JP2019199508A - 成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】すべり性に優れたエラストマー層を備える成形品を提供する。【解決手段】本実施形態の成形品は、エラストマー層を備える成形品であって、エラストマー層の少なくとも一面側における表面粗さRaが、1.05μm以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、成形品に関する。
これまで成形品を構成するエラストマーについて様々な検討されてきた。この種の技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、表面を平滑化したエラストマーが記載されている(特許文献1の請求項1)。
特開2011−073148号公報
しかしながら、本発明者が検討したところ、上記特許文献1に記載のエラストマーは、すべり性の点で改善の余地を有することが判明した。
本発明者がさらに検討したところ、通常のエラストマーにおいては、所望のゴム特性が得られたとしても、表面が平滑に形成され、すべり性がしばしば低下することがあった。
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、エラストマー層の表面に凹凸を付与することにより、すべり性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
エラストマー層を備える成形品であって、
前記エラストマー層の少なくとも一面側における表面粗さRaが、1.05μm以上である、成形品が提供される。
本発明によれば、すべり性に優れたエラストマー層を備える成形品が提供される。
エラストマー層の表面に凹凸を付与する方法を説明するための図である。
本実施形態の成形品は、エラストマー層を備えるものである。
この成形品において、当該エラストマー層の少なくとも一面側における表面粗さRaが1.05μm以上となるように構成されている。
本発明者の知見によれば、通常のエラストマー層の表面は、表面粗さRaが0.5μm程度の平滑面で構成されるため、すべり性に改善の余地があることが判明した。これに対して、エラストマー層の表面に凹凸を付与することにより、表面粗さRaを1.05μm以上とすることで、すべり性を向上できることを見出した。
本実施形態によれば、すべり性に優れたエラストマー層を備える成形品を実現することができる。
また、本発明者の知見によれば、エラストマー層の表面に、シリコーン系等のすべり性付与剤をコーティングしてなるコーティング層を形成した場合、表面粗さRaを1.05μm以上とすることで、すべり性が向上するもの、破断伸びや引張強度、硬度などのゴム特性が低下することが新たに見出された。ここで、潤滑化を向上させるため、エラストマーの表面にシリコーン系潤滑剤をコーティングする技術としては、特開2017−165978号公報に記載の段落0031,0048等が挙げられる。
このようなすべり性とゴム特性とのトレードオフの関係を踏まえて検討した結果、エラストマー層の表面に物理的に凹凸を付与することにより、ゴム特性の低下を抑制しつつも、すべり性を向上できることが判明した。
詳細なメカニズムは定かでないが、すべり性付与剤からなるコーティング層を形成せず、当該コーティング層が形成されていない非コーティング面としつつも、その表面(露出面)を適度に粗面化できるため、ゴム特性が低下せずに、すべり性が改善される、と考えられる。
本実施形態の成形品において、当該エラストマー層の表面は、表面凹凸を有する露出面で構成されており、エラストマー層の表面における表面粗さRaが1.05μm以上となるように構成されている。
本実施形態によれば、すべり性およびゴム特性に優れたエラストマー層を備える成形品を実現することができる。
本実施形態に係るエラストマー層は、例えば、凹凸転写フィルムを用いて、エラストマーの成形時において表面に凹凸が付与(転写)され得る。すなわち、凹凸転写フィルムの表面凹凸をエラストマー層の表面に転写させることにより、表面凹凸を付与することが可能である。
ここで、図1に基づいて、エラストマー層の表面に凹凸を付与する方法の一例を説明する。図1は、金型を用いたプレス成型の工程断面図を示す。
図1に示すように、上型10と下型20とを組み合わせることで、成形空間が形成される。この成形空間内に、凹凸転写フィルム30,40およびエラストマー50を配置する。そして、所定の加熱・加圧条件にてプレス成形を実施することにより、シート状のエラストマー50(エラストマー層)の表面52に、凹凸転写フィルム30の表面32における表面プロファイル(表面凹凸形状)を転写することができる。このとき、凹凸転写フィルム40の表面凹凸形状をエラストマー50の反対側にも転写し得る。なお、凹凸転写フィルム30を使用せず、下型20に表面凹凸を形成し、それを転写することもできる。凹凸転写フィルム30,40をエラストマー50の両側に配置してもよいし、凹凸転写フィルム30をエラストマー50のいずれか一方の片側に配置してもよい。
成形方法としては、特に限定されないが、例えば、コンプレッション成形、トランスファー成形、インジェクション成形などを用いることができる。
上記凹凸転写フィルム30,40は、エラストマー50の少なくとも一部または全面と接するように配置され得る。
上記凹凸転写フィルム30,40は、例えば、マットフィルムやサンドペーパー(サンドマット)などの樹脂製シート、あるいは表面凹凸形状を有する金属シート等を用いることができる。上記凹凸転写フィルム30,40は、同一でもよく異なっていてもよい。
上記マットフィルムは、粒子が樹脂中に練り込まれた練り込みタイプの樹脂シートである。一方の上記サンドペーパー(サンドマット)は、砂(珪砂)を吹き付ける等のブラスト処理を表面に施し、フィルム表面に微細な凹凸が付与された樹脂シートである。
上記凹凸転写フィルム30の材料は、エラストマー50の材料と離型性に優れた樹脂材料であれば、特に限定されない。例えば、エラストマー50がシリコーン系エラストマーの場合、凹凸転写フィルム30の樹脂材料として、例えば、ポリエステル(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記マットフィルムの表面粗さRaは、例えば1.0μm〜100μm、好ましくは2.0m〜50μmである。また、上記サンドペーパーの表面粗さは、上記マットフィルムの表面粗さよりも粗く構成され得る。上記サンドペーパーのメッシュは、例えば、#100〜#10000、好ましくは#300〜#8000、より好ましくは#500〜#5000である。
なお、後述のエラストマー層の表面粗さRaの測定方法を用いて測定した場合、凹凸転写フィルム30,40の表面粗さRaは、例えば、1.0μm以上、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2.0μm以上、さらに好ましくは5.0μm以上であり、一方、100μm以下でもよく、50μm以下でもよく、20μm以下でもよい。
また、凹凸転写フィルム30,40を使用せずに、エラストマー50と接する上型10または下型20の金型表面に、このような数値範囲の表面粗さRaを付与したものを使用してもよい。
ただし、凹凸転写フィルム30,40を使用した方が、離型性に優れるため、製造安定性に優れたエラストマー層を実現できる。
エラストマー50は、シート状でもよいが、用途に応じて、様々な形状に成形加工され得る。このとき、凹凸転写フィルム30は、適切なエラストマー50の表面52に対して配置され得る。
上記エラストマー層を備える成形品は、各種の用途に用いることができるが、例えば、ガスケット等の医療機器、自動車用途、建築用途の構成部材または成形時の緩衝材等として好適に用いることができる。
以下、本実施形態に係るエラストマー層について詳述する。
まず上記エラストマー層の特性について説明する。
上記エラストマー層の表面における表面粗さRaの下限値は、例えば、1.05μm以上、好ましくは2.0μm以上、より好ましくは4.0μm以上である。これにより、エラストマー層のすべり性を高めることができる。一方で、上記エラストマー層の表面における表面粗さRaの上限値は、例えば、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。これにより、成形物の機械硬度を保持することが可能となる。
上記エラストマー層の表面粗さRaは、Keyence製VK−9700レーザ顕微鏡を用いて、レンズ:倍率20x、ピッチ:0.2μmの条件で測定する。続いて、解析ソフトVKanalyzerに記載されるJIS B0601−2001に準拠し、測定面積:300μm×300μmの条件で、エラストマー層の平面状表面における表面粗さRa(μm)を計測する。
