只、1本のホースで広範囲に亘る打設領域にコンクリートを打設する必要がある場合、ホースは充填地点毎に移動させられることになるが、ポンプ車7が移動することはなく、図9に示すようにポンプ車7に搭載されたブームが一定位置で回転するだけであるため、ホースが供給管8に対して捩れることがある。ブームの回転に追従してポンプ車7の供給管8が回転しても、ホースが供給管8に固定状態で接続されている限り、図9に示すようにホースの幅方向は供給管8の軸方向に直交する方向を向くため、供給管8の回転に伴い、ホースの幅方向が変化することになる。
ホースの幅方向の変化はホース先端の吐出口の幅方向が変化することであるから、吐出口の幅方向を常にコンクリートの打設領域の連続方向に向けようとすれば、相対的に捩り剛性の小さいホースの、供給管8との接続部分を強制的に捩ることになる。ホースが捩れれば、捩れた部分にコンクリートが詰まり易くなるため、コンクリートの充填作業に支障が生ずる。
また、ホースに捩りを生じさせないようにするには、吐出口の幅方向を常に供給管8の軸方向に直交する方向に向ける必要があるため、鉄筋間の間隔の大きさによっては吐出口を鉄筋間に挿入することができなくなり、コンクリートの充填作業が阻害されることにもなる。
本発明は上記背景より、鉄筋間の間隔の大きさに拘わらず、吐出口を有する先端部を鉄筋間に挿入可能で、ホース(充填管)を打設領域に沿って効率的に移動させる作業時のホースの捩れを回避できる構造のコンクリート打設管を提案するものである。
請求項1に記載のコンクリート打設管は、コンクリートを供給するポンプ車の供給管に接続される接続管と、この接続管に接続され、前記コンクリートを決められたコンクリート打設領域に充填する充填管とを備え、
少なくとも前記充填管の軸方向先端側の前記コンクリートの吐出口寄りの区間は偏平な形状に形成され、前記充填管の前記接続管側の端部は前記接続管に前記充填管の軸回りに回転自在に接続されていることを構成要件とする。
接続管はポンプ車7に付属した供給管(圧送管)8に接続(連結)される管(パイプ)であり、充填管3は接続管2に直接、もしくは間接的に接続(連結)され、吐出口3aを有する末端のホース(後述の先端部3C)を含む。供給管8はポンプ車7のブームに支持される。充填管3の断面形状は主に円形であるが、必ずしも円形状には限られず、楕円形状、または多角形状等もある。充填管3の吐出口3aからのコンクリートの充填(打設)時には図8に示すように充填管3と接続管2は基本的に軸方向を鉛直方向に向けた状態で使用されることから、「接続(連結)」とは、軸回りの相対的な回転を許容しながら、主に接続管2と充填管3が軸方向の引張力を伝達可能に連係(係合)することを言い、軸回りの相対的な回転を許容しない接合(固定)を含まない。接続管2が供給管8に固定状態で接続されるか、相対的な回転を許容する状態に接続されるかは問われない。
「充填管3が接続管2に直接、接続され」とは、図5に示すように充填管3が接続管2に直接、係合し、接触した状態で連係(接続)するようなことを言い、「充填管3が接続管2に間接的に接続され」とは、図4に示すように例えば充填管3が接続管2に接触し得る状態で、接続管2と対になる保持材4と接続管2とに挟まれた状態で両者に保持されるようなことを言う。
請求項1における「少なくとも充填管の軸方向先端側のコンクリートの吐出口寄りの区間」とは、充填管3の全長の内、少なくとも軸方向先端(吐出口)寄りの一部の区間を含む区間であり、充填管3の全長を含む。「偏平な」とは、幅に対する高さの小さい形状と、高さに対する幅の小さい形状を含む。ここで言う「幅」は例えば図6、図7に示すようにコンクリートの打設領域が一方向に連続する場合の連続する方向を指し、「高さ」は「幅」に直交する方向を指すが、厳密な意味を持たない。この幅と高さは充填管3の外径、または全幅、もしくは全高に揃えられている必要はなく、充填管3の外径等より小さいこともある。
