よく使用することが可能になる。そのような固定のために、浸透圧発生器1は、その外側部に突起を備えてもよい。浸透圧発生器1を支持体に固定するためには、例えば、支持体に設けられたばね構造体により突起を抑え込むことにより行われてもよい(図示せず)。
このような浸透圧発生器1は、第1の室136および第2の室137の容量に対する浸透膜の面積の比が大きい。それにより、誘引液相と水相との接触面が相対的に大きくし、それによりタービン2に出力するための水圧を効率よく発生させ、また水圧を上昇することを可能にする。
本実施形態は、常温または従来よりも低い温度で、使用後の混合液を静置することにより2つの液体に分離して再生できる作業媒体を用いる。そのため分離操作および、分離後の液体の回送が容易であり、且つ運転コストも低く抑えることができる。また、作業媒体に関連するガスが発生しないため、分離塔4の構造を簡易なものとすることができる。また、アンモニアガスなどの浸透圧発電装置100aを傷ませる成分が発生しないので、装置のメンテナンスコストも低く抑えることができ、建設コストや設備の運転コストも低く抑えることができる。以上のように、本実施形態により、低コストで運転可能な循環型浸透圧発電システムを提供することが可能となる。
本発明では河川の水と海水を用いた浸透圧発電と違い、外界と遮断した液体でできるので膜は生物汚染されないため、膜の長寿命化が図れ、それによって低コスト化をもたらす。
逆洗などの中間メンテナンスも大幅に削減できるので、運転時間が長く、稼働率も高くなる。作業媒体がアンモニアガスでないのでシステム設計が簡易であるのと同時に多段階の蒸留システムが必要とされない。また、液-液相分離したそれぞれの液相からパイプにより直接液体を回収できる。さらに同様な性質の物質なかから最適な物質を作業媒体に選べて、システム設計の自由度が広がる。アンモニアは腐食性で猛毒だが、相制御により安全なものを選べる可能性と幅を広げることができる。また、比重の大きな誘引液を使用することにより、膜付近の濃度分極が抑制されるので効率よく浸透圧発電を行うことが可能となる。
[例]
(1)シリンジ試験装置
図14(a)を参照しながら、シリンジ試験装置の作製について説明する。まず、2本の1mLのプラスチック製ディスポーザブルシリンジ211および212を用意した。これらの樹脂シリンジ211および212の注射針をセットする側の先端をそれぞれ切り落とした(S1)。得られた2つの切断されたシリンジ211および212の指掛け部を互いに向い合せて、空気が入り込まないように、その間に2枚のゴムラバーと1組の浸透膜を挟み込んだ。挟み込みは、第1のシリンジ211、第1のゴムラバー213、浸透膜214、第2のゴムラバー215、第2のシリンジ212の順番で行い、クリップ(図示せず)で固定した(S2)。
これによりシリンジ試験装置216を得た(S3)。浸透膜214としてRO膜である日東電工製ES20を使用した。第1および第2のゴムラバー213および215は板状のゴムラバーを使用し、図21(b)に示すように、各ゴムラバーには、直径5mmの円形穴をそれぞれ開口した。
(2)シリンジ試験
例1
上記(1)の手順に従って、第1のシリンジ211には、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール(PF1P)を収容し、第2のシリンジ212には真水を収容したシリンジ試験装置216を作製した。各液の収容は、(S1)工程と(S2)工程の間に、試験に使用する液体をシリンジ211および212内部にそれぞれ収容した。その後、第1のシリンジ211が第2のシリンジ212の上方に位置するように、シリンジ試験装置を載置面に対して垂直に固定し、25℃、1気圧の条件下に静置した(即ち、シリンジの縦置き)。その後、1時間毎にメモリを読んで水の移動を計測した。ここにおいて、シリンジ試験装置216に収容された液体は、シリンジ試験装置216の作製工程においても、また試験中においても外部に漏れなかった。比較のために、第1のシリンジ211内に3.5Wt%の海水を収容したことを除いて、上記のPF1Pを用いた試験と同様にシリンジ試験装置216を作製し、同様の試験を行った。
