JP2020006547A - 昇華型熱転写受像シート及びその製造方法 - Google Patents

昇華型熱転写受像シート及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】裁断加工した際にバリが生じるおそれのない昇華型熱転写受像シート及びその製造方法とする。【解決手段】昇華型熱転写受像シートXを、基紙1と、この基紙1の一方又は両方の面に形成されたインク受容層2とを有するものとし、インク受容層2は、ベース剤、剥離剤及び密着剤を含有し、かつ当該密着剤の含有割合が0.50質量%以上となるようにする。また、昇華型熱転写受像シートXを製造するにあたっては、基紙1の一方又は両方の面にインク受容層塗液を塗布し、インク受容層塗液として、ベース剤、剥離剤及び密着剤を含有し、かつ当該密着剤の含有割合が0.20質量%以上の塗液を使用する。【選択図】図1

Description

本発明は、昇華型熱転写受像シート及びその製造方法に関するものである。
現在、鮮明な絵柄の再現が可能な印刷方法の1つとして、熱転写記録方式が存在する。熱転写記録方式は、熱昇華型染料を用いる昇華型熱転写方式と、熱溶融型染料を用いる熱溶融型転写方式とに大別することができる。昇華型熱転写方式においては、染料がいったん固体から気体に変化し、その後に固体に変化する。また、熱溶融型転写方式においては、染料がいったん固体から液体に変化し、その後に固体に変化する。これらの転写方式のうち昇華型熱転写方式は、小ロットに対応できるとの利点、素点を分割して転写面積を変えることができる(詳細な階調表現が可能になる)との利点を有する。したがって、昇華型熱転写方式によると、熱溶融型転方式による場合よりも解像度が高く鮮明な図柄の印刷が可能になる。
そこで、近年では、熱溶融型転方式よりも昇華型熱転写方式の需要が拡大している。そして、通常、昇華型熱転写方式には、熱昇華型染料を用いたインクリボンと、印刷に際してインクリボンが貼り付く昇華型熱転写受像シートとが組み合わせて使用される。したがって、昇華型熱転写受像シートには、加熱による影響を受け難いことのほか、インクリボンが指定した印刷範囲のみに貼り付き、転写濃度等の印刷適性が良好なこと等が求められる。また、昇華型熱転写受像シートのインクリボンに対する貼り付きは、剥離性を伴うものであることが必要である。剥離性が低いと印刷時の剥離音が大きくなったり、昇華型熱転写受像シートが印刷機から排出されなくなったりする可能性がある。特に、昇華型熱転写方式においては、通常、減色法によって画像が形成されるため、熱転写受像シートにイエロー、マゼンタ、及びシアンの染料が順次に印画される。したがって、熱転写受像シートは少なくとも3回の印画処理がなされることになり、上記剥離性は1回の剥離性に優れるのみでは足らず、少なくとも3回の印画処理のいずれにおいても優れた剥離性を維持する剥離安定性を有することが必要とされる。
このような背景のもと、特許文献1は、基材シートと、この基材シート上に形成されたバインダー樹脂、高分子量シリコーン、及び低分子量変性シリコーンを含む受容層とを有する熱転写受像シートであって、高分子量シリコーン及び低分子量変性シリコーンの動粘度が特定された熱転写受像シートを提案している。
しかしながら、近年では、昇華型熱転写受像シートが、例えば、名刺、ICカード、電子タグ、社員証及び証明書等の用途に適する形状に裁断加工されて使用されることが多くなっている。しかるに、上記文献が提案するような剥離性を重視した熱転写受像シートは、適宜の形状に裁断加工した際にバリが生じ易く、その解決が求められている。
特開2007−90650号公報
本発明が解決しようとする主たる課題は、裁断加工した際にバリが生じるおそれのない昇華型熱転写受像シート及びその製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決するために様々な検討を行った。結果、バリの問題は基紙とインク受容層との密着性が重要であることを知見した。したがって、剥離性を重視した特許文献1の熱転写受像シートでは、バリが生じるおそれがある。もっとも、より重要なのは、バリの問題は密着性、あるいは密着性及び剥離性を考慮するのみでは解決することができないという点である。バリの問題を解決するにおいては、熱転写受像シートが裁断される際に加わる力の吸収性(クッション性)も重要である。このような知見のもと想到するに至ったのが上記課題を解決するための下記に示す手段である。
(請求項1に記載の手段)
基紙と、この基紙の一方又は両方の面に形成されたインク受容層とを有し、
前記インク受容層は、ベース剤、剥離剤及び密着剤を含有し、かつ当該密着剤の含有割合が0.50質量%以上である、
ことを特徴とする昇華型熱転写受像シート。
(請求項2に記載の手段)
前記剥離剤がシリコーン系樹脂で、かつ前記密着剤がポリオレフィン系樹脂であり、
前記インク受容層中の前記シリコーン系樹脂の含有割合が0.10質量%以上で、かつ前記シリコーン系樹脂に対する前記ポリオレフィン系樹脂の含有割合が3.0〜100.0質量%である、
請求項1に記載の昇華型熱転写受像シート。
(請求項3に記載の手段)
前記インク受容層は、厚さが1〜80μmで、かつ前記密着剤の含有割合が15.0質量%以下である、
請求項1又は請求項2に記載の昇華型熱転写受像シート。
