以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。便宜上、各図には互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。Z軸正方向は、投光装置の光投射方向である。
<実施形態1>
図1(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1に係る投光装置1の構成を示す平面図および側面図である。便宜上、図1(a)、(b)では、レーザ光源11a〜11cが、出射光軸を含み且つX−Z平面に平行な平面で切断された断面図で示されている。
投光装置1は、光を生成する光源装置2と、光源装置2により生成された光を投射するための投射光学系3とを備える。投射光学系3は、2つのレンズ3a、3bを備え、これらレンズ3a、3bによって光源装置2からの光を集光して目標領域へと投射する。なお、投射光学系3は、必ずしも2つのレンズ3a、3bから構成されなくともよく、たとえば、1つのレンズでもよく、2つ以上のレンズやミラーを備えていてもよい。また、投射光学系3は、凹面ミラーによって光源装置2からの光を集光する構成であってもよい。
光源装置2は、3つのレーザ光源11a〜11cと、3つのコリメータレンズ12a〜12cと、2つの反射プリズム13a、13bと、集光レンズ14と、波長変換部材16とを備えている。3つのコリメータレンズ12a〜12cと、集光レンズ14は、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光を波長変換部材16の入射面上において所定のビーム形状に収束させる整形光学系を構成する。光源装置2を構成する上記部材は、投射光学系3とともに、図示しないベースに設置されている。
レーザ光源11a〜11cは、それぞれ、青色波長帯(たとえば、450nm)のレーザ光を出射する。レーザ光源11a〜11cは、たとえば、半導体レーザからなっている。レーザ光源11a〜11cは、同一機種のレーザ光源である。レーザ光源11a〜11cから出射されるレーザ光の波長は、適宜変更可能である。レーザ光源11a〜11cは、必ずしも単一の発光領域を有するシングルエミッターの半導体レーザでなくともよく、たとえば、1つの発光素子に複数の発光領域を有するマルチエミッターの半導体レーザであってもよい。また、レーザ光源11a〜11cは、必ずしも単一波長帯のレーザ光を出射するものでなくともよく、たとえば、1基板に複数の発光素子がマウントされたマルチ発光の半導体レーザであってもよい。
図2は、レーザ光源11aの構成を示す斜視図である。図2には、レーザ光源11aに装備された缶体103の内部が透視された状態で示されている。他のレーザ光源11b、11cの構成も図2と同様である。
レーザ光源11aは、円盤状のベース101と、リードピン102と、缶体103と、ポスト104と、サブマウント105と、発光素子106と、を備える。リードピン102は、駆動電圧を印加するためのものである。ポスト104と、サブマウント105と、発光素子106は、缶体103に収容されている。ベース101にポスト104が設置され、ポスト104の上面にサブマウント105を介して発光素子106が設置されている。
発光素子106の下面と光導波路106aの上面に、リードピン102を介して電圧が印加されることにより、発光素子106の活性層から出射光軸110に沿ってレーザ光120が出射される。レーザ光120は、活性層に平行な方向および活性層に垂直な方向に所定の放射角で広がる。活性層に垂直な方向の放射角は、活性層に平行な方向の放射角よりも大きい。従って、出射されたレーザ光120のビーム形状は楕円である。一般に、この楕円の長軸はファスト軸と呼ばれ、楕円の短軸はスロー軸と呼ばれる。こうして発光素子106から出射されたレーザ光120は、缶体103の開口103aに設置された窓103bを介して出射される。W0は、発光素子106のストライプ幅、すなわち、発光部のスロー軸方向の幅である。
図1(a)、(b)に戻り、コリメータレンズ12a〜12cは、それぞれ、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光を平行光化する。コリメータレンズ12a〜12cは、出射面が外方に突出した曲面となっている。コリメータレンズ12a〜12cの出射面は非球面であり、コリメータレンズ12a〜12cの入射射面は、平面である。コリメータレンズ12a〜12cの入射面も、外方に突出した曲面であってもよい。あるいは、コリメータレンズ12a〜12cの出射面が平面で入射面が曲面であってもよい。
レーザ光源11aは、ファスト軸がX軸に平行となるように配置され、レーザ光源11b、11cは、ファスト軸がZ軸方向に平行となるよう、互いに対向して配置される。コリメータレンズ12aは、入射面(平面)がX−Y平面に平行となるように配置され、コリメータレンズ12b、12cは、入射面(平面)がY−Z平面に平行となるように配置される。これにより、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光は、全周において平行光化される。
反射プリズム13a、13bは、それぞれ、コリメータレンズ12b、12cを透過したレーザ光を、集光レンズ14に向かう方向に反射する。反射プリズム13a、13bに代えて、板状の反射ミラーを用いてもよい。
図1(a)に示すように、レーザ光源11b、11cは、互いに向き合うように配置されている。反射プリズム13a、13bは、レーザ光源11b、11cが向き合う方向、すなわち、X軸方向に隙間が生じるように配置されている。レーザ光源11a〜11cは、出射光軸がX−Z平面に平行な1つの平面に含まれるように配置されている。
レーザ光源11aから出射されたレーザ光は、コリメータレンズ12aにより平行光化された後、反射プリズム13a、13bの間の隙間を通って、集光レンズ14へと向かう。対向配置されたレーザ光源11b、11cの光軸は、反射プリズム13a、13bによって、X−Z平面に平行な方向に曲げられる。これにより、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光は、集光レンズ14の入射面に対し、X軸方向において互いに異なる位置に入射する。レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光が、ファスト軸に対応する方向に並ぶように、集光レンズ14に入射する。
以上の構成により、レーザ光源11a〜11cのパッケージやキャップ外形に制限されることなく、3つのレーザ光を接近させることが可能となる。その結果、集光レンズ14に入射する3つの平行光を束ねた光束の全幅を小さくできる。これにより、集光レンズ14以降の光学系のコンパクト化が可能となると共に、光学系が有する収差の影響を小さくすることができる。
レーザ光源11aから出射されたレーザ光は、集光レンズ14の入射面の中央位置に入射する。レーザ光源11b、11cから出射されたレーザ光は、それぞれ、集光レンズ14の入射面の中央位置からX軸正負の方向に所定距離だけずれた位置に入射する。
