JP2019148036A - 炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法、窒化ケイ素被覆炭素繊維およびその製造方法、窒化ケイ素の製造方法 - Google Patents
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表面が上記シリコーンと接触した状態にある上記炭素繊維を真空雰囲気下1420℃以上2800℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有しており、
上記焼成工程において、上記シリコーンと上記炭素繊維の表面部分とを反応させ、反応に使用されずに残った上記炭素繊維の表面に炭化ケイ素被膜を形成する、炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法にある。
表面が上記シリコーンと接触した状態にある上記炭素繊維を窒素雰囲気下1300℃以上1550℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有しており、
上記焼成工程において、上記シリコーンと上記炭素繊維の表面部分と雰囲気中の窒素とを反応させ、反応に使用されずに残った上記炭素繊維の表面に窒化ケイ素被膜を形成する、窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法にある。
表面が上記シリコーンと接触した状態にある上記炭素繊維を窒素雰囲気下1300℃以上1550℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有しており、
上記焼成工程において、上記シリコーンと上記炭素繊維と雰囲気中の窒素とを反応させ、繊維状の窒化ケイ素を形成する、窒化ケイ素の製造方法にある。
炭素繊維の表面を覆う窒化ケイ素被膜と、を有する、
窒化ケイ素被覆炭素繊維にある。
SiO+2C→SiC+CO
2SiO+3C→2SiC+CO2
そのため、炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法における焼成工程では、炭素繊維の表面を侵食しながら炭化ケイ素被膜を形成することができる。
SiO2+3C→SiC+2CO
2SiO2+4C→2SiC+2CO2
そのため、この場合には、炭化ケイ素被膜の生成を促進させることができる。
3SiO+2N2+3C→Si3N4+3CO
そのため、窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法における焼成工程では、炭素繊維の表面を侵食しながら窒化ケイ素被膜を形成することができる。
3SiO2+2N2+6C→Si3N4+6CO
この反応が炭素繊維表面で起きることにより、窒化ケイ素が炭素繊維の表面を覆いやすくなり、窒化ケイ素被膜の生成を促進させることが可能になる。
以下の原料を準備した。
<炭素繊維>
・炭素繊維(1)(平均直径7μm、平均繊維長130μm:短繊維) (東レ社製、「MLD−300」)
・炭素繊維(2)(平均直径7μm、繊維長は直径に対して十分に長い:長繊維) (東レ社製、「T700SC」)
<シリコーン>
・シリコーン(1)(SiO2を含まない) (信越シリコーン社製、主剤「KJR−9023」、硬化剤「C−9023」)
・シリコーン(2)(SiO2を含む) (モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、主剤「TSE−350」、硬化剤「CE62」)
炭素繊維(1)(短繊維)とシリコーン(1)(SiO2を含まない)とを、炭素繊維の重量分率が20wt%となるように混合した。次いで、この混合物を100℃で10分間加熱し、シリコーンを加熱硬化させた。得られた硬化物は、厚さ約1mmのフィルム状である。次いで、この硬化物を1cm×1cmの大きさに切り出した。これにより、炭素繊維/シリコーン複合材料Aを準備した。炭素繊維/シリコーン複合材料Aにおいて、炭素繊維の表面はシリコーンと接触した状態にある。
炭素繊維(2)(長繊維)のロービングをシリコーン(1)(SiO2を含まない)に含浸させた後、余分なシリコーンを拭き取った。次いで、これを100℃で120分間加熱し、シリコーンを加熱硬化させた。これにより、シリコーン含浸炭素繊維ストランドAを準備した。シリコーン含浸炭素繊維ストランドAにおいて、炭素繊維の表面はシリコーンと接触した状態にある。
準備した炭素繊維/シリコーン複合材料Aを、多目的高温炉(富士電波工業社製、
「ハイマルチ」)を用い、真空雰囲気下(5Pa)にて室温から1450℃まで昇温して1450℃で1時間保持した後に降温するという条件で焼成した。これにより、シリコーンと炭素繊維の表面部分とを反応させ、反応に使用されずに残った炭素繊維の表面に炭化ケイ素被膜(膜材質の詳細分析については後述する、以下同様)を形成した。図1に、試料1の炭化ケイ素被覆炭素繊維の走査型電子顕微鏡像を示す。なお、走査型電子顕微鏡(SEM)には、JEOL社製、「JSM−IT300」を用いた(以下同様)。図1(b)、(c)によれば、炭化ケイ素被覆炭素繊維における炭化ケイ素被膜は、粒子状の炭化ケイ素が一体化されてなることがわかる。
