JP7434827B2 - シリコーンゴム系硬化性組成物、及びそれを用いた流体駆動型アクチュエータ - Google Patents

シリコーンゴム系硬化性組成物、及びそれを用いた流体駆動型アクチュエータ Download PDF

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Description

本発明は、シリコーンゴム系硬化性組成物、及びそれを用いた流体駆動型アクチュエータに関する。
これまでアクチュエータ中のチューブ部材に用いられるシリコーンゴムについて様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、流体駆動型アクチュエータ中のチューブ状弾性体にシリコーンゴムを使用することが記載されている(特許文献1の請求項6等)。
特開2015-180829号公報
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の流体駆動型アクチュエータに搭載されるチューブ部材用のシリコーンゴムにおいて、容易膨張性および膨張耐久性の点で改善の余地があることが判明した。
流体駆動型アクチュエータに用いられるシリコーンゴムには容易膨張性が要求される。
本発明者は、シリコーンゴムの特性と容易膨張性との関係について着眼して検討を進めたところ、低応力時の伸び量を指標とすることで、シリコーンゴムの容易膨張性を制御できることを見出した。
しかしながら、膨張したシリコーンゴムには、未膨張時と比べて機械的強度が低下するため、破損する恐れがある。
このような事情を踏まえ更に検討を重ねた本発明者は、引裂強度を指標とすることで、膨張時のシリコーンゴムの機械的強度を制御できることを見出した。
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、低応力時の伸び量と引裂強度の両方を指標とすることによって、シリコーンゴムの耐摩耗性を容易膨張性および膨張耐久性を安定的に評価できること、そして、それぞれを所定以上とすることによって、容易膨張性および膨張耐久性に優れており、流体駆動型アクチュエータに好適に用いられるシリコーンゴムを実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
流体駆動型アクチュエータを構成する一部を形成するために用いる、シリコーンゴム系硬化性組成物であって、
下記の手順で測定される、当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物の、1MPa時の伸びをE1(%)、引裂強度をTS(N/mm)としたとき、
E1、TSが、20≦E1、20≦TSを満たす、シリコーンゴム系硬化性組成物が提供される。
(1MPa時の伸びの測定手順)
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、25℃、引張速度:500mm/分の条件で引張試験を行い、応力が1MPaに到達した時の、得られたダンベル状3号形試験片の伸びを[標線間移動距離(mm)]÷[初期標線間距離(20mm)]×100の式で計算する。単位は%である。
(引裂強度の測定手順)
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、JIS K6252(2001)に準拠して、クレセント形試験片を作製し、25℃における、得られたクレセント形試験片の引裂強度を測定する。単位はN/mmである。
また本発明によれば、
上記のシリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で形成されたチューブ部材を備える、流体駆動型アクチュエータが提供される。
本発明によれば、容易膨張性および膨張耐久性に優れたシリコーンゴム系硬化性組成物、及びそれを用いた流体駆動型アクチュエータが提供される。
本実施形態の流体駆動型アクチュエータの構成の一例を示す図である。 (a)は図1のA-A断面図、(b)は図1のB-B断面図、(c)は図1のC-C断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物について説明する。
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、流体駆動型アクチュエータを構成する一部を形成するために用いるものである。
このシリコーンゴム系硬化性組成物において、下記の手順で測定される、当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物の、1MPa時の伸びをE1(%)、引裂強度をTS(N/mm)としたとき、
E1、TSが、20≦E1、20≦TSを満たす。
本発明者の知見によれば、低応力時の伸び量と引裂強度のそれぞれを指標とすることによって、シリコーンゴムの容易膨張性および膨張耐久性を安定的に評価できること、そして、低応力時の伸び量および引裂強度の値を上記下限値以上とすることによって、容易膨張性および膨張耐久性を向上できることが見出された。
本発明者が検討した結果以下の知見を得た。シリコーンゴム中のフィラー量を低減させると、低応力時の伸び量を低減することができるが、一方で、引裂強度が低下し、シリコーンゴムの耐久性が低下することが判明した。
そこで、鋭意検討した結果、ビニル基含有オルガノポリシロキサンなどのシリコーンゴム系硬化性組成物の成分等を適切に選択することにより、架橋密度や架橋構造の偏在を制御でき、幅広いひずみ領域における低応力時の伸び量を向上させつつ、シリコーンゴムの引裂強度を高められることを見出した。詳細なメカニズムは定かでないが、異なる2種のビニル基含有オルガノポリシロキサンの併用や、低ビニル基オルガノポリシロキサンの使用により、架橋状態を適切に制御できるため、応力時の伸び量を向上させつつも、シリコーンゴムの引裂強度を高められると考えられる。
このようなシリコーンゴムを用いたチューブ部材は、流体圧力によるエネルギーが小さいときでも、膨らみやすいため、より大きな膨張力を発揮でき、機械的運動エネルギーへ変換効率を高められることが分かった。
また、このようなシリコーンゴムを用いたチューブ部材は、空気等の流体を注入・排出して、繰り返し膨張させたときにも、亀裂などの破壊が抑制されるため耐久性に優れることが分かった。
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、耐摩耗性に優れており、流体駆動型アクチュエータに好適なシリコーンゴムを実現できる。
本実施形態において、流体駆動型アクチュエータとは、気体や液体などの流体を用いてチューブ部材を膨張または収縮させ、それを機械的運動に変換させる駆動装置である。具体的な流体として、空気、窒素等の気体、水、油等の液体が挙げられる。
流体駆動型アクチュエータは、各種の様々な用途に用いることができるが、例えば、介護・福祉用機械や医療用機械の人工筋肉、ロボットの人工筋肉や間接構造などの駆動装置に用いることができる。
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、流体駆動型アクチュエータ中のチューブ部材を形成するために用いることができる。
図1、図2は、流体駆動型アクチュエータ(アクチュエータ100)の構成の一例を示す。
図1のアクチュエータ100は、チューブ10、及びキャップ20を有する。
チューブ10は、流体の圧力によって膨張および収縮する筒状弾性体で構成される。筒状弾性体は、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物(シリコーンゴム)で構成される。
キャップ20は、チューブ10の軸方向の端部に設けられた蓋部材で構成される。キャップ20は、図2(b)に示す孔22を有してもよい。孔22を介して、チューブ10の空間12内に、流体を注入または排出できる。空間12に流体が注入されると、チューブ10は、径方向に膨張し、軸方向に収縮する(図2(b)、図2(c))。すなわち、アクチュエータ100は、チューブ10の軸方向に収縮力、径方向に膨張力を発生する。
チューブ10は、アクチュエータ100中や、アクチュエータ100内が搭載された機械中における、他の部材との接触に対して膨張耐久性を高められる。このため、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、流体駆動型アクチュエータに適したチューブ部材を提供できる。
また、アクチュエータ100は、チューブ10の外周面を覆う筒状のスリーブを有してもよい。スリーブは、繊維で構成された網目状の補強構造を有する。チューブ10およびスリーブを有するアクチュエータ100は、マッキベン型人工筋肉となる。
上記のシリコーンゴムをチューブ10に用いることによって、スリーブとの接触に対して容易膨張性および膨張耐久性を高められる。このため、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、マッキベン型人工筋肉に適したチューブ部材を提供できる。
