JP2019181562A - 圧延材の反り量測定方法及び反り量測定装置 - Google Patents

圧延材の反り量測定方法及び反り量測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】圧延材の先尾端部を含む板幅エッジ部を精度よく検出して圧延材の長手方向に変化する圧延材の先端部の反り量を精度よく、且つ、安価に測定可能な圧延材の反り量測定方法及び反り量測定装置を提供すること。【解決手段】本発明に係る圧延材の反り量測定方法は、熱間圧延ラインの圧延機前後における圧延材の反り量を測定する圧延材の反り量測定方法であって、可視光から近赤外の波長帯の輝度を測定可能なカメラを用いて圧延後の圧延材の画像を圧延材の斜め上方から撮影し、撮影された圧延材の画像の輝度値に基づいて圧延材の板幅エッジ部を検出し、圧延機のワークロールの半径に応じて設定されたピッチで圧延材の先端部から圧延方向に沿って圧延材の画像を分割し、分割された各画像における板幅エッジ部の形状を二次式近似し、二次式近似された板幅エッジ部の形状に基づいて圧延材の反り量を曲率で定量化することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、熱間圧延ラインの圧延機前後における圧延材の反り量を測定する圧延材の反り量測定方法及び反り量測定装置に関する。
熱間圧延ラインでは、200〜300mm程度の厚みに鋳造されたスラブが、複数又は単数の圧延機によって必要があればリバース圧延されながら20〜80mm程度の厚みの鋼板に粗圧延される。そして、鋼板は、直列に配置された複数段の仕上げ圧延機によって最終的に0.6〜30mm程度の厚みに仕上げ圧延される。なお、鋼板は、表面疵の抑制や組織制御のため熱間圧延中に冷却水によって冷却される場合がある。
ところで、粗圧延又は仕上げ圧延において、鋼板の上面及び下面の圧延状態に非対称性が存在する場合、鋼板が高さ方向に湾曲する反りが発生することがある。具体的には、非特許文献1には、摩擦係数、ロール速度、ロール条件、鋼板温度、及び圧延機への入射角度等の因子に非対称性が存在する場合、鋼板に反りが発生すると記載されている。特に鋼板の先端部や尾端部は圧延非定常域に相当するため、前述した因子の制御が難しく、鋼板の先端部や尾端部では反り量が大きくなる傾向にある。鋼板の先端部に大きな反りが発生した場合、鋼板が次段の圧延機に噛み込まれず圧延できないトラブルや、鋼板が周辺設備を破壊するといったトラブルが発生する可能性がある。特に板厚が厚い鋼板では、鋼板の剛性が強いために周辺設備を破壊する可能性がより高くなる。このようなトラブルの発生を抑制するためには、当該スタンドや前段スタンドで発生する鋼板の反りの測定が必須となる。
このような背景から、特許文献1には、カメラ撮影及び画像処理によって鋼板の幅方向端部(エッジ部)の位置を検出し、検出されたエッジ部の位置に基づいて鋼板の反り量を一次式近似によって算出し、算出された反り量に基づいて上下のロール速度を調整して鋼板の反り量を制御する方法が記載されている。また、特許文献2には、複数台の投光機と受光機とを用いて鋼板の先端部の高さから鋼板の反り量を算出する方法が記載されている。また、特許文献3には、CCD(Charge Coupled Device)カメラを用いて画像処理によって鋼板の最大高さ位置から鋼板の最大反り量を測定する方法が記載されている。
特開2017−185507号公報 特開2015−139798号公報 特開2009−250723号公報
鈴木弘著、「圧延百話」第64話、株式会社養賢堂、2000年
