JP2010196460A - 斜面保護方法及びそれに使用する網状体並びに斜面保護構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】施工性に優れ、セメントや大型の機械を要することなく斜面の崩壊抑止を行える斜面保護方法及びそれに使用する網状体並びに斜面保護構造体を提供すること。
【解決手段】適宜間隔Lで平行に複数本の第1斜面補強用紐状体B1が装着された網状体4を、第1斜面補強用紐状体B1がそれぞれ略等高線に沿うように斜面2へ設置した後、第2斜面補強用紐状体B2,B2を前記第1斜面補強用ベルトB1と略直交するように適宜間隔N’’で網状体4上へ設置し、両斜面補強用紐状体B1、B2,B2の交差部10の近傍にアンカー8aを打設することで第1斜面補強用紐状体B1と第2斜面補強用紐状体B2,B2を斜面2へ固定するようにしている。
【選択図】図8
【解決手段】適宜間隔Lで平行に複数本の第1斜面補強用紐状体B1が装着された網状体4を、第1斜面補強用紐状体B1がそれぞれ略等高線に沿うように斜面2へ設置した後、第2斜面補強用紐状体B2,B2を前記第1斜面補強用ベルトB1と略直交するように適宜間隔N’’で網状体4上へ設置し、両斜面補強用紐状体B1、B2,B2の交差部10の近傍にアンカー8aを打設することで第1斜面補強用紐状体B1と第2斜面補強用紐状体B2,B2を斜面2へ固定するようにしている。
【選択図】図8
Description
この発明は、モルタル法枠を用いることなく斜面崩壊を抑止する斜面保護方法及びそれに使用する網状体並びに斜面保護構造体に関するものである。
従来、斜面崩壊を抑止する手法として、モルタルやコンクリート等によって法枠を形成する吹付法枠工法が主流であった。吹付法枠工法とは、格子状に鉄筋及び型枠を配置し、これにモルタルやコンクリート等を吹付けて斜面上に法枠が形成される工法である。
しかしながら、吹付法枠工法は確かに斜面崩壊抑止力が高いものの、明らかに人工物と判る構造物であるため、周囲の自然環境に溶け込まずに景観を損ねてしまう場合があった。
しかしながら、吹付法枠工法は確かに斜面崩壊抑止力が高いものの、明らかに人工物と判る構造物であるため、周囲の自然環境に溶け込まずに景観を損ねてしまう場合があった。
そこで、近年は、下記の特許文献1,2などに代表される、大掛かりな吹付法枠を用いることなく斜面を保護する方法が開発されつつある。これらは、斜面上に帯状の網を格子状に設置し、それに緑化可能な砂基材を吹き付けることによって、法枠自体を緑化させて周囲の景観性を損なうことなく斜面を保護する技術となっている。
しかし、これらの工法では、枠の形成や緑化のために吹付機械を使用する必要があり、施工に要する期間が長くなったり施工費が高くなる傾向にあった。
この発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、施工性に優れ、セメントや大型の機械を要することなく斜面の崩壊抑止を行える斜面保護方法及びそれに使用する網状体並びに斜面保護構造体を提供することである。
上記目的を達成するために、この発明の斜面保護方法は、適宜間隔で平行に複数本の第1斜面補強用紐状体が装着された網状体を、第1斜面補強用紐状体がそれぞれ略等高線に沿うように斜面へ設置した後、第2斜面補強用紐状体を前記第1斜面補強用紐状体と略直交するように適宜間隔で網状体上へ設置し、両斜面補強用紐状体の交差部またはその交差部の近傍にアンカーを打設することで第1斜面補強用紐状体と第2斜面補強用紐状体を斜面へ固定することを特徴としている(請求項1)。さらに、打設する一部または全てのアンカーを、硬化物質によって斜面内部の地盤に固定するとともに、交差部の前記両斜面補強用紐状体を斜面と受圧板で挟みこむように、アンカー頭部に締結部材を装着するようにしてもよい(請求項2)。
また、この発明は別の観点から、請求項1または請求項2に記載の斜面保護方法に用いられる網状体を提供する(請求項3)。
そして、この発明はさらに別の観点から、請求項1または請求項2に記載の斜面保護方法によって形成されてなる斜面保護構造体を提供する(請求項4)。
