JP4482750B2 - 化粧シート - Google Patents

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Description

本発明は、化粧シートに関する。
建築物の内装、建具の表面化粧、車両の内装等に用いられる化粧シートとして、一般に基材シート、ベタインキ層及び/又は絵柄インキ層からなるインキ層、接着剤層、透明樹脂層等を順次積層させた複合シートが知られている。
このような化粧シートにおいて、従来、インキ層及び接着剤層は、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の脂肪族溶剤などを含む溶剤系塗工剤から形成されている(例えば、特許文献1参照)。
上記した芳香族溶剤、脂肪族溶剤等は、いずれも有機性揮発物質(VOC)であり、特にトルエン、キシレン等の芳香族溶剤はPRTR法の指定化学物質及び室内空気中化学物質の指針値策定物質として挙げられている。また、化粧シート製造時における溶剤系塗工剤に含まれるVOCの揮発による作業環境の問題、化粧シート使用時における残存VOCが一般の生活空間に拡散される環境安全性の問題等が指摘されている。そのため、化粧シート中のVOC使用量を低減することが最近の課題となっている。
従って、VOC使用量が低減された化粧シートの開発が望まれている。また、化粧シートが各種耐候剤を含む場合も、耐候剤のブリード(滲出)が抑制された取扱い容易な化粧シートの開発も望まれている。
特開平11−198309号公報
本発明は、VOC使用量が低減された化粧シートを提供することを主な目的とする。さらに、耐候剤を配合する場合でも、耐候剤のブリード抑制効果の高い化粧シートを提供することも目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の化粧シートが上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の化粧シートに係る。
1.基材シートの裏側に絵柄模様層が形成されており、基材シートのおもて側に透明樹脂層が形成されており、被着体と接合される側と反対の最表面が凹凸を有する化粧シートであって、化粧シートを構成する層の少なくとも1種が水性組成物から形成されていることを特徴とする化粧シート。
2.基材シートの裏側に絵柄模様層及び着色隠蔽層が順に形成されている上記項1記載の化粧シート。
3.基材シートが、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂の少なくとも1種からなる上記項1又は2記載の化粧シート。
4.基材シートが、熱可塑性樹脂フィルムを3層積層した構造からなり、中間層が紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤の少なくとも1種を含有し、中間層を挟む両端の2層はそれらを含有しない上記項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
5.透明樹脂層の上に、絵柄模様層に同調した第二絵柄模様層が形成されている上記項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
6.絵柄模様層が木目絵柄模様層であり、第二絵柄模様層が木目導管模様層である上記項5記載の化粧シート。
7.水性組成物が、塩基性中和剤を含む上記項1〜6のいずれかに記載の化粧シート。
8.塩基性中和剤が、第2級アミン、第3級アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びアンモニアの少なくとも1種である上記項7記載の化粧シート。
9.基材シートの片面又は両面が、水性組成物から形成されたプライマー層を有する上記項1〜8のいずれかに記載の化粧シート。
10.化粧シートを構成する層の少なくとも1種が、紫外線吸収剤を含有する上記項1〜9のいずれかに記載の化粧シート。
11.基材シート及び/又は透明樹脂層が、塩基性成分を含む紫外線吸収剤を各層に100〜10000重量ppm含有する上記項10記載の化粧シート。
12.化粧シートを構成する層の少なくとも1種が、ヒンダードアミン系光安定剤を含有する上記項1〜11のいずれかに記載の化粧シート。
13.基材シート及び/又は透明樹脂層が、塩基性成分を含むヒンダードアミン系光安定剤を各層に100〜10000重量ppm含有する上記項12記載の化粧シート。
14.上記項1〜13のいずれかに記載の化粧シートが被着体と接合されてなる化粧板。
本発明の化粧シートは、化粧シートを構成する層の少なくとも1種が水性組成物から形成されているため、化粧シート中のVOC使用量を低減することができる。
基材シートを3層構成として、中間層のみに耐候剤(紫外線吸収剤及び/又はヒンダードアミン系光安定剤)を含有する場合には、特に基材シートからの耐候剤のブリード抑制効果が高く、基材シートの耐候性の経時的安定性も高めることができる。
水性樹脂エマルションからなる層に塩基性成分を含む耐候剤を配合する場合には、耐候剤のブリード抑制効果が高く、取扱い容易な化粧シートとできる。
本発明の化粧シートは、基材シートの裏側に絵柄模様層が形成されており、基材シートのおもて側に透明樹脂層が形成されており、被着体と接合される側と反対の最表面が凹凸を有する化粧シートであって、化粧シートを構成する層の少なくとも1種が水性組成物から形成されていることを特徴とする。
基材シート
基材シートとしては特に限定されず、例えば、紙、不織布、熱可塑性樹脂シート、これらの積層体等を使用することができる。
紙としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、上質紙、リンター紙、バライタ紙、硫酸紙、和紙等が挙げられる。
不織布としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、ビニロン、ガラス等の繊維からなる不織布が挙げられる。
これらの紙及び不織布には、材料強度の強化、表面のケバ立ち抑制等を目的として、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等が添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)されていてもよい。
熱可塑性樹脂シートとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂等のシートが挙げられる。
本発明では、これらの中でも、熱可塑性樹脂シートが好ましく、特にポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂の少なくとも1種からなるシートが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度又は高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等の高結晶質の非エラストマーポリオレフィン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。この中でも、特にオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、下記(1)〜(7)のものが挙げられる。
