詳細な説明
以下の説明では、本発明の様々な態様の完全な理解を提供するために、ある特定の詳細を説明する。しかし、当業者であれば、本発明はこれらの詳細なしに実施されてもよいことを理解するであろう。
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の目的のために、次の用語を以下に定義する。
単語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、特に明記しない限り、1つまたは複数を示す。
「約」とは、基準の量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量または長さに対して30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%異なる量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量または長さを意味する。「約」という用語と関連して使用される数値の文脈で論じている任意の態様において、約という用語を省略することができると特に考えられる。
文脈がそうでないことを要求しない限り、本明細書および特許請求の範囲を通じて、「含む(comprise)」という単語およびその変形、例えば「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、オープンかつ包括的な意味で解釈すべきであり、「含むがそれに限定されるわけではない」と解釈すべきである。
「からなる(consisting of)」は、「からなる(consisting of)」という句に続くものを含み、それに限定されることを意味する。 したがって、「〜からなる」という句は、列挙された要素が必須または義務であり、他の要素が存在し得ないことを示す。
「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」は、句の後に列挙された任意の要素を含み、列挙された要素の開示において特定された活性または作用に干渉または寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「本質的に〜からなる」という句は、列挙された要素が必須または義務であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の活性または作用に影響を及ぼすかどうかに応じて存在してもしなくてもよいことを示す。
「減少した(decreased)」または「減少した(reduced)」または「より少ない(lesser)」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、本明細書に記載されている量またはレベルの約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、または50倍またはそれより多い分(例えば、100倍、500倍、1000倍)の減少を含み得る。特定の態様では、基準の量と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%(例えば、15%、26%など、間にあるすべての整数および小数点を含む)の減少を示す。
本明細書を通じて、「態様」または「一態様」は、態様に関連して説明される特定の特徴、構造または特徴が本発明の少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。したがって、本明細書の様々な箇所における「一態様において」または「態様において」という句の出現は、必ずしもすべて同じ態様を示しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特徴は、1つまたは複数の態様において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
「増加した」または「増強した」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、本明細書に記載の量またはレベルの1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、または50倍、またはそれより多い増加(例えば、100倍、500倍、1000倍)(1より大きく、間のすべての整数および小数、例えば2.1、2.2、2.3、2.4などを含む)を含み得る。特定の態様では、基準量と比較したときの、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも500%、または少なくとも1000%(例えば、15%、26%など、間のすべての整数および小数を含む)の増加を示す。
「単離された」とは、天然の状態で通常それに付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない物質を意味する。例えば、本明細書で使用している場合、「単離されたポリヌクレオチド」は、天然に存在する状態で隣接する配列から精製させたポリヌクレオチドを含み、例えば、通常は断片に隣接している配列から除去されたDNA断片が挙げられる。あるいは、本明細書で使用する場合、「単離されたペプチド」や「単離されたポリペプチド」などは、その天然の細胞環境からのペプチドまたはポリペプチド分子のインビトロでの単離および/または精製、ならびに細胞の他の構成要素との関連からのインビトロでの単離および/または精製を含む;すなわち、インビボの物質と有意に関連していない。
「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子または免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原および合成の抗体に特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を意味する。免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgDまたはIgA)またはサブクラスであり得る。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、二重特異性、合成、ヒト化およびキメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片およびF(ab)2断片、FvまたはFv’部分、Fab発現ライブラリーによって産生される断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、または上記のいずれかのエピトープ結合断片を含むがそれらに限定されるわけではない。抗体、または一般的に任意の分子は、抗体が優先的に抗原に結合する場合、抗原(または他の分子)に「特異的に結合」し、例えば、他の分子との約30%、20%、10%、5%または1%未満の交差反応性を有する。いくつかの態様では、複数のマーカーと交差反応する抗体が使用される。例えば、細胞表面タンパク質ファミリーの関連メンバーと交差反応する抗体を用いて、そのファミリーの様々なメンバーを提示する細胞を結合させることができる。
本明細書で使用している場合、「mRNA」または時には「mRNA転写物」と示している用語は、プレmRNA転写物、転写物プロセシング中間物、翻訳の態勢が整った成熟mRNAおよび遺伝子の転写物、またはmRNA転写物に由来する核酸を含むがそれらに限定されるわけではない。転写物プロセシングには、スプライシング、編集、および分解が含まれ得る。本明細書で使用している場合、mRNA転写物に由来する核酸とは、核酸の合成のために、mRNA転写物またはそのサブ配列が最終的に鋳型として機能する核酸をいう。
「から得られる」とは、例えば生物学的サンプルまたは腫瘍サンプルのようなサンプルが、所望の生物(例えば対象)または所望の生物内の特定の組織などの特定の供給源から単離されるか、それらに由来することを意味する。例えば、生物学的サンプルは、対象から得ることができる。「に由来する」または「から得られる」は、生物学的サンプルまたは腫瘍組織サンプルの供給源を示すこともできる。
本明細書で使用している場合、「ポリヌクレオチド」または「核酸」という語句は、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチド、またはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態である、典型的に少なくとも10塩基長のポリマー形態のヌクレオチドを示す。この用語は、一本鎖および二本鎖の形態のDNAおよびRNAを含む。ポリヌクレオチドは、mRNA、RNA、cRNA、rRNA、cDNA、DNAおよびマイクロRNAを含むがそれらに限定されるわけではない。ポリヌクレオチドには、DNAから転写されるがタンパク質に翻訳されない機能性RNA分子である非コードRNA(ncRNA)が含まれる。エピジェネティック関連ncRNAには、miRNA、siRNA、piRNAおよびlncRNAが含まれる。一般に、ncRNAは、転写および転写後レベルで遺伝子発現を調節するように機能する。エピジェネティックな過程に関与すると思われるncRNAは、短いncRNA(<30nt)と長いncRNA(>200nt)という2つの主要な群に分けることができる。短い非コードRNAの3つの主なクラスは、マイクロRNA(miRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、およびpiwi結合RNA(piRNA)である。両方の主要な群は、ヘテロクロマチン形成、ヒストン修飾、DNAメチル化標的化、および遺伝子サイレンシングにおいて役割を果たすことが示されている。
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用されて、アミノ酸残基のポリマー、ならびにそれらの変異体および合成および天然に存在する類似体を示す。したがって、これらの用語は、アミノ酸ポリマーに用いられ、それにおいて、1つまたは複数のアミノ酸残基は、合成非天然アミノ酸、例えば対応する天然アミノ酸の化学的類似体、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよびその天然化学的誘導体である。
本明細書で使用している場合、「対象」は、本発明に従って治療または診断され得る症状を示すか、症状を呈する危険性がある任意の動物を含む。診断または他の目的のために、生物学的サンプル、例えば腫瘍組織サンプルを分析することが望ましい対象も含まれる。適切な対象(患者)は、哺乳動物(ヒトおよび非ヒト霊長類など)、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットなど)、家畜、ならびに飼育動物またはペット(例えば、ネコまたはイヌ)を含む。
本明細書で使用している場合、「治療」または「治療する」は、癌などの疾患または状態の症状または病状に対する任意の望ましい効果を含み、治療をする疾患または状態の1つまたは複数の測定可能なマーカーにおける最小限の変化または改善さえ含み得る。「治療」または「治療する」は、必ずしも疾患または状態またはその関連症状の完全な根絶または治癒を示すものではない。この治療を受ける対象は、それを必要とするいずれかの対象である。それを必要とする対象には、疾患の動物モデル、例えば薬物療法の評価に使用される動物モデルも含まれる。臨床的改善の例示的なマーカーは、当業者には明らかであろう。
本明細書で使用している場合、「予防(prevention)」または「予防する(preventing)」は、疾患または状態、例えば癌または腫瘍の転移の症状または病状の発症または進行の遅延または阻害を含み、治療される疾患または状態の1つまたは複数の測定可能なマーカーの最小限の変化または改善さえも含み得る。「予防する(prevent)」または「予防する(preventing)」は、疾患または状態、またはその関連症状の発症または進行の完全な予防を必ずしも示さない。
本発明の実施は、反対に具体的に示していない限り、当技術分野の範囲内の分子生物学および組換えDNAの技術の従来の方法を使用するものであり、その多くは以下の説明目的で記載されている。このような技術は文献に十分に説明されている。例えば、Sambrook, et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition, 2000); DNA Cloning:A Practical Approach, vol.I&II(D.Glover, ed.); Oligonucleotide Synthesis(N.Gait, ed., 1984); Oligonucleotide Synthesis:Methods and Applications(P.Herdewijn, ed., 2004); Nucleic Acid Hybridization(B.Hames&S.Higgins, eds., 1985); Nucleic Acid Hybridization:Modern Applications(Buzdin and Lukyanov, eds., 2009); Transcription and Translation(B.Hames&S.Higgins, eds., 1984); Animal Cell Culture(R.Freshney, ed., 1986); Freshney, R.I.(2005)Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique, 5th Ed.Hoboken NJ, John Wiley&Sons; B.Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning(3rd Edition 2010); Farrell, R., RNA Methodologies:A Laboratory Guide for Isolation and Characterization(3rd Edition 2005), Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology, Academic Press; Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO.I by Edward Harlow, David Lane, Ed Harlow(1999, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN 0-87969-544-7); Antibodies:A Laboratory Manual, Ed Harlow(編集者)、David Lane(編集者)による(1988、Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN 0-87969-3, 4-2)、1855.Handbook of Drug Screening, Ramakrishna Seethala, Prabhavathi B.Fernandesにより編集(2001, New York, N.Y., Marcel Dekker, ISBN 0-8247-0562-9); およびLab Ref:A Handbook of Recipes, Reagents, and Other Reference Tools for Use at the Bench, Jane Roskams and Linda Rodgersにより編集(2002, Cold Spring Harbor Laboratory, ISBN 0-87969-630-3)を参照されたい。
特定の態様は、本発明の診断目的のための従来の生物学的方法、ソフトウェアおよびシステムを使用することができる。本発明のコンピュータソフトウェア製品は、典型的には、本発明の方法の論理工程を実行するためのコンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ可読媒体を含む。適切なコンピュータ可読媒体は、フロッピーディスク、CD-ROM/DVD/DVD-ROM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、ROM/RAM、磁気テープなどを含む。コンピュータ実行可能命令は、適切なコンピュータ言語または複数の言語の組み合わせで書かれてもよい。基本的なコンピュータによる生物学的方法は、例えば、Setubal and Meidanis et al.,「Introduction to Computational Biology Methods」(PWS Publishing Company, Boston, 1997); Salzberg, Searles, Kasif,(Ed.), 「Computational Methods in Molecular Biology」(Elsevier, Amsterdam, 1998); Rashidi and Buehler、「Bioinformatics Basics:Application in Biological Science and Medicine」(CRC Press, London, 2000)、および「Ouelette and Bzevanis Bioinformatics:A Practical Guide for Analysis of Gene and Proteins」(Wiley&Sons, Inc., 2nd ed., 2001)に記載されている。米国特許第6,420,108号を参照されたい。
特定の態様は、プローブ設計、データ管理、分析、および機器の操作などの様々な目的のために様々なコンピュータプログラム製品およびソフトウェアを使用することができる。米国特許第5,593,839号、同第5,795,716号、第5,733,729号、第5,974,164号、第6,066,454号、第6,090,555号、第6,185,561号、第6,188,783号、第6,223,127号、第6,229,911号および第6,308,170号を参照されたい。
詳細な説明
本発明は、生物学的サンプルの調製および分析のための方法を提供する。特定の態様では、この方法は、大型および/またはインタクトな生物学的サンプルまたはサンプル(例えば、腫瘍組織サンプル)を分析するために有利である。これらの方法は、組織を透明にし、光学顕微鏡技術に合うようにし、それによってバイオマーカー、細胞の相互作用、および組織の3次元構造にわたる組織の微小環境のインサイチューでの検出を可能にするために使用できる。これらの方法は、生物学的サンプルの3次元的な分析を可能にし、腫瘍の存在、腫瘍の増殖、腫瘍の転移、腫瘍の予後、時間の経過に伴う腫瘍の発達、および/または治療および抵抗性の発展に対する予測的または実際の腫瘍応答または非応答などの、疾患の状態を示すまたは予測するサンプル内の様々な生物学的構造および染色パターンの分析を可能にする。この方法はまた、例えば異なるプローブを用いた連続的な分析を介した、生物学的サンプルの反復的な分析を可能にする。これにより、種々のタイプのプローブおよび作用物質を用いて異なる疾患マーカーまたはインジケーターを分析しながら、インサイチューで、単細胞および多細胞の構造について、ハイコンテンツで多くの特徴を記述することが可能になる。さらに、それらの天然状態の、免疫系を含む腫瘍微小環境における細胞型内および細胞型間の重要なバイオマーカー(例えば、タンパク質、DNAおよびRNA)の検出により、薬物応答および潜在的耐性のより良好な腫瘍の特徴付けおよび理解が可能になる。事実上、それは、重要な時空間の情報を失うことなく、腫瘍の固有の不均一性の遥かに優れたスナップショットを取込む。したがって、方法は、腫瘍組織の薄切片の従来の病理学的解析によって、または組織の形態学的および空間的関係を保たない分子的技術で複数の切片を使用することによって得られるものを超える、貴重な情報を提供する。
本発明の方法は、病変組織(例えば、腫瘍組織)の検出および/または特徴決定、腫瘍の予後または転移の判定または予測、経時的および/または治療に応答した疾患(例えば腫瘍)のモニタリング、実際の患者および疾患の動物モデルの両方における候補治療剤(例えば、抗腫瘍剤)の試験を含むがそれらに限定されるわけではない様々な目的で使用することができる。特定の態様では、本発明の方法は、疾患または状態(前症候の早期検出を含む)の検出、疾患または状態の予後、診断またはセラノシスの判定、または疾患または状態の段階または進行の判定に有用である。病変組織サンプルを特徴付けることはまた、特定の疾患、状態、疾患の段階および状態の段階、疾患の進行の予測および可能性分析、特に疾患の再発、転移の拡散または疾患のぶり返しに対する適切な治療または治療効力の同定を含むことができる。本発明の方法はまた、癌または腫瘍などの状態または疾患の臨床的に異なる型または亜型を同定するために使用できる。さらなる態様では、本発明の方法は、ヒトまたは動物に由来し、例えば対照または疾患モデルとして使用できる、細胞株または3D細胞株培養物である組織サンプルを使用して実施される。
CLARITYを含む方法およびヒドロゲルに基づく方法を含む、本発明の方法の独特な核酸標識化の特徴は、例えば、タンパク質を発現しない非コードRNA中に存在するものを含めた遺伝子変異を含む、腫瘍および癌などの疾患に関連する様々な突然変異を検出するために有利である。非コードRNAは哺乳動物トランスクリプトームの98%を構成し、GWASの研究は、大部分のヒトの疾患における非コードRNAの優先的な関与を報告している(タンパク質コード遺伝子と比較して)。翻訳されたRNA集団に対してでさえ、得られたタンパク質を検出するために使用される抗体は、特定のスプライス変異体、編集された転写物、配列多型、および他の転写バイオマーカーに概ね盲目的なままである。核酸標識化はまた、不均一な腫瘍サンプルにおける単一細胞レベルでの各特徴検出に向けて多重化するのに非常によく適している。
I.一般的な方法
本発明の態様は、組織サンプル、例えば、腫瘍組織サンプルを分析するための方法であって、(i)組織サンプルを処理して顕微鏡検査による分析を受け入れやすくする工程;および(ii)処理をされた組織サンプルを顕微鏡で分析する工程を含む方法を含む。特定の態様では、本方法は、(iii)組織サンプルを、例えば組織サンプルを特徴付けるのに有用であり得るマーカーに特異的に結合する検出可能な標識で標識化する工程をさらに含む。組織サンプルは、処理をされた後に標識化しても、特定の状況において、組織を処理前に標識化してもよい。さらに、この方法は、1つ、2つ、またはそれ以上の異なる時点で得られた組織サンプルを使用して、例えば、経時的な疾患の進行として評価するために、実施することができる。本発明の方法は、例えば、組織サンプル中の疾患(例えば、癌)の存在を検出すること、疾患の予後を予測すること、特定の療法に対する疾患の反応性を予測または判定すること、疾患の適切な治療を予測または判定すること、および治療に対する疾患の耐性の発生を予測または判定することを含む様々な目的で使用できる。
特定の態様では、組織サンプルの1つまたは複数の表現型または遺伝子型の特徴は、生物学的サンプルを分析し、サンプル中の1つまたは複数のバイオマーカー、例えば、タンパク質または核酸の存在、レベル、量、位置、または濃度を判定することによって、特徴付けられる。一態様では、特徴付けは、サンプル中のバイオマーカーが、標準または対照とも称され得る基準と比較して変更されているかどうかを判定することを含む。変更は、絶対的な存在または非存在、定量レベル、基準と比較される相対レベル、レベルの上昇または増加、レベルの低下、過剰発現、過小発現、差次的発現、変異または他の変化した配列、修飾(グリコシル化、リン酸化、エピジェネティックな変化)などを含むがそれに限定されるわけではない、サンプルと基準との間の任意の測定可能な差を含み得る。方法は、バイオマーカーの特定のパターン、例えば疾患の表現型のような検出することが望ましい表現型を示すバイオマーカーのパターンを含むことができる組織サンプルのバイオシグナチャを判断するために使用できる。診断、予後、セラノシス、または応答者/非応答者の状態の予測などの表現型を特徴付ける際に、バイオシグナチャを使用することができる。バイオシグナチャはまた、治療効果、疾患または状態の段階、または疾患もしくは状態の進行を判定するため、または疾患もしくは状態の進行をモニターするため、または治療に対する対象の応答をモニターするために使用できる。
バイオマーカーは、バイオマーカーの量またはレベルを基準のレベルまたは値と比較することによって評価することができる。特定の態様では、基準値は、サンプルを評価する同一の対象からのものであってもよく、または基準値は、サンプルの代表的集団(例えば、疾患の症状を示さない正常対象からのサンプル、または予後または予測のバイオマーカーの異なるセットを有する、乳癌などの同一の疾患を患う対象から得たサンプル)からのものであり得る。したがって、基準値は、所与のサンプルにおいてアッセイされたバイオシグナチャに対する対象サンプルの読み出した情報と比較する閾値の測定値を提供することができる。そのような基準値は年齢(例えば、新生児、乳児、青少年、若年者、中年の成人、高齢者および様々な年齢の成人)、人種/民族集団、正常な対象対疾患のある対象、喫煙者対非喫煙者、治療を受けている対象対未治療の対象、特定の個体または同様に診断または治療された対象の群の治療の異なる時点、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない、特定のコホートに対応するサンプル群からプールされたデータに従って設定することができる。さらに、特定の個体に対する治療の異なる時点でバイオシグナチャを判定することにより、個体が治療されている疾患または状態の治療または進行に対する個体の応答を、モニターすることができる。
基準値は、同じ対象から評価されたサンプルに基づいて、個別の追跡を提供することができる。いくつかの態様では、対象由来のサンプルにおけるバイオシグナチャの頻繁な試験が、その対象について以前に確立された基準値とのより良い比較を提供している。そのような経時変化の測定は、医師が対象の疾患の段階または進行、または治療の応答/非応答の予測をより正確に評価することを可能にするために使用され、したがって、治療のためのより情報に基づいた決定を提供する。場合によっては、バイオシグナチャの変動は、対象自身のバイオシグナチャを経時的に比較し、それによって、個別化された閾値、例えば診断が行われる閾値を対象に対して定めることが可能になるときに、低減される。
罹患していない個体において関心対象のバイオシグナチャを判定することによって、特定の表現型のない罹患していない個体についての基準値を確立することができる。例えば、基準の集団の基準値は、試験対象の1つまたは複数のバイオマーカーの検出のためのベースラインとして使用することができる。対象由来のサンプルが基準と類似のレベルまたは値を有する場合、その対象は疾患を有していない、または疾患を発症する可能性が低いと同定することができる。
あるいは、表現型を有する個体における1つまたは複数のバイオマーカーの量を判定することによって、特定の表現型を有する個体について基準値またはレベルを確立することができる。さらに、特定の表現型について値の指標を生成することができる。例えば、異なる疾患の段階は、異なる疾患の段階を有する個体から得られるような異なる値を有することができる。対象の値を指標と比較することができ、対象のレベルが指標と最も密接に相関する疾患の段階または進行などの、疾患の診断または予後を判定することができる。他の態様では、治療の効力について値の指標が生成される。例えば、特定の疾患を患う個体のバイオマーカーのレベルを生成することができ、どの治療法が個体に有効であるかを記録することができる。レベルは、対象の値が比較される値を生成するために使用することができ、個体のために、例えば対象が治療の応答者または非応答者である可能性が高いかどうかをレベルから予測することによって、治療または療法を選択することができる。
いくつかの態様で、特定の癌のバイオマーカーを特異的に標的とする抗原でバイオマーカーを単離または検出することによって、特定の癌に罹患していない個体についての基準値を判定している。非限定的な例として、様々な段階の癌を患う個体を、罹患していない個体について記載したのと同じ技術を用いて調査し、各群のバイオマーカーのレベルを判定することができる。いくつかの態様では、レベルは、少なくとも2つの別々の実験からの平均+/-標準偏差として定義され、少なくとも2回または3回実施される。これらの群間の比較は、観察された識別するバイオマーカーの統計的有意性を判定するための統計的検定を用いて行うことができる。いくつかの態様では、統計的有意性は、パラメトリックな統計の検定を使用して判定される。パラメトリックな統計の検定は、一部実施法、分散分析(ANOVA)、t検定、最小二乗、ピアソン相関、単純線形回帰、非線形回帰、複数線形回帰、または複数非線形回帰を含むことができるが、それらに限定されるわけではない。あるいは、パラメトリックな統計の検定は、一方向の分散分析、2元の分散分析、または反復測定の分散分析を含むことができる。他の態様において、統計的有意性は、ノンパラメトリックな統計の検定を用いて判定される。例としては、Wilcoxonの符号付順位検定、Mann-Whitneyの検定、Kruskal-Wallisの検定、Friedmanの検定、Spearmanの順位相関係数、Kendallのタウ分析、およびノンパラメトリック回帰検定が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様では、統計的有意性は、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005または0.0001未満のp値で判定される。また、例えば、Bonferroniの補正、その修正、またはHochbergの補正、Holm-Bonferroniの補正Sidak補正、Dunnettの補正、またはTukeyの複数の比較などの当技術分野で公知の他の技術を用いて、複数の比較のためにp値を補正することもできる。いくつかの態様では、ANOVAに続いて、各集団からのバイオマーカーの試験後比較のためのTukeyの補正が行われる。
疾患の再発モニター、治療応答モニタリング、または特定の態様における応答者/非応答者の状態を予測するための基準値を確立することもできる。
本発明の方法は、限定されるものではないが、本明細書に記載の様々な腫瘍および癌を含む、様々な異なる疾患に関連する様々な異なる組織型および組織で実施することができる。組織サンプルを処理し、組織サンプルを標識し、顕微鏡で組織サンプルを分析するための例示的な方法を本明細書に記載する。様々な処理の方法、標識方法、および顕微鏡法のいずれも、本発明を実施するための任意の方法で組み合わせることができる。
特定の態様では、本発明の方法は、生物学的サンプルの2つ以上の異なる特徴または成分を分析または検出することに関与する。これらは、物理的または時間的のいずれかに、同時に、連続的に、または重複して分析することができる。2つ以上の成分(例えば、特定の細胞、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドの存在または発現)は、例えば2つ以上の成分を区別する2つ以上の異なるように標識された検出可能なプローブを用いて、同時に分析され得る。本発明の1つの利点は、処理された生物学的サンプルを、例えば特定のプローブを用いる1つの方法を用いて分析することができ、その場合、そのプローブを、生物学的サンプルから除去または洗い流すことができ、次いでそれを第2の方法を用いて、例えば、異なるプローブを用いて分析することができる点である。特定の態様では、この方法は、第1の特徴または成分を分析または検出し、続いて第2の特徴または成分を分析または検出することを含む。特定の態様では、2つ以上の特徴または成分は、同じタイプのプローブ(例えば、抗体または核酸プローブ)を用いて分析することができるが、他の態様では、異なるタイプのプローブを用いて分析する。
特定の態様では、異なる時点で対象から2つ以上の腫瘍組織サンプルを得て、例えば、抗腫瘍薬による治療の有効性を判定するために、本方法に従って分析する。これらは、対象内の同じまたは異なる腫瘍または部位から得ることができる。例えば、ある態様では、第1の腫瘍組織サンプルは、第1の時点での原発腫瘍の切除的な治療での除去の際に得られ、第2の腫瘍組織サンプルは、対象の異なる腫瘍から後の第2の時点で得られ、それは、例えば原発腫瘍または二次的な腫瘍の転移であり得る。特定の態様では、第2の腫瘍組織サンプルは、第1の腫瘍組織サンプルと同じタイプの腫瘍細胞を含み、任意で、転移などとして第1の腫瘍に由来する。
本明細書に記載のタンパク質および核酸に特異的に結合する抗体およびその断片、ならびに他の結合因子、例えばペプチドおよびアプタマーは、当技術分野において公知であり、入手可能であり、または例えば、標的遺伝子またはmRNAの核酸の配列に基づいて容易に産生できる。特定の態様では、抗体または他の結合因子は検出可能に標識されるか、検出可能に標識された二次結合因子によって結合される。様々な検出可能な分子、例えば直接的に(例えば光の放出によって)または間接的に(例えば、蛍光標識された抗体の結合によって)検出できる当技術分野で公知の放射性同位元素、蛍光色素、色素、酵素、ナノ粒子、化学発光マーカー、ビオチン、量子ドット、他のモノマーなどを使用してもよい。
検出可能な標識の使用は、当技術分野において周知である。ポリペプチドと検出可能な標識をコンジュゲートするための方法は、検出可能な標識を用いて画像化する方法と同様に、当技術分野で周知である。検出可能な標識の例は、放射性ヌクレオチド、酵素、補酵素、蛍光剤、化学発光体、色素、酵素基質または補因子、酵素阻害剤、補欠分子族複合体、フリーラジカル、粒子、染料などを含むが、それらに限定されるわけではない。いくつかの放射性同位元素は、例えば、32P、33P、35S、3H、および125Iを含むペプチドを標識するための検出可能な分子として使用することができる。適切な酵素の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含み;適切な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み;適切な蛍光材料の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライドまたはフィコエリトリン、クマリン、Alexa488、Oregon green 488、ローダミングリーン、Alexa 532、Cy3、Bodipy 588/586、Alexa586、TAMRA、Rox、Alexa 594、Texas red、Bodipy 630/650、Cy5、Alexa647、IR Dye 680、IR Dye 680、IR Dye 700 DX、Cy5.5、Alexa 750、IR Dye 800CW、IR Dye 800、Atto 532、Atto 465を含み;発光材料の例はルミノールを含み;生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンを含み;適切な放射性物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンを含み;適切な放射性物質の例は、125I、131I、35S、または3Hを含む。いくつかの態様において、検出可能な標識は、蛍光タンパク質を含む。適切な蛍光タンパク質は、TagBFP、mTagBFP2、Azurite、EBFP2、mKalamal、Sirius、Sapphire、T- Sapphire、ECFP、Cerulean、SCFP3A、mTurquoise、mTurquoise2、monomeric Midoriishi-cyan、TagCFP、mTFP1、GFP、EGFP、Emeral、Superfolder GFP、monomeric Azami Green、TagGFP2、mUKG、mWasabi、Clover、mNeonGreen、EYFP、YFP、Citrine、Venus、SYFP2、TagYFP、monomeric Kusabira Orange、MKOK、mK02、mOrange、mOrange2、mRaspberry、mCherry、mStrawberry、mTangerine、tdTomato、TagRFP、TagRFPl、mApple、mRuby、mRuby2、TagRFP675、IFP1.4、iFRP、mKeima Red、LSS-mKate1、LSS-mKate2、mBeRFP、PA-GFP、PAmCherry1、PATagRFP、Kaede green、Kaede red、KikGR1 green、KikGR1 red、PS-CFP2、mEos2 green、mEos2 red、mEos3.2 green、mEos3.2 red、PSmOrangeを含む。本発明のいくつかの態様では、検出可能な標識はまた、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)対に適したクエンチャーを含む。適切なクエンチャーの例は、Dabcyl、BHQ1、BHQ2、BHQ3、CY5Q、CY7Q、Iowablack FQ、Iowablack RQ、IR Dye QC-1、QSY35、QSKY7、QXL570、QXL610、QXL680を含む。
II.生物学的サンプルの調製
本発明の方法は、顕微鏡画像分析などの分析用の生物学的サンプルを調製することを含む。
A.生物学的サンプル
生物学的サンプルは、対象、例えば哺乳動物から得られた組織または器官のサンプルを含む。特定の態様では、対象は、癌性腫瘍のような疾患または障害と診断されるか、疾患または障害を罹患または発症する危険性があると考えられる。生物学的サンプルは、健康なドナーから、例えば正常対照サンプルとしても得ることができる。特定の態様において、病変組織(例えば、腫瘍組織)サンプルおよび正常サンプルの両方が、同じ対象から得られる。特定の態様では、生物学的サンプルは、患者、例えば、ヒトなどの哺乳動物から得られる。他の態様において、生物学的サンプルは、疾患の動物モデルから得られる。疾患の種々の動物モデルが公知であり、当技術分野で利用可能である。癌の特定の動物モデルは、例えばマウスまたはラットにおける異種移植片、同系、およびPDxモデルを含むが、それらに限定されるわけではない。動物モデルはまた、腫瘍の特性、進行および治療が評価され得る、動物モデルに導入される、癌性またはその他のヒト細胞を含み得る。インビトロ3D組織配置、オルガノイド、および幹細胞またはiPS細胞由来の3D組成物もまた、関連するモデルであり、これらは、例えば、ヒトまたは他の動物細胞を含み得る。
