上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳述する。
図1は本発明にかかる化粧シートの基本構成を図解的に示す層構成図、図2は本発明にかかる化粧シートの一実施例を図解的に示す層構成図であり、図中の1、1’は化粧シート、2は合成樹脂製透明基材層、2’は合成樹脂製着色層、3、3’はプライマー層、4はパターン状低艶印刷層、5は表面保護層、6は絵柄印刷層、7は凹陥模様、8は接着剤層、61は模様柄印刷層、62はベタ柄印刷層をそれぞれ示す。
図1は本発明にかかる化粧シートの基本構成を図解的に示す層構成図であって、化粧シート1は合成樹脂製透明基材層2の一方の面全面にプライマー層3を設け、該プライマー層3上にパターン状低艶印刷層4を設け、該パターン状低艶印刷層4上の前記一方の面全面に表面保護層5を設け、さらに前記合成樹脂製透明基材層2の他方の面側に絵柄印刷層6を設け、前記表面保護層5側からエンボス加工を施して凹陥模様7を形成したものである。なお、図1上においては、前記絵柄印刷層6を前記合成樹脂製透明基材層2に当接した状態で示したが、前記絵柄印刷層6は前記合成樹脂製透明基材層2の他方の面側に位置し、前記表面保護層5側から前記合成樹脂製透明基材層2を介して前記絵柄印刷層6を見ることができるように構成されていればよいものであるし、前記絵柄印刷層6は通常、前記合成樹脂製透明基材層2側から模様柄印刷層61とベタ柄印刷層62で構成されているものである。また、図1においては、前記凹陥模様7を設けた実施態様を示したが、前記凹陥模様7は必要に応じて設ければよいのであって必須ではない。
図2は本発明にかかる化粧シートの一実施例を図解的に示す層構成図であって、化粧シート1’は合成樹脂製着色層2’の少なくとも一方の面にプライマー層3’を設け、該プライマー層3’上にベタ柄印刷層62、模様柄印刷層61を順に印刷形成した絵柄印刷層6を設け、さらに前記絵柄印刷層6側の面全面にポリオール成分とイソシアネート成分からなる2液硬化型ポリウレタン系接着剤で形成した接着剤層8を介して合成樹脂製透明基材層2を設け、前記合成樹脂製透明基材層2の表面全面にプライマー層3を設け、該プライマー層3上にパターン状低艶印刷層4を設け、該パターン状低艶印刷層4上の前記合成樹脂製透明基材層2の表面全面に表面保護層5を設け、前記表面保護層5側からエンボス加工を施して凹陥模様7を形成したものである。なお、前記凹陥模様7は必要に応じて設ければよいのであって必須ではない。
次に、前記化粧シート1、1’を構成する諸材料について説明する。まず、前記合成樹脂製透明基材層2および前記合成樹脂製着色層2’を構成する樹脂としては、加工適性に優れ、燃焼時に有害なガスを発生しないことなどから、たとえば、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む),中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,エチレンαオレフィン共重合体,ホモポリプロピレン,ポリメチルペンテン,ポリブテン,エチレン−プロピレン共重合体,プロピレン−ブテン共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−ビニルアルコール共重合体,あるいは,これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体,ポリカーボネート,ポリアリレート等の熱可塑性エステル樹脂、ポリメタアクリル酸メチル,ポリメタアクリル酸エチル,ポリアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、ナイロン−6,ナイロン−66等のポリアミド系熱可塑性樹脂、あるいは、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等の非ハロゲン系熱可塑性樹脂などを挙げることができる。また、これらの熱可塑性樹脂は、単独であっても2種以上の混合物であってもよいが、意匠としての絵柄印刷層6や凹陥模様7などが設けられるために、これらの適性が求められ、また、昨今問題となっている燃焼時に有害なガスを発生しないこと、あるいは、コストなどを総合的に考慮するとオレフィン系熱可塑性樹脂が好ましい。なお、前記合成樹脂製透明基材層2は半透明であってもよいし、また、着色した透明あるいは半透明であってもよいものであるし、前記合成樹脂製着色層2’は、着色した透明、半透明あるいは不透明(隠蔽性がある)であってもよいし、着色されていない無着色層であってもよいものである。
また、前記合成樹脂製透明基材層2および前記合成樹脂製着色層2’は、未延伸の状態、あるいは、一軸ないし二軸方向に延伸した状態のいずれの状態であってもよいし、また、2層以上積層した状態であってもよいのであって、種々の構成を適宜採ることができるが、厚さとしては概ね60〜300μmが適当である。また、これらの層2、2’は必要に応じて必要な面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の周知の易接着処理を施してもよいものである。また、これらの層2、2’は、適宜、酸化防止剤、光安定剤、紫外線防止剤等の周知の添加剤を添加したものであってもよいものである。