(請求項4に記載の手段)
前記ベース剤が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂で、かつ塩化ビニル:酢酸ビニル=85〜95:5〜15(質量基準)である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の昇華型熱転写受像シート。
(請求項5に記載の手段)
前記密着剤がポリオレフィン系樹脂であり、かつ塩素含有量が20〜30質量%である、請求項4に記載の昇華型熱転写受像シート。
(請求項6に記載の手段)
前記シリコーン系樹脂がジアミン変性シリコーン樹脂で、かつ有機基であるジアミンの官能基当量が100〜1800g/molである、
請求項2に記載の昇華型熱転写受像シート。
(請求項7に記載の手段)
前記基紙は、JIS P 8118(2014)に準拠して測定した密度が0.80〜1.20g/cm3で、かつJIS P 8118(1998)に準拠して測定した紙厚が66〜188μmである、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の昇華型熱転写受像シート。
(請求項8に記載の手段)
基紙の一方又は両方の面にインク受容層塗液を塗布し、
前記インク受容層塗液として、ベース剤、剥離剤及び密着剤を含有し、かつ当該密着剤の含有割合が0.20質量%以上の塗液を使用する、
ことを特徴とする昇華型熱転写受像シートの製造方法。
本発明によると、裁断加工した際にバリが生じるおそれのない昇華型熱転写受像シート及びその製造方法となる。
昇華型熱転写受像シートの断面図である。 下塗り層を有する昇華型熱転写受像シートの断面図である。
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。また、以下で説明する各薬剤の含有割合、配合割合、あるいは含有量、配合量は、特にこれに反する記載がない限り、固形分換算した場合の質量を意味する。なお、インク受容層中の各薬剤の含有割合は、インク受容層中に有機溶剤に由来する成分が残存する場合、当該残存成分は除いた含有割合を意味する。
図1に示すように、本形態の昇華型熱転写受像シート(以下、単に「熱転写受像シート」ともいう。)Xは、基紙1と、この基紙1の一方の面(図1の(1)が示す形態)又は両方の面(図1の(2)が示す形態)に形成されたインク受容層2とを有する。好ましくは、図2に示すように、基紙1とインク受容層2との間に下塗り層3を有する。本明細書において、当該下塗り層3は、インク受容層2との関係から広義の基紙に含まれるものとする。つまり、基紙1によって狭義の基紙が構成されており、基紙1及び下塗り層3によって広義の基紙が構成されている。したがって、インク受容層との関係が問題になる本発明において、単に「基紙」というときは、広義の基紙を意味する。ただし、以下では、説明の都合上、単に「基紙」というときは、特に断りがない限り、「狭義の基紙」を意味する。
(基紙:パルプ)
(狭義の)基紙1は、パルプ(以下「原料パルプ」ともいう。)を主成分(50.0質量%以上、好ましくは80.0質量%以上)とする。原料パルプとしては、例えば、バージンパルプ、古紙パルプ、これらを組み合わせたパルプ等を使用することができる。
バージンパルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ(MP)などを、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
古紙パルプとしては、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
(基紙:添加物)
基紙1には、必要により、填料等の添加物を内添することができる。添加物としては、例えば、填料、サイズ剤、紙質向上剤、凝結剤、消泡剤、蛍光増白剤、硫酸バンド、歩留り向上剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色染料、着色顔料、耐水化剤等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
添加物として填料を内添する場合、その含有量は、例えば5.0〜15.0質量%、好ましくは7.0〜10.0質量%である。填料の含有量が5.0質量%を下回ると、基紙1の平坦性が低下して、インク受容層2の均一な形成が困難になるおそれがある。また、下塗り層3を設ける場合に当該下塗り層3の均一な形成が困難となり、インク受理層2の形成も困難になるおそれがある。他方、填料の含有量が15.0質量%を上回ると、基紙1の剛度が低下して、耐カール性が悪化するおそれがある。また、パルプ成分が少なくなり、基紙1のクッション性も低下するおそれがある。このクッション性の低下は、バリの発生につながるおそれがある。
(基紙:坪量)
広義の基紙(基紙1、下塗り層3を設ける場合は基紙1及び下塗り層3)の坪量は、80.0〜150.0g/m2であるのが好ましく、84.9〜127.9g/m2であるのがより好ましい。広義の基紙の坪量が80.0g/m2を下回ると、広義の基紙の剛度が低下して、耐カール性が悪化するおそれがある。他方、広義の基紙の坪量が150.0g/m2を上回ると、広義の基紙の剛度が高くなり、用途(名刺やICカード等)に適する形状に加工する際に(裁断する際に)加工不良が発生するおそれがある。なお、広義の基紙の坪量は、JIS P 8124(2011)に準拠して測定した値である。
