[第1の実施の形態]
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下に記載する実施の形態は、本発明の具体的な一例に過ぎず、本発明は、これらによって限定されるものではない。
(電子写真感光体)
まず、本発明の電子写真感光体について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る電子写真感光体の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示す電子写真感光体(以下、単に「感光体」と言う。)1は、円筒状の導電性基体11と、導電性基体11上に、当該導電性基体11の表面に近い順に設けられた下引き層15及び感光層14とを有している。また、感光層14は、下引き層15側に設けられた電荷発生層(CGL)12と、電荷発生層12の下引き層15と反対側に設けられた電荷輸送層(表面層)13とを備えている。即ち、本実施の形態の感光層14は、電荷発生層12と電荷輸送層13とで構成された積層型感光層である。
(導電性基体)
導電性基体11は、導電性支持体とも称され、感光体1の電極としての役割を果たす。また、導電性基体11は、その上に配置される層、即ち下引き層15及び感光層14の支持部材としても機能する。なお、導電性基体11の形状は、本実施の形態では、円筒状であるが、これに限定されず、例えば、円柱状、シート状、無端ベルト状等であってもよい。
導電性基体11は、導電性材料で構成されている。この導電性材料としては、例えば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金のような導電性金属、アルミニウム合金のような導電性合金、酸化錫、酸化インジウムのような導電性金属酸化物等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、導電性基体11は、その全体が導電性材料で構成されていなくてもよく、例えば、導電性を有さない基部の表面に導電性層を形成することにより構成されてもよい。この場合、基部は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレンのような高分子材料、硬質の紙材料、ガラス材料等で構成される。
一方、導電性層は、各種導電性高分子材料等で構成することができる。この導電性層は、基部の表面に、例えば、導電性材料で構成される箔(シート材)をラミネートすること、導電性材料を蒸着又は塗布すること等により形成することができる。なお、導電性層は、所定の形状に加工されて使用される。
導電性基体11の表面には、必要に応じて、画像の品質に影響のない範囲で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水等による表面処理、着色処理、又は粗面化処理等のような乱反射処理が施されてもよい。
ここで、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているため、感光体の表面で反射されたレーザ光と感光体の内部で反射されたレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥となる場合がある。しかしながら、導電性基体11の表面に上述したような乱反射処理を施すことによって、この波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥の発生を防止することができる。
(下引き層)
下引き層15は、中間層とも称され、導電性基体11から感光層14への電荷の移動を防止する機能を有している。従って、仮に、導電性基体11又は感光層14に欠陥が存在する場合であっても、この欠陥に起因して感光層14の微小領域での帯電性の低下を阻止することができる。その結果、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少を抑制して、画像のかぶり等による画像欠陥の発生を好適に防止することができる。
更に、下引き層15を設けることによって、導電性基体11の表面に存在する凸凹を被覆して均一な表面を形成することができるので、感光層14の成膜性を高めることができる。また、導電性基体11と感光層14との接着性を向上させ、感光層14の導電性基体11からの剥離を防止又は抑制することができる。この下引き層15には、例えば、樹脂材料で構成される樹脂層又はアルマイト層等を用いることができる。
下引き層15を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂のような樹脂、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂等を挙げることができる。また、下引き層15を構成する他の樹脂材料としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、セルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース等を挙げることもできる。なお、以上のような樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、特に、アルコール可溶性ナイロン樹脂を用いることが好ましい。アルコール可溶性ナイロン樹脂の好ましい例としては、例えば、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、2−ナイロン、12−ナイロンのような所謂ナイロン、N−アルコキシメチル変性ナイロン、N−アルコキシエチル変性ナイロンのような化学的に変性させたナイロン等を挙げることができる。
なお、下引き層15に電荷調整機能を付与する場合、下引き層15には、フィラー微粒子として、金属酸化物微粒子が添加される。このような金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、水酸化アルミニウム微粒子、酸化錫微粒子等を挙げることができる。このようなフィラー微粒子の平均粒径は、0.01〜0.3μm程度であることが好ましく、0.02〜0.1μm程度であることがより好ましい。
下引き層15は、例えば、上述した下引き層15を構成する樹脂材料を適当な溶剤に溶解又は分散させて、下引き層用塗布液(下引き層用樹脂液)を調製し、この塗布液を導電性基体11の表面に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。なお、下引き層15に前記金属酸化物微粒子のようなフィラー微粒子を添加する場合、下引き層用塗布液中にフィラー微粒子を分散させればよい。
下引き層用塗布液の溶剤には、水、各種有機溶剤、又はこれらの混合溶剤が用いられる。かかる溶剤の具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールのようなアルコール類のみからなる単独溶剤、水とアルコール類との混合溶剤、2種以上のアルコール類を含む混合溶剤、アセトン又はジオキソラン等とアルコール類との混合溶剤、ジクロロエタン、クロロホルム、トリクロロエタンのようなハロゲン系有機溶剤類とアルコール類等との混合溶剤等が挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
フィラー微粒子を塗布液中に分散させる方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機、ペイントシェーカー等を利用する分散方法を用いることができる。また、フィラー微粒子を含有する塗布液を超高圧で微小空隙中に通過させるメディアレスタイプの分散装置を利用する分散方法も用いることができる。かかる分散方法では、塗布液を微小空隙中に通過させる際に発生する非常に強いせん断力によって、フィラー微粒子を塗布液中に分散させる。このため、フィラー微粒子をより安定的に塗布液中に分散させることができる。
下引き層用塗布液の塗布方法としては、例えば、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法、浸漬塗布法等が挙げられる。これら塗布方法の中でも、特に、浸漬塗布法が好ましい。ここで、浸漬塗布法は、基体を塗布液で満たした塗工槽に浸漬した後、一定速度又は逐次変化する速度で塗工槽から引上げることによって、基体の表面に層を形成する方法である。かかる方法は、比較的簡単で、生産性及び原価の点で優れているため、感光体1を製造する場合に広く利用されている。
