以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。下記、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
<全体構成>
まず、図1を用いて、本発明の液体吐出装置である画像形成装置を含むシステムについて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷システム1の全体構成の一例を示す図である。印刷システム1は、インクジェット方式のインクジェット装置である画像形成装置2を備えている。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る印刷システム1は、ロール紙(記録媒体)Mdを搬入する搬入手段10と、搬入されたロール紙Mdを前処理する前処理手段20と、前処理されたロール紙Mdを乾燥させる乾燥手段30と、を有する。また、印刷システム1は、ロール紙Mdの表面に画像を形成する画像形成手段40と、画像が形成されたロール紙Mdを後処理する後処理手段50と、後処理されたロール紙Mdを搬出する搬出手段60と、維持回復手段90A,90Bとを有する。
本実施形態に係る印刷システム1は、搬入手段10によってロール紙である記録媒体Mdを搬入し、前処理手段20、及び乾燥手段30によって記録媒体Mdの表面を前処理、及び乾燥する。本例では、記録媒体Mdとして、ロール状に巻かれた連続紙であるロール紙Mdを例にして説明する。ロール紙である記録媒体Mdは、例えば切断可能なミシン目が所定間隔で形成された連帳紙、または連続帳票などの連続紙である。また、ロール紙におけるページは、例えば所定間隔のミシン目で挟まれる領域である。
また、印刷システム1の画像形成装置2は、画像形成手段40によって、前処理及び乾燥した後の記録媒体Mdの表面に画像を形成する。さらに、本実施形態に係る印刷システム1は、後処理手段50によって、画像が形成された記録媒体Mdを後処理する。その後、印刷システム1は、搬出手段60によって、ロール紙である記録媒体Mdを巻き取り、排出する、及び搬出する。
なお、本発明を用いることができる印刷システム1は、画像が形成される媒体の種類に応じて、後述する前処理手段20などのいずれか一つ、または複数を含まない構成としてもよい。
なお、記録媒体Mdは、ロール紙に限定されない。例えば、記録媒体Mdは、カット紙でもよい。
さらに、記録媒体Mdは、記録が可能な媒体であればよい。例えば、記録媒体Mdは、普通紙、上質紙、薄紙、厚紙、記録紙、OHP(Overhead Projector)シート、合成樹脂フィルム、及び金属薄膜などでもよい。
なお、実施形態は、画像形成手段40において、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の4色の吐出部(ヘッドモジュール)の場合に限定されない。例えば、実施形態は、グリーン(G)、レッド(R)、ライトシアン(LC)などその他の色に対応する吐出部を有するでもよい。さらに、実施形態は、ブラック(K)のみに対応する吐出部を有するでもよい。
なお、実施形態は、説明した画像形成装置の形態に限定されない。例えば、実施形態は、説明した画像形成装置以外のプリンタ、スキャナ、被写機、プロッタ、及びファクシミリなどにおいて、吐出ヘッド、インクヘッド、記録ヘッド、及びインクジェットなどの吐出部からインクなどの液滴を吐出する装置でもよい。
また、本発明は、記録媒体Mdの表面に画像を形成、印刷、印写、印字、または記録などをする装置に用いてもよい。
搬入手段10は、記録媒体Mdを前処理手段20などに搬送する手段である。搬入手段10は、本実施形態では、給紙部11と、複数の搬送ローラ12と、を有する。搬入手段10は、搬送ローラ12などを用いて、給紙部11の給紙ロールに巻き付けて保持された記録媒体Mdを搬入、及び移動し、前処理手段20(プラテン)などに搬送する。
前処理手段20は、画像が形成される前の記録媒体Mdを処理する手段である。前処理手段20は、本実施形態では、搬入手段10によって搬入されたロール紙Mdの表面を、前処理液で前処理する。前処理は、記録媒体Md表面に、インクを凝集させる機能を有する前処理液を均一に塗布する処理である。前処理液は、例えば水溶性脂肪族系有機酸を含有した処理液などである。
ここで、水溶性脂肪族系有機酸を含有した処理液とは、水分散性着色剤を凝集させる性質を有する処理液である。また、凝集するとは、水分散性着色剤粒子同士が吸着集合することである。
更に、本実施形態に係る前処理手段20は、前処理液に水溶性脂肪族系有機酸等のイオン性物質を加えることによって、水分散性着色剤の表面にイオンを吸着させることができる。これにより、前処理手段20は、水分散性着色剤の表面電荷を中和することができる。また、前処理手段20は、分子間力による凝集作用を増強し、水分散性着色剤を更に凝集させることができる。
前処理手段20は、前処理方法として、例えばブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などを用いることができる。
乾燥手段30は、ロール紙である記録媒体Mdを加熱などにより乾燥する手段である。乾燥手段30は、前処理手段20によって前処理された記録媒体Mdを乾燥させる前処理用乾燥部31と、後処理手段50によって後処理された記録媒体Mdを乾燥させる後処理用乾燥部32と、を有する。
前処理用乾燥部31は、例えばヒートローラ31hを有する。前処理用乾燥部31は、ヒートローラ31hを例えば50〜100℃に加熱し、前処理液を塗布された記録媒体Mdの表面をヒートローラ31hに接触させる。前処理用乾燥部31は、前処理液を塗布された記録媒体Mdの表面をヒートローラ31hにより加熱し、前処理液の水分を蒸発させ、記録媒体Mdを乾燥させることができる。後処理用乾燥部32は、前処理用乾燥部31と同様の構成である。
画像形成手段40は、ロール紙Mdに画像を形成する手段である。画像形成手段40は、本実施形態では、乾燥手段30によって乾燥された記録媒体Md上に液滴(以下、インクという。)を吐出することによって、記録媒体Mdの表面に画像を形成する。画像形成手段40の詳細は後述する。
後処理手段50は、画像が形成された後の記録媒体Mdを処理する手段である。後処理手段50は、画像形成手段40によって画像を形成された記録媒体Mdの表面を、後処理液で後処理する。後処理は、記録媒体Md上に斑点形状に後処理液を吐出する処理である。
画像形成手段40及び後処理手段50の近傍には、維持回復手段90A,90Bが設けられている。維持回復手段90A,90Bは、画像形成手段40、後処理手段50の各ヘッドのノズル及びノズル面の維持回復動作であるクリーニング、メンテナンス等を行う。維持回復手段90A,90Bの詳細は、図18、図19とともに後述する。
画像形成手段40と後処理手段50と維持回復手段90A,90Bとは筐体74の上に配置されている。ここで、インクジェットプリンタ本体である筐体74は、搬送ベルト81(図18参照)等を有する搬送ユニット80を備えている。
<画像形成手段>
図2は、本発明の一実施形態に係る画像形成手段の一例を説明する概略平面図である。
図2(a)は、本発明の一実施形態に係る画像形成手段の全体構成の一例を説明する図である。図2(a)は、フルライン型の記録ヘッドを例にして示している。
画像形成手段40は、ロール紙である記録媒体Mdの搬送方向Xmの上流からブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順で各色のヘッドモジュールを配置している。なお、実施形態は、図2の配置の順序であるブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に限られない。例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)などとしてもよい。また、色の組み合わせは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に限られない。色の組み合わせは、例えばブラック(K)の1色でもよい。また、色の組み合わせは、グリーン(G)、レッド(R)、及びライトシアン(LC)などの3色でもよい。