以下、シリコーンゴム系硬化性組成物の詳細を説明する。
下記の手順で測定される、当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物の、1MPa時の伸びをE1(%)、0.2MPa時の伸びをE2(%)、引裂強度をTS(N/mm)とする。
(1MPa時の伸びの測定手順)
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、25℃、引張速度:500mm/分の条件で引張試験を行い、応力が1MPaに到達した時の、得られたダンベル状3号形試験片の伸びを[標線間移動距離(mm)]÷[初期標線間距離(20mm)]×100の式で計算する。単位は%である。
(0.2MPa時の伸びの測定手順)
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、25℃、引張速度:500mm/分の条件で引張試験を行い、応力が0.2MPaに到達した時の、得られたダンベル状3号形試験片の伸びを[標線間移動距離(mm)]÷[初期標線間距離(20mm)]×100の式で計算する。単位は%である。
(引裂強度の測定手順)
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、JIS K6252(2001)に準拠して、クレセント形試験片を作製し、25℃における、得られたクレセント形試験片の引裂強度を測定する。単位はN/mmである。
E1の下限は、20以上、好ましくは30以上、より好ましくは50以上である。これにより、容易膨張性に優れたシリコーンゴムを実現できる。一方、E1の上限は、特に限定されないが、例えば、500以下でもよく、400以下でもよく、300以下でもよい。これにより、機械的強度等の他の特性と容易膨張性とのバランスに優れたシリコーンゴムが得られる。
シリコーンゴム系硬化性組成物は、E1、E2が、20≦|E1-E2|を満たすという特性を有してもよい。
|E1-E2|の下限は、20以上、好ましくは25以上、より好ましくは30以上である。これにより、比較的に小さな流体圧力であっても容易膨張性に優れたシリコーンゴムを実現できる。一方、|E1-E2|の上限は、特に限定されないが、例えば、500以下でもよく、400以下でもよく、300以下でもよい。これにより、特性のバランスに優れたシリコーンゴムが得られる。
上記引裂強度の下限は、例えば、25N/mm以上、好ましくは28N/mm以上、より好ましくは30N/mm以上、さらに好ましくは33N/mm以上、一層好ましくは35N/mm以上である。これにより、シリコーンゴムの繰り返し使用時における耐久性を向上できる。また、シリコーンゴムの耐傷付き性や機械的強度を向上できる。一方、上記引裂強度の上限は、特に限定されないが、例えば、80N/mm以下としてもよく、70N/mm以下としてもよい。これにより、シリコーンゴムの諸特性のバランスをとることができる。
シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物のデュロメータ硬さAは、下記の手順によって測定される。
デュロメータ硬さAの上限は、特に限定されないが、例えば、65以下でもよく、好ましくは55以下でもよく、より好ましくは50以下でもよい。これにより、シリコーンゴムの硬化物性のバランスを図ることができる。これにより、シリコーンゴムにおいて、屈曲や伸張などの変形が容易となる変形容易性を高められる。
一方、上記デュロメータ硬さAの下限は、特に限定されないが、例えば、20以上、好ましくは25以上、より好ましくは30以上である。これにより、シリコーンゴムの機械的強度を高められる。
(デュロメータ硬さAの測定手順)
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、シート状試験片を作製し、JIS K6253(1997)に準拠して、25℃における、得られたシート状試験片のデュロメータ硬さAを測定する。
シリコーンゴム系硬化性組成物の可塑度は、下記の手順で測定される。
可塑度の下限は、例えば、80以上、好ましくは90以上、より好ましくは100以上である。これにより、シリコーンゴム系硬化性組成物を用いた押出成形の製造安定性を高められる。一方、可塑度の上限は、例えば、340以下、好ましくは320以下、より好ましくは300以下である。これにより、押出成形の製造安定性を高められる。
(可塑度の測定手順)
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の未硬化物を試験サンプルとして使用し、JIS K6249(2003)に準拠して、ウイリアムス可塑度計を用いて、25℃における、得られた試験サンプルの可塑度について、測定開始から10分後に測定する。
本実施形態では、たとえばシリコーンゴム系硬化性組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、シリコーンゴム系硬化性組成物の調製方法等を適切に選択することにより、上記硬度、1MPa時の伸び、0.2MPa時の伸び、引裂強度、可塑度を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、シリコーンゴムを構成する樹脂の種類や配合比率、樹脂の架橋密度や架橋構造等を適切に制御したり、無機充填材の配合比率や無機充填材の分散性を向上させること等が、上記硬度、1MPa時の伸び、0.2MPa時の伸び、引裂強度、可塑度を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
次に、シリコーンゴム系硬化性組成物の組成成分について説明する。
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を含むことができる。ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、シリコーンゴム系硬化性組成物の主成分となる重合物である。
上記ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、直鎖構造を有するビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を含むことができる。
上記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、直鎖構造を有し、かつ、ビニル基を含有しており、かかるビニル基が硬化時の架橋点となる。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)のビニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ15モル%以下であるのが好ましい。これにより、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中におけるビニル基の量が最適化され、後述する各成分とのネットワークの形成を確実に行うことができる。
本明細書中、「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
なお、本明細書中において、ビニル基含有量とは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する全ユニットを100モル%としたときのビニル基含有シロキサンユニットのモル%である。ただし、ビニル基含有シロキサンユニット1つに対して、ビニル基1つであると考える。
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の重合度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1000~10000程度、より好ましくは2000~5000程度の範囲内である。なお、重合度は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の比重は、特に限定されないが、0.9~1.1程度の範囲であるのが好ましい。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、上記のような範囲内の重合度および比重を有するものを用いることにより、得られるシリコーンゴムの耐熱性、難燃性、化学的安定性等の向上を図ることができる。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、特に、下記式(1)で表される構造を有するものであるが好ましい。
Figure 0007434827000001
式(1)中、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
また、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