しかしながら、特許文献1に記載の方法を熱間圧延ラインの仕上げ圧延機間に適用した場合、スプレー水冷装置から鋼板に冷却水が噴射されているため、カメラ撮影及び画像処理によって鋼板のエッジ部を精度よく検出できない。結果、鋼板の反り量を精度よく算出することが困難になる。また、圧延後の鋼板の長手方向の形状の傾きは一定ではない場合があるため、一次式近似で鋼板の反り量を定量化することは好ましくない。一方、特許文献2,3に記載の方法では、長手方向に曲率が変化する鋼板の反り量を測定できない。また、複数台の投光機と受光機とを用いる特許文献2に記載の方法では、導入コスト及びメンテナンスコストが高額となる。さらに、特許文献3には、100℃までの温度範囲において一定の露光量で鋼板を撮影可能であると記載されている。このため、特許文献3に記載の方法を熱間圧延ラインの仕上げ圧延機間に適用した場合、700〜1000℃の温度範囲で仕上げ圧延が行われるため、鋼板の温度によって画像の映りが暗すぎたり、明るすぎたりする可能性があり、鋼板のエッジ部を精度よく検出することが困難になる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、圧延材の先尾端部を含む板幅エッジ部を精度よく検出して圧延材の長手方向に変化する圧延材の先端部の反り量を精度よく、且つ、安価に測定可能な圧延材の反り量測定方法及び反り量測定装置を提供することである。
本発明に係る圧延材の反り量測定方法は、熱間圧延ラインの圧延機前後における圧延材の反り量を測定する圧延材の反り量測定方法であって、可視光から近赤外の波長帯の輝度を測定可能なカメラを用いて圧延後の圧延材の画像を圧延材の斜め上方から撮影し、撮影された圧延材の画像の輝度値に基づいて圧延材の板幅エッジ部を検出し、圧延機のワークロールの半径に応じて設定されたピッチで圧延材の先端部から圧延方向に沿って圧延材の画像を分割し、分割された各画像における板幅エッジ部の形状を二次式近似し、二次式近似された板幅エッジ部の形状に基づいて圧延材の反り量を曲率で定量化することを特徴とする。
本発明に係る圧延材の反り量測定方法は、上記発明において、熱間圧延ラインの仕上げ圧延における圧延機間全体を前記カメラにより撮影することにより圧延材の画像を撮影することを特徴とする。
本発明に係る圧延材の反り量測定装置は、熱間圧延ラインの圧延機前後における圧延材の反り量を測定する圧延材の反り量測定装置であって、圧延後の圧延材の画像を圧延材の斜め上方から撮影する、可視光から近赤外の波長帯の輝度を測定可能なカメラと、前記カメラによって撮影された圧延材の画像の輝度値に基づいて圧延材の板幅エッジ部を検出し、圧延機のワークロールの半径に応じて設定されたピッチで圧延材の先端部から圧延方向に沿って圧延材の画像を分割し、分割された各画像における板幅エッジ部の形状を二次式近似し、二次式近似された板幅エッジ部の形状に基づいて圧延材の反り量を曲率で定量化する情報処理装置と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る圧延材の反り量測定方法及び反り量測定装置によれば、圧延材の先尾端部を含む板幅エッジ部を精度よく検出して圧延材の長手方向に変化する圧延材の先端部の反り量を精度よく、且つ、安価に測定することができる。
図1は、4段の仕上げ圧延機の構成例を示す模式図である。 図2は、撮像装置の撮像角度を説明するための模式図である。 図3は、1ピクセルの大きさの算出方法を説明するための図である。 図4は、鋼板の反り量を算出する画像の選択方法を説明するための図である。 図5は、鋼板のエッジ部の算出方法を説明するための図である。 図6は、エッジ部の曲率の算出方法を説明するための図である。 図7は、エッジデータ及び二次式近似結果の一例を示す図である。 図8は、エッジデータの測定ピッチと二次式近似曲線の精度との関係を示す図である。 図9は、下面冷却長と鋼板の反り曲率との関係を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である圧延材の反り量測定方法について説明する。
〔熱間圧延ライン〕
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態である圧延材の反り量測定方法が適用される熱間圧延ラインの構成について説明する。
本発明の一実施形態である圧延材の反り量測定方法が適用される熱間圧延ラインでは、まず、前工程である鋳造工程で製造された厚み200〜300mm程度、幅600〜2200mm程度、長さ5〜15m程度のスラブを1000〜1250℃程度の温度まで加熱した後に加熱炉から抽出する。
