JP2019148036A - 炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法、窒化ケイ素被覆炭素繊維およびその製造方法、窒化ケイ素の製造方法 - Google Patents

炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法、窒化ケイ素被覆炭素繊維およびその製造方法、窒化ケイ素の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】比較的簡単な工程で、密着性のよい炭化ケイ素被膜または窒化ケイ素被膜で表面が被覆された炭化ケイ素被覆炭素繊維または窒化ケイ素被覆炭素繊維を提供するとともに、炭素繊維を炭素源として用いた窒化ケイ素の製造方法を提供する。【解決手段】炭素繊維の表面にシリコーンを接触させ、表面がシリコーンと接触した状態にある炭素繊維を真空雰囲気下1420℃以上2800℃以下の温度で焼成し、炭素繊維の表面に炭化ケイ素を形成する。炭素繊維の表面にシリコーンを接触させ、表面がシリコーンと接触した状態にある炭素繊維を窒素雰囲気下1300℃以上1550℃以下の温度で焼成し、炭素繊維の表面に窒化ケイ素を形成するか、炭素繊維全体を窒化ケイ素に転換する。【選択図】図10

Description

本発明は、炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法、窒化ケイ素被覆炭素繊維およびその製造方法、窒化ケイ素の製造方法に関する。
炭素繊維は、高強度、高弾性率を有し、軽量であることから、繊維強化複合材料の強化材として、宇宙・航空分野、自動車分野、スポーツ分野などで使用されている。しかし、炭素繊維は、耐酸化性に劣るため、高温酸化雰囲気で使用し難いという問題がある。そのため、例えば、特許文献1には、化学気相蒸着法を用い、炭素繊維の表面を耐酸化性の被膜である炭化ケイ素被膜にて被覆し、炭素繊維の耐酸化性を向上させる技術が開示されている。また、特許文献2には、炭素繊維の表面にポリシラン類を被着させ、不活性雰囲気下で熱処理することにより、炭素繊維の表面を炭化ケイ素被膜で被覆する技術が開示されている。
上述のように炭素繊維の耐酸化性を向上させることが重要である一方、炭素繊維の需要の増大に伴い、炭素繊維強化複合材料から樹脂を分解することによって得られるリサイクル炭素繊維が市場に出回るようになってきている。炭素繊維をリサイクルする手法としては、炭素繊維の力学的特性を落とすことなく効率的に回収することを目的に燃焼法や溶液法など、様々な手法が提案されている。
特開平6−65859号公報 特開平6−313268号公報
しかしながら、従来技術は、以下の点で課題がある。すなわち、化学気相蒸着法を用いた従来の炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法では、炭素繊維の表面に化学気相蒸着法にて炭化ケイ素被膜を堆積させるため、炭化ケイ素被膜が厚くなりがちで割れも発生しやすく、炭化ケイ素被膜の密着性が悪い。炭化ケイ素被膜とは異なる耐酸化性の被膜として窒化ケイ素被膜もあるが、密着性のよい窒化ケイ素被膜で表面が被覆された窒化ケイ素被覆炭素繊維は見受けられないのが現状である。
一方、炭素繊維強化複合材料における炭素繊維のマテリアルリサイクルの過程では、均一なリサイクル炭素繊維を得るために、炭素繊維強化複合材料を破砕するのが通常である。そのため、リサイクル過程で繊維長の短い炭素繊維が発生する。十分な繊維長がない炭素繊維は、炭素繊維に期待される力学特性の向上を期待することができない。今後、炭素繊維強化複合材料の需要の増大とともに強化材として使用することができない繊維長の短い炭素繊維が大量に発生することが懸念される。このような炭素繊維を炭素源として用い、窒化ケイ素を作製することができれば、炭素繊維強化複合材料における炭素繊維のマテリアルリサイクルを促進させることができる。しかし、そのような提案はなされていないのが現状である。
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、比較的簡単な工程で、密着性のよい炭化ケイ素被膜または窒化ケイ素被膜で表面が被覆された炭化ケイ素被覆炭素繊維または窒化ケイ素被覆炭素繊維を提供しようとするものである。また、炭素繊維を炭素源として用いた窒化ケイ素の製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる接触工程と、
表面が上記シリコーンと接触した状態にある上記炭素繊維を真空雰囲気下1420℃以上2800℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有しており、
上記焼成工程において、上記シリコーンと上記炭素繊維の表面部分とを反応させ、反応に使用されずに残った上記炭素繊維の表面に炭化ケイ素被膜を形成する、炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法にある。
本発明の他の態様は、炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる接触工程と、
表面が上記シリコーンと接触した状態にある上記炭素繊維を窒素雰囲気下1300℃以上1550℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有しており、
上記焼成工程において、上記シリコーンと上記炭素繊維の表面部分と雰囲気中の窒素とを反応させ、反応に使用されずに残った上記炭素繊維の表面に窒化ケイ素被膜を形成する、窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法にある。