(基紙:密度)
広義の基紙の密度は、0.80〜1.20g/cm3であるのが好ましく、0.98〜1.10g/cm3であるのがより好ましい。広義の基紙の密度が0.80g/cm3を下回ると、広義の基紙の表面の凹凸性が大きくなり、インク受容層2の均一な形成が困難になるおそれがある。他方、広義の基紙の密度が1.20g/cm3を上回ると、広義の基紙のクッション性(弾性力)が不十分になり、転写濃度の点で不十分であるとされるおそれがある。しかも、広義の基紙の密度が1.20g/cm3を上回ると、クッション性が低下することを原因として熱転写受像シートXが裁断される際に加わる力の吸収性(クッション性)も低下し、結果、熱転写受像シートXにバリが生じるおそれがある。なお、広義の基紙の密度は、JIS P 8118(2014)に準拠して測定した値である。
広義の基紙の密度は、例えば、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、熱カレンダー等の公知の装置を用いて調整することができる。
(基紙:厚さ)
広義の基紙の厚さ(紙厚)は、66〜188μmであるのが好ましく、80〜110mmであるのがより好ましい。広義の基紙の厚さが66μmを下回ると、広義の基紙の剛度が低下して、耐カール性が悪化するおそれがある。しかも、広義の基紙の厚さが66μmを下回るとクッション性が低下するため、広義の基紙の密度を1.20g/cm3以下にしたとしても熱転写受像シートXにバリが生じるおそれがある。他方、広義の基紙の厚さが188μmを上回ると、広義の基紙の剛度が高くなり、用途(名刺やICカード等)に適する形状に加工する際に加工不良が発生するおそれがある。なお、広義の基紙の厚さは、JIS P 8118(1998)に準拠して測定した値である。
(基紙:算術平均粗さ)
広義の基紙の(表面)算術平均粗さは、0.10〜0.60μmであるのが好ましく、0.20〜0.35μmであるのがより好ましい。広義の基紙の算術平均粗さが0.10μmを下回ると、広義の基紙を、例えば、高加圧条件化でカレンダー処理する必要等が生じ、広義の基紙の表面が平坦化する結果、広義の基紙の剛度が低下して耐カール性が悪化するおそれがある。他方、広義の基紙の算術平均粗さが0.60μmを上回ると、広義の基紙上に形成されるインク受容層2も素粗となり、インクリボンとの接触で摩擦が起こり、断熱性が低下してインク転写濃度が低下するおそれがある。なお、広義の基紙の算術平均粗さは、JIS B 0601(2013)に準拠して測定した値である。
広義の基紙の算術平均粗さは、キャストコート法によって最表層に下塗り層3を形成することで調整するのが好ましい。他には、例えば、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、熱カレンダー等の装置を用いて調整することができる。または、前記の方法を組み合わせて調整することもできる。
(インク受容層)
インク受容層2は、ベース剤、剥離剤、密着剤、更に溶媒として有機溶剤を少なくとも含むインク受容層塗液を塗布することで形成する。
(インク受容層:ベース剤)
ベース剤とは、インク受容層2、あるいはインク受容層塗液(以下、これらを含めて単に「インク受容層」ともいう。)の昇華インクの受容性に最も起因する成分である。このことから、好ましくは含有割合が70.0質量%以上である。
ベース剤としては、昇華型染料を受容し易い公知の樹脂材料を使用することができる。具体的には、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルポリマーとの共重合体系樹脂、アイオノマーやセルロースジアスターゼ等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート、アクリル系樹脂等の溶剤系の樹脂等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。ただし、昇華型染料の受容性及び他の成分との相溶性が良好であることから、ベース剤としては塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂を使用するのが好ましい。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(以下、単に「塩酢ビ系樹脂」ともいう。)は、塩化ビニルの強靭性と、酢酸ビニルの付着性とを併せ有する。したがって、インク受容層2が塩酢ビ系樹脂を含有すると、カールが抑制され、しかもインクリボンとの密着性が向上するためインク転写濃度が向上する。
なお、塩酢ビ系樹脂には、塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合体のみではなく、塩化ビニル、酢酸ビニル、及びその他のモノマーの共重合体も含まれる。