結果
PF1Pと水を収容させたシリンジ試験装置216の試験開始から3.5時間の様子を図15に模式的に示す。更なる試験の結果を図16に示す。
図15に示すように、シリンジ試験装置216は、下側から、水を収容している第2のシリンジ212、第2のゴムラバー215、浸透膜214、第1のゴムラバー213、PF1Pを収容している第1のシリンジ211が重ね合わされており、シリンジの指掛け部でクリップ219により固定されている。試験開始から3.5時間後には、第1のシリンジ211内に吸収された水が液体上層として分離しているのが観察された。このときにPF1Pと水との液−液界面もはっきりと観察できた。このように、縦置きのシリンジ試験では、第2のシリンジ212から第1のシリンジ211に吸引された真水は、浸透膜214を通過し、第1のシリンジ内に移動した後でPF1P中を上昇し、やがて相分離し、PF1P相の上層として存在した。
図16は、横軸には観察時間(hr)を示し、縦軸には第2のシリンジ212から第1のシリンジ211に移動する水の量を示す。水の量は、第2のシリンジ212に記されている目盛を読み、それを直接記録することにより測定した。このグラフから、PF1Pを第1のシリンジ211内に収容したときに、海水を用いた場合よりも1.1倍の速度で第2のシリンジ212内の真水が吸引されたことが分かった。また、初期速度を比較すると海水に比べてPF1Pは、1.4倍の速度で真水を吸引した。
表2にPF1Pおよびエタノールの計算上の浸透圧を示した。
Figure 0006169019
表2から明白であるように、浸透圧は、エタノールよりもPF1Tの方が小さい。それにも拘わらず、証明されたように、浸透膜の膜面が設置面に対して水平であり、且つPF1P相を収容する第1の室が、水相を収容する第2の室の上方に配置された場合には、エタノールよりも大きな流束を生じることが可能であった(「流束」とは、単位面積当たりの液体の移動距離で示され、単位は「m/h」である)。これは驚くべき発見である。そして、この現象の原因は比重であると考えられる。一般的には、浸透膜を介して水と接触したときに、より速く水を吸収する物質は、優れた物質であると考えられる。しかしながら、浸透膜現象では、そのように優れていると評価される物質の場合、特に水の吸収が速く行われることにより、吸収された水が浸透膜近傍に滞留してしまう。このような水の滞留により、水を吸収すべき室の側に濃度分極が生じる。このような現象が生じると流束が著しく低下する。実際に、これまでの多くの実験において、濃度分極により流束が著しく低下した例が観察されている。その場合、水を吸収すべき室内をスクリューで撹拌することにより流束が回復する。また、従来ではこのような現象を回避するために浸透膜表面に沿って液体を流し続けるクロスフロー方式を使用することも提案されている。まさにエタノールの場合にはこのような濃度分極による流束の低下が生じているが、本実験結果は、実施形態の作業媒体であれば、スクリューによる撹拌も、クロスフロー方式も必要とすることなく、自然発生的に濃度分極を防止するという独自の作用が得られることを証明している。
即ちこれは次のような機序によると考えられる。実施形態の作業媒体の場合、フッ素系溶媒であるPF1Pの比重が1.5以上と大きいために、自然発生的に水相の下に潜り込む。それにより、PF1Pを収容する側の室の浸透膜界面は、常に新しいPF1P液が供給される。そのために、PF1Pの場合には、濃度分極による流束低下が起こり難く、大きな吸引力で持続して液体の流れを生ずる。これにより作業効率が向上される。また、濃度分極を防止するための機構が不要である。
また、上述で証明されたように、実施形態の作業媒体は、加熱することなく分離することが可能である。そのため、浸透圧発電でタービンを回した後に、そのまま貯留し、静置すれば再生できる。従って、再生した後に、分離された各液相から水とPF1Pなどの誘引液相液を直接パイプで吸い上げることにより、浸透圧発生器1に対して送り出せば容易に循環型の浸透圧発電を実施することができる。