集光レンズ14は、入射した平行光を1点に収束させる光学作用を有する。集光レンズ14の入射面はZ軸負側に突出した非球面であり、集光レンズ14の出射面は、Z軸に垂直な平面である。集光レンズ14の出射面も、Z軸正側に突出した曲面であってもよい。あるいは、集光レンズ14の入射面が平面で出射面が曲面であってもよい。集光レンズ14は、光軸がZ軸に平行となるように配置されている。レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光は、集光レンズ14によって、波長変換部材16の入射面上に収束される。
光偏向器15は、集光レンズ14を駆動することにより、波長変換部材16に対してレーザ光を走査させる。本実施形態1では、光偏向器15は、集光レンズ14をY軸に平行な回動軸L1の回りに回動させることにより、集光レンズ14を透過したレーザ光の進行方向を変化させる。集光レンズ14は、中立位置において、光軸がZ軸に平行となるように配置される。光偏向器15は、集光レンズ14を透過したレーザ光をそのまま通過させるための開口を備えている。光偏向器15の構成は、追って、図4(a)、(b)を参照して説明する。
波長変換部材16は、集光レンズ14によってレーザ光が集光される位置に配置されている。波長変換部材16は、長方形形状の板状の部材であり、入射面がX−Y平面に平行となるように設置されている。上記のように集光レンズ14が回動軸L1について回動することにより、波長変換部材16は、レーザ光によって長手方向に走査される。実施形態1では、波長変換部材16として透過型の波長変換部材が用いられる。
波長変換部材16は、入射したレーザ光の一部を、青色波長帯とは異なる波長に変換して、Z軸方向に拡散させる。波長変換されなかった他のレーザ光は、波長変換部材16によってZ軸方向に拡散される。こうして拡散された2種類の波長の光が合成されて、所定の色の光が生成される。各波長の光は、投射光学系3に取り込まれて、目標領域に投射される。
実施形態1では、波長変換部材16によって、レーザ光の一部が、黄色波長帯の光に変換される。波長変換後の黄色波長帯の拡散光と、波長変換されなかった青色波長帯の散乱光とが合成されて、白色の光が生成される。なお、波長変換後の波長は黄色波長帯でなくてもよく、生成される光の色は、白以外の色であってもよい。波長変換部材16の構成は、追って、図5(a)、(b)を参照して説明する。
図3(a)〜(c)は、波長変換部材16の入射面における3つのレーザ光の集光状態を模式的に示す図である。図3(a)〜(c)は、光偏向器15の集光レンズ14が中立位置にある場合の各レーザ光のビームスポットの状態を示している。
波長変換部材16の入射面は、集光レンズ14の焦点位置付近に配置されている。すなわち、集光レンズ14と波長変換部材16との間の光路長は、集光レンズ14の焦点距離に略等しくなるように調整されている。したがって、図1(a)、(b)の構成において、レーザ光源11a〜11cの光軸が、集光レンズ14の入射位置において、何れも、Z軸に平行で、且つ、X−Z平面に平行な同一平面に含まれる場合、レーザ光源11a〜11cから出射された各レーザ光は、波長変換部材16の入射面上において、略同じ位置に集光される。
この場合、各レーザ光のビームスポットB1a〜B1cは、図3(a)に示すように、波長変換部材16の入射面上において、略重なった状態となる。ビームスポットB1a〜B1cは、それぞれ、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光のビームスポットである。
これに対し、レーザ光源11a〜11cの光軸が、集光レンズ14の入射位置において、X−Z平面に平行な同一平面に含まれ、且つ、互いに非平行である場合、各レーザ光のビームスポットB1a〜B1cは、図3(b)に示すように、波長変換部材16の入射面上において、走査方向(X軸方向)に互いに離間する。たとえば、レーザ光源11aの光軸が集光レンズ14の光軸に一致し、レーザ光源11b、11cの光軸が、集光レンズ14の入射位置においてZ軸に平行な状態から互いに離間する方向に傾くように、集光レンズ14よりも前段側の光学系のレイアウトが調整されると、ビームスポットB1a〜B1cは、図3(b)に示すように、波長変換部材16の入射面上において、走査方向(X軸方向)に互いに離間する。
なお、集光レンズ14の入射位置において、レーザ光源11b、11cの光軸が、レーザ光源11aの光軸に対して、Y−Z平面に平行な方向に傾き、且つ、互いに非平行となるように、集光レンズ14よりも前段側の光学系のレイアウトが調整された場合、各レーザ光のビームスポットB1a〜B1cは、図3(c)に示すように、波長変換部材16の入射面上において、走査方向(X軸方向)に垂直な方向にずれる。
このように、集光レンズ14の入射位置におけるレーザ光源11a〜11cの光軸の状態を調整することにより、波長変換部材16の入射面上におけるビームスポットB1a〜B1cの重なり具合を調整することができる。
なお、本実施形態では、コリメータレンズ12a〜12cの焦点距離と、集光レンズ14の焦点距離とによって光学系の倍率が設定される。このため、ビームスポットB1a〜B1cの形状は、コリメータレンズ12a〜12cの焦点距離と、集光レンズ14の焦点距離とによって決定される。
図4(a)、(b)は、それぞれ、光偏向器15の構成を示す斜視図および断面図である。図4(b)には、X−Z平面に平行な平面で、図4(a)の光偏向器15をY軸方向の中央位置において切断したA−A’断面図が示されている。
図4(a)、(b)を参照して、光偏向器15は、電磁力を利用して集光レンズ14を駆動する構成となっている。ハウジング201に、電磁駆動のための構成部材が設置されている。
ハウジング201は、X軸方向に長い直方体形状を有する。ハウジング201の上面には、平面視において長方形の凹部201aが形成されている。また、ハウジング201には、X軸正負の縁の上面に、それぞれ、ボス201bが形成されている。2つのボス201bは、ハウジング201のZ軸方向の中間位置に配置されている。ハウジング201は、剛性が高い金属材料からなっている。
ハウジング201の上面に、枠状の板バネ202が設置される。板バネ202は、枠部202aと、支持部202bと、2つの梁部202cと、2つの孔202dとを有する。
X軸方向の中間位置において、枠部202aからY軸方向に平行に延びるように、2つの梁部202cが形成され、これら梁部202cによって、枠部202aと支持部202bとが連結されている。支持部202bは、平面視において長方形であり、支持部202bのX軸方向の中間位置において、2つの梁部202cが支持部202bに繋がっている。X軸負側の孔202dは、ボス201bと同様、平面視において円形で、X軸正側の孔202dは、平面視においてX軸方向に長い形状である。板バネ202は、Y軸方向に対称な形状であり、また、2つの孔202dを除いてX軸方向に対称な形状である。板バネ202は、可撓性の金属材料により一体形成されている。
2つの孔202dは、それぞれ、2つのボス201bに対応する位置に設けられている。孔202dにボス201bが嵌められた状態で、4つのネジ203により、板バネ202がハウジング201の上面に固定される。支持部202bの上面に集光レンズ14が設置される。2つの梁部202cを繋いだ軸が、集光レンズ14の回動軸L1となる。
図4(b)に示すように、支持部202bには、集光レンズ14を透過したレーザ光を通すための開口202eが形成されている。また、ハウジング201にも、集光レンズ14を透過したレーザ光を通すための開口201cが形成されている。
