以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、ワーク移動位置決め装置を用いたワーク加工装置を例示し、ワーク加工装置としてパンチプレス機を例示する。
まず、図1および図2に基づいて、パンチプレス機の構成の一例を説明する。なお、パンチプレス機の構成は、図1および図2に示す構成に限られるものではない。
本実施形態にかかるパンチプレス機10は、板状のワーク(被加工部材)Wを所定の加工位置(目標位置)Kまで移動させて、ワークWの所定の部位にパンチ加工を施すことが可能な装置で、本体フレーム11を備えている。本実施形態では、上下に離隔した上部フレーム11Uと下部フレーム11Lとを一体化させた本体フレーム11を例示している。
上部フレーム11Uには、略円板状の上部タレット13Uが上部回転軸12Uを介して上部フレーム11Uに回転可能に設けられている。上部回転軸12Uは、上部フレーム11Uの下部に下方に突出するように設けられている。そして、この上部回転軸12Uに上部タレット13Uが、水平に延在した状態で、上部回転軸12Uを軸として回転できるように設けられている。この上部タレット13Uの外周縁部には、複数のパンチPがそれぞれ周方向に離間した状態で設けられている。
そして、上部回転軸12Uを軸にして上部タレット13Uを回転させることで、複数のパンチPのうちの1つのパンチPが、図2に示す加工位置Kに位置決めされるようにしている。
一方、下部フレーム11Lには、略円板状の下部タレット13Lが下部回転軸12Lを介して下部フレーム11Lに回転可能に設けられている。下部回転軸12Lは、下部フレーム11Lの上部に上方に突出するように設けられている。そして、この下部回転軸12Lに下部タレット13Lが、水平に延在した状態で、下部回転軸12Lを軸として回転できるように設けられている。
なお、本実施形態では、下部回転軸12Lは、上部回転軸12Uとほぼ同軸となるように下部フレーム11Lに設けられている。そして、上部回転軸12Uに設けられた上部タレット13Uと下部回転軸12Lに設けられた下部タレット13Lとを、上下に離間した状態で対向させている。また、下部タレット13Lの外周縁部には、複数のダイDが複数のパンチPと対応するように設けられている。
そして、下部回転軸12Lを軸にして下部タレット13Lを回転させることで、複数のダイDのうちの1つのダイDが加工位置Kに位置決めされるようにしている。なお、加工位置Kに位置決めされたパンチPおよびダイDは、上下に離間した状態で対向しており、互いに対向するパンチPとダイDとの間にワークWが配置されるようになっている。
また、本実施形態では、加工位置Kに位置決めされたパンチPを打圧するストライカSが上部フレーム11Uに上下動可能に設けられている。そして、加工位置Kに位置決めされたパンチPとダイDとの間にワークWの所定位置(加工すべき位置)を配置させた状態で、ストライカSがパンチPを打圧することで、ワークWにパンチ加工が施されるようにしている。
このようなワークWの移動位置決めは、ワークWをXY平面上の所望の位置に移動させることが可能なワーク移動位置決め装置20により行われる。
本実施形態では、上部フレーム11Uに、ワーク移動位置決め装置20が備えるキャリッジベース21をY軸方向に移動させるためのY軸ボールネジ141が、軸方向をY軸方向に一致させた状態で回転可能に支持されている。そして、このY軸ボールネジ141にキャリッジベース21がY軸方向に沿って移動できるように支持されている。
具体的には、上部フレーム11Uに固定された軸受け142a,142bがY軸ボールネジ141の端部をそれぞれ回転可能に支持することで、Y軸ボールネジ141が上部フレーム11Uに回転可能に支持されている。
また、Y軸ボールネジ141の軸受け142b側の端部には、Y軸サーボモータ143が連結されており、このY軸サーボモータ143を駆動させることでY軸ボールネジ141を回転させている。このように、Y軸ボールネジ141は、軸受け142b側(Y軸サーボモータ143が連結される側)の端部が固定端141bとなっている。
一方、Y軸ボールネジ141の軸受け142a側の端部は、Y軸方向への移動(Y軸ボールネジ141の長さの変位)が許容された状態で軸受け142aに支持されている。すなわち、Y軸ボールネジ141は、軸受け142a側の端部が自由端141aとなっている。
このように、本実施形態では、Y軸ボールネジ141は、軸受け142a,142bによって、少なくとも一端が自由端141aとなるように支持されている。
また、キャリッジベース21にはY軸ボールネジ141に螺合するナット部材21aが一体に設けられている。そして、このナット部材21aをY軸ボールネジ141に螺合させた状態でY軸ボールネジ141を回転させることで、キャリッジベース21をY軸方向に沿って移動させている。
なお、Y軸サーボモータ143は、エンコーダ(位置検出部)143aを備えており、このエンコーダによってキャリッジベース21のY軸方向の位置が検出されるようにしている。
また、本体フレーム11における下部フレーム11L上には、板状のワークWを移動可能に支持するテーブルTが配置されている。本実施形態では、テーブルTはブラシテーブルとなっていて、ブラシTbが複数個所に植設されている。
そして、ワーク移動位置決め装置20を用いて、テーブルTに支持されるワークWを移動させている。
このワーク移動位置決め装置20は、上述したように、Y軸ボールネジ141にY軸方向に沿って移動可能に支持されたキャリッジベース21を備えている。キャリッジベース21は、図2に示すように、平面視でX軸方向に細長い形状をしており、このキャリッジベース21上にX軸ボールネジ(ボールネジ)24が、軸方向をX軸方向に一致させた状態で配置されている。
すなわち、ワーク移動位置決め装置20は、X軸方向(一方向)に延在するX軸ボールネジ24を備えている。
また、ワーク移動位置決め装置20は、X軸ボールネジ24を回転可能に支持する軸受け(支持部)25a,25bと、X軸ボールネジ24を回転させるX軸サーボモータ(駆動部)26と、を備えている。
本実施形態では、軸受け25a,25bは、キャリッジベース21上に固定されており、この軸受け25a,25bがX軸ボールネジ24の端部をそれぞれ回転可能に支持することで、X軸ボールネジ24がキャリッジベース21に回転可能に支持されている。
また、X軸ボールネジ24の軸受け25b側の端部にX軸サーボモータ26が連結されており、X軸ボールネジ24は、軸受け25b側(X軸サーボモータ26が連結される側)の端部が固定端24bとなっている。
一方、X軸ボールネジ24の軸受け25a側の端部は、X軸方向への移動(X軸ボールネジ24の長さの変位)が許容された状態で軸受け25aに支持されており、X軸ボールネジ24は、軸受け25a側の端部が自由端24aとなっている。このように、本実施形態では、X軸ボールネジ24は、軸受け25a,25bによって、少なくとも一端が自由端24aとなるように支持されている。
また、ワーク移動位置決め装置20は、X軸ボールネジ24にX軸方向(一方向)に相対移動可能に螺合されるキャリッジ(移動体)22と、キャリッジ22に設けられ、ワークWをクランプ・アンクランプするワーククランプ23と、を備えている。
本実施形態では、キャリッジ22にはキャリッジナット22aが一体に設けられており、このキャリッジナット22aをX軸ボールネジ24に螺合させることで、キャリッジ22をX軸方向に相対移動させるようにしている。すなわち、キャリッジナット22aをX軸ボールネジ24に螺合させた状態で、X軸サーボモータ26を駆動させてX軸ボールネジ24を回転させることで、キャリッジ22をX軸方向に沿って移動させている。なお、X軸サーボモータ26もエンコーダ(位置検出部)26aを備えており、このエンコーダ26aによってキャリッジ22のX軸方向の位置が検出されるようにしている。
キャリッジ22には、一対のワーククランプ23が取り付けられており、各ワーククランプ23は、キャリッジ22に取り付けられる取付部23aと、取付部23aに開閉可能に設けられたクランプ部材23bと、を備えている。クランプ部材23bの開閉操作は、従来公知の方法で行うことができ、例えば、ソレノイドを用い、ソレノイドのオン・オフを切り替えることで、クランプ部材23bの開閉を切り替えるようにすることができる。なお、ワーククランプ23は、キャリッジ22に対して相対移動できる状態で取り付けられていてもよいし、キャリッジ22に固定されていてもよい。
さらに、ワーク移動位置決め装置20は、ワークWのX軸方向(一方向)の位置決めを行うロケートピン(位置決め部)27を備えている。このロケートピン27は、テーブルTにおけるX軸方向の自由端24a側(固定端24bから自由端24aに向かう側)の端部に、上下方向に出没可能に設けられている。
