JP2020029545A - アクリルゴム系グラフト共重合体および熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
即ち、本発明は以下を要旨とする。
(1) 該ゴム質重合体(a)の体積平均粒子径が100〜300nmである。
(2) 該グラフト共重合体のメタノール不溶分中のアセトン可溶分が5〜20質量%である。
(3) 該グラフト共重合体のグラフト率が70〜120%である。
(4) 目開き20メッシュの篩にて粗粒を篩別した該グラフト共重合体2gを50mlメスリンダーに入れ、全容積が50mlとなるようにトルエンを加え、23℃で24時間静置した際の該グラフト共重合体膨潤体の体積が10〜35mlである。
(5) JIS−K−6720規格に準拠して測定した該グラフト共重合体の嵩密度が0.40〜0.60g/cm3である。
また、本願明細書において「(メタ)アクリル」とは「アクリル」と「メタクリル」の一方または双方をさす。
本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)は、アクリル酸アルキルエステル系単量体単位と多官能性単量体単位を含むゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体をグラフト重合してなるグラフト共重合体であって、下記(1)〜(5)の物性をすべて満たすことを特徴とする。
(1) 該ゴム質重合体(a)の体積平均粒子径が100〜300nmである。
(2) 該グラフト共重合体のメタノール不溶分中のアセトン可溶分が5〜20質量%である。
(3) 該グラフト共重合体のグラフト率が70〜120%である。
(4) 目開き20メッシュの篩にて粗粒を篩別した該グラフト共重合体1gを50mlメスリンダーに入れ、全容積が50mlとなるようにトルエンを加え、23℃で24時間静置した際の該グラフト共重合体膨潤体の体積が20ml未満である。
(5) JIS−K−6720規格に準拠して測定した該グラフト共重合体の嵩密度が0.40〜0.60g/cm3である。
本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)に用いるゴム質重合体(a)は、アクリル酸アルキルエステル系単量体単位と多官能性単量体単位を必須成分とする。
アニオン系乳化剤としては、カルボン酸塩(例えば、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等)、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられ、前記多官能性単量体の加水分解抑制といった点から、サルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等が好ましく、これらの中でも特に重合安定性に優れ、凝固剤の選択肢が広い点から、アルケニルコハク酸ジカリウムが好ましい。これらの乳化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)は、このようなゴム質重合体(a)の存在下、ビニル系単量体をグラフト重合して得られたものである。
このグラフト重合に用いるビニル系単量体は、不飽和ニトリル系単量体および芳香族ビニル系単量体、および必要に応じて他のビニル系単量体を含むことが好ましい。
本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体(a)ラテックスの存在下、上記のような単量体混合物を乳化重合することにより製造されることが好ましい。
乳化重合の際には、グラフト率やグラフト成分の分子量を制御するための連鎖移動剤を用いてもよい。
アクリルゴム系グラフト共重合体(A)のラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入し、グラフト共重合体を固化させる。次いで、固化したグラフト共重合体を、水または温水中に再分散させてスラリーとし、グラフト共重合体中に残存する乳化剤残渣を水中に溶出させ、洗浄する。次いで、スラリーを脱水機等で脱水し、得られた固体を気流乾燥機等で乾燥することによって、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)が粉体または粒子として回収される。
なお、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)ラテックスに、必要により他の重合体ラテックス、例えば後述のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)以外のグラフト共重合体のラテックスを予め混合した後に前記回収操作を行っても良い。
従って、アクリルゴム系グラフト共重合体の製造においては、ゴム質重合体(a)とビニル系単量体とをこのようなゴム質重合体(a)含有量のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)が得られるように用いることが好ましい。
(アセトン可溶分)
本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)は、そのメタノール不溶分100質量%に対するアセトン可溶分が5〜20質量%であり、5〜10質量%が好ましい。アクリルゴム系グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分が上記範囲であると、成形条件に対する外観特性の依存性が小さくなるとともに熱安定性が向上し、良好な外観を維持することができる。アクリルゴム系グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分は、後掲の実施例の項に記載される方法で求められる。
