以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
≪剥離シートの構成≫
以下、図1に基づいて、本発明の一実施形態に係る剥離シート10の構成について説明する。図1は、剥離シート10の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、剥離シート10は、第1面S10及び第1面S10の反対側に位置する第2面T10を有する。
図1に示すように、剥離シート10は、基材シート11と、剥離シート10の第1面S10を形成する表面層12と、基材シート11と表面層12との間に設けられたプライマー層13とを備える。なお、プライマー層13は、必要に応じて設けられる層であり、本発明には、プライマー層13が省略された実施形態も包含される。
基材シート
基材シート11は、その表面上に設けられた層を支持し得る限り特に限定されない。基材シート11は、可撓性を有することが好ましく、可撓性に加えて耐熱性及び寸法安定性を有することがさらに好ましい。基材シート11としては、例えば、プラスチックシートが使用される。プラスチックシートを構成する合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、エチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エチル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル樹脂等のアクリル樹脂;ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂;三酢酸セルロース樹脂、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらのうち、耐熱性及び寸法安定性に優れている点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、特に2軸延伸したポリエステル樹脂が好ましい。
基材シート11の表面上に設けられる層との密着性を向上させるために、基材シート11の表面に酸化法、凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理を施してもよい。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
基材シート11の表面上に設けられる層との密着性を向上させるために、基材シート11の表面に易接着層を形成してもよい。易接着層(プライマー層、アンカー層と呼ばれることもある)に含まれる易接着性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
基材シート11の厚さは適宜調整することができるが、基材シート11としてプラスチックシートを使用する場合、プラスチックシートの厚さは、好ましくは25μm以上100μm以下、さらに好ましくは38μm以上50μm以下である。
表面層
図1に示すように、表面層12は、基材シート11の第1面S10側に設けられており、剥離シート10の第1面S10を形成している。表面層12は、剥離シート10の第1面S10の一部を形成していてもよいが、剥離シート10の第1面S10の全体を形成していることが好ましい。表面層12は、連続した1つの層で構成されていてもよいし、不連続な複数の層で構成されていてもよい。
表面層12の厚みは適宜調整することができるが、好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは2μm以上4μm以下である。なお、表面層12の厚みが均一でない場合、表面層12の最小厚み及び最大厚みの両者が、上記範囲内であることが好ましい。
表面層12は、電離放射線硬化性樹脂と、アミノ基を有するシランカップリング剤とを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で形成されている。したがって、表面層12は、電離放射線硬化性樹脂の硬化物及びアミノ基を有するシランカップリング剤を含む。アミノ基を有するシランカップリング剤は、その加水分解物又は加水分解物の重縮合物の状態で表面層12に存在し得る。アミノ基を有するシランカップリング剤、その加水分解物又は加水分解物の重縮合物は、電離放射線硬化性樹脂の硬化物と結合した状態で表面層12に存在し得る。
表面層12の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。表面層12の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるアミノ基を有するシランカップリング剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
表面層12の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の固形分総質量を基準として、通常70質量%以上97質量%以下、好ましくは75質量%以上97質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上97質量%以下である。電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂が2種以上である場合、電離放射線硬化性樹脂の量は、2種以上の電離放射線硬化性樹脂の合計量を意味する。
表面層12の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるアミノ基を有するシランカップリング剤の量は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、3質量部以上9質量部以下、好ましくは4質量部以上8質量部以下、さらに好ましくは5質量部7以上質量部以下である。電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるアミノ基を有するシランカップリング剤が2種以上である場合、アミノ基を有するシランカップリング剤の量は、アミノ基を有する2種以上のシランカップリング剤の合計量を意味する。
電離放射線硬化性樹脂組成物
電離放射線硬化性樹脂組成物に関する以下の説明は、別段規定される場合を除き、表面層12の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物だけでなくて、表面層12以外の層の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物にも適用される。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、1種又は2種以上の電離放射線硬化性樹脂を含む。電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が使用されるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、安定な硬化特性が得られる点で好ましい。
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合、カチオン重合性官能基等を分子中に有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー等の1種以上を使用することができる。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられ、特に、多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよく、特に限定されない。多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを併用してもよい。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられ、特に、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端又は側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート等であってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも使用することができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコン(メタ)アクリレートとは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコンの末端又は側鎖に(メタ)(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらの中でも、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物の硬度をより一層高める観点からは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。これらのオリゴマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上である。電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布する際、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成しやすい。
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは80000以下、さらに好ましくは50000以下である。電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を、塗布に適した粘度に調整しやすい。
なお、「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質に用いて測定される値である。
電離放射線硬化性樹脂は、重量平均分子量が500以上である多官能モノマー及びオリゴマーから選択される少なくとも1種であることが好ましい。このような多官能モノマー又はオリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、電離放射線硬化性樹脂の硬化反応に関与する成分、例えば、光重合開始剤(増感剤)を含んでもよい。例えば、紫外線の照射により電離放射線硬化性樹脂を硬化させる場合、電離放射線硬化性樹脂組成物は光重合開始剤(増感剤)を含むことが好ましい。なお、電離放射線硬化性樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するので、電子線の照射により電離放射線硬化性樹脂を硬化させる場合、電離放射線硬化性樹脂組成物は光重合開始剤(増感剤)を含まなくてもよい。
