JP2019160624A - 光源装置および投光装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】波長変換部材に照射されるレーザ光のスポット形状を所望の形状に設計することが可能な光源装置およびそれを用いた投光装置を提供する。【解決手段】光源装置2は、レーザ光源11a〜11cと、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光の波長を他の波長に変換するとともに波長変換された光を拡散させる波長変換部材19と、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光を、波長変換部材19の入射面上において所定のビーム形状に収束させる整形光学系とを備える。整形光学系は、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光をファスト軸に対応する方向に整形するファスト軸ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cと、レーザ光をスロー軸に対応する方向に整形するスロー軸コリメータレンズ14と、これらコリメータレンズにより整形されたレーザ光を波長変換部材19の入射面に集光させる集光レンズ15とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、光を発する光源装置およびそれを用いた投光装置に関する。
従来、レーザ光源から出射された光を波長変換部材に照射することにより所定波長の光を生成する光源装置が知られている。この光源装置では、たとえば、波長変換部材により波長変換されて拡散された光と、波長変換部材により波長変換されずに拡散された光とが合成されて、白色光等、所定の色の光が生成される。このような光源装置が、たとえば、車両用前照灯の光源装置として利用されている。
以下の特許文献1には、光変換手段(蛍光体)によって生成された光像を投光光学系によって道路上に投光する投光器(ヘッドライト)が開示されている。この投光器は、6つのレーザ光源と、2つのマイクロミラーとを備える。1つのマイクロミラーに対して3つのレーザ光源が割り当てられている。3つのレーザ光源から出射されたレーザ光は、それぞれ、コリメータレンズと収束レンズおよび発散レンズによってマイクロミラーに集光される。
その後、1つのマイクロミラーに入射した3つのレーザ光は、それぞれ、走査方向に垂直な方向に互いに変位した位置において、光変換手段の発光面に照射される。マイクロミラーは、単一軸の周りにのみ振動する。マイクロミラーが振動することにより、走査方向に垂直な方向に互いに変位したビームスポットが、光変換手段の発光面を走査する。一方のマイクロミラーで走査される3つのレーザ光は、光変換手段の発光面上において、他方のマイクロミラーで走査される3つのレーザ光の間の位置に位置づけられる。
特表2016−507136号公報
波長変換部材を用いた発光装置では、高い発光パワーを得るために、波長変換部材に照射されるレーザ光の光量を高めることが行われる。しかし、その反面、波長変換部材に照射されるレーザ光の光密度が高くなると、温度上昇により、波長変換部材の光変換効率が低下し、また、波長変換部材に破損が生じる虞もある。したがって、なるべく光量を高めつつ、適切な光密度で、レーザ光を波長変換部材に照射する必要がある。
波長変換部材に照射されるレーザ光の光密度は、波長変換部材上におけるビームスポットの形状を調節することにより制御することができる。たとえば、ビームスポットの形状を細長くして照射面積を広げることにより、光密度を低下させることができる。この場合、ビームスポットの形状を走査方向に垂直な方向に細長くすれば、レーザ光源をオン/オフ制御することにより、発光および非発光の境界をよりクリアにすることもできる。したがって、波長変換部材上におけるビームスポットの形状は、光密度の適正化の観点の他、種々の観点から適正な形状に調整できることが好ましい。
しかしながら。上記特許文献1の構成では、レーザ光がコリメータレンズと収束レンズおよび発散レンズにより全周において一様に収束作用と発散作用を受けるため、波長変換部材上におけるレーザ光のスポット形状(縦横比)を所望の形状に設計することができない。
かかる課題に鑑み、本発明は、波長変換部材に照射されるレーザ光のスポット形状を所望の形状に設計することが可能な光源装置およびそれを用いた投光装置を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様は、光源装置に関する。この態様に係る光源装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光の波長を他の波長に変換するとともに波長変換された光を拡散させる波長変換部材と、前記レーザ光源から出射された前記レーザ光を、前記波長変換部材の入射面上において、所定のビーム形状に収束させる整形光学系と、を備える。ここで、前記整形光学系は、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記レーザ光源のファスト軸に対応する方向に整形するファスト軸コリメータレンズと、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記レーザ光源のスロー軸に対応する方向に整形するスロー軸コリメータレンズと、前記ファスト軸コリメータレンズおよび前記スロー軸コリメータレンズにより整形された前記レーザ光を前記波長変換部材の入射面に集光させる集光レンズと、を備える。
本態様に係る光源装置によれば、レーザ光をファスト軸に対応する方向に整形するファスト軸コリメータレンズと、レーザ光をスロー軸に対応する方向に整形するスロー軸コリメータレンズとが個別に配置されるため、各コリメータレンズの焦点距離を変更することにより、波長変換部材に照射されるレーザ光のスポット形状を所望の縦横比の形状に設計することができる。
本発明の第2の態様は、投光装置に関する。この態様に係る投光装置は、第1の態様に係る光源装置と、前記波長変換部材により拡散された光を投射する投射光学系と、を備える。
本態様に係る投光装置によれば、第1の態様と同様の効果が奏され得る。
以上のとおり、本発明に係る光源装置および投光装置によれば、波長変換部材に照射されるレーザ光のスポット形状を所望の形状に設計することが可能となる。
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