本発明のさらに他の態様は、炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる接触工程と、
表面が上記シリコーンと接触した状態にある上記炭素繊維を窒素雰囲気下1300℃以上1550℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有しており、
上記焼成工程において、上記シリコーンと上記炭素繊維と雰囲気中の窒素とを反応させ、繊維状の窒化ケイ素を形成する、窒化ケイ素の製造方法にある。
本発明のさらに他の態様は、炭素繊維と、
炭素繊維の表面を覆う窒化ケイ素被膜と、を有する、
窒化ケイ素被覆炭素繊維にある。
上記炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法では、真空雰囲気下、特定温度での焼成により、炭素繊維の表面に接触したシリコーンと炭素繊維の表面部分とが反応し、炭化ケイ素が生成する。その結果、反応に使用されずに残った炭素繊維の表面を覆うように炭化ケイ素被膜が形成される。得られた炭化ケイ素被覆炭素繊維は、炭化ケイ素が炭素繊維の表面部分との反応によって生成したものであるので、炭化ケイ素被膜が比較的薄膜であって炭素繊維との密着性もよい。また、上記炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法は、比較的簡単な工程で、耐酸化性のある炭化ケイ素被膜を炭素繊維の表面に形成することができる。また、上記炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法において、炭素繊維複合材料における炭素繊維のマテリアルリサイクル過程で生じる繊維長の短い炭素繊維を原料として用いれば、炭化ケイ素被覆炭素繊維を形成することが可能となり、炭素繊維複合材料における炭素繊維のマテリアルリサイクルを促進させることができる。
次に、上記窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法では、窒素雰囲気下、特定温度での焼成により、炭素繊維の表面に接触したシリコーンと炭素繊維の表面部分と雰囲気中の窒素とが反応し、窒化ケイ素が生成する。その結果、反応に使用されずに残った炭素繊維の表面を覆うように窒化ケイ素被膜が形成される。得られた窒化ケイ素被覆炭素繊維は、窒化ケイ素が炭素繊維の表面部分との反応によって生成したものであるので、窒化ケイ素被膜が比較的薄膜であって炭素繊維との密着性もよい。また、上記窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法は、比較的簡単な工程で、耐酸化性のある窒化ケイ素被膜を炭素繊維の表面に形成することができる。また、上記窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法において、炭素繊維複合材料における炭素繊維のマテリアルリサイクル過程で生じる繊維長の短い炭素繊維を原料として用いれば、窒化ケイ素被覆炭素繊維を形成することが可能となり、炭素繊維複合材料における炭素繊維のマテリアルリサイクルを促進させることができる。
次に、上記窒化ケイ素の製造方法では、窒素雰囲気下、特定温度での焼成により、炭素繊維の表面に接触したシリコーンと炭素繊維と雰囲気中の窒素とが反応し、繊維状の窒化ケイ素が生成する。上記窒化ケイ素の製造方法は、比較的簡単な工程で、炭素繊維を原料として繊維状の窒化ケイ素を形成することができる。そのため、上記窒化ケイ素の製造方法において、炭素繊維強化複合材料における炭素繊維のマテリアルリサイクルの過程で生じる繊維長の短い炭素繊維を原料として用いれば、繊維状の窒化ケイ素を形成することが可能となり、炭素繊維複合材料における炭素繊維のマテリアルリサイクルを促進させることができる。
試料1の炭化ケイ素被覆炭素繊維の走査型電子顕微鏡像であり、(b)、(c)は、それぞれ(a)の一部を拡大したものである。 試料2の炭化ケイ素被覆炭素繊維の走査型電子顕微鏡像であり、(b)、(c)は、それぞれ(a)の一部を拡大したものである。 試料3の窒化ケイ素被覆炭素繊維の走査型電子顕微鏡像であり、(a)、(b)は、それぞれ異なる場所を観察したもので、(c)は、(a)の一部を拡大したものである。 試料4の窒化ケイ素被覆炭素繊維の走査型電子顕微鏡像である。 試料1および試料3のXRDパターンである。 試料2および試料4のXRDパターンである。 炭素繊維の表面から窒化ケイ素が成長する様子を拡大して示した走査型電子顕微鏡像である。 試料5の繊維状の窒化ケイ素の走査型電子顕微鏡像である。 試料6の繊維状の窒化ケイ素の走査型電子顕微鏡像である。 比較試料1、試料7、試料8、試料9の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は、焼成温度1250℃、(b)は、焼成温度1350℃、(c)は、焼成温度1450℃、(d)は、焼成温度1550℃である。 比較試料2、試料10、試料11、試料12の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は、焼成温度1250℃、(b)は、焼成温度1350℃、(c)は、焼成温度1450℃、(d)は、焼成温度1550℃である。
先ず、炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法について説明する。
炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法は、炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる接触工程を有している。