電離放射線硬化性樹脂がラジカル重合性不飽和基を有する場合、光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等の少なくとも1種を使用することができる。また、電離放射線硬化性樹脂がカチオン重合性官能基を有する場合、光重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等の少なくとも1種を使用することができる。
電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤の量は特に限定されないが、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、通常0.1質量部以上10質量部以下である。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)、熱硬化性樹脂等を含んでもよい。電離放射線硬化性樹脂組成物に溶剤乾燥型樹脂を添加することにより、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。溶剤乾燥型樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を使用することができ、熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、多官能性モノマーを含むことが好ましい。電離放射線硬化性樹脂組成物が多官能性モノマーを含むことにより、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物の硬度を向上させることができる。電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物の硬度は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる多官能性モノマーの官能数、量等を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる多官能性モノマーの量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の固形分総質量を基準として、通常70質量部以上97質量部以下、好ましくは75質量部以上97質量部以下、さらに好ましくは80質量部以上97質量部以下である。多官能性モノマーは、重合性不飽和基又はカチオン重合性官能基を2個以上有する限り特に限定されないが、3官能以上のモノマーが好ましい。多官能性モノマーとしては、例えば、上記した多官能性(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
シランカップリング剤
シランカップリング剤は、加水分解により水酸基となって無機材料と化学結合する反応基(加水分解性基)と、有機材料と化学結合する反応基(反応性官能基)の2種以上の異なった反応基を有する有機ケイ素化合物である。
アミノ基を有するシランカップリング剤は、反応性官能基としてアミノ基を有する。アミノ基を有するシランカップリング剤は、第一級アミノ基を有するシランカップリング剤であってもよいし、第二級アミノ基を有するシランカップリング剤であってもよいが、第一級アミノ基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。第一級アミノ基を有するシランカップリング剤は、第一級アミノ基に加えて第二級アミノ基を有していてもよい。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、以下の式A又は式Bで表されるシランカップリング剤が挙げられる。
式A:R5HN−R1−Si(−R3)n(−R4)3−n
式B:R5HN−R1−NH−R2−Si(−R3)n(−R4)3−n
式A及びB中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、R3は、それぞれ独立して、炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜8のシクロアルキル基を表し、R4は、それぞれ独立して、炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基を表し、R5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜10のアラルキル基を表し、nは0〜2の整数を表す。
R1又はR2で表されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
R3で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
R3で表されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル等が挙げられる。
R4で表されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。R4で表されるアルコキシ基は、好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
R5で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
R5で表されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル等が挙げられる。
R5で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
R5で表されるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
シランカップリング剤が有する第一級アミノ基を有する場合、R5は水素原子である。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等が挙げられる。アミノ基を有するシランカップリング剤は、好ましくは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン又は3−アミノプロピルトリエトキシシランである。
シリカ粒子
表面層12の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シリカ粒子を含んでもよい。シリカ粒子は、ツヤ消し剤として使用されているものの中から適宜選択することができる。シリカ粒子の平均粒径は、好ましくは1μm以上10μm以下、さらに好ましくは3μm以上7μm以下である。平均粒径は、JIS Z8825:2013に準拠するレーザー回折・散乱法によって、体積基準で測定される。レーザー回折・散乱法によって体積基準の粒度分布を測定するための市販の機器としては、例えば、ベックマンコールター社製の粒度分布測定装置LS−230が挙げられる。シリカ粒子としては、例えば、日本アエロジル株式会社製のアエロジル−200、200V、300、R972、R972V、R974、R976、R976S、R202、R812,R805、OX50、TT600、RY50、RX50、NY50、NAX50、NA50H、NA50Y、NX90、RY200S、RY200、RX200、R8200、RA200H、RA200HS、NA200Y、R816、R104、RY300、RX300、R106等が挙げられる。表面層12の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるシリカ粒子は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。表面層12の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるシリカ粒子の量は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるシリカ粒子の量の下限値は特に限定されないが、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるシリカの量は、好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上である。
プライマー層
図1に示すように、プライマー層13は、基材シート11と表面層12との間に設けられている。本実施形態において、プライマー層13は、基材シート11の第1面S10側表面の全体に形成されているが、基材シート11の第1面S10側表面の一部に形成されていてもよい。本実施形態において、プライマー層13は、基材シート11の第1面S10側表面に設けられているが、基材シート11とプライマー層13との間には1又は2以上の層が設けられていてもよい。本実施形態において、表面層12は、プライマー層13の第1面S10側表面に設けられているが、表面層12とプライマー層13との間には1又は2以上の層が設けられていてもよい。このような層は、当該層に求められる機能に応じて適宜選択することができる。
プライマー層13は、バインダー樹脂を含む。バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
プライマー層13は、必要に応じて、安定剤、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤、蛍光増白剤等の1種又は2種以上の添加剤を含んでもよい。
プライマー層13の厚みは適宜調整することができるが、好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは2μm以上4μm以下である。
≪剥離シートの製造≫
以下、剥離シート10の製造方法の一実施形態について説明する。
まず、基材シート11の第1面S10側表面に、プライマー層13を形成する。プライマー層13を形成する前に、基材シート11の第1面S10側表面に対して、易接着層の形成や、酸化法、凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理を行ってもよい。これにより、基材シート11と表面層12との密着性を高めることができる。