本実施形態では、上方に突出させたロケートピン27のX軸方向の固定端24b側の端面27aに、ワークWのX軸方向の自由端24a側の端面Waを突き当てる(接触させる)ことで、ワークWのX軸方向の自由端24a側への移動が規制されるようにしている。そして、ワークWの端面Waをロケートピン27の端面27aに突き当てた状態で、ワーククランプ23によってワークWをクランプすることで、ワークWがセットされるようにしている。
このように、ワークWをセットし、キャリッジ22をX軸方向に沿って移動させつつキャリッジベース21をY軸方向に沿って移動させることで、ワークWをXY平面上の所望の位置に移動させるようにしている。
そして、このようなワーク移動位置決め装置20を用いたパンチプレス機10では、ワーク移動位置決め装置20によって加工すべき位置が加工位置KとなるようにワークWを移動させてパンチ加工を行っている。なお、ワークWにパンチ加工を施す際には、加工位置Kに位置決めされたパンチPおよびダイDによってワークWの加工すべき位置が加工されて、図8に示すパンチ穴Wbが形成される。また、ワークWのX軸方向の位置やY軸方向の位置は、各サーボモータに備えられたエンコーダによって検出される。
そして、ワークW、キャリッジ22等のX軸方向の移動位置決めやY軸方向の移動位置決めは、制御部により制御されている。本実施形態では、ワークW、キャリッジ22等のX軸方向の移動位置決めは、図3に示すNC装置(制御部)30および軸制御部40によって制御されている。
以下では、本実施形態にかかるワーク移動位置決め装置20の機能構成を、図3に基づき説明する。
ワーク移動位置決め装置20は、上述したように、NC装置30および軸制御部40を備えている。
そして、ワークWを加工するためにキャリッジ22をX軸方向に移動させる場合には、NC装置30が、キャリッジ22の移動指令を軸制御部40に出力するようにしている。このNC装置30から軸制御部40に出力される移動指令としては、例えば、所定のX座標値までキャリッジ22を移動させる指令がある。また、キャリッジ22のボールネジ24上の移動を所定の移動量(距離)とする指令、キャリッジ22を所定のX座標値まで移動させるために必要なX軸ボールネジ24の回転量だけX軸ボールネジ24を回転させる指令などがある。
そして、軸制御部40が、NC装置30から出力された移動指令に基づいて、軸(キャリッジ22、X軸ボールネジ24およびX軸サーボモータ26)の位置決めを行うようにしている。なお、軸制御部40による軸の位置決めは、例えば、X軸サーボモータ26によるX軸ボールネジ24の回転(回転数や回転角度)を制御してキャリッジ22のX軸ボールネジ24上の移動を制御することで行うことができる。
また、ワーク移動位置決め装置20は、長さ変位検出部としての変位検出センサ50を備えており、この変位検出センサ50によってX軸ボールネジ24の基準長さに対するX軸方向の長さ変位量を検出できるようにしている。なお、X軸ボールネジ24の基準長さは予め設定された値であり、例えば、室温等の所定の環境温度に置いたときのX軸ボールネジ24の長さを基準長さとすることができる。このX軸ボールネジ24の基準長さは、NC装置30が備える記憶部32に記憶されている。
また、X軸ボールネジ24の基準長さに対するX軸方向の長さ変位量を検出する変位検出センサ50としては、例えば、検出対象物との対向距離を測定する近接センサを用いることができる。近接センサを用いた場合、検出面がX軸ボールネジ24の端面と対向するように近接センサを配置し、対向する端面の位置に応じて生じる渦電流の変化を近接センサが検出し電気信号に変換することにより長さ変位量を検出することになる。
そして、変位検出センサ50により検出されたX軸ボールネジ24の長さ変位量は、NC装置30が備える演算部33に出力されて、この演算部33でX軸ボールネジ24に螺合されたキャリッジ22の位置ずれ量が演算されるようになっている。なお、演算部33で演算されたキャリッジ22の位置ずれ量は、NC装置30が備えるマクロ31に出力されるようになっている。
マクロ31は、ワーク加工プログラムを開始したときに呼び出されて、X軸ボールネジ24の長さが変化している場合に、NC装置30から軸制御部40へ出力する移動指令を補正するものである。本実施形態では、マクロ31は、基準座標を補正する第1補正部31aと、キャリッジ22のX軸ボールネジ24上の移動量を補正する第2補正部31bと、を備えている。
なお、基準座標は、予め設定された値であり、例えば、X軸ボールネジ24の長さが基準長さのときに、X軸ボールネジ24上の各部位の固定端24bからの長さを基準X座標(基準座標)とすることができる。こうすれば、X軸ボールネジ24の長さが基準長さのときには、X軸ボールネジ24上の所定部位のX座標値と基準X座標におけるX座標値とが一致するとことになる。
このように、基準長さにおけるX軸ボールネジ24上のX座標値に一致させた基準X座標を、ワーク加工時におけるキャリッジ22の移動を指令するプログラム上のX座標として用いれば、キャリッジ22の移動位置決めを精度よく制御することができる。なお、基準X座標も、NC装置30が備える記憶部32に記憶されており、NC装置30は、この基準X座標を用いて、基準X座標における所定のX座標値(所定の座標値)までキャリッジ22を移動させる移動指令を軸制御部40に出力している。
また、ワーク移動位置決め装置20は、ワークWがワーククランプ23によりクランプされているクランプ状態と、ワークWがワーククランプ23によりクランプされていないアンクランプ状態との切り替えを検出するワーククランプ切替検出部60を備えている。
なお、クランプ状態とアンクランプ状態との切り替えは、例えば、一対のクランプ部材23bを開閉させるソレノイドのオン・オフ信号を取得することにより検出することができる。そして、ワーククランプ切替検出部60が検出したクランプ状態とアンクランプ状態との切り替えがNC装置30に出力されるようになっている。
また、ワーク移動位置決め装置20は、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からのX軸方向への位置ずれ量を取得する取得部を備えている。
ここで、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態とは、予め設定された値であり、本実施形態では、X軸ボールネジ24が基準長さのときにワークWをセットした状態におけるキャリッジ22とワークWとの配置状態を基準配置状態としている。
なお、ワークWをセットした状態(ワークセット状態)とは、ワークWをロケートピン27により位置決めした状態でワーククランプ切替検出部60がアンクランプ状態からクランプ状態への切り替えを検出した状態のことである。すなわち、本実施形態では、ロケートピン27により位置決めされたワークWをワーククランプ23によりクランプさせた状態のことをワークセット状態と規定している。
そして、ワークWをロケートピン27により位置決めしたときに、キャリッジ22がワークWに対して基準配置状態からX軸方向にずれた場合には、取得部が、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれ量を取得するようにしている。
本実施形態では、X軸ボールネジ24が基準長さのときに、ワークWのX軸方向の自由端24a側の端面WaのX座標値とキャリッジ22のX軸方向の自由端24a側の端面22bのX座標値とを一致させることで、基準配置状態を設定している。すなわち、X軸ボールネジ24が基準長さの状態で、端面22bのX座標値をロケートピン27の端面27aのX座標値と一致させたキャリッジ22と、端面Waをロケートピン27の端面27aに突き当てたワークWと、の配置関係を基準配置状態としている。なお、本実施形態では、基準配置状態におけるキャリッジナット22aのX軸ボールネジ24上のX座標値をワークセット時におけるキャリッジナット22aの基準X座標値としている。
そして、基準配置状態を上記のように設定することで、ワークWをセットするときのキャリッジ22の端面22bのロケートピン27の端面27aからのX軸方向のずれ量が、位置決め状態のワークWとキャリッジ22との基準配置状態からのずれ量となる。
こうすれば、ワークWをセットするときのキャリッジ22の端面22bのX座標値とロケートピン27の端面27aのX座標値との差分を求めることで、ワークWとキャリッジ22との基準配置状態からのX軸方向のずれ量を取得することができるようになる。
なお、ロケートピン27は、X軸方向への移動が規制された部材であり、ロケートピン27の端面27aのX座標値は、X軸ボールネジ24の長さ変位の影響を受けない固定のX座標値となっている。そのため、ワークWをセットするときのキャリッジ22の端面22bのX座標値を検出すれば、ワークWとキャリッジ22との基準配置状態からのX軸方向のずれ量を取得することができる。