炭素繊維としては、例えば、PAN系炭素繊維、Pitch系炭素繊維のいずれを用いてもよい。また、炭素繊維は、炭素繊維複合材料から分離したリサイクル炭素繊維であってもよい。また、炭素繊維の繊維長は、製造したい炭化ケイ素被覆炭素繊維の繊維長などを考慮して適宜選択することができる。炭素繊維として、臨界繊維長以上の炭素繊維を用いる場合には、炭素繊維強化複合材料の強化材として有用な炭化ケイ素被覆炭素繊維が得られる。また、炭素繊維として、臨界繊維長未満の炭素繊維を用いる場合には、炭素繊維強化複合材料のリサイクル過程で生じた短い炭素繊維を有効活用することができるので、マテリアルリサイクルの促進に寄与することができる。なお、臨界繊維長は、繊維強化能を発揮させるための最小の長さのことである(以下、説明を省略する。)。
Si源としてのシリコーンとしては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーンゴム(シリコーンエラストマーも含まれる)、シリコーンオイルなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。シリコーン樹脂、シリコーンゴムとしては、具体的には付加型もしくは縮合型のRTVシリコーン樹脂、RTVシリコーンゴムなどを例示することができる。また、シリコーンは、SiO粒子などの添加剤を1種または2種以上含むことができる。シリコーンがSiO粒子を含む場合には、炭化ケイ素被膜の生成を促進させることができる。
炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる方法は、炭素繊維の表面をシリコーンで覆うことができれば、特に限定されない。炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる方法としては、例えば、シリコーン中に炭素繊維を含浸させて取り出す方法、炭素繊維にシリコーンを塗布する方法、炭素繊維とシリコーンとを混合する方法などを例示することができる。
炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法は、表面がシリコーンと接触した状態にある炭素繊維を真空雰囲気下1450℃以上2800℃以下の温度で焼成する焼成工程を有している。
上記焼成条件による焼成工程では、以下の化学反応が生じる。
SiO+2C→SiC+CO
2SiO+3C→2SiC+CO
そのため、炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法における焼成工程では、炭素繊維の表面を侵食しながら炭化ケイ素被膜を形成することができる。
この際、SiO粒子を含むシリコーンを原料に用いた場合には、以下の化学反応が生じる。
SiO+3C→SiC+2CO
2SiO+4C→2SiC+2CO
そのため、この場合には、炭化ケイ素被膜の生成を促進させることができる。
焼成温度が1420℃未満になると、上記化学反応が生じ難く、炭化ケイ素を生成させることが難しい。一方、焼成温度が2800℃を超えると、炭化ケイ素の分解が生じるため、炭化ケイ素被覆炭素繊維を得ることが困難となる。焼成温度は、炭化ケイ素被膜の形成性などの観点から、好ましくは、1450℃以上、より好ましくは、1475℃以上、さらに好ましくは、1500℃以上とすることができる。一方、焼成温度は、炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造を確実なものとする、省エネルギー化などの観点から、好ましくは、2500℃以下、より好ましくは、2000℃以下、さらに好ましくは、1700℃以下とすることができる。
ここで、炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法における焼成工程では、シリコーンと炭素繊維の表面部分とを反応させ、反応に使用されずに残った炭素繊維の表面に炭化ケイ素被膜を形成する。炭素繊維の全てを反応させてしまうと、炭化ケイ素被覆炭素繊維が得られなくなるからである。なお、焼成工程において、シリコーンと炭素繊維の全てを反応させることで、繊維状の炭化ケイ素を製造することが可能である。
シリコーンと炭素繊維との反応を途中で中止させて原料の炭素繊維を残す方法としては、例えば、焼成時間を調節する方法や、炭素繊維に接触させるシリコーン量を調節する方法などを例示することができる。炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法における焼成時間は、炭化ケイ素被覆炭素繊維の形成性、侵食による炭素繊維の表面凹凸の低減などの観点から、好ましくは、0.1時間以上2時間以下とすることができる。なお、真空雰囲気における真空度は、窒化物の生成を防ぐなどの観点から、好ましくは、100Pa以下、より好ましくは、50Pa以下、さらに好ましくは、5Pa以下とすることができる。また、真空度の下限は、0.1Pa以上とすることができる。
炭化ケイ素被覆炭素繊維における炭化ケイ素被膜は、粒子状の炭化ケイ素が一体化されてなる膜構造を有していることが好ましい。この構成によれば、より密着性の高い炭化ケイ素被膜により被覆された炭化ケイ素被覆炭素繊維を得ることが可能になる。上記膜構造を有する炭化ケイ素被膜は、例えば、SiO粒子を含むシリコーンを原料に用いることでより形成されやすくなる。これは、反応過程でSiO粒子が炭素繊維の表面を覆って反応するために、生成した粒子状の炭化ケイ素が互いに繋がって一体化されやすくなるためであると考えられる。
また、粒子状の炭化ケイ素は、具体的には、平均直径がナノオーダーサイズ、より具体的には、例えば、平均直径が50nm以上200nm以下であるとよい。SiO粒子を含むシリコーンを原料に用いた場合には、反応により生成する炭化ケイ素の平均直径を200nm以下に抑制しやすい。なお、炭化ケイ素の平均直径は、走査型電子顕微鏡像における炭化ケイ素被膜が有する任意の粒子状の炭化ケイ素200個について測定した各測定直径の平均値をいう。