プライマー層13は、基材シート11の第1面S10側表面に、プライマー層形成用組成物を塗布することにより形成することができる。プライマー層形成用組成物を塗布する方法としては、スピンコート、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
プライマー層形成用組成物は、例えば、溶剤又は分散媒と、バインダー樹脂等の固形分との混合物である。溶剤又は分散媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。溶剤又は分散媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
プライマー層形成用組成物の塗布量は適宜調整することができるが、好ましくは1g/m2以上5g/m2以下、さらに好ましくは2g/m2以上4g/m2以下である。
プライマー層13の形成後、プライマー層13上に、表面層12の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物(表面層形成用組成物)を塗布する。表面層形成用組成物の塗布方法の具体例は、上記と同様である。
表面層形成用組成物は、例えば、溶剤又は分散媒と、電離放射線硬化性樹脂、アミノ基を有するシランカップリング剤等の固形分との混合物である。溶剤又は分散媒の具体例は、上記と同様である。溶剤又は分散媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。表面層形成用組成物は、必要に応じて、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光重合開始剤等を含んでもよい。また、表面層形成用組成物は、表面層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える等を目的として、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、アミノ基を有さないシランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を含んでもよい。
表面層形成用組成物の塗布量は適宜調整することができるが、好ましくは1g/m2以上5g/m2以下、さらに好ましくは2g/m2以上4g/m2以下である。
プライマー層13上に形成された表面層形成用組成物の塗膜を乾燥させた後、紫外線、電子線等の電離放射線を照射して表面層形成用組成物の塗膜を硬化させ、表面層12を形成する。
電離放射線として紫外線を使用する場合には、紫外線源として、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源を使用することができる。紫外線の波長は、通常190nm以上380nm以下である。電離放射線として電子線を使用する場合には、電子線源として、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の電子線加速器を使用することができる。電子線のエネルギーは、通常100keV以上1000keV以下、好ましくは100keV以上300keV以下である。電子線の照射量は、通常2Mrad以上15Mrad以下である。
≪剥離シートの使用≫
剥離シート10は、表面に凹部を有する化粧板を製造するために使用される。以下、図面に基づいて、剥離シート10を使用して化粧板を製造する方法の一実施形態について説明する。
<化粧板>
以下、図面に基づいて、本実施形態に係る製造方法の結果物である化粧板20について説明する。図2は、化粧板20の平面図であり、図3は、図2中の符号Rで示される領域の拡大図であり、図4は、図3のA−A線断面図であり、図5は、図3のB−B線断面図である。
図2〜図5に示すように、化粧板20は、互いに直交する第1方向X、第2方向Y及び厚み方向Zを有する。本実施形態では、第1方向Xが化粧板20の長手方向に相当し、第2方向Yが化粧板20の短手方向に相当するが、第1方向Xが化粧板20の短手方向に相当し、第2方向Yが化粧板20の長手方向に相当してもよい。
図2〜図5に示すように、化粧板20は、第1面S20と、第1面S20の反対側に位置する第2面T20とを有する。
図4及び図5に示すように、化粧板20は、第1面S21及び第1面S21の反対側に位置する第2面T21を有する支持層21と、支持層21の第1面S21の一部に設けられた離型層22と、支持層21の第1面S21の残部に設けられた硬化メラミン樹脂層23と、支持層21の第2面T21に設けられたコア層24とを備える。
支持層
図4及び図5に示すように、支持層21の第1面S21は、化粧板20の第1面S20側に位置し、支持層21の第2面T21は、化粧板20の第2面T20側に位置する。
図4及び図5に示すように、支持層21は、紙質基材211と、紙質基材211の第1面S21側に設けられた装飾層212とを備える。
紙質基材
紙質基材211は、化粧板又は化粧紙の分野において一般的に使用されている原紙の中から適宜選択することができる。紙質基材211としては、例えば、チタン紙、薄葉紙、クラフト紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、和紙等が挙げられる。
紙質基材211の坪量は適宜調整することができるが、好ましくは30g/m2以上200g/m2以下、さらに好ましくは40g/m2以上150g/m2以下である。
紙質基材211の厚みは適宜調整することができるが、好ましくは30μm以上200μm以下、さらに好ましくは50μm以上170μm以下である。
紙質基材211は、無機成分を含むことが好ましい。紙質基材211に含まれる無機成分は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。無機成分を含む紙質基材211は、例えば、抄造工程において、紙の原料に無機成分を配合し、紙に無機成分を抄き込むことにより製造することができる。
無機成分は、化粧板又は化粧紙の分野において一般的に使用されている無機成分の中から適宜選択することができる。無機成分としては、例えば、無機充填剤(無機フィラー)、無機顔料等が挙げられる。
無機充填剤としては、例えば、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、焼成タルク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム等が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。
無機成分は、例えば、無機粒子である。無機粒子の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上50μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上10μm以下である。なお、平均粒径は、レーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。
無機成分は、好ましくは酸化チタンである。酸化チタンを含む紙は、チタン紙と呼ばれる。紙質基材211に含まれる酸化チタンの量を増加させるほど、紙質基材211に対する未硬化メラミン樹脂組成物及び電離放射線硬化性樹脂組成物の浸透性を向上させることができる。
紙質基材211に含まれる無機成分の量は、無機成分の種類等に応じて適宜調整することができる。紙質基材211に含まれる酸化チタンの量は、紙質基材211の総質量を基準として、好ましくは5質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上40質量%以下である。なお、紙質基材211の総質量は、紙質基材211の乾燥時の総質量(すなわち、紙質基材211中の固形分の総質量)を意味する。
紙質基材211は、着色されていてもよい。紙質基材211の製造段階(例えば、紙質基材211が紙であれば、抄造段階)において、形成原料に着色剤(顔料又は染料)を配合することにより、紙質基材211を着色することができる。また、硬化メラミン樹脂層23を形成する際、硬化メラミン樹脂層23の形成原料として、着色剤を含む樹脂組成物を使用し、これを紙質基材211に含浸させることにより、紙質基材211を着色することができる。着色剤としては、例えば、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の粒子からなる無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の粒子からなる有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。着色剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。着色剤の配合量は、所望の色合い等に応じて適宜調整することができる。
紙質基材211は、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の添加剤を含んでもよい。
装飾層
装飾層212は、紙質基材211の第1面S21側表面に設けられている。装飾層212は、紙質基材211の第1面S21側表面の全体に形成されていてもよいし、紙質基材211の第1面S21側表面の一部に形成されていてもよい。装飾層212が紙質基材211の第1面S21側表面の全体に形成される場合、支持層21の第1面S21は、装飾層212の表面により形成される。装飾層212が紙質基材211の第1面S21側表面の一部に形成される場合、支持層21の第1面S21は、紙質基材211の第1面S21側表面の一部(装飾層212が設けられていない部分)及び装飾層212の表面により形成される。
なお、装飾層212は必要に応じて設けられる層であり、本発明には、装飾層212が省略された実施形態も包含される。装飾層212が省略された実施形態において、支持層21の第1面S21は、紙質基材211の第1面S21側表面により形成される。
装飾層212は、化粧板20に装飾性(意匠性)を付与する。装飾層212は、例えば、着色層、絵柄層又はこれらの組み合わせである。
着色層は、化粧板20に所望の色を付与する。着色層は、例えば、紙質基材211の第1面S21側表面の全体に形成された全面ベタ層である。着色層の色は、通常、不透明色であるが、紙質基材211等の下地の色又は模様を活かす場合には、透明色であってもよい。また、紙質基材211等の下地の色又は模様を活かす場合には、着色層を形成しなくてもよい。
