JP2019006931A - 金属板用塗料およびこれを用いた塗装金属板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]ポリエステル樹脂と、メラミン樹脂系硬化剤と、シリコーンレジンと、pHが6〜8であるブロックスルホン酸触媒と、を含む、金属板用塗料。
[4]前記ブロックスルホン酸触媒が、下記一般式(2)で表される化合物を含む、[1]または[2]に記載の金属板用塗料。
[5]前記シリコーンレジンが、Si原子の総モル数に対して、5〜50モル%のシラノール基を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の金属板用塗料。
[6]金属板の表面に、[1]〜[5]のいずれかに記載の金属板用塗料を塗布し、硬化させて塗膜を形成する工程と、前記塗膜にフレーム処理を行う工程と、を含む、塗装金属板の製造方法。
本発明は、金属板の保護や、雨筋汚れを防止するために金属板表面に塗布する金属板用塗料に関する。当該金属板用塗料は、例えば、金属板上に塗布後、塗膜表面をフレーム処理して用いられる。
以下、本発明の金属板用塗料の各成分について、詳しく説明する。
ブロックスルホン酸触媒は、pHが6〜8であり、スルホン酸が任意のブロック基によってブロックされた触媒であって、加熱等によってブロック基が脱離し、シリコーンレジンの硬化触媒として作用するものであれば特に制限されない。金属板用塗料には、ブロックスルホン酸触媒が一種のみ含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。また、ブロックスルホン酸触媒のpHは、金属板用塗料から常法によりブロックスルホン酸触媒のみを抽出し、pH測定装置で測定すること等により特定できる。ブロックスルホン酸触媒のpHは通常、ブロック基の構造により調整される。ブロックスルホン酸触媒のpHは、金属板用塗料の貯蔵安定性をさらに良好にするとの観点から、6.5〜7.5であることがより好ましい。
本明細書において「シリコーンレジン」とは、アルコキシシランが部分加水分解縮合した化合物であって、三次元状の架橋型構造を主体とするが、ゲル化までには至らず、有機溶剤に可溶なポリマーとする。シリコーンレジンが含む三次元状の架橋型構造は特に制限されず、例えば、カゴ状、梯子状、またはランダム状のいずれであってもよい。なお、本明細書において、テトラアルコキシシラン、およびテトラアルコキシシランのみを加水分解縮合させた縮合物(オルガノシリケート)は、シリコーンレジンに含まないものとする。
ポリエステル樹脂は、金属板用塗料から得られる塗膜において、バインダーとして機能する。当該ポリエステル樹脂は、例えば多価カルボン酸および多価アルコールを重縮合させた公知の樹脂とすることができる。多価カルボン酸の例には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類及びこれらの無水物;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸類及びこれらの無水物;γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類;トリメリット酸、トリメジン酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸類;等が含まれる。ポリエステル樹脂は、上記多価カルボン酸由来の構造を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
メラミン樹脂系硬化剤は、ポリエステル樹脂を硬化させるための硬化剤として機能するものであれば特に制限されない。メラミン樹脂系硬化剤によってポリエステル樹脂を架橋させることで、塗膜の性状や物性(例えば塗膜表面硬度や耐久性)等を調整することができる。
金属板用塗料には、無機粒子や有機粒子が含まれていてもよい。金属板用塗料にこれらが含まれると、得られる塗膜の表面粗さ等が調整されやすくなる。ここで、無機粒子または有機粒子の平均粒子径は4〜80μmであることが好ましく、10〜60μmであることがより好ましい。無機粒子や有機粒子の平均粒子径は、コールターカウンター法で測定される値である。なお、無機粒子や有機粒子の形状は特に制限されないが、得られる塗膜の表面状態を調整しやすいとの観点から、略球状であることが好ましい。
