本発明は、屋外の電柱などの高所に設置されたスピーカから、所定エリアにおいて、音声による一般広報を行ったり、地震発生、つなみ襲来、土砂崩れ、河川氾濫などの緊急情報を報知する装置に関する。
従来の屋外拡声子局は、防災行政無線の子局内に増幅機を内蔵したものを使用し、自治体内の地域に凡そ半径600m毎に設置されている。例えば防災センタから定時に動作確認を兼ねて、これらの屋外拡声子局に定時案内放送を行っていた。この定時案内放送が鳴らないと、最寄りの住民などから鳴らなかったとの報告が来るようになっていた。これにより早期に故障検知が出来、故障修復することが出来た。
この他に、防災センタから、屋外拡声子局に対し監視信号を送出して屋外拡声子局の異常確認を行う方法も有るが、この方法は屋外拡声子局からの無線による応答により、無線回線が動作していることは確認できるが、スピ−カーから音が出たことを確認することは出来ない。
スピーカの故障を検出する装置として、下記特許文献1に開示のように、スピーカの直近に音圧センサを設けて、この音圧センサにより音声が検出された場合には、センタに向けてアンサーバック信号を送信するようにした装置が知られている。また、下記特許文献2のように、周囲の環境音に左右されないように、スピーカの出力音を空気振動で検出するのではなく直接スピーカの振動を検出するようにした装置が知られている。また、下記特許文献3のように子局において子局の障害ログを記憶し、後に作業員が携帯外部接続装置を子局に接続してこのログを読み取るようにした装置が知られている。
特許第2724855号
特許第6193524号
特開2011−123537
とこが上記特許文献1、2に記載の装置においてはアンサーバーックのための設備を余分に必要とした。また、特許文献3に記載の装置では、作業員が携帯端末を子局に接続して、記録されたログデータを読み取る必要があり、専用の作業員を必要とし、監視作業が面倒であった。また、上記特許文献1〜3の装置は、スピーカから音声が出力されている期間に生じた障害を検出するものであり、告知放送をしていない期間において障害を検出する装置ではない。近年では、大規模都市などで毎日定時放送すると、周辺住民からの騒音苦情も多く、必要な時しか放送しない運用方法も多い。この場合故障していても検知することが出来ず、必要な時に放送されないことが問題となっている。防災行政無線は国民保護法により、人命や財産を守る大切な役割を担っており、放送されないことは致命的な問題となる。
そこで、本発明は上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、無線を用いたコールバックシステムなどの新たなシステムを増設することなく、専門の監視作業員を関与させることなく、子局から告知放送が出力されないという故障をいち早く感知できるようにすることである。
上記の課題を解決するための第1発明は、センタから送信される信号に応じて、その信号を増幅器で増幅した後に、高所に配置された複数のスピーカから、それらのスピーカが支配する領域に音声を出力するようにした音声報知装置において、増幅器が動作した時の消費電力を検出する消費電力検出手段と、消費電力検出手段により検出された消費電力が予め設定された所定の正常範囲に存在するか否かを判定する判定手段と、判定手段により消費電力が正常範囲に存在しないと判定された場合には、増幅器又はスピーカが故障している旨の警報をする警報手段とを有すること特徴とする音声報知装置である。
本発明において、消費電力は消費電流をも含む概念で用いている。消費電力は消費電流と給電電圧から分かるので、直接、消費電力を検出しなくとも、消費電流を検出して、その消費電流が正常範囲に存在するか否かを判定する場合を本発明は含む。正常範囲は、一般的には、第1閾値以上、第2閾値以下である。しかし、第1閾値は0、第2閾値は無限大であっても良い。例えば、スピーカのコイルが短絡している場合には、増幅器の消費電力(消費電流)は最大値となる。この最大値を異常時最大値という。スピーカのコイルが断線している場合には、増幅器の消費電力は最小値となる。この最小値を異常時最小値という。したがって、第1閾値は異常時最小値より大きく、正常時の消費電力(消費電流)の範囲内の任意の値(以下、正常値)よりも小さい値とし、第2閾値は異常時最大値より小さく、正常値よりも大きい値に設定される。警報手段は可視的に知らせるランプ、ディスプレイ、可聴的に知らせるスピーカ、ブザーなどである。
また、本発明において、音声の出力期間以外の音声非出力期間において、定間隔又は不定間隔の時刻で、増幅器を起動させ、消費電力検出手段により消費電力を検出させて故障検出を行う制御装置を設けても良い。すなわち、スピーカから音声が出力される音声の出力期間において、消費電力(電流)を検出しても、その期間以外の期間において増幅器の消費電力(電流)を検出するようにしても良い。音声の出力期間はセンタから送信される信号により判別できる。音声の出力期間以外で故障判定する場合には、定間隔又は不定間隔の時刻で実行されることになる。
また、音声非出力期間において故障判定をする場合には、増幅器に音声信号を入力させずに行っても良い。音声信号を増幅器に入力させない時の増幅器の消費電力(電流)と、異常時最小値、異常時最大値とのそれぞれの間に第1閾値、第2閾値を設定すれば良い。また、制御装置は、音声非出力期間において増幅器を起動させる時に増幅器に試験信号を入力させるようにしても良い。試験信号は、可聴周波数帯域以外の周波数であることが望ましい。この時の試験信号を可聴周波数帯域以外の周波数とすることで、スピーカから出力される音が住民に聞こえないようにして、故障判定を実行することができる。また、試験信号は、スピーカから音が出力されないレベルの信号としても良い。同様に住民に対して騒音防止が図られる。故障判定の時期は作業員の押しボタンの操作などによっても良い。
第2の発明は、センタから送信される信号に応じて、その信号を増幅器で増幅した後に、高所に配置された複数のスピーカから、それらのスピーカが支配する領域に音声を出力するようにした音声報知装置において、スピーカの入力インピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、インピーダンス検出手段により検出されたインピーダンスが予め設定された所定の正常範囲に存在するか否かを判定する判定手段と、判定手段によりインピーダンスが正常範囲に存在しないと判定された場合には、スピーカが故障している旨の警報をする警報手段とを有すること特徴とする音声報知装置である。