ここで、本実施形態では、変位検出センサ50が取得部を兼ねており、この変位検出センサ50が検出したX軸ボールネジ24の長さ変位量に基づいて、キャリッジ22とロケートピン27との位置ずれ量を取得できるようにしている。
具体的には、本実施形態では、ワークWをセットする時には、キャリッジナット22aのX軸ボールネジ24上のX座標値が一定の値となるように設定している。すなわち、X軸ボールネジ24の長さが変位した場合、ワークWをセットする時の実際のキャリッジナット22aの位置(基準X座標でのX座標値)は変化するが、X軸ボールネジ24上のX座標値は変化しないようにしている。
こうすれば、X軸ボールネジ24の長さが変位したときにおけるキャリッジ22のX軸方向への位置ずれ量を、ワークWとキャリッジ22との基準配置状態からのX軸方向のずれ量とすることができる。そのため、変位検出センサ50がX軸ボールネジ24の長さ変位量を検出することで、ワークWとキャリッジ22との基準配置状態からのX軸方向のずれ量を取得することができる。
ところで、ボールネジ(X軸ボールネジ24やY軸ボールネジ141)を用いてワークWの移動位置決めを行う場合には、ボールネジの回転時に生じる摩擦熱によってボールネジが発熱して軸方向に伸びてしまう。一方、ワーク移動位置決め装置20の運転を停止する等、ボールネジが所定時間回転していない場合には、ボールネジが冷却されて軸方向に縮んでしまう。このように、ワーク移動位置決め装置20で用いられるボールネジは、発熱や放熱によって、軸方向の長さが変位するものである。
なお、本実施形態では、X軸ボールネジ24およびY軸ボールネジ141は、一端が自由端24a,141aとなり他端が固定端24b,141bとなるように支持されている。すなわち、X軸ボールネジ24およびY軸ボールネジ141は、自由端24a,141a側のみが軸方向に伸縮するようになっている。
このように、ボールネジを片側だけで伸縮させる場合、固定端から自由端までの部位の全体が、固定端を基準として自由端側に移動するように伸びることになる。そのため、ボールネジの固定端から自由端までの各部位は、固定端から離れる程(座標値が大きくなる程)位置ずれ量が大きくなる。
以下では、X軸ボールネジ24の伸び等を図4のグラフおよび図5を用いて説明する。なお、本実施形態では、X軸ボールネジ24が伸びた時の位置ずれ量を+とし、X軸ボールネジ24が縮んだ時の位置ずれ量を−として説明する。また、図4の実線で示す直線については、Y軸ボールネジ141に適用することが可能である。
まず、X軸ボールネジ24の固定端24bから自由端24aまでの長さをL1とする。そして、X軸ボールネジ24が全体として+ΔL1だけ伸びたとする。この場合、X軸ボールネジ24上の各部位の位置ずれ量は、原点を通り、傾き+ΔL1/L1の直線上(図4の実線で示す直線上)の値となる。
この位置ずれは、例えば、近接センサ(変位検出センサ50)の検出面を、X軸ボールネジ24の自由端24a側の端面に対向させるように近接センサを配置させることで、検出することができる。具体的には、基準長さがL1となるX軸ボールネジ24の自由端24a側の端面に対向配置させた近接センサが、X軸ボールネジ24の端面が+ΔL1だけ移動したことを検出した場合、+ΔL1がX軸ボールネジ24の全体の伸び量(端面の位置ずれ量)となる。
そして、図4の実線で示すように位置ずれ量が変化する場合、X軸ボールネジ24上のX座標値がL2の場所でキャリッジナット22aがX軸ボールネジ24に螺合されていたとすると、キャリッジナット22aの位置ずれ量は+ΔL2となる。本実施形態では、+ΔL2=L2×(+ΔL1/L1)である。
なお、X軸ボールネジ24が基準長さL1の場合(X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1から変位していない場合)、基準X座標におけるX座標値がX軸ボールネジ24上のX座標値と一致するため、基準X座標におけるX座標値もL2となる。また、キャリッジナット22aが+ΔL2だけ位置ずれした場合、キャリッジ22も+ΔL2だけ位置ずれすることになる。
そして、ワークWのセットを、キャリッジナット22aをX軸ボールネジ24上のX座標値がL2の場所に配置した状態で行うようにした場合、このX座標値L2がワークセット時におけるキャリッジナット22aの基準X座標値となる。
そして、このような設定の元で、X軸ボールネジ24が基準長さL1の場合に、ワークWをセットした状態で、キャリッジナット22aをX軸ボールネジ24上のX座標値L2からL3まで移動させる第1移動制御を行うこととする。具体的には、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1のときに、ロケートピン27により位置決めした状態から基準ワーク移動量L4だけワークWをX軸方向の−側へ移動させる第1移動制御を行うこととする。なお、基準ワーク移動量L4は、予め設定された距離で、本実施形態では、L3−L2が基準ワーク移動量L4となっている。
そして、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1のときに、この第1移動制御を行う際には、キャリッジ22(キャリッジナット22a)を基準ワーク移動量L4だけ移動させる移動指令を、NC装置30が軸制御部40へ出力している。具体的には、NC装置30は、基準X座標を用いて、基準X座標におけるX座標値L2からX座標値L3までキャリッジ22(キャリッジナット22a)を移動させる移動指令を軸制御部40へ出力している。そして、軸制御部40が、NC装置30からの移動指令に基づいて、キャリッジ22(キャリッジナット22a)を移動させるようにしている。この軸制御部40によるキャリッジ22(キャリッジナット22a)の移動は、キャリッジ22(キャリッジナット22a)の移動量が指令された移動量となるようにX軸ボールネジ24の回転量を制御することで行われる。
例えば、基準長さL1のX軸ボールネジ24を1回転させたときのキャリッジナット22aの移動量を予め記憶し、この1回転時のキャリッジナット22aの移動量に基づいて、指令された移動量だけ移動させるために必要な回転量を演算する。そして、演算した回転量だけX軸ボールネジ24が回転するように、軸制御部40がX軸サーボモータ26およびエンコーダ26aを制御する。こうして、キャリッジ22(キャリッジナット22a)を所定の位置まで移動させている。
ここで、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1から変化した状態で、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1のときと同様の制御を行うと、ワークWは、本来移動すべき位置からずれた位置に移動してしまうことになる。すなわち、X軸ボールネジ24の伸縮に起因する誤差を補正する手段を講じていない場合、セットしたワークWを移動させる際にワークWの移動位置に誤差が生じてしまう。
具体的には、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1からL1+ΔL1に変化すると、キャリッジナット22aのX軸ボールネジ24上のX座標値はL2のままであるが、実際の位置である基準X座標におけるX座標値は、L2+ΔL2となる。このように、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1から変化すると、X軸ボールネジ24上のX座標値と基準X座標におけるX座標値とが原点以外では一致しなくなる。なお、本実施形態では、X軸ボールネジ24の固定端24bが原点となる。
そして、X軸ボールネジ24の伸縮に起因する誤差を補正する手段を講じていない場合、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1から変位した状態においても、NC装置30は、上記と同様の移動指令を軸制御部40へ出力することになる。すなわち、NC装置30は、基準X座標におけるX座標値L2からX座標値L3までキャリッジ22を移動させる移動指令を軸制御部40へ出力することになる。
このとき、X軸ボールネジ24の伸縮に起因する誤差を補正する手段を講じていないと、実際にはL2+ΔL2にあるキャリッジナット22aの位置は、基準X座標におけるX座標値L2であるとNC装置30で判断されることになる。同様に、実際にはL3+ΔL3となる移動後のキャリッジナット22aの位置が、基準X座標におけるX座標値L3であるとNC装置30で判断されることになる。
