JP2020012248A - 斜面安定化構造及び斜面安定化工法 - Google Patents

斜面安定化構造及び斜面安定化工法 Download PDF

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Abstract

【課題】施工期間の短縮化や、施工費用の削減を図りながら、斜面の局部崩壊を適切に防止することができる斜面安定化構造及び斜面安定化工法を提供する。【解決手段】斜面安定化構造10は、複数の帯状に形成された帯状網体20を斜面に格子状に敷設した網状フレーム12と、帯状網体20の交差部に位置する複数のアンカー50と、該アンカーの頭部に取付けられ、前記交差部を斜面に対して上方から緊張固定するプレート52とを備える。【選択図】図2

Description

本発明は、斜面安定化構造及び斜面安定化工法であって、特に、自然斜面や法面のすべりや崩壊を防止するための斜面安定化構造及び斜面安定化工法に関する。
自然斜面や、切土・盛土等の法面(以下、これらを含めて「斜面」という)は、雨の多く降る時期に地盤が緩んだ状態になることから、表層すべりや斜面崩壊の発生が懸念される。それ故、山の周辺に道路や鉄道、その他の建築物を建設する場合、すべりや斜面崩壊を防止するための対策が必要となる。
地山の斜面は、一般に、雨による風化が進みやすい、表面から1〜数mの移動層(表層)と、その下に存在する岩盤等の不動層(深層)とから形成されるものが多く、この移動層において斜面崩壊が発生する。
斜面の崩壊は、主に2つのパターンに分けられ、1つは、移動層と不動層との境界面(滑り面)に沿って、移動層が斜面下方へ滑って崩落する現象、いわゆる表層すべりである。もう1つは、境界面が維持された状態で表層の一部が抜け落ちる局部崩壊現象、いわゆる中抜けである。
従来、斜面崩壊を防止するための斜面安定化構造として、一般に、斜面上にコンクリートやモルタル等からなる格子状の法枠を形成するとともに、格子の各交点にアンカーを打設した法枠構造が用いられている(例えば、特許文献1)。
また、近年では、コンクリートやモルタルによる法枠を用いることのない斜面安定化構造として、安定化を図る斜面全面にネットを敷設し、間隔をおいて打設された複数のアンカーによりネットを斜面に固定する構造が知られている(例えば、特許文献2)。
さらに、より簡易な工法として、法枠やネットを用いることのないノンフレーム工法が知られている。ノンフレーム工法では、斜面に適宜の間隔をおいてアンカーを打設して、アンカーの頭部にプレートを取付けるとともに、隣接するアンカーの頭部をワイヤロープで連結している(例えば、特許文献3)。
上述した従来の斜面安定化構造では、複数のアンカーを不動層に固定するとともに、アンカー同士をコンクリート枠やワイヤロープで繋いで移動を拘束することで、滑り面に沿った表層すべりをアンカーによる抵抗で抑制し、斜面の大規模な崩壊を防止することができる。
特開平07−102574号公報 特開2001−11863号公報 特開2002−173939号公報
しかしながら、法枠構造や斜面を覆うネットを用いた構造では、自然斜面において立木を伐採する必要があり、工期の長期化に繋がっていた。さらに、コンクリートやモルタルを現場打ちする場合には、より工期が長くなり、施工費用が嵩むという問題がある。
一方、ワイヤロープによるノンフレーム工法では、立木を伐採したり、コンクリートの現場打ちを行ったりする必要がないことから、施工期間の短縮化や、施工費用の削減を図ることができる。
しかしながら、アンカー同士をワイヤロープで連結する構造であって、地盤斜面を押さえ込む法枠やネット等が存在しないことから、表層における斜面の局部崩壊を十分に防止することができないという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、施工期間の短縮化や、施工費用の削減を図りながら、斜面の局部崩壊を適切に防止することができる斜面安定化構造及び斜面安定化工法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の斜面安定化構造は、