さらに、式(1)中のRおよびRの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(1)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。さらに、R、およびRについても同様である。
さらに、m、nは、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは0~2000の整数、nは1000~10000の整数である。mは、好ましくは0~1000であり、nは、好ましくは2000~5000である。
また、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の具体的構造としては、例えば下記式(1-1)で表されるものが挙げられる。
Figure 0007434827000002
式(1-1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基またはビニル基であり、少なくとも一方がビニル基である。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、ビニル基含有量が分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ0.4モル%以下である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を含んでもよい。第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)のビニル基量は、0.1モル%以下でもよい。
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)とビニル基含有量が0.5~15モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを含有してもよい。
シリコーンゴムの原料である生ゴムとして、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、ビニル基含有量が高い第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせることで、ビニル基を偏在化させることができ、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に、より効果的に架橋密度の疎密を形成することができる。その結果、より効果的にシリコーンゴムの引裂強度を高めることができる。
具体的には、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、例えば、上記式(1-1)において、Rがビニル基である単位および/またはRがビニル基である単位を、分子内に2個以上有し、かつ0.4モル%以下を含む第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、Rがビニル基である単位および/またはRがビニル基である単位を、0.5~15モル%含む第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを用いるのが好ましい。
また、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)は、ビニル基含有量が0.01~0.2モル%であるのが好ましい。また、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)は、ビニル基含有量が、0.8~12モル%であるのが好ましい。
さらに、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせて配合する場合、(A1-1)と(A1-2)の比率は特に限定されないが、例えば、重量比で(A1-1):(A1-2)が50:50~95:5であるのが好ましく、80:20~90:10であるのがより好ましい。
なお、第1および第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)および(A1-2)は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、分岐構造を有するビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(A2)を含んでもよい。
<<オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を含むことができる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、直鎖構造を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐構造を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)とに分類され、これらのうちのいずれか一方または双方を含むことができる。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖構造を有し、かつ、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分が有するビニル基とヒドロシリル化反応し、これらの成分を架橋する重合体である。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が20000以下であるのが好ましく、1000以上、10000以下であることがより好ましい。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の重量平均分子量は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算により測定することができる。
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
以上のような直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)としては、例えば、下記式(2)で表される構造を有するものが好ましく用いられる。
Figure 0007434827000003
式(2)中、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
なお、式(2)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。Rについても同様である。ただし、複数のRおよびRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。
また、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
なお、式(2)中のR,R,Rの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、分子内の架橋反応を防止する観点から、メチル基が好ましい。
さらに、m、nは、式(2)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは2~150整数、nは2~150の整数である。好ましくは、mは2~100の整数、nは2~100の整数である。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有するため、架橋密度が高い領域を形成し、シリコーンゴムの系中の架橋密度の疎密構造形成に大きく寄与する成分である。また、上記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)同様、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分のビニル基とヒドロシリル化反応し、これら成分を架橋する重合体である。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の比重は、0.9~0.95の範囲である。
さらに、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)としては、下記平均組成式(c)で示されるものが好ましい。
平均組成式(c)
(H(R3-aSiO1/2(SiO4/2
(式(c)において、Rは一価の有機基、aは1~3の範囲の整数、mはH(R3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)
式(c)において、Rは一価の有機基であり、好ましくは、炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
式(c)において、aは、ヒドリド基(Siに直接結合する水素原子)の数であり、1~3の範囲の整数、好ましくは1である。
