JP2019157441A - 既存構造物の解体システムおよび解体方法 - Google Patents
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例えば、地表面から既存建物に沿ってマストを設置し、このマストにタワークレーンを取り付けて、このタワークレーンにより解体材を荷下ろしする方法がある。この場合、マストを既存建物の構造体に仮固定しておき、建物の解体に伴って、リフトダウンさせる(特許文献1参照)。
よって、従来のようにクレーン設置床に既存床の一部を利用しないので、大掛かりな補強が不要となり、施工費用を削減できる。
また、解体対象となるフロアの側面を外部足場で囲むとともに、上面をクレーン設置床で覆ったので、解体工事で発生する粉塵が飛散したり騒音が外部に漏れたりするのを防止できる。
また、吊り架構によりクレーン設置床の中央部側から両端側を吊り下げ支持したので、クレーン設置床の面積が広い場合でも、クレーン設置床の中央部のみを支持柱で仮支持すればよいので、昇降装置の設置台数を増やす必要がなく、施工費用が増大するのを抑制できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る既存構造物の解体方法が適用される既存構造物としての既存建物1およびこの解体方法に用いられる解体システム2の縦断面図である。図2は、解体システム2の平面図である。図3は、図1のI−I断面図である。図4は、図2および図3のII−II断面図であり、図5は、図2および図3のIII−III断面図である。図6は、図2および図3のIV−IV断面図である。なお、図1は、図2および図3のV−V断面図である。
既存建物1は、n(nは自然数)階建ての建物であり、平面視で長方形状である。以下、この既存建物1の長手方向をX方向とし、このX方向に略直交する短手方向をY方向とする。
解体システム2は、既存建物1の屋上階の上に構築されたクレーン設置床20と、クレーン設置床20上に設置されたジブクレーンであるクレーン21と、支持柱11Aに取り付けられてクレーン設置床20を支持柱11Aに沿って下降させる昇降装置22と、クレーン設置床20に設けられて支持柱11A、11Bの継手部14の上面に係止可能な係止装置23と、クレーン設置床20が支持柱11A、11Bに対して水平方向に揺れるのを防止する振れ止め装置24と、既存建物1を囲んで地表面に架設された外部足場25と、を備える。
つまり、支持柱11Aに対しては、昇降装置22、係止装置23、および振れ止め装置24が設けられるが、支持柱11Bに対しては、係止装置23および振れ止め装置24のみが設けられ、昇降装置22は設けられていない。
クレーン21は、走行レール90の上を走行する走行台車91と、この走行台車91に旋回可能に支持されたクレーン本体92と、このクレーン本体92に起伏可能に支持されたジブ93と、このジブ93の先端に吊り下げ支持された図示しないフックと、クレーン本体92に設けられてフックを昇降させる巻上装置94と、を備える。
ストランドジャッキ43は、ジャッキ支持部51に上向きに固定されている。
これら一対の梁部材53Aの下部には、この梁部材53Aの長さ方向に延びる挿通孔54が形成されている。この挿通孔54の下面には、複数のボルト挿通孔55が梁部材53Aの長さ方向に並んで形成されている(図19参照)。
吊り材42は、一対の滑車64に巻かれており、一端側が吊り材支持部52に連結され、他端側がジャッキ支持部51に固定されたストランドジャッキ43に連結されている。
ストランドジャッキ43は、先端面が円形であり、例えば7本のストランドを引っ張ることが可能である。本実施形態では、図14(a)に示すように、7本のストランドのうち、ストランドジャッキ43の先端面の中心を通る一直線上に並ぶ3本のストランドのみを、吊り材42として用いる。
滑車64は、直径が同一のプーリ65を3枚重ねて構成されており、ストランドジャッキ43の3本のストランドとしての吊り材42が巻かれている。
