JP2011051861A - AlN単結晶の製造方法および種基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造コストを抑えて効率的にAlN結晶を製造することができるAlN単結晶の製造方法および種基板を提供する。
【解決手段】加工変質層の少なくとも一部が残る種基板1を準備する工程と、種基板1を結晶成長容器55内に設置する工程と、種基板1上に昇華法によりAlN単結晶58を成長させる工程とを含むAlN単結晶58の製造方法とその種基板1である。ここで、種基板1を準備する工程は、種基板1の表面を研削する工程および種基板1の表面を研磨する工程の少なくとも一方を含む。
【選択図】図6

Description

本発明は、AlN単結晶の製造方法および種基板に関する。
AlN単結晶は、6.2eVのエネルギバンドギャップ、約3.3WK-1cm-1の熱伝導率および高い電気抵抗を有しているため、光デバイスや電子デバイス等の半導体デバイスの基板にAlN単結晶を用いることが注目されている。
AlN単結晶は、たとえば、昇華法やHVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法等により、Si(シリコン)結晶基板またはSiC(炭化ケイ素)結晶基板等の種基板の表面上に成長させることにより得ることができる(たとえば、特許文献1参照)。
このような結晶成長に用いられる種基板は、一般的には、結晶インゴットからスライス等の機械加工を経て得られる。しかしながら、当該機械加工により種基板の表面には傷などの損傷が形成されることから、この傷などの損傷を有する層(以下、「加工変質層」という。)を種基板からすべて除去することが従来から様々な手法で行なわれている。
たとえば、特許文献2には、SiC結晶基板の表面をラッピングし、研磨した後に、エッチングプラズマに曝露することにより、加工変質層を除去する方法が記載されている。
また、特許文献3には、炭化タンタルで表面が覆われた収納容器の内部にSi供給源としてのシリコンペレットを配置し、収納容器の内部をシリコン飽和蒸気圧下の真空に保った状態で種基板を1800℃程度に加熱して種基板の表面を熱エッチングすることによって加工変質層を除去する方法が記載されている。
さらに、特許文献4には、SiC結晶基板の表面を水素によりエッチングした後に、さらに水素にシランを加えたガスによるエッチングを行なうことによって加工変質層を除去する方法が記載されている。
特開2007−214547号公報 特許第2771697号公報 特開2008−016691号公報 特開2005−277229号公報
しかしながら、特許文献2および特許文献3に記載されているように、プラズマエッチングや熱処理などによって種基板から加工変質層をすべて除去する処理を行なうと製造コストが高くなるという問題があった。また、特許文献2および特許文献3に記載されている方法に限らず、AlN単結晶を成長させるための種基板の製造工程において、加工変質層をすべて除去する工程を行なうと多大なコストがかかるという問題もあった。
特に、AlN単結晶の製造に用いられる種基板は、たとえばAlxInyGa(1-x-y)N単結晶(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、および0≦x+y≦1)またはSiC単結晶などの加工が難しいとされる材料であることが多いため、このような加工の難しい種基板の処理には多大なコストがかかっていた。なぜなら、AlN単結晶の製造に用いられる種基板に最適な加工変質層厚みや表面粗さの報告がなかったために、種基板を準備する工程において、可能な限り加工変質層の厚みを薄くし、表面粗さを小さくすることを目指していたためにコストがかかっていた。また、AlxInyGa(1-x-y)N単結晶の加工およびSiC単結晶の加工は、AlxInyGa(1-x-y)N多結晶の加工およびSiC多結晶の加工と比べてそれぞれ難しく、多結晶での知見も容易には適用できないためにさらにコストがかかっていた。
また、特許文献4に記載されているように、水素にシランを加えたガスによるエッチングにおいては、たとえば種基板がSiC単結晶からなる場合には、シランは種基板の表面のうち炭素面(C面)のエッチングを行なうことしかできず、シリコン面(Si面)のエッチングは不可能である。
したがって、特許文献4に記載の方法においては、半導体製造等のスループットの向上が阻害されるばかりでなく、SiC単結晶からなる種基板の向きを管理しなければならないため、種基板の取り扱いが煩雑であるという問題があった。
また、特許文献4に記載の方法のようにシランを用いた場合には、近年高まっている環境負荷低減のニーズに応えることが困難であるという問題があった。
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、製造コストを抑えて効率的にAlN単結晶を製造することができるAlN単結晶の製造方法および種基板を提供することにある。
本発明は、加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程と、当該種基板を結晶成長容器内に設置する工程と、当該種基板上に昇華法によりAlN単結晶を成長させる工程とを含むAlN単結晶の製造方法である。
また、本発明は、加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程と、種基板を結晶成長容器内に設置する工程と、種基板の温度が結晶成長容器内のAlN原料の温度と同一またはそれ以上の温度となるように昇温する工程と、種基板上に昇華法によりAlN単結晶を成長させる工程とを含むAlN単結晶の製造方法である。
ここで、本発明のAlN単結晶の製造方法において、種基板を準備する工程は、種基板の表面を研削する工程および種基板の表面を研磨する工程の少なくとも一方を含むことが好ましい。
