JP2020007512A - 塩化ビニル系樹脂組成物および該組成物から形成された成形体 - Google Patents

塩化ビニル系樹脂組成物および該組成物から形成された成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性および離型性に優れた塩化ビニル系樹脂組成物を提供すること。【解決手段】本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と、塩化ビニル系樹脂用液状安定剤と、酸価が5mgKOH/g以上、かつ、密度が0.95g/cm3以上である酸化ポリエチレンワックスとを含む。この塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して酸化ポリエチレンワックスを0.001重量部以上含む。【選択図】なし

Description

本発明は塩化ビニル系樹脂組成物および該組成物から形成された成形体に関する。
ポリ塩化ビニル系樹脂等の塩素含有樹脂は、様々な添加剤、例えば、安定剤、滑剤、可塑剤、着色剤、改質剤等を添加し、加工・成形された後、様々な用途に用いられている。塩素含有樹脂は、透明性、離型性、および、耐熱性に課題があり、また加工時および使用時に熱による塩素含有樹脂の分解も生じ得る。塩素含有樹脂組成物ではこれらの課題を改善させるため、液状安定剤を用いている(特許文献1)。これらの課題のうち、金型からの離型性は製品の生産性に大きく影響するため、重視される傾向がある。通常、液状安定剤の添加量を増やすことで、金型からの離型性を改善させている。しかしながら、液状安定剤の添加量が増えると、得られる樹脂組成物の透明性が低下するという問題がある。そのため、透明性が要求されるフィルムおよびシートに用いられる樹脂組成物では透明性を確保できる量の液状安定剤しか使用できないという問題がある。透明性が求められるフィルムおよびシートにも好適に用いることができ、かつ、金型からの離型性も向上させた組成物が求められている。
特開平2−274748号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は透明性および離型性に優れた塩化ビニル系樹脂組成物を提供することにある。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と、塩化ビニル系樹脂用液状安定剤と、酸価が5mgKOH/g以上、かつ、密度が0.95g/cm以上である酸化ポリエチレンワックスとを含む。この塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して該酸化ポリエチレンワックスを0.001重量部以上含む。
1つの実施形態においては、上記塩化ビニル系樹脂組成物は、上記酸化ポリエチレンワックスを3重量部以下含む。
1つの実施形態においては、上記液状安定剤は有機酸亜鉛塩および有機酸アルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
1つの実施形態においては、上記塩化ビニル系樹脂組成物は、上記液状安定剤を塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.5重量部〜3重量部含む。
本発明の別の局面においては、成形体が提供される。本発明の成形体は上記塩化ビニル系樹脂組成物から形成される。
1つの実施形態においては、上記成形体はフィルムまたはシートである。
1つの実施形態においては、上記成形体は食品包装用である。
本発明によれば、透明性および離型性に優れた塩化ビニル系樹脂組成物を提供することができる。本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と、塩化ビニル系樹脂用液状安定剤と、酸価が5mgKOH/g以上、かつ、密度が0.95g/cm以上である酸化ポリエチレンワックス(以下、高密度酸化ポリエチレンワックスともいう)とを含む。液状安定剤と併せて、少量の高密度酸化ポリエチレンワックスを用いることにより、液状安定剤の添加量を増加させることなく塩化ビニル系樹脂組成物の離型性を格段に向上させることができる。さらに、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は透明性をも向上させることができる。そのため、これまで困難であった優れた透明性および離型性を両立する塩化ビニル系樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.塩化ビニル系樹脂組成物
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と、塩化ビニル系樹脂用液状安定剤と、酸価が5mgKOH/g以上、かつ、密度が0.95g/cm以上である酸化ポリエチレンワックスとを含む。液状安定剤と併せて高密度酸化ポリエチレンワックスを用いることにより、塩化ビニル系樹脂組成物の離型性を格段に向上させることができる。さらに、塩化ビニル系樹脂組成物の透明性をも向上させることができる。
B.塩化ビニル系樹脂
