以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書では、回転軸O1に沿った方向を軸方向、回転軸O1から垂直な方向を径方向、回転軸O1を中心とする回転方向を周方向と呼ぶ。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る遊星歯車装置を示す断面図である。図1は、図2のA−A線断面を示す。図2は、図1の遊星歯車装置1を軸方向から見た図である。図3は、図1の遊星歯車装置のB−B線断面図である。図4は、図1の遊星歯車装置のC−C線断面図である。図5は、図1の遊星歯車装置のD−D線断面図である。図6は、第1外歯歯車、第1内歯歯車の回転体、第2外歯歯車及び第2内歯歯車の回転体が組み合った構成を示す斜視図である。図6は、各歯車の歯数を少なく簡略化した構成を示す。なお、図2は、実施形態2〜実施形態9の遊星歯車装置1A〜1Hを軸方向から見た図にも相当する。
実施形態1の遊星歯車装置1は、図示しないモータ等から入力軸10に入力された回転運動を減速して出力部材52から出力する装置である。遊星歯車装置1は、偏心体10Aを有する入力軸10と、第1外歯歯車13a及び第2外歯歯車13bが設けられた外歯歯車部材13と、カウンタウェイト18と、第1内歯歯車20と、第2内歯歯車30とを備える。さらに、遊星歯車装置1は、第1内歯歯車20と連結された固定部材51、第2内歯歯車30と連結された出力部材52、ケーシング53、主軸受46、第1入力軸受41、第2入力軸受42、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44を備える。
入力軸10は、回転軸O1を中心とする軸部10B、10Cと、回転軸O1から偏心した偏心体10Aとを有する。偏心体10Aは、図3に示すように、偏心軸O2を中心とする断面が円形の外周面を有する。軸部10B、10Cは、偏心体10Aの軸方向の一方と他方とに位置する。入力軸10は、回転軸O1を中心に回転する。
第1外歯歯車13aは、図5に示すように、回転軸O1に直交する断面の外形がエピトロコイド平行曲線を有する複数の外歯を備える。第1外歯歯車13aの歯丈は、偏心体10Aの偏心量のほぼ二倍かあるいはそれより若干大きく設定されている。
第2外歯歯車13bは、図3に示すように、同様に回転軸O1に直交する断面の外形がエピトロコイド平行曲線を有する複数の外歯を備える。第2外歯歯車13bの歯丈は、偏心体10Aの偏心量のほぼ二倍かあるいはそれより若干大きく設定されている。
第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bとは、軸方向に間隔を開けて並び、単一の部材により一体的に設けられている。すなわち、単一の部材である外歯歯車部材13の軸方向における一方と他方とに第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bとが設けられている。外歯歯車部材13の第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bとの間には、これらのピッチ円よりも径の小さい中間部13cか設けられている。なお、第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bと中間部13cとは、別部材に設けられ互いに連結されていてもよい。
第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bとの歯数は異なり、第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bとは一体的に回転する。なお、第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bとの歯数は同数であってもよい。
外歯歯車部材13は、軸方向に貫通する貫通孔を有し、貫通孔の内側に第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44が嵌合されている。第1偏心体軸受43は、第1外歯歯車13aの径方向の内方に位置し、第2偏心体軸受44は、第2外歯歯車13bの径方向の内方に位置する。第1偏心体軸受43の内側及び第2偏心体軸受44の内側には、入力軸10の偏心体10Aが嵌合されている。偏心軸O2と、第1外歯歯車13aのピッチ円の中心軸と、及び第2外歯歯車13bのピッチ円の中心軸とは共通である。
第1内歯歯車20は、第1外歯歯車13aと噛み合う。第1内歯歯車20は、複数の支持ピン21と、複数の回転体22と、複数の支持ピン21を支持する第1支持部51a及び第2支持部51bとを有する。第1支持部51a及び第2支持部51bは、固定部材51の一部であり、単一の部材により一体的に構成されている。なお、第1支持部51aと第2支持部51bとは別体に設けられ、互いに連結されていてもよく、第1支持部51aは第1支持部材と呼んでもよく、第2支持部51bは第2支持部材と呼んでもよい。第1支持部51a、第2支持部51b及び複数の支持ピン21は、第1内歯歯車20において複数の回転体22を支持する支持体に相当する。
複数の支持ピン21及び複数の回転体22は、複数の内歯を構成する。回転体22は円筒形状である。複数の回転体22は、それぞれ複数の支持ピン21に軸受(例えばニードル軸受)を介して回転自在に外嵌され、第1外歯歯車13aの外歯と接触する(噛合う)。
第1支持部51aは、径方向内方に貫通孔を有する環状(リング状)の形態を有し、貫通孔に第1入力軸受41を介して入力軸10の軸部10Bが内嵌される。第1支持部51aは、複数の支持ピン21を、同一のピッチ円上でかつ周方向に例えば等間隔に並んだ配置で支持する。具体的には、第1支持部51aは、複数の支持ピン21をそれぞれ通す複数のピン孔を有し、複数の支持ピン21の軸方向の一端側がピン孔に締まり嵌めされる。遊星歯車装置1が装置に組み込まれる場合、第1支持部51aは固定部材51と一体的に装置内のベース部材等に固定される(固定側に連結される)。
第2支持部51bは、径方向内方に貫通孔を有する環状の形態を有し、貫通孔の内側に外歯歯車部材13の中間部13c及び入力軸10が配置される。第2支持部51bは、第1支持部51aと同様に、複数の支持ピン21を同一のピッチ円上でかつ周方向に例えば等間隔に並んだ配置で支持する。具体的には、第2支持部51bは、複数の支持ピン21をそれぞれ通す複数のピン孔を有し、複数の支持ピン21の軸方向の他端側がピン孔に締まり嵌めされる。第2支持部51bは、図5に示すように、第1外歯歯車13aを通過可能に山谷が設けられた貫通孔H51を有する。具体的には、貫通孔H51の山部内径は、第1外歯歯車13aの歯先径より小さく、歯底径より大きい。貫通孔H51の谷部(凹部)内径は、第1外歯歯車13aの歯先径より大きい。これにより、装置の径方向寸法の増大を抑制しつつ、第1外歯歯車13aの歯先を谷部に位置させ、歯底を山部に位置させた状態で、第1外歯歯車13aを軸方向に移動させ第1内歯歯車20の内側に容易に組み込むことができる。遊星歯車装置1が装置に組み込まれる場合、第2支持部51bは固定部材51と一体的に装置内のベース部材等に固定される。