以上のように、誘引液としてのPF1Pと水とを浸透膜を介して接触させると、PF1Pへの水の吸引が生じると共に、25℃の温度で静置するだけで水相と誘引相であるPF1P相に分離することが証明された。比重が1.1以上であり、且つ低水相溶性の物質と水とを含む混合液を作業媒体によれば、自然発生的に浸透圧差が維持でき、且つ常温で放置するだけで再生が可能な作業媒体を提供できることが証明された。それによりコストパフォーマンスに優れた循環型浸透圧発電システムが提供できることが示唆された。
(3)相制御試験
例2
まず、PF1P中の2BEの重量濃度が10重量%となるように、90:10の割合で2BEとPF1Pとを混合して混合液を誘引液として得た。この誘引液と水とを種々の割合で混ぜて、作業媒体を得た。具体的には、作業媒体中の誘引液の重量濃度が、5、10、20、30、40、50、60、70、80および90重量%となるように誘引液と水とを混ぜた。即ち、混合物と水との混合割合は10重量%ずつ変更した。それにより得られるそれぞれの濃度の作業媒体を低温から昇温して相の変化を観察し、相図を作成した。得られた相図を図17に示した。
この結果から分かるように20℃でも相分離する領域が出現した。この結果を2BE水溶液の相図と重ねて表したのが図18ある。また、この場合の浸透圧差圧と温度との関係を図19に示す。
図18から、2BEの下部臨界温度が大幅に低下したのが分かる。特に最大で30℃低下した。また、この溶液を用いた場合、図18に示されるような相図における二相領域の拡大により、計算上の浸透圧が増大し(表3参照)、海水の3.6倍の出力が期待できることが示唆された。即ち、温度範囲が拡大されるだけでなく出力も増大することが期待できる。このことは、浸透圧差圧と温度との関係を示す図19のグラフによって、より明らかである。
Figure 0006169019
例3
例2と同様にして、2BEに1−ブロモプロパン(1BP)を10重量%混合し、この混合物を、誘引液として得た。得られた誘引液を水に混ぜて作業媒体を作製し、この作業媒体について相図を作成した。水を溶媒として、作業媒体中の誘引液の重量濃度は、10、20、30、40、50、60および70重量%となるように混合した。そのようにして得られたそれぞれの濃度の作業媒体を低温から昇温して相の変化を観察し、相図を作成した。得られた相図を図20に示す。また、このときの浸透圧差圧と温度との関係を図21に示す。
これらの結果から、1BPを2BEに混合した場合にも、PF1Pと同様に効果的に温度範囲が拡張され、更に、二層の領域が濃度の方向にも拡大していることが明らかになった。また、図21からも明らかであるように、50℃台の温度範囲では浸透圧差圧が高く、従って、大きな出力を得られることが期待できる。このことは、計算上の浸透圧を示す表4からも明らかである。表4から明らかであるように、この時に得られる浸透圧差圧は、122atmである。このような大きな出力は、最大では海水の4.2倍もの出力になる。
Figure 0006169019
例4
トリブロモエタノール(TBE)は、その水溶液中で固体が析出する物質であることが知られている。このようなTBEの相図を、相制御剤を用いることに変更する試験を行った。まず、対照となる混合液を作製した。即ち、水とTBEとを含む混合液中で、TBEの重量濃度が5、10、20、30、40、50、60、70、80および90重量%となるように、それぞれ水とTBEとを混合し、対照混合液を作製した。それぞれの対照混合液について、低温から昇温して相の変化を観察した。それに基づいて、相図を作成した。得られたTBEと水との混合液の相図を図22に示す。常温で固体が析出する場合には、浸透膜を傷つけることが問題となる。この問題を解決するために相制御について試験した。
次に、エタノールを相制御剤としてTBEに対して、TBEの重量と同じ重量で添加した。エタノールとTBEとを混合することにより得られた混合液を水と混合した。得られた混合物中、水を溶媒として、エタノール−TBE混合液の重量濃度は、5、10、20、30、40、50、60、70、80および90重量%である。このような濃度の混合物について、低温から昇温して相の変化を観察し、相図を作成した。得られた相図を図23に示した。
