JP2019208368A - 焙煎コリアンダーシード - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明は、以下に示す焙煎コリアンダーシード、その製造方法、及びその用途を提供するものである。
〔1〕清涼香及び焙煎香を含む焙煎コリアンダーシードであって、
前記清涼香が、β−リナロール、リモネン、酢酸リナリル、酢酸シトロネリル、ネロール、ゲラニオール、及び酢酸ゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記焙煎香が、2−メチルピラジン、2−エチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2−エチル−5−メチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、トリメチルピラジン、フルフラール、酢酸フルフリル、アセチルフラン、ピロール、フルフリルピロール、及び2−アセチルピロールからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記焙煎コリアンダーシードを粒径1mm以下に粉砕し、この粉砕した焙煎コリアンダーシードの質量に対して14.7質量ppmの割合でデカンを内部標準物質として添加してガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)で分析した場合に、前記清涼香に由来するピーク面積の合計[A]、前記焙煎香に由来するピーク面積の合計[B]、及び、前記デカンに由来するピーク面積[D]が、次の条件(1)及び(2):
(1)0.01≦[B]/[A]≦0.2
(2)[B]/[D]≧0.1
を満たすことを特徴とする、焙煎コリアンダーシード。
〔2〕フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、グアヤコール、及び4−エチルグアヤコールからなる群から選択される少なくとも1種の焦げ香をさらに含み、前記焙煎コリアンダーシードを粒径1mm以下に粉砕してガスクロマトグラフ質量分析法で分析した場合の、前記焦げ香に由来するピーク面積の合計[C]が、次の条件(3):
(3)[C]<([A]+[B])×0.01
を満たす、前記〔1〕に記載の焙煎コリアンダーシード。
〔3〕未粉砕のコリアンダーシードを、品温170℃以上で加熱処理する工程を含むことを特徴とする、焙煎コリアンダーシードの製造方法。
〔4〕前記加熱処理工程が、4分以上20分以下の間行われる、前記〔3〕に記載の製造方法。
〔5〕前記加熱処理工程が、開放式容器内で行われる、前記〔3〕又は〔4〕に記載の製造方法。
〔6〕加熱処理された未粉砕のコリアンダーシードを粉砕処理する工程をさらに含む、前記〔3〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔7〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の焙煎コリアンダーシードを含む、飲食品。
〔8〕飲食品のコク味増強方法であって、
前記〔1〕又は〔2〕に記載の焙煎コリアンダーシード又は前記〔3〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の製造方法により得られた焙煎コリアンダーシードを、前記飲食品に添加する工程を含むことを特徴とする、方法。
〔9〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の焙煎コリアンダーシードを含む、飲食品のコク味増強剤。
〔10〕畜肉臭のマスキング方法であって、
前記〔1〕又は〔2〕に記載の焙煎コリアンダーシード又は前記〔3〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の製造方法により得られた焙煎コリアンダーシードを、畜肉に添加する工程を含むことを特徴とする、方法。
〔11〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の焙煎コリアンダーシードを含む、畜肉臭のマスキング剤。
本発明は、焙煎コリアンダーシードに関している。本明細書に記載の「焙煎コリアンダーシード」とは、香辛料として使用され得るコリアンダーの乾燥果実を、油や水を使用せずに加熱乾燥したものをいう。前記焙煎コリアンダーシードの原料としては、未粉砕のコリアンダーシードである限り特に限定されず、当技術分野で通常使用されている種々のコリアンダーシードを採用することができる。例えば、前記コリアンダーシードの産地は、モロッコ、インド、スリランカ、カナダ及び、ロシアであってもよい。なお、「未粉砕」とは、粉砕処理を施していないことをいい、「未粉砕のコリアンダーシード」には、粒の一部が半分から8分の1程度に欠けているようなコリアンダーシードも含まれる。特定の理論に拘束されるものではないが、未粉砕のコリアンダーシードを焙煎すると、当該コリアンダーシードがもともと有していた柑橘様の香りの成分(清涼香)及び焙煎中に生じた芳香成分(焙煎香及び増加した清涼香など)が、コリアンダーシードの外殻の働きで当該コリアンダーシード中に保持され得るが、コリアンダーシードを粉砕してから焙煎すると、これらの芳香成分が揮発して拡散し、当該コリアンダーシード中に各種芳香成分が保持されないと考えられる。