塗料の調製方法は特に制限されない。公知の塗料と同様に、上記各材料を混合し、攪拌もしくは分散することで、調製することができる。なお、シリコーンレジンは、他の成分と予め混合してもよい。また、シリコーンレジン以外の材料を予め混合しておき、シリコーンレジンを後から混合してもよい。
上述の金属板用塗料を用いて塗装金属板を作製する方法を以下説明する。当該塗装金属板の製造方法は、金属板の表面に、上述の金属板用塗料を塗布し、硬化させて塗膜を形成する工程と、当該塗膜にフレーム処理を行う工程と、を含む方法とすることができる。
以下の方法により、金属板用塗料を調製した。
各実施例および比較例において以下のポリエステル樹脂、ブロックスルホン酸触媒、シリコーンレジン、オルガノシリケートを用いた。
・ポリエステル樹脂A:バイロンKS−1520V、東洋紡績社製、数平均分子量 6400、ガラス転移温度 3℃、水酸基価 42mgKOH/g
・ポリエステル樹脂B:バイロンKS−1460V、東洋紡績社製、数平均分子量 15000、ガラス転移温度 7℃、水酸基価 11mgKOH/g
・ポリエステル樹脂C:バイロンKS−1860V、東洋紡績社製、数平均分子量 32000、ガラス転移温度 −8℃、水酸基価 17mgKOH/g
・メトキシ基90モル%メチル化メラミン樹脂系硬化剤:サイメル(登録商標)303、三井サイテック社製
・ブロックスルホン酸触媒A(pH7.0):下記化学式で表される構造を有する、パラトルエンスルホン酸エステル
・ブロックスルホン酸触媒B(pH9.0):パラトルエンスルホン酸にトリエチルアミンを添加して調製した。トリエチルアミンの添加量は、ブロックスルホン酸触媒BのpHが9.0となるように調整した。
シリコーンレジンは、以下のように調製した。
・メチル系シリコーンレジンAの調製
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン408g(3.0モル)を仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液216g(12.0モル)を5℃で、40分間かけて滴下した。滴下終了後、10℃で6時間攪拌し、加水分解および脱水縮合を完了させた。これにより、メチル系シリコーンレジンAを含む調製液を得た。その後、当該調製液から、加水分解によって生成したメタノールを、70℃、60mmHgで1時間減圧留去した。メタノール留去後の調製液は白濁しており、一晩静置することで、2層に分離した。下層は、水に不溶となって沈降したシリコーンレジンである。当該調製液に、メチルイソブチルケトン(MIBK)469gを加え、室温で1時間攪拌した。これにより、沈降したシリコーンレジンを完全にMIBKに溶解させた。そして、当該調製液を静置し、水層とMIBK層とを分離させた。その後、コック付きフラスコにて下層の水層を取り除き、固形分が50質量%、かつ無色透明のシリコーンレジン溶液を得た。シリコーンレジンAの重量平均分子量、分子量分布、T単位(3官能シリコーンレジン由来の構造)/D単位(2官能シリコーンレジン由来の構造)、およびSi原子量に対するシラノール基量を表1に示す。なお、重量平均分子量および分子量分布は、GPC分析により特定した。さらに、T単位/D単位およびシラノール基量は、29Si−NMRおよび1H−NMR分析により特定した。
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン286g(2.1モル)およびジメチルジメトキシシラン108g(0.9モル)を仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで、氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液198g(11.0モル)を5〜25℃で20分間かけて滴下した。滴下終了後、15℃で6時間攪拌して加水分解および脱水縮合を行った。滴下終了後、メチル系シリコーンレジンAの合成と同様の操作を行い、固形分約50質量%のメチル系シリコーンレジンBを含むシリコーンレジン溶液を得た。シリコーンレジンBの重量平均分子量、分子量分布、T単位/D単位、およびSi原子量に対するシラノール基量を表1に示す。