本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)のグラフト率は70〜120%であり、70〜100%が好ましく、70〜90%が特に好ましい。グラフト共重合体(A)のグラフト率が上記範囲であると、得られるアクリルゴム系グラフト共重合体(A)の嵩密度および貯蔵安定性が良好であり、また、このアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を用いて得られる熱可塑性樹脂組成物は良好な衝撃強度、耐薬品性、外観および熱安定性を保つことができる。アクリルゴム系グラフト共重合体(A)のグラフト率は、後掲の実施例の項に記載される方法で求められる。
本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)は、目開き20メッシュの篩にて粗粒を篩別した該グラフト共重合体2gを50mlメスリンダーに入れ、全容積が50mlとなるようにトルエンを加え、23℃で24時間静置した際の該グラフト共重合体膨潤体の体積(以下、「トルエン膨潤体の体積」と称す場合がある。)が10〜35mlであり、好ましくは10〜30mlである。トルエン膨潤体の体積が上記上限以下であれば、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)の嵩密度および貯蔵安定性が良好であり、また、このアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を用いて得られる熱可塑性樹脂組成物は良好な耐薬品性、外観および熱安定性を保つことができる。
本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)は、JIS−K−6720規格に準拠して測定した該グラフト共重合体の嵩密度が0.40〜0.60g/cm3である。嵩密度が上記範囲内であれば、高嵩密度であり、輸送性、貯蔵安定性等において好ましい。
本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の還元粘度は0.3〜0.8g/dl、特に0.4〜0.7g/dlであることが好ましい。アクリルゴム系グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の還元粘度が上記下限以上であると衝撃強度がより高くなり、上記上限以下であると良好な外観および成形性を保つことができる。アクリルゴム系グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の還元粘度は、後掲の実施例の項に記載される方法で求められる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述の本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を含むものである。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)の1種のみを含むものであってもよく、ゴム質重合体(a)の単量体組成や粒子径、ビニル系単量体の単量体組成や、物性等の異なるアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を2種以上を含むものであってもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)以外の他の熱可塑性樹脂(B)を含有していてもよい。この場合、熱可塑性樹脂(B)としては、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のスチレン系エラストマー、各種オレフィン系エラストマー、各種ポリエステル系エラストマー、スチレン系樹脂、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミド(ナイロン)等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
グラフト共重合体(B)に用いるゴム質重合体(以下、このゴム質重合体を「ゴム質重合体(b)」と称す。)は、アクリル酸エステル系単量体単位を必須成分とすることが好ましい。
このビニル系単量体としては、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)に用いるビニル系単量体と同様のものを用いることができ、その好適なビニル系単量体の種類や使用割合についても同様である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、樹脂成分として、上述のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を含むことを必須とし、必要により他の熱可塑性樹脂(B)を含む熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物がアクリルゴム系グラフト共重合体(A)以外の前述のグラフト共重合体(B)を含むことで、得られる熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度と外観特性の両立という効果が奏されるが、この含有量が多過ぎると、得られる成形品の外観等が低下する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、顔料や染料等の着色剤、熱安定剤、光安定剤、補強剤、充填剤、難燃剤、発泡剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、加工助剤等が含まれてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)と必要に応じて他の熱可塑性樹脂(B)およびその他の成分とを、V型ブレンダーやヘンシェルミキサー等の混合装置で混合し、その混合装置により得た混合物を溶融混練することで製造される。その溶融混練の際には、単軸または二軸の押出機、バンバリーミキサー、加熱ニーダー、ロール等の混練機などが用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる本発明の熱可塑性樹脂成形品は、様々な用途に使用することができる。
