JP2020017626A - SiCウェハ及びSiCウェハの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
この態様において、前記裏面は、最大高さRzが0.5〜5μmであることを特徴とする。
このような粗さとすることにより、ウェハ滑りを防止しつつ、パーティクル等の付着を抑制することや、試料台へのチャッキング時にウェハの平坦度が悪化することを抑制することができる。
このように、裏面に加工変質層が実質的に生じていないことにより、デバイス製造工程に好ましい梨地面を形成することができる。
このように、梨地加工後にSi蒸気圧下で加熱することで、デバイス製造工程に好ましい梨地面を形成することができる。
デバイス製造工程にて歩留まりを低下させないためには、この加工変質層30を除去する必要がある。すなわち、表面加工によるクラックや格子歪みが導入されていない加工変質層30下のバルク層33を表出させることが好ましい。
本発明のSiCウェハ20は、鏡面加工された主面21と、梨地加工された裏面22と、を備えることを特徴とする。
単結晶SiCは、透光性を有し可視光を透過する。そのため、デバイス製造工程中においては、光学式センサを用いてウェハを検知し難いという問題があった。本発明のSiCウェハ20は、裏面22が梨地面であることにより、両面が鏡面である従来のSiCウェハと比較して、光学式センサによる検知率を向上させることができる。
SiCウェハ20をこのような薄い厚みに設定しても、裏面22が梨地加工されていることにより、光学式センサの検知率を向上させることができる。
また、梨地面の最大高さRzは、好ましくは0.5〜5μmであり、より好ましくは0.75〜2.5μmである。
さらには、パーティクルが付着しやすくなることや、試料台へのチャッキング時に、ウェハの平坦度を悪化させたりするなどの不具合についても、より強く抑制することができる。
また、数値では表せないが、本発明のSiCウェハ20の梨地の表面形状としては、微細なバリが除去され、滑らかなエッジを有した凸状部を有した構造となっていることが好ましい。
また、鏡面の最大高さRzは、0.2〜1.2μmであり、より好ましくは0.2〜0.4μmである。
鏡面の表面をこのように形成することにより、ウェハの主面・裏面の識別が容易となる。
なお、本明細書中の説明において、格子歪み量というときは、図13におけるバルク層33の結晶格子と、歪み層の結晶格子を比較した際に生じているズレ量のことを言い、単に比率を表す数値であるため「%」表記とする。
このように、格子歪み量が0.01%以下であることにより、後のデバイス製造工程で結晶歪みに起因する不具合が生じることを抑制することができ、より高品質なSiCウェハ20を提供することができる。
以下、図1、図2、図3及び図4を参照して、本発明のSiCウェハの製造方法についてさらに詳細に説明する。図面には好ましい実施形態が示されている。しかし、多くの異なる形態で実施されることが可能であり、本明細書に記載される実施形態に限定されない。
本発明のSiCウェハの製造方法は、結晶成長させた単結晶SiCの塊を円柱状のインゴット10に加工するインゴット成形工程(ステップS11)と、インゴット10の結晶方位を示す目印となるよう外周の一部に切欠き部を形成する結晶方位成形工程(ステップS12)と、インゴット10をスライスして薄円板状のSiCウェハ20に加工するスライス工程(ステップS13)と、SiCウェハ20の少なくとも裏面22を梨地面とする梨地加工工程(ステップS14)と、刻印部25を形成する刻印形成工程(ステップS15)と、外周部23を面取りする面取り工程(ステップS16)と、Si蒸気圧下で加熱することでSiCウェハ20の少なくとも裏面22をエッチングするエッチング工程(ステップS17)と、SiCウェハ20の主面21を鏡面とする鏡面加工工程(ステップS18)と、を含む。