(1)特公平6−23278号公報記載の、(A)ソフトセグメントとして、数平均分子量Mnが25,000以上、且つ、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mn≦7の沸騰ヘプタンに可溶なアタクチックポリプロピレン10〜90重量%と、(B)ハードセグメントとして、メルトインデックスが0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性のアイソタクチックポリプロピレン90〜10重量%、との混合物からなる軟質ポリプロピレン。
このオレフィン系熱可塑性エラストマーの中でも、特に「ネッキング」が生じ難く、加熱及び加圧による形成、エンボス加工等に適したものとして、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとの混合物であって、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとの混合割合が、アタクチックポリプロピレンの重量比で5重量%以上50重量%以下のものがある。
(2)エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂からなる熱可塑性エラストマー。このエラストマーにおいて、ブテンとしては、1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレンから選ばれる3種の構造異性体のいずれを用いてもよい。エチレン−プロピレン−ブテン共重合体の好ましい具体例としては、次の(i)〜(iii)が挙げられる。
(i)特開平9−111055号公報記載のもの。これは、エチレン、プロピレン及びブテンの三元共重合体によるランダム共重合体である。単量体成分の重量比はプロピレンが90重量%以上である。メルトフローレートは、230℃、2.16kgで1〜50g/10分のものが好適である。そして、このような三元ランダム共重合体100重量部に対して、燐酸アリールエステル化合物を主成分とする透明造核剤を0.01〜50重量部、炭素数12〜22の脂肪酸アミド0.003〜0.3重量部を、熔融混練することにより得られる。
(ii)特開平5−77371号公報記載のもの。これは、エチレン、プロピレン、1−ブテンの三元共重合体であって、プロピレン成分含有率が50重量%以上の非晶質重合体20〜100重量%に、結晶質ポリプロピレン80〜0重量%添加することにより得られる。
(iii)特開平7−316358号公報記載のもの。これは、エチレン、プロピレン、1−ブテンの三元共重合体であって、プロピレン及び/又は1−ブテン含有率が50重量%以上の低結晶質重合体20〜100重量%に対して、アイソタクチックポリプロピレン等の結晶質ポリオレフィン80〜0重量%を混合した組成物に対して、N−アシルアミノ酸アミン塩、N−アシルアミノ酸エステル等の油ゲル化剤を0.5重量%添加することにより得られる。
なお、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂は、単独で使用してもよく、或いは、上記した(i)〜(iii)に他のポリオレフィン系樹脂を混合して用いてもよい。
(3)特公昭53−21021号公報記載の、(A)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン重合体(結晶性高分子)をハードセグメントとし、これに(B)部分架橋したエチレン−プロピレン共重合体ゴム、不飽和エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体ゴム等のモノオレフィン共重合体ゴムをソフトセグメントとし、これらを均一に配合し混合してなるオレフィン系エラストマー。モノオレフィンゴム/オレフィン重合体=50/50〜90/10(重量比)の割合が好ましい。
(4)特公昭53−34210号公報等に記載の、(B)未架橋モノオレフィン共重合体ゴム(ソフトセグメント)と、(A)オレフィン系共重合体(結晶性、ハードセグメント)と架橋剤とを混合し、加熱し剪断応力を加えつつ動的に部分架橋させてなるオレフィン系エラストマー。なお、(B)モノオレフィンゴム/(A)オレフィン系共重合体=60/40〜80/20(重量比)の割合が好ましい。
(5)特公昭56−15741号公報等に記載の、(A)アイソタクチックポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体等のペルオキシドと混合・加熱すると分子量を減じ、流動性を増すペルオキシド分解型オレフィン重合体(ハードセグメント)と、(B)エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体ゴム等のペルオキシドと混合・加熱することにより、架橋して流動性が減じるペルオキシド架橋型モノオレフィン共重合体ゴム(ソフトセグメント)、(C)ポリイソブチレン、ブチルゴム等のペルオキシドと混合・加熱しても架橋せず、流動性が不変の、ペルオキシド非架橋型炭化水素ゴム(ソフトセグメント兼流動性改質成分)、及び(D)パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油系軟化剤、とを混合後、有機ペルオキシドの存在下で動的に熱処理して得られるオレフィン系エラストマー。なお、(A)が90〜40重量部、(B)が10〜60重量部で、(A)+(B)=100重量部として、これに、(C)及び/又は(D)5〜100重量部を配合することが好ましい。
(6)特開平2−139232号公報に記載の、エチレン−スチレン−ブチレン共重合体からなるオレフィン系熱可塑性エラストマー。
(7)極性基として水酸基又は/及びカルボキシル基を持たせた、上記(1)〜(6)のオレフィン系熱可塑性エラストマー。例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のグラフト重合で水酸基を導入したもの、或いは、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の共重合体でカルボキシル基を導入したオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
これら水酸基、カルボキシル基はどちらか一方又は両方を併用してもよく、これら極性基は、基材シートと隣接する層との接着性を高める作用を有する。
ポリオレフィン系樹脂は、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等の成膜方法によって基材シートに形成できる。なお、ポリオレフィン系樹脂からなる基材シートは、延伸シート、未延伸シートのいずれでも使用可能であるが、Vカット加工、真空成形、射出成形同時ラミネート等に適用する場合には、未延伸シートの方が良好である。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリアリレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂も、上記したポリオレフィン系樹脂の成膜方法と同様にして、基材シートに成形できる。