したがって、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1から変位した状態においても、NC装置30は、基準X座標におけるX座標値L2からX座標値L3までキャリッジ22を移動させる移動指令を軸制御部40へ出力することになる。
なお、基準X座標におけるX座標値L2からX座標値L3までの移動は、基準X座標上は、基準ワーク移動量L4と同一の移動距離となる。しかしながら、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1から変位した場合、X軸ボールネジ24に設けられたネジ溝のピッチも、X軸ボールネジ24の長さ変位量に応じて変位することになる。
例えば、長さL1+ΔL1に伸びたX軸ボールネジ24を1回転させたときのキャリッジナット22aの移動量は、基準長さL1のX軸ボールネジ24を1回転させたときのキャリッジナット22aの移動量よりも大きくなる。具体的には、基準長さL1のときに、1回転させたときのキャリッジナット22aの移動量をd、キャリッジナット22aを原点からL1まで移動させるために必要な回転量をn回転とする。この場合、長さL1+ΔL1に伸びたX軸ボールネジ24を1回転させたときのキャリッジナット22aの移動量は、d+(ΔL1/n)となる。したがって、キャリッジナット22aが原点に位置する状態で、長さL1+ΔL1に伸びたX軸ボールネジ24をn回転させると、キャリッジナット22aは原点からL1+ΔL1まで移動することになる。このように、キャリッジナット22aをX軸ボールネジ24上のあるX座標値(例えば原点)から他のX座標値(例えばL1)まで移動させるために必要な回転量は、X軸ボールネジ24の長さの変位量にかかわらず、同一の回転量となる。言い換えると、キャリッジナット22aがX軸ボールネジ24上のX座標値が同じ位置にあれば、X軸ボールネジ24の長さの変位量にかかわらず、X軸ボールネジ24を同一の量だけ回転させると、X軸ボールネジ24上の同一のX座標値まで移動することになる。
そして、X軸ボールネジ24の伸縮に起因する誤差を補正する手段を講じていない場合、基準X座標におけるX座標値L2からX座標値L3まで移動させるために指令する回転量は、X軸ボールネジ24が伸縮する前と同じ回転量である。そのため、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1から変位した状態において、NC装置30が、変位前と同様の移動指令を軸制御部40へ出力した場合、キャリッジナット22aは、X軸ボールネジ24上のX座標値L2からX座標値L3まで移動することになる。
しかしながら、X軸ボールネジ24上のX座標値L3は、基準X座標における実際のX座標値では、L3+ΔL3となる。なお、X座標値L3における位置ずれ量は、+ΔL3=L3×(+ΔL1/L1)である。
このように、X軸ボールネジ24の伸縮に起因する誤差を補正する手段を講じていない場合、X軸ボールネジ24が伸縮した場合には、セットしたワークWを移動させる際にワークWの移動位置に誤差(上記の例では+ΔL3の誤差)が生じてしまう。
さらに、ワークWの複数の部位に加工を施す場合、上述した第1移動制御を行った後に、第2移動制御、第3移動制御…が行われる。このときに、X軸ボールネジ24の伸縮に起因する誤差を補正する手段を講じていない場合、ワークWに形成される複数の加工部位のピッチにも誤差が生じてしまう。例えば、ワークWに2つの加工を施し、2つの加工部位のピッチがL5−L3となるようにする場合、第2移動制御を行うことになる。この第2移動制御は、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1のときには、キャリッジナット22aをX軸ボールネジ24上のX座標値L3からL5まで移動させる第2移動制御を行う制御である。
そして、長さL1+ΔL1に伸びたX軸ボールネジ24において、第2移動制御を行うと、キャリッジナット22aは、X軸ボールネジ24上のX座標値L3からX座標値L5まで移動することになる。そして、X軸ボールネジ24上のX座標値L3は、基準X座標における実際のX座標値では、L3+ΔL3となり、X軸ボールネジ24上のX座標値L5は、基準X座標における実際のX座標値では、L5+ΔL5となる。したがって、2つの加工部位のピッチは、L5−L3+ΔL5−ΔL3となる。なお、+ΔL3は、上述したようにL3×(+ΔL1/L1)であり、+ΔL5は、L5×(+ΔL1/L1)である。そして、L3とL5は、X座標値が異なるため、+ΔL5と+ΔL3は値(大きさ)が異なっている。したがって、X軸ボールネジ24が伸縮した場合、2つの加工部位のピッチが、X軸ボールネジ24が伸縮していない状態における2つの加工部位のピッチ(L5−L3)とは、+ΔL5−ΔL3だけ異なるピッチになってしまう。そして、ワークW内の加工位置が3箇所以上となった場合にも、キャリッジナット22aを移動させる位置に応じたピッチのずれが生じることになる。
そこで、本実施形態では、X軸ボールネジ24の伸縮によってX軸ボールネジ24のネジ溝のピッチの変位に起因する誤差を補正する手段を講じている。
具体的には、X軸ボールネジ24の長さが変位した状態で第1移動制御を行う場合に、近接センサ(長さ変位量検出部)が検出した長さ変位量に基づいて、キャリッジナット22aのX軸ボールネジ24上の移動量を補正するようにしている。このキャリッジナット22aのX軸ボールネジ24上の移動量の補正は、X軸ボールネジ24の回転量を、長さ変位量に応じて、X軸ボールネジ24の長さが変位していないときの回転量とは異ならせることで行われる。すなわち、X軸ボールネジ24を1回転させたときのキャリッジナット22aの移動量を、X軸ボールネジ24の長さが変位したときの移動量に補正し、補正した移動量に基づいて、X軸ボールネジ24の回転量を演算することで行われる。本実施形態では、この補正は、マクロ31の第2補正部31bで行われるようにしている。
さらに、X軸ボールネジ24の1回転時に移動する量を補正した上で、キャリッジナット22aのX軸ボールネジ24上の実際の移動量が、NC装置30が指令する基準X座標における座標上の移動量となるようにしている。
例えば、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1からL1+ΔL1に変化すると、キャリッジナット22aのX軸ボールネジ24上のX座標値はL2のままであるが、実際の位置である基準X座標におけるX座標値は、L2+ΔL2となる(図5参照)。なお、X軸ボールネジ24上のX座標値L3は、基準X座標におけるX座標値ではL3+ΔL3となる。ここで、図5より、基準X座標におけるX座標値L3+ΔL3の原点からの長さとX座標値L3の原点からの長さの比は、L3/(L3+ΔL3)となる。そして、基準X座標におけるX座標値L3に対応するX軸ボールネジ24上のX座標値と、X軸ボールネジ24上におけるX座標値L3との比もL3/(L3+ΔL3)と等しくなる。そのため、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1からL1+ΔL1に変化した場合、基準X座標におけるX座標値L3は、X軸ボールネジ24上のX座標値では、(L3)2/(L3+ΔL3)となる。
したがって、NC装置30は、キャリッジナット22aをX軸ボールネジ24上のX座標値L2からX軸ボールネジ24上のX座標値(L3)2/(L3+ΔL3)まで移動させるように補正した移動指令を軸制御部40へ出力することになる。すなわち、基準X座標におけるX座標値L2+ΔL2にあるキャリッジナット22aを基準X座標におけるX座標値L3まで、L4+ΔL2だけ移動させるように補正した移動指令を軸制御部40へ出力することになる。
こうすれば、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1からL1+ΔL1に変化した場合であっても、キャリッジナット22aを、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1の場合の移動位置(基準X座標におけるX座標値L3)と同じ位置に移動させられる。
第1移動制御における上記の補正は、下記の3つの補正を行うことで実現されている。まず、X軸ボールネジ24の長さ変位量+ΔL1に基づいて、所定距離移動するために必要なX軸ボールネジ24の回転量を補正する。次に、ワークセット状態におけるキャリッジナット22aの位置ずれ量+ΔL2に基づいて、キャリッジナット22aの位置を−ΔL2だけX軸ボールネジ24上を移動させる。このとき、キャリッジナット22aの位置は、基準X座標におけるX座標値L2となる。最後に、基準X座標におけるX座標値L2から基準X座標におけるX座標値L3までキャリッジナット22aを移動させる。こうすることで、X軸ボールネジ24の長さの変位に起因して位置ずれしたキャリッジナット22aを、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1の場合の移動位置(基準X座標におけるX座標値L3)と同じ位置まで移動させるようにしている。