下引き層15の膜厚は、0.01〜20μm程度であることが好ましく、0.05〜10μm程度であることがより好ましい。下引き層15の膜厚を0.01μm以上とすることにより、導電性基体11の凸凹を確実に被覆することができ、均一かつ平坦性の高い表面を有する下引き層15を形成することができる。このため、下引き層15は、その機能を十分に発揮することができる。その結果、導電性基体11からの感光層14への電荷の注入をより確実に阻止して、感光層14の帯電性の低下を防止することがきる。一方、下引き層15の膜厚を20μm以下とすることにより、例えば、浸漬塗布法によって下引き層15を精度よく形成することができる。このため、下引き層15上に感光層14を均一に形成することができるので、十分な感度を有する感光体1を得ることができる。
(電荷発生層)
下引き層15上には、電荷発生層12が設けられている。この電荷発生層12は、光を吸収することによって電荷を発生する電荷発生物質を主成分として含有する。なお、電荷発生層12中に含まれる電荷発生物質の量は、特に限定されないが、40〜80質量%程度であることが好ましい。
電荷発生物質としては、各種有機光導電性材料及び各種無機光導電性材料のうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。有機光導電性材料としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料のようなアゾ系顔料、インジゴ、チオインジゴのようなインジゴ系顔料、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物のようなペリレン系顔料、アントラキノン、ピレンキノンのような多環キノン系顔料、金属フタロシアニン(例えば、オキソチタニウムフタロシアニン化合物)、無金属フタロシアニンのようなフタロシアニン系化合物、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素等が挙げられる。一方、無機光導電性材料としては、例えば、セレン、非晶質シリコーン等が挙げられる。
これらの電荷発生物質の中でも、フタロシアニン系化合物が好ましく、オキソチタニウムフタロシアニン化合物がより好ましい。ここで、「オキソチタニウムフタロシアニン化合物」とは、オキソチタニウムフタロシアニン及びその誘導体を意味する。オキソチタニウムフタロシアニン誘導体としては、例えば、フタロシアニン基に含まれる芳香環の水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子(例えば、塩素原子、フッ素原子)、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基のような置換基で置換されたオキソチタニウムフタロシアニン、中心金属であるチタン原子に塩素原子のような配位子が配位したオキソチタニウムフタロシアニン等が挙げられる。
また、オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、特定の結晶構造を有することが好ましい。具体的には、オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、Cu−Kα特性X線(波長1.54Å)に対するX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に回折ピークを示す結晶構造を有することが好ましい。ここで、ブラッグ角2θとは、入射X線と回折X線とのなす角度であり、所謂回折角を表す。
このようなオキソチタニウムフタロシアニン化合物を電荷発生物質として用いることによって、更に優れた感度及び解像度を有する感光体1を得ることができる。また、オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、電荷発生能力及び電荷注入能力に優れている。このため、オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、光を吸収することによって多量の電荷を発生すると共に、発生した電荷をその内部に蓄積することなく、電荷輸送層13に効率よく注入することができる。
オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、例えば、Moser及びThomasによるPhthalocyanine Compounds,Reinhold Publishing Corp,New York,1963に記載される製造方法に従って製造することができる。
例えば、オキソチタニウムフタロシアニンは、フタロニトリルと四塩化チタンとを加熱融解させることによって、又はこれらをα−クロロナフタレンのような適当な溶媒中で加熱反応させることによって、ジクロロチタニウムフタロシアニンを合成し、次いで、塩基又は水で加水分解することによって製造することができる。
また、オキソチタニウムフタロシアニンは、イソインドリンとテトラブトキシチタンのようなチタニウムテトラアルコキシドとを、N−メチルピロリドンのような適当な溶媒中で加熱反応させることによっても製造することができる。
電荷発生層12の形成方法としては、例えば、電荷発生物質を導電性基体11の表面に真空蒸着する方法、又は電荷発生物質を適当な溶剤中に溶解又は分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性基体11の表面に塗布する方法等が用いられる。これらの中でも、結着剤である結着樹脂を溶剤中に混合(溶解又は分散)して得られる結着樹脂液中に、電荷発生物質を分散して電荷発生層用塗布液を調製し、得られた塗布液を導電性基体11の表面に塗布する方法が好適に用いられる。以下、この方法について説明する。
電荷発生層12に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルホルマール樹脂のような樹脂、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂等が挙げられる。
共重合体樹脂の具体例としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂のような絶縁性樹脂等が挙げられる。なお、結着樹脂は、これらの樹脂に限定されるものではなく、一般に用いられる樹脂であってもよい。なお、以上のような樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
電荷発生層用塗布液の溶剤としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、1,2−ジメトキシエタンのようなエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのような非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤類が好適に用いられる。なお、以上のような溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いるようにしてもよい。
電荷発生物質と結着樹脂とを含有する電荷発生層12において、電荷発生物質の質量M1と結着樹脂の質量M2との比(M1/M2)は、10/100〜400/100であることが好ましい。比(M1/M2)が10/100以上であることにより、感光体1の感度の低下を防止又は抑制することができる。一方、比(M1/M2)が400/100以下であることにより、電荷発生層12は、十分な膜強度を維持することができる。また、この場合、電荷発生層12中に電荷発生物質が十分に分散するので、粗大粒子の形成が阻止される。このため、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が高く維持され、白地にトナーが付着して微小な黒点が形成されることに起因する画像のかぶり等の画像欠陥の発生を好適に防止することができる。
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、例えば、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法、浸漬塗布法等を挙げることができる。これらの塗布方法の中でも、下引き層用塗布液の塗布方法において説明したような浸漬塗布法が特に好ましい。また、塗布によって電荷発生層12を形成する場合、電荷発生層用塗布液中に酸化防止剤又は紫外線吸収剤等を添加することにより、塗布液の安定性を高めることができる。
電荷発生層12の膜厚は、0.05〜5μm程度であることが好ましく、0.1〜1μm程度であることがより好ましい。電荷発生層12の膜厚を0.05μm以上とすることにより、電荷発生層12の光吸収による電荷発生効率が向上し、感光体1の感度を高めることができる。一方、電荷発生層12の膜厚を5μm以下とすることにより、電荷発生層12内部での電荷移動が感光層14の表面電荷を消去する過程の律速とならず、感光体1の感度を高めることができる。