図1(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1に係る投光装置の構成を示す平面図および側面図である。 図2は、実施形態1に係るレーザ光源の構成を示す斜視図である。 図3(a)〜(c)は、それぞれ、実施形態1に係る、波長変換部材の入射面におけるレーザ光の集光状態を模式的に示す図である。 図4(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1に係る光偏向器の構成を示す斜視図および断面図である。 図5(a)は、実施形態1に係る波長変換部材の構成を模式的に示す側面図である。図5(b)は、実施形態1に係る波長変換部材の構成を模式的に示す平面図である。 図6(a)は、実施形態1に係る、波長変換部材の入射面に対するレーザ光の入射角と反射率との関係を、P偏光入射とS偏光入射とで対比して示すグラフである。図6(b)は、実施形態1に係る、波長変換部材の入射面に入射するレーザ光の偏光比と反射率との関係を、入射角ごとに対比して示すグラフである。 図7(a)、(b)は、それぞれ、比較例に係るシミュレーションにおいて用いた光学系の構成と、比較例の構成においてコリメータレンズの焦点距離を変化させた場合の波長変換部材の入射面上におけるレーザ光のスポット形状(縦横比)のシミュレーション結果とを示す図である。図7(c)、(d)は、それぞれ、実施形態1に係るシミュレーションにおいて用いた光学系の構成と、実施形態1の構成においてスロー軸コリメータレンズの焦点距離を変化させた場合の波長変換部材の入射面上におけるレーザ光のスポット形状(縦横比)のシミュレーション結果とを示す図である。 図8(a)、(b)は、それぞれ、実施形態2に係る投光装置の構成を示す平面図および側面図である。 図9(a)、(b)は、それぞれ、実施形態2に係る縮小光学系の構成例を示す図である。 図10(a)、(b)は、それぞれ、実施形態3に係る投光装置の構成を示す平面図および側面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。便宜上、各図には互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。Z軸正方向は、投光装置の光投射方向である。
<実施形態1>
図1(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1に係る投光装置1の構成を示す平面図および側面図である。便宜上、図1(a)、(b)では、レーザ光源11a〜11cが、出射光軸を含み且つX−Z平面に平行な平面で切断された断面図で示されている。
投光装置1は、光を生成する光源装置2と、光源装置2により生成された光を投射するための投射光学系3とを備える。投射光学系3は、2つのレンズ3a、3bを備え、これらレンズ3a、3bによって光源装置2からの光を集光して目標領域へと投射する。なお、投射光学系3は、必ずしも2つのレンズ3a、3bから構成されなくともよく、たとえば、1つのレンズでもよく、2つ以上のレンズやミラーを備えていてもよい。また、投射光学系3は、凹面ミラーによって光源装置2からの光を集光する構成であってもよい。
光源装置2は、3つのレーザ光源11a〜11cと、3つのファスト軸コリメータレンズ12a〜12cと、2つの反射プリズム13a、13bと、スロー軸コリメータレンズ14と、集光レンズ15と、反射ミラー16と、光偏向器17と、反射ミラー18と、波長変換部材19とを備えている。3つのファスト軸コリメータレンズ12a〜12cと、スロー軸コリメータレンズ14と、集光レンズ15は、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光を波長変換部材19の入射面上において所定のビーム形状に収束させる整形光学系を構成する。光源装置2を構成する上記部材は、投射光学系3とともに、図示しないベースに設置されている。
レーザ光源11a〜11cは、それぞれ、青色波長帯(たとえば、450nm)のレーザ光を出射する。レーザ光源11a〜11cは、たとえば、半導体レーザからなっている。レーザ光源11a〜11cは、同一機種のレーザ光源である。レーザ光源11a〜11cから出射されるレーザ光の波長は、適宜変更可能である。レーザ光源11a〜11cは、必ずしも単一の発光領域を有するシングルエミッターの半導体レーザでなくともよく、たとえば、1つの発光素子に複数の発光領域を有するマルチエミッターの半導体レーザであってもよい。また、レーザ光源11a〜11cは、必ずしも単一波長帯のレーザ光を出射するものでなくともよく、たとえば、1基板に複数の発光素子がマウントされたマルチ発光の半導体レーザであってもよい。
図2は、レーザ光源11aの構成を示す斜視図である。図2には、レーザ光源11aに装備された缶体103の内部が透視された状態で示されている。他のレーザ光源11b、11cの構成も図2と同様である。
レーザ光源11aは、円盤状のベース101と、リードピン102と、缶体103と、ポスト104と、サブマウント105と、発光素子106と、を備える。リードピン102は、駆動電圧を印加するためのものである。ポスト104と、サブマウント105と、発光素子106は、缶体103に収容されている。ベース101にポスト104が設置され、ポスト104の上面にサブマウント105を介して発光素子106が設置されている。
発光素子106の下面と光導波路106aの上面に、リードピン102を介して電圧が印加されることにより、発光素子106の活性層から出射光軸110に沿ってレーザ光120が出射される。レーザ光120は、活性層に平行な方向および活性層に垂直な方向に所定の放射角で広がる。活性層に垂直な方向の放射角は、活性層に平行な方向の放射角よりも大きい。従って、出射されたレーザ光120のビーム形状は楕円である。一般に、この楕円の長軸はファスト軸と呼ばれ、楕円の短軸はスロー軸と呼ばれる。こうして発光素子106から出射されたレーザ光120は、缶体103の開口103aに設置された窓103bを介して出射される。W0は、発光素子106のストライプ幅、すなわち、発光部のスロー軸方向の幅である。
図1(a)、(b)に戻り、ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cは、それぞれ、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光をファスト軸方向において平行光化する。ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cは、たとえば、シリンドリカルレンズである。ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cは、出射面がX−Z平面に平行な方向のみに湾曲した曲面となっている。ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cの出射面は非球面であり、ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cの入射射面は、平面である。ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cの入射面も、X−Z平面に平行な方向に湾曲した曲面であってもよい。あるいは、ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cの出射面が平面で入射面が曲面であってもよい。
レーザ光源11aは、ファスト軸がX軸に平行となるように配置され、レーザ光源11b、11cは、ファスト軸がZ軸方向に平行となるよう、互いに対向して配置される。ファスト軸コリメータレンズ12aは、入射面(平面)がX−Y平面に平行となるように配置され、ファスト軸コリメータレンズ12b、12cは、入射面(平面)がY−Z平面に平行となるように配置される。これにより、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光は、ファスト軸方向において平行光化される。
反射プリズム13a、13bは、それぞれ、ファスト軸コリメータレンズ12b、12cを透過したレーザ光を、スロー軸コリメータレンズ14に向かう方向に反射する。反射プリズム13a、13bに代えて、板状の反射ミラーを用いてもよい。