次に、粗圧延では、複数の粗圧延機によって20〜80mm程度の厚みまで鋼板を粗圧延する。粗圧延の途中に必要があれば鋼板の冷却装置を設けてもよい。冷却装置としては、ラミナー冷却と呼ばれる棒状の水によって鋼板を冷却する装置や大流量の水を勢いよく噴射して鋼板を強冷却する装置を例示できる。なお、鋼板の反り量を制御できるように、鋼板の上下面の温度、即ち鋼板の上下面の変形抵抗を調整可能なように冷却装置を構成することが好ましい。具体的には、鋼板の上下面の冷却水流量を調整可能な構造や鋼板の上面又は下面いずれかの冷却を止めることができる仕様に冷却装置を構成するとよい。
一般に、粗圧延後の鋼板の先端部及び尾端部の形状は、フィッシュテールと呼ばれる幅方向端部部分のみが鋼板の長手方向に伸びた形状になる。仮にフィッシュテール形状が鋼板の幅方向で異なる場合、仕上げ圧延時に鋼板が蛇行し、トラブルへと発展する可能性がある。このため、操業の安定性の観点から、粗圧延後に鋼板の先端部及び尾端部の一部又は全てカットして矩形にするクロップシャーによる切断を行うことが一般的である。
粗圧延後の鋼板の表面温度は700〜1000℃程度と高温であるため、鉄酸化物(スケール)が生成する。最終製品時に残る疵を防止するため、鉄酸化物を水圧によって除去するフィニッシャースケールブレーカーを仕上げ圧延前に行う。
仕上げ圧延では、2000〜4000mmピッチで複数の仕上げ圧延機が直列に配置され、各仕上げ圧延機はハウジングと呼ばれる大枠と高さ方向に配置された複数の圧延ロールとを備えている。仕上げ圧延機は、鋼板の上下方向に圧延ロールを2対配置した4段と呼ばれる形式や鋼板の上下方向に圧延ロールを3対配置した6段と呼ばれる形式等の複数の形式を有する。図1に4段の仕上げ圧延機の構成例を示す。図1に示す4段の仕上げ圧延機1では、鋼板Sは図示しない搬送装置によって搬送され、図1の左方向から右方向に向かって圧延される。このとき、鋼板Sはハウジング11内に配置された上下一対のワークロール12によって圧延され、バックアップロール13がワークロール12のそれぞれ上下に配置されている。
一般に、鋼板Sに張力を掛けることにより鋼板Sの圧延荷重が低減する。そこで、仕上げ圧延機1間で張力を張るために、仕上げ圧延機1間に設けられたルーパー14の角度を上下させることによって、鋼板Sの張力を制御する。なお、図中、符号15はテーブルを示し、符号16は圧延機間スプレーを示す。仕上げ圧延では、鋼板Sは0.6〜30mm程度の厚みに仕上げ圧延される。
なお、各工場の設計仕様によって異なるが、鋼板Sの温度を測定する温度計が少なくとも仕上げ圧延の入側及び出側に設置されている。仕上げ圧延の入側の温度計は、フィニッシャースケールブレーカーの影響を除去するためにその前に配置してもよいし、さらにクロップシャーによる切断の前に設置してもよい。特に仕上げ圧延の入側の温度計は、鋼板Sの反り量を制御する上で重要な温度計であるため、鋼板Sの上面及び下面を共に測定できる温度計とすることが好ましい。
上述のような設備を用いて行う熱間仕上げ圧延において、反りを測定及び定量化する際には、熱せられた鋼板の輻射等光学的条件を適正化すると共に、仕上げ入り側のスケールブレーカやスタンド間で噴射される冷却水、ルーパー他設備の写りこみに対処しつつ、鋼板先尾端の1.0m程度以上の領域での反りを定量的に示すことが求められる。
圧延による鋼板Sの反り挙動を捉えるためには、圧延前後での鋼板Sの反り量や圧延機への進入条件(鋼板S進入時の圧延ロールの位置と鋼板Sの高さ方向及び幅方向の位置)を把握する必要がある。仕上げ圧延の前では、レベラーを設けている場合やクロップシャーで鋼板の先端部をカットする場合があるため、仕上げ圧延前では鋼板Sの反りはなく、鋼板Sは真直と考えてもよいし、実際に鋼板Sの反り量を測定して運用してもよい。また、鋼板Sの先端や尾端の形状が、その後の圧延での反り増大のきっかけになる可能性があるため、計測に当たっては圧延方向200〜400mm程度の長さ領域での反り形状をも捉えておくことが望ましい。仕上げ圧延機の前段ほど、鋼板Sの厚みは厚く、剛性が強く、設備破損等の大トラブルへ至る危険性が高いので、鋼板Sの反り量は仕上げ圧延機の前段側での測定が特に重要になる。