この発明で用いる網状体は、可撓性および適宜の強度を有するものであれば特定の素材に限定されるものではなく、基本的に周知の植生マット(代表的なものとして、例えば植物種子を下部に保持する一枚の薄綿を、例えば耐久性のあるプラスチック繊維で適当な目合いに編織したネットの下面に保持するとともに、そのネットに、二重の袋状部分を形成して有機質材料や保水材及び肥料等の植生基材を収容した植生袋をその袋状部分に挿入収容されてなるものがある)などで使用している構成のものは全て採用することができるとともに、ある程度の斜面の浸食防止(斜面の保護)効果をもたせるため目合いは、植物種子の発芽や幼芽の生育の妨げとならない程度に小さくすることにより斜面を覆い隠す面積をできるだけ多くするよう構成されたものを用いるのが好ましい。そして、網状体として、例えば、平面視矩形形状をなし、網状体幅が1m程の長尺(2m程の網状体長さ)なものが用いられる。なお、網状体としての前記プラスチックネットに代えて、ラス金網(菱形金網)、あるいは、亀甲金網等を用いてもよい。
この発明で用いる斜面補強用紐状体は、ポリエステル繊維やポリアミド系繊維などの合成繊維を素材とするもの、または、ステンレス線や炭素鋼金属線などの金属材料を素材とするものであり、腐食に対して極めて強いという耐腐食性特性、および太陽光などからの紫外光によって劣化するのを効果的に防止しうる耐光(耐紫外光)特性を有するものが好ましい。
この斜面補強用紐状体は、引張強度が10kN〜100kNであることが好ましい。そのためには合成繊維の中でもより高強度なものを用いることが好適であり、例えばテトロン(登録商標)は、上記特性に加え、ナイロンに比べて荷重をかけた場合の伸びが極めて少ないという特性を持っており、そのために寸法安定性にも優れており、この発明に適用するのに最も好ましいものとして挙げることができる。また、異なる素材の繊維を組み合わせて斜面補強用紐状体を編織することも可能であり、例えば高強度ポリエステル繊維にアラミド繊維を組み合わせることで、より強力な斜面補強用紐状体を形成することができ好ましい。
そして、例えば網状体幅a(図4,11参照)が1m程である長尺(例えば5〜10m程の網状体長さ)の網状体に予め装着される第1斜面補強用紐状体と、第1斜面補強用紐状体がそれぞれ略等高線に沿うように網状体を斜面へ設置した後、前記第1斜面補強用紐状体とX−Y座標(図1参照)平面において略直交するように適宜間隔で網状体上へ設置される第2斜面補強用紐状体は、共に網状体の形状に合わせる形で長尺の形状で、所定の太さのロープ状や所定の幅(紐状体短手方向の長さ)と厚みを有するベルト状をなしている。ロープ状の場合は前記ロープ太さを直径3〜50mmとするのが好ましく、ベルト状の場合、前記ベルト幅(ベルト短手方向の長さ)W(図1参照)は75〜200mmが好ましく、前記ベルト厚みD(図4参照)は1〜5mmが好ましい。そして、これら斜面補強用紐状体の形状は、網状体の大きさ(網状体幅と網状体長さ)に応じて、長さも含めて適宜設定されうる。なお、第1斜面補強用紐状体のベルト長さAは、図4に示すように網状体幅aと略同じ寸法(A≒a)に設定するか、あるいは、図6に示すように網状体幅aよりも極小長さΔaだけ長い寸法(A=a+Δa)に設定するのが好ましい。図1は、両矢印Xで示す方向において隣接する網状体の互いの隣接端面部分m,n同士を上下に重ね合わせた状態で網状体を斜面へ設置する場合を示している。隣接端面部分m,nは網状体の両矢印Yで示す方向に沿う端面部分である。一方、図6,8は、網状体の互いの隣接端面部分m,n同士を上下に重ね合わせないで、隣接する網状体の隣接端i,jを隣接、または、当接させた状態で斜面へ設置する場合の網状体を示している。
この発明では、両斜面補強用紐状体の交差部において、図3に示すように、両斜面補強用紐状体B1 ,B2 を貫通する状態でアンカー8aを打設することで両斜面補強用紐状体B1 ,B2 を連結して斜面に固定する場合のみならず、例えば図8,10,12に示すように、両斜面補強用紐状体B1 ,B2 の交差部の近傍にアンカーを打設し、両斜面補強用紐状体B1 ,B2 をアンカーおよび前記受圧板で押圧することにより斜面へ固定する場合も含む。なお、この発明において、「略直交する」という用語は、直角またはそれに近い角度で互いに交わる場合のみならず、例えば図15に示すように、実際には交わっていないが延長すれば前記のような角度で交わる場合をも含む。また、「交差部またはその交差部の近傍」という用語は、実際に両斜面補強用紐状体が交差する交差部またはその近傍のみならず、例えば図15に示すように、実際には交差していないが、延長すれば交差するであろう交差部またはその近傍を含む。