図1(a)に示すように、レーザ光源11b、11cは、互いに向き合うように配置されている。反射プリズム13a、13bは、レーザ光源11b、11cが向き合う方向、すなわち、X軸方向に隙間が生じるように配置されている。レーザ光源11a〜11cは、出射光軸がX−Z平面に平行な1つの平面に含まれるように配置されている。
レーザ光源11aから出射されたレーザ光は、ファスト軸コリメータレンズ12aによりファスト軸方向に平行光化された後、反射プリズム13a、13bの間の隙間を通って、スロー軸コリメータレンズ14へと向かう。対向配置されたレーザ光源11b、11cの光軸は、反射プリズム13a、13bによって、X−Z平面に平行な方向に曲げられる。これにより、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光は、スロー軸コリメータレンズ14の入射面に対し、X軸方向において互いに異なる位置に入射する。
以上の構成により、レーザ光源11a〜11cのパッケージやキャップ外形に制限されることなく、3つのレーザ光を接近させることが可能となる。その結果、スロー軸コリメータレンズ14に入射する3つの平行光を束ねた光束の全幅を小さくできる。これにより、スロー軸コリメータレンズ14以降の光学系のコンパクト化が可能となると共に、光学系が有する収差の影響を小さくすることができる。
レーザ光源11aから出射されたレーザ光は、スロー軸コリメータレンズ14の入射面の中央位置に入射する。レーザ光源11b、11cから出射されたレーザ光は、それぞれ、スロー軸コリメータレンズ14の入射面の中央位置からX軸正負の方向に所定距離だけずれた位置に入射する。
スロー軸コリメータレンズ14は、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光をスロー軸方向において平行光化する。スロー軸コリメータレンズ14は、たとえば、シリンドリカルレンズである。スロー軸コリメータレンズ14は、出射面がY−Z平面に平行な方向のみに湾曲した曲面となっている。スロー軸コリメータレンズ14の出射面は非球面であり、スロー軸コリメータレンズ14の入射面は、Z軸に垂直な平面である。スロー軸コリメータレンズ14の入射面も、Y−Z平面に平行な方向に湾曲した曲面であってもよい。あるいは、スロー軸コリメータレンズ14の出射面が平面で入射面が曲面であってもよい。スロー軸コリメータレンズ14は、出射面の母線が、入射面に入射する3つのレーザ光の光軸を含む平面に垂直、すなわちY軸方向に平行となるように配置されている。
集光レンズ15は、入射した平行光を1点に収束させる光学作用を有する。集光レンズ15の入射面はZ軸負側に突出した非球面であり、集光レンズ15の出射面は、Z軸に垂直な平面である。集光レンズ15の出射面も、Z軸正側に突出した曲面であってもよい。あるいは、集光レンズ15の入射面が平面で出射面が曲面であってもよい。集光レンズ15は、光軸がZ軸に平行となるように配置されている。レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光は、集光レンズ15によって、波長変換部材19の入射面上に収束される。
反射ミラー16は、集光レンズ15を透過した3つのレーザ光の光軸を、それぞれ、Y−Z平面に平行な方向に折り曲げる。3つのレーザ光は、反射ミラー16で反射された後、光偏向器17のミラー17aに入射する。なお、集光レンズ15から波長変換部材19までの光学系のレイアウトによっては、反射ミラー16が省略され得る。この場合、集光レンズ15を透過した3つのレーザ光は、直接、光偏向器17のミラー17aに入射する。
光偏向器17は、ミラー17aを備え、ミラー17aをZ軸に平行な回動軸L1について回動させることにより、反射ミラー16で反射されたレーザ光の進行方向を変化させる。ミラー17aの入射面は平面である。ミラー17aは、たとえば、ガラス板に誘電体多層膜を形成した高反射率のミラーである。ミラー17aは、中立位置において、X−Z平面に平行となるように配置される。光偏向器17の構成は、追って、図4(a)、(b)を参照して説明する。
反射ミラー18は、光偏向器17のミラー17aで反射された3つのレーザ光の光軸を、それぞれ、Y−Z平面に平行な方向に折り曲げる。3つのレーザ光は、反射ミラー18で反射された後、波長変換部材19に斜め方向から入射する。ここで、波長変換部材19の入射面に対するレーザ光の入射角は、60度よりも大きく設定されることが好ましい。これにより、波長変換部材19に入射するレーザ光が投射光学系3のレンズ3aに掛かりにくくなり、レンズ3aを波長変換部材19に接近させることができる。その結果、波長変換部材19で生じた拡散光をレンズ3aでより多く取り込んで、目標領域に投射することができる。
なお、光偏向器17から波長変換部材19までの光学系のレイアウトによっては、反射ミラー16が省略され得る。この場合、光偏向器17のミラー17aで反射された3つのレーザ光は、直接、波長変換部材19に斜め方向から入射する。
なお、本実施形態では、集光レンズ15と光偏向器17との間の光路の長さが、光偏向器17と波長変換部材19との間の光路の長さよりも短くなるように、光学系が構成されている。これにより、光偏向器17のミラー17aを小さい振り幅で回動させても、波長変換部材19の入射面上において、レーザ光を大きく走査させることができる。
波長変換部材19は、反射ミラー18によって反射されたレーザ光が入射する位置に配置されている。波長変換部材19は、長方形形状の板状の部材であり、入射面がX−Y平面に平行となるように設置されている。上記のようにミラー17aが回動軸L1について回動することにより、波長変換部材19は、レーザ光によって長手方向に走査される。
波長変換部材19は、入射したレーザ光の一部を、青色波長帯とは異なる波長に変換して、Z軸方向に拡散させる。波長変換されなかった他のレーザ光は、波長変換部材19によってZ軸方向に拡散される。こうして拡散された2種類の波長の光が合成されて、所定の色の光が生成される。各波長の光は、投射光学系3に取り込まれて、目標領域に投射される。
実施形態1では、波長変換部材19によって、レーザ光の一部が、黄色波長帯の光に変換される。波長変換後の黄色波長帯の拡散光と、波長変換されなかった青色波長帯の散乱光とが合成されて、白色の光が生成される。なお、波長変換後の波長は黄色波長帯でなくてもよく、生成される光の色は、白以外の色であってもよい。波長変換部材19の構成は、追って、図5(a)、(b)を参照して説明する。
図3(a)〜(c)は、波長変換部材19の入射面における3つのレーザ光の集光状態を模式的に示す図である。図3(a)〜(c)は、光偏向器17のミラー17aが中立位置にある場合の各レーザ光のビームスポットの状態を示している。
波長変換部材19の入射面は、集光レンズ15の焦点位置付近に配置されている。すなわち、集光レンズ15と波長変換部材19との間の光路長は、集光レンズ15の焦点距離に略等しくなるように調整されている。したがって、図1(a)、(b)の構成において、レーザ光源11a〜11cの光軸が、集光レンズ15の入射位置において、何れも、Z軸に平行で、且つ、X−Z平面に平行な同一平面に含まれる場合、レーザ光源11a〜11cから出射された各レーザ光は、波長変換部材19の入射面上において、略同じ位置に集光される。