〔圧延材の反り量測定方法〕
次に、図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態である圧延材の反り量測定方法について説明する。
圧延機前後における鋼板Sの反りの状態を鋼板Sの側面側から撮影する場合、ワークロール12間に位置するロールバイトがハウジング11内にあるために、圧延直後の鋼板Sの反りの状態や圧延直前の鋼板Sの反りの状態を捉えることは難しい。そこで、本実施形態では、図1に示すように、ハウジング11の間を撮像装置の撮像視野21に選択する。図2は、撮像装置3の撮像角度θを説明するための模式図である。図2に示すように、撮像装置3の撮像角度θは、鋼板Sの画像を斜め上方から撮影する角度、具体的には、水平方向に対して10〜60°の範囲内で設定することが好ましい。撮像角度θが10°未満である場合、鋼板Sの高さ方向位置が鋼板Sの幅方向で差があった際、鋼板Sが斜めになって撮影されるため、鋼板Sのエッジ部を検出することが困難になる。一方、撮像角度θが60°より大きい場合には、鋼板Sの高さ方向の情報を得ることが難しくなる。
鋼板Sと撮像装置3との間の距離は特に良好な範囲を設定しないが、距離が極度に短い場合、鋼板Sからの輻射熱によって撮像装置3が加熱され、故障の原因となるため好ましくない。鋼板Sの反り量の測定精度は画像の鮮明さにも影響するが、距離と画素数によっても変化する。距離が極度に長い場合、鋼板Sの反り量の測定精度が低下することがある。望遠レンズによって撮影画像を拡大することは可能だが、鋼板Sの反り量の測定精度を鑑みて少なくとも1ピクセルあたりの撮影長さを5mm以下にすることが好ましい。
撮像装置3はカラーカメラでもモノクロカメラでもよい。カラーカメラの場合は、R(赤)、G(青)、B(緑)のいずれか、もしくはグレースケールの値を用いて鋼板Sのエッジ部を検出すればよい。
熱間圧延工場では、圧延時やデスケーリングに細かい酸化鉄が飛散する。このため、撮像装置3は防塵ケースに入れて保護することが好ましい。水蒸気が多く発生している環境下で鋼板Sを撮影する場合、水蒸気の乱反射が小さくなる可視光より波長が長い、例えば近赤外波長のみの輝度を採取ることが有効である。可視光(JIS Z 8120:2001では波長360〜830nmと記載)から近赤外(JIS 0134:2002では波長700〜2500nmと記載)までの波長の輝度が測定可能な撮像装置3に可視光をカットするフィルタを取り付けて近赤外の波長帯のみの情報を用いても良い。中赤外や遠赤外カメラを用いても同様の効果を得ることができるが、撮像装置3が高価となるため好ましくない。但し、鋼板Sの温度が低下すると赤外波長の輝度も低下するため、環境に応じて測定する波長帯を選択することが好ましい。
次に、撮像装置3の撮影画像から鋼板Sの反り量を算出する方法について述べる。鋼板Sの反り量を定量化するためには、まず、撮影画像の1ピクセルが何mm×何mmに相当するかを把握する必要がある。撮影画像の1ピクセルが何mm×何mmに相当するかは、例えば熱間圧延ラインに所定の大きさの距離測定用サンプルを用意し、撮像装置3によって撮影された距離測定用サンプルの画像の大きさから推定できる。例えば図3に示す例では、一定長さの矩形のサンプル31を配置し、本例ではサンプル31の画像が高さ方向に6ピクセル分の大きさになっているため、1ピクセル当たりの長さはサンプルの長さの1/6と推定できる。なお、図3中の符号Pは、撮影画像の1ピクセルを示している。
