JP2019156880A - 耐熱性スチレン系樹脂組成物、成形品、発泡シート、及び食品包装用容器 - Google Patents
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Abstract
Description
第一に、特許文献1〜2の技術では、脆性等の機械的強度の改良が不十分であり、脆性を改良するためにゴム質成分を多く添加すると、耐熱性や剛性が低下する問題があった。また、発泡シートの2次成形において、成形品に割れやナキ等の成形不良が発生することがあった。
第二に、特許文献3の技術では、従来の技術に比べて、耐熱性と成形性は改善されるものの、脆性の改良効果については不十分であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、上記に記載した耐熱性と、靱性、成形性のバランスに優れるという課題を達成することを目的とする。
(1)スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(A)、コア相がブタジエン系ゴムでシェル相がメタクリル酸メチル単量体とスチレン系単量体を主成分とする共重合体である、MBS樹脂(B)を含む、耐熱性スチレン系樹脂組成物であって、
前記共重合体(A)からなる海相に、前記MBS樹脂(B)が島相として分散し、電子顕微鏡写真の画像観察から得られる、前記MBS樹脂(B)のゴム島相の重量平均円相当粒子径が120nm以上であり、且つ、100nm以上の円相当粒子径の個数割合が40%以上であることを特徴とする耐熱性スチレン系樹脂組成物。
(2)前記共重合体(A)、及び前記MBS樹脂(B)の合計量を100質量%としたとき、前記共重合体(A)の含有量が70〜99質量%、前記MBS樹脂(B)の含有量が1〜30質量%である、前記(1)に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
(3)前記共重合体(A)に含まれる、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸単量体単位の合計量を100質量%としたとき、スチレン系単量体単位の含有量が80〜99質量%であり、(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が1〜20質量%である、前記(1)又は(2)に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
(4)前記共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が10万〜40万である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
(5)ビカット軟化温度が110℃以上である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物を成形してなる、成形品。
(7)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物を成形してなる、発泡シート。
(8)前記(7)に記載の発泡シートを成形してなる食品包装用容器。
本発明の耐熱性スチレン系樹脂組成物は、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(A)、及び、コア相がブタジエン系ゴムでシェル相がメタクリル酸メチル単量体とスチレン系単量体を主成分とする共重合体である、MBS樹脂(B)を含む。
本発明のスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(A)はスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸単量体を必須成分とするが、必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル系モノマーを共重合することができる。
本発明のMBS樹脂(B)は、コア相がブタジエン系ゴムでシェル相がメタクリル酸メチル単量体とスチレン系単量体を主成分とする共重合体である、いわゆるコアシェル構造を有するメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体である。
本発明の耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法としては、前記スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(A)、及び前記MBS樹脂(B)を一括でブレンドし、溶融押出する方法や、予め、MBS樹脂(B)を含むマスターバッチを作成しておいて、後から前記スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(A)とブレンドし、溶融押出する方法等が挙げられる。
好ましく、1〜3mmがより好ましい。発泡シートの厚さが0.1mm未満では、2次成形後の容器の強度や断熱性が低下する。発泡シートの厚さが100mmを超えると、2次成形時にシートの温度ムラが発生しやすく、成形性が悪化する場合がある。
(1)スチレン−メタクリル酸共重合体S−1の製造
下記第1〜第3反応器を直列に接続して重合工程を構成した。
第2反応器:容積39Lの攪拌翼付完全混合型反応器
第3反応器:容積16Lのスタティックミキサー付プラグフロー反応器