また、前記絵柄印刷層6としては、グラビア印刷法、オフセット印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷法でインキを用いて形成することができる。前記模様柄印刷層61としては、たとえば、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様柄であり、前記ベタ柄印刷層62としては、隠蔽性を有する着色インキでベタ印刷したものである。なお、図1、2においては、前記絵柄印刷層6として、前記模様柄印刷層61と前記ベタ柄印刷層62の両印刷層を設けた構成を示したが、いずれか一方の構成であってもよいものである。
前記絵柄印刷層6を形成するインキとしては、ビヒクルとして塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールとからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂等を1種ないし2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものを用いることができ、環境問題を考慮すると、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合した非塩素系のビヒクルが適当であり、より好ましくはポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合したものである。
次に、前記パターン状低艶印刷層4について説明する。前記パターン状低艶印刷層4は、この層を設けた領域がこれ以外の領域に比べて低艶となる領域(低艶領域)である。この機構については十分に解明するまでには至っていないが、前記パターン状低艶印刷層4とこの表面に設けられる硬化型樹脂からなる前記表面保護層5の未硬化物を塗布した際に、各材料の組合せや塗布条件の選択によって前記パターン状低艶印刷層4の樹脂成分と前記表面保護層5の未硬化物が一部溶出、分散、混合等の相互作用の発現と微粒子によるものと推測される。すなわち、前記パターン状低艶印刷層4のインキと前記表面保護層5を形成する硬化型樹脂の未硬化物におけるそれぞれの樹脂成分は、短時間には完全に相溶状態にならずに懸濁状態となって、前記パターン状低艶印刷層4上ないしその近辺に存在し、該懸濁状態となった部分が微粒子との相乗作用により光を散乱して低艶領域をなすものと考えられる。この懸濁状態を有したまま架橋硬化して前記表面保護層5が形成されるために、前記表面保護層5中の前記パターン状低艶印刷層4上の領域が少なくとも低艶領域となり、目の錯覚により、その領域が凹部であるかのように認識されるものと推測される。また、前記パターン状低艶印刷層4を形成するインキと前記表面保護層5を形成する硬化型樹脂組成物の種類・塗布条件によっては、前記表面保護層5の最表面は、前記パターン状低艶印刷層4の形成に伴って隆起し、凸形状を形成する場合がある。前記表面保護層5の表面がこのように凸形状を有することによって、この部分でも光が散乱されるため、さらに視覚的な凹凸感が強調され好ましい。なお、前記凸形状の高さについては、本発明の効果を奏する範囲である高さであることが好ましく、通常2〜3μmの範囲である。
前記パターン状低艶印刷層4を形成するインキは前記表面保護層5を形成する硬化型樹脂組成物(硬化型樹脂の未硬化物)との相互作用を起こす性質を有するものであり、硬化型樹脂組成物(硬化型樹脂の未硬化物)との関連で適宜選定されるものである。具体的には、インキのビヒクルとしてはポリビニルアセタール系樹脂を少なくとも含有(混練)しているものが好ましい。前記ポリビニルアセタール系樹脂は、ポリビニルアルコールとアルデヒド類との縮合(アセタール化)により得られる。ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルホルマール(ホルマール樹脂)、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂)、ポリビニルへキシラール等を挙げることができるが、溶剤に可溶でありインキ化し易く、視覚的凹凸感の発現(視覚的に凹部として認識されること)が良好であるなどの理由から、特にポリビニルブチラールが好ましい。
また、必要に応じて、低艶領域の発現の程度、低艶領域とその周囲との艶差のコントラストを調整するため、不飽和ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、あるいは、ポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させてなるウレタン系樹脂等の艶調整樹脂を混合して用いてもよいものである。艶調整樹脂の混合割合はビヒクルの全量に対して10〜90重量%の範囲である。この範囲であると、低艶領域発現の十分な増強効果が得られるものである。また、前記パターン状低艶印刷層4を形成するインキは、無着色であっても、顔料等の着色剤を加えて着色したものであってもよいものである。
本発明は、前記パターン状低艶印刷層4上に前記表面保護層5が設けられ、前記パターン状低艶印刷層4を構成する微粒子を含有したインキと前記表面保護層5を構成する硬化型樹脂組成物(硬化型樹脂の未硬化物)との相互作用によって、前記パターン状低艶印刷層4上の領域が少なくとも低艶領域となり、目の錯覚により、その領域が凹部であるかのように認識されるものである。前記パターン状低艶印刷層4の膜厚としては、印刷適性や硬化型樹脂組成物(硬化型樹脂の未硬化物)との相互作用を考慮すると0.5μm以上5.0μm以下が適当である。