(1)0.01≦[B]/[A]≦0.2
を満たし、好ましくは、次の条件(1’):
(1’)0.02≦[B]/[A]≦0.1
を満たす。これに加えて、前記デカンに由来するピーク面積[D]と、前記[B]とが、次の条件(2):
(2)[B]/[D]≧0.1
を満たし、好ましくは、次の条件(2’):
(2’)[B]/[D]≧0.3
を満たす。コリアンダーシードの焙煎が十分に行われ、かつ焙煎中に生じた芳香成分が焙煎コリアンダーシード中に保持されていると、各条件が満たされことになる。本発明における焙煎コリアンダーシード中の前記香気成分のピーク面積とは、固相マイクロ抽出法(Solid Phase Micro Extraction:SPME法)を用いたガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)で得られる値を採用する。詳細な条件は、本明細書の実施例の項に記載する。
(3)[C]<([A]+[B])×0.01
を満たし得る。
(4)[A]≧[A’]×0.4
を満たしてもよい。
50gのモロッコ産コリアンダーシードを、砕かずにホールの状態で4号バット(276×211×35mm)に重ならないように並べた。このバットを、あらかじめ210℃に熱しておいたオーブンに入れ、20分間加熱した後に放冷して、焙煎コリアンダーシードを作製した。放冷前(加熱時)の品温は170℃であった。この焙煎コリアンダーシードは、特徴的な柑橘様の香りが強く、かつ香ばしい良好な風味を有していた。
コリアンダーシードの種類及び加熱条件を以下の表1に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様にしてコリアンダーシードを処理した。実施例7では、50kgのコリアンダーシードを直火平釜焙煎機に入れ、20rpmで撹拌しながら、ジャケット温度250℃で品温190℃になるまで加熱し、その品温を20分間保持した後に放冷した。また、比較例3では、10kgのコリアンダーシードを密閉撹拌釜(加圧釜)に入れ、20rpmでパドル撹拌しながら、ジャケット温度143℃で品温120℃になるまで加熱した後に放冷した。各実施例の焙煎コリアンダーシードは、特徴的な柑橘様の香りが強く、かつ香ばしい良好な風味を有していたが、各比較例のコリアンダーシード処理物は、香ばしさに欠けていた。
(1)試料調製方法
実施例若しくは比較例のコリアンダーシード又は通常の殺菌処理(120℃、10秒)だけが施された従来のコリアンダーシード(従来品)を、ミルサーで粒径1mm以下に粉砕し、そのうち500mgをSPME用バイアル(20mL容)に入れた。ここへ3.9mLの蒸留水を入れ、さらに内部標準物質として0.01μLのデカンを含む溶液100μLを加えて、コリアンダーシードに対して14.7質量ppmのデカンを含む試料を調製した。この試料をボルテックスミキサーにより均一に撹拌し、キャップで密閉した。
分析には、Agilent Technologies社のGCMS(7890A GC System、5975C inert XL MSD)とGerstel社のオートサンプラーを使用した。SPMEファイバーとしては、SUPELCO社のDivinylbenzene/Carboxen/Polydimethylsiloxane(2cm)を使用した。上記(1)で調製した試料を60℃で5分間予備加温した後、密閉したバイアル内で当該試料にSPMEファイバーを60℃で10分間暴露させて揮発成分を吸着させた後に、GCMSへインジェクションした。GCMS分析条件を次に示す。
使用カラム:Agilent DB−WAX(60m×0.25mm、0.25μm)
カラムオーブン昇温条件:(i)40℃で5分間保持した後に昇温開始→(ii)2℃/分の条件で加熱し120℃まで昇温→(iii)15℃/分の条件で加熱し240℃まで昇温し7分間保持させて終了。
β−リナロール、リモネン、酢酸リナリル、酢酸シトロネリル、ネロール、ゲラニオール、及び酢酸ゲラニオール
*Bグループ(焙煎香):
2−メチルピラジン、2−エチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2−エチル−5−メチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、トリメチルピラジン、フルフラール、酢酸フルフリル、アセチルフラン、ピロール、フルフリルピロール、及び2−アセチルピロール
*Cグループ(焦げ香):
フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、グアヤコール、及び4−エチルグアヤコール
