JP2019152519A - ガスセンサ素子およびガスセンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】内面リード部の材料として導電性酸化物を用いる場合であっても、高温環境下での高抵抗化を抑制するとともに、振動などの外力の影響による内面リード部の剥がれを抑制できるガスセンサ素子、およびガスセンサを提供する。【解決手段】本開示の一態様は、固体電解質体と、基準電極と、測定電極と、内面リード部と、を備えるガスセンサ素子である。内面リード部は、基準電極に当接する内面先端リード部と、外部の金属端子に当接する内面後端リード部と、を備える。内面先端リード部は、内面後端リード部よりも厚さ寸法が大きい。このガスセンサ素子は、内面リード部が導電性酸化物で形成されることで、Ptを用いる場合に比べて、コスト低減を図ることができる。このガスセンサ素子は、内面先端リード部の厚さ寸法よりも内面後端リード部の厚さ寸法が小さいことで、内面後端リード部に剥がれが生じるのを抑制できる。【選択図】 図3

Description

本発明は、固体電解質体および一対の電極(基準電極、測定電極)を備えるガスセンサ素子、およびガスセンサ素子を備えるガスセンサに関する。
測定対象ガス(例えば排気ガス等)に含まれる特定ガス(例えば、酸素、NOx等)を検出するためのガスセンサ素子、およびそのようなガスセンサ素子を備えるガスセンサが知られている。ガスセンサ素子は、固体電解質体と、固体電解質体を挟み込むように配置された一対の電極と、を備える。
固体電解質体としては、有底筒状に形成されるとともに側面から外向きに突出する鍔部を有し、ジルコニアを含んで構成されるものがある。このような固体電解質体を備えるガスセンサ素子は、一対の電極として、内側電極(基準電極)と外側電極(測定電極)とを備える。
このようなガスセンサ素子は、固体電解質体の内面において、基準電極に電気的に接続されるとともに、基準電極から固体電解質体の後端まで延設されて、外部の金属端子に接続される内面リード部を備える。内面リード部は、導電性材料で形成されており、例えば、Pt(白金)を用いて形成される。
なお、Ptは高価な材料であるため、コスト低減を実現するために、他の安価な材料を利用することがある。例えば、組成式:LaNiOx(MはCoとFeのうちの一種以上、a+b+c=1、1.25≦x≦1.75)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有するペロブスカイト相を含有する導電性酸化物を用いることができる(特許文献1)。
ガスセンサ素子の先端部分では、内面リード部は、高温耐久性が要求されるため、厚さ寸法が厚い方が有利である。ガスセンサ素子の後端部分では、内面リード部は、金属端子との組合せ時における剥がれに強いことが要求されるため、端部での金属端子との引っ掛かりが生じにくいように、厚さ寸法は薄い方が有利である。
特開2017−020928号公報
しかし、上記のガスセンサ素子においては、内面リード部として導電性酸化物を用いる場合、ガスセンサ素子の先端部分における内面リード部は、高温環境下に晒されるために電気抵抗値が高くなる可能性がある。
具体的には、内面リード部の導電性酸化物の構成元素の一部が蒸散して組成変化が生じたり、異相が生成される影響により、内面リード部の電気抵抗値が高くなる場合がある。
また、ガスセンサの製造工程においてガスセンサ素子と金属端子とを組み付ける場合、ガスセンサ素子の後端部分の内面リード部は、組付け時の金属端子との摩擦により剥がれが生じる場合がある。さらに、ガスセンサ素子の後端部分の内面リード部にこのような剥がれが生じると、ガスセンサ(ガスセンサ素子)を設置した後に、内面リード部のうち剥がれ部分に連なる部分において、振動などの外力の影響により剥がれが生じる場合がある。つまり、ガスセンサ(ガスセンサ素子)を設置した後に、内面リード部の剥がれ部分に外力が加わると、その剥がれ部分に連なる部分が剥がれる可能性がある。
そこで、本開示は、内面リード部の材料として導電性酸化物を用いる場合であっても、高温環境下での高抵抗化を抑制するとともに、振動などの外力の影響による内面リード部の剥がれを抑制できるガスセンサ素子、およびそのようなガスセンサ素子を備えるガスセンサを提供することが望ましい。
本開示の一態様は、固体電解質体と、基準電極と、測定電極と、内面リード部と、を備えるガスセンサ素子である。
固体電解質体は、先端が閉塞し後端が開口する有底筒状に形成される。固体電解質体は、側面から外向きに突出する鍔部を有し、ジルコニアを含んで構成される。基準電極は、固体電解質体の先端の内面に形成される。測定電極は、固体電解質体の先端の外面に形成される。内面リード部は、固体電解質体の内面において、基準電極に電気的に接続されるとともに、基準電極から固体電解質体の後端まで延設されて、外部の金属端子に接続される。
内面リード部は、組成式:LaNiOx(MはCoとFeのうちの一種以上、a+b+c=1、0.375≦a≦0.535、0.200≦b≦0.475、0.025≦c≦0.350、1.25≦x≦1.75)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有するペロブスカイト相を含有する導電性酸化物で形成される。内面リード部は、基準電極に当接する内面先端リード部と、外部の金属端子に当接する内面後端リード部と、を備える。
内面先端リード部は、内面後端リード部よりも厚さ寸法が大きい。内面後端リード部は、鍔部の後端よりも後端側の領域に少なくとも形成されている。
このガスセンサ素子は、内面リード部が導電性酸化物で形成されることで、Ptを用いる場合に比べて、コスト低減を図ることができる。