また、本発明のAlN単結晶の製造方法においては、上記の種基板の表面を研削する工程および種基板の表面を研磨する工程の少なくとも一方が、砥粒の平均粒径を順次小さくしながら行なわれることが好ましい。
また、本発明のAlN単結晶の製造方法においては、加工変質層の厚さが2μm以上であることが好ましい。
また、本発明のAlN単結晶の製造方法においては、種基板の表面の表面粗さRaが1nm以上であることが好ましい。
また、本発明のAlN単結晶の製造方法においては、種基板は、サファイア、炭化ケイ素、シリコン、スピネル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム、窒化ホウ素、またはIII−V族化合物半導体のいずれかの基板であることが好ましい。
また、本発明のAlN単結晶の製造方法においては、種基板上にAlN単結晶を+c面方向、−c面方向、m面方向またはa面方向のいずれかの方向に成長させることが好ましい。ここで、+c面は{0001}面、−c面は{000−1}面、m面は{10−10}面およびa面は{11−20}面をそれぞれ表わす。
さらに、本発明は、昇華法によりAlN単結晶を成長させるための種基板であって、表面に加工変質層を備えており、加工変質層の厚さが2μm以上であって、表面の表面粗さRaが1nm以上である種基板である。
本発明によれば、製造コストを抑えて効率的にAlN単結晶を製造することができるAlN単結晶の製造方法および種基板を提供することができる。
本発明における種基板の表面を研削する工程の一例を図解する模式図である。 本発明における種基板の表面を研削する工程に用いられる砥石台金の一例の模式的な断面図である。 本発明における種基板の表面を研磨する工程の一例を図解する模式図である。 本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程後の種基板の一例の模式的な拡大断面図である。 本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を結晶成長容器内に設置する工程の一例を図解する模式図である。 本発明における種基板上に昇華法によりAlN単結晶を成長させる工程の一例を図解する模式図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
<種基板を準備する工程>
本発明においては、加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程が行なわれる。
ここで、加工変質層とは、種基板の原料となる結晶インゴットからスライス、研削または研磨等の機械加工を行なった際に生じる傷などの損傷を有する層のことをいう。加工変質層の存在は、たとえば透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって確認することができる。
また、種基板としては、AlN単結晶を成長させることができるものであれば特に限定されないが、たとえば、サファイア、SiC(炭化ケイ素)、Si(シリコン)、スピネル、ZnO(酸化亜鉛)、MgO(酸化マグネシウム)若しくはSiO2(酸化ケイ素)、またはGaAs(ヒ化ガリウム)、GaP(リン化ガリウム)、BN(窒化ホウ素)またはAlxInyGa(1-x-y)N(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、および0≦x+y≦1)などのIII−V族化合物半導体などからなる半導体結晶基板を用いることができる。なかでも、欠陥の少ない高品質のAlN単結晶を効率的に製造する観点からは、種基板としては、SiCまたはAlxInyGa(1-x-y)Nからなる半導体結晶基板を用いることが好ましい。
また、加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程は、たとえば、種基板の原料となる結晶インゴットからスライス等の機械加工によって種基板を切り出した後の種基板に対して、たとえば化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)、プラズマエッチング、化学的エッチング、熱処理などの実質的に加工変質層を除去する工程は何ら実施しないことにより行なうことができる。
また、加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程は、種基板の表面に加工変質層の少なくとも一部が残るのであれば、種基板の表面を研削する工程および種基板の表面を研磨する工程の少なくとも一方を含んでいてもよい。
図1に、本発明における種基板の表面を研削する工程の一例を図解する模式図を示す。ここで、種基板の表面を研削する工程は、たとえば以下のようにして行なうことができる。
まず、加工変質層1aを表面に有する種基板1を結晶ホルダ11上に固定するとともに、図2の模式的断面図に示すように砥粒14を備えた砥石12が砥石台金13に装着されたものを準備する。
次に、種基板1を固定した結晶ホルダ11をその回転軸11cを中心にして所定の方向に回転させるとともに、砥石12を装着した砥石台金13をその回転軸13cを中心にして結晶ホルダ11の回転方向とは逆方向に回転させる。
そして、結晶ホルダ11に固定されている種基板1の表面に砥石台金13を回転させながら送り出す。これにより、砥石12の砥粒14によって種基板1の表面の一部が削り取られながら平滑化されて、種基板1の表面が研削される。
図3に、本発明における種基板の表面を研磨する工程の一例を図解する模式図を示す。ここで、種基板の表面を研磨する工程は、たとえば以下のようにして行なうことができる。
まず、定盤35を回転軸35cを中心にして所定の方向に回転させながら、砥粒36を分散したスラリーを定盤35上に供給する。