次に、窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法について説明する。
窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法は、炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる接触工程を有している。
炭素繊維としては、例えば、PAN系炭素繊維、Pitch系炭素繊維のいずれを用いてもよい。また、炭素繊維は、炭素繊維複合材料から分離したリサイクル炭素繊維であってもよい。また、炭素繊維の繊維長は、製造したい窒化ケイ素被覆炭素繊維の繊維長などを考慮して適宜選択することができる。炭素繊維として、臨界繊維長以上の炭素繊維を用いる場合には、炭素繊維強化複合材料の強化材として有用な窒化ケイ素被覆炭素繊維が得られる。また、炭素繊維として、臨界繊維長未満の炭素繊維を用いる場合には、炭素繊維強化複合材料のリサイクル過程で生じた短い炭素繊維を有効活用することができるので、マテリアルリサイクルの促進に寄与することができる。
Si源としてのシリコーンとしては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーンゴム(シリコーンエラストマーも含まれる)、シリコーンオイルなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。シリコーン樹脂、シリコーンゴムとしては、具体的には付加型もしくは縮合型のRTVシリコーン樹脂、RTVシリコーンゴムなどを例示することができる。シリコーンは、SiO粒子などの添加剤を1種または2種以上含むことができる。シリコーンがSiO粒子を含む場合には、窒化ケイ素被膜の生成を促進させることができる。
炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる方法は、炭素繊維の表面をシリコーンで覆うことができれば、特に限定されない。炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる方法としては、例えば、シリコーン中に炭素繊維を含浸させて取り出す方法、炭素繊維にシリコーンを塗布する方法、炭素繊維とシリコーンとを混合する方法などを例示することができる。
窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法は、表面がシリコーンと接触した状態にある炭素繊維を窒素雰囲気下1300℃以上1550℃以下の温度で焼成する焼成工程を有している。
上記焼成条件による焼成工程では、以下の化学反応が生じる。
3SiO+2N+3C→Si+3CO
そのため、窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法における焼成工程では、炭素繊維の表面を侵食しながら窒化ケイ素被膜を形成することができる。
この際、SiO粒子を含むシリコーンを原料に用いた場合には、以下の化学反応が生じる。
3SiO+2N+6C→Si+6CO
この反応が炭素繊維表面で起きることにより、窒化ケイ素が炭素繊維の表面を覆いやすくなり、窒化ケイ素被膜の生成を促進させることが可能になる。
焼成温度が1300℃未満になると、上記化学反応が生じ難く、窒化ケイ素を生成させることが難しい。一方、焼成温度が1550℃を超えると、炭化ケイ素が生じ始めるため、窒化ケイ素を生成させることが難しい。焼成温度は、窒化ケイ素被膜の形成性などの観点から、好ましくは、1350℃以上、より好ましくは、1380℃以上、さらに好ましくは、1400℃以上とすることができる。一方、焼成温度は、窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造を確実なものとする、省エネルギー化などの観点から、好ましくは、1525℃以下、より好ましくは、1500℃以下、さらに好ましくは、1480℃以下とすることができる。
ここで、窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法における焼成工程では、シリコーンと炭素繊維の表面部分と雰囲気中の窒素とを反応させ、反応に使用されずに残った炭素繊維の表面に窒化ケイ素被膜を形成する。炭素繊維の全てを反応させてしまうと、窒化ケイ素被覆炭素繊維が得られなくなるからである。
シリコーンと炭素繊維と窒素との反応を途中で中止させて原料の炭素繊維を残す方法としては、例えば、焼成時間を調節する方法や、炭素繊維に接触させるシリコーン量を調節する方法などを例示することができる。窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法における焼成時間は、窒化ケイ素被覆炭素繊維の形成性などの観点から、好ましくは、0.1時間以上2時間以下とすることができる。なお、窒素雰囲気における圧力は、焼成雰囲気の制御性などの観点から、例えば、0.03MPa以上0.1MPaなどとすることができる。焼成時の分解ガスの除去を容易にするなどの観点から、窒素雰囲気における圧力は、大気圧がより好ましい。
窒化ケイ素被覆炭素繊維における窒化ケイ素被膜は、繊維状の窒化ケイ素を含む膜構造を有していることが好ましい。この構成によれば、より密着性の高い窒化ケイ素被膜により被覆された窒化ケイ素被覆炭素繊維を得ることが可能になる。上記膜構造を有する窒化ケイ素被膜は、例えば、SiO粒子を含むシリコーンを原料に用いることでより形成されやすくなる。これは、上述した還元窒化反応が促進されることで、繊維状の窒化ケイ素の成長が促進されやすくなるためであると考えられる。