塩酢ビ系樹脂は、質量基準で、塩化ビニル:酢酸ビニル=85〜95:5〜15であるのが好ましく、86〜93:7〜14であるのがより好ましい。塩化ビニルの含有割合が以上の範囲を下回ると、耐熱性及び剛性が低下するため、インク転写性及び耐カール性が悪化するおそれがある。他方、塩化ビニルの含有割合が以上の範囲を上回ると、インク受容層2の接着性が低下するため、インクリボンとの密着性が低下してインク転写濃度が低下するおそれがある。しかも、インク受容層2の接着性の低下はバリが生じる原因となり、このバリを防ぐためには後述する密着剤の高配合のみでは補うことができなくなるおそれがある。
なお、塩化ビニルの含有割合を85〜95質量%と多くすると、後述するように密着剤であるポリオレフィン系樹脂中の塩素含有量を20〜30質量%とする場合においては、樹脂同士の相溶性が良くなり、インク受容層の強度がより向上して、バリも低減する。
塩酢ビ系樹脂の重合度は、600〜800であるのが好ましく、700〜780であるのがより好ましい。塩酢ビ系樹脂の重合度が600を下回ると、塩酢ビ系樹脂が低融点化し、流動性も低くなるため、転写時に樹脂が粘着性を示し、インクリボンとの剥離性が悪化するおそれがある。この点、剥離性の悪化は後述する剥離剤の高配合化で対応可能であるが、剥離剤を高配合化するとバリが生じ易くなるとの問題がある。また、塩酢ビ系樹脂の重合度が600を下回ると、インク受容層塗液の塗工適正が悪化するおそれもある。他方、塩酢ビ系樹脂の重合度が800を上回ると、塩酢ビ系樹脂が高融点化し、流動性も高くなるため、転写時に必要以上に加熱する必要があり、耐カール性が悪化するおそれがある。また、インク受容層塗液の塗液の塗工適正が悪化するおそれもある。
塩酢ビ系樹脂の数平均分子量は、35000〜55000であるのが好ましく、40000〜50000であるのがより好ましい。塩酢ビ系樹脂の数平均分子量が35000を下回ると、インクリボンとの密着性が十分に得られず転写不良となるおそれがある。しかも、インク受容層2の密着性が低下はバリが生じる原因となり、このバリを防ぐためには後述する密着剤の高配合のみでは補うことができなくなるおそれがある。他方、塩酢ビ系樹脂の数平均分子量が55000を上回ると、インクリボンと密着し過ぎ、剥離不良となるおそれがある。この点、剥離性の悪化は後述する剥離剤の高配合化で対応可能であるが、剥離剤を高配合化するとバリが生じ易くなるとの問題がある。
塩酢ビ系樹脂のガラス転移温度は、73〜78℃であるのが好ましく、74〜77℃であるのがより好ましい。塩酢ビ系樹脂のガラス転移温度が73℃を下回ると、軟化し、基紙1上に均一にインク受容層2を形成出来ないおそれがある。他方、塩酢ビ系樹脂のガラス転移温度が78℃を上回ると、クッション性が低下して、転写不良となるおそれがある。クッション性の低下は、バリが生じる原因にもなる。
塩酢ビ系樹脂のK値(支持力係数)は、55〜65であるのが好ましく、56〜59であるのがより好ましい。塩酢ビ系樹脂のK値が55を下回ると、インク受容層2が変形し易くなり、外部からの応力で変形するおそれがある。この変形性の問題は、熱転写受像シートXを裁断した際に裁断面が崩れる原因となり得る。他方、塩酢ビ系樹脂のK値が65を上回ると、インク受容層2が変形し難くなり、外部からの応力でクラック(ひび割れ)が生じるおそれがある。また、基紙1及びインク受容層2の層間剥離を原因とするバリが発生する要因となり得る。
インク受容層2における塩酢ビ系樹脂の含有割合は、93.0〜99.8質量%であるのが好ましく、97.0〜99.6質量%であるのがより好ましい。塩酢ビ系樹脂の含有割合が93.0質量%を下回ると、所望のインキ転写濃度を得られないおそれがある。他方、塩酢ビ系樹脂の含有割合が99.8質量%を上回ると、インクリボンが指定した印刷範囲以外に貼り付くおそれがある。
(インク受容層:剥離剤)
インク受容層2が剥離剤を含有すると、印刷範囲外にインクリボンが貼り付くのが防止される。また、剥離安定性が向上し、減色法による画像形成に適するものとなる。
剥離剤としては、昇華型熱転写受像シートの分野で従来公知のものを適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス、アミドワックス、弗素系やリン酸エステル系の界面活性剤等を使用することができる。
シリコーンオイルとして、例えば、各種の変性シリコーンを使用することができる。変性シリコーンオイルは、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、例えば、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等を行ったシリコーンオイルを使用することができる。また、非反応性シリコーンオイルとしては、例えば、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性等を行ったシリコーンオイルを使用することができる。以上の変性シリコーンは、1種を単独で使用しても、2種以上を併せて使用してもよい。また、シリコーンオイルと、他の剥離剤とを併せて使用することもできる。ただし、インクリボンとの剥離性及びインク受容層2の強度低下防止という観点から、剥離剤としてはシリコーン系樹脂を使用するのが好ましい。