仮固定ジャッキ62は、ねじ66を回転させることで伸縮し、水平方向の長さ寸法l1を変更可能となっている。この仮固定ジャッキ62では、ねじ66は、仮固定ジャッキ62の長さ方向の中央に位置する構造である。
図8〜図11にも示すように、係止装置23は、一対のかんぬき梁70と、この一対のかんぬき梁70同士を接近あるいは離間させる方向に略水平に移動する一対の開閉機構71A、71Bと、を備える。
支持柱11Aの互いに背中合わせの側面には、一対の継手部14が側方に延びており、係止装置23は、この一対の継手部14の上面に一対のかんぬき梁70を載せて係止させる。
図17および図18に示すように、支持部72の水平片721の上面から梁部材53Bの下面までの距離h1は、かんぬき梁70の高さ寸法h2よりも僅かに高くなっている。これにより、かんぬき梁70を梁部材53Bに干渉することなく水平移動できる。
すなわち、開閉機構71A、71Bのモータ74を駆動して、チェーン76を図17中矢印方向に回転させることで、支持部72に支持された一対のかんぬき梁70同士を接近させ、一対のかんぬき梁70を支持柱11Aの継手部14の上に位置させる。
このとき、かんぬき梁70は支持部72に対して上方に相対移動するが、支持部72の一対の鉛直片がかんぬき梁70の両側面に当接しているので、かんぬき梁70が上方に移動しても、このかんぬき梁70の脱落を防止できる。
すなわち、昇降装置22によりクレーン設置床20を少し上昇させて、かんぬき梁70を支持部72に対して下方に相対移動させ、支持部72の水平片721の上に載せる。これにより、かんぬき梁70の上面と梁部材53Bの下面との間には、隙間が形成される。
この状態で、開閉機構71A、71Bのモータ74を駆動して、チェーン76を図18中矢印方向に回転させることで、支持部72に支持された一対のかんぬき梁70同士を離間させて、一対のかんぬき梁70を支持柱11Aの継手部14の上から退避させる。これにより、かんぬき梁70と梁部材53Bとが接触することなく、かんぬき梁70を円滑に水平移動できる。
振れ止め装置24は、クレーン設置床20に支持されて支持柱11Aの側面に当接して押さえるものである。
この振れ止め装置24は、クレーン設置床20の梁部材53A間にX方向に水平移動可能に架設されてY方向に延びる一対の第1支持部材80と、各第1支持部材80に一対ずつY方向に水平移動可能に設けられた第2支持部材81と、各第2支持部材81に螺合されて第2支持部材からのY方向の突出寸法を調整可能なボルト82と、各第2支持部材81に設けられて表面が円滑な滑り材83と、を備える。
また、図20に示すように、滑り材83と支持柱11Aの側面との間にくさび85を打ち込むことで、クレーン設置床20のX方向の振れ止めを行う。一方、くさび85を取り外すことで、クレーン設置床20のX方向の振れ止めを解除できる。
ステップS1では、図1に示すように、解体システム2を構築する。
すなわち、既存建物1の屋上階にクレーン設置床20、クレーン21、昇降装置22、係止装置23、振れ止め装置24を構築する。また、既存建物1の外壁面に沿って地表面に外部足場25を架設する。
また、係止装置23のかんぬき梁70を、仮設ピース16を介して、屋上階床レベルの支持柱11Aの継手部14上に載置することで、クレーン設置床20を支持柱11A、11Bに仮支持させる。
また、振れ止め装置24のボルト82により、クレーン設置床20の支持柱11A、11Bに対するY方向の振れ止めを行うとともに、振れ止め装置24のくさび85を取り付けて、クレーン設置床20の支持柱11A、11Bに対するX方向の振れ止めを行う。
なお、後述のステップS10においてステップS2を繰り返す場合には、既存建物1を2層分ではなく1層分解体するものとする。
すなわち、支持柱11Aによるクレーン設置床20の振れ止めを解除する。具体的には、振れ止め装置24のボルト82を後退させるとともに、振れ止め装置24のくさび85を取り外す。