インゴット成形工程S11は、結晶成長させた単結晶SiCの塊を円柱状のインゴット10に加工する工程である。このインゴット10は、通常、円柱の長手方向が<0001>方向となるよう加工される。
結晶方位成形工程S12は、インゴット成形工程S11にて形成したインゴット10の結晶方位を示す目印となるよう、外周の一部に切欠き部を形成する工程である。この切欠き部としては、<11−20>方向と平行な平面(オリエンテーションフラット(オリフラ)24)や、<11−20>方向の両端に設けられる溝(ノッチ)等を例示することができ、単結晶SiCの結晶方位を特定することができるよう形成される。
インゴット10をスライスして薄円板状のSiCウェハ20を得る工程である。
スライス工程S13のスライス手段としては、複数本のワイヤーを往復運動させることでインゴット10を所定の間隔で切断するマルチワイヤーソー切断や、プラズマ放電を断続的に発生させて切断する放電加工法、インゴット10中にレーザーを照射・集光させて切断の基点となる層を形成するレーザーを用いた切断、等を例示できる。
梨地加工工程S14は、SiCウェハ20の少なくとも裏面22に梨地面を形成する工程である。この梨地加工工程S14の梨地加工手段としては、梨地面を形成可能な慣用の手段を採用することができ、例えば、コンプレッサで圧縮した空気を用いて微細な粒状の研削材をウェハ表面に吹き付けるサンドブラスト加工や、砥粒をボンド材に埋め込んだ砥石で加工を行う固定砥粒加工(グラインド研削等)、定盤に微細な砥粒をかけ流しながら加工を行う遊離砥粒加工(ラッピング研磨等)を例示できる。より好ましくは、スライス工程S13にてSiCウェハ20に導入される“うねり”を除去する平坦化を同時に行える、固定砥粒加工及び遊離砥粒加工が好適に用いられる。
以下、本発明のSiCウェハの製造方法の好ましい梨地加工工程S14の加工方法や加工条件、砥粒の性質について説明を加える。
梨地加工工程S14に好ましい加工方式としては、定盤に微細な砥粒をかけ流しながら加工を行う遊離砥粒加工(ラッピング研磨等)が好適に用いられる。なお、砥粒は水や分散剤と混合された混合液(スラリー)として滴下されることが望ましい。本工程において使用される加工装置としては、従来の遊離砥粒加工にて使用される汎用型の加工装置を採用することができる。また、両面同時に加工する方式であっても良いし、片面を加工する方式であってもよい。
そのため、砥粒を破砕しながら梨地加工工程S14を行えば、梨地加工工程S14の開始段階においては大きな加工速度で迅速にSiCウェハ20の表面を加工することができる。一方で、加工が進み砥粒が小さくなるにつれて加工速度が漸次小さくなり、工程の最終段階においてはSiCウェハ20の表面への繊細な加工を実現し、SiCウェハの表面に導入される梨地面の粗さが大きくなりすぎることを抑制することができる。
このように形成された梨地面に対してエッチング工程S17を実行することにより、デバイス製造工程に適した梨地面を有するSiCウェハ20を製造することができる。
また、後述する梨地加工工程S14における加工条件にて、砥粒を破砕しながら梨地加工工程S14を行う形態の発明の実施が可能である。
加工前の状態で上記範囲の平均砥粒径を有する砥粒を用いることで、梨地加工工程S14の開始段階における迅速な加工が可能となる。
梨地加工工程S14の開始段階において、用いる砥粒の平均砥粒径の上限を上記範囲に設定することによって、梨地加工工程S14によってSiCウェハ20に導入される加工変質層30の深さを低減することができる。
加工後の平均砥粒粒子が上記範囲となるように、砥粒を破砕しながら梨地加工工程S14を実行することで、SiCウェハ20に導入される梨地の粗さを低減することができ、後述するエッチング工程S17に供するに適したSiCウェハ20の表面状態を実現することができる。
梨地加工工程S14の開始段階において、用いる砥粒の平均砥粒径の下限を上記範囲に設定することによって、SiCウェハ20の表面を効率的に加工することができる。
