JP2020029525A - 塗料組成物、塗装品及び塗装品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】PPS基材に対する付着性に優れると共に、耐熱性に優れたPPS基材用の塗料組成物、PPS基材に、この塗料組成物の塗膜が形成された塗装品、及びその製造方法を提供する。【解決手段】メチル系シリコーン樹脂を含有する塗料組成物を用いる。また、必要に応じて塗料組成物にエポキシ基を有するシランカップリング剤、金属キレート剤を含有させる。塗料組成物を塗布後の塗装品は、塗布後又は使用時に150〜200℃で、30〜90分間加熱することが好ましい。【選択図】なし
Description
本発明は、ポリフェニレンサルファイド基材に塗布するための塗料組成物、塗装品及び塗装品の製造方法に関する。
ポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと称する場合がある。)は硫黄とベンゼン環の繰り返し構造を持った樹脂であり、約280℃の融点を持つ結晶性の熱可塑性スーパーエンジニアリングプラスチックである。
PPSは、耐熱性、耐薬品性、広範な温度範囲での寸法安定性、難燃性、電気特性、機械特性に優れている。そのため、主に耐熱性や高い信頼性が求められる自動車部品、照明部品、家電部品、住設機器電子機器などに広く使用されている。
PPSは、耐熱性、耐薬品性、広範な温度範囲での寸法安定性、難燃性、電気特性、機械特性に優れている。そのため、主に耐熱性や高い信頼性が求められる自動車部品、照明部品、家電部品、住設機器電子機器などに広く使用されている。
しかし、PPSは光や熱による外観変化の点で問題があり、直射日光、蛍光灯、水銀灯、あるいは高温雰囲気に長時間さらされた場合、茶色く変色しやすい。
PPS基材を光や熱から保護するために、あるいは、PPS基材に意匠性を付与するために、PPS基材に塗膜を形成することが求められる。ところが、PPSは結晶性が高いことから、PPS基材に対して充分な付着性を示す塗料は少ない。
PPS基材のように、充分な付着性を得ることが難しい基材にも使用可能な塗料として、エポキシ基と水酸基を有するアクリル樹脂とアミノ基含有化合物を含む塗料組成物が提案されている(特許文献1)。
PPS基材を光や熱から保護するために、あるいは、PPS基材に意匠性を付与するために、PPS基材に塗膜を形成することが求められる。ところが、PPSは結晶性が高いことから、PPS基材に対して充分な付着性を示す塗料は少ない。
PPS基材のように、充分な付着性を得ることが難しい基材にも使用可能な塗料として、エポキシ基と水酸基を有するアクリル樹脂とアミノ基含有化合物を含む塗料組成物が提案されている(特許文献1)。
前述のように、PPSは高い耐熱性を有しており、変色などの外観変化を厭わなければ、200〜230℃程度の温度条件下での連続使用が可能である。しかし、特許文献1の塗料組成物のようにアクリル骨格を有する樹脂の耐熱温度は70〜90℃程度に留まり、PPSが用いられる高熱温度領域(100−200℃前後)では変色や焦げつきなどが発生してしまう。そのため、PPSの光や熱による外観変化を防ぐ目的で、特許文献1の塗料組成物を用いると、PPS本来の特性が活かせない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、PPS基材に対する付着性に優れると共に、耐熱性に優れたPPS基材用の塗料組成物、PPS基材に、この塗料組成物の塗膜が形成された塗装品、及びその製造方法を提供することを課題とする。
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]ポリフェニレンサルファイド基材に塗布するための塗料組成物であって、有機置換基の総てがメチル基又はエチル基であるメチル系シリコーン樹脂を含有することを特徴とする塗料組成物。
[2]さらにエポキシ基を有するシランカップリング剤を含有する、[1]に記載の塗料組成物。
[3]さらに金属キレート剤を含有する、[1]または[2]に記載の塗料組成物。
[4]前記メチル系シリコーン樹脂の重量平均分子量が200万〜400万である、[1]〜[3]の何れか一項に記載の塗料組成物。
[5]ポリフェニレンサルファイド基材と、その表面の少なくとも一部に形成された[1]〜[4]のいずれか一項に記載の塗料組成物の塗膜を有する塗装品。
[6]前記ポリフェニレンサルファイド基材が、前記塗膜が形成された表面に、ポリフェニレンサルファイドの硫黄原子の少なくとも一部が酸化されて極性基となっている酸化ポリフェニレンサルファイド層を有する、[5]に記載の塗装品。
[7]ポリフェニレンサルファイド基材の表面の少なくとも一部に、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の塗料組成物を塗布し、加熱することを特徴とする塗装品の製造方法。
[8]前記ポリフェニレンサルファイド基材が、前記塗料組成物を塗布する表面に、ポリフェニレンサルファイドの硫黄原子の少なくとも一部が酸化されて極性基となっている酸化ポリフェニレンサルファイド層を有する、[7]に記載の塗装品の製造方法。
[9]150〜200℃で、30〜90分間加熱する、[7]または[8]に記載の塗装品の製造方法。
[1]ポリフェニレンサルファイド基材に塗布するための塗料組成物であって、有機置換基の総てがメチル基又はエチル基であるメチル系シリコーン樹脂を含有することを特徴とする塗料組成物。
[2]さらにエポキシ基を有するシランカップリング剤を含有する、[1]に記載の塗料組成物。
[3]さらに金属キレート剤を含有する、[1]または[2]に記載の塗料組成物。
[4]前記メチル系シリコーン樹脂の重量平均分子量が200万〜400万である、[1]〜[3]の何れか一項に記載の塗料組成物。
[5]ポリフェニレンサルファイド基材と、その表面の少なくとも一部に形成された[1]〜[4]のいずれか一項に記載の塗料組成物の塗膜を有する塗装品。
[6]前記ポリフェニレンサルファイド基材が、前記塗膜が形成された表面に、ポリフェニレンサルファイドの硫黄原子の少なくとも一部が酸化されて極性基となっている酸化ポリフェニレンサルファイド層を有する、[5]に記載の塗装品。