第1の発明が故障判定を増幅の消費電力(消費電流)の値が正常範囲に存在するか否かで行っているが、第2の発明は、故障判定をスピーカの入力インピーダンスが正常範囲に存在するか否かで行っている。インピーダンスは直流抵抗を含む概念である。第2の発明において、インピーダンス検出手段は、増幅器とスピーカとの間に配設されたスイッチであって、スピーカの入力端を増幅器の出力端に接続する接続側と、スピーカの入力端を増幅器の出力端から分離してインピーダンス検出手段の入力端に接続する遮断側とで切り替えるスイッチを設けることが望ましい。スピーカの入力インピーダンスを測定する場合に増幅器の出力端側を切り離せるので、入力インピーダンスの測定が容易となる。故障がない場合のスピーカの入力インピーダンスはある正常範囲に存在する。したがって、正常範囲を区画する第1閾値と第2閾値とを適正に設定すれば、スピーカのコイルの短絡や断線の故障を容易に判定することができる。
また、第2発明において、インピーダンス検出手段の入力端とスピーカの入力端とを接続するスイッチを設けても良い。この場合には、スピーカの入力インピーダンスの測定時に増幅器の出力端を切り離していない。したがって、測定される入力インピーダンスは、スピーカの入力インピーダンスと増幅器の出力インピーダンスとの並列インピーダンスとなる。しかし、音声非出力期間においては、増幅器は給電が停止され非動作状態にあるので、増幅器の出力インピーダンスは十分に大きい(理想的には無限大)。したがって、測定される並列インピーダンスは、スピーカの入力インピーダンスに等しくなる。
音声の出力期間であっても、スピーカの異常は判定できる。スピーカのコイルが短絡している場合には、測定される並列インピーダンス(短絡時測定インピーダンス)は0となり、コイルが断線している場合には測定される並列インピーダンス(断線時測定インピーダンス)は増幅器の入力インピーダンスに等しくなる。スピーカが正常である場合には、測定される並列インピーダンスは増幅器の出力インピーダンスとスピーカの正常時の入力インピーダンスとの並列インピーダンス(正常時測定インピーダンス)となる。この正常時測定インピーダンスは短絡時測定インピーダンス0より大きく、断線時測定インピーダンス、即ち増幅器の出力インピーダンスよりも小さい。したがって、音声の出力期間であっても、スピーカの故障を判定することができる。
また、第2の発明において、定間隔又は不定間隔の時刻で、インピーダンス検出手段によりインピーダンスを検出させて故障検出を行う制御装置を設けても良い。
また、切替スイッチを用いる場合、単路スイッチを用いる場合も、制御装置は、増幅器に給電されている期間はインピーダンス検出手段の入力端とスピーカの入力端とを遮断状態とし、インピーダンスを検出する期間にはインピーダンス検出手段の入力端とスピーカの入力端とを接続状態とするようにうスイッチを制御することが望ましい。
第3の発明は、センタから送信される信号に応じて、その信号を増幅器で増幅した後に、高所に配置された複数のスピーカから、それらのスピーカが支配する領域に音声を出力するようにした音声報知装置において、スピーカの配設位置に接近して設けられ、スピーカの出力する音を集音する集音手段と、音声の出力期間において、集音手段の出力する信号レベルが予め設定された正常範囲に存在するか否かを判定する判定手段と、判定手段により音声レベルが正常範囲に存在しないと判定された場合には、スピーカが故障している旨の警報をする警報手段とを有すること特徴とする音声報知装置である。
第4の発明は、センタから送信される信号に応じて、その信号を増幅器で増幅した後に、高所に配置された複数のスピーカから、それらのスピーカが支配する領域に音声を出力するようにした音声報知装置において、スピーカの配設位置に接近して設けられ、スピーカの出力する音を集音する集音手段と、集音手段の出力する信号レベルが予め設定された正常範囲に存在するか否かを判定する判定手段と、判定手段により音声レベルが正常範囲に存在しないと判定された場合には、スピーカが故障している旨の警報をする警報手段と、音声の出力期間以外の音声非出力期間において定間隔又は不定間隔の時刻で、増幅器を起動させ、増幅器に試験信号を入力させて、集音手段により音声レベルを検出させて故障検出を行う制御装置とを有することを特徴とする音声報知装置である。
第4の発明では、音声非出力期間において定間隔又は不定間隔の時刻で、増幅器を起動させ、増幅器に試験信号を入力させて、集音手段からスピーカから出力された音を検出することを特徴としている。試験信号は、可聴周波数帯域以外の周波数であることが望ましい。試験信号による音は住民には聞こえないので望ましい。
第1〜第4の発明において、判定手段による結果を、判定した日時と共に記憶する判定履歴記憶手段を設けるようにしても良い。
本第1、第2発明は、音声の出力期間、音声非出力期間に係わらず、増幅器の消費電力(消費電流)又はスピーカの入力インピーダンスを測定しているので、故障検出から警報までの時間を短縮することができる。また、第4の発明は、音声非出力期間においてスピーカの出力音を検出しているので、同様に、故障検出から警報までの時間を短縮することができる。また、第1〜第4の発明において、警報装置はスピーカを有する音声報知装置に設けられるので、近隣の住民が故障をセンタに知らせることができる、専門の監視員の巡回を必要としない。
本発明の第1実施例に係る音声報知装置を示した構成図。
第1実施例の音声報知装置のCPUの処理手順を示したフローチャート。
本発明の第2実施例に係る音声報知装置を示した構成図。
第2実施例の音声報知装置のCPUの処理手順を示したフローチャート。
第2実施例の変形例に係る音声報知装置を示した構成図。
本発明の第3実施例に係る音声報知装置を示した構成図。
第3実施例の音声報知装置のCPUの処理手順を示したフローチャート。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
本実施例は増幅器又はスピーカの故障を増幅器の消費電力(消費電流)で判定する例である。以下では消費電流を検出するものとして説明する。図1は、本実施例に係る音声報知装置1の構成図である。本音声報知装置1は、自治体地域に設置されている電柱、電話支柱などの柱状体やビルや家屋の高所などに取り付けられる。MCA受信機10は、センタ30から無線信号を受信して、音声をスピーカ18から出力する装置である。MCA受信機10の音声信号出力端子Aは可変減衰器12に入力し、可変減衰器12は増幅器14の入力段に設けられている。可変減衰器12と増幅器14とが可変利得増幅器15を構成している。増幅器14の出力は駆動増幅器16に入力し、駆動増幅器16によりスピーカ18が駆動されてスピーカ18から音声が出力される。増幅器14と駆動増幅器16の利得は固定されている。増幅器14、駆動増幅器16はスイッチ28を介して電源32から給電される。また、給電電流である消費電流が電流検出器21により検出され、その値はCPU20により読み取られる。
