JP2021127367A - 金属板用塗料 - Google Patents

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Keiko Takiguchi
慶子 瀧口
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正樹 佐藤
成寿 鈴木
Shigetoshi Suzuki
成寿 鈴木
崇史 川越
Takashi Kawagoe
崇史 川越
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Abstract

【課題】調製が簡便であり、貯蔵安定性が高く保管後も安定した外観の塗膜を作製可能であり、加熱装置を汚染することが少なく、加工性が良好であり、さらに雨筋汚れが生じ難い塗装金属板を作製可能である金属板用塗料を提供する。【解決手段】金属板用塗料は、Si原子の総モル量に対して、5〜50モル%のシラノール基を含み、かつSi原子に直接結合する炭化水素基の総量に対する、アルキル基の割合が80〜100モル%であるシリコーンレジンと、フッ化ビニリデン系樹脂と、(メタ)アクリル樹脂と、を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、金属板用塗料に関する。
屋外の建造物や土木構造等には、塗装金属板が多く用いられている。塗装金属板を例えば屋根や壁の一面に用いる場合は、同一色の塗装金属板を複数枚組み合わせて使用することが多い。そのため、同一色の各塗装金属板の色調・光沢を含む外観が均一である必要がある。したがって、塗料の製造時期の違いによる色調・光沢を含む外観不安定の小さい塗装金属板の提供が求められている。加えて、上記塗装金属板は、塗装後に屋根や壁の形状に加工されることから、塗膜には加工性が求められる。
また、上記塗装金属板に長期の耐久性が要求される場合には、その表面側に配置される塗膜の塗料として、耐候性に優れる含フッ素樹脂系塗料を用いた塗装金属板が多く用いられている。このような塗装金属板では、自動車の排気ガス、工場からの煤煙等に含まれるカーボン系汚染物質(以下、「疎水性カーボン」とも称する)の付着による汚れが問題となっている。汚れの中でも特に、雨筋に沿って付着する汚れ(以下、「雨筋汚れ」とも称する)が目立ちやすい。含フッ素樹脂系塗料を焼き付けた塗装金属板でも、雨筋汚れが比較的短時間のうちに目立つようになることは避けられない。そのため、雨筋汚れが発生し難い塗装金属板の提供が求められている。
近年、塗膜の対水接触角を60°以下、つまり親水性にすることで、雨筋汚れを防止することが提案されている。対水接触角が低い親水性の塗膜表面では、雨水によって疎水性カーボンが浮き上がりやすく、浮き上がった疎水性カーボンが洗い流されると考えられる。塗装金属板表面を親水化する手法の一つとして、塗料にテトラアルコキシシランまたはその縮合物(以下、これらを「オルガノシリケート」とも称する)を含める方法が提案されている(特許文献1〜2)。また、塗料に加水分解性シリル基含有化合物(オルガノシリケート)またはシラノール基を有する化合物(シリコーンレジンを含む)を含める方法も提案されている(特許文献3)。
国際公開第1994/6870号 特許第3295354号公報 特開平8−41415号公報
上記特許文献1〜3に記載の塗料は、含フッ素樹脂とオルガノシリケートを含む。特許文献1に記載の塗料を金属板表面に塗布すると、オルガノシリケートが膜の表面側に移動する。そして、膜を硬化させると、オルガノシリケートが空気中の水分等と反応し、塗膜表面にシラノール基やシロキサン結合が生じる。これにより、塗膜表面が親水化し、雨筋汚れが抑制されると考えられている。しかしながら、オルガノシリケートは反応性が非常に高く、塗料中の水分によって反応しやすい。したがって、オルガノシリケートを含む塗料は貯蔵安定性が低く、オルガノシリケートの添加後、時間が経過した塗料では、オルガノシリケートが表面に移動し難く、塗膜表面を十分に親水化することが難しかった。
特許文献2に記載の塗料は、オルガノシリケートを事前にキレート誘導体とし、それを塗料樹脂と配合することで、塗料の貯蔵安定性を高めている。しかしながら当該手法では、塗料用とは別にキレート誘導体調合用の容器が必要である。さらにオルガノシリケートの水分との反応性を抑制する目的でキレート剤や脱水剤を含むが、両者は共に塗料中の遷移金属イオンや樹脂中の官能基といった他の物質と相互作用し、着色したり成膜を阻害しやすい。すなわち塗料の製造時期の違いによって形成する塗膜の色調や性能不安定を引き起こしやすい。したがって、特許文献2の塗料でも、外観安定性の良い塗装金属板を得ることが難しかった。
特許文献3に記載の塗料は、末端に塩構造と併せて硬化反応性部位を有する含フッ素ビニル共重合体とシラノール基を有する化合物を含む。しかしながら、硬化性反応部位を有する含フッ素ビニル共重合体は、硬化剤との共存下で硬化反応が進行しやすく、また自己架橋による硬化も進行しやすい。塗料中で硬化反応が進行した塗料は、ゲル化し貯蔵安定性が悪くなりやすい。したがって、特許文献3の塗料でも、塗料貯蔵安定性や保管後塗料を用いた塗装金属板の外観安定性を達成することは難しかった。
また、特許文献1〜3に記載のオルガノシリケートを含む塗料では、塗料を硬化させる際に、オルガノシリケートが溶剤と共に蒸発しやすく、加熱装置を汚染しやすい、との課題もあった。
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、調製が簡便であり、貯蔵安定性が高く、保管後も安定した外観の塗装金属板を作製可能であり、加熱装置を汚染することが少なく、機械的性質が良好であり、さらに雨筋汚れが生じ難い塗装金属板を作製可能である金属板用塗料の提供を目的とする。
本発明は、以下の金属板用塗料を提供する。
[1]Si原子の総モル量に対して、5〜50モル%のシラノール基を含み、かつSi原子に直接結合する炭化水素基の総量に対する、アルキル基の割合が80〜100モル%であるシリコーンレジンと、フッ化ビニリデン系樹脂と、(メタ)アクリル樹脂と、を含む、金属板用塗料。
[2]前記シリコーンレジンは、Si原子の総モル量に対して、トリアルコキシシラン由来のSi原子を50〜100モル%含む、[1]に記載の金属板用塗料。
[3]亜鉛カルボン酸塩触媒をさらに含む、[1]または[2]に記載の金属板用塗料。
[4]前記亜鉛カルボン酸塩触媒が、下記一般式(1)で表される構造を有する、[3]に記載の金属板用塗料。
Figure 2021127367
(一般式(1)におけるRは、炭素数1〜18の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、または炭素数が6〜18のアリール基を表す)
[5]前記一般式(1)で表される化合物が、ビス(2−エチルヘキサン酸)亜鉛である、[4]に記載の金属板用塗料。
本発明は、以下の金属板用塗料の製造方法も提供する。
[6]金属板の表面に、上記金属板用塗料を塗布し、硬化させて塗膜を形成する工程と、前記塗膜にフレーム処理を行う工程と、を含む、塗装金属板の製造方法。
本発明の金属板用塗料は、調製が簡便であり、貯蔵安定性が高い。さらに、保管後も安定した外観の塗装金属板を作製可能であり、塗装金属板作製時に加熱装置を汚染することが少ない。またさらに当該金属板用塗料によれば、機械的性質が良好であり、表面に雨筋汚れが生じ難い塗装金属板を作製することが可能である。
1.金属板用塗料について
本発明の金属板用塗料(以下、単に「塗料」とも称する)は、金属板表面に塗布して使用される。なお、当該塗料を金属板表面に塗布した後、当該塗膜からなる塗膜表面は、フレーム処理によって、親水化処理される。