また、繊維状の窒化ケイ素は、平均直径をナノオーダーサイズ、例えば、平均直径を500nm以下、好ましくは、350nm以下、より好ましくは、200nm以下とすることができる。なお、上記平均直径は、例えば、50nm以上とすることができる。また、繊維状の窒化ケイ素は、例えば、平均繊維長を300μm以下、好ましくは、200μm以下、より好ましくは、100μm以下とすることができる。なお、上記平均繊維長は、例えば、1μm以上とすることができる。SiO粒子を含むシリコーンを原料に用いた場合には、反応により生成する窒化ケイ素の平均直径、平均繊維長を上記範囲内に制御しやすい。なお、窒化ケイ素の平均直径は、走査型電子顕微鏡像における窒化ケイ素被膜が有する任意の繊維状の窒化ケイ素50本について測定した各測定直径の平均値をいう。また、窒化ケイ素の平均繊維長は、走査型電子顕微鏡像における窒化ケイ素被膜が有する任意の繊維状の窒化ケイ素50本について測定した各測定繊維長の平均値をいう。
次に、窒化ケイ素の製造方法について説明する。
窒化ケイ素の製造方法は、炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる接触工程と、表面がシリコーンと接触した状態にある炭素繊維を窒素雰囲気下1300℃以上1550℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有している。なお、窒化ケイ素の製造方法における接触工程、焼成工程については、基本的には、上述した窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法における説明を準用することができる。
ここで、窒化ケイ素の製造方法における焼成工程では、シリコーンと炭素繊維と雰囲気中の窒素とを反応させ、繊維状の窒化ケイ素を形成する。繊維状の窒化ケイ素としては、平均直径がナノオーダーサイズであるナノファイバー状の窒化ケイ素、軸方向に垂直な断面が矩形形状を呈するウィスカー状の窒化ケイ素などを例示することができる。ナノファイバー状の窒化ケイ素を形成するためには、例えば、窒化ケイ素の原料である窒素、シリコーンゴムを少なくすればよい。また、ウィスカー状の窒化ケイ素を形成するためには、例えば、窒化ケイ素の原料である窒素、シリコーンゴムを多くすればよい。また、シリコーンへのSiO粒子の添加の有無等により、繊維状の窒化ケイ素のサイズを制御することができる。SiO粒子を含まないシリコーンを原料に用いた場合には、平均直径が50nm以上500nm以下のナノファイバー状の窒化ケイ素が生成されやすくなる。また、SiO粒子を含むシリコーンを原料に用いた場合には、幅数μm×厚み数μm程度の矩形断面を有するウィスカー状の窒化ケイ素が生成されやすくなる。
窒化ケイ素の製造方法における焼成工程において、炭素源である炭素繊維の全てを反応させないように、各原料の量の調整、焼成時間(反応時間)の調整などを行った場合には、炭素繊維の表面に窒化ケイ素を生成することができる。この場合、窒化ケイ素の純度を高めるためには、炭素繊維と生成した窒化ケイ素とを分離する工程、炭素繊維を焼失させる工程などが必要となる。そのため、窒化ケイ素の製造方法における焼成工程において、炭素源である炭素繊維の全てを反応させて、繊維状の窒化ケイ素を形成することが好ましい。この構成によれば、原料に用いた炭素繊維の表面から内部までの全てを窒化ケイ素に転換することができるので、純度の高い繊維状の窒化ケイ素を製造することが可能となる。
窒化ケイ素の製造方法における接触工程で用いられる炭素繊維は、炭素繊維強化複合材料のリサイクル過程で生じた臨界繊維長未満の炭素繊維とすることができる。この構成によれば、力学特性の向上を期待することができない短い炭素繊維から高い機能性を有する繊維状の窒化ケイ素を得ることが可能となり、炭素繊維複合材料における炭素繊維のマテリアルリサイクルを促進させることができる。とりわけ、リサイクル過程で生じた臨界繊維長未満の炭素繊維の全てを反応させるようにした場合には、原料に用いた炭素繊維の全てを窒化ケイ素に転換することができるので、リサイクル性に優れた窒化ケイ素の製造方法とすることができる。
次に、窒化ケイ素被覆炭素繊維について説明する。
窒化ケイ素被覆炭素繊維は、炭素繊維と、炭素繊維の表面を覆う窒化ケイ素被膜と、を有している。窒化ケイ素被覆炭素繊維の構成については、上述した窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法で説明した記載を適宜参照することができる。
窒化ケイ素被覆炭素繊維において、窒化ケイ素被膜は、炭素繊維の表面全体を覆っていてもよいし、炭素繊維の表面の一部に炭素繊維が露出していてもよい。
窒化ケイ素被膜は、具体的には、炭素繊維の表面からのびた繊維状の窒化ケイ素、具体的にはナノファイバー状の窒化ケイ素を含むことができる。この構成によれば、炭素繊維と繊維状の窒化ケイ素との密着性を向上させやすくなる。なお、窒化ケイ素被膜は、繊維状の窒化ケイ素だけでなく、他にも、例えば、炭素繊維の表面を覆う粒子状の窒化ケイ素を含むこともできる。
窒化ケイ素被膜が繊維状の窒化ケイ素を有する場合、隣接する繊維状の窒化ケイ素同士は互いに絡み合う構成とすることができる。この構成によれば、不織布を構成する繊維のように隣接する繊維状の窒化ケイ素同士が絡み合うことで、窒化ケイ素被膜の膜強度が向上し、窒化ケイ素被膜の密着性向上に有利である。また、樹脂等に混合した場合に樹脂等との接着性を向上させやすくなるなどの利点もある。
窒化ケイ素被膜の膜厚は、炭素繊維表面への密着性、被膜性などの観点から、好ましくは、0.05μm以上、より好ましくは、0.1μm以上、さらに好ましくは、0.2μm以上とすることができる。また、窒化ケイ素被膜の膜厚は、繊維強度保持などの観点から、好ましくは、2μm以下、より好ましくは、1.5μm以下、さらに好ましくは、1μm以下とすることができる。なお、窒化ケイ素被膜の膜厚は、走査型電子顕微鏡による窒化ケイ素被覆炭素繊維の断面観察によって測定される半径から中心部の炭素繊維部分の半径を差し引いた値(n=10)の平均値である。