また、MCA受信機10はセンタ30が送信する信号のうちデータ信号を復調して、信号が緊急情報か、そうでない通常情報かの送信される信号の種別を表す信号がデータ端子Bから出力される。すなわち、緊急情報であればデータ端子BはHレベル、通常情報であればデータ端子BはLレベルとなる。また、センタ30から送信される信号には、音声情報の出力期間(以下、音声出力期間という)を示す放送開始と放送終了のタイミングを示す情報が含まれている。MCA受信機10はこの出力期間情報を復調して、データ端子Cからは放送開始時刻から放送終了時刻の間Hレベルとなる音声出力期間信号が出力される。MCA受信機10のデータ端子Bからの種別信号はCPU20に入力している。
また、CPU20にはメモリ24とPC26とが接続されている。メモリ24は故障が発生した時刻と測定された消費電流や故障モードが記憶される故障ログメモリ24を有している。PC26は消費電流の正常範囲を決定する下限値である第1閾値と、上限値である第2閾値とを設定するものであり、設定された値はメモリ24に記憶される。また、異常が検出された時に外部に知らせるための警報ランプ40と警報ブザー41がCPU20に接続されている。
CPU20は、MCA受信機10のデータ端子Bから出力される緊急情報か通常情報かを示す種別信号、周囲の騒音レベル、現在時刻が夜間時間帯に存在するか否かに基づいて、可変減衰器12の減衰量を可変設定する。また、MCA受信機10のデータ端子Cから出力される出力期間信号は、CPU29、増幅器14、駆動増幅器16に給電するためのスイッチ29、28の制御端子に入力している。したがって、データ端子Cの電圧レベルがHレベルの期間、すなわち、放送開始時刻から放送終了時刻の期間、CPU20、増幅器14、駆動増幅器16に給電されることになる。なお、メモリ24はCPU20から給電されている。また、センタ30から送信される信号に含まれる音声信号は、出力期間信号の立ち上がり、すなわち、放送開始信号が出力されてから、CPU20、増幅器14、駆動増幅器16に給電されて、これらの機器が動作可能状態となる遅延時間の後に送信される。
また、スピーカ18は、4つあり、それぞれは、水平面内で直交する4方向に向かって配設されている。利得可変増幅器15、駆動増幅器16、スピーカ18、スイッチ28を1組として、4チャンネル分存在し、上記の4つのスピーカが、それぞれ、独立した減衰量で駆動されるように構成されている。
次に、本音声報知装置1の作用をCPU20の制御手順を示した図2のフローチャートに基づいて説明する。このプログラムは一定の時間間隔で実行される。ステップ100においてMCA受信機10のデータ端子Cのレベルが検出され、音声出力期間か否かが判定される。音声出力期間であればスイッチ28はオン状態となっている。ステップ104において、それぞれの電流検出器21から消費電流が検出される。CPU20と各電流検出器21とは、独立したそれぞれの検出信号線で接続されている。一方、音声出力期間でなければ、すなわち、音声非出力期間であれば、ステップ102においてスイッチ28をオン状態にして、増幅器14と駆動増幅器16に給電する。給電後、ステップ104において電流検出器21から消費電流が検出される。
次にステップ106において、検出された消費電流がメモリ24に記憶されている第1閾値以上、第2閾値以下か、すなわち、正常範囲に存在するか否かが判定される。第1閾値はスピーカ18のコイルが断線している場合の消費電流(異常時最小値)よりも大きい値で正常値より小さい値に設定されている。第2閾値はスピーカ18のコイルが短絡している場合の消費電流(異常時最大値)より小さく正常値よりも大きい値に設定されている。消費電流が正常範囲に存在しないと判定された場合には、ステップ108において、異常を検出した時の日時と、検出された消費電流と第1閾値以下の故障か第2閾値以上の故障かの故障モードが、故障ログメモリ241に記録される。そして、ステップ110において、警報ランプ40が点灯され警報ブザー41が鳴動される。また、ステップ106において消費電流が正常範囲に存在すると判定された場合には、本プログラムは終了される。近くの住民が警報ランプ40の点灯や警報ブザー41の鳴動に気が付き、センタに故障が発生したことを知らせる。これにより、センタは直ちにスピーカ18、増幅器14、駆動増幅器16などを交換することができる。また、故障ログメモリ241に記憶されている故障ログは作業者の所有する携帯端末をCPU20に接続して、携帯端末に読み取ることができ、作業者は故障状態を認識することができる。
上記実施例において、音声非出力期間においても消費電流が検出されるため、重大な緊急放送の前に故障を検出し、故障を復旧させることができる。したがって、住民に対する報知が失敗することが少なくなる。上記実施例において、電源32の出力端子電圧は既知であるので、電流検出器21による検出された消費電流から消費電力を求めることができる。そして、この消費電力が正常範囲に存在するか否かを判定するようにしても良い。また、音声非出力期間においては、増幅器14には音声信号が入力されない。音声信号が入力されている増幅器の消費電流と、音声信号が入力されていない増幅器の消費電流は異なる。したがって、故障判定の正常範囲を決定する第1閾値と第2閾値は、音声信号の入力の有無により変化させても良い。また、音声非出力期間において、消費電流を検出する時には、CPU20により発生させた試験信号である擬似音声信号を増幅器に入力させるようにしても良い。この擬似音声信号は、可聴周波数帯域外の周波数とすれば、スピーカ18から可聴音が出力されることはないため騒音を住民に与えることはない。また、可聴周波数帯域の擬似音声信号を用いる場合には、音声信号はスピーカ18から音声が出力されても騒音とならないような低レベルとしても良い。また、故障検出の時期は作業者がPC26を操作することで与えても良い。