複数の支持ピン21の軸方向の一端部(反出力側)には、各支持ピン21の径方向に張り出した鍔部21aが設けられ、複数の支持ピン21の軸方向の他端部(出力側)には、止め輪(Eリング、Cリング等)21bが取り付けられている。「出力側」とは、軸方向において出力部材52が配置される側を意味し、「反出力側」とは、軸方向において出力側の反対側を意味する。鍔部21a及び止め輪21bは、支持ピン21が第1支持部51aのピン孔及び第2支持部51bのピン孔から抜けるのを抑止する「抜け止め機構」として機能する。
第1支持部51aと各回転体22との間には、滑り部材24が設けられている。同様に、第2支持部51bと各回転体22との間には、滑り部材25が設けられている。滑り部材24、25は、ワッシャ状であり、支持ピン21が通されて位置が規制される。滑り部材24、25は、表面の摩擦係数が回転体22よりも小さく、回転体22と第1支持部51a又は第2支持部51bとが直接擦れ合うことを防止し、これらの部材の摩耗を抑制する。
第2内歯歯車30は、第2外歯歯車13bと噛み合う。第2内歯歯車30は、複数の支持ピン31と、複数の回転体32と、複数の支持ピン31を支持する第1支持部材34及び第2支持部材35と、複数の補助ピン39とを有する。第1支持部材34、第2支持部材35、複数の支持ピン31及び複数の補助ピン39は、第2内歯歯車30において複数の回転体32を支持する支持体に相当する。
複数の支持ピン31及び複数の回転体32は、複数の内歯を構成する。回転体32は、円筒形状である。複数の回転体32は、それぞれ複数の支持ピン31に軸受(例えばニードル軸受)を介して回転自在に外嵌され、第2外歯歯車13bの外歯と接触する(噛合う)。
第1支持部材34は、径方向内方に入力軸10及び第2入力軸受42が配置される貫通孔を有する環状の形態を有する。第1支持部材34は、複数の支持ピン31を、同一ピッチ円上でかつ周方向に例えば等間隔に並んだ配置で支持する。具体的には、第1支持部材34は、複数の支持ピン31を通す複数のピン孔を有し、複数の支持ピン31の軸方向の一端側がピン孔に締まり嵌めされる。第1支持部材34は、出力部材52(出力側)と連結され、固定部材51及びケーシング53に回転自在に支持される。
第2支持部材35は、径方向内方に入力軸10及び外歯歯車部材13の中間部13cが配置される貫通孔を有する環状で、かつ円盤状の形態を有する。第2支持部材35は、第1支持部材34と同様に、複数の支持ピン31を周方向に例えば等間隔に並んだ配置で支持する。具体的には、第2支持部材35は、複数の支持ピン31を通す複数のピン孔を有し、複数の支持ピン31の軸方向の他端側(第1支持部材34の逆側)がピン孔に締まり嵌めされる。第2支持部材35は、図4に示すように、第2外歯歯車13bを通過可能に山谷が設けられた中央の貫通孔H35を有する。具体的には、貫通孔H35の山部内径は、第2外歯歯車13bの歯先径より小さく、歯底径より大きい。貫通孔H35の谷部(凹部)内径は、第2外歯歯車13bの歯先径より大きい。これにより、装置の径方向寸法の増大を抑制しつつ、第2外歯歯車13bの歯先を谷部に位置させ、歯底を山部に位置させた状態で、第2外歯歯車13bを軸方向に移動させ第2内歯歯車30の内側に容易に組み込むことができる。第2支持部材35は、外歯歯車部材13の中間部13cとケーシング53との間に、これらと間隔を開けて配置される。
各支持ピン31の軸方向の一端部(反出力側)には、支持ピン31の径方向に張り出す鍔部31bが設けられ、各支持ピン31の軸方向の他端部(出力側)には、止め輪(Eリング、Cリング等)31aが取り付けられている。鍔部31b及び止め輪31aは、支持ピン31が第1支持部材34のピン孔及び第2支持部材35のピン孔から抜けるのを抑止する「抜け止め機構」として機能する。
第1支持部材34と各回転体32との間には、滑り部材36が設けられている。第2支持部材35と各回転体32との間には、滑り部材37が設けられている。滑り部材36、37は、ワッシャ状であり、各支持ピン31が通されて位置が規制される。滑り部材36、37は、表面の摩擦係数が回転体32よりも小さく、回転体32と第1支持部材34又は第2支持部材35とが直接擦れ合うことを防止し、これらの部材の摩耗を抑制する。
複数の補助ピン39は、複数の支持ピン31とは周方向に異なる位置に設けられる。具体的には、補助ピン39は、周方向において、支持ピン31と支持ピン31の間に設けられる。また、補助ピン39のピッチ円径は、支持ピン31のピッチ円径よりも大きい。第1支持部材34と第2支持部材35とは、複数の補助ピン39の一端部と他端部とを通す複数のピン孔を有する。複数の補助ピン39は、第1支持部材34のピン孔と第2支持部材35のピン孔とに、例えば締まり嵌め等により連結される。複数の補助ピン39の連結により、第2支持部材35と第1支持部材34はより強固に連結される。なお、補助ピン39は、内歯として機能しない(内歯を構成しない)。
固定部材51は、径方向内方に第1入力軸受41と入力軸10とが配置される貫通孔を有する環状の形態を有し、遊星歯車装置1の反出力側に配置される。固定部材51は、第1内歯歯車20の径方向の外方を覆う。固定部材51は、例えば遊星歯車装置1が組み込まれる装置において、装置内のベース部材等に連結される。これにより、遊星歯車装置1がベース部材に支持される。
ケーシング53は、筒状であり、固定部材51に連結され、第2内歯歯車30の径方向の外方を覆う。
出力部材52は、径方向内方に入力軸10が通される貫通孔を有する環状の形態を有し、遊星歯車装置1の出力側に配置される。出力部材52には、第2内歯歯車30の第1支持部材34が連結される。さらに、出力部材52は、例えば遊星歯車装置1が組み込まれるシステムにおいて被駆動部材に連結される。
第1偏心体軸受43は、第1外歯歯車13aと偏心体10Aとの間に配置される。第2偏心体軸受44は、第2外歯歯車13bと偏心体10Aとの間に配置される。外歯歯車部材13は、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44を介して偏心軸O2を中心に回転自在な状態で偏心体10Aに支持される。
第1偏心体軸受43と第2偏心体軸受44とは、アンギュラ軸受(具体的にはアンギュラ玉軸受)であり、背面合わせで配置されている。第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44は、アンギュラ玉軸受に限られず、アンギュラ軸受であればよい。アンギュラ軸受とは、転動体が転走する転走面(軌道面とも言う)が、ラジアル方向から傾斜した方向を向いた軸受を意味し、テーパコロ軸受が含まれる。アンギュラ軸受は、軸受の作用線が軸方向及び径方向に対して傾斜している軸受と表現することもできる。第1偏心体軸受43と第2偏心体軸受44とは、外輪が互いに離れる方向へかつ内輪が互いに近づく方向へ、予圧が付加されている。
第2入力軸受42は、入力軸10の軸部10Cと第2内歯歯車30の第1支持部材34との間に配置される。第1入力軸受41は、入力軸10の軸部10Bと固定部材51との間に配置される。入力軸10は、第1入力軸受41と第2入力軸受42とを介して、固定部材51及び第1支持部材34に回転自在に支持される。