また、式(c)において、mはH(R3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は分岐状構造を有する。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、その構造が直鎖状か分岐状かという点で異なり、Siの数を1とした時のSiに結合するアルキル基Rの数(R/Si)が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)では1.8~2.1、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)では0.8~1.7の範囲となる。
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有しているため、例えば、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上となる。これに対して、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖状であるため、上記条件で加熱した後の残渣量はほぼゼロとなる。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の具体例としては、下記式(3)で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 0007434827000004
式(3)中、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基、もしくは水素原子である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(3)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
また、式(3)中、「-O-Si≡」は、Siが三次元に広がる分岐構造を有することを表している。
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)において、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は、それぞれ、特に限定されない。ただし、シリコーンゴム系硬化性組成物において、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中のビニル基1モルに対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の合計のヒドリド基量が、0.5~5モルとなる量が好ましく、1~3.5モルとなる量がより好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)および分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)と、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)との間で、架橋ネットワークを確実に形成させることができる。
<<シリカ粒子(C)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、ビニル基含有ポリオルガノシロキサン(A)に加え、シリカ粒子(C)を含んでもよい。
シリカ粒子(C)としては、特に限定されないが、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ等が用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリカ粒子(C)は、例えば、BET法による比表面積が例えば50~400m/gであるのが好ましく、100~400m/gであるのがより好ましい。また、シリカ粒子(C)の平均一次粒径は、例えば1~100nmであるのが好ましく、5~20nm程度であるのがより好ましい。
シリカ粒子(C)として、かかる比表面積および平均粒径の範囲内であるものを用いることにより、形成されるシリコーンゴムの硬さや機械的強度の向上、特に引張強度の向上をさせることができる。
<<シランカップリング剤(D)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、シランカップリング剤(D)を含むことができる。
シランカップリング剤(D)は、加水分解性基を有することができる。加水分解基が水により加水分解されて水酸基になり、この水酸基がシリカ粒子(C)表面の水酸基と脱水縮合反応することで、シリカ粒子(C)の表面改質を行うことができる。
また、このシランカップリング剤(D)は、疎水性基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にこの疎水性基が付与されるため、シリコーンゴム系硬化性組成物中ひいてはシリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)の凝集力が低下(シラノール基による水素結合による凝集が少なくなる)し、その結果、シリコーンゴム系硬化性組成物中のシリカ粒子の分散性が向上すると推測される。これにより、シリカ粒子とゴムマトリックスとの界面が増加し、シリカ粒子の補強効果が増大する。さらに、ゴムのマトリックス変形の際、マトリックス内でのシリカ粒子の滑り性が向上すると推測される。そして、シリカ粒子(C)の分散性の向上及び滑り性の向上によって、シリカ粒子(C)によるシリコーンゴムの機械的強度(例えば、引張強度や引裂強度など)が向上する。
さらに、シランカップリング剤(D)は、ビニル基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にビニル基が導入される。そのため、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化の際、すなわち、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)が有するビニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とがヒドロシリル化反応して、これらによるネットワーク(架橋構造)が形成される際に、シリカ粒子(C)が有するビニル基も、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とのヒドロシリル化反応に関与するため、ネットワーク中にシリカ粒子(C)も取り込まれるようになる。これにより、形成されるシリコーンゴムの低硬度化および高モジュラス化を図ることができる。
シランカップリング剤(D)としては、疎水性基を有するシランカップリング剤およびビニル基を有するシランカップリング剤を併用することができる。
シランカップリング剤(D)としては、例えば、下記式(4)で表わされるものが挙げられる。
-Si-(X)4-n・・・(4)
上記式(4)中、nは1~3の整数を表わす。Yは、疎水性基、親水性基またはビニル基を有するもののうちのいずれかの官能基を表わし、nが1の時は疎水性基であり、nが2または3の時はその少なくとも1つが疎水性基である。Xは、加水分解性基を表わす。
疎水性基は、炭素数1~6のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられ、中でも、特に、メチル基が好ましい。
また、親水性基は、例えば、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基またはカルボニル基等が挙げられ、中でも、特に、水酸基が好ましい。なお、親水性基は、官能基として含まれていてもよいが、シランカップリング剤(D)に疎水性を付与するという観点からは含まれていないのが好ましい。
さらに、加水分解性基は、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、クロロ基またはシラザン基等が挙げられ、中でも、シリカ粒子(C)との反応性が高いことから、シラザン基が好ましい。なお、加水分解性基としてシラザン基を有するものは、その構造上の特性から、上記式(4)中の(Y-Si-)の構造を2つ有するものとなる。
上記式(4)で表されるシランカップリング剤(D)の具体例は、例えば、官能基として疎水性基を有するものとして、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランのようなアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシランのようなクロロシラン;ヘキサメチルジシラザンが挙げられ、官能基としてビニル基を有するものとして、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランのようなアルコキシシラン;ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシランのようなクロロシラン;ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられるが、中でも、上記記載を考慮すると、特に、疎水性基を有するものとしてはヘキサメチルジシラザン、ビニル基を有するものとしてはジビニルテトラメチルジシラザンであるのが好ましい。