本実施例はスピーカ18の入力インピーダンスを検出する例である。本実施例では入力インピーダンスは直流抵抗としている。図3において、図1と異なる部分のみ説明する。駆動増幅器16とスピーカ18との間には切替スイッチ50が配設されている。この切替スイッチ50は、スイッチ28がオンの場合(音声出力期間)には駆動増幅器16とスピーカ18とを接続させる。また、切替スイッチ50は、スイッチ28がオフの場合(音声非出力期間)には駆動増幅器16とスピーカ18とを分離し、スピーカ18と電源52とを接続する。この電源52から出力される直流電流が電流検出器51により検出されて、その値はCPU20により読み取られる。
次に、本音声報知装置1の作用をCPU20の制御手順を示した図4のフローチャートに基づいて説明する。このプログラムは一定の時間間隔で実行される。ステップ200においてMCA受信機10のデータ端子Cのレベルが検出され、音声出力期間か否かが判定される。音声出力期間であればステップ212において切替スイッチ50を駆動増幅器16の側に切替えて、本プログラムは終了される。音声非出力期間であれば、ステップ202において、切替スイッチ50を駆動増幅器16の側から電流検出器51の側に切替える。ステップ204においてそれぞれの電流検出器51から電流Iが検出される。電源52の端子電圧Vは既知であるので、抵抗RがV/Iにより算定される。この抵抗Rは、スピーカ18の入力抵抗である。
次にステップ206において、抵抗Rがメモリ24に記憶されている第1閾値以上、第2閾値以下か、すなわち、正常範囲に存在するか否かが判定される。第1閾値はスピーカ18のコイルが短絡している場合の抵抗(異常時最小値)よりも大きい値で正常値より小さい値に設定されている。第2閾値はスピーカ18のコイルが断線している場合の抵抗(異常時最大値)より小さく正常値よりも大きい値に設定されている。抵抗Rが正常範囲に存在しないと判定された場合には、ステップ208において、異常を検出した時の日時と、検出された抵抗Rと、第1閾値以下の故障か第2閾値以上の故障かを示す故障モードが、故障ログメモリ241に記録される。そして、ステップ210において、警報ランプ40が点灯され警報ブザー41が鳴動される。近くの住民が警報ランプ40の点灯や警報ブザー41の鳴動に気が付き、センタに故障が発生したことを知らせる。これにより、センタは直ちにスピーカ18を交換することができる。また、故障ログメモリ241に記憶されている故障ログは作業者の所有する携帯端末をCPU20に接続して、携帯端末に読み取ることができ、作業者は故障状態を認識することができる。
上記実施例において、音声非出力期間において、スピーカ18の入力抵抗が検出されるため、重大な緊急放送の前に故障を検出し、故障を復旧させることができる。したがって、住民に対する報知に失敗することがなくなる。
また、切替スイッチ50に代えて図5のようにスイッチ53を設けても良い。この場合には、駆動増幅器16の出力端とスピーカ18の入力端は常時接続されている。図4のステップ200で音声出力期間であると判定された場合にはステップ212においてスイッチ53をオフとして電流検出器51を切り離す。ステップ200で音声出力期間でないと判定された場合には、ステップ202でスイッチ53をオンとする。そして、ステップ204で電流を電流検出器51から電流が読み取られる。この電流Iと電源52の出力電圧Vとから抵抗RをV/Iで求める。音声非出力期間の場合には駆動増幅器16には給電されていないので、駆動増幅器16の出力抵抗は十分に大きい(理論上は無限大)。したがって、駆動増幅器16とスピーカ18とは切り離されているのと等価である。この結果、図5の構成によっても、スピーカ18の故障を検出することができる。
電流検出器51による電流の検出は、音声出力期間において実行しても良い。動作時の駆動増幅器16の出力抵抗をr1 、スピーカ18の正常時の入力抵抗をr2 とする。このとき、検出される正常抵抗Rs は、r1 ・r2 /(r1 +r2 )である。スピーカ18のコイルが短絡している場合に測定される抵抗Rは0であり、コイルが断線している場合に測定される抵抗はr1 である。0<Rs <r1 が、常に、成立するので、スピーカ18が短絡故障、断線故障、正常状態にあるかを、検出抵抗Rで判別することができる。すなわち、第1閾値を0と正常抵抗Rs の間、第2閾値を正常抵抗Rs とr1 (駆動増幅器の出力抵抗)の間に設定すれば良い。短絡に近い状態、断線に近い状態も第1閾値と第2閾値を適正に設定することで判別することができる。このようにして、音声出力期間においても故障の判定を実施することができる。また、スピーカ18の入力抵抗を測定しているが、電源52を交流電源として複素数のインピーダンスを測定するようにしても良い。また、故障判定の時期は作業員の指示によっても良い。
本実施例はスピーカ18の前面にマイクロホン60を設けて、スピーカ18の出力音を検出するようにした例である。CPU20の動作手順は図7のフローチャートに示す通りである。第1実施例の図2で示す処理手順と異なる点は、音声非出力期間の場合にステップ302でスイッチ28をオンとして増幅器に給電し、ステップ303においてCPU20で生成された試験信号である擬似音声信号を増幅器14に入力している。この擬似音声信号は可聴周波数帯域外の周波数か、可聴周波数帯域の場合には減衰器12により駆動増幅器16の出力を低下させる。ステップ304においてマイクロホン60の整流電圧を入力して音圧を検出する。ステップ306においてその検出された音圧が正常範囲に存在するか否かが判定される。ステップ308以下は、図2の対応するステップと同一である。
本発明は、地域に音声報知する地域防災システムにおける故障検出に用いることができる。
1…音声報知装置
10…MCA受信機
20…CPU
21,51…電流検出器
12…可変減衰器
14…増幅器
15…可変利得増幅器
28,52…スイッチ
50…切替スイッチ
本発明は、屋外の電柱などの高所に設置されたスピーカから、所定エリアにおいて、音声による一般広報を行ったり、地震発生、つなみ襲来、土砂崩れ、河川氾濫などの緊急情報を報知する装置に関する。
従来の屋外拡声子局は、防災行政無線の子局内に増幅機を内蔵したものを使用し、自治体内の地域に凡そ半径600m毎に設置されている。例えば防災センタから定時に動作確認を兼ねて、これらの屋外拡声子局に定時案内放送を行っていた。この定時案内放送が鳴らないと、最寄りの住民などから鳴らなかったとの報告が来るようになっていた。これにより早期に故障検知が出来、故障修復することが出来た。
この他に、防災センタから、屋外拡声子局に対し監視信号を送出して屋外拡声子局の異常確認を行う方法も有るが、この方法は屋外拡声子局からの無線による応答により、無線回線が動作していることは確認できるが、スピ−カーから音が出たことを確認することは出来ない。