(電荷輸送層)
電荷発生層12上には、電荷輸送層13が設けられている。この電荷輸送層13が、感光体1の表面層を構成する。また、この電荷輸送層13は、電荷発生層12中に含まれる電荷発生物質が発生した電荷を受入れ、これを輸送する電荷輸送物質と、電荷輸送物質を結着させる結着樹脂とを含有する。なお、電荷輸送層13には、耐摩耗性等を向上させる目的として、フィラー微粒子16(図2参照)を添加することができる。
更に、電荷輸送層13には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、可塑剤、レベリング剤のような各種添加剤を添加するようにしてもよい。例えば、電荷輸送層13のオゾン、窒素酸化物のような酸化性ガスに対する劣化を低減させることを目的として、電荷輸送層13中に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物、アミン系化合物等が挙げられる。これらの酸化防止剤の中でも、ヒンダードフェノール誘導体、ヒンダードアミン誘導体、又はこれらの混合物が好適に用いられる。
また、例えば、電荷輸送層13の成膜性、表面平滑性を向上させることを目的として、電荷輸送層13中に可塑剤又はレベリング剤等を添加することができる。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステルのような二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィン、エポキシ型可塑剤等が挙げられる。また、レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤等が挙げられる。
電荷輸送物質としては、例えば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
電荷輸送層13を構成する結着樹脂は、透明性や耐刷性に優れる等の理由から、例えば、ポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂を主成分(第1成分)として含有することが好ましい。
なお、結着樹脂が含有する第1成分以外の副成分(第2成分)の樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂のようなビニル重合体樹脂、これらを構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート骨格とポリジメチルシロキサン骨格とを有する共重合体樹脂等が挙げられる。
以上のような樹脂のうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いるようにしてもよい。また、これらの樹脂は、電荷輸送層13中で部分的に架橋されていてもよい。
なお、主成分の樹脂とは、電荷輸送層13を構成する結着樹脂中に占める割合が最も多い樹脂であり、好ましくは占める割合が50〜90重量%程度である樹脂を意味する。また、副成分の樹脂とは、電荷輸送層13を構成する結着樹脂中に占める割合が主成分の樹脂より少ない樹脂であり、好ましく占める割合が10〜50重量%程度である樹脂を意味する。また、電荷輸送層13中において電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、重量比で10/18〜10/10程度であることが好ましい。
電荷輸送層13は、電荷発生層12を塗布によって形成する場合と同様に、例えば、適当な溶剤中に、電荷輸送物質及び結着樹脂、必要に応じてフィラー微粒子16(図2参照)や添加剤を溶解又は分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、得られた塗布液を電荷発生層12上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。
電荷輸送層用塗布液の溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼンのような芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミドのような非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。なお、以上のような溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上述の溶剤に、必要に応じて、アルコール類、アセトニトリル、メチルエチルケトン等を混合して用いることもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
電荷輸送層用塗布液の塗布方法としては、例えば、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法、浸漬塗布法等が挙げられる。これらの塗布方法の中でも、特に、浸漬塗布法は、上述したように種々の点で優れているので、電荷輸送層13を形成する場合にも好適に使用することができる。また、塗布によって電荷輸送層13を形成する場合、電荷輸送層用塗布液中に酸化防止剤又は紫外線吸収剤などを添加することにより、塗布液の安定性を高めることもできる。
電荷輸送層13の膜厚は、12〜45μm程度であることが好ましい。上記初期膜厚が12μm未満の場合には、電荷輸送層13中の走行電荷の拡散が少なくなることにより高解像度が得られるものの、感光層に高電界がかかることにより絶縁破壊が起こり、画像欠陥が多発しやすくなる傾向がある。さらに画像形成処理のクリーニング工程における膜削れに対するマージンが少ないため、設計上、感光体寿命が比較的短いものになってしまう。また、一般的に接触帯電器に使用する感光体は、スコロトロン帯電に用いる感光体よりも、膜厚が厚く形成される。一方、上記初期膜厚が45μmを超える場合には、感光体寿命を長くできるものの、電荷発生層12から注入された電荷が電荷輸送層13中を走行する過程において、電界方向から逸脱する電荷拡散の関与が大きくなり解像度が低下する傾向がある。
本実施の形態では、図2に示すように、電荷輸送層13がフィラー微粒子16を含有し、このフィラー微粒子16の存在により、電荷輸送層13の表面に凹凸が形成されている。フィラー微粒子16は、電荷輸送層13の厚さ方向において、表面側に偏在してもよいが、ほぼ均一に分散していることが好ましい。これにより、電荷輸送層13が接触部材と接触することによって経時的に削られた場合でも、電荷輸送層13の表面に常にフィラー微粒子16が露出するようになる。このため、電荷輸送層13の表面が平滑面となることがない。
また、電荷輸送層13中において、フィラー微粒子16の一部は、図2に示すように、1〜3μmの定方向接線径Dを有する凝集体(以下、「所定径の凝集体」とも言う。)17を形成していることが好ましい。ここで、「定方向接線径」とは、所謂最大フェレ径のことである。最大フェレ径とは、対象(ここでは、凝集体)を一定方向の平行線(無限の数、引くことができる)ではさんだ場合に、平行線の間隔が最も大きくなる径のことである。 ここで、凝集体17を形成していないフィラー微粒子16の個数と凝集体17の個数との合計の個数を100としたとき、凝集体17の個数は、10〜40個程度であることが好ましく、15〜38個程度であることがより好ましい。このように構成されることによって、電荷輸送層13(感光体1)の表面の表面粗さ(十点平均表面粗さ)R2が、0.8〜3.0μmの範囲(感光体1の表面粗さR2の許容範囲)に含まれるようになる。
なお、凝集体17の個数及びフィラー微粒子16の個数は、例えば、以下の方法により計数される。まず、導電性基体11から感光層14を剥離した後、感光層14をイオンミリング装置(E−3500:株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、その厚さ方向に沿って切断して切片を調製する。次に、切片(測定用サンプル)の断面を、走査型電子顕微鏡(S−4800:株式会社日立製作所社製)を用いて、加速電圧:1keV無常着で観察する。その後、その断面画像における電荷輸送層13中の1〜3μmの定方向接線径Dを有する凝集体17の個数及びフィラー微粒子16の個数を計数する。
フィラー微粒子16の平均一次粒径は、0.1〜0.5μm程度であることが好ましく、0.2〜0.4μm程度であることがより好ましい。フィラー微粒子16の平均一次粒径を0.1〜0.5μm程度とすることにより、フィラー微粒子16同士が激しく凝集することを防止又は抑制することができる。このため、フィラー微粒子16を電荷輸送層13中でより均一に分散させることができると共に、所定径の凝集体17をより確実に形成することができるので、感光体1の表面粗さR2を、その許容範囲に容易かつ確実に調整することができる。