斜面に、少なくとも横方向に伸長するように所定の間隔をあけて並列状態で敷設された複数の帯状に形成された帯状網体と、
該帯状網体の伸長方向に間隔をおいて配置され、該帯状網体を貫通する複数のアンカーと、
該アンカーの頭部に取付けられ、前記帯状網体を斜面に対して上方から緊張固定するプレートと、
を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、不動層まで伸びる複数のアンカーによって、斜面の表層すべりを防止することができる。また、これらのアンカー及びプレートによって斜面に固定された、少なくとも横方向に伸長して間隔をあけて並列する複数の帯状網体により表層が押さえ付けられることで、表層の一部が抜け落ちる斜面の局部崩壊を防止することができる。これにより、フレームを用いずにワイヤロープを用いていた従来のノンフレーム工法に比べて、広い面積で斜面を押さえ込むことができ、局部崩壊を適切に防止することができる。
また、帯状に形成された帯状網体で斜面を押さえ込む構成であるため、コンクリートやモルタルを用いて法枠を形成する従来の法枠構造に比べて、施工期間の短縮化や施工費用の削減、さらに軽量化を図ることができる。また、自然斜面において立木が有る場合であっても、立木を回避しながら帯状網体を敷設することができるので、立木を伐採する必要がなく、斜面全面をネットで覆う安定化構造に比べて施工期間を短縮して施工費用を削減することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の斜面安定化構造において、
前記複数の帯状網体が斜面に格子状に敷設された網状フレームを備え、
前記アンカーは、前記帯状網体の交差部に位置することを特徴とする。
この構成によれば、直線状に伸びる帯状網体を規則的に格子状に敷設することで、表面層の崩壊防止に要する網状フレームの押圧力を斜面に均一的に作用させることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の斜面安定化構造において、
前記網状フレームの格子開口を形成する前記帯状網体の側辺部に取り付けられ、該格子開口を囲む連続するループ状の補強部材を備えたことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の斜面安定化構造において、
前記帯状網体の少なくとも一方の側辺部に取り付けられ、該帯状網体の伸長方向に伸びるロープ状又は棒状の補強部材を備えたことを特徴とする。
請求項3及び請求項4の構成によれば、補強部材によって帯状網体を補強して、網状フレームの最大引張荷重を高めて、斜面の局部崩壊の抑止効果を高めることができる。また、補強部材は帯状網体の側辺部に取付けられるので、局部崩壊時に、補強部材の引張力を効果的に作用させることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の斜面安定化構造において、
前記帯状網体の幅方向に伸長して、両端部が前記帯状網体の側辺部に取付けられ、前記帯状網体の幅寸法を維持する棒状体を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、棒状体によって帯状網体の幅寸法を維持することで、例えば、雨風等の影響によって帯状網体の形状が崩れて、網状フレームによる斜面の押さえ込み力が低下することを防止することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の斜面安定化構造において、
前記プレートは、設置状態で、下面から突出して前記帯状網体の網目を貫通する少なくとも1つの突起部を有することを特徴とする。
この構成によれば、帯状網体に外力が加わって帯状網体が移動しようとした際に、プレートに設けられた突起部が帯状網体に引っかかって、帯状網体の移動が抑止されるので帯状網体の位置ずれを防止することができる。
また、請求項7に記載の斜面安定化工法は、
斜面に、横方向に間隔を置いて複数配置されるアンカーの列が上下方向に所定の間隔をあけて複数形成されるように、複数のアンカーを打設する工程と、