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン272g(2.0モル)とフェニルトリメトキシシラン119g(1.0モル)とを仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで、氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液198g(11.0モル)を5〜25℃で30分間かけて滴下した。滴下終了後、10℃で6時間攪拌し、加水分解および脱水縮合を完了させた。滴下終了後、メチル系シリコーンレジンAの合成と同様の操作を行い、固形分約50質量%のメチル/フェニル系シリコーンレジンCを含む調製液を得た。シリコーンレジンCの重量平均分子量、分子量分布、T単位/D単位、メチル基とフェニル基との含有比(メチル/フェニル)、およびSi原子量に対するシラノール基量を表2に示す。
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン109g(0.8モル)、フェニルトリメトキシシラン198g(1.0モル)、およびジメチルジメトキシシラン144g(1.2モル)を仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで、氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液216g(12.0モル)を5〜25℃で40分間かけて滴下し、10℃で6時間攪拌して加水分解および脱水縮合を完了させた。滴下終了後、メチル系シリコーンレジンAの合成と同様の操作を行い、固形分約50質量%のメチル/フェニル系シリコーンレジンDを含むシリコーンレジン溶液を得た。シリコーンレジンDの重量平均分子量、分子量分布、T単位/D単位、メチル基とフェニル基との含有比(メチル/フェニル)、およびSi原子量に対するシラノール基量を表2に示す。
オルガノシリケートは、以下のものを用いた。
・メチルシリケートE(テトラメトキシシランの縮合物):メチルシリケート53A、コルコート社製、重量平均分子量(Mw) 840、数平均分子量(Mn) 610、Mw/Mn=1.4
・エチルシリケートF(テトラエトキシシランの縮合物):エチルシリケート48、コルコート社製、重量平均分子量(Mw) 1300、数平均分子量(Mn) 850、Mw/Mn=1.5
表3および表4に示すポリエステル樹脂とメラミン樹脂系硬化剤とを混合し、ポリエステル樹脂およびメラミン樹脂系硬化剤を含む組成物を得た。なお、ポリエステル樹脂Aとメチル化メラミン樹脂系硬化剤との配合比は100:40とし、ポリエステル樹脂Bとメチル化メラミン樹脂系硬化剤との配合比は100:30とし、ポリエステル樹脂Cとメチル化メラミン樹脂系硬化剤との配合比は100:20とした。
上記金属板用塗料を用いて、以下のように塗装金属板を作製し、評価を行った。結果を表3および表4に示す。
板厚0.27mm、A4サイズ(210mm×297mm)、片面当りめっき付着量90g/m2の溶融Zn−55%Al合金めっき鋼板を金属板として準備し、表面をアルカリ脱脂した。その後、当該表面に、塗布型クロメート処理液(日本ペイント株式会社製 NRC300NS)を、Crの付着量が50mg/m2となるように塗布した。さらに、エポキシ樹脂系プライマー塗料(日本ファインコーティングス株式会社製 700P)を、硬化膜厚が5μmとなるようにロールコーターで塗布した。続いて、金属板の最高到達板温215℃となるように焼き付け、プライマー塗膜を形成しためっき鋼板(以下、単に「めっき鋼板」とも称する)を得た。
上述のように調製した金属板用塗料を、40℃の恒温室中で15日間保存した後、硬化膜厚が18μmとなるように上述のめっき鋼板にロールコーターで塗布した。その後、最高到達板温225℃、板面風速0.9m/sで45秒間焼き付けた。
実施例1〜12、および比較例1〜12の金属板用塗料を塗布した塗膜については、以下の方法でフレーム処理を行った。なお、比較例13〜24については、フレーム処理を行わなかった。
フレーム処理用バーナーには、Flynn Burner社(米国)製のF−3000を使用した。また、燃焼性ガスには、LPガス(燃焼ガス)と、クリーンドライエアーとを、ガスミキサーで混合した混合ガス(LPガス:クリーンドライエアー(体積比)=1:25)を使用した。また、各ガスの流量は、バーナーの炎口の1cm2に対してLPガス(燃焼ガス)が1.67L/分、クリーンドライエアーが41.7L/分となるように調整した。なお、塗膜の搬送方向のバーナーヘッドの炎口の長さは4mmとした。一方、バーナーヘッドの炎口の搬送方向と垂直方向の長さは、450mmとした。さらに、バーナーヘッドの炎口と塗膜表面との距離は、所望のフレーム処理量に応じて20mmとした。さらに、塗膜の搬送速度を24m/分とすることで、フレーム処理量を265kJ/m2に調整した。