ブラック(K)のヘッドモジュール40K,40C,40M,40Yは、記録ヘッド40K−1、40K−2、40K−3、及び40K−4を記録媒体Mdの搬送方向Xmと直交する方向に千鳥状に配置する。各色のヘッドモジュール40K、40C,40M,40Yにおいて、各記録ヘッド40K−1、40K−2、40K−3、及び40K−4を千鳥状に配置することで、画像形成手段40は、画像形成領域の幅方向の、すなわち記録媒体Mdの搬送方向Xmと直交する方向の、全域に画像形成を行うことができる。なお、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の記録ヘッドは同様であるため、以下、ブラック(K)の記録ヘッドを例に説明する。
また、後処理手段50においても、ヘッドモジュール50Hで、4つの処理液吐出ヘッドを千鳥配置にてライン化しているため、搬送方向Xmと直交する方向の全域に、後処理液を吐出させることができる。
なお、図2(a)では、複数のヘッド千鳥配置にてライン化としている例を示しているが、ヘッドを直線状に複数並べることでライン化してもよいし、あるいは、1ヘッドにてライン化しても構わない。また、配色もこれに限ることはない。
図2(b)は、本発明の一実施形態に係る画像形成手段の要部である記録ヘッドの1つを説明する図である。
図2(b)に示すように、記録ヘッド40K−1は、複数の吐出口40Nを有する。吐出口40Nは、長手方向に配置され、ノズル列を構成している。
なお、記録ヘッド40K−1は、複数のノズル列を有してもよい。
<ヘッド>
次に、図3を用いて、記録ヘッドの内部構造について説明する。図3において、(a)は、記録ヘッド40K−1の液室長手方向の断面図であり、(b)は、(a)のSC1断面である液室短手方向の断面図である。なお、後処理手段50におけるヘッドも、図3に示す記録ヘッド40K−1と同様の構成を有しているものとする。
図3(a)において、画像形成手段40の記録ヘッド(40K−1等)は、吐出するインクの通路を形成する流路板41と、流路板41の下面(記録ヘッドの内部方向)に接合された振動板42と、流路板41の上面(記録ヘッドの外側方向)に接合されたノズル面(ノズル板)43と、振動板42の周縁部を保持するフレーム部材44とを備える。また、記録ヘッドは、振動板42を変形させるための圧力発生手段(アクチュエータ手段)45を有する。
本実施形態に係る記録ヘッドは、流路板41と、振動板42と、ノズル面43とを積層することによって、吐出口(ノズル)40Nに連通する流路であるノズル連通路40R及び液室(圧力室)40Fを形成している。また、記録ヘッドは、フレーム部材44を更に積層することによって、液室40Fにインクを供給するためのインク流入口40S及びインクを液室40Fに供給する共通液室40Cなどを形成している。
また、本実施形態では、フレーム部材44には、圧力発生手段45を収納する収容部、共通液室40Cとなる凹部、及び共通液室40Cに記録ヘッド外部からインクを供給するためのインク供給口40INが形成されている。
圧力発生手段45は、本実施形態では、電気機械変換素子である圧電素子45Pと、圧電素子45Pを接合固定するベース基板45Bと、隣り合う圧電素子45Pの間隙に配置された支柱部とを備えている。また、圧力発生手段45は、圧電素子45Pを駆動回路(駆動IC)に接続するためのFPCケーブル45C等を備えている。
ここで、圧電素子45Pは、図3(b)に示すように、圧電材料45Ppと内部電極45Peとを交互に積層した積層型圧電素子(PZT)を用いる。内部電極45Peは、複数の個別電極45Peiと複数の共通電極45Pecとを有する。内部電極45Peは、本実施形態では、圧電素子45Ppの端面に交互に個別電極45Pei又は共通電極45Pecを接続している。
以下に、記録ヘッドがノズル40Nからインクを吐出する動作(引き−押し打ち動作)を具体的に説明する。
記録ヘッドにおいて、先ず、圧電素子45P(圧力発生素子)に印加している電圧を基準電位から下げ、圧電素子45Pをその積層方向に縮小させる。また、記録ヘッドは、圧電素子45Pの縮小によって振動板42を撓み変形させる。このとき、記録ヘッドは、振動板42の撓み変形によって液室40Fの容積(体積)を拡大(膨張)させる。この動作により、記録ヘッドにおいて、共通液室40Cから液室40F内にインクを流入させる。
次に、記録ヘッドは、圧電素子45Pに印加している電圧を上げ、圧電素子45Pを積層方向に伸長させる。また、記録ヘッドは、圧電素子45Pの伸長によって、振動板42をノズル40N方向に変形させる。このとき、記録ヘッドは、振動板42の変形によって、液室40Fの容積(体積)を縮小(収縮)させる。この動作により、記録ヘッドは、液室40F内のインクに圧力を付加する。また、記録ヘッドは、インクを加圧することによって、吐出口40Nからインクを吐出(噴射)する。
その後、記録ヘッドは、圧電素子45Pに印加している電圧を基準電位に戻し、振動板42を初期位置に戻す(復元する)。このとき、記録ヘッドは、液室40Fの膨張によって液室40F内を減圧し、共通液室40C内から液室40F内にインクを充填(補充)する。次いで、記録ヘッドは、ノズル40Nのメニスカス面の振動が減衰(安定)した後、次のインクの吐出のための動作に移行し、上記の動作を繰り返す。
このように、記録ヘッドは、圧力発生手段45を用いて、振動板42を変形(撓み変形)する。これにより、記録ヘッドは、液室40Fの容積(体積)を変化させ、液室40F内のインクに作用する圧力を変化させ、その結果、記録ヘッドは、吐出口40Nから、インクを吐出させる。
なお、本発明を適用可能な記録ヘッドの駆動方法は、上記の例(引き−押し打ち)に限定されるものではない。例えば、記録ヘッドの駆動方法は、圧電素子45Pに印加する電圧(駆動波形)を制御することによって、引き打ち又は押し打ち等を行ってもよい。さらに、圧力発生手段45は、発熱抵抗体を用いて液室40F内のインクを加熱して気泡を発生させるサーマル型や、液室40Fの壁面に振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させた静電力によって振動板を変形させる静電型のものを用いてもよい。
以上により、本実施形態の印刷システム1の画像形成手段40では、複数の記録ヘッド40−1、40−2、40−3、及び40−4を夫々備えた、各色のヘッドモジュール40K,40C,40M,40Yを用いて、1回の記録媒体Md(ロール紙)の搬送動作で、画像形成領域の全域に、白黒又はフルカラーの画像を形成する。
<制御説明>
図4は、本実施形態の画像形成装置2のハードウェア構成例を示すブロック図である。画像形成装置2は、メイン制御基板100と、ヘッド中継基板200と、画像処理基板300とを備える。メイン制御基板100及び画像処理基板300を制御部400とする。
メイン制御基板100には、CPU(Central Processing Unit)101、FPGA(Field-Programmable Gate Array)102、RAM(Random Access Memory)103、ROM(Read Only Memory)104、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)105、モータドライバ106、駆動波形生成回路107などが実装されている。
CPU101は、画像形成装置2の全体の制御を司る。例えば、CPU101は、RAM103を作業領域として利用して、ROM104に格納された各種の制御プログラムを実行し、画像形成装置2における各種動作を制御するための制御指令を出力する。この際CPU101は、FPGA102と通信しながら、FPGA102と協働して画像形成装置2における各種の動作制御を行う。
FPGA102には、CPU制御部111、メモリ制御部112、I2C制御部113、センサ処理部114、モータ制御部115、記録ヘッド制御部116、および維持回復制御部117が設けられている。
CPU制御部111は、CPU101と通信を行う機能を持つ。メモリ制御部112は、RAM103やROM104にアクセスする機能を持つ。I2C制御部113は、NVRAM105と通信を行う機能を持つ。
センサ処理部114は、各種センサ130のセンサ信号の処理を行う。各種センサ130は、画像形成装置2における各種の状態を検知するセンサの総称である。各種センサ130には、記録媒体Mdの幅方向端部の位置を検知する用紙位置センサ、環境温度や湿度を検知する温湿度センサ、インクカートリッジのインク残量を検知する残量検知センサ、維持回復時の位置を検出する位置センサ99などが含まれる。なお、温湿度センサなどから出力されるアナログのセンサ信号は、例えばメイン制御基板100などに実装されるADコンバータによりデジタル信号に変換されてFPGA102に入力される。
