以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る車両用空調装置を自動車に適用したものであり、図1はその車両用空調装置1の概略構成図である。
空気流路をなす空調ケーシング2の空気上流部位には、車室内気を吸入するための内気吸入口3と外気を吸入するための外気吸入口4とが形成されるとともに、吸入口3、4を選択的に開閉する内外気切替ドア5が設けられている。吸入口3、4は、内気吸入口3および外気吸入口4を纏めたものである。また、この内外気切替ドア5は、サーボモータ6等の駆動手段によって開閉される。
この内外気切替ドア5の下流側部位には、ブロワファン7が配設されており、ブロワファン7は、羽根車とこの羽根車を駆動する電動モータとから構成されている。このブロワファン7により吸入口3、4から吸入された空気が、後述する吹出口14〜16に向けて送風されている。ブロワファン7の空気下流側には、エバポレータ8が配設されており、ブロワファン7により送風された空気は全てこのエバポレータ8を通過する。
エバポレータ8は、図示しないコンプレッサ、コンデンサ、膨張弁と共に配管結合されて冷凍サイクルを構成しており、コンプレッサは図示しないエンジンに図示しない電磁クラッチを介して連結され、その電磁クラッチを断続することでON−OFF制御される。エバポレータ8の空気下流側には、ヒータコア10が配設されており、このヒータコア10は、水冷式の走行用エンジンの冷却水を熱源として空気を加熱している。
また、空調ケーシング2には、ヒータコア10をバイパスするバイパス通路12が形成されている。ヒータコア10の空気上流側には、ヒータコア10を通る風量とバイパス通路12を通る風量との風量割合を調節するエアミックスドア13が配設されている。そして、サーボモータ26によってエアミックスドア13の開度を調節して風量割合を調節している。
空調ケーシング2の最下流側部位には、フェイス吹出口14、フット吹出口15、およびデフロスタ吹出口16が設けられている。フェイス吹出口14は、車室内乗員の上半身に空調空気を吹き出すための吹出口である。フット吹出口15は、車室内乗員の足元に空気を吹き出すための吹出口である。
デフロスタ吹出口16は、フロントガラスの内面に向かって空気を吹き出すための吹出口である。以下、フェイス吹出口14、フット吹出口15、およびデフロスタ吹出口16を纏めて吹出口14〜16という。
吹出口14〜16の空気上流側部位には、モードドアとしてのフェイスドア18、フットドア19、デフロスタドア20が配設されていて、サーボモータ29〜31によって駆動され、それぞれの吹出口を開閉することにより、吹出モードが切り換えられる。
フェイス吹出口14には、ルーバー32が設けられている。ルーバー32は、サーボモータ33によって駆動され、フェイス吹出口14から吹き出される空気流の送風方向を揺動によって変える風向板である。
21はサーボモータ6、26、29〜31等の駆動手段とブロワファン7及び電磁クラッチ等を制御する電子制御装置(以下、ECUという)である。ECU21は、中央演算装置(CPU)、随時読み込み書き込み可能な記憶装置(RAM)、および読み込み専用の記憶装置(ROM)等からなる周知のマイクロコンピュータである。
ECU21には、輻射ヒータ40、シートヒータ41、除湿器42、および加湿器43が接続されている。
輻射ヒータ40は、車室内のインストルメントパネル等に配置されて乗員に輻射熱を輻射する。シートヒータ41は、座席のシートクッション、シートバック等に配置され、座席に着座した乗員に輻射熱を輻射する。除湿器42は、車室内の空気を除湿する。加湿器43は、車室内の空気に加湿する。
ECU21には、センサ群28、好み選択部51およびシーン判別部50が接続されている。センサ群28は、温度設定部22、内気温センサ23、外気温センサ24、日射センサ25、温度センサ9、水温センサ11、およびポテンションメーター27を備える。
温度設定部22は、操作者に操作によって設定される車室内温度の設定温度が入力される温度入力部である。
内気温センサ23は、車室内の温度を検出するセンサである。外気温センサ24は、外気の温度を検出するセンサである。日射センサ25は、車室内に侵入する日射量を検出するセンサである。
温度センサ9は、エバポレータ8の温度を検出するセンサである。水温センサ11は、エンジン冷却水の温度を検出するセンサである。ポテンションメーター27は、エアミックスドア13の開度を検出するセンサである。
好み選択部51は、後述するように乗員の操作によって入力される乗員における空調の好みを受け付ける操作受付部である。シーン判別部50は、後述するように現在のシーンを判別する。