第1入力軸受41と第2入力軸受42とは、アンギュラ軸受(具体的にはアンギュラ玉軸受)であり、正面合わせで配置されている。第1入力軸受41と第2入力軸受42とは、アンギュラ玉軸受に限られず、アンギュラ軸受であればよい。第1入力軸受41と第2入力軸受42とは、外輪が互いに近づく方向へかつ内輪が互いに離れる方向へ、予圧が付加されている。なお、第1入力軸受41及び第2入力軸受42は、アンギュラ軸受に限定されるものではなく、各種軸受を使用可能であり、例えば通常の玉軸受でもよい。
主軸受46は、固定部材51に連結されたケーシング53と、出力部材52に連結された第1支持部材34との間に配置される。出力部材52及び第2内歯歯車30は、主軸受46を介して、固定部材51及びケーシング53に回転自在に支持される。主軸受46は、軸方向から見たときに第1内歯歯車20及び第2内歯歯車30の支持ピン21、31と重なる配置で、かつ、径方向から見たときに第2入力軸受42の中心よりも出力側に配置されている。
カウンタウェイト18は、偏心体10Aの偏心側とは逆側の範囲において、入力軸10に固定される。本実施形態においては、カウンタウェイト18は、反偏心方向を中心に±90度の範囲に設置させるが、これに限定させず、反偏心方向を含む所定範囲に設置されればよい。カウンタウェイト18は、回転軸O1から偏心して回転運動する偏心体10A、第1偏心体軸受43、第2偏心体軸受44及び外歯歯車部材13と、平衡を図るための重りである。カウンタウェイト18は、第1偏心体軸受43と第2偏心体軸受44との間で、外歯歯車部材13の中間部13cと入力軸10との間に配置される。カウンタウェイト18は、偏心した部材が回転運動することで生じる振動等を抑制する。
<動作説明>
図6に示すように、第1外歯歯車13a及び第2外歯歯車13bは、偏心された側において、第1内歯歯車20の内歯(22)及び第2内歯歯車30の内歯(32)と噛み合う。すなわち、偏心された側において、外歯の谷間に回転体22、32が位置する。図示しないモータ等から入力軸10に回転運動が入力されると、偏心体10Aが回転して、偏心軸O2が回転軸O1の周りを周回移動する。外歯歯車部材13の中心軸は偏心軸O2と共通であるため、外歯歯車部材13は偏心軸O2と同様に周回移動し(揺動し)、第1外歯歯車13a及び第2外歯歯車13bと第1内歯歯車20及び第2内歯歯車30との噛み合い位置が同様に周回移動する。
入力軸10が1回転して、第1外歯歯車13aと第1内歯歯車20との噛合い位置が周回方向に1周回すると、第1外歯歯車13aと第1内歯歯車20との歯数差分、第1外歯歯車13aと第1内歯歯車20との噛み合う歯がずれていく。第1内歯歯車20は固定部材51に連結されて回転しないので、噛み合う歯のずれは、第1外歯歯車13aの回転軸O1を中心とする回転運動(自転)となって現れる。例えば、第1外歯歯車13aが13歯で、第1内歯歯車20が14歯であると、入力軸10が1回転するごとに、1歯分、第1外歯歯車13aが回転軸O1を中心に回転(自転)する。第1外歯歯車13aの歯数分回転すると1回転となるので、入力軸10の回転に対する第1外歯歯車13aの回転の減速比Aは、{(第1外歯歯車13aの歯数−第1内歯歯車20の歯数)/第1外歯歯車13aの歯数}となる。例えば、第1外歯歯車13aが13歯で、第1内歯歯車20が14歯であると、−1/13に減速される。ここでは、入力軸10の回転方向を正の数で表わしている。
第2外歯歯車13bと第2内歯歯車30との噛合い部分においても、入力軸10が1回転して、第2外歯歯車13bと第2内歯歯車30との噛み合い位置が周回方向に1周回すると、両者の噛み合う歯がずれていく。一方、こちらの噛み合い部分では、第2外歯歯車13bも第2内歯歯車30も回転軸O1を中心に回転しながら、両者の噛み合う歯がずれていく。このため、第2外歯歯車13bの任意の1つの歯が最も偏心したときから、この歯が次に最も偏心するまでの期間に、第2外歯歯車13bと第2内歯歯車30との噛み合う歯が、両者の歯数差分ずれていく。例えば、第2外歯歯車13bが12歯で、第2内歯歯車30が13歯であると、上記の期間に1歯分、両者が噛み合う歯がずれていく。そして、外歯歯車部材13の回転軸O1を中心とする回転に、この噛み合う歯のズレ分の回転が加わって、第2内歯歯車30が回転運動する。
1段目の減速比Aが負(第1外歯歯車13aの回転方向が入力軸10の回転方向の逆)の場合、2段目の減速比Bは次のように計算できる。第1外歯歯車13aが回転軸O1を中心として1回転する間に、第2外歯歯車13bの任意の歯が最も偏心する回数Nは、その間の入力軸10の回転数+その間の第2外歯歯車13bの回転数(入力軸10の回転方向を負とした回転数)である。すなわち、減速比Aが負の場合、N=−(1/減速比A)+1である。そして、この間に、第2内歯歯車30と第2外歯歯車13bとの噛み合う歯が、(N×歯数差)だけずれる。このズレ分は、この間に、第2外歯歯車13bが回転軸O1を中心として回転する量(1回点)からの遅れ量又は進み量となる。第2内歯歯車30の歯数が第2外歯歯車13bの歯数より多ければ遅れ量となり、少なければ進み量となる。したがって、第1外歯歯車13aの回転に対する第2内歯歯車30の回転の減速比Bは、1−{N×(第2内歯歯車30の歯数−第2外歯歯車13bの歯数)/第2内歯歯車30の歯数}となる。例えば、減速比Aが上述した例のように−1/13で、第2外歯歯車13bが12歯で、第2内歯歯車30が13歯であると、減速比Bは、−1/13となる。ここでは、第1外歯歯車13aに入力される回転方向を正の数で表わしている。減速比Aが正の場合にも、詳細は省略するが同一の式となる。
これらの結果、遊星歯車装置1により、トータルの減速比=減速比A×減速比Bの運動が得られる。すなわち、入力軸10の回転運動が、減速比A×減速比Bで減速されて、出力部材52に出力される。トータルの減速比は、例えば、第1外歯歯車13a、第1内歯歯車20、第2外歯歯車13b、第2内歯歯車30の各歯数が{9、10、6、7}であれば1/21となり、各歯数が{11、12、8、9}であれば1/33となる。また、トータルの減速比は、各歯数が{13、14、11、12}であれば1/78となり、各歯数が上述した例のように{13、14、12、13}であれば1/169となる。このように、各歯数の組み合わせにより減速比を大きく変えることができる。また、各歯数の組み合わせにより、細かい幅で減速比を設定することができる。
<実施形態効果1>
以上のように、実施形態1の遊星歯車装置1によれば、第1内歯歯車20及び第2内歯歯車30は、複数の支持ピン21、31にそれぞれ回転自在に支持された複数の回転体22、32を有する。そして、第1内歯歯車20と第1外歯歯車13aとが噛み合う際、複数の回転体22が第1外歯歯車13aの外周面上を転がる。同様に、第2内歯歯車30と第2外歯歯車13bとが噛み合う際、複数の回転体32は第2外歯歯車13bの外周面上を転がる。したがって、外歯と内歯との滑りのない噛合いにより、高い効率で回転運動を減速し、減速された回転運動を出力することができる。