次に、図4を参照して、鋼板Sの反り量を算出する撮影画像の選択方法について述べる。撮像装置3は所定周期毎(例えば0.1sec.毎)に鋼板Sの画像を撮影するので、より鋼板Sが長く映った撮影画像を選択することにより圧延方向で変化する鋼板Sの曲率を把握できる。このため、ハウジング11やその他の周辺設備によって鋼板Sが隠れる前の撮影画像を鋼板Sの反り量を算出する画像として選択することが好ましい。具体的には、情報処理装置が、ハウジング11より上流側のある高さ方向に並んだ1列の各ピクセルの輝度の合計値を監視し、合計値が所定値以上になったときの撮影画像を鋼板Sの反り量を算出する撮影画像として選択することが好ましい。例えば図4に示す例では、列R1のある高さ以上において各ピクセルの輝度の合計値が所定値以上になったので、情報処理装置が、鋼板Sの先端部が撮像装置3の撮像視野21に入ったと判断し、鋼板Sの反り量を算出する撮影画像として選択する。
次に、図5を参照して、撮影画像を圧延方向に沿って1列ずつに分割し、撮影画像の高さ方向の輝度値から鋼板Sのエッジ部を検出する方法について説明する。図5に示すように、鋼板Sのエッジ部を検出する際には、情報処理装置が、高さ方向の各ピクセルの輝度値を読み取り、複数ピクセル(本例では5ピクセル)の輝度値の平均値を算出し、隣り合った複数ピクセルの輝度値の平均値の差が最大となった位置を鋼板Sのエッジ部として検出する。このとき、奥側(撮像装置3から遠い側)のエッジ部が撮影されるであろう高さ位置の範囲を予め指定し、指定した範囲の中で平均値の差が最大になった位置を鋼板Sのエッジ部とすることが好ましい。圧延機間スプレー16から噴射された冷却水が映りこんだときにエッジ部が不鮮明になる箇所があるが、複数ピクセルの輝度値の平均値を使うことにより、エッジ部が不鮮明だった場合であってもエッジ部を正確に検出できる。
測定されたエッジ部の形状は二次式近似によって近似し、鋼板Sの反り量を曲率で定量化することが好ましい。具体的には、まず二次式の一般式を以下に示す数式(1)のように定義する。次に、数式(1)の形で最小二乗法を行うため、以下に示す数式(2)のような行列式を作り、以下に示す数式(3)により求めた係数a、b、cを用いてエッジ部の曲率を以下に示す数式(4)で求める。なお、数式(4)ではエッジ部の曲率を算出できるが、圧延方向で値が変化するため、算出した圧延方向で平均値を取るもしくは、圧延方向中心の曲率を取ることで代表値を出すことができる。また、数式(4)で算出される値は正負がある。鋼板Sの反りが上向きであった場合は正値であり、下向きであった場合は負値を取る。また、他の多項式によってエッジ部の形状を近似しても良いが、高次であるほどノイズの影響が大きくなり、曲率を正しく算出することが困難になる。また、円の一般式で最小二乗法によって近似を行うと、直線に近い反りを有していた場合、曲率が大きい解が求められることがあるため、好ましくない。
Figure 2019181562
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Figure 2019181562
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また、鋼板Sの曲率は鋼板Sの圧延方向(長さ方向)に短ピッチで変化することがある。このため、図6に示すように、曲率は圧延方向に複数(例えばA1,A2,A3の3区間)に分割して算出することが好ましい。圧延方向の曲率の変化を調査したところ、おおよそワークロール12の半径に相当する距離で曲率が変化することがわかった。このため、曲率を分割して評価する距離はワークロール12の直径(ワークロール径)を事前に測定し、分割距離を設定することが好ましい。また、鋼板Sの圧延方向の曲率の変化はワークロール12の半径に相当すると記述したがばらつきもあるため、ワークロール12の半径±50mmに分割することで、おおよその圧延方向の曲率の変化を把握できる。仕上げ圧延で使用されるワークロール径の変化は±50mmより狭い範囲で管理していることが多いため、使用が予想されるワークロール12の半径の±50mmの範囲に収まるある一定の値を算出し、分割する距離を一定値で管理しても良い。