ECU21は、センサ群28の出力信号に基づいてコンプレッサをON−OFFさせる電磁クラッチ、ブロワファン7を制御する。ECU21は、サーボモータ26、6、29〜31、33を介してエアミックスドア13、内外気切替ドア5、モード切替ドア18〜20、ルーバー32を制御する。ECU21は、輻射ヒータ40、シートヒータ41、除湿器42、および加湿器43を制御する(図2参照)。
次に、本実施形態のECU21の制御処理について説明する。
本実施形態のECU21は、車室内の乗員の温熱感に影響を与える6つの環境要素のうち4つの環境要素を制御することにより、乗員の温熱感に影響を与える温熱感を制御する(図3参照)。
6つの環境要素とは、車室内の気温、湿度、気流(風速)、輻射熱(放射温度)、乗員の代謝量、乗員の着衣量である。4つの環境要素は、車室内の気温、湿度、気流(風速)、輻射熱(放射温度)である(図3参照)。
ここで、6つの環境要素は、体感温度指標SET*によって温度に換算される。このため、6つの環境要素によって乗員の温熱感が変わる(図4参照)。例えば、気温が上がるほど体感温度が上がる(図5(a)参照)。湿度が上がるほど体感温度が上がる(図5(b)参照)。
また、冷房時に風速が上がるほど体感温度が下がり、暖房時に風速が上がるほど体感温度が上がる(図5(c)参照)。
さらに、乗員へ放射される平均放射温度が上がるほど体感温度が上がる(図5(d)参照)。乗員の代謝量が上がるほど体感温度が上がる(図5(e)参照)。乗員の着衣量が上がるほど体感温度が上がる(図5(f)参照)。
本実施形態のECU21は、ブロワファン7、ルーバー32、加湿器43、内外気切替ドア5、除湿器42、エアミックスドア13、シートヒータ41、輻射ヒータ40を制御することにより、4つの環境要素を制御する。
ブロワファン7は、環境要素としての気流を制御する。ルーバー32は、環境要素としての気流を制御する。加湿器43は、環境要素としての湿度を制御する。内外気切替ドア5は、環境要素としての気流、湿度、気温を制御する。除湿器42は、環境要素としての湿度を制御する。
エアミックスドア13は、環境要素としての気温を制御する。シートヒータ41は、環境要素としての輻射熱を制御する。輻射ヒータ40は、環境要素としての輻射熱を制御する。
このような本実施形態では、ECU21は、4つの環境要素のうち少なくとも2つ以上の環境要素を制御することにより、2つの環境要素によって影響される乗員の温熱感を互いに打ち消すための温熱感制御処理を実行する。
以下、本実施形態におけるECU21の温熱感制御処理について、図7に示すフローチャートに沿って説明する。
ECU21は、図7に示すフローチャートにしたがって、温熱感制御処理を実行する。
まず、ステップS100において、シーン判別部50によって、現在のシーンを判別する。そして、次に、ステップS110において、この判別されたシーンに基づいて、気温操作・湿度操作処理(ステップS120)、気温操作・気流操作処理(ステップS130)、および気温操作・放射操作処理(ステップS140)のうち実施するべき操作処理を選択する。
シーンは、例えば、室内温度、室内湿度、日射量、乗員の活動量、乗員によるオーディオやシートの操作内容等の各種情報に基づくものである。このため、ステップS110において、各種情報に基づいて、気温操作・湿度操作処理、気温操作・気流操作処理、および気温操作・放射操作処理のうち実施するべき操作処理を選択することになる。
このとき、ステップS110において、実行するべき操作処理として、気温操作・湿度操作処理(ステップS120)を選択したとき、気温操作・湿度操作処理(ステップS120)を実行する。
また、ステップS110において、実行するべき操作処理として、気温操作・気流操作処理(ステップS130)を選択したとき、気温操作・気流操作処理(ステップS130)を実行する。
さらに、ステップS110において、実行するべき操作処理として、気温操作・放射操作処理(ステップS140)を選択したとき、気温操作・放射操作処理(ステップS140)を実行する。
以下、本実施形態の気温操作・湿度操作処理(ステップS120)、気温操作・気流操作処理(ステップS130)、および気温操作・放射操作処理(ステップS140)をそれぞれ独立して説明する。
(a)気温操作・湿度操作処理(ステップS120)
ECU21は、図8のフローチャートにしたがって、気温操作・湿度操作処理を実行する。
まず、ステップS1において、内気温センサ23、外気温センサ24、日射センサ25、温度センサ9、水温センサ11等からなるセンサ群28の各検出値と、車両乗員が温度設定部22に設定した設定温度Tsetとを読み込む。
