JP7183535B2 - シリコーンゴム系硬化性組成物および成形体 - Google Patents

シリコーンゴム系硬化性組成物および成形体 Download PDF

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Description

本発明は、シリコーンゴム系硬化性組成物および成形体に関する。
シリコーンゴムは、耐熱性、難燃性、化学的安定性、耐候性、耐放射線性、電気特性等に優れていることから、幅広い分野において様々な用途に使用されている。特に、シリコーンゴムは、生理的に不活性であると共に、生体に触れた場合の体組織に対する反応が少ないため、医療用各種カテーテル等、医療器具の材料としても利用されている。
医療用カテーテルは、胸腔や腹腔等の体腔、消化管や尿管等の管腔部、血管等に挿入し、体液の排出や、薬液、栄養剤及び造影剤等の注入点滴に用いられる管であり、生体適合性の他、耐傷付き性(耐引裂き性)、耐キンク性(引張り強度)、透明性、柔軟性(引張り伸び性)等が要求される。
そこで、シリコーンゴムに関し、これらの要求を満たすべく研究が進んでいる。例えば、特許文献1には、低モジュラスで永久伸びが少なく、高い伸張性と高い柔軟性を付与する観点から、分子鎖末端のみにアルケニル基を含有する室温で生ゴム状のオルガノポリシロキサンと、分子鎖末端及び分子鎖側鎖にアルケニル基を含有する室温で生ゴム状のオルガノポリシロキサンとを所定の比率で組み合わせる付加硬化性シリコーンゴム組成物が開示されている。
特開2016-2103号公報
しかしながら、本発明者が検討したところ、上記特許文献1に記載されたシリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴムにおいては、繰り返しの使用により亀裂が入ったり、破断してしまうため、繰り返し耐久性において改善の余地を有していることが判明した。
本発明者は、鋭意検討の結果、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物の引き裂き強度、及びデュロメータ硬さAと、特定の条件の引っ張り繰り返し試験を行うことで得られた破断回数というパラメータを組みあわせることが、上記課題を解決する設計指針として有効であるという知見を得た。
本発明によれば、
(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと、
(B)無機充填材と、を含む、シリコーンゴム系硬化性組成物であって、
成分(A)の合計量100重量部に対する成分(B)の含有量が20~35重量部であり、
成分(A)は、(A1)直鎖構造を有するビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを含み、
前記(A1)は、式(1-1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを含み、
Figure 0007183535000001
(式(1-1)中、RおよびRは、ビニル基である。mは0~2000の整数、nは1000~10000の整数である。
当該ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンは、(A1-1)ビニル基含有量が分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ0.4モル%以下である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンと、(A1-2)ビニル基含有量が0.5~15モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとを含有し、成分(A1-1)と成分(A1-2)の重量比(A1-1):(A1-2)が50:50~95:5であり
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物の引裂強度が30N/mm以上であり、
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物のデュロメータ硬さAが31.5以上50以下であり、
以下の引張り繰り返し試験を3回行い、当該引張り繰り返し試験の結果得られた破断回数の平均値が15回以上である、シリコーンゴム系硬化性組成物が提供される。
(引張り繰り返し試験)
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物からなるダンベル試験片を用い、前記ダンベル試験片を500%まで伸張する伸張操作を、前記ダンベル試験片が破断するまで繰り返したとき、前記伸張操作の繰り返し回数を前記破断回数とする。
また本発明によれば、上記シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を備える、成形体が提供される。
本発明によれば、繰り返しの使用による破断が低減され、繰り返しに優れたシリコーンゴムを実現できるシリコーンゴム系硬化性組成物およびそれを用いた成形体が提供される。
引張り繰り返し試験の方法を説明するための図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施形態において、「~」は、その両端の数値を含むことを意味する。
<シリコーンゴム系硬化性組成物>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物の概要について説明する。
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと、(B)無機充填材と、を含む。
さらに、当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物の引裂強度が20N/mm以上であり、当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物のデュロメータ硬さAが50以下であり、以下の引張り繰り返し試験を3回行い、当該引張り繰り返し試験の結果得られた破断回数の平均値が15回以上である。
(引張り繰り返し試験)
当該シリコーン系硬化組成物の硬化物からなるダンベル試験片を用い、前記ダンベル試験片を500%まで伸張する伸張操作を、前記ダンベル試験片が破断するまで繰り返したとき、前記伸張操作の繰り返し回数を前記破断回数とする。
本発明者は、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物であるシリコーンゴムが使用される場面において、シリコーンゴムが繰り返し引き伸ばされると亀裂が入ったり、これにより破断してしまうことに着目した。そして、鋭意検討の結果、(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと(B)無機充填材とを併用し、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物の引き裂き強度、デュロメータ硬さA、及び特定の条件の引っ張り繰り返し試験を行うことで得られた破断回数というパラメータを組みあわせることで、シリコーンゴムの繰り返し耐久性が高水準かつ安定的に得られることを見出し、本発明を完成した。
<<(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサン>>
成分(A)は、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物の主成分となる重合物である。
成分(A)は、(A1)直鎖構造を有するビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを含むことができる。
(A1)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンは、直鎖構造を有し、かつ、ビニル基を含有しており、かかるビニル基が硬化時の架橋点となる。