<<白金または白金化合物(E)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、白金または白金化合物(E)を含むことができる。
白金または白金化合物(E)は、硬化の際の触媒として作用する触媒成分である。白金または白金化合物(E)の添加量は触媒量である。
白金または白金化合物(E)としては、公知のものを使用することができ、例えば、白金黒、白金をシリカやカーボンブラック等に担持させたもの、塩化白金酸または塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯塩等が挙げられる。
なお、白金または白金化合物(E)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<<水(F)>>
また、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物には、上記成分(A)~(E)以外に、水(F)が含まれていてもよい。
水(F)は、シリコーンゴム系硬化性組成物に含まれる各成分を分散させる分散媒として機能するとともに、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)との反応に寄与する成分である。そのため、シリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)とを、より確実に互いに連結したものとすることができ、全体として均一な特性を発揮することができる。
さらに、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)~(F)成分の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される公知の添加成分を含有していてもよい。例えば、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラスウール、マイカ等が挙げられる。その他、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等を適宜配合することができる。
なお、シリコーンゴム系硬化性組成物において、各成分の含有割合は特に限定されないが、例えば、以下のように設定される。
本実施形態において、シリカ粒子(C)の含有量の上限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対し、例えば、60重量部以下でもよく、好ましくは50重量部以下でもよく、さらに好ましくは40重量部以下でもよい。これにより、硬さや引張強等の機械的強度のバランスを図ることができる。また、シリカ粒子(C)の含有量の下限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対し、特に限定されないが、例えば、10重量部以上でもよい。
シランカップリング剤(D)は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、例えば、シランカップリング剤(D)が5重量部以上100重量部以下の割合で含有するのが好ましく、5重量部以上40重量部以下の割合で含有するのがより好ましい。これにより、シリカ粒子(C)のシリコーンゴム系硬化性組成物中における分散性を確実に向上させることができる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の含有量は、具体的にビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)及びシリカ粒子(C)及びシランカップリング剤(D)の合計量100重量部に対して、例えば、0.5重量部以上20重量部以下の割合で含有することが好ましく、0.8重量部以上15重量部以下の割合で含有するのがより好ましい。(B)の含有量が前記範囲内であることで、より効果的な硬化反応ができる可能性がある。
白金または白金化合物(E)の含有量は、触媒量を意味し、適宜設定することができるが、具体的にビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シリカ粒子(C)、シランカップリング剤(D)の合計量に対して、本成分中の白金族金属が重量単位で0.01~1000ppmとなる量であり、好ましくは、0.1~500ppmとなる量である。白金または白金化合物(E)の含有量を上記下限値以上とすることにより、得られるシリコーンゴム組成物を十分硬化させることができる。白金または白金化合物(E)の含有量を上記上限値以下とすることにより、得られるシリコーンゴム組成物の硬化速度を向上させることができる。
さらに、水(F)を含有する場合、その含有量は、適宜設定することができるが、具体的には、シランカップリング剤(D)100重量部に対して、例えば、10~100重量部の範囲であるのが好ましく、30~70重量部の範囲であるのがより好ましい。これにより、シランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させることができる。
<シリコーンゴムの製造方法>
次に、本実施形態のシリコーンゴムの製造方法について説明する。
本実施形態のシリコーンゴムの製造方法としては、シリコーンゴム系硬化性組成物を調製し、このシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによりシリコーンゴムを得ることができる。
以下、詳述する。
まず、シリコーンゴム系硬化性組成物の各成分を、任意の混練装置により、均一に混合してシリコーンゴム系硬化性組成物を調製する。
[1]たとえば、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)と、シリカ粒子(C)と、シランカップリング剤(D)とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置により、混練することで、これら各成分(A)、(C)、(D)を含有する混練物を得る。
なお、この混練物は、予めビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とシランカップリング剤(D)とを混練し、その後、シリカ粒子(C)を混練(混合)して得るのが好ましい。これにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)中におけるシリカ粒子(C)の分散性がより向上する。
また、この混練物を得る際には、水(F)を必要に応じて、各成分(A)、(C)、および(D)の混練物に添加するようにしてもよい。これにより、シランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させることができる。
さらに、各成分(A)、(C)、(D)の混練は、第1温度で加熱する第1ステップと、第2温度で加熱する第2ステップとを経るようにするのが好ましい。これにより、第1ステップにおいて、シリカ粒子(C)の表面をカップリング剤(D)で表面処理することができるとともに、第2ステップにおいて、シリカ粒子(C)とカップリング剤(D)との反応で生成した副生成物を混練物中から確実に除去することができる。その後、必要に応じて、得られた混練物に対して、成分(A)を添加し、更に混練してもよい。これにより、混練物の成分のなじみを向上させることができる。
第1温度は、例えば、40~120℃程度であるのが好ましく、例えば、60~90℃程度であるのがより好ましい。第2温度は、例えば、130~210℃程度であるのが好ましく、例えば、160~180℃程度であるのがより好ましい。
また、第1ステップにおける雰囲気は、窒素雰囲気下のような不活性雰囲気下であるのが好ましく、第2ステップにおける雰囲気は、減圧雰囲気下であるのが好ましい。
さらに、第1ステップの時間は、例えば、0.3~1.5時間程度であるのが好ましく、0.5~1.2時間程度であるのがより好ましい。第2ステップの時間は、例えば、0.7~3.0時間程度であるのが好ましく、1.0~2.0時間程度であるのがより好ましい。
第1ステップおよび第2ステップを、上記のような条件とすることで、前記効果をより顕著に得ることができる。
[2]次に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、白金または白金化合物(E)とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置を用いて、上記工程[1]で調製した混練物に、各成分(B)、(E)を混練することで、シリコーンゴム系硬化性組成物を得る。得られたシリコーンゴム系硬化性組成物は溶剤を含むペーストであってもよい。