複数の帯状に形成された帯状網体を、少なくとも前記アンカーの列と重なって横方向に伸長するように、斜面に間隔をあけて並列状態で敷設する工程と、
前記アンカーの頭部にプレートを取付けて前記帯状網体を斜面に対して上方から緊張固定する工程と、を含むことを特徴とする。
この構成によれば、不動層まで伸びる複数のアンカーによって、斜面の表層すべりを防止することができる。また、これらのアンカー及びプレートによって斜面に固定された、少なくとも横方向に伸長して間隔をあけて並列する複数の帯状網体により表層が押さえ付けられることで、表層の一部が抜け落ちる斜面の局部崩壊を防止することができる。これにより、ワイヤロープを用いていた従来のノンフレーム工法に比べて、斜面を押さえ込む作用を高め、局部崩壊を適切に防止することができる。また、コンクリートやモルタルを用いて法枠を形成する従来の法枠構造に比べて、施工期間の短縮化や施工費用の削減、さらに軽量化を図ることができる。また、自然斜面において立木が有る場合であっても、立木を回避しながら帯状網体を敷設することができるので、立木を伐採する必要がなく、斜面全面をネットで覆う安定化構造に比べて施工期間を短縮して施工費用を削減することができる。
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の斜面安定化工法において、
前記帯状網体は、斜面に格子状に敷設され、前記アンカーは、前記帯状網体の交差部分に位置するように打設されることを特徴とする。
この構成によれば、直線状に伸びる帯状網体を規則的に格子状に敷設することで、表面層の崩壊防止に要する網状フレームの押圧力を斜面に均一的に作用させることができる。
本発明の斜面安定化構造及び斜面安定化工法によれば、施工期間の短縮化や、施工費用の削減を図りながら、斜面の局部崩壊を適切に防止することができる。
本発明の斜面安定化構造の第1の実施の形態を模式的に示す斜視図。 斜面安定化構造の平面図。 図2の要部拡大平面図。 図2のIV−IV線断面図。 斜面安定化構造による局部崩壊の抑制を説明する斜視図。 第2の実施の形態の斜面安定化構造の平面図。 図6のVII−VII線断面図。 第3の実施の形態の斜面安定化構造を模式的に示す斜視図。 (a)補強部材の取付位置の他の例を示す図、(b)は(a)のbで囲む領域の拡大図。 (a)はプレートの他の例を示す平面図、(b)は(a)のb−b線断面図。 図9に示すプレートと帯状網体の配置関係を示す図。 プレートのさらに他の例を示す斜視図。
(第1の実施の形態)
図1は、斜面安定化構造の第1の実施の形態を模式的に示す斜視図であり、図2は、斜面安定化構造の平面図、図3は、図2の要部拡大平面図である。斜面安定化構造10は、自然斜面や、切土・盛土等の法面を含む斜面に適用され、斜面の崩壊を防止するものであり、本実施の形態では、立木82のある斜面80に適用した例を示している。
斜面安定化構造10は、複数の帯状に形成された帯状網体20を斜面80に格子状に敷設した網状フレーム12と、帯状網体20の交差部に位置する、ロックボルト等のアンカー50と、アンカー50の頭部に取付けられて帯状網体20の交差部を斜面80に対して固定するプレート52とを備える。帯状網体20には、補強部材30と、棒状体40とが取り付けられている。
帯状網体20は、多数の網目を有する網体を、所定幅を有して一方向に伸びる帯状に形成したものである。この帯状網体20は、複数の網目が幅方向に並ぶように所定の幅寸法が設定されており、この幅寸法は、例えば、20cm〜100cm、好ましくは30cm〜70cmとすることができる。