少なくとも充填管3の吐出口3a寄りの区間が偏平な形状をすることで、充填管3の吐出口3aを含む先端部は、鉄筋が密に配筋された場合にも隣接する鉄筋間の空間に入り込める使用上の自由度を有する。また図6、図7に示すようにコンクリートの打設領域の外周部分に配筋された鉄筋9とせき板10との間にセパレータが配置(架設)されないような場合には、充填管3の先端部の高さ(厚さ)が鉄筋9とせき板10との間の距離(コンクリートの被り)以内の大きさであれば、鉄筋9とせき板10との間に充填管3の先端部を挿入することが可能である。図6、図7の場合、後述のように充填管3をせき板10に沿って平行移動させながら、コンクリートを充填する作業方法を採用することが可能になる。セパレータが配置された場合でも、充填管3の先端部を上方へ引き上げる作業と水平移動後に落とし込む作業を繰り返すことで、セパレータをかわし(除け)ながら、コンクリートを充填する作業を続けることが可能である。
請求項1における「充填管の接続管側の端部が接続管に充填管の軸回りに回転自在に接続」とは、充填管3が中心軸の回りに接続管2に対して自由に回転可能な状態に接続管2に接続されることであり、充填管3が接続管2から離脱しない(抜け出さない)限り、接続の方法(構造)を問わない趣旨である。機構的には例えば図5に示すように充填管3の接続管2側のフランジ32等の端部が、接続管2の充填管3側のフランジ22等の端部に吐出口3a側へ充填管3の軸方向に係合した状態になれば、「接続管に充填管の軸回りに回転自在に接続」した状態になる。
充填管3が接続管2に充填管3の軸回りに回転自在に接続されることで、充填管3がコンクリートの充填地点毎に移動させられるときに、充填管3の移動方向に充填管3を連続的に移動させながらも、充填管3は接続管2に対して軸回りに自由に回転することができる。ポンプ車7の供給管8に固定状態で接続された接続管2は図9に示すように供給管8を支持したブームの回転に追従してブームの支持軸の回りに供給管8と共に回転しようとする。
但し、充填管3が接続管2に対して軸回りに回転できることで、接続管2が供給管8に追従しても充填管3と接続管2が互いに捩れることが回避され、充填管3内でのコンクリートの詰まりも回避される。結果として例えば上記した鉄筋9とせき板10との間にセパレータが配置されない部位のように打設領域が一方向に連続する場合には、充填管3の幅方向の向きを変えることなく、充填管3を打設領域が連続する方向に、せき板10に沿って充填管3を平行移動させればよくなるため、コンクリートの充填作業を円滑に、効率的に遂行することが可能になる。
従来のように充填管(ホース)が接続管に固定状態で接合されている場合には図9に示すように充填管の捩れを防止するために、充填管に捩れが生じようとする度に、充填管を上方に引き上げて充填管を軸回りに回転させる作業が必要である。これに対し、本発明では充填管3と接続管2との接続部分において充填管3が接続管2に対して自由に回転することで、作業者は充填管3を保持したまま、引き上げることなく直線移動させるだけでよいため、作業効率が大幅に向上し、工期の短縮化が図られる。
只、充填管3を接続管2に充填管3の軸回りに回転自在に接続する上で、回転自在であることが許容されているだけであれば、充填管3と接続管2の相対的な回転時に双方の接触による摩擦力等に起因して充填管3が接続管2に対して円滑に軸回りに回転できなくなることが想定される。
そこで、充填管3の接続管2側の端部を接続管2に対し、充填管3の軸方向と、軸方向に交差する方向の少なくともいずれか一方に相対移動自在にし(請求項2)、軸方向と径方向(放射方向)の少なくともいずれか一方に遊びを形成することにより充填管3が接続管2に対して軸回りに円滑に回転できる状態を得ることが可能になる。同様の効果は、充填管3の接続管2側の端部を接続管2に対し、充填管3の軸方向に交差する方向の軸回りに相対的に回転自在にし(請求項3)、充填管3が接続管2に対して軸方向以外の方向に回転できる遊びを形成することによっても得られる。「充填管3が軸方向以外の方向に接続管2に対して回転できる」とは、充填管3が接続管2に対して任意の方向に屈曲し得る状態にあることを言う。