シリコーン系樹脂としては、例えば、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、エポキシ−アラルキル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン等の中から1種を又は複数種を選択して使用することができる。ただし、ジアミン変性シリコーン樹脂を使用するのが好ましい。ジアミン変性シリコーン樹脂は、吸着性に優れるジアミンが有機基として導入されている。したがって、ジアミン変性シリコーン樹脂を使用すると、熱転写受像シートXとインクリボンとの密着性が向上し、インク転写濃度が向上する。
シリコーン系樹脂としてジアミン変性シリコーン樹脂を使用する場合、有機基であるジアミンの官能基当量は、100〜1800g/molであるのが好ましく、150〜500g/molであるのがより好ましい。ジアミンの官能基当量が100g/molを下回ると、熱転写受像シートXとインクリボンとの密着性が低下し、インク転写濃度が低下するおそれがある。この熱転写受像シートXの密着性の低下は、バリの問題に対しても悪影響を及ぼすおそれがある。他方、ジアミンの官能基当量が1800g/molを上回ると、熱転写受像シートXとインクリボンとの密着性が過度に高まり、指定した印刷範囲以外にインクリボンが貼り付くおそれがある。また、ジアミンの官能基当量が1800g/molを上回ると、塩酢ビ系樹脂との相溶性が悪化するおそれがある。
インク受容層2中におけるシリコーン系樹脂の含有割合は、0.050〜2.00質量%であるのが好ましく、0.10〜1.50質量%であるのがより好ましい。シリコーン系樹脂の含有割合が0.050質量%を下回ると、インクリボンが指定した以外の箇所に貼り付くおそれがある。他方、シリコーン系樹脂の含有割合が2.00質量%を上回ると、インク転写濃度が低下するおそれがある。また、シリコーン系樹脂の含有割合が2.00質量%を上回ると、熱転写受像シートXを裁断した際に、バリが生じやすくなる。
(インク受容層:密着剤)
インク受容層2は、密着剤を0.50質量%以上含有する。このように密着剤を高配合にすると、インク受容層2のクッション性が高まり、バリが生じ難くなる。このクッション性の向上は、印刷・加工適性の向上につながり、また、インク受理層2と広義の基紙との密着性が向上するため、両者の層間剥離が抑制される。
密着剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の中から選択されるポリオレフィンを1種又は2種以上含んでいるポリオレフィン系樹脂を使用するのが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂は、α−オレフィンを主成分とするものであり、ポリオレフィンを塩素化又は酸変性した樹脂である。ポリオレフィン系樹脂としては、低温でも弾性率の低い樹脂が好ましく、塩素化ポリプロピレン樹脂が低融点、低弾性、皮膜強度及び透明性等の点で最も好ましい。
ポリオレフィン系樹脂は、塩素含有量が20〜30%であるのが好ましい。また、GPC法による平均分子量が、30,000〜50,000であるのが好ましい。
インク受容層2中における密着剤の含有割合は、0.50〜2.50質量%であるのが好ましく、1.00〜3.00質量%であるのがより好ましい(媒体として有機溶剤を含むインク受容層塗液基準では、0.20〜0.80質量%であることが好ましい。)。密着剤の含有割合が3.50質量%を上回ると、インク受容層2が強固となり、後述するようにインク受容層2の厚さを80μm以下にしたとし、あるいはインク受容層塗液の塗布量を30.0g/m2以下にしてもインク受容層2の力の吸収性がなくなり、熱転写受像シートXの裁断に際してバリが生じるおそれがある。また、インク受容層2がヒビ割れるおそれもある。
剥離剤としてシリコーン系樹脂を使用し、かつ密着剤としてポリオレフィン系樹脂を使用する場合においては、インク受容層2中におけるシリコーン系樹脂の含有割合を0.10質量%以上としつつ、シリコーン系樹脂の含有割合に対するポリオレフィン系樹脂の含有割合を3.0〜100.0質量%とするのが好ましく、10.0〜35.0質量%とするのがより好ましい。剥離安定性の観点からインク受容層2中におけるシリコーン系樹脂の含有割合を0.10質量%以上とするのが好ましいが、この場合において剥離性を損なうことなくバリの発生を防止するには、ポリオレフィン系樹脂の含有割合を上記範囲内とするのが好ましい。
(インク受容層:有機溶剤)
インク受容層2は、溶媒として有機溶剤を含有させるのが好ましい。有機溶剤を含有させると、剥離剤や密着剤等の種々の添加剤の相溶性が良くなり、かつ平滑性の高い塗工面が得られる。
有機溶剤としては、例えば、トルエンやメチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサノン、n−ヘキサン、キシレン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等を使用することができる。
(インク受容層:その他の成分)
インク受容層2には、必要により、添加剤が含まれてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、腐食防止剤、粘着付与剤(タッキファイヤー)、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤、顔料、難燃剤、フィラー、熱溶融性物質、ワックス等の中から1種を又は複数種を組み合わせて使用することができる。
(インク受容層:形成方法)