次に、加工変質層1aを有する種基板1が装着された結晶ホルダ31上に重り34を載せて、結晶ホルダ31を回転軸31cを中心にして定盤35と同一の方向に回転させながら、種基板1を定盤35に押し当てる。これにより、定盤35上のスラリー中の砥粒36によって種基板1の表面が削り取られながら平滑化されて、種基板1の表面が研磨される。
なお、本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程が種基板の表面を研削する工程および種基板の表面を研磨する工程の少なくとも一方を含む場合には、たとえば上記に例示されるような種基板の表面を研削する工程のみを行なってもよく、たとえば上記に例示されるような種基板の表面を研磨する工程のみを行なってもよく、たとえば上記に例示されるような種基板の表面を研削する工程および種基板の表面を研磨する工程の双方を行なってもよい。
また、本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程が種基板の表面を研削する工程を含む場合には、種基板の表面を研削する工程を1回だけでなく、複数回行なうこともできる。
また、本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程において、種基板の表面を研削する工程が複数回行なわれる場合には、種基板の表面の研削に用いられる砥粒14の番手を順次大きくしながら行なわれることが好ましい。これは、砥粒14の平均粒径を順次小さくすることに対応する。一般に、加工レート、表面粗さおよび加工変質層の厚みは、砥粒14の平均粒径を小さくするにつれて小さくなる傾向がある。砥粒14の平均粒径を順次小さくすることによって、短時間で効率的に種基板1の厚みを薄くし、かつ所望の厚みの範囲に加工することができる。また、種基板1の表面を効率良く平滑化することができる傾向がある。また、加工変質層1aの厚みを制御しやすくなる傾向がある。
なお、本発明において、砥粒の粒径の大きさは、JIS R 6111:2005、JIS R 6001:1998、JIS B 4130:1998などに規定される粒度により判断することができる。たとえば、研削工程における砥粒の粒径の大きさは砥粒の番手で判断することができ、研磨工程における砥粒の粒径の大きさは粒度で判断することができる。
また、本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程が種基板の表面を研磨する工程を含む場合には、種基板の表面を研磨する工程を1回だけでなく、複数回行なうこともできる。
また、本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程において、種基板の表面を研磨する工程が複数回行なわれる場合には、種基板の表面の研磨に用いられる砥粒36の平均粒径を順次小さくしながら行なわれることが好ましい。一般に、加工レート、表面粗さおよび加工変質層の厚みは、砥粒36の平均粒径を小さくするにつれて小さくなる傾向がある。砥粒36の平均粒径を順次小さくすることによって、短時間で効率的に種基板1の厚みを薄くし、かつ所望の範囲に加工することができる。また、種基板1の表面を効率良く平滑化することができる傾向がある。また、加工変質層1aの厚みを制御しやすくなる傾向がある。
また、本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程の最終の工程に種基板の表面を研磨する工程が適用される場合には、種基板の表面を研磨する工程で用いられる砥粒36の平均粒径は2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。最終の工程として種基板の表面を研磨する工程が適用される場合に、その工程で用いられる砥粒36の平均粒径を2μm以上、3μm以上、特に5μm以上とするにつれて、AlN単結晶を成長する種基板1に必要な粗さと加工変質層1aの厚みをより効率良く得ることができる。
また、本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程の最終の工程に種基板の表面を研磨する工程が適用される場合には、種基板の表面を研磨する工程で用いられる砥粒の平均粒径は10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。最終の工程として種基板の表面を研磨する工程が適用される場合に、その工程で用いられる砥粒の平均粒径を10μm以下、8μm以下とするにつれて、種基板1の表面に加工変質層1aを加工変質層1aの厚みのばらつきを制御した上で残しながら、種基板1の表面をより平滑にすることができる傾向が大きくなる。
なお、上記において、砥粒14および砥粒36としてはそれぞれ、たとえば、ダイヤモンド、SiC(炭化ケイ素)、Si34(窒化ケイ素)、BN(窒化ホウ素)、Al23(酸化アルミニウム)、Cr23(酸化クロム)およびZrO2(酸化ジルコニウム)からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものを用いることができる。
図4に、本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程後の種基板の一例の模式的な拡大断面図を示す。ここで、上記工程後の種基板1の表面には加工変質層1aが残されており、加工変質層1aの厚さTは2μm以上であることが好ましい。ここで、加工変質層1aの厚さTが2μm以上である場合には、加工変質層1aを完全に除去した種基板と比べて、種基板を得るための加工コストを大きく低減することができ、さらに昇華法でAlN単結晶を成長した場合には良好な品質となる傾向にある。
また、上記工程後の種基板1の表面の加工変質層1aの厚さTは10μm以下であることが好ましい。ここで、加工変質層1aの厚さTが10μm以下である場合には、加工変質層1aの厚みが10μmよりも厚い種基板1と比べて昇華法でAlN単結晶を成長した場合の面内分布が改善する傾向にある。