上記エラストマー層の表面におけるタックピーク値TPの上限値は、例えば、4.0N以下、好ましくは3.0N以下、より好ましくは1.0N以下である。4.0N以下とすることにより実用上問題ない程度にすべり性を向上させることができる。また1.0以下とすることにより、接触対象が繰り返し接触したとき接触スピードが速いときでも、良好なすべり性を実現できる。一方で、タックピーク値TPの下限値は、特に限定されないが、例えば、0N超でもよく、0.1N以上でもよい。
上記タックピーク値TPの測定手順は、次の通りである。
面積150mmのフラット面を有するアルミ製プローブを、プローブ移動速度:2.3mm/秒、プローブ圧着強度:12N、圧着時間:6秒の条件で、当該アルミ製プローブのフラット面を測定試料である前記エラストマー層の表面に接触させ、プローブ移動速度:2.3mm/秒の条件で上方に引き剥がしたときの、プローブタック試験による前記エラストマー層の表面におけるタックピーク値を5回測定し、この5回の測定値の平均値を上記のタックピーク値TPとする。
上記エラストマー層の表面における動摩擦係数の上限値は、例えば、2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下である。これにより、エラストマー層のすべり性を高めることができる。一方で、上記動摩擦係数の下限値は、特に限定されないが、例えば、0超でもよく、0.1以上でもよい。
本実施形態において、動摩擦係数はJIS K7125に準拠して測定でき、ガスケットへの適用を想定したポリプロピレン(PP)に対しての動摩擦係数とする。
本実施形態に係るエラストマー層の、JIS K6251(2004)に準拠して測定される破断伸びの下限値としては、例えば、500%以上であり、好ましくは700%以上であり、より好ましくは800%以上である。これにより、成形品の高伸縮性および耐久性を向上させることができる。一方で、上記エラストマー層の破断伸びの上限値としては、特に限定されないが、例えば、2000%以下としてもよく、1800%以下としてもよく、1500%以下としてもよい。これにより、成形品の機械的強度を向上させることができる。
本実施形態に係るエラストマー層の、JIS K6252(2001)に準拠して測定される引裂強度の下限値としては、例えば、25N/mm以上であり、好ましくは30N/mm以上であり、より好ましくは33N/mm以上であり、さらに好ましくは35N/mm以上である。これにより、成形品の耐傷付き性や機械的強度を向上させることができる。また、成形品の繰り返し使用時における耐久性を向上させることができる。一方で、上記エラストマー層の引裂強度の上限値としては、特に限定されないが、例えば、70N/mm以下としてもよく、60N/mm以下としてもよい。これにより、エラストマー層の諸特性のバランスをとることができる。
本実施形態に係るエラストマー層の、JIS K6251(2004)に準拠して測定される引張強度の下限値としては、例えば、6.0MPa以上であり、好ましくは7.0MPa以上であり、より好ましくは8.0MPa以上である。これにより、成形品の機械的強度を向上させることができる。また、破断エネルギーを大きくすることができる。このため、繰り返しの変形に耐えられる耐久性に優れた成形品を実現することができる。一方で、上記エラストマー層の引張強度の上限値としては、特に限定されないが、例えば、15MPa以下としてもよく、13MPa以下としてもよい。これにより、成形品の操作性を良好なものとすることができる。
本実施形態に係るエラストマー層の、JIS K6253(1997)に準拠して規定されるデュロメータ硬さAの上限値としては、例えば、40.0以下あり、好ましくは39.0以下であり、より好ましくは38.0以下、さらに好ましくは35.0以下である。これにより、成形品の柔軟性を向上させることができ、屈曲や伸張などの変形が容易となる変形容易性に優れた成形品を実現することができる。これにより、成形品の操作性を良好なものとすることができる。上記エラストマー層のデュロメータ硬さAの下限値としては、特に限定されないが、例えば、1以上でもよく、5以上でもよく、10以上でもよい。これにより、成形品の機械的強度を高めることができる。
本実施形態のエラストマー層の、JIS K6251(2004)に準拠して測定される、25℃、当該エラストマー層の100%伸張時における引張応力M100の上限値は、例えば、3.0MPa以下であり、好ましくは2.0MPa以下であり、より好ましくは1.5MPa以下であり、さらに好ましくは1.2MPa以下でもよい。これにより、エラストマーの変形容易性を向上させることができる。一方で、上記引張応力M100の下限値は、特に限定されないが、0.1MPa以上であり、好ましくは0.3MPa以上でもよい。これにより、エラストマーの機械的強度を向上させることができる。
本実施形態のエラストマー層の、JIS K6251(2004)に準拠して測定される、25℃、当該エラストマー層の300%伸張時における引張応力M300の上限値は、例えば、5.0MPa以下であり、好ましくは4.5MPa以下であり、より好ましくは4.0MPa以下であり、さらに好ましくは3.5MPa以下でもよい。これにより、エラストマーの変形容易性を向上させることができる。一方で、上記引張応力M300の下限値は、特に限定されないが、0.5MPa以上であり、好ましくは1.0MPa以上でもよい。これにより、エラストマーの機械的強度を向上させることができる。
本実施形態では、たとえばエラストマー層中に含まれる各成分の種類や配合量、エラストマー層を形成するための組成物の調製方法やエラストマー層の製造方法等を適切に選択することにより、上記表面粗さ、タックピーク値、動摩擦係数、破断伸び、引張強度、引裂強度、硬度を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、エラストマー層に物理的に凹凸を付与すること、凹凸転写フィルムの表面粗さRaを調整すること、エラストマー層の表面にすべり性付与剤からなるコーティング層を形成しないこと、エラストマー層を構成する樹脂の種類や配合比率、樹脂の架橋密度や架橋構造等を適切に制御すること、無機充填材の配合比率や無機充填材の分散性を向上させること等が、上記表面粗さ、タックピーク値、動摩擦係数、破断伸び、引張強度、引裂強度、硬度を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
次に、本実施形態に係るエラストマー層の組成について説明する。
上記エラストマー層を構成するエラストマーは、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、および天然ゴムからなる群から選択される一種以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この中でも、ゴム特性のバランスの観点、また化学的に安定であり、また、熱安定性にも優れる観点から、シリコーンゴムを用いることができる。
上記熱硬化性エラストマーは、硬化性エラストマー組成物の硬化物で構成することができる。また、上記シリコーンゴムは、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成することができる。
また、本実施形態のエラストマーは、各種の機能を発揮し得る、任意の成分が添加されていてもよい。例えば、機械的強度を高める観点から、エラストマーは、無機充填材を含むことができる。無機充填材としては、公知のものが使用できるが、例えば、シリカ粒子を用いることができる。
以下、本実施形態のエラストマーの一例であるシリコーンゴムとして、シリコーンゴム系硬化性組成物を用いた場合について説明する。
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を含むことができる。ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物の主成分となる重合物である。
上記ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、直鎖構造を有するビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を含むことができる。