インク受容層2の形成方法としては、例えば、塗料(インク受容層塗液)を広義の基紙に直接塗布(塗工)する方法や、塗料を剥離フィルムに一旦塗工し、この塗工によって形成された塗工層を基紙1に転写する方法等を採用することができる。
塗料の塗工には、例えば、コンマコーター、リップコーター、カーテンコーター、リバースロールコーター、ナイフコーター、バーコーター、スロットダイコーター、エアーナイフコーター、リバースグラビアコーター、バリオグラビアコーター等の塗工装置を使用することができる。
塗料の塗布量は、10.0〜50.0g/m2とするのが好ましく、12.0〜28.0gm2とするのがより好ましい。塗料の塗布量が10.0g/m2を下回ると、インク受容層2の膜厚が低下し、所望のインク転写濃度が得られないおそれがある。他方、塗料の塗布量が30.0g/m2を上回ると、乾燥工程での負荷が増大して、生産効率が低下するおそれがある。インク受容層塗液として密着剤の含有割合が15.0質量%以下の塗液を使用したとしても力の吸収性が不十分になり、バリが発生するおそれがある。
塗布した塗料の乾燥には、例えば、オーブン、熱風器、加熱ロール、遠赤外線ヒーター、熱風循環乾燥炉等の乾燥装置を使用することができる。
塗料の乾燥工程の後には、冷却工程やエージング工程を設けることができる。また、その後に貼り合せ工程を設け、剥離シート等を貼り合せることができる。
(インク受容層:厚さ)
インク受容層2の厚さは、1〜80μmであるのが好ましく、10〜30μmであるのがより好ましい。インク受容層2の厚さが1μmを下回ると、所望のインク転写濃度が得られないおそれがある。他方、インク受容層2の厚さが80μmを上回ると、乾燥工程での負荷が増大し、耐カール性を悪化させるおそれがある。また、インク受容層塗液として密着剤の含有割合が15.0質量%以下の塗液を使用したとしてもクッション性が不十分になり、バリが発生するおそれがある。
(下塗り層)
基紙1(狭義の基紙)とインク受容層2との間には、図2に示すように、下塗り層3を、特に無機顔料を主成分(好適には65.0質量%以上)とする下塗り層3を設けるのが好ましい。
下塗り層3は、例えば、SBラテックス、水溶性高分子、中空粒子、サイズ剤、耐水化剤、着色染料、着色顔料、消泡剤、蛍光増白剤、脂肪酸石鹸、ポリエチレンエマルション、界面活性剤、アミド系化合物、リン系化合物、フッ化化合物、金属塩水溶液、カルボン酸誘導体、プラスチックピグメント(中空型、密実型)等を含有する。
下塗り層3は、キャストコート法によって形成するのが好ましい。下塗り層3をキャストコート法によって形成すると、カレンダー処理する場合のように基紙1の平坦性を高めることができるが、カレンダー処理する場合のように基紙1の密度が高くなるのを抑えることができる。
なお、キャストコート法とは、基紙1に下塗り層3用の塗料を塗工し、湿潤状態にある下塗り層3をクロムメッキドラムに圧着して乾燥させた後、クロムメッキドラムから剥離してクロムメッキ鏡面を写しとる塗工方式である。
キャストコート法としては、例えば、ウエットキャスト法、プレキャスト法、ゲル化キャスト法、リウエットキャスト法、ドライキャスト法等を採用することができる。ただし、キャストコート法としては、下塗り層3が高温になっても破壊し難い、リウエットキャスト法を採用するのが好ましい。
下塗り層3は、複数層設けるのがより好ましい。また、この場合、少なくともインク受容層2に接する最表層の下塗り層3がキャストコート法によって形成されているのが好ましい。さらに、この最表層の下塗り層3は、中空粒子を含有しているのが好ましい。この構成によると、断熱性(平坦性が高いほど断熱効果が高くなる)及びクッション性(平坦性が低いほど、クッション性が高くなる)という相反する効果を両立することができる。
下塗り層3を形成する塗料の塗工量(片面)は、2.0〜25.0g/m2とするのが好ましく、4.0〜20.0gm2とするのがより好ましい。塗料の塗工量が2.0g/m2を下回ると、インク受容層2を形成する際に基紙1の凹凸(表面性)が悪化し、基紙1の凹凸に沿ってインク受容層2の表面性も悪化するおそれがある。他方、塗料の塗工量が25.0g/m2を上回ると、相対的に基紙1中のパルプ成分の占める割合が少なくなり、耐カール性が悪化するおそれがある。
次に、本発明の実施例を説明する。なお、以下で説明する実施例は、本発明の一例である。また、以下で説明する各薬剤の含有量(配合量)は、特にこれに反する記載がない限り、固形分換算した場合の量を意味する。
基紙の両面又は片面に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(塩酢ビ系樹脂)、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及び有機溶剤を含有するインク受容層塗液を塗布してインク受理層を形成し、もって昇華型熱転写受像シートを作成した。詳細は、以下のとおりとした。
(基紙A:キャストコート紙)
原料パルプとして、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)及び針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を使用した。LBKP及びNBKPの配合割合は、80質量%:20質量%とした。パルプスラリーには、重質炭酸カルシウム、凝結剤、歩留剤、紙力増強剤を内添した。原料パルプのスラリーをオントップ型長網式抄紙機で抄紙し、多筒式ドライヤーで乾燥させ、基紙(狭義の基紙)を得た。