図22の対照相図と図23の相図を比較した。相制御剤としてエタノールを添加して得た図23の相図は、相制御剤を添加しない対照混合液の相図とは明らかに異なることが明らかになった。即ち、エタノールを添加した場合には、典型的な上部臨界を有する混合物となった。
例5
トリブロモエタノールに50Wt%エタノールを混合して、誘引液を作製した。上記(1)の手順に従って、第1のシリンジ211にはこの誘引液を収容し、第2のシリンジ212には真水を収容したシリンジ試験装置216を作製した。その後、第1のシリンジ211を第2のシリンジ212の上方に位置するように、シリンジ試験装置を載置面に対して垂直に固定し、20℃、1気圧の条件下に静置した(即ち、シリンジの縦置き)。その後、1時間毎にメモリを読んで水の移動を計測した。
この結果を図24で示す。図24から明らかであるように、流量は0.028mL/hであり、流束は0.0014m/hであった。100%エタノールが25℃で0.0015の流束を示すため、これに近い値と言える。また20℃であっても5時間では、相図から期待される水分の分離は観測されなかった。比較のために、TBEに水を加えて、同様にシリンジ試験を50℃で実施した。それにより得られた流束は0.0031m/h(3.5%NaCl水の91%)となったが、試験中、析出した結晶が溶解せず、また、均一な液体とはならなかった。
このように誘引液として使用し難い化合物に対して相互溶解する化合物を添加し、それを水と混合することにより、作業媒体として使用できる相を有する混合液を製造することが可能である。このような相制御を行うことにより、これまで浸透圧発電に使用できなかった物質、使用し難かった物質、また使用できていた物質であっても、浸透圧発電に使用できる可能性のある物質に改良、優れた効果のある物質に改良することが可能となる。このような改良により、コストパフォーマンスに優れた循環型浸透圧発電システムを提供することが可能となる。
実施形態に従う循環型浸透圧発電システムは、河川の水と海水とを用いた浸透圧発電と違い、外界と遮断した閉鎖的な循環系において、発電を行うことが可能である。それにより、浸透膜や発電装置内における生物汚染が抑制され、膜の長寿命化が図ることが可能である。それによって、メンテナンスに掛かる費用を抑えることが可能となり、低コスト化を達成できる。
例えば、逆洗などの中間メンテナンスが大幅に削減でき、運転時間が長く、稼働率も高くなる。また、作業媒体がアンモニアガスなどのガスを用いないために、システム設計が簡便かつ単純になる。また、それと同時に多段階の蒸留システムの設置が不要となる。実施形態の作業媒体は、従来よりも低い温度に静置するだけで自然発生的に相分離、即ち、再生ができる。従って、そのように液-液相分離した作業媒体を、相毎にパイプで直接回収することが可能となる。また、実施形態の相制御を使用することにより、さらに同様な性質の候補物質の中から最適な物質を作業媒体として選択することが可能でため、システム設計の自由度が広がる。例えば、アンモニアは腐食性で猛毒だが、アンモニアを使用する系についても改良を行うことが可能となり、より安全性の高い物質を選択性することが可能となる。このような効果は、何れも低コストの循環型浸透圧発電システムを提供するために有効であると考えられる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1.浸透圧発生器 2.タービン 3.タンク 4.分離塔 5.処理容器
6.浸透膜 10.流出口
100,200,300,400.循環型浸透圧発電システム
100a,200a,300a,400a.循環型浸透圧発電装置
101a,101b,101c,101d,101e,101f.パイプライン
102a,102b,102c,102d.開閉弁
103a,103b.タンク 104a,104b.ポンプ
105.圧力交換機 106.揚水機