窒化ケイ素被覆炭素繊維は、例えば、上述した窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法を実施することなどによって得ることができる。
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
以下、上記炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法、上記窒化ケイ素被覆炭素繊維およびその製造方法、上記窒化ケイ素の製造方法を、実施例を用いてより具体的に説明する。
−原料の準備−
以下の原料を準備した。
<炭素繊維>
・炭素繊維(1)(平均直径7μm、平均繊維長130μm:短繊維) (東レ社製、「MLD−300」)
・炭素繊維(2)(平均直径7μm、繊維長は直径に対して十分に長い:長繊維) (東レ社製、「T700SC」)
<シリコーン>
・シリコーン(1)(SiOを含まない) (信越シリコーン社製、主剤「KJR−9023」、硬化剤「C−9023」)
・シリコーン(2)(SiOを含む) (モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、主剤「TSE−350」、硬化剤「CE62」)
−炭素繊維/シリコーン複合材料の作製−
炭素繊維(1)(短繊維)とシリコーン(1)(SiOを含まない)とを、炭素繊維の重量分率が20wt%となるように混合した。次いで、この混合物を100℃で10分間加熱し、シリコーンを加熱硬化させた。得られた硬化物は、厚さ約1mmのフィルム状である。次いで、この硬化物を1cm×1cmの大きさに切り出した。これにより、炭素繊維/シリコーン複合材料Aを準備した。炭素繊維/シリコーン複合材料Aにおいて、炭素繊維の表面はシリコーンと接触した状態にある。
炭素繊維(1)(短繊維)とシリコーン(2)(SiOを含む)とを、炭素繊維の重量分率が20wt%となるように混合した。次いで、この混合物を室温で24時間放置し、シリコーンを硬化させた。得られた硬化物は、厚さ約1mmのフィルム状である。次いで、この硬化物を1cm×1cmの大きさに切り出した。これにより、炭素繊維/シリコーン複合材料Bを準備した。炭素繊維/シリコーン複合材料Bにおいて、炭素繊維の表面はシリコーンと接触した状態にある。
−シリコーン含浸炭素繊維ストランドの作製−
炭素繊維(2)(長繊維)のロービングをシリコーン(1)(SiOを含まない)に含浸させた後、余分なシリコーンを拭き取った。次いで、これを100℃で120分間加熱し、シリコーンを加熱硬化させた。これにより、シリコーン含浸炭素繊維ストランドAを準備した。シリコーン含浸炭素繊維ストランドAにおいて、炭素繊維の表面はシリコーンと接触した状態にある。
炭素繊維(2)(長繊維)のロービングをシリコーン(2)(SiOを含む)に含浸させた後、余分なシリコーンを拭き取った。次いで、これを室温で24時間放置し、シリコーンを硬化させた。これにより、シリコーン含浸炭素繊維ストランドBを準備した。シリコーン含浸炭素繊維ストランドBにおいて、炭素繊維の表面はシリコーンと接触した状態にある。
−試料1の作製−
準備した炭素繊維/シリコーン複合材料Aを、多目的高温炉(富士電波工業社製、
「ハイマルチ」)を用い、真空雰囲気下(5Pa)にて室温から1450℃まで昇温して1450℃で1時間保持した後に降温するという条件で焼成した。これにより、シリコーンと炭素繊維の表面部分とを反応させ、反応に使用されずに残った炭素繊維の表面に炭化ケイ素被膜(膜材質の詳細分析については後述する、以下同様)を形成した。図1に、試料1の炭化ケイ素被覆炭素繊維の走査型電子顕微鏡像を示す。なお、走査型電子顕微鏡(SEM)には、JEOL社製、「JSM−IT300」を用いた(以下同様)。図1(b)、(c)によれば、炭化ケイ素被覆炭素繊維における炭化ケイ素被膜は、粒子状の炭化ケイ素が一体化されてなることがわかる。
−試料2の作製−
準備した炭素繊維/シリコーン複合材料Bを、上記多目的高温炉を用い、真空雰囲気下(5Pa)にて室温から1450℃まで昇温して1450℃で1時間保持した後に降温するという条件で焼成した。これにより、シリコーンと炭素繊維の表面部分とを反応させ、反応に使用されずに残った炭素繊維の表面に炭化ケイ素被膜を形成した。図2に、試料2の炭化ケイ素被覆炭素繊維の走査型電子顕微鏡像を示す。図2(b)、(c)は、図2(a)の異なる一部を拡大したものである。図2(b)の矢印21で指し示した黒い部分は、反応に使用されずに残った炭素繊維の表面を示している。また、図2(b)、(c)の矢印22で指し示した白い部分は、炭素繊維の表面に形成された炭化ケイ素被膜である。また、試料2と試料1とを比較すると、試料2では、反応による侵食によって炭素繊維の表面に凹凸が形成されていることがわかる。この結果から、SiO粒子を含むシリコーンを原料に用いることにより、炭化ケイ素の生成が促進されることがわかる。
−試料3の作製−
準備した炭素繊維/シリコーン複合材料Aを、上記多目的高温炉を用い、窒素雰囲気下(0.1MPa)にて室温から1450℃まで昇温して1450℃で1時間保持した後に降温するという条件で焼成した。これにより、シリコーンと炭素繊維の表面部分と雰囲気中の窒素とを反応させ、炭素繊維/シリコーン複合材料Aの内部において反応に使用されずに残った炭素繊維の表面に窒化ケイ素被膜(膜材質の詳細分析については後述する、以下同様)を形成した。図3に、試料3の窒化ケイ素被覆炭素繊維の走査型電子顕微鏡像を示す。図3(a)、(b)は、それぞれ異なる場所を示している。図3(c)は、図3(a)の矢印31で指し示した近傍を拡大して示したものである。また、図3(b)の矢印32は、炭素繊維の表面に形成された窒化ケイ素被膜である。図3によれば、形成された窒化ケイ素被膜は、繊維状の窒化ケイ素を含んでいることがわかる。また、繊維状の窒化ケイ素は、炭素繊維の表面から伸びており、隣接する繊維状の窒化ケイ素同士は、互いに絡みあっていることもわかる。なお、試料3の窒化ケイ素被覆炭素繊維では、窒化ケイ素被膜は、繊維状の窒化ケイ素以外にも、粒子状の窒化ケイ素を含んでいることがわかる。