そして、基準X座標上の移動量と同一の量だけキャリッジナット22aが移動するように、X軸ボールネジ24の回転量を制御するようにすれば、第2移動制御、第3移動制御…が行われる場合にも、ワークW内においてピッチがずれてしまうことが抑制される。すなわち、ワークW内の各加工部位のピッチを、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1の場合におけるワークW内の各加工部位のピッチと同ピッチにすることができるようになる。
ただし、上記の補正は、Y軸ボールネジ141が伸縮した場合に、Y軸ボールネジ141の伸縮に起因する誤差を補正するために講じる手段としては、有効な補正手段である。なぜなら、Y軸ボールネジ141は、ナット部材21aをY軸方向に移動させることでナット部材21aに一体に形成されたキャリッジベース21をY軸方向に移動させるために用いられるからである。
一方、X軸ボールネジ24が伸縮した場合に、上記の補正を行うと、キャリッジ22の移動位置は補正される。しかしながら、X軸ボールネジ24は、X軸ボールネジ24に沿って移動するキャリッジ22にセットしたワークWを所定の位置まで移動させるために用いられている。そのため、キャリッジ22にワークWをセットしたときに、キャリッジ22のワークWに対する配置関係が、当初設定していた配置関係(基準配置状態)から外れた状態となってしまう場合がある。そして、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの相対的な位置ずれ(X軸方向の位置ずれ)が生じた場合に上記の補正を行うと、ワークWは、本来加工すべき位置からずれた位置が加工位置(目標位置)Kに位置するように移動してしまうことになる。すなわち、X軸ボールネジ24が伸縮した場合に上記の補正を行うと、ワークW内の各加工部位のピッチを補正することはできるが、加工部位の全体がワークW内において本来加工されるべき位置からX軸方向にずれてしまうおそれがある。
このように、キャリッジ22にセットしたワークWをX軸ボールネジ24に沿って移動させる場合に、上記の補正を行うと、ワークWの移動位置決め精度が低下してしまうおそれがある。
そこで、本実施形態では、ワークWの移動位置決め精度が低下してしまうのを抑制できるようにした。具体的には、近接センサ(長さ変位量検出部)によるX軸ボールネジ24の長さ変位量の検出の有無にかかわらず、ロケートピン27により位置決めされた状態から加工位置(所定の目標位置)Kまで一定の距離だけワークWが移動するようにした。
例えば、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1のときに、第1移動制御を行う際には、NC装置30が、キャリッジナット22a(キャリッジ22)を基準ワーク移動量L4だけ移動させる移動指令を軸制御部40へ出力するようにしている。なお、第1移動制御とは、上述したように、ロケートピン27により位置決めした状態から基準ワーク移動量L4だけワークWを移動させる制御のことである。
一方、近接センサ(長さ変位量検出部)が長さ変位量を検出した場合に第1移動制御を行う際には、NC装置30が、ワークWの移動量が基準ワーク移動量L4となるようにキャリッジ22のX軸ボールネジ24上の移動量を調整するようにしている。そして、調整した移動量だけキャリッジ22を移動させる移動指令をNC装置30から軸制御部40へ出力するようにしている。
ここで、本実施形態では、キャリッジ22のX軸ボールネジ24上の移動量を下記の方法で調整し、第1移動制御を行う際のワークWの移動量が基準ワーク移動量L4となるようにしている。
まず、NC装置30が、上述した基準X座標を、取得部が取得した位置ずれ量(キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれ量)に基づいてオフセットさせたオフセットX座標に補正する第1補正部31aを備えるようにした。本実施形態では、上述したように、マクロ31が第1補正部31aを備えている。
また、NC装置30が、基準X座標における座標値L3までキャリッジナット22aを移動させる際に、近接センサが検出した長さ変位量に基づいてキャリッジナット22aのX軸ボールネジ24上の移動量を補正する第2補正部31bを備えるようにした。この第2補正部31bも、上述したマクロ31が備えている。
そして、近接センサが長さ変位量を検出するとともに、取得部が位置ずれ量を取得している場合に、ワーククランプ切替検出部60がアンクランプ状態からクランプ状態への切り替えを検出した際には、下記の補正を行うようにした。すなわち、X軸ボールネジ24の長さが変位して、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれが生じた状態で、ワークWがセットされていない状態からセットされたときに、下記の補正を行うようにした。
まず、第1補正部31aがキャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれ量に基づいて、基準X座標をオフセットX座標に補正するようにした。例えば、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1からL1+ΔL1に伸びて、近接センサがΔL1の変位長さを検出したとする。このとき、キャリッジナット22aが基準X座標値L2に位置し、ワークWがキャリッジ22にセットされていなければ、キャリッジナット22aは、ワークWがセットされていない状態で、+ΔL2だけ位置ずれしたことになる。そして、このような状態でワークWをセットすると、キャリッジ22がワークWに対して基準配置状態から+ΔL2だけX軸方向に位置ずれすることになる。上述したように、本実施形態では、近接センサ(長さ変位量検出部)が取得部を兼ねている。そして、位置ずれしたキャリッジ22にワークWをセットしたときには、X軸ボールネジ24の長さ変位に起因するキャリッジ22の位置ずれ量が、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれ量となるようにしている。そのため、X軸ボールネジ24の長さ変位に起因するキャリッジ22の位置ずれ量+ΔL2が、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれ量となる。
そして、第1補正部31aは、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれ量+ΔL2に基づいて、基準X座標を−ΔL2だけオフセットさせることで基準X座標をオフセットX座標に補正する。例えば、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1からL1+ΔL1に変化すると、キャリッジナット22aの実際の位置である基準X座標におけるX座標値は、L2+ΔL2となる。したがって、基準X座標におけるX座標値L2+ΔL2は、オフセットX座標におけるX座標値では、L2となる。また、基準X座標におけるX座標値L3は、オフセットX座標におけるX座標値では、L3−ΔL2となり、基準X座標におけるX座標値L3+ΔL2が、オフセットX座標におけるX座標値では、L3となる。すなわち、オフセットX座標におけるX座標値は、図4の一点鎖線で示す直線上の値となる。
このように、基準X座標を−ΔL2だけオフセットさせることで、位置ずれ後のキャリッジナット22aの位置がワークWを移動させる際の基準の位置(移動開始位置)となるようにしている。なお、上述したピッチ間のずれを抑制する上記の補正では、X軸ボールネジ24上を−ΔL2だけ移動させた位置(基準X座標のX座標値がL2となる位置)がワークWを移動させる際の基準の位置(移動開始位置)となっている。
そして、第2補正部31bが、基準X座標を−ΔL2だけオフセットさせたオフセットX座標を用いて、キャリッジナット22a(キャリッジ22)のX軸ボールネジ24上の移動量を補正している。そして、キャリッジナット22a(キャリッジ22)のX軸ボールネジ24上の移動量を補正して、オフセットX座標における所定の座標値までキャリッジナット22a(キャリッジ22)を移動させるようにしている。