この場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物による被覆層を形成する基材の構成材料としての他の樹脂としては、例えば、上述したその他の熱可塑性樹脂(B)や、ABS樹脂やハイインパクトポリスチレン系樹脂(HIPS)等のゴム変性熱可塑性樹脂、フェノール樹脂やメラミン樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。
ゴム質重合体およびアクリルゴム系グラフト共重合体の物性等は、以下の方法で測定した。
ラテックスの固形分は、ラテックス1gを正確に秤量し、200℃で20分かけて揮発分を蒸発させた後の残渣物を計量し、下記の式より求めた。
重合転化率は、前記固形分を測定し、下記の式より求めた。
日機装(株)製動的光散乱式 粒子径・粒度分布測定装置 ナノトラックUPA−EX150で、ローディングインデックスが0.1〜100となるようにゴム質重合体ラテックスを蒸留水にて希釈後、動的光散乱法より体積平均粒子径を求めた。
グラフト共重合体3.0gにメタノール500mlを加え、室温で4時間攪拌後、メタノール可溶分(ノンポリマー成分)の抽出を行った。続いて、ガラスフィルターにてメタノール不溶分(ポリマー成分)を分離後、乾燥して得られたメタノール不溶分の質量を測定した。これにアセトン80mlを加え室温で15時間静置後、30000rpmで60分間遠心分離を行い、得られた上清(アセトン可溶分)をエバポレーターにて濃縮後、メタノールにて再洗浄を行い、乾燥して得られたアセトン可溶分の質量を測定した。
下記式によりメタノール不溶分中のアセトン可溶分比率を算出した。
グラフト共重合体中のアセトン可溶分の還元粘度は、上記のアセトン可溶分の比率の測定で分離されたアセトン可溶分を0.2g/dl濃度のN,N−ジメチルホルムアミド溶液とし、ウベローデ粘度計を用いて25℃で測定した。
グラフト共重合体1gを80mlのアセトンに添加し、65〜70℃にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を遠心分離機にて14,000rpm、30分間遠心分離して、沈殿成分(アセトン不溶分)とアセトン溶液(アセトン可溶分)を分取した。沈殿成分(アセトン不溶分)を乾燥させてその質量(Y(g))を測定し、下記式によりグラフト率を算出した。
50mlメスリンダーに、目開き20メッシュの篩にて粗粒を篩別したグラフト共重合体2gと全容積が50mlとなるようにトルエンを加え、23℃で24時間静置した際の該グラフト共重合体膨潤体の体積を目視にて測定した。
JIS−K−6720規格に準拠する方法により、グラフト共重合体の嵩密度を測定した。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、
脱イオン水:200部
オレイン酸カリウム:2部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム:4部
硫酸第一鉄七水塩:0.003部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:0.009部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート:0.3部
を窒素フロー下で仕込み、60℃に昇温した。60℃になった時点から、
アクリル酸n−ブチル:85部
メタクリル酸:15部
クメンヒドロパーオキシド:0.5部
からなる混合物を120分かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに2時間、60℃のまま熟成を行い、固形分が33%、重合転化率が96%、酸基含有共重合体の体積平均粒子径が150nmである酸基含有共重合体ラテックス(K)を得た。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、
脱イオン水:295部
アルケニルコハク酸ジカリウム:0.62部
アクリル酸n−ブチル:70部
メタクリル酸アリル:0.62部
1,3−ブチレンジメタクリレート:0.05部
t−ブチルヒドロパーオキシド:0.05部
を撹拌下で仕込み、反応器内を窒素置換した後、内容物を昇温した。内温55℃にて、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート:0.09部
硫酸第一鉄七水和物:0.00015部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:0.00045部
脱イオン水:36部
からなる水溶液を添加し、重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに30分保持した。得られたゴム質重合体の重合転化率は99%であり、体積平均粒子径は110nmであった。
アルケニルコハク酸ジカリウム:0.2部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート:0.042部