なお、この各成分(B)、(E)の混練の際には、予め上記工程[1]で調製した混練物とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)とを、上記工程[1]で調製した混練物と白金または白金化合物(E)とを混練し、その後、それぞれの混練物を混練するのが好ましい。これにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応を進行させることなく、各成分(A)~(E)をシリコーンゴム系硬化性組成物中に確実に分散させることができる。
各成分(B)、(E)を混練する際の温度は、ロール設定温度として、例えば、10~70℃程度であるのが好ましく、25~30℃程度であるのがより好ましい。
さらに、混練する時間は、例えば、5分~1時間程度であるのが好ましく、10~40分程度であるのがより好ましい。
上記工程[1]および上記工程[2]において、温度を上記範囲内とすることにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。また、上記工程[1]および上記工程[2]において、混練時間を上記範囲内とすることにより、各成分(A)~(E)をシリコーンゴム系硬化性組成物中により確実に分散させることができる。
なお、各工程[1]、[2]において使用される混練装置としては、特に限定されないが、例えば、ニーダー、2本ロール、バンバリーミキサー(連続ニーダー)、加圧ニーダー等を用いることができる。
また、本工程[2]において、混練物中に1-エチニルシクロヘキサノールのような反応抑制剤を添加するようにしてもよい。これにより、混練物の温度が比較的高い温度に設定されたとしても、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。
[3]次に、シリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによりシリコーンゴムを形成する。
本実施形態において、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化工程は、例えば、100~250℃で1~30分間加熱(1次硬化)した後、200℃で1~4時間ポストベーク(2次硬化)することによって行われる。
以上のような工程を経ることで、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物を用いてシリコーンゴムが得られる。
本実施形態の流体駆動型アクチュエータ(アクチュエータ100)は、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で形成されたチューブ部材を備える。
アクチュエータ100は、軸方向に対して1本または2本以上のチューブ10を有してもよい。
チューブ10の製造方法は、シリコーンゴム系硬化性組成物を用いた押出成形によって、チューブ状のシリコーンゴムを形成する方法や、圧縮成形によって、チューブ状のシリコーンゴムを形成する方法を用いてもよい。
チューブ10は、軸方向に延在する筒状構造でもよく、全体または一部が湾曲した湾曲構造を有してもよい。
チューブ10は、内部に1または2以上の空間12を有してもよい。具体的には、チューブ10は、1または2以上のリングによって、あるいは、シリコーンゴム層の内面が互いに接着することによって、複数に区分された空間12を有してもよい。この複数の空間12は、チューブ10の軸方向に並ぶように配置される。
チューブ10のシリコーンゴム層は、単層でもよく、2以上の複数層で構成されてもよい。各シリコーンゴム層は、1種または2種以上のシリコーンゴム層で構成されてもよい。例えば、2つのシリコーンゴム層の間に繊維層を有してもよい。また、チューブ10は、少なくとも一部に伸縮率が異なる2以上のシリコーンゴム層やシリコーンゴム以外の層を有してもよい。
キャップ20は、チューブ10の内周面に設置されてもよいが、チューブ10の外周面に設置されてもよい。キャップ20は、他の機構や部材と連結するための連結機構を有してもよい。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 流体駆動型アクチュエータを構成する一部を形成するために用いる、シリコーンゴム系硬化性組成物であって、
下記の手順で測定される、当該シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の硬化物の、1MPa時の伸びをE1(%)、引裂強度をTS(N/mm)としたとき、
E1、TSが、20≦E、20≦TSを満たす、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(1MPa時の伸びの測定手順)
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、25℃、引張速度:500mm/分の条件で引張試験を行い、応力が1MPaに到達した時の、得られたダンベル状3号形試験片の伸びを[標線間移動距離(mm)]÷[初期標線間距離(20mm)]×100の式で計算する。単位は%である。
(引裂強度の測定手順)
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、JIS K6252(2001)に準拠して、クレセント形試験片を作製し、25℃における、得られたクレセント形試験片の引裂強度を測定する。単位はN/mmである。
2. 1.に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物であって、
下記の手順で測定される、当該シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の硬化物の、0.2MPa時の伸びをE2(%)としたとき、
E1、E2が、20≦|E1-E2|を満たす、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(0.2MPa時の伸びの測定手順)
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、25℃、引張速度:500mm/分の条件で引張試験を行い、応力が0.2MPaに到達した時の、得られたダンベル状3号形試験片の伸びを標線間移動距離(mm)]÷[初期標線間距離(20mm)]×100の式で計算する。単位は%である。
3. 1.又は2.に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物であって、
E1が、E1≦500を満たす、シリコーンゴム系硬化性組成物。
4. 1.~3.のいずれか一つに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物であって、
下記の手順で測定される、当該シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の硬化物の、デュロメータ硬さAが、20以上65以下である、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(デュロメータ硬さAの測定手順)
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、シート状試験片を作製し、JIS K6253(1997)に準拠して、25℃における、得られたシート状試験片のデュロメータ硬さAを測定する。
5. 1.~4.のいずれか一つに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物であって、
下記の手順で測定される、当該シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の可塑度が、80~340である、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(可塑度の測定手順)
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の未硬化物を試験サンプルとして使用し、JIS K6249(2003)に準拠して、ウイリアムス可塑度計を用いて、25℃における、得られた試験サンプルの可塑度について、測定開始から10分後に測定する。
6. 1.~5.のいずれか一つに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物であって、
ビニル基含有ポリオルガノシロキサン(A)と、
シリカ粒子(C)と、を含む、シリコーンゴム系硬化性組成物。
7. 6.に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物であって、