次のステップS2において、温度センサ9の検出温度に基づく電磁クラッチのオン、オフの制御を実行する。このため、エバポレータ8の温度が所定値以下になると電磁クラッチをオンしてコンプレッサを稼働し、エバポレータ8の温度が所定値よりも大きくなると電磁クラッチをオフしてコンプレッサを停止する。これにより、コンプレッサは、走行用エンジンによって間欠的に駆動されることになる。
次に、ステップS3において、車室内の気温を設定温度Tsetに近づけるために必要な吹出風の必要吹出温度(以下、単にTAOともいう)をセンサ群28の各検出値に基づいて演算する。
次に、ステップS4において、ブロワ風量が一定になるようにブロワファン7を制御する。このため、ブロワファン7から吹出口14〜16を通して車室内に吹き出される風量が一定になる。
次に、ステップS5において、サーボモータ26を介してエアミックスドア13を制御することにより、車室内の気温を揺らがせる制御を実行する。このため、サーボモータ26を制御してエアミックスドア13の開度を周期的に変化させる。
これにより、ヒータコア10を通る風量とバイパス通路12を通る風量との風量割合を周期的に変化させる。このため、吹出口14〜16から吹き出される空気温度が周期的に変化することになる。よって、車室内の気温が周期的に変化することになる。つまり、車室内の気温が揺らぐことになる。
次に、ステップS6では、必要吹出温度TAOと吹出モードパターンデータに基づき、吹出モードをフェイスモード、バイレベルモード、フットモードのいずれかに決定し、この決定した吹出モードを実行するようにサーボモータ29〜31を制御する。
ここで、吹出モードパターンデータは、必要吹出温度TAOと車室内へ吹き出す空気流の吹出モードとの関係を表わすデータである。フェイスモードとは、フェイス吹出口14を開けて、フット吹出口15およびデフロスタ吹出口16を閉じる吹出モードである。
バイレベルモードとは、フェイス吹出口14およびフット吹出口15を開けて、デフロスタ吹出口16を閉じる吹出モードである。フットモードとは、フット吹出口15を開けて、フェイス吹出口14およびデフロスタ吹出口16を閉じる吹出モードである。
次に、ステップS7において、除湿器42を周期的に稼働させる。具体的には、エアミックスドア13によってヒータコア10を通る風量を増加させるタイミングに同期して、除湿器42を稼働させる。その後、ステップS1に戻る。このため、ステップS1〜S7の各処理を繰り返すことになる。
このため、吹出口14〜16から吹き出される空気温度が上昇するタイミングに同期して除湿器42を稼働させることになる。つまり、車室内の気温が温度Taから温度Tbに上昇する毎に、除湿器42によって車室内を除湿することになる。
換言すれば、エアミックスドア13と除湿器42とを制御して、車室内の気温と湿度とを同時に揺るがせるように制御することにより、車室内の気温のゆらぎに伴って車室内の湿度がゆらぐことになる。
この際に、車室内の気温の上昇に伴う体感温度の上昇を車室内の湿度の低下に伴う体感温度の低下が互いに打ち消すことになる。
つまり、車室内の気温に影響される体感温度を上げて、車室内の湿度に影響される体感温度を下げることにより、車室内の気温に影響される体感温度と車室内の湿度に影響される体感温度とを互いに打ち消すことになる。
以上により、乗員に対して車室内の気温のゆらぎ効果を与えつつ、気温のゆらぎに伴う違和感を湿度のゆらぎによって抑えることができる。
この場合、ECU21は、ブロワ風量が一定になるようにブロワファン7を制御する。このため、風切り音の変化など耳障りな聴感への違和感を与えずに、気温のゆらぎ効果を乗員に与えることができる。
これに加えて、ブロワ風量が上述の如く一定であるため、気流の変化に伴って乗員の触覚への違和感を与えることを未然に防ぐことができる。
すなわち、乗員における温熱感以外の聴感や触覚(すなわち、他の感覚)への影響を抑えつつ、2つ以上の環境要素によって影響される乗員の温熱感を互いに打ち消すことができる。
以上により、ブロワ風量を一定にして、他の感覚としての聴覚や触覚への影響を抑えつつ、車室内の乗員の温熱感の変化に伴って乗員に生じる違和感を抑えることができる。このことにより、長距離ドライブなどの温度慣れを抑制したいシーン、音楽鑑賞に没頭したいシーンなどに有効となる。
(b)気温操作・気流操作処理(ステップS130)
ECU21は、図10のフローチャートにしたがって、気温操作・気流操作処理を実行する。
まず、上記ステップS120と同様に、センサ読み込み処理(ステップS1)、コンプレッサ制御処理(ステップS2)、TAO演算処理(ステップS3)を実行する。