なお、本明細書中において、平均一次粒径とは、例えば、レーザ回折・散乱式粒度分析計(型式:マイクロトラックMT3000II:日機装株式会社製)を用いて、フィラー微粒子16が分散された分散液と同じ溶剤で希釈した測定液において測定した値のことを言う。
このようなフィラー微粒子16には、無機微粒子及び/又は有機微粒子を用いることができる。無機微粒子は、硬度が高いため、電荷輸送層13の耐摩耗性をより向上させることができる。有機微粒子は、結着樹脂との密着性(親和性)が高いため、電荷輸送層13が接触部材との接触によって削られても、電荷輸送層13から脱落し難い。無機微粒子及び有機微粒子の双方を用いることにより、これらが一緒に凝集体17を形成することにより、無機微粒子により得られる効果と有機微粒子により得られる効果の双方が発揮される。
無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、高い耐摩耗性を有し、且つ比較的安価に入手可能であることから、シリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子を含む無機微粒子を用いることが好ましい。
また、無機微粒子(特に、シリカ微粒子)は、分散性向上や表面改質等を目的として、無機物又は有機物で表面処理されていてもよい。有機物による表面処理としては、例えば、フッ素系シランカップリング剤を用いた表面処理、高級脂肪酸を用いた表面処理、高分子材料の共重合による表面処理のような撥水処理等が挙げられる。一方、無機物による表面処理としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカによる表面処理等が挙げられる。
ここで、シリカ微粒子の市販品としては、例えば、R972、R974、NY50及びRX50(いずれも日本アエロジル株式会社製)、TS610、TS612、TS620及びTS630(いずれもキャボットジャパン株式会社製)、X−24−9163A(信越化学工業株式会社製)、SO−E1、SO−E2、SE100−GDT及びSE100−SPT(いずれも株式会社アドマテックス製)等が挙げられる。
有機微粒子としては、例えば、フッ素系樹脂微粒子、ポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子、ポリアミドイミド樹脂微粒子、ポリブチレンテレフタレート樹脂微粒子等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、高い耐摩耗性を有し、且つ比較的安価に入手可能であることから、フッ素系樹脂微粒子を含む有機微粒子を用いることが好ましい。
フッ素樹脂微粒子としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)微粒子、3フッ化塩化エチレン樹脂微粒子、6フッ化プロピレン樹脂微粒子、フッ化ビニル樹脂微粒子、フッ化ビニリデン樹脂微粒子、2フッ化2塩化エチレン樹脂微粒子、これらの微粒子の樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂微粒子、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂微粒子、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂微粒子等が挙げられる。特に、分散性及び分散安定性の観点から、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)微粒子が好ましい。
ここで、4フッ化エチレン樹脂の市販品としては、例えば、ルブロンL−2、L−5及びL−5F(いずれもダイキン工業株式会社製)、KTL−500F、KTL−1N及びKTL−2N(いずれも株式会社喜多村製)、FLUON PTFE L173J(旭硝子株式会社製)、microdispers−200(テクノケミカル株式会社製)、MP−300(綜研化学株式会社製)、TLP−10F−1(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)等が挙げられる。
また、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂微粒子の市販品としては、例えば、MP−101(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)等が挙げられる。テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂微粒子の市販品としては、例えば、120−JR(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)等が挙げられる。
電荷輸送層13中に含まれるフィラー微粒子16の割合は、特に限定されないが、3〜10重量%程度であることが好ましく、5〜10重量%程度であることがより好ましい。電荷輸送層13中に含まれるフィラー微粒子16の割合を3〜10重量%程度とすることにより、優れた耐刷性と安定した電気特性とを有し、画像形成装置における実使用に耐え得る感光体1を得ることができる。
電荷輸送層13は、更に分散剤を含有することが好ましい。分散剤を含有することにより、電荷輸送層13中でのフィラー微粒子16の分散性を高めると共に、所定径の凝集体17をより確実に形成することができる。分散剤としては、例えば、フッ素系分散剤、アクリル酸系分散剤等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にフッ素系樹脂微粒子との親和性が高いことから、フッ素系分散剤が好適に用いられる。
電荷輸送層13中に含まれる分散剤の割合は、特に限定されないが、フィラー微粒子16に対して1〜10重量%程度であることが好ましく、3〜7重量%程度であることがより好ましい。フィラー微粒子16に対する分散剤の割合を1〜10重量%程度とすることにより、電荷輸送層13中におけるフィラー微粒子16の分散性及び分散安定性を十分に高めることができる。
前述したように、電荷輸送層13は、フィラー微粒子16を含有する電荷輸送層用塗布液を電荷発生層12上に塗布し、乾燥することによって形成される。ここで、0.1〜0.5μm程度の平均一次粒径を有するフィラー微粒子16を用いることにより、フィラー微粒子16を電荷輸送層用塗布液中に高い分散性で分散させることができ、電荷輸送層用塗布液の安定性を高めることができる。
なお、フィラー微粒子16の電荷輸送層用塗布液中への分散には、例えば、ホモジナイザーや高圧衝突タイプ等の公知の分散機を用いることができる。特に、高圧衝突タイプの分散機は、フィラー微粒子16へ与えるダメージが少ないことから好適に用いられる。
高圧衝突タイプの分散機としては、例えば、高圧噴射式乳化分散機が挙げられる。この高圧噴射式乳化分散機とは、高圧プランジャポンプ等により処理液(スラリー、乳化液又は分散液等)を微細な流路に圧入し、排出部の特殊バルブの調整で吐出口から高圧で噴射・衝突させることで、被分散物にダメージを与えることなく、乳化・分散・表面処理を行う湿式微粒化装置である。
従って、高圧噴射式分散機は、吐出口からの噴射時に圧力を調節して高圧噴射液同士の衝突、及び高圧噴射液と装置の壁面との衝突による被分散物の乳化・分散又は粉砕に使用される。このような高圧噴射式分散機としては、高圧ポンプと、これに配管により接続された複数の小径のオリフィスを有する治具と、オリフィスより液が吐出される際に液同士が衝突すべく加工された治具とを備える装置を用いることができる。
このような装置としては、例えば、スターバースト(スギノマシン株式会社製)、ナノヴェイタ(吉田機械興業株式会社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)等を使用することができる。なお、衝突パス回数が増えると、液衝突時の発熱が蓄積し易いことから、分散回路に冷却装置を追加することが好ましい。
ここで、高圧とは、高圧ポンプの吐出量及び吐出圧、オリフィス径及び長さ、更には溶剤及び被分散物の粘度等により概ね決定される10〜300MPa程度(好ましくは、50〜150MPa程度)の値を意味する。このように高圧で処理することにより、液同士の衝突に必要且つ十分なエネルギーが得られ、被分散物の劣化及び処理液(分散液)の爆発等が生じることなく、被分散物を処理液中に極めて高い分散性で分散させることができる。