前述のように、従来、金属板の表面に、オルガノシリケートを含む塗料を塗布し、雨筋汚れを防止することが試みられている。オルガノシリケートは、金属板表面に塗布されると表面側に移動する。そして、これらが加水分解され、シラノール基やシロキサン結合が生じることで、耐雨筋汚れ性が発現すると考えられる。しかしながら、オルガノシリケートは反応性が高く、塗料中の水分によって容易に加水分解されて、高分子量化する。そのため、オルガノシリケートを含む塗料は貯蔵安定性が低かったり、成膜を阻害したりしやすい、との課題があった。さらに、上記オルガノシリケートは、塗料の加熱乾燥時に溶剤と共に蒸発しやすい。したがって、これらを含む塗料を用いると、加熱装置が汚染されやすい、との課題もあった。また、含フッ素ビニル共重合体を含む場合も、硬化剤との共存下で硬化反応が進行しやすく、貯蔵安定性が低くなりやすかった。
これに対し、本発明の塗料は、フッ化ビニリデン系樹脂と、特定のシリコーンレジンと、(メタ)アクリル樹脂と、を含む。本明細書における「フッ化ビニリデン系樹脂」とは、フッ化ビニリデン由来の構成単位を分子鎖中に含む樹脂であればよく、フッ化ビニリデン単独重合体、もしくはフッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体のいずれであってもよい。ただし、フッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデン由来の構成単位を、フッ化ビニリデン系樹脂を構成する構成単位の総量に対して50モル%以上含むことが好ましく、60モル%以上含むことがより好ましい。塗料がフッ化ビニリデン系樹脂を含むと、得られる塗料の安定性が増し、塗膜(塗装金属板)の耐久性や、耐候性、機械的性質が良好になる。さらに、当該フッ化ビニリデン系樹脂を含む塗料では、一定期間保存後に塗膜を形成した場合であっても、塗膜の色調や光沢が変化し難い。
一方、本明細書における「シリコーンレジン」とは、アルコキシシランが部分加水分解縮合した化合物であって、三次元状の架橋型構造を主体とするが、ゲル化までには至らず、有機溶剤に可溶なポリマーである。シリコーンレジンが含む三次元状の架橋型構造は特に制限されず、例えば、カゴ状、梯子状、またはランダム状のいずれであってもよい。なお、本明細書において、テトラアルコキシシラン、およびテトラアルコキシシランのみを加水分解縮合させた縮合物(オルガノシリケート)は、シリコーンレジンに含まないものとする。
シリコーンレジンは、三次元状の架橋型構造を含むため、塗料を金属板表面に塗布すると、膜の表面側に移行しやすく、さらには、当該膜の表面に沿って均一に並びやすい。そして、このような塗膜にフレーム処理を行うと、シリコーンレジンが含む有機基(例えば、メチル基やフェニル基等)がムラなく除去されて、塗膜表面にシラノール基やシロキサン結合が導入される。その結果、塗装金属板の表面の親水性が均一に高くなり、耐雨筋汚れ性が非常に良好となる。
また、本発明の塗料に含まれるシリコーンレジンは、シラノール基をシリコーンレジン中のSi原子の総モル数に対して、5〜50モル%含む。シラノール基量がSi原子の総モル数に対して5〜50モル%であるシリコーンレジンは、反応性が適度であり、塗料に含まれる水分によって過度に縮合し難い。したがって、シリコーンレジンが塗料中で反応し難く、塗料の貯蔵安定性が非常に良好となる。さらに、このようなシリコーンレジンを用いると塗料の調製が簡便になる。また、当該シリコーンレジンでは、シラノール基が、塗料の他の成分と適度に水素結合するため、塗料の塗布後、膜を加熱乾燥させる際に、シリコーンレジンが蒸発し難い。したがって、本発明の塗料は、加熱装置を汚染し難い。
さらに、シリコーンレジンのSi原子に直接結合する炭化水素基の総量に対する、アルキル基の割合が、80〜100モル%である。Si原子に直接結合する炭化水素のうち、アルキル基の割合が、80モル%以上であると、耐雨筋汚れ性が良好になりやすい。その理由は、アルキル基の割合が多いシリコーンレジンでは、成膜時に表面濃化しやすい。また、Si原子に直接結合するアルキル基は後工程のフレーム処理により容易にシラノール基等の親水性官能基に分解されるためと考えられる。
ここで、本発明の塗料には、フッ化ビニリデン系樹脂、特定のシリコーンレジン、および(メタ)アクリル樹脂以外の成分が含まれていてもよく、例えばシリコーンレジン硬化触媒や、溶媒等のその他の成分が含まれていてもよい。以下、本発明の塗料に含まれる各成分について、詳しく説明する。
(1)シリコーンレジン
シリコーンレジンは、上述のように、アルコキシシランを部分加水分解縮合させた化合物であり、その分子鎖には通常、下記一般式で表される、トリアルコキシシラン由来のT−1単位〜T−3単位(これらを総称して「T単位」とも称する)のいずれか1つ、または2つ以上が含まれる。
Figure 2021127367
上記一般式において、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。また、Xは水素原子、または炭化水素基を表す。シリコーンレジンには、上記RやXの種類が異なる複数種類のT単位が含まれていてもよい。
は炭素数1〜12の炭化水素基であることが好ましく、その具体例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基;等が含まれる。これらの中でも特に好ましくは、メチル基である。
一方、Xは水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基であることが好ましく、当該炭化水素基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基;等が含まれる。これらの中でも特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。
また、シリコーンレジンの分子鎖には、下記一般式で表される、ジアルコキシシラン由来のD−1単位およびD−2単位(これらを総称して「D単位」とも称する)のいずれか一方または両方が含まれていてもよい。
Figure 2021127367
上記一般式において、RおよびRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。また、Xは、水素原子、または炭化水素基を表す。なお、シリコーンレジンには、上記RやR、Xの種類が異なる複数種類のD単位が含まれていてもよい。
およびRはそれぞれ、炭素数1〜12の炭化水素基であることが好ましく、その具体例には、上述のT単位のRと同様の基が含まれる。一方、Xは水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基が好ましく、その具体例には、上述のT単位のXと同様の基が含まれる。
さらに、シリコーンレジンの分子鎖には、下記一般式で表されるテトラアルコキシシラン由来のQ−1単位〜Q−4単位(これらを総称して「Q単位」とも称する)のいずれか1つ、または2つ以上が含まれていてもよい。
Figure 2021127367
上記一般式において、Xは水素原子、または炭化水素基を表す。なお、シリコーンレジンには、上記Xの種類が異なる複数種類のQ単位が含まれていてもよい。
は水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基であることが好ましく、その具体例には、上述のT単位のXと同様の基が含まれる。
シリコーンレジンは、上記T単位、D単位、および/またはQ単位が三次元的に結合した構造を有する。前述のように、本発明の塗料に含まれるシリコーンレジン中のシラノール基の量(モル数)は、Si原子の総モル数に対して、5〜50モル%であり、15〜40モル%であることがより好ましい。シラノール基の量がSi原子の総モル数に対して50モル%を超えると、シリコーンレジンの反応性が高くなり、塗料の保存安定性が低くなりやすい。一方、シラノール基の量がSi原子の総モル数に対して5モル%未満であると、シリコーンレジンと塗料中の他の成分(例えば、(メタ)アクリル樹脂等)とが水素結合し難くなり、塗料の硬化時に、シリコーンレジンが蒸発しやすくなる。
これに対し、シリコーンレジン中のシラノール基量が上記範囲であると、前述のように、塗料の保存安定性が高まるだけでなく、塗料からなる膜の硬化時に、シリコーンレジンが蒸発し難くなる。