絵柄層は、化粧板20に所望の模様を付与する。絵柄層は、例えば、紙質基材211の第1面S21側表面の一部又は全体あるいは着色層の第1面S21側表面の一部又は全体に形成された印刷層である。模様層を構成する模様としては、例えば、年輪断面の春材領域及び秋材領域、導管部等から構成される木目模様、レザー(皮シボ)模様、大理石、花崗岩、砂岩等の石材表面の石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。本実施形態における装飾層212は、図1に示すように、化粧板20に木目模様を付与する。
装飾層212の形成に使用されるインキは、例えば、溶剤又は分散媒と、着色剤、バインダー樹脂等の成分との混合物である。インキは、その他の成分として、着色剤、体質顔料、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を含んでもよい。インキは、シートのVOC(揮発性有機化合物)を低減する観点から、水性組成物であってもよい。
インキに含まれる着色剤としては、例えば、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。着色剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキに含まれるバインダー樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキに含まれる溶剤又は分散媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。溶剤又は分散媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
装飾層212の厚みは適宜調整することができるが、好ましくは0.1μm以上50μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上20μm以下である。
離型層
離型層22は、支持層21の第1面S21の一部に設けられている。支持層21の第1面S21のうち、離型層22が設けられる領域は、連続した1つの領域であってもよいし、不連続な複数の領域であってもよい。離型層22は、連続した1つの層で構成されていてもよいし、不連続な複数の層で構成されていてもよい。離型層22が連続した1つの層で構成される場合、離型層22の厚みは一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。離型層22が不連続な複数の層で構成される場合、各層の厚みは一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。離型層22が不連続な複数の層で構成される場合、ある層の厚みと別の層の厚みは同一であってもよいし、異なっていてもよい。離型層22の厚みは適宜調整することができるが、好ましくは0.1μm以上50μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上20μm以下である。
離型層22は、支持層21の第1面S21に所定のパターン(模様状)で形成されていることが好ましく、装飾層212が形成する絵柄模様のうち視覚的に凹部又は低光沢(艷消)としたい領域と位置同調したパターンで形成されていることがさらに好ましい。離型層22が形成するパターンとしては、例えば、装飾層212が木目模様の場合は木目板の導管部、春材領域等の凹部又は低光沢領域、石目模様の場合はトラバーチン大理石板の凹陥部、花崗岩板の劈開面の凹部等の石板表面凹凸、布目模様の場合は布表面テクスチャア、レザー模様の場合は皮シボの皺形状、タイル貼模様や煉瓦積模様の場合は目地凹部、其の他、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝、文字、記号、幾何学模様等のパターンが挙げられる。
離型層22は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化により形成された層であり、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む。
離型層22を形成するための組成物(離型層形成用組成物)として使用される電離放射線硬化性樹脂組成物に関する説明は、上記と同様である。
離型層22は、シリコーン系離型剤を含んでもよい。離型層22に含まれるシリコーン系離型剤は、離型層形成用組成物に添加されるシリコーン系離型剤(シリコーンオイル)に由来する。シリコーン系離型剤は、離型層形成用組成物の硬化時に、離型層22の表面に配向するので、離型層22の離型性が向上する。離型層形成用組成物に添加されるシリコーン系離型剤は、反応性シリコーン系離型剤であってもよいし、非反応性シリコーン系離型剤であってもよい。離型層形成用組成物に添加されるシリコーン系離型剤が反応性シリコーン系離型剤である場合、シリコーン系離型剤は、離型層22のその他の成分(例えば、硬化性樹脂の硬化物等)と結合した状態で離型層22に含まれ得る。シリコーン系離型剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
離型層形成用組成物に含まれるシリコーン系離型剤の量は、離型層形成用組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、通常0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜20質量部、さらに好ましくは3〜20質量部、さらに一層好ましくは3〜10質量部である。シリコーン系離型剤の量が上記範囲であると、離型層22の離型性を効果的に向上させることができる。
シリコーン系離型剤は、オルガノポリシロキサン構造を基本構造とし、側鎖及び/又は末端に有機基が導入された変性シリコーンである。有機機が導入される末端は、片方の末端であってもよいし、両方の末端であってもよい。
反応性シリコーン系離型剤は、側鎖及び/又は末端に有機基が導入された変性シリコーンのうち、導入する有機基の性質によって反応性を有するものをいう。反応性シリコーン系離型剤としては、例えば、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、異種官能基変性シリコーン等が挙げられる。より具体的には、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、メルカプト変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、カルビノール変性ポリジメチルシロキサン、フェノール変性ポリジメチルシロキサン、メタクリル変性ポリジメチルシロキサン、異種官能基変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。反応性シリコーン系離型剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
非反応性シリコーン系離型剤は、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイル基、アリル基等の反応性官能基を有しないシリコーンであれば特に制限されない。非反応性シリコーン系離型剤としては、例えば、ポリシロキサンからなるシリコーンのほか、ポリエーテル変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、フロロアルキル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、高級脂肪酸アミド変性シリコーン、フェニル変性シリコーン等が挙げられる。より具体的には、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン、フロロアルキル変性ポリジメチルシロキサン、長鎖アルキル変性ポリジメチルシロキサン、高級脂肪酸エステル変性ポリジメチルシロキサン、高級脂肪酸アミド変性ポリジメチルシロキサン、フェニル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。非反応性シリコーン系離型剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
シリコーン系離型剤として、ポリエーテル変性シリコーンを使用することが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンは、主鎖がポリシロキサンであり、1個以上のポリオキシアルキレン基を置換基として有するものである。主鎖は環を形成していてもよい。
ポリエーテル変性シリコーンにおけるポリオキシアルキレン基の結合位置は、任意の適切な結合位置であり得る。例えば、ポリオキシアルキレン基は、主鎖の両末端に結合されていてもよいし、主鎖の片末端に結合されていてもよいし、側鎖に結合されていてもよい。ポリエーテル変性シリコーンは、ポリオキシアルキレン基が側鎖に結合された側鎖型ポリエーテル変性シリコーンであることが好ましい。
側鎖型ポリエーテル変性シリコーンは、例えば、一般式(1)で表される。
一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を表し、R1は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R2は水素原子又は炭素数1〜15のアルキル基を表し、R3は−(C2H4O)a−(C3H6O)b−で表されるポリオキシアルキレン基であり、aは1〜50であり、bは0〜30であり、mは1〜7000であり、nは1〜50である。
一般式(1)中、Rは、好ましくはメチル基である。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、信越シリコーン(株)製の商品名「KF−6011」(HLB:14.5)、「KF−6011P」(HLB:14.5)、「KF−6012」(HLB:7.0)、「KF−6013」(HLB:10.0)、「KF−6015」(HLB:4.5)、「KF−6016」(HLB:4.5)、「KF−6017」(HLB:4.5)、「KF−6017P」(HLB:4.5)、「KF−6043」(HLB:14.5)、「KF−6004」(HLB:9.0)、「KF351A」(HLB:12)、「KF352A」(HLB:7)、「KF353」(HLB:10)、「KF354L」(HLB:16)、「KF355A」(HLB:12)、「KF615A」(HLB:10)、「KF945」(HLB:4)、「KF−640」(HLB:14)、「KF−642」(HLB:12)、「KF−643」(HLB:14)、「KF−644」(HLB:11)、「KF−6020」(HLB:4)、「KF−6204」(HLB:10)、「X22−4515」(HLB:5)等の側鎖型(直鎖タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイル;信越シリコーン(株)製の商品名「KF−6028」(HLB:4.0)、「KF−6028P」(HLB:4.0)等の側鎖型(分岐鎖タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイル;信越シリコーン(株)製の商品名「KF−6038」(HLB:3.0)等の側鎖型(分岐鎖タイプ、アルキル共変性タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。