モータ制御部115は、各種モータ140の制御を行う。各種モータ140は、画像形成装置2が備えるモータの総称である。各種モータ140には、記録媒体Mdを搬送するための副走査モータ、画像形成手段40及び後処理手段50を昇降させるモータ、維持回復手段90A,90Bを動作させるための維持モータなどが含まれる。
モータ制御部115は駆動ファイルを生成する。あるいはCPU101が駆動プロファイルを生成してモータ制御部115に指示する構成であってもよい。CPU101は、印字枚数のカウント等も行っている。
記録ヘッド制御部116は、ROM104に格納されたヘッド駆動データ、吐出同期信号LINE、吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成回路107に渡して、駆動波形生成回路107に共通駆動波形信号Vcomを生成させる。駆動波形生成回路(駆動波形生成部)107が生成した共通駆動波形信号Vcomは、ヘッド中継基板200に実装された後述の記録ヘッドドライバ210に入力される。
維持回復制御部117は、維持回復手段90A,90Bを動作させるための維持モータを制御するとともに、画像処理部310と放置時間カウント値を送信する。維持回復の詳細は、図18〜図20とともに説明する。
図5は、記録ヘッド制御部116、駆動波形生成回路107、記録ヘッドドライバ210の構成例を示すブロック図である。
記録ヘッド制御部は、吐出のタイミングのトリガーとなるトリガー信号Trigを受信すると、駆動波形の生成のトリガーとなる吐出同期信号LINEを駆動波形生成回路107へ出力する。さらに、吐出同期信号LINEからの遅延量に当たる吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成回路107へ出力する。駆動波形生成回路107は、吐出同期信号LINEと、吐出タイミング信号CHANGEに基づいたタイミングで共通駆動波形Vcomを生成する。
さらに、記録ヘッド制御部116は、画像処理基板300に設けられた後述の画像処理部310から画像処理後の画像データSD'を受け取り、この画像データSD'をもとに、記録ヘッド40K−1の各ノズルから吐出させるインク滴の大きさに応じて共通駆動波形信号Vcomの所定波形を選択するためのマスク制御信号MNを生成する。マスク制御信号MNは吐出タイミング信号CHANGEに同期したタイミングの信号である。そして、記録ヘッド制御部116は、画像データSD'と、同期クロック信号SCKと、画像データのラッチを命令するラッチ信号LTと、生成したマスク制御信号MNとを、記録ヘッドドライバ210に転送する。
記録ヘッドドライバ210は、シフトレジスタ211、ラッチ回路212、階調デコーダ213、レベルシフタ214、およびアナログスイッチ215を備える。
シフトレジスタ211は、記録ヘッド制御部116から転送される画像データSD'および同期クロック信号SCKを入力する。ラッチ回路212は、シフトレジスタ211の各レジスト値を、記録ヘッド制御部116から転送されるラッチ信号LTによってラッチする。
階調デコーダ213は、ラッチ回路212でラッチした値(画像データSD')とマスク制御信号MNとをデコードして結果を出力する。レベルシフタ214は、階調デコーダ213のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ215が動作可能なレベルへとレベル変換する。
アナログスイッチ215は、レベルシフタ214を介して与えられる階調デコーダ213の出力でオン/オフするスイッチである。このアナログスイッチ215は、記録ヘッド40K−1が備える上述したノズルに対応づけられた圧力発生素子(圧電素子)45Pごとに設けられ、各ノズルに対応する圧電素子45Pの個別電極45Peiに接続されている。また、アナログスイッチ215には、駆動波形生成回路107からの共通駆動波形信号Vcomが入力されている。また、上述したようにマスク制御信号MNのタイミングが共通駆動波形Vcomのタイミングと同期している。
したがって、レベルシフタ214を介して与えられる階調デコーダ213の出力に応じて適切なタイミングでアナログスイッチ215のオン/オフが切り替えられることにより、共通駆動波形信号Vcomを構成する駆動波形の中から各ノズルに対応する圧電素子45Pに印加される波形が選択される。その結果、ノズルから吐出されるインク滴の大きさが制御される。
<画像処理部>
図6は、第1実施形態に係る画像処理部310の構成例を示す機能ブロック図である。画像処理部310及び記録ヘッド制御部116は、液体吐出装置の制御部として機能する。
画像処理部310は、受け付けた画像データについて、階調処理、画像変換処理などを行い、記録ヘッド制御部716で処理可能な形式の画像データに変換する。そして、画像処理部310は、変換後の画像データを、記録ヘッド制御部716へ出力する。
詳細には、画像処理部310は、インターフェイス311と、階調処理部312と、階調データ記憶部313と、先データ読取部314と、微駆動決定部315と、微駆動指示信号生成部316と、画像変換部317と、を有する。
インターフェイス311は、画像データの入力部であり、画像データを送信する上位装置や、CPU101や、FPGA102との通信インターフェイスである。
階調処理部312は、受付けた多値の画像データに階調処理を行い、少値の画像データへ変換する。少値の画像データは、記録ヘッド40K−1が吐出する液滴の種類(大滴、中滴、小滴)に等しい階調数の画像データ(元画像データ)である。そして、階調処理部312は、例えばRAMで構成され、変換した画像データを、階調データ記憶部313上に1バンド分以上保持する。
1バンド分の画像データDnとは、例えば、少なくとも先データ読み取る分の先のデータ(例えば10dot先)のデータを含むものとする。あるいは、シリアル型画像形成装置の場合、例えば記録ヘッドが1度の主走査方向Xの走査で記録可能な最大の副走査方向の幅に相当する画像データを指す。
先データ読取部314は、カウント部であって、入力される元画像データにおける、所定の位置から、次に液体を吐出させる画素であるドット形成画素(印字パターン)までのドット非形成期間をカウントする。詳しくは、先データ読取部314は、所定期間毎に取り出し、各所定期間の開始直前位置から次にドット形成画素までのドット非形成期間、該所定期間におけるドット形成画素からドット形成画素までのドット非形成期間、及び、該所定期間におけるドット形成画素から所定期間終了位置までのドット非形成期間をカウントする。この際、印字の基準となるライン同期信号LSを基準に用いる。この動作により、印字ドットの数ライン前のパターンについて、先読みする。
微駆動決定部315は、先データ読み取り部がカウントした画素数に基づいて、ノズルのメニスカスを搖動させる微駆動波形又は微駆動波形よりも搖動量が大きい強微駆動波形を圧電素子45Pに入力するかどうかを決定する。
微駆動指示信号生成部316は、微駆動又は強微駆動が実行されることを画像変換部317に指示する。
画像変換部317は、階調データ記憶部313上の1バンド分の画像データについて、出力する画像単位で、大滴・中滴・小滴の画像データSDに、微駆動、強微駆動のデータを加えて画像データSD'に変換する。
この変換は、インターフェイス311を介して、画像データから取得した、印字順序、の情報に従い、記録ヘッド40K‐1の構成に合わせて変換する。
画像変換部317は、変換した画像データSD'を、インターフェイス311を介してメイン制御基板100のFPGA102へ出力する。
画像処理部310の機能は、FPGAやASIC等のハードウェア機能として実行されても良いし、画像処理部310内部の記憶装置に記憶された画像処理プログラムによって実施されるものであってもよい。
また、画像処理部310の機能は画像形成装置の内部ではなく、コンピュータにインストールされたソフトウェアで行ってもよい。
図7は、共通駆動波形を基に微駆動波形及び強微駆動波形を生成する波形例を示す。
図7で示す共通駆動波形Vcomは、図5で示す駆動波形生成回路107で生成され、吐出用の波形と、微駆動用(弱微駆動、通常微駆動)の波形と、強微駆動用の波形とを含んでいる。