得られた基紙の両面に塗料をロッドメタリングコータで塗工して第1の下塗り層を形成した。塗工量は、両面で10.0g/m2とした。塗料としては、白色顔料として重質炭酸カルシウム100.0質量部、ラテックス10.0質量部、澱粉10.0質量部を配合したものを使用した。次に、基紙の両面に第1の下塗り層の上から塗料をブレードコータで塗工して第2の下塗り層を形成した。塗工量は、両面で18.0g/m2とした。塗料としては、白色顔料として重質炭酸カルシウム30.0質量部、カオリンを70.0質量部、ラテックス15.0質量部、澱粉2.0質量部を配合したものを使用した。第2の下塗り層を形成した後、スーパーカレンダーを使用して加圧処理を行った。さらに、基紙の片面に対して第2の下塗り層の上から塗料をエアーナイフコーターで塗工して第3の下塗り層(最表層)を形成した。塗工量は、片面当たり6.0g/m2とした。塗料としては、重質炭酸カルシム40.0質量部、カオリン60.0質量部、中空粒子8.0質量部、カゼイン6.0質量部、ラテックス25.0質量部、離剥剤2.0質量部を配合したものを使用した。最表層の形成後、リウエット法にてキャスト仕上げした。基紙(基紙A)の物性を表1に示した。
(基紙B:片艶コート紙)
原料パルプとして、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)及び針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を使用した。LBKP及びNBKPの配合割合は、80質量%:20質量%とした。原料パルプのスラリーには、タルク、凝結剤、歩留剤、紙力増強剤を内添した。原料パルプのスラリーを長網式抄紙機で抄紙し、ヤンキードライヤーで乾燥させ、基紙を得た。
得られた基紙(狭義の基紙)の片面(艶面)に塗料をブレードコータで塗工して下塗り層を形成した。塗工量は、片面で15.0g/m2とした。塗料としては、白色顔料として重質炭酸カルシウム50.0質量部、カオリン50.0質量部、ラテックス10.0質量部を配合したものを使用した。下塗り層の形成後、スーパーカレンダーを使用して加圧処理した。基紙(基紙B)の物性を表1に示した。
(基紙C:A2コート紙)
原料パルプとして、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)を使用した(100質量%)。原料パルプのスラリーには、重質炭酸カルシウム、凝結剤、歩留剤、紙力増強剤を内添した。原料パルプのスラリーをオントップ型長網式抄紙機で抄紙し、多筒式ドライヤーで乾燥させ、基紙を得た。
得られた基紙(狭義の基紙)の両面に塗料をロッドメタリングコータで塗工して第1の下塗り層を形成した。塗工量は、両面で14.0g/m2とした。塗料としては、白色顔料として重質炭酸カルシウム100.0質量部、ラテックス10.0質量部、澱粉10.0質量部を配合したものを使用した。次に、基紙の両面に対して第1の下塗り層の上から塗料をブレードコータで塗工して第2の下塗り層(最表層)を形成した。塗工量は、両面で24.0g/m2とした。塗料としては、白色顔料として重質炭酸カルシウム65.0質量部、カオリンを35.0質量部、ラテックス7.0質量部、澱粉1.0質量部を配合したものを使用した。最表層の形成後、スーパーカレンダーを使用して加圧処理した。得られた基紙(基紙C)の物性を表1に示した。
(塩酢ビ系樹脂)
塩酢ビ系樹脂として、ソルバインCH(日新化学工業(株)製、塩ビ:酢ビ=86:14(質量基準)、重合度:650、数平均分子量:50000、ガラス転移温度:73℃、K値:57)を使用した。インク受容層塗液中の塩酢ビ系樹脂(ベース剤)の含有割合は、表2に示すとおりとした。
(シリコーン系樹脂)
シリコーン系樹脂として、以下の薬剤B−1〜薬剤B−4を使用した。シリコーン系樹脂(剥離剤)の含有割合は、表2に示すとおりとした。
薬剤B−1:KF−393(信越化学工業(株)製、ジアミン変性シリコーン、官能基当量:350g/mol)
薬剤B−2:KF−8004(信越化学工業(株)製、ジアミン変性シリコーン、官能基当量:1500g/mol)
薬剤B−3:KF−869(信越化学工業(株)製、ジアミン変性シリコーン、官能基当量:3800g/mol)
薬剤B−4:KF−860(信越化学工業(株)製、ジアミン変性シリコーン、官能基当量:7600g/mol)
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂として、薬剤C−1:HARDLEN CY−2129(東洋紡(株)製、塩素含有量29%)を使用した。ポリオレフィン系樹脂(密着剤)の含有割合は、表2に示すとおりとした。
(有機溶剤)
有機溶剤として、トルエン(市販品)を使用した。有機溶剤の含有割合は、表2に示すとおりとした。
(品質評価)
各昇華型熱転写受像シートXの品質を評価する試験を行った。結果を表2に示した。なお、基紙の物性の測定方法及び品質評価の試験方法は、以下のとおりとした。坪量、密度、及び算術平均粗さについては、前述したとおりとした。
(クラーク剛度)