離型層形成用組成物は、体質顔料を含むことが好ましい。これにより、離型層形成用組成物にチキソトロピー性を付与することができ、版を使用して離型層形成用組成物を印刷する際に、離型層形成用組成物の模様形状を維持させることができる。体質顔料としては、例えば、シリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。これらのうち、材料設計の自由度が高く、意匠性、白さ及びインキとしての塗工安定性に優れた材料であるシリカが好ましく、特に微粉末のシリカが好ましい。
離型層形成用組成物に含まれる体質顔料の量は、離型層形成用組成物に含まれる樹脂100質量部に対して、通常0.1質量部以上20質量部以下、好ましくは0.5質量部15質量部以下、さらに好ましくは2質量部以上15質量部以下であり、さらに一層好ましくは5質量部以上15質量部以下である。体質顔料の含有量を上記範囲とすることにより、離型層形成用組成物に十分なチキソトロピー性を付与することができるとともに、隆起形状及び微細凹凸面の発現を付与する効果が得られる。
離型層形成用組成物は、無色であってもよいし、着色されていてもよい。着色する場合には、装飾層で使用する着色剤と同様のものを使用することができる。
離型層形成用組成物は、粘度を調整する目的で溶媒を含んでもよい。溶媒としては、水;トルエン、キシレン等の炭化水素化合物;メタノール、エタノール、メチルグリコール等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル化合物;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;テロラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。離型層形成用組成物中の溶媒の量は、離型層形成用組成物に求められる粘度に応じて適宜設定することができる。
離型層形成用組成物には、望まれる物性に応じて、公知の添加剤を適宜配合することができる。添加剤として、例えば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、熱ラジカル発生剤、アルミキレート剤等が挙げられる。
硬化メラミン層
図3〜図5に示すように、硬化メラミン樹脂層23は、支持層21の第1面S21の残部に設けられており、離型層22の一部又は全体を囲繞する。支持層21の第1面S21の残部は、支持層21の第1面S21のうち、離型層22が形成されていない領域を意味する。支持層21の第1面S21のうち、硬化メラミン樹脂層23が形成される領域は、第1面S21の残部の全体であってもよいし、第1面S21の残部の一部であってもよい。支持層21の第1面S21のうち、硬化メラミン樹脂層23が形成される領域は、連続した1つの領域であってもよいし、不連続な複数の領域であってもよい。硬化メラミン樹脂層23は、連続した1つの層で構成されていてもよいし、不連続な複数の層で構成されていてもよい。硬化メラミン樹脂層23が連続した1つの層で構成される場合、硬化メラミン樹脂層23の厚みは一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。硬化メラミン樹脂層23が不連続な複数の層で構成される場合、各層の厚みは一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。硬化メラミン樹脂層23が不連続な複数の層で構成される場合、ある層の厚みと別の層の厚みは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
支持層21の第1面S21のうち、硬化メラミン樹脂層23が形成される領域の面積(Sa)と、離型層22が形成される面積(Sb)との比(Sa:Sb)は、好ましくは3:7〜9:1、さらに好ましくは5:5〜8:2である。面積比が上記範囲内であると、化粧板20によって表現される凹凸形状の意匠感がより鮮明となる。
図3〜図5に示すように、硬化メラミン樹脂層23は、離型層22の表面S22を露出させる開口部230を有する。硬化メラミン樹脂層23の開口部230は、平面視において、離型層22と位置同調している。本発明において、「位置同調」とは、平面視において、硬化メラミン樹脂層23の開口部230の少なくとも一部が、離型層22の少なくとも一部と重なっていることを意味する。硬化メラミン樹脂層23の開口部230は、平面視において離型層22と重ならない部分を有していてもよいが、硬化メラミン樹脂層23の開口部230の全体が、離型層22の少なくとも一部と重なっていることが好ましい。離型層22は、平面視において硬化メラミン樹脂層23の開口部230と重ならない部分を有していてもよい。
なお、本発明において、「平面視」とは、対象となる部材又は部分を、化粧板20の厚み方向Zから観察することを意味する。例えば、図4及び図5において、同図に向かって上方から下方を見降ろすことを意味する。また、「平面視」は、対象となる部材又は部分がその他の部材又は部分に隠れて実際には観察できない場合であっても観察できるものとして取り扱う仮想的な概念である。すなわち、「平面視」は、対象となる部材又は部分を、化粧板20の厚み方向Zに対して垂直な仮想平面に投影することに相当する。
図3〜図5に示すように、硬化メラミン樹脂層23の開口部230は、化粧板20の第1面S20に凹部25を形成しており、凹部25の底面は、離型層22の表面S22により形成されている。
凹部25の深さは、好ましくは0.1μm以上50μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上30μm以下である。凹部25の深さが上記範囲内であると、化粧板20が表現する凹凸形状の意匠感が鮮明となる。
凹部25の深さは、化粧板20の第1面S20のうち、離型層22が形成されていない領域(硬化メラミン樹脂層23が形成されている領域)と、離型層22が形成されている領域との高低差として測定される。測定は、株式会社小坂研究所製 三次元表面粗さ測定器SE−30Kを使用して、JIS B 0601:2013に規定された方法に従って実施される。表面の最大高さ粗さ(Rz)を高低差のパラメ−タ−として使用し、10箇所の平均値を「高低差」とする。
図3〜図5に示すように、化粧板20の第1面S20のうち、凹部25に隣接する領域(硬化メラミン樹脂層23の表面S23により形成される領域)は、相対的に凸部となっており、化粧板20の第1面S20には、凹凸形状が形成されている。化粧板20の第1面S20のうち、凹部25の底面(離型層22の表面S22)により形成される領域は相対的に粗面となり、入射光に対して拡散反射性を有する低光沢領域となる一方、化粧板20の第1面S20のうち、凹部25に隣接する領域(硬化メラミン樹脂層23の表面S23により形成される領域)は相対的に鏡面となり、入射光に対して鏡面反射性を有する高光沢領域となる。これにより、化粧板20は、凹凸形状に基づいて、グロスマット調の意匠感を表現することができる。特に、化粧板20の凹凸形状(即ち、高光沢領域及び低光沢領域)を、装飾層212の絵柄模様と位置同調させることにより、化粧板20は、優れたグロスマット調の意匠感を表現することができる。例えば、装飾層212が木目模様を形成する場合、凹部25を、木目模様中の導管部(即ち、導管の切断面開口部によって形成される線条の溝部)と、両者の平面視での位置が一致するように位置同調させるとともに、凹部25に隣接する領域を、木目模様中の導管部以外の領域と、両者の平面視での位置が一致するように位置同調させることにより、木目模様中の導管部が相対的に凹部の外観を呈し、これにより、化粧板20は、本物の木目模様と同様の表面凹凸形状の意匠感(質感)を表現することができる。
離型層22の表面S22の全体が、硬化メラミン樹脂層23の開口部230から露出し、凹部25の底面を形成していてもよいが、必ずしもその必要はない。離型層22の表面S22の一部は、硬化メラミン樹脂層23で被覆されていてもよい。特に、離型層22が、装飾層212が形成する木目模様の導管部と位置同調する場合、離型層22のうち導管部の周縁部に相当する部分は、硬化メラミン樹脂層23で被覆されていてもよい。なお、凹部25と凸部(硬化メラミン樹脂層23)とから成る凹凸形状の高低差が目視外観上で十分に確保され、且つ耐摩耗性等の表面物性上も実用上支障が無い範囲内においては、離型層22の表面S22の全体にわたって硬化メラミン樹脂層23が残渣又は痕跡程度に微量に残留していてもよい。化粧板20を平面視したとき、離型層22のうち硬化メラミン樹脂層23の開口部230から露出し、凹部25の底面を形成している部分の面積は、支持層21の第1面S21のうち離型層22が設けられる領域の面積の50%以上であることが好ましい。これにより、化粧板20は、凹凸形状の意匠感を表現することができる。
化粧板20の第1面S20には、凹部25以外の凹部が形成されていてもよい。例えば、硬化メラミン樹脂層23の表面S23に凹部が形成されていてもよい。
硬化メラミン樹脂層23は、未硬化メラミン樹脂層の硬化により形成された層であり、メラミン樹脂の硬化物を含む。
未硬化メラミン樹脂層は、未硬化メラミン樹脂組成物により形成される層であり、メラミン樹脂の未硬化物を含む。未硬化メラミン樹脂組成物は、メラミン樹脂の未硬化物を含む。メラミン樹脂の未硬化物は、メラミンとホルムアルデヒドとを中性又はアルカリ性条件下で反応させて得られる熱硬化性樹脂であり、メラミンとホルムアルデヒドとの反応生成物(初期縮合物)は、メチロールメラミン類(モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン)を含む。