基材シートの厚みは特に限定されず、製品特性に応じて設定できるが、通常20〜300μm、好ましくは40〜200μm程度である。
基材シートには、各種添加剤が添加されていてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の無機粉末からなる充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、発泡剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。
紫外線吸収剤及び光安定剤としては、分子中に塩基性成分を含む紫外線吸収剤(UVA)及び分子中に塩基性成分を含むヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等が好ましい。特に両者を併用する場合には、基材シートの耐候性を相乗的に高めることができる。
紫外線吸収剤又は光安定剤の添加量は特に限定されないが、通常は基材シート中に100〜10000重量ppm程度、好ましくは500〜7500重量ppm程度である。
なお、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤の少なくとも1種を含有させる場合には、次のような態様とすることが好ましい。即ち、基材シートが、熱可塑性樹脂フィルムを3層積層した構造とし、中間層が紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤の少なくとも1種を含有し、中間層を挟む両端の2層はそれらを含有しない態様とすることが好ましい。この場合も、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂の少なくとも1種が好ましい。かかる構成を採用することにより、基材シートからの紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤のブリード抑制効果が高まるとともに、基材シートの耐候性の経時的安定性が高まる。
基材シートには、基材シートの裏側に形成される絵柄模様層の視認性に影響を与えない範囲において、着色剤が添加されていてもよい。
着色剤としては、顔料、染料等の公知の着色剤を使用できる。例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む);アルミニウム、真鍮等の金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料などが挙げられる。
上記した添加剤、着色剤等の含有量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
なお、基材シートの片面又は両面には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。プライマー層を形成することにより、基材シートに耐候剤が含まれる場合にはそのブリードを防止することができるとともに、隣接層との層間密着力を高めることができる。
プライマー層は、公知のプライマー剤を基材シートの片面又は両面に塗布又は塗工することにより形成できる。プライマー剤としては、有機溶剤を含まない水性組成物、特に水性樹脂エマルションが好ましい。例えば、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系水性プライマー剤が挙げられる。具体的には、トリイソプロパノールアミンを中和剤として用いた水性ウレタン樹脂エマルションが挙げられる。
プライマー剤の塗布又は塗工量は特に限定されないが、通常0.1〜100g/m2、好ましくは0.1〜50g/m2程度である。
プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.01〜10μm、好ましくは0.1〜1μm程度である。
基材シートの片面又は両面には、必要に応じて、コロナ処理等の各種表面処理を施してもよい。これらの表面処理の方法は、常法に従って行えばよい。
絵柄模様層
基材シートの裏側(被着体と接合される側)には、絵柄模様層が形成される。
絵柄模様層は、基材シートの裏面に着色インキを塗工又は印刷後、乾燥硬化することにより形成できる。塗工方法としては、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等が挙げられる。印刷方法としては、例えば、グラビア、活版、フレキソ等の凸版印刷、平版オフセット、ダイリソ印刷等の平版印刷、シルクスクリーン等の孔版印刷、静電印刷、インキジェットプリント等が挙げられる。
着色インキとしては特に限定されず、公知のものを使用できるが、水性組成物、特に水性樹脂エマルションが好ましい。このような水性組成物を用いることにより、化粧シート中のVOC使用量を低減することができる。
水性組成物としては、水性樹脂エマルションインキが好ましく、例えば、水性ウレタン樹脂系インキ、水性ポリエステル樹脂系インキ、水性アクリル樹脂系インキ、セルロース樹脂系インキ、セラック樹脂系インキ、カゼイン樹脂系インキ、これらの混合系インキ、これらに架橋成分を導入したもの等が挙げられる。
架橋成分を導入した水性インキには、例えば、アミノ基を有する水性化合物を主剤とし、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する水性化合物を架橋剤として含有する水性インキ、活性水素基を有する水性化合物を主剤とし、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する水性化合物を架橋剤として含有する水性インキ、カルボキシル基を有する水性化合物を主剤とし、1分子中に2個以上のカルボジイミド基を有する水性化合物を架橋剤として含有する水性インキ等が挙げられる。
本発明では、水性組成物のうち、樹脂エマルションからなる水性組成物の場合には、塩基性中和剤を含むことが好ましい。塩基性中和剤としては、樹脂中のカルボキシル基等を中和により親水化して水に分散(乳化)できるものであればよく、例えば、第2級アミン、第3級アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が好ましいものとして挙げられる。具体例を挙げると、ニトロセルロース系水性樹脂エマルション(インキ)には、第2級アミン(例えば、ジエタノールアミン)を中和剤として用いることができる。
水性組成物には、着色顔料として、有機又は無機系の顔料を添加できる。例えば、黄色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料;黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン黄等の無機顔料などが挙げられる。赤色顔料としては、例えば、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料、べんがら、朱、カドミウムレッド、クロムバーミリオン等の無機顔料などが挙げられる。青色顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の有機顔料、紺青、群青、コバルトブルー等の無機顔料などが挙げられる。黒色顔料としては、例えば、アニリンブラック等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料などが挙げられる。白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の無機顔料などが挙げられる。着色顔料の中には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等が添加されていてもよい。