この場合、各レーザ光のビームスポットB1a〜B1cは、図3(a)に示すように、波長変換部材19の入射面上において、略重なった状態となる。ビームスポットB1a〜B1cは、それぞれ、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光のビームスポットである。
これに対し、レーザ光源11a〜11cの光軸が、集光レンズ15の入射位置において、X−Z平面に平行な同一平面に含まれ、且つ、互いに非平行である場合、各レーザ光のビームスポットB1a〜B1cは、図3(b)に示すように、波長変換部材19の入射面上において、走査方向(X軸方向)に互いに離間する。たとえば、レーザ光源11aの光軸が集光レンズ15の光軸に一致し、レーザ光源11b、11cの光軸が、集光レンズ15の入射位置においてZ軸に平行な状態から互いに離間する方向に傾くように、集光レンズ15よりも前段側の光学系のレイアウトが調整されると、ビームスポットB1a〜B1cは、図3(b)に示すように、波長変換部材19の入射面上において、走査方向(X軸方向)に互いに離間する。
なお、集光レンズ15の入射位置において、レーザ光源11b、11cの光軸が、レーザ光源11aの光軸に対して、Y−Z平面に平行な方向に傾き、且つ、互いに非平行となるように、集光レンズ15よりも前段側の光学系のレイアウトが調整された場合、各レーザ光のビームスポットB1a〜B1cは、図3(c)に示すように、波長変換部材19の入射面上において、走査方向(X軸方向)に垂直な方向にずれる。
このように、集光レンズ15の入射位置におけるレーザ光源11a〜11cの光軸の状態を調整することにより、波長変換部材19の入射面上におけるビームスポットB1a〜B1cの重なり具合を調整することができる。
なお、本実施形態では、ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cの焦点距離と、スロー軸コリメータレンズ14の焦点距離と、集光レンズ15の焦点距離とによって光学系の倍率が設定される。このため、ビームスポットB1a〜B1cの形状(縦横比)は、ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cの焦点距離と、スロー軸コリメータレンズ14の焦点距離とによって調整できる。
また、本実施形態では、図1(b)に示すように、レーザ光源11a〜11cからのレーザ光が、スロー軸に平行な方向(Y軸方向)から所定の入射角で波長変換部材19の入射面に入射する。ここで、この入射角をθ1とすると、波長変換部材19の入射面上におけるスロー軸方向におけるビームの幅は、上記光学系の倍率により設定されるビーム幅の1/cosθ1倍に広がる。このため、レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光は、図3(a)〜(c)に示したように、スロー軸方向にある程度の幅をもって、波長変換部材19の入射面に収束される。
このように、本実施形態では、ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cの焦点距離と、スロー軸コリメータレンズ14の焦点距離と、波長変換部材19の入射面に対するレーザ光の入射角を調整することにより、波長変換部材19の入射面上における各レーザ光のビーム形状(縦横比)を所望の形状に整形できる。
図4(a)、(b)は、それぞれ、光偏向器17の構成を示す斜視図および断面図である。図4(b)には、X−Y平面に平行な平面で、図4(a)の光偏向器17をZ軸方向の中央位置において切断したA−A’断面図が示されている。
図4(a)、(b)を参照して、光偏向器17は、電磁力を利用してミラー17aを駆動する構成となっている。ハウジング201に、電磁駆動のための構成部材が設置されている。
ハウジング201は、X軸方向に長い直方体形状を有する。ハウジング201の上面には、平面視において長方形の凹部201aが形成されている。また、ハウジング201には、X軸正負の縁の上面に、それぞれ、ボス201bが形成されている。2つのボス201bは、ハウジング201のZ軸方向の中間位置に配置されている。ハウジング201は、剛性が高い金属材料からなっている。
ハウジング201の上面に、枠状の板バネ202が設置される。板バネ202は、枠部202aと、支持部202bと、2つの梁部202cと、2つの孔202dとを有する。
X軸方向の中間位置において、枠部202aからZ軸方向に平行に延びるように、2つの梁部202cが形成され、これら梁部202cによって、枠部202aと支持部202bとが連結されている。支持部202bは、平面視において長方形であり、支持部202bのX軸方向の中間位置において、2つの梁部202cが支持部202bに繋がっている。X軸負側の孔202dは、ボス201bと同様、平面視において円形で、X軸正側の孔202dは、平面視においてX軸方向に長い形状である。板バネ202は、Z軸方向に対称な形状であり、また、2つの孔202dを除いてX軸方向に対称な形状である。板バネ202は、可撓性の金属材料により一体形成されている。
2つの孔202dは、それぞれ、2つのボス201bに対応する位置に設けられている。孔202dにボス201bが嵌められた状態で、4つのネジ203により、板バネ202がハウジング201の上面に固定される。支持部202bの上面にミラー17aが接着剤等によって固定される。ミラー17aは、平面視において略正方形である。2つの梁部202cを繋いだ軸が、ミラー17aの回動軸L1となる。
なお、レーザ光源11a〜11cからのレーザ光は、X軸方向に並ぶようにミラー17aに入射する。レーザ光源11aからのレーザ光がミラー17aの中央位置に入射する。すなわち、回動軸L1とレーザ光源11aからのレーザ光の中心軸とが交差するように、レーザ光源11aからのレーザ光が、ミラー17aに入射する。
支持部202bの下面にコイル204が装着される。コイル204は、平面視において長方形の角が丸められた形状に周回している。コイル204は、長辺の中間位置が回動軸L1に一致するように、支持部202bの下面に設置される。コイル204、支持部202bおよびミラー17aが、光偏向器17の可動部を構成する。
コイル204のX軸正側およびX軸負側の部分をそれぞれX軸方向に挟むように、磁石205および磁石206の組が2つ配置される。磁石205と磁石206は、ヨーク207に設置され、ヨーク207が、ハウジング201の凹部201aの底面に設置されている。磁石205、206は、磁極面における磁束密度が略均一の永久磁石である。
X軸正側の磁石205、206によって生じる磁界の向きと、X軸負側の磁石205、206によって生じる磁界の向きは、同じである。たとえば、X軸正側の磁石205は、N極がコイル204に対向し、X軸負側の磁石205は、S極がコイル204に対向する。また、X軸正側の磁石206は、S極がコイル204に対向し、X軸負側の磁石206は、N極がコイル204に対向する。このように磁極(磁界の向き)を調整することにより、コイル204に駆動信号(電流)が印加されると、回動軸L1周りの駆動力がコイル204に励起される。これにより、ミラー17aが、回動軸L1を軸として回動する。
図5(a)は、波長変換部材19の構成を模式的に示す側面図である。
波長変換部材19は、基板301の上面に、反射膜302と、蛍光体層303とを積層した構成となっている。