[7]ポリフェニレンサルファイド基材の表面の少なくとも一部に、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の塗料組成物を塗布し、加熱することを特徴とする塗装品の製造方法。
[8]前記ポリフェニレンサルファイド基材が、前記塗料組成物を塗布する表面に、ポリフェニレンサルファイドの硫黄原子の少なくとも一部が酸化されて極性基となっている酸化ポリフェニレンサルファイド層を有する、[7]に記載の塗装品の製造方法。
[9]150〜200℃で、30〜90分間加熱する、[7]または[8]に記載の塗装品の製造方法。
本発明の塗料組成物は、PPS基材に対する付着性と耐熱性に優れる。また、本発明の塗装品は、付着性と耐熱性に優れる塗膜を有するため、PPS基材が光や熱から保護されると共に、意匠性を付与したものとすることも可能である。また、本発明の塗装品の製造方法によれば、PPS基材が光や熱から保護された塗装品、あるいは、意匠性を付与された塗装品を提供することが可能である。
[PPS基材]
本明細書におけるポリフェニレンサルファイド(PPS)とは、次の化学式(1)で示される構成単位を、全構成単位に対して80モル%以上含む重合体をいう。本発明におけるPPSは、化学式(1)で示される構成単位を、全構成単位に対して90モル%以上含むことが好ましい。
本明細書におけるポリフェニレンサルファイド(PPS)とは、次の化学式(1)で示される構成単位を、全構成単位に対して80モル%以上含む重合体をいう。本発明におけるPPSは、化学式(1)で示される構成単位を、全構成単位に対して90モル%以上含むことが好ましい。
化学式(1)で示される構成単位の割合が80モル%未満では結晶性、軟化点が低くなり、基材の耐熱性、寸法安定性および機械的特性などを損なう。繰り返し単位の20モル%未満(好ましくは10モル%未満)であれば、他の共重合可能構成単位が含まれていても差し支えない。共重合体の場合は、ランダム共重合体とブロック共重合体のいずれでもよい。
化学式(1)における硫黄原子は、パラ位に結合していることが好ましい。すなわち、本明細書におけるPPSは、ポリ−p−フェニレンサルファイド、または、ポリ−p−フェニレンサルファイドの一部(20モル%未満、好ましくは10モル%未満)の構成単位が、他の共重合可能構成単位に置換された共重合体であることが好ましい。
本明細書におけるPPS樹脂組成物とは上記PPSを50質量%以上含む樹脂組成物をいう。本明細書におけるPPS樹脂組成物は、上記PPSを70〜100質量%含むことが好ましく、80〜100質量%含むことがより好ましく、90〜100質量%含むことがさらに好ましい。
PPS樹脂組成物に含まれるPPS以外の成分としては、PPS以外のポリマー、充填材、添加物が挙げられる。
PPS樹脂組成物に含まれるPPS以外の成分としては、PPS以外のポリマー、充填材、添加物が挙げられる。
PPS以外のポリマーは、流動性改良、反り防止、摺動特性付与等の改質目的で配合され、PPSとアロイ化される。例えば、オレフィン樹脂などが摺動特性付与のために配合される。
充填材としては、ガラス繊維、カーボン繊維、炭酸カルシウム、マイカ等の無機質充填材が挙げられる。無機質充填材を配合することに機械的性質を向上させることができる。
添加物としては、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤等が挙げられる。
充填材としては、ガラス繊維、カーボン繊維、炭酸カルシウム、マイカ等の無機質充填材が挙げられる。無機質充填材を配合することに機械的性質を向上させることができる。
添加物としては、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤等が挙げられる。
本明細書におけるPPS樹脂組成物の溶融粘度は、製膜性の点から、温度300℃、せん断速度200sec−1のもとで10〜5000Pa・sであることが好ましく、50〜1200Pa・sであることがより好ましい。
本発明のポリフェニレンサルファイド基材(PPS基材)とは、上記PPS樹脂組成物を溶融成形した基材である。本発明のPPS基材の形状に特に限定はなく、例えば、シート状とすることができる。
また、シート状とする場合の厚みにも限定はなく、例えば、0.5〜6μmとすることができる。
また、シート状とする場合の厚みにも限定はなく、例えば、0.5〜6μmとすることができる。
本発明の塗装品におけるPPS基材は、本発明の塗膜が形成された表面に酸化PPS層(酸化ポリフェニレンサルファイド層)が存在する酸化PPS基材でも、酸化PPS層が存在しない非酸化PPS基材でもよいが、酸化PPS基材であることが好ましい。
また、本発明の塗装品の製造方法におけるPPS基材は、本発明の塗料組成物が塗布される表面に酸化PPS層が存在する酸化PPS基材であることが好ましい。
また、本発明の塗装品の製造方法におけるPPS基材は、本発明の塗料組成物が塗布される表面に酸化PPS層が存在する酸化PPS基材であることが好ましい。
酸化PPS層は、PPSの硫黄原子の少なくとも一部が酸化されて極性基となっている層である。
酸化PPS層は、コロナ処理またはプラズマ処理を行うことにより形成することができる。また、本発明の塗料組成物を塗布する前において、酸素の存在下で200℃以上に加熱することによっても形成できる。
さらに、本発明者は、本発明の塗料組成物を塗布した後であっても、酸素の存在下で200℃以上に加熱すると、塗料組成物の層を透過した酸素により、酸化PPS層が形成されることを見いだした。したがって、酸化PPS層は、本発明の塗料組成物を塗布後に熱硬化させる際又は使用時に、200℃以上に加熱することによっても形成できる。
酸化PPS層は、コロナ処理またはプラズマ処理を行うことにより形成することができる。また、本発明の塗料組成物を塗布する前において、酸素の存在下で200℃以上に加熱することによっても形成できる。