塩化ビニル系樹脂としては、例えば、五塩素化ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−アルキル、シクロアルキルまたはアリールマレイミド共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ウレタン共重合体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
塩化ビニル系樹脂の重合度は、好ましくは700〜2000である。塩化ビニル系樹脂の重合度がこのような範囲であれば、フィルムおよびシートへの成形性に優れ、ならびに、強度と手触り感とのバランスに優れたフィルムおよびシートが得られる。
C.塩化ビニル系樹脂用液状安定剤
塩化ビニル系樹脂用液状安定剤としては、任意の適切な液状安定剤を用いることができる。液状安定剤としては、好ましくは亜鉛塩および/またはアルカリ土類金属塩を含む液状安定剤が用いられる。これらの安定剤は室温で液状である安定剤であり、低毒性、かつ、低臭気であることから、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を食品包装用等の用途にも好適に用いることができる。なお、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を食品包装用途(例えば、食品包装用シートまたは食品包装用ストレッチフィルム)に用いる場合、有機スズ系安定剤は含まないことが好ましい。有機スズ系安定剤を用いることにより、臭気が問題となり得るからである。
C−1.亜鉛塩およびアルカリ土類金属塩
亜鉛塩およびアルカリ土類金属塩としては、任意の適切な塩を用いることができる。亜鉛塩およびアルカリ土類金属塩としては、例えば、有機酸亜鉛塩および有機酸アルカリ土類金属塩を用いることができる。
有機酸亜鉛塩は、代表的には、有機酸と酸化亜鉛とを反応させて得られる。1つの実施形態においては、有機酸亜鉛塩は、有機酸2当量に対し酸化亜鉛1当量反応して得られる有機酸正塩である。
有機酸は、代表的にはカルボン酸である。カルボン酸としては、例えば、炭素数2〜22の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸および炭素環式カルボン酸が挙げられる。これらの具体例としては、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、カプロン酸、オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、トリデカン酸、イソデカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、エルカ酸、ベヘン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、ラウリルメルカプトプロピオン酸、安息香酸、パラ−t−ブチル安息香酸、3−メチル安息香酸、ジメチル安息香酸、アミノ安息香酸、サリチル酸、アミノ酢酸、グルタミン酸、シュウ酸、グルタル酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、フタル酸、フマール酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、チオジプロピオン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、メリット酸が挙げられる。好ましくは、オレイン酸、オクチル酸、安息香酸、パラ−t−ブチル安息香酸、3−メチル安息香酸、2−エチルヘキシル酸、ネオデカン酸、マレイン酸、トリメリット酸であり、より好ましくは、オレイン酸、オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、安息香酸、パラ−t−ブチル安息香酸、3−メチル安息香酸である。有機酸亜鉛塩は、液状安定剤に1種類のみが含有されてもよく、2種以上が含有されてもよい。
液状安定剤における有機酸亜鉛塩の含有量は、液状安定剤全量に対して、好ましくは5重量%〜40重量%であり、より好ましくは5重量%〜20重量%である。有機酸亜鉛塩の含有量がこのような範囲であれば、成形体を製造および/または加工する際の着色が少ないという利点を有する。
有機酸のアルカリ土類金属塩は、代表的には、有機酸とアルカリ土類金属含有物質とを反応させて得られる。アルカリ土類金属としては、例えば、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)が挙げられる。好ましくは、カルシウム、バリウムである。アルカリ土類金属含有物質としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化マグネシウムが挙げられる。有機酸は上記のとおりである。好ましい有機酸は、オレイン酸、安息香酸、パラ−t−ブチル安息香酸である。有機酸のアルカリ土類金属塩は、液状安定剤に1種類のみが含有されてもよく、2種以上が含有されてもよい。