波形選択信号(MN信号)MN0、MN1,MN2の結果に応じ、記録ヘッドドライバ210において、アナログスイッチ215がオンになる。アナログスイッチ215がオンしている期間、共通駆動波形を構成する所要の液吐出波形、微駆動波形、又は強微駆動波形等の波形要素が選択されて記録ヘッド40K−1の圧電素子45Pに印加される。
なお、図7では、簡略化して示しているが、液吐出波形として、例えば、大滴・中滴、小滴の3種類又はそれ以上の種類の波形を含んでいるものとする。
図8は、本発明の他の実施形態の画像形成装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図5に示した構成では、駆動波形生成回路107は、メイン制御基板100に設けられていたが、本実施形態では、駆動波形生成回路217は、記録ヘッドドライバ210Aの内部に、ノズルに対応づけられた複数の圧電素子45Pと同数、設けられている。さらに記録ヘッドドライバ210Aには、駆動波形生成回路217を制御するドライバ制御部216が設けられている。
本構成では、駆動波形生成回路217は、圧電素子45Pa〜45Pxにそれぞれ対応づけられて設けられているため、液吐出波形と微駆動波形と強微駆動波形のデータを含む画像データSD'を基に、各駆動波形生成回路217a〜217xで、圧電素子45Pa〜Pxに印加するための滴サイズや微駆動、強微駆動に適した駆動波形をそれぞれ生成する。
図9は、微駆動波形と強微駆動波形の、波形の違いを示す図である。図9において、(a)は波高値が異なる場合、(b)は立ち上げ、立ち下げ速度が異なる場合、(c)は立ち上げ、立ち下げ速度、及び保持期間が異なる場合を示す。なお、これらの波形はいずれの種類であってもよいが、メニスカスの振動エネルギーが異なる、微駆動波形と、強い微駆動波形(以下、強微駆動波形ともいう)の2種類の微駆動波形が生成される。
図9(a)に示す、波高値が異なる場合、強微駆動波形の波形を、通常の微駆動よりも波高値を強くする。強微駆動波形の波高値Vpp1を微駆動波形の波高値Vpp2よりも高くすることで、その他の立ち上げ、立ち下げ、保持期間が同じであっても、ノズルのメニスカスの搖動は大きくなる。
図9(b)に示す、立ち上げ、立ち下げ速度が異なる場合、強微駆動の波形を、通常の微駆動よりも立ち上げ、立ち下げに相当する図9(b)の斜めの角度を急峻にする。これにより保持期間が同じであっても、ノズルのメニスカスの搖動は大きくなる。なお、このとき強微駆動波形の波高値Vpp1を高くしてもよい。
図9(c)は、立ち上げ、立ち下げ速度、保持期間が異なる場合を示す。本例では、立ち上げ、立ち下げ、保持期間を変えて共振を利用する。なお、この例では、強微駆動波形では、立ち上げ、立ち下げが緩やかになることでその分エネルギーは小さいが、保持期間Vh2が長いことでエネルギーが増えている。この例では、ノズルのメニスカスの固有振動周期との共振を利用することでより強く攪拌することができる。なお、このとき、強微駆動波形の波高値Vpp1を高くしてもよい。
<微駆動制御>
下記、図10〜図13を用いて、通常微駆動と強微駆動との設定判断について説明する。
まず、前提として、本発明では、図9に示したようにエネルギーの異なる微駆動を2種類用意している。
強微駆動波形は、非印字部(画像非形成期間、ドット非形成期間)が長く続く場合、より多く間引けるように使用する。強微駆動により、ノズル内が強く攪拌されるため、一回の微駆動で長い時間インク増粘を抑止できる。
ただし、強微駆動は、強く攪拌するため、直後に吐出をするための画素が入ると吐出に悪影響を与えてしまう。そのため、必ず、強微駆動を実施させない期間である静定期間が必要となる。
そこで、非印字部があまりなく、印字部が間欠的に続く場合、そこまで攪拌をする必要がないので、ドット非形成期間に、通常の微駆動波形を用いることで、直後の液体を吐出する画素への影響を少なくする。
図10は、通常微駆動及び強微駆動の入力判断を説明する図である。図10について左から順に説明する。
(1):現在位置から1pix(pixel:画素)後に印字部がある場合、微駆動を実施しない。
(2):現在位置から2pix後に印字部がある場合、現在位置で微駆動を実施し、その次の画素では微駆動を実施しない。
(3):現在位置から3pix後に印字部がある場合、現在位置で微駆動を実施し、その次は実施しない。即ち、1pixおきに微駆動を実施する。通常の微駆動は最高駆動周波数の1/2に間引いても画像品質に影響を与えないためである。
この場合、印字直前に微駆動を実施することになるのだが、通常の微駆動であれば吐出に影響を与える可能性は低いので、問題ない。
(4)、(5):現在位置から4pixor5pix先に印字部がある場合も同様で1pixおきに微駆動を実施する。
(6):現在位置から印字部が6pix以上の場合は強微駆動を選択する。
なお、本例では、微駆動の判断閾値を2pix、強微駆動の判断閾値を5pixに設定しているが他の値に設定してもよい。
図11は、本発明の微駆動波形の入力制御フローの一例である。なお、強微駆動の判断閾値(例えば5pix)を第1のカウント数、微駆動の判断閾値(例えば、2pix)を第2のカウント数ともいう。
S101で、画像処理部310の階調処理部312は、多値画像データを受け取る。
S102で先データ読取部314は、現在位置から10pix先(所定期間)のデータを読み取る。このデータは、多値画像データから液吐出のために階調分けされた少値画像データであり、元画像データとする。
そして、S103で、現在位置から第1のカウント数(例えば5pix)以内に、液体を吐出させるドット形成画素である印字パターンがあるかどうか判別する。
S103でYesの場合、即ち、印字パターンが5pix以内に存在する場合、S104の通常微駆動フローに進む。
S103でNoの場合、即ち、印字パターンが5pixを超えて存在しない場合、S105で強微駆動の使用を選択する。詳しくは、微駆動決定部315は、元画像データにおける、ドット非形成期間が所定の第1のカウント数(5pix)を超えた場合、現在位置である所定期間の開始直前位置に、強微駆動波形を与えることを決定する。
この際、元画像データに含まれるドット形成画素(印字画素、印字部、印字パターン)の、直前の第1のカウント数以下の期間を、強微駆動波形を実施させない期間に設定する。
一方、S104で通常微駆動フローに進んだ場合、S106で、1pix先に印字パターンがあるか判断する。
S106でYesの場合、即ち、1pix先に印字パターンがある場合、S107で微駆動を入力しない。詳しくは、微駆動決定部315は、元画像データにおける、ドット非形成期間が第2のカウント数(2pix)未満である場合は、微駆動波形と強微駆動のどちらも与えないことを決定する。
S106でNoの場合、S108で2pix先に印字部があるかどうか判断する。
S108でYesの場合、即ち、1pix先に印字パターンがある場合、S109で、微駆動を1回入力する。詳しくは、微駆動決定部315は、元画像データにおける、ドット非形成期間が第1のカウント数(5pix)以下であって、第2のカウント数(2pix)である場合は、現在位置である所定期間の開始直前位置に、微駆動波形を1回与えることを決定する。
S108でNoの場合、S110で3pix先or4pix先に印字部があるか判断する。
S110でYesの場合、即ち、3pix先or4pix先に印字パターンがある場合、S111で微駆動を2回入力する。
また、S110でNoの場合、即ち、5pix先に印字パターンが有る場合、S112で微駆動を3回入力する。詳しくは、微駆動決定部315は、元画像データにおける、ドット非形成期間が第1のカウント数(5pix)以下であって、第2のカウント数(2pix)を超えた場合は、現在位置である所定期間の開始直前位置に、微駆動波形を与えて、その後のドット非形成期間において、第2のカウント数より1つ小さい第3の所定数画素(1pix)おきに微駆動を実施させるように微駆動波形を与えることを決定する。
なお、本例では、微駆動波形の回数を1pixおきに間引く例を示しているが、微駆動波形の駆動周波数を下げることで間引いてもよい。
そして、第3の所定数(1pix)画素おきに微駆動を実施する場合は、元画像データに含まれるドット形成画素の、直前の第2のカウント数(2pix)未満の期間でも、微駆動波形を実施させる(例えば、3pix先の2回目、5pix先の3回目)。