未硬化メラミン樹脂組成物は、粘度を調整する目的で溶媒を含んでもよい。溶媒としては、水;トルエン、キシレン等の炭化水素化合物;メタノール、エタノール、メチルグリコール等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル化合物;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;テロラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。未硬化メラミン樹脂組成物中の溶媒の量は、未硬化メラミン樹脂組成物の粘度に応じて適宜設定することができる。
未硬化メラミン樹脂組成物には、望まれる物性に応じて、公知の添加剤を適宜配合することができる。添加剤として、例えば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、熱ラジカル発生剤、アルミキレート剤等が挙げられる。
硬化メラミン樹脂層23の厚みは、離型層22の厚みとの関係で適宜調整することができるが、好ましくは1μm以上500μm以下、さらに好ましくは1μm以上300μm以下である。
化粧板20において、紙質基材211の空隙には、メラミン樹脂の硬化物が充填されており、硬化メラミン樹脂層23に含まれるメラミン樹脂の硬化物は、紙質基材211の空隙に充填されたメラミン樹脂の硬化物と一体化している。これにより、支持層21と硬化メラミン樹脂層23との接合強度を向上させることができ、化粧板20の使用時において、硬化メラミン樹脂層23が支持層21から剥離しにくくなる。
コア層
コア層24は、化粧板の分野で一般的に使用されているコア層と同様に構成することができる。コア層24は、例えば、多孔質基材と、多孔質基材の空隙に充填された熱硬化性樹脂の硬化物とを有する。
多孔質基材としては、例えば、繊維シート等が挙げられる。繊維シートとしては、例えば、紙、不織布、織布等が挙げられる。紙としては、例えば、チタン紙、薄葉紙、クラフト紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、紙にポリ塩化ビニル樹脂をゾルコート又はドライラミネートしたいわゆるビニル壁紙原反、上質紙、コート紙、パーチメント紙、和紙等が挙げられる。その他の繊維シートとしては、例えば、ガラス繊維、石綿、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機繊維で構成されるシート;ポリエステル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂繊維で構成されるシート等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化性ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
コア層24の前駆層としては、例えば、熱硬化性樹脂含浸シートを使用することができる。コア層24は、例えば、熱硬化性樹脂含浸シートを加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させることにより形成することができる。熱硬化性樹脂含浸シートとしては、例えば、メラミン化粧板のコア紙として汎用されているフェノール樹脂含浸紙等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂含浸シートをその他の層と共に熱圧成形する工程において硬化させることができる。
フェノール樹脂含浸紙は、例えば、コア紙として坪量150g/m2以上250g/m2以下のクラフト紙にフェノール樹脂を含浸率45%以上60%以下となるように含浸し、100℃以上140℃以下で乾燥させることにより製造することができる。市販のフェノール樹脂含浸紙を使用してもよい。
熱硬化性樹脂含浸シートは、ガラスクロス又はガラス不織布を基材とするプリプレグであってもよい。プリプレグは、例えば、熱硬化性樹脂をガラスクロス又はガラス不織布に含浸させることにより製造することができる。
コア層24の厚みは適宜調整することができるが、好ましくは300μm以上1750μm以下、さらに好ましくは300μm以上1400μm以下である。
化粧板20は、必要に応じて、コア層24の一方の面又は両方の面に積層された補強層を有していてもよい。例えば、コア紙の黒褐色の色調が化粧板20の表面から透視されることを隠蔽するために、チタン白顔料を混抄したチタン紙からなるバリアー紙を、コア層24と支持層21との間に積層することができる。また、熱圧成形の際に生じる化粧板20の反りを相殺するために、チタン紙からなるバランス紙等を、コア層24の裏面(コア層24の第2面T20側の面)に積層することができる。これらの補強層は、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含む未硬化状態の樹脂組成物を含浸した上で、その他の層と共に熱圧成形することにより、その他の層と一体化することができる。
<化粧板の製造方法>
以下、図面に基づいて、化粧板20の製造方法の一実施形態について説明する。図6〜図8は、化粧板20の製造方法の一実施形態を説明するための説明図である。なお、図7は、図6の続きであり、図8は、図7の続きである。
本実施形態に係る化粧板20の製造方法は、
(1)第1面S21及び第1面S21の反対側に位置する第2面T21を有する支持層21と、支持層21の第1面S21の一部に設けられた離型層22と、支持層21の第1面S21の残部及び離型層22を被覆する未硬化メラミン樹脂層L1と、剥離シート10の第1面S10が未硬化メラミン樹脂層L1と接するように、未硬化メラミン樹脂層L1上に設けられた剥離シート10と、支持層21の第2面T21に設けられたコア層24の前駆層L2とを備える積層体M3を準備する工程、
(2)積層体M3を加圧及び加熱することにより、未硬化メラミン樹脂層L1を硬化させ、硬化メラミン樹脂層23を形成する工程、及び
(3)剥離シート10を剥離することにより、硬化メラミン樹脂層23のうち離型層22を被覆する部分231を剥離し、硬化メラミン樹脂層23に、離型層22の表面S22を露出させる開口部230を形成する工程
を含む。
以下、各工程について説明する。
工程(1)
工程(1)は、積層体M3を準備する工程である。積層体M3は、以下の工程(1−1)〜(1−4)を含む方法により製造することができる。
工程(1−1)は、図6(a)に示すように、第1面S21及び第1面S21の反対側に位置する第2面T21を有する支持層21を準備する工程である。
支持層21は、紙質基材211の第1面S21側表面に装飾層212を形成することにより製造することができる。インキを使用して装飾層212を形成する法としては、例えば、コーティング法、印刷法等が挙げられる。コーティング法としては、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等が挙げられる。印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。
紙質基材211の第1面S21側表面に装飾層212を形成する前に、紙質基材211の第1面S21側表面に易接着層を形成してもよい。易接着層(プライマー層、アンカー層と呼ばれることもある)に含まれる易接着性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。これにより、装飾層212の密着性を高めることができる。
紙質基材211の第1面S21側表面に装飾層212を形成する前に、紙質基材211の第1面S21側表面に、酸化法、凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理を施してもよい。これにより、装飾層212の密着性を高めることができる。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
装飾層212の厚みは適宜調整することができるが、インキ塗工時の厚みは、例えば1μm以上200μm以下であり、乾燥後の厚みは、例えば0.1μm以上20μm以下である。
装飾層212は、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法等の方法により形成してもよい。装飾層212がアルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属層(金属薄膜)である場合、蒸着法、スパッタリング法、エッチング法等の方法により装飾層212を形成することができる。
工程(1−2)
工程(1−2)は、図6(b)に示すように、支持層21の第1面S21の一部に離型層22を形成する工程である。工程(1−2)において、支持層21と、支持層21の第1面S21の一部に形成された離型層22とを備える積層体M1が形成される。
離型層22は、支持層21の第1面S21の一部に、離型層形成用組成物として使用される電離放射線硬化性樹脂組成物を所定の模様状に印刷し、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。離型層形成用組成物がシリコーン系離型剤(シリコーンオイル)を含む場合、シリコーン系離型剤が、離型層形成用組成物の硬化時に、離型層22の表面に配向するので、離型層22の離型性が向上する。これにより、工程(3)において、硬化メラミン樹脂層23のうち離型層22を被覆する部分231を剥離する際、当該部分231を離型層22から剥離しやすい。
離型層形成用組成物を印刷する方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。離型層形成用組成物は、印刷法以外の方法で支持層21の第1面S21の一部に塗布してもよく、離型層形成用組成物を塗布する方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアコート法等の塗布法が挙げられる。離型層形成用組成物の塗工時の厚み(乾燥前の厚み)は、好ましくは1μm以上200μm以下、さらに好ましくは1μm以上100μm以下であり、乾燥後の厚みは、好ましくは1μm以上40μm以下、さらに好ましくは1μm以上20μm以下である。
電離放射線として紫外線を使用する場合には、紫外線源として、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源を使用することができる。紫外線の波長は、例えば190nm以上380nm以下である。電離放射線として電子線を使用する場合には、電子線源として、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の電子線加速器を使用することができる。電子線のエネルギーは、通常100keV以上1000keV以下、好ましくは100keV以上300keV以下である。電子線の照射量は、好ましくは2Mrad以上15Mrad以下である。