硫酸第一鉄七水和物:0.002部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:0.006部
脱イオン水:44部
からなる水溶液を添加し、内温を70℃に制御した後、
アクリル酸n−ブチル:30部
メタクリル酸アリル:2.16部
1,3−ブチレンジメタクリレート:0.03部
t−ブチルヒドロパーオキシド:0.03部
からなる混合液を60分間にわたって滴下し、滴下終了後、液温70℃の状態を30分間保持し、重合転化率92%、ゴム質重合体の体積平均粒子径が160nmのゴム質重合体ラテックス(a−1)を得た。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、
脱イオン水:376部
アルケニルコハク酸ジカリウム:1.45部
アクリル酸n−ブチル:100部
メタクリル酸アリル:1.2部
1,3−ブチレンジメタクリレート:0.1部
t−ブチルヒドロパーオキシド:0.252部
を撹拌下で仕込み、反応器内を窒素置換した後、内容物を昇温した。内温55℃にて、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート:0.09部
硫酸第一鉄七水和物:0.00015部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:0.00045部
脱イオン水:30部
からなる水溶液を添加し、重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに30分保持した。得られたゴム質重合体の重合転化率は99%であり、体積平均粒子径は100nmであった。
続いて、内温70℃にて、酸基含有共重合体ラテックス(K)を固形分として3部添加し、内温70℃を保持したまま30分撹拌しながら肥大化を行い、ゴム質重合体の体積平均粒子径が280nmのゴム質重合体ラテックス(a−2)を得た。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機及び撹拌装置を備えた反応器内に、
脱イオン水:200部
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム:5.4部
アクリル酸n−ブチル:10部
トリアリルイソシアヌレート:0.05部
クメンヒドロパーオキシド:0.08部
を撹拌下で仕込み、反応器内を窒素置換した後、内容物を昇温した。内温70℃にて、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート:0.12部
硫酸第一鉄七水塩:0.008部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:0.016部
脱イオン水:5部
からなる水溶液を添加し、重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度
を60℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続した。
アクリル酸n−ブチル:99.5部
トリアリルイソシアヌレート:0.5部
クメンヒドロパーオキシド:0.8部
からなる混合液を1.8l/時間で、
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム:5.2部
脱イオン水:115部
からなる水溶液を2.4l/時間で、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート:0.12部
硫酸第一鉄七水塩:0.008部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:0.016部
脱イオン水:5部
からなる水溶液を100ml/時間で10時間かけて導入し、重合温度70℃で連続重合を実施し、固形分が43質量%、ゴム質重合体の体積平均粒子径が150nmであるゴム質重合体ラテックス(x−1)を得た。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機及び撹拌装置を備えた反応器内に、
脱イオン水:200部
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.4部
アクリル酸n−ブチル:10部
トリアリルイソシアヌレート:0.05部
クメンヒドロパーオキシド:0.02部
を撹拌下で仕込み、反応器内を窒素置換した後、内容物を昇温した。内温60℃にて、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート:0.09部
硫酸第一鉄七水塩:0.006部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:0.012部
脱イオン水:5部
からなる水溶液を添加し、重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を60℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続した。
アクリル酸n−ブチル:99.5部
トリアリルイソシアヌレート:0.5部
クメンヒドロパーオキシド:0.2部
からなる混合液を1.8l/時間で、
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.5部
脱イオン水:115部
からなる水溶液を2.4l/時間で、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート:0.09部