スピーカの故障を検出する装置として、下記特許文献1に開示のように、スピーカの直近に音圧センサを設けて、この音圧センサにより音声が検出された場合には、センタに向けてアンサーバック信号を送信するようにした装置が知られている。また、下記特許文献2のように、周囲の環境音に左右されないように、スピーカの出力音を空気振動で検出するのではなく直接スピーカの振動を検出するようにした装置が知られている。また、下記特許文献3のように子局において子局の障害ログを記憶し、後に作業員が携帯外部接続装置を子局に接続してこのログを読み取るようにした装置が知られている。
特許第2724855号
特許第6193524号
特開2011−123537
とこが上記特許文献1、2に記載の装置においてはアンサーバーックのための設備を余分に必要とした。また、特許文献3に記載の装置では、作業員が携帯端末を子局に接続して、記録されたログデータを読み取る必要があり、専用の作業員を必要とし、監視作業が面倒であった。また、上記特許文献1〜3の装置は、スピーカから音声が出力されている期間に生じた障害を検出するものであり、告知放送をしていない期間において障害を検出する装置ではない。近年では、大規模都市などで毎日定時放送すると、周辺住民からの騒音苦情も多く、必要な時しか放送しない運用方法も多い。この場合故障していても検知することが出来ず、必要な時に放送されないことが問題となっている。防災行政無線は国民保護法により、人命や財産を守る大切な役割を担っており、放送されないことは致命的な問題となる。
そこで、本発明は上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、無線を用いたコールバックシステムなどの新たなシステムを増設することなく、専門の監視作業員を関与させることなく、子局から告知放送が出力されないという故障をいち早く感知できるようにすることである。
上記の課題を解決するための第1発明は、防災行政無線の子局であって、防災センタから送信される無線信号に応じて、その無線信号のうちの音声信号を増幅器で増幅した後に、高所に配置された複数のスピーカから、それらのスピーカが支配する領域に音声による緊急情報を出力するようにした音声緊急情報報知装置において、増幅器に給電するための直流電源と、直流電源から増幅器への給電と遮電とを切り換えるスイッチと、無線信号を受信して音声の出力期間である音声出力期間と、音声出力期間以外の音声非出力期間とを表す制御信号を出力し、音声出力期間の場合には、スイッチを増幅器への給電状態にすると共に、受信した音声信号を増幅器に出力し、音声非出力期間の場合には、スイッチを増幅器への給電を遮断する状態にするMCA受信機と、増幅器の消費電力を検出する消費電力検出手段と、MCA受信機の出力する制御信号に基づいて、音声出力期間か音声非出力期間かを判別し、音声出力期間の場合には消費電力検出手段の検出値を取得し、音声非出力期間の場合には、定間隔又は不定間隔の時刻でスイッチを増幅器に給電する状態にし、前記増幅器に信号を入力しない状態で消費電力検出手段の検出値を取得する消費電力検出制御手段と、音声の出力期間においては、消費電力検出手段により検出された消費電力が第1の正常範囲に存在するか否かを判定する第1の判定手段と、音声非出力期間においては、消費電力検出手段により検出された消費電力が、第1の正常範囲と異なる第2の正常範囲に存在するか否かを判定する第2の判定手段と、第1の正常範囲の下限値を決定する第1閾値と上限値を決定する第2閾値及び第2の正常範囲の下限値を決定する第3閾値及び上限値を決定する第4閾値を記憶する正常範囲記憶手段と、正常範囲記憶手段に記憶される第1閾値、第2閾値、第3閾値及び第4閾値を設定する正常範囲設定手段と、第1の判定手段により消費電力が第1の正常範囲に存在しない、又は、第2の判定手段により消費電力が第2の正常範囲に存在しないと判定された場合には、増幅器又はスピーカが故障している旨の警報を警報ランプ又は警報ブザーにより出力して住民に故障を知らせる警報手段と、第1の判定手段及び第2の判定手段による結果を、判定した日時と共に記憶する判定履歴記憶手段とを有すること特徴とする音声緊急情報報知装置である。
本発明において、消費電力は消費電流をも含む概念で用いている。消費電力は消費電流と給電電圧から分かるので、直接、消費電力を検出しなくとも、消費電流を検出して、その消費電流が正常範囲に存在するか否かを判定する場合を本発明は含む。正常範囲は、一般的には、第1閾値以上、第2閾値以下である。しかし、第1閾値は0、第2閾値は無限大であっても良い。例えば、スピーカのコイルが短絡している場合には、増幅器の消費電力(消費電流)は最大値となる。この最大値を異常時最大値という。スピーカのコイルが断線している場合には、増幅器の消費電力は最小値となる。この最小値を異常時最小値という。したがって、第1閾値は異常時最小値より大きく、正常時の消費電力(消費電流)の範囲内の任意の値(以下、正常値)よりも小さい値とし、第2閾値は異常時最大値より小さく、正常値よりも大きい値に設定される。警報手段は可視的に知らせるランプ、ディスプレイ、可聴的に知らせるスピーカ、ブザーなどである。
また、本発明において、音声の出力期間以外の音声非出力期間において、定間隔又は不定間隔の時刻で、スイッチを通電状態にして増幅器を起動させ、消費電力検出手段により消費電力を検出させて故障検出を行う制御装置が設けられている。すなわち、スピーカから音声が出力される音声の出力期間において、消費電力(電流)を検出し、その期間以外の期間において増幅器の消費電力(電流)を検出している。音声の出力期間はセンタから送信される信号により判別できる。音声の出力期間以外で故障判定する場合には、定間隔又は不定間隔の時刻で実行されることになる。
また、音声非出力期間において故障判定をする場合には、増幅器に音声信号を入力させずに行う。音声信号を増幅器に入力させない時の増幅器の消費電力(電流)と、異常時最小値、異常時最大値とのそれぞれの間に第3閾値、第4閾値を設定すれば良い。
また、明細書には、制御装置は、音声非出力期間において増幅器を起動させる時に増幅器に試験信号を入力させるようにした発明も記載されている。この場合に試験信号は、可聴周波数帯域以外の周波数であることが望ましい。この時の試験信号を可聴周波数帯域以外の周波数とすることで、スピーカから出力される音が住民に聞こえないようにして、故障判定を実行することができる。また、試験信号は、スピーカから音が出力されないレベルの信号としても良い。同様に住民に対して騒音防止が図られる。故障判定の時期は作業員の押しボタンの操作などによっても良い。