(A1)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンのビニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ15モル%以下であるのが好ましく、0.01~12モル%であるのがより好ましい。これにより、(A1)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン中におけるビニル基の量が最適化され、後述する各成分とのネットワークの形成を確実に行うことができる。
なお、本明細書中において、成分(A1)のビニル基含有量とは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを構成する全ユニットを100モル%としたときのビニル基含有シロキサンユニットのモル%である。ただし、ビニル基含有シロキサンユニット1つに対して、ビニル基1つであると考える。
また、(A1)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンの重合度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1000~10000程度、より好ましくは2000~5000程度の範囲内である。なお、重合度は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
さらに、(A1)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンの比重は、特に限定されないが、0.9~1.1程度の範囲であるのが好ましい。
(A1)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとして、上記のような範囲内の重合度および比重を有するものを用いることにより、得られるシリコーンゴムの耐熱性、難燃性、化学的安定性等の向上を図ることができる。
(A1)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとしては、特に、下記式(1)で表される構造を有するものであるが好ましい。
Figure 0007183535000002
式(1)中、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
また、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
さらに、式(1)中のRおよびRの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(1)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。さらに、R、およびRについても同様である。
さらに、m、nは、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは0~2000の整数、nは1000~10000の整数である。mは、好ましくは0~1000であり、nは、好ましくは2000~5000である。
また、式(1)で表される(A1)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンの具体的構造としては、例えば下記式(1-1)で表されるものが挙げられる。
Figure 0007183535000003
式(1-1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基またはビニル基であり、少なくとも一方がビニル基である。
さらに、(A1)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとしては、(A1-1)ビニル基含有量が分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ0.4モル%以下である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンと、(A1-2)ビニル基含有量が0.5~15モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとを含有するものであるのが好ましい。シリコーンゴムの原料である生ゴムとして、成分(A1-1)と、成分(A1-2)とを組み合わせることで、ビニル基を偏在化させることができ、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に、より効果的に架橋密度の疎密を形成することができる。その結果、より効果的にシリコーンゴムの引裂き強度を高めるとともに、繰り返し耐久性を良好にすることができる。
具体的には、(A1)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとして、例えば、上記式(1-1)において、Rがビニル基である単位および/またはRがビニル基である単位を、(A1-1)分子内に2個以上有し、かつ0.4モル%以下を含む第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンと、Rがビニル基である単位および/またはRがビニル基である単位を、(A1-2)0.5~12モル%含む第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとを用いるのが好ましい。
また、成分(A1-1)は、ビニル基含有量が0.01~0.2モル%であるのが好ましい。また、成分(A1-2)は、ビニル基含有量が、0.8~8.0モル%であるのが好ましい。
さらに、成分(A1-1)と成分(A1-2)とを組み合わせて配合する場合、(A1-1)と(A1-2)の比率は特に限定されないが、例えば、重量比で(A1-1):(A1-2)が50:50~95:5であるのが好ましく、80:20~90:10であるのがより好ましい。
なお、成分(A1-1)および成分(A1-2)は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンは、(A2)分岐構造を有するビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサンを含んでもよい。
<<(B)無機充填材>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、(B)無機充填材を含むものである。
(B)無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラスウール、マイカ等が用いられる。高い繰り返し耐久性を得る観点から、シリカ粒子であることが好ましい。
シリカ粒子としては、特に限定されないが、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ等が用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)無機充填材は、BET法による比表面積が50~400m/gであるのが好ましく、100~400m/gであるのがより好ましい。また、その平均一次粒径が1~100nmであるのが好ましく、5~20nmであるのがより好ましい。
(B)無機充填材として、かかる比表面積および平均粒径の範囲内であるものを用いることにより、形成されるシリコーンゴムの硬さや機械的強度の向上、特に繰り返し耐久性の向上をさせることができる。
<<(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むことができる。