S113で、10pixが画像の最後かを判断する。
S113でNoの場合、即ち、今回判断した10pixの後にも元画像データが続いている場合は、S102の前に戻ってフローを繰り返す。
全ての元画像データに対して、上記判断が終了したら、S114で、印刷を終了する。
図12は、印字情報に基づいてノズルに対して微駆動を行った具体例を示す図である。図12(a)は、比較例におけるノズル列に対して一律の制御をした具体例であり、図12(b)は本発明においてノズル毎に微駆動制御をした具体例である。
図12において、グレー部分は微駆動が実施されたことを示し、黒部分は印字された画素を示す。
図12(a)の従来技術では、ノズル列において全てのノズルが一様に制御されているため、本来必要のないノズルでも微駆動が実施されてしまう。
本発明では、ノズルごとに微駆動を制御するため、各ノズルで画質を保つために必要最低限の微駆動が実施される。図12では、通常微駆動の判断閾値である第2のカウント値を3pixに設定した例を示している。
なお、図12の例では、読み取り分である所定期間を、6pixで読み取っているため、5pixを超えるドット非形成期間は存在しないため、強微駆動波形による強微駆動は実施されることはない。
図13に、印字情報に基づいてノズルに対して微駆動及び強微駆動を行った例を示す。
なお、図13では、強微駆動波形の判断閾値である第1のカウント値は5pix、微駆動波形の判断閾値である第2のカウント値は2pix、第2のカウント数より1つ小さい、間引く間隔である第3の所定数を1pixとする。
また、図10〜図12では、読み出した所定期間(10pix)のうち、現在位置として、最初の位置に着目して説明したが、所定期間内にドット形成画素の直後においても同様の判断を行う。
詳しくは、先データ読取部314は、入力される元画像データを、所定期間毎に取り出し、微駆動決定部は、各所定期間の開始直前位置から次に液体を吐出させるドット形成画素までのドット非形成期間、該所定期間におけるドット形成画素からドット形成画素までのドット非形成期間、及び、該所定期間におけるドット形成画素から所定期間終了位置までのドット非形成期間をカウントする。
そして、微駆動決定部315は、カウントしたドット非形成期間に基づいて、微駆動波形又は強微駆動波形を、複数の圧電素子45Pa〜45Pxのそれぞれに対して、与えるかどうかを決定する。
図13では、現在位置から10pix先の元画像データを所定期間として、それぞれの非印字部(ドット非形成期間)に基づいて、微駆動の選択を実施する。
例えば、ノズルN1、N3、N4、N5、N8、N9は、現在位置から5pix以内に印字部(ドット形成画素)がないため、現在位置において、通常よりも強力な強微駆動を入力する。
また、ドット形成画素の後に、ノズルN2、N7のように、吐出直後から非印字部が6pix以上続く場合には、通常よりも強い、強微駆動波形を入れる。
強微駆動を入力することで、微駆動の回数を減少することが可能となる。このとき、10pix先まで先に画像データを読みこむ機能により、その先印字部が5pix以内に入る場合には、強微駆動をやめ、静定させることで、その後の印字部の影響を軽減させる。
印字部の前5pix以内で実施しない理由としては、強微駆動の直後に吐出をすると、微駆動による振動が次の吐出に悪影響を与えるためである。そして、強微駆動後は10pix以上微駆動を実施しなくても画像品質を保てることがわかっている。
そのため、読み出した、所定期間10lineに続く、次の所定期間10lineへの影響を考慮して、所定期間の終了位置の直前5line(第1のカウント数以下の期間)は、図13中の強微駆動波形非入力期間として、強微駆動は入力しない。
また、現在位置からドット形成画素までの、非印字部が6pix未満の場合には、ノズルN2、N6、N7のように、現在位置に、通常の微駆動波形を入力し、その後、1pixおきに間引いて微駆動を実施する。
そして、ドット形成画素とドット形成画素との間の、非印字部が6pix未満であって、2pix以上の場合は、ノズルN1のように、通常の微駆動波形を入力し、その後、1pixおきに間引いて微駆動を実施する。
同様に、ドット形成画素から所定期間終了位置(10line)までの間に、非印字部が6pix未満であって、2pix以上の場合は、ノズルN3、N5、N6、N8、N9のように、通常の微駆動波形を入力し、その後、1pixおきに間引いて微駆動を実施する。
なお、図13では示していないが、非印字部が2pix未満の場合には微駆動・強微駆動のいずれも入力しないものとする。
上述のように、本発明では、画像領域内の余白部において、それぞれのノズルに対して、駆動波形の種類及び間隔を調整しているため、画像形成装置(液体吐出装置、液滴吐出装置)は、画像領域内における、微駆動を適切に実行しながら、微駆動によるインク増粘を防止できる。
上記の第1実施形態では、印字中の画像データに対応づけて、微駆動を実施する例を説明した。しかし、例えば、印字中であっても、画像形成領域以外のページ境界領域に画像形成に寄与しない液体の吐出である空吐出(フラッシング)を実施することがある。この印字中のフラッシングの直前に対しても、微駆動を実施すると好適である。
そこで、印字中において、画像データに基づく画像形成用のインク吐出と、フラッシング用のインク空吐出の両方の吐出に対して、微駆動を実施する第2実施形態について説明する。
<第2実施形態>
下記、図14〜図16を用いて、第2実施形態の微駆動制御について説明する。図14は、本発明の第2実施形態に係る画像処理部の機能ブロック図である。
本実施形態の画像処理部310Aは、図11に示す画像処理部310の構成要素に加えて、印字中空吐出設定部318と、上位画像変換部319を備えている。
印字中空吐出設定部318は、例えば、記録媒体Mdに対して予め定められた記録媒体上で設定されるページ間のタイミングで、ヘッド40K−1が、記録媒体Md上の定められた位置に到達する所定時間前に空吐出指示を出力する。空吐出指示には、予め設定された空吐出回数も含まれる。
あるいは、印字中空吐出設定部318は、画像データを基に、ページが途切れるタイミングを判断して、ヘッド40K‐1が記録媒体Md上の定められた位置に到達する所定時間前に空吐出指示を出力してもよい。
上位画像変換部319は、画像形成を指示する元画像データに、空吐出のデータ(空吐出パターン)を加えて、画像データDnとして出力する。
図15は、本発明の第2実施形態に係る微駆動波形の入力制御フローの一例である。本実施形態の空吐出は、ページ境界直後の、ページ先頭位置で実施される。そのため、ページ境界であって、次ページ先頭に空吐出指示を含む場合は、本フローが実施される。
S201では、現在位置から10pix先までの画像データを読みこむ。
S202で、10pix以内にページ内画像領域終端(空吐出前の画像形成領域終端)があるかどうか判断する。
ページ内画像領域終端がない場合は(S202でNo)、S203で、図11のS101〜S111に示す、微駆動・強微駆動印加を含む通常の印刷動作を実施する。
S202で、10pix以内にページ内画像領域終端が存在する場合、そのページ内画像領域終端が、画像データ全体の終端かどうかを確認する(S204)。
画像データ全体の終端の場合(S204でYes)は、S205で、図11のS101〜S111に示す、微駆動・強微駆動印加を含む通常の印刷動作を実施後、フローを終了する(END)。
一方、S202でページ内画素領域の終端であって(Yes)、且つ、S204で画像データ全体の終端ではない場合(No)、S206で、ドット形成画素(印字部、印字パターン)までは、図11のS103〜S111に示す、微駆動・強微駆動印加を含む通常の印刷動作を実施する。
S207で、印字部のタイミングで駆動波形を印加してインクを吐出させる。
そして、S208で印字部がページ内画像領域終端ではない場合は(No)、印字部の出力直後の非印字部(ドット非形成期間)の画素には、強微駆動波形を印加する(S209)。
印字部がページ内画像領域終端に存在する場合(S208でYes)、印字部の出力直後の非印字部には、微駆動波形を印加し、その後、1つおきに微駆動波形を印加する(S210)。
S211で次の10pixの画像データを読みこむ。そして、読みこみ期間の先頭に空吐出パターンが存在するかどうか確認する(S212)。
読みこみ期間の先頭に空吐出パターンが存在する場合は(S212でYes)、S221に進む。