レーザ光源11a〜11cからのレーザ光は、X軸方向に並ぶように集光レンズ14に入射する。レーザ光源11aからのレーザ光が集光レンズ14の中央位置に入射する。すなわち、回動軸L1とレーザ光源11aからのレーザ光の中心軸とが交差するように、レーザ光源11aからのレーザ光が、集光レンズ14に入射する。
支持部202bの下面にコイル204が装着される。コイル204は、平面視において長方形の角が丸められた形状に周回している。コイル204は、長辺の中間位置が回動軸L1に一致するように、支持部202bの下面に設置される。コイル204、支持部202bおよび集光レンズ14が、光偏向器15の可動部を構成する。
コイル204のX軸正側およびX軸負側の部分をそれぞれX軸方向に挟むように、磁石205および磁石206の組が2つ配置される。磁石205と磁石206は、ヨーク207に設置され、ヨーク207が、ハウジング201の凹部201aの底面に設置されている。磁石205、206は、磁極面における磁束密度が略均一の永久磁石である。
X軸正側の磁石205、206によって生じる磁界の向きと、X軸負側の磁石205、206によって生じる磁界の向きは、同じである。たとえば、X軸正側の磁石205は、N極がコイル204に対向し、X軸負側の磁石205は、S極がコイル204に対向する。また、X軸正側の磁石206は、S極がコイル204に対向し、X軸負側の磁石206は、N極がコイル204に対向する。このように磁極(磁界の向き)を調整することにより、コイル204に駆動信号(電流)が印加されると、回動軸L1周りの駆動力がコイル204に励起される。これにより、集光レンズ14が、回動軸L1を軸として回動する。
図5(a)は、波長変換部材16の構成を模式的に示す側面図である。
波長変換部材16は、基板301の上面に、ダイクロイック膜302と、蛍光体層303とを積層した構成となっている。
基板301は、たとえば、光透過性の材料などからなっている。ダイクロイック膜302は、青色波長帯の光を透過し、黄色波長帯の光を反射する。
蛍光体層303は、蛍光体粒子303aをバインダ303bで固定することにより形成される。蛍光体粒子303aは、レーザ光源11a〜11cから出射された青色波長帯のレーザ光が照射されることによって黄色波長帯の蛍光を発する。蛍光体粒子303aとして、たとえば、平均粒子径が1μm〜30μmの(YnGd1−n)3(AlmGa1−m)5O12:Ce(0.5≦n≦1、0.5≦m≦1)が用いられる。また、バインダ303bとして、ポリメチルシルセスキオキサンなどのシルセスキオキサンを主に含む透明材料が用いられる。
さらに、蛍光体層303の内部に、ボイド303cを設けることが好ましい。これにより、内部に侵入したレーザ光をより効率的に散乱させて、光源装置2から取り出すことができる。また、ダイクロイック膜302付近にボイド303cが存在することにより、ダイクロイック膜302の表面によるエネルギーロスを低減しつつ、効果的にレーザ光と蛍光を散乱させることができる。蛍光体層303には、さらに、強度および耐熱性を高めるためのフィラー303dが含まれる。
レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光は、Z軸負側から基板301に入射する。レーザ光は、基板301を透過して、図5(a)に示す励起領域R1に入射し、蛍光体層303の表面または内部で、散乱、吸収される。このとき、レーザ光の一部は、蛍光体粒子303aにより黄色波長帯の光に変換されて、蛍光体層303から放射される。このとき、ダイクロイック膜302へと向かう黄色波長帯の光は、ダイクロイック膜302により反射されて、Z軸正方向に向かい、蛍光体層303から放射される。また、レーザ光の他の一部は、黄色波長帯の光に変換されずに散乱されて青色波長帯の光のまま蛍光体層303から放射される。このとき、各波長帯の光は、蛍光体層303内を伝搬しながら散乱されるため、励起領域R1よりもやや広い発光領域R2から放射される。
図5(b)は、波長変換部材16に対するレーザ光の走査状態を模式的に示す平面図である。
波長変換部材16は、平面視において、X軸方向に長い長方形の形状を有する。波長変換部材16は、光偏向器15により集光レンズ14が回動されることにより、レーザ光でX軸方向に走査される。集光レンズ14は、X−Z平面に平行な中立位置から両方向に所定の角度範囲で回動される。図5(b)において、B1は、上記のようにレーザ光源11a〜11cから出射された各レーザ光のビームスポットB1a〜B1cが統合されたものである。ビームスポットB1は、波長変換部材16の入射面(Z軸負側の面)を、幅W1において往復移動する。
入射面上におけるビームスポットB1の領域は、図5(a)の励起領域R1に対応する。波長変換部材16の入射面をビームスポットB1が移動する間に、ビームスポットB1の領域よりもやや広い発光領域R2から青色波長帯の拡散光と黄色波長帯の拡散光がZ軸正方向に放射される。
こうして放射された2つの波長帯の光が、図1(a)、(b)に示した投射光学系3により取り込まれ、目標領域に投射される。これにより、青色波長帯の光と黄色波長帯の光が合成された白色の光が、投光装置1から目標領域に投射される。
<実施形態1の効果>
以上、本実施形態1によれば、以下の効果が奏される。
集光レンズ14を駆動してレーザ光を走査させる構成であるため、波長変換部材16上におけるビーム形状とレーザ光の走査範囲(幅W1)とを考慮して、集光レンズ14の焦点距離を設定すればよい。よって、集光レンズ14から波長変換部材16までの光路長が過度に長くなることを抑制でき、結果、光源装置2および投光装置1の小型化を図ることができる。また、集光レンズ14が光を偏向させるための手段として共用されているため、部品点数を削減でき、光学系を簡素化することができる。
図4(a)、(b)に示したように、光偏向器15は、電磁アクチュエータからなっており、集光レンズ14を回動軸L1について回動させる構成となっている。これにより、比較的大きな駆動力で集光レンズ14を駆動でき、集光レンズ14を所望の振り幅で円滑に回動させることができる。
図1(a)、(b)に示したように、光源装置2は、3つのレーザ光源11a〜11cを備え、これらレーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光が、ファスト軸に対応する方向に並ぶように、集光レンズ14に入射される。一般に、レーザ光源11a〜11cから出射されるレーザ光は、ファスト軸方向において光強度がガウス分布に略整合するシングルモードとなり、スロー軸方向において複数のピークを持つ分布となる。したがって、上記のように、ビーム品質が高いファスト軸方向にレーザ光を並べて集光レンズ14で集光させることにより、波長変換部材16上において、ビーム品質の悪いスロー軸方向にスポットを悪化させることなく、ファスト軸方向においてレーザ光を所望のスポット形状に収束させることができる。
また、このように3つのレーザ光源11a〜11cを用いることにより、波長変換部材16の入射面に照射されるレーザ光の光量を高めることができ、目標領域に高い光量の光を投射することができる。
<実施形態2>
図6(a)、(b)は、それぞれ、実施形態2に係る投光装置1の構成を示す平面図および側面図である。
実施形態2の投光装置1は、光源装置2の構成として、コリメータレンズ12a〜12cによって整形されたレーザ光のビームサイズ(3つのレーザ光全体のビーム幅)を、少なくともファスト軸に対応する方向に縮小して光偏向器15に導く縮小光学系20をさらに備えている。