本実施の形態において、帯状網体20は、金属製のワイヤーを編み込んで形成されている。このワイヤーは、例えば、JIS G 3506に規定された硬鋼線材から制作されたワイヤー、例えば、硬鋼線(JIS G 3521)や亜鉛めっき鋼線(JIS G 3548)等を用いることができる。硬鋼線材から制作されたワイヤーは、JIS G 3505に規定された軟鋼線材から制作されたワイヤーと比較して塑性変形し難く、高い引張強度及びバネ性を有する。ワイヤーは、素線引張強度400N/mm〜2,000N/mmの範囲のものが用いられ、好ましくは、1,000N/mm〜2,000N/mmの範囲のものが用いられる。ワイヤーを構成する硬鋼線の直径φは、2.6mm〜4.0mmの範囲であり、3.0mm以上のものが好ましい。ワイヤーには防食処理が施されていることが好ましく、有利な防食処理としては、硬鋼線の表面に先ずZn/Alメッキを施し、その上に飽和ポリエステル(PET)の被覆を設ける方法が挙げられる。なお、他の防食処理も適用可能である。また、ワイヤーは、金属製のものに限られず、例えば、カーボン繊維、ガラス繊維又はアラミド繊維等によって形成されたワイヤーや、防食性の高い樹脂製ワイヤーを用いることができる。さらに、帯状網体20として、ジオグリッドを使用してもよい。ジオグリッドを使用する場合、斜面80に沿ってほぼ平面状に敷設される。
本実施の形態の帯状網体20は、菱形形状の網目を有しており、網目の大きさは、例えば、一方(図3の短い方)の対角線長さが50〜150mm、他方(図3の長い方)の対角線長さが50〜200mmとすることができる。なお、帯状網体20の網目の形状はこれに限られず、三角形状等の多角形状であってもよく、円形状や楕円形状であってもよい。また、これら形状を組み合わせた網目形状としてもよい。
複数の帯状網体20は、縦方向(斜面80の上下方向)と横方向(上下方向とほぼ直交する方向)とに伸びて、四角形格子状に敷設され、網状フレーム12を形成している。また、帯状網体20は、立木82の間を通るように敷設されている。また、縦方向に伸びる縦長帯状網体21と、横方向に伸びる横長帯状網体22とは、図3(a)に示すように、それぞれ、菱形形状の網目を有し、菱形形状の長い方の対角線が、斜面崩壊の発生時に引張力が高く作用する方向となるように各帯状網体21,22が形成されており、具体的には、縦長帯状網体21では長い方の対角線が縦方向、横長帯状網体22では横方向となっている。また、帯状網体20の側辺に位置する菱形網目の短い方の対角線側の端部には、ねじり加工が施された結束部25が形成されており、図3(b)に示すように、2つの結束部25A及び25Bの環状部が連結されている。
網状フレーム12の1つの格子の大きさ(すなわち、隣り合う2つの縦長帯状網体21の幅方向中央位置の間の距離、及び、隣り合う2つの横長帯状網体22の幅方向中央位置の間の距離)は、適宜設定することができ、例えば、約1m〜3mとすることができる。
なお、網状フレーム12は、表面がモルタルやコンクリートでコーティングされた構成であってもよい。
各帯状網体20には、補強部材30と棒状体40とが取り付けられている。補強部材30は、ロープ状又は棒状であって、帯状網体20の少なくとも一方の側辺部に、ネット体20の伸長方向に伸びるように取り付けられる。本実施の形態では、図3に示すように、帯状網体20の両側辺部にロープ状の補強部材30が取り付けられている。
補強部材30は、帯状網体20を構成するワイヤーと同様のワイヤーで形成することができる。本実施の形態では、帯状網体20を構成するワイヤーよりも直径の大きい硬鋼線で補強部材30を形成している。補強部材30を構成する硬鋼線の直径φは、6.0mm〜11mmの範囲であることが好ましい。なお、直径の大きは帯状網体20のワイヤーと同じ又は小さくてもよいが、大きくすることでより高い引張強度を得ることができる。補強部時30は、帯状網体20の網目を通るように波状に絡められた状態で取り付けられている。なお、図示していないが、補強部材30は、これとは別体の線材により伸長方向に所定の間隔をおいて複数個所、帯状網体20に結び付けられる構成であってもよい。
補強部材30は、帯状網体20に対して、緩みなく張り渡された状態であることが好ましい。ここで、緩みなく張り渡されるとは、補強部材30が帯状網体20に取付けられ、且つ斜面崩壊等の外的作用による引張力が発生していない通常状態では、ワイヤロープ30に引張力がほぼ作用していない又は僅かな引張力の作用があり、斜面崩壊が発生した際に、直ぐに引張力が作用する程度に張り渡されることをいい、例えば、通常状態では、補強部材30の引張応力が零、又は破断応力の5%以下となるように設定することができる。