さらに、本発明者は、本発明の塗料組成物を塗布した後であっても、酸素の存在下で200℃以上に加熱すると、塗料組成物の層を透過した酸素により、酸化PPS層が形成されることを見いだした。したがって、酸化PPS層は、本発明の塗料組成物を塗布後に熱硬化させる際又は使用時に、200℃以上に加熱することによっても形成できる。
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、前記ポリフェニレンサルファイド基材(PPS基材)に塗布するための塗料組成物であって、メチル系シリコーン樹脂を含有する。
本発明の塗料組成物は、前記ポリフェニレンサルファイド基材(PPS基材)に塗布するための塗料組成物であって、メチル系シリコーン樹脂を含有する。
(メチル系シリコーン樹脂)
シリコーン樹脂は、1官能であるR3SiO1/2単位(以下M単位という。)と、2官能であるR2SiO2/2単位(以下D単位という。)と、3官能であるRSiO3/2単位(以下T単位という。)と、4官能であるSiO4/2単位(以下Q単位という。)から構成され、T単位を主成分とする樹脂である。ただし、Rは有機置換基である。
シリコーン樹脂は、シロキサン結合を主骨格とし、加熱すると脱水縮合反応により、三次元網目構造の硬い塗膜を形成する樹脂である。
シリコーン樹脂は、1官能であるR3SiO1/2単位(以下M単位という。)と、2官能であるR2SiO2/2単位(以下D単位という。)と、3官能であるRSiO3/2単位(以下T単位という。)と、4官能であるSiO4/2単位(以下Q単位という。)から構成され、T単位を主成分とする樹脂である。ただし、Rは有機置換基である。
シリコーン樹脂は、シロキサン結合を主骨格とし、加熱すると脱水縮合反応により、三次元網目構造の硬い塗膜を形成する樹脂である。
本発明におけるメチル系シリコーン樹脂とは、前記有機置換基Rの総てが、メチル基又はエチル基であるシリコーン樹脂である。本発明におけるメチル系シリコーン樹脂は、有機置換基Rの全部又は一部がメチル基であるメチルシリコーン樹脂であることが好ましく、有機置換基Rの全部がメチル基であるメチルシリコーン樹脂であることが特に好ましい。
有機置換基Rの総てが、メチル基又はエチル基であることにより、本発明におけるメチル系シリコーン樹脂は、PPS基材に強固に付着する塗膜を形成することができる。
有機置換基Rの総てが、メチル基又はエチル基であることにより、本発明におけるメチル系シリコーン樹脂は、PPS基材に強固に付着する塗膜を形成することができる。
本発明におけるメチル系シリコーン樹脂の重量平均分子量は、100万〜500万であることが好ましく、200万〜400万であることがより好ましく、300万〜350万であることがさらに好ましい。重量平均分子量が100万以上であることにより、得られる塗膜における架橋点が少なくなる。その結果、クラックか生じにくい塗膜を形成しやすくなる。また、重量平均分子量が500万以下であることにより、平滑な塗膜を形成しやすくなる。
なお、「重量平均分子量」とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値を意味する。
なお、「重量平均分子量」とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値を意味する。
本発明の塗料組成物はメチル系シリコーン樹脂を含有することにより、特に、酸化PPS基材に対する付着性が向上する。これは、メチル系シリコーン樹脂が有するメチル基又はエチル基、特にメチル基と、酸化PPS基材との間の静電的な結合エネルギーによるものと考えられる。
すなわち、電子供与性の強いメチル基等(δ−部)と、酸化PPS基材における硫黄原子由来の極性基(δ+部)との間の静電気的な引力により、付着性が発現するものと推測される。
すなわち、電子供与性の強いメチル基等(δ−部)と、酸化PPS基材における硫黄原子由来の極性基(δ+部)との間の静電気的な引力により、付着性が発現するものと推測される。
(シランカップリング剤)
本発明の塗料組成物はエポキシ基を有するシランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤は加水分解性シリル基を有する。加水分解性シリル基としては、メトキシ基、エトキシ基、ジアルコキシ基、トリアルコキシ基が挙げられる。中でもメトキシ基またはエトキシ基が好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
本発明の塗料組成物はエポキシ基を有するシランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤は加水分解性シリル基を有する。加水分解性シリル基としては、メトキシ基、エトキシ基、ジアルコキシ基、トリアルコキシ基が挙げられる。中でもメトキシ基またはエトキシ基が好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
エポキシ基を有するシランカップリング剤の具体例としては、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、反応性が高く、シリコーン樹脂とより架橋されやすいため、好ましい。
本発明の塗料組成物中のエポキシ基を有するシランカップリング剤の含有量は、メチル系シリコーン樹脂100質量部(乾燥固形分換算、以下同じ)に対して、5〜25質量部であることが好ましく、10〜20質量部であることがより好ましい。
エポキシ基を有するシランカップリング剤の含有量が好ましい下限値以上であることにより、PPS基材への付着性を向上できる。また、好ましい上限値以下であることにより、シリコーン樹脂との溶解性が得られる。
エポキシ基を有するシランカップリング剤の含有量が好ましい下限値以上であることにより、PPS基材への付着性を向上できる。また、好ましい上限値以下であることにより、シリコーン樹脂との溶解性が得られる。
本発明の塗料組成物はエポキシ基を有するシランカップリング剤を含有することにより、PPS基材に対する付着性が、より強固となる。特に、非酸化PPS基材に対して本発明の塗料組成物を塗布する場合は、塗料組成物中にエポキシ基を有するシランカップリング剤を含有することが好ましい。