−試料4の作製−
準備した炭素繊維/シリコーン複合材料Bを、上記多目的高温炉を用い、窒素雰囲気下(0.1MPa)にて室温から1450℃まで昇温して1450℃で1時間保持した後に降温するという条件で焼成した。これにより、シリコーンと炭素繊維の表面部分と雰囲気中の窒素とを反応させ、反応に使用されずに残った炭素繊維の表面に窒化ケイ素被膜を形成した。図4に、試料4の窒化ケイ素被覆炭素繊維の走査型電子顕微鏡像を示す。図4によれば、形成された窒化ケイ素被膜は、繊維状の窒化ケイ素を含んでいることがわかる。また、繊維状の窒化ケイ素は、炭素繊維の表面から伸びており、隣接する繊維状の窒化ケイ素同士は、互いに絡みあっていることもわかる。また、試料3と試料4とを比較すると、試料4では、炭素繊維の表面全体に直径150nm程度の繊維状の窒化ケイ素が生成していることがわかる。この結果から、SiO粒子を含むシリコーンを原料に用いることにより、窒化ケイ素の生成が促進されることがわかる。
−エネルギー分散型X線分析−
上記作製した試料1〜試料4につき、上述した走査型電子顕微鏡に付属するEDX装置を用いて、元素分析を行った。その結果、真空雰囲気下、窒素雰囲気下のいずれで焼成を実施した場合も、炭素繊維表面の粒子状物質、繊維状物質については、C元素およびSi元素によるピークが観察された。また、金属元素としてCa元素やAl元素のピークも観察された。また、窒素雰囲気下で焼成した試料については、軽元素ではN元素のピークも小さいながら存在することが分かった。また、EDXで得られるピーク高さからZAF補正して得られた簡易的な元素構成を表1に示す。
ここで得られた元素構成は、一般に大きな誤差を含みうるため、解釈に注意が必要であるが、真空雰囲気下で焼成した場合には、炭素、ケイ素から構成される物質が多いことがわかる。また、窒素雰囲気下で焼成した場合には、炭素、窒素、ケイ素から構成される物質が多いことがわかる。
−広角X線回折測定−
上記作製した試料1〜試料4につき、広角X線回折装置(リガク社製、「RINT−2000」)を用いて、回折角10−70°の角度範囲について広角X線回折測定を行った。この際、測定は、回転陽極X線管球からの平行CuKα線を用い、40kV、200mAの条件で対称反射法を用いて実施した。その結果を、図5および図6に示す。なお、各図には、比較のため、焼成前のXRDパターンも示されている。また、各図において、26°付近に観察されるブロードなピークは、炭素繊維を構成する炭素網面積層体由来のピークである。また、焼成前のXRDパターンの低角度側に存在するピークは、シリコーンから生じたハローである。真空雰囲気下で焼成した試料1および試料2については、SiCが生成していることがわかる。また、窒素雰囲気下で焼成した試料3および試料4については、Siが生成していることがわかる。X線では、微小領域の解析が困難であるため、実際にSEM観察した結果と直接対応させることは難しい。しかし、SEM−EDXの結果を合わせて考えると、真空雰囲気下で焼成した試料1および試料2については、炭素繊維の表面に炭化ケイ素が生成しているといえる。
一方、窒素雰囲気下で焼成した試料3および試料4については、炭素繊維の表面に窒化ケイ素が生成しているといえる。ここで、図7に、炭素繊維の表面から窒化ケイ素が成長する様子を拡大して示す。図7によれば、炭素繊維72とシリコーンと窒素とが反応して、繊維状の窒化ケイ素71が生成していることがわかる。また、繊維状の窒化ケイ素71が成長すればするほど、炭素繊維72の表面部分が侵食されていることがわかる。これは、上記反応では、炭素繊維を構成する炭素が一酸化炭素として消費されるため、炭素繊維の表面部分が減少したためである。また、このことから、上記反応を途中で止めることにより、反応に使用されずに残った炭素繊維の表面に窒化ケイ素を形成可能であるといえる。一方、炭素繊維の内部まで上記反応を進めることで、炭素繊維を窒化ケイ素に転換することも可能であるといえる。また、図7に示されるように、炭素繊維の表面に形成される繊維状の窒化ケイ素71は、直径が50nm程度のナノオーダーのサイズであることもわかる。
−試料5の作製−
準備したシリコーン含浸炭素繊維ストランドAを、上記多目的高温炉を用い、窒素雰囲気下(0.1MPa)にて室温から1450℃まで昇温して1450℃で1時間保持した後に降温するという条件で焼成した。これにより、シリコーンと炭素繊維の表面の一部と雰囲気中の窒素とを反応させ、繊維状の窒化ケイ素を形成した。図8に、試料5の繊維状の窒化ケイ素の走査型電子顕微鏡像を示す。図8に示されるように、形成された窒化ケイ素は、平均直径が200μm程度のナノファイバー状の窒化ケイ素であることがわかる。なお、シリコーン含浸炭素繊維ストランドを用いた場合には、炭素繊維/シリコーン複合材料を用いた場合に比べ、シリコーン量が少なかったために焼成中にシリコーンが取れてしまい、一部しか付着しなかったため、本例では被膜状態にならなかったものと推察される。
−試料6の作製−