棒状体40は、帯状網体20の幅寸法を維持するためのものであり、帯状網体20の幅方向に伸長して、両端部が帯状網体20の側辺部に取付けられる。棒状体40は、例えば、金属材料や樹脂材料で形成することができ、補強部材30よりも高い剛性を有することが好ましい。棒状体40の両端部の取付け構造は、例えば、棒状体40に形成した貫通孔に線材を通して帯状網体20又は補強部材30に結び付ける構造や、棒状体40の両端部に溝を形成して、帯状網体20又は補強部材30を溝に嵌め込む構造等を採用することができる。
アンカー50は、帯状網体20の交差部にそれぞれ配置され、図4に示すように、地中の滑り面85のより下層の不動層88まで伸長している。
プレート52は、アンカー50が挿通される貫通孔を有する板材であり、斜面80との間に縦長帯状網体21及び横長帯状網体22を挟み込んだ状態で、アンカー50の頭部に螺合されるナット54により斜面80に固定される。プレート52は、例えば、鋼板や補強材が埋め込まれた樹脂板等によって形成することができる。なお、図示例では、帯状網体20の交差部の略中央に、交差部の面積よりも小さいプレート52を設置しているが、プレート52の大きさはこれに限られず、例えば、交差部のほぼ全域を覆う大きさに設定してもよい。なお、図示していないが、さらに、アンカー50頭部及びナット54を覆うキャップを設けてもよい。
図3(a)に示すように、本実施の形態では縦長帯状網体21及び横長帯状網体22の交差部に、棒状体40を設けており、縦長帯状網体21の棒状体40及び横長帯状網体22の棒状体40は、それぞれ、交差した状態で、プレート52によって斜面80に押付けられて固定されている。
次に、上述した斜面安定化構造10の施工方法を説明する。
まず、斜面80に、複数のアンカー50を表層である移動層86から滑り面85よりも下層の不動層88まで届くように間隔をおいて打設する。アンカー50は、横方向に間隔をおいて複数配置されるアンカー50の列(すなわち、アンカー50が横方向に並ぶ列)が、上下方向に所定の間隔をあけて複数形成されるように、打設される。本実施の形態では特に、アンカー50が、所定の間隔をおいて格子の交点となる位置に配置される。
次に、打設されたアンカー50が交差部に位置するように、補強部材30が取り付けられた複数の帯状網体20を格子状に敷設し、網状フレーム12を形成する。具体的には、上下方向に並ぶアンカー50の列に重なるように、縦長帯状網体21を所定の間隔をあけて並列状態で敷設し、横方向に並ぶアンカー50の列に重なるように、横長帯状網体22を所定の間隔をあけて並列状態で敷設する。アンカー50及び帯状網体20は、斜面80の立木82を避けるように配置され、帯状網体20は立木82の間を伸長する。棒状体40は、帯状網体20を敷設した後、必要に応じて所望の箇所に取付けることができる。
次に、帯状網体20から突出したアンカー50の頭部をプレート52の貫通孔に通し、その後、ナット54を螺合して、プレート52をアンカー50に取付けるとともに、帯状網体20の交差部を斜面80に対して上方から緊張固定する。
その後、必要に応じて、網状フレーム12の表面にモルタル又はコンクリートを吹き付けて、コーティングを行う。このようなコーティングを行うことで、帯状網体20の防錆硬化を得ることができる。
なお、補強部材30は、斜面80に敷設した後、プレート52を取付ける前又は取付けた後に帯状網体20に取付けてもよい。また、網状フレーム12の交差部と交差部との間に配置される棒状体40は、プレート52を取付けた後に設置してもよい。
次に、上述した斜面安定化構造10の作用を説明する。
図4に示すように、滑り面85に沿って移動層86が斜面80下方へ滑る表層すべり(白抜き矢印で示すすべり)に対しては、移動層86を貫通して不動層88に固定された複数のアンカー50の引抜き抵抗性、すなわち、斜面80下方に荷重が作用した際にアンカー50に作用するせん断力等によって、移動層86が滑ろうとする際にアンカー50に引張力が発生し、これにより、すべりの発生が抑止される。