本発明の塗料組成物はエポキシ基を有するシランカップリング剤を含有することにより、PPS基材に対する付着性、特に非酸化PPS基材に対する付着性が強固になる理由は、次のように考えられる。すなわち、シランカップリング剤の加水分解性シリル基がメチル系シリコーン樹脂と反応することにより、メチル系シリコーン樹脂にエポキシ基が導入される。そして、導入されたエポキシ基とPPSとのファンデルワールス力による界面相互作用が生じることにより付着性が発現するものと推測される。
なお、シランカップリング剤は、エポキシ基部分が200℃程度で熱分解するため、PPS基材が200℃以上の温度条件下に置かれた場合は熱分解し、シランカップリング剤による付着性は失われると考えられる。
しかし、その場合は、PPS基材が非酸化PPS基材であっても、酸化PPS基材に変化する。そのため、メチル系シリコーン樹脂が有するメチル基等と、酸化PPS基材との間の静電的な結合エネルギーによって付着性が維持されるものと考えられる。
しかし、その場合は、PPS基材が非酸化PPS基材であっても、酸化PPS基材に変化する。そのため、メチル系シリコーン樹脂が有するメチル基等と、酸化PPS基材との間の静電的な結合エネルギーによって付着性が維持されるものと考えられる。
したがって、本発明の塗料組成物がエポキシ基を有するシランカップリング剤を含有することにより、非酸化PPS基材に本発明の塗料組成物を塗布する際の付着性が向上する。
また、塗布後、塗料組成物を200℃以上の温度で熱硬化したり、200℃以上の温度で使用したりすることにより、メチル系シリコーン樹脂が有するメチル基等と、酸化PPS基材との間の静電的な結合エネルギーによって付着性が維持されると考えられる。
また、塗料組成物を例えば150℃程度の低温で硬化し、PPS基材の使用環境も150℃以下に留めれば、シランカップリング剤による付着性が維持できるものと考えられる。
また、塗布後、塗料組成物を200℃以上の温度で熱硬化したり、200℃以上の温度で使用したりすることにより、メチル系シリコーン樹脂が有するメチル基等と、酸化PPS基材との間の静電的な結合エネルギーによって付着性が維持されると考えられる。
また、塗料組成物を例えば150℃程度の低温で硬化し、PPS基材の使用環境も150℃以下に留めれば、シランカップリング剤による付着性が維持できるものと考えられる。
(金属キレート剤)
本発明の塗料組成物は、金属キレート剤を含有することが好ましい。
金属キレート剤の中心金属としては、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、鉄が挙げられる。中でもチタンは、反応性がもっとも高いので好ましい。
金属キレート剤の配位子としては、アセチルアセトネート、アセト酢酸エチル、エタノールアミン、エチルアセトンが挙げられる。中でもアセチルアセトネートとアセト酢酸エチルは、塗料組成物がゲル化しにくいため好ましい。アセチルアセトネートは、硬化しやすいため特に好ましい。
本発明の塗料組成物は、金属キレート剤を含有することが好ましい。
金属キレート剤の中心金属としては、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、鉄が挙げられる。中でもチタンは、反応性がもっとも高いので好ましい。
金属キレート剤の配位子としては、アセチルアセトネート、アセト酢酸エチル、エタノールアミン、エチルアセトンが挙げられる。中でもアセチルアセトネートとアセト酢酸エチルは、塗料組成物がゲル化しにくいため好ましい。アセチルアセトネートは、硬化しやすいため特に好ましい。
金属キレート剤の具体例としては、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロボキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)が挙げられる。中でも、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)が、反応性が高く、ゲル化しにくいため好ましい。
本発明の塗料組成物中の金属キレート剤の含有量は、メチル系シリコーン樹脂100質量部に対して、0.25〜2.5質量部であることが好ましく、0.5〜1.0質量部であることがより好ましい。
金属キレート剤の含有量が好ましい下限値以上であることにより、150℃加熱での硬化性を向上できる。また、好ましい上限値以下であることにより、ゲル化しにくい。
金属キレート剤の含有量が好ましい下限値以上であることにより、150℃加熱での硬化性を向上できる。また、好ましい上限値以下であることにより、ゲル化しにくい。
一般にシリコーン樹脂の縮合硬化反応は、200〜250℃で起こる。この温度領域は、工業用塗料の硬化温度としては高めであり、150℃前後の温度で硬化できることが好ましい。本発明の塗料組成物は金属キレート剤を含有することにより、塗料組成物を低温で硬化させることが可能となる。
金属キレート剤は、塗料組成物において、触媒としての役割と架橋剤としての役割を果たすと考えられる。
触媒としての作用は、シリコーン樹脂の縮合硬化反応の活性化エネルギーを下げて反応温度を低下させる効果をもたらす。縮合硬化反応における反応前期には、主として、この触媒としての作用を発揮するものと考えられる。
触媒としての作用は、シリコーン樹脂の縮合硬化反応の活性化エネルギーを下げて反応温度を低下させる効果をもたらす。縮合硬化反応における反応前期には、主として、この触媒としての作用を発揮するものと考えられる。
架橋剤としての作用は、シリコーン樹脂中のシラノール基と脱アルコール反応することでシリコーン樹脂同士を架橋させる作用である。反応に寄与する金属キレート剤はシリコーン樹脂に比べて低分子量であるため反応性が高い。そのため、低温でもシリコーン樹脂同士を架橋させる反応を進行させることができ、低温での硬化が可能になるものと考えられる。
(溶剤)
本発明の塗料組成物は溶剤を含むことが好ましい。溶剤を含むことにより重量平均分子量が高いメチル系シリコーン樹脂を用いた場合でも、塗料組成物の粘度を所期の範囲に調整することができる。
溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジイソブチルケトン、3-エトキシプロピオン酸エチル、トルエン、ジアセトンアルコールが挙げられる。これらの溶剤は、二種以上を併用してもよい。中でも、ジイソブチルケトン、3-エトキシプロピオン酸エチルが、樹脂溶解性を持ち、さらに基材に対し濡れやすいので好ましい。
本発明の塗料組成物中の溶剤の含有量は、メチル系シリコーン樹脂100質量部に対して、50〜150質量部であることが好ましく、50〜100質量部であることがより好ましい。
溶剤の含有量が好ましい下限値以上であることにより、平滑な塗膜が得られる。また、好ましい上限値以下であることにより、塗装後の塗料が垂れ難い。
本発明の塗料組成物は溶剤を含むことが好ましい。溶剤を含むことにより重量平均分子量が高いメチル系シリコーン樹脂を用いた場合でも、塗料組成物の粘度を所期の範囲に調整することができる。
溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジイソブチルケトン、3-エトキシプロピオン酸エチル、トルエン、ジアセトンアルコールが挙げられる。これらの溶剤は、二種以上を併用してもよい。中でも、ジイソブチルケトン、3-エトキシプロピオン酸エチルが、樹脂溶解性を持ち、さらに基材に対し濡れやすいので好ましい。
本発明の塗料組成物中の溶剤の含有量は、メチル系シリコーン樹脂100質量部に対して、50〜150質量部であることが好ましく、50〜100質量部であることがより好ましい。
溶剤の含有量が好ましい下限値以上であることにより、平滑な塗膜が得られる。また、好ましい上限値以下であることにより、塗装後の塗料が垂れ難い。
(他の成分)
本発明の塗料組成物は、本発明の効果を損なわない種類及び量の他の成分を含有することができる。他の成分としては、分散剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、などが挙げられる。また、塗膜の耐摩耗性を向上させるために、ポリエチレン系ワックスを配合してもよい。
本発明の塗料組成物は、本発明の効果を損なわない種類及び量の他の成分を含有することができる。他の成分としては、分散剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、などが挙げられる。また、塗膜の耐摩耗性を向上させるために、ポリエチレン系ワックスを配合してもよい。
また、他の成分として、染料、顔料(着色顔料、高輝材、体質顔料、その他意匠付与顔料)等の着色剤をさらに含有していてもよい。着色剤により、塗膜に着色したり、塗膜の光沢を調整したり、塗膜のテクスチャ(質感)を調整したりすることができる。ただし、クリア(無色)の塗膜を形成する場合は、着色剤を配合しない。
本発明の塗料組成物中の他の成分(乾燥固形分換算)の含有量は、メチル系シリコーン樹脂100質量部に対して、125〜250質量部であることが好ましく、100〜150質量部であることがより好ましい。
本発明の塗料組成物中の他の成分(乾燥固形分換算)の含有量は、メチル系シリコーン樹脂100質量部に対して、125〜250質量部であることが好ましく、100〜150質量部であることがより好ましい。
[塗装品]
塗装品は、PPS基材の表面の少なくとも一部に、本発明の塗料組成物を塗布して形成された塗膜を有する物品である。
塗膜の厚みは特に限定されないが、5〜15μmが好ましく、7〜12μmがより好ましい。膜厚が好ましい下限値以上であれば付着性を確保できる。好ましい上限値以下であれば収縮によるクラックが起こり難い。
塗装品は、PPS基材の表面の少なくとも一部に、本発明の塗料組成物を塗布して形成された塗膜を有する物品である。
塗膜の厚みは特に限定されないが、5〜15μmが好ましく、7〜12μmがより好ましい。膜厚が好ましい下限値以上であれば付着性を確保できる。好ましい上限値以下であれば収縮によるクラックが起こり難い。
[塗装品の製造方法]
本発明の塗料組成物をPPS基材に塗装するに際しては、事前に表面の研磨を行ってもよいし、コロナ処理またはプラズマ処理を行うことにより酸化PPS層を形成してもよい。
また、プライマー層として、例えば、エポキシ基を有するシランカップリング剤を塗布してもよい。この場合、非酸化PPS基材にシランカップリング剤を含まない本発明の塗料組成物を塗布しても、付着性が得られる。
本発明の塗料組成物をPPS基材に塗装するに際しては、事前に表面の研磨を行ってもよいし、コロナ処理またはプラズマ処理を行うことにより酸化PPS層を形成してもよい。
また、プライマー層として、例えば、エポキシ基を有するシランカップリング剤を塗布してもよい。この場合、非酸化PPS基材にシランカップリング剤を含まない本発明の塗料組成物を塗布しても、付着性が得られる。
本発明の塗料組成物をPPS基材に塗布する方法は、種々の方法で行うことができる。例えば刷毛塗り、スプレー塗装、浸漬法による塗装、ロールコーターやフローコーターによる塗装などが適用できる。
塗布後に加熱することにより、本発明の塗料組成物が硬化した塗膜が形成される。
本発明の塗料組成物が金属キレート剤を含まない場合、加熱温度は、200〜250℃が好ましく、230〜250℃がより好ましい。加熱時間は、30〜60分間が好ましく、50〜60分間がより好ましい。
加熱温度と加熱時間が好ましい下限値以上であれば、充分に硬化した塗膜が得られる。また、PPS基材が非酸化PPS基材であっても、酸化PPS基材に変化させることができ、メチル系シリコーン樹脂との付着性が高まる。
加熱温度と加熱時間が好ましい上限値以下であれば、メチル系シリコーン樹脂の熱分解を避けることができる。
本発明の塗料組成物が金属キレート剤を含まない場合、加熱温度は、200〜250℃が好ましく、230〜250℃がより好ましい。加熱時間は、30〜60分間が好ましく、50〜60分間がより好ましい。
加熱温度と加熱時間が好ましい下限値以上であれば、充分に硬化した塗膜が得られる。また、PPS基材が非酸化PPS基材であっても、酸化PPS基材に変化させることができ、メチル系シリコーン樹脂との付着性が高まる。
加熱温度と加熱時間が好ましい上限値以下であれば、メチル系シリコーン樹脂の熱分解を避けることができる。