また、このガスセンサ素子は、内面先端リード部が内面後端リード部よりも厚さ寸法が大きいことで、高温環境下に晒される内面先端リード部において、内面リード部の導電性酸化物の構成元素の一部が蒸散して組成変化が生じたり、異相が生成されても、低抵抗な導電性酸化物を確保できるため、高抵抗化を抑制できる。
さらに、このガスセンサ素子は、内面先端リード部の厚さ寸法よりも内面後端リード部の厚さ寸法が小さいことで、内面後端リード部に剥がれが生じるのを抑制できる。
つまり、このガスセンサ素子は、ガスセンサの製造工程においてガスセンサ素子と金属端子とを組み付ける場合に、内面後端リード部と金属端子との摩擦を小さくできるため、金属端子との組付け時における内面後端リード部の剥がれを抑制できる。さらに、このように金属端子との摩擦による内面リード部の剥がれを抑制することで、ガスセンサ(ガスセンサ素子)を設置した後に、内面リード部のうち剥がれ部分に連なる部分において、振動などの外力の影響により剥がれが生じるのを抑制できる。
よって、本開示のガスセンサ素子によれば、内面リード部の材料として導電性酸化物を用いる場合であっても、高温環境下での高抵抗化を抑制するとともに、振動などの外力の影響による内面リード部の剥がれを抑制できる。
次に、上記のガスセンサ素子においては、内面先端リード部は、基準電極の後端と鍔部の先端との中間位置よりも先端側の領域に少なくとも形成されてもよい。
少なくともこの範囲に内面先端リード部を備えることで、ガスセンサ素子における内面リード部の形成領域のうち高温状態の領域には、内面先端リード部が形成されることになり、耐高抵抗化(耐高温性能)をより向上できる。
次に、上記のガスセンサ素子においては、内面先端リード部は、厚さ寸法が11〜28μmであり、内面後端リード部は、厚さ寸法が6〜10μmであってもよい。
例えば、内面先端リード部および内面後端リード部をこのような数値範囲で形成することで、高温安定性の向上(高抵抗化の抑制)および耐振動性(剥離の抑制)を実現できる。
本開示の他の一態様は、ガスセンサ素子と、ガスセンサ素子の内面リード部に接続される金属端子と、を備えるガスセンサであって、ガスセンサ素子は上述のうちいずれかのガスセンサ素子である。
このガスセンサは、上述のガスセンサ素子と同様に、内面リード部の材料として導電性酸化物を用いる場合であっても、高温環境下での高抵抗化を抑制するとともに、振動などの外力の影響による内面リード部の剥がれを抑制できる。
なお、内面後端リード部と金属端子との当接位置は、鍔部よりも後端側の領域であってもよい。
ガスセンサ1を軸線方向に破断した状態を示す図である。 ガスセンサ素子3の外観を示す正面図である。 ガスセンサ素子3の構成を示す断面図である。 図3における領域D1を拡大した断面図である。 図3における領域D2を拡大した断面図である。 ガスセンサ素子の耐高温性および耐振動性に関する評価試験の試験結果を示した説明図である。
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
本実施形態のガスセンサ1は、例えば自動車およびオートバイ等の車両の排気管に取り付けられ、排気管内の排気ガスに含まれる酸素濃度を検出する。
ガスセンサ1は、図1に示すように、ガスセンサ素子3、セパレータ5、閉塞部材7、金属端子9およびリード線11を備える。さらにガスセンサ1は、主体金具13と、プロテクタ15と、外筒16とを備えている。主体金具13、プロテクタ15および外筒16は、ガスセンサ素子3、セパレータ5および閉塞部材7の周囲を覆うように配置される。なお、外筒16は、内側外筒17および外側外筒19を備えている。
ガスセンサ1は、ガスセンサ素子3を加熱するためのヒータを備えていない。すなわち、ガスセンサ1は、排気ガスの熱を利用してガスセンサ素子3を活性化して酸素濃度を検出する。
ガスセンサ素子3は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体を用いて形成されている。ガスセンサ素子3は、図2に示すように、先端部25が閉塞された有底筒形状であり、軸線Oの方向(以下、軸線方向)に延びる円筒状の素子本体21を有している。この素子本体21の外周には、周方向に沿って径方向外向きに突出した素子鍔部23が形成されている。
なお、素子本体21を構成する固体電解質体は、ジルコニア(ZrO)に安定化剤としてイットリア(Y)またはカルシア(CaO)を添加してなる部分安定化ジルコニア焼結体を用いて構成されている。素子本体21を構成する固体電解質体は、これらに限られることはなく、「アルカリ土類金属の酸化物とZrOとの固溶体」、「希土類金属の酸化物とZrOとの固溶体」などを用いてもよい。さらには、これらにHfOが含有されたものを、素子本体21を構成する固体電解質体として用いてもよい。
ガスセンサ素子3の先端部25には、素子本体21の外周面に外側電極27が形成されている。外側電極27は、PtあるいはPt合金を多孔質に形成したものである。
素子鍔部23の先端側(すなわち、図2の下方)には、Pt等で形成された環状の環状リード部28が形成されている。
素子本体21の外周面のうち外側電極27と環状リード部28との間には、Pt等で形成された縦リード部29が軸線方向に延びるように形成されている。縦リード部29は、外側電極27と環状リード部28とを電気的に接続している。
また、図1に示すように、ガスセンサ素子3の内周面には、内側電極30が形成されている。内側電極30は、希土類添加セリアやペロブスカイト相等を含む材料を多孔質に形成したものである。ガスセンサ素子3の先端部25において、外側電極27が排気ガスに晒され、内側電極30が基準ガスに晒されることで、排気ガス中の酸素濃度を検出している。本実施形態では、基準ガスは大気である。