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(C1)直鎖構造を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンと(C2)分岐構造を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンとに分類され、これらのうちのいずれか一方または双方を含むことができる。
(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖構造を有し、かつ、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンのビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分が有するビニル基とヒドロシリル化反応し、これらの成分を架橋する重合体である。
(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が20000以下であるのが好ましく、1000以上、10000以下であることがより好ましい。
なお、(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの重量平均分子量は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)におけるポリスチレン換算により測定することができる。
また、(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記式(2)で表される構造を有するものが好ましく用いられる。
Figure 0007183535000004
式(2)中、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
なお、式(2)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。Rについても同様である。ただし、複数のRおよびRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。
また、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
なお、式(2)中のR,R,Rの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、分子内の架橋反応を防止する観点から、メチル基が好ましい。
さらに、m、nは、式(2)で表される(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを構成する繰り返し単位の数であり、mは2~150の整数、nは2~150の整数である。好ましくは、mは2~100の整数、nは2~100の整数である。
(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(C2)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分岐構造を有するため、架橋密度が高い領域を形成し、シリコーンゴムの系中の架橋密度の疎密構造形成に大きく寄与する成分である。また、上記(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン同様、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分のビニル基とヒドロシリル化反応し、これら成分を架橋する重合体である。
また、(C2)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの比重は、0.9~0.95の範囲である。
さらに、(C2)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、(C2)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
また、(C2)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(c)で示されるものが好ましい。
平均組成式(c)
(H(R3-aSiO1/2(SiO4/2
(式(c)において、Rは一価の有機基、aは1~3の範囲の整数、mはH(R3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)
式(c)において、Rは一価の有機基であり、好ましくは、炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
式(c)において、aは、ヒドリド基(Siに直接結合する水素原子)の数であり、1~3の範囲の整数、好ましくは1である。
また、式(c)において、mはH(R3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。
(C2)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは分岐状構造を有する。(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンと(C2)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、その構造が直鎖状か分岐状かという点で異なり、Siの数を1とした時のSiに結合するアルキル基Rの数(R/Si)が、(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンでは1.8~2.1、(C2)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンでは0.8~1.7の範囲となる。
なお、(C2)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分岐構造を有しているため、例えば、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上となる。これに対して、(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状であるため、上記条件で加熱した後の残渣量はほぼゼロとなる。
また、(C2)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、下記式(3)で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 0007183535000005
式(3)中、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基、もしくは水素原子である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(3)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
また、式(3)中、「-O-Si≡」は、Siが三次元に広がる分岐構造を有することを表している。
なお、(C2)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンと(C2)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は、それぞれ、特に限定されない。ただし、シリコーンゴム系硬化性組成物において、(A1)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対し、(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンと(C2)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計のヒドリド基量が、0.5~5モルとなる量が好ましく、1~3.5モルとなる量がより好ましい。これにより、(C1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび(C2)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(A1)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとの間で、架橋ネットワークを確実に形成させることができる。