Claims (19)

  1. 水と誘引液とを含む混合液であり、温度および気圧が5℃〜35℃および1気圧の条件下で、前記混合液中の水または誘引液の濃度が10重量%以下のときには、液−液相互溶解した2成分混合液の状態にあり、前記濃度が10重量%よりも大きいときには水相と誘引液相とに相分離した状態にあることを特徴とする、誘引液相を収容するための第1の室と、水相を収容するための第2の室と、前記第1の室と前記第2の室との間に介在する浸透膜とを備える浸透圧発生器内の浸透圧差により生じる液体の流れでタービンを稼働させて発電する循環型浸透圧発電システムにおいて使用するための作業媒体。
  2. 前記温度が25℃であることを特徴とする請求項1に記載の作業媒体。
  3. 前記混合液中の水または誘引液の濃度が7重量%以下のときには、液−液相互溶解した2成分混合液の状態にあり、前記濃度が7重量%よりも大きいときには水相と誘引液相とに相分離した状態にあることを特徴とする請求項1または2に記載の作業媒体。
  4. 前記第1の室が前記第2の室の上方に位置し、前記誘引液の比重が1.1以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の作業媒体。
  5. 前記誘引液がハロゲン化合物であることを特徴とする請求項4に記載の作業媒体。
  6. 前記ハロゲン化合物がフッ素化合物または2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノールであることを特徴とする請求項5に記載の作業媒体。
  7. 下部臨界温度を有することを特徴とする請求項1〜3に記載の作業媒体。
  8. 前記誘引液が、2−ブトキシエタノールと2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノールとの混合液であり、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノールは相制御剤として、2−ブトキシエタノールの相転移温度を変更するための量で含まれていることを特徴とする請求項7に記載の作業媒体。
  9. 前記相制御剤により、前記水と前記誘引液との混合液の下部臨界温度が下方制御されていることを特徴とする請求項8に記載の作業媒体。
  10. 作業媒体を利用して発電する循環型浸透圧発電システムであって:
    水と誘引液とを含み、温度および気圧が5℃〜35℃および1気圧の条件下で、前記混合液中の水または誘引液の濃度が10重量%以下のときには、液−液相互溶解した2成分混合液の状態にあり、前記濃度が10重量%よりも大きいときには水相と誘引液相とに相分離した状態にあることを特徴とする作業媒体;
    処理容器と、前記処理容器内を第1の室と第2の室とに区画する浸透膜と、前記第1の室が位置する前記処理容器に設けられ前記誘引液相液が流入する第1の流入口と、前記第2の室が位置する前記処理容器に設けられ前記水相液が流入する第2の流入口と、前記第1の室が位置する前記処理容器に設けられ、前記第1の室内の液体が流出する流出口とを備える浸透圧発生器;
    前記浸透圧発生器の前記第1の室から前記流出口を通して流出した当該液体の流れで発電するタービン;
    前記タービンを稼働した前記液体を収容するタンク;
    前記タンクから流出した前記液体を水相と誘引液相とに相分離する分離塔;
    分離された当該誘引液相液を前記第1の流入口に送る第1の送液ライン;および
    分離された当該水相液を前記第2の流入口に送る第2の送液ライン;
    を具備するシステム。
  11. 前記作業媒体の温度に関する条件が、25℃である請求項10に記載のシステム。
  12. 前記作業媒体は、前記誘引液中の前記水の濃度が7重量%以下のときには液−液相互溶解した2成分混合溶液の状態にあり、前記濃度が7重量%よりも大きいときには水相と誘引液相とに相分離した状態にあることを特徴とする請求項10または11に記載のシステム。
  13. 前記第1の室が前記第2の室の上方に位置し、前記誘引液の比重が1.1以上であることを特徴とする請求項10〜12の何れか1項に記載のシステム。
  14. 前記第1の送液ラインと、前記第1の室から前記タービンに向う前記液体の流れとの間に架設された圧力交換機を更に具備する請求項10〜13の何れか1項に記載のシステム。