縮小光学系20は、凸レンズ21と凹レンズ22により構成される。コリメータレンズ12a〜12cによって平行光化された3つのレーザ光は、凸レンズ21によりビームサイズが縮小された後、凹レンズ22によって再び平行光化される。すなわち、凸レンズ21により3つのレーザ光全体のビーム幅が縮小される。これにより、集光レンズ14の有効径を小さくでき、集光レンズ14より後段側の光学素子も小型化できる。その他の構成は、実施形態1と同様である。
図7(a)、(b)は、それぞれ、縮小光学系20の構成例を示す図である。
図6(a)に示した縮小光学系20は、図7(a)の構成となっている。凸レンズ21の焦点距離はF1であり、凹レンズ22の焦点距離はF2である。焦点距離F2は焦点距離F1よりも小さい。凹レンズ22は、凸レンズ21と焦点位置FP0を共有するように配置される。これにより、凹レンズ22によってレーザ光が平行光化される。凸レンズ21と凹レンズ22は、光軸が集光レンズ14の光軸に一致するように配置される。
図7(b)の構成例では、凹レンズ22に代えて凸レンズ23が配置される。凸レンズ23の焦点距離F3は焦点距離F1よりも小さい。凸レンズ23は、凸レンズ21と焦点位置FP0を共有するように配置される。これにより、凸レンズ23によってレーザ光が平行光化される。凸レンズ21と凸レンズ23は、光軸が集光レンズ14の光軸に一致するように配置される。
本実施形態2によれば、縮小光学系20によりレーザ光のビームサイズが縮小されるため、縮小光学系20より後段側に配置される光学素子を小型化できる。縮小光学系20に入射する前後のビーム幅をそれぞれBW1、BW2とすると、図7(a)の構成では、BW1:BW2=F1:F2となり、図7(b)の構成では、BW1:BW2=F1:F3となる。このようにビームサイズが縮小されることにより、後段側の光学素子が小型化されるため、光学系に各光学素子をより円滑に配置でき、また、光学系をコンパクト化することができる。
なお、縮小光学系20を構成する凸レンズ21および凹レンズ22(または凸レンズ23)は、少なくともファスト軸(X軸)方向の入射ビーム幅を縮小する目的で用いられるので、X−Z平面に平行な方向のみ曲面を持つシリンドリカルレンズで構成することができる。
なお、本実施形態2において、波長変換部材16に対しレーザ光を2次元状に走査させる場合、光偏向器15は、以下のように変更される。
図8は、実施形態2の変更例に係る光偏向器15の構成を示す斜視図である。また、図9(a)、(b)は、それぞれ、実施形態2の変更例に係る光偏向器15の構成を示す断面図である。図9(a)には、X−Z平面に平行な平面で図8の光偏向器15をY軸方向の中央位置において切断したB−B’断面図が示され、図9(b)には、Y−Z平面に平行な平面で図8の光偏向器15をX軸方向の中央位置において切断したC−C’断面図が示されている。
図8および図9(a)、(b)を参照して、ハウジング211は、X軸方向に長い直方体形状を有する。ハウジング211の上面には、平面視において長方形の凹部211aが形成されている。ハウジング211は、剛性が高い金属材料からなっている。
ハウジング211の上面に、枠状の板バネ212が設置される。板バネ212は、外枠部212aと、内枠部212bと、2つの梁部212cと、支持部212dと、2つの梁部212eとを有する。Y軸方向の中間位置において、外枠部212aからX軸方向に平行に延びるように、2つの梁部212cが形成され、これら梁部212cによって、外枠部212aと内枠部212bとが連結されている。また、X軸方向の中間位置において、内枠部212bからY軸方向に平行に延びるように、2つの梁部212eが形成され、これら梁部212eによって、内枠部212bと支持部212dとが連結されている。
内枠部212bは、平面視において長方形の角が丸められた輪郭を有し、内枠部212bのY軸方向の中間位置において、2つの梁部212cが内枠部212bに繋がっている。また、支持部212dは、平面視において長方形の輪郭を有し、支持部212dのX軸方向の中間位置において、2つの梁部212eが支持部212dに繋がっている。板バネ212は、X軸方向およびY軸方向に対称な形状である。板バネ212は、可撓性の金属材料により一体形成されている。
外枠部212aをハウジング211の上面に載せた状態で、4つのネジ213により、板バネ212がハウジング211の上面に固定される。支持部212dの上面に集光レンズ14が設置される。2つの梁部212eを繋いだ軸が、上記実施形態1と同様、レーザ光を波長変換部材16の長手方向に走査させるための、集光レンズ14の回動軸L1となる。また、2つの梁部212cを繋いだ軸が、波長変換部材16におけるレーザ光の走査ラインを変更するための、集光レンズ14の回動軸L2となる。
なお、上記実施形態1と同様、レーザ光源11aからのレーザ光は、集光レンズ14の中央位置に入射する。すなわち、回動軸L1、L2が交わる位置をレーザ光源11aからのレーザ光の中心軸が貫くように、レーザ光源11aからのレーザ光が、集光レンズ14に入射する。
支持部212dの下面にコイル214が装着される。コイル214は、平面視において長方形の角が丸められた形状に周回している。コイル214は、長辺の中間位置が回動軸L1に一致するように、支持部212dの下面に設置される。コイル214、支持部212dおよび集光レンズ14が、光偏向器15の第1の可動部を構成する。
コイル214をX軸方向に挟むように、磁石215および磁石216の組が2つ配置される。磁石215と磁石216は、ヨーク217に設置され、ヨーク217が、ハウジング211の凹部211aの底面に設置されている。各組の磁石215および磁石216の磁極の調整方法は、図4(a)、(b)に示した磁石205および磁石206と同様である。
さらに、内枠部212bの下面にコイル218が装着される。コイル218は、平面視において内枠部212bと同様の形状である。コイル218は、短辺の中間位置が回動軸L2に一致するように、内枠部212bの下面に設置される。コイル218および内枠部212bが、光偏向器15の第2の可動部を構成する。
コイル214に対して、Y軸正側とY軸負側に、それぞれ、磁石219が配置される。これら磁石219は、ヨーク217に設置されている。また、これら2つの磁石219は、コイル218に対向する磁極が互いに異なるように、ヨーク217に設置されている。磁石219は、磁極面における磁束密度が略均一の永久磁石である。
このように2つの磁石219の磁極を調整することにより、コイル218に駆動信号(電流)が印加されると、回動軸L2について内枠部212bが回動し、駆動信号の大きさに応じた角度だけ、内枠部212bが傾く。すなわち、内枠部212bは、梁部212cに生じる弾性復帰力とコイル218に励起された電磁力とが釣り合う角度だけ図8に示した中立位置から傾く。このとき、内枠部212bの回動に伴って、支持部212dとともに集光レンズ14が回動する。
支持部212dは、図4(a)、(b)の構成と同様、コイル214に駆動信号(電流)を印加することにより、回動軸L1を軸として回動する。支持部212dの回動に伴い、集光レンズ14が回動軸L1を軸として回動する。このように、実施形態2の変更例に係る光偏向器15によれば、コイル214、218にそれぞれ独立して駆動信号(電流)を印加することにより、集光レンズ14を、回動軸L1、L2について個別に回動させることができる。