平均砥粒径40μmのB4C砥粒を用いて、加工圧力150g/cm2、加工時間20分の条件で梨地加工工程S14を実施し、後述するエッチング工程S17を施したところ、従来のSiウェハと同等の梨地面が形成された。このとき梨地加工工程S14の加工後の平均砥粒径は10μm以下であった。この工程におけるSiCウェハ20の加工深さ20μmを加工時間で除去することで得られた平均加工速度は1μm/分であった。
本発明のSiCウェハの製造方法は、遊離砥粒方式下での梨地加工工程S14において、砥粒を破砕しながら加工を行うことが望ましい。つまり、本発明で用いる砥粒は、遊離砥粒方式で容易に破砕される程度の脆性を有することが好ましい。
(脆性条件)加工圧力150g/cm2の条件で、平均砥粒径40μmに調整された砥粒を用いて、SiCウェハの表面を遊離砥粒方式で両面同時に梨地加工したとき、加工時間20分経過後に平均砥粒径が20μm以下となる。
修正モース硬度とは、タルクを1、ダイヤモンドを15としたときの、物質の硬さの尺度を示す値である。すなわち、本工程においては、ダイヤモンドの硬度未満の砥粒が用いられる。具体的な砥粒の材料としては、炭化ホウ素(B4C)、炭化ケイ素(SiC)、アルミナ(Al2O3),等を例示することができる。このほかにも、修正モース硬度15未満の硬度を有する砥粒であれば当然に採用することができる。
梨地加工工程S14における遊離砥粒加工における加工圧力は、100〜300g/cm2であり、より好ましくは150〜200g/cm2である。
また、本加工における定盤の回転数は、5〜20rpmであり、より好ましくは10〜15rpmである。
さらに、本加工における加工時間は、5〜30分であり、より好ましくは5〜15分である。
また、梨地加工工程S14の好ましい形態として遊離砥粒加工について説明したが、固定砥粒加工を採用することも可能である。加工条件としては、平均砥粒径3〜30μmのダイヤモンド砥粒を用いて、砥石回転数1000〜1500rpm、切込みピッチ1〜3μm、前後送り150〜250m/分、左右送り15〜25m/分、加工速度50〜150μm/時、という条件を例示できる。
なお、加工装置としては、従来の固定砥粒加工にて使用される汎用型の加工装置を採用することができる。
また、従来行われていた平坦化工程S142(図14参照)を梨地加工工程S14として採用することも可能である。
スライス工程S13を経た後に特に主面21については表面加工を行わなくてもよい。また、スライス工程S13を経た後に特に平坦化はせず、そのまま後行のエッチング工程S17に供してもよい。
本発明の好ましい実施の形態では、主面21について、スライス工程S13の後に平坦化工程を実施する。平坦化工程における加工方法としては、遊離砥粒方式のほか、固定砥粒方式を採用することができる。平坦化工程における加工方法においては特に遊離砥粒方式を採用することが好ましい。
刻印形成工程S15は、SiCウェハ20の裏面22(又は主面21)に対して、レーザーを照射・集光し、SiCウェハ20表面を選択的に除去して刻印部25を形成する工程である。刻印形成工程S15の刻印形成手段としては、レーザー加工等を例示できる。刻印部25は、SiCウェハ20を識別するための情報(具体的には、文字、記号、バーコード等)を含む。
面取り工程S16は、SiCウェハ20の外周部23に対して、機械加工等により面取りを行う工程である。面取り工程S16の面取り手段としては、研削やテープ研磨等を例示できる。この面取りは、外周部23に所定の円弧を形成する丸み面取りであっても良いし、所定の角度で斜めに切り取る面取りであっても良い。
このように梨地加工工程S14を先に実施することによりウェハのうねりを除去することで、刻印形成工程S15での刻印部25形成や、面取り工程S16での面取り位置の決定を精度良く行うことができ、ウェハの均質性を高めることができる。
また、面取り工程S16の後に刻印形成工程S15を実施してもよい。この場合には、ウェハ径のバラツキを抑制することができ、刻印部25の形成位置を精度良く決定することができる。