次に、ストランドジャッキ43により吊り材42に張力を導入して、クレーン設置床20少し上方に持ち上げて地切りする。この状態で、係止装置23の開閉機構71A、71Bを駆動して、一対のかんぬき梁70を支持柱11Aの継手部14の上から退避させる。これにより、クレーン設置床20は、昇降装置22を介して支持柱11Aに仮支持された状態となる。
ステップS5では、クレーン設置床20を支持柱11A、11Bに再度仮支持させる。
すなわち、係止装置23の開閉機構71A、71Bを駆動して、一対のかんぬき梁70を支持柱11Aの継手部14の上に位置させる。次に、ストランドジャッキ43によりクレーン設置床20を下降させて、係止装置23のかんぬき梁70を支持柱11Aの継手部14の上面に係止させる。次に、振れ止め装置24のボルト82でクレーン設置床20のY方向の振れ止めを行うとともに、振れ止め装置24のくさび85を取り付けて、クレーン設置床20のX方向の振れ止めを行う。
ステップS7では、昇降装置22の反力部材41を支持柱11Aから取り外して仮置きする。このとき、取り外した反力部材41を既存柱11の頂部に仮置きしてもよい。
すなわち、クレーン設置床20上からチェーン69を引っ張ることで、反力部材41の仮固定ジャッキ62を駆動して、反力部材41の仮固定を解除する。次に、反力部材41をクレーン21で吊り上げて、この支持柱11Aから取り外す。
ステップS8は、図24に示すように、支持柱11Aの上部を切断して撤去する。このようにして、支持柱11Aを含む全ての既存柱11の上部を撤去する。
すなわち、反力部材41をクレーン21で吊り上げて、支持柱11Aの頂部に再度配置する。次に、クレーン設置床20上からチェーン69を引っ張ることで、反力部材41の仮固定ジャッキ62を駆動して、反力部材41を支持柱11Aに仮固定する。また、振れ止め装置24のボルト82でクレーン設置床20のY方向の振れ止めを行うとともに、振れ止め装置24のくさび85を取り付けて、クレーン設置床20のX方向の振れ止めを行う。
ステップS10は、ステップS2からステップS9までを繰り返す。
(1)既存建物1を囲む外部足場25を地表面に架設するとともに、既存建物1の解体対象となるフロアを覆うクレーン設置床20を構築した。ここで、既存建物1の一部の既存柱11を支持柱11Aとし、この支持柱11Aにクレーン設置床20のY方向中央部を仮支持させるとともに、クレーン設置床20のY方向中央部側からY方向両端側を吊り下げ支持する吊り架構35を設けた。そして、クレーン設置床20に設置したクレーン21により既存建物1を解体しながら、昇降装置22によりクレーン設置床を下降させた。よって、従来のようにクレーン設置床に既存床の一部を利用しないので、大掛かりな補強が不要となり、施工費用を削減できる。
(3)吊り架構35によりクレーン設置床20のY方向中央部側からY方向両端側を吊り下げ支持したので、クレーン設置床20の面積が広い場合でも、クレーン設置床20の中央部のみを支持柱11Aで仮支持すればよいので、昇降装置22の設置台数を増やす必要がなく、施工費用が増大するのを抑制できる。
(5)クレーン設置床20の外周にガイドフレーム33を設けるとともに、外部足場25にガイドフレーム33の下降を案内するガイド部材38を設けた。よって、クレーン設置床20を支持柱11A、11Bに沿って下降させると、クレーン設置床20とともにガイドフレーム33も下降するが、このとき、外部足場25に取り付けたガイド部材38によりガイドフレーム33の下降を案内するので、クレーン設置床20の円滑な移動を確保できる。
例えば、本実施形態では、クレーン設置床20にジブクレーンであるクレーン21を設けたが、これに限らず、天井走行クレーンやテルハを設けてもよい。
また、本実施形態では、既存建物1の屋上階のフロア全体を覆うようにクレーン設置床20を設けたが、これに限らず、クレーン設置床をフロアの一部のみを覆うように設けてもよい。
11…既存柱 11A、11B…支持柱 12…既存梁 13…既存床
14…支持柱の継手部 15…仮設柱 16…仮設ピース