上記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、直鎖構造を有し、かつ、ビニル基を含有しており、かかるビニル基が硬化時の架橋点となる。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)のビニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ15モル%以下であるのが好ましく、0.01〜12モル%であるのがより好ましい。これにより、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中におけるビニル基の量が最適化され、後述する各成分とのネットワークの形成を確実に行うことができる。本実施形態において、「〜」は、その両端の数値を含むことを意味する。
なお、本明細書中において、ビニル基含有量とは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する全ユニットを100モル%としたときのビニル基含有シロキサンユニットのモル%である。ただし、ビニル基含有シロキサンユニット1つに対して、ビニル基1つであると考える。
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の重合度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1000〜10000程度、より好ましくは2000〜5000程度の範囲内である。なお、重合度は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の比重は、特に限定されないが、0.9〜1.1程度の範囲であるのが好ましい。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、上記のような範囲内の重合度および比重を有するものを用いることにより、得られるシリコーンゴムの耐熱性、難燃性、化学的安定性等の向上を図ることができる。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、特に、下記式(1)で表される構造を有するものであるが好ましい。
Figure 2019199508
式(1)中、Rは炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
また、Rは炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1〜8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
さらに、式(1)中のRおよびRの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(1)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。さらに、R、およびRについても同様である。
さらに、m、nは、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは0〜2000の整数、nは1000〜10000の整数である。mは、好ましくは0〜1000であり、nは、好ましくは2000〜5000である。
また、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の具体的構造としては、例えば下記式(1−1)で表されるものが挙げられる。
Figure 2019199508
式(1−1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基またはビニル基であり、少なくとも一方がビニル基である。
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、ビニル基含有量が分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ0.4モル%以下である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)と、ビニル基含有量が0.5〜15モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)とを含有するものであるのが好ましい。シリコーンゴムの原料である生ゴムとして、一般的なビニル基含有量を有する第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)と、ビニル基含有量が高い第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)とを組み合わせることで、ビニル基を偏在化させることができ、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に、より効果的に架橋密度の疎密を形成することができる。その結果、より効果的にシリコーンゴムの引裂強度を高めることができる。
具体的には、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、例えば、上記式(1−1)において、Rがビニル基である単位および/またはRがビニル基である単位を、分子内に2個以上有し、かつ0.4モル%以下を含む第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)と、Rがビニル基である単位および/またはRがビニル基である単位を、0.5〜15モル%含む第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)とを用いるのが好ましい。
また、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)は、ビニル基含有量が0.01〜0.2モル%であるのが好ましい。また、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)は、ビニル基含有量が、0.8〜12モル%であるのが好ましい。
さらに、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)と第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)とを組み合わせて配合する場合、(A1−1)と(A1−2)の比率は特に限定されないが、例えば、重量比で(A1−1):(A1−2)が50:50〜95:5であるのが好ましく、80:20〜90:10であるのがより好ましい。
なお、第1および第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)および(A1−2)は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、分岐構造を有するビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(A2)を含んでもよい。
<<オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を含むことができる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、直鎖構造を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐構造を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)とに分類され、これらのうちのいずれか一方または双方を含むことができる。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖構造を有し、かつ、Siに水素が直接結合した構造(≡Si−H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分が有するビニル基とヒドロシリル化反応し、これらの成分を架橋する重合体である。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が20000以下であるのが好ましく、1000以上、10000以下であることがより好ましい。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の重量平均分子量は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算により測定することができる。
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
以上のような直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)としては、例えば、下記式(2)で表される構造を有するものが好ましく用いられる。
Figure 2019199508