本発明の塗料組成物が金属キレート剤を含む場合、加熱温度は、150〜200℃が好ましく、150〜170℃がより好ましい。加熱時間は、30〜90分間が好ましく、30〜60分間がより好ましい。
加熱温度と加熱時間が好ましい下限値以上であれば、充分に硬化した塗膜が得られる。加熱温度と加熱時間が好ましい上限値以下であれば、通常の工場設備で硬化させることができる。また、本発明の塗料組成物がエポキシ基を有するシランカップリング剤を含む場合、加熱温度と加熱時間が好ましい上限値以下であれば、エポキシ基を有するシランカップリング剤が熱分解せず、その付着性向上効果を維持できる。
加熱温度と加熱時間が好ましい下限値以上であれば、充分に硬化した塗膜が得られる。加熱温度と加熱時間が好ましい上限値以下であれば、通常の工場設備で硬化させることができる。また、本発明の塗料組成物がエポキシ基を有するシランカップリング剤を含む場合、加熱温度と加熱時間が好ましい上限値以下であれば、エポキシ基を有するシランカップリング剤が熱分解せず、その付着性向上効果を維持できる。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[使用した原料]
本実施例において使用した原料等は以下の通りである。
(シリコーン樹脂)
KR−251:信越化学工業株式会社製、メチルシリコーンレジン、重量平均分子量300万〜400万、有機置換基はメチル基のみ、D単位の含有量12質量%、T単位の含有量88質量%、105℃で3時間加熱した際の不揮発分20質量%。
本実施例において使用した原料等は以下の通りである。
(シリコーン樹脂)
KR−251:信越化学工業株式会社製、メチルシリコーンレジン、重量平均分子量300万〜400万、有機置換基はメチル基のみ、D単位の含有量12質量%、T単位の含有量88質量%、105℃で3時間加熱した際の不揮発分20質量%。
KR−242A:信越化学工業株式会社製、メチルシリコーンレジン、重量平均分子量2,500、有機置換基はメチル基のみ、D単位の含有量2質量%、T単位の含有量98質量%、105℃で3時間加熱した際の不揮発分50質量%。
KR−211:信越化学工業株式会社製、メチル/フェニルシリコーンレジン、有機置換基はメチル基及びフェニル基、105℃で3時間加熱した際の不揮発分70質量%。
KR−255:信越化学工業株式会社製、メチル/フェニルシリコーンレジン、重量平均分子量30万、有機置換基はメチル基及びフェニル基、105℃で3時間加熱した際の不揮発分50質量%。
(シランカップリング剤)
エポキシシラン:XIAMETER社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
エポキシシラン:XIAMETER社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
(チタン化合物)
TA−8:マツモトファインケミカル社製、オルガチックス(登録商標)TA−8、チタンテトライソプロポキシド。
TA−30:マツモトファインケミカル社製、オルガチックス(登録商標)TA−30、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド。
TC−100:マツモトファインケミカル社製、オルガチックス(登録商標)TC−100、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)。
TA−8:マツモトファインケミカル社製、オルガチックス(登録商標)TA−8、チタンテトライソプロポキシド。
TA−30:マツモトファインケミカル社製、オルガチックス(登録商標)TA−30、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド。
TC−100:マツモトファインケミカル社製、オルガチックス(登録商標)TC−100、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)。
(アルミ化合物)
アルミキレートM:川研ファインケミカル(株)社製、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート。
アルミキレートD:川研ファインケミカル(株)社製、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)。
アルミキレートM:川研ファインケミカル(株)社製、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート。
アルミキレートD:川研ファインケミカル(株)社製、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)。
(溶剤)
酢酸エチル50質量部、ジイソブチルケトン30質量部、3−エトキシプロピオン酸エチル20質量部の混合溶剤。
酢酸エチル50質量部、ジイソブチルケトン30質量部、3−エトキシプロピオン酸エチル20質量部の混合溶剤。
(PPS基材)
PPS基材としては、DIC社製、FZ2100(事前に酸化PPS層を形成する処理を行っていない非酸化PPS基材。)を用いた。
PPS基材としては、DIC社製、FZ2100(事前に酸化PPS層を形成する処理を行っていない非酸化PPS基材。)を用いた。
[評価方法]
本実施例における評価方法は以下の通りである。
(付着性評価)
JIS K 5600_5_6に従いクロスカット試験を行い、同JISにおける表1の試験結果の分類に従い評価した。
本実施例における評価方法は以下の通りである。
(付着性評価)
JIS K 5600_5_6に従いクロスカット試験を行い、同JISにおける表1の試験結果の分類に従い評価した。
(硬化性評価)
JIS K 5600_5_4に従い鉛筆法による引っかき硬度試験を行い、硬化性を評価した。
JIS K 5600_5_4に従い鉛筆法による引っかき硬度試験を行い、硬化性を評価した。
(耐熱性試験)
空気中で230℃、240時間の加熱を行った後の外観を目視で確認すると共に、JIS K 5600_5_6に従いクロスカット試験を行い、同JISにおける表1の試験結果の分類に従い付着性を評価した。