工程(1−3)
工程(1−3)は、図6(c)に示すように、積層体M1に未硬化メラミン樹脂組成物を供給し、支持層21の第1面S21の残部(支持層21の第1面S21のうち離型層22が形成されていない領域)及び離型層22を被覆する未硬化メラミン樹脂層L1とを備える積層体M2を形成する工程である。
積層体M1に未硬化メラミン樹脂組成物を供給する際、未硬化メラミン樹脂組成物は、例えば、支持層21の第1面S21側から供給される。供給された未硬化メラミン樹脂組成物のうち、一部は紙質基材211に含浸し、紙質基材211に含浸されない残部は、支持層21の第1面S21の残部及び離型層22を被覆する。なお、未硬化メラミン樹脂組成物は、離型層22には含浸されず、離型層22を被覆する。未硬化メラミン樹脂組成物の紙質基材211への含浸を促進するために、支持層21の第1面S21側からの未硬化メラミン樹脂組成物の供給に加えて、支持層21の第2面T21側からの未硬化メラミン樹脂組成物の供給を行ってもよい。支持層21の第2面T21側からの未硬化メラミン樹脂組成物の供給のみを行ってもよい。支持層21の第2面T21側からの未硬化メラミン樹脂組成物の供給のみが行われる場合も同様に、供給された未硬化メラミン樹脂組成物のうち、一部は、紙質基材211に含浸し、紙質基材211に含浸されない残部は、支持層21の第1面S21の残部及び離型層22を被覆する。未硬化メラミン樹脂組成物の供給方法としては、例えば、未硬化メラミン樹脂組成物への浸漬;キスコーター、コンマコーター等のコーターによる塗布;スプレー装置、シャワー装置等による吹き付け等が挙げられる。
未硬化メラミン樹脂層L1の厚みは、離型層22の厚みとの関係で適宜調整することができるが、塗工時の厚み(乾燥前の厚み)は、好ましくは1μm以上800μm以下、さらに好ましくは1μm以上500μm以下であり、乾燥後の厚みは、好ましくは1μm以上500μm以下、さらに好ましくは1μm以上300μm以下である。
未硬化メラミン樹脂組成物を紙質基材211に含浸させると、未硬化メラミン樹脂組成物は紙質基材211の空隙に充填される。したがって、積層体M2は、紙質基材211の空隙に充填されたメラミン樹脂の未硬化物を含む。紙質基材211の空隙にメラミン樹脂の未硬化物が含浸することにより、硬化メラミン樹脂層23に含まれるメラミン樹脂の硬化物を、紙質基材211の空隙に充填されたメラミン樹脂の硬化物と一体化させることができる。これにより、支持層21と硬化メラミン樹脂層23との接合強度を向上させることができ、化粧板20の使用時において、硬化メラミン樹脂層23が支持層21から剥離しにくくなる。
紙質基材211の空隙に充填される未硬化メラミン樹脂組成物の充填率は、化粧板20に求められる性能、紙質基材211の空隙率等に応じて適宜調整することができる。未硬化メラミン樹脂組成物の充填率は、好ましくは30%以上200%以下、さらに好ましくは50%以上150%以下である。なお、樹脂組成物の充填率は、下記式により算出される。
充填率(%)=[(樹脂組成物を含浸させた後の紙質基材の重量−樹脂組成物を含浸させる前の紙質基材の重量)/樹脂組成物を含浸させる前の紙質基材の重量]×100
未硬化メラミン樹脂組成物は離型層22の少なくとも一部を被覆していればよい。支持層21の第1面S21のうち離型層22が占める全面積(支持層21の第1面S21のうち離型層22が設けられている領域の面積)のうち、未硬化メラミン樹脂組成物により被覆される部分の面積は、例えば30%以上、好ましくは50%以上である。なお、上限は100%である。
工程(1−4)
工程(1−4)は、図6(d)に示すように、未硬化メラミン樹脂層L1に剥離シート10を積層するとともに、支持層21の第2面T21にコア層24の前駆層L2を積層する工程である。工程(1−4)において、支持層21と、支持層21の第1面S21の一部に形成された離型層22と、支持層21の第1面S21の残部(支持層21の第1面S21のうち離型層22が形成されていない領域)及び離型層22を被覆する未硬化メラミン樹脂層L1と、未硬化メラミン樹脂層L1に積層された剥離シート10と、支持層21の第2面T21に積層されたコア層24の前駆層L2とを備える積層体M3が形成される。未硬化メラミン樹脂層L1への剥離シート10の積層は、支持層21の第2面T21へのコア層24の積層の前、後、同時のいずれの時点で行ってもよい。
図6(d)に示すように、剥離シート10は、剥離シート10の第1面S10が未硬化メラミン樹脂層L1と接するように、未硬化メラミン樹脂層L1上に積層される。
工程(2)
工程(2)は、積層体M3を加圧及び加熱することにより、未硬化メラミン樹脂層L1を硬化させ、硬化メラミン樹脂層23を形成する工程である。
積層体M3の加圧及び加熱は、例えば、図6(e)に示すように、積層体M3を2枚の鏡面加工金属板MP1,MP2の間に挟んだ状態で行うことができる。鏡面加工金属板MP1,MP2によって加えられる圧力は、通常0.1kg/cm2以上200kg/cm2以下である。加熱温度は、通常100℃以上200℃以下、加熱時間は、通常1秒以上120分以下である。
積層体M3の加圧及び加熱により、未硬化メラミン樹脂層L1が硬化し、硬化メラミン樹脂層23が形成されるとともに、コア層24の前駆層L2が硬化し、コア層24が形成される。紙質基材211の空隙に充填されたメラミン樹脂の未硬化物もこの段階で硬化し、紙質基材211の空隙に充填されたメラミン樹脂の硬化物と、硬化メラミン樹脂層23に含まれるメラミン樹脂の硬化物とが一体化する。剥離シート10の表面層12は、この段階で硬化メラミン樹脂層23と接合する。
これにより、図7(f)に示すように、支持層21と、支持層21の第1面S21の一部に形成された離型層22と、支持層21の第1面S21の残部(支持層21の第1面S21のうち離型層22が形成されていない領域)及び離型層22を被覆する硬化メラミン樹脂層23と、硬化メラミン樹脂層23に積層された剥離シート10と、支持層21の第2面T21に積層されたコア層24とを備える積層体M4が形成される。
図7(f)に示すように、硬化メラミン樹脂層23は、離型層22を被覆する部分231と、離型層22を被覆しない部分232とを有する。離型層22を被覆する部分231は、離型層22の表面S22上に、離型層22を被覆するように形成されている。離型層22を被覆しない部分232は、支持層21の第1面S21上に、離型層22を囲繞するように形成されている。
工程(3)
工程(3)は、図7(g)に示すように、積層体M4から剥離シート10を剥離することにより、硬化メラミン樹脂層23のうち離型層22を被覆する部分231を剥離し、硬化メラミン樹脂層23に、離型層22の表面S22を露出させる開口部230を形成する工程である。
硬化メラミン樹脂層23のうち離型層22を被覆する部分231は、離型層22を被覆しない部分232よりも剥離されやすい。このため、離型層22を被覆する部分231は、剥離シート10に接合したまま、剥離シート10とともに剥離される。一方、離型層22を被覆しない部分232は、支持層21の第1面S21の残部に残る。離型層22を被覆する部分231が除去されることにより、硬化メラミン樹脂層23に開口部230が形成されるとともに、離型層22の表面S22が、硬化メラミン樹脂層23の開口部230を通じて露出し、化粧板20の第1面S20に凹部25が形成される。これにより、図7(h)に示すように、化粧板20が製造される。
離型層22がシリコーン系離型剤を含む場合、離型層22にはシリコーン系離型剤により離型性が付与されるので、工程(3)において、離型層22を被覆する部分231を剥離しやすい。離型層22及び硬化メラミン樹脂層23の両者がシリコーン系離型剤を含む場合は、この効果が大きくなる。
剥離シート10の表面層12と硬化メラミン樹脂層23との接合強度は、剥離対象部分(硬化メラミン樹脂層23のうち離型層22を被覆する部分231)と離型層22との接合強度よりも大きく、硬化メラミン樹脂層23の残部(離型層22を被覆しない部分232)と支持層21との接合強度よりも小さく、かつ、離型層22と支持層21との接合強度よりも小さくなるように調整される。但し、剥離シート10の表面層12と硬化メラミン樹脂層23との接合強度が十分に大きくないと、剥離対象部分が十分に剥離されずに、剥離対象部分の一部が離型層22上に残存するおそれがある。したがって、化粧板を量産する際に、製造時の熱プレス条件、硬化メラミン樹脂層の形成に使用されるメラミン樹脂組成物の組成等に通常想定される程度のバラツキが生じてもなお、剥離シート10の剥離により、離型層22から離型層22直上の剥離対象部分を、剥離シート10とともに安定して剥離(除去)する(その結果、化粧板20の第1面S20に凹部25が形成される)ためには、剥離シート10の表面層12と硬化メラミン樹脂層23との接合強度の指標である剥離シート10の剥離重さは、1N/インチ以上であることが好ましく、1.5N/インチ以上であることがさらに好ましく、2N/インチ以上であることがさらに一層好ましい。剥離シート10の剥離重さが1N/インチ以上であると、剥離対象部分を十分に剥離することができる。剥離シート10の剥離重さの上限値は、好ましくは10N/インチ、さらに好ましくは5N/インチ、さらに一層好ましくは3N/インチである。剥離重さが10N/インチを超えると、剥離シート10が破断したり、硬化メラミン樹脂層23のうち剥離対象部分以外の部分も剥離されたりするおそれがある。
剥離シート10の剥離重さの測定方法は、次の通りである。離型層22が設けられていない点を除き、積層体M4と同一の構成を有する積層体サンプルM4’を準備する。積層体サンプルM4’は、図8に示すように、第1面S21及び第1面S21の反対側に位置する第2面T21を有する支持層21と、支持層21の第1面S21に設けられた硬化メラミン樹脂層23と、硬化メラミン樹脂層23に積層された剥離シート10と、支持層21の第2面T21に積層されたコア層24とを備える。積層体サンプルM4’は、離型層22を形成しない点を除き、積層体M4と同様の方法により製造される。すなわち、剥離シート10を、第1面S10が未硬化メラミン樹脂層と接するように、未硬化メラミン樹脂層上に積層した後、未硬化メラミン樹脂層とともに加圧及び加熱し、剥離シート10の表面層12を、未硬化メラミン樹脂層の硬化により形成される硬化メラミン樹脂層23と接合させる。この際、剥離シート10を硬化メラミン樹脂層23から剥離しても、硬化メラミン樹脂層23が支持層21から剥離しないように、硬化メラミン樹脂層23と支持層21との接合強度を調整する。積層体サンプルM4’を準備した後、剥離シート10に1インチ幅の切り込みを入れ、切り込みを入れた剥離シート10の一端を剥がした後、積層体サンプルM4’の一端(下部)を試験機に固定する。180°剥がした剥離シート10を上部の方向(矢印方向)に100mm/分のスピードで剥離したときの重さを測定し、これを「剥離重さ」とする。剥離重さは、株式会社オリエンテック製テンシロン万能材料試験機RTC−1250Aを使用して測定される。