基板301は、たとえば、シリコンや窒化アルミニウムセラミック、サファイヤガラスなどからなっている。反射膜302は、第1の反射膜302aと第2の反射膜302bとが積層されて構成されている。第1の反射膜302aは、たとえば、Ag、Ag合金、Alなどの金属膜である。第2の反射膜302bは、反射とともに第1の反射膜302aを酸化などから保護する機能をも有し、たとえば、SiO、ZnO、ZrO、Nb、Al、TiO、SiN、AlNなど誘電体の1つまたは複数の層からなっている。反射膜302は、必ずしも、第1の反射膜302aおよび第2の反射膜302bから構成されなくともよく、単層または3つ以上の層が積層された構成であってもよい。
蛍光体層303は、蛍光体粒子303aをバインダ303bで固定することにより形成される。蛍光体粒子303aは、レーザ光源11a〜11cから出射された青色波長帯のレーザ光が照射されることによって黄色波長帯の蛍光を発する。蛍光体粒子303aとして、たとえば、平均粒子径が1μm〜30μmの(YnGd1−n)3(AlmGa1−m)5O12:Ce(0.5≦n≦1、0.5≦m≦1)が用いられる。また、バインダ303bとして、ポリメチルシルセスキオキサンなどのシルセスキオキサンを主に含む透明材料が用いられる。
さらに、蛍光体層303の内部に、ボイド303cを設けることが好ましい。これにより、内部に侵入したレーザ光をより効率的に散乱させて、光源装置2から取り出すことができる。また、第2の反射膜302b付近にボイド303cが存在することにより、第2の反射膜302bの表面によるエネルギーロスを低減しつつ、効果的にレーザ光と蛍光を散乱させることができる。蛍光体層303には、さらに、強度および耐熱性を高めるためのフィラー303dが含まれる。
レーザ光源11a〜11cから出射されたレーザ光は、図5(a)に示す励起領域R1に照射され、蛍光体層303の表面または内部で、散乱、吸収される。このとき、レーザ光の一部は、蛍光体粒子303aにより黄色波長帯の光に変換されて、蛍光体層303から放射される。また、レーザ光の他の一部は、黄色波長帯の光に変換されずに散乱されて青色波長帯の光のまま蛍光体層303から放射される。このとき、各波長帯の光は、蛍光体層303内を伝搬しながら散乱されるため、励起領域R1よりもやや広い発光領域R2から放射される。
図5(b)は、波長変換部材19の構成を模式的に示す平面図である。
波長変換部材19は、平面視において、X軸方向に長い長方形の形状を有する。波長変換部材19は、光偏向器17のミラー17aが回動されることにより、レーザ光でX軸方向に走査される。ミラー17aは、X−Z平面に平行な中立位置から両方向に所定の角度範囲で回動される。図5(b)において、B1は、上記のようにレーザ光源11a〜11cから出射された各レーザ光のビームスポットB1a〜B1cが統合されたものである。ビームスポットB1は、波長変換部材19の入射面19aを、幅W1において往復移動する。
なお、図5(b)には、ビームスポットB1の往復移動が直線の矢印で示されているが、レーザ光が斜め方向から波長変換部材19に入射するため、実際のビームスポットB1の移動軌跡は、X軸方向の中央位置に対してX軸正負方向の両端がY軸負方向に変位した、やや湾曲した軌跡となる。
入射面19a上におけるビームスポットB1の領域は、図5(a)の励起領域R1に対応する。波長変換部材19の入射面19aをビームスポットB1が移動する間に、ビームスポットB1の領域よりもやや広い発光領域R2から青色波長帯の拡散光と黄色波長帯の拡散光がZ軸正方向に放射される。
こうして放射された2つの波長帯の光が、図1(a)、(b)に示した投射光学系3により取り込まれ、目標領域に投射される。これにより、青色波長帯の光と黄色波長帯の光が合成された白色の光が、投光装置1から目標領域に投射される。
ところで、本実施形態では、図1(b)に示したように、波長変換部材19の入射面に対するレーザ光の入射方向が、Y−Z平面に平行で、且つ、スロー軸を含む平面に平行となっている。換言すれば、波長変換部材19の入射面に入射するレーザ光の光軸を含み、且つ、この入射面に垂直な平面が、スロー軸に対応する方向に平行となるように、レーザ光源11a〜11cが配置されている。
ここで、スロー軸方向は、レーザ光源11a〜11cから出射されるレーザ光の直線偏光の偏光方向に対応する。したがって、このようにレーザ光源11a〜11cが配置されると、レーザ光源11a〜11cからのレーザ光は、P偏光の状態で波長変換部材19の入射面に入射することになる。これにより、波長変換部材19の入射面におけるレーザ光の表面反射を抑制でき、より多くのレーザ光を波長変換部材19の蛍光体層303に取り込むことができる。
図6(a)は、波長変換部材19の入射面に対するレーザ光の入射角と反射率との関係を、P偏光入射とS偏光入射とで対比して示すグラフ(シミュレーション結果)である。ここでは、蛍光体層303の屈折率が1.7に設定されている。
このグラフを参照して分かるとおり、レーザ光を波長変換部材19の入射面にP偏光で入射させる場合の方が、S偏光で入射させる場合に比べて、蛍光体層303表面に対する反射率が顕著に低下する。よって、レーザ光を波長変換部材19の入射面にP偏光で入射させることにより、より多くのレーザ光を波長変換部材19の蛍光体層303に取り込むことができ、レーザ光のロスを低減することができる。
図6(b)は、波長変換部材19の入射面に入射するレーザ光の偏光比と反射率との関係を、入射角ごとに対比して示すグラフ(シミュレーション結果)である。ここでも、蛍光体層303の屈折率は1.7に設定されている。なお、偏光比とは、偏光の平行ベクトル成分(P偏光成分)と垂直ベクトル成分(S偏光成分)の比率のことであり、図6(b)の横軸は、垂直ベクトル成分(S偏光成分)を1とした場合の平行ベクトル成分(P偏光成分)の大きさが示されている。
このグラフを参照して分かるとおり、波長変換部材19の入射面に入射するレーザ光は、平行ベクトル成分(P偏光成分)の比率が高まるほど、蛍光体層303表面で反射されにくくなる。よって、このことからも、波長変換部材19の入射面に対してP偏光でレーザ光を入射させることにより、より多くのレーザ光を波長変換部材19の蛍光体層303に取り込むことができ、レーザ光のロスを低減できることが分かる。
なお、図6(a)のグラフからすると、波長変換部材19の入射面(蛍光体層303の表面)に対するレーザ光の入射角を70°以下に設定することにより、波長変換部材19の入射面(蛍光体層303の表面)に対するレーザ光の反射率を顕著に抑制でき、さらに、入射角を65°以下に設定すると、波長変換部材19の入射面(蛍光体層303の表面)に対するレーザ光の反射率を0%付近にまで抑制できることが分かる。よって、反射率を抑制してより多くのレーザ光を蛍光体層303に取り込むためには、波長変換部材19の入射面(蛍光体層303の表面)に対するレーザ光の入射角を70°以下に設定することが好ましく、より好ましくは、入射角を65°以下に設定すると良いと言える。
次に、本実施形態の光学系において、ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cとスロー軸コリメータレンズ14とを個別に配置することによる効果について説明する。
図7(a)、(b)は、それぞれ、比較例に係るシミュレーションにおいて用いた光学系の構成と、比較例の構成においてコリメータレンズ12dの焦点距離を変化させた場合の波長変換部材19の入射面上におけるレーザ光のスポット形状(縦横比)のシミュレーション結果とを示す図である。