本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程後の種基板の表面の表面粗さRaは1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程後の種基板の表面の表面粗さRaを1nm以上、5nm以上、10nm以上とするにつれて、より平滑な表面を有する種基板を得る場合と比べて、種基板を得るための加工コストを大きく低減することができる傾向が大きくなる。
また、本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程後の種基板の表面の表面粗さRaは600nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程後の種基板の表面の表面粗さRaを600nm以下、100nm以下、10nm以下とするにつれて、表面粗さRaが600nmよりも大きい種基板1と比べて、昇華法でAlN単結晶を成長した場合の面内分布が改善する傾向が大きくなる。
なお、本発明における表面粗さRaは、JIS B 0601:1994に規定されるRaを意味する。
<種基板を結晶成長容器内に設置する工程>
本発明においては、加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程の後には、当該種基板を準備する工程で得られた加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を結晶成長容器内に設置する工程が行なわれる。
図5に、本発明における加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を結晶成長容器内に設置する工程の一例を図解する模式図を示す。
ここで、図5に示される結晶成長装置は、グラファイト製の坩堝51と、坩堝51を取り囲むようにして設置された加熱体57と、加熱体57を取り囲むようにして設置された結晶成長容器55と、結晶成長容器55を取り巻くようにして設置された高周波加熱コイル56とを備えている。
そして、坩堝51の下部にはAlN粉末等のAlN原料52が収容され、加工変質層1aが残る種基板1はAlN原料52の方に一方の表面が向けられるようにして坩堝51の上部に設置される。
さらに、種基板1の表面のうちAlN原料52側とは反対側の表面(裏面)には、種基板1の裏面からの昇華を防止する目的で、グラファイト製の種基板保護材54が密着されるようにして設置される。
種基板1は、種基板1のAlN原料52側に向けられた表面が、+c面、−c面、m面またはa面のいずれかであることが好ましい。この場合には、欠陥の少ない高品質のAlN単結晶を効率的に製造することができる傾向にある。
ここで、+c面は種基板1を構成する六方晶の{0001}面であり、−c面は種基板1を構成する六方晶の{000−1}面であり、m面は種基板1を構成する六方晶の{10−10}面であり、a面は種基板1を構成する六方晶の{11−20}面である。
なお、結晶面および方向を表わす場合に、本来であれば所要の数字の上にバーを付した表現をするべきであるが、表現手段に制約があるため、本明細書においては、所要の数字の上にバーを付す表現の代わりに、所要の数字の前に「−」を付して表現している。
<昇華法によりAlN単結晶を成長させる工程>
本発明においては、加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を結晶成長容器内に設置する工程の後には、種基板の加工変質層上に昇華法によりAlN単結晶を成長させる工程が行なわれる。
図6に、本発明における種基板の加工変質層上に昇華法によりAlN単結晶を成長させる工程の一例を図解する模式図を示す。ここで、AlN単結晶の成長はたとえば以下のようにして行なうことができる。
まず、上記のように結晶成長容器内に種基板1およびAlN原料52を設置した後に、結晶成長容器55内に窒素ガスを流しながら、高周波加熱コイル56を用いて加熱体57を加熱することにより、坩堝51内の温度を上昇させる。
ここで、坩堝51内の種基板1側の温度は、たとえば、AlN原料52側の温度よりも低くなるように保持される。坩堝51内の種基板1側の温度は、たとえば1650℃〜2050℃とすることができ、AlN原料52側の温度は、たとえば1850℃〜2350℃とすることができる。なお、坩堝51内の温度を高くすることによってAlN原料52の昇華が促進される傾向にあるが、坩堝51内の温度が高すぎると、AlN原料52や種基板1の過度の昇華が起こり、AlN原料52や種基板1が消失するおそれがある。また、坩堝51内の温度分布については次のように考えられる。通常の昇華法による種基板上への成長の場合には、坩堝内の原料側の温度は種基板側の温度よりも高くされる。逆に、坩堝内の種基板側の温度を原料側の温度と同一またはそれ以上に高くすることは、種基板の表面からの昇華を促進する場合に有効であると考えられる。
これにより、AlN原料52からAlNが昇華し、坩堝51の上部に設置された種基板1上にAlN単結晶58が堆積して、AlN単結晶58を成長させることができる。種基板1を結晶成長容器55内に設置した際に種基板1の表面に存在した加工変質層1aは、AlN単結晶58の成長が開始されるまでの昇温段階で実質的に除去されていると推測される。したがって、坩堝51内の種基板1側の温度をAlN原料52側の温度と同一またはそれ以上にして種基板1の表面からの加工変質層1aの昇華を促進した後に、坩堝51内のAlN原料52側の温度を種基板1側の温度よりも高くしてAlN単結晶58の成長を行なうことが好ましい。
ここで、種基板1のAlN原料52側に向けられた表面が、+c面、−c面、m面またはa面のいずれかである場合には、欠陥の少ない高品質のAlN単結晶58が+c面方向(<0001>方向)、−c面方向(<000−1>方向)、m面方向(<1−100>方向)またはa面方向(<11−20>方向)のいずれか方向に成長するため、AlN単結晶58を効率的に製造することができる。