次に、ステップS4aにおいて、ブロワ風量を周期的に変化させるようにブロワファン7の電動モータを制御する。このため、ブロワファン7から吹出口14〜16を通して車室内に吹き出される風量が周期的に変化させることになる。これにより、車室内の気流にゆらぎが生じる。
次に、ステップS5において、サーボモータ26を介してエアミックスドア13を制御することにより、車室内の気温を揺らがせる制御を実行する。このため、サーボモータ26を制御してエアミックスドア13の開度を周期的に変化させる。
これにより、ヒータコア10を通る風量とバイパス通路12を通る風量との風量割合を周期的に変化させる。このため、吹出口14〜16から吹き出される空気温度が周期的に変化することになる。よって、車室内の気温が周期的に変化することになる。つまり、車室内の気温が揺らぐことになる。
このとき、ブロワ風量(すなわち、風量レベル)が大きくなるタイミングに同期して車室内の気温を上昇させる。このとき、吹出口14〜16から冷風が吹き出されているときには、車室内の気温が温度Taから温度Tbに上昇する毎に、吹出口14〜16から吹き出される冷風量を風量Haから風量Hbに上昇させることになる(図10、図11参照)。
その後、吹出モード制御(S6)を実行してからステップS1に戻る。このため、ステップS1、S2、S3、S4a、S5、S6の各処理を繰り返すことになる。
以上により、ECU21は、ブロワファン7とエアミックスドア13とを制御して車室内の気温と冷風量(すなわち、気流)を同時に独立してゆるがせる。このため、車室内の気温のゆらぎに伴って車室内に吹き出される冷風量がゆらぐことになる。
この際に、車室内の気温の上昇に伴う体感温度の上昇を車室内吹き出される冷風量の増大に伴う体感温度の低下が互いに打ち消すことになる。
つまり、車室内の気温に影響される体感温度を上げて、車室内の冷風(すなわち、気流)に影響される体感温度を下げることにより、車室内の気温に影響される体感温度と車室内の冷風に影響される体感温度とを互いに打ち消すことになる。
このため、乗員に対して車室内の気温のゆらぎ効果を与えつつ、気温のゆらぎに伴う違和感を冷風量のゆらぎによって抑えることができる。
(c)気温操作・放射操作処理(ステップS140)
ECU21は、図12のフローチャートにしたがって、気温操作・放射操作処理を実行する。
まず、上記ステップS120と同様に、センサ読み込み処理(ステップS1)、コンプレッサ制御処理(ステップS2)、TAO演算処理(ステップS3)を実行する。
次に、ステップS4bにおいて、予め決められたTAOとブロワ電圧との関係を示すTAO/ブロワ関係データと、ステップS3で求められたTAOとに基づいてブロワファン7の電動モータに与えるブロワ電圧を決める。これに加えて、この決められたブロワ電圧を電動モータに印加する。このため、ステップS3で求められたTAOに基づくブロワ風量をブロワファン7から吹出口14〜16を通して車室内に吹き出される。
次に、ステップS5において、サーボモータ26を介してエアミックスドア13を制御することにより、車室内の気温を揺らがせる制御を実行する。このため、サーボモータ26を制御してエアミックスドア13の開度を周期的に変化させる。
これにより、ヒータコア10を通る風量とバイパス通路12を通る風量との風量割合を周期的に変化させる。このため、吹出口14〜16から吹き出される空気温度が周期的に変化することになる。よって、車室内の気温が周期的に変化することになる。つまり、車室内の気温が揺らぐことになる。その後、吹出モード制御(ステップS6)を実行してからステップS8の輻射熱ゆらぎ制御処理を実行する。
この際に、輻射ヒータ40をゆらぎ制御を実行する。具体的には、輻射ヒータ40から乗員に輻射される熱量を周期的に変化させる。つまり、車室内の気温が高くなるタイミングに同期して輻射ヒータ40から乗員に輻射される熱量を熱量Baから熱量Bbへ低下させる(図13参照)。その後、ステップS1に戻る。このため、ステップS1、S2、S3、S4b、S5、S8の各処理を繰り返すことになる。
以上により、ECU21は、エアミックスドア13と輻射ヒータ40とを制御して、車室内の気温と乗員に輻射される輻射熱の熱量とを同時に独立して揺らぐように制御する。このため、車室内の気温のゆらぎに伴って乗員に輻射される輻射熱の熱量がゆらぐことになる。
この際に、車室内の気温の上昇に伴う体感温度の上昇を乗員に輻射される輻射熱の熱量の低下に伴う体感温度の低下が互いに打ち消すことになる。
つまり、車室内の気温に影響される体感温度を上げて、輻射熱に影響される体感温度を下げることにより、車室内の気温に影響される体感温度と輻射熱に影響される体感温度とを互いに打ち消すことになる。