また、前記パターン状低艶印刷層4を形成する印刷インキに配合される微粒子としては体質顔料が好ましい。体質顔料を配合することにより、光の散乱を助長し、低艶効果を発現することができる。前記体質顔料としては特に限定されるものではないが、たとえば、シリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等から適宜選択される。これらの中で、吸油度、粒径、細孔容積等の材料設計の自由度が高く、意匠性、白さ、インキとしての塗布安定性に優れた材料であるシリカが好ましく、特に微粉末のシリカが好ましい。
シリカの平均粒径としては、前記パターン状低艶印刷層4の膜厚(μm)より大きいものであればよいのであって、概ね1.0μm以上であり、また、最大粒径としては、表面保護層5の膜厚(μm)との関係で決めるべきものであるが、表面保護層5の膜厚は化粧シートとして求められる諸物性(後加工適性や使用時適正)とコストを考慮すると、概ね10.0μm以下、好ましくは7.0μm以下であり、平均粒径の最適な範囲としては2.0μm以上4.0μm以下である。また、前記パターン状低艶印刷層4を形成するためのインキに添加する体質顔料の配合量は、体質顔料以外のインキ組成物100重量部に対して5〜15重量部が適当である。5重量部未満では、パターン状低艶印刷層4を形成する印刷インキ組成物に十分なチキソ性を付与することができないし、15重量部超では、低艶を付与する効果の低下が見られるので好ましくない。
次に、前記表面保護層5について説明する。この表面保護層5は化粧シート1、1’(図1、2参照)に要求される耐擦傷性、耐摩耗性、耐汚染性、耐水性、耐候性等の表面物性を付与するために設けられるものであり、この表面保護層5を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂ないし電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂を用いて形成するのが適当であるが、より好ましくは表面硬度が硬く、生産性に優れるなどから電離放射線硬化型樹脂である。
熱硬化型樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。上記樹脂には必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、または、重合促進剤を添加して用いる。たとえば、硬化剤としては、イソシアネートまたは有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加され、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加され、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物やアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤は不飽和ポリエステル樹脂に添加される。上記熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、たとえば、上記した熱硬化型樹脂を溶液化し、ロールコート法、グラビアコート法等の周知の塗布法で塗布し、乾燥すると共に硬化させることにより形成することができる。表面保護層の塗布量としては、固形分で概ね1〜20g/m2が適当であり、特に、パターン状低艶印刷層の膜厚が0.5μm以上5.0μm以下であって、微粒子の平均粒径が1.0μm以上7.0μm以下である場合は、固形分で2〜10g/m2が適当である。
次に、電離放射線硬化型樹脂について説明する。電離放射線硬化型樹脂としては、電離放射線を照射することにより架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線は、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等がある。通常は紫外線や電子線が用いられる。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。また、電子線源としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。用いる電子線としては、100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのものが使用される。電子線の照射量は、通常2〜15Mrad程度である。
電離放射線硬化型樹脂としては、分子中に、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、またはエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマーまたはポリマーからなる。これら単量体、プレポリマーまたはポリマーは、単体で用いるか、あるいは、複数種混合して用いる。なお、本明細書で(メタ)アクリレートとは、アクリレートないしメタアクリレートの意味で用いる。また、電離放射線とは、電磁波ないし荷電粒子線のうち分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常は紫外線ないし電子線である。