前記シリカ粒子(C)の含有量が、前記ビニル基含有ポリオルガノシロキサン(A)100重量部に対して、10重量部以上60重量部以下である、シリコーンゴム系硬化性組成物。
8. 1.~7.のいずれか一つに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物であって、
前記流体駆動型アクチュエータ中のチューブ部材を形成するために用いる、シリコーンゴム系硬化性組成物。
9. 1.~8.のいずれか一つに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で形成されたチューブ部材を備える、流体駆動型アクチュエータ。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
表1に示す実施例および比較例で用いた原料成分を以下に示す。
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A))
・低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1):合成スキーム1により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1-1)で表わされる構造でR(末端)のみがビニル基である構造)
・高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2):合成スキーム3により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1-1)で表わされる構造でRおよびRがビニル基である構造)
・低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-3):合成スキーム3により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1-1)で表わされる構造でRおよびRがビニル基である構造)
(オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B))
・モメンティブ社製:「TC-25D」
(シリカ粒子(C))
・シリカ粒子(C-1):シリカ微粒子(粒径7nm、比表面積300m/g)、日本アエロジル社製、「AEROSIL300」
・シリカ粒子(C-2):シリカ微粒子(粒径16nm、比表面積110m/g)、日本アエロジル社製、「AEROSIL R972」
(シランカップリング剤(D))
・シランカップリング剤(D-1):ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、Gelest社製、「HEXAMETHYLDISILAZANE(SIH6110.1)」
・シランカップリング剤(D-2):ジビニルテトラメチルジシラザン、Gelest社製、「1,3-DIVINYLTETRAMETHYLDISILAZANE(SID4612.0)」
(白金または白金化合物(E))
・モメンティブ社製:「TC-25A」
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合成)
[合成スキーム1:低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)の合成]
下記式(5)にしたがって、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を合成した。
すなわち、Arガス置換した、冷却管および攪拌翼を有する300mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)、カリウムシリコネート0.1gを入れ、昇温し、120℃で30分間攪拌した。なお、この際、粘度の上昇が確認できた。
その後、155℃まで昇温し、3時間攪拌を続けた。そして、3時間後、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン0.1g(0.6mmol)を添加し、さらに、155℃で4時間攪拌した。
さらに、4時間後、トルエン250mLで希釈した後、水で3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール1.5Lで数回洗浄することで、再沈精製し、オリゴマーとポリマーを分離した。得られたポリマーを60℃で一晩減圧乾燥し、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を得た(Mn=2,2×10、Mw=4,8×10)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.04モル%であった。
Figure 0007434827000005


[合成スキーム2:高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)の合成]
上記(A1-1)の合成工程において、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)に加えて2,4,6,8-テトラメチル2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.86g(2.5mmol)を用いたこと以外は、(A1-1)の合成工程と同様にすることで、下記式(6)のように、高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)を合成した。(Mn=2,3×10、Mw=5,0×10)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.93モル%であった。
Figure 0007434827000006
[合成スキーム3:低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-3)の合成]
上記(A1-2)の合成工程において、オクタメチルシクロテトラシロキサン75.3g(254mmol)、2,4,6,8-テトラメチル2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.12g(0.35mmol)を用い、155℃まで昇温した後の撹拌時間を3時間にしたこと以外は、(A1-2)の合成工程と同様にすることで、上記式(6)のように、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-3)を合成した。(Mn=2.5×10、Mw=5.0×10)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.13モル%であった。
(実施例1~6、比較例1:シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
次のようにしてシリコーンゴム系硬化性組成物を調整した。
まず、下記の表1に示す割合で、90%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シランカップリング剤(D)および水(F)の混合物を予め混練し、その後、混合物にシリカ粒子(C)を加えてさらに混練し、混練物(シリコーンゴムコンパウンド)を得た。
ここで、シリカ粒子(C)添加後の混練は、カップリング反応のために窒素雰囲気下、60~90℃の条件下で1時間混練する第1ステップと、副生成物(アンモニア)の除去のために減圧雰囲気下、160~180℃の条件下で2時間混練する第2ステップとを経ることで行い、その後、冷却し、残り10%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を2回に分けて添加し、20分間混練した。
続いて、得られた混練物(シリコーンゴムコンパウンド)100重量部に、下記の表1に示す割合で、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)(TC-25D)および白金または白金化合物(E)(TC-25A)を加えて、ロールで混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物を得た。
(比較例2:シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
下記の表1に示す割合で、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を単独で5分間混錬し、その後、混合物にシリカ粒子(C)を加えてさらに2時間混練し、混練物(シリコーンゴムコンパウンド)を得た。