〔実施例1〕
(1)剥離シートの製造
厚み50μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製コスモシャイン(登録商標)A4100)の易接着性面に、プライマー層形成用組成物(昭和インク株式会社製EBFプライマー)を塗工し、その上に電離放射線硬化性樹脂組成物を5g/m2(乾燥時)の量で塗工し、165kVの加速電圧にて5Mradの電子線照射を行い、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗膜を硬化させることにより、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成された表面層を有する剥離シートを製造した。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、大日精化工業株式会社製セイカビームEB・CON(a)NSクリヤー100質量部に対して、アミノ変性シランカップリング剤(アミノ基を有するシランカップリング剤)4質量部を添加することにより調製した。アミノ変性シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシランを使用した。電離放射線硬化性樹脂組成物の組成は以下の通りであり、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるアミノ変性シランカップリング剤の量は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂(3官能アクリレートモノマー)100質量部に対して、4.11質量部である。
・3官能アクリレートモノマー 97.26質量部
・非反応性ポリマー 2.24質量部
・シリカ微粒子(平均粒径:5μm) 0.5質量部
・アミノ変性シランカップリング剤 4質量部
(2)剥離シートの剥離重さの測定
グラビア印刷法を使用して、原紙上に印刷インキ(DICグラフィックス株式会社製オーデSPTI)を印刷し、厚み3μmの木目柄状の絵柄層を有する印刷紙を製造した。原紙としては、坪量100g/m2の白チタン紙(KJ特殊紙株式会社製PM−7P)を使用した。白チタン紙に含まれる灰分(無機成分)の量は23質量%であり、灰分の量は、酸化チタンの量とほぼ等しい。
α−セルロースパルプ繊維に対して、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、カルボキシメチルセルロース、硫酸バンド及びアルミン酸ソーダが添加された、坪量42g/m2のオーバーレイ原紙に、未硬化メラミン樹脂組成物を含浸させて乾燥させ、メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を製造した。なお、未硬化メラミン樹脂組成物の充填率(含浸率)は142%である。
未硬化メラミン樹脂組成物の組成は以下の通りである。
・メラミン樹脂の未硬化物(水溶性メチロールメラミン樹脂、日本カーバイド工業社製ニカレジンS−260) 60質量部
・水 35質量部
・イソプロピルアルコール 5質量部
印刷紙を、クラフト紙にフェノール樹脂液を含浸させて製造した、坪量245g/m2のフェノール樹脂含浸コア紙(太田産業株式会社製太田コア)2枚の上に積層し、更にフェノール樹脂含浸コア紙の上にメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を積層し、更にメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙の上に剥離シートを積層し、積層体を形成した。剥離シートは、剥離シートの表面層がメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙と接するように積層した。
形成された積層体を2枚の鉄板表面にクロムメッキしてなる鏡面板で挟み、熱プレス機を用いて、圧力195kg/cm2、成型温度145℃、成型時間7分間の条件にて加熱成型し、未硬化メラミン樹脂組成物を熱硬化させることにより、メラミン樹脂の硬化物を含む硬化メラミン樹脂層を形成した。
硬化メラミン樹脂層から剥離シートを剥離する際の剥離重さを次の方法で測定した。剥離シートに1インチ幅の切り込みを入れ、切り込みを入れた剥離シートの一端を剥がした後、積層体の一端(下部)を試験機に固定した。180°剥がした剥離シートを上部の方向(矢印方向)に100mm/分のスピードで剥離したときの重さを測定し、これを「剥離重さ」とした。剥離重さは、株式会社オリエンテック製テンシロン万能材料試験機RTC−1250Aを使用して測定した。結果を表1に示す。
〔実施例2〕
実施例2は、アミノ変性シランカップリング剤の添加量を、大日精化工業株式会社製セイカビームEB・CON(a)NSクリヤー100質量部に対して6質量部に変更した点を除き、実施例1と同様である。結果を表1に示す。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるアミノ変性シランカップリング剤の量は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂(3官能アクリレートモノマー)100質量部に対して、6.17質量部である。
〔実施例3〕
実施例3は、アミノ変性シランカップリング剤の添加量を、大日精化工業株式会社製セイカビームEB・CON(a)NSクリヤー100質量部に対して8質量部に変更した点を除き、実施例1と同様である。結果を表1に示す。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるアミノ変性シランカップリング剤の量は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂(3官能アクリレートモノマー)100質量部に対して、8.23質量部である。
〔比較例1〕
比較例1は、アミノ変性シランカップリング剤を添加しなかった点を除き、実施例1と同様である。結果を表1に示す。
なお、実施例及び比較例では離型層が設けられていないが、剥離シートの表面層と硬化メラミン樹脂層との接合強度の指標である剥離シートの剥離重さが、比較例1よりも十分に大きければ、好ましくは1N/インチ以上、さらに好ましくは1.5N/インチ以上、さらに一層好ましくは2N/インチ以上であれば、離型層が設けられている場合において、剥離対象部分(硬化メラミン樹脂層のうち離型層を被覆する部分)を十分に剥離できることが分かっている。
〔比較例2〕
比較例2は、アミノ変性シランカップリング剤の添加量を、大日精化工業株式会社製セイカビームEB・CON(a)NSクリヤー100質量部に対して1質量部に変更した点を除き、実施例1と同様である。結果を表1に示す。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるアミノ変性シランカップリング剤の量は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂(3官能アクリレートモノマー)100質量部に対して、1.03質量部である。
〔比較例3〕
比較例3は、アミノ変性シランカップリング剤の添加量を、大日精化工業株式会社製セイカビームEB・CON(a)NSクリヤー100質量部に対して2質量部に変更した点を除き、実施例1と同様である。結果を表1に示す。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるアミノ変性シランカップリング剤の量は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂(3官能アクリレートモノマー)100質量部に対して、2.06質量部である。
〔比較例4〕
比較例2は、アミノ変性シランカップリング剤の添加量を、大日精化工業株式会社製セイカビームEB・CON(a)NSクリヤー100質量部に対して10質量部に変更した点を除き、実施例1と同様である。結果を表1に示す。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるアミノ変性シランカップリング剤の量は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂(3官能アクリレートモノマー)100質量部に対して、10.28質量部である。
〔比較例5〕
比較例5は、アミノ変性シランカップリング剤の代わりに、アクリル変性シランカップリング剤(3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)を、大日精化工業株式会社製セイカビームEB・CON(a)NSクリヤー100質量部に対して1、2又は10質量部の量で添加した点を除き、実施例1と同様である。結果を表1に示す。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるアクリル変性シランカップリング剤の量は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂(3官能アクリレートモノマー)100質量部に対して、1.03、2.06又は10.28質量部である。
〔比較例6〕
比較例3は、アミノ変性シランカップリング剤の代わりに、メルカプト変性シランカップリング剤(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)を、大日精化工業株式会社製セイカビームEB・CON(a)NSクリヤー100質量部に対して1、2又は10質量部の量で添加した点を除き、実施例1と同様である。結果を表1に示す。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれるメルカプト変性シランカップリング剤の量は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂(3官能アクリレートモノマー)100質量部に対して、1.03、2.06又は10.28質量部である。