式(2)中、Rは炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
なお、式(2)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。Rについても同様である。ただし、複数のRおよびRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。
また、Rは炭素数1〜8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
なお、式(2)中のR,R,Rの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、分子内の架橋反応を防止する観点から、メチル基が好ましい。
さらに、m、nは、式(2)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは2〜150整数、nは2〜150の整数である。好ましくは、mは2〜100の整数、nは2〜100の整数である。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有するため、架橋密度が高い領域を形成し、シリコーンゴムの系中の架橋密度の疎密構造形成に大きく寄与する成分である。また、上記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)同様、Siに水素が直接結合した構造(≡Si−H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分のビニル基とヒドロシリル化反応し、これら成分を架橋する重合体である。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の比重は、0.9〜0.95の範囲である。
さらに、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)としては、下記平均組成式(c)で示されるものが好ましい。
平均組成式(c)
(H(R3−aSiO1/2(SiO4/2
(式(c)において、Rは一価の有機基、aは1〜3の範囲の整数、mはH(R3−aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)
式(c)において、Rは一価の有機基であり、好ましくは、炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
式(c)において、aは、ヒドリド基(Siに直接結合する水素原子)の数であり、1〜3の範囲の整数、好ましくは1である。
また、式(c)において、mはH(R3−aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は分岐状構造を有する。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、その構造が直鎖状か分岐状かという点で異なり、Siの数を1とした時のSiに結合するアルキル基Rの数(R/Si)が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)では1.8〜2.1、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)では0.8〜1.7の範囲となる。
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有しているため、例えば、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上となる。これに対して、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖状であるため、上記条件で加熱した後の残渣量はほぼゼロとなる。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の具体例としては、下記式(3)で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 2019199508
式(3)中、Rは炭素数1〜8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基、もしくは水素原子である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(3)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
また、式(3)中、「−O−Si≡」は、Siが三次元に広がる分岐構造を有することを表している。
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)において、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は、それぞれ、特に限定されない。ただし、シリコーンゴム系硬化性組成物において、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中のビニル基1モルに対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の合計のヒドリド基量が、0.5〜5モルとなる量が好ましく、1〜3.5モルとなる量がより好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)および分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)と、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)との間で、架橋ネットワークを確実に形成させることができる。
<<シリカ粒子(C)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、シリカ粒子(C)を含むことができる。
シリカ粒子(C)としては、特に限定されないが、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ等が用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリカ粒子(C)は、例えば、BET法による比表面積が例えば50〜400m/gであるのが好ましく、100〜400m/gであるのがより好ましい。また、その平均一次粒径が例えば1〜100nmであるのが好ましく、5〜20nm程度であるのがより好ましい。
シリカ粒子(C)として、かかる比表面積および平均粒径の範囲内であるものを用いることにより、形成されるシリコーンゴムの硬さや機械的強度の向上、特に引張強度の向上をさせることができる。
<<シランカップリング剤(D)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、シランカップリング剤(D)を含むことができる。
シランカップリング剤(D)は、加水分解性基を有することができる。加水分解基が水により加水分解されて水酸基になり、この水酸基がシリカ粒子(C)表面の水酸基と脱水縮合反応することで、シリカ粒子(C)の表面改質を行うことができる。
また、このシランカップリング剤(D)は、疎水性基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にこの疎水性基が付与されるため、シリコーンゴム系硬化性組成物中ひいてはシリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)の凝集力が低下(シラノール基による水素結合による凝集が少なくなる)し、その結果、シリコーンゴム系硬化性組成物中のシリカ粒子の分散性が向上すると推測される。これにより、シリカ粒子とゴムマトリックスとの界面が増加し、シリカ粒子の補強効果が増大する。さらに、ゴムのマトリックス変形の際、マトリックス内でのシリカ粒子の滑り性が向上すると推測される。そして、シリカ粒子(C)の分散性の向上及び滑り性の向上によって、シリカ粒子(C)によるシリコーンゴムの機械的強度(例えば、引張強度や引裂強度など)が向上する。