また、明細書には、他の発明として、センタから送信される信号に応じて、その信号を増幅器で増幅した後に、高所に配置された複数のスピーカから、それらのスピーカが支配する領域に音声を出力するようにした音声報知装置において、スピーカの入力インピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、インピーダンス検出手段により検出されたインピーダンスが予め設定された所定の正常範囲に存在するか否かを判定する判定手段と、判定手段によりインピーダンスが正常範囲に存在しないと判定された場合には、スピーカが故障している旨の警報をする警報手段とを有すること特徴とする音声報知装置の発明が記載されている。
本発明が故障判定を増幅器の消費電力(消費電流)の値が正常範囲に存在するか否かで行っているが、他の発明は、故障判定をスピーカの入力インピーダンスが正常範囲に存在するか否かで行っている。インピーダンスは直流抵抗を含む概念である。第2の発明において、インピーダンス検出手段は、増幅器とスピーカとの間に配設されたスイッチであって、スピーカの入力端を増幅器の出力端に接続する接続側と、スピーカの入力端を増幅器の出力端から分離してインピーダンス検出手段の入力端に接続する遮断側とで切り替えるスイッチを設けることが望ましい。スピーカの入力インピーダンスを測定する場合に増幅器の出力端側を切り離せるので、入力インピーダンスの測定が容易となる。故障がない場合のスピーカの入力インピーダンスはある正常範囲に存在する。したがって、正常範囲を区画する第1閾値と第2閾値とを適正に設定すれば、スピーカのコイルの短絡や断線の故障を容易に判定することができる。
また、他の発明において、インピーダンス検出手段の入力端とスピーカの入力端とを接続するスイッチを設けても良い。この場合には、スピーカの入力インピーダンスの測定時に増幅器の出力端を切り離していない。したがって、測定される入力インピーダンスは、スピーカの入力インピーダンスと増幅器の出力インピーダンスとの並列インピーダンスとなる。しかし、音声非出力期間においては、増幅器は給電が停止され非動作状態にあるので、増幅器の出力インピーダンスは十分に大きい(理想的には無限大)。したがって、測定される並列インピーダンスは、スピーカの入力インピーダンスに等しくなる。
音声の出力期間であっても、スピーカの異常は判定できる。スピーカのコイルが短絡している場合には、測定される並列インピーダンス(短絡時測定インピーダンス)は0となり、コイルが断線している場合には測定される並列インピーダンス(断線時測定インピーダンス)は増幅器の出力インピーダンスに等しくなる。スピーカが正常である場合には、測定される並列インピーダンスは増幅器の出力インピーダンスとスピーカの正常時の入力インピーダンスとの並列インピーダンス(正常時測定インピーダンス)となる。この正常時測定インピーダンスは短絡時測定インピーダンス0より大きく、断線時測定インピーダンス、即ち増幅器の出力インピーダンスよりも小さい。したがって、音声の出力期間であっても、スピーカの故障を判定することができる。
また、他の発明において、定間隔又は不定間隔の時刻で、インピーダンス検出手段によりインピーダンスを検出させて故障検出を行う制御装置を設けても良い。
また、切替スイッチを用いる場合、単路スイッチを用いる場合も、制御装置は、増幅器に給電されている期間はインピーダンス検出手段の入力端とスピーカの入力端とを遮断状態とし、インピーダンスを検出する期間にはインピーダンス検出手段の入力端とスピーカの入力端とを接続状態とするようにうスイッチを制御することが望ましい。
明細書には、さらに、他の発明として、センタから送信される信号に応じて、その信号を増幅器で増幅した後に、高所に配置された複数のスピーカから、それらのスピーカが支配する領域に音声を出力するようにした音声報知装置において、スピーカの配設位置に接近して設けられ、スピーカの出力する音を集音する集音手段と、音声の出力期間において、集音手段の出力する信号レベルが予め設定された正常範囲に存在するか否かを判定する判定手段と、判定手段により音声レベルが正常範囲に存在しないと判定された場合には、スピーカが故障している旨の警報をする警報手段とを有すること特徴とする音声報知装置の発明が記載されている。
明細書には、さらに、他の発明として、センタから送信される信号に応じて、その信号を増幅器で増幅した後に、高所に配置された複数のスピーカから、それらのスピーカが支配する領域に音声を出力するようにした音声報知装置において、スピーカの配設位置に接近して設けられ、スピーカの出力する音を集音する集音手段と、集音手段の出力する信号レベルが予め設定された正常範囲に存在するか否かを判定する判定手段と、判定手段により音声レベルが正常範囲に存在しないと判定された場合には、スピーカが故障している旨の警報をする警報手段と、音声の出力期間以外の音声非出力期間において定間隔又は不定間隔の時刻で、増幅器を起動させ、増幅器に試験信号を入力させて、集音手段により音声レベルを検出させて故障検出を行う制御装置とを有することを特徴とする音声報知装置の発明が記載されている。
この発明では、音声非出力期間において定間隔又は不定間隔の時刻で、増幅器を起動させ、増幅器に試験信号を入力させて、集音手段からスピーカから出力された音を検出することを特徴としている。試験信号は、可聴周波数帯域以外の周波数であることが望ましい。試験信号による音は住民には聞こえないので望ましい。
上記の全発明において、判定手段による結果を、判定した日時と共に記憶する判定履歴記憶手段を設けるようにしても良い。
本発明及び他の発明は、音声の出力期間、音声非出力期間に係わらず、増幅器の消費電力(消費電流)又はスピーカの入力インピーダンスを測定しているので、故障検出から警報までの時間を短縮することができる。また、さらに他の発明は、音声非出力期間においてスピーカの出力音を検出しているので、同様に、故障検出から警報までの時間を短縮することができる。また、上記各発明において、警報装置はスピーカを有する音声報知装置に設けられるので、近隣の住民が故障をセンタに知らせることができる、専門の監視員の巡回を必要としない。
本発明の第1実施例に係る音声報知装置を示した構成図。
第1実施例の音声報知装置のCPUの処理手順を示したフローチャート。
本発明の第2実施例に係る音声報知装置を示した構成図。
第2実施例の音声報知装置のCPUの処理手順を示したフローチャート。
第2実施例の変形例に係る音声報知装置を示した構成図。