具体的には、キャリッジナット22a(キャリッジ22)を、オフセットX座標におけるX座標値L2からオフセットX座標におけるX座標値L3まで移動させるようにしている。すなわち、基準X座標で考えると、位置ずれしたキャリッジナット22aが位置するX座標値L2+ΔL2からX座標値L3+ΔL2まで、L4だけキャリッジナット22aを移動させるようにしている。なお、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1からL1+ΔL1に変化しているため、キャリッジナット22aがL4だけ移動するように、X軸ボールネジ24の回転量を補正している。
こうすれば、キャリッジ22は、基準X座標におけるX座標値L3+ΔL2まで移動することになる。このとき、キャリッジ22に対して−ΔL2だけ基準配置状態から位置ずれしているワークWは基準X座標におけるX座標値L3まで移動することになる。すなわち、ワークWは、基準配置状態で第1移動制御を行う際に移動するワークWの移動量と同じ量だけ移動することになる。その結果、キャリッジ22に対して基準配置状態から位置ずれしているワークWを、ワークW内の本来加工されるべき位置を加工位置(目標位置)Kまで移動させることができるようになる。
なお、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれ量が、例えば−ΔL2の場合には、基準X座標を+ΔL2だけオフセットさせることで基準X座標をオフセットX座標に補正することになる。
次に、図6に基づいて、上記の補正システムを有するワーク移動位置決め装置20を用いたワーク加工制御の一例を説明する。
まず、ステップS1として、ボールネジ(X軸ボールネジ24)の伸び量を読み取る。このX軸ボールネジ24の伸び量は、近接センサ(長さ変位量検出部)が検出した長さ変位量から読み取っている。
そして、X軸ボールネジ24の伸び量を読み取った後に、ステップS2として、ワーク加工プラグラムを開始する。このワーク加工プラグラムは、上記の補正システムによる補正を行った後に、ワークWの加工を行うプログラムとなっている。
このワーク加工プラグラムを開始すると、ステップS3として、マクロ31が呼び出される。
そして、マクロ31が呼び出されると、ステップS4として、ワーククランプ切替検出部60がアンクランプ状態からクランプ状態への切り替えを検出したか否かを判定する。すなわち、ワークWをロケートピン27により位置決めした状態でワーククランプ切替検出部60がアンクランプ状態からクランプ状態への切り替えを検出し、ワークWをセットした状態(ワークセット状態)となったか否かを判定する。
そして、ステップS4で「YES」と判定された場合には、ステップS5に移行する。
すなわち、ステップS4で「YES」と判定された場合には、X軸ボールネジ24の伸び量を読み取った後にワークWがセットされ、キャリッジ22がワークWに対して基準配置状態からX軸方向にずれたと判断する。
そして、ステップS5として、X軸ボールネジ24の伸び量に基づいて、基準X座標をオフセットX座標に補正する。具体的には、X軸ボールネジ24の伸び量からキャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれ量を取得し、この位置ずれ量に基づいて、第1補正部31aが基準X座標をオフセットX座標に補正する。
そして、ステップS5で基準X座標をオフセットX座標に補正した後に、ステップS6に移行し、X軸ボールネジ24の伸び量に基づいて、キャリッジ22のX軸ボールネジ24上の移動量を補正する。具体的には、X軸ボールネジ24を1回転させたときのキャリッジ22の移動量を、X軸ボールネジ24が伸縮したときの移動量に補正し、補正した移動量に基づいて、所定距離移動させるために必要なX軸ボールネジ24の回転量を第2補正部31bで補正する。
なお、図6に示すフローチャートでは、X軸ボールネジ24の伸び量を読み取った後にワークWがセットされた場合には、必ずステップS5に移行するようにしている。すなわち、図6に示すフローチャートでは、X軸ボールネジ24の伸び量がゼロの場合でも、ステップS5では、基準X座標をゼロだけオフセットさせる補正が行われるようになっている。このように、基準X座標をゼロだけオフセットさせる補正を行うのではなく、X軸ボールネジ24の伸び量を検知したときだけステップS5に移行させるように制御してもよい。そして、X軸ボールネジ24の伸び量を検知しなかった場合には、ステップS5に移行させずにステップS6に移行させるように制御してもよい。
一方、ステップS4で「NO」と判定された場合には、ワークWが既にセットされた状態で、X軸ボールネジ24の伸び量を読み取ったと判断し、X軸ボールネジ24が伸縮したとしても、キャリッジ22とワークWの配置状態はずれていないと判断する。そして、ステップS6に移行する。
そして、ステップS6で補正を行った後に、ステップS7として、マクロ31を終了し、ワーク加工プログラムを続行させる。
このワーク加工プログラムを続行させると、ステップS8として、ワークWがセットされたキャリッジ22を移動させてワーク加工が開始される。
このステップS8では、ステップS5からステップS6に移行した場合には、オフセットX座標を用いてキャリッジ22を移動させており、ステップS4からステップS6に移行した場合には、基準X座標を用いてキャリッジ22を移動させている。
そして、ワーク加工が開始されると、ステップS9として、全ての加工が終了したか否かを判定する。
このステップS9で「NO」と判定された場合には、ステップS9の制御が繰り返される。
一方、ステップS9で「YES」と判定された場合には、ステップS10に移行し、ワーク加工を終了させる。こうして、1枚のワークWの加工が終了する。なお、ワークWの加工が終了すると、キャリッジナット22aを基準X座標値(移動開始位置)まで移動させて、ワークWがキャリッジ22から取り出される。
次に、図7〜図16に基づいて、X軸ボールネジ24のネジ溝のピッチの変位に起因する誤差を補正する手段(比較例)と、オフセット補正を行う本実施形態にかかる補正手段(実施例)との相違について説明する。
まず、X軸ボールネジ24が基準長さL1のときにワークWを加工する場合、図7に示す状態からワークWを移動させてワーク加工を開始し、図8に示す状態とすることで、ワーク加工が終了する。
なお、図7〜図16の各平面図には、加工位置Kが原点となるように設定したものを開示しているが、加工位置Kは任意の位置(X座標値)に設定することができる。
また、図7〜図16の(b)に示す表のa)は、キャリッジ22を移動開始位置に位置させた際のキャリッジ22の端面22bのプログラム上のX座標値である。また、b)は、キャリッジ22を移動開始位置に位置させた際のキャリッジ22の端面22bのX軸ボールネジ24上のX座標値である。また、c)は、キャリッジ22を移動開始位置に位置させた際のキャリッジ22の端面22bの実際のX座標値(基準X座標におけるX座標値)である。また、d)は、ワークWの端面Waの実際のX座標値である。
さらに、図7では、X軸ボールネジ24が基準長さL1の状態でワークWをセットした場合、キャリッジ22の端面22bとワークWの端面Waとが同一のX座標値3010.000となるようにしている。すなわち、キャリッジ22の端面22bとワークWの端面Waとが同一のX座標値となる状態を、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態としている。
そして、X軸ボールネジ24が基準長さL1の状態でワークWをセットした場合、図7(b)に示すように、キャリッジ22の端面22bのプログラム上のX座標値、X軸ボールネジ24上のX座標値、実際のX座標値が同じ値となる。さらに、ワークWの端面Waの実際のX座標値も同じ値となる。なお、ロケートピン27の端面27aのX座標値も同じ値となっている。
そして、このような状態からワークWの加工を開始して終了させると、複数のパンチ穴Wbを有するワークWが形成された後に、図8(a)に示す状態となるようにキャリッジ22を移動することになる。このときも、キャリッジ22の端面22bのプログラム上のX座標値、X軸ボールネジ24上のX座標値、実際のX座標値が同じ値となる。さらに、ワークWの端面Waの実際のX座標値も同じ値となる。
なお、実際には、ワーク加工を行うことでX軸ボールネジ24が発熱するため、ワーク加工終了時には開始時よりもX軸ボールネジ24の長さは伸びているが、以下では、1回のワーク加工によるX軸ボールネジ24の長さの変位を考慮せずに説明する。
そして、例えば、複数のワーク加工を連続して行った後に、ワークWをセットしていない状態で、X軸ボールネジ24の長さが発熱により伸びて、キャリッジ22が+0.100mm位置ずれしたとする。このとき、ワーク移動位置決め装置20は、図9(a)に示す状態となって、キャリッジ22の端面22bのプログラム上のX座標値、X軸ボールネジ24上のX座標値は同じ値となる。しかしながら、キャリッジ22の端面22bの実際のX座標値は、+0.100mmずれたX座標値3010.100となる。