この発明によれば、以下の効果を奏する。(1)法枠用セメントを使用する必要がないため、大型機械の搬入搬出労力、利用コストを発生させること無く斜面の崩壊を抑止する方法を提供することができる。(2)吹付など特殊な工程は無く、アンカーを打設するだけであるため、専門業者でなくても施工可能である。(3)人力施工であるため、大型機械が搬入不可能な現場(山間部など道路整備がされていない場所や、施工地付近で機械設置場所が確保できない場所など)においても何ら問題なく施工が可能である。そのため、施工性に優れ、法枠用セメントや大型の機械を要することなく斜面の崩壊抑止を行える斜面保護方法及びそれに使用する網状体並びに斜面保護構造体を提供することができる。
図1〜5はこの発明の第1の実施形態を示す。図1〜5において、1は施工対象である法面(斜面の一例)2に敷設される肥料袋付植生マットである。この植生マット1は、例えば牧草種子、野草種子、花の種子などの植物種子vを下部に保持する一枚の保水性の高い薄綿(シート状体の一例)3を、例えば耐久性のあるプラスチック繊維で適当な目合いに編織した平面視矩形の長尺ネット(網状体の一例)4の下面に保持するとともに、前記プラスチックネット4の複数箇所に二重編みした肥料袋収容部5をネット幅方向(両矢印Pで示す方向;図4参照)と平行になるように適宜間隔M(例えば40cm)に設け、これら収容部5に有機質材料や保水材及び肥料等の植生基材bが収容された例えば不織布などからなる肥料袋6が挿入収容されてなる。前記薄綿3は、例えば薄綿ラップや不織布などからなるものであり、例えば、簡単に水で解ける(分散する)水解性のシートでもよく、生分解性の繊維からなるシートでもよい。なお、網状体の例として、前記プラスチックネット4に代えてラス金網(菱形金網)、あるいは、亀甲金網を用いてもよい。
以下、特徴的構成について説明する。前記各ネット4には、適宜間隔N(例えば50〜100cm)で平行に複数本の第1斜面補強用ベルト(紐状体の一例)B1 が装着されている。すなわち、ネット4の複数箇所に肥料袋収容部5とは別に、二重編みしたベルト収容部7を肥料袋収容部5を挟んで、かつ前記P方向と平行になるように適宜間隔Nに設け、これらベルト収容部7に平面視矩形形状でベルト幅W、ベルト厚みDおよびベルト長さAを有する長尺の第1斜面補強用ベルトB1 が前記P方向と平行になるように挿入収容されている。B2 は、第1斜面補強用ベルトB1 と同一のベルト幅W、ベルト厚みD(図5参照)を有する第2斜面補強用ベルト(紐状体の一例)である。この第2斜面補強用ベルトB2 は、第1斜面補強用ベルトB1 とX−Y座標平面において略直交するように適宜間隔N’でネット4の上面に設置されている。この実施形態では、第2斜面補強用ベルトB2 は上下に重なり合う隣接するネット4,4のうち上側のネット4の隣接端面部分mの上面に設置されているので、前記間隔N’は略網状体幅aである。そして、第1斜面補強用ベルトB1 がそれぞれ法面2の略等高線に沿うように法面2へ設置した後に第2斜面補強用ベルトB2 がネット4上へ設置される。この際、第2斜面補強用ベルトB2 はロール状に巻き上げられた状態になっているので、図1に示すように、これを巻き戻すようにして法面2の上方から一本ものとして連続して敷設される。なお、両斜面補強用ベルトB1 ,B2 には、両斜面補強用ベルトB1 ,B2 の交差部10(図1参照)にアンカーを打設する際に主アンカー8aおよび補助アンカー8bが挿通可能なアンカー挿通穴9がアンカー挿通予定部位S(図5参照)に形成されている。例えば主アンカー8aは直径16mmである。
さらに、この実施形態では、両斜面補強用ベルトB1 ,B2 の交差部10において、両斜面補強用ベルトB1 ,B2 を貫通する状態でアンカーを打設することで第1斜面補強用ベルトB1 と第2斜面補強用ベルトB2 を連結させるとともに法面2へ固定する構成を採用している。そして、この実施形態では、打設する一部の主アンカー8aを接着剤、セメントなどの硬化物質Gによって法面内部の地盤Tに固定するとともに、交差部10の前記両斜面補強用ベルトB1 ,B2 を法面2と受圧板11で挟みこむように、受圧板11を介して主アンカー8aの頭部を締結部材であるボルト12で締め付けるようにしている。