<<(D)白金または白金化合物>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、(D)白金または白金化合物を含むことができる。
(D)白金または白金化合物は、硬化の際の触媒として作用する触媒成分である。(D)白金または白金化合物の添加量は触媒量である。
(D)白金または白金化合物としては、公知のものを使用することができ、例えば、白金黒、白金をシリカやカーボンブラック等に担持させたもの、塩化白金酸または塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯塩等が挙げられる。
なお、(D)白金または白金化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<<(E)シランカップリング剤>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、(E)シランカップリング剤を含むことができる。
(E)シランカップリング剤は、加水分解性基を有することができる。加水分解基が水により加水分解されて水酸基になり、この水酸基が(B)無機充填材の表面の水酸基と脱水縮合反応することで、(B)無機充填材の表面改質を行うことができる。
また、この(E)シランカップリング剤は、疎水性基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、(B)無機充填材の表面にこの疎水性基が付与されるため、シリコーンゴム系硬化性組成物中ひいてはシリコーンゴム中において、(B)無機充填材の凝集力が低下(特に、シリカの場合は、シラノール基による水素結合による凝集が少なくなる)し、その結果、シリコーンゴム系硬化性組成物中の(B)無機充填材の分散性が向上すると推測される。これにより、(B)無機充填材とゴムマトリックスとの界面が増加し、(B)無機充填材の補強効果が増大する。さらに、ゴムのマトリックス変形の際、マトリックス内での(B)無機充填材の滑り性が向上すると推測される。そして、(B)無機充填材の分散性の向上及び滑り性の向上によって、(B)無機充填材によるシリコーンゴムの機械的強度(例えば、引張り強度や引裂き強度など)が向上し、良好な繰り返し耐久性が得られる。
さらに、(E)シランカップリング剤は、ビニル基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、(B)無機充填材の表面にビニル基が導入される。そのため、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化の際、すなわち、(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンが有するビニル基と、(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するヒドリド基とがヒドロシリル化反応して、これらによるネットワーク(架橋構造)が形成される際に、(B)無機充填材が有するビニル基も、(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するヒドリド基とのヒドロシリル化反応に関与するため、ネットワーク中に(B)無機充填材も取り込まれるようになる。これにより、形成されるシリコーンゴムの高硬度化および高モジュラス化を図ることができる。
(E)シランカップリング剤としては、疎水性基を有するシランカップリング剤およびビニル基を有するシランカップリング剤を併用することができる。
(E)シランカップリング剤としては、例えば、下記式(4)で表わされるものが挙げられる。
-Si-(X)4-n・・・(4)
上記式(4)中、nは1~3の整数を表わす。Yは、疎水性基、親水性基またはビニル基を有するもののうちのいずれかの官能基を表わし、nが1の時は疎水性基であり、nが2または3の時はその少なくとも1つが疎水性基である。Xは、加水分解性基を表わす。
疎水性基は、炭素数1~6のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられ、中でも、特に、メチル基が好ましい。
また、親水性基は、例えば、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基またはカルボニル基等が挙げられ、中でも、特に、水酸基が好ましい。なお、親水性基は、官能基として含まれていてもよいが、(E)シランカップリング剤に疎水性を付与するという観点からは含まれていないのが好ましい。
さらに、加水分解性基は、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、クロロ基またはシラザン基等が挙げられ、中でも、(B)無機充填材のうちシリカ粒子との反応性が高いことから、シラザン基が好ましい。なお、加水分解性基としてシラザン基を有するものは、その構造上の特性から、上記式(4)中の(Y-Si-)の構造を2つ有するものとなる。
上記式(4)で表される(E)シランカップリング剤の具体例は、例えば、官能基として疎水性基を有するものとして、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランのようなアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシランのようなクロロシラン;ヘキサメチルジシラザンが挙げられ、官能基としてビニル基を有するものとして、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランのようなアルコキシシラン;ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシランのようなクロロシラン;ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられるが、中でも、上記記載を考慮すると、特に、疎水性基を有するものとしてはヘキサメチルジシラザン、ビニル基を有するものとしてはジビニルテトラメチルジシラザンであるのが好ましい。
<<(F)水>>
また、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物には、上記成分(A)~(E)以外に、(F)水が含まれていてもよい。
(F)水は、シリコーンゴム系硬化性組成物に含まれる各成分を分散させる分散媒として機能するとともに、(B)無機充填材と(E)シランカップリング剤との反応に寄与する成分である。そのため、シリコーンゴム中において、(B)無機充填材と(E)シランカップリング剤とを、より確実に互いに連結したものとすることができ、全体として均一な特性を発揮することができる。
さらに、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)~(F)成分の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される公知の添加成分を含有していてもよい。例えば、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等を適宜配合することができる。
なお、シリコーンゴム系硬化性組成物において、各成分の含有割合は、例えば、以下のように設定されることが好ましい。
本実施形態において、(B)無機充填材の含有量は、(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンの合計量100重量部に対し、例えば、20~60重量部であり、好ましくは20~45重量部であり、より好ましくは25~35重量部である。これにより、耐久性を良好にできる。また、下限値以上とすることにより、良好な機械的強度、硬度が得られ、上限値以下とすることで繰り返し耐久性が向上する。
また(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、具体的に(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサン及び(B)無機充填材及び(E)シランカップリング剤の合計量100重量部に対して、0.5重量部以上20重量部以下の割合で含有することが好ましく、0.8重量部以上15重量部以下の割合で含有するのがより好ましい。成分(C)の含有量が前記範囲内であることで、より効果的な硬化反応ができる可能性がある。
(E)シランカップリング剤の含有量は、(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサン100重量部に対し、(E)シランカップリング剤が5重量部以上100重量部以下の割合で含有するのが好ましく、5重量部以上40重量部以下の割合で含有するのがより好ましい。これにより、(B)無機充填材のシリコーンゴム系硬化性組成物中における分散性を確実に向上させることができる。
(D)白金または白金化合物の含有量は、触媒量を意味し、適宜設定することができるが、具体的には、(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサン、(B)無機充填材、(E)シランカップリング剤の合計量に対して、本成分中の白金族金属が重量単位で0.01~1000ppmとなる量であり、好ましくは、0.1~500ppmとなる量である。これは、本成分の含有量が上記範囲の下限以上とすることにより、得られるシリコーンゴム組成物を十分に硬化しやすくなり、一方、上記範囲の上限以下とすることにより、触媒としての機能を充分発揮させることができる。
さらに、(F)水を含有する場合、その含有量は、適宜設定することができるが、具体的には、(E)シランカップリング剤100重量部に対して、10~100重量部の範囲であることが好ましく、30~70重量部の範囲であることがより好ましい。これにより、(E)シランカップリング剤と(B)無機充填材との反応をより確実に進行させることができる。
また、シリコーンゴム系硬化性組成物中における樹脂含有量は、50~85質量%であることが好ましく、60~75質量%であることがより好ましい。これにより繰り返し耐久性を安定的に得られるようになる。
次に、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物の特性について説明する。
本実施形態のシリコーン系硬化組成物の硬化物のデュロメータ硬さAの上限値としては、50以下であり、好ましくは45以下であり、さらに好ましくは40以下であり、より好ましくは35以下である。これにより、シリコーンゴムの柔軟性を向上させることができ、操作性を良好なものとすることができる。シリコーン系硬化組成物の硬化物のデュロメータ硬さAの下限値としては、特に限定されないが、例えば、1以上でもよく、5以上でもよく、10以上でもよい。これにより、シリコーンゴムの機械的強度を高めることができる。また、外力からの変形を抑制し、所定の形状を維持することもできる。
本実施形態のシリコーン系硬化組成物の硬化物の引裂き強度の下限値としては、20N/mm以上であり、好ましくは30N/mm以上であり、より好ましくは33N/mm以上であり、さらに好ましくは35N/mm以上であり、ことさら好ましくは40N/mm以上である。これにより、シリコーンゴムの耐傷付き性や機械的強度を向上させることができる。一方で、シリコーン系硬化組成物の硬化物の引裂き強度の上限値としては、特に限定されないが、例えば、70N/mm以下としてもよく、60N/mm以下としてもよい。
さらに、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物からなるダンベル試験片を用い、以下の引張り繰り返し試験を3回行い、当該引張り繰り返し試験の結果得られた破断回数の平均値が15回以上である。シリコーンゴムの引っ張り強度を良好にし、繰り返し耐久性を高める観点から、破断回数の平均値は15回以上が好ましく、20回以上であることがより好ましく、30回以上がさらに好ましい。
(引張り繰り返し試験)
当該シリコーン系硬化組成物の硬化物からなるダンベル試験片を用い、前記ダンベル試験片を500%まで伸張する伸張操作を、前記ダンベル試験片が破断するまで繰り返したとき、前記伸張操作の繰り返し回数を前記破断回数とする。
破断回数の平均値を15回以上とすることにより、シリコーンゴムの繰り返し耐久性がより安定的に得られるようになる。
本実施形態では、たとえばシリコーンゴム系硬化性組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、シリコーンゴム系硬化性組成物の調製方法やシリコーンゴムの製造方法等を適切に選択することにより、上記破断回数、硬度および引裂き強度を制御することが可能である。例えば、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化時間、硬化速度等といった硬化条件を調整したり、後述するように各成分の混練条件を調整することが挙げられる。また、シリコーンゴム系硬化性組成物中に含まれる各成分として、例えば、(A1-1)低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンと(A1-2)高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとを併用すること、側鎖および/または末端にビニル基を有する(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンを使用すること、(B)無機充填材の配合比率等を調整することにより、上記破断回数、硬度および引裂き強度を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
より詳細には、上記引張り繰り返し試験は、以下のようにして行われる。図1は、引張り繰り返し試験の方法を説明するための図である。図1(a)に示すように、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片10を作製する。次に、図1(b)に示すように試験片10の長手方向に荷重を加えて試験片10を500%まで伸長させたのち、当該荷重をなくしダンベル試験片10の状態を自然に戻す、操作を試験片10が破断するまで繰り返す。
<シリコーンゴムの製造方法>
次に、本実施形態のシリコーンゴムの製造方法について説明する。
本実施形態のシリコーンゴムの製造方法としては、シリコーンゴム系硬化性組成物を調製し、このシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによりシリコーンゴムを得ることができる。
以下、詳述する。
まず、シリコーンゴム系硬化性組成物の各成分を、任意の混練装置により、均一に混合してシリコーンゴム系硬化性組成物を調製する。
[1]たとえば、(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと、(B)無機充填材と、(E)シランカップリング剤とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置により、混練することで、これら各成分(A)、(B)、(E)を含有する混練物を得る。
なお、この混練物は、予め(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと(E)シランカップリング剤とを混練し、その後、(B)無機充填材を混練(混合)して得るのが好ましい。これにより、(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサン中における(B)無機充填材の分散性がより向上する。