絵柄模様層の模様は特に限定されず、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。本明細書では、絵柄模様層の模様として木目模様を採用した具体例について後記する。
絵柄模様層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚が1〜15μm程度、乾燥後の層厚が0.1〜10μm程度であればよい。
着色隠蔽層
本発明の化粧シートでは、基材シートの裏側に絵柄模様層を形成後、さらに着色隠蔽層を形成してもよい。着色隠蔽層は、化粧シートと被着体とを接合した際に被着体の地色を隠蔽できればよく、通常は絵柄模様層を被覆するように形成すればよい。
着色隠蔽層を形成するための着色インキとしては、絵柄模様層の形成に用いられる着色インキがそのまま使用できるが、用途によっては着色を透明着色としてもよい。着色インキとしては、水性組成物、特に水性樹脂エマルションが好ましい。
着色隠蔽層の形成方法は特に限定されず、塗工法としては、例えば、グラビアコート、ロールコート、リバースコート、ドクターコート等の従来公知の各種塗工手段が利用できる。塗布量は、通常、乾燥硬化時に2〜30g/m2の範囲が望ましい。少なすぎると隠蔽力が低下する。また、多すぎても隠蔽力は飽和して意味がない。着色隠蔽層の厚みは、通常0.1〜20μm、好ましくは1〜10μm程度である。
透明樹脂層
基材シートのおもて側には、透明樹脂層が形成される。
透明樹脂層は、公知の透明インキを、基材シートの表面に塗布又は塗工することにより形成できる。透明インキとしては特に限定されないが、水性組成物、特に水性樹脂エマルションが好ましい。
水性組成物としては、1液性のものでも2液型のものでもよいが、2液型のものが好ましい。特に水性ポリエステル樹脂を含むものが好ましい。2液型の水性ポリエステルを含有する水性組成物としては、水性ポリエステル樹脂と水性ポリエステル樹脂と反応性を有する水性架橋剤とを、水又は水とアルコールとからなる混合溶媒に溶解又は均一に分散させて調製したものが挙げられる。
水性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸類と多価アルコール類との縮合により得られる。多価カルボン酸類としては、ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタルレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸などの芳香族オキシカルボン酸、フェニレンジアクリル酸等の芳香族不飽和多価カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、脂肪族不飽和多価カルボン酸、及び、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。また、多価カルボン酸としては、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の三価以上の多価カルボン酸等が挙げられる。
多価アルコール類としては、脂肪族多価アルコール類、脂環族多価アルコール類、芳香族多価アルコール類等が挙げられる。脂肪族多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチロ−ルヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族ジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエルスリトール等のトリオール及びテトラオール類などが挙げられる。
脂環族多価アルコール類としては、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール等を例示できる。芳香族多価アルコール類としては、パラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4−フェニレングリコール、1,4−フェニレングリコールのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、ε−カプロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるラクトン系ポリエステルポリオール類等が挙げられる。また、ポリエステル高分子末端の極性基を封鎖する目的で、単官能単量体がポリエステルに導入される場合がある。
単官能単量体としては、安息香酸、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸、スルホ安息香酸モノアンモニウム塩、スルホ安息香酸モノナトリウム塩、シクロヘキシルアミノカルボニル安息香酸、n−ドデシルアミノカルボニル安息香酸、ターシャルブチル安息香酸、ナフタレンカルボン酸、4−メチル安息香酸、3メチル安息香酸、サリチル酸、チオサリチル酸、フェニル酢酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、オクタンカルボン酸、ラウリル酸、ステアリル酸、及びこれらの低級アルキルエステル、等のモノカルボン酸類、或いは脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂環族アルコ−ル等のモノアルコールが挙げられる。
水性ポリエステル樹脂は、イオン性基を含有することが好ましい。かかるイオン性基は、ポリエステル樹脂に水分散性を付与するものである。ポリエステルに導入されるイオン性基としては、スルホン酸アルカリ金属塩基、スルホン酸アンモニウム塩基、カルボン酸アルカリ金属塩基、カルボン酸アンモニウム塩基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、又はそれらのアンモニウム塩、アルカリ金属塩等のアニオン性基、又は第1級ないし第第3級アミン基等のカチオン性基などを用いることができる。スルホン酸アルカリ金属塩基又はスルホン酸アンモニウム塩基をポリエステルに導入するためには、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7ジカルボン酸、5〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸、メタスルホ安息香酸等、スルホン酸基を有するモノないし多価カルボン酸類のアルカリ金属塩、アンモニウム塩などをポリエステルに共重合すればよい。カルボン酸アルカリ金属塩基或いはカルボン酸アンモニウム塩基を導入する場合には、ポリエステルの重合末期にトリメリット酸等の多価カルボン酸を系内に導入することにより高分子末端にカルボキシル基を付加し、さらにこれをアンモニア、第2級アミン、第3級アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性中和剤を用いて中和してカルボン酸塩の基(親水基)に交換する方法が挙げられる。かかる塩基性中和剤を用いる場合には、水性組成物は、水性樹脂エマルションの状態で使用される。