20…クレーン設置床 21…クレーン 22…昇降装置 23…係止装置
24…振れ止め装置 25…外部足場
30…床フレーム 31…梁部材 32…トラス梁 33…ガイドフレーム
34…床部材
35…吊り架構 36…吊り支柱 37…吊りケーブル 38…ガイド部材
40…フレーム 41…反力部材 42…吊り材 43…ストランドジャッキ
50…基部 51…ジャッキ支持部 52…吊り材支持部 53A、53B…梁部材
54…挿通孔 55…ボルト挿通孔
60…ボックス部材 61…反力梁 62…仮固定ジャッキ 63…水平部材
64…滑車 65…プーリ 66…ねじ 67…長孔 68…ハンドル
69…チェーン
70…かんぬき梁 71A、71B…開閉機構 72…支持部 73…移動機構
74…モータ 75…滑車 76…チェーン 721…水平片 722…鉛直片
80…第1支持部材 81…第2支持部材 82…ボルト 83…滑り材
84…ボルト挿通孔 85…くさび
90…走行レール 91…走行台車
92…クレーン本体 93…ジブ 94…巻上装置
Claims (5)
- 既存構造物を解体する解体システムであって、
既存構造物の所定のフロアの上に構築されて当該フロアを覆うクレーン設置床と、当該クレーン設置床の中央部を支持する既存柱である支持柱と、前記クレーン設置床に設置されたクレーンと、前記クレーン設置床を前記支持柱に沿って下降させる昇降装置と、前記既存構造物を囲んで地表面に架設された外部足場と、を備え、
前記クレーン設置床には、当該クレーン設置床の中央部側から両端側を吊り下げ支持する吊り架構が設けられることを特徴とする既存構造物の解体システム。 - 前記吊り架構は、前記クレーン設置床の中央部に立設された吊り支柱と、当該吊り支柱の頂部に架設されて両端が前記クレーン設置床の両端側に連結された吊りケーブルと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の既存構造物の解体システム。
- 前記クレーン設置床には、当該クレーン設置床の外周に沿ってガイドフレームが設けられ、
前記外部足場には、前記ガイドフレームの側面に当接して当該ガイドフレームの下降を案内するガイド部材が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の既存構造物の解体システム。 - 前記昇降装置は、前記支持柱の上端に取り付けられて略水平に延びてかつ両端側に回転自在に設けられた一対の滑車を有する反力部材と、当該反力部材の滑車に巻かれて一端側が前記クレーン設置床に連結された吊り材と、前記クレーン設置床に設けられて前記吊り材の他端側を引っ張る昇降ジャッキと、をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の既存構造物の解体システム。
- 既存構造物を解体する解体方法であって、
当該既存構造物の所定の既存柱を支持柱とし、当該支持柱に仮支持させて前記既存構造物の所定のフロア上に当該フロアを覆うクレーン設置床を構築し、このとき、前記支持柱により前記クレーン設置床の中央部を支持し、前記クレーン設置床に当該クレーン設置床の中央部側から両端側を吊り下げ支持する吊り架構を設け、さらに、当該クレーン設置床にクレーンを設置するとともに、前記既存構造物を囲む外部足場を地表面に架設する第1工程と、
前記クレーンを用いて、少なくとも前記支持柱を残して前記所定のフロアから1層分を解体する第2工程と、
前記支持柱による前記クレーン設置床の仮支持を解除し、前記クレーン設置床を前記支持柱に沿って1層分下降させて、その後、当該前記クレーン設置床を前記支持柱に再度仮支持させる第3工程と、
前記外部足場の上部を解体するとともに、前記支持柱の上部を撤去する第4工程と、
前記第2工程から第4工程までを繰り返す第5工程と、を備えることを特徴とする既存構造物の解体方法。
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