今回読みこみ期間の先頭に空吐出パターンが存在しない場合は(S212でNo)、前回読みこみ期間において、強微駆動が印加されていたかどうか確認する(S213)。
前回読みこみ期間において、強微駆動が印加されていた場合(S213でYes)、強微駆動波形印加後、10pixになったら、微駆動波形を1つおきに印加する(S214)。
前回読みこみ期間において、強微駆動が印加されていなかった場合(S213でNo)、前回読みこみ期間の1つおきの微駆動から、1つおきの印加が続くように、微駆動波形を1つおきに印加する(S215)。
S211で読みこんだ10pix以内に空吐出パターンが存在する場合(S216でYes)、ステップS221に進む。
S211で読みこんだ10pix以内に空吐出パターンが存在しない場合(S216でNo)、S217へ進み、再び次の10pixの画像データを読みこむ。
そして、次の読みこみ期間の先頭に空吐出パターンがある場合は(S218でYes)、S221に進む。
次の読みこみ期間の先頭に空吐出パターンがない場合は(S218でNo)、S219で、前の読みこみ期間から続けてノズル毎に1つおきに微駆動波形を印加する。
そして、S217で読みこんだ10pix内に空吐出パターンがあるかどうかを確認し、存在する場合(S220でYes)は、S221に進む。
一方、S217で読みこんだ10pix内にも、空吐出パターンが存在しない場合は(S220でNo)、S217に戻り、再び画像データを取り込み、空吐出パターンが登場するまで、S217〜S220を繰り返す。
例えば、記録媒体に余白が大きく設定されている場合などは、ページ内画像領域終端の後に、10pix分経過しても、ページの境界に到達しない。その場合は、次のページが到達するまでは、2回目以降の読みこみ期間では、S217〜S220によって1つおきの微駆動を続けながら、余白期間で空吐出を待機する。
ページ境界に達し、S212、S216、S218、又はS220で空吐出パターンの印加タイミングに到達すると、S221で、次ページ先頭位置で、空吐出を実施する。
S221でページ間の空吐出実施後は、空吐出を実施したその読みこみ期間中は、微駆動や微駆動は実施しない。
そして、ページ間の空吐出制御は終了し、S201に戻り、次の10pix以降の画像データを読みこみ、通常印刷として、画像データに応じて適宜、微駆動、強微駆動の印加を実施する。
なお、空吐出を実行したページで先頭側の余白が大きい場合は、空吐出実施の次の読みこみ期間10pix内に印字部が存在しないこともあり得るが、その場合も、空吐出によってインクは十分にリフレッシュされるため、空吐出実施後の印字部待機中は、微駆動や強微駆動の印加は不要となる。
ここで、図15の制御を実施した場合の微駆動及び強微駆動の例について図16を用いて説明する。図16は、印字情報及びフラッシング情報に基づいて、ノズルに対して微駆動及び強微駆動を行った例を示す図である。
本実施形態では、図16では、図13同様に、現在位置から10pix先の元画像データを所定期間として、それぞれの非印字部(ドット非形成期間)に基づいて、微駆動の選択を実施する。図16において、下から10ドット目までは、図13と共通のため、11ドット目以降から説明する。
例えば、ノズルN1、N4は、10ドット目の第2の現在位置で吐出し、その後、ページ内画像終端まで印字部(ドット形成画素)がないため、第2の現在位置の、次の位置において、通常よりも強力な強微駆動を入力する。
ここで、前回の所定期間において、強微駆動が印加されたノズルについては、少なくとも10pix微駆動を実施しなくても画像品質を保てるものとする。
例えば、N7では、強微駆動後の印字部まで9pix離れているが、10pix以内は強微駆動の効果がまだ続いているため、印字部の前には微駆動を印加せずに、印字部のインクを吐出する。
一方、N2では、強微駆動後の印字部まで11pix離れているため、強微駆動の効果は終了したとして、印字部の直前の、強微駆動の印加から10pix目に微駆動を印加する。
また、ドット形成画素とドット形成画素との間の、非印字部が6pix未満であって、2pix以上の場合は、ノズルN6のように、通常の微駆動波形を入力し、その後、1pixおきに間引いて微駆動を実施する。
なお、ノズルN3で示すように、ドット形成画素とドット形成画素との非印字部が2pix未満の場合には微駆動・強微駆動のいずれも入力しないものとする。
そして、そのノズルにおける最後のドット形成画素が、ページ内画像領域終端よりも前に存在する場合は、ノズルN3、N5、N7、N8、N9のように、ドットの直後に、通常よりも強い、強微駆動波形を入れる。
また、N2、N6のように、ページ内画像領域終端に、そのノズルにおけるドット形成画素が存在する場合は、ドットの直後に通常の微駆動波形を入力し、その後、1pixおきに間引いて微駆動を実施する。
また、フラッシングへの影響を考慮して、ページ内画像領域終端よりも後の期間は、ページ内画像領域終端を含む読み込み期間である10pixにおいて、図16中の上側に示す、強微駆動波形非入力期間として、強微駆動は入力しない。
なお、図16では、余白が狭く、ページの境界がページ内画像領域終端を含む10pixの、すぐ次の10pix内に存在する例を示すが、余白が大きく設定されている場合などは、ページ内画像領域終端の後に、10pix分経過しても、ページの境界に到達しない。その場合は、次回以降の読みこみ期間において空吐出パターンに到達するまでは、2回目以降の読み込み期間(10pix)では、前の周期のそれぞれのノズルの1つおきの微駆動が続くように、1つおきの微駆動を続ける。
なお、本例では、空吐出前の非印字期間中に、前の周期での微駆動及び強微駆動の印加状態を考慮して、ノズル毎にそれぞれ1つおきの微駆動を印加する例を説明したが、空吐出前の非印字期間中に、全てのノズルに対して同じタイミングで1つおきの微駆動を印加してもよい。
また、本例では、空吐出前の非印字期間において、通常印刷中の非印字期間と同様に、1つおきの微駆動を与える例を示したが、空吐出前の非印字期間と通常印刷中の非印字期間とで、微駆動の印加間隔を異ならせてもよい。
上述のように、本発明の第2実施形態では、画像領域内の余白部、及びフラッシングの直前において、それぞれのノズルに対して、駆動波形の種類及び間隔を調整しているため、画像形成装置(液体吐出装置、液滴吐出装置)は、画像領域内における、微駆動を適切に実行しながら、微駆動によるインク増粘を防止できる。
ここで、上記の第1実施形態、第2実施形態では、印字中のノズル周辺のインク増粘を解消するように、画像形成用の吐出や、記録媒体へのフラッシングのための吐出の前に微駆動を制御する例を説明したが、印字しない期間であって、ノズルがキャップに覆われていても、ノズル周辺のインク増粘は発生する。そこで、放置状態から印字動作へ復帰する起動期間において、インク増粘を解消する空吐出及び微駆動について、下記第3実施形態で、説明する。
<第3実施形態>
下記、図17〜図21を用いて、本発明の第3実施形態の微駆動制御について説明する。
図17は、比較例の予備吐出の吐出曲がりと、本発明の予備吐出前の微駆動を説明する図である。図17(a)は比較例、図17(b)は本発明の状態を示す。
印字期間ではない待機状態において、ノズルがキャップに覆われていても、ノズル周辺のインク増粘は発生するため、図17(a)に示すように、キャップを外した(アンキャップ)直後に、いきなり吐出すると、吐出曲がりが発生する。吐出曲がりが発生すると、ノズル面43(図3(a)参照)を汚したり、記録媒体Mdの外の搬送路に着弾する恐れがあり、その場合、後から形成される記録媒体上の出力画像に悪影響を与える可能性がある。
そこで、本発明では、インクの増粘を解消するために、起動期間において、画像形成のための吐出が開始される前に、微駆動を挿入する。そして、微駆動終了後に空吐出(予備吐出)を実施することで吐出開始時の異常吐出を防止する。
なお、予備吐出として、図17では、キャップを外して、ロール紙である記録媒体Mdの余白領域に対して、空吐出(ラインフラッシング)を実施する例を説明したが、キャップ内に対して、空吐出を実施してもよい。
(維持回復部)
ここでキャップを含む維持回復部の構成について、図18、図19を用いて説明する。図18は、本発明の実施形態に係る画像形成手段と後処理手段の維持回復動作の説明図である。図18において、(a)は記録媒体へ印字中の図、(b)はキャッピング中の図である。