準備した炭素繊維/シリコーン複合材料Bを、上記多目的高温炉を用い、真空雰囲気下(5Pa)にて室温から1450℃まで昇温して1450℃で1時間保持した後に降温するという条件で焼成した。これにより、シリコーンと炭素繊維の表面部分とを反応させ、反応に使用されずに残った炭素繊維の表面に炭化ケイ素被膜を形成した。図2に、試料2の炭化ケイ素被覆炭素繊維の走査型電子顕微鏡像を示す。図2(b)、(c)は、図2(a)の異なる一部を拡大したものである。図2(b)の矢印21で指し示した黒い部分は、反応に使用されずに残った炭素繊維の表面を示している。また、図2(b)、(c)の矢印22で指し示した白い部分は、炭素繊維の表面に形成された炭化ケイ素被膜である。また、試料2と試料1とを比較すると、試料2では、反応による侵食によって炭素繊維の表面に凹凸が形成されていることがわかる。この結果から、SiO2粒子を含むシリコーンを原料に用いることにより、炭化ケイ素の生成が促進されることがわかる。
準備した炭素繊維/シリコーン複合材料Aを、上記多目的高温炉を用い、窒素雰囲気下(0.1MPa)にて室温から1450℃まで昇温して1450℃で1時間保持した後に降温するという条件で焼成した。これにより、シリコーンと炭素繊維の表面部分と雰囲気中の窒素とを反応させ、炭素繊維/シリコーン複合材料Aの内部において反応に使用されずに残った炭素繊維の表面に窒化ケイ素被膜(膜材質の詳細分析については後述する、以下同様)を形成した。図3に、試料3の窒化ケイ素被覆炭素繊維の走査型電子顕微鏡像を示す。図3(a)、(b)は、それぞれ異なる場所を示している。図3(c)は、図3(a)の矢印31で指し示した近傍を拡大して示したものである。また、図3(b)の矢印32は、炭素繊維の表面に形成された窒化ケイ素被膜である。図3によれば、形成された窒化ケイ素被膜は、繊維状の窒化ケイ素を含んでいることがわかる。また、繊維状の窒化ケイ素は、炭素繊維の表面から伸びており、隣接する繊維状の窒化ケイ素同士は、互いに絡みあっていることもわかる。なお、試料3の窒化ケイ素被覆炭素繊維では、窒化ケイ素被膜は、繊維状の窒化ケイ素以外にも、粒子状の窒化ケイ素を含んでいることがわかる。
準備した炭素繊維/シリコーン複合材料Bを、上記多目的高温炉を用い、窒素雰囲気下(0.1MPa)にて室温から1450℃まで昇温して1450℃で1時間保持した後に降温するという条件で焼成した。これにより、シリコーンと炭素繊維の表面部分と雰囲気中の窒素とを反応させ、反応に使用されずに残った炭素繊維の表面に窒化ケイ素被膜を形成した。図4に、試料4の窒化ケイ素被覆炭素繊維の走査型電子顕微鏡像を示す。図4によれば、形成された窒化ケイ素被膜は、繊維状の窒化ケイ素を含んでいることがわかる。また、繊維状の窒化ケイ素は、炭素繊維の表面から伸びており、隣接する繊維状の窒化ケイ素同士は、互いに絡みあっていることもわかる。また、試料3と試料4とを比較すると、試料4では、炭素繊維の表面全体に直径150nm程度の繊維状の窒化ケイ素が生成していることがわかる。この結果から、SiO2粒子を含むシリコーンを原料に用いることにより、窒化ケイ素の生成が促進されることがわかる。
上記作製した試料1〜試料4につき、上述した走査型電子顕微鏡に付属するEDX装置を用いて、元素分析を行った。その結果、真空雰囲気下、窒素雰囲気下のいずれで焼成を実施した場合も、炭素繊維表面の粒子状物質、繊維状物質については、C元素およびSi元素によるピークが観察された。また、金属元素としてCa元素やAl元素のピークも観察された。また、窒素雰囲気下で焼成した試料については、軽元素ではN元素のピークも小さいながら存在することが分かった。また、EDXで得られるピーク高さからZAF補正して得られた簡易的な元素構成を表1に示す。
上記作製した試料1〜試料4につき、広角X線回折装置(リガク社製、「RINT−2000」)を用いて、回折角10−70°の角度範囲について広角X線回折測定を行った。この際、測定は、回転陽極X線管球からの平行CuKα線を用い、40kV、200mAの条件で対称反射法を用いて実施した。その結果を、図5および図6に示す。なお、各図には、比較のため、焼成前のXRDパターンも示されている。また、各図において、26°付近に観察されるブロードなピークは、炭素繊維を構成する炭素網面積層体由来のピークである。また、焼成前のXRDパターンの低角度側に存在するピークは、シリコーンから生じたハローである。真空雰囲気下で焼成した試料1および試料2については、SiCが生成していることがわかる。また、窒素雰囲気下で焼成した試料3および試料4については、Si3N4が生成していることがわかる。X線では、微小領域の解析が困難であるため、実際にSEM観察した結果と直接対応させることは難しい。しかし、SEM−EDXの結果を合わせて考えると、真空雰囲気下で焼成した試料1および試料2については、炭素繊維の表面に炭化ケイ素が生成しているといえる。