ところで、実施形態1の遊星歯車装置1の構造では、第1偏心体軸受43と第2偏心体軸受44との径方向外方に、第1外歯歯車13a、第2外歯歯車13b、支持ピン21、31、回転体22、32等の構成要素が配置される。したがって、遊星歯車装置1の径方向の寸法の増大を抑制するには、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の小型化が求められる。しかし、単に軸受を小型化すると軸受の耐荷重が低下してしまう。
そこで、実施形態1の遊星歯車装置1によれば、第1偏心体軸受43と第2偏心体軸受44に、アンギュラ軸受を採用し、これらを背面合わせで配置している。アンギュラ軸受を背面合わせで配置することで、これらの荷重作用線は、軸受から軸受中心軸に向かって広がり、軸受の作用点間距離を大きくできるので、小型化しても許容ラジアル荷重及び許容モーメント荷重を大きくできる。さらに、アンギュラ軸受を背面合わせとすることで、両方向のアキシャル荷重を受けることができ、加えて、予圧が付加されることで、軸受部分の剛性を高めることができる。
さらに、実施形態1の遊星歯車装置1によれば、正面合わせで配置されたアンギュラ軸受である第1入力軸受41と第2入力軸受42との間に、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44が配置されている。この構成により、遊星歯車装置1の許容モーメント荷重をより高めることができる。
<実施形態効果2>
ところで、仮に、支持ピン21、31の支持構造が片持ち支持である場合、支持ピン21、31の強度の確保が難しい。特に、遊星歯車装置1が小型化される場合、支持ピン21、31の径の縮小も要求されることから、支持ピン21、31の強度の確保がより困難となる。また、支持ピン21、31は、第1外歯歯車13a及び第2外歯歯車13bから繰り返し径方向の荷重を受ける。このため、例えば、支持ピン21、31が締まり嵌めにより連結されている場合などに、連結箇所において支持ピン21、31が微小変位しやすいという課題がある。
しかしながら、実施形態1の遊星歯車装置1によれば、第1支持部51a及び第2支持部51bにより支持ピン21の両端部が支持されている。これにより、支持ピン21の強度の確保が容易となる。その結果、支持ピン21の径を小さくして、遊星歯車装置1の小型化を図ることが可能となる。さらに、支持ピン21、第1支持部51a及び第2支持部51bを組み合わせた構成の剛性が向上し、支持ピン21が繰り返し荷重を受けた場合でも、支持ピン21が連結箇所で微小変位してしまうことを抑制できる。
さらに、実施形態1の遊星歯車装置1によれば、第1支持部材34及び第2支持部材35により支持ピン31の両端部が支持されている。これにより、支持ピン31の強度の確保が容易となる。複数の支持ピン31及び複数の回転体32のうち、直接に荷重が加えられるのは、第2外歯歯車13bと噛み合う一部の範囲のみである。このため、第2支持部材35があることで、一部の範囲に加わった荷重を全ての範囲の支持ピン31に分散して受けることができ、これにより各支持ピン31の受け持ち荷重を低減できる。その結果、支持ピン31の径を小さくして、遊星歯車装置1の小型化を図ることが可能となる。さらに、支持ピン31、第1支持部材34及び第2支持部材35を組み合わせた構成の剛性が向上し、支持ピン31が繰り返し荷重を受けた場合でも、支持ピン31が連結箇所で微小変位してしまうことを抑制できる。
さらに、実施形態1の遊星歯車装置1によれば、周方向に隣接する一対の支持ピン31の間に補助ピン39が設けられ、補助ピン39が第1支持部材34と第2支持部材35とに連結されている。これにより、支持ピン31を支持する構成の剛性がより向上し、支持ピン31の強度の確保がより容易となる。加えて、支持ピン31が連結箇所で微小変位することをより抑制できる。
さらに、実施形態1の遊星歯車装置1によれば、出力部材52(出力側)に連結される第2内歯歯車30が補助ピン39を有する一方、固定部材51(固定側)に連結される第1内歯歯車20は補助ピンを有さない。これにより、剛性が得られにくい出力側の支持ピン31の支持構成については、補助ピン39により剛性を付加することができる。一方、剛性が得られやすい固定側の支持ピン21の支持構成については補助ピンが省かれることで、部品点数の削減、組立工数の削減、及び重量の低減を図ることができる。
さらに、実施形態1の遊星歯車装置1によれば、支持ピン21の一端部を支持する第2支持部51bは、第1外歯歯車13aを通す貫通孔H51(図5)を有する。これにより、装置の径方向寸法の増大を抑制しつつ、第1外歯歯車13aを第1内歯歯車20の内側に容易に組み込むことができる。また、支持ピン31の一端部を支持する第2支持部材35は、第2外歯歯車13bを通す貫通孔H35(図4)を有する。これにより、装置の径方向寸法の増大を抑制しつつ、第2外歯歯車13bを第2内歯歯車30の内側に容易に組み込むことができる。
さらに、実施形態1の遊星歯車装置1によれば、第1内歯歯車20の回転体22と第1支持部51aとの間、並びに、回転体22と第2支持部51bとの間に、滑り部材24、25が設けられている。これにより、これらの間で部材の摩耗が生じることを抑制できる。同様に、実施形態1の遊星歯車装置1によれば、第2内歯歯車30の回転体32と第1支持部材34との間、並びに、回転体32と第2支持部材35との間に、滑り部材36、37が設けられている。これにより、これらの間で部材の摩耗が生じることを抑制できる。
さらに、実施形態1の遊星歯車装置1によれば、支持ピン21が第1支持部51a及び第2支持部51bから抜けるのを防止する抜け止め機構(鍔部21aと止め輪21b)を有する。これにより、第1外歯歯車13aから径方向に繰り返し荷重を受けることで、支持ピン21に軸方向の微小変位が発生しても、支持ピン21がそこから抜けてしまうことを抑制できる。同様に、実施形態1の遊星歯車装置1によれば、支持ピン31が第1支持部材34及び第2支持部材35から抜けるのを防止する抜け止め機構(鍔部31bと止め輪31a)を有する。これにより、第2外歯歯車13bから径方向に繰り返し荷重を受けることで、支持ピン31に軸方向の微小変位が発生しても、支持ピン31がそこから抜けてしまうことを抑制できる。
実施形態1の遊星歯車装置1においては、支持ピン21、31の対向する側に、第2支持部51bと第2支持部材35とが配置される分、これらの径方向内方で、かつ、第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bとの間に空間が設けられる。そして、実施形態1の遊星歯車装置1によれば、この空間を有効活用して、カウンタウェイト18が設けられている。この構造により、遊星歯車装置1の体積を増加させることなく、カウンタウェイト18を配置することができ、さらに、カウンタウェイト18によって、外歯歯車部材13の周回移動(偏心揺動)に伴う遊星歯車装置1の振動の発生を抑制できる。
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2に係る遊星歯車装置1Aを示す断面図である。図7は、図2のA−A線断面を示す。