<作用>
従来から、昇華法によりAlN単結晶を成長させる場合には、昇温と種基板上への原料供給とを独立に制御することができないため、結晶成長容器内にセットしたAlN原料の温度をある程度上げるとAlN原料が勝手に昇華し始め、種基板上へと自然に成長が始まってしまうという問題があった。これは、HVPE法、MOCVD法およびプラズマCVD法などの多くの結晶成長法では昇温と種基板上への原料供給とを独立に制御することができるのとは対照的である。
したがって、昇華法によりAlN単結晶を成長させる場合には、種基板上にAlN単結晶の成長が始まる直前に種基板の表面がどのような状態になっていたのかを知ることが難しかった。そのため、どのような表面処理をした種基板を結晶成長容器にセットすることが好ましいのかがわからなかった。
仮に、結晶成長が起こらないように結晶成長容器にAlN原料を設置しないで昇温を行なったとしても、実際にAlN原料を設置してAlN単結晶を成長させる場合とは結晶成長容器の内部の雰囲気が異なってくる。また、AlN原料からの輻射熱の効果があるため、結晶成長容器内や種基板の温度も実際にAlN単結晶を成長させる場合とは異なってくる。
そのため、AlN単結晶の成長時の種基板の表面状態を知るために、AlN原料を入れない状態で、結晶成長時と同一の温度、圧力およびその他の条件を設定した場合でも、実際に成長する直前の種基板の表面の状態を知ることはできない。
また、AlN単結晶の成長温度は非常に高温であるため、種基板の表面の状態を知るために用いられる部材の融点および耐熱性などの制約が大きい。そのため、結晶成長容器内の実際の成長の様子を知るための手段がかなり制約されてしまう。
以上のような状況において、本発明者は、加工変質層をすべて取り除いた種基板を用いるという従来の発想を覆し、加工変質層の少なくとも一部が残っている種基板を用いた場合でも欠陥の少ない高品質のAlN単結晶を成長させることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、結晶成長容器の温度を室温から昇温していくときに結晶成長容器内の種基板で起こると予想される現象は、種基板の温度が高温になったことで生じる、種基板の表面にある原子のマイグレーションおよび種基板の表面からの昇華が考えられる。加工によって損傷した加工変質層においては、特に昇華が起こりやすいと予想され、またマイグレーションが起こることで種基板の表面の表面粗さも改善することが期待される。以上により、実際に種基板上に結晶成長が始まる際には結晶成長容器内に種基板を設置した際と比べて種基板の表面は結晶成長にとって好ましい状態になっていると予想される。
その一方で、結晶成長容器内に設置されたAlN原料から昇華した原料は種基板の表面に堆積してAlN単結晶が成長する。実際の挙動には、結晶成長容器内の温度分布(AlN原料温度、種基板温度および温度勾配)および結晶成長容器内部の圧力(分圧)などが複雑に関係していると考えられる。
本発明者は、上述したように、AlN単結晶の成長時の種基板の表面状態を知ることが当業者には困難であるという状況において、結晶成長容器の温度を室温から昇温していくときに起こる種基板の表面にある原子のマイグレーションおよび種基板の表面からの昇華を積極的に利用することで、加工変質層の少なくとも一部が残っている種基板を用いた場合でも昇華法によるAlN単結晶の成長が可能ではないかと考えた。そして、実際に、加工変質層の少なくとも一部が残っている種基板を用いた場合でも欠陥の少ない高品質のAlN単結晶を成長させることができることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
その結果、本発明においては、種基板の表面の加工変質層をすべて除去する必要がなくなるため、従来の方法に比べて、製造コストを抑えて効率的にAlN単結晶を製造することができるのである。
なお、上記において、上記の各工程の間には、たとえば種基板の外周を加工する工程や種基板のオフ角度を測定および/または修正する工程などの上記の各工程以外の他の工程が含まれていてもよいことは言うまでもない。
以下においては、好ましい種基板の例であるSiC基板およびAlN基板をそれぞれ用いてAlN単結晶を成長させる場合を例に挙げて実施例を説明するが本発明は本実施例に限定されるものではない。本発明はSiCおよびAlN以外の他の材料を種基板として用いる場合にも適用することができる。
<実施例1>
改良レーリー法によって得られた4H型SiC単結晶インゴットを用意し、この4H型SiC単結晶インゴットをワイヤソーでスライスすることによって、(0001)Si面が<11−20>方向に3.5°傾いたオフ角を有する直径2インチの種基板を得た(表1参照)。ここで、上記のオフ角の大きさと方向はX線回折測定によって調べた。
上記のようにして種基板を2枚作製し、これらの2枚の種基板をそれぞれワックスを用いてセラミック製の結晶ホルダに貼り付けた。そして、それぞれの種基板の(0001)Si面をダイヤモンド砥粒を備えた240番手の砥石で研削し(1次機械研削)、その後、それぞれの種基板の(0001)Si面をダイヤモンド砥粒を備えた1500番手の砥石で研削した(2次機械研削)。
次に、上記の2次機械研削後のそれぞれの種基板の(0001)Si面を平均粒径6μmのダイヤモンド砥粒を用いて研磨し(1次機械研磨)、続いて、種基板の(0001)Si面を平均粒径3μmのダイヤモンド砥粒を用いて研磨し(2次機械研磨)、最後に、種基板の(0001)Si面を平均粒径2μmのダイヤモンド砥粒を用いて研磨した(3次機械研磨)。以上により、実施例1の種基板を作製した。