なお、鋼板Sの温度が低い場合、鋼板Sの自発光量が低下する。仮に温度が高い鋼板Sに合わせて露光量を調整した場合、鋼板Sの輝度が小さくなるため、エッジ部を検出することが困難になる。一方、鋼板Sの温度が高い場合には、鋼板Sの自発光量が増大する。仮に温度が低い鋼板Sに合わせて露光量を調整した場合、鋼板Sの輝度が高すぎてハレーションが発生し、エッジ部を検出することが困難になる。一般に、仕上げ圧延の温度範囲は700〜1000℃程度と広い。このような問題を解決するために、仕上げ圧延温度を事前に予測又は測定する必要がある。一般に仕上げ圧延機間の温度を測定することは難しいため、各仕上げ圧延機での鋼板Sの温度は計算によって推定することが一般的である。計算方法はいくつかあるが、例えば事前にセットアップ計算を行ったときの値を使用しても良いし、仕上げ圧延機の入側の温度を参考に推定しても良い。ここで、計算された仕上げ圧延温度を基に露光を調整することで、輝度の低下やハレーションといった問題を回避し、鋼板Sのエッジを検出しやすくできる。
なお、撮像装置3のダイナミックレンジはある程度絞ることが好ましい。撮像装置3のダイナミックレンジが広い場合、鋼板Sのみならず圧延機間スプレー16の水滴も明瞭に撮影されてしまうため、鋼板Sのエッジ部を検出することが困難になる。撮像装置3のダイナミックレンジを絞ることによって、鋼板Sのみを鮮明に測定することができ、結果として、鋼板Sのエッジ部を精度よく検出できる。
熱間仕上げ圧延における反りについては、鋼板の上下面の変形抵抗差、圧延材の上下面での非対称性、圧延材の先端部の形状の非対称性に起因するものが挙げられる。上述したうち代表的な反りの例としては、鋼板Sの上面及び下面の温度差によって変形抵抗が変化し、上面と下面とで反り量が変化するために発生するものがある。鋼板Sの上面及び下面に温度差が発生する要因としては、加熱炉における鋼板Sの上下面の加熱量の差、デスケーリングや中間冷却設備における鋼板Sの上下面の冷却量差、圧延機間スプレー16による鋼板Sの上下面の冷却量差、鋼板Sの搬送時の自然放冷時における鋼板Sの上下面の冷却量差がある。一般に、鋼板Sの搬送時は、鋼板Sの下面側に搬送ロールや搬送テーブルがあるため、鋼板Sの下面側に熱がこもりやすい。これに対して、鋼板Sの上面側の空間は広いため、鋼板Sの上面側は熱がこもりにくい。このため、鋼板Sの上面の温度は下面の温度より低くなりやすい。
測定された圧延後の鋼板Sの反り量(曲率)と仕上げ圧延前に設置した鋼板Sの上下面温度との関係を事前に把握し、成分系や圧延材平均温度、サイズ等で必要があればクラスタリングを行い、トラブル無く圧延できる最適な仕上げ圧延前の鋼板Sの上下面温度条件を決定する。仕上げ圧延の上下面温度を調整するためには、例えば中間冷却装置があれば、その非対称性を補うように冷却水量や冷却長を鋼板Sの上面及び下面で変化させ所定の温度に制御することが好ましい。また、圧延前後の鋼板Sの反り量を含む大量の操業データを採取し、反り量が大きくなる要因や制御可能因子を推定して制御することによっても鋼板Sの反りを改善することができる。
[実施例1]
本実施例では、連続鋳造されたスラブを加熱し、サイジングプレス、粗圧延、クロップシャー、及びフィニッシャースケールブレーカーを施した後、厚み30mmとなった鋼板を素材とし熱間仕上げ圧延を行った。仕上げ圧延では、第1仕上げ圧延(F1、以下同記載)終了後の厚みが19mm、F2仕上げ圧延終了後の厚みが11mmとなるように圧延した。F2仕上げ圧延機出側における圧延機間スプレーは常に吹いた条件とした。撮像装置として、カラーのCCDカメラを用い、R値の値をエッジ検出に使用した。また、撮像装置は、仕上げ圧延機から10m離れた位置より15°の撮像角度θとなるようにF1の入側及びF1〜F7の出側を撮像視野として設置した。以下では、F2出側での処理結果について述べる。
撮影画像の1ピクセルあたりの大きさが2mmとなるように撮像装置に望遠レンズをつけて調整した。撮像装置のフレームレートは20fpsとし、可能な限り鋼板が長く映るような画像を選択して解析を行った。撮像視野として得られた鋼板の圧延方向長さは1.7mであった。仕上げ圧延機のワークロール径は800mmとし、半径は400mmなので、鋼板の先端から400mmピッチで3区間の鋼板の曲率を評価した。撮影画像を高さ方向に5ピクセル毎の平均値を算出して鋼板のエッジ部を検出した。