図18において、画像形成手段(複数色のヘッドモジュールの総称)40と後処理手段(後処理液出力部、ヘッド)50は搬送部である搬送ベルト81に対向して配置されている。搬送ベルト81は、矢印Xmの方向に、記録媒体Mdを搬送する。画像形成手段及び後処理工程部から、記録媒体Mdの搬送方向の上流(図18(a)右側)及び下流(図18(a)左側)に、維持回復手段(メンテナンス手段)90A及び90Bが設けられている。維持回復手段90A及び90Bは、夫々ライン型ヘッドからなる画像形成手段40及び後処理手段50の維持回復を行う。
画像形成手段40及び後処理手段50のヘッドモジュールは、上下に移動可能な構成である。ここで、画像形成手段である各色のヘッド40K‐1,40C‐1,40M‐1,及び40Y‐1等を含むヘッドモジュールは、キャリッジ46に設置されており、後処理液を吐出するヘッド50‐1等はキャリッジ56に設置されている。
キャリッジ46,56は、上下に移動することにより、図18(a)に示す、搬送ユニット80に近接した位置、即ち液体(インク・後処理液)を吐出する印刷位置である記録位置と、図18(b)に示す、搬送ユニット80から離間させた位置である離間位置との間で移動可能である。この離間位置は、画像形成手段40、後処理手段50ともに、維持回復手段90A、90Bにより維持を行う維持位置であり、次の動作まで待機する待機位置であるとともに、メンテナンスを行う回復位置である。
なお、この上下移動を行うため、例えば、キャリッジ46,56がキャリッジ位置移動手段47、57によって支持されている。そのキャリッジ位置移動手段47,57を動かすことにより、搬送ベルト81が備えられたプリンタエンジン72Eの筐体74に対して、キャリッジ46,56の位置が上下に移動する。なお、図18(a)ではキャリッジ位置移動手段47,57を矢印で示しているが、キャリッジ位置移動手段47,57としてレールとローラを組み合わせた移動機構を用いてもよいし、アーム等を用いて持ち上げてもよい。
搬送ユニット80では、搬送ベルト81は、モータにより回転される駆動ローラ83と従動ローラ82との間に掛け回されて周回移動し、記録媒体Mdは、支持部材84に支えられた搬送ベルト81の周回移動によって搬送される。ここで、支持部材84は、搬送中に用紙を吸着するために、吸引手段又は静電吸着手段を備えてもよい。
また、維持回復手段90Aは、係合部91Aとクリーニングユニット95Aとを備える。維持回復手段90Bは、係合部91Bとクリーニングユニット95Bとを備える。
係合部91Aは、メンテナンスが行われるときに、離間位置(図18(a)の点線部)にある画像形成手段としてのヘッドモジュール40K,40C,40M,及び40Yの各ヘッドに対向する対向領域へ往復復動するとともにヘッド40K‐1,40C‐1,40M‐1,及び40Y‐1等に選択的に係合する。係合部91Bは、メンテナンスが行われるときに、離間位置にある後処理工程部としてのヘッド50‐1に対向する対向領域へ往復復動するとともにヘッド50‐1に係合する。
下記、キャップ部92における、ヘッド40K−1と係合するキャップ92K−1等の数と、受け取る液体(インクの色・後処理液)を除いて、維持回復手段90A及び90Bは同様であるため、同じ構成については、画像形成手段としてインクを吐出するヘッド40−1、キャップ92−1を一例として説明し、色を示す語尾の記号を省略して説明する。
係合部91はキャップ部92、ワイパー93、及びキャップ部92とワイパー93とを固定する固定部材94を有する。キャップ部92Bは、離間位置をあるヘッド40−1に係合して、ヘッド40−1のノズル40N(図2(b)参照)を密閉しキャップする。メンテナンス時に、ヘッド40−1は、キャップ部92の各キャップ92−1が係合した状態でインクを吐出するいわゆる空吐出を行い、キャップ部92は、この空吐出によりヘッド40−1から吐出されたインクを受ける空吐受けとして機能する。ワイパー93は、離間位置にあるヘッド40−1から流出したインクを拭ってヘッド40−1をクリーニング(ワイピング)する。
クリーニングユニット95は、メンテナンス時における係合部91の往復動後、係合部91がホームポジションに復帰した状態で、キャップ部92、ワイパー93等のクリーニングを行う。クリーニングユニット95による係合部91のクリーニングは、その他、所定枚数の画像形成後など定期的に行っても良い。
維持回復手段90はまた、キャップ部92の各キャップ92−1が離間位置にあるヘッド40−1に係合した状態でヘッド40−1内部のインクを吸引し、インクをヘッド40−1の外部に流出させるための吸引手段としてのポンプ96を備えている。維持回復手段90はさらに、キャップ部92及びポンプ96を連結しヘッド40−1の外部にインクを排出する排出経路と、排出経路に接続されヘッド40−1の外部に流出した液体(インク・後処理液)を夫々貯める液体貯め部とを備えている。
図19は、本発明の実施形態に係る画像形成手段40、後処理手段50、及び維持回復手段90の平面図である。図19で示すように、維持回復手段90Aは、記録媒体搬送方向とは垂直の方向において、画像形成手段40としての各ヘッドモジュールの各ヘッド40−1等に対応するキャップ部92K,92C,92M,及び92Yの各キャップ92−1等を夫々備えている。維持回復手段90Bのキャップ部92Bでは、維持回復ヘッド50―1,50−2、50−3,50−4と同数のキャップ92B−1,92B−2,92B−3,92B−4を備えている。
また、維持回復手段90は、係合部91を移動させる移動手段を備えている。係合部91の移動手段として、係合部91を、ヘッドモジュール40,50の各ヘッドまで、往復動させる往復移動手段(ベルト97,プーリ98)と、往復移動手段を支持し係合部91と一体でキャップ部92を上下に駆動する上下移動手段(ベース部75)とを有している。
往復移動手段は、係合部91と一体の固定部材94と、その一部が固定部材94を固定した無端状のベルト97と、ベルト97を巻き掛けられた2つのプーリ98を有している。
往復移動手段はまた、維持回復手段90A,90B、ヘッドモジュール40,50の各ヘッドの真下に位置すること及びホームポジション(往復運動の起点となる位置)に位置することを検知する位置センサ99(99K,99C,99M,99Y及び99B)を有している。往復移動手段はまた、係合部91を下方から上述のように往復動自在に支持した支持台と、プーリ98を回転駆動する駆動手段としてのモータ等とを有している。
一方、上下移動手段としてベルト97を含む支持部をその上に載置され、筐体74の上面から、用紙移動空間を挟んで上方に配置固定されたベース部75を備えている。このベース部75A,75Bは、例えば、下面部が螺合した駆動軸としてのシャフトと、シャフトの他端部に固定されシャフトと一体で回転する複数のギヤと接続されており、複数のギヤは該ギヤを回転駆動させるステッピングモータと接続している。
したがって、往復移動手段としてモータを駆動してプーリ98を回転させベルト97を周回移動させることにより、係合部91を往復動させることが可能となる。この際、位置センサ99の何れかが固定部材94を検知するようにモータを駆動することで、キャップ部92K,92C,92M,及び92Y又は92Bを離間位置にある、ヘッドモジュール40K,40C,40M,及び40Yの何れか又は50に対向した位置またはホームポジションに正確に位置決め可能となっている。
また、キャップ部92K,92C,92M,及び92Yと92Bとを、位置センサ99により40K,40C,40M,又は40Yの何れか又は50に対向した位置に位置決めした状態で、ステッピングモータを所定量すなわち所定パルス数で駆動することでベース部75A,75Bを上方に移動する。これにより、係合部91A,91Bを所定量上方に移動させ、キャップ部92K,92C,92M,及び92Y又は92Bが対向している離間位置を占めたヘッドモジュール40K,40C,40M,40Yの何れか、又は50に係合させることが可能となっている。なお、ステッピングモータの代わりに上下方向におけるキャップ部92の位置を検知するセンサとモータとの組み合わせを用いても良い。
このような構成を用いて維持回復動作を行うときには、図18(b)に示すように、画像形成手段40及び後処理手段50が上方向に移動して離間位置となり、維持回復手段90A、90Bの係合部は離間位置にある各ヘッドの真下で停止し、係合する。