13は、ドリル等の掘削工具で法面内部の地盤Tを掘削することにより形成された50cm程度の深さdを有する掘削穴(図3参照)である。そして、前記主アンカー8aは、掘削穴13に挿通可能な外径を有する細長いロッド(円柱体)である。主アンカー8aは、上端部(アンカー頭部)に、座金14の中央孔14aが挿入可能な大きさでボルト12に螺合する雄ねじ部分15を有する一方、下端部に、接着剤、セメントなどの硬化物質Gが収納されているカプセル16の内部底面部分に形成された雌ねじ16aに螺合する雄ねじ部分17を有する。なお、主アンカー8aとして、頭部が横方向に屈曲した形状のものを用いてもよい。前記カプセル16は、例えば合成樹脂製で、未使用時に蓋部材(図示せず)で閉栓される口部18と、前記雌ねじ16aが形成された底部19と、口部18から下方に末広がり状に連設された傘状部20と、底部19から上方に末広がり状に連設され傘状部20に至る逆傘状部21で構成され、さらに、口部18、底部19、傘状部20、逆傘状部21は合成樹脂により一体成形されている。傘状部20と逆傘状部21は、破壊されやすい薄い厚みの部分tと、この厚みよりも分厚い厚みfの部分とを交互に有する周面によって形成されている。
22は、少なくともカプセル16の口部18に当接可能な内径と掘削穴13に挿通可能な外径を有し、口部18に当接し、打設工具による下方への押圧力により前記薄い厚みの部分tを破る機能を有する筒状体である。すなわち、この筒状体22は、アンカー打設作業時において、主アンカー8aの下端部に連結されたカプセル16が主アンカー8aの掘削穴13挿入後において硬化物質Gをカプセル16から掘削穴13内に排出させるためカプセル16だけを破壊するためのものである。すなわち、主アンカー8aと共に掘削穴13にカプセル16が挿入され、かつカプセル16が掘削穴13の底まで挿入された状態で、筒状体22を、その先端部22aがカプセル16の口部18に当接するまで掘削穴13に挿入する。この状態では、アンカー頭部の雄ねじ部分15の大半は掘削穴13の入口よりも外側に突出しているとともに、主アンカー8aの上面15bよりも筒状体22の上面22bの方が所定長Δだけ高く位置している。続いて、筒状体22の上面22bを金槌等の打設工具で打設することにより、カプセル16の口部18に筒状体22を介して負荷がかかり、その負荷によって最終的にあたかも傘が開くような状態でカプセル16の傘状部20と逆傘状部21が変形することにより前記薄い厚みの部分tが破壊して硬化物質Gがカプセル16から掘削穴13内に排出されうる。この際、傘状部20と逆傘状部21の薄い厚みの部分tの破壊によりカプセル16の高さが低くなることから、筒状体22の上面22bが前記所定長Δだけ下方へ移動して主アンカー8aの上面15bと筒状体22の上面22bが面一になり、これにより、硬化物質Gが排出されたことの確認がとれる。そのため、主アンカー8aにカプセル16を連結したときの長さ(上面15bから底部19下面までの長さU(図1参照)を50〜110cm程度に設定し、筒状体22の長さを45〜105cm程度に設定する必要がある。
なお、前記補助アンカー8bとして、直径16mm、長さ400mmで、かつ横方向へ屈曲した形状の頭部40(図2参照)を有するものを追加して、これを交差部10に打設し、この補助アンカー8bと主アンカー8aとで植生マット1と両斜面補強用ベルトB1 ,B2 の固定を、X−Y座標平面におけるX方向およびY方向への両斜面補強用ベルトB1 ,B2 のずれの防止と合わせて行うとよい。また、交差部10に位置する上下のネット4にアンカー挿通穴9に連通する孔を予め設けておいてもよい。前記孔は、ネット4を編み込むときに形成できる。
以下、受圧板11について説明する。受圧板11は、例えば、その一辺が20〜30cmの正方形の鉄板よりなり、その中央には主アンカー8aおよび補助アンカー8bを挿通させる中央孔30が開設されている。なお、受圧板11は、硬質の合成樹脂板で構成してもよい。受圧板11は、法面2に対する植生マット1と両斜面補強用ベルトB1 ,B2 の固定だけではなく、X−Y座標平面におけるX方向およびY方向への両斜面補強用ベルトB1 ,B2 のずれも防止しうる機能を有するものである。さらに、受圧板11を通して植物が生育可能なように、受圧板11は、中央孔30のまわりには碁盤の目状に形成された複数の植生孔31を有する。そして、第1斜面補強用ベルトB1 が装着された、X方向(P方向)において隣り合う植生マット1を上下に重ね合わせた状態で、第2斜面補強用ベルトB2 を第1斜面補強用ベルトB1 と略直交するようにネット4上へ設置し、両斜面補強用ベルトB1 ,B2 の交差部10に主アンカー8aおよび補助アンカー8bを打設し、前述したように硬化物質Gがカプセル16から掘削穴13内に排出されるとともに、交差部10の両斜面補強用ベルトB1 ,B2 を法面2と受圧板11で挟みこむように、主アンカー8aのアンカー頭部15に締結部材としてのボルト12を装着する。