このため、乗員に対して車室内の気温のゆらぎ効果を与えつつ、気温のゆらぎに伴う違和感を輻射熱の熱量のゆらぎによって抑えることができる。
以上説明した本実施形態によれば、車両用空調装置1は、エアミックスドア13、ブロワファン7、除湿器42、シートヒータ41を制御するECU21を備える。エアミックスドア13、ブロワファン7、除湿器42、シートヒータ41等は、車室内の乗員の温熱感に影響を与える複数の環境要素をそれぞれ調整する。
本実施形態では、複数の環境要素としては、車室内の気流、湿度、気温、輻射熱といった4つの環境要素が用いられる。
エアミックスドア13、ブロワファン7、除湿器42、シートヒータ41は、4つの環境要素を調整する環境調整装置である。ECU21は、エアミックスドア13、ブロワファン7、除湿器42、シートヒータ41のうち2つ以上の機器を制御する制御部(ステップS120、S130、S140)を備える。
ECU21は、乗員の温熱感に影響を与える4つの環境要素のうち2つ以上の環境要素を同時に揺らがせるように制御することにより、2つ以上の環境要素によって影響される乗員の温熱感を互いに打ち消す。これにより、車両用空調装置1において、車室内の乗員の温熱感の変化に伴って乗員に生じる違和感を抑えることができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、気温操作・湿度操作処理(ステップS120)を実行する際に、車室内の気温のゆらぎ制御を実施する際に室内の平均気温を一定にする例について説明した。しかし、これに代えて、車両走行時に生じる風圧であるラム圧(RAM圧)の変化に応じて車室内の平均気温を変化させる本第2実施形態について図14を参照して説明する。
本実施形態のECU21は、気温操作・湿度操作処理(ステップS120)を実行する際に、ブロワファン7を制御する際に、ラム圧の変化を考慮してブロワファン7の風量を補正する処理を実施しない。このため、ブロワファン7から吹出口14〜16を通して車室内に吹き出される風量がラム圧に応じて変化する。
このため、ブロワファン7から車室内に吹き出される風量は、車速が大きくなると大きくなり、ブロワファン7から車室内に吹き出される風量は、車速が小さくなると小さくなる(図14参照)。
本実施形態のECU21は、気温操作・湿度操作処理(ステップS120)を実行する際に、エアミックスドア13を制御して、自動車の速度を検出する車速センサの検出値に応じて車速が大きくなるほど室内の平均気温を上げるように気温を揺らがせる。
一方、ECU21は、気温操作・湿度操作処理(ステップS120)を実行する際に、エアミックスドア13を制御して、車速が小さくなるほど室内の平均気温を下げるように気温を揺らがせる。
さらに、ECU21は、上記第1実施形態と同様に、吹出口14〜16から吹き出される空気温度が上昇するタイミングに同期して除湿器42を稼働させることになる。つまり、車室内の気温が温度Taから温度Tbに上昇する毎に、除湿器42によって車室内を除湿することになる。
以上により、ラム圧の変化による風量変化に対して、風量補正をせずに乗員の体感温を保つことができる。この場合、車速と連動した自然な風量により、走行感を演出し注意喚起したいシーン等には最適である。
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、気温操作・気流操作処理(ステップS130)を実施する際に、気温や風量の振幅値を一定にした例について説明した。しかし、これに代えて、気温や風量の振幅値を変化させる本第3実施形態について図15を参照して説明する。
本実施形態のECU21は、気温操作・気流操作処理(ステップS130)を実施する際に、吹出口14、15、16から車室内に吹き出される空気温度の振幅値(すなわち、変動値)を変化させるように、サーボモータ26を介してエアミックスドア13を制御する(図15参照)。
このことにより、気温操作・気流操作処理(ステップS130)を実施する際に、車室内の気温の振幅値(すなわち、変動値)を変化させるように、サーボモータ26を介してエアミックスドア13を制御することになる。
このため、気温操作・気流操作処理(ステップS130)を実施する際に、例えば、車室内の気温のゆるがせ方を強調することができる。図15では、気温の最小値taを維持した状態で、気温の最大値tbが最大値td(>tb)に変化した例を示している。
これに加えて、ECU21は、気温操作・気流操作処理(ステップS130)を実施する際に、ブロワファン7から吹出口14、15、16を通して車室内に吹き出される送風量の振幅値(すなわち、変動値)を変化させるように、ブロワファン7を制御する(図15参照)。