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。このプレポリマーは、通常、分子量が10000程度以下のものが用いられる。分子量が10000を超えると硬化した樹脂層の耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の表面物性が不足する。上記のアクリレートとメタアクリレートとは共用し得るが、電離放射線での架橋硬化速度という点ではアクリレートの方が速いため、高速度、短時間で能率よく硬化させるという目的ではアクリレートの方が有利である。
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル化合物、スピロ化合物等のプレポリマーが挙げられる。
ラジカル重合性不飽和基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリレート化合物の単官能単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジベンジルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンテレフタレート等が挙げられる。
また、ラジカル重合性不飽和基を有する多官能単量体として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。
カチオン重合性官能基を有する単量体は、上記カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの単量体を用いることができる。
上記した電離放射線硬化型樹脂を、紫外線を照射することにより硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等を単独ないし混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシキソニウムジアリルヨードシル塩等を単独ないし混合物として用いることができる。なお、これら光重合開始剤の添加量は、一般に、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。電離放射線硬化型樹脂の塗布法および塗布量は、熱硬化型樹脂と同じであり、説明は省略する。
また、前記表面保護層5には、シリコーンオイルで表面被覆したシリカが艶調整剤として配合されて化粧シート1、1’の表面の艶が調整されるものである。シリコーンオイルで表面被覆されたシリカの平均粒径としては限定されないが、概ね1.0〜10.0μmが適当であり、硬化型樹脂100重量部に対してシリコーンオイルで表面被覆したシリカの配合割合としては限定されないが、概ね10〜20重量部が適当である。
また、前記表面保護層5に、シリコーンオイルで表面被覆したシリカを配合することにより、グロスマット感を表現することができるものであるが、これだけではグロスマット感の表現に限度があり、これ以上のグロスマット感を表現したい場合、特に前記パターン状低艶印刷層4の領域(低艶領域)とこれ以外の領域(高艶領域)のグロスマット感を際立たせたい場合、その理由は明らかではないが、前記表面保護層5に、さらに平均粒径が1μm以下のシリカ(マイクロシリカ)を硬化型樹脂100重量部に対して1〜2重量部配合することにより達成することができるものである。平均粒径が1μm以下のシリカ(マイクロシリカ)を用いる理由としては、前記パターン状低艶印刷層4の含有される体質顔料の隙間や前記パターン状低艶印刷層4の領域(低艶領域)とこれ以外の領域(高艶領域)の境界にマイクロシリカが入り込み、高艶領域の艶に影響を与えることなく、低艶領域をよりマット状態にすると共に前記パターン状低艶印刷層4の領域(低艶領域)とこれ以外の領域(高艶領域)の境界が明瞭になるためであると考えられるし、また、平均粒径が1μm超のシリカでは、高艶領域の艶にも影響し(艶が落ちる)、艶差による意匠性が下がると共に前記パターン状低艶印刷層4の領域(低艶領域)とこれ以外の領域(高艶領域)の境界が不明瞭となり、グロスマット感が低下し、意匠性が落ちる結果となるからである。
また、前記表面保護層5には、要求される物性に応じて、たとえば、ベンゾトリアゾール系,ベンゾフェノン系,トリアジン系等の周知の有機系紫外線吸収剤や平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン,酸化セリウム,酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤、あるいは、ヒンダードアミン系等の周知の光安定剤、あるいは、帯電防止剤、レべリング剤等の周知の添加剤を添加することができる。
次に、前記プライマー層3、3’について説明する。前記プライマー層3は前記合成樹脂製透明基材層2と前記パターン状低艶印刷層4または前記表面保護層5との接着強度を向上させる目的で設けるものであり、前記プライマー層3’は前記合成樹脂製着色層2’と前記絵柄印刷層6との接着強度を向上させる目的で設けるものである。特に、前記合成樹脂製透明基材層2および前記合成樹脂製着色層2’がオレフィン系熱可塑性樹脂の場合には、前記パターン状低艶印刷層4または前記表面保護層5および前記絵柄印刷層6との接着強度を向上させるために、前記プライマー層3、3’を設ける方が望ましい。前記プライマー層3、3’に用いる樹脂としてはエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース樹脂等を挙げることができ、これらの樹脂は単独ないし混合して塗料組成物、または、インキ組成物とし、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて形成することができる。