準備した炭素繊維/シリコーン複合材料Aを、上記多目的高温炉を用い、窒素雰囲気下(0.1MPa)にて室温から1450℃まで昇温して1450℃で1時間保持した後に降温するという条件で焼成した。これにより、シリコーンと炭素繊維の全体と雰囲気中の窒素とを反応させ、炭素繊維/シリコーン複合材料Aの表面から繊維状の窒化ケイ素を形成した。図9に、試料6の繊維状の窒化ケイ素の走査型電子顕微鏡像を示す。図9に示されるように、形成された窒化ケイ素は、繊維軸方向に垂直な断面が、幅7μm程度、厚さ2μm程度の矩形状を有するウィスカー状の窒化ケイ素であることがわかる。
−焼成温度の影響−
焼成温度と窒化ケイ素の生成との関係を以下のようにして調査した。準備したシリコーン含浸炭素繊維ストランドAを、上記多目的高温炉を用い、窒素雰囲気下(0.1MPa)にて室温から所定温度まで昇温して所定温度で1時間保持した後に降温するという条件で焼成した。これにより、各試料を作製した。所定温度は、1250℃、1350℃、1450℃、1550℃の4水準とし、1250℃焼成の試料を比較試料1、1350℃焼成の試料を試料7、1450℃焼成の試料を試料8、1550℃焼成の試料を試料9とした。図10に、これら各試料の走査型電子顕微鏡像を示す。図10(a)に示されるように、比較試料1では、焼成温度が1300℃を下回っていたため、焼け残りのシリコーン101と、炭素繊維102とが確認されたが、繊維状の窒化ケイ素は確認されなかった。これらに対し、図10(b)〜(d)に示されるように、焼成温度が1300℃以上1550℃以下の範囲であった試料7〜試料9では、繊維状の窒化ケイ素103が確認された。
上記シリコーン含浸炭素繊維ストランドAをシリコーン含浸炭素繊維ストランドBに変更した点以外は、上記と同様にして、各試料を作製した。1250℃焼成の試料を比較試料2、1350℃焼成の試料を試料10、1450℃焼成の試料を試料11、1550℃焼成の試料を試料12とした。これら各試料の走査型電子顕微鏡像を示す。図11(a)に示されるように、比較試料2では、焼成温度が1300℃を下回っていたため、焼け残りのシリコーン111と、炭素繊維112とが確認されたが、繊維状の窒化ケイ素は確認されなかった。これらに対し、図11(b)〜(d)に示されるように、焼成温度が1300℃以上1550℃以下の範囲であった試料10〜試料12では、繊維状の窒化ケイ素83が確認された。
なお、上述したシリコーン含浸炭素繊維ストランドAを用いた場合において、窒素雰囲気を真空雰囲気(5Pa)とし、焼成温度を1420℃以上2800℃以下の範囲として同様の実験を行った結果、炭化ケイ素の生成が確認されたが、焼成温度を1400℃とした場合には、炭化ケイ素の生成が確認されなかった。
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。

Claims (10)

  1. 炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる接触工程と、
    表面が上記シリコーンと接触した状態にある上記炭素繊維を真空雰囲気下1420℃以上2800℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有しており、
    上記焼成工程において、上記シリコーンと上記炭素繊維の表面部分とを反応させ、反応に使用されずに残った上記炭素繊維の表面に炭化ケイ素被膜を形成する、炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法。
  2. 上記炭化ケイ素被膜は、粒子状の炭化ケイ素が一体化されてなる、請求項1に記載の炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法。
  3. 炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる接触工程と、
    表面が上記シリコーンと接触した状態にある上記炭素繊維を窒素雰囲気下1300℃以上1550℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有しており、
    上記焼成工程において、上記シリコーンと上記炭素繊維の表面部分と雰囲気中の窒素とを反応させ、反応に使用されずに残った上記炭素繊維の表面に窒化ケイ素被膜を形成する、窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法。
  4. 上記窒化ケイ素被膜は、繊維状の窒化ケイ素を含む、請求項3に記載の窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法。
  5. 炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる接触工程と、
    表面が上記シリコーンと接触した状態にある上記炭素繊維を窒素雰囲気下1300℃以上1550℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有しており、
    上記焼成工程において、上記シリコーンと上記炭素繊維と雰囲気中の窒素とを反応させ、繊維状の窒化ケイ素を形成する、窒化ケイ素の製造方法。
  6. 上記炭素繊維の全てを反応させる、請求項5に記載の窒化ケイ素の製造方法。
  7. 上記接触工程で用いられる上記炭素繊維は、炭素繊維強化複合材料のリサイクル過程で生じた臨界繊維長未満の炭素繊維である、請求項5または6に記載の窒化ケイ素の製造方法。
  8. 炭素繊維と、
    炭素繊維の表面を覆う窒化ケイ素被膜と、を有する、
    窒化ケイ素被覆炭素繊維。
  9. 上記窒化ケイ素被膜は、上記炭素繊維の表面からのびた繊維状の窒化ケイ素を含む、請求項8に記載の窒化ケイ素被覆炭素繊維。
  10. 隣接する繊維状の上記窒化ケイ素同士が絡み合っている、請求項9に記載の窒化ケイ素被覆炭素繊維。
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