エッチング工程S17は、Si蒸気圧下で加熱することでSiCウェハ20の少なくとも裏面22をエッチングする工程である。より具体的には、先行の工程でSiCウェハ20に導入された梨地面を、Si蒸気圧下で加熱しエッチングすることで、デバイス製造工程に好ましい状態(うねり、凹凸形状、粗さ等を含む)とする工程である。
エッチング量を上記範囲内とすることで、梨地加工工程S14にて生じたバリ等が除去されることにより、より好ましい梨地面を形成することができる。
具体的には、エッチング工程S17においてSiCウェハ20の片面につき、好ましくは3μm以上、より好ましくは6μm以上、さらに好ましくは9μm以上、さらに好ましくは10μm以上、さらに好ましくは12μm以上エッチングしてもよい。
エッチング量を上記範囲とすることにより、梨地面の算術平均粗さRa及び最大高さRzを好ましい範囲とすることができる
はじめに、図4を参照して、Si蒸気圧エッチングにて使用される装置構成例について説明する。次いでSi蒸気圧エッチングのエッチング機構とエッチング条件について説明する。
本工程においては、図4に示すように、SiCウェハ20が収容される坩堝40と、この坩堝40を加熱可能な高温真空炉50と、を備える装置を用いることが好ましい。
これにより、SiCウェハ20を強力かつ均等に加熱し、1000℃以上2300℃以下の温度まで昇温させることができる。なお、ヒータ57としては、例えば、抵抗加熱式のヒータ又は高周波誘導加熱式のヒータを用いることができる。
SiCウェハ20を坩堝40内に収容し、高純度のSi蒸気圧下で1500℃以上2200℃以下の温度範囲で高温真空炉50を用いて加熱を行う。この条件でSiCウェハ20が加熱されることで、表面がエッチングされる。このエッチングの概要を以下1)〜4)に示す。
2) TaxSiy→Si(v)II+Tax’Siy’
3) 2C(s)+Si(v)I+II→SiC2(v)
4) C(s)+2Si(v)I+II→Si2C(v)
2)の説明:タンタルシリサイド層(TaxSiy)からSi蒸気(Si(v)II)が供給される。
3)及び4)の説明:熱分解によってSi原子(Si(v)I)が脱離することで残存したC(C(s))は、Si蒸気(Si(v)I及びSi(v)II)と反応することで、Si2C又はSiC2等となって昇華する。
上記1)〜4)の反応が持続的に行われ、結果としてエッチングが進行する。
Si蒸気圧エッチングにおける加熱温度は、1500〜2200℃であり、より好ましくは1800〜2000℃である。
本加工における加工速度(エッチング速度)は、0.1〜10μm/minである。
本加工における本加熱室51の真空度は、10−5〜10Paであり、より好ましくは10−3〜1Paである。
本加工における不活性ガスはArであり、この不活性ガスを導入することによって真空度を調整する。
本加工における加工時間は特に制限はなく、所望のエッチング量に合わせた任意の時間を採用することができる。
鏡面加工工程S18としては、研磨パッドの機械的な作用とスラリーの化学的な作用を併用して研磨を行う化学機械研磨(CMP)加工を例示することができる。この化学機械研磨加工は、SiCウェハ20の主面21をデバイス製造工程に好ましい表面状態である鏡面に加工する工程である(図3の二点鎖線部分)。
なお、従来のSiCウェハの製造方法においては、主面21と裏面22に化学機械研磨(CMP)加工を施し、鏡面化することが行われていた(図15の二点鎖線部分)。
以下の方法で実施例1及び比較例1のSiCウェハを製造した。
(スライス工程)
平均砥粒径10μmのダイヤモンド砥粒を含むスラリーを用いて、単結晶SiCインゴットをスライスし、6インチ径のSiCウェハを得た。
このSiCウェハについて、平均砥粒径40μmのB4C砥粒を含むスラリーを用いた遊離砥粒方式で、加工圧力を150g/cm2、定盤回転数は15rpm、ヘッド回転数は5rpm、加工時間は20分、加工速度は約1.0μm/分、の条件で梨地加工を施した。
