JP2019147946A - エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを含む硬化性樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents

エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを含む硬化性樹脂組成物及びその硬化物 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、硬化性、塗膜の表面性、接着性、耐衝撃性に優れたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、硬化性樹脂組成物及び硬化物を提供することを目的とする。【解決手段】本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、M単位(R1R2R3SiO1/2)、D単位(R4R5O2/2)及びQ単位(SiO4/2)を有し、全ケイ素に対するT単位(R6SiO3/2)の含有量が80mоl%以下である。本発明の硬化性樹脂組成物は、このエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)と硬化剤(B)を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、硬化性に優れたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンに関する。また、本発明は、該エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを用いて得られる硬化性樹脂組成物及び硬化物に関する。
エポキシ樹脂は硬化時の収縮が少なく内部応力の蓄積が少ない点から、高い成形精度を有することが知られ、光カチオン硬化樹脂として好適に利用されている。光カチオン硬化樹脂としてのエポキシ樹脂は、硬化性の向上が課題となっている。非特許文献1にはシロキサン骨格を有する脂環式エポキシ樹脂が記載されている。
Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry,Vol.28,479-503(1990)
しかし、非特許文献1に記載の脂環式エポキシ樹脂は、硬化塗膜の表面性、接着性、耐衝撃性が不十分であった。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。
即ち、本発明の課題は、硬化性、塗膜の表面性、接着性、耐衝撃性に優れたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、硬化性樹脂組成物並びに硬化物を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、M単位(RSiO1/2)、D単位(R2/2)及びQ単位(SiO4/2)を含み、全ケイ素に対するT単位(RSiO3/2)の含有量が80mоl%以下であるエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンが、上記課題を解決し得ることを見出し、発明の完成に至った。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]〜[14]に存する。
[1] M単位(RSiO1/2)、D単位(R2/2)及びQ単位(SiO4/2)を有し、全ケイ素に対するT単位(RSiO3/2)の含有量が80mоl%以下であるエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン。
[2] 圧力0.15torrの減圧下、110℃で2時間加熱した際の重量減少率が5重量%以下である[1]に記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン。
[3] 全ケイ素に対するM単位(RSiO1/2)の含有量が10mоl%以上、75mol%以下である[1]又は[2]に記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン。
[4] 全ケイ素に対するQ単位(SiO4/2)の含有量が3mol%以上である[1]乃至[3]のいずれかに記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン。
[5] 赤外吸収スペクトル分析において、波数1030〜1060cm−1の領域にSi−O伸縮振動の極大吸収波数を有する[1]乃至[4]のいずれかに記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン。
[6] 全ケイ素に対するD単位(R2/2)の含有量が10mol%以下である[1]乃至[5]のいずれかに記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン。
[7] エポキシ当量が100g/当量〜5000g/当量である[1]乃至[6]のいずれかに記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン。
[8] [1]乃至[7]のいずれかに記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)と硬化剤(B)を含む硬化性樹脂組成物。
[9] 硬化剤(B)がカチオン重合開始剤である[8]に記載の硬化性樹脂組成物。
[10] 更に、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)とは異なるエポキシ化合物(C)を含む[8]又は[9]に記載の硬化性樹脂組成物。
[11] エポキシ化合物(C)として脂肪族エポキシ化合物を含む[10]に記載の硬化性樹脂組成物。
[12] エポキシ化合物(C)として水添ビスフェノール型ジグリシジルエーテル類を含む[11]に記載の硬化性樹脂組成物。
[13] エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)とエポキシ化合物(C)との合計に占めるエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)の割合が0.1重量%以上80重量%以下である[10]乃至[12]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[14] [8]乃至[13]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
本発明によれば、硬化性、塗膜の表面性、接着性、耐衝撃性に優れたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、硬化性樹脂組成物及び硬化物が提供される。
このような特長を有することから、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、硬化性樹脂組成物及び硬化物は、電気・電子材料、FRP(繊維強化プラスチック)、接着剤及び塗料、歯科材料、2D/3Dプリンタ等に用途に代表されるインク等の分野において応用展開が可能である。とりわけ、エポキシ樹脂の硬化収縮が少なく硬化時に生じる内部応力が少ない点と、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを含む硬化物の塗膜表面性に優れる点から、厚みが大きい製品、例えば肉厚のFRPや、歯科材料、3Dプリンタにより製造される造形物等、対して好適に用いる事ができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。本明細書において、「〜」を用いてその前後を数値又は物性値で挟んで範囲を表現する場合、その前後の値を含む範囲を意味する。
[エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン]
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を主鎖とし、エポキシ基を含有する重合体であり、例えば以下に示す一般組成式(1)で表される。
Figure 2019147946
(式(1)中、RからRは各々独立して水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜20の一価の有機基、または下記式(2)で表される基、または下記式(3)で表される基であるが、少なくとも一つは下記式(2)または下記式(3)で表される基であり、a+b+c+d=1、0≦e+f<4であり、Rは炭素数1〜7の一価の有機基である。)
Figure 2019147946
(式(2)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の有機基であり、g=0または1である。)
Figure 2019147946
(式(3)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の有機基であり、h=0または1、0≦i≦8、0≦j≦8である。)
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、M単位(RSiO1/2)、D単位(R2/2)及びQ単位(SiO4/2)を有し、全ケイ素に対するT単位(RSiO3/2)の含有量が80mоl%以下であるエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンである。
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは好ましくは、全ケイ素に対するM単位の含有量が10mоl%以上、75mol%以下であり、全ケイ素に対するQ単位(SiO4/2)の含有量が3mol%以上であり、全ケイ素に対するD単位(R2/2)の含有量が10mol%以下であるエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンである。
なお、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの各単位の含有量は、後述の実施例の項に記載の通り、29Si−NMR測定により分析することができる。
<M単位>
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンにおいて、M単位(RSiO1/2)が存在することが必須であり、全ケイ素に対するM単位(RSiO1/2)の割合を意味する前記式(1)におけるaは0.1以上(即ち、全ケイ素に対するM単位(RSiO1/2)の含有量が10mol%以上。以下括弧内のmol%は同様。)が好ましく、より好ましくは0.2以上(20mol%以上)、更に好ましくは0.5以上(50mol%以上)である。aを0.1以上とすること、即ちM単位の含有量を適当な下限値以上にすることにより、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの分子量の制御が容易となる。また、aは1未満(100mol%未満)、好ましくは0.9以下(90mol%以下)、より好ましくは0.75以下(75mol%以下)、更に好ましくは0.7以下(70mol%以下)である。aを上記範囲とすること、即ちM単位の含有量を適当な上限値以下にすることにより、分子量を小さすぎない適切な範囲にしやすくなり、低沸点成分の増加を抑えて引火点が低下することを防ぐことができて好ましい。
<T単位>
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンにおいて、T単位(RSiO3/2)の割合を意味する前記式(1)におけるcは0.8以下(即ち、全ケイ素に対するT単位(RSiO3/2)の含有量が80mol%以下。以下、カッコ内のmol%は同様。)であり、好ましくは0.65以下(65mol%以下)である。一方、T単位(RSiO3/2)の割合を示すcは通常0以上である。式(1)中、cが上記範囲であることで、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを硬化させた場合の硬化物に適度な剛性を持たせることができ、好ましい。特にcの値を0.8以下とすることで、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの粘度を扱いやすい範囲に保つことが容易になり、かつ硬化物の脆さが改善されるため好ましい。なお、後述するQ単位を適切な範囲で含む場合にはT単位が上記の好ましい範囲になくても、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを硬化させた場合に適度な剛性を持たせることができる。
<Q単位>
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは(SiO4/2)で表されるQ単位を含み、即ち式(1)中、dは0より大きく、より好ましくは0.03以上(即ち、全ケイ素に対するQ単位(SiO4/2)の含有量が3mol%以上。以下、括弧内のmol%も同様)、特に好ましくは0.2以上(20mol%以上)である。一方、Q単位(SiO4/2)の割合を示すdは好ましくは0.7以下(70mol%以下)、より好ましくは0.5以下(50mol%以下)である。Q単位を含むことで耐熱性が向上し、式(1)中、dが上記範囲であることで、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの粘度が高くなりすぎることを防ぎ、またエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを硬化させた場合の硬化物に適度な剛性を持たせることができ好ましい。また、式(1)中、dが0.7よりも大きい場合、他のエポキシ化合物やアクリル化合物と混合し、硬化させることで、硬化物の破断強度等の靱性を向上させることができる。
なお、前述したT単位を適切な範囲で含む場合にはQ単位が上記の好ましい範囲になくても、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを硬化させた場合に適度な剛性を持たせることができる。
<D単位>
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは(R2/2)で表されるD単位を含み、即ち式(1)中、bは0より大きく、0.01以上(即ち、全ケイ素に対するD単位(R2/2)の含有量が1mol%以上。以下、括弧内のmol%も同様)が好ましい。また、bの上限は特に限定されないが、0.3以下(30mol%以下)が好ましく、より好ましくは0.1以下(10mol%以下)である。D単位(R2/2)をこのような範囲で含むことにより、硬化物の弾性率を高く保つことが容易になる。また、D単位(R2/2)の含有量を適当な下限値以上とすることで、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンがかご型構造をとりにくくなるため、粘度が高くなりすぎることを防ぎ、またエポキシ基含有オルガノシロキサンの硬化物が固くなりすぎることを防ぐことができるため好ましい。
<末端基>
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの末端基を表す、前記式(1)における(O1/2)および(O1/2H)の量は特に限定されないが、通常は0≦e+f<4であり、好ましくは0≦e+f<2、より好ましくは0≦e+f<1、さらに好ましくは0≦e+f<0.5である。これらの末端基は、通常反応性を有するため、e+fの値が小さい場合には保管安定性が良い傾向があるため好ましい。また、水酸基以外の末端基を表す(O1/2)のRは特に限定されないが、炭素数1から7の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基であることがさらに好ましい。Rが炭素数が比較的少ないこれらの基であることで、エポキシ基の導入反応や、生成したエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの硬化反応を立体的に阻害しにくい傾向がある。
<エポキシ基の種類>
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンが有するエポキシ基の種類は特に限定されないが、例えばグリシジル基に代表される末端にエチレンオキシド基を有するものや、末端にエチレンオキシドを有さずシクロヘキセンオキシド基等の脂環式エポキシ基を有するものに分けられ、所望する性能によって使い分けることができる。
また、異なる種類のエポキシ基を2種以上組み合わせて使用することもできる。その場合、後述するエポキシ基毎の特性を鑑みて、求める特性に合わせてその比率を制御することが好ましい。
例えば、基材との接着性を高める目的では、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは末端にエチレンオキシド基を有することが好ましい。より具体的には、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは下記式(2)で表される基を有することが好ましく、下記式(4)または下記式(5)で表される基を有することがより好ましく、下記式(4)で表される基を有することがさらに好ましい。なお、式(2)におけるRの置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の有機基としては、RからRの置換基を有していてもよい炭素数1〜20の一価の有機基として例示した基に対応する(即ち、水素原子を一つとった)二価の有機基が挙げられる。
Figure 2019147946
(式(2)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の有機基であり、g=0または1である。)
Figure 2019147946
また、例えば、硬化性を高める目的では、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは炭素数が3〜18の置換されていても良い脂環式エポキシ基を有することが好ましい。より具体的には本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは下記式(3)で表される基を有することが好ましく、下記式(6)または下記式(7)または下記式(8)で表される基を有することがより好ましく、下記式(6)で表される基を有することがさらに好ましい。なお、式(3)におけるRの置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の有機基としては、RからRの置換基を有していてもよい炭素数1〜20の一価の有機基として例示した基に対応する(即ち、水素原子を一つとった)二価の有機基が挙げられる。
Figure 2019147946
(式(3)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の有機基であり、h=0または1、0≦i≦8、0≦j≦8である。
Figure 2019147946
<RからRのうちエポキシ基を含有しない基>
前記式(1)におけるRからRのうちエポキシ基を含有しない基の構造は特に限定されないが、RからRは各々独立して水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜20の一価の有機基である。具体的には、水素原子、炭素数1〜20の直鎖アルキル基、炭素数1〜20の分岐アルキル基、炭素数1〜20の環状構造を含むアルキル基、炭素数1〜20の芳香族炭化水素基、炭素数1〜20の複素環基などが挙げられる。これらのうち、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基、カルバゾール基、フェネチル基などの芳香族性官能基、フラニル基、ポリエチレングリコール基などのエーテル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基、フェニル基であることがさらに好ましい。
前記式(1)におけるM単位(RSiO1/2)の一例として、トリメチルシロキシ基(MeSiO1/2)、ジメチルシロキシ基(MeHSiO1/2)、メチルシロキシ基(MeHSiO1/2)、トリヒドロシロキシ基(HSiO1/2)、ジメチルビニルシロキシ基(MeViSiO1/2)、ジメチルメタクリロキシプロピル基(Me(MaOPr)SiO1/2)、トリフェニルシロキシ基(PhSiO1/2)、ジフェニルシロキシ基(PhHSiO1/2)、フェニルシロキシ基(PhHSiO1/2)、メチルフェニルシロキシ基(MePhHSiO1/2)、ジメチルフェニルシロキシ基(MePhSiO1/2)、メチルジフェニルシロキシ基(MePhSiO1/2)等が挙げられ、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンはこれらM単位を1種類のみを含有してもよく、2種類以上含有してもよく、エポキシ基を含有するM単位とともに含有してもよい。即ち、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、例えば、トリメチルシロキシ基とトリフェニルシロキシ基を含有してもよく、トリメチルシロキシ基とグリシジルオキシプロピルジメチルシロキシ基を含有してもよい。
また、必要に応じて、エポキシ基を含有するM単位のみを用いてもよい。即ち、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、例えば、M単位としてグリシジルオキシプロピルジメチルシロキシ基を含有し、その他のM単位種を含有しなくてもよい。
前記式(1)におけるD単位(R2/2)については、上述のM単位同様にRが同一の官能基であってもよく異種の官能基の組合せであってもよい。また、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンはD単位を1種類のみ含有してもよく、2種類以上含有してもよい。
前記式(1)におけるT単位(RSiO3/2)の種類は、上述のM単位同様に1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。また、必要に応じて、T単位の種類としてエポキシ基を含有するT単位のみを用いてもよい。
但し、前記式(1)におけるRからRとして、少なくとも1種類以上エポキシ基を含有する基を含む。
<Si−O伸縮振動の極大吸収波数>
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、(SiO4/2)で表されるQ単位を有し、赤外吸収スペクトル分析において、波数1030〜1060cm−1の領域にSi−O伸縮振動の極大吸収波数を有するエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンであることが好ましい。
赤外吸収スペクトル分析において、上記波数領域にSi−O伸縮振動の極大吸収波数を有することで、かご型シルセスキオキサンのような極端に硬くなる構造を避けることができ、また液状で取扱いが容易なエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとなるため好ましい。極大吸収波数は特定の波数領域における最大の吸光度を与える波数を意味し、本実施形態では、波数1000〜1200cm−1の領域内における最大の吸光度を与える波数を極大吸収波数とする。
赤外吸収スペクトル分析による極大吸収波数は、フーリエ変換赤外分光装置を用い、ATR法(全反射測定法)により測定できる。
また、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、赤外吸収スペクトル分析において、波数1070〜1150cm−1の領域にSi−O伸縮振動の吸収ピークを有さないことが好ましい。上記波数領域にSi−O伸縮振動の吸収ピークを有さないことで、かご型シルセスキオキサンのような極端に硬くなる構造を避けることができ、また液状で取扱いが容易なエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとなるため好ましい。
なお、波数1070〜1150cm−1の領域に、Si−O以外の有機分子由来の特性吸収帯が存在してもよい。有機分子由来の特性吸収帯の例としては、ヒドロキシル基のC−O由来、エステルのC−O−C由来、酸無水物のC−O−C由来、エーテルのC−O−C由来、アミンのC−N由来、スルホン酸やスルホキシドのC−S由来、フッ素化合物のC−F由来、リン化合物のP=O又はP−O由来、無機塩SO 2−又はClO 由来の特性吸収帯が挙げられる。これらとSi−O伸縮振動との帰属を取り違えないように注意しなければならない。
<エポキシ当量>
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンのエポキシ当量は、好ましくは100g/当量以上、より好ましくは150g/当量以上、更に好ましくは200g/当量以上である。エポキシ当量が上記下限以上であることにより、硬化塗膜の表面性を良好にすることができ、また架橋密度を高くできるため塗膜強度や耐熱性を高くでき、特に塗膜の密着性を高くすることができる。
また、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンのエポキシ当量は、好ましくは5000g/当量以下、より好ましくは2000g/当量以下、更に好ましくは1000g/当量以下である。エポキシ当量が上記上限以下であると、良好な硬化性や接着性を維持しながら、硬化時の収縮が少なくなるため塗膜の表面性を向上させることができ、適切な架橋密度となることから耐衝撃性を高くすることができるため好ましい。
なお、本発明において「エポキシ当量」とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂(本発明ではエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン)の質量」と定義され、JIS K7236に準じて測定することができる。
<重量平均分子量(Mw)>
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、300以上が好ましく、500以上がより好ましく、700以上が硬化塗膜の表面性を良好にする点で特に好ましい。また、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量(Mw)は10000以下が好ましく、7500以下がより好ましく、5000以下が、ハンドリング性の観点から特に好ましい。
<数平均分子量(Mn)>
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、150以上が好ましく、250以上がより好ましく、600以上が硬化塗膜の表面性の観点から特に好ましい。また、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの数平均分子量(Mn)は9000以下が好ましく、6500以下がより好ましく、4000以下が、ハンドリング性の観点から特に好ましい。
なお、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量及び数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定することができる。より詳細な方法の例について後述の実施例の項において説明する。
<低沸点成分量>
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン中に含まれる低沸点成分の量は特段限定されないが、低沸点成分の量が少ない場合、引火点が高くなるため、運搬、貯蔵時の安全性を保ちやすくなるほか、熱硬化時や硬化物使用時の減肉やそれによる脆化が抑制できる。本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンに含まれる低沸点成分の量は、例えば圧力0.15torrの減圧下、110℃で2時間加熱した際の重量減少率として表すことができ、この重量減少率は10重量%以下が好ましく、8重量%以下がより好ましく、5重量%以下が更に好ましい。
低沸点成分の量は、具体的には、以下の手順で測定することができる。H−NMRを測定し、有機溶媒等、ポリオルガノシロキサン以外の成分の重量を算出する。1Lナス型フラスコに16×3.5mmオーバル型PTFE回転子を入れ、これらの重さを測定する。その後、ポリオルガノシロキサンを該ナス型フラスコに入れ、重量を測定する。この際、ポリオルガノシロキサンの仕込み量は200gが好ましい。オイルバスにてナス型フラスコを加熱し、マグネチックスターラにより回転子を回して液面が流動する程度に撹拌し、オイル式真空ポンプにて減圧する。この際の圧力は、0.2〜0.1torrが好ましく、マノメータにより確認し、圧力が0.15torrとなるように減圧することが好ましい。2時間後、室温まで冷却し、窒素ガスにより大気圧に戻し、ナス型フラスコに付着したオイルを十分にふき取り、ナス型フラスコに入った状態のポリオルガノシロキサンの重量を測定し、先に測定していたナス型フラスコと回転子の重さを差引き、該操作により揮発した重量を算出する。該操作後のポリオルガノシロキサンのH−NMRを測定し、有機溶媒等、ポリオルガノシロキサン以外の成分の重量を算出する。揮発した重量からポリオルガノシロキサン以外の成分の量を差引き、ポリオルガノシロキサンの揮発量を算出する。ポリオルガノシロキサンの重量減少は仕込み量を200gとした際、10g未満であることが好ましい。
なお、ポリオルガノシロキサン以外の成分が10重量%以上含まれている場合、ポリオルガノシロキサン以外の成分の揮発により、内温が下がり、ポリオルガノシロキサンが揮発しにくくなるため、ポリオルガノシロキサン以外の成分が10重量%以上含有している場合は、温度60℃に加熱し、圧力10torrにて減圧して、ポリオルガノシロキサン以外の成分を1重量%未満に除去した上で実施することが好ましい。
<エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの製造方法>
本発明のポリオルガノシロキサンの製造方法は、前記式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを得ることができれば特段限定されない。例えば、ジシロキサン化合物やジシラザン化合物およびそれらの加水分解物、アルコキシシラン化合物やその加水分解物、部分加水分解縮合物を一種類または複数種同時に縮合させる方法、クロロシラン化合物やその加水分解物、部分加水分解縮合物を縮合させる方法、環状シロキサン化合物を開環重合させる方法、アニオン重合を初めとする連鎖重合など、いずれの製造方法であってもよく、複数の製造方法を組み合わせて使用してもかまわない。また、エポキシ基の導入方法に関しても特段限定されず、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物、ジシロキサン化合物、ジシラザン化合物やこれらの加水分解物、部分加水分解縮合物を一種類または複数種同時に縮合させる方法、ポリオルガノシロキサンに導入されたエポキシ基以外の基を化学的手法によりエポキシ基へ変換する方法など、いずれの方法であってもよく、これらの方法を組み合わせて用いても良い。
エポキシ基以外の基を化学的手法によりエポキシ基に変換する方法としては、水素原子がケイ素原子に直結した構造を有するポリオルガノシロキサンにエポキシ基を有するアルケニル基を有する化合物を反応させる方法、アルケニル基を有するポリオルガノシロキサンにエポキシ基を有するチオール化合物を反応させる方法、アルケニル基を有するポリオルガノシロキサンのアルケニル基を酸化剤を用いて酸化する方法などが挙げられる。
また、反応後は、得られたポリオルガノシロキサンを、カラムクロマトグラフィーやGPC、溶媒による抽出、不要成分の留去などによって、所望のエポキシ当量や分子量を有するポリオルガノシロキサンに分画して使用してもよい。また、減圧や加熱などの処理により低沸点成分を除去してもよい。
<エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを製造する際の溶媒>
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを製造する際、溶媒を用いても用いなくてもよい。溶媒を用いる場合には水、および/又は有機溶媒を使用することができるが、特に有機溶媒が好ましく、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、ジクロロメタンがより好ましく、溶解性、除去の容易性、低環境有害性の観点から、テトラヒドロフラン、トルエン、メタノールがさらに好ましい。また、これらの溶媒は二種類以上組み合わせて使用しても良く、反応の工程によって溶媒種が異なっていてもよい。また、アルコキシシラン化合物やクロロシラン化合物などを加水分解縮合させることでポリオルガノシロキサン骨格を形成する場合には、水を適量添加して加水分解を促すことができる。
<エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを製造する際の温度・圧力条件>
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを製造する際の反応温度は特に限定されず、通常、−40℃から200℃であるが、−20℃から150℃がより好ましく、0℃から130℃がさらに好ましい。この温度範囲より低い温度では、目的とするポリオルガノシロキサン骨格を形成する反応、あるいはエポキシ基を導入する反応が進行しにくくなる場合がある。一方、この温度範囲より高い温度では、望まないエポキシ基の重合や他置換基との反応が進行する場合がある。
また、反応を実施する際の圧力は特に限定されず、通常は0.6気圧から1.4気圧で実施されるが、0.8気圧から1.2気圧で実施されるのが好ましく、0.9気圧から1.1気圧で実施されることがさらに好ましい。この範囲より低い圧力では、溶媒を用いた際に溶媒の沸点が低下し、反応系内を適切な反応温度まで上げることができない場合がある。一方、この範囲より高い圧力では溶媒の沸点が上昇し、反応系の温度を上昇させて反応を加速できる利点があるものの、加圧条件下での反応となるため、装置の破損や爆発のリスクを伴うこととなる。
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記のような本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(以下「エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)」と称す場合がある。)と硬化剤(B)を含むものである。
<硬化剤(B)>
本発明の硬化性樹脂組成物に用いる硬化剤(B)は、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質である。なお、本発明においては通常、「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
本発明の硬化性樹脂組成物における硬化剤(B)の含有量は、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)100重量部に対して好ましくは0.1〜1000重量部であり、より好ましくは100重量部以下であり、更に好ましくは80重量部以下であり、特に好ましくは60重量部以下である。硬化剤(B)のより好ましい量は、硬化剤の種類に応じてそれぞれ後に記載する通りである。
本発明において、「固形分」とは溶媒を除いた成分を意味する。また、「全エポキシ成分」とは、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)と後述する他のエポキシ化合物(C)との合計を意味する。
本発明の硬化性樹脂組成物において、硬化剤(B)としては多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、カチオン重合開始剤及び有機ホスフィン類からなる群のうちの少なくとも1つを用いることが好ましい。各硬化剤の具体例や硬化性樹脂組成物中の好ましい含有量については、以下に説明するが、本発明の硬化性樹脂組成物は、以下の硬化剤のうち、特に硬化剤(B)として少なくともカチオン重合開始剤を含むことが硬化性の観点から好ましい。
多官能フェノール類の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールZ、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール等のビフェノール類;カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレン類;及びこれらの化合物の芳香環に結合した水素原子がハロゲン基、アルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基、硫黄、リン、珪素等のヘテロ元素を含む有機置換基等の非妨害性置換基で置換されたもの等が挙げられる。
多官能フェノール類の例としては、更に、これらのフェノール類やフェノール、クレゾール、アルキルフェノール等の単官能フェノール類とアルデヒド類の重縮合物であるノボラック類、レゾール類等が挙げられる。
以上挙げた多官能フェノール類は、一種のみで用いても、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
ポリイソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。更に、これらのポリイソシアネート化合物と、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、水等の活性水素原子を少なくとも2個有する化合物との反応により得られるポリイソシアネート化合物、又は前記のポリイソシアネート化合物の3〜5量体等を挙げることができる。
以上挙げたポリイソシアネート系化合物は、一種のみで用いても、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
アミン系化合物の例としては、脂肪族の一級、二級、三級アミン、芳香族の一級、二級、三級アミン、環状アミン、グアニジン類、尿素誘導体等があり、具体的には、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、メタキシレンジアミン、ジシアンジアミド、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネン、ジメチル尿素、グアニル尿素等が挙げられる。
以上挙げたアミン系化合物は、一種のみで用いても、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
酸無水物系化合物の例としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸と不飽和化合物の縮合物等が挙げられる。これらの酸無水物系化合物は、一種のみで用いても、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
イミダゾール系化合物の例としては、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。なお、イミダゾール系化合物は後述する硬化促進剤としての機能も果たすが、本発明においては硬化剤(B)に分類するものとする。これらのイミダゾール系化合物は、一種のみで用いても、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
アミド系化合物の例としては、ジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。アミド系化合物は、一種のみで用いても、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
カチオン重合開始剤は、熱又は活性エネルギー線照射によってカチオンを発生するものであり、芳香族オニウム塩等が挙げられる。具体的には、SbF 、BF 、AsF 、PF 、CFSO 2−、B(C 等のアニオン成分とヨウ素、硫黄、窒素、リン等の原子を含む芳香族カチオン成分とからなる化合物等が挙げられる。特に、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルフォニウム塩が好ましい。
カチオン重合開始剤の例としてはジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリ−p−トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニルジアゾメタン、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、ジフェニル−p−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファートなどが挙げられる。
具体的な製品名としては、例えば、UVACURE1590(ダイセル・サイテック社製)、CPI−110P(サンアプロ社製)などのスルホニウム塩や、IRGACURE250(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、WPI−113、WPI−124(和光純薬社製)、Rp−2074(ローディア・ジャパン社製)等のヨードニウム塩、ジアゾニウム塩タイプ:AMERICUREシリーズ(アメリカン・キャン社製)、ULTRASETシリーズ(アデカ社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)等のヨードニウム塩タイプ:UVEシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、UV9310C(GE東芝シリコーン社製)、WPIシリーズ(和光純薬社製)等のスルホニウム塩タイプ:CYRACUREシリーズ(ユニオンカーバイド社製)、UVIシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、CDシリーズ(サートマー社製)、オプトマーSPシリーズ、オプトマーCPシリーズ(アデカ社製)、サンエイドSIシリーズ(三新化学工業社製)、CIシリーズ(日本曹達社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)、CPIシリーズ(サンアプロ社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以上挙げたカチオン重合開始剤は一種のみで用いても、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
有機ホスフィン類としては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等が例示される。
これら有機ホスフィン類についても、一種のみで用いても、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
硬化剤(B)として多官能フェノール類、アミン系化合物、酸無水物系化合物を用いる場合は、本発明の硬化性樹脂組成物中の全エポキシ基に対する硬化剤(B)中の官能基(多官能フェノール類の水酸基、アミン系化合物のアミノ基又は酸無水物系化合物の酸無水物基)の当量比で0.8〜1.5の範囲となるように用いることが好ましい。ポリイソシアネート系化合物を用いる場合、本発明の硬化性樹脂組成物中の水酸基数に対してポリイソシアネート系化合物中のイソシアネート基数が、当量比で1:0.01〜1:1.5の範囲で用いることが好ましい。イミダゾール系化合物を用いる場合、本発明の硬化性樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ成分100重量部に対して0.5〜10重量部の範囲で用いることが好ましい。アミド系化合物を用いる場合、本発明の硬化性樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ成分とアミド系化合物との合計量に対して0.1〜20重量%の範囲で用いることが好ましい。カチオン重合開始剤を用いる場合、本発明の硬化性樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ成分100重量部に対し、0.01〜15重量部の範囲で用いることが好ましい。有機ホスフィン類を用いる場合、本発明の硬化性樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ成分と有機ホスフィン類との合計量に対して0.1〜20重量%の範囲で用いることが好ましい。
硬化剤(B)としては、上記例示物以外にも、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等のホスホニウム塩や、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩、メルカプタン系化合物、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体等を用いることもできる。
これらの硬化剤(B)は一種のみで用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
[他のエポキシ化合物(C)]
本発明の硬化性樹脂組成物には、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)以外のエポキシ化合物(C)(以下、「他のエポキシ化合物(C)」と称す場合がある。)を用いることができる。
他のエポキシ化合物(C)としては、エポキシ基を2個以上有する2官能のエポキシ化合物(C)が挙げられ、以下に例示する芳香環を含むエポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物が挙げられる。なお、以下の例示において、「……………型エポキシ樹脂」とは、水酸基がグリシジルエーテル基で置換されたものをいう。即ち、例えば、「4,4’,4''−トリヒドロキシトリフェニルメタン型エポキシ樹脂」は、「4,4’,4''−トリヒドロキシトリフェニルメタン」の水酸基がグリシジルエーテル基で置換されたものをさす。
芳香環を含むエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールEジグリシジルエーテル、ビスフェノールZジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールアセトフェノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラ−t−ブチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノール系ジグリシジルエーテル類;ビフェノールジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル、ジメチルビフェノールジグリシジルエーテル、テトラ−t−ブチルビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール系ジグリシジルエーテル類;ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロアントラセンジグリシジルエーテル、メチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジブチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、メチルレゾルシンジグリシジルエーテル等のベンゼンジオール系ジグリシジルエーテル類;ジヒドロアントラハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシジフェニルエーテルジグリシジルエーテル、チオジフェノールジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等の芳香族系ジグリシジルエーテル類、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシ−α,α−ジメチルベンジル)−エチルベンゼン型エポキシ樹脂、4,4’,4''−トリヒドロキシトリフェニルメタン型エポキシ樹脂、4,4’,4''−エチリジントリス(2−メチルフェノール)型エポキシ樹脂、4,4’−(2−ヒドロキシベンジリデン)ビス(2,3,6−トリメチルフェノール)型エポキシ樹脂、2,3,4−トリヒドロキシジフェニルメタン型エポキシ樹脂、2,4,6−トリス(4,ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン型エポキシ樹脂、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン型エポキシ樹脂、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2−メチルフェノール)型エポキシ樹脂、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノール型エポキシ樹脂等の3官能エポキシ樹脂類;2,2’−メチレンビス[6−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−p−クレゾール型エポキシ樹脂、4−[ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]ベンゼン−1,2−ジオール型エポキシ樹脂、1,1,2,2−テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、α,α,α’,α’,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン型エポキシ樹脂等の4官能エポキシ樹脂類;2,4,6−トリス[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール型エポキシ樹脂等の5官能エポキシ樹脂類;ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミン等の種々のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ化合物;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン型エポキシ樹脂や、これら種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール系化合物等を使用したエポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂類が挙げられる。
脂肪族エポキシ化合物としては、前記ビスフェノール系ジグリシジルエーテル類、ビフェノール系ジグリシジルエーテル類、ベンゼンジオール系ジグリシジルエーテル類及び芳香族系ジグリシジルエーテル類から選ばれるジグリシジルエーテル類の芳香環に水素を添加したエポキシ化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,5−ペンタンジオールジグリシジルエーテル、ポリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,7−ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘプタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールジグリシジルエーテル等の鎖状構造のみからなる(ポリ)アルキレングリコールジグリシジルエーテル類;1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等の環状構造を有するアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等のエポキシ化合物が挙げられる。
他のエポキシ化合物(C)としては、中でも、硬化性、塗膜の表面性、接着性、耐衝撃性の観点から脂肪族エポキシ化合物が好ましく、水添ビスフェノール型ジグリシジルエーテル類が特に好ましい。
以上例示した他のエポキシ化合物(C)は一種のみで用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物が、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)と他のエポキシ化合物(C)とを含有する場合、本発明の硬化性樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ成分中のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)の割合は、好ましくは0.1重量%以上であり、より好ましくは1重量%以上であり、更に好ましくは2%重量以上であり、一方、好ましくは80重量%以下であり、より好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)の割合が上記下限値以上であることにより、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)による硬化性向上効果を十分に得ることができる。一方、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)の割合が上記上限値以下であることにより、他のエポキシ化合物(C)を配合することによる物性向上効果を十分に得ることができる。
<その他の成分>
本発明の硬化性樹脂組成物は、以上に挙げた成分の他にその他の成分を含有することができる。その他の成分としては例えば、硬化促進剤(ただし、前記硬化剤に該当するものを除く。)、カップリング剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、反応性希釈剤、顔料、無機充填材、有機充填材等が挙げられる。以上に挙げたその他の成分は硬化性樹脂組成物の所望の物性により適宜組み合わせて用いることができる。
[硬化物]
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物を得ることができる。ここでいう「硬化」とは熱及び/又は光等によりエポキシ樹脂を意図的に硬化させることを意味するものであり、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御すればよい。
[用途]
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、硬化性に優れたものであり、表面性、接着性、耐衝撃性に優れた硬化物を与えるものである。このことから、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、及びそれを配合した本発明の硬化性樹脂組成物は、塗料、電気・電子材料、接着剤、繊維強化樹脂(FRP)等の分野において好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
〔原料等〕
以下の実施例及び比較例において用いた原料、触媒、溶媒等は以下の通りである。
[エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの合成に使用した原料、触媒、溶媒]
ヘキサメチルジシロキサン(NuSil Technology社製、製品名:S−7205)
1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(NuSil Technology社製)
メチルシリケートMS51(三菱ケミカル株式会社製)
1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(東京化成工業株式会社製)
アリルグリシジルエーテル(東京化成工業株式会社製)
テトラヒドロフラン(キシダ化学株式会社製)
トルエン(キシダ化学株式会社製)
メタノール(キシダ化学株式会社製)
ヘプタン(キシダ化学株式会社製)
1N塩酸(キシダ化学株式会社製)
白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体 キシレン溶液(アルドリッチ社製 白金濃度2重量%)
活性炭(大阪ガスケミカル株式会社製 精製白鷺)
シリカゲル(関東化学株式会社製 シリカゲル60N(球状、中性) 63−210μm)
[硬化性樹脂組成物に使用した硬化剤]
WPI−116(和光純薬工業社製)
[硬化性樹脂組成物に使用した他のエポキシ化合物]
YX8000(三菱ケミカル株式会社製:水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
jER828US(三菱ケミカル株式会社製:ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
C2021P(ダイセル社製:脂環式エポキシ樹脂)
x−40−2670(信越化学工業社製:脂環式エポキシ基含有シリコーンオリゴマー)
〔評価方法〕
以下の合成例、実施例及び比較例における評価方法は以下の通りである。
[エポキシ当量]
合成例で得られたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンについて、JIS K 7236に基づいてエポキシ当量を測定した。
[エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)]
合成例で得られたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、重量平均分子量及び数平均分子量を測定した。GPCの測定に用いた装置及び測定条件は以下の通りである。
装置:GPC
機種:HLC−8220GPC(東ソー製)
カラム:KF−G、KF−401HQ、KF−402HQ、KF−402.5HQ(昭和電工(株)製)
検出器:UV−8020(東ソー製)、254nm
溶離液:THF(0.3mL/分、40℃)
サンプル:1%テトラヒドロフラン溶液(10μインジェクション)
検量線:標準ポリスチレン(東ソー製)
[エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの赤外スペクトル吸収分析]
合成例で得られたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンについて、下記装置及び測定条件にてATR法(Attenuated Total Reflection、全反射測定法)により測定した。
装置:Nicolet iN10+iZ10(Thermo Fisher Scientific株式会社製)及びGladi ATR(PIKE TECHNOLOGIES社製)
分解能:4cm−1
積算回数:64回
29Si−NMRの測定方法]
以下の装置、測定条件、試料の調製方法で測定した。
装置:日本電子株式会社製JNM−ECS400、TUNABLE(10)、Siフリー、AT10プローブ
測定条件:Relaxation Delay/15秒、SCAN回数/1024回、測定モード/非ゲーテッドデカップルパルス法(NNE)、スピン/なし、測定温度/25℃
試料の調製:重クロロホルムにトリス(2,4−ペンタジオナト)クロム(III)が0.5重量%になるよう添加し、29Si−NMR測定用溶媒を得た。測定対象のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを1.5g秤量し、上記29Si−NMR測定用溶媒を2.5ml入れて溶解し、10mmφテフロン(登録商標)製NMR試料管へ入れた。
[減圧加熱時の重量減少率測定]
まず、H−NMRを測定し、有機溶媒等、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン以外の成分の重量を算出した。
ナス型フラスコに回転子を入れ、それらの重さを測定した後、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを該ナス型フラスコに入れ、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの重量を測定した。
オイルバスにてこのナス型フラスコを加熱し、マグネチックスターラにより回転子を回して液面が流動する程度に撹拌し、内温が110℃になるまで昇温し、オイル式真空ポンプにて減圧した。オイル式真空ポンプは、0.15torrの減圧度を達成できる能力を持つものを使用した。2時間後、室温まで冷却し、常圧に戻し、ナス型フラスコに付着したオイルを十分にふき取り、ナス型フラスコに入った状態のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの重量を測定し、先に測定していたナス型フラスコと回転子の重さを差引き、該操作により揮発した重量を算出した。該操作後のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンのH−NMRを測定し、有機溶媒等、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン以外の成分の重量を算出した。
揮発した重量からエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン以外の成分の量を差引き、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの重量減少率を算出した。
[UV硬化性]
実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物を、75μmのフィルムアプリケーターを用いて、JIS K5600−1−4に記載の下記の鋼板上に塗布し、以下条件でUV照射することにより硬化塗膜を作成した。
・鋼板:SPCC−SB PB−N144処理 0.3×50×200mm
・UV照射条件
ランプ:高圧水銀灯
エネルギー:100mJ/cm、956mW/cm
ベルトコンベアースピード:14.4m/min
距離:15cm
上記UV照射条件を1回とし、塗膜のタックが無くなるまでのUV照射回数をUV硬化性として評価した。
[密着性]
上記のUV硬化性の評価のために形成した硬化膜について、JIS K5600−5−6の方法でクロスカット剥離試験を行った。100マス中基材に残ったマス数で評価した。
[耐おもり落下性]
上記のUV硬化性の評価のために形成した硬化膜について、JIS K5600−5−3の方法でおもり落下試験を行い、塗膜の状態を目視で確認し、以下の基準で評価を行った。
〇:割れ無し・剥がれ無し
△:割れ無し・剥がれ有
×:割れ有
[表面性]
上記のUV硬化性の評価のために形成した硬化膜について、硬化塗膜の表面を目視で確認し、以下の基準で評価を行った。
〇:しわ・縮み無し
×:しわ・縮み有り
[エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの合成と評価]
<合成例1:エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン1の合成>
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン原料として、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン625重量部、ヘキサメチルジシロキサン504重量部、メチルシリケートMS51を422重量部、溶媒として、テトラヒドロフラン987重量部、触媒および水として、1N塩酸115重量部とメタノール115重量部の混合物を使用し、30℃で加水分解縮合した。ヘプタン938重量部を加え、脱塩水による洗浄で塩酸を除去した後、ローターリーエバポレーターを用い76℃、圧力15torrの減圧下で、目視にて溶媒の留出がなくなるまで溶媒を留去した。続いて、120℃、圧力0.15torrの減圧下で2時間加熱し、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン1’を768重量部得た。
得られたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン1’について200重量部をトルエン257重量部に溶解させた後、白金濃度2重量%の白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液0.5重量部を加えて撹拌した。80℃まで加熱した後、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン234重量部を4時間かけて滴下し、さらに80℃で5時間加熱した。室温付近まで放冷した後、活性炭69重量部を加えて2時間撹拌後に濾過する工程を二回繰り返し、ローターリーエバポレーターを用い60℃、圧力15torrの減圧下で、目視にて溶媒の留出がなくなるまで溶媒を留去した。続いて、85℃、圧力0.15torrの減圧下で5時間加熱し、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン1を305重量部得た。
得られたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン1のエポキシ当量は308g/当量、数平均分子量は1300、重量平均分子量は2300であり、全ケイ素に対するM単位、D単位、T単位、Q単位はそれぞれ67mol%、2mol%、0mol%、31mol%であった。赤外スペクトル吸収分析において、Si−O伸縮振動の極大吸収波数は1045cm−1であり、波数1070〜1150cm−1の領域にSi−O伸縮振動の吸収ピークを有さないものであった。また、減圧加熱時の重量減少率は1.2重量%であった。
<合成例2:エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン2の合成>
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン原料として、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン833重量部、ヘキサメチルジシロキサン252重量部、メチルシリケートMS51を422重量部、溶媒として、テトラヒドロフラン965重量部、触媒および水として、1N塩酸115重量部とメタノール115重量部の混合物を使用し、30℃で加水分解縮合した。ヘプタン938重量部を加え、脱塩水による洗浄で塩酸を除去した後、ローターリーエバポレーターを用い76℃、圧力15torrの減圧下で、目視にて溶媒の留出がなくなるまで溶媒を留去した。続いて、120℃、圧力0.15torrの減圧下で2時間加熱し、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン2’を744重量部得た。
得られたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン2’について200重量部をトルエン345重量部に溶解させた後、白金濃度2重量%の白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液0.6重量部を加えて撹拌した。80℃まで加熱した後、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン234重量部を5時間かけて滴下し、さらに80℃で13時間加熱した。室温付近まで放冷した後、活性炭79重量部を加えて2時間撹拌後に濾過し、ローターリーエバポレーターを用い60℃、圧力15torrの減圧下で、目視にて溶媒の留出がなくなるまで溶媒を留去した。続いて、80℃、圧力0.15torrの減圧下で5時間加熱し、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン2を373重量部を得た。
得られたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン2のエポキシ当量は276g/当量、数平均分子量は1500、重量平均分子量は3400であり、全ケイ素に対するM単位、D単位、T単位、Q単位はそれぞれ68mol%、2mol%、0mol%、30mol%であった。赤外スペクトル吸収分析において、Si−O伸縮振動の極大吸収波数は1043cm−1であり、波数1070〜1150cm−1の領域にSi−O伸縮振動の吸収ピークを有さないものであった。
<合成例3:エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン3の合成>
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン原料として、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン1042重量部、メチルシリケートMS51を422重量部、溶媒として、テトラヒドロフラン943重量部、触媒および水として、1N塩酸115重量部とメタノール115重量部の混合物を使用し、30℃で加水分解縮合した。ヘプタン938重量部を加え、脱塩水による洗浄で塩酸を除去した後、ローターリーエバポレーターを用い76℃、圧力15torrの減圧下で、目視にて溶媒の留出がなくなるまで溶媒を留去した。続いて、120℃、圧力0.15torrの減圧下で2時間加熱し、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン3’を573重量部得た。
得られたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン3’について150重量部をトルエン331重量部に溶解させた後、白金濃度2重量%の白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液0.2重量部を加えて撹拌した。80℃まで加熱した後、アリルグリシジルエーテル208重量部を1時間かけて滴下し、さらに120℃まで昇温して1時間加熱した。室温付近まで放冷した後、シリカゲル150重量部を加えて30分間撹拌後に濾過し、ローターリーエバポレーターを用い60℃、圧力15torrの減圧下で、目視にて溶媒の留出がなくなるまで溶媒を留去した。続いて、80℃、圧力0.15torrの減圧下で2時間加熱し、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン3を287重量部得た。
得られたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン3のエポキシ当量は221g/当量、数平均分子量は1500、重量平均分子量は1600であり、全ケイ素に対するM単位、D単位、T単位、Q単位はそれぞれ65mol%、4mol%、0mol%、32mol%であった。赤外スペクトル吸収分析において、Si−O伸縮振動の極大吸収波数は1045cm−1であり、波数1070〜1150cm−1の領域にSi−O伸縮振動の吸収ピークを有さないものであった。また、減圧加熱時の重量減少率は1.2重量%であった。
上記エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン1〜3の評価結果を表1にまとめて示す。
Figure 2019147946
[実施例1〜12、比較例1〜3]
各成分を表2の通り配合して硬化性樹脂組成物を製造し、上述の通り硬化塗膜を作成した。その際のUV硬化性、密着性、耐おもり落下性、表面性を上述の方法によって評価し、結果を表2に示した。
Figure 2019147946
[考察]
表2から分かるように、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを含む実施例1〜12の硬化性樹脂組成物は、良好なUV硬化性、密着性、耐おもり落下性、表面性を有するものであった。
一方、比較例1の硬化性樹脂組成物ではUV硬化性が不十分であった。比較例2、3の硬化性樹脂組成物は硬化性、密着性、耐おもり落下性、表面性のすべてにおいて不十分であった。
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2018年2月26日付けで出願された日本特許出願(特願2018−031539)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、硬化性に優れたものであり、表面性、接着性、耐衝撃性に優れた硬化物を与えるものである。このことから、本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、このエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを含有する硬化性樹脂組成物及びその硬化物は、塗料、2D/3Dプリンタ用インク、電気・電子材料、接着剤、繊維強化プラスチック(FRP)、歯科材料等の分野において好適に用いることができる。

Claims (14)

  1. M単位(RSiO1/2)、D単位(R2/2)及びQ単位(SiO4/2)を有し、全ケイ素に対するT単位(RSiO3/2)の含有量が80mоl%以下であるエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン。
  2. 圧力0.15torrの減圧下、110℃で2時間加熱した際の重量減少率が5重量%以下である請求項1に記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン。
  3. 全ケイ素に対するM単位(RSiO1/2)の含有量が10mоl%以上、75mol%以下である請求項1又は2に記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン。
  4. 全ケイ素に対するQ単位(SiO4/2)の含有量が3mol%以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン。
  5. 赤外吸収スペクトル分析において、波数1030〜1060cm−1の領域にSi−O伸縮振動の極大吸収波数を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン。
  6. 全ケイ素に対するD単位(R2/2)の含有量が10mol%以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン。
  7. エポキシ当量が100g/当量〜5000g/当量である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)と硬化剤(B)を含む硬化性樹脂組成物。
  9. 硬化剤(B)がカチオン重合開始剤である請求項8に記載の硬化性樹脂組成物。
  10. 更に、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)とは異なるエポキシ化合物(C)を含む請求項8又は9に記載の硬化性樹脂組成物。
  11. エポキシ化合物(C)として脂肪族エポキシ化合物を含む請求項10に記載の硬化性樹脂組成物。
  12. エポキシ化合物(C)として水添ビスフェノール型ジグリシジルエーテル類を含む請求項11に記載の硬化性樹脂組成物。
  13. エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)とエポキシ化合物(C)との合計に占めるエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(A)の割合が0.1重量%以上80重量%以下である請求項10乃至12のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
  14. 請求項8乃至13のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
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