比較例に相当する方法として、鋼板のエッジ部を1次式近似により算出した。1次式で算出された鋼板のエッジ部の位置はカメラで撮影されたエッジ部の位置とかい離が大きく、その差は最大100mm程度であった。通常圧延先端部の反りは200mmを超えると設備破損の危険性が高まるため、検出誤差100mmでは反りの制御や抑制のために用いられる測定手法としては不十分である。
本発明例に相当する方法を用いて鋼板を撮影したところ、先端部及びスプレー冷却部直下を含めて、撮像視野全体のエッジ部を明瞭に検出できることを確認できた。また、検出されたエッジ部の位置とカメラで撮影されたエッジ部の位置とが誤差20mm以内で一致し、エッジ部を正確に検出できていることが確認できた。
[実施例2]
本実施例では、まず、連続鋳造されたスラブを加熱し、サイジングプレス、粗圧延、クロップシャー、及びフィニッシャースケールブレーカーを施した後、厚み50mmとなった鋼板を仕上げ圧延に搬送した。仕上げ圧延では、F1後の厚みが40mm、F2後の厚みが33mmとなるように圧延した。F2出側の圧延機間スプレーは常に吹いた条件とした。(可視光から近赤外までの波長の輝度が測定可能な)撮像装置として、測定波長帯300〜2500nmの輝度を測定可能なカメラを用いた。また、撮像装置は、仕上げ圧延機から10m離れた位置より15°の撮像角度θとなるように第1仕上げ圧延機の入側及びF1〜F7出側を撮像視野として設置した。以下では、F2出側での処理結果について述べる。
撮影画像の1ピクセルあたりの大きさは2mmとなるように撮像装置に望遠レンズをつけて調整した。撮像装置のフレームレートは20fpsとし、可能な限り鋼板が長く映るような画像を選択して解析を行った。撮像視野として得られた鋼板の圧延方向長さは1.7mであった。本検討では、曲率を算出するための、適切な測定ピッチを見極める実験を実施した。仕上げ圧延機のワークロール径は800mmとし、半径は400mmなので、鋼板の先端から400mmピッチで3区間の鋼板の曲率を評価した。撮像画像を高さ方向に5ピクセル毎の平均値を算出して鋼板のエッジ部を検出し、比較のために先端部から100、200、600、1200mmで曲率を評価した。図7(a)に1200mmピッチで、図7(b)に400mmピッチで測定されたエッジデータD及び二次式近似曲線L1〜L4を示す。図7(a)に示すように、二次式近似した区間を1200mmとした条件では変化する曲率を二次式近似曲線L1によって追うことができなかった。これに対して、図7(b)に示すように、ワークロールの半径相当の400mmピッチで二次式近似を行った場合には、それぞれの区間での曲率を求めることができ、エッジ部に追従した近似(二次式近似曲線L2〜L4)を行うことができた。各ピッチで近似した近似線の精度を評価するため、RMSE(平均2乗誤差平方根)を求めた。結果を図8に示す。ワークロール半径の400mmピッチ以下では精度が高い一方、600mm、1200mmでは精度が著しく悪化することが分かった。また、ピッチを400mmより短くしても精度は大きく変化しないことが分かった。
[実施例3]
本実施例では、まず、連続鋳造されたスラブを加熱し、サイジングプレス及び粗圧延を施した後、棒状の冷却水を噴射可能な中間冷却装置を用いて鋼板の上面温度及び下面温度に差をつける試みを行った。具体的には、上面冷却長を4mに固定し、下面冷却長を4〜6mの間で変更した。次に、クロップシャー及びフィニッシャースケールブレーカーを施した後、厚みが50mmとなった鋼板を仕上げ圧延搬送した。そして、F1出側の鋼板の厚みが40mmとなるように圧延した。なお、F1出側の圧延機間スプレーは常に吹いた条件とした。また、撮像装置として、測定波長帯300〜1000nmの輝度を測定可能なカメラを用いた。また、撮像装置は、仕上げ圧延機から10m離れた位置より15°の撮像角度θとなるようにF1の入側及びF1〜F7の出側を撮像視野として設置した。以下では、F1出側での処理結果について述べる。