第2反応器:[反応温度] 125℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に125〜130℃の温度勾配がつくように調整
この重合液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、ストランド状に押し出して冷却した後切断してペレット化した。なお、1段目の予熱器の温度は200℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は66.7kPaとし、2段目の予熱器の温度は240℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は0.9kPaとした。得られたスチレン−メタクリル酸共重合体S−1の特性を表1に示す。
以下の原料液を用い、原料液の供給速度を12.0kg/hrとし、1〜3反応器の温度条件を以下のように変更した以外はS−1の製造と同様にした。その特性を表1に示す。
スチレン93.0質量%、メタクリル酸7.0質量%のモノマー構成100質量部に対してエチルベンゼン10質量部、重合開始剤として2,2ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロへキシル)プロパン0.02質量部を混合した原料液
第1反応器:[反応温度] 128℃
第2反応器:[反応温度] 138℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に120〜125℃の温度勾配がつくように調整
以下の原料液を用い、原料液の供給速度を12.0kg/hrとし、1〜3反応器の温度条件を以下のように変更した以外はS−1の製造と同様にした。その特性を表1に示す。
スチレン91.7質量%、メタクリル酸8.3質量%のモノマー構成100質量部に対してエチルベンゼン15質量部、重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.025質量部、連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー0.1質量部を混合した原料液
第1反応器:[反応温度] 124℃
第2反応器:[反応温度] 138℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に125〜138℃の温度勾配がつくように調整
上記の方法で製造したスチレン−メタクリル酸共重合体(A)(S−1〜3)と、MBS樹脂(B)、ハイインパクトポリスチレン(C)を表2に示す質量%比率にてヘンシェルミキサーで混合し、230〜260℃に設定した二軸押出機(神戸製鋼所製、KTX30α)にて溶融コンパウンドした。ソリッド物性を表2に示す。
<MBS樹脂(B)>
MBS−1 商品名:「カネエースB−564」 カネカ社製
ゴム含有量79%
MBS−2 商品名:「カネエースM−511」 カネカ社製
ゴム含有量85%
MBS−3 商品名:「メタブレンC−223A」 三菱ケミカル社製
ゴム含有量75%
MBS−4 商品名:「メタブレンC−215A」 三菱ケミカル社製
ゴム含有量73%
<ハイインパクトポリスチレン(C)>
商品名:「トーヨースチロール H848」 東洋スチレン社製
ゴム含有量10.0%、ゴム粒子径1.9μm
その後、230℃に設定した連結管を介してスクリュー径50mmφの押出機に移送し、シリンダー温度160〜200℃、樹脂温度160〜170℃、15〜17MPaに調整し、リップ開度0.6mm、口径40mmのサーキュラーダイスより吐出量10kg/hrで押出し直径152mmの冷却された円筒に添わせて引取り、円周の下部1点でカッターにより切開して発泡シートを得た。得られた発泡シートの厚みは1.7mm、密度は120kg/m3であった。その特性を表2に示す。
室温にて、共重合体0.5gを秤量し、トルエン/エタノール=8/2(体積比)の混合溶液に溶解後、水酸化カリウム1mol/エタノール溶液にて中和滴定を行い終点を検出し、水酸化カリウムエタノール溶液の使用量より、メタクリル酸の質量基準の含有量を算出する。なお、電位差自動検出装置(京都電子工業社製、AT−510)により測定した。
(2)分子量
重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ―(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:Waters社製 アライアンスシステム2695
カラム:東ソー社製 TSKgel−GMHXL(ID)×300mm(L)
移動相:テトラヒドロフラン 0.35ml/min
試料濃度:0.2質量%
注入量:50μL
温度:40℃
検出器:示差屈折計 Waters社製 アライアンスシステム2414
単分散ポリスチレンの溶出曲線により各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出した。
(3)重量円相当粒子径、円相当粒子径の個数割合
樹脂組成物を80nmの超薄切片に切り出した後、四酸化オスミウムで染色し、透過型顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製H−7500)を用いて、倍率15,000倍の写真を撮影し、100μm2の面積内に存在するゴム分散粒子について、旭化成エンジニアリング社製画像解析ソフト「A像くん」を用いて、2値化処理を行い、得られた分散粒子の面積と同じ面積となる円の直径(円相当粒子径:Di)を求め、下記式から重量平均円相当粒子径(Dv)を求めた。さらに、得られた各円相当粒子径の個数より、100nm以上の円相当粒子径の個数割合を求めた。なお、ゴム分散粒子が凝集したものについては、凝集した形態を1個として数えることとしたが、円相当粒子径が500nmを超える凝集体については、除外した。
(4)メルトマスフローレイト
JIS K7210に基づき200℃、49N荷重の条件により求めた。
(5)ビカット軟化温度
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7206に基づき50N荷重の条件により求めた。
(6)荷重たわみ温度
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7191に基づき1.8MPa応力の条件により求めた。
(7)溶融張力(MT)
キャピログラフ1B型(東洋精機社製)を使用し、バレル温度200℃、バレル径9.55mm、キャピラリー長さ:L=10mm、キャピラリー径:D=1mm(L/D=10)、バレル内の押出し速度10mm/分にて樹脂を押出し、荷重測定部をダイから60cm下方にセットし、キャピラリーより流出してきたストランド状の樹脂を巻き取り器にセットし、巻き取り線速度を4m/分から徐々に速度を上昇していき、ストランドが破断するまでの荷重を測定する。荷重は巻き取り線速度を上げていくと、一定値に安定するので、荷重が安定した範囲を平均化して溶融張力値(MT)とした。
(8)シートインパクト強度
フィルムインパクトテスターBU−302(テスター産業社製)を用いて衝撃球面R12.7mmにて測定を行った。測定は発泡シートの表面、裏面、各々20回ずつ行い、全ての平均値をシートインパクト強度とした。
(9)成形性
発泡シートを単発成形機を用いて口径φ100mm、深さ60mmのカップ形状容器を熱成形した。ヒーター温度280℃一定にし、加熱時間を0.5秒刻みに変化させ、容器の穴あきやナキの発生しない加熱時間幅を確認し、成形可能な時間幅が10秒以上の場合を◎、8〜10秒の場合を○、5〜8秒の場合を△、5秒以下の場合を×として深絞り成形性を評価した。
(10)容器強度(割れ)
上記の成形可能な条件にて得られた容器について、小型卓上試験機Ez−test(島津製作所社製、型式:Ez−SX)を用い、容器の口元TD方向の両端部を2枚の板で挟んだ状態で、一方の端を500m/mmの速度で圧縮し、30mm変位時の割れが全く無いものを◎、発泡断面の内部のみに割れが発生するものを○、発泡断面の表層に割れが発生するものを△、発泡断面の表層から内部にかけて全体に割れが発生するものを×として容器強度を評価した。
(11)耐レンジアップ変形
上記の成形可能な条件にて得られた容器について、出力1500Wの電子レンジで70秒加熱し、表面状態を観察し、容器の変形や隆起が全く無いものを◎、容器の一部にわずかに変形や隆起が見られるものを○、容器に大きな変形や隆起が見られるものを△、容器の形状が崩れるか穴あきが発生するものを×とし耐熱性を評価した。
Claims (8)
- スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(A)、コア相がブタジエン系ゴムでシェル相がメタクリル酸メチル単量体とスチレン系単量体を主成分とする共重合体である、MBS樹脂(B)を含む、耐熱性スチレン系樹脂組成物であって、
前記共重合体(A)からなる海相に、前記MBS樹脂(B)が島相として分散し、電子顕微鏡写真の画像観察から得られる、前記MBS樹脂(B)のゴム島相の重量平均円相当粒子径が120nm以上であり、且つ、100nm以上の円相当粒子径の個数割合が40%以上であることを特徴とする耐熱性スチレン系樹脂組成物。 - 前記共重合体(A)、及び前記MBS樹脂(B)の合計量を100質量%としたとき、前記共重合体(A)の含有量が70〜99質量%、前記MBS樹脂(B)の含有量が1〜30質量%である、請求項1に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
- 前記共重合体(A)に含まれる、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸単量体単位の合計量を100質量%としたとき、スチレン系単量体単位の含有量が80〜99質量%であり、(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が1〜20質量%である、請求項1又は2に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
- 前記共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が10万〜40万である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
- ビカット軟化温度が110℃以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物を成形してなる、成形品。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物を成形してなる、発泡シート。
- 請求項7に記載の発泡シートを成形してなる食品包装用容器。
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