液状安定剤における有機酸のアルカリ土類金属塩の含有量は、液状安定剤全量に対して、好ましくは5重量%〜70重量%であり、より好ましくは5重量%〜50重量%である。アルカリ土類金属塩の含有量がこのような範囲であれば、成形体を製造する際の焼き付きが少なくなり、ロングラン性が改善されるという利点を有する。
C−2.その他の成分
液状安定剤は他の任意の適切な成分をさらに含んでいてもよい。例えば、亜リン酸エステル化合物、可塑剤、抗酸化剤、エポキシ化ダイズ油、紫外線吸収剤、有機溶剤等が挙げられる。
D.酸化ポリエチレンワックス
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、酸価が5mgKOH/g以上、かつ、密度が0.95g/cm以上である酸化ポリエチレンワックス(高密度酸化ポリエチレンワックス)を含む。塩化ビニル系樹脂用液状安定剤と併せて高密度酸化ポリエチレンワックスを用いることにより、塩化ビニル系樹脂組成物の透明性および離型性を向上させることができる。
上記の通り、本発明で用いる酸化ポリエチレンワックスは、高密度酸化ポリエチレンワックスである。酸化ポリエチレンワックスの密度は0.95g/cm以上であり、好ましくは0.96g/cm以上である。また、酸化ポリエチレンワックスの密度は好ましくは1.1g/cm以下であり、より好ましくは1.0g/cm以下である。酸化ポリエチレンワックスの密度がこのような範囲であることにより、得られる樹脂組成物の金型離型性が向上し得る。密度が0.95g/cm未満である場合、金型離型性の効果が十分に得られない場合がある。また、樹脂組成物の着色、および、透明性の低下が生じる場合がある。なお、本明細書において、密度はASTM D−1505に準じて測定した値である。
酸化ポリエチレンワックスの酸価は5mgKOH/g以上であり、好ましくは7mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上である。酸価がこのような範囲であることにより、樹脂成分への相溶性が向上し、得られる樹脂組成物の透明性も向上する。酸価は好ましくは50mgKOH/g以下であり、より好ましくは30mgKOH/g以下である。なお、本明細書において、酸価はASTM D−1386に準じて測定した値である。
酸化ポリエチレンワックスは、150℃における粘度が好ましくは2000cps〜85000cpsであり、より好ましくは3000cps〜10000cpsである。粘度がこのような範囲であることにより、樹脂組成物に含まれる各種原料と酸化ポリエチレンワックスとを均一に混合することができる。なお、本明細書において、粘度はブルックフィールド粘度計で測定した値である。
酸化ポリエチレンワックスは市販品を用いてもよい。具体的には、ハネウェル社製の高密度酸化ポリエチレンホモポリマーであるA−C307,307A(酸価7mgKOH/g、密度0.98g/cm)、A−C316,316A(酸価16mgKOH/g、密度0.98g/cm)、A−C325(酸価25mgKOH/g、密度0.99g/cm)、A−C392(酸価30mgKOH/g、密度0.99g/cm)、A−C330(酸価30mgKOH/g、密度0.99g/cm)、A−C395,395A(酸価41mgKOH/g、密度1.00g/cm)等が挙げられる。
塩化ビニル系樹脂組成物における酸化ポリエチレンワックスの含有量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.001重量部以上であり、好ましくは0.01重量部以上、さらに好ましくは0.05重量部以上である。酸化ポリエチレンワックスの含有量が上記範囲であることにより、塩化ビニル系樹脂組成物の透明性および離型性を向上させることができる。酸化ポリエチレンワックスの含有量の上限については特に制限はないが、コスト面からは好ましくは3重量部以下である。
E.可塑剤
可塑剤としては、任意の適切な化合物を用いることができる。例えば、テレフタル酸エステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル等が挙げられる。可塑剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記液状安定剤が可塑剤を含む場合、同一の可塑剤を用いてもよく、異なる可塑剤を用いてもよい。
フィルムおよびシートへの加工に塩化ビニル系樹脂組成物を用いる場合、塩化ビニル系樹脂組成物における可塑剤の含有量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、好ましくは10重量部以上であり、より好ましくは20重量部以上であり、さらに好ましくは30重量部以上である。また、可塑剤の含有量は例えば、80重量部以下である。
F.他の添加剤