硫酸第一鉄七水塩:0.006部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:0.012部
脱イオン水:5部
からなる水溶液を100ml/時間で10時間かけて導入し、重合温度60℃で連続重合を実施し、固形分が43質量%、ゴム質重合体の体積平均粒子径が260nmであるゴム質重合体ラテックス(x−2)を得た。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器に、
脱イオン水(ゴム質重合体ラテックス中の水を含む):230部
ゴム質重合体ラテックス(a−1):50部(固形分として)
アルケニルコハク酸ジカリウム:0.1部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート:0.45部
を仕込み、反応器内を十分に窒素置換した後、攪拌しながら内温を65℃まで昇温した。
次いで、
アクリロニトリル:15部
スチレン:35部
t−ブチルヒドロパーオキシド:0.3部
からなる混合液を120分間にわたって滴下しながら、85℃まで昇温した。
滴下終了後、温度80℃の状態を30分間保持した後、冷却し、グラフト共重合体(A−1)のラテックスを得た。
次いで、2.0%硫酸水溶液100部を80℃に加熱し、該水溶液を撹拌しながら、該水溶液にグラフト共重合体(A−1)ラテックス100部を徐々に滴下し、グラフト共重合体(A−1)を固化させ、さらに95℃に昇温して10分間保持した。
次いで、固化物を脱水、洗浄、乾燥し、粉末状のグラフト共重合体(A−1)を得た。
得られたグラフト共重合体(A−1)のアセトン可溶分は8%、グラフト率は83%、アセトン可溶分の還元粘度は0.48g/dl、トルエン膨潤体の体積は18mlおよび嵩密度は0.53g/cm3であった。
ゴム質重合体ラテックス(a−1)をゴム質重合体ラテックス(a−2)に変更した以外は実施例1と同様にして、粉末状のグラフト共重合体(A−2)を得た。
得られたグラフト共重合体(A−2)のアセトン可溶分は12%、グラフト率は74%、アセトン可溶分の還元粘度は0.66g/dl、トルエン膨潤体の体積は24mlおよび嵩密度は0.50g/cm3であった。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機及び撹拌装置を備えた反応器内に、
脱イオン水(ゴム質重合体ラテックス中の水を含む):180部
ゴム質重合体ラテックス(x−1):45部(固形分として)
を添加し、反応器内部の液温を60℃まで昇温した後、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート:0.22部
硫酸第一鉄七水塩:0.004部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:0.02部
脱イオン水:10部
からなる水溶液、
アクリロニトリル:14部
スチレン:41部
クメンヒドロパーオキシド:0.24部
の混合液を120分間にわたって滴下し、更に、
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム:1.0部
脱イオン水:10部
からなる水溶液を150分間にわたって滴下して重合した。滴下終了後、内温を60℃に保持したまま60分間撹拌した後、冷却し、グラフト共重合体(B−1)ラテックスを得た。
次いで、1.5質量%塩化カルシウム水溶液150部を75℃に加熱し、該水溶液を撹拌しながら、該水溶液にグラフト共重合体(X−1)ラテックス100部を徐々に滴下し、グラフト共重合体(X−1)を固化させ、さらに90℃に昇温して5分間保持した。次いで、固化物を脱水、洗浄、乾燥し、粉末状のグラフト共重合体(X−1)を得た。
得られたグラフト共重合体(X−1)のアセトン可溶分は30%、グラフト率は67%、アセトン可溶分の還元粘度は0.71g/dl、トルエン膨潤体の体積は6mlおよび嵩密度は0.38g/cm3であった。
ゴム質重合体ラテックス(x−1)の代りにゴム質重合体ラテックス(x−2)を用い、その使用量を60部(固形分として)とし、アクリロニトリルの使用量を13部、スチレンの使用量を27部に変更した以外は比較例1と同様にして、粉末状のグラフト共重合体(X−2)を得た。
得られたグラフト共重合体(X−2)のアセトン可溶分は23%、グラフト率は35%、アセトン可溶分の還元粘度は0.67g/dl、トルエン膨潤体の体積は38mlおよび嵩密度は0.29g/cm3であった。
アクリルゴム系グラフト共重合体(A−1),(A−2)およびアクリルゴム系グラフト共重合体(X−1),(X−2)の分析結果を、表1に示す。なお、表1中、各アクリルゴム系グラフト共重合体に用いたゴム質重合体の体積平均粒子径をゴム粒子径として記載する。
また、表1には、後述の合成例6で製造したアクリルゴム系グラフト共重合体(A)以外のグラフト共重合体(B−1)の分析結果も併記する。
<ゴム質重合体ラテックス(b−1)の製造>
(1段目)
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、
脱イオン水:290部
アルケニルコハク酸ジカリウム:0.96部
アクリル酸n−ブチル:80部
メタクリル酸アリル:1部
t−ブチルヒドロパーオキシド:0.2部
を撹拌下で仕込み、反応器内を窒素置換した後、内容物を昇温した。内温55℃にて、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート:0.36部
硫酸第一鉄七水和物:0.0002部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:0.0006部
脱イオン水:10部