シリコーンレジンが含むSiのモル数、およびシリコーンレジンが含むシラノール基の量は、29Si−NMRによる分析、およびH−NMRによる分析により特定することができる。また、シリコーンレジンにおけるシラノール基の量は、T単位、D単位、およびQ単位の仕込み比や、縮合反応の程度によって調整することができる。例えば、トリアルコキシシランを用いてシリコーンレジンを調製する場合、縮合反応時間を長くすること等で、T−3単位が多くなり、シラノール基の量が少なくなる。
また、シリコーンレジンは、シリコーンレジンが含むSi原子の総モル数に対して、トリアルコキシシラン由来のSi原子、すなわちT単位を構成するSi原子を50〜100モル%含むことが好ましく、60〜100モル%含むことがより好ましい。T単位量が50モル%未満である(特にD単位量が50モル%より多くなる)と、シリコーンレジンがミセル構造を形成しやすくなり、塗膜表面にシリコーンレジンが海島状に濃化しやすくなる。その結果、塗膜表面の親水性を均一に高めることが難しくなり、塗膜の耐雨筋汚れ性にムラが生じやすくなる。なお、シリコーンレジンが塗膜表面で海島状に濃化していることは、フレーム処理後の塗膜表面をAFM(原子間力顕微鏡)で分析することで確認することが可能である。例えば、フレーム処理によるエッチング深度は塗膜表面の海部分と島部分で異なる。そこで、塗膜表面の凹凸によって、シリコーンレジンの海島分布を確認することが可能である。
これに対し、T単位量が50モル%以上であると、シリコーンレジンがミセル構造を形成し難くなり、塗膜表面にシリコーンレジンが均一に濃化しやすくなる。その結果、塗料を塗布して得られる塗装金属板の耐雨筋汚れ性が良好になる。T単位を構成するSi原子の量は、29Si−NMRによる分析によって特定できる。
また、シリコーンレジンのSi原子に直接結合する炭化水素基の総量に対する、アルキル基の割合は、80〜100モル%であり、90〜100モル%がより好ましく、95〜100モル%がさらに好ましい。Si原子に直接結合する炭化水素のうち、アルキル基の割合が、80モル%以上であると、上述のように、耐雨筋汚れ性が良好になりやすい。Si原子に結合する炭化水素基の総量、およびアルキル基の量は、H−NMRによる分析によって特定することができる。
ここで、シリコーンレジンの重量平均分子量は好ましくは700〜50000であり、より好ましくは1000〜10000である。シリコーンレジンの重量平均分子量が700未満になると、塗料(膜)の硬化時に、シリコーンレジンが蒸発しやすくなり、加熱装置を汚染したり、得られる塗膜表面のシリコーンレジン量が少なくなる。一方、重量平均分子量が50000を超えると、塗料の粘度が高まりやすくなり、貯蔵安定性が低くなる。なお、上記シリコーンレジンの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算量である。
塗料には、その固形分100質量部に対して、シリコーンレジンが1〜10質量部含まれることが好ましく、2〜6質量部含まれることがより好ましい。塗料にシリコーンレジンが当該範囲含まれることで、得られる塗膜表面の親水性を十分に高めることが可能となり、雨筋汚れが生じ難くなる。
上述のシリコーンレジンは、トリアルコキシシラン等を加水分解重合させて調製することができる。具体的には、トリアルコキシシラン等のアルコキシシランやその部分縮合物を水やアルコール等の溶剤に分散させる。そして、当該分散液のpHを好ましくは1〜7、より好ましくは2〜6に調整し、アルコキシシラン等を加水分解させる。その後、加水分解物どうし脱水縮合させることで、シリコーンレジンが得られる。脱水縮合時間等によって、得られるシリコーンレジンの分子量等を調整することができる。加水分解物の縮合は、上記加水分解と連続して行うことが可能であり、加水分解により生成したアルコールや、水を留去することで、縮合反応を促進させることができる。
なお、シリコーンレジンの調製に用いるアルコキシシランは、所望のシリコーンレジンの構造に応じて適宜選択される。トリアルコキシシラン化合物の例には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリシラノール、フェニルトリシラノール等が含まれる。
ジアルコキシシランの例には、メチルハイドロジェンジメトキシシラン、メチルハイドロジェンジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等が含まれる。
さらに、テトラアルコキシシランの例には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が含まれる。
シリコーンレジン調製の際には、上記トリアルコキシシランやジアルコキシシラン、テトラメトキシシランの部分縮合物を原料として用いてもよい。
(2)フッ化ビニリデン系樹脂
フッ化ビニリデン系樹脂および後述の(メタ)アクリル樹脂は、塗料から得られる塗膜において、バインダーとして機能する。上述のように、フッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンの単独重合体であってもよく、フッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。
フッ化ビニリデン系樹脂が、フッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体である場合、他のモノマーの例には、フルオロオレフィン、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、イソプロペニルエーテル、イソプロペニルエステル、メタリルエーテル、メタリルエステル、α−オレフィン、(メタ)アクリル酸エステル等が含まれる。フッ化ビニリデン系樹脂は、得られる塗膜の機械的特性を著しく損わない範囲でこれら由来の構造を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
上記フルオロオレフィンの例には、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン等の炭素数2または3のフルオロオレフィンが含まれる。
上記ビニルエーテルの例には、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)等のアルキルビニルエーテルが含まれる。
上記ビニルエステルの例には、2,2−ジメチルオクタン酸エテニル、酪酸ビニル、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルが含まれる。
上記アリルエーテルの例には、エチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル等のアルキルアリルエーテル等が含まれる。上記アリルエステルの例には、プロピオン酸アリル、酢酸アリル等の脂肪酸アリルエステル等が含まれる。
上記イソプロペニルエーテルの例にはメチルイソプロペニルエーテル等のアルキルイソプロペニルエーテルが含まれる。上記イソプロペニルエステルの例には、酢酸イソプロペニル等が含まれる。上記メタリルエーテルの例には、エチレングリコールモノメタリルエーテル等が含まれ、メタリルエステルの例には、酢酸β−メタリル等が含まれる。
上記α−オレフィンの例には、エチレン、プロピレン、イソブチレン等が含まれる。上記(メタ)アクリル酸エステルの例には、メタクリル酸メチル等が含まれる。
上記の中でも、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、およびアリルエステルがフッ化ビニリデンとの共重合性に優れる点から好ましい。また特に、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状あるいは脂環状のアルキル基を有するアルキルビニルエーテル、脂肪酸ビニルエステル、アルキルアリルエーテル、および脂肪酸アリルエステルが好ましい。