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂用液状安定剤および高密度酸化ポリエチレンワックス以外に任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤の具体例としては、β―ジケトン化合物またはその金属塩、エポキシ化合物、充填剤、顔料、染料、架橋剤(または強化剤)、帯電防止剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、抗菌剤、金属不活性化剤、離型剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤等が挙げられる。添加剤の数、種類、組み合わせ、配合量等は、目的に応じて適切に設定され得る。塩化ビニル系樹脂組成物を食品包装分野で使用する場合は、塩ビ食品衛生協議会の「塩化ビニル樹脂製品等の食品衛生に係る自主規格」に適合したものを使用するのが好ましい。これらの添加剤の詳細については、例えば、特許6179740号に詳細に記載されている。当該公報は、その記載が本明細書に参考として援用される。
G.塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は任意の適切な方法で製造される。例えば、塩化ビニル系樹脂に液状安定剤と高密度酸化ポリエチレンワックスと任意の適切な他の添加剤とを同時に添加して混合することにより、塩化ビニル系樹脂組成物を製造することができる。また、塩化ビニル系樹脂に液状安定剤と高密度酸化ポリエチレンワックスと任意の適切な他の添加剤とを順次添加・混合して製造してもよい。順次添加して製造する場合、液状安定剤、高密度酸化ポリエチレンワックス、および、他の添加剤は任意の適切な順序で添加され得る。
H.成形体
上記塩化ビニル系樹脂組成物は、任意の適切な用途に用いられる。本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は優れた離型性を有する。そのため、金型等を用いて製造する成形体に好適に用いることができる。
塩化ビニル系樹脂組成物は、例えば、フィルム、シート、包装容器(例えば、トレイ)、電線被覆材、自動車用内外装材、農業用資材(例えば、ビニルハウス)、ホース、パイプ、壁材、床材、帆布、レザー、玩具、ゴム手袋、ゴムブーツに使用され得る。本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、好ましくはフィルムまたはシートに使用され、より好ましくは食品包装用シートまたは食品包装用ストレッチフィルムに使用され得る。上記塩化ビニル系樹脂組成物は透明性および離型性に優れる。そのため、ロングラン加工時におけるプレートアウトを防止し、生産性を向上させることができる。さらに、透明性にも優れるため食品包装用シートまたは食品包装用ストレッチフィルムに好適に用いることができる。
塩化ビニル系樹脂組成物が食品包装用途(例えば、食品包装用シートまたは食品包装用ストレッチフィルム)に使用される場合、当該組成物中の液状安定剤は、安全性の観点から、過塩基性カルボン酸塩および過塩基性アルカリ土類金属錯体のいずれも含まないことが好ましい。ただし、不可避の副生物として含まれる場合はあり得る。
塩化ビニル系樹脂組成物の成形方法としては、成形体の用途、所望の形状等に応じて任意の適切な成形方法が採用され得る。具体例としては、押出、射出、カレンダー、インフレーション、ディッピングが挙げられる。フィルムおよびシートの成形方法としては、押出またはカレンダーが好ましい。上記の通り、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は離型性に優れるため、押出成形に用いられた場合であっても金型への樹脂組成物の付着等を防止し得る。
塩化ビニル系樹脂組成物が食品包装用途(例えば、食品包装用シートまたは食品包装用ストレッチフィルム)に使用される場合、成形体は好ましくは透明である。より詳細には、成形体のヘイズ値は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。なお、ヘイズ値は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
(液状安定剤の調製)
オレイン酸亜鉛(堺化学工業株式会社製)8重量部、2−エチルヘキシル酸亜鉛(共同薬品株式会社製)4重量部、安息香酸カルシウム(堺化学工業株式会社製)8重量部およびトリラウリル酸エステル(城北化学工業株式会社製)30重量部を混合し、さらに、可塑剤兼溶媒としてテレフタル酸エステル(株式会社ジェイプラス製)を50重量部加えて混合し、液状安定剤を調製した。
[実施例1]
ポリ塩化ビニル樹脂(信越化学工業株式会社製、商品名:TK−1300)100重量部に、テレフタル酸エステル(株式会社ジェイプラス製、商品名:DOTP)30重量部、エポキシ化大豆油(堺化学工業株式会社製、商品名:インブラフレックスA−6)5重量部、上記液状安定剤1.5重量部、および、ワックス1(高密度酸化ポリエチレンワックス、ハネウェル社製、商品名:AC−316A、密度:0.98g/cm、酸価:16mgKOH/g)0.01重量部を加えて混合し、塩化ビニル系樹脂組成物を調製した。
[実施例2]
ワックス1の添加量を0.05重量部にした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
[実施例3]
ワックス1の添加量を0.1重量部にした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
[実施例4]