このとき、梨地加工工程の終了時におけるB4C砥粒の平均砥粒径は10μmであった。
平坦化工程後のSiCウェハに対し、エッチング量3μm(加工時間約3min、加工速度1μm/min)、エッチング量6μm(加工時間約6min、加工速度1μm/min)、エッチング量9μm(加工時間約9min、加工速度1μm/min)の条件でSi蒸気圧エッチングを施した。エッチング工程後のSiCウェハの厚みは、350μmであった。
(スライス工程)
実施例1と同じ条件でスライス工程を実施し6インチ径のSiCウェハを得た。
(平坦化工程)
このSiCウェハについて、平均砥粒径30μmのダイヤモンド砥粒を含む砥石(ビトリファイトボンド)を用いた固定砥粒方式で、以下の条件で平坦化を行った。
砥石回転数:1250rpm
切込みピッチ:2μm
前後送り:190m/分
左右送り:21m/分
加工速度:100um/時間
(エッチング工程)
実施例1と同じ条件でSi蒸気圧エッチングを施した。エッチング工程後のSiCウェハの厚みは、350μmであった。
<2−1>梨地の観察と評価
実施例1及び実施例2のSiCウェハの裏面を、白色干渉顕微鏡を用いて観察した。その結果を図5及び図6に示す。
図5は実施例1の白色干渉顕微鏡像(95μm×75μm)であり、図5(a)はエッチング工程前を、図5(b)はエッチング工程後(エッチング量3μm)をそれぞれ示している。
図6は実施例2の白色干渉顕微鏡像(95μm×75μm)であり、図6(a)はエッチング工程前を、図6(b)はエッチング工程後(エッチング量3μm)をそれぞれ示している。
この結果は、エッチング量を調整することにより、難加工材料であるSiCウェハの梨地面粗さを制御できるという顕著な効果を得られることを示している。
実施例1のSiCウェハの反射率及び外部透過率を、分光光度計(U-4000形分光光度計)を用いて測定した。図7に反射率を測定した結果を、図8に外部透過率を測定した結果をそれぞれ示す。なお、比較例として主面及び裏面が鏡面であるSiCウェハの反射率及び外部透過率を図7及び図8に示している。
このように、実施例1は主面と裏面とで大きく反射率が異なるため、主面・裏面の識別が容易となる。
特に、実施例1の結果では、全ての波長領域で25%以下の透過率が測定されている。そのため、裏面に梨地面が形成された実施例1は、可視光の透過を抑制することができ、光学式センサの検知率を向上させることができる。
エッチング工程の前後の実施例1及び実施例2のSiCウェハに存在する応力をSEM−EBSD法により観察した。その結果を図9及び図10に示す。実施例1及び実施例2のSiCウェハを劈開した断面を、走査型電子顕微鏡を用いて、以下の条件で測定を行った。
SEM装置:Zeiss製Merline
EBSD解析:TSLソリューションズ製OIM結晶方位解析装置
加速電圧:15kV
プローブ電流:15nA
ステップサイズ:200nm
基準点R深さ:20〜25μm
この図9(a)及び図10(a)に示すように、エッチング工程の前においては、実施例1及び実施例2共にSiCウェハ内に格子歪みが観察された。これは、梨地加工工程等により導入された格子歪みである。なお、いずれも圧縮応力が観測されている。
一方、図9(b)及び図10(b)に示すように、エッチング工程の後においては、表面下の結晶格子は、基準結晶格子に対する格子歪みが0.001%以下であり、実施例1及び実施例2のSiCウェハ内に格子歪みは観察されなかった。
この結果により、SiCウェハ20内に応力がほとんど生じておらず、加工変質層30の中でも除去が難しい歪み層を除去されていることがわかる。つまり、平坦化工程等により導入されたSiCウェハ内の応力をエッチング工程により除去できることを示している。
実施例1及び実施例2のSiCウェハについて、透過型電子顕微鏡(TEM)にて断面を観察した。その結果を図11及び図12に示す。