実施形態2の遊星歯車装置1Aは、実施形態1の遊星歯車装置1から、第2支持部51bと、第2支持部材35と、補助ピン39とを除いたところが、主に異なり、その他の構成要素は実施形態1と同様である。同様の構成要素については実施形態1と同一符号を付して詳細な説明を省略する。
実施形態2では、支持ピン21Aは第1支持部51aに片持ち支持され、支持ピン31Aは第1支持部材34に片持ち支持されている。支持ピン21A、31Aは、片持ち支持される分、軸方向の寸法が、実施形態1の支持ピン21、31よりも短い。支持ピン21Aの出力側の抜け防止機構(鍔部21c、これは止め輪に変更されてもよい)は、滑り部材25に係止されている。支持ピン31Aの反出力側の抜け防止機構(鍔部31b)は、滑り部材37に係止されている。
実施形態2の遊星歯車装置1Aにおいても、実施形態1と同様に、入力軸10に入力された回転運動が、第1外歯歯車13a、第1内歯歯車20、第2外歯歯車13b及び第2内歯歯車30によって高い効率で減速することができる。そして、減速された回転運動が出力部材52から出力される。
<実施形態効果>
実施形態2の遊星歯車装置1Aによれば、第1偏心体軸受43と第2偏心体軸受44とが実施形態1と同様に構成されるため、これらの構成要素に関して実施形態1と同様の効果が奏される。また、第1入力軸受41と第2入力軸受42とが実施形態1と同様に構成され、これらの構成要素に関して実施形態1と同様の効果が奏される。
(実施形態3)
図8は、本発明の実施形態3に係る遊星歯車装置1Bを示す断面図である。図8は、図2のA−A線断面を示す。
実施形態3の遊星歯車装置1Bは、主に、支持ピン31Bの支持構造と、主軸受46Bの構成が、実施形態1と異なる。同様の構成要素については、実施形態1と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
実施形態3の第2内歯歯車30Bは、複数の支持ピン31Bと、複数の回転体32と、複数の支持ピン31Bの軸方向の一端側を支持する第1支持部材34Bと、複数の支持ピン31Bの軸方向の他端側を支持する第2支持部材35とを備える。
複数の支持ピン31Bは、第1支持部材34Bと単一の部材により一体的に構成されている。このような構造の第1支持部材34Bは、例えば鍛造、鋳造又は削り出し加工により製造することができる。
主軸受46Bは、例えばクロスローラ軸受であり、個別の内輪を持たず、内輪が第1支持部材34Bと一体化されている。すなわち、主軸受46Bの内輪の転走面(軌道面とも言う)が、第1支持部材34Bに設けられている。同様に、主軸受46Bは、個別の外輪を持たず、外輪がケーシング53Bと一体化されている。すなわち、外周側の転走面がケーシング53Bに設けられている。互いに連結された出力部材52及び第2内歯歯車30Bは、主軸受46Bを介して、固定部材51及びケーシング53Bに回転自在に支持される。
主軸受46Bは、径方向から見て範囲L1内に収まるように設けられている。範囲L1は、支持ピン31Bの第1支持部材34Bから突出した部分の根元位置から、支持ピン31Bの突出方向とは逆方に、支持ピン31Bの突出量の長さ分を占める範囲である。
主軸受46Bは、さらに、第2入力軸受42と径方向から見て重なる範囲に設けられている。さらに、主軸受46Bの軸方向における中心は、第2入力軸受42の軸方向における中心よりも、反出力側に位置する。
第1支持部材34Bにおいて、第2入力軸受42と、主軸受46Bとの間には、ボルト孔34h1が設けられている。出力部材52はボルト孔34h1に螺合されたボルトB1により第1支持部材34Bに連結されている。なお、第1支持部材34Bと出力部材52とは、単一の部材により一体的に構成されてもよい。この場合、ボルト孔34h1に螺合されるボルトB1を介して、被駆動部材が第1支持部材34B及び出力部材52に連結されてもよい。
<実施形態効果>
実施形態3の遊星歯車装置1Bにおいても、実施形態1の遊星歯車装置1と同様の構成要素を有することにより、これらの構成要素に関して実施形態1と同様の効果が奏される。
さらに、実施形態3の遊星歯車装置1Bによれば、支持ピン31Bが第1支持部材34Bと一体化されている。これにより、支持ピン31Bの径を大きくせずに、支持ピン31Bの強度を向上でき、さらに、部品点数の削減により製造コストの低減を図れる。
さらに、実施形態3の遊星歯車装置1Bによれば、主軸受46Bの内輪が、第2内歯歯車30Bの第1支持部材34Bに一体的に設けられている。これにより、遊星歯車装置1Bの体積の増大を抑えつつ、大型の主軸受46Bを採用できる。したがって、遊星歯車装置1Bの小型化と許容モーメント荷重の増大とを両立できる。
さらに、実施形態3の遊星歯車装置1Bによれば、主軸受46Bが範囲L1(図8)内に収まるように設けられている。この構造は、支持ピン31Bが第1支持部材34Bと一体的に構成され、第1支持部材34Bに支持ピン31Bを締まり嵌めするような孔等が不要であることから容易に実現可能である。この構造により、大型の主軸受46Bを採用して許容モーメント荷重を大きくしつつ、遊星歯車装置1Bの軸方向の短縮化を図ることができる。
<実施形態効果>
さらに、実施形態3の遊星歯車装置1Bによれば、支持ピン31Bと第1支持部材34Bとが一体化された構造が、支持ピン31Bの抜け止め防止機構としても機能する。このため、支持ピン31Bに径方向の荷重が繰り返し加えられても支持ピン31Bが所定の配置から抜け落ちることがない。
(実施形態4)
図9は、本発明の実施形態4に係る遊星歯車装置の断面図である。図9は、図2のA−A線断面を示す。図10は、図9の遊星歯車装置において第2支持部材より出力側の構成を反出力側から見た平面図である。
実施形態4の遊星歯車装置1Cは、主に、支持ピン21C、31Cの支持構造と、出力部材と一体化された第1支持部材34Cの軸受構造とが、実施形態1と異なる。実施形態1と同様の構成要素については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
実施形態4の第1内歯歯車20Cは、複数の支持ピン21Cと、複数の支持ピン21Cにそれぞれ回転可能に支持された複数の回転体22と、複数の支持ピン21Cを支持する第1支持部51a及び第2支持部51bとを有する。
固定部材51は、内周部に、径方向に凹む溝51uが設けられ、溝51u内に回転体22が配置される。溝51uの軸方向を仕切る両壁の一方が第1支持部51aであり、他方が第2支持部51bである。支持ピン21Cは、第1支持部51aと第2支持部51bに設けられた連結孔に締まり嵌めされ、これらに連結される。支持ピン21Cの出力側の端部には、支持ピン21Cの径方向に突出した鍔部21cが設けられている。支持ピン21Cは、鍔部21cが第2支持部51bに当接する位置まで、第1支持部51aの連結孔と第2支持部51bの連結孔とに通されて固定されている。
実施形態4の第2内歯歯車30Cは、複数の支持ピン31Cと、複数の支持ピン31Cにそれぞれ回転可能に支持された複数の回転体32と、複数の補助ピン39Cとを備える。さらに、第2内歯歯車30Cは、複数の支持ピン31Cの軸方向の一端側と他端側とをそれぞれ支持する第1支持部材34Cと第2支持部材35Cとを有する。