ここで、フッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、100000以上が好ましく、200000以上がより好ましく、400000以上がさらに好ましい。フッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量が当該範囲であると、金属板用塗料中の他の成分との相溶性が良好になり、強度の高い膜が得られる。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される値(スチレン換算値)である。
塗料には、その固形分100質量部に対して、上記フッ化ビニリデン系樹脂が、0.1〜90質量部含まれることが好ましく、40〜90質量部含まれることが好ましい。フッ化ビニリデン系樹脂の量が当該範囲であると、塗料を塗布して得られる塗装金属板の耐候性が良好になりやすい。一方で、十分な量の(メタ)アクリル樹脂が含まれるため、塗料中の他の成分との相溶性が良好になる。
(3)(メタ)アクリル樹脂
(メタ)アクリル樹脂は、熱可塑性であってもよく、熱硬化性であってもよい。塗料の安定性と塗膜の加工性の観点から、熱可塑性であることが望ましい。
熱可塑性(メタ)アクリル樹脂の例には、(メタ)アクリル酸を構成する構成単位の総量に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を70モル%以上含む重合体が含まれる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例には、(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー等の炭素数が3〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが含まれる。(メタ)アクリル樹脂は、これら由来の構造を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
また、熱可塑性(メタ)アクリル樹脂は、上記以外のモノマー由来の構造を有していてもよく、例えばスチレンやビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル由来の構成単位等を含んでいてもよい。
熱可塑性(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、3000〜300000が好ましく、5000〜200000がより好ましい。熱可塑性(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、GPCにより測定される値(スチレン換算)である。
塗料が熱可塑性(メタ)アクリル樹脂を含む場合、熱可塑性(メタ)アクリル樹脂の量は、フッ化ビニリデン系樹脂の量100質量部に対して150質量部以下が好ましく、10〜50質量部がより好ましい。熱可塑性(メタ)アクリル樹脂を当該範囲混合すると、塗料の流動性が良好になりやすい。
一方、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、水酸基やカルボキシル基、グリシジル基、活性ハロゲン、イソシアナート基等の架橋性反応基を有する(メタ)アクリル樹脂とすることができる。このとき、アルキル化メラミンやポリオール、ポリアミン、ポリアミド、ポリオキシラン等が熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の硬化剤として使用される。
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、3000〜200000が好ましく、5000〜100000がより好ましい。熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、GPCにより測定される値(スチレン換算)である。
塗料が熱硬化性(メタ)アクリル樹脂を含む場合、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の量は、フッ化ビニリデン系樹脂の量100質量部に対して150質量部以下が好ましく、10〜50質量部がより好ましい。熱硬化性(メタ)アクリル樹脂を当該範囲混合すると、金属板用塗料の流動性等が良好になりやすい。
塗料は、硬化剤をさらに含んでもよい。塗料が硬化剤を含むと、架橋構造が形成されやすく、得られる塗膜がより強靱になりやすい。硬化剤の例には、アミノプラスト系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、多塩基酸系硬化剤、多価アミン系硬化剤等が含まれる。金属板用塗料は、当該硬化剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
アミノプラスト系硬化剤の例には、メチロールメラミン類、メチロールグアナミン類、メチロール尿素類等が含まれる。メチロールメラミン類の例には、ブチル化メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン等の低級アルコールによりエーテル化されたメチロールメラミン、エポキシ変性メチロールメラミン等が含まれる。メチロール尿素類の例には、メチル化メチロール尿素、エチル化メチロール尿素等のアルキル化メチロール尿素等が含まれる。
イソシアネート系硬化剤の例には、多価イソシアネート化合物やそのブロック化物が含まれる。多価イソシアネート化合物は、2以上のイソシアネート基を有する化合物とすることができる。多価イソシアネート化合物の例にはエチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族多価イソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン等の脂環族多価イソシアネート化合物;m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物等が含まれる。
多価イソシアネート化合物の変性体や多量体の例には、ウレタン変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、ビューレット変性体、アロファネート変性体、カルボジイミド変性体等が含まれる。
多塩基酸系硬化剤の例には、長鎖脂肪族ジカルボン酸類、芳香族多価カルボン酸類等が含まれ、これらの酸無水物であってもよい。
多価アミン系硬化剤の例には、エチレンジアミン、エチレントリアミン等が含まれる。
塗料には、上記硬化剤が、フッ化ビニリデン系樹脂および(メタ)アクリル樹脂の合計量100質量部に対して0.1〜100質量部含まれることが好ましく、1〜50質量部含まれることがより好ましい。硬化剤の量が0.1質量部以上であると、得られる塗膜の硬度が高まりやすい。一方、硬化剤の量が100質量部以下であると、得られる塗装金属板の加工性や耐衝撃性が良好になりやすい。
(4)シリコーンレジン硬化触媒
塗料は、シリコーンレジン硬化触媒をさらに含んでいてもよい。シリコーンレジン硬化触媒は、上述のシリコーンレジンを主に架橋させる触媒として機能する。シリコーンレジン硬化触媒としては、シラノール基の脱水縮合反応に触媒活性を有する公知の金属(例えば、アルミニウムや亜鉛、スズ等)を含む触媒やアミン変性した酸触媒であってもよいが、特に亜鉛カルボン酸塩触媒が特に好ましい。
亜鉛カルボン酸塩触媒は、分子中に亜鉛およびカルボキシル基を有し、シリコーンレジンの硬化触媒として機能する化合物であれば、特に制限されない。塗料には、亜鉛カルボン酸塩触媒が、1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれていてもよい。
亜鉛カルボン酸塩触媒の例には、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物が含まれる。
Figure 2021127367