そして、図9(a)に示す状態でワークWをセットすると、図10(a)に示す状態となる。このとき、ワークWは、端面Waをロケートピン27の端面27aに突き当てた状態でセットされるため、ワークWの端面Waの実際のX座標値は、3010.000となる。したがって、キャリッジ22がワークWに対して基準配置状態から+0.100mm位置ずれした状態となる。
そして、図10(a)に示すようにワークWをセットしてワーク加工を開始する際には、図11に示す補正が行われる。
このときに、比較例に示す補正を行う場合には、まず、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれ量だけ、ワークWがセットされたキャリッジ22を移動させる。そして、位置ずれ量だけ移動させたキャリッジ22をプログラムに基づき移動させることで、ワーク加工を行う。
すなわち、比較例に示す補正を行う場合には、キャリッジ22の端面22bのプログラム上のX座標値は変えずに、X軸ボールネジ24上のX座標値を3009.000となるように補正している(図11(a)の二点鎖線で示す状態を参照)。こうすることで、キャリッジ22の端面22bの実際のX座標値をプログラム上のX座標値に一致させている。
しかしながら、X軸ボールネジ24上のX座標値の補正は、ワークWがセットされた状態で行われる。そのため、キャリッジ22の端面22bの実際のX座標値をプログラム上のX座標値に一致させることはできるが、ワークWの端面Waの実際のX座標値が3009.900となってしまう。したがって、比較例に示す補正を行ってからワーク加工を開始すると、ワークWは、本来の位置よりも−0.100mmずれた位置に移動してしまう。その結果、パンチ穴Wbは、ワーク内において本来の位置から+0.100mmずれた位置に形成されてしまう(図12(c)参照)。なお、この比較例においては、X軸ボールネジ24の長さの変位に基づいて、キャリッジ22を所定距離移動させる際の回転量を補正しているため、複数のパンチ穴Wbのピッチのずれは解消されている。
一方、実施例に示す補正を行う場合には、まず、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれ量だけ、キャリッジ22の端面22bのプログラム上のX座標値をオフセットさせる。そして、オフセットさせたX座標値を用い、キャリッジ22をプログラムに基づき移動させることで、ワーク加工を行う。
すなわち、実施例に示す補正を行う場合には、キャリッジ22の端面22bのX軸ボールネジ24上の移動は行わずに、プログラム上のX座標値を3009.000となるように補正している(図11(a)の実線で示す状態を参照)。こうすることで、キャリッジ22の端面22bを移動させずに、キャリッジ22の端面22bの実際の位置がプログラム上の基準X座標値となるようにしつつ、ワークWの端面Waの位置が3010.000となるようにしている。
そして、このような状態からワーク加工を行うようにすれば、ワーク加工時のワークWの移動量が位置ずれしていない状態と同じ移動量になるため、パンチ穴Wbを、ワーク内における本来の位置に形成することができる。なお、この実施例においても、X軸ボールネジ24の長さの変位に基づいて、キャリッジ22を所定距離移動させる際の回転量を補正している。
したがって、実施例に示す補正を行うようにすれば、複数のパンチ穴Wbのピッチのずれが解消される上、パンチ穴WbのワークW内における相対的な位置ずれも解消することができる。すなわち、X軸ボールネジ24が基準長さL1の状態でワーク加工を行ったときと同一の位置にパンチ穴Wbを形成することができる(図12(d)参照)。
そして、例えば、ワーク加工終了後にワーク移動位置決め装置20の運転を比較的長時間停止する等により、ワークWをセットしていない状態で、X軸ボールネジ24の長さが冷却により縮んで、キャリッジ22が−0.100mm位置ずれしたとする。このとき、ワーク移動位置決め装置20は、図13(a)に示す状態となって、比較例においては、キャリッジ22の端面22bのプログラム上のX座標値が3010.000、X軸ボールネジ24上のX座標値が3009.900となる。また、キャリッジ22の端面22bの実際のX座標値は、−0.200mmずれた3009.800となる。
そして、図13(a)に示す状態でワークWをセットすると、図14(a)に示す状態となる。このとき、ワークWは、端面Waをロケートピン27の端面27aに突き当てた状態でセットされるため、ワークWの端面Waの実際のX座標値は、3010.000となる。したがって、キャリッジ22がワークWに対して基準配置状態から−0.200mm位置ずれした状態となる。
一方、実施例においては、図13(a)に示す状態では、キャリッジ22の端面22bのプログラム上のX座標値が3009.900、X軸ボールネジ24上のX座標値が3010.000、実際のX座標値は、−0.100mmずれた3009.900となる。
そして、図13(a)に示す状態でワークWをセットすると、図14(a)に示す状態となる。このとき、ワークWは、端面Waをロケートピン27の端面27aに突き当てた状態でセットされるため、ワークWの端面Waの実際のX座標値は、3010.000となる。したがって、キャリッジ22がワークWに対して基準配置状態から−0.100mm位置ずれした状態となる。
そして、図14(a)に示すようにワークWをセットしてワーク加工を開始する際には、図15に示す補正が行われる。
このときに、比較例に示す補正を行う場合には、まず、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれ量だけ、ワークWがセットされたキャリッジ22を移動させる。そして、位置ずれ量だけ移動させたキャリッジ22をプログラムに基づき移動させることで、ワーク加工を行う。
すなわち、比較例に示す補正を行う場合には、キャリッジ22の端面22bのプログラム上のX座標値は変えずに、X軸ボールネジ24上のX座標値を3010.100となるように補正している(図15(a)の二点鎖線で示す状態を参照)。こうすることで、キャリッジ22の端面22bの実際のX座標値をプログラム上のX座標値に一致させている。なお、ロケートピン27は、ワーク加工時には、テーブルTの下部に没入されている。そして、比較例に示す補正は、ワーク加工開始時に行っている。そのため、比較例に示す補正を行う際にワークWがロケートピン27に干渉することは抑制されている。
そして、X軸ボールネジ24上のX座標値の補正は、ワークWがセットされた状態で行われるため、ワークWの端面Waの実際のX座標値は、3010.200となってしまう。したがって、比較例に示す補正を行ってからワーク加工を開始すると、ワークWは、本来の位置よりも+0.200mmずれた位置に移動してしまう。その結果、パンチ穴Wbは、ワーク内において本来の位置から−0.200mmずれた位置に形成されてしまう(図16(c)参照)。
一方、実施例に示す補正を行う場合には、まず、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれ量だけ、キャリッジ22の端面22bのプログラム上のX座標値をオフセットさせる。そして、オフセットさせたX座標値を用い、キャリッジ22をプログラムに基づき移動させることで、ワーク加工を行う。
すなわち、実施例に示す補正を行う場合には、キャリッジ22の端面22bのX軸ボールネジ24上の移動は行わずに、プログラム上のX座標値を3010.100となるように補正している(図15(a)の実線で示す状態を参照)。こうすることで、キャリッジ22の端面22bを移動させずに、キャリッジ22の端面22bの実際の位置がプログラム上の基準X座標値となるようにしつつ、ワークWの端面Waの位置が3010.000となるようにしている。
そして、このような状態からワーク加工を行うようにすれば、ワーク加工時のワークWの移動量が位置ずれしていない状態と同じ移動量になるため、パンチ穴Wbを、ワーク内における本来の位置に形成することができる。なお、この実施例においても、X軸ボールネジ24の長さの変位に基づいて、キャリッジ22を所定距離移動させる際の回転量を補正している。
したがって、実施例に示す補正を行うようにすれば、複数のパンチ穴Wbのピッチのずれが解消される上、パンチ穴WbのワークW内における相対的な位置ずれも解消することができる。すなわち、X軸ボールネジ24が基準長さL1の状態でワーク加工を行ったときと同一の位置にパンチ穴Wbを形成することができる(図16(d)参照)。