気温操作・気流操作処理(ステップS130)を実施する際に、例えば、気流のゆらがせ方を抑制することができる。図15では、送風量の最小値Haを維持した状態で、送風量の最大値Hbが最大値Hd(<Hb)に変化した例を示している。
以上説明した本実施形態によれば、ECU21が気温操作・気流操作処理(ステップS130)を実施する際に、気温や風量の振幅を変化させることにより、車室内の気温や風量のゆらがせ方を強調したり、気流や風量のゆらがせ方を抑制することができる。このため、例えば、気温や風量によって車室内の偏日射により乗員が感じるほてりに対処することができる。
(第4実施形態)
上記第1実施形態では、シーン判別部50によって判別されたシーンに応じて、気温操作・湿度操作処理(ステップS120)、気温操作・気流操作処理(ステップS130)、気温操作・放射操作処理(ステップS140)のうち実施するべき処理を選択した例について説明した。
しかし、これに代えて、乗員の空調の好みに応じて気温操作・湿度操作処理(ステップS120)、気温操作・気流操作処理(ステップS130)、気温操作・放射操作処理(ステップS140)のうち実施するべき処理を選択した本第4実施形態について図16を参照して説明する。
本実施形態のECU21は、図7に代わる図16に示すフローチャートにしたがって、温熱感制御処理を実行する。
図16は、図7中のステップS100、S110に代わるステップS100A、S110Aを備える。図16において、図7と同一符号は同一ステップを示す。
ECU21は、ステップS100Aにおいて、入力受付部として、乗員の操作によって好み選択部51に入力される乗員の好みを受け付ける。
ECU21は、ステップS110Aにおいて、ステップS100Aで受け付けた乗員の好みに合わせて、気温操作・湿度操作処理(ステップS120)、気温操作・気流操作処理(ステップS130)、気温操作・放射操作処理(ステップS140)のうち実施するべき処理を選択する。
すなわち、ECU21は、ステップS100Aで入力される乗員の好みに合わせて4つの環境要素(気流、湿度、気温、輻射熱)のうち制御するべき2つ以上の環境要素を選択する(ステップS110A)。
例えば、乗員の好みとして「ドラフト感」であることが望ましいと判別された場合には、気温操作・気流操作処理(ステップS130)が選択される。
すなわち、ステップS110Aにおいて、4つの環境要素のうち制御するべき2つ以上の環境要素として、気温、気流を選択する。その後、ECU21は、ステップS110Aにおいて選択した処理を実行する。
なお、気温操作・湿度操作処理(ステップS120)、気温操作・気流操作処理(ステップS130)、気温操作・放射操作処理(ステップS140)の説明を省略する。
以上説明した本実施形態では、ECU21は、ステップS110Aにおいて乗員の好みに合わせて、気温操作・湿度操作処理(ステップS120)、気温操作・気流操作処理(ステップS130)、気温操作・放射操作処理(ステップS140)のうち1つの処理を選択して実行する。
このため、ECU21は、乗員の好みに合わせて4つの環境要素のうち制御するべき2つ以上の環境要素を選択する。ECU21は、ブロワファン7、エアミックスドア13、輻射ヒータ40、除湿器42等を制御して、この選択された2つ以上の環境要素を制御することにより、2つ以上の環境要素によって影響される乗員の温熱感を互いに打ち消すことになる。
以上により、乗員が得られる車室内の空調に関する満足度を高めることができる。
(第5実施形態)
上記第1実施形態では、車両用空調装置1では、車室内全体の気温操作・気流・湿度・輻射熱を制御する例について説明した。しかし、これに代えて、車室内において気温操作・気流・湿度・輻射熱を座席毎に制御する本第5実施形態について図17を参照して説明する。
本実施形態の車両用空調装置1は、車室内において気温・気流・湿度・輻射熱を座席毎に独立して制御するユニット60A、60Bを備える。
ユニット60A、60Bは、座席毎に独立して気温・気流・湿度・輻射熱を制御する環境調整装置である。ユニット60A、60Bにおいて、気温・気流・湿度・輻射熱を制御する構成は、上記第1実施形態の車両用空調装置1と同様である。
このように構成される本実施形態では、ユニット60A、60Bがそれぞれ気温・気流・湿度・輻射熱を座席毎に独立して制御する。このため、気温・気流・湿度・輻射熱をタイミングよく、独立して、更には振幅値(すなわち、操作量)を独立して強調/抑制させて揺らがせることができる。