さらに、シランカップリング剤(D)は、ビニル基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にビニル基が導入される。そのため、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化の際、すなわち、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)が有するビニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とがヒドロシリル化反応して、これらによるネットワーク(架橋構造)が形成される際に、シリカ粒子(C)が有するビニル基も、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とのヒドロシリル化反応に関与するため、ネットワーク中にシリカ粒子(C)も取り込まれるようになる。これにより、形成されるシリコーンゴムの低硬度化および高モジュラス化を図ることができる。
シランカップリング剤(D)としては、疎水性基を有するシランカップリング剤およびビニル基を有するシランカップリング剤を併用することができる。
シランカップリング剤(D)としては、例えば、下記式(4)で表わされるものが挙げられる。
−Si−(X)4−n・・・(4)
上記式(4)中、nは1〜3の整数を表わす。Yは、疎水性基、親水性基またはビニル基を有するもののうちのいずれかの官能基を表わし、nが1の時は疎水性基であり、nが2または3の時はその少なくとも1つが疎水性基である。Xは、加水分解性基を表わす。
疎水性基は、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられ、中でも、特に、メチル基が好ましい。
また、親水性基は、例えば、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基またはカルボニル基等が挙げられ、中でも、特に、水酸基が好ましい。なお、親水性基は、官能基として含まれていてもよいが、シランカップリング剤(D)に疎水性を付与するという観点からは含まれていないのが好ましい。
さらに、加水分解性基は、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、クロロ基またはシラザン基等が挙げられ、中でも、シリカ粒子(C)との反応性が高いことから、シラザン基が好ましい。なお、加水分解性基としてシラザン基を有するものは、その構造上の特性から、上記式(4)中の(Y−Si−)の構造を2つ有するものとなる。
上記式(4)で表されるシランカップリング剤(D)の具体例は、例えば、官能基として疎水性基を有するものとして、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランのようなアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシランのようなクロロシラン;ヘキサメチルジシラザンが挙げられ、官能基としてビニル基を有するものとして、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランのようなアルコキシシラン;ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシランのようなクロロシラン;ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられるが、中でも、上記記載を考慮すると、特に、疎水性基を有するものとしてはヘキサメチルジシラザン、ビニル基を有するものとしてはジビニルテトラメチルジシラザンであるのが好ましい。
<<白金または白金化合物(E)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、白金または白金化合物(E)を含むことができる。
白金または白金化合物(E)は、硬化の際の触媒として作用する触媒成分である。白金または白金化合物(E)の添加量は触媒量である。
白金または白金化合物(E)としては、公知のものを使用することができ、例えば、白金黒、白金をシリカやカーボンブラック等に担持させたもの、塩化白金酸または塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯塩等が挙げられる。
なお、白金または白金化合物(E)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<<水(F)>>
また、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物には、上記成分(A)〜(E)以外に、水(F)が含まれていてもよい。
水(F)は、シリコーンゴム系硬化性組成物に含まれる各成分を分散させる分散媒として機能するとともに、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)との反応に寄与する成分である。そのため、シリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)とを、より確実に互いに連結したものとすることができ、全体として均一な特性を発揮することができる。
さらに、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)〜(F)成分の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される公知の添加成分を含有していてもよい。例えば、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラスウール、マイカ等が挙げられる。その他、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等を適宜配合することができる。
なお、シリコーンゴム系硬化性組成物において、各成分の含有割合は特に限定されないが、例えば、以下のように設定される。
本実施形態において、シリカ粒子(C)の含有量の上限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対し、例えば、60重量部以下でもよく、好ましくは50重量部以下でもよく、さらに好ましくは35重量部以下でもよい。これにより、引裂強度、引張永久ひずみのバランスを図ることができる。また、シリカ粒子(C)の含有量の下限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対し、特に限定されないが、例えば、20重量部以上でもよい。
シランカップリング剤(D)は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、例えば、シランカップリング剤(D)が5重量部以上100重量部以下の割合で含有するのが好ましく、5重量部以上40重量部以下の割合で含有するのがより好ましい。
これにより、シリカ粒子(C)のシリコーンゴム系硬化性組成物中における分散性を確実に向上させることができる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の含有量は、具体的にビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)及びシリカ粒子(C)及びシランカップリング剤(D)の合計量100重量部に対して、例えば、0.5重量部以上20重量部以下の割合で含有することが好ましく、0.8重量部以上15重量部以下の割合で含有するのがより好ましい。(B)の含有量が前記範囲内であることで、より効果的な硬化反応ができる可能性がある。
白金または白金化合物(E)の含有量は、触媒量を意味し、適宜設定することができるが、具体的にビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シリカ粒子(C)、シランカップリング剤(D)の合計量に対して、本成分中の白金族金属が重量単位で0.01〜1000ppmとなる量であり、好ましくは、0.1〜500ppmとなる量である。白金または白金化合物(E)の含有量を上記下限値以上とすることにより、得られるシリコーンゴム組成物を十分硬化させることができる。白金または白金化合物(E)の含有量を上記上限値以下とすることにより、得られるシリコーンゴム組成物の硬化速度を向上させることができる。
さらに、水(F)を含有する場合、その含有量は、適宜設定することができるが、具体的には、シランカップリング剤(D)100重量部に対して、例えば、10〜100重量部の範囲であるのが好ましく、30〜70重量部の範囲であるのがより好ましい。これにより、シランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させることができる。
<シリコーンゴムの製造方法>
次に、本実施形態のシリコーンゴムの製造方法について説明する。