なお、本変更例では、図9(a)、(b)に示すように、支持部212dに、集光レンズ14を透過したレーザ光を通すための開口212fが形成され、また、ハウジング211にも、集光レンズ14を透過したレーザ光を通すための開口211bが形成されている。
図10は、実施形態2の変更例に係る波長変換部材16に対するレーザ光の走査状態を模式的に示す図である。
図10に示すように、この構成例では、波長変換部材16の入射面に複数の走査ラインSL1が設定される。図10の例では、3つの走査ラインSL1が、入射面に設定されている。ただし、走査ラインSL1の数は、これに限られるものではない。
レーザ光のビームスポットB2は、最上段の走査ラインSL1をX軸正方向に終端位置まで移動した後、2段目の走査ラインSL1のX軸正側の開始位置に位置付けられる。その後、ビームスポットB2は、2段目の走査ラインSL1をX軸負方向に終端位置まで移動した後、3段目の走査ラインSL1のX軸負側の開始位置に位置付けられる。同様に、3段目の走査ラインSL1のX軸正側の終端位置までビームスポットB2が移動すると、ビームスポットB2は、2段目の走査ラインSL1の開始位置に位置付けられる。その後、ビームスポットB2は、2段目の走査ラインSL1をX軸負方向に終端位置まで移動した後、1段目の走査ラインSL1のX軸負側の開始位置に位置付けられる。以下、3つの走査ラインSL1について同様の走査が繰り返される。
走査ラインSL1に沿ったビームスポットB2の移動は、図8に示した回動軸L1について集光レンズ14を回動させることにより行われる。走査ラインSL1の変更は、図8に示した回動軸L2について集光レンズ14を回動させて傾けることにより行われる。光偏向器15は、ビームスポットB2が上記のように波長変換部材16の入射面を走査するように制御される。
なお、ビームスポットB2が、1つの走査ラインSL1の終端位置から次の走査ラインSL1の開始位置に移動する期間は、レーザ光源11a〜11cからのレーザ光の出射が停止される。すなわち、図10の送りラインTL1、TL2は、仮にレーザ光が出射されている場合のビームスポットB2の移動軌跡を示すものであって、実際の制御では、送りラインTL1、TL2において、レーザ光源11a〜11cは消灯状態に制御される。
なお、波長変換部材16の入射面に対するレーザ光の走査方法は、上記に限られるものではない。たとえば、ビームスポットB2が、各走査ラインSL1を往復移動した後、次の走査ラインSL1の開始位置へとジャンプするように、波長変換部材16の入射面がレーザ光で走査される構成であってもよい。
図8および図9(a)、(b)に示した光偏向器15は、上記第1実施形態の光偏向器15として用いられてもよい。
<実施形態3>
図11(a)、(b)は、それぞれ、実施形態3に係る投光装置1の構成を示す平面図および側面図である。
実施形態3では、実施形態2のコリメータレンズ12a〜12cが、ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cおよびスロー軸コリメータレンズ18に置き換えられている。また、実施形態3では、波長変換部材16が反射型の波長変換部材に変更され、レーザ光が、反射ミラー19によってZ軸正側から波長変換部材16に入射される。レーザ光は、斜め方向から波長変換部材16に入射される。実施形態3におけるその他の構成は、実施形態2と同様である。ここでは、光偏向器15として、図4(a)、(b)に示した1軸方式の光偏向器が用いられるが、図8および図9(a)、(b)に示した2軸方式の光偏向器が用いられてもよい。
ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cは、それぞれ、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光をファスト軸方向において平行光化する。ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cは、たとえば、シリンドリカルレンズである。ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cは、出射面がX−Z平面に平行な方向のみに湾曲した曲面となっている。ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cの出射面は非球面であり、ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cの入射射面は、平面である。ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cの入射面も、X−Z平面に平行な方向に湾曲した曲面であってもよい。あるいは、ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cの出射面が平面で入射面が曲面であってもよい。
上記実施形態1と同様、レーザ光源11aは、ファスト軸がX軸に平行となるように配置され、レーザ光源11b、11cは、ファスト軸がZ軸方向に平行となるよう、互いに対向して配置される。ファスト軸コリメータレンズ17aは、入射面(平面)がX−Y平面に平行となるように配置され、ファスト軸コリメータレンズ17b、17cは、入射面(平面)がY−Z平面に平行となるように配置される。これにより、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光は、ファスト軸方向において平行光化される。
スロー軸コリメータレンズ18は、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光をスロー軸方向において平行光化する。スロー軸コリメータレンズ18は、たとえば、シリンドリカルレンズである。スロー軸コリメータレンズ18は、出射面がY−Z平面に平行な方向のみに湾曲した曲面となっている。スロー軸コリメータレンズ18の出射面は非球面であり、スロー軸コリメータレンズ18の入射面は、Z軸に垂直な平面である。スロー軸コリメータレンズ18の入射面も、Y−Z平面に平行な方向に湾曲した曲面であってもよい。あるいは、スロー軸コリメータレンズ18の出射面が平面で入射面が曲面であってもよい。スロー軸コリメータレンズ18は、出射面の母線が、入射面に入射する3つのレーザ光の光軸を含む平面に垂直、すなわちY軸方向に平行となるように配置されている。
レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光は、スロー軸コリメータレンズ18の入射面に対し、X軸方向において互いに異なる位置に入射する。レーザ光源11aから出射されたレーザ光は、スロー軸コリメータレンズ18の入射面の中央位置に入射する。レーザ光源11b、11cから出射されたレーザ光は、それぞれ、スロー軸コリメータレンズ18の入射面の中央位置からX軸正負の方向に所定距離だけずれた位置に入射する。
ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cとスロー軸コリメータレンズ18とによって平行光化されたレーザ光は、縮小光学系20によってビームサイズが縮小された後、集光レンズ14で集光される。このとき、レーザ光源11a〜11cから出射された3つのレーザ光は、ファスト軸に対応する方向に並ぶようにして集光レンズ14に入射し、それぞれ、集光作用を受ける。