本明細書に記載された方法およびシステムと共に使用するのに適した生体組織サンプルは、一般に、例えば、腫瘍組織および剖検サンプルのような、生きた対象または死んだ対象から収集された任意のタイプの組織サンプルを含む。組織サンプルは、本明細書に記載された方法およびシステムを用いて収集および処理し、処理直後の顕微鏡分析に供し得るか、将来の時間、例えば長期間の保存後に顕微鏡分析に保存しても供してもよい。いくつかの態様では、本明細書に記載される方法は、将来の分析のために、安定でアクセス可能で完全にインタクトな形態で組織サンプルを保存するために使用できる。例えば、ヒト腫瘍組織サンプルなどの組織サンプルは、本明細書に記載されるように処理され、透明化されて、例えば脂質などの複数の細胞構成要素が除去され、その後将来の分析のために貯蔵される。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法およびシステムを使用して、新鮮な生物学的サンプルを分析することができる。いくつかの態様では、本明細書に記載される方法およびシステムは、以前に保存された(例えば、以前に固定された)または貯蔵された生物学的サンプル(例えば、組織サンプル)を分析するために使用できる。例えば、いくつかの態様では、本明細書に記載のサンプル調製プロセスに供されていない以前に保存された組織サンプルを、本明細書に記載されるように処理および分析することができる。特定の方法では、組織サンプルは、本明細書に記載されるように処理される前に凍結される。
特定の態様では、生物学的サンプルは腫瘍組織サンプルである。腫瘍サンプルは、腫瘍細胞のみを含むことができ、または腫瘍細胞と非腫瘍細胞の両方を含むことができる。特定の態様では、生物学的サンプルは、非腫瘍細胞のみを含む。特定の態様では、腫瘍は固形腫瘍である。特定の態様では、生物学的サンプルは、副腎皮質癌、肛門癌、再生不良性貧血、胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨転移、脳腫瘍、脳癌、乳癌、小児癌、原発不明癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸/直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイングファミリー腫瘍、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、頭頸部癌、カポジ肉腫、腎細胞癌、喉頭および下咽頭癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺カルチノイド腫瘍、皮膚リンパ腫、悪性中皮腫、骨髄異形成症候群、鼻腔または副鼻腔癌、鼻咽腔癌、神経芽細胞腫、口腔または口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、成人軟部組織の肉腫、基底または扁平上皮細胞癌、黒色腫、小腸癌、胃癌、精巣癌、咽喉癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰部癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、および癌治療によって引き起こされる二次癌から得られるかこれらを含み、これらの腫瘍または癌のいずれかを有すると診断されたか、疑われる対象から得られる生物学的サンプルである。
本発明の方法は、癌腫、肉腫、リンパ腫または白血病、胚細胞腫瘍、芽細胞腫、または他の癌を含むがそれらに限定されるわけではない癌またはその転移を特徴付けるために使用することができる。癌腫は、上皮新生物、扁平上皮細胞新生物扁平上皮細胞癌、基底細胞新生物基底細胞癌、移行上皮乳頭腫および癌腫、腺腫および腺癌(腺)、腺腫、腺癌、形成性胃炎インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、血管腫、胆管癌、肝細胞癌、腺様嚢胞癌、虫垂カルチノイド腫瘍、プロラクチノーマ、腫瘍細胞腫、ヒュルトレ(hurthle)細胞腺腫、腎細胞癌、グレーウィッツ腫瘍、多発性内分泌腺腫、子宮内膜腺腫、肛門直腸および皮膚付属器新生物、粘液表皮腫新生物、嚢胞性、粘液性および漿液性新生物、嚢胞腺腫、腹膜偽性粘膜種、腺管、小葉および髄様新生物、腺房細胞新生物、複合上皮新生物、ウォーシン腫瘍、胸腺腫、特殊な性腺新生物、性索間質性腫瘍、莢膜細胞腫、顆粒粘膜細胞腫、傍神経節腫、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、グロムス腫瘍、パラガングリオーマ、褐色細胞腫、グロムス腫瘍、母斑と黒色腫、メラノサイト母斑、悪性黒色腫、黒色腫、結節型黒色腫、異形成母斑、悪性黒子型黒色腫、表在拡大型黒色腫、および末端黒子型悪性黒色腫を含むが、それらに限定されるわけではない。肉腫は、アスキン(Askin)腫瘍、ボトリオイド(botryodies)、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性血管内皮腫、悪性神経鞘腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、例えば、胞巣状軟部肉腫、血管肉腫、葉状嚢胞肉腫、皮膚線維肉腫、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫、類上皮肉腫、骨外性軟骨肉腫、骨外骨肉腫、線維肉腫、血管周囲細胞腫、血管肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、リンパ肉腫、悪性線維性組織球腫、神経線維肉腫、横紋筋肉腫、および滑膜肉腫を含むが、それらに限定されるわけではない。リンパ腫および白血病は、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞性前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(原発性マクログロブリン血症など)、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、モノクローナル免疫グロブリン沈着症(monoclonal immunoglobulin deposition diseases)、重鎖疾患、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫(MALTリンパ腫とも呼ばれる)、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(nmzl)、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞性B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性滲出リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、T細胞性前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球白血病、アグレッシブNK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型、腸管型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖症、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、非特異的な未分化大細胞リンパ腫、古典的ホジキンリンパ腫(結節硬化型、混合細胞型、リンパ球豊富型、リンパ球減少型、または非減少型)、および結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫を含むが、それらに限定されるわけではない。胚細胞腫瘍は、胚細胞腫、未分化胚細胞腫、セミノーマ、胚細胞腫以外の胚細胞腫瘍、胎児性癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、奇形腫、多胚腫、および性腺芽細胞腫を含むが、それらに限定されるわけではない。芽細胞腫は、腎芽細胞腫、髄芽細胞腫および網膜芽細胞腫を含むが、それらに限定されるわけではない。他の癌は、喉頭癌、咽頭癌、下咽頭癌、舌癌、唾液腺癌、胃癌、腺癌、甲状腺癌(甲状腺髄様癌および甲状腺乳頭癌)、腎癌、腎実質癌(kidney parenchyma carcinoma)、子宮頸癌、子宮体癌、子宮内膜癌、絨毛癌、精巣癌、泌尿器癌、黒色腫、脳腫瘍、例えば神経膠芽腫、星状細胞腫、髄膜腫、髄芽細胞腫および末梢神経外胚葉性腫瘍、胆嚢癌、気管支癌、多発性骨髄腫、基底細胞腫、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫(choroidea melanoma)、セミノーマ、横紋筋肉腫、頭蓋咽頭腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、ユーイング肉腫、および形質細胞腫を含むが、それらに限定されるわけではない。
さらなる態様では、分析中の癌は、非小細胞肺癌および小細胞肺癌(小細胞癌(燕麦細胞癌)、混合小細胞/大細胞癌、および小細胞癌の複合を含む)を含む肺癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、脳癌、腎臓癌、卵巣癌、胃癌、皮膚癌、骨癌、胃癌、乳癌、膵臓癌、神経膠腫、神経膠芽腫、肝細胞癌、乳頭状腎癌、頭頸部扁平上皮癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、または固形腫瘍であり得る。
生物学的サンプルは、当技術分野で公知であり利用可能な任意の手段によって対象から得ることができる。特定の態様では、生物学的サンプル、例えば腫瘍組織サンプルは、穿刺吸引、大針穿刺吸引生検、定位コア針生検、真空補助下コア生検、または外科的生検によって対象から得られる。特定の態様では、外科的生検は、疑わしい領域の一部のみを除去する切開生検である。他の態様では、外科的生検は、罹患組織(例えば、腫瘍)または異常な領域全体を除去する切除生検である。特定の態様において、切除腫瘍組織サンプルは、初期段階の疾患の場合に患者を「治癒する」目的で切除された腫瘍から得られるが、他の態様では、切除腫瘍組織サンプルは、後期段階の疾患で原発腫瘍の切除された部分から得られる。腫瘍組織サンプルには、原発腫瘍組織、転移性腫瘍組織および/または二次腫瘍組織が含まれ得る。腫瘍組織サンプルは、細胞培養物、例えば、腫瘍由来細胞株の培養物であってもよい。特定の態様では、生物学的サンプルは、細胞株、例えば、腫瘍細胞株のような培養細胞株の細胞ペレットである。特定の態様では、細胞株または細胞ペレットは凍結されているか、または予め凍結されている。そのような細胞株およびペレットは、例えば、様々な試薬による画像化のための陽性対照または陰性対照として有用である。腫瘍組織サンプルはまた、異種移植腫瘍、例えば、腫瘍細胞、例えばヒト腫瘍細胞株を投与された動物から得られた腫瘍であってもよい。本発明は、本明細書に記載のように処理された、例えば対照として機能する細胞ペレットを含むヒドロゲル包埋細胞ペレットを含む。特定の態様では、細胞ペレットをヒドロゲルサブユニットの存在下で固定し、次いで水素サブユニットを重合させてヒドロゲル包埋細胞ペレットを形成させた。特定の態様では、例えば、本明細書に記載されるように、ヒドロゲル包埋細胞ペレットもまた透明化された。特定の態様で、細胞ペレットは凍結される。特定の態様では、対象由来の第1の腫瘍組織サンプルは、腫瘍全体を除去することを意図した初期手術中に得られた原発腫瘍組織サンプルであり、第2の腫瘍組織サンプルは、同じ対象から得られ、転移性の腫瘍組織のサンプルまたは後の手術中に得られた二次的腫瘍組織サンプルである。
生物学的サンプル、例えば、腫瘍組織サンプルは、外科的にまたは腹腔鏡を使用して得ることができる。生物学的サンプルは、疾患または傷害、例えば癌組織または細胞の存在、またはその程度または特徴についてそれを検査するために、身体の任意の部分から得られた組織サンプルにすることができる。特定の態様において、生物学的サンプルは、腹部組織、骨、骨髄、胸部組織、子宮内膜組織、腎臓組織、肝臓組織、肺または胸部組織、リンパ節、神経組織、皮膚、精巣組織、頭頸部の組織、または甲状腺の組織を含む。ある態様では、組織は、脳、乳房、皮膚、骨、関節、骨格筋、平滑筋、赤色骨髄、胸腺、リンパ管、胸管、脾臓、リンパ節、鼻腔、咽頭、喉頭、気管支、肺、口腔、食道、肝臓、胃、小腸、大腸、直腸、肛門、脊髄、神経、松果体、下垂体、甲状腺、胸腺、副腎、膵臓、卵巣、精巣、心臓、血管、腎臓、子宮、膀胱、尿道、前立腺、陰茎、前立腺、精巣、陰嚢、腺管、乳腺、卵巣、子宮、膣または卵管から得られる。
特定の態様では、生物学的サンプルは、典型的には4〜10ミクロンの厚さの範囲である従来式の病理薄切片または免疫組織化学分析によって典型的に検査される切片よりも大きいサイズを有する。特定の態様では、生物学的サンプルは、厚さおよび/または長さが、20ミクロンより大きい、50ミクロンより大きい、100ミクロンより大きい、200ミクロンより大きい、500ミクロンより大きい、1mmより大きい、2mmより大きい、5mmより大きい、10mmより大きい、または20mmより大きい。特定の態様では、生物学的サンプルは、20ミクロン〜20mm、20ミクロン〜10mm、または50ミクロン〜1mmの長さおよび/または厚さを有する。特定の態様では、生物学的サンプルは、厚さおよび/または長さが、10ミクロンより大きい、20ミクロンより大きい、50ミクロンより大きい、100ミクロンより大きい、200ミクロンより大きい、500ミクロンより大きい、1mmより大きい、2mmより大きい、5mmより大きい、10mmより大きい、または2mmより大きい各辺を有するの立方体のサンプルを含む。いくつかの態様では、生物学的サンプルは、より薄く、例えば、厚さが約4〜10または4〜20ミクロンである。
B.生物学的サンプルを調製する方法
本発明の方法は、顕微鏡分析のための生物学的サンプル(例えば、腫瘍組織サンプル)を調製することを含む。顕微鏡分析は、非限定的に、光学顕微鏡法(例えば、明視野、傾斜照明、暗視野、位相差、微分干渉コントラスト、干渉反射、落射蛍光、共焦点、2光子、時間的フォーカシング、場の検出深度を延ばす方法を含むまたは含まない光シートなどの顕微鏡法)、レーザ顕微鏡法、電子顕微鏡法、および走査型プローブ顕微鏡法などを含み得る。これらの方法は、例えば疾患(例えば、癌性腫瘍)を診断またはモニタリングするため、健康なまたは疾患のある組織(例えば、癌性腫瘍)を研究するため、疾患の修正における毒性および有効性についての候補作用物質(例えば、抗腫瘍剤)をスクリーニングするため、薬や調査において多くの用途を見出す。また、主題の方法を実施する際に使用される試薬、装置、キットおよびシステムも提供される。
いくつかの態様では、生物学的サンプルは、2013年3月13日に出願された「METHODS AND COMPOSITIONS FOR PREPARING BIOLOGICAL SPECIMENS FOR MICROSCOPIC ANALYSIS」と題されたPCT出願公開WO2014025392(「’392公報」)において概して記載されているように調製され、その全開示は参照により本明細書に組み入れられる。特定の態様では、生物学的サンプルを調製することは、例えば、細胞、血管、および/または腫瘍組織サンプルの細胞外マトリックスなどの、生物学的サンプルの1つまたは複数の構造的特徴または構成要素を固定または保存すること、および例えば脂質などの、生物学的サンプルの1つまたは複数の構成要素を除去することも含む。これらの方法は、生物学的サンプルの顕微鏡分析を妨害する1つまたは複数の構成要素を除去しながら、組織またはその1つまたは複数の構成要素の3次元構造またはアーキテクチャを保存するために使用できる。
特定の態様では、生物学的サンプル(例えば、腫瘍組織サンプル)は、ヒドロゲルサブユニット、例えばヒドロゲルモノマーの存在下で固定される。いくつかの態様において、固定化は、細胞構成要素が互いに架橋するように、サンプル、例えばサンプルの細胞を固定剤に曝露することを含む。ヒドロゲル/ヒドロゲルネットワークは、水不溶性であるポリマー鎖の任意の適切なネットワークを含むことができ、水を分散媒とするコロイドゲルとして時々見出される。換言すれば、ヒドロゲルは、溶解することなく多量の水を吸収することができるポリマー材料のクラスに属することができる。ヒドロゲルは、99%を超える水を含有することができ、天然または合成ポリマー、またはそれらの組み合わせを含むことができる。ヒドロゲルはまた、それらの著しい水分含量のために、天然組織に非常に類似した程度の柔軟性を有する。適切なヒドロゲルの詳細な説明は、参照により本明細書に具体的に組み入れられる公開された米国特許出願公開第20100055733号、および以下の詳述に見出すことができる。適切なヒドロゲルの例としては、アクリルアミドが挙げられる。所望のヒドロゲル特徴を提供するヒドロゲルサブユニットおよび改変剤の濃度は、当技術分野の方法によって容易に判定することができる。ヒドロゲルサブユニットまたはヒドロゲル前駆体は、3次元(3D)ヒドロゲルネットワークを形成するために架橋または「重合」することができる親水性モノマー、プレポリマーまたはポリマーを包含し得る。科学的な理論に拘束されることなく、ヒドロゲルサブユニットの存在下での生物学的サンプルのこの固定は、ヒドロゲルサブユニットにサンプルの構成要素を架橋させ、それにより、組織アーキテクチャおよび細胞の形態を維持したまま、その場所で分子構成要素を固定すると考えられる。
いくつかの態様において、生物学的サンプルの調製は、Tomer, R.T et al., Nature Protocols, Vol.9, No.71682-1697(2014年6月)に示されるように、より高次の分解能のアクセスまたはプローブおよび標識へのより良好な透過性のための、組織またはゲル-組織複合体の膨潤または膨張、所定の作業距離を有する対物レンズによる良好なアクセスのため、またはデータセットのサイズを小さくするための、組織またはゲル組織複合体の収縮、成分のバルク除去とは別個のタンパク質などの成分の消化または分解(例えばその全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20140030192号に記載されているように)、ならびに/または生物学的情報への適切なアクセスを可能にするように設計された任意の他の方法を含み得る。
例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドまたは任意の他のアルデヒド、アセトン、エタノール、メタノール、アミノアルコールなどのヒドロゲルサブユニットの存在下で生物学的サンプルを固定するために、固定剤/ヒドロゲル組成物中に、任意の都合のよい固定用作用物質または「固定剤」を使用することができる。
いくつかの態様において、固定剤は、緩衝液、例えば生理食塩水、リン酸緩衝液(PB)、リン酸緩衝食塩水(PBS)、クエン酸緩衝液、リン酸カリウム緩衝液などで、通常約1〜10%、例えば1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%または10%、例えば4%パラホルムアルデヒド/0.1Mリン酸緩衝液;2%パラホルムアルデヒド/0.2%ピクリン酸/0.1Mリン酸緩衝液中4%パラホルムアルデヒド/0.2%過ヨウ素酸塩/1.2%リジン;0.1Mのリン酸緩衝液;4%パラホルムアルデヒド/リン酸緩衝液中の0.05%グルタルアルデヒドなどの濃度で溶解することが可能である。使用される固定剤のタイプおよび固定剤への曝露の持続時間は、固定剤による変性に対する生物学的サンプル中の関心対象の分子の感度に依存することがあり、例えば、Buchwalow and Bocker.「Immunohistochemistry :Basics and Methods」Springer-Verlag Berlin Heidelberg 2010に記載されているような、従来の組織化学的または免疫組織化学的技術を使用して、容易に判定し得る。
ヒドロゲル組成物、例えば固定剤/ヒドロゲル溶液は、ポリ(エチレングリコール)およびその誘導体(例えばPEG-ジアクリレート(PEG-DA)、PEG-RGD)、ポリ脂肪族ポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエチレンコポリマー、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、およびポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、コラーゲン、ヒアルロン酸、キトサン、デキストラン、アガロース、ゼラチン、アルギン酸塩、タンパク質ポリマー、メチルセルロースなどの任意の好都合なヒドロゲルサブユニット/モノマーを、限定されるものではないが、含むことができる。いくつかの態様において、ヒドロゲルサブユニットは、ヒドロゲルに特定の特性を付加するように改変されてもよい;例えば、分解を誘発するために(例えば、West and Hubbell, 1999, Macromolecules, 32:241を参照のこと)、または細胞接着を改変するために(例えば、Hem and Hubbell, 1998, J.Biomed.Mater.Res., 39:266を参照のこと)、ペプチド配列を組み込むことができる。親水性ナノ粒子(例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PLG)、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリスチレン、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS))などの作用物質を使用して、パターン形成性を維持しながら、ヒドロゲルの透過性を改善することができる(例えば、米国特許出願公開第13/065,030号; Lee W. et al. 2010 Proc.Natl.Acad.Sci.107, 20709-20714を参照のこと)。PEG、分解性PEO、ポリ(乳酸)(PLA)のブロックコポリマーのような材料、および他の同様の材料を使用して、ヒドロゲルに特定の特性を加えることができる(例えば、Huh and Bae, 1999, Polymer, 40:6147を参照のこと)。後の重合工程で相互作用する巨大分子間の共有結合を促進するために、架橋剤(例えば、ビスアクリルアミド、ジアジリンなど)および開始剤(例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、リボフラビン、L-アルギニンなど)を含めることができる。
いくつかの態様では、ヒドロゲルサブユニットおよび改変剤の濃度および分子量は、重合されるヒドロゲルネットワークの選択されたポリマーおよび所望の特徴、例えば細孔のサイズ、膨潤特性、導電率、弾性/剛性(ヤング率)、生分解性指数に依存する。例えば、ヒドロゲルが、巨大分子、例えば以下に詳細に記載するようなタンパク質、核酸、または小分子のサンプルへの通過を可能にするのに十分な大きさの細孔を含むことが望ましい場合がある。細孔のサイズは、一般に、ヒドロゲルサブユニットの濃度が増加するにつれて減少し、ヒドロゲルサブユニットの架橋剤に対する比の増加に伴って一般に増加し、このような巨大分子の通過を可能にする濃度のヒドロゲルサブユニットを含む固定剤/ヒドロゲル組成物を調製する。別の例として、ヒドロゲルは、包埋されたサンプルを取り扱う際の安定性を付与するために、特定の剛性、例えば、間にあるすべての値と部分範囲を含めて、約2〜70kN/m2、例えば約2kN/m2、約4kN/m2、約7kN/m2、約10kN/m2、約15kN/m2、約20kN/m2、約40kN/m2、約70kN/m2以下のヤング率を有することが望ましい場合がある。
ヒドロゲルネットワークの弾性は、ポリマーの分岐、ヒドロゲルサブユニットの濃度、および架橋の程度を含む様々な要因によって影響され、そのような所望の弾性を提供する濃度のヒドロゲルサブユニットを含む固定剤/ヒドロゲル組成物が調製される。したがって、例えば、固定剤/ヒドロゲル組成物は、間のすべての値および部分範囲を含めて、約1%w/v〜約20%w/v、例えば、約2%〜約15%、約3%〜約10%、約4%〜約8%の濃度のアクリルアミドモノマー;間のすべての値および部分範囲を含めて、約0.01%〜約0.075%、例えば0.01%、0.02%、0.025%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、または0.075%の範囲の濃度のビスアクリルアミド架橋剤を含むことができ;または例えば、固定剤/ヒドロゲル組成物は、間のすべての値および部分範囲を含めて、少なくとも約2.5K〜約50K、例えば、約50Kを超えず、2.5K以上、3.5K以上、5K以上、7.5K以上、10K以上、15K以上、20K以上の範囲の分子量を有するPEGプレポリマーを、間のすべての値および部分範囲を含めて、約1%w/w〜約50%w/wの範囲、例えば、約50%を超えず、1%以上、5%以上、7.5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、30%以上、40%以上の濃度で含み得る。所望のヒドロゲル特徴を提供するヒドロゲルサブユニットおよび改変剤の濃度は、適切な方法によって、または本明細書にその全体が組み込まれるPCT公開WO2014/025392に記載されるように、容易に決定され得る。特定の態様では、ヒドロゲルモノマー溶液は、架橋剤、例えば、ビスアクリルアミドなどを含む。ヒドロゲルモノマー溶液は、開始剤、例えば、VA-044開始剤などをさらに含んでもよい。ヒドロゲルモノマー溶液は、パラホルムアルデヒドをさらに含むことができる。1つの例示的なヒドロゲルモノマー固定溶液が実施例1に記載されている。
固定剤/ヒドロゲル溶液は、任意の好都合な方法、例えば、灌流、注入、点滴、吸収、塗布、浸漬/水浸などによってサンプルに送達することができる。サンプルは、典型的には、ヒドロゲルの存在下で15分以上、例えば、間のすべての値および部分範囲を含めて、30分以上、1時間以上、2時間以上、4時間以上、6時間以上、12時間以上、いくつかの例では、16時間以上、20時間以上、24時間以上、48時間以上、または72時間以上にわたり固定される。特定の態様では、サンプルをヒドロゲル中に24〜72時間包埋する。
いくつかの態様では、サンプルの固定後、ヒドロゲルサブユニットは、ヒドロゲルネットワークを形成するために重合される、すなわち共有結合でまたは物理的に架橋される。重合は、熱架橋、化学的架橋、物理的架橋、イオン架橋、光架橋、照射架橋(例えば、X線、電子ビーム)などを含むが、それらに限定されるわけではない任意の方法によって行うことができ、使用されるヒドロゲルのタイプに基づいて選択することができる。例えば、未重合または部分的に重合した樹脂を特定の架橋化学剤と混合すると、架橋を形成する化学反応が生じる。架橋は、電子ビーム曝露、ガンマ線またはUV光などの放射線源への曝露によって通常は熱可塑性である材料で誘発され得る。例えばC型の架橋ポリエチレンを重合させるために電子線処理が用いられる。他のタイプの架橋ポリエチレンは、押出中の過酸化物の添加(タイプA)、または押出中に架橋剤(例えばビニルシラン)および触媒を添加し、次いで押出後硬化を行うことによって作られる。多くのポリマーは、典型的には大気中の酸素に曝露されると、酸化的架橋を起こす。いくつかの例では、反応は所望より急速であり、したがって重合反応は、酸化的架橋の形成を遅らせるための酸化防止剤の使用を含み得る。他の場合、例えば、酸化による架橋のより迅速な形成が望ましい場合、過酸化水素のような酸化剤を使用してプロセスを高速化することができる。VA-044開始剤のようなアゾ開始剤が含まれていてもよい。重合のための時間の長さは、使用されるヒドロゲルサブユニットのタイプおよび選択された重合方法に依存するが、典型的には、間のすべての値および部分範囲を含めて、約15分間〜約48時間、例えば15分以上、1時間以上、2時間以上、3時間以上、4時間以上、6時間以上、12時間以上、16時間以上、24時間以上、またはいくつかの場合には、48時間である。特定の態様では、ヒドロゲルモノマー溶液が固化するまでサンプルを重合させる。
いくつかの態様では、サンプルは、例えば、Murray E. et al., Cell 163, 1500-1514(2015)に記載されたSWITCH法を介して固定および/または架橋される。SWITCH: system-wide control of interaction time and kinetics of chemicals(システム全体の相互作用時間および化学物質の動態の制御)は、外因性化学物質と内因性生体分子との間の化学反応を促進するSWITCH-ON緩衝液、および反応を抑制するSWITCH-OFF緩衝液という緩衝液のセットを介して、組織処理における化学反応の範囲を制御する。
特定の態様において、サンプルは、2016年7月25日にオンラインで公開されたKu, T. et al., Nature Biotechnologyに記載されるように処理(例えば、固定および架橋)され、画像化される。その中に記載された方法、プロテオームの拡大された分析(MAP: magnified analysis of the proteome)は、全体のアーキテクチャおよび3次元プロテオーム構成を保存しながら、組織サンプルを4倍に直線的に拡大する。
一旦重合されると、ヒドロゲル包埋された(すなわち、ヒドロゲルハイブリダイズした)生物学的サンプルが透明化され、すなわち1つまたは複数の組織構成要素が除去され得る。透明化は、サンプルが光に対して実質的に透過性にされること、すなわち透明であることを保証することを含むことができる。言い換えれば、サンプルを照らすために使用される視覚(すなわち、白色)光、紫外光または赤外光の約70%またはそれ以上は、サンプルを通過し、その中の選択された細胞構成要素のみ、例えば間のすべての値および部分範囲を含めて、光の75%以上、光の80%以上、光の85%以上、場合によっては、光の90%以上、光の95%以上、光の98%以上、例えば100%は、サンプルを通過する。サンプルの光学特性のこの変化は、組織内部の細胞および細胞下構造の視覚化を提供する。
1つまたは複数の細胞構成要素、例えば脂質をサンプルから強引に引き出す、サンプルから細胞構成要素、例えば脂質を抽出する、または、サンプル内の細胞構成要素、例えば脂質を分解、すなわち溶解させる任意の処理は、非限定的に、キシレン、エタノールまたはメタノールなどの有機溶媒への曝露、サポニン、Triton X-100およびTween-20などの界面活性剤への曝露、イオン界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)への曝露、電気泳動(例えば、本明細書に記載の電気泳動装置を使用する)、流体力学的圧力、超音波振動、溶質コントラスト、マイクロ波放射、血管循環などを含む、サンプルの透明化のために使用できる。いくつかの例では、蛍光タンパク質を消光させない溶媒を使用して透明化を行う。蛍光タンパク質を消光させることが公知である有機溶媒の例には、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ベンジルアルコール/ベンゾイルベンゾエート(BABB)、およびジベンジルエーテルが含まれる。したがって、様々なタンパク質の蛍光を保存するために、いくつかの態様では、透明化を、上記有機溶媒以外の溶媒を使用して、例えば、非有機溶媒を用いて行う。
いくつかの例では、透明化されるサンプルから荷電イオン性ミセルを積極的に輸送することによって透明化プロセスを促進するために、イオン界面活性剤、例えばSDSを用いて透明化が行われる。透明化は、当技術分野で公知のように、選択されたクリアランス方法、例えば生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ホウ酸ナトリウム緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液などに適合する任意の都合のよい緩衝液中で行うことができる。典型的には、サンプルの厚さ1センチメートル当たり約1〜10日、すなわち通常約1日、場合によっては2日、時には5日、典型的には1立方センチメートル当たり10日以内を要するであろう。特定の態様においては、透明化は2日から2または3ヶ月を要することがある。いくつかの態様では、透明化溶液は、緩衝液、例えばホウ酸緩衝液およびSDSを含む。200mMのホウ酸塩緩衝液、pH8.5および8%SDSを含む1つの特定の透明化溶液が実施例1に記載されている。いくつかの態様では、明瞭化のためにサンプルの目視検査によって、透明化の最適な時間を容易に判定することができる。
ある態様では、Lee, E. et al, Sci.Rep.6 18631(2016)に記載されている、器官へのマクロ分子の能動的透明化技術-圧力関連効率的安定移送(ACT-PRESTO: avtive clarity technique-pressure related efficient and stable transfer of macromoleculard into organs)の処理を介して、組織が透明化される。このプロセスは、能動的透明化技術(ACT: active clarity technique)を介して透明化する前に、パラホルムアルデヒド(PFA)固定化、続けてビスアクリルアミドなしのアクリルアミド融合の、2段階固定プロトコルを採用するCLARITYの改変版である。透明化は、ETCチャンバ内に高密度の規則的な電流を発生するために、プラチナプレートを備えた改変されたETCチャンバシステムを使用して行われる。
透明化後、サンプルは一般に実質的に脂質を含まない。いくつかの態様では、透明化の前にサンプル中に存在する脂質の元の量を、間のすべての値および部分範囲を含めて、約70%以上、例えば75%以上、例えば80%以上、例えば85%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上、例えば100%減少させ得る。
いくつかの例では、顕微鏡分析のためにサンプルのさらなる操作は必要ではない。例えば、サンプルは、顕微鏡によって直接視覚化することができる構造または生体分子を含み得る。構造または生体分子は、一般に、組織または細胞内の、細胞、脈管構造、細胞外マトリックス、リンパ管、タンパク質、脂質、ステロイド、核酸などを含むことができるが、それらに限定されるわけではない。
さらに、または代替的に、いくつかの態様では、本明細書においてさらに詳細に記載されるように、顕微鏡分析の前に、サンプルの細胞および細胞内構造を1つまたは複数の巨大分子と接触させることが望ましい場合がある。例えば、脈管構造、細胞外マトリックス、細胞(例えば、免疫細胞または幹細胞)、リンパ管、タンパク質、脂質、ステロイド、核酸など、および細胞内構造などの、特定の組織成分または構造、または細胞生体分子の視覚化を促進する巨大分子を提供することができる。いくつかの態様では、巨大分子は診断的である。いくつかの態様では、巨大分子は予後的である。いくつかの態様において、巨大分子は、治療に対する応答性を予測する。特定の態様において、巨大分子は、標的の組織構造または細胞構成要素に結合する検出可能なプローブである。いくつかの態様では、巨大分子は、疾患の診断および/または予後、疾患の治療などにおいて助けとなる作用物質のスクリーニングなどの、スクリーニングにおける候補作用物質である。
例えば、サンプルは、DNAの副溝に結合するDAPIやHoechstのような核酸染色液と接触させて、それにより細胞の核を標識化することができる。特定の細胞構造に結合し、蛍光レポーターで誘導体化された薬物または毒素、例えば哺乳類細胞中のアクチン線維を染色するために使用される蛍光標識のファロイジンを使用することができる。フルオレセイン、Alexa Fluors、またはDyLight 488のようなフルオロフォアまたは蛍光色素と呼ばれる多くの蛍光レポート分子があるが、それらはサンプル内の関心対象の標的生体分子に結合する分子に、化学的に結合することができる。特定の態様では、サンプルは、様々なケラチンに結合する抗体などの活性物質と接触する。
別の例として、サンプルは、1つまたは複数のポリペプチドと接触させることができる。それは例えば、色または免疫蛍光(すなわち、プローブ)による直接標識または間接標識のいずれかのために、特定の細胞または細胞生体分子に特異的であり、それに結合する抗体、標識化したペプチドなどである。免疫蛍光は、細胞内の特定のタンパク質または他の分子を標識するために、その抗原または結合パートナーに対する抗体の非常に特異的な結合を使用する、任意の適切な技術を含み得る。サンプルは、関心対象の生体分子に特異的な一次抗体で処理される。フルオロフォアは、一次抗体またはペプチドに直接コンジュゲートすることができる。
特定の態様では、抗体は、腫瘍または癌に関連するタンパク質に結合する。特定の態様では、サンプル、例えば腫瘍サンプルを染色するために使用される抗体は、表3に列挙される抗体のいずれかである。
いくつかの態様では、第1の抗体に特異的に結合する検出部分またはフルオロフォアにコンジュゲートする第2の抗体を、使用することができる。例えば、それに従うプロトコルの例のために、Buchwalow and Bocker.「Immunohistochemistry :Basics and Methods」、Springer-Verlag, Berlin Heidelberg 2010、およびHayat, M.A.の「Microscopy, Immunohistochemistry, and Antigen Retrieval Methods for Light and Electron Microscopy」Kluwar Academic Publishers、New York、2002を参照されたい。標的細胞生体分子に特異的であり、フルオロフォアまたは他の検出部分にコンジュゲートされているペプチドも、使用することができる。
特定の態様では、検出可能なプローブなどのプローブは、蛍光分子またはタンパク質である。緑色蛍光タンパク質(緑色FP、またはGFP)は、510nmまたは約510nmにおいて発光スペクトルのピークを有するポリペプチドをいう。様々な波長で放射する様々なFPが当技術分野で公知である。関心対象のFPは、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、オレンジ蛍光タンパク質(OFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、遠赤色蛍光タンパク質、または近赤外蛍光タンパク質を含むが、それらに限定されるわけではない。本明細書で使用する場合、Aequorea GFPは、オワンクラゲ(Aequorea)属由来のGFPおよびその突然変異体または変異体をいう。そのような変異体および他の種、例えば
アンソゾア(Anthozoa)礁サンゴ、アネモニア(Anemonia)イソギンチャク、レニラ(Renilla)ウミシイタケ、ガラクセア(Galaxea)サンゴ、アクロポラ(Acropora)茶色サンゴ、トラキフィリア(Trachyphyllia)およびぺクティミダエ(Pectimidae)イシサンゴ