これにより、次の図17(a)(b)(c)の場合のように、車両の進行方向によって偏日射を受ける座席が変わったり、各座席の乗員の空調の好みが異なる場合にも、座席毎に異なる空調状態に制御することにより、良好に対処することができる。
図17(a)車室内の運転席側が南側を向いて運転席側だけに照射される日射量が大きくなる場合である。図17(b)は、運転席に着座する乗員はほてりを嫌い暑がりであり、助手席に着座する乗員は風を嫌い寒がりである場合である。図17(c)車室内の助手席側が南側を向いて助手席側だけに照射される日射量が大きくなる場合である。
(他の実施形態)
(1)上記第1〜第5実施形態では、ブロワファン7を制御して車室内の気流を制御した例について説明した。しかし、これに代えて、ルーバー32或いは内外気切替ドア5を制御してもよい。
或いは、ブロワファン7、ルーバー32、および内外気切替ドア5のうち2つ以上を制御して車室内の気流を制御してもよい。
(2)上記第1〜第5実施形態では、除湿器42を制御して車室内の湿度を制御した例について説明した。しかし、これに代えて、加湿器43を制御して車室内の湿度を制御してもよい。
(3)上記第1〜第5実施形態では、除湿器42を制御して車室内の湿度を制御した例について説明した。しかし、これに代えて、内外気切替えドア5を制御して車室内の湿度を制御してもよい。
或いは、除湿器42および加湿器43をそれぞれ制御して車室内の湿度を制御してもよい。
(4)上記第1〜第5実施形態では、輻射ヒータ40を制御して乗員に輻射される輻射熱を制御した例について説明した。しかし、これに代えて、シートヒータ41を制御して乗員に輻射される輻射熱を制御してもよい。
或いは、輻射ヒータ40およびシートヒータ41を制御して乗員に輻射される輻射熱を制御してもよい。
(5)上記第1〜第5実施形態では、2つの環境要素をゆらがせる制御を実施する際に、2つの環境要素にうち一方の環境要素によって影響される乗員の温熱感を他方の環境要素によって影響される乗員の温熱感によって互いに打ち消す例について説明した。
これに限らず、2つの環境要素をゆらがせる制御を実施していない場合に、一方の環境要素によって影響される乗員の温熱感を他方の環境要素によって影響される乗員の温熱感によって互いに打ち消すようにしてもよい。
但し、2つの環境要素とは、気温、気流、湿度、輻射熱のうち2つの環境要素である。
(6)上記第1〜第5実施形態では、ECU21が気温操作・気流操作処理(ステップS130)を実行する際に、吹出口14、15、16から吹き出される冷風量を揺らがせる例について説明した。しかし、これに代えて、吹出口14、15、16から吹き出される温風量を揺らがせるようにしてもよい。
(7)上記第1〜第5実施形態では、複数の環境要素として、車室内の気流、湿度、気温、輻射熱といった4つの環境要素を用いた例について説明した。これに限らず、車室内の気流、湿度、気温、輻射熱に、触感等の他の環境要素を追加したものを複数の環境要素としてもよい。
すなわち、複数の環境要素としては、車室内の気流、湿度、気温、輻射熱を含むものであればよい。また、車室内の気流、湿度、気温、輻射熱に対して追加される他の環境要素として、触感に限定されない。
(8)上記第1〜第5実施形態では、乗員に与える輻射熱を環境要素とした例について説明したが、これに代えて、乗員から熱を奪う冷熱を環境要素としてもよい。
(9)上記第1〜第5実施形態では、ステップS120で2つの環境要素として気温・湿度を採用し、ステップS130で2つの環境要素として気温・気流を採用し、ステップS140で2つの環境要素として気温・輻射熱(放射)を採用した例について説明した。
しかし、これらの「気温・湿度」、「気温・気流」、「気温・輻射熱」といった、3つの環境要素の組み合わせ以外の環境要素の組み合わせを採用してもよい。
例えば、2つの環境要素として、「湿度・輻射熱」といった2つの環境要素を用いてもよい。この場合、湿度によって影響される乗員の温熱感と輻射熱によって影響される乗員の温熱感とを互いに打ち消すようにしてもよい。
2つの環境要素として、「気流・輻射熱」といった2つの環境要素を用いてもよい。この場合、気流によって影響される乗員の温熱感と輻射熱によって影響される乗員の温熱感とを互いに打ち消すようにしてもよい。
(10)上記第1〜第5実施形態では、ステップS120、S130、S140において2つの環境要素によって影響される乗員の温熱感を互いに打ち消すようにした例について説明した。
しかし、これに代えて、4つの環境要素のうち2つ以上の環境要素によって影響される乗員の温熱感を互いに打ち消すようにしてもよい。
例えば、気温・気温、輻射熱を2つ以上の環境要素として採用する。そして、「気温によって影響される乗員の温熱感」と「湿度によって影響される乗員の温熱感」と「輻射熱によって影響される乗員の温熱感」とのうち、1つの温熱感を他の温熱感によって打ち消すようにする。