架橋剤としては、水性イソシアネート基含有化合物、水性エポキシ基含有化合物、水性カルボジイミド基含有化合物、水性オキサゾリン基含有化合物、水性シラノール基含有化合物等が挙げられるが、水性イソシアネート基含有化合物がより好ましい。
水性イソシアネート基含有化合物としては、水又は水とアルコール等とからなる混合溶媒に溶解又は均一に分散する水分散性のものであれば特に限定されないが、事実上効果的な水性イソシアネート基含有化合物としては、多価イソシアネートを親水性処理したのものが好ましく用いられる。親水性処理される多価イソシアネート化合物としては、例えば、ジイソシアネート化合物と活性水素基含有化合物との反応による末端イソシアネート基含有化合物、或いはジイソシアネート化合物の反応による末端イソシアネート基含有化合物等にさらに親水性 基を導入した化合物を挙げることができる。ジイソシアネート化合物と活性水素基含有化合物との反応による末端イソシアネート基含有化合物、或いはジイソシアネート化合物の反応による末端イソシアネート基含有化合物等の例としては、ウレタン構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ウレア構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ウレトジオン構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、イソシアヌレート構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、カルボジイミド構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ウレトンイミン構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ビウレット構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、アロファネート構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物及びこれらの混合物等が挙げることができ、特に、イソシアヌレート構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物及びビウレット構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物が好ましい。
ジイソシアネート化合物の例としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等及びこれらの異性体からなる芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート及びこれらの混合物等が挙げることができ、特に脂肪族、脂環式及びこれらの混合物が好ましい。
透明樹脂層の厚みは特に限定されないが、通常0.01〜20μm、好ましくは0.1〜10μm程度である。
最表面の凹凸形成方法
本発明の化粧シートは、被着体と接合される側と反対の最表面が凹凸を有する。凹凸の種類に応じて、基材シートのおもて側に形成される透明樹脂層等の形成態様には、以下のような態様がある。以下では、具体例として、絵柄模様が木目模様である木目化粧シートを用いて説明する。
〔撥液絵柄層を形成して凹凸を形成する態様〕
この態様は、透明樹脂層を形成後、その上に撥液性(トップコート層形成用インキをはじく性質)を有する第二絵柄模様層を形成し、さらに第二絵柄模様層の上からトップコート層を形成し、当該撥液作用により、化粧シートの最表面に凹凸を形成するものである。第二絵柄模様層としては、基材シートの裏側に形成される絵柄模様層と同調するように形成することが好ましい。第二絵柄模様層が絵柄模様層に同調するとは、絵柄模様と第二絵柄模様とが相乗的に作用して、所望の意匠性を発揮するように両層を配置することを意味する。例えば、絵柄模様が木目模様であれば、第二絵柄模様としては、木目模様に同調する木目導管模様とすることができる。
(第二絵柄模様層)
第二絵柄模様層は、トップコート層形成用インキをはじかせるために、撥液剤を含む着色インキを用いて形成する。撥液剤としては、トップコート層形成用インキをはじくものであれば特に限定されないが、例えば、シリコーン、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、アマイドワックス、蝋ワックス、フッ化ビニル化合物等の撥液性物質の中から選択すればよい。
第二絵柄模様が、例えば、木目導管模様の場合には、導管模様部分が凹部であるように強く感じさせるために、着色インキとしては、トップコート層形成用インキよりも艶消し度の高いインキが好ましい。また、天然木の導管模様の色調に近づけるようにするために、カーボンブラック等の着色顔料を添加したインキが好ましい。また、着色インキとしては、撥液剤を第二絵柄模様層の表面に浮き上がらせてはじき性を高めるために、硬化が速い熱硬化型の印刷インキが好ましい。さらに、耐溶剤性、耐汚染性、耐油性等の優れた化学的性質を具備するものであればより好ましい。
このような着色インキは、有機溶剤を含まない水性組成物、特に水性樹脂エマルションであることが好ましい。樹脂としては、例えば、アミノアルキッド系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等の硬化性樹脂が挙げられる。その中でも、特に尿素樹脂又はメラミン樹脂の初期生成物に変性アルキッド樹脂を加えた尿素アルキッド樹脂、メラミンアルキッド樹脂等のアミノアルキッド樹脂が好ましい。特に、木目導管模様として、塗膜層に柔軟性を与えることも考慮すれば、アミノ樹脂に対するアルキッド樹脂の混合比率を、アミノ樹脂100重量部に対して、アルキッド樹脂100〜200重量部を添加したものが好ましい。また、撥液剤の含有量は特に限定されないが、通常は着色インキ中に4〜10重量%とするのが好ましい。
第二絵柄模様層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚が1〜15μm程度、乾燥後の層厚が0.1〜10μm程度であればよい。
(トップコート層)