また、この混練物を得る際には、(F)水を必要に応じて、各成分(A)、(B)、(E)に添加するようにしてもよい。
さらに、各成分(A)、(B)、(E)の混練は、第1温度で加熱する第1ステップと、第2温度で加熱する第2ステップとを経るようにするのが好ましい。これにより、第1ステップにおいて、(B)無機充填材の表面を(E)シランカップリング剤で表面処理することができるとともに、第2ステップにおいて、(B)無機充填材と(E)シランカップリング剤との反応で生成した副生成物を混練物中から確実に除去することができる。
第1温度は、例えば、40~120℃程度であるのが好ましく、例えば、60~90℃程度であるのがより好ましい。第2温度は、例えば、130~210℃程度であるのが好ましく、例えば、160~180℃程度であるのがより好ましい。
また、第1ステップにおける雰囲気は、窒素雰囲気下のような不活性雰囲気下であるのが好ましく、第2ステップにおける雰囲気は、減圧雰囲気下であるのが好ましい。
さらに、第1ステップの時間は、例えば、0.3~1.5時間程度であるのが好ましく、0.5~1.2時間程度であるのがより好ましい。第2ステップの時間は、例えば、0.7~3.0時間程度であるのが好ましく、1.0~2.0時間程度であるのがより好ましい。
第1ステップおよび第2ステップを、上記のような条件とすることで、前記効果をより顕著に得ることができる。
[2]次に、(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(D)白金または白金化合物とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置を用いて、上記工程[1]で調製した混練物に、各成分(C)、(D)を混練することで、シリコーンゴム系硬化性組成物を得る。
なお、この各成分(C)、(D)の混練の際には、予め上記工程[1]で調製した混練物と(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを、上記工程[1]で調製した混練物と(D)白金または白金化合物とを混練し、その後、それぞれの混練物を混練するのが好ましい。これにより、(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとの反応を進行させることなく、各成分(A)~(E)をシリコーンゴム系硬化性組成物中に確実に分散させることができる。
各成分(C)、(D)を混練する際の温度は、ロール設定温度として、例えば、10~70℃程度であるのが好ましく、25~30℃程度であるのがより好ましい。
さらに、混練する時間は、例えば、5分~1時間程度であるのが好ましく、10~40分程度であるのがより好ましい。
上記工程[1]および上記工程[2]において、温度を上記範囲内とすることにより、(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとの反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。また、上記工程[1]および上記工程[2]において、混練時間を上記範囲内とすることにより、各成分(A)~(E)をシリコーンゴム系硬化性組成物中により確実に分散させることができる。
なお、各工程[1]、[2]において使用される混練装置としては、特に限定されないが、例えば、ニーダー、2本ロール、バンバリーミキサー(連続ニーダー)、加圧ニーダー等を用いることができる。
また、本工程[2]において、混練物中に1-エチニルシクロヘキサノールのような反応抑制剤を添加するようにしてもよい。これにより、混練物の温度が比較的高い温度に設定されたとしても、(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとの反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。
[3]次に、シリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによりシリコーンゴムを形成する。
本実施形態において、シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の硬化工程は、例えば、100~250℃で1~30分間加熱(1次硬化)した後、200℃で1~4時間ポストベーク(2次硬化)することによって行われる。
以上のような工程を経ることで、本実施形態のシリコーンゴムが得られる。
さらに、上記のようなシリコーンゴムを用いることで、機械的強度に優れた成形体を得ることができる。
本実施形態の成形体は、上記シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を備えるものである。本実施形態の成形体は、例えば、医療用とすることができる。このような成形体を用いることで、シリコーンゴム製の医療用チューブ、医療用シーリング材、パッキン材およびキーパッドが得られる。特に、医療用チューブに適用することで、この医療用チューブは、耐キンク性、耐傷付き性、挿入性及び透明性に優れ、さらに繰り返し耐久性に優れたものとなる。
以上、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物、成形体について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物、成形体には、同様の機能を発揮し得る、任意の成分が添加されていてもよい。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと、
(B)無機充填材と、を含む、シリコーンゴム系硬化性組成物であって、
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物の引裂強度が20N/mm以上であり、
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物のデュロメータ硬さAが50以下であり、
以下の引張り繰り返し試験を3回行い、当該引張り繰り返し試験の結果得られた破断回数の平均値が15回以上である、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(引張り繰り返し試験)
当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物からなるダンベル試験片を用い、前記ダンベル試験片を500%まで伸張する伸張操作を、前記ダンベル試験片が破断するまで繰り返したとき、前記伸張操作の繰り返し回数を前記破断回数とする。
<2>
成分(A)の合計量100重量部に対して、成分(B)の含有量は20~60重量部である、<1>に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
<3>
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンをさらに含む、<1>または<2>に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
<4>
成分(B)がシリカ粒子である、<1>乃至<3>いずれか一つに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
<5>
(D)白金又は白金化合物である触媒をさらに含む、<1>乃至<4>いずれか一つに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
<6>
<1>乃至<5>いずれか一つに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を備える、成形体。
<7>