図5に示すように、滑り面85が維持された状態で移動層86の一部87が抜け落ちる中抜けに対しては、斜面80に固定された網状フレーム12の引張力により表層が押さえ付けられることで中抜けの発生が抑止される。また、網状フレーム12全体により、比較的大きな表層の崩壊も防止することができ、帯状網体20を規則的に格子状に敷設することで、網状フレーム12の押圧力を斜面80に均一的に作用させることができる。さらに、網状フレーム12の網目内の立木82の根が表層を押さえることで、網目内に生じる小さな崩壊を効果的に抑制することができる。
このように、網状フレーム12を用いた斜面安定化構造10では、表層すべりと中抜けとの両方を効果的に防止することができるとともに、コンクリートを用いた従来の法枠構造に比べて、施工期間の短縮化や施工費用の削減を図ることができる。また、網状フレーム12が帯状網体20で形成されているため、コンクリート法枠に比して雨等による浸食に対する耐久性が高い。また、斜面80に立木82が有る場合であっても、立木82を回避しながら格子状に帯状網体20を敷設することができる。特に、帯状網体20は、コンクリート枠と異なり、柔軟性が高く施工性に優れるため、立木82の回避が容易である。また、立木82を伐採する必要がないため、斜面80全面をネットで覆う従来のネット構造に比べて施工期間の短縮や施工費用の削減を図ることができるとともに、立木82を斜面崩壊防止に利用することが可能である。
さらに、本実施の形態の斜面安定化構造10では、ロープ状の補強部材30によって帯状網体20を補強することで、網状フレーム12の最大引張荷重を高めて、斜面80の局部崩壊の抑止効果を高めることができる。また、棒状体40によって帯状網体20の幅寸法を維持しているので、例えば、雨風等の影響によって帯状網体20の形状が崩れて、網状フレーム12による斜面の押さえ込み力が低下することを防止することができる。
(第2の実施の形態)
次に、図6及び図7を用いて、斜面安定化構造10の第2の実施の形態について説明する。なお、図6及び図7では、第1の実施の形態と対応する部位に同一符号を付している。また、以下に説明する第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成については詳細な説明を省略する。
本実施の形態において、網状フレーム12を構成する帯状網体20は、横方向に伸びる複数の横長帯状網体22と、斜め方向(縦方向及び横方向に交差する方向)に伸びる複数の第1傾斜帯状網体23及び第2傾斜帯状網体24とを含む。第1傾斜帯状網体23と第2傾斜帯状網体24とは、互いに交差する方向に伸びており、網状フレーム12は、3方向に伸びる帯状網体22,23,24により、略三角形状の網目を有する三角形格子状に形成される。
各帯状網体22,23,24の交差部には、アンカー50が打設されており、アンカー50の頭部には、ナット54により帯状網体20を斜面80に固定するプレート52が取り付けられている。
なお、横長帯状網体22、第1傾斜帯状網体23及び第2傾斜帯状網体24には、それぞれ、側辺部に補強部材30を取付けることが可能である。また、各帯状網体22,23,24の幅寸法を維持する棒状体40を適宜設置することができる。
本実施の形態の斜面安定化構造10では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるとともに、帯状網体20の交差部に位置するアンカー50が千鳥状に配置されるので、立木82を避けて施工しやすい。
(第3の実施の形態)
次に、図8を用いて、斜面安定化構造10の第3の実施の形態について説明する。なお、図8では、第1の実施の形態と対応する部位に同一符号を付している。また、以下に説明する第3の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成については詳細な説明を省略する。
本実施の形態では、帯状網体20が、斜面80の横方向に伸長するように、上下方向に間隔をあけて並列状態で敷設されている。アンカー50は、帯状網体20を貫通した状態で、帯状網体20の伸長方向に間隔をおいて複数配置されており、帯状網体20は、アンカー50の頭部にナット54を用いて取付けられたプレート52により、斜面80に対して上方から緊張固定されている。