上記の実施例1の種基板2枚のうちの1枚を使って、TEMによる加工変質層の厚み、AFM(Atomic Force Microscope)による10μm角の領域での表面粗さRaおよびダイヤルゲージによる種基板の厚みを評価した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1の種基板の加工変質層の厚みは2μmであって、表面粗さRaは2.5nmであって、種基板の厚みは410μmであった。
次に、上記の実施例1の種基板の残りの1枚を種基板として使い、昇華法によって、実施例1のAlN単結晶を成長させた。
ここで、実施例1のAlN単結晶は、図5に示す構成の結晶成長装置を用い、種基板の温度を2100℃、AlN原料の温度を2050℃として、実施例1の種基板の表面の加工変質層の昇華を促進した後に、種基板の温度を2000℃、AlN原料の温度を2200℃にしてAlN原料を昇華させることにより成長させた。
その結果、実施例1のAlN単結晶は、直径2インチ、厚み約10mmであって、実施例1のAlN単結晶は完全な平坦面成長ではないが、ほぼ<0001>の方向に成長していることがX線回折測定から確認された(表1参照)。
また、実施例1におけるAlN単結晶の成長のコストダウンの程度を以下の基準により評価した(表1参照)。なお、表1および表2においては、C、BおよびAの順にコストダウンの度合いが大きくなることを示している。なお、以下のA〜Cの基準は、実施例1〜9については比較例1に対して削減できた工程数に基づいており、実施例10〜18については比較例2に対して省略できた工程数に基づいている。
A…加工変質層を除去する工程と、合計4〜5の研削工程および研磨工程とを削減。
B…加工変質層を除去する工程と、合計2〜3の研削工程および研磨工程とを削減。
C…加工変質層を除去する工程と、合計0〜1の研削工程および研磨工程とを削減。
表1に示すように、実施例1においては、従来のようなSiC基板の加工および表面処理によって行なわれていた加工変質層をすべて除去する工程を行なうことなく製造された種基板を用いて、昇華法によってAlN単結晶を成長することができるため、AlN単結晶を低コストで製造することができた。ただし、コストダウンの度合いとしてはC評価であった。
また、実施例1のAlN単結晶の結晶品質を以下の基準により評価した(表1参照)。なお、表1および表2においては、C、BおよびAの順に結晶品質が優れていることを示している。
A…AlN単結晶の面内の任意の異なる5箇所で測定したX線半値幅が、5箇所全てにおいて100arcsec以下である。
B…AlN単結晶の面内の任意の異なる5箇所で測定したX線半値幅が、3〜4箇所において100arcsec以下である。
C…AlN単結晶の面内の任意の異なる5箇所で測定したX線半値幅が、2箇所以下において100arcsec以下である。
なお、実施例1のAlN単結晶の結晶品質評価のため、1次機械研削、2次機械研削をそれぞれダイヤモンド砥粒を備えた240番手、1500番手の砥石で行なった後、1次機械研磨、2次機械研磨、3次機械研磨をそれぞれ平均粒径6μm、3μm、2μmのダイヤモンド砥粒で行なった。得られた基板表面内で十字状に5点を選定して、X線回折法により(0002)ロッキングカーブ測定を行ない、X線半値幅を算出することにより評価した。その結果、表1に示すように、実施例1のAlN単結晶の結晶品質はA評価であった。
<実施例2〜9>
表1および表2に示す種基板を用い、表1および表2に示す種基板準備工程を行なったこと以外は実施例1と同様にして昇華法によりAlN単結晶を成長させた。ここで、実施例2〜9においても、実施例1と同様にして種基板準備工程後の種基板の加工変質層の厚み、表面粗さRaおよび種基板の厚みを評価するとともに(表1および表2参照)、AlN単結晶の成長方向、コストダウンおよび結晶品質についても評価した(表1および表2参照)。なお、表1および表2における「−」は、その工程については実施していない若しくは測定していないことを示している。
実施例2および3においては、種基板準備工程の工程数を実施例1よりも減らして種基板を作製することができるため、AlN単結晶をより低コストで成長させることができるとともに、成長したAlN単結晶の結晶品質もA評価であった。
実施例4〜6においては、種基板準備工程の機械研削および機械研磨工程の少なくとも一方をすべて省いて種基板を作製することができるため、AlN単結晶をさらに低コストで成長させることができた。また、実施例4〜6のAlN単結晶の結晶品質はそれぞれB評価、A評価およびC評価であった。実施例4〜6のAlN単結晶の結晶品質の相違は、使用した種基板に対して行なわれた種基板準備工程の相違が原因と考えられる。
実施例7〜9においては、(0001)Si面以外の結晶面の種基板を用いた場合でも加工変質層をすべて除去する工程を行なう必要がないことから、AlN単結晶を低コストで成長させることができるとともに、成長したAlN単結晶の結晶品質もA評価という優れたものとすることができた。
<比較例1>
表2に示すように、種基板準備工程後にRIE(Reactive Ion Etching)を行なって、種基板の表面の加工変質層をすべて除去したこと以外は実施例1と同様にして昇華法によりAlN単結晶を成長させた。ここで、比較例1においても、実施例1と同様にして種基板準備工程後の種基板の加工変質層の厚み、表面粗さRaおよび種基板の厚みを評価するとともに(表2参照)、AlN単結晶の成長方向、コストダウンおよび結晶品質についても評価した(表2参照)。
比較例1においては、種基板準備工程後にRIEを行なって、種基板の表面の加工変質層をすべて除去する工程が行なわれているため、実施例1〜9と比べてAlN単結晶の製造コストのコストダウンを図ることができなかった。また、表2に示すように、比較例1のAlN単結晶の結晶品質はC評価であった。
以上の結果により、実施例1〜9においては、比較例1と比べて、AlN単結晶の製造工程を削減して製造コストを抑えることができ、かつ結晶品質にも優れたAlN単結晶が得られる傾向にあった。