空気中で230℃、240時間の加熱を行った後の外観を目視で確認すると共に、JIS K 5600_5_6に従いクロスカット試験を行い、同JISにおける表1の試験結果の分類に従い付着性を評価した。
[実験A]
PPS基材の一方の表面における20cm×30cmの範囲に、表1の配合で、例1〜4の塗料組成物をスプレー塗装により塗布した。塗工量は30gとした。
その後、表1の加熱条件で加熱し、加熱後の塗膜について、付着性評価と硬化性評価を行った。結果を表1に示す。
PPS基材の一方の表面における20cm×30cmの範囲に、表1の配合で、例1〜4の塗料組成物をスプレー塗装により塗布した。塗工量は30gとした。
その後、表1の加熱条件で加熱し、加熱後の塗膜について、付着性評価と硬化性評価を行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、メチルシリコーン樹脂(メチルシリコーンレジン)を用いた例1、2では良好な付着性と硬化性が得られた。これは、230℃の加熱によりPPS基材の表面に酸化PPS層が形成され、この酸化PPS層とシリコーン樹脂のメチル基との間に静電的な結合エネルギーが生じたことによるものと考えられる。
これに対して、メチル基とフェニル基の両方を有するシリコーン樹脂(メチル/フェニルシリコーンレジン)を用いた例3、4では例1、2よりも付着性と硬化性が劣っていた。これは、メチル/フェニルシリコーンレジンでは、メチル基の量がメチル系シリコーン樹脂よりも少ないため、酸化PPS層との間の静電的な結合エネルギーが充分に得られなかったためと考えられる。
これに対して、メチル基とフェニル基の両方を有するシリコーン樹脂(メチル/フェニルシリコーンレジン)を用いた例3、4では例1、2よりも付着性と硬化性が劣っていた。これは、メチル/フェニルシリコーンレジンでは、メチル基の量がメチル系シリコーン樹脂よりも少ないため、酸化PPS層との間の静電的な結合エネルギーが充分に得られなかったためと考えられる。
[実験B]
PPS基材の一方の表面における20cm×30cmの範囲に、表2、3の配合で、例5〜12の塗料組成物をスプレー塗装により塗布した。塗工量は30gとした。
その後、表2、3の加熱条件で加熱し、加熱後の塗膜について、付着性評価と硬化性評価を行った。結果を表2、3に示す。
PPS基材の一方の表面における20cm×30cmの範囲に、表2、3の配合で、例5〜12の塗料組成物をスプレー塗装により塗布した。塗工量は30gとした。
その後、表2、3の加熱条件で加熱し、加熱後の塗膜について、付着性評価と硬化性評価を行った。結果を表2、3に示す。
表2に示すように、メチルシリコーン樹脂(メチルシリコーンレジン)を用い、230℃で加熱した例7、8では、例1、2と同様に良好な付着性と硬化性が得られた。
これに対して、メチルシリコーン樹脂(メチルシリコーンレジン)を用いていても、150℃で加熱した例5では付着性と硬化性が劣り、200℃で加熱した例6では、例5よりは改善されているものの、例1、2と同等の付着性と硬化性は得られなかった。
表2の結果から、塗膜とPPS基材との間の結合には、PPS基材の表面に形成された酸化PPS層が関与していると推定される。また、酸化PPS層を充分に形成するためには、200℃以上で加熱すべきことがわかった。
これに対して、メチルシリコーン樹脂(メチルシリコーンレジン)を用いていても、150℃で加熱した例5では付着性と硬化性が劣り、200℃で加熱した例6では、例5よりは改善されているものの、例1、2と同等の付着性と硬化性は得られなかった。
表2の結果から、塗膜とPPS基材との間の結合には、PPS基材の表面に形成された酸化PPS層が関与していると推定される。また、酸化PPS層を充分に形成するためには、200℃以上で加熱すべきことがわかった。
また、表3に示すように、メチル/フェニルシリコーンレジンを用いた例11、12では、230℃で加熱しても例7、8よりも付着性と硬化性が劣っていた。150℃または200℃で加熱した例9、10では、さらに付着性と硬化性に劣っていた。
これは、メチル/フェニルシリコーンレジンでは、メチル基の量がメチル系シリコーン樹脂よりも少ないため、酸化PPS層が形成されても静電的な結合エネルギーが充分に得られなかったためと考えられる。
これは、メチル/フェニルシリコーンレジンでは、メチル基の量がメチル系シリコーン樹脂よりも少ないため、酸化PPS層が形成されても静電的な結合エネルギーが充分に得られなかったためと考えられる。
[実験C]
PPS基材の一方の表面における20cm×30cmの範囲に、表4、5の配合で、例13〜22の塗料組成物をスプレー塗装により塗布した。塗工量は30gとした。
その後、表4、5の加熱条件で加熱し、加熱後の塗膜について、付着性評価と硬化性評価を行った。結果を表4、5に示す。
PPS基材の一方の表面における20cm×30cmの範囲に、表4、5の配合で、例13〜22の塗料組成物をスプレー塗装により塗布した。塗工量は30gとした。
その後、表4、5の加熱条件で加熱し、加熱後の塗膜について、付着性評価と硬化性評価を行った。結果を表4、5に示す。
表4に示すように、メチルシリコーン樹脂(メチルシリコーンレジン)にチタンキレート剤であるTC−100を加えた例15、16の塗料組成物は、加熱温度が150℃と低いにも関わらず、良好な硬化性が得られた。
これは、TC−100により塗膜の硬化が促進されたものと考えられる。
これは、TC−100により塗膜の硬化が促進されたものと考えられる。
また、TC−100とエポキシ基を有するシランカップリング剤であるエポキシシランを加えた例16の塗料組成物は、加熱温度が150℃と低いにも関わらず、硬化性だけでなく、付着性も良好であった。
これに対して、TC−100を加えたもののエポキシシランを用いていない例15の塗料組成物は、付着性が不充分であった。
さらに、メチル/フェニルシリコーンレジンを用いた例21、22においても、エポキシシランを用いている例22の方が、例21より付着性に優れていた。
エポキシシランにより付着性が得られるのは、シリコーン樹脂に導入されたエポキシ基とPPS基材とのファンデルワールス力による界面相互作用が生じるためであると推測される。