ワックス1の添加量を0.3重量部にした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
(比較例1)
ワックス1を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
(比較例2)
ワックス1に代えて、ワックス2(酸化ポリエチレンワックス、ハネウェル社製、商品名:AC629A、密度:0.93g/cm、酸価:15mgKOH/g)を用いた以外は実施例4と同様にして塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
(比較例3)
ワックス1に代えて、ワックス3(酸化ポリエチレンワックス、ハネウェル社製、商品名:AC6A、密度:0.92g/cm、酸価:15mgKOH/g)を用いた以外は実施例4と同様にして塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
(比較例4)
ワックス1に代えて、ワックス4(ポリエチレンホモポリマーワックス、ハネウェル社製、商品名:AC820A、密度:0.97g/cm、酸価:0.1mgKOH/g)を用いた以外は実施例4と同様にして塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
<評価>
実施例1〜4および比較例1〜4で得られた塩化ビニル系樹脂組成物を用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。

1.金型離型性
塩化ビニル系樹脂の重量を3kgとし、各実施例および比較例の塩化ビニル系樹脂組成物を調製した。
より詳細には、各材料をヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製、製品名:FM型ヘンシェルミキサー)に投入し、2000rpmで回転させた羽で混合し、混合物の温度が120℃になった時点でヘンシェルミキサーから排出した。排出した混合物をラボプラストミル(TOYOSEIKI社製)を用いて温度190℃、回転数40rpm、充填量62gの条件で10分間混練した。混練後、金型を解体し、混練物の離型性を以下の基準で評価した。
1:金型に樹脂が粘着し、除去が困難
2:金型に樹脂が粘着していたが、容易に除去可能
3:金型にわずかに樹脂の粘着がみられたが、容易に除去可能
4:金型への粘着がなく、容易に除去可能

2.プレス透明性
各実施例および比較例で得られた塩化ビニル系樹脂組成物をロール表面温度を175℃、ロール間隙0.3mm〜0.5mmに調整した8インチロール機(KANSAI ROLL社製)で5分間混練し、厚さ0.3mmのロールシートを作製した。得られたシートを20枚重ねて表面温度を160℃に設定したプレス機(TOYOSEIKI社製、製品名:MINI TEST PRESS−10)を用いて厚さ5mmになるよう100kg/cmで10分間保持し、試験片を作製した。次いで、得られた試験片のヘイズ値(濁度)を分光色彩計(日本電色工業(株)製、製品名:SQ−2000)にて測定し、透明性の指標とした。
Figure 2020007512
実施例1〜4で得られた塩化ビニル系樹脂組成物はいずれも離型性に優れるものであった。さらに、ヘイズ値も低く、優れた離型性と透明性とを両立するものであった。他方、比較例1〜4で得られた塩化ビニル系樹脂組成物では金型に樹脂が粘着しており、金型から除去することが困難であった。さらに透明性も改善の余地があった。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物はフィルムおよびシート等の成形品に用いることができる。特に、食品包装用フィルムとして好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. 塩化ビニル系樹脂と、
    塩化ビニル系樹脂用液状安定剤と、
    酸価が5mgKOH/g以上、かつ、密度が0.95g/cm以上である酸化ポリエチレンワックスと、を含む塩化ビニル系樹脂組成物であって、
    該塩化ビニル系樹脂100重量部に対して該酸化ポリエチレンワックスを0.001重量部以上含む、塩化ビニル系樹脂組成物。
  2. 前記酸化ポリエチレンワックスを3重量部以下含む、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
  3. 前記液状安定剤が有機酸亜鉛塩および有機酸アルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
  4. 前記液状安定剤を塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.5重量部〜3重量部含む、請求項1から3のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物から形成された成形体。
  6. フィルムまたはシートである、請求項5に記載の成形体。
  7. 食品包装用である、請求項6に記載の成形体。
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