実施例1〜9において、AlN単結晶の結晶品質を優れたものとすることができる理由としては、以下の理由が考えられる。まず、実施例1〜9においては、加工変質層がすべて除去されていないため、加工変質層をすべて除去する際に起因して発生する種基板の表面の改質および汚染が抑えられることである。次に、実施例1〜9においては、加工変質層が残されていることによって、結晶成長容器内での種基板の表面での昇華が起こりやすく、加工変質層の昇華と同時に種基板の最表面の汚染物質、粒子および酸化層なども除去されて、結晶成長に適した種基板の表面が得られることである。
Figure 2011051861
Figure 2011051861
<実施例10>
実施例1において成長させたAlN単結晶からなるAlN単結晶インゴットを用意し、このAlN単結晶インゴットをワイヤソーでスライスすることによって、(0001)Al面が<11−20>方向に3.5°傾いたオフ角を有する直径2インチの種基板を得た(表3参照)。ここで、上記のオフ角の大きさと方向はX線回折測定によって調べた。
上記のようにして種基板を2枚作製し、これらの2枚の種基板をそれぞれワックスを用いてセラミック製の結晶ホルダに貼り付けた。そして、それぞれの種基板の(0001)Al面をダイヤモンド砥粒を備えた240番手の砥石で研削し(1次機械研削)、その後、それぞれの種基板の(0001)Al面をダイヤモンド砥粒を備えた1500番手の砥石で研削した(2次機械研削)。
次に、上記の第2次機械研削後のそれぞれの種基板の(0001)Al面を平均粒径6μmのダイヤモンド砥粒を用いて研磨し(1次機械研磨)、続いて、種基板の(0001)Al面を平均粒径3μmのダイヤモンド砥粒を用いて研磨し(2次機械研磨)、最後に、種基板の(0001)Al面を平均粒径2μmのダイヤモンド砥粒を用いて研磨した(3次機械研磨)。以上により、実施例10の種基板を作製した。
上記の実施例10の種基板2枚のうちの1枚を使って、TEMによる加工変質層の厚み、AFMによる10μm角の領域での表面粗さRaおよびダイヤルゲージによる種基板の厚みを評価した。その結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例10の種基板の加工変質層の厚みは3μmであって、表面粗さRaは2.1nmであって、種基板の厚みは400μmであった。
次に、上記の実施例10の種基板の残りの1枚を種基板として使い、昇華法によって、実施例10のAlN単結晶を成長させた。
ここで、実施例10のAlN単結晶は、図5に示す構成の結晶成長装置を用い、種基板の温度を2150℃、AlN原料の温度を2100℃として、実施例10の種基板の表面の加工変質層の昇華を促進した後に、種基板の温度を2050℃、AlN原料の温度を2250℃にしてAlN原料を昇華させることにより成長させた。
その結果、実施例10のAlN単結晶は、直径2インチ、厚み約10mmであって、実施例10のAlN単結晶は完全な平坦面成長ではないが、ほぼ<0001>の方向に成長していることがX線回折測定から確認された(表3参照)。
また、実施例10におけるAlN単結晶の成長のコストダウンの程度を上記と同様の基準により評価した(表3参照)。なお、表3においても、C、BおよびAの順にコストダウンの度合いが大きくなることを示している。
表3に示すように、実施例10においては、従来のようなAlN基板の加工および表面処理によって行なわれていた加工変質層をすべて除去する工程を行なうことなく製造された種基板を用いて、昇華法によってAlN単結晶を成長することができるため、AlN単結晶を低コストで製造することができた。ただし、コストダウンの度合いとしてはC評価であった。
また、実施例10のAlN単結晶の結晶品質を上記と同様の基準により評価した(表3参照)。なお、表3においても、C、BおよびAの順に結晶品質が優れていることを示している。
なお、実施例10のAlN単結晶の結晶品質評価のため、1次機械研削、2次機械研削をそれぞれダイヤモンド砥粒を備えた240番手、1500番手の砥石で行なった後、1次機械研磨、2次機械研磨、3次機械研磨をそれぞれ平均粒径6μm、3μm、2μmのダイヤモンド砥粒で行なった。得られた基板表面内で十字状に5点を選定して、X線回折法により(0002)ロッキングカーブ測定を行ない、X線半値幅を算出することにより評価した。その結果、表3に示すように、実施例10のAlN単結晶の結晶品質はA評価であった。
<実施例11〜18>
表3および表4に示す種基板を用い、表3および表4に示す種基板準備工程を行なったこと以外は実施例10と同様にして昇華法によりAlN単結晶を成長させた。ここで、実施例11〜18においても、実施例10と同様にして種基板準備工程後の種基板の加工変質層の厚み、表面粗さRaおよび種基板の厚みを評価するとともに(表3および表4参照)、AlN単結晶の成長方向、コストダウンおよび結晶品質についても評価した(表3および表4参照)。なお、表3および表4における「−」は、その工程については実施していないことを示している。
実施例11および12においては、種基板準備工程の工程数を実施例10よりも減らして種基板を作製することができるため、AlN単結晶をより低コストで成長させることができるとともに、成長したAlN単結晶の結晶品質もA評価であった。
実施例13〜15においては、種基板準備工程の機械研削および機械研磨工程の少なくとも一方をすべて省いて種基板を作製することができるため、AlN単結晶をさらに低コストで成長させることができた。また、実施例13〜15のAlN単結晶の結晶品質はそれぞれB評価、A評価およびC評価であった。
実施例16〜18においては、(0001)Al面以外の結晶面の種基板を用いた場合でも加工変質層をすべて除去する工程を行なう必要がないことから、AlN単結晶を低コストで成長させることができるとともに、成長したAlN単結晶の結晶品質もA評価という優れたものとすることができた。
<比較例2>