実施例1〜8の焙煎コリアンダーシード及び比較例1〜4のコリアンダーシード処理物の清涼香、焙煎香、及び焦げ香に由来する香りを、通常の殺菌処理だけが施された従来のコリアンダーシードの香りを基準として、5名のパネルが以下のように評価した。
・清涼香
5:基準よりかなり強い
4:基準よりやや強い
3:基準と同じ
2:基準よりやや弱い
1:基準よりかなり弱い
・焙煎香及び焦げ香
3:基準よりかなり強い
2:基準よりやや強い
1:基準と同じ(焙煎香又は焦げ香をほとんど感じない)
(1)0.01≦[B]/[A]≦0.2
(2)[B]/[D]≧0.1
を満たしていた。
(1)コク味の増強1
温めた市販のレトルトビーフシチュー200gに対し、通常の殺菌処理だけが施された従来のコリアンダー又は実施例3の焙煎コリアンダーを0.2g添加し、よく混合した。パネル5名による官能評価を実施したところ、従来のコリアンダーよりも焙煎コリアンダーを添加した方が、コク味が強く感じられ美味しいと評価された。
市販の固形コンソメスープをお湯100mLに溶解後、通常の殺菌処理だけが施された従来のコリアンダー又は実施例3の焙煎コリアンダーを0.1g添加し、よく混合した。パネル5名による官能評価を実施したところ、従来のコリアンダーよりも焙煎コリアンダーを添加した方が、コク味が強く感じられ美味しいと評価された。
アメリカ産の牛もも肉200gに対し、通常の殺菌処理だけが施された従来のコリアンダー又は実施例3の焙煎コリアンダーを0.7g添加し、フライパンで加熱した。パネル5名による官能評価を実施したところ、従来のコリアンダーよりも焙煎コリアンダーを添加した方が、肉の臭みがマスキングされていて美味しいと評価された。
Claims (11)
- 清涼香及び焙煎香を含む焙煎コリアンダーシードであって、
前記清涼香が、β−リナロール、リモネン、酢酸リナリル、酢酸シトロネリル、ネロール、ゲラニオール、及び酢酸ゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記焙煎香が、2−メチルピラジン、2−エチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2−エチル−5−メチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、トリメチルピラジン、フルフラール、酢酸フルフリル、アセチルフラン、ピロール、フルフリルピロール、及び2−アセチルピロールからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記焙煎コリアンダーシードを粒径1mm以下に粉砕し、この粉砕した焙煎コリアンダーシードの質量に対して14.7質量ppmの割合でデカンを内部標準物質として添加してガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)で分析した場合に、前記清涼香に由来するピーク面積の合計[A]、前記焙煎香に由来するピーク面積の合計[B]、及び、前記デカンに由来するピーク面積[D]が、次の条件(1)及び(2):
(1)0.01≦[B]/[A]≦0.2
(2)[B]/[D]≧0.1
を満たすことを特徴とする、焙煎コリアンダーシード。 - フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、グアヤコール、及び4−エチルグアヤコールからなる群から選択される少なくとも1種の焦げ香をさらに含み、前記焙煎コリアンダーシードを粒径1mm以下に粉砕してガスクロマトグラフ質量分析法で分析した場合の、前記焦げ香に由来するピーク面積の合計[C]が、次の条件(3):
(3)[C]<([A]+[B])×0.01
を満たす、請求項1に記載の焙煎コリアンダーシード。 - 未粉砕のコリアンダーシードを、品温170℃以上で加熱処理する工程を含むことを特徴とする、焙煎コリアンダーシードの製造方法。
- 前記加熱処理工程が、4分以上20分以下の間行われる、請求項3に記載の製造方法。
- 前記加熱処理工程が、開放式容器内で行われる、請求項3又は4に記載の製造方法。
- 加熱処理された未粉砕のコリアンダーシードを粉砕処理する工程をさらに含む、請求項3〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の焙煎コリアンダーシードを含む、飲食品。
- 飲食品のコク味増強方法であって、
請求項1又は2に記載の焙煎コリアンダーシード又は請求項3〜6のいずれか1項に記載の製造方法により得られた焙煎コリアンダーシードを、前記飲食品に添加する工程を含むことを特徴とする、方法。 - 請求項1又は2に記載の焙煎コリアンダーシードを含む、飲食品のコク味増強剤。
- 畜肉臭のマスキング方法であって、
請求項1又は2に記載の焙煎コリアンダーシード又は請求項3〜6のいずれか1項に記載の製造方法により得られた焙煎コリアンダーシードを、畜肉に添加する工程を含むことを特徴とする、方法。 - 請求項1又は2に記載の焙煎コリアンダーシードを含む、畜肉臭のマスキング剤。
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