からなる水溶液を添加し、重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間保持した。得られたゴム質重合体の体積平均粒子径は100nmであった。
ここへ5質量%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として1.2部添加し、内温を70℃になるようにジャケット温度の制御を行った。
内温70℃にて、酸基含有共重合体ラテックス(K)を固形分として3.2部添加し、内温70℃を保持したまま30分撹拌し、肥大化を行った。肥大化後の体積平均粒子径は415nmであった。
次いで、内温70℃にて、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート:0.054部
硫酸第一鉄七水和物:0.002部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:0.006部
脱イオン水:80部
からなる水溶液を添加し、次いで
アクリル酸n−ブチル:20部
メタクリル酸アリル:0.24部
t−ブチルヒドロパーオキシド:0.03部
からなる混合液を40分にわたって滴下した。滴下終了後、温度70℃の状態を1時間保持した後に冷却し、ゴム質重合体の体積平均粒子径が440nmであるゴム質重合体ラテックス(b−1)を得た。
ゴム質重合体ラテックス(a−1)をゴム質重合体ラテックス(b−1)に変更した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)以外のグラフト共重合体(B−1)を得た。
得られたグラフト共重合体(B−1)のアセトン可溶分は20%、グラフト率は60%、アセトン可溶分の還元粘度は0.76g/dl、トルエン膨潤体の体積は25mlおよび嵩密度は0.40g/cm3であった。
公知の懸濁重合法により、アクリロニトリル28質量%、スチレン72質量%からなる、還元粘度0.61g/dlの共重合体(B−2)を得た。
また、アクリロニトリル32質量%、スチレン68質量%からなる、還元粘度0.59g/dlの共重合体(B−3)を得た。
アクリルゴム系グラフト共重合体(A)または(X)、およびその他の熱可塑性樹脂(B)を表2,3に示す配合で用い、これらの合計100部に対して、エチレンビスステアリン酸アミド0.5部、および着色剤としてカーボンブラック#960(三菱ケミカル社製)1部を加え、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、該混合物をバレル温度220℃に設定した(株)日本製鋼製28mm二軸押出機(型式:TEX28V)で賦形し、熱可塑性樹脂ペレットを作製した。
得られた熱可塑性樹脂ペレット、短冊試験片、および平板成形板について、下記の測定を行った。
測定結果を表2,3に示す。なお、表2,3には、各熱可塑性樹脂組成物のゴム含有量を併記した。
ISO 179に準拠する方法により、23℃雰囲気下で12時間以上放置したVノッチあり試験片についてシャルピー衝撃強度を測定した。
ISO試験法75に準拠し、1.83MPa、4mm、フラットワイズ法で荷重たわみ温度を測定した。
ISO1133に準拠して、220℃、10kg荷重の条件で熱可塑性樹脂ペレットを用いてメルトボリュームレイトを測定した。
ISO178に準拠して温度23℃での曲げ弾性率を測定した。
150×10×2mmの短冊状試験片を、曲率が漸次変化する表面を有するベンディングフォーム法試験冶具に沿わして固定した。次いで、試験片に薬液を塗布し、23℃の環境下で48時間放置した。そして、試験片におけるクレーズおよびクラックの発生有無を確認し、試験冶具の曲率から限界歪み[%]を求めた。薬液としては、アルコール:エタノール(和光純薬(株))、界面活性剤:ノイゲンET−190(花王(株))を使用した。
低速および高速の条件でそれぞれ得られた100mm×100mm×2mmの平板成形板について、スガ試験器社製のデジタル変角光計(型式:UGV−5D)を用い、入射角60°、反射角60°での反射率から光沢度を求めた。
低速および高速の条件でそれぞれ得られた100mm×100mm×2mmの平板成形板について、ミノルタ製測色計(型式:CM−508D)を用いて明度:L*を測定した。L*の数値が小さいほど、発色性が良好であることを示す。
また、これらの平板成形板の明度:L*の差(絶対値)を、発色性の成形条件依存性の指標とした。
低速および高速の条件でそれぞれ得られた100mm×100mm×2mmの平板成形板について、スガ試験機(株)製写像性測定器(型式:ICM−IDP)を用いて、反射角60°、光学櫛幅1mmでの鮮映度を測定した。測定値の数値が大きいほど、鮮映性が良好であることを示す。また、下記式から、鮮映度の成形条件依存性を算出した。
シリンダー温度:280℃、射出速度:40g/sec.の条件にて100mm×100mm×2mmの平板成形板を得た。続いて、樹脂計量後、成形作業を中断し、射出成形機内で樹脂を20分滞留させた。その後、成形作業を再開し、3〜5ショット目に得られた成形板および滞留をせずに得られた成形板について、スガ試験器(株)製のデジタル変角光計(型式:UGV−5D)を用い、入射角60°、反射角60°での反射率から光沢度を測定し、下記式から光沢保持率を算出し、熱安定性の指標とした。数値が大きいほど、熱安定性が良好である。
比較例3および4は、アクリルゴムグラフト共重合体(X)のアセトン可溶分比率、グラフト率、トルエン膨潤体の体積および嵩密度が本発明の範囲外であるため、比較例3については、耐衝撃性、耐薬品性、成形品の発色性、鮮映度および熱安定性、比較例4については、耐薬品性、成形品の発色性、鮮映度および熱安定性が、アクリルゴムグラフト共重合体(A−1)または(A−2)を用いた実施例3〜5に対して劣る。