(11)上記第1〜第5実施形態では、ステップS140において輻射ヒータ40を用いて乗員に輻射される輻射熱を制御した例について説明した。しかし、これに代えて、シートヒータ41を用いて乗員に輻射される輻射熱を制御してもよい。
(12)上記第1〜第5実施形態では、ステップS120において除湿器42を用いて車室内の湿度を制御した例について説明した。しかし、これに代えて、加湿器43を用いて車室内の湿度を制御してもよい。
(13)本発明の実施にあたり、上記第1〜第5実施形態において、時刻情報、乗員状態、乗員情報、季節情報等の各種情報を用いてステップS120〜S140の制御処理を実施してもよい。
(14)上記第4実施形態では、好み選択部51において、乗員における空調の好みが乗員の操作によって入力される例について説明したが、これに代えて、好み選択部51において、乗員における空調の好みが乗員の音声によって入力されるようにしてもよい。
(15)上記第第1〜第5実施形態では、複数の環境要素として、4つの環境要素(具体的には、車室内の気流、湿度、気温、輻射熱)を用いた例について説明した。しかし、これに限らず、複数の環境要素としては、4つの環境要素を含むものであればよく、5つ以上の環境要素を用いてもよい。
(16)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、センサから車両の外部環境情報(例えば車外の湿度)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。
(まとめ)
上記第1〜第5実施形態、および他の実施形態の一部または全部に記載された第1の観点によれば、車室内の乗員の温熱感に影響を与える複数の環境要素を調整する環境調整装置を制御する車両用空調装置であって、環境調整装置を制御して複数の環境要素のうち2つ以上の環境要素を制御することにより、2つ以上の環境要素によって影響される乗員の温熱感を互いに打ち消す制御部を備える。
第2の観点によれば、複数の環境要素は、少なくとも前記車室内の気流、湿度、気温、輻射熱を含んでいる。
第3の観点によれば、制御部は、2つ以上の環境要素のうち1つの環境要素により影響される乗員の温熱感を上げて、2つ以上の環境要素のうち1つの環境要素以外の他の環境要素により影響される乗員の温熱感を下げることにより、2つ以上の環境要素によって影響される乗員の温熱感を互いに打ち消す。
第4の観点によれば、複数の環境要素に対する乗員の好みの入力を受ける入力受付部と、入力受付部に入力される乗員の好みに合わせて複数の環境要素のうち制御するべき2つ以上の環境要素を選択する選択部と、を備える。
制御部は、環境調整装置を制御して選択部によって選択された2つ以上の環境要素を制御することにより、2つ以上の環境要素によって影響される乗員の温熱感を互いに打ち消す。
したがって、乗員の好みに合わせて選択された2つ以上の環境要素を制御することにより、2つ以上の環境要素によって影響される乗員の温熱感を互いに打ち消すことになる。このため、乗員が得られる車室内の空調に関する満足度を高めることができる。
第5の観点によれば、制御部は、環境調整装置を制御して2つ以上の環境要素をそれぞれ独立して揺らがせるように制御して、2つ以上の環境要素によって影響される乗員の温熱感を互いに打ち消す。
第6の観点によれば、制御部は、環境調整装置を制御して2つ以上の環境要素のうち1つの環境要素を揺るがせる際の振幅値を変更する。
第7の観点によれば、制御部は、環境調整装置を制御して2つ以上の環境要素を同時に揺らがせるように制御して、2つ以上の環境要素によって影響される乗員の温熱感を互いに打ち消す。
第8の観点によれば、制御部は、環境調整装置を制御して環境要素を周期的に変化させるように制御することにより、環境要素を揺らがせるように制御する。
第9の観点によれば、制御部は、環境調整装置を制御して2つ以上の環境要素を制御することにより、乗員における温熱感以外の他の感覚への影響を抑えつつ、2つ以上の環境要素によって影響される乗員の温熱感を互いに打ち消す。
したがって、他の感覚への影響を抑えつつ、車室内の乗員の温熱感の変化に伴って乗員に生じる違和感を抑えることができる。
第10の観点によれば、他の感覚は、車室内の気流に基づく乗員における聴覚であり、
制御部は、車室内の気流を一定にするように環境調整装置を制御することにより、乗員における聴覚への影響を抑える。
したがって、乗員における聴覚への影響を抑えつつ、車室内の乗員の温熱感の変化に伴って乗員に生じる違和感を抑えることができる。