トップコート層は、通常は透明樹脂層である。トップコート層は、トップコート層を形成する樹脂ワニスの表面張力の値が、撥液物質を含んだ第二絵柄模様層の臨界表面張力の値より大きくなるものを使用すればよく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等からなる通常の樹脂ワニスを用途に応じて使用できる。ここで、常温又は熱硬化性樹脂としては、エポキシ化合物とアミン系硬化剤とからなるエポキシ樹脂、ポリオール化合物とイソシアネート化合物とからなるウレタン系樹脂が使用できる。これらの樹脂は、水性組成物、特に水性樹脂エマルションの状態で用いることが好ましい。水性樹脂エマルションは、塩基性中和剤(特に第2級アミン、第3級アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びアンモニアの少なくとも1種)を含むことが好ましい。具体的には、水酸化ナトリウムを中和剤とするポリエステルポリオール系樹脂のエマルションから形成することが好ましい。
トップコート層には、必要に応じて、シリカ、プラスチックビーズ等の無機及び/又は有機系の微粒子を艶消し剤、表面強化剤等として添加してもよい。
トップコート層の厚みは特に限定されないが、通常は20〜300μm程度となるように15〜400g/m2程度の塗布量で塗工すればよい。
〔第二絵柄模様層の形成により凹凸を付与する態様〕
この態様は、透明樹脂層を形成後、その上に第二絵柄模様層を形成し、化粧シートの最表面に凹凸を形成するものである。例えば、絵柄模様が木目模様である木目化粧シートの場合には、第二絵柄模様として木目導管模様を形成して凹凸を形成すればよい。
第二絵柄模様層を形成するための着色インキとしては、絵柄模様層の形成に使用する着色インキをはじめ、前記した撥液剤を含む着色インキから撥液剤を除いたものを使用できる。第二絵柄模様層の形成方法は、絵柄模様層の形成方法に従えばよい。
なお、第二絵柄模様層を、盛上印刷の手法により形成して、化粧シートの最表面に凹凸を形成してもよい。盛上印刷は、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷等により行うことができる。グラビア印刷の場合のインキ粘度は、通常500〜4000cps(20℃における粘度。以下同じ。)にすればよい。シルクスクリーン印刷の場合のインキ粘度は、通常2000〜10000cpsにすればよい。
〔機械的に凹凸を形成する態様〕
この方法は、透明樹脂層を形成後、透明樹脂層の表面にヘアライン加工、サンドブラスト加工、エンボス加工等を施すことにより、化粧シートの最表面に凹凸を形成するものである。用途によっては、透明樹脂層の全面又は一部に前記した第二絵柄模様層を形成後、その上からヘアライン加工、サンドブラスト加工、エンボス加工等を施してもよい。
エンボス加工は、熱プレス方式の枚葉又は輪転式エンボス機を用いて、加熱軟化された被処理物表面にエンボス版を押圧し、該エンボス版表面の形状を賦形することにより凹陥模様を形成する。凹陥模様としては、木目導管 溝、木目木肌、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布帛の表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等を表現したもの、又はそれらを組み合わせたものが挙げられる。
〔樹脂浸透作用により凹凸を形成する態様〕
この方法は、透明樹脂層の上に樹脂吸収性(トップコート層の樹脂を吸収する性質)を有する第二絵柄模様層を形成し、さらに第二絵柄模様層の上からトップコート層を形成し、当該樹脂吸収作用により、化粧シートの最表面に凹凸を形成するものである。
第二絵柄模様層を形成するための着色インキと、トップコート層を形成するための樹脂インキとの関係は、前者が後者の樹脂を吸収する性質を有するものであれば特に限定されないが、例えば、後者の樹脂インキとしては、表面張力の大きな40dyne/cm(20℃での表面張力を示す。以下同じ。)以上のインキを使用することが好ましい。このように、表面張力の大きなインキを用いることにより、第二絵柄模様層にトップコート樹脂が浸透しやすくなる。インキとしては、水性組成物、特に水性樹脂エマルションが好ましい。以下、具体例を示して説明する。
第二絵柄模様層は、例えば、汎用のポリエステル系樹脂とウレタン系樹脂をバインダーとする着色インキによって形成すればよい。このポリエステル系とウレタン系樹脂を使用することにより、界面張力が50dyne/cm以上の第二絵柄模様層(例えば、木目導管模様層)が得られる。木目導管模様層の場合には、導管部分の艶の低下が意匠性を高めることにつながるため、艶消し効果を高めるに、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の汎用の体質顔料を添加することも好ましい。また、充分なグロス/マット効果を得るためには、木目導管模様層の層厚は、トップコート層の層厚を超えない範囲において厚くすることが好ましい。
次いで、トップコート層は、例えば、40dyne/cm以上の表面張力を有する樹脂インキにより形成すればよい。2液熱硬化型コート材も使用できるが、第二絵柄模様層に浸透し易いものを使用する必要があるため、粘度が低く、チキソトロピー性が小さく、表面張力が高いものが好ましい。
トップコート層の表面の耐磨耗性を向上させるためには、平均粒径が1μm以上のα−アルミナやシリカを添加してもよい。また、艶を抑えるために、親水処理を施したシリカ、炭酸カルシウム等を樹脂重量の20%を越えない範囲において添加することが好ましい。表面の滑り性(手触り感)の向上、セロテープ剥離性等を付与するためには、シリコーン、フッソ等のスリップ剤を添加してもよい。但し、トップコート樹脂と相容性のあるスリップ剤はトップコート層の表面の界面張力を下げやすく、またワックスの添加はチキソトロピー性を高めるので、浸透性に不利に作用する。従って、スリップ剤は、トップコート樹脂と相容性のないものを選ぶことが好ましい。
このように、樹脂吸収性(トップコート層の樹脂を吸収する性質)を有する第二絵柄模様層を形成し、さらに第二絵柄模様層の上からトップコート層を形成することにより、第二絵柄模様層と接触する部分のトップコート樹脂が吸収されて、凹凸形状が形成される。
耐候剤
本発明の化粧シートを構成する層の少なくとも1種には、必要に応じて、耐候剤を添加してもよい。耐候剤としては、例えば、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤の少なくとも1種を好適に用いることができる。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、特に塩基性成分(特にヒドロキシル基)を有するものが好ましい。例えば、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−アミル−5’−イソブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−プロピルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の、2’−ヒドロキシフェニル−5−クロロベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤類、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等の、2’−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤類等の、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等の、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等の、2ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニル、4−tert−ブチル−フェニル−サリシレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤が用いられる。その他に、ベンゾトリアゾール骨格にアクリロイル基又はメタクリロイル基を導入した反応性紫外線吸収剤等も用いられる。なお、これら紫外線吸収剤の添加量は、樹脂分に対して、通常0.1〜5質量%程度である。
このような紫外線吸収剤を添加することにより、各層の耐候性を高められる。また、塩基性成分を含む紫外線吸収剤を用いる場合には、各層を形成するのに使用できる樹脂エマルションに含まれる樹脂骨格(カルボキシル基)と相互作用して、紫外線吸収剤のブリードを抑止する効果も得られる。例えば、分子中に水酸基を有する紫外線吸収剤を基材シートに添加し、隣接層を構成する樹脂成分としてイソシアネート基を有するウレタン樹脂等を用いる場合には、紫外線吸収剤が基材シートからブリードして隣接層に染み込んでも、水酸基とイソシアネート基とがウレタン結合することにより捕捉できる。
紫外線吸収剤の含有量は特に限定されないが、各層に100〜10000重量ppm程度、好ましくは500〜7500重量ppm程度である。添加する層としては、基材シート及び透明樹脂層の少なくとも1種が好ましい。
(ヒンダードアミン系光安定剤)
紫外線による各層の劣化をさらに防止し、耐候性を向上させるためには、他の耐候剤としてヒンダードアミン系光安定剤を添加することが好ましい。例えば、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、その他、例えば特公平4−82625号公報に開示されている化合物等が挙げられる。これらの光安定剤の添加量は特に限定されないが、通常、樹脂分に対して0.1〜5重量%程度である。
なお、ヒンダードアミン系光安定剤を添加する場合には、基材シートをはじめ、化粧シートを構成する層中に塩素原子を含む樹脂を用いないことが耐候性向上の点から好ましい。例えば、バインダー樹脂に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリオレフィン等の分子中に塩素原子を含む樹脂を用いると、紫外線又は熱の作用によりこれら塩素含有樹脂から脱塩素反応で塩化水素が発生した場合に、これがヒンダードアミン系光安定剤と反応してその作用を失活・阻害するため、該捕捉剤による耐候性向上効果が十分に発揮されないおそれがあるからである。
塩基性成分を含むヒンダードアミン系光安定剤を含める場合には、各層を形成し得る樹脂エマルションに含まれる樹脂骨格(カルボキシル基)と相互作用して、紫外線吸収剤のブリードを抑止する効果も得られる。
ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は特に限定されないが、各層に100〜10000重量ppm程度、好ましくは500〜7500重量ppm程度である。添加する層としては、基材シート及び透明樹脂層の少なくとも1種が好ましい。
化粧板
本発明の化粧シートは、各種被着体と接合することにより、化粧板とできる。被着体の材質は特に限定されず、例えば、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等の材質が挙げられる。
具体的には、無機非金属系では、例えば、抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(硝子繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、硅酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス等が挙げられる。
金属系では、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料が挙げられる。
木質系では、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等が挙げられる。
プラスチック系では、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
このような被着体の形状は特に限定されず、例えば、平板、曲面板、多角柱等の形状を任意に採用できる。
得られた化粧板は、例えば、壁、天井等の建築物内装材、扉、扉枠、窓枠等の建具の表面材、回縁、幅木等の造作部材の表面材、箪笥、キャビネット等の家具の表面材等として使用できる。
なお、化粧シートと被着体との密着性を高めるために、化粧シートと被着体との間にプライマー層を設けてもよい。プライマー層は、公知のプライマー剤を被着体の表面に塗布又は塗工することにより形成できる。
プライマー剤としては、有機溶剤を含まない水性組成物、特に水性樹脂エマルションが好ましい。例えば、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系水性プライマー剤が挙げられる。また、トリイソプロパノールアミンを中和剤とした2液硬化型ポリエステルポリオール−セルロース系樹脂からなるプライマー剤、水酸化ナトリウムを中和剤としたポリエステルポリオール系樹脂からなるプライマー剤等も好適なものとして挙げられる。
プライマー剤の塗布又は塗工量は特に限定されないが、通常0.1〜200g/m2、好ましくは1〜100g/m2程度である。
プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.01〜50μm、好ましくは0.1〜10μm程度である。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
実施例1
図1に示す構成からなる化粧シートを作製した。
プロピレンを主成分とし、これに分子中に水酸基を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を5000重量ppm添加したもの(100μm厚の無色透明シート)を基材シートとした。基材シートの表裏両面にはコロナ放電処理を施して、表裏各面の表面張力が48dyne/cm以上となるように活性水素含有基を形成後、その裏面側にトリイソプロパノールアミンを中和剤とするエマルションによりウレタン系の裏面プライマー層0.5μmを設けた。その上から水酸化ナトリウムを中和剤とするエマルションによりポリエーテルウレタン系絵柄印刷層(絵柄模様層)0.5μmを設けた後、2液硬化型ポリエステルウレタン系樹脂に硫酸バリウムとシリカを添加した隠蔽インクにより着色隠蔽層5μm及びトリイソプロパノールアミンを中和剤とするエマルションによりウレタン系の被着体用プライマー層0.5μmを順次形成して装飾処理を施した。
次いで、赤外線非接触方式のヒーターにより基材シートのおもて面を加熱して柔らかくした後、直ちに基材シートのおもて面から熱圧によりエンボス加工を行い、木目導管模様の凹凸模様を賦形した。エンボス加工を行った基材シートおもて面にコロナ処理を施した後、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が添加されている水酸化ナトリウムを中和剤とするアクリルウレタン系2液硬化型のインクにより水性樹脂層(透明樹脂層)4μmをエンボスの凹凸に沿って形成した。各層の形成には、グラビア印刷を利用した。