本発明の第3実施例に係る音声報知装置を示した構成図。
第3実施例の音声報知装置のCPUの処理手順を示したフローチャート。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
本実施例は増幅器又はスピーカの故障を増幅器の消費電力(消費電流)で判定する例である。以下では消費電流を検出するものとして説明する。図1は、本実施例に係る音声報知装置1の構成図である。本音声報知装置1は、自治体地域に設置されている電柱、電話支柱などの柱状体やビルや家屋の高所などに取り付けられる。MCA受信機10は、センタ30から無線信号を受信して、音声をスピーカ18から出力する装置である。MCA受信機10の音声信号出力端子Aは可変減衰器12に入力し、可変減衰器12は増幅器14の入力段に設けられている。可変減衰器12と増幅器14とが可変利得増幅器15を構成している。増幅器14の出力は駆動増幅器16に入力し、駆動増幅器16によりスピーカ18が駆動されてスピーカ18から音声が出力される。増幅器14と駆動増幅器16の利得は固定されている。増幅器14、駆動増幅器16はスイッチ28を介して電源32から給電される。また、給電電流である消費電流が電流検出器21により検出され、その値はCPU20により読み取られる。
また、MCA受信機10はセンタ30が送信する信号のうちデータ信号を復調して、信号が緊急情報か、そうでない通常情報かの送信される信号の種別を表す信号がデータ端子Bから出力される。すなわち、緊急情報であればデータ端子BはHレベル、通常情報であればデータ端子BはLレベルとなる。また、センタ30から送信される信号には、音声情報の出力期間(以下、音声出力期間という)を示す放送開始と放送終了のタイミングを示す情報が含まれている。MCA受信機10はこの出力期間情報を復調して、データ端子Cからは放送開始時刻から放送終了時刻の間Hレベルとなる音声出力期間信号が出力される。MCA受信機10のデータ端子Bからの種別信号はCPU20に入力している。
また、CPU20にはメモリ24とPC26とが接続されている。メモリ24は故障が発生した時刻と測定された消費電流や故障モードが記憶される故障ログメモリ24を有している。PC26は消費電流の正常範囲を決定する下限値である第1閾値と、上限値である第2閾値とを設定するものであり、設定された値はメモリ24に記憶される。また、異常が検出された時に外部に知らせるための警報ランプ40と警報ブザー41がCPU20に接続されている。
CPU20は、MCA受信機10のデータ端子Bから出力される緊急情報か通常情報かを示す種別信号、周囲の騒音レベル、現在時刻が夜間時間帯に存在するか否かに基づいて、可変減衰器12の減衰量を可変設定する。また、MCA受信機10のデータ端子Cから出力される出力期間信号は、CPU29、増幅器14、駆動増幅器16に給電するためのスイッチ29、28の制御端子に入力している。したがって、データ端子Cの電圧レベルがHレベルの期間、すなわち、放送開始時刻から放送終了時刻の期間、CPU20、増幅器14、駆動増幅器16に給電されることになる。なお、メモリ24はCPU20から給電されている。また、センタ30から送信される信号に含まれる音声信号は、出力期間信号の立ち上がり、すなわち、放送開始信号が出力されてから、CPU20、増幅器14、駆動増幅器16に給電されて、これらの機器が動作可能状態となる遅延時間の後に送信される。
また、スピーカ18は、4つあり、それぞれは、水平面内で直交する4方向に向かって配設されている。利得可変増幅器15、駆動増幅器16、スピーカ18、スイッチ28を1組として、4チャンネル分存在し、上記の4つのスピーカが、それぞれ、独立した減衰量で駆動されるように構成されている。
次に、本音声報知装置1の作用をCPU20の制御手順を示した図2のフローチャートに基づいて説明する。このプログラムは一定の時間間隔で実行される。ステップ100においてMCA受信機10のデータ端子Cのレベルが検出され、音声出力期間か否かが判定される。音声出力期間であればスイッチ28はオン状態となっている。ステップ104において、それぞれの電流検出器21から消費電流が検出される。CPU20と各電流検出器21とは、独立したそれぞれの検出信号線で接続されている。一方、音声出力期間でなければ、すなわち、音声非出力期間であれば、ステップ102においてスイッチ28をオン状態にして、増幅器14と駆動増幅器16に給電する。給電後、ステップ104において電流検出器21から消費電流が検出される。
次にステップ106において、検出された消費電流がメモリ24に記憶されている第1閾値以上、第2閾値以下か、すなわち、正常範囲に存在するか否かが判定される。第1閾値はスピーカ18のコイルが断線している場合の消費電流(異常時最小値)よりも大きい値で正常値より小さい値に設定されている。第2閾値はスピーカ18のコイルが短絡している場合の消費電流(異常時最大値)より小さく正常値よりも大きい値に設定されている。消費電流が正常範囲に存在しないと判定された場合には、ステップ108において、異常を検出した時の日時と、検出された消費電流と第1閾値以下の故障か第2閾値以上の故障かの故障モードが、故障ログメモリ241に記録される。そして、ステップ110において、警報ランプ40が点灯され警報ブザー41が鳴動される。また、ステップ106において消費電流が正常範囲に存在すると判定された場合には、本プログラムは終了される。近くの住民が警報ランプ40の点灯や警報ブザー41の鳴動に気が付き、センタに故障が発生したことを知らせる。これにより、センタは直ちにスピーカ18、増幅器14、駆動増幅器16などを交換することができる。また、故障ログメモリ241に記憶されている故障ログは作業者の所有する携帯端末をCPU20に接続して、携帯端末に読み取ることができ、作業者は故障状態を認識することができる。
上記実施例において、音声非出力期間においても消費電流が検出されるため、重大な緊急放送の前に故障を検出し、故障を復旧させることができる。したがって、住民に対する報知が失敗することが少なくなる。上記実施例において、電源32の出力端子電圧は既知であるので、電流検出器21による検出された消費電流から消費電力を求めることができる。そして、この消費電力が正常範囲に存在するか否かを判定するようにしても良い。また、音声非出力期間においては、増幅器14には音声信号が入力されない。音声信号が入力されている増幅器の消費電流と、音声信号が入力されていない増幅器の消費電流は異なる。したがって、故障判定の正常範囲を決定する第1閾値と第2閾値は、音声信号の入力の有無により変化させても良い。また、音声非出力期間において、消費電流を検出する時には、CPU20により発生させた試験信号である擬似音声信号を増幅器に入力させるようにしても良い。この擬似音声信号は、可聴周波数帯域外の周波数とすれば、スピーカ18から可聴音が出力されることはないため騒音を住民に与えることはない。また、可聴周波数帯域の擬似音声信号を用いる場合には、音声信号はスピーカ18から音声が出力されても騒音とならないような低レベルとしても良い。また、故障検出の時期は作業者がPC26を操作することで与えても良い。