撮影画像の1ピクセルあたりの大きさは2mmとなるように撮像装置に望遠レンズをつけて調整した。撮像装置のフレームレートは20fpsとし、可能な限り鋼板が長く映るような画像を選択して解析を行った。撮像視野として得られた鋼板の圧延方向長さは1.7mであった。仕上げ圧延機のワークロール径は800mmとし、半径は400mmなので、鋼板の先端から400mmピッチで3区間の鋼板の曲率を評価した。撮影画像を高さ方向に5ピクセル毎の平均値を算出して鋼板のエッジ部を検出した。本実施例ではF1出側の先端の400mmについて中間冷却装置の冷却長と鋼板の反り曲率との関係を調査した。図9に結果を示す。図9に示すように、下面冷却長を変化させることによって、F1出側の反り曲率が変化することがわかった。本発明によって、F1出側の反り量を測定することが可能になり、各操業条件との相関を調査することが可能となった。例えば、本実施例のように中間冷却装置による下面冷却長を変化させることにより、圧延材出側の反り量を制御できる。なお、本実施例は先端400mmを例にしたものであるが、圧延方向に鋼板の上下面の温度を制御することにより、圧延方向に変化する鋼板の反り量も制御できる。また、本実施例では、鋼板の上下面温度で反り量を制御したが、ロール速度や圧延機への入射角度を制御することにより反り量を制御してもよい。
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、本実施形態は、薄鋼板を製造する熱間圧延ラインにおける仕上げ圧延の圧延機間をCCDカメラによって測定し、画像処理によって鋼板Sのエッジ部を検出し、鋼板Sの反り量を測定したものであるが、本発明は、厚鋼板の製造ラインや、薄鋼板を製造する熱間圧延ラインの粗圧延や加熱炉抜き出し後、サイジングプレス後における鋼板の反り量を測定する処理にも適用できる。また、本実施形態では、鋼板Sの画像を鋼板Sの斜め上方から撮影して奥側のエッジ部を検出したが、鋼板Sの画像を鋼板Sの斜め下方から撮影して手前側のエッジ部を検出するようにしてもよい。このように、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
1 仕上げ圧延機
3 撮像装置
11 ハウジング
12 ワークロール
13 バックアップロール
14 ルーパー
15 テーブル
16 圧延機間スプレー
21 撮像視野
S 鋼板

Claims (3)

  1. 熱間圧延ラインの圧延機前後における圧延材の反り量を測定する圧延材の反り量測定方法であって、
    可視光から近赤外の波長帯の輝度を測定可能なカメラを用いて圧延後の圧延材の画像を圧延材の斜め上方から撮影し、撮影された圧延材の画像の輝度値に基づいて圧延材の板幅エッジ部を検出し、圧延機のワークロールの半径に応じて設定されたピッチで圧延材の先端部から圧延方向に沿って圧延材の画像を分割し、分割された各画像における板幅エッジ部の形状を二次式近似し、二次式近似された板幅エッジ部の形状に基づいて圧延材の反り量を曲率で定量化することを特徴とする圧延材の反り量測定方法。
  2. 熱間圧延ラインの仕上げ圧延における圧延機間全体を前記カメラにより撮影することにより圧延材の画像を撮影することを特徴とする請求項1に記載の圧延材の反り量測定方法。
  3. 熱間圧延ラインの圧延機前後における圧延材の反り量を測定する圧延材の反り量測定装置であって、
    圧延後の圧延材の画像を圧延材の斜め上方から撮影する、可視光から近赤外の波長帯の輝度を測定可能なカメラと、
    前記カメラによって撮影された前記圧延材の画像の輝度値に基づいて圧延材の板幅エッジ部を検出し、圧延機のワークロールの半径に応じて設定されたピッチで圧延材の先端部から圧延方向に沿って圧延材の画像を分割し、分割された各画像における板幅エッジ部の形状を二次式近似し、二次式近似された板幅エッジ部の形状に基づいて圧延材の反り量を曲率で定量化する情報処理装置と、
    を備えることを特徴とする圧延材の反り量測定装置。
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