すなわち、交差部10に打設した主アンカー8aのアンカー頭部15に受圧板11の中央孔30を挿通させた後、座金14をアンカー頭部15に挿通させ、続いて、ボルト12をアンカー頭部の雄ねじ部分15に螺着することにより座金14および受圧板11を介して交差部10の両斜面補強用ベルトB1 ,B2 を締め付ける。なお、この実施形態では、屈曲した形状の頭部40を有する補助アンカー8bに関しては、座金14を介して受圧板11が取り付けられ、前記頭部40により、座金14および受圧板11を介して交差部10の両斜面補強用ベルトB1 ,B2 を締め付けることができる。また、この実施形態では、主アンカー8aを平面視において対角線上に配置するとともに、この対角線と略平行な対角線上に補助アンカー8bを配置している。
図6は、X(P)方向に沿って隣接するネット4の隣接端i,j同士を重ね合わせることなく隣接させた状態で法面2へ設置するように構成したこの発明の第2の実施形態を示し、第1斜面補強用ベルトのベルト長さAを網状体幅aよりも極小長さΔaだけ長い寸法(A=a+Δa)としてある。図6において、図1〜5に示す符号と同一のものは同一または相当物である。
図7は、両斜面補強用ベルトB1 ,B2 に設けるアンカー挿通穴9の変形例を示す。図7において、図1〜6に示す符号と同一のものは同一または相当物である。図7において、周縁が裂けないようアンカー挿通穴9をボタンホールに加工してある。
また、図5,7では両斜面補強用ベルトB1 ,B2 として、搬入時あるいは施工時において予めアンカー挿通穴9を形成したものを用いていたが、アンカー挿通穴9を形成していない一対のそれぞれ細身で長尺の帯状ベルトを、互いに長手方向に沿わせる状態で、かつ長手方向に沿って適宜間隔に設けた連結部材を用いて並設したものもこの発明では適用できる。この場合、両帯状ベルト間と連結部材間に形成される複数の隙間にアンカー8a,8bを打設することができる。
上記各実施形態では、両斜面補強用紐状体の交差部にアンカーを打設するようにしていた。すなわち、両斜面補強用ベルトB1 ,B2 の交差部10をそれぞれ、X(P)方向に沿って隣接するネット4,4の境界部分(隣接端面部分m,n同士を上下に重ね合わせた部分、隣接端i,jの当接部分)で、かつ両斜面補強用ベルトB1 ,B2 によって形成される1m四方の格子枠の角に位置させたものを示した。
図8〜12は、この発明の第3の実施形態を示す。この実施形態では、両斜面補強用ベルトB1 ,B2 の交差部(10,10)(図12にハッチングして示す)および10’を、隣接するネット4,4内に、隣接するネット4,4それぞれの幅方向中間部分に位置させ、かつ隣接する例えばネット4(41 ),4(42 )(図8参照)のうち、ネット41 に位置する例えば交差部101 (10,10)とネット42 に位置する例えば交差部102 (10,10)同士、また、交差部101 (10,10)とネット42 に位置する例えば交差部103 (10,10)同士を、ネット長さ方向(Y方向)に沿って適宜間隔N(例えば1m)だけずらせた状態で千鳥足状に交互に設けてある。図8〜12において、図1〜7に示す符号と同一のものは同一または相当物である。
この実施形態でも上記各実施形態で用いたのと同じ肥料袋付植生マット1を用いている。肥料袋付植生マット1は、幅aが1m程である長尺(例えば5〜10m程の長さ)のネット4を上面に有する。図8,11に示すように、各ネット4には、適宜間隔L(例えば2m)で平行に複数本の第1斜面補強用ベルト(紐状体の一例)B1 が装着されている。すなわち、ネット4の複数箇所に肥料袋収容部5とは別に、二重編みしたベルト収容部7を複数の(例えば四つの)肥料袋収容部5を挟んで、かつネット幅方向(P方向)と平行になるように適宜間隔Lに設け、これらベルト収容部7に平面視矩形形状でベルト幅W、ベルト厚みDおよびベルト長さA(>a)を有する長尺の第1斜面補強用ベルトB1 が前記P方向と平行になるように挿入収容されている。前記ベルトB1 の長さAは、ネット幅a(1m程度)よりも長く、例えば2.5m程度である。このベルトB1 は、ほぼ同じ長さA’だけ両端部分e,eがネット4からネット幅方向に露出する状態でそれぞれが図10,12に示すような特異な構成の受圧板11(図8参照)を介して略等高線に沿うように法面2に設置される。この際、交差部(10,10)がネット幅方向中間部分に位置することから、前記特異な構成の受圧板11は、ネット4毎にネット幅方向中間部分に位置している。図11に示すように、ネット4に装着されている前記ベルトB1 は、ベルト収容部7に収容されている中間部分fと前記両端部分e,eとよりなる。前記長さA’は、前記ベルトB1 の長さAからネット4の幅aを引いたものの半分、例えば、0.75m〔=(2.5m−1.0m)÷2〕程度である。