反射ミラー19は、集光レンズ14で集光された3つのレーザ光の光軸を、それぞれ、Y−Z平面に平行な方向に折り曲げる。3つのレーザ光は、反射ミラー19で反射された後、波長変換部材16に斜め方向から入射する。ここで、波長変換部材16の入射面に対するレーザ光の入射角は、60度よりも大きく設定されることが好ましい。これにより、波長変換部材16に入射するレーザ光が投射光学系3のレンズ3aに掛かりにくくなり、レンズ3aを波長変換部材16に接近させることができる。その結果、波長変換部材16で生じた拡散光をレンズ3aでより多く取り込んで、目標領域に投射することができる。
なお、光偏向器15から波長変換部材16までの光学系のレイアウトによっては、反射ミラー19が省略され得る。この場合、光偏向器15の集光レンズ14を透過した3つのレーザ光は、直接、波長変換部材16に斜め方向から入射する。
波長変換部材16は、反射ミラー19によって反射されたレーザ光が入射する位置に配置されている。上記実施形態1、2と同様、波長変換部材16は、長方形形状の板状の部材であり、入射面がX−Y平面に平行となるように設置されている。上記のように集光レンズ14が回動軸L1について回動することにより、波長変換部材16は、レーザ光によって長手方向に走査される。
図12(a)は、実施形態3に係る波長変換部材16の構成を模式的に示す側面図である。図12(b)は、実施形態3に係る波長変換部材16に対するレーザ光の走査状態を模式的に示す平面図である。
図12(a)に示すように、実施形態3の波長変換部材16は、図5(a)に示したダイクロイック膜302が、反射膜304に置き換えられている。なお、実施形態3の波長変換部材16は、基板301が光透過性でなくてもよい。基板301は、たとえば、シリコンや窒化アルミニウムセラミック、サファイヤガラスなどから構成され得る。
反射膜304は、第1の反射膜304aと第2の反射膜304bとが積層されて構成されている。第1の反射膜304aは、たとえば、Ag、Ag合金、Alなどの金属膜である。第2の反射膜304bは、反射とともに第1の反射膜304aを酸化などから保護する機能をも有し、たとえば、SiO2、ZnO、ZrO2、Nb2O5、Al2O3、TiO2、SiN、AlNなど誘電体の1つまたは複数の層からなっている。反射膜304は、必ずしも、第1の反射膜304aおよび第2の反射膜304bから構成されなくともよく、単層または3つ以上の層が積層された構成であってもよい。
レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光は、図12(a)に示すように、斜め方向から励起領域R1に照射される。これにより、励起領域R1よりもやや広い発光領域R2から、青色波長帯の散乱光と黄色波長帯の散乱光が放射される。図12(b)に示すように、本実施形態3においても、レーザ光は、幅W1の範囲において、波長変換部材16の入射面16aを走査する。
なお、本実施形態3では、ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cの焦点距離と、スロー軸コリメータレンズ18の焦点距離とによって、ファスト軸に対応する方向の光学系の倍率とスロー軸に対応する方向の光学系の倍率を調整可能である。このため、レーザ光源11a〜11cからそれぞれ出射されるレーザ光の波長変換部材16上におけるビームスポットB1a〜B1cの形状(縦横比)は、ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cの焦点距離と、スロー軸コリメータレンズ18の焦点距離とによって調整できる。
また、本実施形態3では、図11(b)および図12(a)に示すように、レーザ光源11a〜11cからのレーザ光が、スロー軸に平行な方向(Y軸方向)から所定の入射角で波長変換部材16の入射面に入射する。ここで、この入射角をθ1とすると、波長変換部材16の入射面上におけるスロー軸方向におけるビームの幅は、上記光学系の倍率により設定されるビーム幅の1/cosθ1倍に広がる。このため、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光は、図12(b)に示すように、スロー軸方向(Y軸方向)に長く延びた状態で、波長変換部材16の入射面に収束される。
このように、本実施形態3では、ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cの焦点距離と、スロー軸コリメータレンズ18の焦点距離と、波長変換部材16の入射面に対するレーザ光の入射角を調整することにより、波長変換部材16の入射面上における各レーザ光のビーム形状(縦横比)を所望の形状に整形できる。
ところで、本実施形態3では、図11(b)に示したように、波長変換部材16の入射面に対するレーザ光の入射方向が、Y−Z平面に平行で、且つ、スロー軸を含む平面に平行となっている。換言すれば、波長変換部材16の入射面に入射するレーザ光の光軸を含み、且つ、この入射面に垂直な平面が、スロー軸に対応する方向に平行となるように、レーザ光源11a〜11cが配置されている。
ここで、スロー軸方向は、レーザ光源11a〜11cから出射されるレーザ光の直線偏光の偏光方向に対応する。したがって、このようにレーザ光源11a〜11cが配置されると、レーザ光源11a〜11cからのレーザ光は、P偏光の状態で波長変換部材16の入射面に入射することになる。これにより、波長変換部材16の入射面におけるレーザ光の表面反射を抑制でき、より多くのレーザ光を波長変換部材16の蛍光体層303に取り込むことができる。
図13(a)は、波長変換部材16の入射面に対するレーザ光の入射角と反射率との関係を、P偏光入射とS偏光入射とで対比して示すグラフ(シミュレーション結果)である。ここでは、蛍光体層303の屈折率が1.7に設定されている。
このグラフを参照して分かるとおり、レーザ光を波長変換部材16の入射面にP偏光で入射させる場合の方が、S偏光で入射させる場合に比べて、蛍光体層303表面に対する反射率が顕著に低下する。よって、レーザ光を波長変換部材16の入射面にP偏光で入射させることにより、より多くのレーザ光を波長変換部材16の蛍光体層303に取り込むことができ、レーザ光のロスを低減することができる。
図13(b)は、波長変換部材16の入射面に入射するレーザ光の偏光比と反射率との関係を、入射角ごとに対比して示すグラフ(シミュレーション結果)である。ここでも、蛍光体層303の屈折率は1.7に設定されている。なお、偏光比とは、偏光の平行ベクトル成分(P偏光成分)と垂直ベクトル成分(S偏光成分)の比率のことであり、図13(b)の横軸は、垂直ベクトル成分(S偏光成分)を1とした場合の平行ベクトル成分(P偏光成分)の大きさが示されている。
このグラフを参照して分かるとおり、波長変換部材16の入射面に入射するレーザ光は、平行ベクトル成分(P偏光成分)の比率が高まるほど、蛍光体層303表面で反射されにくくなる。よって、このことからも、波長変換部材16の入射面に対してP偏光でレーザ光を入射させることにより、より多くのレーザ光を波長変換部材16の蛍光体層303に取り込むことができ、レーザ光のロスを低減できることが分かる。