これに対して、TC−100を加えたもののエポキシシランを用いていない例15の塗料組成物は、付着性が不充分であった。
さらに、メチル/フェニルシリコーンレジンを用いた例21、22においても、エポキシシランを用いている例22の方が、例21より付着性に優れていた。
エポキシシランにより付着性が得られるのは、シリコーン樹脂に導入されたエポキシ基とPPS基材とのファンデルワールス力による界面相互作用が生じるためであると推測される。
また、TC−100に代えて、チタンのアルコキシドであるTA−8またはTA−30を配合した例13、14は、塗料組成物が、配合しただけでゲル化してしまい、塗膜を形成できなかった。これは、同じチタン化合物であっても、錯体ではないアルコキシドの場合は、触媒活性が高すぎるためと考えられる。
また、表5に示すように、TC−100に代えてアルミのキレート剤を用いた例17〜20では、硬化はするものの硬度が低く、エポキシシランを使用しても付着性が向上しなかった。したがって、金属キレート材を用いる場合は、チタンキレート剤を用いることが好ましいことがわかった。
[実験D]
PPS基材の一方の表面における20cm×30cmの範囲に、表6の配合で、例23〜26の塗料組成物をスプレー塗装により塗布した。塗工量は30gとした。
その後、表6の加熱条件で加熱し、加熱後の塗膜について、付着性評価と硬化性評価を行った。結果を表6に示す。
また、表6の加熱条件で加熱後の塗膜について、さらに空気中で230℃、240時間の加熱を行う耐熱性試験を行った。結果を表6に示す。
PPS基材の一方の表面における20cm×30cmの範囲に、表6の配合で、例23〜26の塗料組成物をスプレー塗装により塗布した。塗工量は30gとした。
その後、表6の加熱条件で加熱し、加熱後の塗膜について、付着性評価と硬化性評価を行った。結果を表6に示す。
また、表6の加熱条件で加熱後の塗膜について、さらに空気中で230℃、240時間の加熱を行う耐熱性試験を行った。結果を表6に示す。
表6に示すように、メチルシリコーン樹脂(メチルシリコーンレジン)にTC−100とエポキシシランを加えた例23、24の塗料組成物は、いずれも耐熱性試験前の付着性が良好であった。また、耐熱性試験後の付着性も良好であった。
耐熱性試験前の付着性は、エポキシシランによってもたらされていると考えられる。他方、耐熱性試験を行った後は、エポキシシランは熱分解してしまっていると考えられるので、耐熱性試験後の付着性は、耐熱性試験によりPPS基材の表面に酸化PPS層が形成され、この酸化PPS層とシリコーン樹脂のメチル基との間に静電的な結合エネルギーが生じたことによってもたらされているものと考えられる。
耐熱性試験前の付着性は、エポキシシランによってもたらされていると考えられる。他方、耐熱性試験を行った後は、エポキシシランは熱分解してしまっていると考えられるので、耐熱性試験後の付着性は、耐熱性試験によりPPS基材の表面に酸化PPS層が形成され、この酸化PPS層とシリコーン樹脂のメチル基との間に静電的な結合エネルギーが生じたことによってもたらされているものと考えられる。
また、耐熱性試験後の例23の外観は良好であったが、例24ではクラックがあった。これは、例23の方が例24よりも質量分子量が大きく、塗膜における架橋点が少なくなるため、クラックか生じにくくなっているものと考えられる。
また、メチル/フェニルシリコーンレジンにTC−100とエポキシシランを加えた例23、24の塗料組成物は、いずれも耐熱性試験前の付着性が良好であったものの、耐熱性試験後の付着性は劣っていた。
これは、耐熱性試験によりエポキシシランによる付着性が失われることによると考えられる。また、耐熱性試験でPPS基材の表面に酸化PPS層が形成されても、シリコーン樹脂のメチル基が少ないため、酸化PPS層とシリコーン樹脂のメチル基との間の静電的な結合エネルギーが充分に得られないためであると考えられる。
これは、耐熱性試験によりエポキシシランによる付着性が失われることによると考えられる。また、耐熱性試験でPPS基材の表面に酸化PPS層が形成されても、シリコーン樹脂のメチル基が少ないため、酸化PPS層とシリコーン樹脂のメチル基との間の静電的な結合エネルギーが充分に得られないためであると考えられる。
Claims (9)
- ポリフェニレンサルファイド基材に塗布するための塗料組成物であって、有機置換基の総てがメチル基又はエチル基であるメチル系シリコーン樹脂を含有することを特徴とする塗料組成物。
- さらにエポキシ基を有するシランカップリング剤を含有する、請求項1に記載の塗料組成物。
- さらに金属キレート剤を含有する、請求項1または2に記載の塗料組成物。
- 前記メチル系シリコーン樹脂の重量平均分子量が200万〜400万である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗料組成物。
- ポリフェニレンサルファイド基材と、その表面の少なくとも一部に形成された請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物の塗膜を有することを特徴とする塗装品。
- 前記ポリフェニレンサルファイド基材が、前記塗膜が形成された表面に、ポリフェニレンサルファイドの硫黄原子の少なくとも一部が酸化されて極性基となっている酸化ポリフェニレンサルファイド層を有する、請求項5に記載の塗装品。
- ポリフェニレンサルファイド基材の表面の少なくとも一部に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物を塗布し、加熱することを特徴とする塗装品の製造方法。
- 前記ポリフェニレンサルファイド基材が、前記塗料組成物を塗布する表面に、ポリフェニレンサルファイドの硫黄原子の少なくとも一部が酸化されて極性基となっている酸化ポリフェニレンサルファイド層を有する、請求項7に記載の塗装品の製造方法。
- 150〜200℃で、30〜90分間加熱する、請求項7または8に記載の塗装品の製造方法。
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