しかしながら、前記プライマー層3、3’は、(i)アクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体と、(ii)イソシアネートとからなる樹脂で形成するのが特に好ましい。すなわち、(i)のアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体は、末端に水酸基を有するアクリル重合体成分(成分A)、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール成分(成分B)、ジイソシアネート成分(成分C)を配合して反応させてプレポリマーとなし、該プレポリマーにさらにジアミンなどの鎖延長剤(成分D)を添加して鎖延長することで得られるものである。この反応によりポリエステルウレタンが形成されると共にアクリル重合体成分が分子中に導入され、末端に水酸基を有するアクリル−ポリエステルウレタン共重合体が形成される。このアクリル−ポリエステルウレタン共重合体の末端の水酸基を(ii)のイソシアネートと反応させて硬化させて形成するものである。
前記成分Aは、末端に水酸基を有する直鎖状のアクリル酸エステル重合体が用いられる。具体的には、末端に水酸基を有する直鎖状のポリメチルメタクリレート(PMMA)が耐候性(特に光劣化に対する特性)に優れ、ウレタンと共重合させて相溶化するのが容易である点から好ましい。前記成分Aは、共重合体においてアクリル樹脂成分となるものであり、分子量5000〜7000(重量平均分子量)のものが耐候性、接着性が特に良好であるために好ましく用いられる。また、前記成分Aは、両末端に水酸基を有するもののみを用いてもよいが、片末端に共役二重結合が残っているものを上記の両末端に水酸基を有するものと混合して用いてもよいものである。共役二重結合が残っているアクリル重合体を混合することにより、前記プライマー層と接する層、たとえば、前記表面保護層5の電離放射線硬化型樹脂とアクリル重合体の共役二重結合が反応するために電離放射線硬化型樹脂との間の接着性を向上させることができる。
前記成分Bは、ジイソシアネートと反応してポリエステルウレタンを形成し、共重合体においてウレタン樹脂成分を構成するものである。前記成分Bは、両末端に水酸基を有するポリエステルジオールが用いられる。このポリエステルジオールとしては、芳香族ないしスピロ環骨格を有するジオール化合物とラクトン化合物ないしその誘導体、またはエポキシ化合物との付加反応生成物、二塩基酸とジオールとの縮合生成物、および、環状エステル化合物から誘導されるポリエステル化合物等を挙げることができる。上記ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、メチルペンテンジオール等の短鎖ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族短鎖ジオール等を挙げることができる。また、上記二塩基酸としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を挙げることができる。ポリエステルポリオールとして好ましいのは、酸成分としてアジピン酸ないしアジピン酸とテレフタル酸の混合物、特にアジピン酸が好ましく、ジオール成分として3−メチルペンタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いたアジペート系ポリエステルである。
前記プライマー層3、3’において、前記成分Bと前記成分Cとが反応して形成されるウレタン樹脂成分は、前記プライマー層3、3’に柔軟性を与え、前記合成樹脂製透明基材層2あるいは前記合成樹脂製着色層2’との接着性に寄与する。また、アクリル重合体からなるアクリル樹脂成分は、前記プライマー層3、3’において耐候性および耐ブロッキング性に寄与する。ウレタン樹脂において、前記成分Bの分子量は前記プライマー層に柔軟性を十分に発揮可能なウレタン樹脂が得られる範囲であればよく、アジピン酸ないしアジピン酸とテレフタル酸の混合物と、3−メチルペンタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールからなるポリエステルジオールの場合、500〜5000(重量平均分子量)が好ましい。
前記成分Cは、1分子中に2個のイソシアネート基を有する脂肪族ないし脂環族のジイソシアネート化合物が用いられる。このジイソシアネートとしては、たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,4,4)−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4’−シクロヘキシルジイソシアネート等を挙げることができる。ジイソシアネート成分としては、イソホロンジイソシアネートが物性およびコストが優れる点で好ましい。上記の成分A〜Cを反応させる場合のアクリル重合体、ポリエステルポリオールおよび後述する鎖延長剤の合計の水酸基(アミノ基の場合もある)と、イソシアネート基の当量比はイソシアネート基が過剰となるようにする。