なお、遊びの有無と程度に拘わらず、摩擦力等による充填管3の回転のしにくさは接続管2との間に潤滑剤を介在させることで、ある程度、緩和させることは可能である。
前記のように充填管3の吐出口3aからのコンクリートの充填時には充填管3と接続管2の軸方向は基本的に鉛直方向に向けられることを踏まえれば、充填管3の端部と接続管2の端部との間に遊びを確保しながら、充填管3と接続管2を接続(連結)するには、前記のように充填管3の端部が接続管2の端部に吐出口3a側へ係合した状態で接続管2に接続されればよいことになる。このことから、例えば充填管3を接続管2の供給管8側の端部から接続管2内に挿入できる場合は、充填管3の接続管2内への挿入のみによって軸回りの相対的な回転を許容しながら、双方のフランジ22、32を係合(連係)させた、図5に示す状態にすることができる。
これに対し、充填管3と接続管2を双方の対向する端部位置で分離自在に接続するには、接続管2の充填管3側の端部の外周と、充填管3の接続管2側の端部の外周のそれぞれにフランジ21、31を形成した上で、図3、図4に示すように充填管3と接続管2の内、いずれか一方(の管3(2))の外周に、この一方(の管3(2))のフランジ31(21)を他方のフランジ21(31)と共に充填管3の軸方向に保持する保持材4を配置することになる(請求項4)。保持材4は他方のフランジ21(31)と共に一方のフランジ31(21)を充填管3の軸方向に挟むような形になる。
この場合、保持材4は充填管3と接続管2のいずれか一方の軸回りに相対的に回転可能に配置された状態で、他方のフランジ21(31)に対向して接合される。この保持材4と他方のフランジ21(31)との接合状態で、保持材4は充填管3を接続管2の軸回りに回転可能に保持する(請求項4)。
保持材4が図4−(a)、(b)に示すように他方のフランジである接続管2のフランジ21に対向し、接合される場合、保持材4は接続管2と共に一方の管である充填管3を回転可能に保持する。保持材4が図4−(c)、(d)に示すように一方の管である充填管3のフランジ31に対向し、接合される場合には、保持材4は充填管3と共に充填管3自身を接続管2の軸回りに回転可能に保持する。(c)、(d)の場合、充填管3は保持材4と共に接続管2に対して軸回りに回転可能な状態になる結果、充填管3自身を接続管2の軸回りに回転可能に保持する。
「保持材4が充填管3を接続管2の軸回りに回転可能に保持すること」は、具体的には保持材4と他方のフランジ21(31)との接合状態で、保持材4の内周寄り部分と一方のフランジ31(21)の軸方向に対向する面との間、及び他方のフランジ21(31)の内周寄り部分と一方のフランジ31(21)の軸方向に対向する面との間に空隙を確保することにより可能になる(請求項5)。軸方向の空隙は充填管3が軸回りに回転可能な大きさを持ち、充填管3は軸回りに回転可能に、保持材4と接続管2に、または保持材4と充填管3に保持される。ここで言う「空隙」は前記した「遊び」より確実に充填管3の接続管2に対する相対移動を可能にする大きさの空間であることを意味する。
図4−(a)、(b)に示すように保持材4が接続管2のフランジ21に接合される場合、空隙は充填管3のフランジ31の両面と保持材4との間、及びフランジ21との間に軸方向に確保される。この場合、保持材4は充填管3のフランジ31より吐出口3a側に配置される。空隙を確保するには保持材4とフランジ21の接合状態で保持材4と接続管2のフランジ21との間に、充填管3のフランジ31の厚さより大きい空隙を形成すればよい。例えば図4−(a)に示すように保持材4の外周寄り部分(外周部4a)の肉厚と、接続管2のフランジ21の外周寄り部分(外周部21a)の肉厚をそれぞれの内周寄り部分(内周部4b、21b)の肉厚より大きくし、双方の外周寄り部分の肉厚を増した面を対向させて接合することにより可能になる。保持材4とフランジ21の外周寄り部分が対向して接合されることで、保持材4の内周寄り部分とフランジ21の内周寄り部分の対向する面間距離が充填管3のフランジ31の厚さより大きく確保されることに因る。
この他、図4−(b)に示すように充填管3のフランジ31の外周に、フランジ31の厚さより大きい厚さの、充填管3から分離した間隔調整材5を配置することによっても可能になる。間隔調整材5は保持材4と接続管2のフランジ21に厚さ方向に挟まれ、保持材4のフランジ21への接合により双方に接合される。間隔調整材5は充填管3のフランジ31の外周に配置されるため、環状に形成される。
図4−(c)、(d)に示すように保持材4が充填管3のフランジ31に接合される場合、空隙は接続管2のフランジ21の両面と保持材4との間、及びフランジ31との間に軸方向に確保される。この場合、保持材4は充填管3のフランジ31より接続管2側に配置される。空隙を確保するには保持材4とフランジ31の接合状態で保持材4と充填管3のフランジ31との間に、充填管3のフランジ31の厚さより大きい空隙を形成すればよい。具体的には図4−(a)と同様に(c)に示すように保持材4の外周部4aの肉厚と、フランジ31の外周部31aの肉厚をそれぞれの内周部4b、31bの肉厚より大きくし、双方の外周寄り部分の肉厚を増した面を対向させて接合することにより可能になる。
また図4−(d)に示すように接続管2のフランジ21の外周に、フランジ21の厚さより大きい厚さの、接続管2から分離した環状の間隔調整材5を配置することによっても可能になる。間隔調整材5は保持材4と充填管3のフランジ31に厚さ方向に挟まれ、保持材4のフランジ31への接合により双方に接合される。
図4−(a)〜(d)のいずれの例の場合にも、保持材4の外周部4aとフランジ21、31の外周部21a、31aとがボルト6等により着脱自在に接合される。(a)、(b)の場合、保持材4とフランジ21が互いに密着した接合状態では保持材4の内周部4bと充填管3のフランジ31の対向する面との間、及びフランジ21の内周部21bとフランジ31の対向する面との間に、充填管3が軸回りに回転可能な程度の空隙が確保される。(c)、(d)の場合、保持材4とフランジ31が互いに密着した接合状態では保持材4の内周部4bと接続管2のフランジ21の対向する面との間、及びフランジ31の内周部31bと接続管2のフランジ21の対向する面との間に、充填管3が軸回りに回転可能な程度の空隙が確保される。
図4−(a)〜(d)では接続管2の充填管3側の端部から、充填管3に内接し得る内管23が突出しているが、この内管23は充填管3を接続管2に連結しようとするときの位置決めの役目の他、接続管2から充填管3へ圧送されるコンクリートが接続管2と充填管3との接続部分から外周側へ漏れ出さないようにする役目を持つ。充填管3の吐出口3aからのコンクリートの充填時には前記のように充填管3と接続管2(コンクリート打設管1)は基本的に軸方向を鉛直方向に向けた状態で使用されるため、接続管2と充填管3との接続部分からコンクリートが漏れる可能性は低いが、安全性の面から図4では内管23を突設している。
コンクリートの吐出口を有する充填管の少なくとも軸方向先端側の区間を偏平な形状に形成し、充填管の接続管側の端部を接続管に充填管の軸回りに回転自在に接続しているため、充填管がコンクリートの充填地点毎に移動させられるときに、充填管が接続管に対して捩れることを回避することができる。結果として、充填管内でのコンクリートが詰まりも回避されるため、コンクリートの充填作業を円滑に遂行することができ、作業効率が大幅に向上する。