本実施形態のシリコーンゴムの製造方法としては、シリコーンゴム系硬化性組成物を調製し、このシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによりシリコーンゴムを得ることができる。
以下、詳述する。
まず、シリコーンゴム系硬化性組成物の各成分を、任意の混練装置により、均一に混合してシリコーンゴム系硬化性組成物を調製する。
[1]たとえば、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)と、シリカ粒子(C)と、シランカップリング剤(D)とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置により、混練することで、これら各成分(A)、(C)、(D)を含有する混練物を得る。
なお、この混練物は、予めビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とシランカップリング剤(D)とを混練し、その後、シリカ粒子(C)を混練(混合)して得るのが好ましい。これにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)中におけるシリカ粒子(C)の分散性がより向上する。
また、この混練物を得る際には、水(F)を必要に応じて、各成分(A)、(C)、および(D)の混練物に添加するようにしてもよい。これにより、シランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させることができる。
さらに、各成分(A)、(C)、(D)の混練は、第1温度で加熱する第1ステップと、第2温度で加熱する第2ステップとを経るようにするのが好ましい。これにより、第1ステップにおいて、シリカ粒子(C)の表面をカップリング剤(D)で表面処理することができるとともに、第2ステップにおいて、シリカ粒子(C)とカップリング剤(D)との反応で生成した副生成物を混練物中から確実に除去することができる。その後、必要に応じて、得られた混練物に対して、成分(A)を添加し、更に混練してもよい。これにより、混練物の成分のなじみを向上させることができる。
第1温度は、例えば、40〜120℃程度であるのが好ましく、例えば、60〜90℃程度であるのがより好ましい。第2温度は、例えば、130〜210℃程度であるのが好ましく、例えば、160〜180℃程度であるのがより好ましい。
また、第1ステップにおける雰囲気は、窒素雰囲気下のような不活性雰囲気下であるのが好ましく、第2ステップにおける雰囲気は、減圧雰囲気下であるのが好ましい。
さらに、第1ステップの時間は、例えば、0.3〜1.5時間程度であるのが好ましく、0.5〜1.2時間程度であるのがより好ましい。第2ステップの時間は、例えば、0.7〜3.0時間程度であるのが好ましく、1.0〜2.0時間程度であるのがより好ましい。
第1ステップおよび第2ステップを、上記のような条件とすることで、前記効果をより顕著に得ることができる。
[2]次に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、白金または白金化合物(E)とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置を用いて、上記工程[1]で調製した混練物に、各成分(B)、(E)を混練することで、シリコーンゴム系硬化性組成物を得る。得られたシリコーンゴム系硬化性組成物は溶剤を含むペーストであってもよい。
なお、この各成分(B)、(E)の混練の際には、予め上記工程[1]で調製した混練物とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)とを、上記工程[1]で調製した混練物と白金または白金化合物(E)とを混練し、その後、それぞれの混練物を混練するのが好ましい。これにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応を進行させることなく、各成分(A)〜(E)をシリコーンゴム系硬化性組成物中に確実に分散させることができる。
各成分(B)、(E)を混練する際の温度は、ロール設定温度として、例えば、10〜70℃程度であるのが好ましく、25〜30℃程度であるのがより好ましい。
さらに、混練する時間は、例えば、5分〜1時間程度であるのが好ましく、10〜40分程度であるのがより好ましい。
上記工程[1]および上記工程[2]において、温度を上記範囲内とすることにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。また、上記工程[1]および上記工程[2]において、混練時間を上記範囲内とすることにより、各成分(A)〜(E)をシリコーンゴム系硬化性組成物中により確実に分散させることができる。
なお、各工程[1]、[2]において使用される混練装置としては、特に限定されないが、例えば、ニーダー、2本ロール、バンバリーミキサー(連続ニーダー)、加圧ニーダー等を用いることができる。
また、本工程[2]において、混練物中に1−エチニルシクロヘキサノールのような反応抑制剤を添加するようにしてもよい。これにより、混練物の温度が比較的高い温度に設定されたとしても、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。
[3]次に、シリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによりシリコーンゴムを形成する。
本実施形態において、シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の硬化工程は、例えば、100〜250℃で1〜30分間加熱(1次硬化)した後、200℃で1〜4時間ポストベーク(2次硬化)することによって行われる。
以上のような工程を経ることで、本実施形態のシリコーンゴムが得られる。
本発明者が検討した結果以下の知見を得た。シリコーンゴム中のフィラー量を低減させると、硬度を小さくしたり、引張応力を低減することができるが、一方で、引裂強度が低下し、シリコーンゴムの耐久性が低下することが判明した。
そこで、鋭意検討した結果、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)などの樹脂組成物を適切に選択することにより、架橋密度や架橋構造の偏在を制御でき、幅広いひずみ領域における低応力や低硬度を実現しつつ、シリコーンゴムの引裂強度を高められることを見出した。また、シリコーンゴムの引張強度も高めることができることが分かった。詳細なメカニズムは定かでないが、高ビニル基含有オルガノポリシロキサンと低ビニル基含有オルガノポリシロキサンの併用により、架橋構造の偏在を制御できるため、硬度を小さくしつつも、シリコーンゴムの引裂強度を高められると考えられる。このように、他の物性を維持しつつも、引裂強度を高めることにより、シリコーンゴムの破断エネルギーを高めることができる。
また、本実施形態において、例えば、フィラー量を低減することにより、初期のひずみにおける引張応力を低減しつつも、樹脂の架橋密度や架橋構造の偏在を制御することにより、後期のひずみにおける引張応力を低減することができる。
本実施形態では、たとえばシリコーンゴム系硬化性組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、シリコーンゴム系硬化性組成物の調製方法やシリコーンゴムの製造方法等を適切に選択することにより、上記引張応力、破断エネルギー、引張強度、引裂強度、硬度を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)と高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)とを併用すること、末端にビニル基を有するビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を使用することにより樹脂の架橋密度や架橋構造の偏在を制御すること、また、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の添加タイミング、シリカ粒子(C)の配合比率、シリカ粒子(C)のシランカップリング剤(D)で表面改質すること、水を添加すること等のシランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させること等が、上記引張応力、破断エネルギー、引張強度、引裂強度、硬度を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた原料成分を以下に示す。
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A))