セパレータ5は、電気絶縁性を有する材料(例えばアルミナ)で形成された円筒形状の部材である。セパレータ5は、その軸中心に、リード線11が挿入される貫通孔35が形成されている。セパレータ5は、その外周側を覆う内側外筒17との間に空隙18が設けられるように配置されている。
閉塞部材7は、電気絶縁性を有する材料(例えばフッ素ゴム)で形成された円筒形状のシール部材である。閉塞部材7は、その後端に径方向外向きに突出する突出部36を備える。閉塞部材7は、その軸中心にリード線11が挿入されるリード線挿入孔37を備えている。閉塞部材7の先端面95は、セパレータ5の後端面97に密着し、閉塞部材7のうち突出部36よりも先端側の側方外周面98は、内側外筒17の内面に密着している。すなわち、閉塞部材7は、外筒16の後端側を閉塞している。
閉塞部材7の後端向き面99と、外側外筒19の縮径部19gの先端向き面19aとの間で、リード線保護部材89の鍔部89bが挟まれた状態で、リード線保護部材89が支持される。
このうち、縮径部19gは、閉塞部材7よりも後端側にて、径方向内側に延びており、縮径部19gの先端向き面19aは、ガスセンサ1の先端側に向く面として形成されている。縮径部19gの中央領域には、リード線11およびリード線保護部材89を挿入するためのリード線挿入部19cが形成されている。
リード線保護部材89は、リード線11を収容可能な内径寸法を有する筒状部材であり、可撓性、耐熱性および絶縁性を有する材料(例えば、ガラスチューブおよび樹脂チューブなど)で構成されている。リード線保護部材89は、リード線11を外部からの飛来物(例えば、石や水など)から保護するために取り付けられる。
リード線保護部材89は、先端側端部89aにおいて、軸線方向の垂直方向における外向きに突出する板状の鍔部89bを備える。鍔部89bは、リード線保護部材89の周方向の一部ではなく、全周にわたり形成されている。
リード線保護部材89の鍔部89bは、外側外筒19の縮径部19gの先端向き面19aと閉塞部材7の後端向き面99との間に挟まれている。
金属端子9は、センサ出力を外部に取り出すために、導電性材料で形成される筒状部材である。金属端子9は、リード線11に電気的に接続されるとともに、ガスセンサ素子3の内側電極30に電気的に接触するように配置されている。金属端子9は、その後端側に径方向(すなわち、軸線方向に対して垂直の方向)の外向きに突出するフランジ部77を備えている。フランジ部77は、3枚の板状のフランジ片75を備えている。
リード線11は、芯線65と、芯線65の外周を覆う被覆部67とを備えている。
主体金具13は、金属材料(例えば鉄またはSUS430)で形成された円筒状の部材である。主体金具13には、内周面において径方向内側に向かって張り出した段部39が形成されている。段部39は、ガスセンサ素子3の素子鍔部23を支持するために形成されている。
主体金具13のうち先端側の外周面には、ガスセンサ1を排気管に取付けるためのネジ部41が形成されている。主体金具13のうちネジ部41の後端側には、ガスセンサ1を排気管に着脱する際に取付工具を係合させる六角部43が形成されている。さらに、主体金具13のうち六角部43の後端側には、筒状部45が設けられている。
プロテクタ15は、金属材料(例えばSUS310S)で形成されており、ガスセンサ素子3の先端側を覆う保護部材であり、複数個形成されたガス流通孔を介して排気ガスをガスセンサ素子3に対して導入する。プロテクタ15は、その後端縁が、導電性材料で形成されたパッキン88を介して、ガスセンサ素子3の素子鍔部23と主体金具13の段部39との間に挟まれるようにして固定されている。
ガスセンサ素子3のうち素子鍔部23の後端側領域においては、主体金具13とガスセンサ素子3との間に、先端側から後端側にかけて、滑石で形成されたセラミック粉末47と、アルミナで形成されたセラミックスリーブ49とが配置されている。
さらに、主体金具13の筒状部45の後端部51の内側には、金属材料(例えばSUS430)で形成された金属リング53と、金属材料(例えばSUS304L)で形成された内側外筒17の先端部55とが配置されている。内側外筒17の先端部55は、径方向外向きに広がる形状に形成されている。つまり、筒状部45の後端部51が加締められることで、内側外筒17の先端部55が、金属リング53を介して筒状部45の後端部51とセラミックスリーブ49との間に挟まれて、内側外筒17が主体金具13に固定される。
また、内側外筒17の外周には、樹脂材料(例えばPTFE)で形成された筒状のフィルタ57が配置されるとともに、フィルタ57の外周には、例えばSUS304Lで形成された外側外筒19が配置されている。フィルタ57は、通気は可能であるが水分の侵入は抑制できるものである。
そして、外側外筒19の加締め部19bが外周側から径方向内向きに加締められることにより、内側外筒17とフィルタ57と外側外筒19とが一体に固定される。また、外側外筒19の加締め部19hが外周側から径方向内向きに加締められることにより、内側外筒17と外側外筒19とが一体に固定され、閉塞部材7の側方外周面98が、内側外筒17の内面に密着することとなる。
なお、内側外筒17および外側外筒19は、それぞれ通気孔59および通気孔61を備えている。すなわち、通気孔59,61とフィルタ57を介して、ガスセンサ1の内部と外部との通気が可能である。
[1−2.ガスセンサ素子]
上述のように、ガスセンサ素子3は、外側電極27と内側電極30とを備える。
図3に示すように、外側電極27と内側電極30は、ガスセンサ素子3の先端部25において、素子本体21を挟み込むように配置されている。素子本体21および一対の電極(すなわち、外側電極27および内側電極30)は、酸素濃淡電池を構成して、排気ガス中の酸素濃度に応じた起電力を発生させる。つまり、ガスセンサ素子3の先端部25において、外側電極27が排気ガスに晒され、内側電極30が基準ガスに晒されることで、ガスセンサ素子3は、排気ガス中の酸素濃度を検出する。
外側電極27は、上述の通り、縦リード部29を介して環状リード部28に電気的に接続されている。環状リード部28は、導電性材料で形成されたパッキン88およびプロテクタ15を介して、主体金具13に電気的に接続されている。なお、外側電極27を覆うように、外側電極27を保護するための不図示の電極保護層を形成してもよい。なお、外側電極27の形状および配置は単なる一例であり、これ以外の種々の形状および配置を採用可能である。
また、ガスセンサ素子3の素子本体21の内周面には、内側電極30が形成されている。内側電極30は、希土類添加セリアやペロブスカイト相等を含む材料を多孔質に形成したものである。内側電極30は、内側検知電極部30aと、内側リード部30bとを備える。
内側検知電極部30aは、素子本体21の先端部25の内表面を覆うように形成されている。内側リード部30bは、内側検知電極部30aに当接し、かつ、素子本体21の内表面のうち内側検知電極部30aよりも後端の全体を覆うように形成されている。内側リード部30bは、金属端子9と電気的に接続される。内側検知電極部30aおよび内側リード部30bは、全体として素子本体21の内面の全面を覆うように形成されている。
つまり、ガスセンサ素子3の素子本体21は、第1領域F1に外側電極27および内側検知電極部30aが形成され、第2領域F2に内側リード部30bが形成されている。素子本体21の第1領域F1は、素子本体21の先端部25に相当する。第1領域F1は、図3に示すガスセンサ素子3のうち位置K0から位置K1までの領域である。
図3に示すガスセンサ素子3のうち、領域D1の拡大図を図4に示すとともに、領域D2の拡大図を図5に示す。
図4に示すように、内側検知電極部30aは、素子本体21に近い側から順に、ランタンジルコネート層31、電極層32および電極リード層33aが積層された構造を有する。
電極リード層33aは、後述する接続リード層33bとともにリード層33を形成する。つまり、リード層33は、電極リード層33aと接続リード層33bとを備える。
ランタンジルコネート層31は、内側検知電極部30aの焼成時に、電極層32に含まれるランタン(La)と、素子本体21に含まれるジルコニア(ZrO)とが反応して形成されたランタンジルコネート(LaZr)の層である。このようなランタンジルコネート層31を、以下、反応層31ともいう。
電極層32とリード層33は、以下の組成式(1)を満たすペロブスカイト型酸化物結晶構造を有する結晶相(すなわち、ペロブスカイト相)を含んで構成されている。
LaNi ・・・(1)
ここで、元素MはCoとFeのうちの一種以上を表し、a+b+c=1であり、1.25≦x≦1.75である。係数a,b,cはそれぞれ、以下の関係式(2a),(2b),(2c)を満たすことが好ましい。
0.375≦a≦0.535 ・・・(2a)
0.200≦b≦0.475 ・・・(2b)
0.025≦c≦0.350 ・・・(2c)
上記の関係式(2a)〜(2c)で表される組成を有するペロブスカイト型導電性酸化物は、室温(例えば25℃)での導電率が250S/cm以上で且つB定数が600K以下となり、上記の関係式(2a)〜(2c)を満たさない場合に比べて導電率が高くB定数が小さいという良好な特性を有する。
係数a,b,cはそれぞれ、上記の関係式(2a),(2b),(2c)の代わりに下記の関係式(3a),(3b),(3c)を満たすようにしてもよい。この場合には、導電率を更に高くするとともにB定数を更に小さくすることができる。
0.459≦a≦0.535 ・・・(3a)
0.200≦b≦0.375 ・・・(3b)
0.125≦c≦0.300 ・・・(3c)
上記の組成式(1)におけるO(酸素)の係数xに関しては、上記の組成を有する導電性酸化物が全てペロブスカイト相からなる場合には、理論上はx=1.50となる。但し、酸素が量論組成からずれることがあるため、典型的な例として、係数xの範囲を1.25≦x≦1.75と規定している。
電極層32は、上記のペロブスカイト相および希土類添加セリアを含んで構成されている。
希土類添加セリアは、セリア以外の希土類酸化物が添加されたセリアである。「セリア以外の希土類酸化物」としては、La、Gd、Sm、Y等を利用することができる。このような希土類酸化物における希土類元素REの含有割合は、セリウムと希土類元素REのモル分率{RE/(Ce+RE)}に換算して、例えば、5mol%以上であり且つ40mol%以下である範囲とすることができる。このような希土類添加セリアは、低温(すなわち、室温)では絶縁体であり、高温(すなわち、ガスセンサ1の使用温度)では酸素イオン伝導性を有する固体電解質体である。
このような電極層32は、高温(すなわち、ガスセンサ1の使用時)においてイオン導電性と電子導電性の両方の性質を有しているため、十分に低い界面抵抗値を示す。
本実施形態では、電極層32に含まれる希土類添加セリアの割合が、30〜65体積%である。また本実施形態では、電極層32に含まれる希土類添加セリアの平均粒径が、0.64μm以下である。
リード層33は、上記のペロブスカイト相を主成分とし、希土類添加セリアを含まないで構成されている。
内側リード部30bは、接続リード層33b(リード層33)とランタンジルコネート層34とを含む多層構造を有する。ランタンジルコネート層34は、接続リード層33bよりも素子本体21に近い側に配置されている。
接続リード層33bは、上述した内側検知電極部30aの電極リード層33aと同様の組成で形成されている。但し、内側検知電極部30aを構成する電極リード層33aにおけるペロブスカイト相の含有割合は、内側リード部30bを構成する接続リード層33bにおけるペロブスカイト相の含有割合と同じか、それよりも多くてもよい。
ランタンジルコネート層34は、内側リード部30bの焼成時に、接続リード層33bに含まれるランタン(La)と、素子本体21に含まれるジルコニア(ZrO)とが反応して形成されたランタンジルコネート(LaZr)の層である。このようなランタンジルコネート層34を、以下、反応層34ともいう。ランタンジルコネート層34が形成されると、ランタンジルコネート層34と接続リード層33bとの間との密着性と、ランタンジルコネート層34と素子本体21との密着性とが高まるため、機械的な耐衝撃性が向上する。したがって、内側リード部30bが存在する部分では、接続リード層33bと素子本体21との間にランタンジルコネート層34が形成されることで、機械的な耐衝撃性を向上させることができる。
[1−3.内面先端リード部および内面後端リード部]
接続リード層33bは、内面先端リード部33b1と、内面後端リード部33b2と、を備える。内面先端リード部33b1は、接続リード層33bのうち先端側に形成されており、内側検知電極部30aに当接する。内面後端リード部33b2とは、接続リード層33bのうち後端側に形成されており、金属端子9に接続される。
図3に示すように、接続リード層33bのうち、素子本体21における位置K1と位置K4との間の領域(第3領域F3の全体と第4領域F4の一部)に形成される部分が内面先端リード部33b1であり、素子本体21における位置K4と位置K6との間の領域(第4領域F4の一部と第5領域F5の全体)に形成される部分が内面後端リード部33b2である。
本実施形態では、内面先端リード部33b1と内面後端リード部33b2との境界(位置K4)は、素子本体21のうち素子鍔部23が形成される第4領域F4(図3の位置K3と位置K4との間の領域)に含まれる。
内面先端リード部33b1は、内側検知電極部30aの後端(位置K1)と素子鍔部23の先端(位置K3)との中間位置(位置K2)よりも先端側の領域(第3先端領域F3a)に少なくとも形成されている。また、内面先端リード部33b1は、素子鍔部23の先端(位置K3)よりも先端側の領域(第3領域F3)に少なくとも形成されている。内面後端リード部33b2は、素子鍔部23の後端(位置K5)よりも後端側の領域(第5領域F5)に少なくとも形成されている。なお、第3領域F3は、先端側の領域(第3先端領域F3a)と、後端側の領域(第3後端領域F3b)とを備えている。
図5に示すように、内面先端リード部33b1は、内面後端リード部33b2よりも厚さ寸法が大きく形成されている。内面先端リード部33b1の厚さ寸法t1は11μmであり、内面後端リード部33b2の厚さ寸法t2は7μmである。
[1−4.ガスセンサ素子の製造方法]
次に、ガスセンサ素子3の製造方法を説明する。
第1工程では、未焼結成形体を作製する。具体的には、まず、素子本体21の材料である固体電解質体の粉末として、ジルコニア(ZrO)に安定剤としてイットリア(Y)を5mol%添加したもの(以下、5YSZともいう)に対して、さらにアルミナ粉末を添加したものを用意する。素子本体21の材料粉末全体を100質量%としたとき、5YSZの含有量は99.6質量%であり、アルミナ粉末の含有量は0.4質量%である。この粉末をプレス加工した後に、筒形となるように切削加工を実施することで、未焼結成形体を得る。
次に、第2工程では、電極層32のスラリーと、リード層33(電極リード層33a、接続リード層33b(内面先端リード部33b1、内面後端リード部33b2))のスラリーとを作製する。
電極層32のスラリーの作製においては、まず、導電性酸化物の原料粉末を秤量した後、湿式混合して乾燥することにより、原料粉末混合物を調整し、700〜1300℃で1〜5時間仮焼して仮焼粉末を作製する。そして、この仮焼粉末を、湿式ボールミル等による粉砕を行い所定の粒子サイズに調整する。このとき、ペロブスカイト相の原料粉末としては、例えば、La(OH)又はLa、並びに、Co、Fe、及びNiOを用いることができる。次に、希土類添加セリアの原料粉末を秤量した後、湿式混合して乾燥することにより、原料粉末混合物を調整し、大気雰囲気下、1000〜1600℃で1〜5時間仮焼して仮焼粉末を作製する。そして、この仮焼粉末を、湿式ボールミル等により粉砕し、所定の粒子サイズに調製する。希土類添加セリアの原料粉末としては、CeOの他に、La、Gd、Sm、Y等を用いることができる。そして、所定の粒子サイズに調整された2種類の仮焼粉末を、湿式ボールミル等により混合し、ターピネオールやブチルカルビトール等の溶媒に、エチルセルロース等のバインダとともに溶解することにより、スラリーを作製する。
なお、本実施形態では、ペロブスカイト相の仮焼粉末としては、比表面積が8.0[m/g]のLFN(LaFe0.5Ni0.5)粉末を得た。また、希土類添加セリアの仮焼粉末としては、比表面積が32.1[m/g]のGDC(20mol%Gd−CeO)粉末を得た。
リード層33のうち電極リード層33aのスラリーの作製工程は、電極層32のスラリーの作製工程と比べて、少なくとも希土類添加セリアの原料粉末を混合しない点と、造孔材を添加する点、が異なる。リード層33のスラリーの作製においては、例えば、導電性酸化物の原料粉末を秤量した後、湿式混合して乾燥することにより、原料粉末混合物を調整し、700〜1300℃で1〜5時間仮焼して仮焼粉末を作製する。そして、この仮焼粉末を、湿式ボールミル等により混合、粉砕し、比表面積が1.5[m/g]のLFN(LaFe0.5Ni0.5)粉末にした。この粉末に対してカーボンを30体積%添加したものを、ターピネオールやブチルカルビトール等の溶媒に、エチルセルロース等のバインダとともに溶解することにより、電極リード層33aのスラリーを作製した。
リード層33のうち接続リード層33bのスラリーの作製工程は、電極リード層33aのスラリーの製造工程と同じである。本実施形態では、ペロブスカイト相の仮焼粉末として、比表面積が1.5[m/g]のLFN(LaFe0.5Ni0.5)粉末を用いた。この粉末に対してカーボンを30体積%添加したものを、ターピネオールやブチルカルビトール等の溶媒に、エチルセルロース等のバインダとともに溶解することにより、接続リード層33bのスラリーを作製した。
次に、第3工程では、未焼結成形体のうち、外側電極27、内側検知電極部30aおよび内側リード部30bの形成部分に、それぞれのスラリーを塗布する。
まず、外側電極27の形成部分にPtペースト等の貴金属のスラリーを塗布する。次に、電極層32のスラリーを塗布し、その後、リード層33(内側検知電極部30aの電極リード層33a、内側リード部30bの接続リード層33b)のスラリーを塗布する。
前述の通り、電極層32は、ペロブスカイト相と、希土類添加セリアとを含むものである。一方、リード層33(電極リード層33a、接続リード層33b)は、希土類添加セリアを含まず、ペロブスカイト相のみで構成されたものである。そこで、第3工程では、それぞれの部分に適したスラリーを塗布する。つまり、電極層32のスラリーの塗布に際しては、電極層32の形成部分に、電極層32用のスラリーを塗布する。次に、電極リード層33a用のスラリー、接続リード層33b用のスラリーをそれぞれの部分に塗布する。このとき、接続リード層33b用のスラリーの塗布に際しては、まず、電極リード層33aおよび内面先端リード部33b1の形成部分にスラリーを塗布し、その後、電極リード層33a、内面先端リード部33b1および内面後端リード部33b2の形成部分にスラリーを塗布する。このような方法でスラリーを塗布することで、内面先端リード部33b1の厚さ寸法と内面後端リード部33b2の厚さ寸法とを異なる寸法に設定できる。
なお、各スラリーの塗布に際しては、未焼結成形体のうち塗布が不要な部分には、予めマスキングしてもよい。
次の第4工程では、各スラリーが塗布された未焼結成形体について、乾燥を行った後、所定の焼成温度で焼成する。この焼成温度は、例えば、1250℃以上1450℃以下(好ましくは、1350±50℃)である。この焼成工程では、内側検知電極部30aの電極層32と素子本体21との間に反応層31が形成され、内側リード部30bの接続リード層33bと素子本体21との間に反応層34が形成される。
前述したように、反応層34は、内側リード部30bに含まれるランタン(La)と、素子本体21に含まれるジルコニア(ZrO)とが反応して形成された層である。なお、反応層34の厚さ寸法は、焼成温度が高いほど大きくなり、また、希土類添加セリアの含有割合が低いほど大きくなる。したがって、これらのパラメータ(焼成温度、希土類添加セリアの含有割合)を調整することによって、反応層34の厚さ寸法を調整することが可能である。
上記の各工程を実施することで、ガスセンサ素子3を製造することができる。
[1−5.評価試験]
本開示を適用したガスセンサ素子の耐高温性および耐振動性を評価するために実施した評価試験の試験結果について説明する。
本評価試験では、内面先端リード部33b1の厚さ寸法t1および内面後端リード部33b2の厚さ寸法t2をそれぞれ異なる値に設定した6個のガスセンサ素子(3個の実施例1〜3と、3個の比較例1〜3)を用いた。なお、電極リード層33aは内面先端リード部33b1と同じ厚みとした。また、膜厚は、ガスセンサ素子を長手方向に断面研磨した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて評価した。内面先端リード部は素子の最先端を、内面後端リード部は後端から2mm位置を、倍率1000倍、反射電子像で撮影した。得られた像から任意3箇所のリード層膜厚を測定し、その平均値を膜厚とした。
耐高温性の評価試験は、ガスセンサ素子を1000℃の環境下に500時間にわたり配置した場合の内部抵抗値の変化量を測定し、内部抵抗値が20%以上増加するか否かを判定した。
このとき、内部抵抗値の測定方法としては、ガスセンサ素子をガスセンサに組み付けた状態で、そのガスセンサを公知のバーナー測定装置に取り付けて、バーナー測定法により、内側電極と外側電極との間の電気抵抗値を測定する方法を採用した。詳細には、素子温度300℃で空燃比λ=0.9(リッチ)におけるセンサ出力を、抵抗値が異なる2つの抵抗素子(1MΩ、100kΩ)を用いてオシロスコープで検出し、その出力差に基づいてガスセンサ素子の内部抵抗値を算出した。
図6に示す評価結果では、内部抵抗値の増加量が20%未満の場合に○を記載し、20%以上の場合に×を記載した。図6に示す評価結果によれば、耐高温性については、実施例1〜3、比較例2,3が○であり、比較例1が×であった。
耐振動性の評価試験は、ガスセンサ素子をガスセンサに組み付けた状態で振動環境下に配置し、その後、ガスセンサ素子の内面におけるリード層(電極リード層、接続リード層)の状態をマイクロスコープにより観察した。振動環境は、振動試験機を用いて、加速度45Grms、共振が発生する周波数を実現し、その振動環境下に100時間にわたりガスセンサを配置した。マイクロスコープによる観察の結果、端子がリード層と接触する箇所すべて、もしくは端子がリード層と接触していない範囲までリード層における剥がれが生じている場合に、耐振動性が不良と判定し、リード層における剥がれが生じていない場合に、耐振動性が良好と判定した。リード層における剥がれの有無は、マイクロスコープ画像を用いて、下地の固体電解質体が観察されるか否かに基づいて判定した。
図6に示す評価結果では、耐振動性が良好の場合に○を記載し、耐振動性が不良の場合に×を記載した。図6に示す評価結果によれば、耐振動性については、実施例1〜3、比較例1が○であり、比較例2,3が×であった。
これらの評価結果によれば、内面先端リード部33b1の厚さ寸法t1が11〜28μm、かつ、内面後端リード部33b2の厚さ寸法t2が6〜10μmのガスセンサ素子であれば、耐高温性および耐振動性に優れることが分かる。
よって、内面先端リード部が33b1の厚さ寸法t1が内面後端リード部33b2の厚さ寸法t2よりも大きいガスセンサ素子であれば、耐高温性および耐振動性に優れたものとなる。
[1−6.効果]
以上説明したように、本実施形態のガスセンサ1に備えられるガスセンサ素子3は、素子本体21と、内側電極30(内側検知電極部30a)と、外側電極27と、リード層33と、を備える。
リード層33は、素子本体21の内面において、内側検知電極部30aに電気的に接続されるとともに、内側検知電極部30aから素子本体21の後端(位置K6)まで延設されて、金属端子9に接続される。リード層33は、内側検知電極部30aに当接する内面先端リード部33b1および電極リード層33aと、金属端子9に当接する内面後端リード部33b2と、を備える。
内面先端リード部33b1は、内面後端リード部33b2よりも厚さ寸法が大きい。内面先端リード部33b1は、内側検知電極部30aの後端(位置K1)と素子鍔部23の先端(位置K3)との中間位置(位置K2)よりも先端側の領域(第3領域F3)に少なくとも形成されている。内面後端リード部33b2は、素子鍔部23の後端(位置K5)よりも後端側の領域(第5領域F5)に少なくとも形成されている。
ガスセンサ素子3は、リード層33が導電性酸化物で形成されることで、Ptを用いる場合に比べて、コスト低減を図ることができる。
また、ガスセンサ素子3は、内面先端リード部33b1が内面後端リード部33b2よりも厚さ寸法が大きいことで(t1>t2)、高温環境下に晒される内面先端リード部33b1において、導電性酸化物の構成元素の一部が蒸散して組成変化が生じたり、異相が生成されても、元のまま残る導電性酸化物を確保できるため、高抵抗化を抑制できる。
さらに、ガスセンサ素子3は、内面先端リード部33b1の厚さ寸法t1よりも内面後端リード部33b2の厚さ寸法t2が小さいことで、振動などの外力により内面後端リード部33b2に剥がれが生じるのを抑制できる。
つまり、ガスセンサ素子3は、内面先端リード部33b1の厚さ寸法t1よりも内面後端リード部33b2の厚さ寸法t2が小さいことで、ガスセンサ1の製造工程においてガスセンサ素子3と金属端子9とを組み付ける場合に、内面後端リード部33b2と金属端子9との摩擦を小さくできる。このため、ガスセンサ素子3は、金属端子9との組付け時における内面後端リード部33b2の剥がれを抑制できる。
さらに、このように金属端子9との摩擦による内面後端リード部33b2の剥がれを抑制することで、ガスセンサ1(ガスセンサ素子3)を設置した後に、内面後端リード部33b2のうち剥がれ部分に連なる部分において、振動などの外力の影響により剥がれが生じるのを抑制できる。
よって、ガスセンサ素子3によれば、リード層33の材料として導電性酸化物を用いる場合であっても、高温環境下での高抵抗化を抑制するとともに、振動などの外力の影響によるリード層33(特に、内面後端リード部33b2)の剥がれを抑制できる。
次に、ガスセンサ素子3においては、内面先端リード部33b1は、内側検知電極部30aの後端(位置K1)と素子鍔部23の先端(位置K3)との中間位置(位置K2)よりも先端側の領域(第3先端領域F3a)に少なくとも形成されている。
少なくともこの範囲に内面先端リード部33b1を備えることで、ガスセンサ素子におけるリード層33の形成領域のうち高温状態の領域には、内面先端リード部33b1が形成されることになり、耐高抵抗化(耐高温性能)をより向上できる。
次に、ガスセンサ素子3においては、内面先端リード部33b1の厚さ寸法t1は11μmであり、内面後端リード部33b2の厚さ寸法t2は7μmである。上述の評価結果によれば、内面先端リード部33b1および内面後端リード部33b2をこのような数値で形成することで、ガスセンサ素子3における耐高温性(高抵抗化の抑制)および耐振動性(剥離の抑制)を実現できる。
さらに、ガスセンサ素子3を備えるガスセンサ1は、ガスセンサ素子3と同様に、リード層33の材料として導電性酸化物を用いる場合であっても、高温環境下での高抵抗化を抑制するとともに、振動などの外力の影響によるリード層33(特に、内面後端リード部33b2)の剥がれを抑制できる。
また、ガスセンサ1においては、内面後端リード部33b2と金属端子9との当接位置は、素子鍔部23よりも後端側の領域(第5領域F5)である。このような構成は、金属端子9が内面先端リード部33b1との接触が生じないため、金属端子9との摩擦による内面先端リード部33b1の剥がれを抑制できる。
[1−7.文言の対応関係]
ここで、本実施形態における文言の対応関係について説明する。
ガスセンサ1がガスセンサの一例に相当し、金属端子9が金属端子の一例に相当し、ガスセンサ素子3がガスセンサ素子の一例に相当し、素子鍔部23が鍔部の一例に相当し、素子本体21が固体電解質体の一例に相当し、外側電極27が測定電極の一例に相当し、内側電極30の内側検知電極部30aが基準電極の一例に相当する。
リード層33が内面リード部の一例に相当し、電極リード層33aおよび内面先端リード部33b1が内面先端リード部の一例に相当し、内面後端リード部33b2が内面後端リード部の一例に相当する。
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
上記実施形態では、内面先端リード部33b1が第3領域F3の全部(位置K1から位置K3までの領域)および第4領域F4の一部領域(位置K3から位置K4までの領域)に形成される構成について説明したが、本開示のガスセンサ素子はこのような構成に限られることはない。例えば、内面先端リード部33b1は、第3領域F3のみに形成される構成であっても良いし、第3先端領域F3aのみに形成される構成であっても良い。内面先端リード部33b1は、少なくとも第3先端領域F3aに形成される構成であればよい。
また、上記実施形態では、内面後端リード部33b2が第5領域F5の全部(位置K5から位置K6までの領域)および第4領域F4の一部領域(位置K4から位置K5までの領域)に形成される構成について説明したが、本開示のガスセンサ素子はこのような構成に限られることはない。例えば、内面後端リード部33b2は、第5領域F5のみに形成される構成であっても良い。内面後端リード部33b2は、少なくとも第5領域F5に形成される構成であればよい。
また、接続リード層33bが厚さ寸法の異なる2つの部分(内面先端リード部33b1および内面後端リード部33b2)で形成される構成について説明したが、本開示のガスセンサ素子はこのような構成に限られることはない。例えば、接続リード層33bは、厚さ寸法の異なる3つ以上の部分を備える構成であってもよい。厚さ寸法の異なる3つ以上の部分は、例えば、内面先端リード部33b1と、内面後端リード部33b2と、内面中間リード部(内面先端リード部33b1と内面後端リード部33b2との間に形成される部分)と、を備える構成が挙げられる。この場合、内面中間リード部は、厚さ寸法が異なる複数の部分を備える構成であってもよい。
次に、上記実施形態では、ガスセンサ素子における各種数値(例えば、内面先端リード部33b1の厚さ寸法t1、内面後端リード部33b2の厚さ寸法t2など)が特定されているが、これらの各種数値は、上記数値に限られることはなく、本開示の技術的範囲に含まれる限り、任意の値を採ることができる。
次に、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を、省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
1…ガスセンサ、3…ガスセンサ素子、9…金属端子、11…リード線、13…主体金具、16…外筒、21…素子本体、23…素子鍔部、25…先端部、27…外側電極、28…環状リード部、29…縦リード部、30…内側電極、30a…内側検知電極部、30b…内側リード部、31…ランタンジルコネート層(反応層)、32…電極層、33…リード層、33a…電極リード層、33b…接続リード層、33b1…内面先端リード部、33b2…内面後端リード部、34…ランタンジルコネート層(反応層)。

Claims (4)

  1. 先端が閉塞し後端が開口する有底筒状に形成されるとともに、側面から外向きに突出する鍔部を有し、ジルコニアを含んで構成される固体電解質体と、
    前記固体電解質体の先端の内面に形成される基準電極と、
    前記固体電解質体の先端の外面に形成される測定電極と、
    前記固体電解質体の内面において、前記基準電極に電気的に接続されるとともに、前記基準電極から前記固体電解質体の後端まで延設されて、外部の金属端子に接続される内面リード部と、
    を備えるガスセンサ素子であって、
    前記内面リード部は、組成式:LaNiOx(MはCoとFeのうちの一種以上、a+b+c=1、0.375≦a≦0.535、0.200≦b≦0.475、0.025≦c≦0.350、1.25≦x≦1.75)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有するペロブスカイト相を含有する導電性酸化物で形成されるとともに、前記基準電極に当接する内面先端リード部と、前記金属端子に当接する内面後端リード部と、を備えており、
    前記内面先端リード部は、前記内面後端リード部よりも厚さ寸法が大きく、
    前記内面後端リード部は、前記鍔部の後端よりも後端側の領域に少なくとも形成されている、
    ガスセンサ素子。
  2. 前記内面先端リード部は、前記基準電極の後端と前記鍔部の先端との中間位置よりも先端側の領域に少なくとも形成されている、
    請求項1に記載のガスセンサ素子。
  3. 前記内面先端リード部は、厚さ寸法が11〜28μmであり、
    前記内面後端リード部は、厚さ寸法が6〜10μmである、
    請求項1または請求項2に記載のガスセンサ素子。
  4. ガスセンサ素子と、ガスセンサ素子の内面リード部に接続される金属端子と、を備えるガスセンサであって、
    前記ガスセンサ素子は、請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のガスセンサ素子である、
    ガスセンサ。
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