なお、図13(a)のグラフからすると、波長変換部材16の入射面(蛍光体層303の表面)に対するレーザ光の入射角を70°以下に設定することにより、波長変換部材16の入射面(蛍光体層303の表面)に対するレーザ光の反射率を顕著に抑制でき、さらに、入射角を65°以下に設定すると、波長変換部材16の入射面(蛍光体層303の表面)に対するレーザ光の反射率を0%付近にまで抑制できることが分かる。よって、反射率を抑制してより多くのレーザ光を蛍光体層303に取り込むためには、波長変換部材16の入射面(蛍光体層303の表面)に対するレーザ光の入射角を70°以下に設定することが好ましく、より好ましくは、入射角を65°以下に設定すると良いと言える。
次に、本実施形態3の光学系において、ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cとスロー軸コリメータレンズ18とを個別に配置することによる効果について説明する。
図14(a)、(b)は、それぞれ、比較例に係るシミュレーションにおいて用いた光学系の構成と、比較例の構成においてコリメータレンズ12dの焦点距離を変化させた場合の波長変換部材16の入射面上におけるレーザ光のスポット形状(縦横比)のシミュレーション結果とを示す図である。
図14(a)に示すように、比較例では、1つのレーザ光源11dのみが配置され、このレーザ光源11dから出射されたレーザ光が、集光レンズ14によって波長変換部材16の入射面16aに集光される。ここでは、集光レンズ14によって集光されたレーザ光が、直接、反射ミラー19に入射する。反射ミラー19により反射されたレーザ光は、上記実施形態と同様、斜め方向から波長変換部材16の入射面16aに入射する。
比較例では、ファスト軸コリメータレンズ17aとスロー軸コリメータレンズ18が、光軸周りの全周に亘ってレーザ光を平行光化するコリメータレンズ17dが用いられる。レーザ光源11dから出射されたレーザ光は、コリメータレンズ17dによって全周に亘って平行光化された後、集光レンズ14によって集光される。
比較例のシミュレーションにおいて、レーザ光源11dの出射波長は450nmに設定し、ストライプ幅は30μmに設定した。また、集光レンズ14の焦点距離は40mmに設定した。波長変換部材16の入射面16aに対するレーザ光の入射角は75°に設定した。レーザ光源11dは、スロー軸がY軸方向に平行となるように配置した。
この条件の下、コリメータレンズ12dの焦点距離を変化させて、波長変換部材16の入射面16aにおけるビームスポットの縦横比を検証した。縦横比は、ビームスポットの短軸方向の径をD1、長軸方向の径をD2とした場合に、D2/D1の演算により求めた。各焦点距離において、コリメータレンズ12dは、レーザ光源11dとの間の光路長が焦点距離となる位置に配置した。
図14(b)は、比較例のシミュレーション結果である。図14(b)の上段には、各焦点距離におけるビームスポットの形状が模式的に示されている。
図14(b)を参照して分かるとおり、比較例の光学系では、コリメータレンズ12dの焦点距離を変化させてもビームスポットの縦横比は一定であった。比較例の光学系の倍率は、コリメータレンズ12dの焦点距離と集光レンズ14の焦点距離によって決まる。ここで、コリメータレンズ12dは、全周に亘って一様にレーザ光を平行光化する作用を有するため、光学系の倍率は、ファスト軸方向とスロー軸方向とで差が生じない。このため、コリメータレンズ12dの焦点距離を変化させても、波長変換部材16の入射面16a上におけるビームスポットは、ファスト軸方向とスロー軸方向において同様の倍率で伸縮する。これにより、図14(b)に示すように、波長変換部材16の入射面16a上におけるビームスポットは、コリメータレンズ12dの焦点距離に応じて大きさが変化するものの、焦点距離が変化しても縦横比は一定に維持される。このように、比較例の光学系では、波長変換部材16の入射面16a上におけるビームスポットの縦横比を変化させることができない。
図14(c)、(d)は、それぞれ、実施形態3に係るシミュレーションにおいて用いた光学系の構成と、実施形態3の構成においてスロー軸コリメータレンズの焦点距離を変化させた場合の波長変換部材16の入射面上におけるレーザ光のスポット形状(縦横比)のシミュレーション結果とを示す図である。
図14(c)に示すように、実施形態3の検証に用いた光学系では、図11(a)、(b)の光学系において、レーザ光源11aとファスト軸コリメータレンズ17aの組のみが残され、レーザ光源11bとファスト軸コリメータレンズ17bの組と、レーザ光源11cとファスト軸コリメータレンズ17cの組は省略されている。また、比較例と同様、集光レンズ14によって集光されたレーザ光は、直接、反射ミラー19に入射する。反射ミラー19により反射されたレーザ光は、図11(a)、(b)の光学系と同様、斜め方向から波長変換部材16の入射面16aに入射する。レーザ光源11aから出射されたレーザ光は、図11(a)、(b)の光学系と同様、コリメータレンズ12aとスロー軸コリメータレンズ18によって平行光化される。
実施形態3のシミュレーションにおいて、レーザ光源11aの出射波長は450nmに設定し、ストライプ幅は30μmに設定した。また、集光レンズ14の焦点距離は40mmに設定した。波長変換部材16の入射面16aに対するレーザ光の入射角は75°に設定した。レーザ光源11aは、スロー軸がY軸方向に平行となるように配置した。ファスト軸コリメータレンズ17aの焦点距離は4mmに設定した。
この条件の下、スロー軸コリメータレンズ18の焦点距離を変化させて、波長変換部材16の入射面16aにおけるビームスポットの縦横比を検証した。縦横比は、比較例と同様、D2/D1の演算により求めた。各焦点距離において、スロー軸コリメータレンズ18は、レーザ光源11aとの間の光路長が焦点距離となる位置に配置した。
図14(d)は、実施形態3のシミュレーション結果である。図14(d)の上段には、各焦点距離におけるビームスポットの形状が模式的に示されている。
図14(d)を参照して分かるとおり、実施形態3の光学系では、スロー軸コリメータレンズ18の焦点距離を変化させることにより、ビームスポットの縦横比を変化させることができた。図14(c)に示した実施形態3の光学系の倍率は、ファスト軸コリメータレンズ17aの焦点距離と、スロー軸コリメータレンズ18の焦点距離と、集光レンズ14の焦点距離によって決まる。
ここで、ファスト軸コリメータレンズ17aとスロー軸コリメータレンズ18は、それぞれ、ファスト軸方向とスロー軸方向に個別にレーザ光を平行光化する作用を有するため、光学系の倍率は、ファスト軸コリメータレンズ17aとスロー軸コリメータレンズ18の焦点距離に応じて、ファスト軸方向とスロー軸方向とで差が生じ得る。このため、スロー軸コリメータレンズ18の焦点距離を変化させることにより、波長変換部材16の入射面16a上におけるビームスポットは、ファスト軸方向とスロー軸方向において異なる倍率で伸縮する。これにより、図14(d)に示すように、波長変換部材16の入射面16a上におけるビームスポットは、ファスト軸方向(短軸方向)の径を保ったまま、スロー軸コリメータレンズ18の焦点距離の変化に応じて、スロー軸方向(長軸方向)の径が変化する。このように、実施形態3の光学系では、波長変換部材16の入射面16a上におけるビームスポットの縦横比を適宜所望の値に変化させることができる。
なお、上記実施形態1の検証では、ファスト軸コリメータレンズ17aの焦点距離が固定されたが、ファスト軸コリメータレンズ17aの焦点距離を変化させることにより、ビームスポットのファスト軸方向(短軸方向)の径を変化させることもできる。よって、実施形態3の光学系では、ファスト軸コリメータレンズ17aの焦点距離とスロー軸コリメータレンズ18の焦点距離をそれぞれ調整することにより、波長変換部材16の入射面16a上におけるビームスポットの形状および縦横比を自由に設計することができる。