・低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1):合成スキーム1により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1−1)で表わされる構造でR(末端)のみがビニル基である構造)
・高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2):合成スキーム2により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1−1)で表わされる構造でRおよびRがビニル基である構造)
(オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B))
・オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B):モメンティブ社製、「TC−25D」
(シリカ粒子(C))
・シリカ粒子(C):シリカ微粒子(粒径7nm、比表面積300m/g)、日本アエロジル社製、「AEROSIL300」
(シランカップリング剤(D))
・シランカップリング剤(D−1):ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、Gelst社製、「HEXAMETHYLDISILAZANE(SIH6110.1)」
・シランカップリング剤(D−2):ジビニルテトラメチルジシラザン、Gelst社製、「1,3−DIVINYLTETRAMETHYLDISILAZANE(SID4612.0)」
(白金または白金化合物(E))
・白金または白金化合物(E):白金化合物、モメンティブ社製、「TC−25A」
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合成)
[合成スキーム1:低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)の合成]
下記式(5)にしたがって、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)を合成した。
すなわち、Arガス置換した、冷却管および攪拌翼を有する300mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)、カリウムシリコネート0.1gを入れ、昇温し、120℃で30分間攪拌した。なお、この際、粘度の上昇が確認できた。
その後、155℃まで昇温し、3時間攪拌を続けた。そして、3時間後、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン0.1g(0.6mmol)を添加し、さらに、155℃で4時間攪拌した。
さらに、4時間後、トルエン250mLで希釈した後、水で3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール1.5Lで数回洗浄することで、再沈精製し、オリゴマーとポリマーを分離した。得られたポリマーを60℃で一晩減圧乾燥し、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)を得た(Mn=2,2×10、Mw=4,8×10)。また、H−NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.04モル%であった。
Figure 2019199508
[合成スキーム2:高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)の合成]
上記(A1−1)の合成工程において、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)に加えて2,4,6,8−テトラメチル2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン0.86g(2.5mmol)を用いたこと以外は、(A1−1)の合成工程と同様にすることで、下記式(6)のように、高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)を合成した。(Mn=2,3×10、Mw=5,0×10)。また、H−NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.93モル%であった。

Figure 2019199508
(シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
次のようにしてシリコーンゴム系硬化性組成物を調整した。まず、表1に示す割合で、95%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)およびシランカップリング剤(D)および水(F)の混合物を予め混練し、その後、混合物にシリカ粒子(C)を加えてさらに混練し、混練物(シリコーンゴムコンパウンド)を得た。
ここで、シリカ粒子(C)添加後の混練は、カップリング反応のために窒素雰囲気下、60〜90℃の条件下で1時間混練する第1ステップと、副生成物(アンモニア)の除去のために減圧雰囲気下、160〜180℃の条件下で2時間混練する第2ステップとを経ることで行い、その後、冷却し、残り5%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を2回に分けて添加し、20分間混練した。
続いて、得られた混練物(シリコーンゴムコンパウンド)100重量部に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を2.6重量部および白金または白金化合物(E)を0.5重量部加えて、ロールで混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物を得た。
Figure 2019199508
[比較例1]
(「シート状シリコーンゴム」の作製)
得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を、170℃、10MPaで10分間プレスし、厚さ1mmのシート状に成形すると共に、1次硬化した。続いて、200℃で4時間加熱し、2次硬化して、シート状シリコーンゴム(シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物)を得た。比較例1として、得られた「シート状シリコーンゴム」をそのまま使用した。
[実施例1〜11]
(表面に凹凸形状を有する「シート状シリコーンゴム」の作製)
まず、図1に示すように、上型10と下型20との成形空間内において、得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を、凹凸転写フィルム30,40(表2に示す凹凸転写フィルム)の凹凸表面(表面が粗い面)で挟み込むように配置した。続いて、比較例1と同じ加熱加圧条件、すなわち、170℃、10MPaで10分間プレスし、厚さ1mmのシート状に成形すると共に、1次硬化し、続いて、200℃で4時間加熱し、2次硬化することにより、シート状シリコーンゴム(シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物)を得た。得られたシート状シリコーンゴム(エラストマー50)の表面から、凹凸転写フィルム30,40を分離して、表面に凹凸形状を有する「シート状シリコーンゴム」を得た。
Figure 2019199508
表2中の凹凸転写フィルムの凹凸表面における表面粗さRa(μm)は、後述の表面粗さRaと同様の方法にて測定した。
比較例及び実施例で得られたシート状シリコーンゴム(以下、「エラストマー層」と呼称する)について、下記の評価項目に基づいて評価を行った。
(表面粗さRa)
得られたエラストマー層の表面粗さRaは、Keyence製VK−9700レーザ顕微鏡を用いて、レンズ:倍率20x、ピッチ:0.2μmの条件で測定した。続いて、解析ソフトVKanalyzerに記載されるJIS B0601−2001に準拠し、測定面積:300μm×300μmの条件で、エラストマー層の表面における表面粗さRa(μm)を計測した。評価結果を表3に示す。
(タックピーク値)
測定装置として、東洋精機社製のタッキネスチェッカーを用いてタックピーク値を測定した。測定モードは、設定した加圧値までプローブを押し込み、設定した時間が経過するまで加圧値を保持するようにコントロールし続けるConstant Loadを用いた。