続いて、得られた混練物(シリコーンゴムコンパウンド)100重量部に、下記の表1に示す割合で、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)(TC-25D)および白金または白金化合物(E)(TC-25A)を加えて、ロールで混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物を得た。
Figure 0007434827000007
(評価用シリコーンゴムの作製)
実施例1、2、比較例1、2において、得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を、170℃、10MPaで10分間プレスし、厚さ1mmのシート状に成形すると共に、1次硬化した。続いて、200℃で4時間加熱し、2次硬化した。以上により、シート状シリコーンゴム(シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物)を得た。
得られたシート状シリコーンゴム(シート状のエラストマー)に対して、下記の評価項目に基づいて評価を行った。
1MPa伸び、0.2MPa伸びについては、3つのサンプルで行い、3つの平均値を測定値とした。
引裂強度については、5つのサンプルで行い、5つの平均値を測定値とした。
硬度については、2つのサンプルを用いて、各サンプルでn=5で測定を行い、計10個の測定の平均値を測定値とした。それぞれの平均値を表2に示す。
Figure 0007434827000008
<硬度:デュロメータ硬さ>
得られた厚さ1mmのシート状シリコーンゴムを6枚積層し、6mmの試験片を作製した。得られた試験片に対して、25℃において、JIS K6253(1997)に準拠してタイプAデュロメータ硬さを測定した。
<引裂強度>
得られた厚さ1mmのシート状シリコーンゴムを用いて、JIS K6252(2001)に準拠して、クレセント形試験片を作製し、得られたクレセント形試験片について、25℃における引裂強度(TS)を測定した。単位は、N/mmである。
<1MPa時、0.2MPa時の伸び>
得られた厚さ1mmのシート状シリコーンゴムを用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、得られたダンベル状3号形試験片について、引張速度:500mm/分で、25℃で引張試験を実施し、応力が1MPa、または0.2MPaに到達した時の伸びを測定した。単位は%である。
<可塑度>
得られたシリコーンゴム系硬化性組成物の未硬化物を試験サンプルとして使用した。
JIS K6249(2003)に準拠して、ウイリアムス可塑度計(安田精機製作所社製)を用いて、25℃における、試験サンプルの可塑度について測定した。測定開始から10分後の値を、可塑度として表2に示す。
(チューブ部材の製造)
各実施例、比較例のシリコーンゴム系硬化性組成物を使用し、押出機を用いてチューブ状に押出成形して、チューブ部材を得た。
<容易膨張性>
得られたチューブ部材中に対して、一定圧力の空気を注入し、その膨張率を評価した。実施例1~6のチューブ部材は、比較例1と比べて径方向の膨張率が大きいことが分かった。
<膨張耐久性>
実施例1~6、比較例2で得られたチューブ部材の端部からその空間に空気を注入して、径方向の膨張を所定回数繰り返し行った。比較例2では、所定回数の繰り返し膨張後、膨張時に一部破損が見られたが、実施例1~6では、繰り返し膨張後もチューブ部材には破損が見られなかった。
実施例1~6のシリコーンゴム系硬化性組成物は、比較例1と比べて容易膨張性に優れる結果を示した。また、実施例1~6のシリコーンゴム系硬化性組成物を用いて形成されたチューブ部材は、比較例2と比べて空気による繰り返しの膨張時の耐久性に優れることが分かった。このようなシリコーンゴム系硬化性組成物は、流体駆動型アクチュエータに好適に使用することができる。
10 チューブ
12 空間
20 キャップ
22 孔
100 アクチュエータ

Claims (9)

  1. 単層または複数層のシリコーンゴム層と、繊維層と、を有するチューブ部材を備える流体駆動型アクチュエータを構成する前記チューブ部材のシリコーンゴム層を形成するために用いる、シリコーンゴム系硬化性組成物であって、
    下記の手順で測定される、当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物の、1MPa時の伸びをE1(%)、引裂強度をTS(N/mm)としたとき、
    E1、TSが、20≦E1、20≦TSを満たす、シリコーンゴム系硬化性組成物。
    (1MPa時の伸びの測定手順)
    当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、25℃、引張速度:500mm/分の条件で引張試験を行い、応力が1MPaに到達した時の、得られたダンベル状3号形試験片の伸びを[標線間移動距離(mm)]÷[初期標線間距離(20mm)]×100の式で計算する。単位は%である。
    (引裂強度の測定手順)
    当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、JIS K6252(2001)に準拠して、クレセント形試験片を作製し、25℃における、得られたクレセント形試験片の引裂強度を測定する。単位はN/mmである。
  2. 請求項1に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物であって、
    下記の手順で測定される、当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物の、0.2MPa時の伸びをE2(%)としたとき、
    E1、E2が、20≦|E1-E2|を満たす、シリコーンゴム系硬化性組成物。
    (0.2MPa時の伸びの測定手順)
    当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、25℃、引張速度:500mm/分の条件で引張試験を行い、応力が0.2MPaに到達した時の、得られたダンベル状3号形試験片の伸びを標線間移動距離(mm)]÷[初期標線間距離(20mm)]×100の式で計算する。単位は%である。
  3. 請求項1又は2に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物であって、
    E1が、E1≦500を満たす、シリコーンゴム系硬化性組成物。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物であって、
    下記の手順で測定される、当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物の、デュロメータ硬さAが、20以上65以下である、シリコーンゴム系硬化性組成物。
    (デュロメータ硬さAの測定手順)
    当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、シート状試験片を作製し、JIS K6253(1997)に準拠して、25℃における、得られたシート状試験片のデュロメータ硬さAを測定する。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物であって、
    下記の手順で測定される、当該シリコーンゴム系硬化性組成物の可塑度が、80~340である、シリコーンゴム系硬化性組成物。
    (可塑度の測定手順)
    当該シリコーンゴム系硬化性組成物の未硬化物を試験サンプルとして使用し、JIS K6249(2003)に準拠して、ウイリアムス可塑度計を用いて、25℃における、得られた試験サンプルの可塑度について、測定開始から10分後に測定する。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物であって、
    ビニル基含有ポリオルガノシロキサン(A)と、
    シリカ粒子(C)と、を含む、シリコーンゴム系硬化性組成物。
  7. 請求項6に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物であって、
    前記シリカ粒子(C)の含有量が、前記ビニル基含有ポリオルガノシロキサン(A)100重量部に対して、10重量部以上60重量部以下である、シリコーンゴム系硬化性組成物。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物であって、
    前記チューブ部材が、
    2つの前記シリコーンゴム層の間に前記繊維層を有する、または、
    前記チューブ部材の外周面を覆う前記繊維層を有する、シリコーンゴム系硬化性組成物。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で形成された単層または複数層のシリコーンゴム層と、繊維層と、を有するチューブ部材を備える、流体駆動型アクチュエータ。
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