<6>に記載の成形体であって、医療の用途に供する、成形体。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
表1に示す実施例および比較例で用いた原料成分を以下に示す。
(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサン
低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1a):合成スキーム1により合成した鎖内ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1-1)で表わされる構造でR(鎖内)のみがビニル基である構造)
低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1b):合成スキーム2により合成した末端ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1-1)で表わされる構造でR(末端)のみがビニル基である構造)
高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2a):合成スキーム3により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1-1)で表わされる構造でRおよびRがビニル基である構造)
(B)無機充填材
シリカ粒子(B):シリカ微粒子(粒径7nm、比表面積300m/g)、日本アエロジル社製、「AEROSIL300」
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C):モメンティブ社製、「TC-25D」
(D)白金または白金化合物
白金または白金化合物(D):白金化合物、モメンティブ社製、「TC-25A」
(E)シランカップリング剤
シランカップリング剤(E-1):ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、Gelst社製、「HEXAMETHYLDISILAZANE(SIH6110.1)」
シランカップリング剤(E-2):ジビニルテトラメチルジシラザン、Gelst社製、「1,3-DIVINYLTETRAMETHYLDISILAZANE(SID4612.0)」
過酸化物架橋剤
有機過酸化物・加硫剤、モメンティブ社製、「TC-8」
((A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンの合成)
[合成スキーム1:低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1a)の合成]
下記式(6)にしたがって、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1a)を合成した。
すなわち、Arガス置換した、冷却管および攪拌翼を有する300mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)、2,4,6,8-テトラメチル2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.086g(0.25mmol)およびカリウムシリコネート0.1gを入れ、昇温し、120℃で30分間攪拌した。なお、この際、粘度の上昇が確認できた。
その後、155℃まで昇温し、3時間攪拌を続けた。そして、3時間後、ヘキサメチルジシロキサン0.1g(0.6mmol)を添加し、さらに、155℃で4時間攪拌した。
さらに、4時間後、トルエン250mLで希釈した後、水で3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール1.5Lで数回洗浄することで、再沈精製し、オリゴマーとポリマーを分離した。得られたポリマーを60℃で一晩減圧乾燥し、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1a)を得た(Mn=2.5×10、Mw=5.0×10)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.18モル%であった。
Figure 0007183535000006
[合成スキーム2:低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1b)の合成]
上記(A1-1a)の合成工程において、2,4,6,8-テトラメチル2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサンを用いず、ヘキサメチルジシロキサンの代わりに1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン0.1g(0.6mmol)用いたこと以外は、(A1-1a)の合成工程と同様にして、下記式(7)にしたがって、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1b)を得た。(Mn=2.2×10、Mw=4.8×10)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.04モル%であった。
Figure 0007183535000007
[合成スキーム3:高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2a)の合成]
上記(A1-1a)の合成工程において、2,4,6,8-テトラメチル2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサンを、0.86g(2.5mmol)用い、ヘキサメチルジシロキサンの代わりに1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン0.1g(0.6mmol)用いたこと以外は、前記と同様にすることで、下記式にしたがって、高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2a)を合成した(Mn=2.3×10、Mw=5.0×10)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.93モル%であった。
Figure 0007183535000008
(シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
実施例および比較例において、次のようにしてシリコーンゴム系硬化性組成物を調整した。まず、表1に示す割合で、(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサン、(E)シランカップリング剤および(F)水の混合物を予め混練し、その後、混合物に(B)無機充填材を加えてさらに混練し、混練物(シリコーンゴムコンパウンド)を得た。
ここで、(B)無機充填材添加後の混練は、カップリング反応のために窒素雰囲気下、60~90℃の条件下で1時間混練する第1ステップと、副生成物(アンモニア)の除去のために減圧雰囲気下、160~180℃の条件下で2時間混練する第2ステップとを経ることで行った。
続いて、得られた混練物(シリコーンゴムコンパウンド)に、(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび(D)白金または白金化合物、あるいは過酸化物架橋剤を加えて、ロールで混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物を得た。
以下、得られた各実施例および各比較例のシリコーンゴム系硬化性組成物について、次のような評価を行った。評価結果を表1に示す。
(シリコーンゴムの作製)