  15. 作業媒体を循環して発電する浸透圧発電方法であって:
    前記作業媒体が、水と誘引液とを含み、温度および気圧が5℃〜35℃および1気圧の条件下で、前記誘引液中の前記水または誘引液の濃度が10重量%以下のときには液−液相互溶解した2成分混合溶液の状態にあり、前記濃度が10重量%よりも大きいときには水相と誘引液相とに相分離した状態にあることを特徴とし、
    当該方法が、
    (1)浸透膜を介在させて配置した当該水相液と当該誘引液相液との浸透圧差により、前記水相液の一部分が前記浸透膜を通過し、それによって液体の流れを生じさせることと、
    (2)前記液体の流れでタービンを稼働させて発電することと、
    (3)前記タンクから流出した前記液体を水相と誘引液相とに相分離することと、
    (4)前記相分離によって得られた当該水相液と当該誘引液相液を浸透膜に向けて送ることと、
    を含む方法。
  16. 前記作業媒体の温度に関する条件が、25℃である請求項15に記載の方法。
  17. 前記作業媒体は、前記誘引液中の前記水または誘引液の濃度が7重量%以下のときには液−液相互溶解した2成分混合溶液の状態にあり、前記濃度が7重量%よりも大きいときには水相と誘引液相とに相分離した状態にあることを特徴とする請求項15または16に記載の方法。
  18. 前記(1)において、前記浸透膜を介在させて前記誘引液相液は、前記水相液の上方に配置され、前記誘引液の比重が1.1以上であることを特徴とする請求項15〜17の何れか1項に記載の方法。
  19. 水と誘引液とを含み、且つ第1の温度区と第2の温度区とを区分する当該臨界温度で、第1の相と第2の相とに相転移し、前記第1の温度区では、当該水と当該誘引液とが液−液相互溶解した2成分混合溶液の状態にあり、当該第2の温度区では、当該水と当該誘引液とが相分離した状態にある、臨界温度を有する作業媒体を用いて、当該誘引液相液を収容するための第1の室と、当該水相液を収容するための第2の室と、前記第1の室と前記第2の室との間に介在する浸透膜とを備える浸透圧発生器内の浸透圧差により生じる液体の流れでタービンを稼働させて発電する循環型浸透圧発電システムにおいて、前記誘引液に、前記誘引液と相互溶解する相制御剤を含ませることによって、当該作業媒体の相を制御することを特徴とする、作業媒体の相制御方法。
JP2014038626A 2014-02-28 2014-02-28 循環型浸透圧発電のための作業媒体、循環型浸透圧発電システムおよび方法、並びに作業媒体の相制御方法 Active JP6169019B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014038626A JP6169019B2 (ja) 2014-02-28 2014-02-28 循環型浸透圧発電のための作業媒体、循環型浸透圧発電システムおよび方法、並びに作業媒体の相制御方法
US14/615,757 US9863405B2 (en) 2014-02-28 2015-02-06 Circulatory osmotic pressure electric power generation system and method, phase control method for working medium, and working medium for circulatory osmotic pressure electric power generation
CN201510090219.XA CN104879264B (zh) 2014-02-28 2015-02-27 循环型渗透压发电系统和方法、工作介质及其相控制方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014038626A JP6169019B2 (ja) 2014-02-28 2014-02-28 循環型浸透圧発電のための作業媒体、循環型浸透圧発電システムおよび方法、並びに作業媒体の相制御方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015161280A JP2015161280A (ja) 2015-09-07
JP6169019B2 true JP6169019B2 (ja) 2017-07-26