これに対し、実施例3〜5の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、剛性、耐熱性、成形性(流動性)、耐薬品性、成形品の光沢度、発色性、鮮映度および熱安定性に優れ、外観性能に対して成形条件依存性が小さいなどの良好な特性を有する。
比較例5は、アクリルゴムグラフト共重合体(X−1)のアセトン可溶分比率、グラフト率、トルエン膨潤体の体積および嵩密度が本発明の範囲外のため、成形品の光沢度、発色性および鮮映度が、アクリルゴムグラフト共重合体(A−1)を用いた実施例6〜10に対して劣る。
また、比較例6はアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を用いていないため、成形品の光沢度、発色性および鮮映度が劣る。
これに対し、実施例6〜10の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、剛性、耐熱性、成形性(流動性)、成形品の光沢度、発色性、および鮮映度に優れ、外観性能に対して成形条件依存性が小さいなどの良好な特性を有する。
アクリルゴム系グラフト共重合体(A)または(X)、および熱可塑性樹脂(B)を表4に示す配合で用い、これらの合計100部に対してパラフィンワックス0.5部、および着色剤としてカーボンブラック#960(三菱ケミカル社製)1部を加え、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、該混合物をバレル温度250℃に加熱した(株)日本製鋼製脱揮式二軸押出機(TEX28V)で賦形し、熱可塑性樹脂ペレットを作製した。
比較例7および8は、アクリルゴムグラフト共重合体(X−1)のアセトン可溶分比率、グラフト率、トルエン膨潤体の体積および嵩密度が本発明の範囲外のため、得られた成形品の発色性および鮮映度が、アクリルゴムグラフト共重合体(A−1)を用いた実施例11〜12に対して劣る。
これに対し、実施例11〜12の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、剛性、耐熱性、成形性(流動性)、成形品の光沢度、発色性、および鮮映度に優れ、外観性能に対して成形条件依存性が小さいなどの良好な特性を有する。
Claims (8)
- アクリル酸アルキルエステル系単量体単位と多官能性単量体単位を含むゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体をグラフト重合してなるグラフト共重合体であって、下記(1)〜(5)の物性をすべて満たすことを特徴とするアクリルゴム系グラフト共重合体(A)。
(1) 該ゴム質重合体(a)の体積平均粒子径が100〜300nmである。
(2) 該グラフト共重合体のメタノール不溶分中のアセトン可溶分が5〜20質量%である。
(3) 該グラフト共重合体のグラフト率が70〜120%である。
(4) 目開き20メッシュの篩にて粗粒を篩別した該グラフト共重合体2gを50mlメスリンダーに入れ、全容積が50mlとなるようにトルエンを加え、23℃で24時間静置した際の該グラフト共重合体膨潤体の体積が10〜35mlである。
(5) JIS−K−6720規格に準拠して測定した該グラフト共重合体の嵩密度が0.40〜0.60g/cm3である。 - 前記アクリル酸アルキルエステル系単量体がアクリル酸n−ブチルである請求項1に記載のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)。
- ゴム質重合体(a)100質量%中のアクリル酸アルキルエステル系単量体単位の含有量が75質量%以上であり、多官能性単量体単位の含有量がアクリル酸アルキルエステル系単量体単位100質量部に対して1.0〜3.3質量部である請求項1又は2に記載のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)。
- アクリルゴム系グラフト共重合体(A)100質量部中のゴム質重合体(a)の含有量が10〜90質量部であり、前記ビニル系単量体が芳香族ビニル系単量体と不飽和ニトリル系単量体を含む単量体混合物であり、該単量体混合物100質量%中の芳香族ビニル系単量体の割合が20〜97質量%であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のアクリルゴム系グラフト共重合体(A)を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- アクリルゴム系グラフト共重合体(A)以外の他の熱可塑性樹脂(B)を、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100質量部中に95質量部以下含むことを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(B)として、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)以外のグラフト共重合体を含まないか、或いは、熱可塑性樹脂(B)としてのアクリルゴム系グラフト共重合体(A)以外のグラフト共重合体の含有量が、アクリルゴム系グラフト共重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100質量部に対して30質量部未満であることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項5ないし7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする熱可塑性樹脂成形品。
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