具体的には、面積150mmのフラット面を有するアルミ製プローブを、プローブ移動速度:2.3mm/秒、プローブ圧着強度:12N、圧着時間:6秒の条件で、当該アルミ製プローブのフラット面を測定試料(得られたエラストマー層)の表面に接触させ、プローブ移動速度:2.3mm/秒の条件で上方に引き剥がしたときの、プローブタック試験によるエラストマー層の表面におけるタックピーク値を5回測定し、この5回の測定値の平均値を上記のタックピーク値TP(N)とした。評価結果を表3に示す。
(動摩擦係数)
得られたエラストマー層の表面における動摩擦係数は、JIS K7125に準拠してガスケットへの適用を想定したPPに対しての動摩擦係数を測定した。評価結果を表3に示す。
(硬度:デュロメータ硬さA)
得られた厚さ1mmのエラストマー層を6枚積層し、6mmの試験片を作製した。得られた試験片に対して、JIS K6253(1997)に準拠してタイプAデュロメータ硬さを測定した。2つのサンプルを用いて、各サンプルでn=5で測定を行い10測定の平均値を測定値とした。評価結果を表3に示す。
(引裂強度)
得られた厚さ1mmのエラストマー層を用いて、JIS K6252(2001)に準拠して、クレセント形試験片を作製し、得られたクレセント形試験片の25℃における引裂強度を測定した。単位は、N/mmである。5つのサンプルで行い、5つの平均値を測定値とした。評価結果を表3に示す。
(引張強度)
得られた厚さ1mmのエラストマー層を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、得られた試験片の25℃における引張強度を測定した。単位は、MPaである。3つのサンプルで行い、3つの平均値を測定値とした。
(引張応力)
得られた厚さ1mmのエラストマー層を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、得られたダンベル状3号形試験片の、25℃での、100%伸張時における引張応力M100、および300%伸張時における引張応力M300を測定した。単位はMPaである。3つのサンプルで行い、3つの平均値を測定値とした。評価結果を表3に示す。
得られた厚さ1mmのエラストマー層を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、得られたダンベル状3号形試験片の、25℃での、破断伸びを測定した。
破断伸びは、[チャック間移動距離(mm)]÷[初期チャック間距離(60mm)]×100、という式に基づいて計算した。単位は%である。3つのサンプルで行い、3つの平均値を測定値とした。評価結果を表3に示す。
Figure 2019199508
表3中、動摩擦係数における「測定不可」とは、上記の動摩擦係数の測定方法において、試料(エラストマー層)の表面に対してすべり片が移動せず、測定ができなかったことを意味する。
<すべり性試験1>
得られたシリコーンゴム系硬化性組成を用いて、170℃で15分、200℃で4時間の条件で硬化し、直径29mm、厚み12.5mmを有する円柱状部材を成形した。この円柱状部材の外側表面において、成形時に、表4中の表面Raを有する表面凹凸を付与した。円柱状部材の表面粗さRa(μm)は、上述の表面粗さRaと同様の方法にて測定した。
表4中、試験1の円柱状部材の成形時には、成形面の表面が平滑な金型を用い、試験2〜4の円柱状部材の成形時には、成形面の表面にそれぞれ異なる凹凸を付与した金型を使用した。
ガスケットへの適用可能性を検証するため、内径29mm、PP製の円筒状チューブ内に、得られた円柱状部材(ゴム部材)を棒状の治具で挿入し、円柱状部材の筒外面表面におけるすべり性を評価した。
挿入時に強い抵抗を感じゴム部材が滑らないものを×、ゴム部材は滑るが抵抗を感じるものを○、挿入時に抵抗を感じないものを◎とした。
表面の凹凸がRa=4.0μm以上を有する試験3〜5は、挿入時の抵抗を感じず良いすべり性だった。また繰り返しの挿入時でもすべりが良好であった。
表面の凹凸がRa=1.0μm以上4.0未満を有する試験2は、ゴム部材は挿入できたものの、やや抵抗を感じた。
一方、表面の凹凸がRa=1.0μm未満を有する試験1は、挿入時に強い抵抗を感じゴム部材は挿入できなかった。
Figure 2019199508
<すべり性試験2>
平面の試験台上において、得られた各実施例・比較例のエラストマー層の凹凸表面と、表5に記載の相手シート材の表面とを互いに接触させた状態で水平方向にスライドさせて、シート同士の擦り合わせ試験を実施し、下記の評価基準に基づいて評価した。評価結果を表5に示す。
擦り合わせ時に強い抵抗を感じエラストマー層が滑らないものを×、エラストマー層は滑るが抵抗を感じるものを○、擦り合わせ時に抵抗を感じないものを◎とした。
表5に示すように、樹脂製の相手シート材として「同種のシート」を使用し、金属製の相手シート材として「SUS304」(ステンレス鋼)を使用した。
なお、「同種シート」の場合、例えば、実施例1のエラストマー層を2つ準備し、2つの実施例1のエラストマー層の凹凸表面同士を接触させて、上記擦り合わせ試験を実施した。他の実施例、比較例においても同様にして評価した。
Figure 2019199508
実施例1〜11のエラストマー層は、比較例1と比べて、ゴム特性(物理特性)が維持されており、かつ、すべり性に優れることが分かった。とくに、実施例6〜11のエラストマー層の表面は、すべり性試験の結果から、実施例1〜5と比べてすべり性がさらに改善されることが判明した。このような実施例のエラストマー層を備える成形品においても、エラストマー層における所望のゴム特性が維持されつつも、良好なすべり性が発揮されることが期待される。
10 上型
20 下型
30,40 凹凸転写フィルム
32 表面
50 エラストマー
52 表面

Claims (9)

  1. エラストマー層を備える成形品であって、
    前記エラストマー層の少なくとも一面側における表面粗さRaが、1.05μm以上である、成形品。
  2. 請求項1に記載の成形品であって、
    下記の測定手順で測定される、前記エラストマー層の表面におけるタックピーク値TPが、4N以下である、成形品。
    (測定手順)
    面積150mmのフラット面を有するアルミ製プローブを、プローブ移動速度:2.3mm/秒、プローブ圧着強度:12N、圧着時間:6秒の条件で、当該アルミ製プローブのフラット面を測定試料である前記エラストマー層の表面に接触させ、プローブ移動速度:2.3mm/秒の条件で上方に引き剥がしたときの、プローブタック試験による前記エラストマー層の表面におけるタックピーク値を5回測定し、この5回の測定値の平均値を上記のタックピーク値TPとする。
  3. 請求項1または2に記載の成形品であって、
    前記エラストマー層の表面における、JIS K7125に準拠して測定した動摩擦係数が、2.0以下である、成形品。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の成形品であって、
    JIS K6251(2004)に準拠して測定される、前記エラストマー層の破断伸びが、500%以上2000%以下である、成形品。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の成形品であって、
    JIS K6252(2001)に準拠して測定される、前記エラストマー層の引裂強度が、25N/mm以上である、成形品。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の成形品であって、
    JIS K6251(2004)に準拠して測定される、前記エラストマー層の引張強度が、6.0MPa以上15MPa以下である、成形品。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の成形品であって、
    JIS K6253(1997)に準拠して規定される、前記エラストマー層のデュロメータ硬さAが、40.0以下である、成形品。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の成形品であって、
    前記エラストマー層は、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、および天然ゴムからなる群から選択される一種以上を含む、成形品。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載の成形品であって、
    前記エラストマー層の表面が、すべり性付与剤からなるコーティング層が形成されていない非コーティング面である、成形品。
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