第1支持部材34Cは、出力部材と一体化されており、例えば遊星歯車装置1Cが組み込まれるシステムにおいて、被駆動部材に連結される。第1支持部材34Cは、中央に入力軸10を通す貫通孔を有する環状の形態を有する。第1支持部材34Cは、第2入力軸受42を介して入力軸10を回転可能に支持する。
第1支持部材34Cには、軸方向に延設された複数の連結孔が、周方向に並んで設けられている。これらの連結孔には、複数の支持ピン31Cの出力側の端部と、複数の補助ピン39Cの出力側の端部とが締まり嵌め等により連結される。なお、補助ピン39Cが、支持ピン31Cと支持ピン31Cとの間に配置される点、内歯を構成しない点、第1内歯歯車20C側には補助ピンが設けられない点は、実施形態1と同様である。
第2支持部材35Cは、中央に入力軸10が通る貫通孔を有する環状の形態を有する。第2支持部材35Cには、軸方向に延設された複数の連結孔が、周方向に並んで設けられている。これらの連結孔には、複数の支持ピン31Cの反出力側の端部と、複数の補助ピン39Cの反出力側の端部とが締まり嵌め等により連結される。
支持ピン31Cの反出力側の端部には、支持ピン31Cの径方向に突出した鍔部31bが設けられている。支持ピン31Cは、鍔部31bが第2支持部材35Cの溝35u(後述)の底部に当接する位置まで、連結孔に通されて固定される。
第2支持部材35Cは、径方向から見て、対向する複数の支持ピン21Cの端部(鍔部21c)と重なる幅を有する。一方、第2支持部材35Cは、図10に示すように、反出力側に周方向に連なる溝35uが設けられている。溝35uは、軸方向から見て、支持ピン31C及び補助ピン39Cの連結孔と重なる位置に設けられている。溝35uには、第2支持部材35Cと対向する複数の支持ピン21Cの端部が収容される。この溝35uに沿って支持ピン21Cの端部が第2支持部材35Cと相対移動することで、第1内歯歯車20Cと第2内歯歯車30Cとが相対回転可能にされている。
出力部材を兼ねる第1支持部材34Cと、第2支持部材35Cとは、それぞれ第1主軸受46C及び第2主軸受47Cを介して、ケーシング53に回転自在に支持される。
第1主軸受46C及び第2主軸受47Cは、アンギュラ玉軸受であり、背面合わせで配置されている。背面合わせにすることで、より大きなモーメント荷重に耐えることができ、予圧が加えられることで、軸受の高い剛性を得ることができる。なお、第1主軸受46C及び第2主軸受47Cは、アンギュラ玉軸受に限定されるものではなく、各種軸受を使用可能であり、例えばアンギュラ軸受でない通常の玉軸受でもよい。
第1主軸受46Cは、径方向から見て、支持ピン31Cの軸方向における一方の端面と重なる位置に配置されている。第2主軸受47Cは、径方向から見て、支持ピン31Cの軸方向における他方の端面と重なる位置に配置されている。
<実施形態効果>
実施形態4の遊星歯車装置1Cにおいても、実施形態1の遊星歯車装置1と同様の構成要素を有することにより、これらの構成要素に関して実施形態1と同様の効果が奏される。
ところで、出力部材(実施形態4では第1支持部材34C)を回転可能に支持する主軸受として、1つのクロスローラ軸受を採用した場合、主軸受の箇所に高いモーメント剛性を得ることが難しい。特に、遊星歯車装置の小型化の要求により、小型のクロスローラ軸受が採用された場合、主軸受の箇所に高いモーメント剛性を得ることがより難しい。そして、このような構成で、出力部材にモーメント荷重が加えられると、出力部材を力点、主軸受を支点、支持ピン31C及び回転体32を作用点として、作用点にモーメント荷重が伝わり、これによって支持ピン31C及び回転体32に疲労が加わる。
そこで、実施形態4の遊星歯車装置1Cによれば、出力部材を兼ねた第1支持部材34Cと、第2支持部材35Cとが、それぞれ第1主軸受46Cと第2主軸受47Cとを介してケーシング53に支持されている。つまり、回転体32を挟んで支持ピン31Cの両側に配置された第1主軸受46Cと第2主軸受47Cとを用いて第2内歯歯車30Cが2箇所から支持される。これにより、支持ピン31Cを支持する構成の剛性が向上し、出力部材(第1支持部材34C)にモーメント荷重が加えられても、このモーメント荷重が支持ピン31C及び回転体32に伝わることを抑制できる。したがって、支持ピン31C及び回転体32の長寿命化を図ることができる。
さらに、実施形態4の遊星歯車装置1Cによれば、複数の補助ピン39Cが第1支持部材34Cと第2支持部材35Cとを連結するので、支持ピン31Cを支持する構成の剛性をより向上できる。支持ピン31C及び回転体32を支持する構成に微小変形が生じると、支持ピン31C及び回転体32に余計な荷重が伝わってしまう。しかし、補助ピン39Cにより、このような微小変形が生じ難く、支持ピン31C及び回転体32に余計な荷重が伝わることを抑制できる。
また、第1主軸受46Cと第2主軸受47Cとは、径方向から見て、支持ピン31Cの一端面と他端面とにそれぞれ重なる位置に設けられている。これにより、支持ピン31Cにモーメント荷重が伝わることをより抑制でき、かつ、遊星歯車装置1Cの軸方向の長さの短縮化を図ることができる。
さらに、実施形態4の遊星歯車装置1Cによれば、第2内歯歯車30Cの第2支持部材35Cに、周方向に連なる溝35uが設けられ、第1内歯歯車20Cの支持ピン21Cの先端が溝35uに収容される。これにより、第2支持部材35Cの軸方向長さを大きくして、第2主軸受47Cとの接触面積を確保しつつ、第1内歯歯車20Cを第2内歯歯車30Cに近づけて、遊星歯車装置1Cの総合的な軸方向長さを短縮することができる。
(実施形態5)
図11は、本発明の実施形態5に係る遊星歯車装置の断面図である。図11は、図2のA−A線断面を示す。
実施形態5の遊星歯車装置1Dは、第1主軸受46D及び第2主軸受47Dとしてテーパコロ軸受(あるいは、アンギュラコロ軸受)を採用した点が異なり、その他の構成要素は実施形態4と同様である。このような構成としても、実施形態4と同様の作用効果が奏される。
(実施形態6)
図12は、本発明の実施形態6に係る遊星歯車装置を示す断面図である。図12は、図2のA1−A1線断面を示す。
実施形態6の遊星歯車装置1Eは、第2内歯歯車30の複数の回転体32Eとケーシング53Eとの関係が異なる他は、実施形態1とほぼ同様である。同様の構成要素については、実施形態1と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
実施形態6の遊星歯車装置1Eは、ケーシング53Eの内周面と、第2内歯歯車30の複数の回転体32Eの外周面とが接触するように構成される。本実施形態においては、全ての回転体32Eがケーシング53Eの内周面と接触するが、これに限定されず、一部の回転体32Eのみが接触するように構成してもよい。すなわち、複数の回転体32Eが軸受用回転体と内歯用回転体とに兼用される。この構成によれば、回転軸O1を中心とする同一ピッチ半径上に配置された複数の回転体32Eが、ケーシング53Eの内周面を転走面として転動する転動体としても機能する。これにより、第2内歯歯車30が大径の軸受として機能し、第2内歯歯車30と連結される出力部材52の許容モーメント荷重を大きくすることができる。