上記一般式(1)において、Rは、炭素数が1〜18の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、または炭素数が6〜18のアリール基を表す。当該亜鉛カルボン酸塩触媒において、亜鉛に結合する2つのカルボキシル基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記一般式(1)においてRで表される、炭素数が1〜18のアルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基等が含まれる。一方、上記一般式(1)においてRで表される、炭素数が6〜18のアリール基の例には、フェニル基、ナフチル基、アズレン基等が含まれる。これらの中でも、入手容易性や安定性、シリコーンレジンの硬化性等の観点で、一般式(1)におけるZnの配位化合物は、2−エチルヘキシル酸が好ましい。つまり、亜鉛カルボン酸塩触媒は、ビス(2−エチルヘキサン酸)亜鉛が好ましい。
ここで、上記亜鉛カルボン酸塩触媒は、調製したものであってもよく、市販品であってもよい。市販品の例には、オクトープZn(ホープ製薬株式会社製)、Zn−OCTOATE(DIC株式会社製)、D−15(信越化学工業株式会社製)等が含まれる。
塗料が含むシリコーンレジン硬化触媒の量は、シリコーンレジンの量に応じて適宜選択されるが、通常、塗料の固形分全量100質量部に対して、0.01〜1質量部が好ましく、0.04〜0.36質量部がより好ましい。また、シリコーンレジンの量100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、2〜6質量部がより好ましい。シリコーンレジン硬化触媒の量が当該範囲であると、シリコーンレジンが効率良く硬化しやすく、硬度の高い塗膜が得られやすくなる。
(5)その他の成分
塗料には、無機粒子や有機粒子がさらに含まれていてもよい。塗料にこれらが含まれると、得られる塗膜の表面粗さ等が調整されやすくなる。ここで、無機粒子または有機粒子の平均粒子径は4〜80μmであることが好ましく、10〜60μmであることがより好ましい。無機粒子や有機粒子の平均粒子径は、コールターカウンター法で測定される値である。なお、無機粒子や有機粒子の形状は特に制限されないが、得られる塗膜の表面状態を調整しやすいとの観点から、略球状であることが好ましい。
無機粒子の例には、シリカ、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラスビーズ、ガラスフレークが含まれる。また、有機粒子の例には、アクリル樹脂やポリアクリロニトリル樹脂からなる樹脂ビーズが含まれる。これらの樹脂ビーズは、公知の方法を用いて製造したものであってもよく、市販品であってもよい。市販のアクリル樹脂ビーズの例には、東洋紡社製の「タフチック AR650S(平均粒径18μm)」、「タフチック AR650M(平均粒径30μm)」、「タフチック AR650MX(平均粒径40μm)」、「タフチック AR650MZ(平均粒径60μm)」、「タフチックAR650ML(平均粒径80μm)」が含まれる。また、市販のポリアクリロニトリル樹脂ビーズの例には、東洋紡社製の「タフチック A−20(平均粒径24μm)」、「タフチック YK−30(平均粒径33μm)」、「タフチック YK−50(平均粒径50μm)」および「タフチック YK−80(平均粒径80μm)」等が含まれる。
塗料に含まれる無機粒子および/または有機粒子の量は、所望の塗膜の表面状態等に応じて適宜選択される。通常、塗料の固形分100質量部に対する無機粒子および/または有機粒子の合計量は、1〜40質量部とすることができる。
またさらに、塗料には、必要に応じて着色顔料が含まれていてもよい。着色顔料の平均粒子径は、例えば0.2〜2.0μmとすることができる。このような着色顔料の例には、酸化チタン、酸化鉄、黄色酸化鉄、フタロシアニンブルー、カーボンブラック、コバルトブルー等が含まれる。なお、塗料に着色顔料が含まれる場合、その量は、塗料の固形分100質量部に対して、20〜60質量部であることが好ましく、30〜55質量部であることがより好ましい。
さらに、塗料には、必要に応じてワックスが含まれていてもよい。ワックスの例には、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、フッ素系ワックス(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等)、パラフィン系ワックス、ステアリン酸系ワックス等が含まれるが、これに限定されない。また、ワックスの量は、ワックスの種類等に応じて適宜選択されるが、塗料の固形分100質量部に対して2〜15質量%程度とすることができる。
また、塗料には、必要に応じて有機溶剤が含まれていてもよい。当該有機溶剤は、上記シリコーンレジン、フッ化ビニリデン系樹脂や、アクリル樹脂、シリコーンレジン硬化触媒、無機粒子、有機粒子等を十分に溶解、または分散させることが可能なものであれば特に制限されない。有機溶剤の例には、トルエン、キシレン、Solvesso(登録商標)100(商品名、エクソンモービル社製)、Solvesso(登録商標)150(商品名、エクソンモービル社製)、Solvesso(登録商標)200(商品名、エクソンモービル社製)等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、フタル酸ジメチル等のエステル系溶剤;メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール系溶剤;等が含まれる。塗料には、これらが1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。これらの中でも、樹脂との相溶性等の観点から、好ましくはイソホロン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサノン、フタル酸ジメチルである。
(6)塗料の調製方法
塗料の調製方法は特に制限されない。公知の塗料と同様に、上記材料を混合し、攪拌もしくは分散することで、調製することができる。なお、シリコーンレジンは、他の成分と予め混合してもよい。また、シリコーンレジン以外の材料を予め混合しておき、シリコーンレジンを後から混合してもよい。
2.塗装金属板の製造方法
上述の金属板用塗料を用いて塗装金属板を作製する方法を以下説明する。当該塗装金属板の製造方法は、金属板の表面に、上述の塗料を塗布し、成膜させて塗膜を形成する工程と、当該塗膜にフレーム処理を行う工程と、を含む方法とすることができる。
ここで、塗料を塗布する金属板は、一般的に建築板として使用されている金属板を使用できる。このような金属板の例には、溶融Zn−55%Al合金めっき鋼板等のめっき鋼板;普通鋼板やステンレス鋼板等の鋼板;アルミニウム板;銅板等が含まれる。金属板には、本発明の効果を阻害しない範囲で、その表面に化成処理皮膜や下塗り塗膜等が形成されていてもよい。さらに、当該金属板は、本発明の効果を損なわない範囲で、エンボス加工や絞り成形加工等の凹凸加工がなされていてもよい。
金属板の厚みは特に制限されず、用途等に応じて適宜選択される。例えば、塗装金属板を金属サイディング材に使用する場合には、金属板の厚みは0.15〜0.5mmとすることができる。
金属板の表面に上述の塗料を塗布する方法は特に制限されず、公知の方法から適宜選択することが可能である。塗料の塗布方法の例には、ロールコート法や、カーテンフロー法、スピンコート法、エアースプレー法、エアーレススプレー法および浸漬引き上げ法が含まれる。これらの中でも、ロールコート法が効率よく、所望の厚みを有する塗膜を得やすいとの観点から好ましい。
また、塗料の成膜方法は、例えば加熱による焼き付け等とすることができる。焼付け処理時の温度は、塗料中の樹脂(フッ化ビニリデン系樹脂や(メタ)アクリル樹脂))等の分解を防止しつつ、上述のシリコーンレジンやフッ化ビニリデン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂等を成膜させたりすることが可能であれば特に制限されない。通常、100〜300℃が好ましく、180〜300℃がより好ましく、240〜280℃がさらに好ましい。焼付け処理時間は特に制限されず、上記と同様の観点から、3〜90秒が好ましく、10〜70秒がより好ましく、40〜60秒がさらに好ましい。