図7(a)に示すように、比較例では、1つのレーザ光源11dのみ配置され、このレーザ光源11dから出射されたレーザ光が、集光レンズ15によって波長変換部材19の入射面19aに集光される。ここでは、図1(a)、(b)の光学系における反射ミラー16と光偏向器17が省略され、集光レンズ15によって集光されたレーザ光が、直接、反射ミラー18に入射する。反射ミラー18により反射されたレーザ光は、上記実施形態と同様、斜め方向から波長変換部材19の入射面19aに入射する。
比較例では、ファスト軸コリメータレンズ12aとスロー軸コリメータレンズ14が、光軸周りの全周に亘ってレーザ光を平行光化するコリメータレンズ12dが用いられる。レーザ光源11dから出射されたレーザ光は、コリメータレンズ12dによって全周に亘って平行光化された後、集光レンズ15によって集光される。
比較例のシミュレーションにおいて、レーザ光源11dの出射波長は450nmに設定し、ストライプ幅は30μmに設定した。また、集光レンズ15の焦点距離は40mmに設定した。波長変換部材19の入射面19aに対するレーザ光の入射角は75°に設定した。レーザ光源11dは、スロー軸がY軸方向に平行となるように配置した。
この条件の下、コリメータレンズ12dの焦点距離を変化させて、波長変換部材19の入射面19aにおけるビームスポットの縦横比を検証した。縦横比は、ビームスポットの短軸方向の径をD1、長軸方向の径をD2とした場合に、D2/D1の演算により求めた。各焦点距離において、コリメータレンズ12dは、レーザ光源11dとの間の光路長が焦点距離となる位置に配置した。
図7(b)は、比較例のシミュレーション結果である。図7(b)の上段には、各焦点距離におけるビームスポットの形状が模式的に示されている。
図7(b)を参照して分かるとおり、比較例の光学系では、コリメータレンズ12dの焦点距離を変化させてもビームスポットの縦横比は一定であった。比較例の光学系の倍率は、コリメータレンズ12dの焦点距離と集光レンズ15の焦点距離によって決まる。ここで、コリメータレンズ12dは、全周に亘って一様にレーザ光を平行光化する作用を有するため、光学系の倍率は、ファスト軸方向とスロー軸方向とで差が生じない。このため、コリメータレンズ12dの焦点距離を変化させても、波長変換部材19の入射面19a上におけるビームスポットは、ファスト軸方向とスロー軸方向において同様の倍率で伸縮する。これにより、図7(b)に示すように、波長変換部材19の入射面19a上におけるビームスポットは、コリメータレンズ12dの焦点距離に応じて大きさが変化するものの、焦点距離が変化しても縦横比は一定に維持される。このように、比較例の光学系では、波長変換部材19の入射面19a上におけるビームスポットの縦横比を変化させることができない。
図7(c)、(d)は、それぞれ、実施形態1に係るシミュレーションにおいて用いた光学系の構成と、実施形態1の構成においてスロー軸コリメータレンズの焦点距離を変化させた場合の波長変換部材19の入射面上におけるレーザ光のスポット形状(縦横比)のシミュレーション結果とを示す図である。
図7(c)に示すように、実施形態1の検証に用いた光学系では、図1(a)、(b)の光学系において、レーザ光源11aとファスト軸コリメータレンズ12aの組のみが残され、レーザ光源11bとファスト軸コリメータレンズ12bの組と、レーザ光源11cとファスト軸コリメータレンズ12cの組は省略されている。また、比較例と同様、図1(a)、(b)の光学系における反射ミラー16と光偏向器17が省略され、集光レンズ15によって集光されたレーザ光が、直接、反射ミラー18に入射する。反射ミラー18により反射されたレーザ光は、図1(a)、(b)の光学系と同様、斜め方向から波長変換部材19の入射面19aに入射する。レーザ光源11aから出射されたレーザ光は、図1(a)、(b)の光学系と同様、ファスト軸コリメータレンズ12aとスロー軸コリメータレンズ14によって平行光化される。
実施形態1のシミュレーションにおいて、レーザ光源11aの出射波長は450nmに設定し、ストライプ幅は30μmに設定した。また、集光レンズ15の焦点距離は40mmに設定した。波長変換部材19の入射面19aに対するレーザ光の入射角は75°に設定した。レーザ光源11aは、スロー軸がY軸方向に平行となるように配置した。ファスト軸コリメータレンズ12aの焦点距離は4mmに設定した。
この条件の下、スロー軸コリメータレンズ14の焦点距離を変化させて、波長変換部材19の入射面19aにおけるビームスポットの縦横比を検証した。縦横比は、比較例と同様、D2/D1の演算により求めた。各焦点距離において、スロー軸コリメータレンズ14は、レーザ光源11dとの間の光路長が焦点距離となる位置に配置した。
図7(d)は、実施形態1のシミュレーション結果である。図7(d)の上段には、各焦点距離におけるビームスポットの形状が模式的に示されている。
図7(c)を参照して分かるとおり、実施形態1の光学系では、スロー軸コリメータレンズ14の焦点距離を変化させることにより、ビームスポットの縦横比が変化させることができた。実施形態1の光学系の倍率は、ファスト軸コリメータレンズ12aの焦点距離と、スロー軸コリメータレンズ14の焦点距離と、集光レンズ15の焦点距離によって決まる。
ここで、ファスト軸コリメータレンズ12aとスロー軸コリメータレンズ14は、それぞれ、ファスト軸方向とスロー軸方向に個別にレーザ光を平行光化する作用を有するため、光学系の倍率は、ファスト軸コリメータレンズ12aとスロー軸コリメータレンズ14の焦点距離に応じて、ファスト軸方向とスロー軸方向とで差が生じ得る。このため、スロー軸コリメータレンズ14の焦点距離を変化させることにより、波長変換部材19の入射面19a上におけるビームスポットは、ファスト軸方向とスロー軸方向において異なる倍率で伸縮する。これにより、図7(d)に示すように、波長変換部材19の入射面19a上におけるビームスポットは、ファスト軸方向(短軸方向)の径を保ったまま、スロー軸コリメータレンズ14の焦点距離の変化に応じて、スロー軸方向(長軸方向)の径が変化する。このように、実施形態1の光学系では、波長変換部材19の入射面19a上におけるビームスポットの縦横比を適宜所望の値に変化させることができる。
なお、上記実施形態1の検証では、ファスト軸コリメータレンズ12aの焦点距離が固定されたが、ファスト軸コリメータレンズ12aの焦点距離を変化させることにより、ビームスポットのファスト軸方向(短軸方向)の径を変化させることもできる。よって、実施形態1の光学系では、ファスト軸コリメータレンズ12aの焦点距離とスロー軸コリメータレンズ14の焦点距離をそれぞれ調整することにより、波長変換部材19の入射面19a上におけるビームスポットの形状および縦横比を自由に設計することができる。
他のレーザ光源11b、11cから出射されるレーザ光のビームスポットについても、同様に、ファスト軸コリメータレンズ12b、12cの焦点距離とスロー軸コリメータレンズ14の焦点距離を調整することにより、所望の縦横比の形状に設計することができる。
<実施形態の効果>
以上、本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cとスロー軸コリメータレンズ14が個別に配置されるため、各コリメータレンズの焦点距離を変更することにより、波長変換部材19に照射されるレーザ光のスポット形状を所望の縦横比の形状に設計することができる。