Family

ID=53946898

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014038626A Active JP6169019B2 (ja) 2014-02-28 2014-02-28 循環型浸透圧発電のための作業媒体、循環型浸透圧発電システムおよび方法、並びに作業媒体の相制御方法

Country Status (3)

Country Link
US (1) US9863405B2 (ja)
JP (1) JP6169019B2 (ja)
CN (1) CN104879264B (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106368884B (zh) * 2016-09-18 2018-07-03 浙江理工大学 逆流渗透做功装置
CN111271208B (zh) * 2020-03-16 2020-09-29 浙江知瑞科技集团有限公司 一种基于太阳能和渗透能的发电装置
JP7258805B2 (ja) 2020-03-19 2023-04-17 株式会社東芝 作業媒体及び水処理システム
TR202014603A2 (tr) * 2020-09-15 2021-03-22 Repg Enerji Sistemleri San Ve Tic A S Elektri̇k üreti̇m si̇stemi̇
CN112904761B (zh) * 2021-01-15 2022-02-01 四川大学 率定平台渗透压控制系统及其控制方法
CN113833619B (zh) * 2021-08-27 2023-06-23 深圳市安泰科清洁能源股份有限公司 可循环的渗透压发电系统

Family Cites Families (17)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
MA23841A1 (fr) 1995-04-07 1996-12-31 Alberto Vazquez Figueroa Rial Installation pour dessaler l'eau de mer par osmose inverse par pression propre et methode pour dessaler l'eau de mer par osmose inverse par pression propre
AU2584299A (en) * 1998-02-09 1999-08-23 Robert L. Mcginnis Osmotic desalinization process
NO314575B1 (no) * 2000-08-04 2003-04-14 Statkraft Sf Semipermeabel membran og fremgangsmate for tilveiebringelse av elektrisk kraft samt en anordning
JP4166464B2 (ja) * 2001-12-10 2008-10-15 国立大学法人東京工業大学 海水淡水化装置付き浸透圧発電システム
US7780852B2 (en) 2003-07-24 2010-08-24 Effusion Dynamics, Llc Method for converting kinetic energy of gases or liquids to useful energy, force and work
GB0319042D0 (en) 2003-08-13 2003-09-17 Univ Surrey Osmotic energy
CA2668720A1 (en) * 2006-11-09 2008-05-22 Yale University Osmotic heat engine
EA022856B1 (ru) * 2008-12-03 2016-03-31 Оасис Уотер, Инк. Осмотические сетевые накопители в масштабе электроэнергетических предприятий
JP5066117B2 (ja) * 2008-12-16 2012-11-07 積水化学工業株式会社 淡水製造方法及び装置
JP2012041849A (ja) * 2010-08-18 2012-03-01 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 濃度差発電システム
WO2012084960A1 (en) 2010-12-21 2012-06-28 Statkraft Development As Membrane system for pressure retarded osmosis (pro)
JP5433633B2 (ja) 2011-06-06 2014-03-05 株式会社日立製作所 正浸透膜を用いた海水淡水化システム
CN103582520A (zh) * 2011-06-08 2014-02-12 日东电工株式会社 正渗透膜流动系统和正渗透膜流动系统用复合半透膜
US8147697B2 (en) 2011-07-03 2012-04-03 King Abdulaziz City for Science and Technology (KACST) Apparatus and process for desalination of brackish water
CN202228252U (zh) 2011-08-24 2012-05-23 厦门市威士邦膜科技有限公司 具有能量回收的反渗透处理系统
JP2013116432A (ja) 2011-12-01 2013-06-13 Samsung Yokohama Research Institute Co Ltd 溶液の処理方法
CN202811178U (zh) 2012-09-24 2013-03-20 浙江海洋学院 渗透压法盐差能发电装置

Also Published As

Publication number Publication date
CN104879264A (zh) 2015-09-02
JP2015161280A (ja) 2015-09-07
US9863405B2 (en) 2018-01-09
CN104879264B (zh) 2017-09-12
US20150249378A1 (en) 2015-09-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6169019B2 (ja) 循環型浸透圧発電のための作業媒体、循環型浸透圧発電システムおよび方法、並びに作業媒体の相制御方法
JP6400726B2 (ja) 水処理方法、水処理システムおよび水処理装置
KR101020316B1 (ko) 막증류 방식을 이용한 정삼투 담수화 장치
JP2018065114A (ja) 濃縮方法および濃縮装置
JP5933926B2 (ja) 海水淡水化システム及び海水淡水化方法
US20180250635A1 (en) Water treatment system and working medium therefor
US20150135711A1 (en) Circulatory osmotic pressure electricity generation system
KR101140423B1 (ko) 정삼투식 해수 담수화 장치 및 방법
WO2017191829A1 (ja) 超純水製造装置の立ち上げ方法
JP6458302B2 (ja) 逆浸透膜洗浄方法及び逆浸透膜洗浄装置
JP2009195804A (ja) 逆浸透膜モジュールの洗浄方法及び装置
JP2018158303A (ja) 水処理システム及び作業媒体
US20170206992A1 (en) Apparatus for treating radioactive material using multiple separation membranes
KR101298724B1 (ko) 유도용액의 일부가 정삼투 분리기로 직접 재공급되는 막증류 방식의 정삼투 담수화 장치
JP7186579B2 (ja) 水処理に用いるための作業媒体及び水処理システム
JP5793713B2 (ja) バラスト水製造装置
JP2013146642A (ja) 流体膜分離発電システム
JP6210008B2 (ja) 水処理装置
KR101784916B1 (ko) 밸러스트수 처리 시스템
JP6649309B2 (ja) 水処理システム及び作業媒体
JP6685960B2 (ja) 水処理システム及び作業媒体
JP7068116B2 (ja) 水処理システム及び水処理システムに用いられるドロー溶液
JP2017127842A (ja) 水処理システムおよび水処理方法
KR101006919B1 (ko) 탈이온 및 탈기장치
JP2015001209A (ja) 発電装置及び発電方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160826

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170530

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170531

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170627

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6169019

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151