また、塗料の焼き付け時には、短時間で塗料を成膜させるため、板面風速が0.9m/s以上となるように風を吹き付けてもよい。上述の塗料中では、シリコーンレジンと他の成分とが水素結合している。そのため、風を吹き付けながら塗料を成膜させても、シリコーンレジンが蒸発し難く、加熱装置を汚染し難い。
ここで、金属板上に形成する塗膜の厚みは、塗装金属板の用途等に応じて適宜選択されるが、通常3〜30μmの範囲内である。当該厚みは、焼付け塗膜の比重、およびサンドブラスト等による塗膜除去前後の塗装金属板の重量差から重量法によって求められる値である。塗膜が薄すぎる場合、塗膜の耐久性および隠蔽性が不十分となることがある。一方、塗膜が厚すぎる場合、製造コストが増大するとともに、焼付け時にワキが発生しやすくなることがある。
一方、塗膜(成膜後の塗料)をフレーム処理する方法は特に制限されず、通常のフレーム処理方法と同様とすることができる。前述の塗料から得られる塗膜(硬化膜)をフレーム処理すると、塗膜表面のシリコーンレジンの炭化水素基(例えばメチル基やフェニル基等)が分解されて、シラノール基やシロキサン結合が生じる。これにより、塗膜表面の親水性が高まり、耐雨筋汚れ性が発現する。
フレーム処理は、塗膜を形成した金属板を、ベルトコンベア等の搬送機に載置し、一定方向に移動させながら、フレーム処理用バーナーで塗膜に火炎を放射する方法等とすることができる。
ここで、フレーム処理量は、30〜1000kJ/mであることが好ましく、100〜600kJ/mであることがより好ましい。なお、本明細書における「フレーム処理量」とは、LPガス等の燃焼ガスの供給量を基準として計算される塗装金属板の単位面積当たりの熱量である。当該フレーム処理量は、フレーム処理用バーナーのバーナーヘッドと塗膜表面との距離、塗膜の搬送速度等によって調整できる。フレーム処理量が30kJ/m未満では、処理にムラが生じることがあり、塗膜表面を一様に親水化することが難しい。一方、フレーム処理量が1000kJ/mを超えると、塗膜が酸化して黄変することがある。
また、フレーム処理前に、塗膜表面を40℃以上に加熱する予熱処理を行ってもよい。熱伝導率が高い金属板(例えば、熱伝導率が10W/mK以上の金属板)表面に形成された塗膜に、火炎を照射すると、燃焼性ガスの燃焼によって生じた水蒸気が冷やされて水となり、一時的に塗膜の表面に溜まる。そして、当該水がフレーム処理時のエネルギーを吸収して水蒸気となることで、フレーム処理が阻害されることがある。これに対し、塗膜表面(金属板)を予め加熱しておくことで、火炎照射時の水の発生を抑えることができる。
塗膜を予熱する手段は特に限定されず、一般に乾燥炉と呼ばれる加熱装置を使用することができる。例えば、バッチ式の乾燥炉(「金庫炉」とも称する。)を使用することができ、その具体例には、いすゞ製作所社製低温恒温器(型式 ミニカタリーナ MRLV−11)、東上熱学社製自動排出型乾燥器(型式 ATO−101)、および東上熱学社製簡易防爆仕様乾燥器(型式 TNAT−1000)等が含まれる。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されない。
1.塗料の調製
以下の方法により、各塗料を調製した。
1−1.メチル系シリコーンレジンの合成1
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン408g(3.0モル)を仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液180〜216g(10.0〜12.0モル)を5〜25℃で、20〜40分間かけて滴下した。滴下終了後、5〜25℃で0.6〜6時間攪拌し、加水分解および脱水縮合を完了させた。これにより、シラノール基の含有量が異なる7種のメチル系シリコーンレジンA〜Gを含む調製液を得た。なお、メチル系シリコーンレジンA〜Gのシラノール基量や構成単位量は、上記反応時間(攪拌時間)および反応温度、および塩酸水溶液の添加量で調整した。
その後、当該調製液から、加水分解によって生成したメタノールを、70℃、60mmHgで1時間減圧留去した。メタノール留去後の調製液は白濁しており、一晩静置することで、2層に分離した。下層は、水に不溶となって沈降したシリコーンレジンである。当該調製液に、メチルイソブチルケトン(MIBK)469gを加え、室温で1時間攪拌した。これにより、沈降したシリコーンレジンを完全にMIBKに溶解させた。そして、当該調製液を静置し、水層とMIBK層とを分離させた。その後、コック付きフラスコにて下層の水層を取り除き、固形分が50質量%、かつ無色透明のシリコーンレジン溶液を得た。
得られたメチル系シリコーンレジンAの構造を、29Si−NMRによって測定したところ、2本のブロードなシグナルが観測された。これらの化学シフトは、(1)δ=−54〜−58ppm、(2)δ=−62〜−68ppmであった。当該化学シフトは、以下の式で表されるT単位のうち、T−2単位およびT−3単位のケイ素原子にそれぞれ帰属する。つまり、当該メチル系シリコーンレジンAには、T−1単位は含まれていなかった。また、メチル系シリコーンレジンAについてH−NMR分析を行ったところ、メチルトリメトキシシラン由来のメトキシ基は全て加水分解され、水酸基となっていた。
Figure 2021127367
さらに、以下の条件でGPC分析(ポリスチレン換算)を行い、シリコーンレジンAの重量平均分子量(Mw)と、分子量分布(Mw/Mn)とを測定した。
測定機種:東ソー社製 HLC−8320GPC
カラム:Shodex K・G+K・805L×2本+K・800D
溶離液:クロロホルム
温度:カラム恒温槽 40.0℃
流速:1.0mL/min
濃度:0.2質量/体積%
注入量:100μl
溶解性:完全溶解
前処理:0.45μmフィルターでろ過
検出器:示差屈折計(RI)
同様に、メチル系シリコーンレジンB〜Gについても、29Si−NMRおよびH−NMR分析により、構造を特定した。また、GPC分析により、重量平均分子量(Mw)と、分子量分布(Mw/Mn)とを測定した。メチル系シリコーンレジンA〜Gの分析結果を以下の表1に示す。
Figure 2021127367
1−2.メチル系シリコーンレジンの合成2
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン286〜163g(2.1〜1.2モル)およびジメチルジメトキシシラン108〜216g(0.9〜1.8モル)を仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで、氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液180〜216g(10.0〜12.0モル)を5〜25℃で20〜40分間かけて滴下した。滴下終了後、5〜25℃で0.6〜6時間攪拌して加水分解および脱水縮合を行った。滴下終了後、メチル系シリコーンレジンの合成1と同様の操作を行い、固形分約50質量%の3種のメチル系シリコーンレジンH〜Iを含むシリコーンレジン溶液を得た。なお、メチル系シリコーンレジンH〜Iのシラノール基や構成単位量は、上記反応時間(攪拌時間)、反応温度、塩酸水溶液の添加量、および仕込み量で調整した。
得られたメチル系シリコーンレジンH〜Iについて、29Si−NMRおよびH−NMR分析により、構造を特定した。さらに、GPC分析により、重量平均分子量(Mw)と、分子量分布(Mw/Mn)とを測定した。メチル系シリコーンレジンH〜Iの分析結果を以下の表2に示す。なお、表2におけるD−1単位およびD−2単位は、それぞれ以下の式で表される構造単位である。
Figure 2021127367
Figure 2021127367
1−3.メチル/フェニル系シリコーンレジンの合成3
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン326〜41g(2.4〜0.3モル)とフェニルトリメトキシシラン119〜535g(0.6〜2.7モル)を仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで、氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液180〜216g(10.0〜12.0モル)を5〜25℃で20〜40分間かけて滴下した。滴下終了後、5〜25℃で0.6〜6時間攪拌し、加水分解および脱水縮合を完了させた。滴下終了後、メチル系シリコーンレジンの合成1と同様の操作を行い、固形分約50質量%の5種のメチル/フェニル系シリコーンレジンJ〜Kを含む調製液を得た。なお、メチル/フェニル系シリコーンレジンJ〜Kのシラノール基量や構成単位量は、上記反応時間(攪拌時間)、反応温度、塩酸水溶液の添加量、および仕込み量で調整した。
得られたメチル系シリコーンJ〜Kについて、29Si−NMRおよびH−NMR分析により、構造を特定した。なお、メチル/フェニル系シリコーンレジンKの構造を29Si−NMRによって測定したところ、4本のブロードなシグナルが観測された。これらの化学シフトは、(1)δ=−52〜−61ppm、(2)δ=−62〜−71ppm、(3)δ=−67〜−75ppm、(4)δ=−75〜−83ppm、であり、それぞれ下記式で表されるT単位およびT単位のうち、T−2単位、T−3単位、T−2単位、およびT−3単位のケイ素原子に帰属する。また、当該メチル/フェニル系シリコーンレジンLについてH−NMR分析を行ったところ、メチルトリメトキシシランおよびフェニルトリメトキシシラン由来のメトキシ基が全て加水分解され、水酸基となっていた。さらに、GPC分析により、重量平均分子量(Mw)と、分子量分布(Mw/Mn)とを測定した。分析結果を表3に示す。
Figure 2021127367
Figure 2021127367
1−4.メチルシリケートおよびエチルシリケートの準備
メチルシリケートおよびエチルシリケートとして、以下の市販品を用いた。
[メチルシリケートL]
メチルシリケート53A(コルコート社製、テトラメトキシシランの縮合物) 重量平均分子量(Mw):840、数平均分子量(Mn):610、Mw/Mn=1.4
[エチルシリケートM]
エチルシリケート48(コルコート社製、テトラエトキシシランの縮合物) 重量平均分子量(Mw):1300、数平均分子量(Mn):850、Mw/Mn=1.5
1−5.塗料の調製
(樹脂1の準備)
ポリフッ化ビニリデン((フッ化ビニリデン単独重合体)、アルケマ社製、製品名:カイナー500、重量平均分子量650,000、融点160〜165℃)と熱可塑性アクリル樹脂(ローム&ハース社製、製品名:パラロイドB−44、重量平均分子量14,000)とを混合した。なお、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル樹脂との配合比は70/30(質量比)とした。塗装作業性向上のため、混合物をイソホロンで希釈した。
(樹脂2の準備)
ポリフッ化ビニリデン((フッ化ビニリデン単独重合体)、アルケマ社製、製品名:カイナー500、重量平均分子量650,000、融点160〜165℃)と熱硬化性アクリル樹脂(三菱レイヨン社製、製品名:ダイヤナールBR−87、重量平均分子量25,000)とを混合した。なお、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル樹脂との配合比は70/30(質量比)とした。塗装作業性向上のため、混合物をイソホロンで希釈した。
(樹脂3の準備)
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF(89%)−HFP(11%)、アルケマ社製、製品名:カイナーフレックス2800、融点140〜145℃)と熱可塑性アクリル樹脂とを混合した。なお、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル樹脂との配合比は70/30(質量比)とした。塗装作業性向上のため、混合物をイソホロンで希釈した。
(樹脂4の準備)
樹脂1のポリフッ化ビニリデンを用いた。
(樹脂5の準備)
樹脂1の熱可塑性アクリル樹脂を用いた。
(樹脂6の準備)
フッ化ビニリデン構造を含まない共重合フッ素樹脂(フルオロオレフィンとアクリル酸エステルの共重合物(ザフロン:東亞合成株式会社製))を用いた。
(樹脂7の準備)
高分子ポリエステル樹脂(DIC社製、数平均分子量5,000、ガラス転移温度30℃、水酸基価28mgKOH/g)とメチル化メラミン樹脂硬化剤(三井サイテック社製、製品名:サイメル303)とを70/30の配合比で混合した。
(塗料の調製)
表4または表5に示すように、上記各樹脂に、触媒として、ビス(2−エチルヘキサン酸)亜鉛(触媒記号:α)、トリメトキシアルミニウム(触媒記号:β)、ドデシルベンゼンスルフォン酸(触媒記号:γ)のうちいずれか1種類を添加した。なお、ビス(2−エチルヘキサン酸)亜鉛(触媒記号:α)およびトリメトキシアルミニウム(触媒記号:β)は、塗料の固形分量に対して0.30質量%となるように添加した。また、ドデシルベンゼンスルフォン酸(触媒記号:γ)は、ブロック基が脱離した後のスルホン酸量が、塗料の固形分量に対して1.0質量%となるように添加した。
上記混合物にさらに、表4または表5に示すように、上述のメチル系シリコーンレジン、メチル/フェニル系シリコーンレジン、メチルシリケート、またはエチルシリケートを、それぞれ塗料の総固形分量に対して5質量%となるようにさらに添加した。さらに、メチルシリケートまたはエチルシリケートを添加した塗料については、オルトギ酸トリエチルを、塗料の総固形分量に対して5質量%となるように添加した。
2.評価
上記塗料を用いて、以下のように塗装金属板を作製した。
2−1.金属板の準備
板厚0.27mm、A4サイズ(210mm×297mm)、片面当りめっき付着量90g/mの溶融Zn−55%Al合金めっき鋼板を金属板として準備し、表面をアルカリ脱脂した。その後、当該表面に、塗布型クロメート処理液(日本ペイント社製 NRC300NS)を、Crの付着量が50mg/mとなるように塗布した。さらに、エポキシ樹脂系プライマー塗料(日本ファインコーティングス社製 800P)を、硬化膜厚が5μmとなるようにロールコーターで塗布した。続いて、基材の最高到達板温215℃となるように焼き付け、プライマー塗膜を形成しためっき鋼板(以下、単に「めっき鋼板」とも称する)を得た。
2−2.塗料の塗布
上述のように調製した塗料を、硬化膜厚が20μmとなるように上述のめっき鋼板にロールコーターで塗布し、最高到達板温260℃、板面風速0.9m/sで60秒間焼き付けた。
2−3.フレーム処理
上記塗料の塗膜をフレーム処理した。フレーム処理用バーナーには、Flynn Burner社(米国)製のF−3000を使用した。また、燃焼性ガスには、LPガス(燃焼ガス)と、クリーンドライエアーとを、ガスミキサーで混合した混合ガス(LPガス:クリーンドライエアー(体積比)=1:25)を使用した。また、各ガスの流量は、バーナーの炎口の1cmに対してLPガス(燃焼ガス)が1.67L/分、クリーンドライエアーが41.7L/分となるように調整した。なお、塗膜の搬送方向のバーナーヘッドの炎口の長さは4mmとした。一方、バーナーヘッドの炎口の搬送方向と垂直方向の長さは、450mmとした。さらに、バーナーヘッドの炎口と塗膜表面との距離は、所望のフレーム処理量に応じて50mmとした。さらに、塗膜の搬送速度を30m/分とすることで、フレーム処理量を212kJ/mに調整した。
2−4.試験
実施例および比較例で調製した塗料、および当該塗料を用いて作製した塗装金属板について、以下の試験を行った。結果を表4および表5に示す。
(1)シリコーンレジン又はシリケートの蒸発量
厚さ0.5mmのアルミ板(JIS A5052)の表面に膜厚が20μmになるように、各実施例および比較例の塗料を塗布し、塗膜を形成した。そして、塗膜を形成した塗装アルミ板を10cm×10cm角に切り出し、フッ化水素酸、塩酸、硝酸の混合酸溶液に溶かし、さらにマイクロ波を照射して加熱分解した。その後、超純水で定容して検液を調製した。当該検液中のSi原子を、島津製作所製 ICPE−9820型ICP−AES分析装置を用いて、定量分析した。