このように、帯状網体20がフレーム構造を形成することなく、横方向にのみ伸長しているものであっても、複数のアンカー50により斜面80の表層すべりを防止することができるとともに、複数の帯状網体20により表層が押さえ付けられることで、斜面80の局部崩壊を防止することができる。特に、横方向に伸長する帯状網体20により、表層の一部が斜面下方へ落下することを効果的に防止することができる。なお、帯状網体20には、棒状体40と、図示していない補強部材30を取付けることが可能である。
(変形例1)
次に、図9を用いて補強部材の取付位置の他の例を説明する。図9(a)において2点鎖線で示すように、変形例の補強部材32は、網状フレーム12の格子開口28を囲む態様で帯状網体20の側辺部に連続するループ状に取付けられる。ここで、連続するループ状とは、1本又は2本以上の紐状の補強部材を結び付けてループ状にしたものを含む意味である。図示例では、四角形の格子開口28に沿って四角形状にロープ状の補強部材32が設けられている。なお、補強部材32は、所要の引張力を受けた際に、ループの長さがほぼ変わらず、格子開口28を維持可能となるように、弾性性能が低く伸縮し難い部材、例えば、金属材料等で形成されることが好ましい。図9(b)に示すように、補強部材32は、縦長帯状網体21及び横長帯状網体22のそれぞれの網目を通るように波状に絡められた状態で取り付けられている。なお、図示していないが、第2の実施の形態に示す三角形状の格子開口を有する網状フレーム12に対しても、同様に、格子開口を囲むように補強部材32を取付けることが可能である。補強部材32は、網状フレーム12が敷設された後に、格子開口28に沿って取付けられる。
補強部材32をこのように格子開口28を囲む態様で配設することで、帯状網体20に引張力が作用した際に、帯状網体20の幅が狭まることを防止することができる。なお、図示していないが、斜面安定化構造10は、本変形例の補強部材32と、第1の実施の形態の補強部材30とを両方備えた構成とすることができる。
(変形例2)
次に、図10及び図11を用いてプレートの他の例を説明する。本変形例のプレート60は、略十字形状の平板からなるプレート本体62と、十字の中央部に形成された貫通孔64と、プレート本体62の一方の面から突出する複数の突起部66とを備える。突起部66は、プレート本体62の中央部から4方向に延びる各延長部63において、1つ以上設けられていることが好ましく、本変形例では、それぞれの延長部63に3つの突起部66が形成されている。
プレート60は、突起部66が設けられている側の面が下面(すなわち、斜面80と対向する面)となるように設置され、貫通孔64にはアンカー50の頭部が挿通される。図11に示すように、各突起部66は、網状フレーム12の交差部において、重ねられた縦長帯状網体21及び横長帯状網体22のそれぞれの網目を貫通するように配置される。プレート60は、金属材料や樹脂材料によって形成することができる。
このプレート60では、帯状網体20に外力が加わって、例えば、縦長帯状網体21と横長帯状網体22の相対位置がずれる等、帯状網体20が移動しようとした際に、プレート60の突起部66が帯状網体20を形成しているワイヤーに引っかかって、これと係止することにより、帯状網体20の移動が抑止される。これにより、帯状網体20の位置ずれを防止することが可能となる。
(変形例3)
次に、図12を用いてプレートのさらに他の例を説明する。本変形例のプレート60は、変形例2に記載したものと同様のプレート本体62、貫通孔64及び複数の突起部66を備えるとともに、プレート本体62の中央部上面(突起部66が形成される面と反対の面)から突出し、貫通孔64と連通する筒体67と、プレート本体62の上面に設けられた複数のリブ68とを有する。リブ68は、各延出部63に設けられ、プレート本体62の上面から突出し、プレート本体62の筒体67から延出部62の先端へ向かって延びる板状に形成されている。リブ68の高さは、延出部63の先端から基端に向かって高くなるように形成されている。