上記の三成分A、B、Cを60〜120℃で2〜10時間程度反応させると、ジイソシアネートのイソシアネート基がポリエステルポリオール末端の水酸基と反応してポリエステルウレタン樹脂成分が形成されると共にアクリル重合体末端の水酸基にジイソシアネートが付加した化合物も混在し、過剰のイソシアネート基および水酸基が残存した状態のプレポリマーが形成される。このプレポリマーに鎖延長剤として、たとえば、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミンを加えてイソシアネート基を前記鎖延長剤と反応させ、鎖延長することでアクリル重合体成分がポリエステルウレタンの分子中に導入され、末端に水酸基を有する(i)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体を得ることができる。
(i)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体に、(ii)のイソシアネートを加えると共に、塗布法、乾燥後の塗布量を考慮して必要な粘度に調節した塗布液となし、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布することにより前記プライマー層3、3’を形成すればよいものである。また、(ii)のイソシアネートとしては、(i)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体の水酸基と反応して架橋硬化させることが可能なものであればよく、たとえば、2価以上の脂肪族ないし芳香族イソシアネートが使用でき、特に熱変色防止、耐候性の点から脂肪族イソシアネートが望ましい。具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートの単量体、または、これらの2量体、3量体などの多量体、あるいは、これらのイソシアネートをポリオールに付加した誘導体(アダクト体)のようなポリイソシアネートなどを挙げることができる。なお、図1、図2の化粧シート1、1’においては、プライマー層3、3’を設けた構成のものを示したが、これは、高レベルの要求に応える化粧シート仕様であり、要求レベルが低い場合にはこれらプライマー層3、3’は必ず設けなければならないものでもない。
なお、プライマー層3、3’の乾燥後の塗布量としては、1〜20g/m2であり、好ましくは1〜5g/m2である。また、このプライマー層3、3’は、必要に応じてシリカ粉末などの充填剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を添加した層としてもよいものである。
また、図示はしないが、図2に示す前記合成樹脂製着色層2’の裏面(前記絵柄印刷層6を設けた面の反対面)にプライマー層を設けて、化粧シート1’を化粧板用基材(図示せず)に接着剤層を介して貼着して化粧板とする際の接着力が向上するように構成してもよいものである。前記合成樹脂製着色層2’の裏面(前記絵柄印刷層6を設けた面の反対面)に設ける前記プライマー層は、接着力が不足している場合に、必要に応じて適宜設ければよいものである。なお、この場合のプライマー層についても、上記のプライマー層3、3’で説明した樹脂を適宜選択して用いればよいものである。また、化粧シート1’と化粧板用基材とを貼着する接着剤層に用いる接着剤としては、たとえば、熱可塑性樹脂系、熱硬化型樹脂系、ゴム(エラストマー)系等のいずれのタイプの接着剤であってもよいものである。これらは、公知のもの、ないし、市販品を使用することができる。熱可塑性樹脂系接着剤としては、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等)、シアノアクリレート、ポリビニルアルキルエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ニトロセルロース、酢酸セルロース、熱可塑性エポキシ、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等を挙げることができ、熱硬化型樹脂系接着剤としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリベンツイミダゾール、ポリベンゾチアゾール等を挙げることができる。ゴム系接着剤としては、天然ゴム、再生ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ステレオゴム(合成天然ゴム)、エチレンプロピレンゴム、ブロックコポリマーゴム(SBS、SIS、SEBS等)等を挙げることができる。
なお、前記化粧板用基材(図示せず)としては、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)、パーティクルボード、合板等の木質系基材、あるいは、セメント板、ケイ酸カルシウム板等の無機系基材、金属板などを挙げることができる。前記化粧板用基材の厚さとしては、金属板にあっては0.5mm厚さ以上、それ以外の場合にあっては1.0mm厚さ以上が実用上において適当である。
また、前記凹陥模様7は加熱プレスやヘアライン加工などにより形成することができ、その模様としては、たとえば、導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝、鏡面等である。
次に、本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳しく説明する。