JP2019178318A - チキソトロピー性付与剤及びそれを用いた物理ゲルの製造方法 - Google Patents

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【課題】本発明の課題は、塗料等に効果的なチキソトロピー性を付与するためのチキソトロピー性付与剤および、それを用いて物理ゲルを製造する方法について提案することである。【解決手段】 粒子径10〜100nmの粘土鉱物を体積分率0.001〜0.1の範囲で塩濃度α[M]の水中に分散させてなるチキソトロピー性付与剤であって、前記チキソトロピー性付与剤x(L)を、混合対象物y(L)と混合するとき、混合対象物の塩濃度がβ[M]の場合、次式(1)0.001[M]≦(α・x+β・y)/(x+y)≦1[M]・・・(1)の関係であることを特徴とするチキソトロピー性付与剤。【選択図】図1

Description

本発明は、塗料等にチキソトロピー性を付与するチキソトロピー性付与剤、これを用いて液体の対象物を物理ゲル化する製造方法に関する。
水性塗料は、従来の有機溶媒系塗料に比べて作業環境下における安全性の観点で優れており、環境問題への意識の高まりに伴って注目されている。一般家庭においては個人が手軽な作業によって自らの家屋、車庫等へ塗装することにより、単なるメンテナンスの意味だけではなく、生活環境の雰囲気を変える一手段としても利用されている。この水性塗料は、塗布後の乾燥に時間がかかるので、いわゆる液だれや塗膜厚みのバラツキが生じることがあり、塗装対象物が塗料をはじくといった現象も起こりやすい。
液だれを回避する簡単な方法は塗料の粘度を上げることであるが、塗布する際の作業性が悪くなるので単に増粘剤を添加すればよいというわけではない。そこで、塗料にチキソトロピー性を付与して、塗装時には機械的攪拌により塗料の流動性を向上させると共に、被塗装物の表面に塗布された後は粘度が増して塗料の流動性が低下し、液だれを抑制できるという技術が知られている。このようなチキソトロピー性を付与する材料としては、顔料や、合成珪酸ナトリウム・マグネシウムなどのクレイ(粘土鉱物)が代表的である。
例えば、珪酸アルカリ300重量部に対して、合成珪酸ナトリウム・マグネシウムの粉体である増粘剤を0.1〜7重量部配合し、アルミナ粉を15〜45重量部、水を1〜500重量部配合した高硬度塗料組成物(特許文献1)に関するものがある。この組成物は塗料の液だれを防止し製膜性を向上させて均一な厚さの膜ができるというものである。また、0.1重量%以上の天然ヘクトライト粘土とこの粘土の重量に基づいて0.5〜15重量%のホスホネートを含有する塗料(特許文献2)が提案されている。この提案は、天然ヘクトライトを使用することで、合成ヘクトライトを使用するよりもチキソトロピー性の流れとのバランス、懸濁性制御、安定性などにおいて優れているというものである。
さらに、スメクタイト系の粘土鉱物やバーミュキュライト等の膨潤性層状ケイ酸塩の層間に、オキシプロピレンユニット及びオキシエチレンユニットの両方を有する4級アンモニウムイオンが導入された水分散性有機粘土複合体を提供するもの(特許文献3)がある。この技術は、水性媒体中における粘土の分散性を向上させ、従来の水性塗料の増粘剤として使用した場合に得られる塗膜の耐水性が劣るという問題点を解決するものである。
その他、ビニル単量体と加水分解性珪素化合物との重合物と、無機酸化物と、ヒドロキシエチルセルロース系増粘剤と、(メタ)アクリル酸系増粘剤とを含有する水性コーティング剤組成物(特許文献4)が提案されている。この提案は、薄い膜厚の塗膜を形成しようとする場合に、従来においては、水性塗料中の固形分量を低くする方法が試みられていたが、固形分量を低くすると液だれが十分に防止できないという問題を解決したものである。
さらに、粘土鉱物の代わりに、HLBが10.0以上のポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを含むことを特徴とするチキソトロピー性付与剤についての提案(特許文献5)や、液だれ防止のためではないが、粘土鉱物などを防腐食性に効果を奏するとして塗料用添加剤に使用した例(特許文献6)もある。
前記のいずれの提案においても塗料等の製造工程に関して検討された例はなく、一般的には所定の比率で各成分を計りとり、混合して製造しようとするものであった。
特開2001−342380号公報 特開2005−154717号公報 特開平9−227118号公報 特開2015−214645号公報 特開2016−113490号公報 特開昭62−227969号公報
本発明の課題は、塗料等に効果的なチキソトロピー性を付与するためのチキソトロピー性付与剤および、それを用いて物理ゲルを製造する方法について提案することである。
本発明は、粒子径10〜100nmの粘土鉱物を体積分率0.001〜0.1の範囲で塩濃度α[M]の水中に分散させてなるチキソトロピー性付与剤であって、
前記チキソトロピー性付与剤x(L)を、混合対象物y(L)と混合するとき、混合対象物の塩濃度がβ[M]の場合に、
0.001[M]≦(α・x+β・y)/(x+y)≦1[M]
の関係であることを特徴とする。なお、前記Mはmol/Lを意味する。
粘土鉱物のような層状珪酸塩鉱物は、水に分散された場合に層間が負に、層の端部は正に帯電し、静電気的な結合を生じることにより、カードハウス構造を形成する。この構造を形成する力が抵抗となり、弾性が生じて物理ゲル化する。一方で層状ケイ酸塩鉱物の水分散液で形成される水性ゲル状組成物に水溶性の金属塩を加えると均一なカードハウス構造が形成されず、凝集や沈殿を生じ、ゲルが形成されないか、あるいはゾル状に変化する。従って、本発明では、塩濃度が所定の範囲内であることを要件とした。チキソトロピー性付与剤の段階での塩濃度も重要であるが、対象物との混合後における全体の塩濃度がどの程度であるかにより形成される物理ゲルの特性が決まるからである。
また、前記粘土鉱物が、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイトから選択される一種以上であることを特徴とする。チキソトロピー性の発現・制御の面で好適であり、粘度調整剤や分散化剤として化粧品にも使用されるなど、安全性の高い物質だからである。
さらに本発明の物理ゲルの製造方法は、混合対象物として増粘剤を含まない水系塗料組成物を調製する工程と、前記チキソトロピー性付与剤を調製する工程と、前記チキソトロピー性付与剤と前記水系塗料組成物とを体積比(x:y)で1:2〜1:10の範囲で混合する工程を有することを特徴とする。予め粘土鉱物を水に分散させてから、対象溶液にその分散液を混合して物理ゲル化することが重要である。
本発明のチキソトロピー性付与剤は安全性の高い粘土鉱物によって調製されており、種々の溶液と混合することによって、液体状態のものを物理ゲル化することができる。従って、固形状態で使用する方が適したシーンでの利用も可能となるので、同一製品であっても、応用範囲を拡大することができる。
より具体的な利用としては、本発明のチキソトロピー性付与剤と水系塗料組成物とを混合して得られる物理ゲルは、塗布する際に機械的攪拌によって粘度を低下させて塗布しやすくすることができ、塗布後は静止した状態になるので再び物理ゲル化して液だれを抑制することができる。
図1は、本発明のチキソトロピー性付与剤として、各種粘土鉱物の体積分率(φ)=0.001のときの(x軸)水分散液の塩化ナトリウム濃度[M]と(y軸)せん断弾性率(Pa)との関係を示す図である。図中のSAはサポナイト、HEはヘクトライト、STはスチブンサイトを示す(以下同様)。 図2は、本発明のチキソトロピー性付与剤として、各種粘土鉱物の体積分率(φ)=0.005のときの(x軸)水分散液の塩化ナトリウム濃度[M]と(y軸)せん断弾性率(Pa)との関係を示す図である。 図3は、本発明のチキソトロピー性付与剤として、各種粘土鉱物の体積分率(φ)=0.01のときの(x軸)水分散液の塩化ナトリウム濃度[M]と(y軸)せん断弾性率(Pa)との関係を示す図である。 図4は、墨汁に本発明例のチキソトロピー性付与剤を混合して調製した物理ゲルを、ガラス面に滴下して傾斜させたときの液の流れ方を示す写真である。 図5は、墨汁に粘土鉱物を添加・混合後、ガラス面に滴下して傾斜させたときの液の流れ方を示す写真である。 図6は、市販の水性塗料に本発明例のチキソトロピー性付与剤を混合して調製した物理ゲルを、ガラス面に滴下して傾斜させたときの液の流れ方を示す写真である。 図7は、本発明例の物理ゲルの応力−歪み曲線を示す図である。 図8は、比較例の応力−歪み曲線を示す図である。 図9は、芳香剤に本発明例のチキソトロピー性付与剤を加えて物理ゲル(A2)としたものと、比較例との、解放状態における重量変化を示す図である。 図10は、エチルアルコールに本発明例のチキソトロピー性付与剤を加えて物理ゲル化した例である。 図11は、エチルアルコール、イオン交換水、ヘクトライトをそれぞれ個別に混合したものの状態を示す図である。
本発明のチキソトロピー性付与剤は、粒子径10〜100nmの粘土鉱物を体積分率0.001〜0.1の範囲で塩濃度α[M]の水中に分散させてなる。このチキソトロピー性付与剤は、液状の対象物に添加・混合して該対象物を物理ゲル化することを目的としている。そこで重要になるのは、混合後の塩濃度である。前記のとおり粘土鉱物が形成するカードハウス構造は、水性組成物中の金属塩の影響を強く受けるからである。
本発明では、チキソトロピー性付与剤x(L)を対象物y(L)と混合するときに、該対象物の塩濃度がβ[M]とすると、次式(1)
0.001[M]≦(α・x+β・y)/(x+y)≦1[M]・・・(1)
の関係であることを特徴とする。
塩濃度が前記範囲よりも、低い場合および高い場合には図1〜図3に示すように、混合後のせん断弾性率が低くなる、すなわち物理ゲルとしての固形状態の形状保持性が劣ることになる。図1には、粘土鉱物としてサポナイト(SA)、ヘクトライト(HE)、スチブンサイト(ST)を体積分率0.001で水中に分散させ、塩化ナトリウムの濃度(M:mol/L)が0.007[M]〜0.1[M]の範囲にあるときの、物理ゲルのせん断弾性率G(Pa)を示したものである。せん断弾性率は、せん断力による変形のしにくさを表す物性値である。同様に図2には各粘土鉱物の体積分率が0.005であるとき、図3には体積分率が0.01のときの塩濃度とせん断弾性率の関係を示したものである。
粘土鉱物の濃度(体積分率)が低い場合(図1または図2)には特に、塩濃度が高くなるとせん断弾性率が急激に低下する傾向がある。一方、粘土鉱物の濃度が高い場合(図3)には、塩濃度が高くなっても比較的影響は少ない。これは塩の存在によってカードハウス構造を形成するべき粘土鉱物が凝集などによって失われても、溶液中にその消失分を補うことができるだけの余力があることを示している。
本来の目的としては、粘土鉱物は物理ゲルの構造を維持するだけの量が存在すれば足り、多量に含まれると不都合になることがある。例えば、塗装時の液だれを防止するために添加する場合に、粘土鉱物の含有量が多くなれば、塗布後に乾燥した際、塗面がざらついたりする可能性がある。しかし、本発明のように予めチキソトロピー性付与剤として粘土鉱物を水に分散させたものを添加することで、粘度を上げて液だれを防止する(従来法)と比較して、物理ゲル化を利用して液だれを防止することになるため、粘土鉱物の含有量が少なくても充分な効果を達成することができるのである。
本発明のチキソトロピー性付与剤は塩濃度の調整された水に粘土鉱物を分散させて得ることができる。この水としては、イオン交換などにより脱塩処理された純水が好ましく、具体的には電気伝導率が0.05〜1mS/m程度である。もちろん前記電気伝導率よりも低い場合あるいは高い場合であっても、混合対象物の塩濃度との関係で前記式(1)の範囲内にあれば良い。ただチキソトロピー性付与剤中の塩濃度が低い(すなわち粘土鉱物を分散させる水の電気伝導率が低い)ことにより、混合対象物中に含まれる塩濃度が高い場合でも、粘土鉱物が少量で物理ゲルを形成することができるため、適用範囲を広くすることができる点で前記電気伝導率の範囲とすることが好ましいのである。
本発明の物理ゲルの製造方法としては、混合する対象物として増粘剤を含まない水系塗料組成物を調製する工程と、前記チキソトロピー性付与剤を調製する工程と、該チキソトロピー性付与剤と前記水系塗料組成物とを体積比(x:y)で1:2〜1:10の範囲で混合する工程を有する。
第一の工程で、混合する対象物には必ずしも増粘剤を全く含まないことが要件ではないが、本発明のチキソトロピー性付与剤を添加することで増粘剤を添加する目的が達成されるため、敢えて二重に添加する必要はない。つまり通常の水系塗料組成物調製段階において、増粘剤として添加される成分として粘土鉱物を除いて、他の添加成分(残余成分)を混合した水溶液を調製するのである。
第二の工程では、前記粘土鉱物を純水などの比較的塩濃度の低い水に分散させチキソトロピー性付与剤を調製する。このとき、先の工程における水系塗料組成物中の塩濃度と、チキソトロピー性付与剤の塩濃度とは、式(1)で示す関係を有する。
前記第一の工程と、第二の工程はそれぞれ個別に調製する工程であり、どちらが先に行われても良い。
そして第三の工程として、前記各工程で調製されたチキソトロピー性付与剤と水系塗料組成物とを体積比(x:y)で1:2〜1:10の範囲で混合して、物理ゲルを製造する。この物理ゲルは、攪拌などのせん断応力を加えることで容易に液状化して、塗布時の操作性を向上させ、塗布された後は素早くゲル化して液だれを防止することができる。水系塗料は、有機溶媒系塗料に比較して溶媒の揮発速度が遅いために、特に塗布面での液だれが外観上の問題となりやすい。本発明の物理ゲルとすることによって、この問題を解決し良好な塗布面を形成することができるのである。
前記第三の工程において混合比率を規定しているが、これはあくまで目安であって混合後の物理ゲルの強度(せん断弾性率といっても良い)や、塗料の濃度との関係によって適宜調整することができる。
以下本発明をより具体的に明らかにするために、いくつかの例を示す。
(実施例1)
ヘクトライト(クニミネ工業株式会社製)0.1gをイオン交換水(電気伝導率0.0001mS/m)2gに分散させて、チキソトロピー性付与剤(a)を得た。体積分率は0.02である。またヘクトライトに塩が含まれているので(a)の塩濃度は0.01[M]以下である。
ヘクトライトを0.2gとした他は、同様にしてチキソトロピー性付与剤(b)を得た。体積分率は0.04、塩濃度は0.02[M]以下である。
前記の(a)および(b)をそれぞれ、墨汁(商品名:開明墨汁(開明株式会社製))5gに対して混合して物理ゲル(それぞれ(A)、(B)という)とした。一方、墨汁5gにイオン交換水2gを添加したものを比較として用いた(比較例1)。各混合物を0.05mL、スポイトによってガラス面に滴下し、ガラスを90°の傾きで傾斜させた。墨汁は水性塗料の代用品とみなし、ガラス面は被塗布対象とみなしている。なお、スポイトによって吸水・滴下する前には各混合物をガラス棒によって液状になるように攪拌した。また墨汁の塩濃度は0.01[M]以下であり、(a)および(b)を混合したのちの物理ゲルの塩濃度はそれぞれ0.01[M]以下および0.013[M]以下である。
図4にガラス面に滴下し傾斜させた各サンプルの60分経過後の写真を示す。写真は、左から比較例1、(A)、(B)の順に撮している。この結果から明らかなように、本発明のチキソトロピー性付与剤を用いることにより、液だれ防止に十分な効果を有することが判る。
(比較例2)
実施例1で用いた墨汁5.0gに、それぞれヘクトライト0.1gまたは、ヘクトライト0.2gを添加して増粘剤としての効果を調べた。ヘクトライト添加後の各墨汁(粘性のある液体状態であった)を(C)、(D)という。
図5には実施例1と同様にしてスポイトで滴下したのち、ガラス面を30°に傾斜させたときの各サンプルの液だれの程度を撮影した。写真は左から、ヘクトライト無添加の墨汁、(C)、(D)の順に示している。ガラスは水濡れ性が優れているので、墨汁は滴下後傾斜と同時に重力に従ってガラス面を流れていく。ヘクトライトの添加により粘度が増加したため若干の差はあるものの、液だれを防止するまでには至っていない。
(C)を実施例1の(A)と、(D)を同(B)と比較すると明らかなように、本発明のチキソトロピー性付与剤としたものを添加することによって、粘土鉱物(ヘクトライト)として同量を含むものであっても、液だれ防止に関して明らかに効果発現が期待できることが判る。しかも、実施例1ではガラス面を垂直に立てた場合であっても全く液だれが生じていないが、単に粘土鉱物を添加・混合した場合には、30°傾斜させただけであっても液の流れが確認されている。このことから、従来の方法よりも遙かに少量で物理ゲル化することがわかる。
(実施例2)
市販の水性塗料(商品名:水性スーパーコート黄色(株式会社アサヒペン社製))5.0gに対して、本発明例のチキソトロピー性付与剤(a)および(b)を、2.0g添加して物理ゲルを調製した。これを実施例1と同様にしてガラス面に滴下し、塗料の流れ方を調べた。その結果を図6に示す。
図6の(1)の写真は4種のサンプルに関して写真撮影の結果を示したもので、本発明のチキソトロピー性付与剤(a)および(b)を添加したものがそれぞれ(A1)及び(B1)、イオン交換水2.0gを市販水性塗料に添加したものが(E)、市販水性塗料そのままが(F)で示している。
液だれの観点からは、市販の水性塗料は元々防止効果を有しているので、ガラス面に滴下後傾斜させても液だれが生じることがないが、イオン交換水を加えて粘度を下げる(E)と液だれが生じることが判る。一方、本発明の物理ゲル(A1)および(B1)については液だれを生じることがなく、市販品と同等の液だれ防止効果を有することが判る。
また図6の(2)は、市販水性塗料の滴下部を乾燥した後(1)の状態を拡大写真で示している。この写真からは下方に塗料が偏って乾燥に至ったことが示されているが、(1)の写真から本発明の物理ゲル(B1)については偏りの程度がかなり軽減されていることが判る。すなわち塗料の塗布量が適度である場合には問題にならないと思われるが、塗布量を多くしてしまった場合などは、本発明のチキソトロピー性付与剤を用いた方が、液だれ防止と共に乾燥時における塗料の均一化が達成されることを示しているのである。
(実施例3)
実施例1で製造した本発明例の物理ゲル(A)と、比較例2の墨汁(C)に関して、せん断歪みに対するせん断応力を測定した。測定は二重円筒回転型レオメータ((株)ユービーエム社製)を用いた。外筒セルにサンプルを16mL入れ、内筒を挿入し、外筒セルを回転させることでサンプルにせん断変形を与え、内筒でトルクを検出した。
図7に本発明例の、図8に比較例の応力−歪み曲線を示した。本発明例では、図7に示すように低い加速度(この場合変形速度を意味し、極めて遅い)で変化させても、ゲルの構造にそれほど変化がないので歪み量の増加に比例して応力も増加する。また、加速度によらずほぼ同様の応力変化を示している。そしてある程度の歪み量に達すると構造が破壊されることにより流動性を獲得して、応力が低下する傾向を示した。
一方、比較例は加速度の増加に伴って、歪み量に対する応力の増加量が増えている。特に非常に遅い速度(図中○印で示す)で歪みを与える場合には殆ど応力を計測できないが、加速度の上昇とともに応力の上昇速度が上がっている。これは粘性液体の特徴であり、含有される粘土鉱物が増粘剤としての効果を有するのみで、本発明の目的とするようなチキソトロピー性は発現されていない。また、せん断応力の数値そのものも本発明例の100分の1程度と極めて低い応力であることが判る。
(実施例4)
実施例1に記載のチキソトロピー性付与剤(a)を液状の芳香剤(商品名:アロマオイルユーカリ(ランプベルジェ社製))5.0gに対して、本発明例のチキソトロピー性付与剤(a)を、2.0g添加して物理ゲル(A2)を調製した。また、比較として、イオン交換水2.0gを芳香剤5.0gに添加した後、ヘクトライト0.1gを混合した試料(比較例3)を作成した。
図9には、前記物理ゲル(A2)と比較例3の試料を、ガラス面上で室温にて放置したときの、経過時間に対する重量減少を測定した結果を示す。図より明らかに本発明例(A2)の方が、重量減少速度が遅いことが判る。これは、芳香剤を室内にて揮発させる際に、その揮発速度を従来よりも自由度をもって調整できることを示している。
(実施例5)
エチルアルコール5.0gに対して、本発明例のチキソトロピー性付与剤(a)を、2.0g添加して物理ゲル(A3)を調製した。このときの物理ゲルを撮影した写真が、図10に示されている。図10の(1)が形成時の物理ゲルで、(2)がこれに点火したときの様子である。図から明らかなように、エチルアルコールのような非水系であっても、本発明のチキソトロピー性付与剤と混合することで、固形化することができることが判った。
一方、比較として、エチルアルコール5.0gに対してイオン交換水2.0gを添加し、これにヘクトライト0.1gを添加後、混合したもの。エチルアルコール5.0gに対してヘクトライト0.1gを添加し、これにイオン交換水2.0gを添加後、混合したもの。それぞれについて得られた混合物の写真が図11に示されている。写真の左側がヘクトライトを最後に添加したもので、右側がイオン交換水を最後に添加したものである。
図11から明らかなように、各比較例では、いずれの場合もゲル化が進行せず、本発明のチキソトロピー性付与剤によってのみエチルアルコールのような液体をもゲル化させることができるのである。要するに構成成分および配合比率が同じであっても、その混合の仕方によって、全く性質の異なる組成物が得られることが判った。
本発明によれば、チキソトロピー性付与剤は安全性の高い粘土鉱物によって調製されており、種々の溶液と混合することによって、液体状態のものを物理ゲル化することができる。従って、固形状態で使用する方が適した場合にはその状態でも利用可能となるので、同一製品であっても、適用範囲を拡大することができる。また、従来使用されている粘土鉱物の使用量を低く抑えることで、水性塗料の液だれを防止することが可能であり、塗料乾燥後の表面状態を平滑な面とすることができる。

Claims (3)

  1. 粒子径10〜100nmの粘土鉱物を体積分率0.001〜0.1の範囲で塩濃度α[M]の水中に分散させてなるチキソトロピー性付与剤であって、
    前記チキソトロピー性付与剤x(L)を、混合対象物y(L)と混合するとき、混合対象物の塩濃度がβ[M]の場合、次式(1)
    0.001[M]≦(α・x+β・y)/(x+y)≦1[M]・・・(1)
    の関係であることを特徴とするチキソトロピー性付与剤。
  2. 前記粘土鉱物が、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイトから選択される一種以上であることを特徴とする請求項1に記載のチキソトロピー性付与剤。
  3. 前記対象物として増粘剤を含まない水系塗料組成物を調製する工程と
    請求項1又は2に記載のチキソトロピー性付与剤を調製する工程と、
    前記チキソトロピー性付与剤と前記水系塗料組成物とを体積比(x:y)で1:2〜1:10の範囲で混合する工程を有する、物理ゲルの製造方法。
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