前述したように、電荷輸送層13は、好ましくは、下引き層15及び電荷発生層12が形成された導電性基体11を電荷輸送層用塗布液で満たした塗工槽に浸漬した後、一定速度又は逐次変化する速度で塗工槽から引上げる浸漬塗布法によって形成される。このとき、塗工槽へ供給する塗布液の流量(送液速度)を適宜変更することにより、塗布液中のフィラー微粒子16の凝集状態を変化させることができる。このため、感光体1の表面粗さR2を、その許容範囲に容易かつ確実に調整することができる。
[第2の実施の形態]
図3は、第2の実施の形態に係る感光体1の構成を模式的に示す断面図である。第1の実施の形態では、感光層14が電荷発生層12と電荷輸送層13とで構成される積層型感光層であったが、本実施の形態では、感光層14は、電荷発生物質及び電荷輸送物質の双方を含有する単一層、即ち単層型感光層である。なお、本実施の形態では、下引き層15が省略されている。
図3に示す感光体1は、円筒状の導電性基体11と、導電性基体11上に設けられ、電荷発生物質及び電荷輸送物質を含有する感光層14とを有している。この場合、第1の実施の形態の電荷輸送層形成用塗布液に、更に電荷発生物質を分散させて、単層型感光層用塗布液とすることができる。
従って、本実施の形態では、感光層14全体が感光体1の表面層を構成し、感光層14がフィラー微粒子16を含有している。このような構成により、感光体1の表面粗さR2を、その許容範囲に容易かつ確実に調整することができる。
[第3の実施の形態]
図4は、第3の実施の形態に係る感光体1の構成を模式的に示す断面図である。第1の実施の形態では、感光層14が単一の電荷輸送層13を有していたが、本実施の形態では、感光層14は、複数の電荷輸送層13A、13Bを有している。なお、本実施の形態では、下引き層15が省略されている。
図4に示す感光体1は、円筒状の導電性基体11と、導電性基体11上に設けられた感光層14とを有している。感光層14は、導電性基体11側から順に、電荷発生層12と、第1電荷輸送層13Aと、第2電荷輸送層13Bとを備えている。この場合、第1電荷輸送層13A中に含まれる電荷輸送物質の量及び/又は種類と、第2電荷輸送層13B中に含まれる電荷輸送物質の量及び/又は種類とを異なるようにすることができる。
また、本実施の形態では、感光層14を構成する2つの電荷輸送層のうちの第2電荷輸送層13Bが表面層を構成し、第2電荷輸送層13Bがフィラー微粒子16を含有している。このような構成により、第2電荷輸送層13Bが、表面粗さR2を備えている。
なお、感光層14は、保護層を有してもよい。ただし、保護層は、電荷輸送層13又は第2電荷輸送層13B上に設けられる。この場合、保護層が感光体1の表面層を構成し、保護層がフィラー微粒子16を含有する。従って、このような構成では、保護層が、表面粗さR2を備えることになる。
また、第1〜第3の実施の形態の感光層14では、凝集体17を形成していないフィラー微粒子16の数と、凝集体17の数の違いにより、表面粗さR2を制御している。しかしながら、表面粗さR2をより大きくするためには、例えば、フィラー微粒子16の平均一次粒径及び/または感光層14に含まれるフィラー微粒子16の数を変更するようにしてもよい。
更に、第1〜第3の実施の形態の感光層14では、フィラー微粒子16の存在により、感光層14の表面に凹凸が形成している。しかしながら、感光層14の表面に凹凸を形成するためには、例えば感光体1の表面に対して粗面化処理を行うようにしてもよい。粗面化処理としては、例えば、型押し、溶剤処理、エッチング処理、ブラスト処理等が挙げられる。
(画像形成装置)
本発明の感光体1は、画像形成装置が備える帯電装置に用いられる。本発明の帯電装置を備える画像形成装置の一例としては、デジタル方式の画像形成装置が挙げられる。デジタル方式の画像形成装置は、帯電、露光、現像、転写、クリーニング、定着、および除電の各工程を有する電子写真プロセスによって、感光体1上にトナー像を形成して記録紙(シート)に転写する機能を有している。
また、帯電装置は、例えば、複写機、レーザプリンター、ファクシミリ等の画像形成装置(電子写真装置)に適用される。また、本発明の帯電装置は、モノクロ機にもカラー機にも適用可能である。
まず、本発明の帯電装置を備えたモノクロ印字方式の画像形成装置について、図5を参照して説明する。モノクロ印字方式の画像形成装置(以下、モノクロ機と称する)10は、外部から入力される画像データに応じて、所定の記録紙に対して単色の画像を形成するものである。そして、図5に示すように、モノクロ機10は、感光体1、帯電器20、露光部30、現像部40、転写部50、定着部60、およびクリーニング部70を備えている。
感光体1と帯電器20とは、互いに接触して配置されている。そして、帯電器20は、電源から供給される電力により感光体1の表面を均一に帯電させる。帯電器20については後述する。
露光部30には、発光素子をアレイ状に並べた、例えば、ELやLED書込みヘッドや、レーザ照射部および反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)が用いられる。そして、露光部30は、帯電器20により帯電された感光体1を、外部から入力される画像データに応じて露光することによって、感光体1の表面に画像データに応じた静電潜像を形成する。
現像部40は、感光体1にトナーを供給するための現像ローラ4を備え、トナーにより感光体1に形成された静電潜像を現像する。これにより、感光体1の表面に画像データに応じたトナー像が形成される。本実施の形態では、現像に用いる現像剤として、非磁性トナーと磁性キャリアとからなる二成分現像剤を用いている。なお、現像剤としては、二成分現像剤に限らず、一成分現像剤を用いてもよい。
転写部50は、図示しない給紙装置から供給され図中のY方向(用紙搬送方向)に搬送される記録紙Pに対して感光体1上に形成されているトナー像を転写させる。このときの転写方式としては、例えば、チャージャー方式やローラ方式等が挙げられる。トナー像の転写後、定着部60にて記録紙P上のトナー像を熱融解によって定着させる。
クリーニング部70は、転写部50によるトナー像の転写後、感光体1に残留したトナーを掻きとって回収する。
次に、帯電器20について説明する。帯電器20は、電源から供給される電力により感光体1の表面を均一に帯電させるために設けられる。帯電器20としては、ローラ形状、ベルト形状、ブレード形状等の接触帯電器を利用できる。なお、帯電ローラ2等の帯電部材への電圧の印加は、電源のコスト、感光体1、帯電部材の寿命等の観点から、直流電圧のみとするのが最適である。
以下では、帯電器20としてローラ状の接触帯電器を用いた例について説明する。帯電器20の少なくとも一部である帯電ローラ2は、図6に示すように、導電性支持体2aを基体としてその外周面上に弾性層2bが形成され、この弾性層2b上に抵抗層2cが形成されている。このように、帯電ローラ2は、弾性層2bおよび抵抗層2cを含む被覆層を導電性支持体2a上に有している。
導電性支持体2aは、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、およびニッケルの少なくとも1つ等の金属材料の丸棒を用いることができる。さらに、防錆や耐傷性付与のために、これらの金属表面にメッキ処理を施してもよい。ただし、導電性を損なわないことが必要である。
弾性層2bは、被帯電体としての感光体1に対する給電や、帯電ローラ2の感光体1に対する良好な均一密着性を確保するために、適当な導電性と弾性とを有している。帯電ローラ2と感光体1との均一密着性を確保するためには、弾性層2bを研磨して、その中央部が一番太く、中央部から両端部に行くにつれて細くなる形状(いわゆるクラウン形状)に形成することが好ましい。一般的に、帯電ローラ2は、導電性支持体2aの両端部に所定の押圧力を与えることによって感光体1と当接される。このため、押圧力が中央部では小さく、両端部ほど大きくなっている。したがって、帯電ローラ2の真直度が十分である場合には問題ないが、十分ではない場合には中央部と両端部に対応する画像に濃度ムラが生じてしまうという問題がある。また、A3ノビ対応機種の増加やカラー機の増加により帯電領域が拡大してきているため、導電性支持体2aの両端部のみへの押圧力によって帯電ローラ2自体がたわみ易くなっており、中央部にギャップができるといった問題が起きている。このような理由により弾性層2bをクラウン形状とすることが好ましい。
弾性層2bは、ゴム等の弾性材料中に、カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物等の電子電導機構を有する導電剤、ならびにアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン電導機構を有する導電剤を適宜添加することによって形成される。そして、体積抵抗が1010Ωcm未満の導電性を示すように調整されるのが好ましい。
弾性層2bを構成している弾性材料としては、例えば、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)およびクロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム、さらには、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
抵抗層2cは、弾性層2bに接して形成され、弾性層2b中に含有される軟化油や可塑剤等の帯電ローラ2表面へのブリードアウトを防止するとともに、帯電ローラ2全体の電気抵抗を調整するために設けられる。
抵抗層2cを形成する材料としては、例えば、エピクロルヒドリンゴム、NBR、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。これらの材料は、単独で用いても、2種類以上の混合であっても、あるいは共重合体であってもよい。
抵抗層2cは、導電性または半導電性を有している。このため、上述した材料に、電子電導機構を有する導電剤(例えば、導電性カーボン、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉等)、または、イオン電導機構を有する導電剤(例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等)を適宜添加することによって形成される。
この場合、所望の電気抵抗を得るために、各種導電剤を2種以上併用してもよい。ただし、環境変動や感光体1の汚染を考慮すると、電子電導機構を有する導電剤を用いることが好ましい。
また、帯電ローラ2の表面には、凹凸が形成されている。帯電ローラ2表面の表面粗さ(十点平均表面粗さ)R1としては、5.0〜13.0μmであることが好ましく、特には、7.0〜11.0μmであることが好ましい。帯電ローラ2の表面粗さR1をこの範囲にすることによって、常に安定した帯電電位を確保でき、また、問題のないレベルのトナークリーニング性を確保することができる。これにより、常に良好な画像を得ることができる。特に帯電ローラ2に直流電圧のみを印加する場合には、帯電ローラ2表面の凸部(突起)が適度な放電ポイントとなり、常に安定した帯電電位を確保することができる。つまり、帯電ローラ2の表面に凸部と凹部とが形成されることによって、当該凸部が感光体1を帯電することになる。
表面粗さR1の調整は、帯電ローラ2の表面層(抵抗層2c)の研磨条件の変更により可能ではあるが、より帯電を安定させるために帯電ローラ2の表面層にフィラーを含有させるようにしても良い。この場合、フィラーの種類、粒径を変更することにより、帯電ローラ2表面の突起の分散状態を良くすることが望ましい。
帯電ローラ2の表面層に含有されるフィラーとしては、発明の効果を著しく損なわない限り、例えば、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、ゼオライト、ウオラストナイト、けいそう土、ガラスビーズ、ベントナイト、モンモリナイト、アスベスト、中空ガラス球、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化チタン、アルミニウム繊維、ステンレススチール繊維、黄銅繊維、アルミニウム粉末、木粉、もみ殻、グラファイト、金属粉、導電性金属酸化物、有機金属化合物、有機金属塩等を用いることができる。
図7は、カラー印字方式(カラータンデム方式)の画像形成装置の概略構成を示す側面図である。ここで、本発明の帯電装置を適用したカラー印字方式の画像形成装置について図7を参照して説明する。カラー印字方式の画像形成装置(以下、カラー機と称する)100は、外部から入力される画像データに応じて、所定の記録紙(シート)に対して多色および単色の画像を形成するものである。そして、図7に示すように、カラー機100は、感光体101、帯電器120、露光部130、現像部140、定着部160、クリーニング部170、転写搬送ベルト部150等を備えている。カラー機は、また、給紙トレイ180、排紙トレイ190・191等を備えており、給紙トレイ180と排紙トレイ190との間には、略Sの字形状の用紙搬送路Sが設けられている。
なお、カラー機100において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。したがって、感光体101(101a,101b,101c,101d)、帯電器120(120a,120b,120c,120d)、露光部130(130a,130b,130c,130d)、現像部140(140a,140b,140c,140d)、クリーニング部170(170a,170b,170c,170d)は、各色に応じた4種類の潜像を形成するように、それぞれ4個ずつ設けられ、それぞれaがブラックに、bがシアンに、cがマゼンタに、dがイエローに設定され、4つの画像ステーション(画像形成部)が用紙搬送路Sに沿って並べて配置されている。
そして、それぞれの感光体101a〜101dは、カラー機100の略中心部に略水平に並べて配置されている。感光体101a〜101dは、上述したモノクロ機10の感光体1と同様にして形成される。
それぞれの帯電器120a〜120dは、当該帯電器120a〜120dと接触して配置される感光体101a〜101dの表面を均一に帯電させる帯電部材として設けられている。それぞれの帯電器120a〜120dの帯電部材(帯電ローラ102a〜102d)は、上述したモノクロ機10の帯電器20の帯電部材(帯電ローラ2)と同様にして形成される。なお、帯電器120a〜120dとしては、図7に示すように帯電部材として帯電ローラ102a〜102dを備えたローラ形状の接触帯電器の他、ベルト形状、ブレード形状等の帯電器を利用できる。
それぞれの露光部130a〜130dには、発光素子をアレイ状に並べた、例えば、ELやLED書込みヘッドや、レーザ照射部および反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)が用いられる。そして、帯電部材により帯電された感光体101a〜101dを入力される画像データに応じて露光することによって、感光体101a〜101dの表面に、画像データに応じた静電潜像を形成する。
それぞれの現像部140a〜140dは、感光体101a〜101dにトナーを供給するための現像ローラを備え、感光体101a〜101dに形成された静電潜像を(K,C,M,Y)のトナーにより現像して顕像化する。これにより、感光体101a〜101dの表面に画像データに応じたトナー像が形成される。
ここで、感光体101a〜101dの下方に配置される転写搬送ベルト部150について説明する。転写搬送ベルト部150は、転写ベルト155、転写ベルト駆動ローラ151、転写ベルトテンションローラ153、転写ベルト従動ローラ152・154、転写ローラ105(105a,105b,105c,105d)、転写ベルトクリーニング部157等を備えている。
転写ベルト駆動ローラ151、転写ベルトテンションローラ153、転写ローラ105a〜105d、転写ベルト従動ローラ152・154等は、転写ベルト155を張架し、この転写ベルト155を図中矢印B方向に回転駆動させるものである。
それぞれの転写ローラ105a〜105dは、転写搬送ベルト部150のハウジングの転写ローラ取付部(感光体101a〜101dと対向する位置)に回転可能に支持されている。そして、転写搬送ベルト部150は、それぞれの感光体101a〜101dに形成されたトナー像を、転写ベルト155上に吸着されて搬送される記録紙に転写するための転写バイアスを与える。
転写ベルト155は、それぞれの感光体101a〜101dに接触するように設けられている。つまり、転写ベルト155を挟んで、感光体101a〜101dと転写ローラ105a〜105dとが対向して配置されている。そして、感光体101a〜101dに形成された各色のトナー像を記録紙に順次重ねて転写することによって、カラーのトナー像(多色トナー像)を形成する。転写ベルト155は、厚さ100〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
それぞれの感光体101a〜101dから記録紙へのトナー像の転写は、無端状の転写ベルト155の内側に接触している転写ローラ105a〜105dによって行われる。この転写ローラ105a〜105dには、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加されている。転写ローラ105a〜105dは、直径8〜10mmの金属(例えばステンレス)軸をベースとし、その表面は、導電性の弾性材(例えばEPDM、発泡ウレタン等)により覆われているローラである。この導電性の弾性材により、記録紙に対して均一に高電圧を印加することができる。なお、転写電極として転写ローラ105a〜105dを用いているが、ブラシ等であってもよい。
また、感光体101a〜101dとの接触により転写ベルト155に付着したトナーは、記録紙の裏面を汚す原因となる。このため、転写ベルトクリーニング部157によって除去・回収するようにしている。この転写ベルトクリーニング部157には、転写ベルト155に接触するクリーニング部材として、例えばクリーニングブレードが設けられており、このクリーニングブレードは、転写ベルト155を挟んで転写ベルト従動ローラ154と対向する位置に配置されている。
定着部160は、ヒートローラ161、加圧ローラ162等を備えており、ヒートローラ161および加圧ローラ162は、記録紙を挟んで回転するようになっている。また、ヒートローラ161は、図示しない温度検出器からの信号に基づいて制御部110により所定の定着温度となるように制御されており、加圧ローラ162とともに記録紙を熱圧着することにより、記録紙に転写された多色トナー像を溶融・混合・圧接し、記録紙に対して熱定着させる機能を有している。なお、多色トナー像の定着後、記録紙は、搬送ローラ185によって用紙搬送路Sの反転排紙経路に搬送され、反転された状態で(多色トナー像を下側に向けて)、排紙トレイ190上にフェイスダウンで排出されるようになっている。
給紙トレイ180は、画像形成に使用する記録紙を蓄積しておくためのトレイであり、カラー機100の4つの画像ステーションの下方に設けられている。排紙トレイ190は、画像形成済みの記録紙をフェイスダウンで載置するためのトレイであり、カラー機100の上部に設けられている。これに対し、排紙トレイ191は、画像形成済みの記録紙をフェイスアップで載置するためのトレイであり、カラー機100の側部に設けられている。
略Sの字形状の用紙搬送路Sは、記録紙を、給紙トレイ180から転写搬送ベルト部150や定着部160を経由させて排紙トレイ190に送るために設けられている。この用紙搬送路Sに沿って、ピックアップローラ181、レジストローラ182、定着部160、搬送方向切換えガイド184、搬送ローラ185等が配されている。
搬送ローラ185は、記録紙の搬送を促進・補助するための小型のローラであり、用紙搬送路Sに沿って複数設けられている。ピックアップローラ181は、給紙トレイ180の端部に備えられ、給紙トレイ180から、記録紙を1枚毎に用紙搬送路Sに供給する呼び込みローラである。
また、レジストローラ182は、用紙搬送路Sを搬送されている記録紙を一旦保持するために設けられている。そして、感光体101a〜101d上のトナー像を記録紙に良好に多重転写できるように、感光体101a〜101dの回転にあわせて、記録紙をタイミングよく搬送する機能を有している。具体的には、レジストローラ182は、図示しないレジスト前検知スイッチの出力した検知信号に基づいて、それぞれの感光体101a〜101d上のトナー像の先端を、記録紙における画像形成範囲の先端に合わせるように、記録紙を搬送するように設定されている。
搬送方向切換えガイド184は、側面カバー186に回動可能に設けられている。この搬送方向切換えガイド184を回動させて実線で示す状態から破線で示す状態にすることによって、用紙搬送路Sの途中から記録紙を分離し、排紙トレイ191に記録紙を排出できるようになっている。実線で示す状態の場合には、記録紙は、定着部160と側面カバー186、搬送方向切換えガイド184の間に形成される搬送部S´(用紙搬送路Sの一部)を通り、上部の排紙トレイ190に排出される。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の記載内容に限定されるものではない。
1.感光体の製造
まず、以下の各実施例、各比較例及び各参考例で使用するために、下引き層及び電荷発生層が形成された基体を用意した。
(下引き層15の作製)
まず、酸化チタン(タイベークTTO−D−1:石原産業株式会社製)3重量部と、ポリアミド樹脂(アミランCM8000:東レ株式会社製)2重量部とを、メチルアルコール25重量部に添加し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した。これにより、下引き層用塗布液3kgを調製した。得られた下引き層用塗布液を塗布槽に満たし、導電性基体として直径30mm、長さ357mmのアルミニウム製の円筒状の基体11を浸漬した。その後、基体11を下引き層用塗布液から引き上げ、自然乾燥した。これにより、基体11上に膜厚1μmの下引き層15を形成した。
(電荷発生層12の作製)
次に、電荷発生物質として、CuKα1.541ÅのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主要なピークを示すX線回折スペクトルを有するチタニルフタロシアニン1重量部と、結着樹脂としてブチラール樹脂(エスレックBM−2:積水化学工業株式会社製)1重量部とを、メチルエチルケトン98重量部に混合し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した。これにより、電荷発生層用塗布液3kgを調製した。
得られた電荷発生層用塗布液を、下引き層15を形成する場合と同様の方法で、先に設けた下引き層15の表面に塗布し、自然乾燥した。これにより、下引き層15上に、膜厚0.3μmの電荷発生層12を形成した。
(実施例1)
まず、電荷輸送物質として以下の式:
で表される化合物(D2448:東京化成工業株式会社製)100重量部と、結着樹脂としてポリカーボネート樹脂(TS2050:帝人化成社株式会社製)140重量部と、フィラー微粒子16として約0.2μmの平均一次粒径を有する4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(ルブロンL−2:ダイキン工業株式会社製)27重量部と、分散剤としてフッ素系分散剤(GF−400:東亞合成株式会社製)1.4重量部とを混合した。これにより、混合物を得た。
次に、この混合物をテトラヒドロフランに添加して、固形分21質量%の懸濁液を作製した。その後、懸濁液を湿式乳化分散装置(M−110P:マイクロフルイダイザー社製)を用いて、設定圧力:100MPaの条件で、装置を5回通過させる操作を行った。これにより、電荷輸送層用塗布液3kgを調製した。
次に、電荷輸送層用塗布液を浸漬塗布法により電荷発生層の表面に塗布した。具体的には、得られた電荷輸送層用塗布液を塗布槽に満たし、予め用意された下引き層15及び電荷発生層12が形成された基体11を塗布液に浸漬した後、引き上げた。その後、電荷輸送層用塗布液を130℃で90分間乾燥した。これにより、電荷発生層12上に、膜厚28μmの電荷輸送層13を形成した。以上のようにして、図1に示す構造の感光体1を得た。
<帯電部材(以下帯電ローラ2と称する)の作製>
帯電ローラ2の作製に使用した材料の配合を下記に記す。
−弾性層−
・EPDM(100部)
・カーボンブラック(10部)
・発泡剤(10部)
−表面層−
・ナイロン12(100部)
・カーボンブラック(20部)
弾性層を構成する材料を混練し、得られたゴムをΦ9の導電性支持体が予めセットされた金型に流し込み、電気炉内部温度160℃で30分間加熱し、加硫、発泡を行った。
次に表面層を構成する材料を混練し、その後環状ダイスを用いて溶融押し出しし、シームレスチューブを作製した。作製したシームレスチューブの一端からエアーを吹き込み、チューブを膨らましながら、チューブ内に導電性支持体上に弾性層が形成れたローラを挿入することでΦ14の帯電ローラ2を作製した。
<表面粗さ測定>
表面粗さ計(小坂研:SE−30H)を用いて、帯電ローラ2の表面粗さR1および感光体1の表面粗さR2を測定した。その結果、帯電ローラ2の表面粗さR1は、8.2μm、感光体1の表面粗さR2は、1.88μmであった。ただし、帯電ローラ2の表面粗さR1の値および感光体1の表面粗さR2の値は、いずれも十点平均表面粗さ(Rz)の値である。このことは、以下の実施例および比較例でも同じである。
(実施例2)
感光体1は実施例1と同様にして作製し、帯電ローラ2は実施例1と同様のものを、機械研磨でR1を、5.5μmに加工した。また感光体1の表面粗さR2は1.90μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(実施例3)
感光体1は実施例1と同様にして作製し、帯電ローラ2は実施例1と同様のものを、機械研磨でR1を、12.1μmに加工した。また感光体1の表面粗さR2は1.89μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(実施例4)
感光体1の分散剤の量を0.5重量部に変更し、表面粗さR2は2.75μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(実施例5)
感光体1の分散剤の量を2.7重量部に変更し、表面粗さR2は0.89μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(実施例6)
感光体1のフィラー微粒子16の量を19重量部に、分散剤の量を1.0重量部に変更し、表面粗さR2は1.50μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(実施例7)
感光体1のフィラー微粒子16の量を11重量部に、分散剤の量を0.6重量部に変更し、表面粗さR2は1.30μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(実施例8)
感光体1のフィラー微粒子16をPFA微粒子(MP−101:三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)に変更し、表面粗さR2は1.67μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(実施例9)
感光体1のフィラー微粒子16をシリカ微粒子(SO−E2:株式会社アドマテックス製)に変更し、表面粗さR2は1.57μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(実施例10)
感光体1の分散剤を異なるフッ素系分散剤(サーフロンS−385:AGCセイケミカル株式会社製)に変更し、表面粗さR2は2.64μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例1)
感光体1は実施例1と同様にして作製し、帯電ローラ2は実施例1と同様のものを、機械研磨でR1を、4.2μmに加工した。また感光体1の表面粗さR2は1.92μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例2)
感光体1は実施例1と同様にして作製し、帯電ローラ2は実施例1と同様のものを、機械研磨でR1を、15.2μmに加工した。また感光体1の表面粗さR2は1.87μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例3)
感光体1のフィラー微粒子16の量を5重量部に、分散剤の量を0.3重量部に変更し、表面粗さR2は0.68μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例4)
感光体1のフィラー微粒子16の量を41重量部に、分散剤の量を2.1重量部に変更し、表面粗さR2は3.12μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例5)
感光体1の分散剤の添加を省略し、表面粗さR2は3.56μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例6)
感光体1の分散剤の量を8.4重量部に変更し、表面粗さR2は0.72μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例7)
感光体1の分散剤をアクリル酸系分散剤(SD−10:東亞合成株式会社製)に変更し、表面粗さR2は3.25μmであった以外は、実施例1と同様に行った。
2.計数及び評価
2−1.フィラー微粒子16及び凝集体17の個数の計数
まず、各実施例、各比較例及び各参考例で得られた感光体1の感光層を基体から剥離した後、感光層をイオンミリング装置(E−3500:株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、その厚さ方向に沿って切断して切片を調製した。次に、切片(測定用サンプル)の断面を、走査型電子顕微鏡(S−4800:株式会社日立製作所社製)を用いて、加速電圧:1keV無常着で観察した。その後、その断面画像における電荷輸送層中の1〜3μmの凝集体17の個数及びフィラー微粒子16の個数を計数した。ここで、実施例1で得られた感光体1の電荷輸送層における断面画像を図8に、また、比較例3で得られた感光体1の電荷輸送層における断面画像を図9に示す。
2−2、ハーフトーン白スジおよび解像度の評価
各実施例、各比較例及び各参考例で得られた感光体1および帯電ローラ2をデジタル複写機(MX−2600:シャープ株式会社製)に組み込み、またプロセススピード(プロセス速度:感光体表面の周速)を112mm/sec、225mm/sec、395mm/secの3段階に変更できるよう改造した。なお、感光体1を露光するための光源として、波長780mmのレーザ光源を用いた。
この評価機を用いて、25℃(常温)/50%(常湿)の一定環境下で、各プロセススピードでごとにハーフトーン画像で白スジによる濃度ムラ画像の評価を行った。
ハーフトーン白スジ画像評価
VG:白スジが全く見られず非常に良好である。
G :白スジがほとんど見られず良好である。
NB:ところどころ白スジが見られるが実使用可。
B :はっきりと白スジが見られ良好でない。
また、同環境にて白地に黒い細線および黒地に白抜きの細線が描かれた画像(1200dpi)を225mm/secでプリントした。黒線と白線の各線と、下地のコントラスト比を数値化し、以下の要領で解像度評価を実施した。
解像度チャート画像評価
VG:黒線1.0以上と白線0.5以上で線再現性良好。
G :黒線と白線両方0.5以上で実使用問題なし。
NB:黒線と白線いずれかが0.5以上で実使用可。
B :黒線と白線いずれも0.5未満で実使用問題あり。
この評価機を用いて、25℃(常温)/50%(常湿)の一定環境下で、100000枚耐刷後の感光体表面のキズおよびトナー付着等の汚れの有無を評価した。
VG:キズやトナー付着が全くなく非常に良好である。
G :キズやトナー付着がほとんど見られず良好である。
NB:ところどころキズやトナー付着が見られるが実使用可。
B :感光体表面全域にキズやトナー付着が見られ良好でない。
2−3.総合評価
上記のハーフトーン白スジおよび解像度、耐刷後の感光体表面状態の評価結果を考慮して、以下の基準に従って総合的に評価した。
VG:非常に良好である(5つの評価のうちに、4つ以上のVGを含み、且つNB及
びBを含まない)。
G :良好である(5つの評価のうちに、Bを含まない)。
B :実使用不可である(5つの評価のうちに、1つ以上Bを含む)。
実施例1〜10及び比較例1〜7について、フィラー微粒子16の種類及びその電荷輸送層中に含まれる量(含有量)、分散剤の種類及びそのフィラー微粒子16に対する量、凝集体17の個数、感光体1および帯電ローラ2の表面粗さR1を、評価結果と共に、下記表1に示す。
表1に示すように、実施例1〜10で得られた感光体1では、いずれも表面粗さR2を0.8〜3.0μmにまた帯電ローラ2の表面粗さR1を5.0〜13.0μm以下にすることによって、ハーフトーン画像上の白スジ発生を抑制し、解像度評価でも良好な細線再現性をしめした。即ち、比較的凹凸の少ない帯電ローラ2でも、感光体1の表面粗さR2を最適化することで、帯電ムラによる白スジを抑制するとともに、解像度も良好な結果となった。また、フィラー微粒子16として無機微粒子及び有機微粒子のいずれも有用であり、フッ素系分散剤は、フィラー微粒子16を適切な分散状態で電荷輸送層中に分散させ得るため耐刷後の感光体表面のキズや汚れにおいても有用であることが判る。
これに対して、比較例1〜2で得られた帯電ローラ2では、いずれも表面粗さR1が5.0〜13.0μmの範囲外であり、感光体1の表面粗さR2を0.8〜3.0μmのものを用いているにもかかわらず、比較例1の帯電ローラ2の表面粗さR1が4.2μmでは帯電ムラによるハーフトーン画像上の白スジが発生し、また比較例2の帯電ローラ2の表面粗さR1が15.2μmのものでは耐刷後の感光体表面に多数のキズとトナーフィルミングが見られた。即ち、帯電ローラ2の凹凸が小さすぎると、放電が横方向に広がるため帯電ムラによる白スジが顕著化し、また、帯電ローラ2の凹凸が大きすぎると、放電ムラは良好なものの、耐刷後の感光体表面へのキズやフィルミングが悪化した。
これに対して、比較例3〜7で得られた感光体1では、いずれも表面粗さR2が0.8〜3.0μmの範囲外であり、帯電ローラ2の表面粗さR1を8.2μmのものを用いても、感光体表面の凹凸が小さすぎるとハーフトーン画像上の白スジが発生し、感光体表面の凹凸が大きすぎると解像度評価で細線再現性が乏しかった。即ち表面粗さR1が5.0〜13.0μmの帯電ローラ2でも、感光体1の表面粗さR2が小さすぎると、帯電ムラによる白スジが顕著化し、また感光体1の表面粗さR2が大きすぎると解像度が悪化した。