表4に示すように、種基板準備工程後にCMPを行なって、種基板の表面の加工変質層をすべて除去したこと以外は実施例10と同様にして昇華法によりAlN単結晶を成長させた。ここで、比較例2においても、実施例10と同様にして種基板準備工程後の種基板の加工変質層の厚み、表面粗さRaおよび種基板の厚みを評価するとともに(表4参照)、AlN単結晶の成長方向、コストダウンおよび結晶品質についても評価した(表4参照)。
比較例2においては、種基板準備工程後にCMPを行なって、種基板の表面の加工変質層をすべて除去する工程が行なわれているため、実施例10〜18と比べてAlN単結晶の製造コストのコストダウンを図ることができなかった。また、表4に示すように、比較例2のAlN単結晶の結晶品質はC評価であった。
以上の結果により、実施例10〜18においては、比較例2と比べて、AlN単結晶の製造工程を削減して製造コストを抑えることができ、かつ結晶品質にも優れたものが得られる傾向にあった。
実施例10〜18において、AlN単結晶の結晶品質を優れたものとすることができる理由としては、以下のものが考えられる。まず、実施例10〜18においては、加工変質層がすべて除去されていないため、加工変質層をすべて除去する工程に起因して発生する種基板の表面の改質および汚染が抑えられることである。次に、実施例10〜18においては、加工変質層が残されていることによって、結晶成長容器内での種基板の表面での昇華が起こりやすく、加工変質層の昇華と同時に種基板の最表面の汚染物質、粒子および酸化層なども除去されて、結晶成長に適した種基板の表面が得られることである。
Figure 2011051861
Figure 2011051861
本発明は、種基板の面方位、オフ角(オフ方位)、サイズおよび厚みによらず実施することが可能である。種基板の面方位、サイズおよびオフ角(オフ方位)については入手できる種基板による制約があり、厚みについてはハンドリングの制約があり、その他に設備部材の寸法制約があるが、原理的には実施可能である。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
本発明により得られたAlN単結晶は、たとえば、発光素子(発光ダイオード、レーザダイオードなど)、電子デバイス(整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタまたはHEMTなど)、半導体センサ(温度センサ、圧力センサ、放射センサまたは可視−紫外光検出器など)、SAWデバイス(Surface Acoustic Wave Device)、加速度センサ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)部品、圧電振動子、共振器または圧電アクチュエータなどの半導体デバイスに利用することが可能である。
1 種基板、1a 加工変質層、11,31 結晶ホルダ、11c,13c,31c,35c 回転軸、12 砥石、13 砥石台金、14 砥粒、34 重り、35 定盤、36 砥粒、51 坩堝、52 AlN原料、54 種基板保護材、55 結晶成長容器、56 高周波加熱コイル、57 加熱体、58 AlN単結晶。

Claims (9)

  1. 加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程と、
    前記種基板を結晶成長容器内に設置する工程と、
    前記種基板上に昇華法によりAlN単結晶を成長させる工程とを含む、AlN単結晶の製造方法。
  2. 加工変質層の少なくとも一部が残る種基板を準備する工程と、
    前記種基板を結晶成長容器内に設置する工程と、
    前記種基板の温度が結晶成長容器内のAlN原料の温度と同一またはそれ以上の温度となるように昇温する工程と、
    前記種基板上に昇華法によりAlN単結晶を成長させる工程とを含む、AlN単結晶の製造方法。
  3. 前記種基板を準備する工程は、前記種基板の表面を研削する工程および前記種基板の表面を研磨する工程の少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のAlN単結晶の製造方法。
  4. 前記種基板を準備する工程においては、前記種基板の表面を研削する工程および前記種基板の表面を研磨する工程の少なくとも一方が、砥粒の平均粒径を順次小さくしながら行なわれることを特徴とする、請求項3に記載のAlN単結晶の製造方法。
  5. 前記加工変質層の厚さが2μm以上であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のAlN単結晶の製造方法。
  6. 前記種基板の表面の表面粗さRaが1nm以上であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のAlN単結晶の製造方法。
  7. 前記種基板は、サファイア、炭化ケイ素、シリコン、スピネル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム、窒化ホウ素、またはIII−V族化合物半導体のいずれかの基板であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のAlN単結晶の製造方法。
  8. 前記種基板上に、前記AlN単結晶を+c面方向、−c面方向、m面方向またはa面方向のいずれかの方向に成長させることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のAlN単結晶の製造方法。
  9. 昇華法によりAlN単結晶を成長させるための種基板であって、
    表面に加工変質層を備えており、
    前記加工変質層の厚さが2μm以上であって、
    表面の表面粗さRaが1nm以上である、種基板。
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