本発明では、維持回復動作として、画像形成手段40及び後処理手段50のヘッド40−1,50−1のノズル40N及び50Nを含むノズル面43が排出用のキャップ部92の各キャップ92‐1,92B‐1でキャッピングされ、キャップ部92を通してポンプ96A,96Bによってヘッド内のインク及び後処理液をノズル40N,50Nから吸引する。
そして、維持回復動作としてのノズル吸引が完了し、係合部91A,91Bがホームポジションに戻った後、再び画像形成手段40及び後処理手段50も元の下方へ移動し、搬送ユニット80上の印字位置(図18(a)の位置)に戻り、印字可能な状態となる。
図18、図19で説明した本実施形態では、画像形成手段のヘッドモジュール40K,40C,40M,及び40Yの各ヘッド40‐1と後処理工程手段の各ヘッド50‐1とは、夫々独立したキャリッジ46と56とに搭載されている。これにより、画像形成手段と後処理手段と別の時間に夫々メンテナンスすることが可能になる。
しかし、画像形成手段40と後処理手段50とを一体化して同じキャリッジに搭載してもよい。この構成では、維持回復手段90A,90Bも一体化されるので、移動機構が簡略化されるとともにキャップ部92A,92Bも簡略化される。この場合、一体化した係合部91がヘッドモジュール40K,40C,40M及び40Yの複数のヘッドと後処理手段50の複数のヘッドとをまとめてキャップをして、維持回復を行う。従って、維持回復部は、画像形成手段40又は後処理手段50の用紙搬送方向の上流又は下流にまとめて配置することができる。
<第3実施形態の画像処理>
図20は、本発明の第3実施形態に係る画像処理部310Bと維持回復制御部117Bの機能ブロック図である。
本実施形態の画像処理部310Bは、第2実施形態の画像処理部310Aの構成要素に加えて、起動時空吐出指示部321、起動時微駆動決定部322、起動時微駆動条件相関記憶部323を備えている。
また、維持回復制御部117Bは、放置時間カウント部171を備えている。また、維持回復制御部117Bには、位置センサ99からの検知情報が入力される。
放置時間カウント部171は、位置センサ99が、キャップ部92K,92C,92M,及び92Y又は92Bが、離間位置にあるヘッドモジュール40K,40C,40M,及び40Y又は50の各ヘッドに対向した位置にある期間中、キャップ状態にあるとして、放置時間をカウントする。
起動時空吐出指示部321は、印刷指示を受けると、画像形成による吐出の前に、空吐出(予備吐出)を実施させるように、空吐出指示をする。キャップの構成等に応じて、起動時の空吐出は、キャップとノズルとの係合を解除した後(アンキャップ後)に記録媒体Mdに対してインク滴を着弾させてもよいし、あるいは、キャップとノズルとの係合状態のまま、インク滴をキャップ内に吐出してもよい。
起動時微駆動条件相関記憶部323は、放置時間をレベル分けして、放置時間と相関づけて駆動条件を、記憶する。下記、表1は、起動時微駆動条件相関記憶部323で記憶する相関テーブルの一例である。
なお、表1は例として放置時間を3段階にレベル分けした例を示しているが、放置時間に応じて、より細分化して設定してもよい。
起動時微駆動決定部322は、カウントした放置時間に対応づけられた微駆動条件を呼び出して、起動時空吐出(予備吐出)の直前に、対応した微駆動条件で、微駆動を実施するように、設定する。
そして、微駆動指示信号生成部316Bは、起動時の。設定された種類の微駆動(微駆動又は強微駆動)で、設定された回数分、起動時微駆動指示信号を生成して出力する。また、複数回(例えば、表1に示す500回、1000回)、起動時微駆動を実施する場合は、駆動周波数に合わせて、所定間隔毎に実施するように指示する。
画像変換部317Bは、起動前では、画像データDnとして入力された空吐出データに、起動時微駆動のデータ(起動時微駆動指示信号)を加えて、画像データDn'として出力する。
<起動時制御フロー>
次、図20の制御構成を用いて実現する、第3実施形態の起動時制御フローについて、図21を用いて説明する。図21は、本発明の第3実施形態に係る起動時の制御フローの一例である。
まず最初に、S301で、印刷指示が入力される。
S302で、S301での印刷指示をトリガーとして、予備吐出である空吐出タイミングが設定される。
S303で、起動時微駆動決定部322は、放置時間カウント部171から、キャップの放置時間を呼び出す。放置時間が呼び出されたら、放置時間カウント部171は、カウント値をリセットする。
S304で、起動時微駆動決定部322は、起動時微駆動条件相関記憶部323に記憶された相関テーブルを参照して、放置時間に対応づけられた、微駆動波形の種類と、微駆動回数を設定する。例えば、上記の表1のように、放置時間が長いほど、微駆動回数は多く設定される、また、放置時間が長い場合には、微駆動波形の種類として、強微駆動が選択される。
S305で、キャップ係合状態を解除し(アンキャップ)、メンテナンス機構を移動、ヘッドユニットを移動する(図18(b)⇒図18(a))。
S306において、S302で設定された空吐出タイミングの直前に、S304で設定された、微駆動波形の種類と、微駆動回数で微駆動を実施する。
S307で、記録媒体Md上に空吐出(予備吐出)を実施する。
S308で、印刷を開始する。この印刷動作は、S309で印刷を終了するまで続ける。なお、印字中では、図11、図15に示すように、元画像データや、空吐出(フラッシングデータ)に基づいて、微駆動を実施すると好適である。
S309で印刷が終了したら(Yes)、S310でヘッドユニットを移動し、メンテナンス機構を移動し、ヘッドユニットのノズル面とキャップとを係合する(図18(a)⇒図18(b))。
S311で、位置センサ99がノズル面とヘッドユニットの係合を検知したら、S312で、放置時間カウント部171は、カウントを開始する。
そして、S312で印刷指示が通知されるまで放置時間をカウントし続けて、フローは終了する。
このように、本実施形態では、アンキャップから吐出が開始されるまでの間に微駆動を、放置時間に応じて最適化して、挿入することで、ノズル周辺のインクの粘度を調整し、予備吐出時の吐出曲がり等の吐出異常を予防することができる。
なお、図12の本フローでは、起動時に、空吐出用のインクをキャップから外して記録媒体上に予備吐出させる例を示しているが、起動時の予備吐出として、キャップ内にインクを吐出させてもよい。その場合は、S305のキャップ係合状態を解除(アンキャップ)、メンテナンス機構の移動、ヘッドユニットの移動の動作を、S306の微駆動印加及びS307の空吐出の後に実施する。このように、起動時に、記録媒体上ではなく、キャップ内に予備吐出を行う場合であっても、放置時間に応じて最適化した微駆動を挿入することで、ノズル周辺のインクの粘度を調整し、予備吐出時の吐出曲がり等の吐出異常を予防することができる。
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上記実施の形態では、本発明に係る記録ヘッドを備えた画像形成装置について説明したが、本発明に係る液体吐出ヘッド及びその制御は、画像形成装置を含めた液体を吐出する装置に広く適用することができる。
例えば、本例では、液体吐出ヘッドとして、インクを吐出する画像形成手段に含まれる記録ヘッド40K−1を例として説明したが、図1に示す前処理手段や後処理手段の吐出ヘッドにおいて、本発明の液体吐出ヘッドの微駆動制御を実施してもよい。
また、上記例では、搬送方向と直交する方向の全域に、液体を吐出させるライン型の液体吐出ヘッドを用いた画像形成装置を本発明の液体吐出装置を適用する例を説明したが、キャリッジが搬送方向と直交する方向に移動する、シリアル型画像形成装置において、本発明の液体吐出装置や、液体吐出ヘッドの微駆動制御を適用してもよい。
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
又、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生素子が限定されるものではない。例えば、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータ等を使用することができる。
又、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等は何れも同義語とする。