図11は実施例1の断面TEM像(50nm×50nm)であり、(a)はエッチング量3μmの(0001)面側を、(b)はエッチング量3μmの(000−1)面側を、(c)はエッチング量6μmの(0001)面側を、(d)はエッチング量6μmの(000−1)面側をそれぞれ示している。
図12は実施例2の断面TEM像(50nm×50nm)であり、(a)はエッチング量3μmの(0001)面側を、(b)はエッチング量3μmの(000−1)面側を、(c)はエッチング量6μmの(0001)面側を、(d)はエッチング量6μmの(000−1)面側をそれぞれ示している。
[評価方法]断面TEM像を数nmの加工変質層が確認できる倍率まで拡大し、表面側とバルク側のコントラストを比較し、コントラスト差がある場合には「加工変質層がある」と評価し、コントラスト差が無い場合には「加工変質層が無い」と評価する。
「加工変質層がある」場合には、断面TEM像に基づきその深さを計測した。
一方、実施例2のSiCウェハは、エッチング量3μm時に(0001)面側にて10nmの加工変質層が、(000−1)面側にて43nmの加工変質層が観察された。しかしながら、エッチング量6μm時には、加工変質層は観察されなかった。
20 SiCウェハ
30 加工変質層
40 坩堝
50 高温真空炉
Claims (12)
- 鏡面加工された主面と、
梨地加工された裏面と、を備えることを特徴とする、SiCウェハ。 - 前記裏面は、算術平均偏差Raが50〜300nmであることを特徴とする、請求項1に記載のSiCウェハ。
- 前記裏面は、最大高さRzが0.5〜5μmであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のSiCウェハ。
- 前記裏面には、加工変質層が実質的にないことを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のSiCウェハ。
- SiCウェハの少なくとも裏面に梨地加工を施した後、
Si蒸気圧下で加熱することで前記SiCウェハの少なくとも裏面をエッチングして得られることを特徴とする、SiCウェハ。 - SiCウェハの少なくとも裏面に梨地加工を施し、
Si蒸気圧下で加熱することで前記SiCウェハの少なくとも裏面をエッチングした後、
前記SiCウェハの主面を鏡面加工して得られることを特徴とする、SiCウェハ。 - 前記梨地加工は、炭化ホウ素砥粒及び/又は炭化ケイ素砥粒を用いた遊離砥粒加工であることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載のSiCウェハ。
- ウェハ厚みが1mm以下であることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載のSiCウェハ。
- SiCウェハの少なくとも裏面を梨地加工する梨地加工工程と、
前記梨地加工工程の後に、Si蒸気圧下で加熱することで前記SiCウェハの少なくとも裏面をエッチングするエッチング工程と、を含むことを特徴とする、SiCウェハの製造方法。 - 前記エッチング工程の後に、前記SiCウェハの主面を鏡面加工する鏡面加工工程をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載のSiCウェハの製造方法。
- 前記梨地加工工程は、炭化ホウ素砥粒及び/又は炭化ケイ素砥粒を用いた遊離砥粒加工であることを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載のSiCウェハの製造方法。
- 前記エッチング工程は、エッチング量を制御することで前記裏面の粗さを算術平均偏差Raが50〜300nmとなるように調整する粗さ調整工程を有していることを特徴とする、請求項9〜11の何れかに記載のSiCウェハの製造方法。
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