本変形例のプレート60では、貫通孔64及び筒体67にアンカー50の頭部が挿通された状態で、筒体67の頂部においてナット54を螺合することで、プレート60が斜面に固定される。プレート60の筒体67及びリブ68は、プレート本体62及び突起部66と同一の材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。例えば、プレート本体62及び突起部66を樹脂材料で形成し、筒体及びリブ68を金属材料で形成することが可能であり、樹脂製のプレート本体62及び突起部66を用いることで、帯状網体20を構成する金属製のワイヤーが、プレート本体62に当接して擦れて、ワイヤーのコーティング層が剥がれることを防止することができる。
なお、変形例2及び3のプレート60において、プレート本体62は、十字状ではなく、図12において仮想線69で示すように、略菱形形状に形成されていてもよい。このようにプレート本体62の面積を大きくすることで、プレート60による押し付け力を高めて斜面保護効果を高めることができる。
なお、本発明は上述した各実施の形態及び各変形例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、網状フレーム12は、帯状網体20を四角形格子状又は三角形格子状に敷設したものに限られず、その他の多角形格子状に敷設したものでもよい。
10 斜面安定化構造
12 網状フレーム
20 帯状網体
30,32 補強部材
40 棒状体
50 アンカー
52,60 プレート
54 ナット
80 斜面
82 立木
85 滑り面
88 不動層

Claims (8)

  1. 斜面に、少なくとも横方向に伸長するように所定の間隔をあけて並列状態で敷設された複数の帯状に形成された帯状網体と、
    該帯状網体の伸長方向に間隔をおいて配置され、該帯状網体を貫通する複数のアンカーと、
    該アンカーの頭部に取付けられ、前記帯状網体を斜面に対して上方から緊張固定するプレートと、
    を備えたことを特徴とする斜面安定化構造。
  2. 前記複数の帯状網体が斜面に格子状に敷設された網状フレームを備え、
    前記アンカーは、前記帯状網体の交差部に位置することを特徴とする請求項1に斜面安定化構造。
  3. 前記網状フレームの格子開口を形成する前記帯状網体の側辺部に取り付けられ、該格子開口を囲む連続するループ状の補強部材を備えたことを特徴とする請求項2に記載の斜面安定化構造。
  4. 前記帯状網体の少なくとも一方の側辺部に取り付けられ、該帯状網体の伸長方向に伸長するロープ状又は棒状の補強部材を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の斜面安定化構造。
  5. 前記帯状網体の幅方向に伸長して、両端部が前記帯状網体の側辺部に取付けられ、前記帯状網体の幅寸法を維持する棒状体を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の斜面安定化構造。
  6. 前記プレートは、設置状態で、下面から突出して前記帯状網体の網目を貫通する少なくとも1つの突起部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の斜面安定化構造。
  7. 斜面に、横方向に間隔をおいて複数配置されるアンカーの列が上下方向に所定の間隔をあけて複数形成されるように、複数のアンカーを打設する工程と、
    複数の帯状に形成された帯状網体を、少なくとも前記アンカーの列と重なって横方向に伸長するように、斜面に間隔をあけて並列状態で敷設する工程と、
    前記アンカーの頭部にプレートを取付けて前記帯状網体を斜面に対して上方から緊張固定する工程と、を含むことを特徴とする斜面安定化工法。
  8. 前記帯状網体は、斜面に格子状に敷設され、前記アンカーは、前記帯状網体の交差部分に位置するように打設されることを特徴とする請求項7に記載の斜面安定化工法。
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