作製した化粧シートを120℃で10分間熱をかけ、残留溶剤を追い出し、ガスクロマトグラフィーにかけたところ、40mg/m2であった。
得られた化粧シートをサンシャインウェザーメーター(スガ試験機製)により1000時間及びメタルウェザーメーター(ダイプラ・ウインテス製)により100時間、耐候試験を行った。その結果、どちらの耐候試験によっても化粧シートの外観変化は認められなかった。またセロテープを密着し、急激に上方へ剥離する試験(セロテープ密着試験)を行ったところ、透明樹脂層の剥離は認められなかった。
実施例2
図2に示す構成からなる化粧シートを作製した。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)に対して、ヒンダードアミン系光安定剤5000重量ppm配合したものを中間層にし、光安定剤を含まない2層により中間層を挟み込むように、Tダイから2種3層(22μm/44μm/22μm)により溶融押出しして、88μm厚の透明樹脂シート(基材シート)を作製した。基材シートの両面にはコロナ処理を施した。
次いで、基材シートの裏面に、トリイソプロパノールアミンを中和剤とした2液硬化型ウレタン系樹脂からなる裏面プライマー層0.5μmを形成後、その上にアクリルウレタン系樹脂からなる絵柄インクにより絵柄模様層0.5μmと、2液硬化型ポリエステルウレタン系樹脂に硫酸バリウムとシリカを添加した隠蔽インクからなる着色隠蔽層5μmとを順次、グラビア印刷により形成した。着色隠蔽層の上には、トリイソプロパノールアミンを中和剤とするエマルションによりウレタン系の被着体用プライマー層0.5μmを形成した。基材シートのおもて面には、水酸化ナトリウムを中和剤としたアクリル樹脂エマルションのマットインキにより透明樹脂層4μm形成し、その上にトリイソプロパノールアミンを中和剤としたアクリル樹脂エマルションにより木目導管模様(第二絵柄模様層)0.5μmを形成し、化粧シートを得た。
得られた化粧シートをサンシャインウェザーメーター(スガ試験機製)により1000時間及びメタルウェザーメーター(ダイプラ・ウインテス製)により100時間、耐候試験を行った。その結果、どちらの耐候試験によっても化粧シートの外観変化は認められなかった。またセロテープを密着し、急激に上方へ剥離する試験(セロテープ密着試験)を行ったところ、表面層(透明樹脂層又は第二絵柄模様層)の剥離は認められなかった。
比較例1及び2
実施例1及び2において、透明樹脂層を形成しない以外は、各実施例と同様にしてそれぞれ化粧シートを作製した。
(試験例1)
実施例1及び2並びに比較例1及び2で作製した各化粧シートに対して耐候性試験を行った。耐候性試験の評価は、カーボンアーク燈型サンシャインウェザーメーターを用いて、ブラックパネル温度63℃、降雨時間120分中18分の条件下で、1000時間照射した後に行った。
各化粧シートについて、試験後の表面層の変色、亀裂、剥離等の外観変化を目視により観察した。
その結果、透明樹脂層を設けない比較例1及び2の化粧シートは、外観変化として化粧シートの最表面に紫外線吸収剤の滲出に起因する白化が認められた。一方、実施例1及び2の化粧シートでは、透明樹脂層に紫外線吸収剤の滲出に起因する白化は認められず、基材シートからの表面層の剥離、脱落、亀裂等がともになく、耐候性は良好であった。
比較例3及び4
実施例1及び2において、カルボキシル基を含まない溶剤系のウレタン樹脂をバインダーとする裏面プライマー層、絵柄模様層、着色隠蔽層、透明樹脂層を形成した。実施例1に対応するものを比較例3とし、実施例2に対応するものを比較例4とする。
(試験例2)
比較例3及び4で得られた2種類の化粧シートについて、試験例1と同様に、耐候性試験を行った。その結果、おもて裏両面に耐候剤の滲出に起因する白化が認められた。
実施例1で作製した化粧シートの概念図である。 実施例2で作製した化粧シートの概念図である。

Claims (13)

  1. 基材シートの裏側にプライマー層及び絵柄模様層が順に形成されており、基材シートのおもて側に透明樹脂層が形成されており、被着体と接合される側と反対の最表面が凹凸を有する化粧シートであって、
    前記基材シートが、熱可塑性樹脂フィルムを3層積層した構造からなり、中間層がヒンダードアミン系光安定剤及びヒドロキシル基を有する紫外線吸収剤の少なくとも1種を含有し、中間層を挟む両端の2層はそれらを含有しないものであって、
    前記透明樹脂層が、アクリル樹脂エマルション及び塩基性中和剤から形成されており、
    前記プライマー層が、2液硬化型ウレタン系樹脂及びトリイソプロパノールアミンから形成されており、
    前記塩基性中和剤が、アンモニア、第2級アミン、第3級アミン、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、
    ことを特徴とする化粧シート。
  2. 透明樹脂層がヒンダードアミン系光安定剤及び/又はヒドロキシル基を有する紫外線吸収剤を含む、請求項1に記載の化粧シート。
  3. 基材シートの裏側にプライマー層、絵柄模様層及び着色隠蔽層が順に形成されている請求項1又は2に記載の化粧シート。
  4. 基材シートが、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂の少なくとも1種からなる請求項1〜のいずれかに記載の化粧シート。
  5. 透明樹脂層の上に、絵柄模様層に同調した第二絵柄模様層が形成されている請求項1〜のいずれかに記載の化粧シート。
  6. 絵柄模様層が木目絵柄模様層であり、第二絵柄模様層が木目導管模様層である請求項記載の化粧シート。
  7. 絵柄模様層、着色隠蔽層及び第二絵柄模様層からなる群から選ばれる少なくとも1種の層が水性組成物から形成されており、
    前記水性組成物が、塩基性中和剤を含む請求項1〜のいずれかに記載の化粧シート。
  8. 塩基性中和剤が、第2級アミン、第3級アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びアンモニアの少なくとも1種である請求項記載の化粧シート。
  9. 化粧シートを構成する層の少なくとも1種が、紫外線吸収剤を含有する請求項1〜のいずれかに記載の化粧シート。
  10. 基材シート及び/又は透明樹脂層が、ヒドロキシル基を有する紫外線吸収剤を各層に100〜10000重量ppm含有する請求項記載の化粧シート。
  11. 化粧シートを構成する層の少なくとも1種が、ヒンダードアミン系光安定剤を含有する請求項1〜1のいずれかに記載の化粧シート。
  12. 基材シート及び/又は透明樹脂層が、ヒンダードアミン系光安定剤を各層に100〜10000重量ppm含有する請求項1記載の化粧シート。
  13. 請求項1〜1のいずれかに記載の化粧シートが被着体と接合されてなる化粧板。
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