図1〜図3は図8に示すコンクリートを供給するポンプ車7の供給管(圧送管)8に接続される接続管2と、接続管2に接続され、コンクリートを決められたコンクリートの打設領域に充填する充填管3とを備え、少なくとも充填管3の軸方向先端側のコンクリートの吐出口3a寄りの区間が偏平な形状に形成されたコンクリート打設管1の製作例を示す。充填管3の接続管2側の端部は図4に示すように接続管3に充填管3の軸回りに回転自在に接続される。
図1−(a)は接続(連結)前の状態にある接続管2と充填管3を合わせたコンクリート打設管1の全体を、図2−(a)は図1に示す接続管2と充填管3を接続するときの接続部分を、(b)は(a)に示す接続管2と充填管3を接続した後の接続部分を示している。図3は図1、図2に示す接続管2と充填管3を接続するための部品である後述の保持材4と間隔調整材5と、接続管2と充填管3の関係を示している。
図4−(a)、(c)は保持材4を使用し、間隔調整材5を使用しない場合の接続(連結)部分を、(b)、(d)は保持材4と間隔調整材5を使用した場合の接続部分を示している。充填管3は接続管2には直接には接合されず、図5に示す例を除き、接続管2には(a)、(b)に示すように保持材4が直接、または間隔調整材5を挟んで接合されるか、(c)、(d)に示すように接続管2を挟んで保持材4が充填管3に直接、または間隔調整材5を挟んで接合される。
接続管2と充填管3の少なくとも偏平形状の区間以外の区間は使用時の安定性(変形しにくさ)の面から、主に剛性の高い鋼管等の鋼材から製作されるが、必ずしもその必要はなく、使用時に捩れが生じない程度の剛性を持てば、材料は問われない。「少なくとも偏平形状の区間以外の区間」とは、偏平形状の区間と偏平でない区間に異なる材料が使用されることもあることの意味である。接続管2と充填管3の偏平でない区間の断面形状も問われず、円形状の他、楕円形、多角形状等に形成される。
図1〜図3は特に、接続管2の充填管3側の端部と充填管3の接続管2側の端部を互いに対向させた状態で充填管3の端部を接続管2の端部に接続するために、接続管2の充填管3側の端部の外周にフランジ21を、充填管3の接続管2側の端部の外周にフランジ31をそれぞれ形成した場合の接続例を示す。この例では、図4に示すように充填管3と接続管2の内、いずれか一方の管3(2)の外周に、この一方のフランジ31(21)を他方のフランジ21(31)と共に充填管3の軸方向に保持する環状の保持材4が配置される。図1〜図3は図4−(a)〜(d)の内、(b)に示す例に対応している。
保持材4は充填管3と接続管2のいずれか一方の管3(2)の軸回りに相対的に回転可能に配置された状態で、他方の管2(3)のフランジ21(31)に対向して接合される。保持材4と他方のフランジ21(31)との接合状態では、充填管3を接続管2の軸回りに相対的に回転可能に保持する。このとき、保持材4の内周寄り部分と一方のフランジ31(21)の対向する面との間、及び他方のフランジ21(31)の内周寄り部分と一方のフランジ31(21)の対向する面との間に厚さ方向(充填管3の軸方向)に空隙が確保される。
図4−(a)、(b)は保持材4が接続管2のフランジ21と共に充填管3のフランジ31を挟む形でフランジ21に接合された場合の例であり、保持材4は充填管3の外周に配置される。(c)、(d)は保持材4が充填管3のフランジ31と共に接続管2のフランジ21を挟む形でフランジ31に接合された場合の例であり、保持材4は接続管2の外周に配置される。
図1〜図3(図4−(b))に示す例で言えば、保持材4自身は充填管3から分離し、充填管3に対し、少なくとも充填管3の中心軸(軸方向)の回りに相対的に回転可能である。保持材4は充填管3の外周への配置状態では充填管3を包囲しながら、接続管2のフランジ21に対向し、上記のようにフランジ21と共にフランジ31を挟んだ状態でフランジ21に接合される。「充填管3に対して少なくとも相対的に回転可能」とは、保持材4のフランジ21への接合状態で保持材4が充填管3に対して充填管3の軸回りに回転可能であるこを意味する。それに加え、充填管3の軸方向に交差する方向の軸回りに回転可能であること、または充填管3の軸方向とそれに交差する方向の少なくともいずれか一方に相対移動自在であることも含む意味であり、この状況は図4−(a)、(c)、(d)の例でも共通する。
図4−(a)、(b)に示す例では保持材4が接続管2のフランジ21に接合されたとき、保持材4の内周寄り部分と充填管3のフランジ31の厚さ方向に対向する面との間、及び接続管2のフランジ21の内周寄り部分とフランジ31の厚さ方向に対向する面との間に充填管3が軸回りに回転可能な程度の空隙が確保される。充填管3のフランジ31の両面と保持材4との間、及びフランジ21との間の厚さ方向の空隙は、保持材4がフランジ21に接合されたときの両者の対向する面間の距離が充填管3のフランジ31の厚さより大きいことで確保される。この場合、保持材4は接続管2と共に充填管3を接続管2に対し、充填管3の軸回りに回転可能に保持する。
図4−(c)、(d)に示す例では保持材4が充填管3のフランジ31に接合されたとき、保持材4の内周寄り部分と接続管2のフランジ21の厚さ方向に対向する面との間、及び充填管3のフランジ31の内周寄り部分とフランジ21の厚さ方向に対向する面との間に充填管3が軸回りに回転可能な程度の空隙が確保される。接続管2のフランジ21の両面と保持材4との間、及びフランジ31との間の厚さ方向の空隙は、保持材4がフランジ31に接合されたときの両者の対向する面間の距離が接続管2のフランジ21の厚さより大きいことで確保される。この場合、保持材4は充填管3と共に充填管3自身を接続管2に対し、充填管3の軸回りに回転可能に保持する。
図4−(a)は保持材4と接続管2のフランジ21が直接、対向して接合されながら、充填管3のフランジ31が保持材4と接続管2に対して軸回りに回転可能に保持材4と接続管2に保持された場合の例を示す。この例では保持材4の外周寄り部分である外周部4aの肉厚と、フランジ21の外周寄り部分である外周部21aの肉厚が、それぞれの内周寄り部分である内周部4b、21bの肉厚より大きくなっている。
内周部4b、21bの肉厚より大きい肉厚の外周部4a、21aを有することは、保持材4とフランジ21の互いに対向する面の外周部4a、21aを対向する側へ突出するように厚肉に形成することにより得られる。この厚肉の外周部4a、21aを有する面を互いに対向させることで、保持材4とフランジ21を接合したときに、保持材4の内周部4bと、フランジ21の内周部21bの対向する面間距離が充填管3のフランジ31の厚さより大きくなっている。「外周寄り」と「内周寄り」は保持材4と接続管2の中心軸から半径方向(放射方向)に見たときの部分を指す。
図4−(a)の例では保持材4の外周部4aの充填管3(中心軸)寄りの内周面、及びフランジ21の外周部21aの充填管3(中心軸)寄りの内周面と、フランジ31の外周面との間に径方向に空隙が確保され、保持材4の内周部4bの内周面と充填管3の外周面との間に径方向に空隙が確保されている。この径方向の空隙の大きさの範囲内で、充填管3が軸回りに回転可能で、軸に交差する方向に相対移動可能になっている。空隙は保持材4がフランジ21に接合された状態での保持材4の内周部4bのフランジ31側の面とフランジ31との間、及びフランジ21の内周部21bのフランジ31側の面とフランジ31との間にも充填管3の軸方向(フランジ31の厚さ方向)に確保されている。この軸方向の空隙の大きさの範囲内で、充填管3が保持材4と接続管2に対して軸方向に相対移動可能になっている。
充填管3の径方向の空隙と軸方向の空隙は充填管3の接続管2に対する相対移動を可能にする目的で確保されるが、充填管3の相対移動を円滑に生じ易くするために、空隙内にグリース等の潤滑剤が充填されることもある。
図4−(b)は保持材4とフランジ21の各外周部4a、21aと各内周部4b、21bが一様な(同一の)厚さを有し、各外周部4a、21aの対向する面間に図3に示すように充填管3のフランジ31の厚さより大きい厚さの環状の間隔調整材5を配置した場合の例を示す。保持材4とフランジ21間への間隔調整材5の配置により保持材4の内周部4bのフランジ31側の面とフランジ31との間、及びフランジ21の内周部21bのフランジ31側の面とフランジ31との間に充填管3の軸方向に空隙が確保される。
図4−(b)の例でも空隙は間隔調整材5の内周面とフランジ31の外周面との間、及び保持材4の内周部4bの内周面と充填管3の外周面との間に径方向に確保されている。充填管3は軸方向の空隙の大きさの範囲内で保持材4と接続管2に対して軸方向に相対移動可能であり、径方向の空隙の大きさの範囲内で軸回りに回転可能で、軸に交差する方向に相対移動可能である。
図4−(c)は保持材4と充填管3のフランジ31が直接、対向して接合されながら、接続管2のフランジ21が保持材4と充填管3に対して軸回りに回転可能に保持材4と充填管3に保持された結果、充填管3が接続管2に対して軸回りに回転可能に接続管2に接続された場合の例を示す。この例では保持材4の外周部4aの肉厚と、充填管3のフランジ31の外周寄り部分である外周部31aの肉厚が、それぞれの内周部4b、31bの肉厚より大きい。
厚肉の外周部4a、31aを有する面を互いに対向させることで、保持材4とフランジ31を接合したときに、保持材4の内周部4bと、フランジ31の内周部31bの対向する面間距離が接続管2のフランジ21の厚さより大きくなる。接続管2のフランジ21の径方向及び厚さ方向に空隙が確保されることは(a)の場合と同様であり、空隙の範囲で充填管3が保持材4と共に接続管2に対して軸回りに回転可能で、軸に交差する方向、及び軸方向に相対移動可能になっている。
図4−(d)は保持材4とフランジ31の各外周部4a、31aと各内周部4b、31bが一様な(同一の)厚さを有し、各外周部4a、31aの対向する面間に接続管2のフランジ21の厚さより大きい厚さの環状の間隔調整材5を配置した場合の例を示す。保持材4とフランジ31間への間隔調整材5の配置により保持材4の内周部4bのフランジ21側の面とフランジ21との間、及びフランジ31の内周部31bのフランジ21側の面とフランジ21との間に充填管3の軸方向に空隙が確保される。
この例でも(b)の例と同様に空隙は間隔調整材5の内周面とフランジ21の外周面との間、及び保持材4の内周部4bの内周面と接続管2の外周面との間に径方向に確保され、充填管3は軸方向の空隙の大きさの範囲内で保持材4と共に接続管2に対して軸方向に相対移動可能であり、径方向の空隙の大きさの範囲内で軸回りに回転可能で、軸に交差する方向に相対移動可能である。
図4−(a)〜(d)のいずれの例も保持材4と接続管2のフランジ21は基本的には両者を貫通するボルト6等により着脱自在に接合される。コンクリートの打設によるノロが保持材4と接続管2との間に確保される空隙内に入り込むことがあり、そのときの清掃の目的で、保持材4と接続管2を分離可能にしておく意味があることに因る。
コンクリート打設管1は吐出口3aから吐出するコンクリートが自由落下して打設領域に打設されるよう、軸方向を鉛直方向に向けて使用される関係で、充填管3のフランジ31と接続管2のフランジ21との間、及び保持材4との間の空隙内にノロが浸入する可能性は高くはない。但し、図1〜図4ではノロの空隙内への浸入防止効果を高める目的で、接続管2の内周面の充填管3側の端面から、充填管3に内接し得る内管23を突設し、充填管3の内周面に重ねている。
図1はまた、充填管3の全長の内、作業者が保持する部分から軸方向先端(吐出口3a)までの区間を偏平な形状に形成した充填管3の製作例を示している。充填管3は接続管2に接合されるフランジ32を含む、接続管2と同等の形状(断面形状)をした接続部3Aと、軸方向先端側の吐出口3aが形成される偏平形状の先端部3Cと、接続部3Aから先端部3Cへかけて形状が連続的に、または断続的に変化する中間部3Bとに軸方向に区分される。