図1(a)、(b)に示したように、ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cは、スロー軸コリメータレンズ14よりもレーザ光源11a〜11cに近い位置に配置されている。このように、より広がり角が大きいファスト軸方向において先に平行光化して広がりを抑えることにより、後段側の光学素子を小型化でき、これら光学素子を円滑に配置できる。よって、光学系全体をコンパクト化することができる。
図1(a)、(b)に示したように、ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cおよびスロー軸コリメータレンズ14は、レーザ光源11a〜11cと光偏向器17との間に配置されている。このように、ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cとスロー軸コリメータレンズ14を光偏向器17よりも前段側に配置して、レーザ光が光偏向器17に入射する前にビームの広がりを抑えることにより、光偏向器17に入射するレーザ光のビームサイズを小さくすることができる。これにより、光偏向器17のミラー17aを小さくでき、結果、光偏向器17における消費電力の抑制と走査の高レスポンス化を図ることができる。
図1(a)、(b)に示したように、集光レンズ15と光偏向器17との間の光路の長さが、光偏向器17と波長変換部材19との間の光路の長さよりも短くなるように光学系が構成されている。これにより、ミラー17aを小さな振り角で回動させても、広い走査範囲でレーザ光を波長変換部材19の入射面において走査させることができる。よって、光偏向器17における消費電力の抑制と走査の高レスポンス化を図ることができる。
図3(a)〜(c)に示したように、波長変換部材19の入射面19aにおけるレーザ光のビーム形状が走査方向に垂直な方向に細長くなるように、レーザ光が整形される。このように、ビームスポットの形状を細長くして照射面積を広げることにより、波長変換部材19の入射面19aに照射される光量を高めながら、光密度が過度に高くなることを抑制できる。また、ビームスポットの形状を走査方向に垂直な方向に細長くすると、レーザ光源11a〜11cをオン/オフ制御することにより、発光および非発光の境界をよりクリアにすることができる。これにより、目標領域に投射される光の配光パターンにおいて明暗の境界をよりクリアにすることができる。
図1(b)に示したように、集光レンズ15で集光されたレーザ光は、波長変換部材19の入射面に斜め方向から入射する。この場合、上記のように、波長変換部材19の入射面に対するレーザ光の入射角は、60度よりも大きく設定されることが好ましい。これにより、波長変換部材19に入射するレーザ光が投射光学系3のレンズ3aに掛かりにくくなり、レンズ3aを波長変換部材19に接近させることができる。その結果、波長変換部材19で生じた拡散光をレンズ3aでより多く取り込んで、目標領域に投射することができる。
図1(b)に示したように、レーザ光源11a〜11cは、波長変換部材19の入射面に入射するレーザ光の光軸を含み、且つ、入射面に垂直な平面が、スロー軸に対応する方向に略平行となるように配置されている。これにより、レーザ光は、P偏光で波長変換部材19の入射面に入射する。よって、図6(a)、(b)を参照して説明したように、波長変換部材19の入射面におけるレーザ光の表面反射を抑制でき、レーザ光の利用効率を高めることができる。
図1(a)、(b)に示したように、光学系には、3つのレーザ光源11a〜11cが配置され、レーザ光源11a〜11cごとに個別にファスト軸コリメータレンズ12a〜12cが配置され、各ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cによってファスト軸に対応する方向に整形された各レーザ光が共通のスロー軸コリメータレンズ14によってスロー軸に対応する方向に整形される。このように複数のレーザ光源11a〜11cを用いることにより、波長変換部材19の入射面に照射されるレーザ光の光量を高めることができ、目標領域に高い光量の光を投射できる。また、レーザ光源11a〜11cごとに個別にファスト軸コリメータレンズ12a〜12cを配置してファスト軸方向のビームサイズを抑制しつつ、共通のスロー軸コリメータレンズによりスロー軸方向の整形を行うことにより、部品点数の削減と、光学系の小型化および簡素化を図ることができる。
<実施形態2>
図8(a)、(b)は、それぞれ、実施形態2に係る投光装置1の構成を示す平面図および側面図である。
実施形態2の投光装置1は、光源装置2の構成として、ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cおよびスロー軸コリメータレンズ14によって整形されたレーザ光のビームサイズ(3つのレーザ光全体のビーム幅)を縮小して光偏向器17に導く縮小光学系20をさらに備えている。縮小光学系20は、凸レンズ21と凹レンズ22により構成される。ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cとスロー軸コリメータレンズ14によって平行光化された3つのレーザ光は、凸レンズ21によりビームサイズが縮小された後、凹レンズ22によって再び平行光化される。すなわち、凸レンズ21により3つのレーザ光全体のビーム幅が縮小される。これにより、集光レンズ15の有効径を小さくでき、集光レンズ15より後段側の光学素子も小型化できる。その他の構成は、実施形態1と同様である。
図9(a)、(b)は、それぞれ、縮小光学系20の構成例を示す図である。
図8(a)に示した縮小光学系20は、図9(a)の構成となっている。凸レンズ21の焦点距離はF1であり、凹レンズ22の焦点距離はF2である。焦点距離F2は焦点距離F1よりも小さい。凹レンズ22は、凸レンズ21と焦点位置FP0を共有するように配置される。これにより、凹レンズ22によってレーザ光が平行光化される。凸レンズ21と凹レンズ22は、光軸が集光レンズ15の光軸に一致するように配置される。
図9(b)の構成例では、凹レンズ22に代えて凸レンズ23が配置される。凸レンズ23の焦点距離F3は焦点距離F1よりも小さい。凸レンズ23は、凸レンズ21と焦点位置FP0を共有するように配置される。これにより、凸レンズ23によってレーザ光が平行光化される。凸レンズ21と凸レンズ23は、光軸が集光レンズ15の光軸に一致するように配置される。
本実施形態2によれば、縮小光学系20によりレーザ光のビームサイズが縮小されるため、縮小光学系20より後段側に配置される光学素子を小型化できる。縮小光学系20に入射する前後のビーム幅をそれぞれBW1、BW2とすると、図9(a)の構成では、BW1:BW2=F1:F2となり、図9(b)の構成では、BW1:BW2=F1:F3となる。このようにビームサイズが縮小されることにより、後段側の光学素子が小型化されるため、光学系に各光学素子をより円滑に配置でき、また、光学系をコンパクト化することができる。
なお、縮小光学系20を構成する凸レンズ21および凹レンズ22(または凸レンズ23)は、少なくともファスト軸(X軸)方向の入射ビーム幅を縮小する目的で用いられるので、X−Z平面に平行な方向のみ曲面を持つシリンドリカルレンズで構成することができる。
<実施形態3>