実施例および比較例で作製した塗装金属板について、JIS K5600−4−7(ISO 2813:1994)で規定される60°鏡面光沢度を日本電色社製 光沢計VG−2000によって測定した。その結果、いずれの塗装金属板においても、60°鏡面光沢度は30〜40であった。
各金属板用塗料を40℃の恒温室中で保存し、15日後、1ヵ月後、3ヵ月後、および6ヵ月後の塗料粘度をB型粘度計で測定した。そして、保存前後の粘度を比較し、以下の基準で評価した。
◎:恒温室保存前後で塗料粘度上昇率が30%未満
○:恒温室保存前後で塗料粘度上昇率が30%以上、100%未満
△:恒温室保存前後で塗料粘度上昇率が100%以上
×:ゲル化が生じた
なお、△、○、◎を合格とした。
JIS K5600−5−4(ISO/DIS 15184)に準拠して、上述の塗装金属板の塗膜表面の耐傷付き性を評価する鉛筆硬度試験を行った。当該塗膜表面の耐傷付き性は、以下の基準で評価した。
○:H以上
△:B〜HB
×:2B以下
なお、△以上を合格と評価した。
上述の塗装金属板の塗膜表面の対水接触角を測定した。測定は気温23±2℃、相対湿度50±5%の恒温恒湿度室で0.01ccの精製水の水滴を形成して、協和界面科学社製の接触角計DM901を使用して測定した。
耐雨筋汚れ性は、以下のように評価した。
まず、垂直暴露台に上述の塗装金属板をそれぞれ取り付けた。さらに、当該塗装金属板の上部に、地面に対して角度20°となるように、波板を取り付けた。このとき、雨水が塗装金属板表面を筋状に流れるように、波板を設置した。この状態で、屋外暴露試験を6ヶ月間行い、汚れの付着状態を観察した。耐雨筋汚れ性の評価は、暴露前後の塗装金属板の明度差(ΔL)で、以下のように評価した。
◎:ΔLが1未満であった(雨筋汚れが全く視認できない)
〇:ΔLが1未満であった(雨筋汚れがほとんど視認できない)
×:ΔLが1以上2未満であった(雨筋汚れは目立たないが視認できる)
××:ΔLが2以上であった(汚れが目立つ)
なお、○、◎を合格とした。
Claims (6)
- ポリエステル樹脂と、
メラミン樹脂系硬化剤と、
シリコーンレジンと、
pHが6〜8であるブロックスルホン酸触媒と、
を含む、
金属板用塗料。 - 前記ブロックスルホン酸触媒が、下記一般式(1)で表される構造を有する、
請求項1に記載の金属板用塗料。
R1は、一価もしくは多価の炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルキル基が1つまたは2つ結合したフェニル基、またはナフチル基を表し、
R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基を表し(ただし、R2およびR3は互いに結合して環を形成していてもよい)、
X1は、単結合、−CH2−O−R6−、または−CH2−O−C(=O)−R7−を表し(R6およびR7は、単結合、または炭素数1〜20の二価の有機基を表す)、
X2は、単結合、または−C(=O)NH−を表し、
R4は、水素原子、一価もしくは多価の炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有していてもよいビスフェノールA残基、または置換基を有していてもよいビスフェノールF残基を表し、
R5は、水素原子、一価もしくは多価の炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のシクロアルキル基、炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数1〜18のアリール基、または炭素数19〜100の有機基を表し、
nは1〜10の整数を表し、
x、y、およびzはそれぞれ独立に、1以上の整数を表す) - 前記一般式(1)におけるR1がp−トリル基、または4−ドデシルフェニル基である、
請求項2に記載の金属板用塗料。 - 前記シリコーンレジンが、Si原子の総モル数に対して、5〜50モル%のシラノール基を含む、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属板用塗料。 - 金属板の表面に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属板用塗料を塗布し、硬化させて塗膜を形成する工程と、
前記塗膜にフレーム処理を行う工程と、
を含む、
塗装金属板の製造方法。
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