本実施例はスピーカ18の入力インピーダンスを検出する例である。本実施例では入力インピーダンスは直流抵抗としている。図3において、図1と異なる部分のみ説明する。駆動増幅器16とスピーカ18との間には切替スイッチ50が配設されている。この切替スイッチ50は、スイッチ28がオンの場合(音声出力期間)には駆動増幅器16とスピーカ18とを接続させる。また、切替スイッチ50は、スイッチ28がオフの場合(音声非出力期間)には駆動増幅器16とスピーカ18とを分離し、スピーカ18と電源52とを接続する。この電源52から出力される直流電流が電流検出器51により検出されて、その値はCPU20により読み取られる。
次に、本音声報知装置1の作用をCPU20の制御手順を示した図4のフローチャートに基づいて説明する。このプログラムは一定の時間間隔で実行される。ステップ200においてMCA受信機10のデータ端子Cのレベルが検出され、音声出力期間か否かが判定される。音声出力期間であればステップ212において切替スイッチ50を駆動増幅器16の側に切替えて、本プログラムは終了される。音声非出力期間であれば、ステップ202において、切替スイッチ50を駆動増幅器16の側から電流検出器51の側に切替える。ステップ204においてそれぞれの電流検出器51から電流Iが検出される。電源52の端子電圧Vは既知であるので、抵抗RがV/Iにより算定される。この抵抗Rは、スピーカ18の入力抵抗である。
次にステップ206において、抵抗Rがメモリ24に記憶されている第1閾値以上、第2閾値以下か、すなわち、正常範囲に存在するか否かが判定される。第1閾値はスピーカ18のコイルが短絡している場合の抵抗(異常時最小値)よりも大きい値で正常値より小さい値に設定されている。第2閾値はスピーカ18のコイルが断線している場合の抵抗(異常時最大値)より小さく正常値よりも大きい値に設定されている。抵抗Rが正常範囲に存在しないと判定された場合には、ステップ208において、異常を検出した時の日時と、検出された抵抗Rと、第1閾値以下の故障か第2閾値以上の故障かを示す故障モードが、故障ログメモリ241に記録される。そして、ステップ210において、警報ランプ40が点灯され警報ブザー41が鳴動される。近くの住民が警報ランプ40の点灯や警報ブザー41の鳴動に気が付き、センタに故障が発生したことを知らせる。これにより、センタは直ちにスピーカ18を交換することができる。また、故障ログメモリ241に記憶されている故障ログは作業者の所有する携帯端末をCPU20に接続して、携帯端末に読み取ることができ、作業者は故障状態を認識することができる。
上記実施例において、音声非出力期間において、スピーカ18の入力抵抗が検出されるため、重大な緊急放送の前に故障を検出し、故障を復旧させることができる。したがって、住民に対する報知に失敗することがなくなる。
また、切替スイッチ50に代えて図5のようにスイッチ53を設けても良い。この場合には、駆動増幅器16の出力端とスピーカ18の入力端は常時接続されている。図4のステップ200で音声出力期間であると判定された場合にはステップ212においてスイッチ53をオフとして電流検出器51を切り離す。ステップ200で音声出力期間でないと判定された場合には、ステップ202でスイッチ53をオンとする。そして、ステップ204で電流を電流検出器51から電流が読み取られる。この電流Iと電源52の出力電圧Vとから抵抗RをV/Iで求める。音声非出力期間の場合には駆動増幅器16には給電されていないので、駆動増幅器16の出力抵抗は十分に大きい(理論上は無限大)。したがって、駆動増幅器16とスピーカ18とは切り離されているのと等価である。この結果、図5の構成によっても、スピーカ18の故障を検出することができる。
電流検出器51による電流の検出は、音声出力期間において実行しても良い。動作時の駆動増幅器16の出力抵抗をr1 、スピーカ18の正常時の入力抵抗をr2 とする。このとき、検出される正常抵抗Rs は、r1 ・r2 /(r1 +r2 )である。スピーカ18のコイルが短絡している場合に測定される抵抗Rは0であり、コイルが断線している場合に測定される抵抗はr1 である。0<Rs <r1 が、常に、成立するので、スピーカ18が短絡故障、断線故障、正常状態にあるかを、検出抵抗Rで判別することができる。すなわち、第1閾値を0と正常抵抗Rs の間、第2閾値を正常抵抗Rs とr1 (駆動増幅器の出力抵抗)の間に設定すれば良い。短絡に近い状態、断線に近い状態も第1閾値と第2閾値を適正に設定することで判別することができる。このようにして、音声出力期間においても故障の判定を実施することができる。また、スピーカ18の入力抵抗を測定しているが、電源52を交流電源として複素数のインピーダンスを測定するようにしても良い。また、故障判定の時期は作業員の指示によっても良い。
本実施例はスピーカ18の前面にマイクロホン60を設けて、スピーカ18の出力音を検出するようにした例である。CPU20の動作手順は図7のフローチャートに示す通りである。第1実施例の図2で示す処理手順と異なる点は、音声非出力期間の場合にステップ302でスイッチ28をオンとして増幅器に給電し、ステップ303においてCPU20で生成された試験信号である擬似音声信号を増幅器14に入力している。この擬似音声信号は可聴周波数帯域外の周波数か、可聴周波数帯域の場合には減衰器12により駆動増幅器16の出力を低下させる。ステップ304においてマイクロホン60の整流電圧を入力して音圧を検出する。ステップ306においてその検出された音圧が正常範囲に存在するか否かが判定される。ステップ308以下は、図2の対応するステップと同一である。
本発明は、地域に音声報知する地域防災システムにおける故障検出に用いることができる。
1…音声報知装置
10…MCA受信機
20…CPU
21,51…電流検出器
12…可変減衰器
14…増幅器
15…可変利得増幅器
28,52…スイッチ
50…切替スイッチ