図10(a)、(b)は、それぞれ、実施形態3に係る投光装置1の構成を示す平面図および側面図である。
実施形態3の投光装置1は、波長変換部材19が透過型となっている。このため、投射光学系3は、波長変換部材19を透過した青色波長帯の拡散光と黄色波長帯の拡散光を取り込んで目標領域に投射するように配置されている。その他の構成は、実施形態2と同様である。実施形態1と同様、図10(a)、(b)の構成において、縮小光学系20が省略されてもよい。
本実施形態3の構成において、波長変換部材19は、図5(a)に示した反射膜302が省略されるか、反射膜302が、青色波長帯の光を透過し黄色波長帯の光を反射するダイクロイック膜に変更される。レーザ光源11a〜11cからのレーザ光は、基板301側から入射し、基板301を透過して蛍光体層303へと入射する。反射膜302がダイクロイック膜に変更される場合、蛍光体層303で生じた黄色波長帯の光が基板301へと進むことが抑制される。これにより、黄色波長帯の光の利用効率を高めることができる。
本実施形態3においても、上記実施形態1、2と同様の効果が奏され得る。
<その他の変更例>
投光装置1および光源装置2の構成は、上記実施形態1〜3に示した構成以外に、種々の変更が可能である。
たとえば、上記実施形態1〜3では、スロー軸コリメータレンズ14が、各レーザ光に対して共通であったが、レーザ光ごとに個別にスロー軸コリメータレンズが配置されてもよい。
また、上記実施形態1〜3では、ファスト軸コリメータレンズ12a〜12cがスロー軸コリメータレンズ14よりもレーザ光源11a〜11c側に配置されたが、スロー軸コリメータレンズが、ファスト軸コリメータレンズよりもレーザ光源11a〜11c側に配置されてもよい。この場合、たとえば、スロー軸コリメータレンズがレーザ光源11a〜11cごとに配置され、各レーザ光に対して共通に1つのファスト軸コリメータレンズが配置される。
また、光源装置2に配置されるレーザ光源の数は、3つに限らず、4つ以上または2つ以下であってもよい。
また、レーザ光は、波長変換部材19の入射面19a上において2次元状に走査されてもよい。この場合、光偏向器17は、互いに直交する2つの軸の回りにミラー17aを回動させる構成に変更される。
また、波長変換部材19の蛍光体層303に含まれる蛍光体粒子303aの種類は、必ずしも1種類でなくてもよく、たとえば、レーザ光源11a〜11cからのレーザ光によって互いに異なる波長の蛍光を生じる複数種類の蛍光体粒子303aが蛍光体層303に含まれてもよい。この場合、各種類の蛍光体粒子303aから生じた蛍光の拡散光と、これら蛍光体粒子303aによって波長変換されなかったレーザ光の拡散光とによって、所定の色の光が生成される。
また、目標領域におけるレーザ光の走査方向は、必ずしも水平方向に限られるものではなく、必要とされる照射条件によっては鉛直方向がレーザ光の走査方向とされてもよい。
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
1 … 投光装置
2 … 光源装置
3 … 投射光学系
11a〜11d … レーザ光源
12a〜12c … ファスト軸コリメータレンズ
14 … スロー軸コリメータレンズ
15 … 集光レンズ
17 … 光偏向器
19 … 波長変換部材
19a … 入射面
3a、3b … レンズ

Claims (10)

  1. レーザ光源と、
    前記レーザ光源から出射されたレーザ光の波長を他の波長に変換するとともに波長変換された光を拡散させる波長変換部材と、
    前記レーザ光源から出射された前記レーザ光を、前記波長変換部材の入射面上において、所定のビーム形状に収束させる整形光学系と、を備え、
    前記整形光学系は、
    前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記レーザ光源のファスト軸に対応する方向に整形するファスト軸コリメータレンズと、
    前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記レーザ光源のスロー軸に対応する方向に整形するスロー軸コリメータレンズと、
    前記ファスト軸コリメータレンズおよび前記スロー軸コリメータレンズにより整形された前記レーザ光を前記波長変換部材の入射面に集光させる集光レンズと、を備える、
    ことを特徴とする光源装置。
  2. 請求項1に記載の光源装置において、
    前記ファスト軸コリメータレンズは、前記スロー軸コリメータレンズよりも前記レーザ光源に近い位置に配置されている、
    ことを特徴とする光源装置。
  3. 請求項1または2に記載の光源装置において、
    前記レーザ光源から出射された前記レーザ光を前記波長変換部材の入射面上において走査させる光偏向器を備え、
    前記ファスト軸コリメータレンズおよび前記スロー軸コリメータレンズは、前記レーザ光源と前記光偏向器の間に配置されている、
    ことを特徴とする光源装置。
  4. 請求項3に記載の光源装置において、
    前記整形光学系は、前記ファスト軸コリメータレンズおよび前記スロー軸コリメータレンズによって整形されたレーザ光のビームサイズを縮小して前記光偏向器に導く縮小光学系をさらに備える、
    ことを特徴とする光源装置。
  5. 請求項3または4に記載の光源装置において、
    前記整形光学系は、前記集光レンズと前記光偏向器との間の光路の長さが、前記光偏向器と前記波長変換部材との間の光路の長さよりも短くなるよう構成されている、
    ことを特徴とする光源装置。
  6. 請求項3ないし5の何れか一項に記載の光源装置において、
    前記整形光学系は、前記波長変換部材の入射面におけるレーザ光のビーム形状が走査方向に垂直な方向に細長くなるように、前記レーザ光を整形する、
    ことを特徴とする光源装置。
  7. 請求項6に記載の光源装置において、
    前記集光レンズで集光されたレーザ光を前記波長変換部材の入射面に斜め方向から入射させる反射ミラーを備え、
    前記波長変換部材の入射面に対する前記レーザ光の入射角が60度よりも大きくなっている、
    ことを特徴とする光源装置。
  8. 請求項7に記載の光源装置において、
    前記波長変換部材の入射面に入射する前記レーザ光の光軸を含み、且つ、前記入射面に垂直な平面が、前記スロー軸に対応する方向に略平行となるように、前記レーザ光源が配置されている、
    ことを特徴とする光源装置
  9. 請求項1ないし8の何れか一項に記載の光源装置において、
    前記レーザ光源が複数設けられ、
    前記レーザ光源ごとに個別に前記ファスト軸コリメータレンズが配置され、
    前記各ファスト軸コリメータレンズによってファスト軸に対応する方向に整形された各レーザ光が共通の前記スロー軸コリメータレンズによってスロー軸に対応する方向に整形されるように、前記複数のレーザ光源、前記複数のファスト軸コリメータレンズおよび前記共通のスロー軸コリメータレンズが配置されている、
    ことを特徴とする光源装置。
  10. 請求項1ないし9の何れか一項に記載の光源装置と、
    前記波長変換部材により拡散された光を投射する投射光学系と、を備える、
    ことを特徴とする投光装置。
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