他のレーザ光源11b、11cから出射されるレーザ光のビームスポットについても、同様に、ファスト軸コリメータレンズ17b、17cの焦点距離とスロー軸コリメータレンズ18の焦点距離を調整することにより、所望の縦横比の形状に設計することができる。
実施形態3の構成によれば、ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cとスロー軸コリメータレンズ18が個別に配置されるため、各コリメータレンズの焦点距離を変更することにより、波長変換部材16に照射されるレーザ光のスポット形状を所望の縦横比の形状に設計することができる。
また、図11(a)、(b)に示したように、ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cは、スロー軸コリメータレンズ18よりもレーザ光源11a〜11cに近い位置に配置されている。このように、より広がり角が大きいファスト軸方向において先に平行光化して広がりを抑えることにより、後段側の光学素子を小型化でき、これら光学素子を円滑に配置できる。よって、光学系全体をコンパクト化することができる。
また、図12(b)に示したように、波長変換部材16の入射面16aにおけるレーザ光のビーム形状が走査方向に垂直な方向に細長くなるように、レーザ光が整形される。このように、ビームスポットの形状を細長くして照射面積を広げることにより、波長変換部材16の入射面16aに照射される光量を高めながら、光密度が過度に高くなることを抑制できる。また、ビームスポットの形状を走査方向に垂直な方向に細長くすると、レーザ光源11a〜11cをオン/オフ制御することにより、発光および非発光の境界をよりクリアにすることができる。これにより、目標領域に投射される光の配光パターンにおいて明暗の境界をよりクリアにすることができる。
また、図11(b)に示したように、集光レンズ14で集光されたレーザ光は、波長変換部材16の入射面に斜め方向から入射する。この場合、上記のように、波長変換部材16の入射面に対するレーザ光の入射角は、60度よりも大きく設定されることが好ましい。これにより、波長変換部材16に入射するレーザ光が投射光学系3のレンズ3aに掛かりにくくなり、レンズ3aを波長変換部材16に接近させることができる。その結果、波長変換部材16で生じた拡散光をレンズ3aでより多く取り込んで、目標領域に投射することができる。
また、図11(b)に示したように、レーザ光源11a〜11cは、波長変換部材16の入射面に入射するレーザ光の光軸を含み、且つ、入射面に垂直な平面が、スロー軸に対応する方向に略平行となるように配置されている。これにより、レーザ光は、P偏光で波長変換部材16の入射面に入射する。よって、図13(a)、(b)を参照して説明したように、波長変換部材16の入射面におけるレーザ光の表面反射を抑制でき、レーザ光の利用効率を高めることができる。
また、図11(a)、(b)に示したように、光学系には、3つのレーザ光源11a〜11cが配置され、レーザ光源11a〜11cごとに個別にコリメータレンズ12a〜12cが配置され、各コリメータレンズ12a〜12cによってファスト軸に対応する方向に整形された各レーザ光が共通のスロー軸コリメータレンズ18によってスロー軸に対応する方向に整形される。このように複数のレーザ光源11a〜11cを用いることにより、波長変換部材16の入射面に照射されるレーザ光の光量を高めることができ、目標領域に高い光量の光を投射できる。また、レーザ光源11a〜11cごとに個別にコリメータレンズ12a〜12cを配置してファスト軸方向のビームサイズを抑制しつつ、共通のスロー軸コリメータレンズによりスロー軸方向の整形を行うことにより、部品点数の削減と、光学系の小型化および簡素化を図ることができる。
なお、ファスト軸コリメータレンズ17aとスロー軸コリメータレンズ18を個別に配置する構成が、上記実施形態1、2の光学系に用いられてもよい。これにより、波長変換部材16上におけるレーザ光の形状を容易に設計できる。
<実施形態4>
図15は、実施形態4に係る投光装置1の構成を示す平面図である。
実施形態4では、上記実施形態3の構成において、縮小光学系20でビームサイズが縮小されたレーザ光が、ファイバーカプラレンズ31によって光ファイバー32に取り込まれ、光ファイバー32から出射されるレーザ光が、コリメータレンズ33を介して、集光レンズ14に入射される。ここで、コリメータレンズ33は、全周に亘ってレーザ光を平行光化する作用を有する。また、実施形態4では、実施形態1、2と同様、波長変換部材16として、透過型の波長変換部材が用いられる。実施形態3のその他の構成は実施形態3と同様である。
本実施形態4では、光ファイバー32によってレーザ光が伝送されるため、ファイバーカプラレンズ31よりも上段の光学系とコリメータレンズ33よりも下段の光学系を、離れた位置に配置することができ、光学系のレイアウトをより自由に設定することができる。
なお、実施形態4の光学系において、縮小光学系20よりも上段側の構成を、図6(a)、(b)に示した構成に置き換えてもよく、さらに、図1(a)、(b)のように、縮小光学系20が省略されてもよい。また、実施形態4の構成において、光偏向器15として、図8および図9(a)、(b)に示した2軸方式の光偏向器を用いてもよい。
<その他の変更例>
投光装置1および光源装置2の構成は、上記実施形態1〜4に示した構成以外に、種々の変更が可能である。
たとえば、上記実施形態1〜4では、集光レンズ14を1軸回りまたは2軸周りに回動させてレーザ光を走査させたが、回動に限らず、たとえば、集光レンズ14を揺動させることにより、波長変換部材16に対してレーザ光を走査させてもよい。
また、上記実施形態3では、スロー軸コリメータレンズ18が、各レーザ光に対して共通であったが、レーザ光ごとに個別にスロー軸コリメータレンズが配置されてもよい。
また、上記実施形態3では、ファスト軸コリメータレンズ17a〜17cがスロー軸コリメータレンズ18よりもレーザ光源11a〜11c側に配置されたが、スロー軸コリメータレンズが、ファスト軸コリメータレンズよりもレーザ光源11a〜11c側に配置されてもよい。この場合、たとえば、スロー軸コリメータレンズがレーザ光源11a〜11cごとに配置され、各レーザ光に対して共通に1つのファスト軸コリメータレンズが配置されてもよい。
また、光源装置2に配置されるレーザ光源の数は、3つに限らず、4つ以上または2つ以下であってもよい。
また、波長変換部材16の蛍光体層303に含まれる蛍光体粒子303aの種類は、必ずしも1種類でなくてもよく、たとえば、レーザ光源11a〜11cからのレーザ光によって互いに異なる波長の蛍光を生じる複数種類の蛍光体粒子303aが蛍光体層303に含まれてもよい。この場合、各種類の蛍光体粒子303aから生じた蛍光の拡散光と、これら蛍光体粒子303aによって波長変換されなかったレーザ光の拡散光とによって、所定の色の光が生成される。
また、目標領域におけるレーザ光の走査方向は、必ずしも水平方向に限られるものではなく、必要とされる照射条件によっては鉛直方向がレーザ光の走査方向とされてもよい。
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。