このように、複数のワークWの連続加工よってキャリッジ22の端面22bの位置ずれが累積されて大きくなった場合や、長時間運転を停止することで位置ずれが大きくなった場合等に、比較例に示す補正を行うと、上述した問題が生じることになる。すなわち、ワークW内における本来の位置から大きくずれた部位にパンチ穴Wbが形成されてしまう。これに対して、実施例で示す補正を行うと、キャリッジ22の端面22bの位置ずれが大きくなったとしても、ワークW内における本来の位置にパンチ穴Wbを形成することができる。
以上、説明したように、本実施形態にかかるワーク移動位置決め装置20は、X軸方向(一方向)に延在するX軸ボールネジ(ボールネジ)24を備えている。また、少なくとも一端が自由端24aとなるようにX軸ボールネジ24を回転可能に支持する軸受け(支持部)25a,25bと、X軸ボールネジ24を回転させるX軸サーボモータ(駆動部)と、を備えている。また、X軸ボールネジ24にX軸方向に相対移動可能に螺合されるキャリッジ(移動体)22と、キャリッジ22に設けられ、ワークWをクランプ・アンクランプするワーククランプ23と、を備えている。また、ワークWのX軸方向の位置決めを行うロケートピン(位置決め部)27と、予め設定した基準長さL1に対するX軸ボールネジ24のX軸方向への長さ変位量を検出する長さ変位量検出部50と、を備えている。また、キャリッジ22のX軸ボールネジ24上の移動を制御する軸制御部40と、キャリッジ22の移動指令を軸制御部40へ出力するNC装置(制御部)30と、を備えている。
また、X軸ボールネジ24の長さが基準長さL1のときに、第1移動制御を行う際には、NC装置30は、キャリッジを基準ワーク移動量L4だけ移動させる移動指令を軸制御部40へ出力している。なお、第1移動制御は、ロケートピン27により位置決めした状態から予め設定した基準ワーク移動量L4だけワークWを移動させる制御のことである。
そして、長さ変位量検出部50が長さ変位量を検出した場合に第1移動制御を行う際には、NC装置30は、ワークWの移動量が基準ワーク移動量L4となるようにキャリッジ22のX軸ボールネジ24上の移動量を調整するようにしている。そして、調整した移動量だけキャリッジ22を移動させる移動指令をNC装置30から軸制御部40へ出力するようにしている。
こうすれば、X軸ボールネジ24の長さの変位にかかわらず、第1移動制御を行う際には、ワークWをロケートピン27により位置決めした状態から予め設定した基準ワーク移動量L4だけ移動させることができるようになる。すなわち、ワークWの位置決め状態から目標位置(例えば、加工位置K)までのX軸方向の移動量を、X軸ボールネジ24の長さの変位にかかわらず、ほぼ同一の移動量となるようにすることができ、ワークWの目標位置までの移動をより精度よく行うことができる。このように、本実施形態によれば、ワークWの移動位置決め精度が低下してしまうのを抑制することが可能なワーク移動位置決め装置20を得ることができる。
また、ワーク移動位置決め装置20は、ワークWがワーククランプ23によりクランプされているクランプ状態と、ワークWがワーククランプ23によりクランプされていないアンクランプ状態との切り替えを検出するワーククランプ切替検出部60を備えている。さらに、ワーク移動位置決め装置20は、取得部をさらに備えている。この取得部は、ワークWをロケートピン27により位置決めした状態で、キャリッジ22がワークWに対して予め設定した基準配置状態からX軸方向にずれた場合に、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれ量を取得するものである。
また、NC装置30が、予め設定された基準座標を用い、当該基準座標における所定の座標値L3までキャリッジを移動させる移動指令を軸制御部40へ出力している。
そして、NC装置30は、基準座標を補正する第1補正部31aと、キャリッジ22のX軸ボールネジ24上の移動量を補正する第2補正部31bと、を備えている。
ここで、第1補正部31aは、基準座標を、取得部が取得した位置ずれ量に基づいてオフセットさせたオフセット座標に補正するものである。一方、第2補正部31bは、基準座標における所定の座標値までキャリッジ22を移動させる際に、長さ変位量検出部50が検出した長さ変位量に基づいてキャリッジのX軸ボールネジ24上の移動量を補正するものである。
そして、長さ変位量検出部50が長さ変位量を検出するとともに取得部が位置ずれ量を取得している場合に、ワーククランプ切替検出部60がアンクランプ状態からクランプ状態への切り替えを検出した際には、下記の補正を行うようにしている。すなわち、第1補正部31aが位置ずれ量に基づいて基準座標をオフセット座標に補正する。そして、第2補正部31bが、オフセット座標における所定の座標値までキャリッジを移動させるように、キャリッジ22のX軸ボールネジ24上の移動量を補正する。
こうすれば、キャリッジ22がワークWに対して基準配置状態からX軸方向へ位置ずれした場合であっても、ワークWの位置決め状態から目標位置までのX軸方向の移動量をほぼ同一の移動量となるようにすることができる。したがって、ワークWの目標位置までの移動をより精度よく行うことができる。
さらに、本実施形態のように、第1補正部31aが補正したオフセット座標を用いてワーク加工を行うようにすれば、既存のワーク加工プログラムをそのまま用いて、ワークWの目標位置までの移動をより精度よく行えるようになる。そのため、ワークWがキャリッジ22に対してずれた状態でセットされた場合であっても、ワークW内の加工位置のずれを抑制することが可能なワーク移動位置決め装置20をより容易に得ることができる。
また、本実施形態では、長さ変位量検出部50が取得部を兼ねており、長さ変位量検出部50が検出したX軸ボールネジ24の長さ変位量に基づいて、キャリッジ22のワークWに対する基準配置状態からの位置ずれ量を取得している。
こうすれば、キャリッジ22の位置を検出するための近接センサ等の取得部を、長さ変位量検出部50とは別に設ける必要がなくなるため、部品点数の削減化を図ることができる上、ワーク移動位置決め装置20の構成の簡素化を図ることができるようになる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、ワーク移動位置決め装置を用いたワーク加工装置としてパンチプレス機を例示したが、ワーク加工装置は、これに限られるものではない。例えば、ワークにレーザ加工を施すレーザ加工機としてもよいし、レーザ加工機とパンチプレス機とを複合化させたレーザ・パンチ複合加工機としてもよい。また、ワークに印字加工を施す装置とすることも可能である。
また、上記実施形態では、長さ変位量検出部50が取得部を兼ねたものを例示したが、長さ変位量検出部50とは別に、取得部を設けるようにしてもよい。例えば、キャリッジ22の端面22bまでの距離を検出する近接センサを用い、ロケートピン27の端面27aの位置情報を予め記憶しておき、キャリッジ22の端面22bのロケートピン27の端面27aからの位置ずれ量を取得するようにしてもよい。こうすれば、X軸ボールネジ24が基準長さL1の状態で、キャリッジ22の端面22bとワークWの端面Waとが位置ずれした場合でも、ワークWの目標位置までの移動をより精度よく行うことができる。
また、上記実施形態では、長さ変位量検出部50として近接センサを用いたものを例示したが、これに限られるものではない。例えば、長さ変位量検出部50として温度センサを用い、X軸ボールネジ24の温度変化を測定することで、基準長さL1からの長さの変化を取得するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、一端が自由端、他端が固定端となるようにボールネジ(X軸ボールネジ24やY軸ボールネジ141)を支持したものを例示したが、ボールネジは、両端を自由端とした状態で支持されていてもよい。この場合、ボールネジの両端に近接センサ等の長さ変位量検出部50をそれぞれ配置し、ボールネジの両端の変位量からキャリッジ22やナット部材21aの位置ずれを取得できるようにするのが好ましい。
また、上記実施形態では、ワークセット後に位置ずれを解消させる補正を行うようにしたものを例示したが、これに限られるものではない。
例えば、X軸ボールネジ24の長さの変位を検出した際に、ワークWをセットしない状態で位置ずれを解消させる補正を行い、補正後にワークWをセットさせるようにしてもよい。また、長さ変位量検出部50がX軸ボールネジ24の長さの変位を常時監視し、X軸ボールネジ24の長さの変位を検出したら補正を行うようにしてもよい。このように、ワークセット前に補正したり、常時補正を行ったりすれば、ワークWをセットしたときに、キャリッジ22のワークWに対する位置ずれが発生してしまうのが抑制されて、ワークWの目標位置までの移動をより精度よく行うことができる。