JIS P 8143(2009)「紙−こわさ試験方法−クラークこわさ試験機法」に準拠して測定した。
(ベック平滑度)
JIS P 8119(1998)「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠して測定した。
(インク転写濃度)
昇華型熱転写受像シートへの印刷は、インクリボンを用い、熱転写を行い評価用の画像を印刷した。次に、その昇華型熱転写受像シートXの印刷部のインク転写濃度をマクベス反射濃度計RD−918(米国コルモーゲンコーポレーション社製)で測定した(インク転写濃度の数値が高いほど、鮮明で良好な絵柄が転写されていることを示す)。
(インクリボン転写適性)
昇華型熱転写受像シートに、製造番号の異なるインクリボン10枚を転写装置で貼り付けた際の昇華型熱転写受像シートとリンクリボンとの密着性を評価した。評価基準は以下のとおりとした。
◎:指定した印刷範囲以外に貼り付いたリンクリボンはなく、昇華型熱転写受像シートとして適していた。
○:指定した印刷範囲以外に貼り付いたリンクリボンが1〜2枚であり、昇華型熱転写受像シートとして実用に際しては問題のない範囲であった。
△:指定した印刷範囲以外に貼り付いたリンクリボンが3枚であり、昇華型熱転写受像シートとして実用に供するにはやや難があった。
×:指定した印刷範囲以外に貼り付いたリンクリボンが4枚以上あり、昇華型熱転写受像シートとしては使用できなかった。
(セロピック強度)
透明粘着テープ(ニチバン製CT405A−18)を用いてセロピック評価を行った。昇華型熱転写受像シートの表面にテープを貼付してゴム製のローラーで20往復押さえつけた後、テープを剥がしてインク受容層と基紙との密着性の状態を観察した。評価基準は以下のとおりとした。
○:インク受容層と基紙とが密着しており、剥離が観察されない。
△:インク受容層と基紙とが若干剥離しているが使用上問題ない程度である。
×:インク受容層と基紙とが剥離(バリが発生)しており、使用できない。
(カール適性)
各昇華型熱転写シートを10cm角サイズに裁断したサンプルを作成し、このサンプルを190〜215℃の乾燥機で1分間保存した。保存後のサンプルをインク受理層が天面になるように定盤上に載置し、サンプルが静止した状態で定盤からの4隅の浮き上がり高さをそれぞれ測定し、測定値の平均値を求めた。評価基準は以下のとおりとした。
○:カール平均値が30mm以下であり、昇華型熱転写受像シートとして適している。
△:カール平均値が50mm以下であり、昇華型熱転写受像シートとして使用上、問題ない範囲である。
×:カール平均値が50mmを超え、昇華型熱転写受像シートとして使用できない。
Figure 2020006547
Figure 2020006547
本発明は、昇華型熱転写受像シート及びその製造方法として利用可能である。
1…基紙、2…インク受容層、3…下塗り層、X…熱転写受像シート

Claims (8)

  1. 基紙と、この基紙の一方又は両方の面に形成されたインク受容層とを有し、
    前記インク受容層は、ベース剤、剥離剤及び密着剤を含有し、かつ当該密着剤の含有割合が0.50質量%以上である、
    ことを特徴とする昇華型熱転写受像シート。
  2. 前記剥離剤がシリコーン系樹脂で、かつ前記密着剤がポリオレフィン系樹脂であり、
    前記インク受容層中の前記シリコーン系樹脂の含有割合が0.10質量%以上で、かつ前記シリコーン系樹脂に対する前記ポリオレフィン系樹脂の含有割合が3.0〜100.0質量%である、
    請求項1に記載の昇華型熱転写受像シート。
  3. 前記インク受容層は、厚さが1〜80μmで、かつ前記密着剤の含有割合が15.0質量%以下である、
    請求項1又は請求項2に記載の昇華型熱転写受像シート。
  4. 前記ベース剤が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂で、かつ塩化ビニル:酢酸ビニル=85〜95:5〜15(質量基準)である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の昇華型熱転写受像シート。
  5. 前記密着剤がポリオレフィン系樹脂であり、かつ塩素含有量が20〜30質量%である、
    請求項4に記載の昇華型熱転写受像シート。
  6. 前記シリコーン系樹脂がジアミン変性シリコーン樹脂で、かつ有機基であるジアミンの官能基当量が100〜1800g/molである、
    請求項2に記載の昇華型熱転写受像シート。
  7. 前記基紙は、JIS P 8118(2014)に準拠して測定した密度が0.80〜1.20g/cm3で、かつJIS P 8118(1998)に準拠して測定した紙厚が66〜188μmである、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の昇華型熱転写受像シート。
  8. 基紙の一方又は両方の面にインク受容層塗液を塗布し、
    前記インク受容層塗液として、ベース剤、剥離剤及び密着剤を含有し、かつ当該密着剤の含有割合が0.20質量%以上の塗液を使用する、
    ことを特徴とする昇華型熱転写受像シートの製造方法。
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