、および他の種由来のGFPが周知であり、当業者に入手可能で公知である。例示的なGFP変異体には、BFP、CFP、YFPおよびOFPが含まれるが、それらに限定されるわけではない。蛍光タンパク質およびその変異体の例は、GFPタンパク質を含み、例えばEmerald(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)、EGFP(Clontech、パロアルト、カリフォルニア州)、Azami-Green(MBL International、ウォバーン、マサチューセッツ州)、Kaede(MBL International、ウォバーン、マサチューセッツ州)、ZsGreenl(Clontech、パロアルト、カリフォルニア州)、およびCopGFP(Evrogen/Axxora、LLC、サンディエゴ、カリフォルニア州);CFPタンパク質、例えばCerulean(Rizzo, Nat Biotechnol.22(4):445-9(2004))、mCFP(Wang et al., PNAS USA.101(48):16745-9(2004))、AmCyan1(Clontech、パロアルト、カリフォルニア州)、MiCy(MBL International、ウォバーン、マサチューセッツ州)、およびCyPet(Nguyen and Daugherty, Nat Biotechnol.23(3):355-60(2005)); BFPタンパク質、例えばEBFP(Clontech、Palo Alto、カリフォルニア州); YFPタンパク質、例えばEYFP(Clontech、パロアルト、カリフォルニア州)、YPet(Nguyen and Daugherty, Nat Biotechnol.23(3):355-60(2005))、Venus(Nagai et al., Nat.Biotechnol.20(1):87-90(2002))、Zs Yellow(Clontech、パロアルト、カリフォルニア州)、およびmCitrine(Wang et al., PNAS USA.101(48):16745-9(2004)); OFPタンパク質、例えばcOFP(Strategene、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)、mKO(MBL International、ウォバーン、マサチューセッツ州)、およびmOrange; およびその他(Shaner N C, Steinbach P A, and Tsien R Y., Nat Methods.2(12):905-9(2005))がある。
別のクラスの蛍光タンパク質は、コラリモルフ・ディスコソマ(corallimorph Discosoma)から単離された赤色蛍光タンパク質Discosoma RFP(DsRed)(Matz et al., Nature Biotechnology 17:969-973(1999))、および他の任意の種、例えばヘテラクティス(Heteractis)礁サンゴおよびアクチニア(Actinia)またはエンタクマエア(Entacmaea)イソギンチャク由来の赤色または遠赤色蛍光タンパク質、ならびにその変異体である。RFPは、例えば単量体の赤色蛍光タンパク質1(mRFP1)、mCherry、tdTomato、mStrawberry、mTangerine(Wang et al., PNAS U S A.101(48):16745-9(2004))、DsRed2(Clontech、パロアルト、カリフォルニア州)、およびDsRed-T1(Bevis and Glick, Nat.Biotechnol., 20:83-87(2002))、Anthomedusa J-Red(Evrogen)およびAnemonia AsRed2(Clontech、パロアルト、カリフォルニア州)などのディスコソマ変異体を含む。遠赤色蛍光タンパク質は、例えば、Actinia AQ143(Shkrob et al., Biochem J.392(Pt 3):649-54(2005))、Entacmaea eqFP611(Wiedenmann et al. Proc Natl Acad Sci USA.99(18):1 1646-51(2002))、ディスコソマ変異体、例えばmPlum および mRasberry(Wang et al., PNAS U S A.101(48):16745-9(2004))、および Heteractis HcRedlおよびt-HcRed(Clontech、パロアルト、カリフォルニア州)を含む。
巨大分子として提供され得る作用物質のクラスの別の例は、核酸である。例えば、サンプルは、関心対象の遺伝子の転写物に相補的であり、かつ特異的にハイブリダイズして、例えばサンプルの細胞における遺伝子発現を研究するためのアンチセンスRNAと接触させることができる。別の例として、例えば遺伝的突然変異、例えばヘテロ接合性の喪失、遺伝子重複、遺伝子増幅、染色体逆位などを研究するために、関心対象のゲノム材料に相補的であり、かつ特異的にハイブリダイズするDNAにサンプルを接触させることができる。ハイブリダイズするRNAまたはDNAは、検出部分、すなわち直接的または間接的に顕微鏡で可視化され得る作用物質にコンジュゲートする。インサイチューのハイブリダイゼーション技術の例は、例えば、Harris and Wilkinson.「In situ hybridization:Application to developmental biology and medicine」、Cambridge University Press 1990; および「Fluorescence In Situ Hybridization(FISH)Application Guide」、Liehr, T, ed., Springer- Verlag, Berlin Heidelberg 1990に見出すことができる。ヒドロゲル包埋サンプルにおけるインサイチューの突然変異検出を実施するために使用できるさらなる方法は、例えば、Grundberg et al.(Oncotarget, Dec 2013, Vol.4, No.12, pp.2407-2418)、およびMignardi et al., Nucleic Acid Research, 2015, Vol.43, No.22, el51, pp.1-12に記載されているものなどを含む。特定の態様では、個々のmRNA分子のインサイチューの突然変異検出は、標的転写物をcDNA分子に変換することによって開始し、次いで、パドロックプローブおよび標的プライムローリングサークル増幅(RCA)を用いて検出する。パドロックプローブは、標的配列とのハイブリダイゼーションにより末端を集め、その後完全に一致した場合にDNAリガーゼによって一緒に結合させたときに環状になる、短い線状オリゴヌクレオチドである。これらのパドロックプローブは、増幅後に蛍光標識オリゴヌクレオチドの検出部位として作用するタグ配列を含む。パドロックギャッププローブは、Mignardi et alに記載されているように、プローブの5’末端と3’末端との間の規定された数のヌクレオチドのギャップで、プローブアームが標的にハイブリダイズする、パドロックプローブの代替版である。この方法では、ギャッププローブのカクテルを利用して、標的領域上のハイブリダイゼーションおよびパドロックギャッププローブへのライゲーションについて競合させることができる。RCAと組み合わせることで、検出事象を可視化し、インサイチューで配列決定することができる。一態様では、プローブは、限定するものではないが、本明細書に記載されるもののいずれかを含む疾患または状態、例えば癌または腫瘍に関連する標的RNA(または対応するcDNA)における標的突然変異に特異的に結合する。これらの技術は、FFPE薄切片において実証されているが、CLARITY法により調製された腫瘍組織で実証されたことはない。
別の例として、サンプルを小分子と接触させることができる。例えば、サンプルがβ-ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼを含む場合、これらのタンパク質を発現する組織の細胞および領域を視覚化することが望ましい場合がある。この目的のために、サンプルをβ-ガラクトシダーゼ(例えば、X-gal、4-トリフルオロメチルウンベリフェリル-3-D-ガラクトピラノシド(TFMU-Gal)、レゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシド(Res-gal)、4-メチルウンベリフェリルβ-D-ガラクトピラノシド(MUG)、ジ-3-D-ガラクトピラノシド(FDG)、カルボキシウンベリフェリルβ-D-ガラクトピラノシド(CUG))、またはアルカリホスファターゼ(例えばニトロブルーテトラゾリウム(NBT)/5-ブロモ-4-クロロ-3’-インドリルリン酸(BCIP))、およびβ-ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼ活性の視覚化を可能にする他の試薬のための基質と接触させ得る。別の例として、例えばCNSサンプル中のニューロンの樹状突起およびスピンを視覚化することが望ましいことがある。そうするために、サンプルはGolgi-Cox含浸に使用される化学物質、例えば3%重クロム酸カリウム、続いて2%硝酸銀溶液に曝露してもよい。
場合によっては、提供される巨大分子によって標的とされる生体分子は、細胞にとって内因性である。他の例では、巨大分子をサンプルに供給して、サンプルの細胞に異所的に提供された生体分子を標的/可視化することができる。それは、例えば特定の細胞集団または細胞下構造を標識するためにインビボまたはエクスビボでサンプルに導入された作用物質が挙げられる。いくつかの例では、生体分子は、導入された外因性遺伝子の発現を介して遺伝子操作された細胞株において産生される。例えば、定位手術を使用して、インビボまたはエクスビボで、血管系、ニューロン、細胞、または細胞のサブセットなどの構造を標識するまたは「トレースする」組織に、タンパク質、ウイルス、化学物質などの生体分子を提供することができる。この技術では、標識巨大分子を含む針を、正確な位置で構造または組織へと下げ、標識分子を構造または組織に放出させる。分子は、注射部位の近傍の構造、組織または細胞を満たし、送達される巨大分子のタイプに応じて、それらの標的を標識するためにシナプスにわたって輸送され得る。構造または細胞を標識するために使用できる作用物質の例は、当技術分野で周知であり、例えば、蛍光タンパク質をコードする核酸;ウイルストレーサー、例えば、単純ヘルペスウイルス1型(HSV)およびラブドウイルス(Rhabdoviruses);コムギ胚芽凝集素(WGA);インゲンマメ白血球凝集素(PHA-L);西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートレクチン;ビオチン化デキストランアミン(BDA);コレラトキシンB;NEUROBIOTIN Tracer(登録商標)(Vector Labs)を含む。このようにして標識されたサンプルは、これらの異所的に提供された標識の視覚化を促進する巨大分子、例えばポリペプチドまたは化学物質と、接触させることができる。
場合によっては、細胞の生体分子または細胞下構造を可視化するために使用される巨大分子は、サンプル中に受動的に輸送される。換言すれば、巨大分子はサンプル中に拡散する。他の例では、巨大分子は、エレクトロポレーション、流体力学的圧力、超音波振動、溶質コントラスト、マイクロ波照射、血管循環などによって、サンプル中に積極的に輸送される。いくつかの態様では、サンプルが透明化された後、サンプルは巨大分子と接触される。他の態様では、ヒドロゲル包埋サンプルは、サンプルを透明化する前に巨大分子と接触させることができる。そのような態様では、巨大分子との接触は、サンプルを透過性にすること、すなわち、サンプルの巨大分子への透過性を改善するためにサンプルの特性を変化させることによって促進され得る。サンプルを「透過性にする」とは、サンプルに適用された巨大分子の約50%以上、例えば、巨大分子の60%以上、巨大分子の70%以上、または巨大分子の80%以上、場合によっては巨大分子の85%以上、巨大分子の90%以上、または95%以上、例えば巨大分子の98%以上、例えば巨大分子の100%がサンプルの最も深い領域に透過することを意味する。サンプルおよびその中の細胞への透過は、サンプルから細胞構成要素、例えば脂肪を除去するための上記のプロトコルの、または細胞を透過性にするための当技術分野で公知であるようなもののいずれかによって達成され得る。特定の態様では、サンプルは腫瘍組織サンプルである。
いくつかの態様では、サンプルを、確率的電気輸送を介して、つまり、サンプルを構成する低電気移動度分子を移動させずに、回転性の電場を使用して、高電気移動度分子を多孔質サンプル全体に選択的に分散させる動電学の方法を介して、1つまたは複数の巨大分子、例えば抗体と接触させる(Kim, S.-Y. et al., PNAS、2015年11月2日にオンラインで公開された)。いくつかの態様では、透明化された組織を介して抗体などの分子を動かすために動的電場を利用し、サンプルにわたり空間的および時間的に標識の均一な分布を確実にするeTANGO法を介して、透明化されたサンプルを1つまたは複数の巨大分子、例えば抗体と接触させる。いくつかの態様では、透明化されたサンプルは、確率的電気輸送および動的親和性シフトを含むプロセスによって巨大分子と接触させられる。確率的電気輸送は、荷電した分子(例えば、抗体およびRNAプローブ)を、周囲の荷電マトリックスを破壊することなく駆動し、プローブ-標的結合親和性を調節して、サンプル全体の反応時間を同期させ得る。これらの2つの概念を統合することにより、サンプル中の内因性分子標的が同じ反応条件(時間および濃度)を経験することが可能になり得る。
特定の態様において、サンプルは、米国特許出願公開第20150285765号に記載されている方法を介して、抗体などの生体分子と接触させる。これらの方法は、電場を利用してサンプルマトリックス内の生体分子を移動させる。
いくつかの態様において、透明化されたサンプルは、細胞構成要素、例えば構造または核酸配列を同定または視覚化するために使用される1つまたは複数の巨大分子で染色する前に、ブロッキング溶液と接触される。特定の態様では、ブロッキング溶液は、血清、例えばヤギ血清および/またはウシ血清アルブミン(BSA)および/またはTriton-100を含む。例示的なブロッキング溶液は実施例1に記載されている。
本方法によって調製されたサンプルを顕微鏡で視覚化するために、いくつかの態様では、サンプルは、封入剤に包埋される。封入剤は、典型的には、細胞生体分子を視覚化するために使用される試薬、サンプルの屈折率、および実施される顕微鏡分析に適しているかどうかに基づいて選択される。例えば、位相コントラスト作業の場合、封入剤の屈折率はサンプルの屈折率とは異なるべきであるが、明視野作業の場合、屈折率は似ているべきである。別の例として、落射蛍光作業の場合、顕微鏡検査または保存中のフェージング、光退色または消光を減少させる封入剤を選択すべきである。特定の態様では、透明化された組織サンプルの光学的透明度を向上または高めるために、封入剤または封入溶液を選択することができる。使用可能な適切な封入剤の非限定的な例には、グリセロール、CC/Mount(商標)、Fluoromount(商標)、Fluoroshield(商標)、ImmunHistoMount(商標)、Vectashield(商標)、Permount(商標)、Acrytol(商標)、CureMount(商標)、FocusClear(商標)、RapidClear(商標)、またはその等価物などが含まれる。
いくつかの例では、ヒドロゲル包埋サンプルは永続的に取り付けられる。言い換えれば、一旦封入剤に取り付けられると、ヒドロゲル包埋サンプルは、さらなる操作のために取り出すことができない。他の例では、サンプルは一時的または可逆的に取り付けられる。換言すれば、ヒドロゲル包埋サンプルは、別の/追加の生体分子または細胞下構造を視覚化するために、顕微鏡観察の後に封入剤から取り出して再染色し得る。そのような場合、例えば特定の生体分子を可視化するために、サンプルに予め加えられた巨大分子は、例えば、キシレン、エタノールまたはメタノールなどの有機溶媒への曝露、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、サポニン、Triton X-100およびTween-20などの界面活性剤への曝露、電気泳動、流体力学的圧力、超音波振動、溶質コントラスト、マイクロ波放射、血管循環などにより、顕微鏡分析後に取り出すことができる。次いで、ヒドロゲル包埋サンプルを、他の生体分子または細胞下構造に特異的な異なる巨大分子と接触させる。このように、反復的な染色を、同じサンプルに対して行うことができる。
特定の態様では、サンプルは受動的透明化によって透明化されるが、他の態様では、サンプルは電気泳動組織透明化(ETC: electrophoretic tissue clearing)、または受動的透明化とETCの組み合わせによって透明化する。特定の態様では、両方の方法は、組織に拡散し、脂肪脂質および他の結合していない生体分子を収集し、それらをサンプルから運び出して、可視的に透明であるヒドロゲル-組織のハイブリッドを残すために、SDSミセルに依存する。ミセルの受動的拡散は遅いプロセスであり、ETCは、SDSミセルのイオン電荷を用いることによってそれを加速する。電場に位置した場合、負に帯電したミセルは一方の電極(反発している)から他方の電極(引きつけられている)まで能動的に移動する。したがって、透明化溶液中のヒドロゲル包埋組織サンプルに電場を印加することにより、組織内および組織外へのミセルの能動輸送が刺激される。
いくつかの態様では、本発明の主題の方法は、インタクトな全器官または全組織サンプルのような厚い組織を、画像化のために実質的に光学的に透明にすることを目的としており、組織/全器官を架橋し、組織中の生体巨大分子を安定化するためにヒドロゲルサブユニット/モノマーにハイブリダイズさせる。いくつかの態様では、本発明の主題の方法は、その全体の開示が参照により本明細書に組み入れられる、2014年7月30日に出願された「METHODS FOR PHENOTYPING OF INTACT WHOLE TISSUES」と題されたPCT出願国際公開WO2015041755(「’755公報」)に全体的に開示されているように、インタクトな全器官または全組織サンプルなどの厚い組織を、受動的な方法で(例えば受動的なCLARITYまたはPACTを使用して)画像化するために実質的に光学的に透明にすることを対象とする。いくつかの態様では、本発明の主題の方法は、「Stochastic electrotransport selectively enhances the transport of highly electromobile molecules」,Kim et al., PNAS 2015 112(46)E6274-E6283に全体的に開示されているように、厚い組織を画像化のために実質的に光学的に透明にすることを対象とする。Kim et al.のアプローチは、サンプルの相対的に低い電気移動度の分子を移動することなく、多孔性の生物学的サンプル全体に高度に電気移動性分子を選択的に分散させるために、回転電場の使用を介する、生物学的サンプルへの透明化剤の確率的電気輸送を含む。確率的電気輸送は、生物学的サンプルを含むサンプルチャンバを、サンプルチャンバの隣に位置する2つの平行な電極に対して連続的に回転させて、サンプルに対して外部回転電場を生成することによって、達成することができる。ジュール加熱が生物学的サンプルに熱的損傷を引き起こさないように温度制御された循環緩衝液溶液に、サンプルチャンバを浸漬することができる。確率的電気輸送は、透明化剤のような高度に電気移動性の分子を選択的に生物学的サンプルに輸送するために、電気移動度の差を効果的に増幅することができる。いくつかの態様では、確率的電気輸送で使用される透明化剤は、SDSを含むホウ酸リチウム緩衝液を含むことができる。
いくつかの態様では、そのような主題の方法は、サポニン、Triton X-100およびTween-20などの界面活性剤で組織-ヒドロゲルマトリックスから組織の脂質を抽出することをさらに含むことができる。いくつかの態様では、そのような主題の方法は、画像化および/または長期保存のために、透明化した組織/器官を屈折率適合溶液(RIMS)に包埋することをさらに含むことができる。いくつかの態様では、そのような主題の方法は、電気泳動、および/または加熱による最終組織品質および組織褐変の変動など、組織に意図しない影響を及ぼす可能性がある他の方法を必要とする能動的透明化方法の必要性を取り除く。
いくつかの態様では、厚い組織を実質的に光学的に透明化する主題の方法は、以下のとおりであり得る: 0.25%光開始剤2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(VA-044、Wako Chemicals USA, Inc.)で補った4%パラホルムアルデヒド(PFA)固定組織切片を、ヒドロゲルモノマー溶液A4P0(PBS中4%アクリルアミド)中で、4℃で一晩インキュベートする。A4P0を注入したサンプルを窒素で1〜5分間脱気し、次いで組織-ヒドロゲルハイブリダイゼーションを開始させるために37℃で2〜3時間インキュベートする。短時間のPBS洗浄によって余分なヒドロゲルを除去した後、組織ヒドロゲルマトリックスを0.1MのPBS(pH7.5)中8%SDSを含む、組織のサイズに応じた50mLのコニカルチューブに移し、振とうしながら37℃で2〜5日間インキュベートした。免疫染色のために、1〜3mmの厚さのPACT処理したサンプルをPBS中で4〜5回緩衝液を交換して1日にわたって洗浄し、次いで小分子色素または一次抗体を含む緩衝液に移し、続いて蛍光コンジュゲート二次抗体(例えば、2%正常ロバ血清、0.1%TritonX-100および0.01%アジ化ナトリウムを含有するPBS中で1: 200〜400希釈したものなど)を含む緩衝液に3〜7日間、または小分子染料を含む緩衝液に1〜3日間移した。抗体または小分子色素溶液は毎日交換する必要がある。結合していない抗体をPBS洗浄によって除去し、次いでサンプルを2〜5日間2次抗体(Fab断片二次抗体が好ましい、1: 200〜400)と共にインキュベートし、次いでPBSまたはリン酸緩衝液(PB)中で1日洗浄し、その後画像化用媒体(RIMS)中でインキュベーションした。すべての染色および取り付け工程は、室温で穏やかに振とうしながら行う。
いくつかの態様では、RIMSは、組織画像化に適切な屈折率(RI)を有し、それは、間のすべての値および部分範囲を含めて、約1.2以上、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8である。いくつかの態様では、RIMSは、約1.38〜約1.49のRIを有し、生体適合性であり、生物学的使用に安全である。いくつかの態様では、RIMSは、’755公報に全体的に開示されているように特徴付けられる。
いくつかの態様において、本発明の主題の方法は、全器官/全動物の画像化のための、インサイチュー灌流補助剤放出(PARS: perfusion-assisted agent release in situ)アプローチを対象とする。いくつかの態様では、PARSアプローチは、’755公報に全体的に開示されている。そのような態様では、器官/動物のインタクトな脈管構造を利用して、ヒドロゲルサブユニット/モノマーおよび透明化溶液(例えば、SDS溶液)を注入し、その後、関心対象の組織全体に拡散する。いくつかの態様では、動物全体を実質的に光学的に透明にする主題の方法は、4%のPFA(pH 7.4のPBSにて)による標準的な心臓の灌流に続いて、固定した動物を、灌流チャンバ(図1)上に移し、これは、その後のすべての続くPACTおよび免疫標識試薬を、蠕動ポンプを介して齧歯類血管系を通して連続的に(約1ml/分)再循環させるものであり得る。灌流チューブは、左心室を通って大動脈に挿入される供給針にチャンバを接続し、適所でゆるく縫合される。後固定を4%PFAで1時間行い、PBSで1時間灌流洗浄をする。A4P0モノマーを脈管構造を通して一晩循環させ、続いて2時間のPBS灌流洗浄を行う。重合前に、灌流ラインを切断することなく、灌流チャンバをジップロックの袋(図1)に入れ、動物を入れたチャンバを含むバッグを窒素ガス下で2分間脱気する。重合は、37℃で2〜3時間にわたる、PBS中0.25%VA-044開始剤200mLの灌流再循環を介して、開始される。動物の全身は、37〜42℃のPBS、pH7.5中の8%のSDSを用いた<2週間の灌流、その後2〜3日間の広範なPBS灌流洗浄によって透明化することができる。次いで、抗体および小分子色素(PACTに類似)を3日間の灌流および1日の洗浄によって送達する。脳または脊髄の透明化(図2A〜図2B)などのいくつかの態様では、経心的に固定された動物(例えば、齧歯類)が断頭され、硬膜下カニューレが対象とする領域の上方に挿入され、頭蓋骨に接着される。すべてのPACT試薬は、約1ml/分でPARS試薬と同じ順序および時間枠で送達される。
いくつかの態様では、本発明の主題の方法は、インタクトな全器官または全組織サンプルなどの厚い組織を、画像化のために実質的に光学的に透明にすることを対象とする。そのような態様では、組織/全器官は、尿素および/または尿素系誘導体を含む透明化剤による処理を介して、実質的に光学的に透明にされる。いくつかの態様では、透明化剤は尿素を含み、その全体の開示が参照により本明細書に組み入れられる、「SCALE:A CHEMICAL APPROACH FOR FLUORESCENCE IMAGING AND RECONSTRUCTION OF TRANSPARENT MOUSE BRAIN」, Hama et al., Nature Neuroscience 14, 1481-1488(2011)に全体的に開示されているように配合し得る。いくつかの態様では、透明化剤は、尿素、トリトンX-100、およびグリセロールの水溶液を含み、その全体の開示が参照により本明細書に組み入れられる、「CLARIFYING REAGENT FOR BIOLOGICAL MATERIALS AND USE THEREOF」と題する、2012年5月18日に出願された米国特許出願公開第2014/0178927号に全体的に開示されているように配合し得る。いくつかの態様では、透明化剤は、尿素およびアミノアルコールの水溶液を含む。例えば、いくつかの態様では、透明化剤は、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、Triton X-100および尿素の水溶液を含み、その全体の開示が参照により本明細書に組み入れられる、「WHOLE-BRAIN IMAGING WITH SINGLE-CELL RESOLUTION USING CHEMICAL COCKTAILS AND COMPUTATIONAL ANALYSIS」、Susaki et al., Cell, Volume 157, Issue 3, 24 April 2014, Pages 726-739に全体的に開示されているように配合し得る。いくつかの態様では、透明化剤は、Olympus Corporationによって販売されているScaleView-A2である。
主題の方法を用いて調製されたサンプル(例えば、腫瘍組織サンプル)は、任意の数の異なるタイプの顕微鏡、例えば、光学顕微鏡(例えば、明視野、傾斜照明、暗視野、位相差、微分干渉コントラスト、干渉反射、落射蛍光、共焦点、2光子、時間的フォーカシング、場の検出深度を延ばす方法を含むまたは含まない光シートの顕微鏡法)、レーザ顕微鏡法、電子顕微鏡法、走査型プローブ顕微鏡法、およびCLARITY最適化光学顕微鏡法(COLM、以下に記載)によって分析することができる。
また、上記の方法の1つまたは複数を実施するための試薬およびキットも提供される。試薬およびキットは、以下の1つまたは複数を含み得る: 固定剤;ヒドロゲルサブユニット;透明化試薬;検出用巨大分子、例えば、標識されたおよび/または標識されていない抗体またはアプタマー、核酸プローブ(オリゴヌクレオチド、ベクターなど)、化学物質など;緩衝液、例えば、サンプルの固定、洗浄、透明化および/または染色のための緩衝液;封入剤;包埋用の型;解剖用具;などである。主題の試薬およびそのキットは、大きく異なる可能性がある。特定の態様では、本発明のキットは、関連疾患を有する組織サンプルを分析するための本明細書に記載のプローブのいずれかを含み得る。
また、例えば、細胞レベルおよび細胞下レベルで組織を研究するべく使用するために主題の方法によって調製されたサンプルも提供される。例えば、固定および重合されたサンプル、または固定され、重合され、透明化されたサンプルは、関心対象の遺伝子の発現を研究するのに使用するために、関心対象の細胞および/または細胞下構造を標的とする候補作用物質を同定するスクリーニングのためなどに、提供されている。このように調製されたサンプルはまた、本明細書に記載のキットまたはシステムの1つにおいて陽性対照として提供され得る。
上記の成分に加えて、主題のキットは、主題の方法を実施するための説明書をさらに含み得る。これらの説明書は、様々な形態で主題のキットに存在でき、その1つまたは複数がキットに存在し得る。これらの説明書が存在し得る1つの形態は、印刷された情報として、適切な媒体または基材に、例えば、情報が印刷された1枚または複数枚の紙、キットの包装、添付文書などに存在する。さらに別の手段は、コンピュータ可読媒体、例えば情報が記録されたディスケット、CD、デジタル記憶媒体などである。存在する可能性があるさらに別の手段は、遠隔サイトの情報にアクセスするためにインターネットを介して使用されるウェブサイトのアドレスである。任意の好都合な手段がキットに存在し得る。
本発明の局面は、上述の主題の方法の局面を実行するための1つまたは複数の装置をさらに含むことができる。いくつかの態様では、本発明は、’392公報に全体的に開示されているような1つまたは複数の装置を含む。例示的な装置には、サンプルの固定、透明化および/または染色のための電気泳動装置、超音波、マイクロ波、針、管、灌流ポンプなどが含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。
いくつかの態様では、1つまたは複数の装置は、サンプルから細胞構成要素、例えばヒドロゲルネットワークに架橋されていない細胞構成要素を取り出す際の使用に適した電気泳動装置を含む。電気泳動装置は、サンプル、例えば生物学的サンプル、例えば腫瘍生検サンプルに電場を印加するように構成された任意の装置であり得る。電気泳動は、生体巨大分子、例えば、核酸、タンパク質をサンプル中で動員して、それらの巨大分子を分離および分析するために最も一般的に使用される。電気泳動装置は、キャピラリー電気泳動、ゲル電気泳動、紙電気泳動、および免疫電気泳動のうちの1つまたは複数を含むことができる。いくつかの態様では、電気泳動装置はゲル電気泳動を含む。電気泳動装置およびゲル電気泳動の方法の例は、例えば、米国特許第3129158号、第3208929号、第3346479号、第3375187号、第3616454号、第3616457号、第3616454号、第3616457号、第3563880号、第3576727号、第3674678号、第3865712号、第4088561号、第4151065号、第4292161号、第4339327号、第4375401号、第4415418号、第4479861号、および第4588491号;およびMartin, Robin.Gel electrophoresis:nucleic acids.BIOS Scientific, 1996; Hames, B.D.Gel Electrophoresis of Proteins:A Practical Approach, Oxford University Press 1998; およびBurmeister, M. and Ulanovsky, L.Pulsed-field Gel Electrophoresis, The Humana Press Inc.1992に見出すことができ、これらの開示は参照により本明細書に組み入れられる。
いくつかの態様では、電気泳動装置は、緩衝溶液およびヒドロゲル包埋サンプルを入れることのできる電気泳動チャンバを含むことができる。例えば、図3A〜図3Dおよび図4A〜図4Jを参照されたい。電気泳動チャンバは、一般に、対象とするヒドロゲル包埋サンプルを収容するのに適した任意のサイズであってよく、例えば、ガラスおよびプラスチック、例えばアクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレンなどの、チャンバ内に溶液を保持する任意の材料で構成することができる。いくつかの態様では、チャンバは、特定の用途に適するように、樹脂または硬質プラスチックで成形または機械加工されるか、他の方法で形成されてもよい。いくつかの態様では、電気泳動チャンバは、電気泳動チャンバ内に、例えばプラットフォームのような、ヒドロゲル包埋サンプルを支持するように構成された構成要素をさらに含むことができる。
いくつかの態様では、電気泳動装置は、電気泳動チャンバを覆ってチャンバを閉じる蓋を含むことができる。本発明の態様による蓋は、蓋がチャンバに連結されたときに電気泳動チャンバの本体と液密および/または気密シールを形成するシールを含むことができる。いくつかの態様では、1つまたは複数のシーリング構成要素が、蓋に取り付けられてもよく、チャンバに取り付けられてもよく、または蓋とチャンバの両方に取り付けられてもよい。蓋をチャンバに連結すると、シーリング構成要素は、液密および/または気密シールを形成することができる。
本発明のいくつかの態様による電気泳動装置は、電気泳動チャンバに作動可能に関連する2つ以上の反対の極性の電極(すなわち、「アノード」(負に荷電している)および少なくとも1つの「カソード」(正に荷電している))を含むことができ、それらに電流を印加してチャンバ内に電場を生成することができる。電極は、電極への電流の印加時に電場が確立される結果となる任意の材料で構成してもよく、チャンバ内でかつサンプルが設置される場所に対して、その中に配置されたサンプルにわたる電場の確立を促進する、例えば核酸またはタンパク質電気泳動の技術分野で周知であるような任意の好都合な方法で、構成してもよい。例えば、米国特許第3129158号、第3208929号、第3346479号、第3375187号、第3616454号、第3616457号、第3616454号、第3616457号、第3563880号、第3576727号、第3674678号、第3865712号、第4088561号、第4151065号、第4292161号、第4339327号、第4375401 号、第4415418号、第4479861 号、および第4588491号;およびMartin, Robin.Gel electrophoresis:nucleic acids.BIOS Scientific, 1996; Hames, B.D.Gel Electrophoresis of Proteins:A Practical Approach.Oxford University Press 1998; およびBurmeister, M.およびUlanovsky、「L.Pulsed-field Gel Electrophoresis」、The Humana Press Inc.、1992を参照されたい。例えば、電極は、実質的にサンプルの側面に位置するようにチャンバ内に構成されてもよい。
いくつかの態様では、電極の1つまたは複数は、電極間に生成される電場のサイズを拡大するために使用される伸長構成要素を含むことができる。例えば、特定の態様では、電極は、複数のS字状の屈曲を形成するために、それ自体の上に折り返されている電極の蛇行部分の形態の伸張構成要素を含むことができる。蛇行した伸張構成要素を含む電極の例は、図3のパネルc(参照番号103aおよび103b)に見ることができる。伸張構成要素は、電極に電圧を印加したときに発生する電場の大きさを大きくして、3次元組織サンプル全体を電場内に配置することができる。伸張構成要素の長さおよび幅は、様々な寸法の組織サンプルを収容するために必要に応じて調整することができる。例えば、いくつかの態様では、図4のパネルeに示すように、伸張構成要素を含む電極の長さおよび幅はほぼ等しい。特定の態様では、電気泳動チャンバは、例えば固体デバイダーまたは空気によって2つの異なる領域に分割され得、各領域は緩衝液中に1つの電極を含み、サンプルは、電極によって生成された電場がサンプルを通って生成されるように、2つの領域に広がるまたは跨って緩衝液の中に配置される。いくつかの例では、チャンバは、ヒドロゲル包埋サンプルが載置されるプラットフォームまたは支持構造、例えば2つの電極間のプラットフォーム、電極を含むチャンバの領域に広がるプラットフォームなどを含むことができる。
電気泳動装置は、電圧が電極に印加され得る電源に動作可能に連結されてもよい。いくつかの例では、電源は電気泳動装置とは別個であってもよい。すなわち、電気泳動装置は電源とは別個のモジュールであってもよい。他の例では、電源は電気泳動装置に組み込まれてもよい。すなわち、電気泳動装置は電源を備える。
場合によっては、電気泳動チャンバ内の緩衝液を置換または再循環させることが望ましい場合がある。いくつかの態様では、緩衝液の循環または再循環は、緩衝液をチャンバから取り出し、次いで、例えば冷却ユニット(冷凍ユニット、氷浴など)、加熱ユニット、フィルタなどに通した後、チャンバに緩衝液を戻すことを含む。いくつかの態様では、緩衝液を交換することは、緩衝液をチャンバから取り出し、代わりに新しい緩衝液をその位置に加えることを含む。例えば、電気泳動チャンバ内の緩衝液の温度を制御すること(例えば、チャンバがヒドロゲルを解重合させるか、サンプル中の生体分子が変性するような温度、例えば35℃以上、40℃以上、または50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または100℃以上に達するのを防ぐため);サンプルを出るときに巨大分子を緩衝液から除去すること;緩衝液のイオン強度を変化させること;などが望ましい場合がある。この目的のために、電気泳動装置は、緩衝液がチャンバを出入りし得る1つまたは複数のポートを任意に含むことができる。いくつかの例では、チャンバは2つ以上のポート、例えば緩衝液がチャンバに入る第1のポートと、緩衝液がチャンバを出る第2のポートとを含むことができる。
緩衝液は、1つまたは複数のポート、および任意で、チューブ、ポンプ、バルブ、または任意の他の適切な流体ハンドリングおよび/または流体操作機器、例えば1つまたは複数の装置の構成要素に取り外し可能に取り付けられた、または恒久的に接続されるチューブの使用によって、追加/除去/再循環/置換し得る。例えば、第1および第2の端部を有する第1のチューブを第1のポートに取り付けることができ、第1および第2の端部を有する第2のチューブを第2のポートに取り付けることができ、第1のチューブの第1の端部は第1のポートに取り付けられ、第1のチューブの第2の端部は、容器、例えば冷却ユニット、加熱ユニット、濾過ユニット、廃棄物容器などに作動可能に連結され;第2のチューブの第1の端部は第2のポートに取り付けられ、第2のチューブの第2の端部は容器、例えば冷却ユニット、氷上のビーカー、濾過ユニット、廃棄物容器などの容器に作動可能に連結される。
別の例として、第1および第2の端部を有する1つのチューブを第1および第2のポートの両方に取り外し可能に取り付けることができる。すなわち、チューブの第1の端部を第1のポートに取り外し可能に取り付け、チューブの第2の端部は、第2のポートに取り外し可能に取り付けられ、チューブは、例えば冷凍ユニット(例えば、チューブがユニットを貫通する)、フィルタ(例えば、チューブはフィルタを含む)、緩衝液リザーバ(例えば、チューブは、リザーバから、例えばスプリッターを介して交換緩衝液を受け取る)、などに作動可能に連結される。いくつかの例では、チューブはまた、ポンプ、例えば蠕動ポンプ、電気浸透ポンプ、振動ポンプ、ダイアフラムポンプなどのような、チューブを経る流体の流れを容易にし、電気泳動チャンバからの緩衝液の追加/除去/再循環を容易にするものなどに作動可能に接続される。このようにして、電気泳動装置は、冷却ユニット、加熱ユニット、濾過ユニット、緩衝液リザーバ/容器、ポンプなどに動作可能に接続されてもよい。いくつかの態様では、冷凍ユニット、加熱ユニット、濾過ユニット、緩衝液リザーバ/容器、ポンプなどが電気泳動装置に組み込まれる。換言すれば、電気泳動装置は、冷凍ユニット、加熱ユニット、濾過ユニット、緩衝液リザーバ/容器、ポンプなどを備えていてもよい。他の態様では、冷凍ユニット、加熱ユニット、濾過ユニット、緩衝液リザーバ/容器、ポンプなどは、電気泳動装置とは別個のモジュールであってもよい。