また、第1斜面補強用ベルトB1 とX−Y座標平面において略直交するように適宜間隔N’’でネット4の上面に設置される第2斜面補強用ベルトB2 は、第1斜面補強用ベルトB1 と同一のベルト幅W、ベルト厚みDを有する。この実施形態では、法面崩壊抑止力を高めるため互いに平行に配置される一対の第2斜面補強用ベルトB2 ,B2 を用いている。そして、一対の第2斜面補強用ベルトB2 ,B2 は、Y方向に沿って適宜間隔で配列された複数の前記受圧板11を介してネット4の上面に設置される。この際、一対の第2斜面補強用ベルトB2 ,B2 は、上記各実施形態と同様にそれぞれ、ロール状に巻き上げられた状態になっているベルトB2 を巻き戻すようにして法面2の上方から連続して平行に敷設される。
前記特異な構成の受圧板11は、例えば、その一辺が15〜30cmの正方形の鉄板よりなり、その中央には主アンカー(以下、単にアンカーという)8aを挿通させる中央孔30が開設されている。受圧板11は、図12に示すように、中央孔30のまわりで一方の対向する辺11aおよび11bの近傍に形成されたそれぞれ同一矩形形状のベルトB1 挿通用長孔42および43を有している。長孔42は、同一形状の長孔部分42aおよび42bがそれぞれ中央孔30側および辺11a側に並列に配置されてなる。また、長孔43は、同一形状の長孔部分43aおよび43bがそれぞれ中央孔30側および辺11b側に並列に配置されてなる。例えば、図8に示すように、P方向に隣接する五つのネット4(41 )〜4(45 )のうち、ネット4(44 )に位置する受圧板11(111 )について言えば、前記長孔42にはネット4(43 )に装着されているベルトB1 の一端部分e(e1 )が嵌込まれる一方、前記長孔43にはネット4(45 )に装着されているベルトB1 の一端部分e(e2 )が嵌込まれる。例えば、図12(C)に示すように、受圧板11(111 )の下面側から一端部分e(e2 )の先端Eを長孔部分43aに通してこれを受圧板11(111 )の上面側にもっていき、さらに、受圧板11(111 )の上面側から長孔部分43bに通し、その後、先端Eを外側に引っ張って先端E側を受圧板11(111 )の下面側に位置する一端部分e(e2 )と受圧板11(111 )とで挟むことにより、前記長孔43を介して受圧板11(111 )にベルトB1 を連結することができる。また、前記長孔42を介して受圧板11(111 )にベルトB1 を連結する手順も同様である。そして、長孔42,43にそれぞれベルトB1 を連結した後、一端部分e(e1 )と一端部分e(e2 )の先端E側同士を互いに反対方向に引っ張って張力をかけることにより受圧板11(111 )と法面2とでベルトB1 を強固に挟み込むことができる。
さらに、前記受圧板11(111 )は、図12に示すように、中央孔30のまわりで他方の対向する辺11cおよび11d側に形成されたベルトB2 が挿通可能なそれぞれ同一T形形状のベルト挿通用切欠44および45を有する。切欠44は、同一T形形状の切欠部分44aおよび44bがそれぞれ辺11cに沿う方向で一列に配置されてなる。切欠45は、同一T形形状の切欠部分45aおよび45bがそれぞれ辺11dに沿う方向で一列に配置されてなる。
そして、例えば法肩側から法尻側に向かって受圧板11(111 )にベルトB2 を連結するには、図12(B)に示すように、受圧板11(111 )の下面側からベルトB2 の一端部(先端部)を例えば法肩側に位置する例えば切欠部分44aに通してこれを受圧板11(111 )の上面側にもっていき、さらに、受圧板11(111 )の上面側から切欠部分44aに対向する位置にある法尻側の切欠部分45aに通すことにより、ベルトB2 の一端部(先端部)を受圧板11(111 )の下面側にもっていく。そして、図8に示すように、ベルトB2 の一端部(先端部)は受圧板11(111 )より間隔Nだけ法尻側に位置しているベルトB1 の上面を跨ぐ形で受圧板11(111 )よりも間隔Lだけ法尻側に位置している受圧板11(112 )の切欠部分44aに至る。