この場合、充填管3は形状の異なる3区間に区分されるため、各部の材料を相違させることもでき、例えば先端部3Cのみを、合成樹脂等、比較的、柔軟な材料を使用することもできる。なお、図1では先端部3Cの一部に作業者による保持を容易にするための取手33を折り畳み自在に接続している。
図5は図1〜図4に示す例とは異なり、充填管3を接続管2の供給管8側の端部から接続管2内に挿入し、充填管3の接続管2側の端部を接続管2の充填管3側の端部に係合させて接続(連結)した場合の例を示す。この例では充填管3の接続管2側の端部に形成されたフランジ32が接続管2の充填管3側の端部に形成されたフランジ22に接続管2内で係合する。
充填管3のフランジ32は充填管3の外周側に形成されるが、接続管2のフランジ22は接続管2の内周側に形成され、フランジ22の内周側が開放し、充填管3が挿通する開口2aになる。充填管3のフランジ32が接続管2のフランジ22に係合した状態での両者の接触状態が充填管3の軸回りの回転を阻害するような場合には、両フランジ32、22間に潤滑剤や四フッ化エチレン樹脂等の低摩擦材が介在させられる。
図6、図7はコンクリートの打設領域が例えば図8に示すようなボックスカルバートを現場で製作するための、鉄筋9が組まれたせき板10、10間の領域である場合の、コンクリート打設管1を通じてのコンクリートの打設状況を示している。ここでは土留め壁としての矢板で土留めされた地山に挟まれた根切り底の上に構築された基礎の上に鉄筋9と、鉄筋9を挟んで対向するせき板10、10が組み立てられ、コンクリートは対向するせき板10、10間に打設される。
この例では例えばボックスカルバートの側壁部分のせき板10、10間にコンクリートを打設する際、側壁の外側のせき板10を矢板に保持させることができることで、対向するせき板10、10間の間隔を保持するセパレータを不在にすることができている。このため、外側のせき板10と鉄筋9との間に、せき板10の長さ方向(ボックスカルバートの軸方向)に連続した空間が形成される。
この関係で、図1に示す充填管3の先端部3Cを図6、図7に示すように外側のせき板10と鉄筋9との間の空間に差し込み、せき板9の長さ方向に沿って連続的に移動させる打設方法を用いることが可能になる。図9に示すように充填管3が接続管2に固定状態で接合されていれば、充填管3の幅方向が供給管8に接続された接続管2の軸方向に直交する方向を向くため、ブームの回転による供給管8(接続管2)の回転に伴い、充填管3の幅方向が変化することになる。
これに対し、本発明の充填管3は接続管2(供給管8)に対して軸回りに回転自在に接続されていることで、供給管8(接続管2)の回転に拘わらず、充填管3の幅方向を一定方向に向けた状態を維持できるため、充填管3をせき板10の長さ方向に沿って連続的に移動させながらコンクリートを打設し続けることが可能になっている。
図6、図7はせき板10と鉄筋9間に充填管3の先端部3Cを差し込んだまま、充填管3を平行移動させる場合の例を示している。一方、図10は充填管3の幅方向を一定の向きに保持したままでは隣接する鉄筋9、9間の空間への挿入が困難な場合に、隣接する鉄筋9、9間に形成される空間の形状に応じ、充填管3の先端部3Cを軸回りに回転させ、向きを調整することで、鉄筋9、9間に先端部3Cを差し込むことが可能な状況を示している。
図10に示す例では配筋の状態から充填管3を平行移動させることはできないが、充填管3の幅方向を一定方向に向けたまま、充填管3の先端部3Cを引き上げ、水平移動後に落とし込む作業を繰り返せば、鉄筋9、9間に形成される隣接する空間毎にコンクリートを打設し、密実に充填させることが可能になる。充填管3の引き上げから落とし込みまでの間、コンクリートの打設は中断される。図10中、二点鎖線は鉄筋9、9間の空間に挿入できない先端部3Cの向きと、挿入できない先端部の形状を示している。