図3A〜図3Dに示すように、例示的な電気泳動組織透明化装置101が示されている。例示的な装置101は、蓋102と、第1の電極103aと、第2の電極103bと、ベース104と、出口ポート105と、入口ポート106と、第1の電極コネクタ107aと、第2の電極コネクタ107bとを含む。
本開示はまた、主題の方法を実施するためのシステムを提供する。システムは、本明細書に記載される1つまたは複数のモジュール、例えば電気泳動装置、電源部、冷凍ユニット、加熱ユニット、ポンプなどを含むことができる。システムはまた、例えば、固定剤;ヒドロゲルサブユニット;透明化試薬;検出用巨大分子、例えば、抗体、核酸プローブ(オリゴヌクレオチド、ベクターなど)、化学物質など;緩衝液、例えば、サンプルの固定、洗浄、透明化および/または染色のための緩衝液;封入剤;包埋用の型;などの、本明細書に記載される試薬のいずれかを含み得る。特定の態様によるシステムは、顕微鏡および/または関連する画像化装置、例えばカメラ構成要素、デジタル画像化構成要素および/または画像取込み装置、使用者による1つまたは複数の入力に従って画像を収集するように構成されたコンピュータプロセッサなども含むことができる。
本発明に従って使用できるCLARITY処理の特定の態様は、PCT公開WO2014/025392、Tomer, R.T et al., Nature Protocols, Vol.9, No.7, pp.1682-1697(2014年6月)、およびKim, S.Y. et al., P.N.A.S.Plus, Vol.112, No.46, pp.E6274-E6283(2015年10月)に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
III.生物学的サンプルの画像化
本発明の局面は、上記のように調製された組織サンプル(例えば、腫瘍組織サンプル)、大きな器官、動物全体などの、高速高分解能画像化を行うための方法、装置、およびシステムを対象とする。いくつかの態様では、本発明の局面は、全開示が参照により本明細書に組み入れられる、2015年5月28に出願された「METHODS AND DEVICES FOR IMAGING LARGE INTACT TISSUE SAMPLES」と題するPCT出願PCT/US2015/032951に全体的に開示されているように、組織サンプルの高速高分解能画像化を行うための方法、装置、システムを対象とする。
いくつかの態様では、主題のシステムは、蛍光画像化、反射画像化、明視野画像化、暗視野画像化、微分干渉コントラスト(DIC)画像化、位相コントラスト画像化、偏光画像化および/または同様のものなどの1つまたは複数のために構成される画像化装置を含む。いくつかの態様では、主題のシステムは、X線画像化、コンピュータ断層撮影(CT)画像化、磁気共鳴画像法(MRI)、超音波イメージングなどのうちの1つまたは複数に対して構成された画像化装置を含む。いくつかの態様では、主題のシステムは、多モード画像化用に構成され、2つ以上の画像化手法を含む。いくつかの態様では、主題のシステムは、2つ以上の画像化手法を介して取得された画像の相関および/または共同登録のために構成される。
いくつかの態様では、主題のシステムは、光源を有する照射ビーム経路、カメラを有する検出ビーム経路、サンプルチャンバを含む光学的に均質なサンプル操作構成要素、コントローラ、プロセッサ、およびプロセッサが実行するときに、(いくつかの態様で)コントローラに、較正処理を実行させて、サンプルチャンバ内のサンプルの複数の位置合わせパラメータを取得させ、サンプルの3次元画像を生成するための位置合わせパラメータを利用する画像化処理を実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体を含む顕微鏡装置を含む。
いくつかの態様では、照射ビーム経路構成要素は、以下でさらに説明するように、コリメータ、シャッタ、照明フィルタホイール、ビームエキスパンダ、2次元スキャナ、走査レンズ、チューブレンズ、1つまたは複数のミラーおよび光源を含むことができる。これらの構成要素のいずれか、任意の数のこれらの構成要素のいずれか、またはそれらの組み合わせまたは構成は、主題のシステムおよび装置において適切な方法で利用されてもよい。
いくつかの態様では、照射ビーム経路は、静的な光シートを生成するように構成された円柱レンズを含む。いくつかの態様では、照射ビーム経路は、ガウスビームまたはベッセルビームを有する動的な光シートを生成するように構成された検流計スキャナ/fθレンズを含む。いくつかの態様では、システムは2つの照射ビーム経路を含むことができ、照射ビーム経路は、サンプルの反対側または対向する側からサンプルを照射するように構成される。
いくつかの態様では、システムは、単一照射ビーム経路から1、2、3、4またはそれより多くの光シートのような複数の光シートを生成するように構成することができる。特定の態様では、光シートを独立して操作して、サンプルの所望の部分を照射することができる。いくつかの態様では、2つ以上の光シートを使用して協調的にサンプルの一部を照らすことができ、第1の光シートがサンプルの第1の部分を照射し、第2の光シートがサンプルの第2の部分を照射するようにし、この場合サンプルの第1の部分はサンプルの第2の部分とは異なる。いくつかの態様では、複数の光シートを使用して、サンプルの一部を照らすことができ、例えば、最大3つ以上、例えば4つ以上、例えば5つ以上、例えば6つ以上、例えば7つ以上、例えば8つ以上の光シートを使用して協調的にサンプルの一部を照らすことができる。いくつかの態様では、サンプルの所与の部分を照らすために、各光シートを独立して操作することができる。いくつかの態様では、複数の光シートを協調的に操作して、本明細書にさらに記載される方法に従ってサンプルの画像化を達成することができる。
いくつかの態様では、システムは2つの照射ビーム経路を含むことができる。特定の態様では、2つの照射ビーム経路を使用して、両側からサンプルを照射し、そうすることにより、サンプルの半分を一方の側から画像化し、サンプルの別の半分を他方の側から画像化することができる。
本発明の態様による照射ビーム経路はまた、約390nm〜約700nmの範囲の波長を有する可視スペクトル(間のすべての値および部分範囲を含む)、または約700nm〜約1500nmの範囲内の赤外線スペクトル(間のすべての値および部分範囲を含む)の光を生成するように構成された様々な光源を含み得る。いくつかの態様では、光源はレーザを含むことができる。いくつかの態様では、光源(レーザ光源など)は、例えば405nm、488nm、514nm、561nm、594nm、または647nmの波長を有する光を放射するように構成される。種々の適切な光源のうちの任意のものを、主題のシステムと共に使用することができる。
上に要約したように、本発明の局面は、検出ビーム経路を含むシステムを含む。検出ビーム経路構成要素は、当技術分野で周知であり、本明細書では詳細には説明しない。いくつかの態様では、検出ビーム経路構成要素は、カメラ、チューブレンズ、放出フィルタホイール、および検出対物レンズを含む。これらの構成要素のいずれか、またはそれらの組み合わせまたは配置は、主題のシステムおよび装置において適切な方法で利用されてもよい。
いくつかの態様では、カメラは、極めて低いノイズ、高速フレームレート、広いダイナミックレンジ、高量子効率(QE)、高解像度、および大視野を提供するCCDカメラまたは科学用CMOSカメラ(sCMOS)である。そのようなカメラは、科学技術販売業者から市販されている。
いくつかの態様では、検出対物レンズは、画像化を受けているサンプルの屈折率(RI)と一致するRIを有するように構成される。例えば、いくつかの態様では、検出対物レンズは、そのRIが、画像解析を受けている浸液および/または組織サンプルのRIと一致する、25X、10X、または4X検出対物レンズであってもよい。
いくつかの態様では、検出対物レンズは、低い絞り値の検出対物レンズであってもよい。いくつかの態様において、検出対物レンズの絞り値は、間のすべての値および部分範囲を含めて、約0.1〜約1.4、例えば約0.6〜約1.0の範囲である。
いくつかの態様では、検出対物レンズは、間のすべての値および部分範囲を含めて、約0.1mmから約100mm、例えば約6〜8mmの範囲の作動距離(WD)を有する。
いくつかの態様では、システムは2つの検出ビーム経路を含むことができる。特定の態様では、2つの検出ビーム経路を使用して、両側からサンプルを同時に画像化することができ、そうすることにより、サンプルの半分を一方の側から画像化し、サンプルの別の半分を他方の側から画像化することができる。この態様は、第2の検出ビーム経路における第2の対物レンズの追加によって両方の対物レンズの組み合わせの全作動距離が2倍に増加するので、画像化され得るサンプルサイズの2倍の増加をもたらす。
本発明の局面は、光学的に均質な環境にサンプルを収容するように構成された光学的に均質なサンプル操作構成要素を含む。「光学的に均質」とは、環境中の様々な材料の屈折率(RI)が一致しているか類似しているようにし、光学的に均質な環境を通って進む光のビームは、それを通って移動する材料のRIのいかなる変化によっても実質的に影響を受けないようにすることを意味する。
いくつかの態様では、光学的に均質なサンプル操作構成要素は、底部またはベースと、開いた頂部を有するボックスの形状のサンプルチャンバを画定する外壁とを含む。いくつかの態様では、照射ビーム経路から放射された光が透明窓を介してサンプルチャンバの内部に直接入るように、1つまたは複数の照射ビーム経路からのレンズが、外壁の上またはその一部に配置される。いくつかの態様では、透明窓は、光学的に均質な環境のRIに適合する材料で作られる。いくつかの態様では、透明窓は、例えば石英カバースリップから作られる。いくつかの態様では、検出ビーム経路の検出対物レンズが、外壁の上または中に配置される。いくつかの態様では、検出対物レンズは、照射ビーム経路に対して直交関係に配置される(例えば、照射ビーム経路に対して90°の角度に配置される)。
いくつかの態様では、光学的に均質なサンプル操作構成要素は、x、y、およびz方向および角度または8つの回転方向を含む複数の方向のいずれかでサンプルを移動するように構成されたxyz-θのサンプルマウントを含む。いくつかの態様では、xyz-θのステージマウントは大きな移動範囲を有し、x、y、およびz方向のそれぞれにおいて少なくとも45mm動くように構成される。いくつかの態様では、xyz-θステージマウントは、サンプルを角度方向またはθ方向に360°完全に回転させるように構成される。そのようなxyz-θのサンプルマウントは、科学技術販売業者から市販されている。
いくつかの態様では、システムの光学系はサンプルに対して移動するように構成されているが、一部の態様では、サンプル操作構成要素はシステムの光学系に対してサンプルを移動するように構成される。光学系またはサンプル操作構成要素のいずれかの移動は、例えば、段階的な方法でも連続的な方法でもよい。いくつかの態様では、光学系およびサンプル操作構成要素は同期して動かすことができるが、ある態様では、光学系およびサンプル操作構成要素を非同期的に動かすことができる。
いくつかの態様では、光学的に均質なサンプル操作構成要素のサンプルチャンバは、溶液で満たされる。いくつかの態様では、溶液は、サンプルのRIまたは検出ビーム経路の検出対物レンズと一致するRIを有する。例えば、いくつかの態様では、サンプルチャンバを満たすために使用される溶液は、FocusClearまたはMountClear(どちらもCelExplorer Labsから市販されている)である。いくつかの態様では、チャンバを充填するために使用される溶液は、間のすべての値および部分範囲を含めて、約1.45などの約1.42〜約1.46の範囲の屈折率を有する液体である。いくつかの態様では、サンプルチャンバを満たすために使用される溶液は、約87%のグリセロールである。所望の範囲の屈折率を有する溶液は、Cargille Labsのような販売業者から市販されている。
いくつかの態様では、光学的に均質なサンプル操作構成要素のサンプルチャンバは、より小さい内側チャンバを含み、その容積は、より大きな外側のサンプルチャンバの容積よりも小さい。例えば、いくつかの態様では、内側チャンバは、分析のためのサンプルを収容するように構成されたキュベットである。いくつかの態様では、溶融石英製のキュベットを内側チャンバとして使用する。いくつかの態様では、内側チャンバは、上述のように、そのRIが、サンプルのRIまたは検出ビーム経路の検出対物レンズと一致する溶液で満たされる。例えば、いくつかの態様では、内側チャンバを満たすために使用される溶液は、FocusClearまたはMountClear(どちらもCelExplorer Labsから市販されている)である。いくつかの態様では、内側チャンバを満たすために使用される溶液は、Cargille Labsのような販売業者から市販されているRI 1.454である。いくつかの態様では、内側チャンバを満たすために使用される溶液は、約87%のグリセロールである。特定の態様では、第1の溶液を用いて内側チャンバを充填し、異なる溶液を用いてより大きな外側チャンバを充填することができる。例えば、いくつかの態様では、内側チャンバはFocusClearで満たされ、一方で外側チャンバはRI1.454溶液または87%グリセルロール溶液で満たされる。
いくつかの態様では、本発明の局面は、主題のシステムの1つまたは複数の構成要素を制御または操作するように構成または適合されたコントローラ、プロセッサおよびコンピュータ可読媒体を含む。いくつかの態様では、システムは、本明細書で説明するように、システムの1つまたは複数の構成要素と通信するコントローラを含み、システムの局面を制御し、および/または主題のシステムの1つまたは複数の動作または機能を実行するように構成される。いくつかの態様では、システムは、プロセッサと、メモリ媒体および/または記憶媒体を含み得るコンピュータ可読媒体とを含む。コンピュータ可読メモリへのコンピュータ可読命令として具体化されるアプリケーションおよび/またはオペレーティングシステムは、本明細書に記載された機能の一部または全部を提供するためにプロセッサによって実行され得る。
いくつかの態様では、システムは、使用者からの入力を受け、本明細書で説明する方法の1つまたは複数を実行するように適合または構成される、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)などのユーザインターフェイスを含む。いくつかの態様では、GUIは、データまたは情報を使用者に表示するように構成される。
ここで図5Aを参照すると、顕微鏡装置の態様が示されている。図示の顕微鏡装置は、第1および第2の照射ビーム経路を含み、各照射ビーム経路は、コリメータ、シャッタ、照明フィルタホイール、ビームエキスパンダ、2dの検流計スキャナ、スキャンレンズ(またはfθレンズ)、チューブレンズ、ミラーおよび照明用対物レンズを含む。図示の顕微鏡装置はまた、sCMOSカメラ、チューブレンズ、放出フィルタホイール、および光学的に均質なサンプル操作構成要素内に配置された検出対物レンズを含む検出ビーム経路を含む。
ここで図5Bを参照すると、光学的に均質なサンプル操作構成要素の様々な構成要素が示されている。図5Bのパネルaは、内側サンプルチャンバとして機能することができる石英キュベットを示す。図5Bのパネルbは、サンプルチャンバのベース上に配置されたxyz-θサンプルマウントステージを示す。検出ビーム経路の検出対物レンズおよび2つの照射ビーム経路のレンズも示されている。図5Bのパネルcは、内側サンプルチャンバを形成するためにサンプルチャンバ内に配置されたキュベットを示す。図5Bのパネルdは、RI 1.454の液で満たされたサンプルチャンバを示す。
ここで図6を参照すると、制御エレクトロニクスフレームワークおよびCOLM(CLARITY最適化光学顕微鏡)部品の概略が示されている。図示のように、制御コンピュータまたはプロセッサは、例えば、検出ビーム経路内のsCMOSカメラ、照射ビーム経路内のレーザコントローラ、および様々な追加構成要素を含む、システムの様々な構成要素と通信する。
ここで図7のパネルaを参照すると、多平面COLMシステムの態様が示されている。図示のように、システムは2つの照射ビーム経路と2つの検出ビーム経路を含む。照射ビーム経路は、サンプルを両側から照射するように構成され、検出ビーム経路は、両側からサンプルを画像化するように構成される。複数の平面の同時の画像化は、行ごとの読み出し方向に互いにわずかにずらして(図7のパネルcに示すように約100ミクロンで十分である)2つの検出アームを操作することによって達成される。
ここで図8を参照すると、多平面COLMシステムの照射ビーム経路の態様が示されている。図示のように、照射ビーム経路は、複数の独立した光シートを生成するように構成された様々な構成要素を含む。図示の態様は、4つの独立した光シートを生成するように構成されている。
ここで図9を参照すると、電動のフリップミラーの使用を採用して、対応する一対の検出アームによる画像化を可能にする2つの異なる構成に、照射ビームを向け直すことによって、2つの検出経路を4つの検出経路に拡張することができる。
本発明の局面は、本明細書に記載の方法によって実質的に透明にされる、腫瘍組織サンプルなどの大きな組織サンプルを画像化するために使用できる方法を含む。いくつかの態様では、主題の方法は、光学的に均質なサンプル操作構成要素のサンプルチャンバ内にサンプルを配置する工程と、サンプル内の複数の位置で顕微鏡装置の光シートおよび検出焦点面を位置合わせするための較正処理を実行して各位置についての位置合わせパラメータを取得する工程と、サンプル内の複数の位置のそれぞれから画像を収集し、各位置からの画像を使用してサンプルの3次元画像を構築する画像化処理を実行する工程に関与する。これらの方法の局面について、ここで以下でさらに詳細に説明する。
この方法の局面は、サンプルを光学的に均質なサンプル操作構成要素に配置する工程に関与する。いくつかの態様では、サンプルを、任意の方向にサンプルを移動させるように構成されたxyz-θサンプルマウントステージのようなサンプルマウントステージに載置する。いくつかの態様では、この方法は、光学的に均質なサンプル操作構成要素のサンプルチャンバにサンプルを配置する工程、およびサンプルに一致する屈折率(RI)を有する溶液でサンプルチャンバを満たす工程に関与する。いくつかの態様では、本明細書に記載の画像分析を行う前に、顕微鏡分析のためにサンプルを調製することができる。いくつかの態様において、サンプルは、ヒドロゲルサブユニットの存在下でサンプルを固定すること、ヒドロゲルサブユニットを重合させてヒドロゲル包埋サンプルを形成すること、およびヒドロゲル包埋サンプルを透明化することによって調製される。調製方法は、国際特許出願PCT/US2013/031066にさらに記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
この方法の局面は、顕微鏡装置の検出焦点面を、光のシートで照らされたサンプルの照射面と位置合わせするために使用される較正処理を実行する工程に関与する。いくつかの態様では、較正処理は、サンプルの開始位置および終了位置をz方向に指定する工程に関与する。
ある態様では、較正処理は、サンプルをz方向の複数の平面に分割するために使用されるz工程値を指定する工程を含み、各平面はサンプルの2次元セグメントまたは部分を表すことに関与する。いくつかの態様では、z工程値は、0.1μm〜1mm、例えば1〜5μmの範囲である。
いくつかの態様では、較正処理は、サンプルを複数のタイルにデジタル分割する工程に関与する。タイルは、サンプルの個別の部分の画像とすることができる。顕微鏡対物レンズの視野がサンプル自体よりも小さい場合、タイリングの配置で画像の複数のスタックを収集し、次にタイルを互いにつなぎ合わせて(stitch)完全な画像を生成することが必要な場合がある。いくつかの態様では、本方法は、タイルの数を規定する領域の2つの対向するコーナーの座標を規定する工程と、タイル画像のスタックを収集するために使用される所望のz工程値を設定する工程とを含む。いくつかの態様では、領域は、10〜50%、例えば15〜20%の範囲の互いにオーバーラップするタイルとして選択される。
較正処理の局面は、サンプル内の複数の位置のそれぞれについて位置合わせパラメータを取得する工程に関与する。各位置で位置合わせパラメータを取得するために、一次元の光ビームを移動させることによって生成された光シートが、サンプルの平面を照らすために使用される。光シートが照らすサンプルの平面は、本明細書では「サンプル照射面」または「照射面」と呼ばれる。 顕微鏡の検出焦点面とサンプル照射面との間の位置合わせは、サンプル照射面と検出焦点面との間の最適な位置合わせに対応する特定の近傍で、最大の画質測定値を見つけることによって、達成される。いくつかの態様では、画質測定は、フーリエ空間における高周波信号と低周波信号の比を含む光学的焦点の画質測定値である。
較正処理の結果は、サンプル内の異なる位置に対応する複数の位置合わせパラメータである。サンプル内の所与の位置に位置合わせパラメータを適用することによって、顕微鏡装置の検出焦点面と光シートとの間の最適な位置合わせが、その位置で達成される。いくつかの態様では、較正処理を実行するために1mmのz工程値が使用され、サンプル内の2つの隣接する位置の間の直線的な補間が、2つの隣接する位置の間の位置での位置合わせパラメータを決定するために使用される。このようにして、較正処理を1mmのz工程値を使用して実行することができ、次いでその結果をサンプル全体に適用して、任意の位置で位置合わせパラメータを決定することができる。いくつかの態様では、較正処理は自動化される。いくつかの態様では、プロセッサは、コントローラに較正処理を実行させ、サンプルの複数の位置合わせパラメータを取得させる命令を実行する。
この方法の局面は、顕微鏡装置の検出焦点面をサンプルの照射面に位置合わせするために、位置合わせパラメータを利用する画像化処理を実行する工程を含む。いくつかの態様では、画像化処理は、顕微鏡装置の検出焦点面をサンプルの照射面と位置合わせする工程、照射面の直線部分を光源からの光ビームで照らす工程、およびカメラで照射面の照らされた直線部分からの複数の放射光信号を取込む工程に関与する。特定の態様では、顕微鏡装置の検出焦点面とサンプルの照射面との位置合わせが同期され、照射面の照射が、検出焦点面が照射面と一直線になるのと同時に行われるようにする。このようにして、能動的に画像化されているサンプルの部分のみが照らされ、それにより、過度の照明から生じる可能性があるサンプル中の信号の光退色が低減される。
いくつかの態様では、画像化処理は、光源からの光ビームを方向付けて照射面を横切って掃引し、それによって照射面の複数の直線部分を照らす工程に関与する。いくつかの態様では、光ビームが照射面を横切って掃引すると、照射面のそれぞれの異なる直線部分からの複数の照射光信号がカメラによって取込まれ、照射面と一致するサンプルの2次元画像が得られる。いくつかの態様では、サンプルの照射面が照らされる期間は、1ミリ秒(ms)から1秒、例えば5〜100msの範囲である。
いくつかの態様では、方法は、サンプルの異なる部分を照射するように複数の独立した光シートを方向付けることに関与する。例えば、いくつかの態様では、2つ以上の光シートを使用して、サンプルの両側からサンプルを照射する。いくつかの態様では、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、または最大8つ以上の光シートなど、複数の光シートが、サンプルを照射するために使用される。いくつかの態様では、単一の光シートを使用して、光シートをある位置から別の位置に迅速に移動または「切り替える」ことによって、サンプルの2つ以上の異なる部分を照射する。
いくつかの態様では、画像化処理は、光シートが新しい照射面を照射するようにサンプルをz方向に移動させ、新たな照射面と一致するサンプルの別の2次元画像を生成するように画像化処理を繰り返すことにさらに関与する。いくつかの態様では、サンプルが固定されたままであるのに対し、光シートおよび検出対物レンズは新しい照射面を画像化するために移動される。いくつかの態様では、画像化処理は、光学系(例えば、照射ビーム経路内の対物レンズ)と、サンプルを照射するために使用される光シートとを同期して移動させることに関与する。いくつかの態様では、画像化処理は、検出ビーム経路のカメラが照射されたときにサンプルの様々な面を連続的に画像化できるように、規定された速度でサンプル操作構成要素と共にサンプルを連続的に移動させることに関与する。上述の方法論のいずれも、任意の所与の光シートに対して実施することができる。このように、COLMシステムにおいて複数の光シートを利用することは、特定のサンプルについての画像化処理の全体的な速度を増加させると共に、主題のシステムおよび方法を使用して画像化することができるサンプルのサイズを増加させるために使用できる。
いくつかの態様では、照射処理の結果は、サンプルの複数の2次元画像であり、それぞれがサンプルの異なる照射面に対応する。いくつかの態様では、画像化処理は自動化される。いくつかの態様では、プロセッサは、コントローラに画像化処理を実行させ、サンプルの複数の2次元画像を取得させる命令を実行し、それぞれがサンプルの異なる照射面に対応する。
いくつかの態様では、画像化処理は、サンプルの3次元画像を形成するための2次元画像のデータ処理をさらに含む。いくつかの態様では、サンプルの2つ以上の異なる2次元画像を組み合わせて、または共に「つなぎ合わせ」て、サンプルの平面の単一の2次元画像を形成することができる。例えば、上述したように、2つ以上の異なる独立した光シートを用いてサンプルを画像化する場合、各光シートから得られた画像を組み合わせて、サンプルの所与の平面に対応する単一の2次元画像を形成することができる。
3次元再構成ソフトウェアは市販されており、タイル画像を共につなぎ合わせるために、および/または複数の2次元画像を3次元画像に再構成するために使用することができる。市販のソフトウェアプログラムは、Imaris、Bitplane、およびAmiraのソフトウェアや、Fiji、XuvTools、Vaa3Dプラグイン、およびTeraStitcherのステッチングプラグインなどのオープンソースソフトウェアを含む。いくつかの態様では、ニューロン組織を含むサンプル中のニューロン形態の手動または半自動の追跡は、市販のソフトウェアの特定のモジュール、例えばImarisおよびAmira、またはNeuromanticのようなオープンソースツールを用いて行うことができる。
いくつかの態様では、顕微鏡分析の画像化は、光学的に均質なサンプル操作構成要素内のサンプルチャンバ内にサンプルを配置する工程と、顕微鏡装置の1つまたは複数の光シートおよび1つまたは複数の検出焦点面をサンプル内の複数の位置に位置合わせさせて各位置の位置合わせパラメータを取得するための較正処理を実行する工程と、サンプル内の複数の位置のそれぞれから画像を収集するように画像化処理を実行する工程と、位置合わせパラメータを各位置に適用し、位置を光シートで同時に照らし、位置の画像を取込む工程と、各位置からの画像を用いてサンプルの3次元画像を構築する工程とを含む。
ここで図10を参照すると、方法の一態様のブロックフロー図が示されている。図示された態様では、この方法は、光学的に均質なサンプル操作構成要素にサンプルを配置する工程と、複数の位置合わせパラメータを取得するためにサンプルに対して較正処理を実行する工程と、位置合わせパラメータを用いてサンプルに対して画像化処理を実行する工程と、画像化処理の間に取込まれた画像を用いてサンプル全体の3次元画像を生成する工程とを含む。
ここで図7、パネルbを参照すると、大型でインタクトなサンプルの高画質で深い画像得るための方法の態様が示されている。図示されているように、2つの位置合わせされた光シートで照射(各側から1つずつのビームが2つの異なる平面を照射するか、または、各側からの2つのビームが、各々の平面側からの1つが同じ平面を照らし、残りが他方の平面を照射する)される2つの独立した平面が、両方の検出アームから同時に、または順次画像化される。各光シートから、サンプルの2次元画像が生成される。パネルbは、2つの対向する検出アームから画像化された同一平面の画像を示す。検出アームは、正確に(例えば、サブミクロンの精度で)位置合わせさせることができる。図7のパネルbは、わずかにずれたアームからの画像を示しており、このずれは、X方向またはY方向の小さな補正により重ね合わせることができる。この方法を使用すると、第2の検出ビーム経路に第2の対物レンズを追加することにより、両方の対物レンズの組み合わせの全体的な作動距離が2倍に増加するので、より大きなサンプルを画像化することができる。
ここで図7のパネルcを参照すると、画像化速度を増加させる様々な方法が示されている。図示のように、光シートの高速スイッチングは、2つの独立した平面を照射して、全体的な画像化速度を増加させるために使用することができる。同様に、同時の多平面画像化を使用して、画像化プロセスの全体的な速度を速めることもできる。画像を連続的に取得しながら、複数の光シートがサンプルを通って連続的に移動される、またはサンプルが複数の光シートを通って連続的に移動されるノンストップサンプル画像化も、画像化プロセスの全体的な速度を増加させるために使用できる。さらに、段階的な光学的z走査は、サンプルの異なる光学面を連続的に画像化するために複数の光シートと共に使用することができる。単方向および二方向の同期の照射および検出を使用して、画像処理の全体的な速度を速めることもできる。二方向の同期照射および検出では、図7のパネルcに示すように、2つ以上の独立した光シートを使用してサンプルの異なる部分を照射し画像化する。異なる方向に動く複数の光シートの使用は、画像化プロセスの全体的な速度を増加させる。
ここで図9を参照すると、軸方向(z-分解能)を増加させる方法が示されている。4つの独立した直交配置された信号検出アームからサンプルを画像化することにより、4つの直交するビューから3D画像が取得される。これら4つのビューを融合することにより、軸方向の分解能(z-分解能)の向上が達成される。図9は、サンプルが2つの検出アームのセットによって最初に画像化され、次に検出アームの直交配置された部分によって画像化される、2つの自動的に切り替え可能な構成を示す。この切り替えは、励起光を反射するか妨げられないように通過させる、高速で、正確なフリップミラーを使用して行われる。
いくつかの態様では、本発明の局面は、全開示が参照により本明細書に組み入れられる、2014年10月8日に出願された「MULTIVIEW LIGHT-SHEET MICROSCOPY」と題する米国特許出願公開第2015/0098126号に全体的に開示されているように、複数の平行な光シートを用いて組織サンプル(例えば、上記のように調製した腫瘍生検サンプル)を画像化する方法、装置、およびシステムを対象とする。
図11Aを参照すると、この説明は、全体において、顕微鏡システム100と、発生中の胚または組織生検サンプルなどの複雑な生物学的サンプル(またはサンプル)101の生きた画像化のための対応するプロセスとに関連する。顕微鏡システム100は、同時多視点画像化を提供する光シート顕微鏡技術を使用し、より遅い順次マルチビュー画像化によって引き起こされる可能性のある時空間的アーチファクトを除去または低減する。さらに、検出器が、照らされているサンプル101の部分を記録する間、サンプル101の薄い部分(例えば、z軸に沿って得て、マイクロメートル(μm)オーダーの幅)のみが、走査されたレーザ光のシートで一度に照射されるので、サンプル101へのダメージが低減される。同時多視覚画像化を行うためにサンプル101を機械的に回転させる必要はない。
一般に、光学顕微鏡110は、それぞれの光シート軸に沿って異なる方向からサンプル101を照射する光シート(例えば、光シート102、104)と、複数の検出ビューに沿う得られた蛍光を収集する複数の検出サブシステム(例えば、検出サブシステム116、118)から構成される。以下の例では、2つの光シート102、104が、それぞれの照明サブシステム112、114において生成され、両方向または光シート軸からサンプル101を照射する。それぞれの検出サブシステム116、118は、2つの検出視野に沿う、得られた蛍光を収集する。この特定の例では、光シート軸は照射軸(y軸)と平行であり、検出ビューは、y軸に垂直な検出軸(z軸)と平行である。
したがって、この実施例では、4つの相補的な光学ビューの取得により、顕微鏡システム100のほぼ完全な活用を提供する。第1のビューは、光シート102とサンプル101との相互作用に起因して放出された蛍光を検出する検出システム116からのものである。第2のビューは、光シート104とサンプル101との相互作用に起因して放出された蛍光を検出する検出システム116からのものである。第3のビューは、光シート102とサンプル101との相互作用に起因して放出された蛍光を検出する検出システム118からのものである。第4のビューは、光シート104とサンプル101との相互作用により放出された蛍光を検出する検出システム118からのものである。
図11Bを参照すると(この図は、光シート102、104とサンプル101との間の相互作用をより明確に示すために誇張されている)、光シート102、104は、yx平面に沿って延びる画像ボリュームIVに沿ってサンプル101内で互いに空間的に重複、および時間的に重複し、画像ボリュームIV内のサンプル101と光学的に相互作用する。時間的な重複は、顕微鏡110の空間分解能の限界に対応する分解能時間未満の時間のシフトまたは差以内にある。特に、これは、光シート102、104が、生物学的サンプル101の画像ボリュームIV内で同時に空間的に重なり合うか、非常に小さい時間差で時間的にずれているために、時間差の間の生物学的サンプル101内の追跡された細胞Cの任意の変位は、顕微鏡110の分解能の限界よりも著しく小さい(例えば、一桁小さい)ことを意味しており、分解能の限界は、顕微鏡110の空間分解能限界に対応する時間である。
各光シート102、104は、y軸およびz軸に垂直な照射軸(x軸)に沿ってレーザ光の薄い(例えば、μmの厚さ)ビームを迅速に移動させるレーザスキャナを用いて生成することができ、シート102、104を形成するために概ね平面に沿ってまたは平行に延びる光ビームを形成する。いくつかの態様では、光シート102、104の形態のレーザビームは、サンプル101の両側のy軸に沿ってサンプル101を照射する。薄いボリュームの迅速な走査と、照射軸に対して直角な(この例では、z軸に沿った)蛍光検出とは、光学的に切断された画像を提供する。光シート102、104は、サンプル101内のフルオロフォアをより高いエネルギーレベルに励起し、その後、蛍光光子Pの放出をもたらし、蛍光光子Pは、検出サブシステム116、118(z軸に沿う)内の検出器によって検出される。以下に詳細に説明するように、いくつかの実施形態では、励起は1光子励起であるか、多光子(例えば2光子)励起である。
サンプルで励起されるフルオロフォアは、例えば、GFPのような遺伝的にコードされた蛍光タンパク質、またはAlexa-488などの色素のような、細胞に付着した標識であり得る。しかし、第2高調波発生または第3高調波発生を使用するいくつかの実施形態では、フルオロフォアは、光シート102、104による曝露の際に特定の波長の光を放出する細胞内の実際のまたは天然のタンパク質であり得る。
図11Bに概略的に示されるように、光シート102、104は、サンプル101を通過し、フルオロフォアを励起する。しかし、光シート102、104は、サンプル101を通るそれぞれの経路に沿って、光散乱および光吸収を受ける。さらに、非常に大きい(画像ボリュームIVまたは視野(FOV)に比べて大きい)、またはかなり不透明なサンプルは、光シート102、104からのエネルギーを吸収することができる。
さらに、光シート102、104が2光子励起方式で実施される場合、重なり合う光シート102、104の中央領域103のみが2光子プロセスを効率的にトリガするのに十分高い出力密度を有することができ、2光子光シート102、104への曝露に応答して、サンプル101の(閉じた)半分だけが蛍光光子Pを放出することが可能である。
光シートの「空間的重複」という用語は、光シート102、104がサンプル101内に幾何学的に重ねられていることを意味することができる。「空間的重複」という用語は、光シートの両方が、検出サブシステム116、118のFOV(図11Bに示すように)内およびサンプル101内に、幾何学的に到着することを包含することもできる。例えば、2光子励起を効率的にトリガするために、各光シート102、104は、検出サブシステム116、118の視野の一部(例えば、半分)のみをカバーすることができ(したがって、各光シートは、視野のそれぞれの半分に中央合わせされる)、両方の光シート102、104の使用により、全視野が見えるようにする。
このため、光シート102、104が視野の半分のみをカバーする必要がある場合、各2光子光シート102、104は(z軸に沿って測定したときに)、より薄くすることができる。しかし、光シート102、104がより薄い(かつレーザ出力は変化しない)場合、同数の光子がサンプル101のより小さな断面を通って移動し、すなわちレーザ出力密度がより高くなり、より効率的な2光子励起(レーザ出力密度の2乗に比例する)に至る。同時に、光シートがより薄いので、各光シート102、104が視野全体をカバーするシナリオと比較して、分解能が向上する。
一態様として、光シート102、104が1光子励起方式で実施される場合、光シート102、104は、中央領域103の外側であるが画像ボリューム内のサンプル101の領域に、フルオロフォアを励起することもでき、この部分は結果として得られる画像内でぼやけて見える。この後者の場合、2枚の光シート102、104のそれぞれに2つの画像を順次記録することができ、計算システム190は計算を用いて高画質を得るために画像を調整することができる。例えば、2つの画像は、低コントラスト領域が除去される(そして、この工程の後に相補的な画像部分が残る)ようにトリミングされ、次いで、2つの光シートで記録された画像を共につなぎ合わせて、視野全体をカバーする高画質な最終的画像を得ることができる。
光シート102、104は、その最小の厚さまたは幅(z軸に沿って得られる)が画像ボリュームIVおよびFOV内にあるように構成される。2つの光シート102、104がサンプル101に向けられるとき、それぞれの光シート102、104の最小厚さは画像ボリュームIVと重なり合うべきである。上述のように、図11Bに概略的に示されるように、光シート102の最小厚さが光シート104の最小厚さからオフセットされるように設定することができる。この設定は、(1光子および2光子励起方式の両方について)改善されたまたはより優れた空間分解能、および(2光子励起方式についての)改善されたまたはより優れた信号速度を提供する。
例えば、約200μmの厚み(z軸に沿って得られた)のショウジョウバエ(Drosophila)胚であるサンプル101の場合、光シート102は、サンプル101を通過した後、サンプル101の左端から約50μmの最小厚さ(ページの左側として測定)に達するように構成することができるが、光シート104は、サンプル101を通過した後、サンプル101の右端(ページの右側として測定)から約50μmの最小厚さになるように構成することができる。
光シート102、104の最小の厚さと、画像ボリュームIVにわたる光シート102、104の厚さの均一性との間にはトレードオフがある。したがって、最小厚さが減少すると、光シート102、104は、画像ボリュームIVの端でより厚くなる。光シート102、104の厚さは、それぞれの照明サブシステム112、114の絞り値に比例する。光シート102、104の使用可能な長さ、すなわち厚さが十分に均一な長さは、絞り値の2乗に反比例する。光シート102、104の厚さは、その最大強度(FWHM)の半分で得られたz軸に沿った光シート102、104の全幅など、任意の適切なメトリックを使用して推定することができる。
例えば、4μmの最小厚さ(FWHMのような適切なメトリックを使用)を有する光シート102、104は、250μmのFOVを有する画像ボリュームIVに対して良好なマッチングである(これは(y軸に沿って得られるときに)250μmの長さであることを意味する)。良好なマッチングは、視野全体にわたって良好な平均分解能を提供することを意味する。より薄い光シートは中心(y軸に沿って得られる)の分解能を向上させるが、サンプル101の端部で劇的かつ許容できないほど分解能を低下させ、視野にわたって平均分解能が悪化する可能性がある。より厚い光シートは、光シートを画像ボリュームIVにわたってより均一にするが、画像ボリュームIV全体にわたって分解能を低下させる。別の例として、7μmの最小厚さ(FWHMのような適切なメトリックを使用する)を有する光シート102、104は、700μmのFOVを有する画像ボリュームIV(したがって、700μmの長さである(y軸に沿って得られる場合))にとっての良好なマッチングである。
一般に、光シート102、104の厚さ(z軸に沿って得られる)は、画像のコントラストを維持し、焦点の合っていないバックグラウンド光を減少させるために、サンプル101のサイズ(および厚さ)より小さくすべきである。特に、光シート102、104の厚さは、サンプル101全体が照らされる従来の照明手法よりも画像コントラストを改善するために、サンプル101のサイズよりも実質的に小さくすべきである。この方式(光シートの厚さがサンプルの厚さよりもかなり薄い)においてのみ、光シート顕微鏡法は従来の照明法に比べて実質的な利点を提供する。
例えば、光シート102、104の厚さは、z軸に沿って得られたサンプル101の幅の10分の1未満とすることができる。いくつかの実施形態では、光シート102、104の厚さは、各光シートが視野のほんの一部分(例えば半分)をカバーするために使用される場合、すなわち、各光シートの最小厚さの点が、上述したように、視野の2つの半分のうちの一方の中心に位置する場合、サンプル101の幅またはサイズの1/100程度である。
光シート102、104の最小厚さを設定するため、または現実的な画像ボリュームIVを規定するための1つの考慮点は、顕微鏡システム100によって分解される必要があるサンプル101内の構造のサイズである。例えば、顕微鏡システム100が細胞核を画像化するように設定されている場合、それは約2〜10μmのサイズ(核を横切る直線に沿って得られる;ヒト線維芽細胞で約10μm)である。適度に良好な空間サンプリングおよび分解能を達成するために、光シート102、104は、これらの核の断面のサイズまたは長さの半分、例えば約5μmよりもあまり厚くない最小の厚さを有すべきである。さらに、サンプル101の画像は、(サンプル101、光ビーム102、104、またはサンプル101と光ビーム102、104の両方をz軸に沿って平行移動させることによって)z軸に沿って得られたステップで記録されるべきであり;ステップのサイズはこの最小厚さ程度の大きさであるべきである。
顕微鏡システム100はまた、エレクトロニクスコントローラ180および計算システム190を含む電子フレームワークを含む。エレクトロニクスコントローラ180は、顕微鏡110内のすべての光学機械的構成要素の同期制御をミリ秒の精度で長時間にわたり提供する。計算システム190は、生きたサンプル101での複雑な光学位置合わせを迅速に実行し、検出サブシステム116、118内の複数の検出器(またはカメラ)に、毎秒数百メガバイトの持続的なデータ速度での同時高速画像取得を行うための堅牢なパイプライン、および効率的な自動画像処理のためのハイスループットの計算ストラテジを提供し、あらゆる実験から生じるテラバイトの生のマルチビュー画像データを登録して再構成するようにする。
本明細書で提供される例は、照射のために2つの光シートと蛍光を収集するための2つの検出器とを使用する4ビューシステムを記載しているが、追加の検出器および/または照射システムを追加することによってより多くのビューが可能である。この例では、照射サブシステム112、114は、図11Bの模式図でより明瞭に示されるように、サンプル101を2つの側からの光シートで照らすことができるように互いに向き合っている。各検出サブシステム116、118は、サンプル101から放出された蛍光を収集して記録するように構成された検出光学装置のセットに加えて、それぞれの検出器またはカメラ106、108を含む。各検出サブシステム116、118はまた、検出器106、108の1つまたは複数に接続されたアクチュエータのセット、および一方の端部には検出光学装置、他方の端部にはエレクトロニクスコントローラ180とのインターフェイスを含む。
照射と検出の各組み合わせは、異なるビューまたは視点を提供する。4つのビュー(この例では)を同時に取込むことにより、(過去の逐次画像化技術におけるように)サンプル101を繰り返し新しい位置に回転させることによって生じる遅延が低減または排除される。したがって、顕微鏡システム100は、サンプル101を回転させることなく、複数の相補的なビューを同時に取得するように設計されている。
図12を参照すると、複雑な生物学的サンプル101を画像化するために、顕微鏡システム100によって処理700が実行される。最初に、生物学的サンプル101を調製する(702)。生物学的サンプル101は、上述のようにサンプルを化学的および生物学的に調製し、サンプルをホルダー166に物理的に移動するか取り付け、ホルダー166をチャンバ168内に置くことによって調製される(702)。
顕微鏡110は、例えば、光シート102、104の特性(位置合わせなど)を調整することによって準備される(704)。顕微鏡110が準備されると、光シート102、104が生成される(706)。光シート102、104は、サンプル101内に空間的および時間的な重なりがあるように、生物学的サンプル101を通るよう向けられる(708)。蛍光の照射および記録の開始は、受精卵から複合系への発生における生物学的サンプル101の画像化を可能にするために、受精卵が形成された瞬間から開始することができる。
生物学的サンプル101から放射された蛍光は、生物学的サンプル101全体が取込まれるまで、カメラ106、108によって記録される(710)。次いで、生物学的サンプル101の画像化が継続すべきかどうかが決定される(712)。例えば、画像化は通常、発生中の胚における強い筋肉収縮の開始まで継続することができる。その時点で、サンプル101がより物理的に活性化され、画像化がより困難になり得るため、画像化を停止することができる。しかし、この発生時点を過ぎても画像化が継続できる可能性がある。
画像化を続行する場合(712)、光シートと生物学的サンプル101との間の相対的位置合わせがリセットされ(714)、蛍光が再び記録される(710)。生物学的サンプル101の画像が作成され(716)、追加の後処理が実行され得る(718)。
本発明の局面は、腫瘍生検サンプルなどの生物学的サンプル中の蛍光を測定するための方法、システム、および装置に関する。いくつかの態様では、本発明の局面は、腫瘍生検サンプルのような生物学的サンプル中の蛍光の定量化のための方法、システム、および装置に関する。蛍光強度、二波長レシオメトリック蛍光、蛍光寿命画像顕微法(FLIM)、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)、蛍光閾値化、フォースター共鳴エネルギー移動(FRET)、光退色後蛍光回復(FRAP)、光退色における蛍光消失(FLIP)、光退色後の蛍光の局在(FLAP)、それらの組み合わせ(例えば、FRET-FLIM)などを含むがそれらに限定されるわけではない任意の適切な定量化アプローチが、採用され得る。特定の態様によれば、蛍光の2D取込みおよび定量化に利用される画像分析ソフトウェアは、本方法において使用されるか、使用に適合される。そのような画像解析ソフトウェアは、例えばVectra(登録商標)、InForm、およびMantra自動化定量病理画像化システム(Perkin-Elmer)を含むことができる。例えば、Vectra(登録商標)3自動定量病理画像化システムは、単一のH&E、IHCまたはIFインタクトなFFPE組織切片またはTMA内の弱く発現し重複するバイオマーカーを正確に検出および測定し、本発明での使用に適合させることができる。Vectra(登録商標)とinForm(登録商標)ソフトウェア分析は、多重化されたバイオマーカー画像化と定量分析の力を組み合わせる。特定の態様では、組織サンプルまたはTMAは、免疫蛍光(IF)または免疫組織化学(IHC)染色で、またはH&Eおよびトリクロームのような従来の染色で標識することができる。IFまたはIHC染色を使用する場合、シグナルがスペクトル的に類似していても、同じ細胞区画に位置していても、または自家蛍光によって不明瞭であっても、組織サンプルごと、細胞ごと、または細胞区画ごと(例えば核、細胞質)ベースで、複数のタンパク質を測定することができる。inForm(登録商標)画像分析ソフトウェアを備えるMantra(商標)定量的病理ワークステーションは、癌免疫学研究において、インタクトなFFPE組織切片における複数のタイプの免疫細胞の同時の容易な視覚化、定量化および表現型の決定を可能にし、本発明によるより大きな組織サンプルについて使用するために適合し得る。Mantra(商標)は、多重化されたバイオマーカーを使用して固形腫瘍でインサイチューで免疫細胞を表現型分析するために使用できるコンパクトなワークステーションである。ホモジナイズしたサンプル中の免疫細胞の表現型を決定し、またそれを定量化することができる既存のフローサイトメトリーおよび次世代シークエンシング法とは異なり、Mantra(商標)は、組織のアーキテクチャおよび形態を維持しながらFFPE組織切片の画像を用いてこれを行うように設計された。Mantra(商標)は、マルチスペクトル画像処理技術、新規な画像取得およびinForm解析ソフトウェアを組み込んだ統合ワークステーションである。これは、PerkinElmerのOpal(商標)試薬キットを含む様々な染色剤と共に使用することができ、そのいずれも本発明の方法で使用することができる。
分析方法の特定の態様は、PCT出願PCT/US2015/032951およびTomer, R.T et al.,Nature Protocols, Vol.9, No.71682-1697(2014年6月)に記載されており、これらは参照により全体が本明細書に組み入れられる。
IV.生物学的サンプルおよび疾患の状態の特徴付け
本発明の方法は、例えば疾患(例えば、癌)の存在を診断するため、疾患(例えば、癌)の予後を判定するため、時間経過に伴う疾患の進行(例えば、癌)をモニターするため、治療処置に対する疾患(例えば、癌)の応答を判定するため、疾患が治療(例えば、癌の治療)に対して耐性になる可能性を判定するため、または治療に対する耐性を検出またはモニターするために、生物学的サンプル、例えば腫瘍組織サンプルの1つ以上の形質を判定することを含む。さらに、本発明の方法を使用して、例えば候補作用物質による治療に対する対象または疾患の応答を判定することによって、候補治療剤を試験することができる。本発明の方法は、患者または疾患の動物モデルから得られた生物学的サンプルについて実施することができる。
調べられる形質または特徴は、表現型の特徴および/または遺伝的形質または特徴を含み得る。(i)特定の細胞または細胞外構造の存在、非存在、位置、または分布;(ii)特定の細胞または細胞外構造、例えば血管、リンパ管または細胞外マトリックス成分の形状、大きさ、複雑さ、位置または分布;(iii)特定の細胞型、例えば免疫細胞または幹細胞の存在、非存在、位置、分布または量;および(iv)腫瘍マーカーのような疾患に関連するタンパク質の発現レベルなどの特定の疾患のマーカーの存在、非存在、位置、分布、または量、を含むがそれらに限定されるわけではない生物学的サンプルの様々な異なる特徴を判定または測定することができる。特定の態様では、このような複数の特徴の空間分布および/または量は、本方法の目的のための個々の特徴よりも重要であり得る。
特定の細胞型を示す細胞表面マーカーおよび細胞内マーカーに特異的に結合する巨大分子(例えば、抗体またはその断片およびアプタマー)、疾患を示す発現レベルを有するポリペプチドに特異的に結合する巨大分子、および疾患を示す発現レベルを有するmRNAなどの核酸に特異的に結合する核酸プローブ、疾患に関連する突然変異ポリペプチドに特異的に結合する巨大分子、および転座、挿入、欠失またはコドン置換などの疾患に関連する突然変異を含む核酸、例えば遺伝子またはmRNAに特異的に結合するポリヌクレオチドを含む組織細胞構造および疾患マーカーの発現レベルを試験するために、様々な試薬および方法が、利用可能である。特定の態様では、巨大分子、すなわち検出可能な標識には、抗体またはその断片、またはアプタマーが含まれる。特定の態様では、核酸プローブ、すなわち検出可能な標識は、検出される標的ポリヌクレオチドバイオマーカーと比較してアンチセンス配列を含む。特定の態様では、核酸プライマーは、8〜40ヌクレオチド長である。特定の態様では、それらは、遺伝子転位の部位に5’および3’の両方を結合させる。標的分子へのポリペプチド、例えば抗体またはアプタマー、および核酸、例えば、プライマーの結合に適した条件は、当技術分野で公知である。標識化の間、組織サンプルは、検出可能な標識が組織サンプル中の標的バイオマーカーに選択的に結合するかハイブリダイズし得るのに十分な時間に適した条件下で、検出可能なプローブと接触させることができる。特定の態様では、核酸バイオマーカーは、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)を用いて検出することができる。特定のDNA配列を検出および局在化させるため、組織サンプル内の特定のmRNAを局在化させるため、または染色体異常を同定するためのFISHの使用法は、Shaffer D R et al, Clin Cancer Res.2007 Apr.1; 13(7):2023-9, Cappuzo F et al, Journal of Thoracic Oncology, Volume 2, Number 5, May 2007, Moroni M et al, Lancet Oncol.2005 May; 6(5):279-86に記載されており、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
癌などの疾患は、本明細書に記載の方法を用いて、生物学的サンプル、例えば腫瘍組織サンプルの1つまたは複数の形質または特徴を試験した結果に基づいて、診断、検出または確認することができる。特定の態様では、生物学的サンプルの1つまたは複数の特徴は、正常な対照サンプル、例えば同じ組織または器官から得られた無病のサンプルにおける特徴と比較される。これは、並列分析によって、または生物学的サンプルの1つまたは複数の特徴を、1つまたは複数の正常対照サンプルまたは同じ癌を患っているが表現型または遺伝子型が異なるサンプルから以前に得られた所定の値またはパラメータと比較することによって、行うことができる。
癌などの疾患の予後は、本明細書に記載の方法を用いて、生物学的サンプル、例えば腫瘍組織サンプルの1つまたは複数の形質または特徴を試験した結果に基づいて判定することができる。特定の態様では、生物学的サンプルの1つまたは複数の特徴は、「良好な」または「不良な」予後を有すると同定された同種の疾患の生物学的サンプルにおける特徴と比較される。特定の状況では、1つまたは複数の形質の存在または非存在は、疾患の侵襲的形態または死亡率の増加に関連し得るが、1つまたは複数の他の形質の存在または非存在は、軽度の形態の疾患または低死亡率と関連している可能性がある。この予後分析は、予後の良好または不良に関連することが公知である生物学的サンプルを用いた生物学的サンプルの並列分析によって、または生物学的サンプルの1つまたは複数の特徴を、予後の良好または不良に関連することが公知である特徴の所定の値またはパラメータ、例えば、それぞれが良好または不良な疾患予後に関連する複数の疾患生物学的サンプルにおけるこれらの特徴の分析に基づいて以前に判定された値またはパラメータと比較することによって、実行し得る。
特定の療法または治療に対する対象の癌などの疾患の予測される応答性は、本明細書に記載の方法を用いて、生物学的サンプル、例えば、腫瘍組織サンプルの1つまたは複数の形質または特徴を試験した結果に基づいて、1つまたは複数の異なる時点で判定することができる。特定の態様では、生物学的サンプルは、治療前に対象から得られる。特定の態様では、生物学的サンプルの1つまたは複数の特徴は、特定の療法または治療に対して良好なまたは不良な応答を有すると同定された同種の疾患の生物学的サンプルにおける特徴と比較される。この分析は、特定の療法または治療に対する良好または不良な応答に関連することが公知である生物学的サンプルを用いた生物学的サンプルの並列分析によって、または生物学的サンプルの1つまたは複数の特徴を、特定の療法に対する良好または不良な応答に関連することが公知である特徴の所定の値またはパラメータ、例えば、それぞれが特定の療法または治療に対する良好または不良な応答に関連する複数の疾患生物学的サンプルにおけるこれらの特徴の分析に基づいて以前に判定された値またはパラメータと比較することによって、実行し得る。特定の態様では、療法または治療に対する反応性は、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、治療成功期間(TTF)、無再発生存期間(EPS)、次の治療までの時間(TTNT)、全奏効率(ORR)または奏功期間(DofR)などの、認識されている臨床的エンドポイントである。他の態様では、1つまたは複数の特徴は、特定の治療に対する耐性のマーカーの非存在、存在または量を含み、治療に対する疾患の予測される反応性は、治療抵抗マーカーの存在または非存在に基づき判定し得る。特定の態様では、治療抵抗マーカーの存在、または治療抵抗マーカーが多量であることは、治療に対する応答の不良を予測するが、治療抵抗マーカーの不在または治療抵抗マーカーが低量であることは、治療に対する良好な応答を予測する。
特定の態様では、本発明の方法は、特定の疾患、例えば癌性腫瘍と診断された対象に、上記のような疾患の1つまたは複数の異なる治療または療法に対する対象の疾患の予測応答性を判定することに基づいて、どの特定の治療または療法を提供するかを判定するために実践し得る。
特定の療法または治療に対する対象の癌などの疾患の実際の応答性は、本明細書に記載の方法を用いて、生物学的サンプル、例えば、腫瘍組織サンプルの1つまたは複数の形質または特徴を試験した結果に基づいて、2つまたは複数の異なる時点で判定することができる。特定の態様では、第1の時点で、例えば初期診断時または治療前に取得された生物学的サンプルについて1つまたは複数の特徴が判定され、その後、第2の後の時点、例えば治療中または治療後に、1つまたは複数の特徴が判定される。第1の時点で判定された1つまたは複数の特徴は、第2のまたはさらなる時点で判定された1つまたは複数の特徴、および識別された時点の間に生じた任意の変化と比較することができる。第2の時点またはさらなる時点で判定された1つまたは複数の特徴が、第1の時点で判定されたものよりも正常な対照により類似している場合、療法が疾患を治療しているか、または疾患の進行を阻害していることを示す。第2の時点で判定された1つまたは複数の特徴が、公知である疾患サンプルのものとより類似している場合、療法が疾患を治療していない、または進行を阻害していないことを示す。正常もしくは非疾患に関連する特徴、または疾患に関連する特徴は、正常組織または病変組織で得られた生物学的サンプルの事前検査に基づいて予め決定され得る。特定の態様では、例えば、Eisenhauer, E.A. et al., European Journal of Cancer, Vol.45, pp.228-247(2009)に記載されている腫瘍進行のRESIST基準を評価することを含む、癌の後期段階の評価などが挙げられる。他の態様では、1つまたは複数の特徴は、特定の治療に対する耐性のマーカーの非存在、存在または量を含み、治療に対する疾患の反応性は、2つの異なる時点での耐性マーカーの存在、非存在または量の変化に基づき判定し得る。例えば、第1の時点、例えば治療前の治療抵抗のマーカーの最初の不在は、治療が有効であることを示し得るが、後の時点における治療抵抗のマーカーの後の存在は、治療はもはや有効ではないことを示し得る。本発明の方法は、腫瘍などの疾患の治療における候補治療剤の有効性をスクリーニングするために使用できる。
本明細書に記載の方法のいずれかの特定の態様では、本方法は、例えば、組織処理および/または標識が成功したことを確認するために、1つまたは複数の対照生物学的サンプル、例えば陽性または陰性対照を画像化する工程をさらに含む。特定の態様、例えば、検出可能なマーカーの量を測定することを含む態様では、同じ条件下で対照サンプルについて判定された検出可能なマーカーの量を用いて、試験している生物学的サンプルにおいて検出された量を標準化する。特定の態様では、この方法は、対照生物学的サンプルを標識し、標識されたサンプルを画像化することをさらに含む。特定の態様では、それは、1つまたは複数の対照生物学的サンプルを固定し、重合し、透明化し、標識することを含む。特定の態様では、対照生物学的サンプルは、例えば、培養細胞株などの細胞ペレットである。特定の態様では、対照は、凍結した、または予め凍結した細胞ペレットである。特定の態様では、対照は、予め固定されたおよび透明化された生物学的サンプル、例えば、培養細胞の予め固定されたおよび透明化された細胞などである。試験サンプルについて検出可能なマーカーの量を判定することを含む方法の特定の態様では、判定された量は、対照サンプルについて同じ条件で判定された検出可能なマーカーの量、および試験サンプルについて判定された量と比較される。
A.生物学的構造
特定の態様において、生物学的構造内の3次元構造または細胞の位置およびパターンが、本発明の方法に従って検査される。さらに、組織または腫瘍微小環境を検査することができる。特定の態様では、本発明は、組織サンプル、例えば腫瘍組織サンプルである生物学的構造を検査する方法を含み、それは、(i)ヒドロゲルサブユニットの存在下で組織サンプルを固定する工程;(ii)ヒドロゲルサブユニットを重合させてヒドロゲル包埋サンプルを形成する工程;(iii)ヒドロゲル包埋サンプルを透明化する工程;(iv)処理されたサンプルの少なくとも1つの画像を生成するために、処理されたサンプルを画像化する工程、によって、対象から得られた組織サンプルを処理することを含む。特定の態様では、この方法は、(v)透明化されたヒドロゲル包埋サンプルを1つまたは複数の第1の検出可能なマーカーで標識する工程をさらに含む。特定の態様では、組織サンプルは腫瘍組織サンプルである。特定の態様では、検出可能なマーカーは、その特徴が癌または腫瘍のような疾患の存在または非存在を示す生物学的構造に結合する。特定の態様では、本明細書に記載の検出可能なマーカーのいずれかを用いて、関連する疾患または腫瘍を検出する。特定の態様では、本方法は、(vi)画像を、正常組織、病変組織、腫瘍組織、良好な予後に関連する腫瘍組織、または不良な予後に関連する腫瘍組織から得られた1つまたは複数の対照画像または所定の画像と比較し、それにより、腫瘍の存在または腫瘍の予後を判定する工程をさらに含む。
腫瘍が増殖して転移すると、それらは、腫瘍微小環境(TME)と呼ばれる、腫瘍が増殖する周囲の組織に、影響し得る。TMEには、細胞内マトリックスおよびそれらが分泌する炎症メディエータと共に、血液内皮細胞およびリンパ内皮細胞を含む様々な非悪性細胞が含まれる。基底層は、通常、組織の間質領域から実質を分離するが、典型的には固形腫瘍において不完全である。TMEの変化は、腫瘍、転移、予後または処置に対する反応性を示す変化を同定するために、本発明の方法に従って分析され得る。検査することができる特定のTMEの特徴の例は、(i)腫瘍は、非組織化され漏出血管によって異常に血管新生することから、血管新生、(ii)プロ腫瘍または抗腫瘍機能のいずれかまたは両方を行うことができる自然の免疫細胞および適応免疫細胞による腫瘍の浸潤;および(iii)間葉系幹細胞およびそれらの分化した後代、癌関連線維芽細胞、および周皮細胞を含む、間葉起源の細胞、ならびに、血液内皮細胞およびリンパ内皮細胞を含む、TME内の非造血系細胞型の存在、を含むがそれらに限定されるわけではない。正常な健常組織と比較して、腫瘍微小環境は、漏出血管、非組織化した血管、間質圧の増加、リクルートされた免疫細胞の腫瘍床への再構成アクセス、および増加したコラーゲンおよび細胞外基質沈着などの様々な細胞およびアーキテクチャの変化のいずれかにより、特徴付けることができる。本発明に従って評価され得るこれらおよび他の変化は、Turley, S.J. et al., Nature Reviews Immunology, Vol.15, pp.669-682(2015年11月)に、さらに詳細に記載されている。
特定の態様では、生物学的サンプル内の血管または微小血管系が検査される。血管新生、または新しい血管形成は、腫瘍の増殖および転移と関連している。癌細胞の増殖および転移性の広がりは、酸素および栄養素の適切な供給および老廃物の除去に依存するため、腫瘍の血管ネットワークにおける新たな増殖が重要である。リンパ脈管新生、または新しいリンパ管の形成もまた、腫瘍の増殖および転移において役割を果たす。さらに、増加した微小血管密度および非組織化は、腫瘍形成、腫瘍の増殖および/または転移性癌の指標となり得る。本発明の方法は、例えば、微小血管密度および組織化を判定するために、腫瘍サンプル全体の微小血管系の検査を可能にする。さらに、腫瘍内の微小血管系の位置、例えば、腫瘍が転移した、または転移する可能性を示すことができる腫瘍マージンと比較して、血管の位置などを判定することができる。特定の態様では、腫瘍マージンを越えて突出する血管の存在は、腫瘍の転移を予測するか、それを示す。
特定の態様では、微小血管系は、血管またはその細胞に特異的に結合する作用物質を用いてサンプルを染色することによって検査される。特定の態様では、免疫染色は、血管新生の程度を調べるために、血小板内皮細胞接着分子1(PECAM-1)(内皮細胞のマーカー)および/または神経/グリア抗原2(NG2)(周皮細胞のマーカー)に結合する作用物質を用いて行われる。PECAM-1を用いて、組織学的組織切片における内皮細胞の存在を実証する。これは、急速に増殖する腫瘍を示唆し得る腫瘍の血管新生の程度を評価するのに役立つ。悪性内皮細胞は一般にこの抗原も保持するため、PECAM-1の存在を用いて血管腫および血管肉腫の両方を同定することもできる。NG2は、中枢神経系(CNS)および末梢組織の両方に認められる。中枢神経系では、NG2は、周皮細胞、神経膠芽腫を含む様々な腫瘍、ポリデンドロサイト(polydendrocyte)またはオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)として公知である前駆細胞集団において見出される。末梢には、軟骨芽細胞、心筋細胞、大動脈平滑筋細胞、筋芽細胞、および黒色腫を含むいくつかの異なるヒト腫瘍にNG2が見出される。血管新生因子の発現レベルは、腫瘍細胞の侵襲性を反映する。上皮増殖因子ドメイン様7(EGFL7)は、内皮細胞の接着を支持し、ストレス下での細胞の生存を促進し、血管形成を調節する脈管路を形成する細胞外マトリックスタンパク質である。EGFL7は、腫瘍および他の増殖組織中の新生血管において選択的に発現されるが、健康な休止期の血管には存在しないか、または低レベルで発現される。前臨床試験はまた、EGFL7が免疫からの腫瘍の逃避を促進し得ることを報告している。腫瘍またはTMEの血管新生の増加は、血管内皮細胞増殖因子A(VEGFA)、VEGFCおよびVEGFDなどの可溶性因子のレベルの増加を特徴とする。
腫瘍および/または異常な血管新生に関連する異常なまたは増加した微小血管系は、PECAM-1、NG2およびEGLF7のようなバイオマーカーのレベルの変化または増加、および/または正常な組織サンプルと比較した場合の微小血管系の密度、構造、分枝パターンの変化により特徴付けられ、または判定され得る。あるいは、または加えて、腫瘍および/または異常な血管新生に関連する異常なまたは増加した微小血管系は、同じ型の腫瘍における所定のパターンまたは発現レベルとの比較に基づいて決定され得る。特定の態様では、予測される臨床転帰は、腫瘍組織サンプル微小血管系の1つまたは複数の特徴を、例えば、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、治療成功期間(TTF)、無再発生存期間(EPS)、次の治療までの時間(TTNT)、全奏効率(ORR)または奏功期間(DofR)により測定されるような、公知の臨床転帰を有する同種の腫瘍において観察されるものと比較することによって、また試験されている腫瘍組織サンプルに最も類似する特徴を有するものの予測された臨床転帰を相関させることによって、判定し得る。バイオマーカーの発現レベルは、バイオマーカーの発現量を測定することによって判定することができ、これらを対照または所定の値、または2つ以上の時点で比較することによって変化を観察することができる。微小血管構造は、例えば、微小血管分枝の数、より大きな血管を接続する毛細血管の数および微小血管の長さなどの特徴を、例えば視覚的評価によって測定することによって判定することができ、これらを対照または所定の値、または2つ以上の時点で比較することによって変化を観察することができる。
特定の態様では、抗血管形成薬による治療に対する予想される腫瘍の応答性は、以下のマーカー遺伝子: VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、VEGFA、VEGFB、VEGFC、VEGFD、PDGFRAおよびPDGFRBのいずれかの腫瘍組織サンプルにおける発現レベルを測定することによって判定できる。これらは抗血管形成薬に対する応答の潜在的マーカーとして関与している。例えば、腫瘍組織サンプル中のこれらのマーカーのいずれかの発現レベルは、抗血管新生に応答することが公知であるか、抗血管新生薬に応答しないことが公知である同種の腫瘍におけるその発現レベルと比較することができ、腫瘍組織サンプルにおける発現レベルに最も類似する発現レベルを同定することに基づいて、予測結果を相関させることができる。
他の態様では、生物学的サンプル内の細胞外マトリックスが検査される。癌細胞の局所的な微小環境は、癌発生に重要な役割を果たす。局所微小環境の主な構成要素は、巨大分子の複雑な細胞外ネットワークである細胞外マトリックス(ECM)である。ECMは、支持の提供、組織の互いの分離、および細胞間連絡の調節など、多くの機能を果たす。細胞外マトリックスは、細胞の動的挙動を調節する。さらに、それは広範囲の細胞増殖因子を隔離し、それらのための局所的な貯蔵部として機能する。ECMは、癌などの疾患において一般的に脱調節になり、非組織化されている。異常なECMは、細胞の形質転換および転移を直接促進することによって癌の進行に影響を及ぼす。ECMの異常はまた、間質細胞を脱調節し、腫瘍関連血管新生および炎症を促進し、したがって腫瘍原性微小環境の発生をもたらす。
ECMの成分は、常在細胞によって細胞内で産生され、エキソサイトーシスを介してECMに分泌される。分泌された後、それらは既存のマトリックスと凝集する。ECMは、線維状タンパク質とグリコサミノグリカン(GAG)がインターロックされたメッシュで構成されている。ECMの成分は、プロテオグリカン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、非プロテオグリカン多糖、ヒアルロン酸、フィブリン、エラスチン、コラーゲン、およびフィブロネクチン、ラミニンおよびトロンボスポンジンなどの他のタンパク質を含むが、それらに限定されるわけではない。トロンボスポンジンの発現の増加は、腫瘍の増殖および/または転移と関連している。上皮内癌と浸潤性または転移性癌との臨床予後における1つの有意差は、周囲の細胞外マトリックス基底膜(BM)の存在または非存在に主に起因する。正常または前侵襲性腫瘍上皮は、通常、リンパ管および血管を欠いており、また、BMによって間質内の血管構造から物理的に分離されている。BMは、主にIV型コラーゲン、ラミニン、および連続シート(より一般的には腫瘍カプセルと呼ばれる)を形成する他の分子からなり、上皮細胞を取り囲む。
細胞外マトリックスに関連する変化は、正常組織サンプルと比較した細胞外マトリックス成分のレベルの変化によって特徴付けられるか判定され得る。あるいは、または加えて、同じ型の腫瘍における所定の発現レベルとの比較を行うことができる。特定の態様では、予測される臨床転帰は、腫瘍組織サンプルの1つまたは複数の細胞外マトリックス成分の発現レベルを、例えば、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、治療成功期間(TTF)、無再発生存期間(EPS)、次の治療までの時間(TTNT)、全奏効率(ORR)または奏功期間(DofR)により測定されるような、公知の臨床転帰を有する同種の腫瘍において観察されるものと比較することによって、また試験されている腫瘍組織サンプルに最も類似する特徴を有するものの予測された臨床転帰を相関させることによって、判定し得る。バイオマーカーの発現レベルまたはバイオマーカーの発現レベルの変化は、バイオマーカーの発現量を測定することによって判定することができる。
組織の機能的構造の変化は、病期分類および治療の決定と非常に関連している。ほんの一例として、管構造の完全性および連続性は、診断、予後、および治療の決定において3Dの管構造の視覚化が特に重要であるGleasonシステムにおける前立腺癌の病期分類に不可欠である(脱分化、化生、新形成、転移能および組織破壊の程度に関する重要な情報を伝えるため)。この概念は、機能的構造が新生物の診断、予後、または治療に関連する任意の組織だけでなく、管構造を含む他のいずれかの組織(乳房、膵臓、胆嚢、腎臓など)に拡張することができる。
細胞外マトリックスに関連する変化はまた、正常組織と比較するように、正常な組織サンプルと比較した、細胞外マトリックスのアーキテクチャの変化または細胞外マトリックス成分の位置またはパターンの変化によって、特徴付けられ、または決定され得る。あるいは、または加えて、同じタイプの腫瘍における所定のアーキテクチャまたはタンパク質の発現パターンとの比較を行うことができる。
B.細胞型
他の態様では、生物学的サンプル内の特定の細胞型の存在および/もしくは量、ならびに/または特定の細胞型の3D配置および位置が検査される。特定の態様では、細胞型には、幹細胞および/または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などの免疫細胞が含まれる。特定の態様では、本発明は、組織サンプル、例えば腫瘍組織サンプルである細胞型を検査する方法を含み、それは、(i)ヒドロゲルサブユニットの存在下で組織サンプルを固定する工程;(ii)ヒドロゲルサブユニットを重合させてヒドロゲル包埋サンプルを形成する工程;(iii)ヒドロゲル包埋サンプルを透明化する工程;(iv)処理されたサンプルの少なくとも1つの画像を生成するために、処理されたサンプルを画像化する工程、によって、対象から得られた組織サンプルを処理することを含む。特定の態様では、この方法は、(v)透明化されたヒドロゲル包埋サンプルを1つまたは複数の第1の検出可能なマーカーで標識する工程をさらに含む。特定の態様では、組織サンプルは腫瘍組織サンプルである。特定の態様では、その存在または量が、癌または腫瘍などの疾患の存在または非存在、腫瘍の転移、または治療に対する癌幹細胞などの腫瘍の耐性を示す細胞型に、検出可能なマーカーが結合する。特定の態様では、本明細書に記載の検出可能なマーカーのいずれかを用いて、関連する疾患または腫瘍を検出する。特定の態様では、本方法は、(vi)画像を、正常組織、病変組織、腫瘍組織、良好な予後に関連する腫瘍組織、または不良な予後または転移に関連する腫瘍組織から得られた1つまたは複数の対照画像または所定の画像、または治療の応答の予測と比較し、それにより、腫瘍の存在、転移の可能性または腫瘍の予後を判定する工程をさらに含む。
白血球およびその可溶性メディエータは、固形腫瘍発生のすべての局面において重要な調節的な役割を果たす。適応性および自然免疫応答は、腫瘍免疫監視において重要な役割を果たし、新生物の発生および増殖を制限し得る。腫瘍微小環境免疫バランスは、予後および治療への応答において役割を果たすという仮説が立てられている。さらに、化学療法は免疫応答を引き起こし、これは治療応答に寄与し得る。TILは癌細胞に対する応答の主要なアクターであるため、宿主と腫瘍との間の免疫バランスの代理マーカーを構成する。TILは、腫瘍細胞を死滅させる原因であると考えられており、その存在は一般に良好な臨床転帰と相関する。例えば、乳癌では、腫瘍免疫細胞浸潤の問題に取り組む研究により、高いリンパ球浸潤が、予後が良好であり、ネオアジュバント化学療法(NCT)に対する良好な応答が予測されることが実証されているが、この利益は、いくつかの腫瘍亜型に限定される可能性がある。同様に、TILのいくつかの亜型と乳癌の生存との関係は、いくつかの研究によって支持されている。
様々なタイプのTILには、CD3、CD4、CD8、CD20、CD68、またはFoxp3を発現するものが含まれる。CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、腫瘍細胞を直接殺傷することができる。CD4+Tヘルパーリンパ球(Th)は、Tリンパ球の異種サイトカイン分泌クラスである。Tヘルパー1型リンパ球(Th1)は、CTLを活性化するのに重要な役割を果たす。Tヘルパー2型リンパ球は体液性免疫を刺激し、好酸球を活性化する。抗腫瘍免疫の観点から、Th2活性化はTh1活性化よりも効果が低い。Th1およびTh2サブセットに加えて、CD4+調節性Tリンパ球(Treg)サブセットは、エフェクターTリンパ球を抑制する。FoxP3+は比較的選択的なTregマーカーである。癌では、Tregは、腫瘍細胞および微小環境マクロファージによって産生されるケモカインの結果として、腫瘍に優先的に輸送される。近年、異なるサブセット間の比が予後を最も予測するという仮説がかなり注目されている。頻繁に使用される比は、CD8+/FoxP3+(エフェクター: 調節性)比およびCD8+/CD4+(エフェクター: ヘルパー)比である。