次に、図12に示すような両斜面補強用紐状体B1 、B2 ,B2 の交差部10の近傍にアンカー8aを打設する一例について説明する。まず、ネット4を含む肥料袋付植生マット1を法面2に敷設する。続いて、図10に示すように、ドリル等の掘削工具でネット4を介して法面内部の地盤Tを掘削することにより50cm程度の深さdを有する掘削穴13を交差部10の近傍に形成する。そして、図3で説明したのと同様の手順でアンカー8aを打設する。続いて、交差部10の近傍に打設したアンカー8aのアンカー頭部に受圧板11(111 )の中央孔30を挿通させる。そして、ベルトB1 およびベルトB2 ,B2 を受圧板11(111 )に連結するとともに、ベルトB1 およびベルトB2 ,B2 にテンションをかける。その後、座金14をアンカー頭部に挿通させ、続いて、ボルト12をアンカー頭部の雄ねじ部分15に螺着することにより座金14および受圧板11(111 )を介して交差部10の両斜面補強用ベルトB1 ,B2 を締め付ける。なお、受圧板11(111 )は、硬質の合成樹脂板で構成してもよい。受圧板11(111 )は、法面2に対する植生マット1と両斜面補強用ベルトB1 、B2 ,B2 の固定だけではなく、X−Y座標平面におけるX方向およびY方向への両斜面補強用ベルトB1 、B2 ,B2 のずれも防止しうる機能を有するものである。
図13は、この発明で用いる受圧板11(111 )の変形例を示す。図13において、図1〜12に示す符号と同一のものは同一または相当物である。図13において、この例では、長孔42,43を介しての受圧板11とベルトB1 の連結手段は上記第3の実施形態において示したものと同じである。そして、例えば法肩側から法尻側に向かって受圧板11(111 )にベルトB2 を連結するには、図13(B)に示すように、受圧板11(111 )の下面側からベルトB2 の一端部を例えば法肩側に位置する切欠部分44aに通し、さらに、これを受圧板11(111 )の上面側から切欠部分44aに連通する切欠部分44a’に通して受圧板11(111 )の下面側に位置するようにし、その後、受圧板11(111 )の下面側から切欠部分44a’に対向する位置にある法尻側の切欠部分45aに通し、さらに、受圧板11(111 )の上面側から切欠部分44aに対向する位置にある法尻側の切欠部分45a’に通すことにより、ベルトB2 の一端部を受圧板11(111 )の下面側にもっていくように構成されている。この例では、ベルトB2 による受圧板11の押圧を強固にすることができ、法面崩壊抑止力をより高めることができる。
図14は、この発明で用いる受圧板11(111 )の別の変形例を示す。図14において、図1〜13に示す符号と同一のものは同一または相当物である。図14において、この例が上記第3の実施形態で用いた受圧板11(111 )と異なる点は、この実施形態においてはベルト挿通用長孔42および43のそれぞれの長孔部分を一つだけ増やした点である。すなわち、長孔42は、同一形状の長孔部分42aおよび42bがそれぞれ中央孔30側および辺11a側に並列に配置されるとともに、長孔部分42aと中央孔30間に同一形状の長孔部分42cが並列に配置されてなる。また、長孔43は、同一形状の長孔部分43aおよび43bがそれぞれ中央孔30側および辺11b側に並列に配置されるとともに、長孔部分43aと中央孔30間に同一形状の長孔部分43cが並列に配置されてなる。これにより、受圧板11(111 )とベルトB1 の連結を強固にできる。
図15は、この発明で用いる受圧板11(111 )のさらに別の変形例を示す。図15において、図1〜14に示す符号と同一のものは同一または相当物である。この例では、上記第3の実施形態で示した受圧板11(111 )とベルトB1 の連結の構成を受圧板11(111 )とベルトB2 の連結にも採用している。すなわち、例えば図12に示す受圧板11(111 )に第2斜面補強用ベルトB2 を連結する場合は、上述したように、ロール状に巻き上げられた状態の第2斜面補強用ベルトB2 を、図1に示すように、巻き戻すようにして法面2の上方から一本ものとして連続して敷設すればよかったが、図15の受圧板11(111 )に第2斜面補強用ベルトB2 を連結する場合は、一本ものの第2斜面補強用ベルトB2 ではなく、各受圧板11におけるX方向に配列される長孔42a,42b、43a,43bに対して左右一対の第1斜面補強用ベルトB1 を連結するときと同様に、各受圧板11におけるY方向に配列される長孔42a’,42b’、43a’,43b’に対しても上下一対の第2斜面補強用ベルトB2 を連結するため、図15の受圧板11(111 )を使用するにあたり、例えば図8における長さLに一端部分e ’(e1 ’),e’(e2 ’)に相当する折り返し長さを加えた長さを有する複数本の第2斜面補強用ベルトB2 (そのうちの1本を図8に二点鎖線で示す)を準備する必要がある。そして、図15の受圧板11(111 )以外の受圧板11(111 )では、受圧板11(111 )に対して1本ものの長尺な第2斜面補強用ベルトB2 をそれぞれ2本ずつ使用していたが、図15の受圧板11(111 )を用いることにより、長尺な第2斜面補強用ベルトB2 に比べて遙かに短い複数本の第2斜面補強用ベルトB2 を繋いでいけばよく、Y方向(縦方向)全体として見れば1本であり、その分ベルトの使用コストを抑えることができるという利点を有する。