さらに、実施形態6の遊星歯車装置1Eにおいて、回転体32Eの素材の硬度は、ケーシング53Eの素材の硬度よりも高い。この構成によれば、軸受の転動体としても機能する回転体32Eの摩耗を抑制することができる。
なお、回転体32Eは、その中心軸が軸方向と平行な円筒形状に限られず、玉形状としてもよいし、中心軸が軸方向に対して傾斜した円すい形状又は傾斜した円筒形状としてもよい。傾斜した円すい又は円筒の形状とした場合には、この傾斜に合わせて、第2外歯歯車13bの外周面と、ケーシング53Eの内周面にも傾斜を設ければよい。このような構成により、第2内歯歯車30が大径の軸受として機能する際に、この軸受に、玉軸受又は円すいコロ軸受の特性を付加することができる。
(実施形態7)
図13は、本発明の実施形態7に係る遊星歯車装置を示す断面図である。図13は、図2のA1−A1断面図を示す。
実施形態7の遊星歯車装置1Fは、第2内歯歯車30Fの構成が異なる他は、実施形態1とほぼ同様である。同様の構成要素については、実施形態1と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
実施形態7の第2内歯歯車30Fは、複数の支持ピン31Fと、複数の支持ピン31Fに回転自在に支持される第1列目の複数の回転体32と、複数の支持ピン31Fに回転自在に支持される第2列目の複数の回転体32Fとを備える。すなわち、複数の回転体32が内歯用回転体として機能し、複数の回転体32Fが軸受用回転体として機能する。回転体32と回転体32Fとは軸方向に並んで配置される。
支持ピン31Fは、軸方向に2つの回転体32、32Fを並べて支持する分、実施形態1の支持ピン31よりも軸方向の寸法が長い。
回転体32は、第2外歯歯車13bに接触し(噛合い)、ケーシング53の内周面には接触しない。
回転体32Fは、回転体32よりも外径が大きく、軸方向に隣接する回転体32とは独立して回転可能に(例えばニードル軸受を介して)支持ピン31Fに支持される。回転体32Fは、径方向から見て、外歯歯車部材13の中間部13cと重なる位置で支持され、第2外歯歯車13b及び外歯歯車部材13に接触せず、ケーシング53の内周面に接触する。回転体32Fの素材の硬度は、ケーシング53の素材の硬度よりも高い。なお、回転体32Fは、全ての支持ピン31Fに設けられてもよいし、一部の支持ピン31Fのみに設けられてもよい。
回転体32と回転体32Fとの間には、滑り部材37Fが設けられている。滑り部材37Fは、ワッシャ状であり、支持ピン31Fが通されて位置が規制される。滑り部材37Fは、表面の摩擦係数が回転体32、32Fよりも小さく、回転体32、32Fが直接擦れ合うことを防止し、これらの部材の摩耗を抑制する。回転体32Fと第2支持部材35との間にも同様に滑り部材を設けてもよい。
<実施形態効果>
実施形態7の遊星歯車装置1Fにおいても、実施形態1の遊星歯車装置1と同様の構成要素を有することにより、これらの構成要素に関して実施形態1と同様の効果が奏される。
さらに、実施形態7の遊星歯車装置1Fによれば、回転軸O1を中心とする同一ピッチ半径上に配置された複数の内歯(支持ピン31F及び回転体32、32F)が、内接円側から第2外歯歯車13bに、外接円側からケーシング53に挟み込まれる。これにより、複数の内歯が、第2外歯歯車13bの外周面とケーシング53の内周面とを転走面として転動する転動体として機能し、第2内歯歯車30Fが大径の軸受としても機能する。そして、この軸受の機能により、出力部材52に加えられるモーメントに対する遊星歯車装置1Fの剛性が向上し、出力部材52の許容モーメント荷重を大きくすることができる。
さらに、実施形態7の遊星歯車装置1Fによれば、1つの支持ピン31Fに、第2外歯歯車13bに接触する回転体32と、ケーシング53に接触する回転体32Fとが別々に設けられ、各々独立して回転可能である。したがって、出力部材52が回転する際に、回転体32、32Fがそれぞれ第2外歯歯車13bとケーシング53とに接触しながらスムーズに転動し、摩擦の少ない回転運動が実現される。
さらに、実施形態7の遊星歯車装置1Fによれば、回転体32Fの素材の硬度が、ケーシング53の素材の硬度よりも高いので、軸受の転動体として機能する回転体32Fの摩耗を抑制できる。
なお、回転体32、回転体32F又はこれら両方は、その中心軸が軸方向と平行な円筒形状に限られず、玉形状としてもよいし、中心軸が軸方向に対して傾斜した円すい形状又は傾斜した円筒形状としてもよい。傾斜した円すい又は円筒の形状とした場合には、この傾斜に合わせて、第2外歯歯車13bの外周面と、ケーシング53の内周面にも傾斜を設ければよい。このような構成により、第2内歯歯車30Fが大径の軸受として機能する際に、この軸受に、玉軸受又は円すいコロ軸受の特性を付加することができる。
(実施形態8)
図14は、本発明の実施形態8に係る遊星歯車装置の断面図である。図14は、図2のA−A線断面を示す。図15は、図14の遊星歯車装置のE−E線断面図である。
実施形態8の遊星歯車装置1Gは、第2内歯歯車30Gの構成が異なる他は、実施形態1とほぼ同様である。同様の構成要素については、実施形態1と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
実施形態8の第2内歯歯車30Gは、実施形態1の第2内歯歯車30の各構成要素に加えて、複数の回転体33Gを備える。
複数の回転体33Gは、それぞれ複数の補助ピン39Gに軸受(例えばニードル軸受)を介して回動自在に支持されている。回転体33Gは円筒形状を有する。複数の回転体33Gは、図14及び図15に示すように、外歯歯車部材13及び第2外歯歯車13bに接触せず、ケーシング53の内周面に接触する。なお、回転体32は、第2外歯歯車13bと接触し(噛合い)、ケーシング53の内周面には接触しない。回転体33Gの素材の硬度は、ケーシング53の素材の硬度よりも高い。すなわち、第2内歯歯車30Gにおいて、複数の回転体32が内歯用回転体として機能し、複数の回転体33Gが軸受用回転体として機能する。回転体32と回転体33Gとは周方向に並んで配置される。本実施形態においては、全ての回転体32と回転体32の間に回転体33Gが配置されているが、これに限定されず、一部の回転体32と回転体32の間にのみ回転体33Gが配置されてもよい。
補助ピン39Gの軸方向の一端部(反出力側)には、補助ピン39Gの径方向に張り出す鍔部39bが設けられ、補助ピン39Gの軸方向の他端部(出力側)には、止め輪(Eリング、Cリング等)39aが取り付けられている。鍔部39b及び止め輪39aは、補助ピン39Gが第1支持部材34のピン孔及び第2支持部材35のピン孔から抜けるのを抑止する。
さらに、第1支持部材34と回転体33Gとの間には、補助ピン39Gが通されたワッシャ状の滑り部材36Gが設けられている。第2支持部材35と回転体33Gとの間には、補助ピン39Gが通されたワッシャ状の滑り部材37Gが設けられている。これら滑り部材36G、37Gにより、回転体33Gと第1支持部材34及び第2支持部材35とが摺れ合って、これらが摩耗することを抑制できる。
<実施形態効果>
実施形態8の遊星歯車装置1Gにおいても、実施形態1の遊星歯車装置1と同様の構成要素を有することにより、これらの構成要素に関して実施形態1と同様の効果が奏される。