TILなどの特定の免疫細胞の存在または量、タイプ、ならびに/または3D配置および位置、ならびに生物学的サンプル内の異なるTILサブセットの比は、異なる免疫細胞および異なるタイプのTILに特徴的な細胞表面マーカーに特異的なプローブを用いて判定することができる。生物学的サンプル、例えば、腫瘍組織内の様々な免疫細胞の量、位置、および比、および/または特定の免疫細胞の3D配置および位置は、正常対照、または正常細胞もしくは疾患細胞のいずれかと関連していることが公知の所定のレベルと比較することができる。あるいは、または加えて、生物学的サンプル、例えば、腫瘍組織サンプル内の様々な免疫細胞の量、位置、および比、および/または特定の免疫細胞の3D配置および位置は、同じタイプの腫瘍における様々な免疫細胞の所定の量、位置、および比と比較することができる。特定の態様では、予測される臨床転帰は、様々な免疫細胞の量、位置、および比、および/または特定の免疫細胞の3D配置および位置を、例えば、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、治療成功期間(TTF)、無再発生存期間(EPS)、次の治療までの時間(TTNT)、全奏効率(ORR)または奏功期間(DofR)により測定されるような、公知の臨床転帰を有する同種の腫瘍において観察されるものと比較することによって、また試験されている腫瘍組織サンプルに最も類似する様々な免疫細胞の量、位置、および比、ならびに/または特定の免疫細胞の3D配置および位置を有する公知の臨床転帰を有する腫瘍の臨床転帰と、試験されている腫瘍組織サンプルの予測された臨床転帰とを相関させることによって、判定し得る。
癌幹細胞は、正常細胞に関連する特徴、具体的には、特定の癌サンプルに見出されるすべての細胞型を生じる能力を有する癌細胞である。CSCは腫瘍原性であり、自己再生および複数の細胞型への分化という幹細胞プロセスを介して、腫瘍を生成し得る。CSCは、小さくて別個の集団として腫瘍に存続し、再発および転移を引き起こすと仮定されている。癌治療中のCSCの検出およびCSCの破壊のモニタリングは、癌の診断、予後および治療の有効性をモニタリングする上で重要であり得る。本発明は、従来の方法よりも腫瘍組織サンプル全体のより詳細な調査を可能にするので、CSCの同定において利点を提供する。
生物学的サンプル内のCSCの存在または量は、非限定的に、CD90、Sca1、CS133およびOct3/4などのCSCに特徴的な細胞表面マーカーに特異的なプローブを用いて判定することができる。CSCに特異的な他のプローブおよびそれらが関連している例示的なタイプの癌は、CD24(熱安定性抗原)、乳房CSC、A1DH1、乳房CDC; CD44、乳房および前立腺のCSC; ALDH1、広範囲の組織における正常および癌幹細胞; EpCAM(上皮特異抗原(ESA))、乳房および膵臓のCSC; CD133(プロミニン-1)、神経膠腫および結腸直腸のCSC; 4-Oct(POU5F1)、広範囲の組織におけるCSC; CD34、腸管、肝臓および膵臓のCSC; c-Kit(CD117)、腸管、肝臓および膵臓のCSC;およびCD10(CALLA)、頭頸部扁平上皮癌を含む。生物学的サンプル、例えば、腫瘍組織サンプル中のCSCの量は、正常対照、または正常細胞もしくは疾患細胞のいずれかと関連することが公知である所定のレベルと比較することができる。あるいは、またはさらに、生物学的サンプル、例えば腫瘍組織サンプル中のCSCの量は、同じタイプの腫瘍におけるCSCの所定の量、位置、および比と比較してもよい。特定の態様では、予測される臨床転帰は、腫瘍組織サンプルのCSCの量を、例えば、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、治療成功期間(TTF)、無再発生存期間(EPS)、次の治療までの時間(TTNT)、全奏効率(ORR)または奏功期間(DofR)により測定されるような、公知の臨床転帰を有する同種の腫瘍において観察される量と比較することによって、また試験されている腫瘍組織サンプルの予測された臨床転帰を、試験されている腫瘍組織サンプルに最も類似するCSCの量を有する公知の臨床転帰を有するそれらの腫瘍のものと相関させることによって、判定し得る。
癌関連線維芽細胞(CAF)は、複数の起源の異種細胞集団であり、腫瘍微小環境におけるそれらの蓄積は、多くの腫瘍における予後不良と相関することが多い。癌関連線維芽細胞は、癌細胞の増殖および転移を支持し、抗腫瘍免疫応答を妨害し得る。癌関連線維芽細胞は、ビメンチン、a-平滑筋アクチン、および線維芽細胞活性化タンパク質などのマーカーの発現によって同定され得、活性化された極めて収縮性の筋線維芽細胞性表現型によって特徴付けられる。生物学的サンプル、例えば、腫瘍組織サンプル中のCAFの量は、正常対照、または正常細胞もしくは疾患細胞のいずれかと関連することが公知である所定のレベルと比較することができる。あるいは、またはさらに、生物学的サンプル、例えば腫瘍組織サンプル中のCAFの量は、同じタイプの腫瘍におけるCAFの所定の量、位置、および比と比較してもよい。特定の態様では、予測される臨床転帰は、腫瘍組織サンプルのCAFの量を、例えば、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、治療成功期間(TTF)、無再発生存期間(EPS)、次の治療までの時間(TTNT)、全奏効率(ORR)または奏功期間(DofR)により測定されるような、公知の臨床転帰を有する同種の腫瘍において観察される量と比較することによって、また試験されている腫瘍組織サンプルの予測された臨床転帰を、試験されている腫瘍組織サンプルに最も類似するCAFの量または場所を有する公知の臨床転帰を有するそれらの腫瘍のものと相関させることによって、判定し得る。
周皮細胞は、血小板由来増殖因子-β(PDGF-β)勾配によって腫瘍にリクルートされ、3G5ガングリオシド、およびNG2とも呼ばれる硫酸クドロイチン(chdroitin)プロテオグリカン4を含む特徴的な細胞マーカーを所有する。さらに、Gタンパク質シグナリング5(RGS5)のレギュレーターは、腫瘍周皮細胞において過剰発現される。腫瘍血管において、周皮細胞の被覆の異常が見られる。TMEでは、周皮細胞は血液内皮細胞および基底膜にゆるく結合し、おそらくVEGFAの増加による腫瘍脈管構造の漏出を増加させる。生物学的サンプル、例えば、腫瘍組織サンプル内の周皮細胞の位置および量は、正常対照、または正常細胞もしくは疾患細胞のいずれかと関連することが公知である所定のレベルと比較することができる。あるいは、またはさらに、生物学的サンプル、例えば腫瘍組織サンプル中の周皮細胞の位置または量は、同じタイプの腫瘍における周皮細胞の所定の量または位置と比較してもよい。特定の態様では、予測される臨床転帰は、腫瘍組織サンプルの周皮細胞の量を、例えば、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、治療成功期間(TTF)、無再発生存期間(EPS)、次の治療までの時間(TTNT)、全奏効率(ORR)または奏功期間(DofR)により測定されるような、公知の臨床転帰を有する同種の腫瘍において観察される量と比較することによって、また試験されている腫瘍組織サンプルの予測された臨床転帰を、試験されている腫瘍組織サンプルに最も類似する周皮細胞の量または場所を有する公知の臨床転帰を有するそれらの腫瘍のものと相関させることによって、判定し得る。
腫瘍微小環境における間質細胞は、腫瘍の増殖および腫瘍に対する免疫応答に影響を与える多数の表面分子および分泌された分子を発現する。これらの分子は、本発明の方法による腫瘍のマーカーとして使用することができる。例えば、血液内皮細胞は、プログラム細胞死リガンド1、T細胞免疫グロブリンおよびムチン含有ドメイン分子3、およびCD95Lを表面に発現し、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、インターロイキン-6、プロスタグランジンE2およびトランスフォーミング増殖因子βを分泌する。それらはまた、CD137の可溶性の形態を発現する。周皮細胞は、インターロイキン6、酸化窒素、プロスタグランジンE2およびトランスフォーミング増殖因子bを分泌する。間葉系幹細胞は、肝細胞増殖因子、インターロイキン10、IDO、酸化窒素、プロスタグランジンE2およびトランスフォーミング増殖因子βを分泌する。癌関連線維芽細胞は、トランスフォーミング増殖因子β、胸腺間質リンパ球ポエチン、および炎症性サイトカイン、例えばCXCケモカインリガンド8、インターロイキン4、およびインターロイキン6を分泌する。M2マクロファージは、上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子βおよびトランスフォーミング増殖因子βなどの分泌因子を分泌し、CAF生存および活性化を支持する。腫瘍関連マクロファージおよび他の免疫細胞は、マトリックスメタロプロテイナーゼ9、およびシクロオキシゲナーゼ2、線維芽細胞増殖因子2、血小板由来増殖因子β、および血管内皮増殖因子Cおよび血管内皮増殖因子Dなどの血管内皮増殖因子などの可溶性メディエータを分泌する。これらはすべて、癌の検出、予後、および続く癌治療への応答についてのマーカーとして使用され得る。
C.遺伝子またはタンパク質の発現レベルおよび突然変異
本発明の様々な方法は、疾患細胞、例えば腫瘍細胞において発現レベルが変化した1つまたは複数のマーカーの組織サンプル、例えば腫瘍組織サンプルの発現レベルまたは発現パターンを、対照正常細胞、または、例えば、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、治療成功期間(TTF)、無再発生存期間(EPS)、次の治療までの時間(TTNT)、全奏効率(ORR)または奏功期間(DofR)により測定されるような公知の臨床転帰を有する対照疾患細胞を含む対照疾患細胞、または1つまたは複数の特定の療法に応答性であるか否かが公知である対照疾患細胞の発現レベルまたは発現パターンと比較することを含む。
これらの方法は、正常対照または病変組織における発現パターンと比較して、1つまたは複数のマーカーの発現量を測定する工程、および/または生物学的サンプル全体の発現パターンを測定する工程を含むことができる。特定の態様では、マーカーは、病変組織または細胞において発現のレベルが増加しているが、他の態様では、マーカーは、病変組織または細胞において発現のレベルが減少している。特に、態様では、マーカーはポリペプチドまたは核酸、例えばmRNAである。試験されている腫瘍組織サンプルの予測される臨床転帰は、試験されている腫瘍組織サンプルに最も類似した発現レベルを有する公知の臨床転帰を有する腫瘍との相関に基づいて判定され得る。
特定の態様では、本発明は、組織サンプル、例えば腫瘍組織サンプルの遺伝子発現レベル(例えば、発現されたmRNAまたはコードされたポリペプチド)を検査する方法を含み、それは、(i)ヒドロゲルサブユニットの存在下で組織サンプルを固定する工程;(ii)ヒドロゲルサブユニットを重合させてヒドロゲル包埋サンプルを形成する工程;(iii)ヒドロゲル包埋サンプルを透明化する工程;(iv)処理されたサンプルの少なくとも1つの画像を生成するために、処理されたサンプルを画像化する工程、によって、対象から得られた組織サンプルを処理することによる。特定の態様では、この方法は、(v)透明化されたヒドロゲル包埋サンプルを1つまたは複数の第1の検出可能なマーカーで標識する工程をさらに含む。特定の態様では、組織サンプルは腫瘍組織サンプルである。特定の態様では、検出可能マーカーは、癌または腫瘍のような疾患の存在または非存在を示す特徴(例えば、発現レベルまたは発現パターン)を有する遺伝子発現産物(例えば、mRNAまたはコードされたポリペプチド)に結合する。特定の態様では、本明細書に記載の検出可能なマーカーのいずれかを用いて、関連する疾患または腫瘍を検出する。特定の態様では、本方法は、(vi)画像を、正常組織、病変組織、腫瘍組織、良好な予後に関連する腫瘍組織、または不良な予後に関連する腫瘍組織、または治療前または治療後あるいは治療中の腫瘍組織から得られた1つまたは複数の対照画像または所定の画像と比較し、それにより、腫瘍の存在または腫瘍の予後を判定する工程をさらに含む。本明細書に記載の本発明の局面のいずれかの特定の態様では、画像化は、1つまたは複数の検出可能なマーカーの量を定量することを含む。
発現レベルの変化、例えばmRNAまたはコードされたタンパク質の発現の変化を示す多数の遺伝子が、当技術分野で公知である。このような遺伝子およびそれらの癌関連発現パターンを記載する多数のデータベースが公知であり、当技術分野で利用可能である。これらには、様々なヒトの癌および正常組織全体にわたる遺伝子発現パターンを提供する、ウェブでアクセス可能なデータベースであるGENT、および多数の異なる腫瘍型ならびに腫瘍関連変異における様々な遺伝子の発現レベルの情報を提供するCancer Genome Atlas(TCGA)が含まれる。
使用することができるいくつかの癌または腫瘍関連バイオマーカーは、米国特許第2015/0301055号に記載されるもの、および米国特許第6,692,916号、第6,960,439号、第6,964,850号、第7,074,586号;米国特許出願公開第11/159,376号、第11/804,175号、12/5,94128号、12/514,686号、第12/514,775号、第12/594,675号、第12/594,911号、第12/594,679号、第12/741,787号、12/312,390号;および国際PCT特許出願PCT/US2009/049935、PCT/US2009/063138、PCT/US2010/000037に開示されるような癌の診断、予後、およびセラノスティクスに関連するものを含む;その特許または出願の各々は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。癌のような疾患のバイオマーカーのさらなる例、およびそれらを検出するために使用できる作用物質ならびに癌に関連する転座が、図19に提示されている。これらのバイオマーカーのいずれかを、本発明の方法に従って検出および/または定量することができる。さらに、使用できる特定のマーカーは実施例1に記載されている。特定の態様では、乳癌は、浸潤性乳管癌、非浸潤性コメド乳癌である。これらのタイプの乳癌のマーカーは、ER、PRおよび/またはHER2/neuを含み得る。特定の態様では、サンプルは、癌、例えば乳癌と診断された患者のリンパ節であり得、いくつかの態様において、マーカーはCD-31である。
乳癌特異的バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多い)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。乳癌の過剰発現されたmiRバイオマーカーは、miR-21、miR-155、miR-206、miR-122a、miR-210、miR-21、miR-155、miR-206、miR-122a、miR-210、もしくはmiR-21、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。乳癌の過少発現されたmiRバイオマーカーは、let-7、miR-10b、miR-125a、miR-125b、miR-145、miR-143、miR-145、miR-16またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。分析され得る乳癌のmRNバイオマーカーは、ER、PR、HER2、MUC1、もしくはEGFR、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけではない。KRAS、B-Raf、もしくはCYP2D6、またはそれらの任意の組み合わせに関連する突然変異を含むがそれらに限定されない突然変異も、乳癌のための特異的バイオマーカーとして使用することができる。さらに、乳癌に特異的なタンパク質、リガンドまたはペプチドバイオマーカーは、hsp70、MART-1、TRP、HER2、hsp70、MART-1、TRP、HER2、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、クラスIIIb-チューブリン、またはVEGFA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけではない。さらに、乳癌のバイオマーカーとして使用することができるsnoRNAには、GAS5が含まれるが、それに限定されるわけではない。遺伝子融合ETV6-NTRK3も、乳癌のバイオマーカーとして使用することができる。別の乳癌特異的バイオマーカーはETV6-NTRK3である。
乳癌を評価するために本発明の方法で使用されるバイオマーカーは、BCA-225、hsp70、MART1、ER、VEGFA、クラスIIIb-チューブリン、HER2/neu(例えば、Her2+乳癌の場合)、GPR30、ErbB4、(JM)アイソフォーム、MPR8、MISIIR、CD9、EphA2、EGFR、B7H3、PSM、PCSA、CD63、STEAP、CD81、ICAM1、A33、DR3、CD66e、MFG-E8、TROP-2、Mammaglobin、Hepsin、NPGP/NPFF2、PSCA、5T4、NGAL、EpCam、ニューロキニン受容体-1(NK-1またはNK-1R)、NK-2、Pai-1、CD45、CD10、HER2/ERBB2、AGTR1、NPY1R、MUC1、ESA、CD133、GPR30、BCA225、CD24、CA15.3(MUC1分泌)、CA27.29(MUC1分泌)、NMDAR1、NMDAR2、MAGEA、CTAG1B、NY-ESO-1、SPB、SPC、NSE、PGP9.5、プロゲステロンレセプター(PR)またはそのアイソフォーム(PR(A)またはPR(B))、P2RX7、NDUFB7、NSE、GAL3、オステオポンチン、CHI3L1、IC3b、メソセリン、SPA、AQP5、GPCR、hCEA-CAM、PTP IA-2、CABYR、TMEM211、ADAM28、UNC93A、MUC17、MUC2、IL10R-β、BCMA、HVEM/TNFRSF14、Trappin-2、Elafin、ST2/IL1R4、TNFRF14、CEACAM1、TPA1、LAMP、WF、WH1000、PECAM、BSA、TNFR、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない。乳癌細胞に由来する小胞を評価するために、1つまたは複数の抗原CD9、MIS Rii、ER、CD63、MUC1、HER3、STAT3、VEGF A、BCA、CA125、CD24、EPCAMおよびERB B4を使用することができる。特定の態様では、マーカーはエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)またはHER2/neuである。マーカーに結合する抗体は、市販されているか、当技術分野で実施される日常的な方法を用いて産生され得る。例示的な抗体を表3に記載する。
卵巣癌特異的バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、本発明の方法は、限定されることなく、miR-200a、miR-141、miR-200c、miR-200b、miR-21、miR-141、miR-200a、miR-200b、miR-200c、miR-203、miR-205、miR-214、miR-1 99*、もしくはmiR-215、またはそれらの任意の組み合わせなどの、1つまたは複数の卵巣癌過剰発現miRを検出するために使用できる。バイオシグナチャはまた、限定されることなく、miR-199a、miR-140、miR-145、miR-100、miR-let-7クラスター、またはmiR-125b-1、またはそれらの任意の組み合わせなどの、1つまたは複数の卵巣癌過小発現miRを含むことができる。分析され得る1つまたは複数のmRNAは、ERCC1、ER、TOPO1、TOP2A、AR、PTEN、HER2/neu、CD24またはEGFR、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない。
使用できる卵巣癌の他のバイオマーカーには、KRASの突然変異、B-Raf、BRCA1およびBRCA2の突然変異、または卵巣癌に特異的な突然変異の任意の組み合わせが含まれるが、それに限定されるわけではない。評価され得るタンパク質、リガンド、またはペプチドは、VEGF A、VEGFR2、もしくはHER2、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけではない。別の卵巣癌特異的バイオマーカーはCD24である。
肺癌特異的バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。マーカーは、miR-21、miR-205、miR-221(保護)、let-7a(保護)、miR-137(危険)、miR-372(危険)、またはmiR-122a(危険)、またはそれらの任意の組み合わせなどがあるが、それらに限定されるわけではない、1つまたは複数の肺癌の過剰発現されたmiRを含み得る。それらは、miR-17-92、miR-19a、miR-21、miR-92、miR-155、miR-191、miR-205またはmiR-210のような1つまたは複数の肺癌アップレギュレートまたは過剰発現miRNA; miR-let-7などの1つまたは複数の肺癌ダウンレギュレートまたは過小発現されたmiRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。1つまたは複数のバイオマーカーは、小細胞肺癌などのmiR-92a-2*、miR-147、miR-574-5pであり得る。分析され得る肺癌の1つまたは複数のmRNAバイオマーカーは、EGFR、PTEN、RRM1、RRM2、ABCB1、ABCG2、LRP、VEGFR2、VEGFR3、クラスIIIb-チューブリン、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない。特定の態様では、肺癌は肺腺癌であり、マーカーはCD-31であり得る。
評価され得る肺癌のバイオマーカー突然変異には、EGFR、KRAS、B-Raf、UGT1A1の突然変異、またはALK、ROSもしくはRET遺伝子における再編成、または肺癌に特異的な突然変異の任意の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。評価され得るタンパク質、リガンドまたはペプチドは、KRAS、hENT1、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけではない。肺癌バイオマーカーは、ミッドカイン(MKまたはMDK)であってもよい。いくつかの態様において、肺癌バイオマーカーは、正常な場合と比較して肺癌サンプルにおいて過剰発現され得る、SPB、SPC、PSP9.5、NDUFB7、gal3-b2c10、iC3b、MUC1、TS、ERCC1、GPCR、CABYRおよびmuc17の1つまたは複数を含む。他の肺癌特異的バイオマーカー、例えばRLF-MYCL1、TGF-ALK、またはCD74-ROS1を使用してもよい。
結腸癌特異的バイオマーカーは、図6に列挙されているような、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができ、結腸癌特異的バイオシグナチャを作製するために使用することができる。例えば、それらはmiR-24-1、miR-29b-2、miR-20a、miR-10a、miR-32、miR-203、miR-106a、miR-17-5p、miR-30c、miR-223、miR-126、miR-128b、miR-21、miR-24-2、miR-99b、miR-155、miR-213、miR-150、miR-107、miR-191、miR-221、miR-20a、miR-510、miR-92、miR-513、miR-19a、miR-21、miR-20、miR-183、miR-96、miR-135b、miR-31、miR-21、miR-92、miR-222、miR-181b、miR-210、miR-20a、miR-106a、miR-93、miR-335、miR-338、miR-133b、miR-346、miR-106b、miR-153a、miR-219、miR-34a、miR-99b、miR-185、miR-223、miR-211、miR-135a、miR-127、miR-203、miR-212、miR-95、またはmiR-17-5p、またはそれらの任意の組み合わせなどの1つまたは複数の結腸癌過剰発現miRを含むことができるが、それらに限定されるわけではない。バイオシグナチャはまた、miR-143、miR-145、miR-143、miR-126、miR-34b、miR-34c、let-7、miR-9-3、miR-34a、miR-145、miR-455、miR-484、miR-101、miR-145、miR-133b、miR-129、miR-124a、miR-30-3p、miR-328、miR-106a、miR-17-5p、miR-342、miR-192、miR-1、miR-34b、miR-215、miR-192、miR-301、miR-324-5p、miR-30a-3p、miR-34c、miR-331、miR-548c-5p、miR-362-3p、miR-422a、またはmiR-148b、またはそれらの任意の組み合わせなどの1つまたは複数の結腸癌過少発現miRを含むことができる。1つまたは複数の結腸癌バイオマーカーは、結腸腺癌を特徴付けるための、miR-20a、miR-21、miR-106a、miR-181bまたはmiR-203などのアップレギュレートまたは過剰発現miRNAであり得る。1つまたは複数のバイオマーカーは、miR-19a、miR-21、miR-127、miR-31、miR-96、miR-135bおよびmiR-183からなる群より選択されるアップレギュレートまたは過剰発現miRNA、miR-30c、miR-133a、mir143、miR-133bまたはmiR-145などのダウンレギュレートまたは過小発現miRNA、またはそれらの任意の組み合わせなどであり、結腸直腸癌を特徴付けるために使用できる。1つまたは複数のバイオマーカーは、miR-548c-5p、miR-362-3p、miR-422a、miR-597、miR-429、miR-200a、およびmiR-200bからなる群より選択されるアップレギュレートまたは過剰発現miRNA、またはそれらの任意の組み合わせなどであり、結腸直腸癌を特徴付けるために使用できる。
分析され得る1つまたは複数の結腸癌mRNAは、EFNB1、ERCC1、HER2、VEGF、またはEGFR、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけではない。評価され得る結腸癌のバイオマーカー突然変異には、EGFR、KRAS、VEGF A、B-Raf、APC、またはp53の突然変異、または結腸癌に特異的な突然変異の任意の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。評価することができるタンパク質、リガンド、またはペプチドには、AFR、Rabs、AD AM10、CD44、NG2、エフリン-B1、MIF、b-カテニン、ジャンクション、プラコグロビン、ガレクチン-4、RACK1、テトラスパニン(tetrspanin)-8、FasL、TRAIL、A33、CEA、EGFR、ジペプチダーゼ1、hsc-70、テトラスパニン、ESCRT、TS、PTEN、またはTOPO1、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができるが、それらに限定されるわけではない。
膀胱癌のバイオマーカーは、本発明の方法による膀胱癌の評価に使用することができる。バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。膀胱癌のバイオマーカーは、非限定的に、miR-223、miR-26b、miR-221、miR-103-1、miR-185、miR-23b、miR-203、miR-17-5p、miR-23a、miR-205の1つまたは複数、またはそれらの任意の組み合わせを含む。さらに、膀胱癌のバイオマーカーは、FGFR3、EGFR、pRB(網膜芽細胞腫タンパク質)、5T4、p53、Ki-67、VEGF、CK20、COX2、p21、サイクリンD1、p14、p15、p16、Her-2、MAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)、Bax/Bcl-2、PI3K(ホスホイノシチド-3-キナーゼ)、CDK(サイクリン依存性キナーゼ)、CD40、TSP-1、HAアーゼ、テロメラーゼ、サバイビン、NMP22、TNF、サイクリンE1、p27、カスパーゼ、サバイビン、NMP22(核マトリックスタンパク質22)、BCLA-4、サイトケラチン(8、18、19および20)、CYFRA21-1、IL-2および補体因子H関連タンパク質を含む。一態様では、非受容体チロシンキナーゼETK/BMXおよび/または炭酸脱水酵素IXは、診断、予後および治療目的のための膀胱癌のマーカーとして使用される。
小胞由来の前立腺癌特異的バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、前立腺癌のバイオマーカーは、miR-9、miR-21、miR-141、miR-370、miR-200b、miR-210、miR-155、またはmiR-196aを含み得る。いくつかの態様では、バイオマーカーは、miR-202、miR-210、miR-296、miR-320、miR-370、miR-373、miR-498、miR-503、miR-184、miR-198、miR-302c、miR-345、miR-491、miR-513、miR-32、miR-182、miR-31、miR-26a-1/2、miR-200c、miR-375、miR-196a-1/2、miR-370、miR-425、miR-425、miR-194-1/2、miR-181a-1/2、miR-34b、let-7i、miR-188、miR-25、miR-106b、miR-449、miR-99b、miR-93、miR-92-1/2、miR-125a、miR-141、miR-29a、miR-145またはそれらの組み合わせなどがあるが、それらに限定されるわけではない、1つまたは複数の前立腺癌過剰発現miRである。いくつかの態様では、バイオマーカーは、miR-29aおよび/またはmiR-145を含む前立腺癌で過剰発現する1つまたは複数のmiRを含む。いくつかの態様では、バイオマーカーは、hsa-miR-1974、hsa-miR-27b、hsa-miR-103、hsa-miR-146a、hsa-miR-22、hsa-miR-382、hsa-miR-23a、hsa-miR-376c、hsa-miR-335、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-221、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-151-3pおよびhsa-miR-21、またはmiR-141、またはそれらの任意の組み合わせを含む、前立腺癌で過剰発現する1つまたは複数のmiRを含む。前立腺癌バイオマーカーはまた、非限定的に、let-7a、let-7b、let-7c、let-7d、let-7g、miR-16、miR-23a、miR-23b、miR-26a、miR-92、miR-99a、miR-103、miR-125a、miR-125b、miR-143、miR-145、miR-195、miR-199、miR-221、miR-222、miR-497、let-7f、miR-19b、miR-22、miR-26b、miR-27a、miR-27b、miR-29a、miR-29b、miR-305p、miR-30c、miR-100、miR-141、miR-148a、miR-205、miR-520h、miR-494、miR-490、miR-133a-1、miR-1-2、miR-218-2、miR-220、miR-128a、miR-221、miR-499、miR-329、miR-340、miR-345、miR-410、miR-126、miR-205、miR-7-1/2、miR-145、miR-34a、miR-487、またはlet-7b、またはそれらの任意の組み合わせなどの1つまたは複数の過小発現miRを含むことができる。前立腺癌バイオマーカーは、アップレギュレートまたは過剰発現されたmiR-21、ダウンレギュレートまたは過小発現されたmiR-15a、miR-16-1、miR-143またはmiR-145、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
分析され得る1つまたは複数の前立腺癌バイオマーカーmRNAは、AR、PC A3、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけではなく、前立腺癌の特異的バイオマーカーとして使用できる。
前立腺癌バイオマーカーとして評価され得るタンパク質、リガンド、またはペプチドは、FASLGまたはHSP60、PSMA、PCS A、アンドロゲン受容体(AR)、TNF SF 10、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけではない。さらに、前立腺癌のバイオマーカーとして使用することができるsnoRNAは、U50を含み得るが、それに限定されるわけではない。
追加の前立腺癌特異的バイオマーカーは、ACSL3-ETV1、C150RF21-ETV1、F1135294-ETV1、HERV-ETV1、TMPRSS2-ERG、TMPRSS2-ETV1/4/5、TMPRSS2-ETV4/5、SLC5A3-ERG、SLC5A3-ETV1、SLC5A3-ETV5またはKLK2-ETVを含む。
黒色腫特異的バイオマーカーは、図19に列挙されているような、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができ、黒色腫特異的バイオシグナチャを作製するために使用することができる。例えば、バイオマーカーは、限定されることなく、miR-19a、miR-144、miR-200c、miR-211、miR-324-5p、miR-331、またはmiR-374などの1つまたは複数の過剰発現されたmiR、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。バイオマーカーはまた、限定されることなく、miR-9、miR-15a、miR-17-3p、miR-23b、miR-27a、miR-28、miR-29b、miR-30b、miR-31、miR-34b、miR-34c、miR-95、miR-96、miR-100、miR-104、miR-105、miR-106a、miR-107、miR-122a、miR-124a、miR-125b、miR-127、miR-128a、miR-128b、miR-129、miR-135a、miR-135b、miR-137、miR-138、miR-139、miR-140、miR-141、miR-145、miR-149、miR-154、miR-154#3、miR-181a、miR-182、miR-183、miR-184、miR-185、miR-189、miR-190、miR-199、miR-199b、miR-200a、miR-200b、miR-204、miR-213、miR-215、miR-216、miR-219、miR-222、miR-224、miR-299、miR-302a、miR-302b、miR-302c、miR-302d、miR-323、miR-325、let-7a、let-7b、let-7d、let-7e、またはlet-7gなどの1つまたは複数の過小発現されたmiR、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
分析され得る1つ以上のmRNAは、MUM-1、β-カテニン、またはNop/5/Sikまたはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけではなく、黒色腫の特異的バイオマーカーとして使用できる。
評価され得る黒色腫のバイオマーカー突然変異には、CDK4の突然変異、または黒色腫に特異的な突然変異の任意の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
評価され得る黒色腫のタンパク質、リガンド、またはペプチドバイオマーカーは、DUSP-1、Alix、hsp70、Gib2、Gia、モエシン、GAPDH、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、p120カテニン、PGRL、シンタキシン結合タンパク質1&2、セプチン-2、またはWDリピート含有タンパク質1、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけではない。黒色腫のバイオマーカーとして使用することができるsnoRNAには、H/ACA(U107f)、SNORA11D、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
また、黒色腫に関連するバイオマーカーは、HSPA8、CD63、ACTB、GAPDH、ANXA2、CD81、ENO1、PDCD6IP、SDCBP、EZR、MSN、YWHAE、ACTG1、ANXA6、LAMP2、TPI1、ANXA5、GDI2、GSTP1、HSPA1A、HSPA1B、LDHB、LAMP1、EEF2、RAB5B、RDX、GNB1、KRT10、MDH1、STXBP2、RAN、ACLY、CAPZB、GNA11、IGSF8、WDR1、CAV1、CTNND1、PGAM1、AKR1B1、EGFR、MLANA、MCAM、PPP1CA、STXBP1、TGFB1、SEPT2、およびTSNAXIP1を含む。これらのマーカーの1つまたは複数を評価して、黒色腫を特徴付けることができる。
膵臓癌特異的バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、バイオマーカーは、限定されることなく、miR-221、miR-181a、miR-155、miR-210、miR-213、miR-181b、miR-222、miR-181b-2、miR-21、miR-181b-1、miR-220、miR-181d、miR-223、miR-100-1/2、miR-125a、miR-143、miR-10a、miR-146、miR-99、miR-100、miR-199α-1、miR-10b、miR-199a-2、miR-221、miR-181a、miR-155、miR-210、miR-213、miR-181b、miR-222、miR-181b-2、miR-21、miR-181b-1、miR-181c、miR-220、miR-181d、miR-223、miR-100-1/2、miR-125a、miR-143、miR-10a、miR-146、miR-99、miR-100、miR-199α-1、miR-10b、miR-199a-2、miR-107、miR-103、miR-103-2、miR-125b-1、miR-205、miR-23a、miR-221、miR-424、miR-301、miR-100、miR-376a、miR-125b-1、miR-21、miR-16-1、miR-181a、miR-181c、miR-92、miR-15、miR-155、let-7f-1、miR-212、miR-107、miR-024-1/2、miR-18a、miR-31、miR-93、miR-224、またはlet-7dなどの1つまたは複数の過剰発現miR、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
バイオマーカーは、限定されることなく、miR-148a、miR-148b、miR-375、miR-345、miR-142、miR-133a、miR-216、miR-217、またはmiR-139のような1つまたは複数の過小発現されたmiR、またはそれらの任意の組み合わせを含むこともできる。分析され得る1つまたは複数のmRNAは、PSCA、メソセリンまたはオステオポンチン、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけではなく、膵臓癌の特異的バイオマーカーとして使用できる。
評価され得る膵臓癌のバイオマーカー突然変異には、KRAS、CTNNLB1、AKT、NCOA3、B-RAF、またはEGFRの突然変異、または膵臓癌に特異的な突然変異の任意の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。バイオマーカーは、BRCA2、PALB2、またはp16でもよい。
脳癌(神経膠腫、神経膠芽腫、髄膜腫、聴神経腫瘍/神経鞘腫、髄芽腫を含むが、それらに限定されるわけではない)特異的バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。例えば、バイオマーカーは、限定されることなく、miR-21、miR-10b、miR-130a、miR-221、miR-125b-1、miR-125b-2、miR-9-2、miR-21、miR-25、またはmiR-123などの1つまたは複数の過剰発現されたmiR、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。バイオマーカーは、限定されることなく、miR-128a、miR-181c、miR-181a、またはmiR-181bのような1つまたは複数の過小発現されたmiR、またはそれらの任意の組み合わせを含むこともできる。
分析され得る1つまたは複数のmRNAには、脳癌のための特異的バイオマーカーとして使用できるMGMTが含まれるが、それに限定されるわけではない。小胞において評価され得るタンパク質、リガンド、またはペプチドは、EGFRを含み得るが、それに限定されるわけではない。
肝臓癌特異的バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、バイオマーカーは、限定されることなく、miR-221のような1つまたは複数の過剰発現されたmiRを含むことができる。バイオシグナチャはまた、限定されるものではないが、let-7a-1、let-7a-2、let-7a-3、let-7b、let-7c、let-7d、let-7e、let-7f-2、let-fg、miR-122a、miR-124a-2、miR-130a、miR-132、miR-136、miR-141、miR-142、miR-143、miR-145、miR-146、miR-150、miR-155(BIC)、miR-181a-1、miR-181a-2、miR-181c、miR-195、miR-199a-1-5p、miR-199a-2-5p、miR-199b、miR-200b、miR-214、miR-223、またはpre-miR-594のような1つまたは複数の過小発現されたmiR、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。分析され得る1つまたは複数のmRNAには、FAT10が含まれ得るが、それに限定されるわけではない。
1つまたは複数のバイオマーカーはまた、C型肝炎ウイルス関連肝細胞癌を特徴付けるために使用できる。1つまたは複数のバイオマーカーは、過剰発現または過小発現miRNAなどのmiRNAであり得る。例えば、アップレギュレートまたは過剰発現されたmiRNAは、miR-122、miR-100、またはmiR-10aであり得、ダウンレギュレートされたmiRNAは、miR-198またはmiR-145であり得る。
子宮頸癌特異的バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、分析され得る1つまたは複数のmRNAは、HPV E6、HPV E7、またはp53、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけではなく、小胞由来の子宮頸癌特異的バイオマーカーとして使用できる。
子宮内膜癌特異的バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、バイオマーカーは、限定されることなく、miR-185、miR-106a、miR-181a、miR-210、miR-423、miR-103、miR-107、またはlet-7cなどの1つまたは複数の過剰発現されたmiR、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。バイオシグナチャはまた、限定されることなく、miR-7i、miR-221、miR-193、miR-152、またはmiR-30c、またはそれらの任意の組み合わせなどの1つまたは複数の過小発現miRを含むことができる。
評価され得る子宮内膜癌のバイオマーカー突然変異には、PTEN、K-RAS、B-カテニン、p53、Her2/neuの突然変異、または子宮内膜癌に特異的な突然変異の任意の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。評価され得るタンパク質、リガンドまたはペプチドは、NLRP7、αVβ6インテグリン、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。
頭頸部癌特異的バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、バイオマーカーは、限定されることなく、miR-21、let-7、miR-18、miR-29c、miR-142-3p、miR-155、miR-146b、miR-205、またはmiR-21などの1つまたは複数の過剰発現されたmiR、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。バイオシグナチャはまた、限定されることなく、miR-494などの1つまたは複数の過小発現miRを含むことができる。分析され得る1つまたは複数のmRNAは、HPV E6、HPV E7、p53、IL-8、SAT、H3FA3、またはEGFR、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではなく、小胞由来の頭頸部癌特異的バイオマーカーとして使用できる。
評価され得る頭頸部癌のバイオマーカー突然変異には、GSTM1、GSTT1、GSTP1、OGG1、XRCC1、XPD、RAD51、EGFR、p53の突然変異、または頭頸部癌に特異的な突然変異の任意の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。評価され得るタンパク質、リガンドまたはペプチドは、EGFR、EphB4、またはEphB2、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。CHCHD7-PLAG1、CTNNB1-PLAG1、FHIT-HMGA2、HMGA2-NFIB、LIFR-PLAG1、またはTCEA1-PLAG1などの、頭頸部癌に特異的な他のバイオマーカーを使用することができる。
GIST特異的バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、分析され得る1つまたは複数のmRNAは、DOG-1、PKC-θ、KIT、GPR20、PRKCQ、KCNK3、KCNH2、SCG2、TNFRSF6B、またはCD34、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけではなく、GIST特異的バイオマーカーとして使用できる。
評価され得るGISTのバイオマーカー突然変異には、PKC-θの突然変異またはGISTに特異的な突然変異の任意の組み合わせが含まれるが、それに限定されるわけではない。評価され得るタンパク質、リガンド、またはペプチドは、PDGFRA、c-kit、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけではない。
腎細胞癌(RC)特異的バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、バイオマーカーは、限定されることなく、miR-141、miR-200c、またはそれらの任意の組み合わせなどの1つまたは複数の過小発現されたmiRを含むこともできる。1つまたは複数のアップレギュレートまたは過剰発現されたmiRNAは、miR-28、miR-185、miR-27、miR-let-7f-2、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
分析され得る1つまたは複数のmRNAは、ラミニン受容体1、βig-h3、ガレクチン-1、a2マクログロブリン、アディポフィリン、アンジオポエチン2、カルデスモン1、クラスII MHC関連不変鎖(CD74)、コラーゲンIV-a1、補体成分、補体成分3、シトクロムP450、サブファミリーIllポリペプチド2、デルタ睡眠誘発ペプチド、Fc g受容体Ma(CD16)、HLA-B、HLA-DRa、HLA-DRb、HLA-SB、IFN誘導性膜タンパク質3、IFN誘導性膜貫通タンパク質1、またはリジルオキシダーゼ、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけではなく、腎細胞癌のための特異的バイオマーカーとして使用することができる。
評価され得る腎細胞癌のバイオマーカー突然変異には、VHLの突然変異、または腎細胞癌に特異的な突然変異の任意の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
評価され得る腎細胞癌のタンパク質、リガンド、またはペプチドバイオマーカーは、IF1α、VEGF、PDGFRA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、それらに限定されるわけでない。他のRCC特異的バイオマーカーには、ALPHA-TFEB、NONO-TFE3、PRCC-TFE3、SFPQ-TFE3、CLTC-TFE3、またはMALAT1-TFEBが含まれる。
食道癌特異的バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、バイオマーカーは、限定されることなく、miR-192、miR-194、miR-21、miR-200c、miR-93、miR-342、miR-152、miR-93、miR-25、miR-424、またはmiR-151などの1つまたは複数の過剰発現されたmiR、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。また、バイオシグナチャは、限定されることなく、miR-27b、miR-205、miR-203、miR-342、let-7c、miR-125b、miR-100、miR-152、miR-192、miR-194、miR-27b、miR-205、miR-203、miR-200c、miR-99a、miR-29c、miR-140、miR-103、またはmiR-107、またはそれらの任意の組み合わせのような1つまたは複数の過小発現したmiRを含むことができる。分析され得る1つまたは複数のmRNAは、MTHFRが含まれるが、それに限定されるわけではなく、食道癌のための特異的バイオマーカーとして使用できる。
胃癌特異的バイオマーカーは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの)過剰発現されたmiR、過少発現されたmiR、mRNA、遺伝子変異、タンパク質、リガンド、ペプチド、snoRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、バイオシグナチャは、限定されることなく、miR-106a、miR-21、miR-191、miR-223、miR-24-1、miR-24-2、miR-107、miR-92-2、miR-214、miR-25、またはmiR-221などの1つまたは複数の過剰発現されたmiR、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。バイオシグナチャはまた、限定されることなく、let-7aなどの1つまたは複数の過小発現miRを含むことができる。
分析され得る1つまたは複数のmRNAは、RRM2、EphA4、またはサバイビン、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではなく、小胞由来の胃癌特異的バイオマーカーとして使用できる。評価され得る胃癌のバイオマーカー突然変異には、APCの突然変異、または胃癌に特異的な突然変異の任意の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。評価され得るタンパク質、リガンド、またはペプチドは、EphA4を含み得るが、それに限定されるわけではない。
甲状腺癌特異的バイオマーカーは、限定されることなく、甲状腺乳頭癌の特徴であるAKAP9-BRAF、CCDC6-RET、ERC1-RETM、GOLGA5-RET、HOOK3-RET、HRH4-RET、KTN1-RET、NCOA4-RET、PCM1-RET、PRKARA1A-RET、RFG-RET、RFG9-RET、Ria-RET、TGF-NTRK1、TPM3-NTRK1、TPM3-TPR、TPR-MET、TPR-NTRK1、TRIM24-RET、TRIM27-RET、またはTRIM33-RET;または濾胞性甲状腺癌の特徴であるPAX8-PPARyを含む。
特定の方法で、疾患、例えば、腫瘍に関連する遺伝子における突然変異の存在を判定する。特定の態様では、突然変異は転座、再編成、または遺伝子増幅である。他の態様では、突然変異は、スプライス突然変異体、または切断または修飾されたコードされたポリペプチド遺伝子産物を生じる。特定の態様では、突然変異は、少なくとも1つのヌクレオチド挿入、欠失または置換を含む。特定の態様では、コードされたポリペプチド遺伝子産物は、アミノ酸の挿入、欠失または置換を含む。判定され得る突然変異は、本明細書に記載される突然変異のいずれかを含むが、それに限定されるわけではない。本発明の方法に従って検出することができる固形腫瘍に関連する突然変異またはゲノム改変のさらなる例は、ABL1、AKT1、AKT2、AKT3、ALK、APC、AR、ARAF、BAP1、BCL2L11、BRAF、BRCA1、BRCA2、BTK、CBL、CCND1、CCNE1、CDH1、CDK2、CDK4、CDK6、CDKN1B、CDKN2A、CSF1R、CTCF、CTNNB1、DDR2、DDX3X、EGFR、EPHA2、ERBB2、ERBB3、ERBB4、ESR1、ETV6、FBXW7、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FLT1(VEGFR1)、FLT3、FOXO1、GATA3、GNA11、GNAQ、GNAS、HIF1A、HNF1A、HRAS、IDH1、IDH2、IGF1R、JAK1、JAK2、JAK3、KDR、KEAP1、KIT、KMT2A/MLL、KRAS、MAP2K1、MAP2K2、MAP2K4、MAP3K1、MAP3K9、MAPK1、MCL1、MDM2、MED12、MET、MITF、MTOR、MYC、NF1、NKX2-1、NOTCH1、NOTCH2、NRAS、NTRKl、PALB2、PBRMl、PDGFRa、PDGFRb、PIK3CA、PIK3CD、PIK3R1、PTCH1、PTEN、PTPN11、RB1、RET、RHEB、RHOA、RICTOR、RIT1、ROS1、RUNX1、SMAD4、SMARCB1、SMO、SPEN、SPOP、SRC、STK11、SYK、TP53、TSC1、TSC2、およびVHLの突然変異を含むが、それらに限定されるわけではない。黒色腫に関連する突然変異遺伝子は、BRAF、CTNNB1、GNA11、GNAQ、KIT、MEK1、NF1およびNRASを含むが、それらに限定されるわけではない。非小細胞肺癌に関連する変異または改変(例えば、再編成または増幅)遺伝子は、AKT1(突然変異)、ALK(再編成)、BRAF(突然変異)、DDR2(突然変異)、EGFR(突然変異)、FGFR1(増幅)、HER2(突然変異)、KRAS(突然変異)、MEK1(突然変異)、METa(増幅)、NRAS(突然変異)、PIK3CA(突然変異)、PTEN(突然変異)、RET(再編成)およびROS1a(再編成)を含むが、それらに限定されるものではない 。卵巣癌に関連する変異または改変(例えば、再編成または増幅)遺伝子は、BRAF、KRAS、PIK3CA、およびPTENを含むが、それらに限定されるわけではない。結腸直腸癌に関連する突然変異または改変(例えば、再編成または増幅)遺伝子は、AKT1、BRAF、KRAS、NRAS、PIK3CA、PTENおよびSMAD4を含むが、それらに限定されるわけではない。
特定の態様では、本発明は、対象由来の組織サンプルの遺伝子または対立遺伝子における突然変異の存在を判定する方法を含み、それは、(i)ヒドロゲルサブユニットの存在下で組織サンプルを固定する工程;(ii)ヒドロゲルサブユニットを重合させてヒドロゲル包埋サンプルを形成する工程;(iii)ヒドロゲル包埋サンプルを透明化する工程;(iv)処理されたサンプルの少なくとも1つの画像を生成するために、処理されたサンプルを画像化する工程、によって、対象から得られた組織サンプルを処理することによる。特定の態様では、この方法は、(v)透明化されたヒドロゲル包埋サンプルを1つまたは複数の第1の検出可能なマーカーで標識する工程をさらに含む。特定の態様では、組織サンプルは腫瘍組織サンプルである。特定の態様では、その存在または量が、癌または腫瘍などの疾患の存在または非存在、腫瘍の転移、または治療に対する癌幹細胞などの腫瘍の耐性を示す遺伝子突然変異に、検出可能なマーカーが結合する。特定の態様では、本明細書に記載の突然変異のいずれかが、関連する疾患または腫瘍を同定するために検出される。特定の態様では、本方法は、(vi)画像を、正常組織、病変組織、腫瘍組織、良好な予後に関連する腫瘍組織、または不良な予後または転移に関連する腫瘍組織から得られた1つまたは複数の対照画像または所定の画像、または遺伝子突然変異の存在または非存在、または治療応答の予測と比較し、それにより、腫瘍の存在、転移の可能性または腫瘍の予後を判定する工程をさらに含む。
本発明の局面は、疾患に関連し得る任意の1つまたは複数の関心対象の座における遺伝子異常の存在を検出するために使用できる。例えば、腫瘍、癌、前癌または任意の他の疾患または障害に関連する1つまたは複数の異なる遺伝子座を、本発明の方法に従ってアッセイすることができる。標的核酸の例は、1つまたは複数の癌遺伝子、腫瘍サプレッサー遺伝子、核酸反復を含むゲノム領域(例えば、マイクロDNAまたはミニサテライトDNAのような異なる形態のサテライトDNA)、他の遺伝子座(コードまたは非コード遺伝子座)、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されるものではない。示差的発現、転座、再編成などを示す遺伝子、miRNAなどの例を図19に提示する。
本発明の特定の態様では、突然変異の存在または非存在は、癌の発症に関連するリスク、癌の早期検出、および最終的には癌の予後および治療を示すことができる。これらの突然変異は、以下の遺伝子:MSH2、MSH6、MLH1、PMS2、BUB1、BUBR1、MRE11、CDC4、APC、β-カテニン、TGF-β、SMAD4、p21Waft、14-3-3σ、PUMA、BAX、PRL-3、およびPIK3CAを含むが、それらに限定されるものではない。これらの遺伝子は新生物形成プロセスの異なる段階に関与し、したがって、腫瘍発生、進行または再発を検出またはモニターするために選択的に使用できることが理解される。例えば、APC/β-カテニン経路の突然変異は新生物形成プロセスを開始する。これらの遺伝子における突然変異の検出は、癌のリスクの評価に非常に有用である。APC/β-カテニン遺伝子において同定された突然変異を有する患者は、腫瘍を発症するリスクが高い。多くの場合、APC/β-カテニン遺伝子の突然変異は腺腫(小規模の良性腫瘍)をもたらす。他の増殖制御経路の遺伝子の突然変異が蓄積するにつれて、これらの腫瘍は進展し、大きくなり、危険になる。増殖制御経路の遺伝子には、K-Ras、B-RAF、PIK3 CA、またはp53が含まれる。これらの遺伝子における突然変異の検出は、腫瘍の発生の早期検出を導き得る。検出されず未治療(いくつかの状況において)であれば、PIKSCA/PTEN、PUMA、p53/BAX、p21Waf1、14-3-3σ、またはPRL-3のような安定性遺伝子の突然変異によって、新生物形成プロセスが加速され得る。これらの遺伝子産物の多くは、細胞の誕生と細胞周期の遮断、および/または細胞死およびアポトーシスの活性化に機能する。PRL-3およびPIK3CAと類似する他のものは、転移の調節に関与している。これらの遺伝子における突然変異の検出は、特定の癌の臨床予後、特定の癌治療の治療効力を判定するため、および所与の腫瘍の進行または再発をモニターするために重要である。
本発明の方法に従って検出され得る乳癌特異的融合の例は、ETV6-NTRK3を含むが、それに限定されるわけではない。肺癌特異的融合の例は、RLF-MYCL1、TGF-ALK、またはCD74-ROS1を含むが、それらに限定されるわけではない。前立腺癌特異的融合の例は、ACSL3-ETV1、C150RF21-ETV1、F1135294-ETV1、HERV-ETV1、TMPRSS2-ERG、TMPRSS2-ETV1/4/5、TMPRSS2-ETV4/5、SLC5A3-ERG、SLC5A3-ETV1、SLC5A3-ETV5、またはKLK2-ETV4を含むが、それらに限定されるわけではない。脳癌特異的融合の例は、GOPC-ROS1を含むが、それに限定されるわけではない。頭頸部癌特異的融合の例は、CHCHD7-PLAG1、CTNNB1-PLAG1、FHIT-HMGA2、HMGA2-NFIB、LIFR-PLAG1、またはTCEA1-PLAG1を含むが、それらに限定されるわけではない。RCC特異的融合の例は、ALPHA-TFEB、NONO-TFE3、PRCC-TFE3、SFPQ-TFE3、CLTC-TFE3、またはMALAT1-TFEBを含むが、それらに限定されるわけではない。甲状腺癌特異的融合の例は、甲状腺乳頭癌の特徴であるAKAP9-BRAF、CCDC6-RET、ERC1-RETM、GOLGA5-RET、HOOK3-RET、HRH4-RET、KTN1-RET、NCOA4-RET、PCM1-RET、PRKARA1A-RET、RFG-RET、RFG9-RET、Ria-RET、TGF-NTRK1、TPM3-NTRK1、TPM3-TPR、TPR-MET、TPR-NTRK1、TRIM24-RET、TRIM27-RET、またはTRIM33-RET;または濾胞性甲状腺癌の特徴であるPAX8-PPARyを含むが、それらに限定されるわけではない。
D.細胞死またはアポトーシス
癌において、アポトーシスの過程は、自発的に起こり、また抗腫瘍療法によって誘導されて起こる。細胞死と細胞増殖との間のバランスも、悪性腫瘍の進行に関与する。細胞がアポトーシスを起こすことが決定されると、とりわけBAX、BAK、BOKk、Bcl-XSを含むBcl-2/BAXファミリー遺伝子を含むいくつかのプロアポトーシスタンパク質が活性化される。BH3のみのメンバーのような切断型のBAXも、プロアポトーシスであることが公知であり、これらにはBID、BAD、BIK、BIM、NOXA、PUMA(p53アップレギュレートアポトーシス調節因子)などが含まれる。これらのmRNAは、いずれも1つまたは複数の腫瘍型においてアポトーシス応答と関連している。GADD153(増殖停止およびDNA損傷誘導性遺伝子)は、アポトーシスを媒介することが示されている。Apaf-1タンパク質は、ミトコンドリアおよびdATPによって放出されたシトクロムCと相互作用してアポトソーム複合体を形成し、カスパーゼ9を活性化してアポトーシスを引き起こし得る。Apaf-1サイレンシングまたはダウンレギュレーションは、黒色腫および神経膠芽腫に関与している。SUMO-1(低分子ユビキチン様修飾因子)はユビキチンと構造的に関連しているが、タンパク質がSUMOによって修飾されている(SUMO化されている)と、ユビキチン媒介分解から保護される。Bfl-1は、p53媒介アポトーシスを抑制するBcl-2ファミリーのメンバーである。Bfl-1のレベル上昇が癌において見出されている。BCL-Wは抗アポトーシス作用を有するBcl-2ファミリーの別のメンバーである。Bcl-2遺伝子は抗アポトーシス作用を有する。それはカスパーゼ-9およびApaf-1との複合体を形成し、これらのタンパク質がアポトソームを形成し、アポトーシスにつながるプロテアーゼカスケードを開始するのを防ぐ。これは様々な癌に関与している。PUMA(p53アップレギュレーションアポトーシス調節因子、BBC3としても公知である)は、ミトコンドリアのアポトーシス経路を介してアポトーシスを誘導する。NOXA(PMAIP1またはARPとしても公知である)は、成人T細胞白血病で特に発現することが見出されており、カスパーゼ9の活性化およびその後のアポトーシスに関与する細胞の損傷に応答するプロアポトーシス機能を有する。Hrkは、Bcl-2と相互作用するアポトーシスの活性化因子である。それは、星状細胞腫瘍および中枢神経系リンパ腫に関与している。Bimは、ほとんどのBcl-2同族体と短いBH3モチーフを共有している。それはアポトーシスを誘発する。これは、マントル細胞リンパ腫の発生に関与している。BINP3は、悪性神経膠腫に関連しているプロアポトーシス性のBcl-2ファミリーのタンパク質である。Bik(Bcl-2相互作用キラー)タンパク質は、別のプロアポトーシス性のBcl-2ファミリーメンバーである。それは、B細胞リンパ腫および乳癌に関与しており、上皮細胞および肺細胞においても発現が観察されている。Bid(BH3共役ドメインデスアゴニスト)は、骨肉腫および胃癌に関与するプロアポトーシスタンパク質である。Badは、B細胞リンパ腫および結腸癌に関連している別のBcl-2プロアポトーシス性のファミリーのメンバーである。Bcl-XSは、肝細胞癌、乳癌および卵巣癌に関連しているこのファミリーの別のプロアポトーシス性のメンバーである。Bok(Bcl-2関連卵巣キラー)は、卵巣癌に関連している別のBcl-2アポトーシス性のファミリーメンバーである。別のbcl-2相同体であるBakは、アポトーシスの強力なプロモーターであり、胃癌および結腸直腸癌に関与している。Bax(Bcl-2関連Xタンパク質)は、急性および慢性リンパ球性白血病、胃および結腸直腸癌、乳癌および膵臓癌を含む多数の癌に関与するプロアポトーシスタンパク質である。ヒト線維肉腫、肝細胞癌および急性骨髄性白血病において、LRP(肺抵抗タンパク質)の発現が見出されている。MRP遺伝子は、肝細胞癌および結腸直腸癌において発現することが示されている。
特定の態様では、本発明は、組織サンプル、例えば腫瘍組織サンプルにおけるアポトーシスまたは細胞死、またはそのマーカーを検査する方法を含み、それは、(i)ヒドロゲルサブユニットの存在下で組織サンプルを固定する工程;(ii)ヒドロゲルサブユニットを重合させてヒドロゲル包埋サンプルを形成する工程;(iii)ヒドロゲル包埋サンプルを透明化する工程;(iv)処理されたサンプルの少なくとも1つの画像を生成するために、処理されたサンプルを画像化する工程、によって、対象から得られた組織サンプルを処理することを含む。特定の態様では、この方法は、(v)透明化されたヒドロゲル包埋サンプルを1つまたは複数の第1の検出可能なマーカーで標識する工程をさらに含む。特定の態様では、組織サンプルは腫瘍組織サンプルである。特定の態様では、検出可能なマーカーは、その特徴が癌または腫瘍などの疾患の存在または非存在を示すことができるアポトーシスまたは細胞死のマーカーに結合する。特定の態様では、本明細書に記載のアポトーシスまたは細胞死の検出可能マーカーのいずれかを用いて、関連する疾患または腫瘍を検出する。特定の態様では、本方法は、(vi)画像を、正常組織、病変組織、腫瘍組織、良好な予後に関連する腫瘍組織、または不良な予後に関連する腫瘍組織から得られた1つまたは複数の対照画像または所定の画像と比較し、それにより、腫瘍の存在または腫瘍の予後、またはアポトーシスもしくは細胞死の存在または量を判定する工程をさらに含む。
これらおよび他のアポトーシスマーカーの発現レベル、活性、およびパターンは、本発明に従って判定され得る。特定の態様では、p21、GADD、Apaf-1、SUMO、Bfl-1、BCL-W、BCL-2、PUMA、NOXA、Hrk、Bim、BINP3、Bik、Bid、Bad、Bcl-XS、Bok、Bak、Bax、LRP、およびMRPは、本発明の方法に従って検出されたマーカーである。特定の態様では、アポトーシスのレベルの上昇または低下を特徴付けるために使用できるマーカーは、bad、bax、bcl-2、bcl-w、BID、BIM、カスパーゼ3、カスパーゼ8、CD40、CD40リガンド、cIAP-2、チトクロム-C、DR6、Fas、Fasリガンド、HSP27、HSP60、HSP70、HTRA、IGF-1、IGF-2、IGFBP-1、IGFBP-2、IGFBP-3、IGFBP-4、IGFBP-5、IGFBP-6、IGF-1sR、リビン、p21、p27、p53、SMAC、サバイビン、sTNFRI、sTNFRII、TNFα、TNFβ、TRAIL R1、TRAIL R2、TRAIL R3、TRAIL R4、およびXIAPを含むが、それらに限定されるわけではない。
アポトーシス経路に関与する種々のポリペプチド(またはポリヌクレオチド)の発現レベルを判定することができる。一般に、プロアポトーシス性マーカーの量の増加は腫瘍の死または有効な治療に関連し、一方抗アポトーシスマーカーの量の増加は腫瘍の増殖と関連する。生物学的サンプル、例えば腫瘍組織サンプル内のタンパク質またはヌクレオチド発現レベル、またはタンパク質活性レベルは、正常対照、または正常細胞もしくは疾患細胞のいずれかと関連することが公知である所定のレベルと比較することができる。あるいは、またはさらに、生物学的サンプル、例えば腫瘍組織サンプル中のアポトーシスマーカーの量は、同じタイプの腫瘍におけるアポトーシスマーカーの所定の量、位置、および比と比較してもよい。特定の態様では、予測される臨床転帰は、腫瘍組織サンプルのアポトーシスマーカーの量を、例えば、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、治療成功期間(TTF)、無再発生存期間(EPS)、次の治療までの時間(TTNT)、全奏効率(ORR)または奏功期間(DofR)により測定されるような、公知の臨床転帰を有する同種の腫瘍において観察される量と比較することによって、また試験されている腫瘍組織サンプルの予測された臨床転帰を、試験されている腫瘍組織サンプルに最も類似するアポトーシスマーカーの量または場所を有する公知の臨床転帰を有するそれらの腫瘍のものと相関させることによって、判定し得る。
E.腫瘍におけるシグナル伝達経路の活性化
異常なシグナル伝達経路の活性化は癌の特徴である。正常な細胞プロセスを調節するこれらのシグナル伝達経路も、悪性細胞の増殖に寄与し得る。増殖に関与する重要な経路には、PI3K/Akt/mTor、Ras/Raf/MEK、およびWnt/β-カテニン、またはヘッジホッグシグナル伝達経路/patchedシグナル伝達経路が含まれるが、それらに限定されるわけではない。集合的に、癌の増殖を調節することに加えて、これらの経路は、アポトーシス、細胞周期調節、DNA維持、遺伝子転写、生存、代謝、血管新生、創傷の治癒、細胞の移動、および分化を含む、複数の生理学的過程を調節する。これらの経路の刺激は、サイトカイン、生存因子、ケモカイン、死の因子、ホルモン伝達物質、増殖因子、細胞外マトリックス、WNTまたはヘッジホッグを介して行うことができる。これらの経路の活性化は、サイトカイン受容体、受容体チロシンキナーゼ、Gタンパク質共役受容体およびインテグリンを介して行うことができる。これらの経路の活性化は、IL-6、IL2、IGF1、TGFα、EGF、ヘレグリン、EGFR、ERBB2、ERBB3、ERBB4、cMET、IGF1R、FGFR、ER、PR、インテグリンβ、Frizzled、Patched、WNT、ヘッジホッグ、FASR、PI3K、AKT、PKC、PLC、NFkB、JAK、STAT3&5、BCL-XL、カスパーゼ9、カスパーゼ8、FADD、RAS、RAF、MEK、MEKK、MAPK、MKK、FAK、APC、β-カテニン、ARF、ERK、JNK、JUN、FOS、CDK2、p53、p21、p27、p15、p16、SMAD、CDC42などの様々な上流および下流のタンパク質の発現および/またはリン酸化を間接的に測定することによって、判定し得る。さらに、HER2ホモ二量体、HER2/HER3ヘテロ二量体、HER1/HER2ヘテロ二量体などのHERファミリー受容体の可能性のあるホモ二量体/ヘテロ二量体の測定および活性化は、様々な癌を患う患者における治療の診断、予後または予測であり得る。
特定の態様では、本発明は、組織サンプル、例えば腫瘍組織サンプルにおける異常なシグナル伝達経路の存在を判定する方法を含み、それは、(i)ヒドロゲルサブユニットの存在下で組織サンプルを固定する工程;(ii)ヒドロゲルサブユニットを重合させてヒドロゲル包埋サンプルを形成する工程;(iii)ヒドロゲル包埋サンプルを透明化する工程;(iv)処理されたサンプルの少なくとも1つの画像を生成するために、処理されたサンプルを画像化する工程、によって、対象から得られた組織サンプルを処理することを含む。特定の態様では、この方法は、(v)透明化されたヒドロゲル包埋サンプルを1つまたは複数の第1の検出可能なマーカーで標識する工程をさらに含む。特定の態様では、組織サンプルは腫瘍組織サンプルである。特定の態様において、検出可能なマーカーは、PI3K/Akt/mTor、Ras/Raf/MEK、およびWnt/β-カテニン、またはヘッジホッグ/patchedシグナル伝達経路の成分に結合する。特定の態様において、検出可能なマーカーは、IL-6、IL2、IGF1、TGFα、EGF、ヘレグリン、EGFR、ERBB2、ERBB3、ERBB4、cMET、IGF1R、FGFR、ER、PR、インテグリンβ、Frizzled、Patched、WNT、ヘッジホッグ、FASR、PI3K、AKT、PKC、PLC、NFkB、JAK、STAT3&5、BCL-XL、カスパーゼ9、カスパーゼ8、FADD、RAS、RAF、MEK、MEKK、MAPK、MKK、FAK、APC、β-カテニン、ARF、ERK、JNK、JUN、FOS、CDK2、p53、p21、p27、p15、p16、SMAD、またはCDC42に結合する。特定の態様では、検出可能なマーカーは、様々な癌を患う患者における治療の診断、予後または予測であり得、癌または腫瘍のような疾患の存在または非存在を示すことができる、HER2ホモ二量体、HER2/HER3ヘテロ二量体、HER1/HER2ヘテロ二量体などのHERファミリー受容体のホモ二量体/ヘテロ二量体に結合する。特定の態様では、本明細書に記載のシグナル伝達経路またはマーカーのいずれかを用いて、関連する疾患または腫瘍を検出する。特定の態様では、本方法は、(vi)画像を、正常組織、病変組織、腫瘍組織、良好な予後に関連する腫瘍組織、または不良な予後に関連する腫瘍組織から得られた1つまたは複数の対照画像または所定の画像と比較し、それにより、腫瘍の存在または腫瘍の予後、またはアポトーシスもしくは細胞死の存在または量を判定する工程をさらに含む。生物学的サンプル、例えば腫瘍組織サンプル内のタンパク質またはヌクレオチド発現レベル、またはタンパク質活性レベルは、正常対照、または正常細胞もしくは疾患細胞のいずれかと関連することが公知である所定のレベルと比較することができる。あるいは、またはさらに、生物学的サンプル、例えば腫瘍組織サンプル中のシグナル伝達マーカーの量は、同じタイプの腫瘍におけるシグナル伝達マーカーの所定の量、位置、および比と比較してもよい。特定の態様では、予測される臨床転帰は、腫瘍組織サンプルのシグナル伝達マーカーの量を、例えば、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、治療成功期間(TTF)、無再発生存期間(EPS)、次の治療までの時間(TTNT)、全奏効率(ORR)または奏功期間(DofR)により測定されるような、公知の臨床転帰を有する同種の腫瘍において観察される量と比較することによって、また試験されている腫瘍組織サンプルの予測された臨床転帰を、試験されている腫瘍組織サンプルに最も類似するシグナル伝達マーカーの量または場所を有する公知の臨床転帰を有するそれらの腫瘍のものと相関させることによって、判定し得る。
F.乳癌における標的療法に対する応答のバイオマーカーの評価
一態様では、本発明は、ある療法、例えば現在のFDA承認の標的療法に対する乳癌の応答を評価するための方法を提供する。ホルマリン固定パラフィン包埋組織での単一タンパク質/DNA測定を用いた現在の方法論において、薬物応答および耐性の両方の鍵となるバイオマーカーの共発現を測定することにはかなりの制限があり、また固有の主観性がある。乳癌の治療におけるトラスツズマブの臨床上の成功は、標的治療の候補となる患者を正確に同定するために腫瘍評価が不可欠であることを示した。トラスツズマブ療法のために患者を選択するために日常的に利用される2つのアッセイは、免疫組織化学(IHC)によるHER2タンパク質発現、および蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)による遺伝子増幅である。残念なことに、両方のアッセイは、薬物に対する応答を部分的にしか予測しない。上皮増殖因子受容体(EGFR)の場合、このタンパク質の高レベルの発現にもかかわらず、応答とEGFRチロシンキナーゼ阻害剤との間の関連性は確立できなかった。これらの試験は、腫瘍をHER-2陽性と定義するための基準となっているが、これらの方法の正確性および再現性に関して多くの論争が存在する。これらの研究の主観的性質のゆえに、中央の実験室の試験に対して検証された場合、地域社会におけるHER-2試験の最大20%が不正確になる可能性があると推定される。さらに、HER3発現およびHER2の短縮型(p95HER2)に関与するものなどの他の経路の発現および活性化が、トラスツズマブの標準的治療に対する耐性に寄与し得ることが、研究によって示されている。こうした種類の問題は、組織を分解または均質化する方法、またはホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)の従来の単一染色IHCを利用する方法によって、限定的に解決することができる。本発明は、真の生物学および抵抗性経路の潜在的な活性化を再構築することができるように、組織標本を調製および画像化する代替の方法を提供する。
本発明は、乳癌を患う対象がトラスツズマブによる治療に応答性であるかどうかを予測する方法を提供する。特定の態様では、対象から得られた乳癌組織サンプルを、本明細書に記載のように処理して、固定された架橋サンプルを形成し、脂質を透明化し、次いでHER2タンパク質発現、HER2遺伝子増幅、および/またはp95HER2発現の1つまたは複数の検出可能なマーカーで染色する。他の態様では、サンプルは、HER2、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、HER1、HER3、ヘレグリン、またはki67タンパク質またはmRNAに結合する1つまたは複数の検出可能なマーカーで染色される。本明細書に記載の顕微鏡技術を用いてマーカー検出(タンパク質または核酸のいずれか)の存在および/または量を判定し、その結果を、HER2およびER/PR発現ステータスについて以前に特徴付けされ、トラスツズマブ治療に好都合に応答するか否かわかっている乳房腫瘍サンプルなどの対照の基準と比較する。試験されるサンプルが、以前に特徴付けた好ましい反応のサンプルと共通する特徴を共有する場合、トラスツズマブを用いて対象を治療することが示されるが、試験されるサンプルが、反応の不良な以前に特徴付けられたサンプルと、より多く共通する特徴を有する場合、トラスツズマブで対象を治療しないことが示される。
G.免疫細胞およびチェックポイントタンパク質の評価
本発明の方法は、進行性黒色腫や非小細胞肺癌(NSCLC)のような癌のモデルにおける潜在的な免疫調節因子の生物学的景観の理解を可能にするので、免疫チェックポイント阻害剤による療法に関連する腫瘍型においても使用できる。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織を用いたPD-L1タンパク質発現の測定のための既存の方法は、堅牢でなく再現性がない。免疫組織化学によるPD-L1発現を欠く患者は、PD-1阻害剤に応答し、これは、腫瘍、微小環境および宿主の間の潜在的相互作用が重要であることを示し、PD-L1の単一検体測定が臨床効果を決定する最適な方法ではないことを示唆している。
プログラム細胞死(PD)-1タンパク質と、そのリガンドの1つであるPD-L1との間の相互作用を阻害することは、進行性黒色腫およびNSCLCを含む多くの腫瘍型においてめざましい抗腫瘍応答を有することが報告されている。PD-L1の腫瘍発現は、現在、免疫チェックポイント阻害剤に対する応答を予測するためのバイオマーカーとしては、示唆的であるが不十分である。腫瘍の不均一性は、多くの腫瘍において重要な問題であり、より小さな生検サンプルは、PD-L1腫瘍発現のような、組織ベースのバイオマーカーに対して信頼性が低くなる。宿主細胞、浸潤腫瘍細胞、および免疫系間の相互作用は非常に複雑であり、組織切片またはフローサイトメトリーにおける単一タンパク質の測定には大きな制限がある。
抗腫瘍免疫応答を増強するためにT細胞の調節経路を標的とする免疫チェックポイント療法は、癌治療の領域において重要な臨床的進歩をもたらしている。これらの療法は、永続性のある臨床的応答を示し、患者の一部において、患者が何年も癌の臨床徴候を示さないという長期的結果を実証している。このクラスの新規作用物質についてのメカニズムおよび予測的バイオマーカーの十分な理解は、腫瘍微小環境の状況におけるヒト免疫応答の理解にかかっている。これは、より多くの患者に生存の利益を提供するための、併用療法によって標的とされる必要がある追加の経路の免疫応答および調節に関する貴重な新規で動的な情報を提供する。免疫チェックポイント療法に対する応答性に関連するバイオマーカーには、表6に示すものが含まれるが、それに限定されるわけではない。
特定の態様では、本発明は、進行性黒色腫またはNSCLCのような癌を患う対象が、PD-1タンパク質またはそのリガンドのPD-L1を阻害するか、または、互いの相互作用を抑制する薬剤による治療に応答するかどうかを予測する方法を提供する。特定の態様では、対象から得られた癌組織サンプルを、本明細書に記載のように処理して、固定された架橋サンプルを形成し、脂質を透明化し、次いでPD-L1タンパク質発現の1つまたは複数の検出可能なマーカーで染色する。他の態様では、サンプルは、CD4、CD8、CD20、サイトケラチン、またはPD-L1などの1つまたは複数の検出可能な免疫マーカー、または表6に示されるもののいずれかで染色される。本明細書に記載の顕微鏡技術を用いて、検出されたマーカー(タンパク質または核酸のいずれか)の存在および/または量を判定し、その結果を、これらのマーカーのいずれかの発現ステータスについて以前に特徴付けされ、PD-1阻害剤による治療に好都合に反応するか否かわかっている腫瘍サンプルなどの対照の基準と比較するために比較する。試験されるサンプルが、以前に特徴付けた好ましい反応のサンプルと共通する特徴を共有する場合、PD-1阻害剤を用いて対象を治療することが示されるが、試験されるサンプルが、以前に特徴付けられた反応の不良なサンプルと、より多く共通する特徴を有する場合、PD-1阻害剤で対象を治療しないことが示される。
H.癌幹細胞
インタクトな生物系内の癌幹細胞の存在および臨床的意味を同定し、正確に定量化することは、癌療法抵抗性を予測する上で重要である。例えば、乳癌は不均一性疾患であり、予後および予測の特徴において異なるいくつかの十分立証された乳癌のサブタイプが存在する。近年、基礎科学および翻訳の研究により、癌幹細胞が乳癌の不均一な組織学的および機能的特徴に寄与することが実証されている。さらに最近では、乳房上皮細胞が上皮間葉転換(EMT)を経る能力は、幹細胞特性の獲得、ならびに、腫瘍浸潤、転移および利用可能な治療に対する耐性の増加に関連付けられている。この理由から、EMTを経ている幹細胞および細胞は、潜在的な療法の有力な標的である。胸部組織サンプル中のそれらの同定により、乳癌の予後および治療を判定する上で重要な情報が得られ、また病理学者が、予後および予測マーカーを発見および検証し、さらに乳癌のリスク増加マーカーを同定することが可能になる。臨床的観点から、幹細胞を同定し標的化する重要性は、現在の治療法が乳癌を治癒しない原因となりうる既報の化学物質耐性および放射線耐性に基づいている。さらに、多数の研究により、組織サンプル中の乳癌幹細胞の存在および量が、予後において意義を有することが実証されている。近年、基礎科学研究は、EMTと幹細胞プログラムが密接に相互に関連し、乳癌の不均一性の原因であるという強力な証拠を提供してきた。
本発明は、腫瘍組織サンプル、例えばトリプルネガティブ乳癌モデルにおける癌幹細胞(CSC)および上皮間葉転換(EMT)の同定方法を提供する。特定の態様では、対象から得られた癌組織サンプルを、本明細書に記載のように処理して、固定された架橋サンプルを形成し、脂質を透明化し、次いでALDH1、CD24、CD44、CD133、E-カドヘリン、およびビメンチンなどの1つまたは複数の検出可能なマーカーで染色する。さらに、HER2および/またはER/PRのステータスを判定することができる。本明細書に記載の顕微鏡技術を用いて、検出されたマーカー(タンパク質または核酸のいずれか)の存在および/または量を判定し、その結果を、これらのマーカーのいずれかの発現ステータスについて以前に特徴付けされ、耐性を生じるか否かわかっている腫瘍サンプルなどの対照の基準と比較するために比較する。試験されるサンプルが、治療への耐性を生じる、以前に特徴付けられたサンプルと共通する特徴を共有する場合、対象もまた治療への耐性を生じると予測されるが、試験されるサンプルが、耐性を生じない、以前に特徴付けられたサンプルと、より多くの共通点がある場合、対象は耐性を生じないことが示される。
I.不均一な腫瘍病巣を有する固形腫瘍のインタクトな視覚化
均一な臨床的なリスクパラメータ(類似のTNMステージ、Gleasonスコア、および前処置PSA(前立腺特異的抗原)値に基づく同一のNCCN(National Comprehensive Cancer Network)リスクカテゴリー)の存在にもかかわらず、局所療法は前立腺癌患者の最大30〜40%で失敗している。原発腫瘍または血液サンプル中のmRNA存在量に基づくバイオマーカーは、十分な臨床的有用性にまだ至っておらず、固有の腺内および多病巣性の不均一性の理解のさらなる欠如に寄与している。前立腺癌の大部分は器官限定疾患と診断されるが、同様のGleasonスコア(例えば、Gleasonスコア7〜10)を有する癌は、実質的な患者間不均一性および差次的な前立腺癌特異的死亡率を示す。前立腺癌の80%が1つより多い病巣を含むため、個々の癌病巣間の腺内の生物学的不均一性には、さらなる複雑さが存在している。個々の前立腺癌病巣はクローン性であると考えられているが、所与の患者の体内のそれらの分子的性質は、Boutras et al(2015年)による最近の発表まで、全ゲノム解析ではほとんど特徴付けされていなかった。全体として、Boutros et alによって報告された知見は、1つの腫瘍切片または生検材料に依存して、臨床的判断のために前立腺癌の分子的ステータスを判定することの限界を強調している。この研究により、これらの問題が患者の生存転帰に影響する程度を理解することに捧げられる将来の試験に関する生物学的根拠が得られた。これは、致死性疾患を発症する患者において、整合する原発性および転移性腫瘍の広範な特徴付けをすることを必要とし得る。
本発明は、分子の不均一性を把握するための新規の技術を提供し、そのような技術は、そうした研究の知見を臨床に適用する際に重要である液体生検および/または分子画像化に関与し、Boutros et alに記載されているような腫瘍組織の分子的な特徴付けと比較してインタクトな画像化を使用する、前立腺癌の不均一性の複雑さに対する理解をもたらすものを含む。特定の態様では、対象から得られた癌組織サンプルを本明細書に記載のように処理して、固定した架橋サンプルを形成し、脂質を透明化し、次いで本明細書に記載のもののいずれかを含む1つまたは複数の検出可能なマーカーで染色する。本明細書に記載の顕微鏡技術を用いて、検出されたマーカー(タンパク質または核酸のいずれか)の存在および/または量を判定し、その結果を、これらのマーカーのいずれかの発現ステータスについて以前に特徴付けされ、耐性を生じるか否かわかっている腫瘍サンプルなどの対照の基準と比較するために比較する。試験されるサンプルが、治療への耐性を生じる、以前に特徴付けられたサンプルと共通する特徴を共有する場合、対象もまた治療への耐性を生じると予測されるが、試験されるサンプルが、耐性を生じない、以前に特徴付けられたサンプルと、より多くの共通点がある場合、対象は耐性を生じないことが示される。
J.固形腫瘍の微小環境と癌治療への応答
現在のところ、膵臓癌のために利用可能な薬物の大部分の失敗は、腫瘍微小環境の生物学の理解の欠如、および多くの抗癌薬が膵臓癌の複雑な間質成分に浸透できないことによると考えられている。膵臓癌は、米国における癌死亡の第4の主要原因であり、治癒率が非常に低い疾患の後期段階で典型的に診断される。膵臓癌の微小環境(腫瘍体積の80〜90%)は、癌の増殖を支えるのに完璧に適した環境の最良の例の1つと思われる。それは非常に不均一であり、線維芽細胞、筋線維芽細胞、膵星細胞、免疫細胞、血管、細胞外マトリックス(ECM)、およびサイトカインや増殖因子などの可溶性タンパク質などの多くの細胞および無細胞の構成要素を含む。結果として生じる微小環境は、腫瘍の開始、進行、浸潤および転移を支える。さらに、間質細胞は、治療抵抗性に関連する複数のタンパク質および増殖因子を発現する。最近の努力は、ヒアルロナン(HA)(原発性および転移性)、コラーゲン、およびSPARC(分泌タンパク質、酸性、およびシステインに富む)を含む微小環境における構造タンパク質の修飾または標的化を目的としている。癌のこの局面を標的とするのに成功したことにより、進行性膵臓癌(nab-パクリタキセル+ゲムシタビン)の患者の生存率が向上しているが、この癌のより優れた治療法およびこの癌の生理学のより優れた理解が必要とされている。このため、前臨床的アッセイ(細胞株および異種移植モデル)およびその後のヒト臨床試験での失敗で報告されているように、いくつかの治療法の有効性には大きな相違がある。
本発明の方法は、例えば、癌の予後の判定、治療に対する応答の予測またはモニタリング、および治療に対する耐性の予測または判定のために、膵臓癌などの様々な癌における腫瘍微小環境の複雑さを検査し、理解するために使用できる。特定の態様では、対象から得られた癌組織サンプル(例えば、膵臓腫瘍組織サンプル)を本明細書に記載のように処理して、固定した架橋サンプルを形成し、脂質を透明化し、次いで、腫瘍微小環境の1つまたは複数の検出可能な免疫マーカー、例えば、微小環境成分に特異的に結合するマーカー、例えばSPARC、ヒアルロナン、および/またはコラーゲンのような本明細書に記載のもののいずれかを含む、腫瘍微小環境の細胞または細胞外マトリックス成分に特異的に結合するマーカーで染色する。本明細書に記載の顕微鏡技術を用いて、検出されたマーカー(タンパク質または核酸のいずれか)の存在および/または量を判定し、その結果を、これらのマーカーのいずれかの発現ステータスについて以前に特徴付けされ、耐性を生じるか否かわかっている腫瘍サンプルなどの対照の基準と比較するために比較する。試験されるサンプルが、治療への耐性を生じる、以前に特徴付けられたサンプルと共通する特徴を共有する場合、対象もまた治療への耐性を生じると予測されるが、試験されるサンプルが、耐性を生じない、以前に特徴付けられたサンプルと、より多くの共通点がある場合、対象は耐性を生じないことが示される。試験されるサンプルが、治療に良好に応答する以前に特徴決定されたサンプルと共通する特徴を共有する場合、対象も治療に良好に応答すると予測されるが、試験されるサンプルが、治療にあまり反応しない以前に特徴決定されたサンプルと、より多くの共通点がある場合、対象はまた治療にあまり反応しないことが示される。
V.薬物のスクリーニング方法
本発明の方法は、癌を含む疾患および障害の治療における有効性を判定するための候補治療剤のスクリーニングに容易に適合させることができる。特定の態様では、これらの方法は、疾患の動物モデルを使用して実施される。種々の癌および腫瘍形成動物モデルが公知であり、当技術分野で利用可能である。例えば、マウス癌モデルは周知であり、異種移植および化学的または遺伝的に誘発されたマウスの癌は、一般に齧歯類癌モデルに使用される。特定の態様では、これらの方法は、例えば、薬物候補で治療された患者から得られたヒト組織サンプル、例えば腫瘍組織サンプルを使用して実施される。
いくつかの態様では、第1の病変組織サンプル(例えば、腫瘍組織サンプル)を、対象、例えば疾患(例えば、癌)の動物モデルから、第1の時点で、例えば候補薬物による治療前に得て、本発明の方法に従って検査する。次いで、対象を候補薬物で処理し、第2の病変組織サンプルを、治療中または治療後の第2の時点で対象から得る。第1および第2の病変組織サンプルは、任意で、疾患または障害、例えば腫瘍に関連付けられる、腫瘍マーカーなどの、組織構造および/または構成要素(例えば、細胞、タンパク質、核酸)の可視化を可能にする作用物質で染色した後、本明細書に記載のように、処理や分析をする。第2の病変組織サンプルが、第1の病変組織サンプルよりも構造または疾患のマーカーの量が減少している場合、候補薬物が疾患または障害の治療に有効であることが示される。第2の病変組織サンプルが、第1の病変組織サンプルよりも構造または疾患のマーカーの量が増加している場合、候補薬物が疾患または障害の治療に有効ではないことが示される。
特定の態様では、これらの方法は、本明細書に記載の方法論およびバイオマーカーまたは構造のいずれかを用いて実施することができる。
VI.治療法
本発明はまた、疾患および障害を治療する方法を提供する。本明細書に記載の方法は、疾患または障害を治療するために使用する治療剤を決定するために使用できるか、それらは治療対象の応答をモニターするために使用できる。特定の態様では、これらの方法は、疾患または障害を有すると診断された、または疑われている対象から病変組織サンプルを得る工程、本明細書に記載の病変組織サンプルを処理および画像化する工程、その疾患または障害の存在、量、または関連する特徴を判定する工程、次いで病変組織サンプルにおいて決定されたのと同様の量または特徴を有する疾患または障害の治療に有効であることが公知である治療剤で対象を治療する工程を含む。特定の態様では、これらの方法は、治療が疾患または障害を治療するのに有効であるかどうかを判定するために、治療後に対象から第2の病変組織サンプルを得る工程、本明細書に記載のように第2の病変組織サンプルを処理および画像化する工程、および、疾患または障害の存在、量、またはそれに関連する特徴を判定する工程をさらに含む。特定の態様では、疾患または障害は腫瘍である。
特定の態様では、癌を治療するための特定の薬物の使用が示され、ここで腫瘍は、薬物に対する応答を予測するバイオマーカーの特徴を示す。特定の態様では、本発明の方法は、腫瘍組織サンプルが得られた対象を治療するために使用する薬物を決定するために、腫瘍の1つまたは複数のバイオマーカーのステータスを確認するために使用できる。特定の態様では、表1に示すバイオマーカーおよび基準の下位集団のステータスは、本発明の方法に従って判定し、対応する表現型が判定された場合、対象は、示された薬物で治療される。
実施例1
腫瘍細胞、マウス異種移植腫瘍、およびヒト腫瘍のCLARITY解析
腫瘍細胞株、異種移植片および腫瘍組織を、本明細書に記載の方法に従って処理および分析した。これらの研究は、特許請求された方法が、種々のプローブを用いて腫瘍サンプルを成功裏に架橋し、透明化し、標識して、サンプル中の構造の特徴、および腫瘍マーカーの発現を検査するのに使用することができることを実証する。
方法
細胞の培養、凍結ペレットの生成、マウスの異種移植接種のための細胞の調製
この一連の実験に用いた試薬および化学物質を表2に示す。
McCoys 5A培地にSKBR3を、最小必須培地α(MEMa)培地中にMCF-7細胞、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中にMDA-MB-231細胞、EGM-2 Bulletkit中にHUVEC、McCoy’s 5A中にSKO V3 -HER2-GFP、EGFR-RFPを維持した。SUPT1、SU-DHL-1、NCI-H1703、NCI-H2087、NCI-H647はすべてRPMI-1640で維持した。すべての培地に10%ウシ胎仔血清(BSA)、10mMペニシリン-ストレプトマイシン(penicillin-streptomycin)、および10mMのGlutamaxを補充した。すべての細胞株を、95%の空気および5%のCO2を含有する37℃の加湿雰囲気で培養し、製造業者の推奨に従って分割し、培地を補充した。培養物が適切なコンフルエンスに達した後、細胞をPBSで1Xで洗浄し、次に1Xトリプシン/EDTAで除去し、得られた溶液を遠心分離し、PBSで2回洗浄した。最終的に遠心分離されたペレットを液体窒素中でおよそ1〜5分間瞬間凍結させ、ヒドロゲルモノマー(HM)包埋まで-80℃で保存した。
異種移植接種のために、MCF-7細胞を培養し、その後、依然増殖の線形期にある間に採取した。接種の前に、150cm2の組織培養皿から細胞を掻き取ることによって、カルシウムもマグネシウムも含有していない1XPBS中で細胞を採取した。細胞計数後、細胞ペレットを0.5mLの1xトリプシン(HEPES平衡塩溶液中)で5分間処理して細胞を破壊し、単一の細胞懸濁液を生成させた。次いで収集した集団を計数し、MEMaにおいて、100μL当たり107cellの濃度に調整した。
凍結細胞ペレット/ヒト腫瘍/マウス新鮮組織HM包埋および脂質透明化
HM包埋。HM包埋は、以前に公開された方法(Chung 2013)に従っていくつかの修正を加えて行った。手短に言えば、凍結細胞株ペレットまたは凍結ヒト腫瘍組織または採取したばかりのマウス組織を5〜50mLのHM溶液(4%アクリルアミド、0.05%BIS-アクリルアミド、0.25%VA-044開始剤、4%パラホルムアルデヒド、1x PBS、pH7.4)中で4℃でおよそ24〜72時間インキュベートし、次いで真空下で10〜30分間脱気し、HM溶液が凝固するまで37℃で3時間重合させた。余分に重合したゲルを注意深く除去し、PBST(1X PBS、pH 7.4、0.1%トリトンx-100)でペレットを2x洗浄した後、25mLの透明化溶液(200mMホウ酸塩緩衝液、pH 8.5および8%SDS)に入れた。組織または細胞株を、37℃〜55℃の範囲の温度で100rpmで振とうし、およそ3〜7日ごとに緩衝液を変えながら、またペレットが眼で視覚的に見て透明になるまで、数日〜2ヶ月のいずれかの時点まで、透明化した。
ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色。HM包埋サンプルは、以下に記載のHistochoice透明化および脱水した段階的な一連のエタノールを除去した簡略化した染色プロトコルを経た。手短に言えば、組織切片をHistochoiceの3回の交換を利用してそれぞれ5分間透明化した。次いで、サンプルを段階的な一連のエタノール(2×100%、2×95%、1×80%、1×70%でそれぞれ3分間)脱水した。次いで、切片を蒸留水で3分間すすいだ。ヘマトキシリンを各切片に1分間添加し、水道水で、次いで分化溶液は3分、スコットの水道水は30〜45秒、蒸留水は1分素早くすすぎ、エオシンで1分間染色した。過剰のエオシンを除去し、段階的な一連のエタノール(2×70%、2×80%、2×95%、2×100%、各2分)で再水和し、各々2分でHistochoiceを3回変えて透明化し、プラン4x0.1対物レンズとAptina CMOSセンサーデジタルカメラ(5.1MP 1/2.5’’カラーUSB2.0)とToupview 3.7デジタルカメラソフトウェアを備えたLeica Galen III顕微鏡を使用して、HistoChoice封入剤で取り付けた。
免疫組織化学。二重パラフィンおよびHM包埋サンプルは古典的な免疫蛍光染色を受けた。組織切片を、Histochoiceの3回の交換を利用してそれぞれ5分間透明化した。次いで、サンプルを段階的な一連のエタノール(2×100%、2×95%、1×80%、1×70%でそれぞれ3分間)脱水した。連続する切片をそれぞれ5分間、ddH20で2回すすぎ、その後、室温で15分間、抗原の回収のためにHisto/zymeに曝露した。5分間のPBS洗浄後、切片をProtein Block Serum-Free(Dako)で覆い、室温で1時間インキュベートした。次いで、サンプルを加湿チャンバ内で一次抗体(10μg/mlまたは1:50)でRTで1時間から4℃で一晩染色し、TBSTで3x洗浄し、続いて二次的なヤギ抗ウサギ(またはマウス)抗体で、RTにて1時間染色した。二次的な抗体を除去し、切片を各々5分間TBSTで3x洗浄した。最後に、サンプルを核染色DAPI(1μg/ml、5分)またはSytox Blue(1μM、15分)で室温で対比染色し、組織スライドにFluoroshieldおよびカバースリップを取り付けた後、プラン4x0.1対物レンズとAptina CMOSセンサーデジタルカメラ(5.1MP 1/2.5’’カラーUSB2.0)とToupview 3.7デジタルカメラソフトウェアを備えたLeica Galen III顕微鏡を用いて画像化した。
免疫組織化学: HM包埋細胞株および組織。HM包埋サンプルを、PBS(ブロッキング緩衝液)中の10%正常ヤギ血清、3%BSAおよび0.1%Triton X-100を用いてブロックした。サンプルは、サンプルの厚さに応じて1〜3時間ブロッキング緩衝液に入れた。ブロッキング緩衝液で希釈した適切な一次抗体溶液(10μg/mlまたは1: 50)にサンプルを移し、サンプルの厚さに応じて4℃で12〜144時間インキュベートした。サンプルをPBST(1×PBS+0.1%Triton X-100)中で室温で最低4〜72時間洗浄した。適切な種特異的二次抗体(10μg/mlまたは1: 200)をブロッキング緩衝液中で調製し、サンプル上で室温で3〜144時間インキュベートした後、室温で少なくとも4〜48時間にわたり最終的な1〜2回のPBSTの洗浄を行った。次に、試薬等級の水(1μg/ ml、5分)で希釈したDAPI、または試薬等級の水(1μM、15’-24時間)で室温で希釈したSytox Blueで、サンプルを対比染色した後、画像化用の組織サンプルの屈折率を平衡させるために、組織切片をRapiClearCS(SunJin Lab Co.)封入試薬に入れる。
HM染色された細胞株および組織の画像化および3D画像処理。染色されたHM包埋組織の蛍光画像を得るために、3つの異なる画像化様式のうちの1つを使用した。第1の方法は主に薄切片組織(>100μM)用のものであり、LEDフィルタキューブを備えたIRISデジタル画像解析システムの使用を伴った。iRiS(商標)デジタル細胞画像化システムは、画像解析ソフトウェアとオンボードコンピュータ(Logos Biosystems)とが統合された多色蛍光画像化システムである。以下の対物レンズとLEDフィルタキューブを使用した(TC planFluor 10x、20x、Plan Apochromat fluor oil 40x、TC plan acro 4x Ph、DAPI DAPI(Ex375/28、Em460/50)、mCherry(Ex580/25、Em645/75)、Cy5(Ex620/60、Em700/75)、画像化用)。第2の方法は主に、100〜250μMの範囲である切片用であり、これは以下の対物レンズ(EC Plan Neo 40x oil、Plan Apo 20x、Zeiss)を用いた逆LSM780多光子レーザ走査共焦点顕微鏡(Zeiss)であり、第3に、Ultramicroscope II Light sheet顕微鏡(La Vision Biotec)を、2xの対物レンズ(Mv PLAP02VC、Olympus)と組み合わせた0.63〜6.3xの範囲の標準倍率を使用して、500μM〜10mmの範囲のサイズの範囲の組織に対して、使用した。IMARIS科学3D/4D処理および分析ソフトウェア、バージョン8.2を使用して、すべての画像を分析および処理した。
腫瘍異種移植片の発生。0日目に、6匹の動物のそれぞれに、右の第2の乳頭の下の乳房脂肪パッドに皮下で、細胞懸濁液(1×107cell/100mL)を雌Rag-2ガンママウス(6〜8週齢、20〜25g)で、同所性に注入した。動物に、麻酔なしで、関節内の60日の徐放性17B-エストラジオールペレットを、皮下に移植した。腫瘍は、250cm3以上500cm3以下に達するまで増殖した(キャリパーで測定)。全体的な動物の状態を毎日コントロールし、腫瘍の体積および体重を週に2回評価した。すべての実験は、Molecular Medicine Research Institute(MMRI)IACUC委員会、プロトコル16-002によって承認された。
PDXマウス、ND4マウス、およびMCF-7異種移植マウスからの器官の収集。4匹のPDX腫瘍モデルまたはND4、Swiss Websterモデルマウス(表x)を安楽死させ、10mL/分の速度で20mLの氷冷1X PBSを用いて心筋灌流に供した。次いで、20mLの氷冷4%ヒドロゲルモノマー(HM)溶液を10mL/分の速度で動物に灌流した。灌流後、PDX腫瘍組織を切除し、HM溶液を含む50mLコニカルチューブに入れた。
結果
全体的な実験の概要: 正常マウス組織、マウス細胞株および患者由来異種移植片、ヒト癌細胞株およびヒト切除生検サンプル
HM包埋サンプルでの使用に適していると同定された抗体を表3に提示する。HM包埋組織で作用することが判定された抗体を、表4に挙げた細胞株対照を用いた抗原結合について最初に試験することによって、判定した。表4はまた、これらの研究において利用されたマウス(正常および癌異種移植組織)およびヒト癌組織も含む。関心対象の抗原に対する陽性対照として細胞株単層を用いて、2〜3の異なる抗体を試験した。典型的には、関心対象の抗原は、文献に従ってかなり高濃度で発現され、特定のモデル細胞株を使用するための理論的根拠であった。単層培養での染色がアイソタイプの対照に関して特異的であり、良好なシグナル/ノイズ比を示した場合、HM包埋細胞株対照における試験に合わせて抗体を累進的にした。
単層細胞培養免疫蛍光データを、標準的なアッセイ技術を用いて生成した(データは示していない)。表5は、HM包埋細胞株およびマウス異種移植片またはヒト癌組織における抗体の試験の結果をまとめたものであり、これらの抗体の相対的な染色は、0=染色が検出されず、1+=低染色、2+=中程度の染色、3+=強度の染色という呼称で示している。これらの知見は、潜在的に、一重反応または多重反応において使用される一次抗体または二次抗体の濃度を含む複数の理由に起因して、公知の標的に関する文献に発表されたものと必ずしも相関があるわけではない。使用した一次抗体の濃度は、販売業者から濃度の情報が入手できなかった場合、0.38〜20mg/mLまたは1:100であった。蛍光の視覚化のために、間接的または直接的なものとして利用されて示される2つの方法と、第7欄に示される二次抗体(間接的)またはフルオロフォアコンジュゲート(直接的)のタイプがあった。二次抗体はすべて1:100の希釈で使用した。また、ここに列挙されているのは、48時間に及ぶ、排他的に標準的なHM包埋である包埋法、ならびに組織の透明化時間/温度および大きさである。組織の大きさは7μM〜10mm3の範囲であった。本文書の目的上、5mm3を超えるものは「厚」と表示された。組織の透明化時間は5〜32日であり、組織型(癌対正常組織または細胞株)に依拠し、また透明化温度は37〜55℃であった。
これらのデータは、マウス細胞株およびPDX異種移植腫瘍組織、ならびにヒト乳癌および肺癌組織および正常なリンパ節組織の様々な組織学的サブタイプおよび段階から、様々な癌組織を透明化することが可能であることを実証している。また、様々な市販の抗体で染色されたHM包埋透明化組織が、サンプルの厚さに応じて様々な画像化様式で画像化できることも示している。注目すべきは、凍結したヒト腫瘍組織および凍結ペレットの両方は、組織の形態を乱すことなく、首尾よくHM包埋、脂質透明化、および首尾よく染色することができることである。本発明者らの知る限りでは、これは正常組織または癌組織を含む病変組織に関するCLARITY法では報告されていない。さらに、凍結細胞株ペレットの使用は、CLARITY法との関連で報告されていない。この方法は、プロセスの複数の局面を制御する優れた方法を提供し、技術の研究開発のための再生可能で再現可能な試薬を備えている。さらに、様々な濃度の関心対象の抗原を含有する細胞株の混合物を利用して、優先染色の感度および特異性を理解することができる。この開発戦略は、関心対象の核酸またはタンパク質の標的に関する細胞株モデルを有する腫瘍または他のいずれか疾患の状態の分野に適用することができる。
凍結細胞株の対照。瞬間凍結細胞株対照(MCF-7)をHM包埋し(図13A)、次いで55℃で5日間透明化し(図13B)、次いでヨウ化プロピジウムと共にインキュベートして細胞核を染色し、次いで10μMのステップサイズを有する1mmのZ-スタックを作製することによって、光シート顕微鏡法で画像化した(図13C)。画像処理は、IMARISサイエンティフィック3D/4D処理および分析ソフトウェア、バージョン8.2を利用して行った。前後の画像(図13A対図13B)は、透明化後の透明なペレットに対する凍結したHM包埋サンプルの不透明な性質を示す。ヨウ化プロピジウムは、組織の中に深く浸透し、サンプルの1mmに及ぶ均一な画像化を可能にした。
マウス患者由来異種移植片(PDX)。マウスPDXヒトサンプルの例を図14に示す。このサンプルは、以前にエストロゲン受容体(ER)陰性およびプロゲステロン受容体(PR)陰性およびHER2陽性と分類された浸潤性乳管癌を患う患者からのものであった。サンプルを、本セクションに記載のように調製し、サンプルをHM包埋(図14A)し、55℃で7日間透明化し(図2B)、抗パンサイトケラチン(図14C)または抗HER2(CB11クローン)一次抗体(図14D)およびAlexa Fluor(登録商標)488二次抗体で染色し、光シート顕微鏡で画像化し、IMARISバージョン8.2ソフトウェアで分析した。抗体の詳細については、表3を参照されたい。前後の画像(図14A対図14B)は、55℃で7日間の透明化後の透明なペレットに対するマウスの灌流されたHM包埋サンプルの不透明な性質を示す。パンサイトケラチン画像化(10μMのステップサイズを有する1.2mmのZ-スタック)は、組織全体にわたりかなり均一な3+染色を示し、形態の保存が非常に良好である。CB11抗体クローンを用いて、このサンプルにおいて強力な3+HER2染色を検出することができた。
ヒト乳癌切除生検標本。ヒト乳癌切除生検標本サンプルの例を図15に示す。このサンプルは、ER陰性、PR陰性およびHER2陽性である腫瘍の別個の部分において、以前に特徴付けされた乳房の非浸潤性腺癌を患う患者からのものである。この商業的に入手可能な凍結ヒト乳癌切除標本(図15A)をHM包埋し(図15B)、表5に示すように、透明にするために約35日間透明化した(図15C)。HER2(ErbB2/HER2アフィボディ-FITCコンジュゲート)(図15D)、パンサイトケラチン(図15E)、またはKi-67(図15F)に対する抗体でサンプルを染色し、共焦点または光シート顕微鏡法で画像化し、IMARISバージョン8.2ソフトウェアで分析した。HER2で染色されたサンプルから、光シートから10μMのステップサイズで600μMのZ-スタックの分析が行われ、5μMのH&E染色スライドでは見られなかった非常に規則的な樹木状の3D構造が明らかになった(データは示さず、Asterand)。これは、腫瘍の重要なアーキテクチャを失うことなく、凍結したヒトの切除標本を採取し、組織をHM包埋、透明化、および染色できることを実証した。この研究は、新鮮な切除サンプルとは対照的に、凍結標本サンプルが、本明細書に記載の方法に従って使用できることを実証する。抗パンサイトケラチン抗体(図15E)に関して腫瘍上皮細胞の強力な3+染色が見られ、さらに、抗Ki-67抗体(図15F)に関して腫瘍核の3+染色が見られた。興味深いことに、Ki-67染色の不均一性があり、腫瘍内の位置に応じて腫瘍全体に異なる増殖が存在する可能性があることを示している。これは、2D薄型ホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いて従来の手順で実施した場合、腫瘍のどの部分が分析されるかに依存して比較したときに、本明細書に記載の方法が、治療応答に影響を及ぼす可能性があることを実証している。
ヒト転移性乳癌リンパ節。薄切片2D FFPE分析に基づいて、以前に浸潤性乳管癌、IIIA期、分化不良、ER、PRおよびHER2陽性であると診断された原発腫瘍を患う患者由来のヒト転移性乳癌リンパ節のサンプルを分析した。表5に示すように、転移性乳癌(図16A)患者からのこの市販の凍結ヒトリンパ節を、HM包埋(図16B)および受動的に透明化(図16C)した。サンプルは、Sytox Blue(核)、Alexa Fluor(登録商標)647(腫瘍細胞)に直接コンジュゲートしたCytokeratin 8/18に対する抗体、および抗CD-31抗体で多重反応で染色され、Alexa Fluor(登録商標)568(血管)にコンジュゲートした二次抗体を伴っていた(図16D)。矢印は、腫瘍の特徴の異なる染色を示し、多重化した3つの異なるマーカーを用いて、凍結したヒトの癌組織を包埋し、透明化および画像化をする能力を示す。100μMの切片を共焦点顕微鏡で画像化し、IMARISバージョン8.2ソフトウェアで解析した(方法のセクションを参照)。興味深いことに、核のみを含み、目に見える腫瘍細胞を含まないいくつかのZスタック画像が存在したことから、100μMのリンパ節(5μMステップサイズ)にわたってかなりの変動性があった(データは示さず)。これは、本明細書に記載の方法が、患者がリンパ節において微小転移を有し、従来の2D薄切片FFPE検査が行われているために不適切に病期分類され得る状況において、有利であり得ることを示唆している。
ヒト肺腺癌、1B期。EGFRにおける感作突然変異について陰性であり、2D薄切片FFPE分析によってKRASについての陰性であると以前に特徴付けられた1B期の患者由来のヒト肺腺癌を分析した。この市販の凍結ヒト切除腫瘍サンプル(図17A)をHM包埋(表5)し(図17B)、次いで受動的に透明化した(図17C)。サンプルは、Sytox Blue(核)、Alexa Fluor(登録商標)647(腫瘍細胞)に直接コンジュゲートしたCytokeratin 8/18に対する抗体、および抗CD-31抗体で多重反応で染色され、Alexa Fluor(登録商標)568(血管)にコンジュゲートした二次抗体を伴っていた(図17D)。矢印は、腫瘍の特徴の異なる染色を示し、多重化した3つの異なるマーカーを用いて、凍結したヒトの癌組織を包埋し、透明化および画像化をする能力を示す。100μMの切片を共焦点顕微鏡で画像化し、IMARISバージョン8.2ソフトウェアで解析した(方法のセクションを参照)。Alexa Fluor(登録商標)647にコンジュゲートされた最適な抗パンサイトケラチン抗体を欠いているため、実験はケラチン8/18に対する抗体を用いて行った。肺腺癌はCK7を高度に発現する。
これはこの腫瘍の染色に対する良好な陰性対照を示した。実験はまた、Alexa Fluor(登録商標)647にコンジュゲートされた標準パンサイトケラチン抗体を使用して行われる。
HM包埋正常マウスの腎臓のH&E染色。正常なマウスの腎臓サンプルを、HMを包埋し、脂質を透明化し、ビブラトームを用いて切片化した。50μMの切片を、H&E染色に付し、方法のセクションに示した修飾を施した。明視野画像が、Aptina CMOSセンサーデジタルカメラ(5.1MP 1/2.5’’カラーUSB 2.0)を1つの接眼レンズに取り付けて、Toupview 3.7デジタルカメラソフトウェアを使用して視覚化し、Leica Gallen III顕微鏡を使用して撮影された。図18は、HM包埋および透明化後のマウスの腎臓構造の非常に良好な形態学的保存が見られる、染色後の組織の10倍および40倍の画像を示す。HM包埋病変組織を用いたこのタイプの方法論のこの成功は、正常組織対癌組織の検出ならびにサンプルの形態学の理解を可能にする。
本明細書で言及されるすべての米国特許、米国特許出願公開公報、米国特許出願、外国の特許、外国の特許出願および非特許刊行物は、本明細書と矛盾しない程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
前述から、本発明の特定の態様が例示のために本明細書に記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な改変を行うことができることが理解されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されない。