なお、この発明において、ロープ形状の第1斜面補強用紐状体を使用する場合は、両斜面補強用紐状体の交差部において、隣接する第1斜面補強用紐状体同士を結束するとともに、第2斜面補強用紐状体を上から重ね合わせ、その交差部にアンカーを打設することで法面へ固定することとなる。
また、この発明に適用できるアンカーの別形態としては、上端部に雄ねじ部分を有する一方、下端部は尖頭加工されているものも挙げることができる。この形態の主アンカーを使用する場合は、(1)掘削穴の内部に硬化物質を注入した後に主アンカーを掘削穴に挿入・打設すること、(2)掘削穴に主アンカーを打設した後に掘削穴の隙間へ硬化物質を注入すること、(3)法面に掘削穴を形成することなくそのまま主アンカーを法面に打設すること、などが考えられる。
さらに、この発明では、補助アンカーの打設箇所については必ずしも受圧板を設置する必要はなく、補助アンカーの横方向へ屈曲した形状の頭部40をもって斜面補強用紐状体を法面へ押さえつけることも可能である。
2 斜面
4 網状体
10 交差部
8a,8b アンカー
B1 第1斜面補強用ベルト(第1斜面補強用紐状体)
B2 第2斜面補強用ベルト(第2斜面補強用紐状体)
4 網状体
10 交差部
8a,8b アンカー
B1 第1斜面補強用ベルト(第1斜面補強用紐状体)
B2 第2斜面補強用ベルト(第2斜面補強用紐状体)
Claims (4)
- 適宜間隔で平行に複数本の第1斜面補強用紐状体が装着された網状体を、
第1斜面補強用紐状体がそれぞれ略等高線に沿うように斜面へ設置した後、
第2斜面補強用紐状体を前記第1斜面補強用紐状体と略直交するように適宜間隔で網状体上へ設置し、
両斜面補強用紐状体の交差部またはその交差部の近傍にアンカーを打設することで第1斜面補強用紐状体と第2斜面補強用紐状体を斜面へ固定することを特徴とする斜面保護方法。 - 打設する一部または全てのアンカーを、硬化物質によって斜面内部の地盤に固定するとともに、交差部の前記両斜面補強用紐状体を斜面と受圧板で挟みこむように、アンカー頭部に締結部材を装着することを特徴とする請求項1に記載の斜面保護方法。
- 請求項1または請求項2に記載の斜面保護方法に用いられる網状体。
- 請求項1または請求項2に記載の斜面保護方法によって形成されてなる斜面保護構造体。
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JP2009102385A JP2010196460A (ja) | 2009-01-30 | 2009-04-20 | 斜面保護方法及びそれに使用する網状体並びに斜面保護構造体 |
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JP5703482B1 (ja) * | 2014-04-22 | 2015-04-22 | 株式会社丹勝 | 法面の滑落防止工法 |
JP2015169020A (ja) * | 2014-03-07 | 2015-09-28 | 株式会社トラスト工業 | 法面保護工法 |
JP2017179765A (ja) * | 2016-03-29 | 2017-10-05 | 日鐵住金建材株式会社 | 崩壊斜面対策構造 |
JP2018059337A (ja) * | 2016-10-06 | 2018-04-12 | 日本植生株式会社 | 護岸用マット、護岸用緑化構造体及び護岸工法 |
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-
2009
- 2009-04-20 JP JP2009102385A patent/JP2010196460A/ja active Pending
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