さらに、実施形態8の遊星歯車装置1Gによれば、支持ピン31の回転体32に対しては、内接円側から第2外歯歯車13bが接触する一方、補助ピン39Gの回転体33Gに対しては、外接円側からケーシング53が接触する。これにより、回転体32、33Gが、第2外歯歯車13bの外周面とケーシング53の内周面とを転走面として転動する転動体として機能し、第2内歯歯車30Gが大径の軸受としても機能する。そして、この軸受の機能により、出力部材52に加えられるモーメントに対する遊星歯車装置1Gの剛性が向上し、出力部材52の許容モーメント荷重を大きくすることができる。
さらに、実施形態8の遊星歯車装置1Gによれば、第2外歯歯車13bに接触する回転体32と、ケーシング53に接触する回転体33Gとが別々に設けられ、各々が独立して回転可能である。したがって、出力部材52が回転する際、回転体32、33Gがそれぞれ第2外歯歯車13bとケーシング53と接触しながらスムーズに転動し、滑りの少ない回転運動が実現される。
さらに、実施形態8の遊星歯車装置1Gによれば、回転体33Gの素材の硬度が、ケーシング53の素材の硬度よりも高いので、軸受の転動体として機能する回転体33Gの摩耗を抑制できる。
なお、回転体32、回転体33G又はこれら両方は、その中心軸が軸方向と平行な円筒形状に限られず、玉形状としてもよいし、中心軸が軸方向に対して傾斜した円すい形状又は傾斜した円筒形状としてもよい。傾斜した円すい又は円筒の形状とした場合には、この傾斜に合わせて、第2外歯歯車13bの外周面と、ケーシング53の内周面にも傾斜を設ければよい。このような構成により、第2内歯歯車30Gが大径の軸受として機能する際に、この軸受に、玉軸受又は円すいコロ軸受の特性を付加することができる。
(実施形態9)
図16は、本発明の実施形態9の遊星歯車装置における第2内歯歯車の回転体の箇所を示す断面図である。実施形態9の遊星歯車装置1Hは、図1の遊星歯車装置1とほぼ同様に構成され、図16は、図1のB−B線の位置の断面を示している。図17は、実施形態9の遊星歯車装置が適用される産業用ロボットの一例を示す図である。
実施形態9の遊星歯車装置1Hは、第2内歯歯車30Hの複数の回転体32、32Hのうち、一部の回転体32Hとケーシング53との関係が実施形態1と異なり、他の構成要素は実施形態1と同様である。同一の構成要素については、実施形態1と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
遊星歯車装置1Hは、図17に示すように、被駆動装置100(例えば産業用ロボット)に組み込まれたときに、出力部材52に連結される被駆動部材101が、90度の範囲W101のみで回動するように規制されている。この場合、出力部材52に連結される第2内歯歯車30Hは、90°の範囲でのみ回動し、それ以上回動しない。
一方、第2内歯歯車30Hの複数の内歯(回転体32、32H)のうち、第2外歯歯車13bから荷重を受けるのは、第2外歯歯車13bの偏心した範囲W1にある一部のみであり、全部でない。例えば、内歯(回転体32、32H)の総数が13個であれば、これらのうちの5個が、第2外歯歯車13bの偏心した範囲の外歯と噛み合って、外歯から荷重を受ける。
外歯から荷重を受ける5個の内歯(回転体32、32H)は、第2内歯歯車30Hの回動範囲W101が90度と決められている場合、第2内歯歯車30Hの回動位置に応じて、図16の範囲W2のいずれか5個一括りの内歯となる。範囲W2の角度は、荷重を受ける内歯の範囲W1の角度+第2内歯歯車30Hの回動範囲W101の角度(90°)となる。つまり、第2内歯歯車30Hの複数の内歯(回転体32、32H)のうち、範囲W2を除外した範囲W3にある内歯は、被駆動部材101が決められた範囲で回動している限り、第2外歯歯車13bから荷重を受けない。
実施形態9では、第2内歯歯車30の複数の回転体32、32Hのうち、範囲W3にある1個又は複数の回転体32Hがケーシング53の内周面と接触され、それ以外の複数の回転体32がケーシング53の内周面から離間するように配置されている。このような構成は、例えば、回転体32Hを支持する支持ピン31を、回転体32を支持する支持ピン31よりも、径方向外方の位置に設けること等により対応できる。複数の回転体32は内歯用回転体として機能し、1つ又は複数の回転体32Hは軸受用回転体として機能する。
回転体32Hは、その素材の硬度が、ケーシング53の素材の硬度よりも高くてもよい。
なお、第2外歯歯車13bから荷重を受けない範囲W3は、被駆動部材101の回動範囲及び減速比により変わるが、通常は回動範囲が270°以内と規制されていれば、1本以上の内歯を含む大きさとなる。したがって、このような規制のある装置に遊星歯車装置1Hが組み込まれる場合に、範囲W3に位置する内歯を、ケーシング53の内周面に接触する回転体32Hとし、それ以外の内歯を、ケーシング53の内周面に接触しない複数の回転体32とすればよい。
<実施形態効果>
実施形態9の遊星歯車装置1Hにおいても、実施形態1の遊星歯車装置1と同様の構成要素を有することにより、これらの構成要素に関して実施形態1と同様の効果が奏される。
さらに、実施形態9の遊星歯車装置1Hによれば、範囲W2にある複数の回転体32に対しては内接円側から第2外歯歯車13bが接触する一方、範囲W3にある1個又は複数の回転体32Hに対しては外接円側からケーシング53が接触する。したがって、これらの回転体32、32Hを含む第2内歯歯車30Hは、第2外歯歯車13b及びケーシング53に接触して、その配置が維持されることになる。これにより、出力部材52に加えられるモーメントに対する第2内歯歯車30Hの変位が抑制され、このモーメントに対する遊星歯車装置1Hの剛性が向上する。したがって、出力部材52の許容モーメント荷重を大きくすることができる。
さらに、実施形態9の遊星歯車装置1Hによれば、第2外歯歯車13bから荷重を受けない範囲W3の回転体32Hのみがケーシング53に接触する。したがって、第2内歯歯車30H及び出力部材52が回転する際、回転体32、32Hがスムーズに転動し、滑りの少ない回転運動が実現される。
さらに、回転体32Hの素材の硬度を、ケーシング53の素材の硬度よりも高くすることで、回転体32Hがケーシング53に内周面に接触して転動する際に、回転体32Hの摩耗を抑制できる。
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、実施形態において、単一の部材により一体的に形成された構成要素は、複数の部材に分割されて互いに連結又は固着された構成要素に置換してもよい。また、複数の部材が連結されて構成された構成要素は、単一の部材により一体的に形成された構成要素に置換してもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態においては、支持ピンや補助ピンが、第1支持部や第2支持部、第1支持部材や第2支持部材に締まり嵌めにより連結されていたが、これに限定されるものではなく、例えば隙間嵌めにより相対回転可能に連結されてもよいし、ボルト等により連結されてもよい。