準備したシリコーン含浸炭素繊維ストランドAを、上記多目的高温炉を用い、窒素雰囲気下(0.1MPa)にて室温から1450℃まで昇温して1450℃で1時間保持した後に降温するという条件で焼成した。これにより、シリコーンと炭素繊維の表面の一部と雰囲気中の窒素とを反応させ、繊維状の窒化ケイ素を形成した。図8に、試料5の繊維状の窒化ケイ素の走査型電子顕微鏡像を示す。図8に示されるように、形成された窒化ケイ素は、平均直径が200μm程度のナノファイバー状の窒化ケイ素であることがわかる。なお、シリコーン含浸炭素繊維ストランドを用いた場合には、炭素繊維/シリコーン複合材料を用いた場合に比べ、シリコーン量が少なかったために焼成中にシリコーンが取れてしまい、一部しか付着しなかったため、本例では被膜状態にならなかったものと推察される。
準備した炭素繊維/シリコーン複合材料Aを、上記多目的高温炉を用い、窒素雰囲気下(0.1MPa)にて室温から1450℃まで昇温して1450℃で1時間保持した後に降温するという条件で焼成した。これにより、シリコーンと炭素繊維の全体と雰囲気中の窒素とを反応させ、炭素繊維/シリコーン複合材料Aの表面から繊維状の窒化ケイ素を形成した。図9に、試料6の繊維状の窒化ケイ素の走査型電子顕微鏡像を示す。図9に示されるように、形成された窒化ケイ素は、繊維軸方向に垂直な断面が、幅7μm程度、厚さ2μm程度の矩形状を有するウィスカー状の窒化ケイ素であることがわかる。
焼成温度と窒化ケイ素の生成との関係を以下のようにして調査した。準備したシリコーン含浸炭素繊維ストランドAを、上記多目的高温炉を用い、窒素雰囲気下(0.1MPa)にて室温から所定温度まで昇温して所定温度で1時間保持した後に降温するという条件で焼成した。これにより、各試料を作製した。所定温度は、1250℃、1350℃、1450℃、1550℃の4水準とし、1250℃焼成の試料を比較試料1、1350℃焼成の試料を試料7、1450℃焼成の試料を試料8、1550℃焼成の試料を試料9とした。図10に、これら各試料の走査型電子顕微鏡像を示す。図10(a)に示されるように、比較試料1では、焼成温度が1300℃を下回っていたため、焼け残りのシリコーン101と、炭素繊維102とが確認されたが、繊維状の窒化ケイ素は確認されなかった。これらに対し、図10(b)〜(d)に示されるように、焼成温度が1300℃以上1550℃以下の範囲であった試料7〜試料9では、繊維状の窒化ケイ素103が確認された。
Claims (10)
- 炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる接触工程と、
表面が上記シリコーンと接触した状態にある上記炭素繊維を真空雰囲気下1420℃以上2800℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有しており、
上記焼成工程において、上記シリコーンと上記炭素繊維の表面部分とを反応させ、反応に使用されずに残った上記炭素繊維の表面に炭化ケイ素被膜を形成する、炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法。 - 上記炭化ケイ素被膜は、粒子状の炭化ケイ素が一体化されてなる、請求項1に記載の炭化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法。
- 炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる接触工程と、
表面が上記シリコーンと接触した状態にある上記炭素繊維を窒素雰囲気下1300℃以上1550℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有しており、
上記焼成工程において、上記シリコーンと上記炭素繊維の表面部分と雰囲気中の窒素とを反応させ、反応に使用されずに残った上記炭素繊維の表面に窒化ケイ素被膜を形成する、窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法。 - 上記窒化ケイ素被膜は、繊維状の窒化ケイ素を含む、請求項3に記載の窒化ケイ素被覆炭素繊維の製造方法。
- 炭素繊維の表面にシリコーンを接触させる接触工程と、
表面が上記シリコーンと接触した状態にある上記炭素繊維を窒素雰囲気下1300℃以上1550℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有しており、
上記焼成工程において、上記シリコーンと上記炭素繊維と雰囲気中の窒素とを反応させ、繊維状の窒化ケイ素を形成する、窒化ケイ素の製造方法。 - 上記炭素繊維の全てを反応させる、請求項5に記載の窒化ケイ素の製造方法。
- 上記接触工程で用いられる上記炭素繊維は、炭素繊維強化複合材料のリサイクル過程で生じた臨界繊維長未満の炭素繊維である、請求項5または6に記載の窒化ケイ素の製造方法。
- 炭素繊維と、
炭素繊維の表面を覆う窒化ケイ素被膜と、を有する、
窒化ケイ素被覆炭素繊維。 - 上記窒化ケイ素被膜は、上記炭素繊維の表面からのびた繊維状の窒化ケイ素を含む、請求項8に記載の窒化ケイ素被覆炭素繊維。
- 隣接する繊維状の上記窒化ケイ素同士が絡み合っている、請求項9に記載の窒化ケイ素被覆炭素繊維。
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