得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を、150℃、10MPaで20分間プレスし、1mmのシート状に成形すると共に、1次硬化した。続いて、200℃で4時間加熱し、2次硬化した。以上により、シート状シリコーンゴム(シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物)を得た。
以下、得られた各実施例および各比較例のシリコーンゴム系硬化性組成物を用いたシリコーンゴムについて、次のような評価を行った。評価結果を表1に示す。
・デュロメータ硬さA
得られた厚さ1mmのシート状シリコーンゴムを積層し、6mmの試験片を作製した。得られた試験片に対して、JIS K6253(1997)に準拠してタイプAデュロメータ硬さ(-)を測定した。
・引裂き強度
得られた厚さ1mmのシート状シリコーンゴムを用いて、JIS K6252(2001)に準拠して、クレセント形試験片を作製し、得られたクレセント形試験片の引裂き強度を測定した。
・引張強度
得られた厚さ1mmのシート状シリコーンゴムを用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、得られた試験片の引張強度を測定した。
・引張り繰り返し試験
図1(a)に示すように、得られた1mmのシート状シリコーンゴムを用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片10を作製した。
次に、図1(a)、(b)に示すように、以下の引張り繰り返し試験をN回(N=3)行い、当該引張り繰り返し試験の結果得られた破断回数の平均値を測定した。結果を、表1に示す。
(引張り繰り返し試験)
当該シリコーン系硬化組成物の硬化物からなる試験片10を用い、試験片10を500%まで伸張する伸張操作を、試験片10が破断するまで繰り返したとき、前記伸張操作の繰り返し回数を前記破断回数とした。
試験機:オートグラフAG5kNX(株式会社島津製作所製、「型番AG-5kNX」)
・初期値:60mm(チャック間距離)、0%伸長率
伸長時:360mm(チャック間距離)、500%伸長率
伸張速度:最大速度1,000mm/min
伸張時間:36秒/1サイクル(1サイクルは、初期値→伸長時→初期値)
・繰り返し耐久性の評価
得られた上記シリコーンゴム系硬化性組成物を、圧縮成形機を用いて、10MPaの圧力下で170℃×5分で処理し内径6.0mm×厚み約0.6mm×長さ30mmの1次硬化物を作製した。次に、得られた1次硬化物を成形型に入れて200℃で4時間処理することによってバルーンを得た(外径7.2mm、長さ30mm)。
別途、シリコーンゴム(品名:KE-571-U、信越化学工業株式会社製)を用いて、押出成形機にてメインルーメンおよびバルーン膨張用ルーメンを有する外径が6mmのカテーテル本体を成形し、240℃で一次加硫後にライン速度は3.5m/minで処理し、次に2次加硫として200℃のオーブンで4時間処理し、カテーテル本体を得た。
得られたカテーテル本体と、上記で得られたバルーンとを組み立て、シリコーン系接着剤を用いて接合し、1昼夜養生し、バルーンカテーテルを作成した。
当該バルーンカテーテルにエアーを注入し、最大外径30mmまで膨張させた。その後エアーを抜き取り収縮させた。かかる膨張、収縮を20回繰返しバルーン部分のたるみを確認し、以下の基準で評価した。
◎:テスト後、バルーンに亀裂は生じなかった。
○:テスト後、バルーンに1~5個の亀裂が生じたが破裂はしなかった。
△:テスト後、バルーンに5~10個の亀裂が生じたが破裂はしなかった。
×:膨張、収縮の繰返しテスト中、10~20回以内のうちにバルーンが破裂した。
実施例3,6ではバルーンの亀裂がみられなかったため、繰り返し耐久性に優れたシリコーンゴムが得られたことが確認された。また、実施例1,4,5,8ではバルーンに1~5個の亀裂がみられたものの、繰り返し耐久性が良好なシリコーンゴムであることが確認された。実施例2,7ではバルーンに5~10個の亀裂がみられたものの、実用上十分な繰り返し耐久性を有するシリコーンゴムが得られた。これに対し、比較例1,2は、引張繰り返し試験における破断回数の平均値が15回よりも小さいため、繰り返し耐久性が劣るものであったことが確認された。
Figure 0007183535000009
以上、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
10 試験片

Claims (6)

  1. (A)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと、
    (B)無機充填材と、を含む、シリコーンゴム系硬化性組成物であって、
    成分(A)の合計量100重量部に対する成分(B)の含有量が20~35重量部であり、
    成分(A)は、(A1)直鎖構造を有するビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを含み、
    前記(A1)は、式(1-1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを含み、
    Figure 0007183535000010
    (式(1-1)中、RおよびRは、ビニル基である。mは0~2000の整数、nは1000~10000の整数である。
    当該ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンは、(A1-1)ビニル基含有量が分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ0.4モル%以下である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンと、(A1-2)ビニル基含有量が0.5~15モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとを含有し、成分(A1-1)と成分(A1-2)の重量比(A1-1):(A1-2)が50:50~95:5であり
    当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物の引裂強度が30N/mm以上であり、
    当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物のデュロメータ硬さAが31.5以上50以下であり、
    以下の引張り繰り返し試験を3回行い、当該引張り繰り返し試験の結果得られた破断回数の平均値が15回以上である、シリコーンゴム系硬化性組成物。
    (引張り繰り返し試験)
    当該シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物からなるダンベル試験片を用い、前記ダンベル試験片を500%まで伸張する伸張操作を、前記ダンベル試験片が破断するまで繰り返したとき、前記伸張操作の繰り返し回数を前記破断回数とする。
  2. (C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンをさらに含む、請求項1に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  3. 成分(B)がシリカ粒子である、請求項1または2に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  4. (D)白金又は白金化合物である触媒をさらに含む、請求項1乃至いずれか一項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  5. 請求項1乃至いずれか一項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を備える、成形体。
  6. 請求項に記載の成形体であって、医療の用途に供する、成形体。
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