一方、シリコーンレジンまたはシリケートを添加しなかった以外は、実施例および比較例と同様に塗料を調製し、当該塗料を用いて塗膜を形成した。そして、上記と同様に検液中のSi原子を定量分析した。
これらを比較し、各実施例および比較例で作製した塗料から得られる塗膜中のシリコーンレジンまたはシリケート由来のSi原子量を求めた。また、シリコーンレジンまたはシリケートが全く蒸発しなかったと仮定した場合の塗膜中のSi原子量を計算で求めた。そして、全く蒸発しなかった場合のSi原子量と、実施例または比較例で作製した塗料から得られる塗膜のSi原子量との比から、塗膜形成時のシリコーンレジンまたはシリケートの蒸発量を以下の基準で評価した。
×:蒸発量が20%以上
△:10%以上20%未満
〇:3%以上10%未満
◎:3%未満
なお、△、○、◎を合格とした。
(2)加工性の評価
実施例および比較例で調整した塗料を用いて作製した塗装金属板を、JIS G−3312の180°曲げ試験に従って塗装面が山折りになるように折り曲げた。塗膜にクラックが発生しなくなる限界内側間隔を加工性の尺度とした。内側間隔を板の枚数(T)で表し、以下のように評価した。
×:14T以上でもクラックが消失しない
△:10T以上14T未満でクラックが消失
〇:6T以上10T未満でクラックが消失
◎:6T未満でクラックが消失
なお、△、〇、◎を合格とした。
(3)対水接触角の測定
実施例および比較例で調製した塗料を用いて作製した塗装金属板の塗膜表面の対水接触角を測定した。測定は気温23±2℃、相対湿度50±5%の恒温恒湿度室で0.01ccの精製水の水滴を形成して、協和界面科学社製の接触角計DM901を使用して測定した。
(4)耐雨筋汚れ性の評価
耐雨筋汚れ性は、以下のように評価した。
まず、垂直暴露台に実施例および比較例で調製した塗料を用いて作製した塗装金属板をそれぞれ取り付けた。さらに、当該塗装金属板の上部に、地面に対して角度20°となるように、波板を取り付けた。このとき、雨水が塗装金属板表面を筋状に流れるように、波板を設置した。この状態で、屋外暴露試験を6ヶ月間行い、汚れの付着状態を観察した。耐雨筋汚れ性の評価は、暴露前後の塗装金属板の明度差(ΔL)で、以下のように評価した。
×:ΔLが2以上の場合(汚れが目立つ)
△:ΔLが1以上2未満の場合(雨筋汚れは目立たないが視認できる)
〇:ΔLが1未満の場合(雨筋汚れがほとんど視認できない)
◎:ΔLが1未満で、かつ雨筋汚れが全く視認できない。
なお、△、○、◎を合格とした。
(5)保管後塗料の安定性評価
実施例および比較例で調整した塗料を40℃の恒温室中で保存し、1ヶ月後の塗料粘度をB型粘度計で測定した。そして、保存前後の粘度を比較し、以下の基準で評価した。
×:恒温室放置1ヶ月以内にゲル化
△:恒温室保存前後で塗料粘度上昇率が100%以上
○:恒温室保存前後で塗料粘度上昇率が30%以上、100%未満
◎:恒温室保存前後で塗料粘度上昇率が30%未満
なお、△、○、◎を合格とした。
(6)保管後塗料の塗装外観評価
保管後塗料を塗布した塗装金属板表面の60°における光沢値を、日本電色工業社製の光沢計VG7000を使用して測定し、塗料保管前後の塗装金属板の光沢差(ΔGs)で以下の基準で評価した。
××:塗装不能(安定性評価でゲル化のため)
×:ΔGsが5以上の場合
〇:ΔGsが3以上5未満の場合
◎:ΔGsが3未満の場合
なお、〇、◎を合格とした。
Figure 2021127367
Figure 2021127367
上記表4または表5に示されるように、Si原子の量(モル数)に対する、シラノール基の量(モル数)が、5〜50モル%であり、かつSi原子に直接結合する炭化水素基の総量に対する、アルキル基の割合が80〜100%であるシリコーンレジンと、ポリフッ化ビニリデンと、(メタ)アクリル樹脂と、を含む塗料では、膜の加熱乾燥時に塗料が蒸発し難かった(実施例1〜24)。さらにこれらの塗料を塗布し、フレーム処理を行った塗装金属板では、耐雨筋汚れ性が高かった。さらに、保管後塗料の安定性ならびに塗装外観も良好であった。さらに、これらの塗料は、調製が簡便であった。また得られた塗装金属板の加工性(機械的性質)も良好であった。
これに対し、メチルシリケートやエチルシリケート等のオルガノシリケートを含む塗料では、塗膜の硬化時に塗料が蒸発しやすく、耐雨筋汚れ性が低かった(比較例8および9)。
また、シリコーンレジンを含む塗料であっても、Si原子の量(モル数)に対する、シラノール基の量(モル数)が、5モル%未満である場合には、保管後塗料の安定性ならびに塗装外観が悪く、さらには耐雨筋汚れ性が十分でなかった(比較例1)。シラノール基の量が5モル%未満になると、シリコーンレジンの分子量が大きくなりやすく、保存中の多少の反応で、シリコーンレジンが非常に高分子化した。そのため、保管塗料の安定性が低くなったと推察される。またさらに、シリコーンレジンの分子量が大きくなると、シリコーンレジンが表面に均一に濃化し難く、海島状になりやすい。したがって、雨筋汚れを十分に抑制することができなかったと推察される。
一方、Si原子の量(モル数)に対する、シラノール基の量(モル数)が、50モル%超である場合には、保管塗料の安定性が低かった(比較例2)。シラノール基の量が50モル%を超えると、シリコーンレジンの反応性が高くなる。したがって、保管塗料の安定性が低くなったと推察される。また、シラノール基の量が多いため、シリコーンレジンがミセル化しやすく、シリコーンレジンが海島状になりやすかった。したがって、雨筋汚れ性が低下する傾向にあったと推察される。
また、シリコーンレジンを含む塗料であっても、Si原子に直接結合する炭化水素基の総量に対する、アルキル基の割合が80モル%未満である場合には、耐雨筋汚れ性が低かった(比較例3)。アルキル基の割合が80モル%未満であると、シリコーンレジンが表面に均一に濃化し難いためと推察される。
また、シリコーンレジンを含む塗料であっても、フッ化ビニリデン系樹脂やアクリル樹脂を単独で用いた場合や他の硬化性樹脂を用いた場合では、保管塗料の安定性が低かった(比較例4〜7)。
本発明の塗料は貯蔵安定性が高く保管後も安定した外観の塗膜を作製可能であり、さらに塗膜形成時に加熱装置を汚染し難い。さらに、当該塗料によれば、加工性が良好であり雨筋汚れが生じ難い塗装金属板が得られる。したがって、当該塗装金属板は、各種建築物の外装建材等に適用が可能である。

Claims (6)

  1. Si原子の総モル量に対して、5〜50モル%のシラノール基を含み、かつSi原子に直接結合する炭化水素基の総量に対する、アルキル基の割合が80〜100モル%であるシリコーンレジンと、
    フッ化ビニリデン系樹脂と、
    (メタ)アクリル樹脂と、
    を含む、
    金属板用塗料。
  2. 前記シリコーンレジンは、Si原子の総モル量に対して、トリアルコキシシラン由来のSi原子を50〜100モル%含む、
    請求項1に記載の金属板用塗料。
  3. 亜鉛カルボン酸塩触媒をさらに含む、
    請求項1または2に記載の金属板用塗料。
  4. 前記亜鉛カルボン酸塩触媒が、下記一般式(1)で表される構造を有する、
    請求項3に記載の金属板用塗料。
    Figure 2021127367
    (一般式(1)におけるRは、炭素数1〜18の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、または炭素数が6〜18のアリール基を表す)
  5. 前記一般式(1)で表される化合物が、ビス(2−エチルヘキサン酸)亜鉛である、
    請求項4に記載の金属板用塗料。
  6. 金属板の表面に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属板用塗料を塗布し、硬化させて塗膜を形成する工程と、
    前記塗膜にフレーム処理を行う工程と、
    を含む、
    塗装金属板の製造方法。
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